JP2023025383A - 歯列矯正装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】構造を極めて簡素化し、製造が容易で、歯列部の矯正を促進することが可能な歯列矯正装置を提供する。【解決手段】歯列矯正装置は、上顎歯列部3を覆うように装着される矯正装置本体1を備え、この矯正装置本体1により上顎歯列部3の個々の歯を矯正する歯列矯正装置である。矯正装置本体1の上顎歯列部3側の内面に部材配設部としての磁石配設部11が形成され、この磁石配設部11に上顎歯列部3を矯正するときに用いる補助調整部材としての磁石部材12が固定されている。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば歯列部を矯正するとき、その歯列部の移動を促進するための歯列矯正装置及びその製造方法に関する。
従来、歯列部を矯正するとき、その歯列部の移動を促進するシステムには、例えば特許文献1に記載されたものがある。このシステムは、制御回路及び電源に応答して、第1タイプの電流が、複数の舌側電極の各々と複数の頬側電極のうちの特定の1つとの間に生成され、又は第2タイプの電流が、複数の舌側電極の隣接するものの各々の間及び複数の頬側電極の隣接するものの間に生成され、各電流は、制御回路に応答して別個に制御されるように構成されている。
また、磁石を用いた歯列矯正装置には、例えば特許文献2に記載されたものがある。この歯列矯正装置は、弾性材料からなるスプリント部を歯面に装着するためのアタッチメントを設け、このアタッチメントが磁石と、この磁石を受けるためのキーパーとで構成されている。このように構成したことで、矯正の途中で歯列矯正装置を取り外すことができ、またアタッチメントが磁石を備えたことで、その磁力によってスプリント部の装着力を強くするようにしている。
しかしながら、上述した特許文献1に記載された従来のシステムでは、制御回路、電源、複数の舌側電極、及び複数の頬側電極が設けられていることから、構造が複雑化するとともに、制御も複雑になるという問題がある。
また、上述した特許文献2に記載された従来の歯列矯正装置では、磁石装着部が2本のバーとホルダからなり、このホルダが2本のバーの片側に固定されていることから、構造が複雑化するとともに、部品点数が多くなるという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、構造を極めて簡素化し、製造が容易で、歯列部の矯正を促進することが可能な歯列矯正装置及びその製造方法を提供することを課題としている。
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、歯列部を覆うように装着される矯正装置本体を備え、該矯正装置本体により前記歯列部の個々の歯を矯正する歯列矯正装置であって、前記矯正装置本体の前記歯列部側の内面に部材配設部が形成され、前記部材配設部に前記歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材が固定されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記補助調整部材に被係止部が形成される一方、該被係止部が前記矯正装置本体の部材配設部に設けられた係止部に係止されるように構成されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記被係止部は、前記補助調整部材の軸方向の所定位置に径方向に縮径するように形成された縮径部であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の構成に加え、前記補助調整部材が磁石であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記磁石は、前記歯列部の複数の歯根間部のそれぞれに対応する部位に設置されていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の構成に加え、前記歯列部を覆うように装着されて前記歯列部を矯正するマウスピースを有し、前記矯正装置本体は、前記マウスピースを覆うように被着及び取外し可能に構成されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、歯列部を覆うように装着される矯正装置本体により前記歯列部の個々の歯を矯正する歯科矯正具を製造する歯列矯正装置の製造方法であって、前記歯列矯正装置は、前記矯正装置本体の前記歯列部側の内面に部材配設部が形成され、前記部材配設部に前記歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材が固定されており、前記歯列矯正装置の製造方法は、前記歯列部の模型の所定位置に、前記歯列部を矯正するときに用いる前記補助調整部材を設置する補助調整部材設置工程と、前記歯列部の模型及び前記補助調整部材を矯正用シートで覆い、該矯正用シートを前記歯列部の模型及び前記補助調整部材にプレスする矯正用シートプレス工程と、前記矯正用シートプレス工程の後に、前記矯正用シートがプレスされることで前記部材配設部が形作られるとともに、該部材配設部に前記補助調整部材が固定された前記矯正用シートを前記模型から取り外す矯正用シート取外し工程と、を有することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の構成に加え、前記補助調整部材が磁石であって、前記補助調整部材設置工程において、前記磁石が前記歯列部の模型の所定位置に接着剤にて仮接着されることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記磁石には、軸方向の所定位置に径方向に縮径するように縮径部が形成され、前記矯正用シートプレス工程において、前記矯正用シートが前記縮径部に密着するように覆われることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、矯正装置本体の歯列部側の内面に部材配設部が形成され、この部材配設部に歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材が固定されているので、構造を極めて簡素化するとともに、歯列部の矯正を促進することが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、補助調整部材に被係止部が形成される一方、この被係止部が矯正装置本体の部材配設部に設けられた係止部に係止されるように構成されているので、矯正装置本体の部材配設部に補助調整部材を確実かつ強固に係止させることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、被係止部は、補助調整部材の軸方向の所定位置に径方向に縮径するように形成された縮径部であることから、縮径部を容易に形成することが可能となる。
また、請求項4に記載の発明によれば、補助調整部材を磁石としたことから、歯肉及び歯槽骨内の血行が良くなり、歯列部の矯正を一段と促進することが可能となる。
また、請求項5に記載の発明によれば、磁石は、歯列部の複数の歯根間部のそれぞれに対応する部位に設置されることにより、歯根間部に位置するそれぞれの歯肉に均等な磁力がかかることとなり、それぞれの歯肉及び歯槽骨内の血行を良くして、歯列部の移動を一段と促進することが可能となる。
また、請求項6に記載の発明によれば、歯列部を覆うように装着されて歯列部を矯正するマウスピースを有し、矯正装置本体は、マウスピースを覆うように被着及び取外し可能に構成されていることにより、マウスピースで歯列部を矯正する際に、歯列部の個々の歯を整列すべき方向への移動を一段と促進することが可能となる。
請求項7に記載の発明によれば、歯列部の模型の所定位置に、歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材を設置する補助調整部材設置工程と、歯列部の模型及び補助調整部材を矯正用シートで覆い、この矯正用シートを歯列部の模型及び補助調整部材にプレスする矯正用シートプレス工程と、この矯正用シートプレス工程の後に、矯正用シートがプレスされることで部材配設部が形作られるとともに、この部材配設部に補助調整部材が固定された矯正用シートを模型から取り外す矯正用シート取外し工程と、を有することから、構造を極めて簡素化し、歯列部の矯正を促進することが可能な歯列矯正装置を容易に製造することができる。
また、請求項8に記載の発明によれば、補助調整部材が磁石であって、補助調整部材設置工程において、磁石が歯列部の模型の所定位置に接着剤にて仮接着されることにより、歯列部の模型の所定位置に磁石を確実に設置することができる。
また、請求項9に記載の発明によれば、磁石には、軸方向の所定位置に径方向に縮径するように縮径部が形成され、矯正用シートプレス工程において、矯正用シートが縮径部に密着するように覆われることにより、矯正用シートに磁石を確実かつ強固に係止することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態の歯列矯正装置]
図1乃至図6は、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正装置を示す。
[第1実施形態の歯列矯正装置]
図1乃至図6は、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正装置を示す。
図1は、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正装置を示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係る歯列矯正装置を底面側から見た状態を示す斜視図である。図4は、第1実施形態に係る歯列矯正装置における磁石部材を示す拡大斜視図である。図5(a)は図4の磁石部材を示す拡大縦断面図、図5(b)は磁石部材の変形例を示す拡大縦断面図である。図6は、図3において歯列部に歯列矯正装置を装着した状態を示すA-A線拡大断面図である。
なお、以下の各実施形態では、歯列矯正具を口腔内に挿入し、上顎歯列部に装着する例について説明する。また、以下の各実施形態では、歯列矯正具を上顎歯列部に装着した状態で、その前歯側を前側、奥歯側を後側とし、舌側を内側、頬側を外側として説明する。ここで、上顎歯列部及び下顎歯列部は、それぞれ前歯、犬歯、及び奥歯を備える。前歯は、切歯であって、左右の中切歯、左右の側切歯を備える。奥歯は、臼歯であって、左右の第1、第2小臼歯、左右の第1~第3大臼歯を備える。
さらに、本実施形態の歯列矯正具1は、矯正装置本体を構成し、上顎歯列部3又は下顎歯列部に装着されて上顎歯列部3又は下顎歯列部を横方向に拡げるとともに、上顎歯列部3又は下顎歯列部の個々の歯を整列すべき方向に移動させ、あるいは移動させた歯を元に戻らないようにするものである。
すなわち、本実施形態の矯正とは、個々の歯を整列すべき方向に移動させて矯正すること以外に、矯正することによって移動させた歯を元に戻らないようにする保定のことを含むものとする。以下の各実施形態では、個々の歯を整列すべき方向に移動させて矯正する歯列矯正具1について説明する。
図1~図3に示すように、本実施形態の歯列矯正具1は、口腔内に挿入され、上顎歯列部3を覆うように装着される。歯列矯正具1は、上顎歯列部3に装着されて上顎歯列部3を横方向に拡げるとともに、上顎歯列部3の個々の歯を整列すべき方向に移動させる形状に成型した成型物(アライナー)である。
歯列矯正具1は、上顎歯列部3の全ての歯、すなわち上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6の歯冠部7(図6に示す)を覆って所定の形状を保持する硬度を有している。歯列矯正具1は、例えば複数異なる大きさのもの、あるいは異なる硬さのものを段階的に用意して、それらを定期的に交換することにより矯正治療を進めていくものである。
歯列矯正具1は、全体が弾性を有する樹脂材料で、例えば全体が1mmの均一な厚さに一体成形されている。上記樹脂材料には、例えばポリウレタン等のウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル樹脂等から選択して使用される。上記樹脂材料は、無色透明又は乳白色であることが望ましく、これにより口腔内に挿入した場合、上顎歯列部3に装着していることが目立たず、審美性に優れたものとなる。
歯列矯正具1は、口腔内の上顎歯列部3の全ての歯、すなわち上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6を覆って所定の形状を保持する硬度を有している。歯列矯正具1は、上顎歯列部3の歯列弓(アーチ)に沿った形状に形成されて前歯4、犬歯5及び奥歯6の咬合部としての歯冠部7を覆うとともに、歯肉8側に位置する歯肉部9まで延びている。すなわち、歯列矯正具1は、図6に示す上顎歯列部3の歯根部10及び図1に示す歯根間部10aに位置する歯肉8を覆うように装着されている。ここで、歯根間部10aとは、前歯4、犬歯5又は奥歯6の歯根部10と歯根部10との間の部分のことである。
本実施形態の歯列矯正具1は、上顎歯列部3に装着される側の内面であって、左右の頬側(外側)にそれぞれ円柱状に突出するように形成された部材配設部としての磁石配設部11が設けられている。これらの磁石配設部11は、図3に示すようにそれぞれ内側から円柱状に凹むように形成されている。これらの磁石配設部11は、上顎歯列部3に歯列矯正具1を装着したとき、左右の犬歯5と左右の奥歯6との間の歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位になるように配置される。これらの磁石配設部11内には、上顎歯列部3を矯正するときに用いる補助調整部材としての磁石部材12が埋設するように固定されている。
図4及び図5(a)に示すように、磁石部材12は、永久磁石13と、この永久磁石13の一側に固定された金属製のヨーク14と、永久磁石13の他側に接着されたワックス15とを備える。
永久磁石13は、高さ方向に対して扁平な樽形に形成され、その外周面全面にはポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン等の樹脂材料やセラミックスがコーティングされて被着部13aが設けられている。永久磁石13には、軸方向の所定位置である両側がそれぞれ径方向に対して縮径する被係止部としての縮径部13bが形成されている。具体的に、本実施形態の縮径部13bは、永久磁石13とヨーク14との間と、永久磁石13とワックス15との間にそれぞれ形成されている。永久磁石13は、上顎歯列部3に歯列矯正具1を装着したとき、歯肉8側がN極側になるように配置される一方、その反対側がS極となってヨーク14が固定されている。
この場合、ヨーク14は、磁気シールドの機能を有し、S極の磁力を頬側に達しないようにしている。ヨーク14は、円板状に形成され、径が永久磁石13の最も大径部分よりも小さく、かつ縮径部13bと略同じ径に形成されている。ヨーク14の永久磁石13に固定される側の反対側の外周縁がR面取りして形成されている。これにより、磁石部材12を歯列矯正具1の磁石配設部11内に固定した場合、ヨーク14の外周縁で樹脂製の歯列矯正具1を損傷させることがなくなる。
ワックス15は、永久磁石13の他側に被着部13aを介して接着されている。ワックス15は、永久磁石13の径よりも狭い範囲であって、所定の厚さを有して接着されている。このワックス15としては、例えばパラフィンワックス、ユーティリティワックス等が用いられる。
なお、永久磁石13は、軸方向の所定位置に径方向に対して縮径する縮径部13bが形成されていれば、上記のような扁平な樽形の形状に限らず、円柱状、半円柱状、楕円柱状、又は多角柱状に形成されたものでもよい。
永久磁石13には、例えばアルニコ磁石、フェライト磁石、希土類磁石等の他、ゴム磁石、塩化ビニル磁石、プラスチック磁石等の柔軟性を有する磁石が用いられる。また、永久磁石13は、歯根間部10aに位置する歯肉8及び歯槽骨の血行を良くして、上顎歯列部3の移動を促進する磁束密度に設定される。具体的に、本実施形態の永久磁石13は、その磁束密度が例えば100~300ミリテスラの磁石が用いられる。
また、図5(a)に示すヨーク14は、円板状に形成され、径が永久磁石13の縮径部13bと略同じ径に形成したが、これに限らず例えば図5(b)に示すようにヨーク14aが永久磁石13の上面から側面にかけて連続して覆うように形成するようにしてもよい。この場合でも、図5(a)と同様に縮径部13bが形成されるとともに、ヨーク14の永久磁石13に固定される側の反対側の外周縁がR面取りして形成されている。したがって、ヨーク14を図5(b)に示すように形成することで、磁気シールドの効果を一段と高めることができる。
なお、本実施形態では、歯列矯正具1における歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12を一体に設けた例について説明したが、これに限らず磁石部材12を歯列矯正具1に対して着脱可能に設けるようにしてもよい。
次に、本実施形態の歯列矯正具1の作用を説明する。
まず、歯列矯正具1には、磁石配設部11が形成され、この磁石配設部11内に磁石部材12が埋設するように固定されている。この場合、磁石部材12の永久磁石13に縮径部13bが形成され、この縮径部13bに磁石配設部11の一部に設けられた係止部1aが入り込むようにして磁石部材12が係止されている。これにより、歯列矯正具1の磁石配設部11に磁石部材12の永久磁石13を確実に係止させることができる。
そして、歯列矯正具1の使用に際して、歯列矯正具1が口腔内に挿入され、上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6の歯冠部7を覆うように装着される。歯列矯正具1は、個々の歯を整列すべき方向に徐々に移動させるようにしている。ここで、歯列矯正具1には、左右の犬歯5と左右の奥歯6との間の歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12が固定されていることから、磁石部材12の永久磁石13の磁力によって歯根間部10aに位置する歯肉8及び歯槽骨内の皮下組織の細胞内において新陳代謝が促進されて血行が良くなり、その結果、上顎歯列部3の左右の犬歯5又は左右の奥歯6の第1小臼歯の移動を促進することが可能となる。
このように本実施形態によれば、歯列矯正具1の上顎歯列部3の内面に磁石配設部11が形成され、この磁石配設部11に上顎歯列部3を矯正するときに用いる磁石部材12が固定されているので、構造を極めて簡素化するとともに、上顎歯列部3の矯正を促進することが可能となる。
また、本実施形態によれば、磁石部材12の永久磁石13に縮径部13bが形成される一方、この縮径部13bが歯列矯正具1の磁石配設部11に設けられた係止部1aに係止されるように構成されているので、接着剤を使用することなく、歯列矯正具1の磁石配設部11に磁石部材12を確実かつ強固に係止させることができる。
さらに、本実施形態によれば、縮径部13bは、永久磁石13の軸方向の所定位置に径方向に縮径するように形成されていることから、縮径部13bを容易に形成することが可能となる。
また、本実施形態において、歯列矯正具1に磁石部材12を着脱自在に設けた場合には、磁束密度の異なる磁石部材と逐次交換することが可能となる。
なお、本実施形態の歯列矯正具1は、上顎歯列部3に装着した例について説明したが、下顎歯列部に装着するようにしても同様の効果が得られる。
また、本実施形態の歯列矯正具1は、磁石部材12を頬側(外側)に設けた例について説明したが、舌側(内側)に設けるようにしてもよい。
[第1実施形態の歯列矯正装置の製造方法]
次に、本発明の第1実施形態の歯列矯正装置の製造方法について説明する。
[第1実施形態の歯列矯正装置の製造方法]
次に、本発明の第1実施形態の歯列矯正装置の製造方法について説明する。
図7は、本発明の第1実施形態に係る歯列矯正装置の製造方法を示す工程図である。図8は、第1実施形態に係る歯列矯正装置の製造方法において磁石設置前の状態を示す斜視図である。図9は、第1実施形態に係る歯列矯正装置の製造方法において磁石設置後の状態を示す斜視図である。図10は、第1実施形態に係る歯列矯正装置の製造方法においてアライナーシートプレス工程後の状態を示す斜視図である。
本実施形態の歯列矯正具1は、図7に示す一連の工程を経て製造される。まず、ステップP1の歯列部の模型作成工程では、上顎歯列部3の模型を作成する。具体的には、あらかじめ患者の上顎歯列部3の歯型をとり、図8に示すようにその歯型の形状の模型20を作成する。この模型20においては、上述した磁石部材12を設置する部分をあらかじめ厚さを厚くして平面状の傾斜部21を形成しておく。この傾斜部21は、リペア材又は歯科用シリコンパテ等によって形成される。なお、傾斜部21は、必ずしも傾斜しない平面に形成した場合でもよいが、磁石部材12の設置方向を望ましい方向に設置するためには、傾斜部21を形成することが好ましい。
次いで、ステップP2の磁石部材の設置工程では、ステップP1であらかじめ平面状に形成した傾斜部21上に図9に示すように磁石部材12を設置する。すなわち、平面状に形成した傾斜部21に磁石部材12をワックス15によって仮接着する。この場合、磁石部材12のヨーク14が頬側となり、磁石部材12の永久磁石13のN極が歯肉8側となるように仮接着する。なお、この仮接着の前に全体が0.1mmの厚さの分離シートを模型20に被せて図示しないプレス機によってプレスするようにしてもよい。このように0.1mmの厚さの分離シートをプレスすることにより、上顎歯列部3に対する装着感を調整することが可能となる。
そして、ステップP3のアライナーシートプレス工程では、図10に示すように磁石部材12が仮接着された上に矯正用シートとしてのアライナーシート23を被せて図示しないプレス機によってプレスする。このアライナーシート23は、上述した歯列矯正具1と同様の樹脂材料が用いられ、径が12cm程度で全体が均一な0.5~1mmの厚さの円形シートである。磁石部材12にアライナーシート23をプレスしたとき、永久磁石13に縮径部13bが形成されているため、その縮径部13bにアライナーシート23が入り込み、縮径部13bにアライナーシート23の係止部1aで密着するように覆われて磁石部材12が係止される。
ここで、アライナーシート23に磁石部材12を樹脂製の接着剤にて固定した場合には、その接着剤の厚さによって磁石部材12の磁力にばらつきが生じ、常に一定の磁力の歯列矯正具1を製造することができない。加えて、磁石部材12を樹脂製の接着剤にて固定した場合には、磁石部材12が剥離し易くなり、耐久性が低いという問題もある。
これに対し、本実施形態の製造方法では、磁石部材12にアライナーシート23をプレスしたとき、永久磁石13の縮径部13bにアライナーシート23が入り込み、縮径部13bにアライナーシート23が密着するように覆われて係止されるので、アライナーシート23に磁石部材12を固定するときに接着剤が不要になるので、常に一定の磁力の歯列矯正具1を製造することができ、磁石部材12を確実かつ強固に固定することができる。
次のステップP4のアライナーシートの取外し工程では、ステップP3でアライナーシート23がプレスされることでアライナーシート23に磁石配設部11が形作られるとともに、この磁石配設部11に磁石部材12が固定されたアライナーシート23を模型20から取り外した後に、磁石部材12からワックス15を取り除き、アライナーシート23を模型20の外周形状に沿って切り抜く。なお、ステップP4の工程において、これら順序は逆であってもよい。これらの工程を経て図2及び図3に示す完成状態となる。この完成状態では、磁石部材12の永久磁石13の縮径部13bの平面が歯肉8に被着部13aを介して接触することとなり、歯根間部10aに位置するそれぞれの歯肉8及び歯槽骨内の血行を良くし、上顎歯列部3の矯正を一段と促進することが可能となる。
このように本実施形態の歯列矯正装置の製造方法によれば、上顎歯列部3の模型20の所定位置に、上顎歯列部3を矯正するときに用いる磁石部材12を設置する磁石部材12の設置工程P2と、上顎歯列部3の模型20及び磁石部材12をアライナーシート23で覆い、このアライナーシート23を上顎歯列部3の模型20及び磁石部材12にプレスするアライナーシートプレス工程P3と、このアライナーシートプレス工程P3の後に、アライナーシート23がプレスされることで磁石配設部11が形作られるとともに、この磁石配設部11に磁石部材12が固定されたアライナーシート23を模型20から取り外すアライナーシート23の取外し工程P4と、を有することから、構造を極めて簡素化し、上顎歯列部3の矯正を促進することが可能な歯列矯正具1を容易に製造することができる。
また、本実施形態の歯列矯正装置の製造方法によれば、磁石部材12が上顎歯列部3の模型20の所定位置にワックス15にて仮接着されることにより、上顎歯列部3の模型20の所定位置に磁石部材12を確実に設置することができる。
また、本実施形態の歯列矯正装置の製造方法によれば、磁石部材12には、軸方向の所定位置に径方向に縮径するように縮径部13bが形成され、アライナーシートプレス工程P4において、アライナーシート23が縮径部13bに密着するように覆われることにより、アライナーシート23に磁石部材12を確実かつ強固に係止することができる。
[第2実施形態の歯列矯正装置]
図11及び図12は、本発明の第2実施形態を示す。
[第2実施形態の歯列矯正装置]
図11及び図12は、本発明の第2実施形態を示す。
図11は、本発明の第2実施形態に係る歯列矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す斜視図である。図12は、本発明の第2実施形態に係る歯列矯正装置を装着した状態を示す拡大縦断面図である。
なお、本実施形態では、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用について説明する。
図11及び図12に示すように、本実施形態は、マウスピース30に矯正装置本体としての歯列矯正具1が被着可能に設けられている。マウスピース30は、口腔内に挿入され、上顎歯列部3を覆うように装着されている。マウスピース30は、上顎歯列部3に装着されて上顎歯列部3を横方向に拡げるとともに、上顎歯列部3の個々の歯を整列すべき方向に移動させる形状に成型した成型物(アライナー)である。
マウスピース30は、透明なプラスチック製であり、上顎歯列部3の全ての歯、すなわち上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6の歯冠部7を覆って所定の形状を保持する硬度を有している。マウスピース30は、例えば複数異なる大きさのもの、あるいは異なる硬さのものを段階的に用意して、それらを定期的に交換することにより矯正治療を進めていくものである。
歯列矯正具1は、上顎歯列部3に装着されたマウスピース30の上からマウスピース30の上端よりも上方の歯肉8側に延びて上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6の歯冠部7を覆うように被着及び取外し可能に設けられている。歯列矯正具1のその他の構成は、前記第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態の歯列矯正具の作用について説明する。
まず、マウスピース30が口腔内に挿入され、上顎歯列部3を覆うように装着される。次いで、磁石部材12が埋設された歯列矯正具1が上顎歯列部3に装着されたマウスピース30の上からマウスピース30の上端よりも上方の歯肉8側に延びて上顎歯列部3の前歯4、犬歯5及び奥歯6の歯冠部7を覆うように被着される。
このようにして歯列矯正具1及びマウスピース30は、それぞれアライナーとして使用され、個々の歯を整列すべき方向に徐々に移動させるようにしている。ここで、歯列矯正具1には、歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12が埋設されていることから、磁石部材12の磁力によって歯根間部10aに位置する歯肉8及び歯槽骨内の皮下組織の細胞内において新陳代謝が促進されて血行が良くなり、その結果、上顎歯列部3の移動を促進することが可能となる。
このように本実施形態によれば、上顎歯列部3を覆うように装着されて上顎歯列部3を矯正するマウスピース30を有し、矯正装置本体1は、マウスピース30を覆うように被着及び取外し可能に構成されているので、マウスピース30及び歯列矯正具1で上顎歯列部3を矯正する一方、上顎歯列部3の移動を磁石部材12で一段と促進することが可能となる。
[第3実施形態の歯列矯正装置]
図13及び図14は、本発明の第3実施形態を示す。
[第3実施形態の歯列矯正装置]
図13及び図14は、本発明の第3実施形態を示す。
図13は、本発明の第3実施形態に係る歯列矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す下面図である。図14は、本発明の第3実施形態に係る歯列矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す斜視図である。
なお、本実施形態では、前記第1実施形態及び第2実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用について説明する。
図13及び図14に示すように、本実施形態の歯列矯正具1は、歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位にそれぞれ磁石部材12が設けられている。本実施形態では、磁石部材12が舌側(内側)に10個設けられ、これらの磁石部材12のそれぞれと対向する頬側(外側)に10個設けられている。具体的には、永久磁石12は、図13に示すように左右の前歯4及び犬歯5にそれぞれ6個設けられ、左右の奥歯6にそれぞれ4個設けられている。この場合、永久磁石12は、左右の前歯4、犬歯5及び奥歯6の全ての歯根間部10aに位置する歯肉8にそれぞれに対応する舌側(内側)及び頬側(外側)の部位に設けるようにしてもよい。
磁石部材12は、図14に示すように前歯4、犬歯5及び奥歯6の各歯頚ラインLに対する間隔Dが4mm以上歯根部10側に離間して配置されている。因みに、磁石部材12を前歯4、犬歯5及び奥歯6の各歯頚ラインLに対する間隔Dを4mm未満から徐々に接近させた場合には、歯肉8及び歯槽骨の血行を良くする効果が徐々に低下することとなる。一方、磁石部材12を前歯4、犬歯5及び奥歯5の各歯頚ラインLに対する間隔Dが歯根部10側に4mmから徐々に離間して歯根部10の根元に対応する部分に至る範囲に配置した場合には、血行を良くする効果が略同様に得られる。
このように本実施形態によれば、上顎歯列部3の歯根間部10aに位置する歯肉8を覆うように歯列矯正具1が装着され、この歯列矯正具1は、歯根部10に位置する歯肉8に対応する部位に永久磁石12が設けられているので、構造を極めて簡素化し、歯根間部10aに位置する歯肉8及び歯槽骨内の血行を良くして、上顎歯列部3の移動を促進することが可能となる。
さらに、本実施形態の歯列矯正具1において、磁石部材12が複数の歯根間部10aのそれぞれに対応する部位に設けられた場合には、複数の歯根間部10aに位置するそれぞれの歯肉8に均等な磁力がかかることとなり、歯根間部10aに位置するそれぞれの歯肉8及び歯槽骨内の血行を良くして、上顎歯列部3の移動を一段と促進することが可能となる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
[発明の他の実施形態]
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
[発明の他の実施形態]
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
上記各実施形態では、歯列矯正具1、歯列矯正具1及びマウスピース30を上顎歯列部3に装着した例について説明したが、これに限らず下顎歯列部に装着した場合は勿論のこと、上顎歯列部3及び下顎歯列部の双方に装着した場合にも適用可能であり、要するに上顎歯列部3及び下顎歯列部の少なくとも一方に装着した場合に適用可能である。
また、上記各実施形態では、歯列矯正具1又はマウスピース30の素材、形状については、口腔内に挿入することができるもので同様の機能を有するものであれば、適宜の素材で構成されていてもよい。
さらに、上記各実施形態において、歯列矯正具1、歯列矯正具1及びマウスピース30にそれぞれ拡大床を組み合わせて構成するようにしてもよい。このように構成すれば、歯肉8及び歯槽骨内の血行をさらに良くし、上顎歯列部3の矯正期間を一段と短縮化することが可能となる。
そして、上記各実施形態では、歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12を設けた例について説明したが、これに限らず歯根部10に位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12を設けるようにしてもよく、要するに、少なくとも歯根間部10aに位置する歯肉8に対応する部位に磁石部材12を設ければよい。
また、上記各実施形態では、補助調整部材として磁石部材12に適用した例について説明したが、これに限らず歯列を矯正するために用いる部材であれば、それ以外のものであってもよい。
1 歯列矯正具(矯正装置本体)
1a 係止部
3 上顎歯列部
4 前歯
5 犬歯
6 奥歯
7 歯冠部
8 歯肉
9 歯肉部
10 歯根部
10a 歯根間部
11 磁石配設部(部材配設部)
12 磁石部材(補助調整部材)
13 永久磁石
13a 被着部
13b 縮径部
14 ヨーク
15 ワックス
20 模型
21 傾斜部
23 アライナーシート(矯正用シート)
30 マウスピース
1a 係止部
3 上顎歯列部
4 前歯
5 犬歯
6 奥歯
7 歯冠部
8 歯肉
9 歯肉部
10 歯根部
10a 歯根間部
11 磁石配設部(部材配設部)
12 磁石部材(補助調整部材)
13 永久磁石
13a 被着部
13b 縮径部
14 ヨーク
15 ワックス
20 模型
21 傾斜部
23 アライナーシート(矯正用シート)
30 マウスピース
Claims (9)
- 歯列部を覆うように装着される矯正装置本体を備え、該矯正装置本体により前記歯列部の個々の歯を矯正する歯列矯正装置であって、
前記矯正装置本体の前記歯列部側の内面に部材配設部が形成され、
前記部材配設部に前記歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材が固定されていることを特徴とする歯列矯正装置。 - 前記補助調整部材に被係止部が形成される一方、該被係止部が前記矯正装置本体の部材配設部に設けられた係止部に係止されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯列矯正装置。
- 前記被係止部は、前記補助調整部材の軸方向の所定位置に径方向に縮径するように形成された縮径部であることを特徴とする請求項2に記載の歯列矯正装置。
- 前記補助調整部材が磁石であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の歯列矯正装置。
- 前記磁石は、前記歯列部の複数の歯根間部のそれぞれに対応する部位に設置されることを特徴とする請求項4に記載の歯列矯正装置。
- 前記歯列部を覆うように装着されて前記歯列部を矯正するマウスピースを有し、前記矯正装置本体は、前記マウスピースを覆うように被着及び取外し可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の歯列矯正装置。
- 歯列部を覆うように装着される矯正装置本体により前記歯列部の個々の歯を矯正する歯科矯正具を製造する歯列矯正装置の製造方法であって、
前記歯列矯正装置は、
前記矯正装置本体の前記歯列部側の内面に部材配設部が形成され、
前記部材配設部に前記歯列部を矯正するときに用いる補助調整部材が固定されており、
前記歯列矯正装置の製造方法は、
前記歯列部の模型の所定位置に、前記歯列部を矯正するときに用いる前記補助調整部材を設置する補助調整部材設置工程と、
前記歯列部の模型及び前記補助調整部材を矯正用シートで覆い、該矯正用シートを前記歯列部の模型及び前記補助調整部材にプレスする矯正用シートプレス工程と、
前記矯正用シートプレス工程の後に、前記矯正用シートがプレスされることで前記部材配設部が形作られるとともに、該部材配設部に前記補助調整部材が固定された前記矯正用シートを前記模型から取り外す矯正用シート取外し工程と、
を有することを特徴とする歯列矯正装置の製造方法。 - 前記補助調整部材が磁石であって、前記補助調整部材設置工程において、前記磁石が前記歯列部の模型の所定位置に接着剤にて仮接着されることを特徴とする請求項7に記載の歯列矯正装置の製造方法。
- 前記磁石には、軸方向の所定位置に径方向に縮径するように縮径部が形成され、前記矯正用シートプレス工程において、前記矯正用シートが前記縮径部に密着するように覆われることを特徴とする請求項8に記載の歯列矯正装置の製造方法。
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JP2021130583A JP2023025383A (ja) | 2021-08-10 | 2021-08-10 | 歯列矯正装置及びその製造方法 |
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