JP2023023552A - エレベーターの床構造体およびエレベーターの床構造体の製造方法 - Google Patents

エレベーターの床構造体およびエレベーターの床構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接着剤による接合強度を保持することが可能なエレベーターの床構造体を提供する。【解決手段】板材と、前記板材の一主面側に配置された補強部材と、前記板材と前記補強部材とを接合する接着層とを備え、前記接着層は、二液型アクリル系接着剤を硬化させた第1硬化領域と第2硬化領域とが交互に配置された構成を有し、前記第1硬化領域は、前記第2硬化領域よりも高濃度の有機過酸化物を添加剤として含有し、前記第2硬化領域は、前記第1硬化領域よりも高濃度の還元剤を添加剤として含有するエレベーターの床構造体である。【選択図】図2

Description

本発明は、エレベーターの床構造体およびエレベーターの床構造体の製造方法に関する。
エレベーターの床構造体に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「エレベータ用かご床は、床板、床板の上面に重なっている床敷物、及び床板の下面に互いに間隔を置いて設けられている複数の床梁を備え、床板には、複数の窪み部が設けられ、各窪み部では、床板の上面が窪み、床板の下面が突出しており、各窪み部のそれぞれと床敷物との間の空間には、接着剤が充填されており、各床梁は、床板の下面に接合されている接合部をそれぞれ有し、床板の厚さ方向に沿って見たとき、複数の窪み部が接合部の領域外に配置されている」と記載されている。
特許第6490300号公報
近年、床構造体のような安全性が重視される工業製品において、接着剤を用いた組立を行うケースが増加している。このような場合においては、接着剤による接合強度が保持されるように、接合部材の材質と接着剤の組成とを適切に組み合わせることが重要である。また、接着剤を用いた接合においては、接合面に対する接着剤の塗布状態が、接合強度に大きな影響を及ぼす。
そこで本発明は、接着剤による接合強度を保持することが可能なエレベーターの床構造体を提供すること、および接着剤の塗布状態の検査が容易でありながらも接合強度を保持することが可能なエレベーターの床構造体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、板材と、前記板材の一主面側に配置された補強部材と、前記板材と前記補強部材とを接合する接着層とを備え、前記接着層は、二液型アクリル系接着剤を硬化させた第1硬化領域と第2硬化領域とが交互に配置された構成を有し、前記第1硬化領域は、前記第2硬化領域よりも高濃度の有機過酸化物を添加剤として含有し、前記第2硬化領域は、前記第1硬化領域よりも高濃度の還元剤を添加剤として含有するエレベーターの床構造体である。
本発明によれば接着剤を用いた接合部の接合強度を保持することが可能なエレベーターの床構造体を提供すること、および接着剤の塗布状態の検査が容易でありながらも接合部の接合強度を保持することが可能なエレベーターの床構造体の製造方法を提供することができる。
第1実施形態に係るエレベーターの床構造体の概略斜視図である。 第1実施形態に係るエレベーターの床構造体の要部を説明するための断面図である。 第1実施形態に係るエレベーターの床構造体の製造方法(その1)を説明するための斜視図である。 第1実施形態に係るエレベーターの床構造体の製造方法(その2)を説明するための斜視図である。 第2実施形態に係るエレベーターの床構造体の概略斜視図である。 第3実施形態に係るエレベーターの床構造体の要部を説明するための断面図である。 第4実施形態に係るエレベーターの床構造体の要部を説明するための断面図である。 第5実施形態に係るエレベーターの床構造体の概略斜視部である。 実施形態の変形例を説明するための補強部材の断面形状を表す図である。
以下、本発明のエレベーターの床構造体およびエレベーターの床構造体の製造方法に関する各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
≪第1実施形態≫
<エレベーターの床構造体>
図1は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の概略斜視図である。また図2は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の要部を説明するための断面図である。これらの図に示すエレベーターの床構造体1(以下、単に床構造体1と記す)は、上面板材11、補強部材12、および上面板材11と補強部材12との間に挟持された接着層13を有する。上面板材11と補強部材12とは、接着層13を介して接合されている。以下、これらの各構成要素の詳細を説明する。
[上面板材11]
上面板材11は、エレベーターの床面を構成する平板状の部材であって、一主面側を接合面11aとし、この接合面11a側において複数の補強部材12によって支持されたことにより剛性を保持している。このような上面板材11は、剛性を有する材料で構成されている。剛性を有する材料は、例えば、亜鉛メッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、塗装鋼板、アルミニウム合金、繊維強化樹脂などが例示される。このうち特に、亜鉛メッキ鋼板は、剛性、意匠性、耐食性、コストなどのバランスが良く、床構造体1の上面板材11として好適である。
[補強部材12]
補強部材12は、上面板材11を支持するための長尺状の鋼材であって、複数の補強部材12によって上面板材11を接合面11a側から支持する。なお、図2は、1本の補強部材12の幅方向断面に相当する図となっている。複数の補強部材12は、平行に配置され、それぞれの補強部材12が接着層13を介して上面板材11の接合面11aに接合された状態となっている。
これらの補強部材12は、例えば図示したようなチャンネル鋼である。このチャンネル鋼は、長尺のウェブと、ウェブの幅方向の両側から同一方向に突出する2つのフランジとを有する。チャンネル鋼として構成された各補強部材12は、上面板材11に対してウェブを垂直とし、さらにウェブの両側から突出する2つのフランジを同一方向に向けた状態で配置されることとする。このように配置された各補強部材12は、一方のフランジの外側に向く面を接合面12aとし、この接合面12aにおいて接着層13を介して上面板材11の接合面11aに対して接合されている。
また各補強部材12は、上面板材11と同様の剛性を有する材料で構成されていることとする。各補強部材12は、上面板材11を構成する材料と同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。
[接着層13]
接着層13は、第1剤1310と第2剤1320との接着剤セットを用いた二液型アクリル系接着剤を硬化させた層である(図2参照)。特にこの接着層13は、二液型アクリル系接着剤を構成する第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と、第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とが、平面方向に交互に配置された構成となっている。例えば、第1硬化領域131と第2硬化領域132とは、補強部材12の延設方向に沿ったストライプ状に交互に配置されていることとするが、補強部材12の幅方向に沿ったストライプ状や、屈曲するストライプであってもよく、市松状であってもよい。
また第1硬化領域131と第2硬化領域132との境界には、第1剤1310と第2剤1320とが混合した状態で硬化した境界領域が存在するが、ここでの図示は省略した。次に、第1硬化領域131と第2硬化領域132を説明する。
-第1硬化領域131-
第1硬化領域131は、二液型アクリル系接着剤の第1剤1310が硬化した領域である。このような第1硬化領域131は、第1剤1310の構成成分を含有する。第1剤1310は、アクリルモノマーまたはその重合体を主成分とし、主要な添加剤として有機過酸化物を含む。第1剤1310を構成するアクリルモノマーは、例えばアクリル酸やアルキルアクリレートが例示され、これらのうちの1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。また第1剤1310を構成する有機過酸化物は、重合開始剤として用いられる成分であり、例えば、ハイドロパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等が例示される。これらの有機過酸化物は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また第1剤1310は、次に説明する第2剤1320に含有される還元剤を含有していてもよい。第1剤1310が還元剤を含有する場合、第1剤1310が含有する還元剤の量は、第2剤1320が含有する還元剤の量よりも少ないことする。さらに、第1剤1310は、以上の他にも、貯蔵安定性を向上させるための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するためのパラフィン類、接着強度の向上を図るためのフィラーを、添加剤として含有してよい。さらに、第1剤1310は、第1剤1310と第2剤1320とを、例えばカメラで得られた画像によって見分けるための蛍光剤を含有していることとする。以上のような第1剤1310が含有する材料は、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131にも含有される。
-第2硬化領域132-
第2硬化領域132は、二液型アクリル系接着剤の第2剤1320が硬化した領域である。このような第2硬化領域132は、第2剤1320の構成成分を含有する。第2剤1320は、アクリルモノマーまたはその重合体を主成分とし、主要な添加剤として還元剤を含む。第2剤1320を構成するアクリルモノマーは、第1剤1310のものと同様であり、同一であってもよいが異なるものであってもよい。還元剤は、例えば、第3級アミン、チオ尿素、チオ尿素誘導体、遷移金属塩等が例示される。
なお、上面板材11および補強部材12の少なくとも一方が、亜鉛メッキ鋼によって構成されている場合は、還元剤としてチオ尿素が好ましく用いられる。還元剤としてチオ尿素を用いることにより、硬化前の第2剤1320中に溶出した亜鉛イオンによる硬化阻害を防止することができ、硬化阻害を抑制しつつ、高い剛性と強度を保持することができる。
また第2剤1320は、先に説明した第1剤1310に含有される有機過酸化物を含有していてもよい。第2剤1320が有機過酸化物を含有する場合、第2剤1320が含有する有機過酸化物の量は、第1剤1310が含有する有機過酸化物の量よりも少ないことする。さらに、第2剤1320は、以上の他にも、貯蔵安定性を向上させるための重合禁止剤、酸素による重合阻害を防止するためのパラフィン類、接着強度の向上を図るためのフィラーを、添加剤として含有してよいことは第1剤1310と同様である。さらに、第2剤1320は、第2剤1320と第1剤1310とを、例えばカメラで得られた画像によって見分けるための蛍光剤を含有していることとする。以上のような第2剤1320が含有する材料は、第2剤1320が硬化した第2硬化領域132にも含有される。
<エレベーターの床構造体の製造方法(その1)>
図3は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法(その1)を説明するための斜視図である。この図に示すように、エレベーターの床構造体の製造においては、用意した各補強部材12に対して、二液型アクリル系接着剤を構成する未硬化の第1剤1310と第2剤1320とを交互にビード状に塗布する。
このような第1剤1310と第2剤1320の塗布は、例えば補強部材12の接合面12a上において、第1剤1310を吐出するノズルと、第2剤1320を吐出するノズルとを移動させることによって実施する。この際、第1剤1310と第2剤1320とを、補強部材12の延設方向に沿ってビード状に塗布することで、ノズルの移動経路を単純化することができる。なお、補強部材12の接合面12aとは、図1および図2を用いて説明した上面板材11に対して接合させる面である。
また、第1剤1310と第2剤1320の塗布においては、例えばカメラを用いた画像検査により、第1剤1310と第2剤1320とが接合面12aに確実に供給されていることを確認する。この検査は、接合面12aに対する第1剤1310と第2剤1320の塗布工程の最中に、または塗布工程の後に実施する。
このようにして、各補強部材12の接合面12aに第1剤1310および第2剤1320を塗布した後、図2に示したように、補強部材12の接合面12aに対して上面板材11の接合面11aを対向して配置する。そして、補強部材12と上面板材11との間に、第1剤1310および第2剤1320を挟持させ、第1剤1310および第2剤1320を介して、補強部材12と上面板材11とを圧着する。これにより、補強部材12の接合面12aと上面板材11の接合面11aとの間で、第1剤1310と第2剤1320とが押し潰されて広がり、第1剤1310と第2剤1320とが、それぞれの端縁において接触する。
なお、第1剤1310および第2剤1320の塗布においては、補強部材12と上面板材11とを圧着させた状態で、第1剤1310と第2剤1320とが押し潰されて接触する程度に、ビード状の幅およびピッチが調整されていることとする。
第1剤1310および第2剤1320は、これらの接触部から、主成分であるアクリルモノマーまたはその重合体の重合反応が進み、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と、第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とが形成される。また、第1剤1310と第2剤1320の接触部およびその近辺においては、第1剤1310と第2剤1320とが混合した状態で硬化した境界領域が形成される。そしてこのような第1硬化領域131と第2硬化領域132とを有する接着層13により、上面板材11と補強部材12とが接合され、図1および図2を用いて説明した床構造体1を得ることができる。
なお、以上説明した製造法においては、複数の補強部材12に対する第1剤1310および第2剤1320の塗布と、上面板材11に対する各補強部材12の圧着は、塗布した順に圧着を実施してもよいし、全ての補強部材12に対して塗布を実施した後に、圧着を実施してもよい。また、全ての補強部材12に対して、同時に塗布を実施してもよい。
<エレベーターの床構造体の製造方法(その2)>
図4は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法(その2)を説明するための斜視図である。この図に示すように、エレベーターの床構造体1の製造においては、用意した上面板材11の接合面11aに対して、二液型アクリル系接着剤を構成する未硬化の第1剤1310と第2剤1320とを塗布してもよい。上面板材11の接合面11aにおいて第1剤1310と第2剤1320を塗布する領域は、補強部材12を接合する各塗布領域であり、各塗布領域において第1剤1310と第2剤1320とを交互に、例えばビード状に塗布する。
このような第1剤1310と第2剤1320の塗布は、例えば上面板材11の接合面11a上において、第1剤1310を吐出するノズルと、第2剤1320を吐出するノズルとを移動させることによって実施する。この際、第1剤1310と第2剤1320とを、図1および図2を用いて説明した補強部材12との接合部に対応する各塗布領域の延設方向に沿ってビード状に塗布することで、ノズルの移動経路を単純化することができる。なお、上面板材11の接合面11aとは、補強部材12に対して接合させる面である。
また、第1剤1310と第2剤1320の塗布においては、例えばカメラを用いた画像検査により、第1剤1310と第2剤1320とが接合面11aに確実に供給されていることを確認することは、製造方法(その1)と同様である。
また、第1剤1310と第2剤1320の塗布以外は、図3を用いて説明した製造方法(その1)と同様に実施する。このような手順であっても、図1および図2を用いて説明した床構造体1を得ることができる。
<エレベーターの床構造体の製造方法(その3)>
なお、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法においては、図3を用いて説明した製造方法(その1)と、図4を用いて説明した製造方法(その2)とを組み合わせて実施することも可能である。例えば、上面板材11と補強部材12との両方に、二液型アクリル系接着剤を構成する未硬化の第1剤1310と第2剤1320とを交互に塗布してもよい。また、上面板材11および補強部材12の何れか一方に、第1剤1310を塗布し、何れか他方に第2剤1320を塗布してもよい。
いずれの場合であっても、補強部材12と上面板材11とを圧着させた状態で、第1剤1310と第2剤1320とが交互に配置され、補強部材12と上面板材11との間で押し潰されて接触するように、第1剤1310と第2剤1320とを塗布することは同様である。
<第1実施形態の効果>
第1実施形態の床構造体1は、有機過酸化物を重合開始剤として含有する第1剤1310と、還元剤を含有する第2剤1320とを接着剤セットとした二液型アクリル系接着剤とを用いて上面板材11と補強部材12とを接合させた構成である。このような第1剤1310と第2剤1320とを接着剤セットとした接着剤は、反応長さが大きく、十分に混合しなくても高い接合強度を得ることができる。このため、第1剤1310と第2剤1320とを別々に塗布し、上面板材11と補強部材12との圧着時に第1剤1310と第2剤1320とが端縁において接触して混合される程度であっても、接触箇所から重合反応が進む。
これにより、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とにより、上面板材11と補強部材12とを強固に接合することができる。
またこれにより、床構造体1の製造において実施する第1剤1310と第2剤1320との塗布状態の検査では、第1剤1310と第2剤1320とが、塗布されているか否か、すなわちノズルから吐出されているか否かを確認すればよく、検査精度が要求されることはない。このような検査は、第1剤1310と第2剤1320とに、それぞれを見分けるための蛍光剤を含有させたことにより、カメラを用いて容易に実施することが可能である。したがって、第1剤1310と第2剤1320の塗布状態の検査が、検査精度を要求されることがないために容易でありながらも、接合部の接合強度を保持することが可能な床構造体1を作成することが可能である。
≪第2実施形態≫
<エレベーターの床構造体>
図5は、第2実施形態に係るエレベーターの床構造体2の概略斜視図である。この図に示す第2実施形態の床構造体2が、図1および図2に示した第1実施形態の床構造体1と異なるところは、補強部材12を挟んで上面板材11と逆側に下面板材14を接合させてサンドイッチ構造としたところにあり、他の構成は同様である。したがって、ここでは補強部材12に対する下面板材14の接合構造を説明し、他の構成要素の重複する説明は省略する。
下面板材14は、エレベーターの床材を構成する平板状の部材であって、上面板材11との間に補強部材12を挟むように配置される。下面板材14は、補強部材12側に向く一主面を接合面14aとし、この接合面14aにおいて、接着層13’を介して補強部材12と接合されている。このような下面板材14は、上面板材11と同様の剛性を有する材料で構成されていることとする。下面板材14は、上面板材11または補強部材12を構成する材料と同一の材料で構成されていてもよいし、異なる材料によって構成されていてもよい。
また補強部材12と下面板材14との間に挟持された接着層13’は、上面板材11と補強部材12との間に挟持された接着層13と同様のものである。すなわち接着層13’は、二液型アクリル系接着剤を硬化させた層であって、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とが、平面方向に交互に配置された構成の層である(図2参照)。
<エレベーターの床構造体の製造方法>
第2実施形態に係るエレベーターの床構造体2の製造方法は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の補強部材12に対して、下面板材14を接合する工程を追加すればよい。補強部材12に対する下面板材14の接合は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法を適用すればよい。
また、補強部材12に対する上面板材11の接合と下面板材14の接合とは、どちらを先に実施してもよい。
<第2実施形態の効果>
以上のような第2実施形態の床構造体2は、上面板材11と下面板材14とで補強部材12を挟持したサンドイッチ構造として閉断面構造としたことにより、第1実施形態の効果に加えて、断面二次モーメントの向上によって剛性の向上を図ることが可能となる。
≪第3実施形態≫
<エレベーターの床構造体>
図6は、第3実施形態に係るエレベーターの床構造体3の要部を説明するための断面図である。図6に示す第3実施形態の床構造体3は、図1および図2を用いて説明した第1実施形態の床構造体1の変形例であって、接着層13aの構成のみが異なり、他の構成は同様である。したがって、ここでは接着層13aの構成を説明し、他の構成要素の重複する説明は省略する。
接着層13aは、二液型アクリル系接着剤を硬化させた層であって、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と、第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とが、平面方向に交互に配置された構成であるところは、第1実施形態と同様である。特にこの接着層13aは、端部に位置する硬化領域の幅が、他の部分に位置する硬化領域の幅よりも狭いところが特徴的である。
図6は、1本の補強部材12の幅方向断面に相当する図となっており、第1硬化領域131と第2硬化領域132のストライプ状の幅方向の断面を示している。図6に示した例においては、第1硬化領域131のうち、端部に配置されている第1硬化領域131aの幅が他よりも狭く、さらに第2硬化領域132のうち、端部に配置されている第2硬化領域132aの幅が他よりも狭い構成である。ただし、図示した例のように、第1硬化領域131と第2硬化領域132とがストライプ状に交互に配置されている場合、各ストライプの幅は中央部と両端部とで変更する必要はなく、同程度であってよい。
<エレベーターの床構造体の製造方法>
第3実施形態に係るエレベーターの床構造体3の製造は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法において、第1剤1310と第2剤1320とを塗布する際の塗布量の制御によって実施される。例えば、第1剤1310と第2剤1320とをビード状に交互に塗布する場合、最外部のビードの幅または高さの少なくとも一方が、内側のビードのよりも小さくなるように、ノズルからの第1剤1310および第2剤1320の吐出量を制御する。または、ノズルの移動速度を制御してもよい。
<第3実施形態の効果>
本第3実施形態の接着層13aは、端部に位置する第1硬化領域131aおよび第2硬化領域132aの幅が、他の部分に位置する硬化領域の幅よりも狭いことにより、端部においても第1剤1310および第2剤1320が確実に硬化した層となっている。
すなわち、上述した二液性アクリル系接着剤は、反応長さが大きく、第1剤1310と第2剤1320とが接触して反応することにより、その接触位置から硬化が開始される。このため、第1剤1310と第2剤1320とを交互に塗布した場合、中央部の第1剤1310および第2剤1320は、両隣との接触部から反応が開始される。これに対して、最外部においては、片側のみにおいてが第1剤1310と第2剤1320とが接触するため、最外部に配置されたが第1剤1310および第2剤1320は、片側のみから反応が開始されることになる。このため、接着層13aの端縁部は、反応性の悪化による硬化不良や臭気の発生部となる場合がある。
したがって、本第3実施形態の構成とすることにより、第1実施形態の効果に加えて、硬化不良や臭気の発生を抑制でき、また端部にわたって接合強度を確保することが可能になる効果を得ることができる。
なお、本第3実施形態は、他の実施形態と組み合わせ可能であって、組み合わせることにより第3実施形態の効果を発揮することができる。
≪第4実施形態≫
<エレベーターの床構造体>
図7は、第4実施形態に係るエレベーターの床構造体4の要部を説明するための断面図である。図7に示す第4実施形態の床構造体4は、図1および図2を用いて説明した第1実施形態の床構造体1の変形例であって、接着層13bの構成のみが異なり、他の構成は同様である。したがって、ここでは接着層13bの構成を説明し、他の構成要素の重複する説明は省略する。
接着層13bは、二液型アクリル系接着剤を硬化させた層であって、第1剤1310が硬化した第1硬化領域131と、第2剤1320が硬化した第2硬化領域132とが、平面方向に交互に配置された構成であるところは、第1実施形態と同様である。特にこの接着層13bは、端部に位置する硬化領域が、アクリルモノマーまたはその重合体を主成分として、主要な添加剤として有機過酸化物を含む第1剤1310を硬化させた第1硬化領域131としたところが特徴的である。
ただし、図示した例のように、第1硬化領域131と第2硬化領域132とがストライプ状に交互に配置されている場合、ストライプの端部に第2硬化領域132が露出していてもよい。
<エレベーターの床構造体の製造方法>
第4実施形態に係るエレベーターの床構造体4の製造は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法において、第1剤1310と第2剤1320とを塗布する際の塗布位置の制御によって実施される。例えば、第1剤1310と第2剤1320とをビード状に交互に塗布する場合、最外部のビードを第1剤1310のビードとすればよい。
<第4実施形態の効果>
本第4実施形態の接着層13bは、アクリルモノマーまたはその重合体を主成分として、主要な添加剤として有機過酸化物を含む第1剤1310を硬化させた第1硬化領域131を端部に配置したことにより、端部においても確実に硬化した層となっている。
すなわち、二液型アクリル系接着剤は、酸素雰囲気下では硬化阻害が発生する。このため、製造工程において第1剤1310と第2剤1320とを介して上面板材11と補強部材12とを圧着することで、接着層13bの中央部は酸素が遮断された状態となるが、端部は酸素に晒された状態となる。このため、接着層13bの端縁部は、硬化阻害による硬化不良や臭気の発生部となる場合がある。
しかしながら、有機過酸化物を含む第1剤1310は、還元剤を含む第2剤1320に比べて硬化反応性が良好である。このため、有機過酸化物を含む第1剤1310を端部に塗布することで、確実に硬化した第1硬化領域131で接着層13bの端部を構成することができる。したがって、本第4実施形態の構成とすることにより、第1実施形態の効果に加えて、硬化不良や臭気の発生を抑制でき、また端部にわたって接合強度を確保することが可能になる効果を得ることができる。
なお、本第4実施形態は、他の実施形態と組み合わせ可能であって、組み合わせることにより第4実施形態の効果を発揮することができる。
≪第5実施形態≫
<エレベーターの床構造体>
図8は、第5実施形態に係るエレベーターの床構造体5の概略斜視部である。図8に示す第5実施形態の床構造体5は、図1および図2を用いて説明した第1実施形態の床構造体1の変形例であって、上面板材11と各補強部材12との接合に、接着層13と共に、締結部材15を用いた構成であり、他の構成は同様である。したがって、ここでは締結部材15の構成を説明し、他の構成要素の重複する説明は省略する。
締結部材15は、例えば、リベットやボルトである。このような締結部材15を用いた上面板材11と補強部材12とのリベット締結やボルト締結は、全ての補強部材12に対して実施してもよいが、全ての補強部材12に対して実施する必要はない。例えば、図示したように、上面板材11の四隅に対応する部分において、締結部材15を用いた上面板材11と補強部材12とを締結することで、上面板材11を補強部材12に対してバランスよく圧着させることができる。
<エレベーターの床構造体の製造方法>
第5実施形態に係るエレベーターの床構造体5の製造は、第1実施形態に係るエレベーターの床構造体1の製造方法において、上面板材11と補強部材12とで、塗布した第1剤1310と第2剤1320とを挟持させた後に、締結部材15を用いた締結を実施すればよい。なお、必要に応じて、予め上面板材11および補強部材12に、締結用の締結穴を設けておいてもよい。
<第5実施形態の効果>
以上のような第5実施形態の床構造体5は、上面板材11と補強部材12との接合に、接着層13と共に締結部材15を用いたことにより、機械締結によって上面板材11と補強部材12とを、さらに強固に接合することができる。これにより、接着層13の層厚を薄くすることができ、接着に使用する第1剤および第2剤の量を削減することができ、コストの削減を図ることが可能である。
また、二液型アクリル系接着剤による接着接合では、第1剤および第2剤を介して上面板材11と補強部材12とを圧着してから、第1剤および第2剤が硬化して一定の接合強度を発揮するまでに所定の時間を必要とする。このため、上面板材11と補強部材12との接合体が、移動可能となるまでに時間を要することがある。したがって、上面板材11と補強部材12との接合に締結部材15を用いた機械締結を併用することにより、機械締結が仮止めとなり、上面板材11と補強部材12とを圧着した接合体が移動可能となるまでの時間を短縮することができる。この結果、床構造体5を用いたエレベーターの製造プロセス時間を短縮することができる。
さらに、接着層13は、粘弾性体であるため、接合部に継続して荷重が負荷され続けるとクリープ変形を起こし強度を保持できなくなる恐れがある。このため、接着剤による接着接合とともに、締結部材15を用いた機械締結を併用することで、機械締結部が長期間の荷重を担うため、接着層13のクリープ変形が抑制され、接合強度を長期にわたって維持することが可能になる。
以上より、本第5実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、使用する接着剤の量を削減することが可能であり、床構造体5を用いたエレベーターの製造プロセス時間を短縮でき、また接着層13のクリープ変形を抑制して接着層13による接合強度の長寿命化を図ることが可能である。
なお、本第5実施形態は、他の実施形態と組み合わせ可能であって、組み合わせることにより第5実施形態の効果を発揮することができる。
≪変形例≫
図9は、各実施形態の変形例を説明するための補強部材の断面形状を表す図であって、上述した各実施形態において用いられる補強部材の断面形状を示す図である。図9Aに示すように、補強部材は、先の各実施形態で例示したチャンネル鋼を用いることができる。
また図9Bに示すように、補強部材12は、リップ溝型鋼を用いることができる。リップ溝型鋼は、図9Aに示したチャンネル鋼と同様に、補強部材として用いることができる。リップ溝型鋼は、チャンネル鋼と比較して断面二次モーメントに優れる。このため、リップ溝型鋼を補強部材として用いることにより、床構造体の剛性を向上させる効果を得ることができる。
さらに図9Cに示すように、補強部材は、ハット型鋼を用いることができる。ハット型鋼は、長尺のウェブと、ウェブの幅方向の両側から同一方向に突出する2つのフランジとを有し、フランジの先端を外側に屈曲させた構成のものである。ハット型鋼を補強部材として用いる場合には、ウェブを上面板材と平行にしてフランジを上面板材に対向させ、フランジと上面板材との間に、各実施形態で説明した接着層を挟持させる。
このようなハット型鋼を補強部材として用いた場合には、図8を用いて説明したように、上面板材11と補強部材12とを機械締結する際に、上面板材11と補強部材12との積層部が、両側において露出した状態となっている。このため、締結作業が容易になるといった効果を得ることができる。
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1,2,3,4,5…床構造体
11…上面板材
12…補強部材
13,13’,13a,13b…接着層
14…下面板材
15…締結部材
131…第1硬化領域
131a…第1硬化領域(端部)
132…第2硬化領域
132a…第2硬化領域(端部)
1310…第1剤
1320…第2剤

Claims (15)

  1. 板材と、
    前記板材の一主面側に配置された補強部材と、
    前記板材と前記補強部材とを接合する接着層とを備え、
    前記接着層は、二液型アクリル系接着剤を硬化させた第1硬化領域と第2硬化領域とが交互に配置された構成を有し、
    前記第1硬化領域は、前記第2硬化領域よりも高濃度の有機過酸化物を添加剤として含有し、
    前記第2硬化領域は、前記第1硬化領域よりも高濃度の還元剤を添加剤として含有する
    エレベーターの床構造体。
  2. 前記第1硬化領域と前記第2硬化領域とは、前記板材と前記補強部材との間にストライプ状に配置されている
    請求項1に記載のエレベーターの床構造体。
  3. 前記第1硬化領域と前記第2硬化領域とは、前記補強部材の延設方向に沿ってストライプ状に配置されている
    請求項1または2に記載のエレベーターの床構造体。
  4. 前記補強部材は、2枚の前記板材の間に前記接着層を介して挟持されている
    請求項1~3のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  5. 前記板材および前記補強部材のうちの少なくとも一方が、亜鉛メッキ鋼によって構成され、
    前記接着層に含有される前記還元剤が、チオ尿素である
    請求項1~4のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  6. 前記第1硬化領域および前記第2硬化領域のうち、前記接着層の端部に配置された領域は、他の部分に配置された領域よりも狭い幅を有する
    請求項1~5のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  7. 前記接着層の端部は、前記第1硬化領域によって構成されている
    請求項1~6のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  8. 前記板材と前記補強部材とを機械締結する締結部材を有する
    請求項1~7のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  9. 前記補強部材は、長尺状の鋼材によって構成され、前記板材の一主面側に複数配列され、
    前記各補強部材と前記板材とが前記接着層によって接合されている
    請求項1~8のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体。
  10. 二液型アクリル系接着剤を構成する第1剤と第2剤とを用いて、板材と補強部材とを接合するエレベーターの床構造体の製造方法であって、
    前記第2剤よりも高濃度の有機過酸化物を含有する前記第1剤と、前記第1剤よりも高濃度の還元剤を含有する前記第2剤とを用意する工程と、
    前記第1剤と前記第2剤とが前記板材と前記補強部材との間において交互に配置されるように、前記板材および前記補強部材の少なくとも一方に前記第1剤と前記第2剤とを塗布する工程と、
    前記第1剤と前記第2剤とを挟持するように前記板材と前記補強部材とを圧着する工程とを実施する
    エレベーターの床構造体の製造方法。
  11. 前記第1剤と前記第2剤とを塗布する工程においては、前記板材または前記補強部材の一方に、前記第1剤と前記第2剤とを交互にビード状に塗布する
    請求項10に記載のエレベーターの床構造体の製造方法。
  12. 前記第1剤と前記第2剤とを塗布する工程においては、塗布領域の最外部において、他の部分よりも狭い幅となるように、前記第1剤と前記第2剤とを塗布する
    請求項10または11に記載のエレベーターの床構造体の製造方法。
  13. 前記第1剤と前記第2剤とを塗布する工程においては、塗布領域の最外部に前記第1剤を塗布する
    請求項10~12のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体の製造方法。
  14. 前記板材と前記補強部材とを圧着する工程の後に、
    前記板材と前記補強部材とを、締結部材によって機械締結する工程を実施する
    請求項10~13のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体の製造方法。
  15. 前記板材と前記補強部材とを圧着する工程においては、前記板材と前記補強部材とで前記第1剤と前記第2剤とを押し潰して接触させることで、前記第1剤を硬化させた第1硬化領域と、前記第2剤を硬化させた第2硬化領域とを有する接着層を形成する
    請求項10~14のうちの何れか1項に記載のエレベーターの床構造体の製造方法。
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