JP2023025484A - 塩化ビニル樹脂組成物、成形体および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮することができ、かつ、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する成形体を製造することができる塩化ビニル樹脂組成物を提供する。【解決手段】塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、抗菌剤または抗ウイルス剤と、抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物とを含み、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部含む。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を含む抗菌性または抗ウイルス性の塩化ビニル樹脂組成物、ならびにその成形体およびそれを備える成形品に関する。
塩化ビニル樹脂組成物は、成形加工性(例えば、押出成形性、射出成形性等)、接着性、難燃性、耐熱性等の物性に優れ、かつ、安価であることが知られている。そのため、塩化ビニル樹脂組成物の成形品(または成形体)は、内装下地材や外装材等の建材、家電部材、車両部材等の様々な部材として広範に用いられている。
一方、近年、様々な菌やウイルスによる汚染の問題が多く取り上げられている。そのため、塩化ビニル樹脂に抗菌剤および/または抗ウイルス剤を添加した抗菌性および/または抗ウイルス性を有する塩化ビニル樹脂組成物およびその成形品も多く開発されている。
例えば、特許文献1には、安定剤としての有機錫化合物、銀系無機抗菌剤および塩化ビニル樹脂からなる抗菌性塩化ビニル樹脂組成物であって、含硫黄系有機錫化合物の含有割合が抗菌性塩化ビニル樹脂組成物100重量部当たり0~1重量部である抗菌性塩化ビニル樹脂組成物が記載されている。当該抗菌性塩化ビニル樹脂組成物によると、成形物に銀系無機抗菌剤が有する本来の優れた抗菌性を確実に発揮させることができると記載されている。
特開平9-302184号公報
通常、塩化ビニル樹脂組成物およびその成形体に抗菌性または抗ウイルス性を発揮させるためには、成形体の種類や用途に応じた十分量の抗菌剤または抗ウイルス剤の添加が必要となる。しかしながら、多量の抗菌剤または抗ウイルス剤を添加した塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体は、その表面性(凹凸の有無)や色調(くすみの有無)に問題が生じたり、および/または、耐衝撃性が低下する場合がある。
一方、塩化ビニル樹脂への抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量を抑えると、成形品の耐衝撃性、剛性等の物性および表面性や色調に問題が生じることはないが、所望する十分な抗菌性または抗ウイルス性を得られなくなる。
特許文献1の抗菌性塩化ビニル樹脂組成物では、抗菌剤として銀系無機抗菌剤を含む場合に限定し、含硫黄系有機錫化合物の含有濃度を抑えることによって、成形物に優れた抗菌性を確実に発揮させている。しかしながら、塩化ビニル樹脂組成物をより広範な用途の成形品に適用させる目的等において、他の種類の抗菌剤または抗ウイルス剤を用いる場合であっても、より優れた抗菌性または抗ウイルス性を確保できる新たな塩化ビニル樹脂組成物の開発が求められる。
そこで、本発明は、優れた抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮することができ、かつ、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する成形体を製造することができる塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
本発明の第一の局面に係る塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、抗菌剤または抗ウイルス剤と、抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物とを含み、
前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部含む。
前述の塩化ビニル樹脂組成物において、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記抗菌剤を0.1質量部~0.7質量部含むことが好ましい。
前述の塩化ビニル樹脂組成物において、前記抗菌剤が亜鉛系抗菌剤であることがより好ましい。
あるいは、前述の塩化ビニル樹脂組成物において、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記抗ウイルス剤を5質量部~10質量部含むことが好ましい。
前述の塩化ビニル樹脂組成物において、前記抗ウイルス剤が有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤であることがより好ましい。
本発明の第二の局面に係る成形体は、本発明の第一の局面に係る塩化ビニル樹脂組成物からなる。
本発明の第三の局面に係る成形品は、基材と、前記基材の表面に形成された本発明の第一の局面に係る塩化ビニル樹脂組成物からなる表面層とを備える。
本発明によれば、優れた抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮することができ、かつ、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する成形体を製造することができる塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。
図1は、本実施形態における成形品の一例の概略断面図である。
本発明者らは、抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量が少量であっても、優れた抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮することができる塩化ビニル樹脂組成物について、様々な研究を重ねた。そして、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を特定の範囲の配合比で使用することに着目し、本発明を完成した。なお、本明細書において、「抗菌助剤」との用語は「抗ウイルス助剤」の意図も含む。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
1.塩化ビニル樹脂組成物
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、抗菌剤または抗ウイルス剤と、抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物とを含み、当該塩化ビニル樹脂100質量部に対して、当該Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部含む。
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物によると、特定の範囲の配合比で含まれる抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物の機能により、抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量が少ない場合であっても、十分な抗菌性または抗ウイルス性を発現させることができる。また、抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量を減少させることができるために、当該塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体の表面性、色調および耐衝撃性も同時に良好にすることができる。
以下、各成分の作用およびその配合量、本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物の調製方法(または製造方法)について、詳細に説明する。
<塩化ビニル樹脂>
本明細書において、塩化ビニル樹脂は、-CH-CHCl-で表される基を有する全ての重合体を意味する。具体的に、本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物に含まれる塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体;および、後塩素化ビニル共重合体等の塩化ビニル単独重合体や塩化ビニル系共重合体を改質した重合体等を挙げることができる。これらの塩化ビニル樹脂を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、成形体または成形品の種類、用途、形状等に応じて適宜選択すればよい。
これらのうち、良好な成形加工性を有するとの観点から、塩化ビニル樹脂は塩化ビニルの単独重合体であることが好ましい。
塩化ビニル樹脂の平均重合度は、700~2000であることが好ましい。塩化ビニル樹脂の平均重合度が700以上であることによって、塩化ビニル樹脂組成物から製造される成形体の機械的強度を良好にすることができる。塩化ビニル樹脂の平均重合度が2000以下であることによって、塩化ビニル樹脂組成物の成形加工性を良好にすることができる。塩化ビニル樹脂の平均重合度は、より好ましくは800以上、さらに好ましくは1000以上である。また、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1300以下である。
なお、本明細書において、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K 6720-2:1999の附属書の4.1に準拠して測定した比粘度から算出される平均重合度を意味する。
<抗菌剤>
本明細書において、抗菌剤とは、細菌、カビ菌等の菌の増殖を防ぐ薬剤、または菌を死滅もしくは低減させる薬剤を意味する。対象となる菌は、特に限定されないが、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、腸炎菌、肺炎桿菌、緑膿菌、ビブリオ、緑膿菌、MRSA、セレウス菌、肺炎桿菌等の細菌またはカビ等を挙げることができる。
このような抗菌剤としては、例えば、無機系抗菌剤、有機系抗菌剤、またはこれらの複合材料(有機・無機ハイブリッド系抗菌剤)を用いることができる。これらの抗菌剤のうち、広範囲の細菌、カビおよび酵母において効果を発揮し、かつ、高温の樹脂成形温度においてもその効果に大きな影響を与えることがないとの観点から、抗菌剤は、無機系抗菌剤であることが好ましい。
無機系抗菌剤としては、公知の任意の無機系抗菌剤であれば特に限定されないが、例えば、亜鉛系抗菌剤、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、鉄系抗菌剤、ビスマス系抗菌剤、金系抗菌剤、白金系抗菌剤、チタン系抗菌剤等を挙げることができる。具体的には、これらの抗菌剤には、亜鉛、銀、銅、鉄、ビスマス、金、白金、チタン等の各種金属、これらの金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物等)、これらの金属、金属化合物もしくは金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア等の担体に担持させた抗菌剤等が含まれる。
これらのうち、高い抗菌性を発揮することができるとの観点から、抗菌剤は亜鉛系抗菌剤または銀系抗菌剤であることが好ましい。さらに、時間経過による成形体表面の変色リスクも回避することができるとの観点から、抗菌剤は亜鉛系抗菌剤であることがより好ましい。具体的には、抗菌剤として銀系抗菌剤を用いた場合、成形体の成形後しばらくの間は表面性の色合いに問題はなく、かつ、高い抗菌性も発揮することができる。しかし、時間経過に伴う酸化銀の生成により成形体表面が変色するリスクがある。
このような無機系抗菌剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、亜鉛系抗菌剤としては、東亞合成社製の「ノバロン(登録商標)VZ100」、テイカ社製の「MICRO ZINC OXIDE MZ-500」、富士ケミカル社製の「バクテキラーBM-102VT」等が挙げられ、銅系抗菌剤としては、NBCメッシュテック社製の「Cufitec(登録商標)」等が挙げられ、銀系抗菌剤としては、東亞合成社製の「ノバロン(登録商標)AGZ330」、東亞合成社製の「ノバロン(登録商標)AG300」、東亞合成社製の「ノバロン(登録商標)AG1100」、シナネンゼオミック社製の「ゼオミック(登録商標)」等が挙げられる。
有機系抗菌剤としては、公知の任意の有機系抗菌剤であれば特に限定されないが、例えば、イミダゾール系抗菌剤、ピリチオン系抗菌剤、スルホン系抗菌剤、N‐ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール系抗菌剤、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、チアゾリン系抗菌剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物)等が挙げられる。
このような有機系抗菌剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、大和化学社製の「アモルデン」、大阪化成社製の「マルカサイド」等を挙げることができる。
有機・無機ハイブリッド系抗菌剤は、前述した無機系抗菌剤と前述した有機系抗菌剤とが複合した抗菌剤であり、公知の任意の有機・無機ハイブリッド系抗菌剤を用いることができる。このような有機・無機ハイブリッド系抗菌剤の市販品としては、例えば、富士ケミカル社製の「バクテキラーTZA‐206」、ラサ工業社製の「ラサップ」、石塚硝子社製の「ハイブリッドイオンピュア」等を挙げることができる。
抗菌剤の配合比は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、抗菌剤を0.1質量部~0.7質量部含むことが好ましい。塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗菌剤を0.1質量部以上含むことによって、優れた抗菌性能を発揮する成形体を製造することができる。塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗菌剤を0.7質量部以下含むことによって、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する成形体を製造することができる。
抗菌剤の配合比において、塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗菌剤を0.2質量部以上含むことがより好ましく、0.3質量部以上含むことがさらに好ましい。また、塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗菌剤を0.6質量部以下含むことがより好ましく、0.5質量部以下含むことがさらに好ましい。
<抗ウイルス剤>
本明細書において、抗ウイルス剤とは、ウイルスの一部を不活性化する薬剤、具体的には、ウイルス感染価を抑制する薬剤を意味する。対象となるウイルスは、特に限定されないが、例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型またはC型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型またはC型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリリッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘、帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルス等を挙げることができる。
このような抗ウイルス剤としては、例えば、前述した抗菌剤と同様に、無機系抗ウイルス剤、有機系抗ウイルス剤、またはこれらの複合材料(有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤)を用いることができる。これらの抗ウイルス剤のうち、高い抗ウイルス性を発現することができるとの観点から、抗ウイルス剤は有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤であることが好ましい。
無機系抗ウイルス剤としては、公知の任意の無機系抗ウイルス剤であれば特に限定されないが、例えば、亜鉛系抗ウイルス剤、銀系抗ウイルス剤、銅系抗ウイルス剤、鉄系抗ウイルス剤、ビスマス系抗ウイルス剤、金系抗ウイルス剤、白金系抗ウイルス剤、チタン系抗ウイルス剤等を挙げることができる。具体的には、これらの抗ウイルス剤には、亜鉛、銀、銅、鉄、ビスマス、金、白金、チタン等の各種金属、これらの金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物等)、これらの金属、金属化合物もしくは金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア等の担体に担持させた抗ウイルス剤等が含まれる。
このような無機系抗ウイルス剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、銀系抗ウイルス剤としては、東亞合成社製の「ノバロン(登録商標)IV1000」、住化エンバイロメンタルサイエンス社製の「ネオシントールAV‐18f」等が挙げられ、亜鉛系抗ウイルス剤としては、ニューライム社製の「SEABIO」等を挙げることができる。
有機系抗ウイルス剤としては、公知の任意の有機系抗ウイルス剤であれば特に限定されないが、例えば、イミダゾール系抗ウイルス剤、ピリチオン系抗ウイルス剤、スルホン系抗ウイルス剤、N‐ハロアルキルチオ化合物、アニリド誘導体、ピロール系抗ウイルス剤、第4アンモニウム塩、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、チアゾリン系抗ウイルス剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系化合物、イソチアゾリン系化合物)等が挙げられる。
このような有機系抗ウイルス剤は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、富士ケミカル社製の「FC-V20S」、積水マテリアルソリューションズ社製の「ウィルテイカー」等を挙げることができる。
有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤は、前述した無機系抗ウイルス剤と前述した有機系抗ウイルス剤とが複合した抗ウイルス剤であり、公知の任意の有機・無機ハイブリッド系抗菌剤を用いることができる。
このような有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤の市販品としては、例えば、(株)日東製の「エヌ・クリアーAVPVC」、DIC社製の「WILMISH」等を挙げることができる。
抗ウイルス剤の配合比は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、抗ウイルス剤を5質量部~10質量部含むことが好ましい。塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗ウイルス剤を5質量部以上含むことによって、優れた抗ウイルス性能を発揮する成形体を製造することができる。塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗ウイルス剤を10質量部以下含むことによって、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する成形体を製造することができる。
抗ウイルス剤の配合比において、塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗ウイルス剤を6質量部以上含むことがより好ましく、7質量部以上含むことがさらに好ましい。また、塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗ウイルス剤を9質量部以下含むことがより好ましく、8量部以下含むことがさらに好ましい。
<Ca‐Zn系複合化合物>
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部含む。塩化ビニル樹脂100質量部に対するCa‐Zn系複合化合物が3.5質量部未満である場合、樹脂組成物の流動性が高くなり過ぎてしまい、成形体を形成することが困難になってしまう。また、塩化ビニル樹脂100質量部に対するCa‐Zn系複合化合物が4.5質量部超である場合、成形体の成形時において焦げ付きやブルームが生じてしまい、成形体を成形することが困難になってしまう。
Ca‐Zn系複合化合物の配合比において、塩化ビニル樹脂100質量部に対してCa‐Zn系複合化合物を3.6質量部以上含むことが好ましく、3.7質量部以上含むことがより好ましい。また、塩化ビニル樹脂100質量部に対してCa‐Zn系複合化合物を4.4質量部以下含むことが好ましく、4.3質量部以下含むことがより好ましい。
Ca‐Zn系複合化合物は、塩化ビニル樹脂組成物中において、安定剤として機能すると同時に、抗菌助剤としても機能する。そのため、塩化ビニル樹脂組成物にCa‐Zn系複合化合物を前述した特定の範囲の配合比で含ませることによって、抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量が少量(例えば、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、抗菌剤の量が0.1質量部~0.7質量部または抗ウイルス剤の量が5質量部~10質量部)であっても、成形体に優れた抗菌性または抗ウイルス性を発現させることができる。一方、Pb系安定剤(以下、「Pb系化合物」とも言う)、Sd系安定剤(以下、「Sd系化合物」とも言う)等も塩化ビニル樹脂用安定剤として従来的に使用されているが、これらをCa‐Zn系複合化合物の代替として塩化ビニル樹脂組成物に同じ特定の範囲の配合比で含ませた場合、同等量の抗菌剤または抗ウイルス剤を添加しても、成形体に十分な抗菌性または抗ウイルス性を発現させることはできない。
Ca‐Zn系複合化合物としては、例えば、Ca、Znおよび有機酸を含む有機酸Ca‐Zn複合塩等を挙げることができる。
有機酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、リノール酸、リシノール酸、オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、オレイン酸等の脂肪酸;亜リン酸エステル類;および、安息香酸等の芳香族系カルボン酸等を挙げることができる。Ca‐Zn系複合化合物において、これらの有機酸は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
Ca‐Zn系複合化合物は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、ADEKA社製の「RX-218」、大協化成工業社製の「LTX-9」、大協化成工業社製の「LTX-10」等が挙げられる。
<他の添加剤>
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物は、抗菌性能または抗ウイルス性能ならびに表面性、色調および耐衝撃性の本実施形態に関する効果を損なわない範囲において、必要に応じて、塩化ビニル樹脂組成物に一般的に使用される各種添加剤を含んでもよい。
例えば、添加剤として可塑剤を含んでもよい。可塑剤を含ませることによって、塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体(または成形品)の柔軟性を調整することができ、当該成形体の用途、形状等に応じた所望の柔軟性を付与することができる。可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、およびエポキシ系可塑剤等を挙げることができる。
さらに、他の添加剤としては、例えば、熱安定剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、帯電防止剤、難燃剤、耐候剤、界面活性剤、耐衝撃剤、発泡剤、各種充填材(例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク等)等を挙げることができる。
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物において、これらの添加剤は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部~10質量部程度含ませることができる。
このように、本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物は抗菌助剤としても機能するCa‐Zn系複合化合物を特定の範囲の配合比において含むため、抗菌剤または抗ウイルス剤の添加量が少量であっても、優れた抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮し、かつ、良好な表面性、色調および耐衝撃性を有する当該塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体を製造することができる。
<塩化ビニル樹脂組成物の調製方法(または製造方法)>
本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物の調製方法(または製造方法)は、特に制限されず、公知の任意の方法で製造することができる。
具体的には、例えば、本実施形態における塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と、抗菌剤または抗ウイルス剤と、前述した特定の範囲の配合比における抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物と、必要に応じた任意の添加剤とを、公知の任意の混練機等を使用して溶融混練して均一に混合することにより調製することができる。この際、加熱溶融温度170℃~180℃で溶融混練することが好ましい。なお、溶融混錬前に、予め各種原料をドライブレンドしておいてもよい。
2.成形体
本実施形態における成形体は、前述の実施形態における塩化ビニル樹脂組成物からなる。
本実施形態における成形体は、公知の任意の成形方法を適用することにより、所望の形状の成形体とすることができる。成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形等を挙げることができる。
成形体の形状は、特に限定されず、成形体の用途等に応じて適宜設計することができる。成形体の形状としては、例えば、平板状(シート状)、棒状、筒状、円環状、異形形状等を挙げることができる。
平板状の成形体は、例えば、公知の任意の押出成形機を用いて製造することができる。具体的には、例えば、まず、塩化ビニル樹脂組成物の各原料のドライブレンドの混合物を押出成形機のホッパーに投入し、スクリューを内蔵するシリンダー部において当該混合物の加熱溶融および均一混合を行う。それに続いて溶融した塩化ビニル樹脂組成物を金型(ダイ)へ供給し、押出成形することにより、平板状の成形体を製造する。押出成形機としては、例えば、公知の単軸または二軸のスクリューを備えた押出成形機等が挙げられる。なお、加熱溶融温度、加熱溶融時間、金型温度、成形時間、およびその他の押出成形の条件は、塩化ビニル樹脂組成物の具体的な組成、成形体のより具体的なサイズ、用途、所望する物性等に応じて適宜設定すればよい。
本実施形態における成形体は、塩化ビニル樹脂組成物の組成に抗ウイルス剤を含む場合、優れた抗ウイルス性を発揮する。具体的には、成形体は、後の実施例で詳細に述べるようにISO 21702:2019に準拠して測定される、前処理として耐水処理および/または耐光処理を施した後のインフルエンザウイルスおよび/またはネコカリシウイルスの抗ウイルス活性値が2.0以上であることが好ましい。
さらに、本実施形態における成形体は、塩化ビニル樹脂組成物の組成に抗菌剤を含む場合、優れた抗菌性を発揮する。具体的には、成形体は、後の実施例で詳細に述べるようにJIS Z 2801:2010(ISO 22196:2007)に準拠して測定される、黄色ブドウ球菌および/または大腸菌の抗菌活性値が2.0以上であることが好ましい。
また、本実施形態における成形体は、良好な表面性および色調を有する。具体的には、成形体は、後の実施例で詳細に述べるように、その表面において凹凸が全くまたはほとんど観察されず、かつ、その色調においても全くまたは一部しかくすみが見られないことが好ましい。加えて、本実施形態における成形体は、耐衝撃性に優れる。具体的には、成形体は、後の実施例で詳細に述べるようにJIS K 7111-1:2012に準拠して測定されるシャルピー衝撃強さが7(kJ/m)以上であることが好ましく、9(kJ/m)以上であることがより好ましい。
なお、本実施形態における成形体の具体例は、次の実施形態における成形品の具体例と同様であるため、後にまとめて述べる。
3.成形品
本実施形態における成形品は、基材と、当該基材の表面に形成された前述の実施形態における塩化ビニル樹脂組成物からなる表面層とを備える。
図1に、本実施形態における成形品の一例の概略断面図を示す。図1に示す例では、成形品1は、基材2と塩化ビニル樹脂組成物からなる表面層3とを備え、表面層3は基材2の表面に形成(または積層)されている。
基材2を構成する材料は、特に限定されず、成形品1の用途、所望する物性等に応じて適宜選択することができる。基材2を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂またはこれらの樹脂のうちの2種以上の組み合わせを含む樹脂組成物を挙げることができる。
基材2を構成する材料が樹脂組成物である場合、当該樹脂組成物は、成形品1の用途、所望する物性等に応じて、例えば、熱安定剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、帯電防止剤、難燃剤、耐候剤、界面活性剤、耐衝撃剤、発泡剤、各種充填材(例えば、炭酸カルシウム、クレー、タルク等)等を適切な量においてさらに含んでもよい。
基材2を構成する材料が樹脂組成物である場合、図1に示す成形品1は、例えば、基材2を構成する樹脂組成物と、表面層3を構成する前述の実施形態における塩化ビニル樹脂組成物とを共押出して積層させることによって製造することができる。具体的には、例えば、公知の任意の共押出機を用い、基材2を構成する樹脂組成物および表面層3を構成する前述の実施形態における塩化ビニル樹脂組成物を多層金型(ダイ)へ供給し、積層状態で押し出し、その後冷却等を施すことによって、積層体となった成形品1を製造することができる。
塩化ビニル樹脂組成物からなる表面層3の厚さは、特に限定されず、成形品1の用途、所望する物性、基材2の構成材料、基材2の厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、表面層3の厚さは、薄肉であっても良好な成形加工性、抗菌性能または抗ウイルス性能を発揮できる成形品1として様々な用途に好適に用いることができるとの観点から、0.1mm~3mmであることが好ましく、0.15mm~1mmであることがより好ましく、0.2mm~0.5mmであることがさらに好ましい。
基材2を構成する材料が樹脂組成物である場合、基材2の厚さも特に限定されず、成形品1の用途、所望する物性、基材2に含まれる樹脂の種類、表面層3の厚さ等に応じて適宜設定することができる。
また、表面層3は、基材2の表面全体に形成(または積層)されている必要はなく、基材2の表面の少なくとも一部分において形成されていてもよい。例えば、成形品1において、抗菌性または抗ウイルス性が必要とされる基材2の表面の一部において形成されていてもよい。具体的には、例えば、成形品1の表面において人が直接触れる可能性がある部分、成形品1の表面において菌やウイルス等が付着および/または繁殖し易い部分のみにおいて表面層3が形成されていてもよい。さらに、図1では、表面層3は平板状の基材2の一方の表面のみに形成されているが、表面層3は基材2のもう一方の表面にも形成されていてもよい。
なお、図1では、成形品1の形状が略平板状である場合を示しているが、前述の実施形態における成形体と同様にその形状は特に限定されず、例えば、棒状、筒状、円環状、異形形状等であってもよい。
前述の実施形態における成形体および本実施形態における成形品の具体例としては、限定されることはないが、内装下地材、外装材等の各種建材、家具、雑貨等における各種部材、OA機器等における各種家電部材、自動車、オートバイ、自転車等の車両における各種内外装材等を挙げることができる。これらのうち、薄肉であっても良好な抗菌性または抗ウイルス性に優れるとの観点から、前述の実施形態における成形体および本実施形態における成形品は、天井用見切縁材、天井もしくは壁の点検口の枠材、サッシ枠材、キッチン、浴室、洗面所もしくは脱衣室用の壁パネル、開口枠等の内装材として特に水回りで好適に用いられる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
本実施例では、抗菌剤または抗ウイルス剤の種類および/または配合比、ならびに、抗菌助剤の種類および/または配合比を変えて各種塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片を実際に作製し、その性能を評価した。
まず、各実施例および各比較例における塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片の作製方法について説明する。
[塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片の作製]
後の表1および表2にまとめて示す実施例1~実施例8および比較例1~比較例14の配合比における各原料を予めドライブレンドで混合し、この混合物を押出機(東洋精機製作所社製の「ラボプラストミル」)のホッパー中に投入した。その後、170℃のシリンダー温度で0.2時間溶融混練して押出して、0.2時間にわたり自然冷却して、厚さ4mmの平板状(シート状)の塩化ビニル樹脂組成物の成形体を得た。さらに、得られた平板状の成形体を、以下に述べる各試験に用いられる成形体の試験片のサイズになるように、切断機を用いて切り出した。
使用した原料の詳細は以下の通りである。
・塩化ビニル樹脂:信越化学工業社製、「塩ビレジン」、平均重合度1000
・抗菌剤(亜鉛系抗菌剤):東亞合成社製、「VZ100」
・抗菌剤(銀系抗菌剤):東亞合成社製、「AG1100」
・抗ウイルス剤(有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤):(株)日東製、「エヌ・クリアーAVPVC」
・抗菌助剤(Ca‐Zn系複合化合物):ADEKA社製、「RX-218」
・抗菌助剤(Pb系化合物):水澤化学社製、「OGF」
・抗菌助剤(Sn系化合物):ADEKA社製、「OT-9」
次に、作製した各実施例および各比較例における塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片の性能評価を行った。以下、各性能評価の詳細な試験方法を述べる。
[抗ウイルス性試験]
各実施例および各比較例における塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片のうち、抗ウイルス剤を含有する成形体の試験片に対して、本抗ウイルス性試験を行った。抗ウイルス性試験では、5cm×5cm×4mm(厚さ)のサイズの成形体の試験片を用い、ISO 21702:2019に準拠して、インフルエンザウイルスおよびネコカリシウイルスの抗ウイルス活性値を測定し、成形体の試験片の抗ウイルス性の評価を行った。なお、前処理として耐水処理を施した試験片および耐光処理を施した試験片の両方で評価を行った。評価の基準を以下に示す。
〇:抗ウイルス活性値が2.0以上
×:抗ウイルス活性値が2.0未満
[抗菌性試験]
各実施例および各比較例における塩化ビニル樹脂組成物の成形体の試験片のうち、抗菌剤を含有する成形体の試験片に対して、本抗菌性試験を行った。抗菌性試験では、5cm×5cm×4mm(厚さ)のサイズの成形体の試験片を用い、JIS Z 2801:2010(ISO 22196:2007)に準拠して、黄色ブドウ球菌および大腸菌の抗菌活性値を測定し、成形体の試験片の抗菌性の評価を行った。評価の基準を以下に示す。
〇:抗菌活性値が2.0以上
×:抗菌活性値が2.0未満
[表面性試験]
表面性試験では、10cm×10cm×4mm(厚さ)のサイズの成形体の試験片を用い、その表面を観察することによって、表面性(凹凸の有無)を評価した。評価の基準を以下に示す。
〇:表面に凹凸が見られない
△:表面の一部に凹凸が存在する
×:表面全体にわたり凹凸が存在する
[シャルピー衝撃試験]
シャルピー衝撃試験では、80cm×10cm×4mm(厚さ)のサイズの成形体の試験片(JIS K 7111-1:2012に規定のタイプ1試験片)を用い、JIS K 7111-1:2012に準拠して、測定温度を23℃とし、試験機としてJIS K 7111附属書2規定の試験機を使用して、シャルピー衝撃強さ(kJ/m)を測定した。評価の基準を以下に示す。
合格:シャルピー衝撃強さが7(kJ/m)以上
不合格:シャルピー衝撃強さが7(kJ/m)未満
[色調変化試験]
色調変化試験では、10cm×10cm×4mm(厚さ)のサイズの成形体の試験片を用い、その色調変化(くすみの有無)を観察することによって、色調を評価した。評価の基準を以下に示す。
〇:くすみが見られない
△:一部くすんでいる
×:全体にわたりくすんでいる
各実施例および各比較例における塩化ビニル樹脂組成物の各種原料の配合比、ならびに、当該作製した成形体の試験片の各試験の評価結果を以下の表1および表2にまとめて示す。なお、以下の表1および表2において、配合比の「‐」は、組成に含まれていないことを示す。
Figure 2023025484000001

上記表1の(※)は、酸化銀の生成により一定時間経過後に表面が変色するリスクがあることを示す。
Figure 2023025484000002
[考察]
上記表1の実施例1~実施例5および実施例8の結果から分かるように、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部の範囲内で含んでいる場合、抗菌剤の添加量が少量であっても(具体的には0.1質量部~0.7質量部)、成形体は優れた抗菌性能を発揮し、同時に、表面性試験、シャルピー衝撃試験および色調変化試験の結果も「×」または不合格に該当しなかった。
一方、上記表2の比較例1~比較例3および比較例5の結果から分かるように、Ca‐Zn系複合化合物の代替として従来的に塩化ビニル樹脂用安定剤として使用されているPb系化合物またはSd系化合物を同等量含ませて(具体的には4質量部)、かつ、抗菌剤も同等量添加した場合(具体的には、各々0.1質量部~0.7質量部または0.3質量部)、成形体は十分な抗菌性を発現しなかった。
なお、上記表2の比較例4、比較例6および比較例7の結果から分かるように、Ca‐Zn系複合化合物、Pb系化合物およびSd系化合物のいずれかを含んでも、抗菌剤を一切含まない場合は、表面性試験、シャルピー衝撃試験および色調変化試験の結果は良好であるが、抗菌性を発現しなかった。
さらに、上記表2の比較例8の結果から分かるように、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を実施例と同等量含んでいる場合であっても(具体的には4質量部)、抗菌剤が少な過ぎる場合(具体的には0.07質量部)、十分な抗菌性を発現することができなかった。また、上記表2の比較例9の結果から分かるように、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を実施例と同等量含んでいる場合であっても(具体的には4質量部)、抗菌剤が多過ぎる場合(具体的には1質量部)、表面性試験、シャルピー衝撃試験および色調変化試験において劣る結果となった。
また、実施例8の結果から、抗菌剤として銀系抗菌剤を用いた場合でも、亜鉛系抗菌剤を用いた場合と同様の本実施形態における効果を発揮できることが分かった。一方で、成形後、時間経過によって酸化銀が生成して表面が変色するリスクがあるため、抗菌剤としては亜鉛系抗菌剤を用いた方が好ましい。
上記表1の実施例6および実施例7の結果から分かるように、塩化ビニル樹脂100質量部に対して抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を4質量部含んでいる場合、抗ウイルス剤の添加量が少量であっても(具体的には5質量部~10質量部)、成形体は優れた抗ウイルス性能を発揮し、同時に、表面性試験、シャルピー衝撃試験および色調変化試験の結果も「×」または不合格に該当しなかった。
一方、上記表2の比較例10の結果から分かるように、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を同じ量で含んでいる場合であっても、抗ウイルス剤が少な過ぎる場合(具体的には4質量部)、十分な抗ウイルス性を発現することができなかった。また、上記表2の比較例11の結果から分かるように、抗菌助剤としてCa‐Zn系複合化合物を同じ量で含んでいる場合であっても、抗ウイルス剤が多過ぎる場合(具体的には11質量部)、シャルピー衝撃試験および色調変化試験において劣る結果となった。
上記表2の比較例12および比較例13の結果から分かるように、Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部の範囲外の量で含んでいる場合(具体的には5質量部または3質量部)、樹脂組成物の流動性が高くなり過ぎるか、または成形時に焦げ付きやブルームが生じるため、成形不可となる。
さらに、上記表2の比較例14の結果から分かるように、Ca‐Zn系複合化合物、Pb系化合物およびSd系化合物のいずれも含まない場合は、塩化ビニル樹脂組成物が安定しないため、成形不可となる。
今回開示された実施形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 成形品
2 基材
3 表面層

Claims (7)

  1. 塩化ビニル樹脂と、抗菌剤または抗ウイルス剤と、抗菌助剤としてのCa‐Zn系複合化合物とを含み、
    前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記Ca‐Zn系複合化合物を3.5質量部~4.5質量部含む、塩化ビニル樹脂組成物。
  2. 前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記抗菌剤を0.1質量部~0.7質量部含む、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  3. 前記抗菌剤が亜鉛系抗菌剤である、請求項1または2に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  4. 前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、前記抗ウイルス剤を5質量部~10質量部含む、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  5. 前記抗ウイルス剤が有機・無機ハイブリッド系抗ウイルス剤である、請求項1または4に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなる、成形体。
  7. 基材と、前記基材の表面に形成された請求項1~5のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなる表面層とを備える、成形品。
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