JP2023022666A - 吹付工法 - Google Patents
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Abstract
【課題】極初期の強度発現性が高い吹付施工ができる吹付工法の提供。【解決手段】セメントを含むベースコンクリートに急結材料を添加・混合した後、施工対象物に吹付けを行う吹付工法において、前記ベースコンクリートが減水剤を含み、かつ、前記急結材料がアルカリ金属の炭酸塩を含み、前記急結材料の添加の前に、ベースコンクリートに対し石膏類を含む急結助剤を添加する、吹付工法。【選択図】図1
Description
本発明は、吹付工法に関する。
トンネル、採掘抗、地下空間等において、掘削面の崩壊防止、採掘時又は掘削後の地山補強の観点から、吹付コンクリートによる施工が行われている。吹付コンクリートは、その急結性によって施工対象物への付着性を担保し、施工対象物の補強に寄与している。
吹付コンクリートには、急結性付与のために急結成分が混和されており、なかでも、カルシウムアルミネート、アルミン酸ナトリウム等を有効成分とする粉体急結剤は、強力な急結性を付与することができ、高い強度を得ることもできる。吹付コンクリートの一般的な施工法である湿式吹付工法では、例えば、少なくともセメント、水及び骨材を秤量・混合してベースコンクリートを作製し、アジテーター車等を介した上で、施工時に吹付装置にポンプ圧送する。吹付装置内では別送の粉体又は液体の急結剤を圧送中のベースコンクリートに添加し、吹付装置の吹付ノズル内で混合を進めて吹付コンクリートを形成し、これをノズル端孔から吹付ける。この吹付装置内の急結成分が水と接する地点(接水地点)から吹付ノズル端の吐出孔までを移動する間に、混合がなされて吹付コンクリートが形成される。混合に使われる距離は通常は数十cm~数mの距離であり、その移動時間が混合時間になる。一般に、この距離が長いほど混合が進み、混合性が高まり、組織的にも性状的にもより均一なコンクリートを得易くなる。
このような吹付コンクリートを得るために、ベースコンクリートに混和される粉体状の急結材は、一般には、前述した急結成分に、諸性状を調整するための諸成分が加えられたものである。例えば、従来の代表的な粉体急結剤には、化学成分としてのCaO含有量を多くしたカルシウムアルミネートに、硬化促進のための石膏を配合し、これらに初期強度発現性を高めるアルミン酸ナトリウムや凝結促進のための炭酸ナトリウム等が添加されている(例えば、特許文献1~4参照)。また、ベースコンクリートにも、前述のセメント、水及び骨材のほかに、長期にわたる強度の底上げのための石膏、強度低下に繋がる水量の抑制のための減水剤等が、必要に応じ添加されている(例えば、特許文献4)。
ところで、近年、吹付コンクリートの施工場所によっては、吹付から10~15分という極初期の強度発現性が更に要求されるようになってきている。このため、高い強度発現性を示す粉体急結材によるだけでなく、施工手順によっても強度発現性を高めることができれば、急結材と施工手順との相乗効果を得ることができると考えられる。
したがって、本発明は、極初期の強度発現性が高い吹付施工ができる吹付工法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題について鋭意検討した結果、ベースコンクリートに減水剤、急結材料にアルカリ金属の炭酸塩を含有させることに加え、ベースコンクリートに急結材料を添加する前に、石膏を含む急結助剤を、ベースコンクリートや急結材料中に必要に応じ含有されている石膏とは別に、ベースコンクリートに添加することによって、極初期の強度発現性に優れる吹付工法となることを見出した。
本発明は、セメントを含むベースコンクリートに急結材料を添加・混合した後、施工対象物に吹付けを行う吹付工法において、前記ベースコンクリートが減水剤を含み、かつ、前記急結材料がアルカリ金属の炭酸塩を含み、前記急結材料の添加の前に、ベースコンクリートに対し石膏類を含む急結助剤を添加する、吹付工法を提供するものである。
本発明によれば、極初期の強度発現性が高い吹付施工ができる吹付工法を提供することができる。
[吹付材料]
吹付材料(吹付コンクリート)は、ベースコンクリート、急結材料及び急結助剤を含む。
吹付材料(吹付コンクリート)は、ベースコンクリート、急結材料及び急結助剤を含む。
・ベースコンクリート
ベースコンクリートはセメントを含む。セメントは、ポルトランドセメントが好ましく、ポルトランドセメントは何れの種類のものでもよく、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の各種ポルトランドセメントが挙げられる。セメントとしては、例えば高炉セメント、フライアッシュセメント等のポルトランドセメントを含む混合セメントも使用できる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。ポルトランドセメントを使用する場合の粒度は特に限定されず、例えば、JIS規格(JIS R 5210:2019)の2500cm2/g以上のものが挙げられる。
ベースコンクリートはセメントを含む。セメントは、ポルトランドセメントが好ましく、ポルトランドセメントは何れの種類のものでもよく、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の各種ポルトランドセメントが挙げられる。セメントとしては、例えば高炉セメント、フライアッシュセメント等のポルトランドセメントを含む混合セメントも使用できる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。ポルトランドセメントを使用する場合の粒度は特に限定されず、例えば、JIS規格(JIS R 5210:2019)の2500cm2/g以上のものが挙げられる。
ベースコンクリートは減水剤を含む。減水剤は、分散剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤、流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤、アクリル系減水剤が挙げられる。これらの中では、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。減水剤の含有量は、水量を抑制しながらも流動性を確保しやすいという観点から、例えば、セメント100質量部に対して、固形分換算で0.01~1質量部であることが好ましく、0.05~0.5質量部であることがより好ましく、0.1~0.3質量部であることが更に好ましい。
ベースコンクリートには細骨材、粗骨材等の骨材を含むことができる。細骨材は、モルタルやコンクリートに使用できる細骨材であれば特に限定されない。粗骨材はコンクリートに使用できる粗骨材であれば特に限定されない。細骨材、粗骨材とも、所定の骨材強度が確保し易く、他の含有成分との比重差が小さく材料分離が生じ難い観点から、表乾密度が2.3~2.9g/cm3の骨材を使用することが好ましい。このような骨材の具体例としては、細骨材は、珪砂、石灰石砂等の天然骨材、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕砂などが挙げられ、粗骨材は、珪石、石灰石、安山岩、砂岩、玄武岩等の砕石や砂利が挙げられる。骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
ベースコンクリート中の骨材の含有量は特に限定されるものではないが、施工時におけるコンクリートの圧送性に優れやすいという観点から、セメント含有量100質量部に対し、細骨材及び粗骨材の合計が300~570質量部であることが好ましく、380~550質量部であることがより好ましく、420~520質量部であることが更に好ましい。細骨材及び粗骨材を併用する場合、細骨材の質量割合(全骨材中の細骨材の質量割合)は54~69質量%であることが好ましく、55~65質量%であることがより好ましく、56~63質量%であることが更に好ましい。
ベースコンクリートは、上記以外の成分も、本発明の効果を阻害しない範囲で含有することができる。含有可能な成分として、石膏類、増粘剤、短繊維、ポゾラン反応性物質等が挙げられる。
ベースコンクリートは、使用する目的、場所等の要因に応じて水の量を適宜調整することができる。水の含有量は、セメント100質量部に対して35~55質量部であることが好ましく、40~50質量部であることがより好ましく、42~48質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、極初期における強度発現性に優れる傾向となる。
・急結材料
急結材料としては、粉体であってもよく、液体であってもよいが、本発明においては、極初期における強度発現性の観点から、アルカリ金属の炭酸塩を含有することが必要である。粉体急結材料としては、アルカリ金属の炭酸塩以外に、例えば、カルシウムアルミネート、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の硫酸塩及び硫酸アルミニウムを含むものが挙げられる。液体急結材料としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩以外に硫酸アルミニウムを主成分として含むものが挙げられ、市販の液体急結材料を用いることもできる。
急結材料としては、粉体であってもよく、液体であってもよいが、本発明においては、極初期における強度発現性の観点から、アルカリ金属の炭酸塩を含有することが必要である。粉体急結材料としては、アルカリ金属の炭酸塩以外に、例えば、カルシウムアルミネート、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の硫酸塩及び硫酸アルミニウムを含むものが挙げられる。液体急結材料としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩以外に硫酸アルミニウムを主成分として含むものが挙げられ、市販の液体急結材料を用いることもできる。
アルカリ金属の炭酸塩は、特に限定されるものではなく、いずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、なかでもナトリウムが好ましい。アルカリ金属の炭酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ金属の炭酸塩の粒度は特に限定されず、例えば、ブレーン比表面積で概ね3000~6500cm2/gで最大粒径1mm以下の粉体の粉体を用いることができる。アルカリ金属の炭酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で1~10質量部であることが好ましく、1.5~9質量部であることがより好ましく、2~8質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属の炭酸塩の含有量が上記範囲内であれば、極初期の強度発現性が更に向上する。
カルシウムアルミネートは、CaOとAl2O3を主要化学成分とする無機水和活性物質であり、CaOとAl2O3の含有モル比(CaO/Al2O3)が1.8~2.7であることが好ましく、1.9~2.65であることが好ましく、2.0~2.6であることがより好ましい。CaOとAl2O3の含有モル比が上記範囲内であれば、急結性と施工性の両立がしやすくなる。カルシウムアルミネートには、原料由来のCaOとAl2O3以外の不純物等の異成分も、その存在形態にかかわらず、本発明の効果を阻害させない範囲で含んでもよい。
カルシウムアルミネートは、結晶質、非晶質、それらの混合物のいずれも用いることができる。カルシウムアルミネートは、より優れた急結性が得られやすいという観点から、非晶質化の度合いであるガラス化率が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。カルシウムアルミネートの粉末度は特に制限されないが、コンクリートへの急結材料に使用したときに適度な反応活性が得られやすいことから、混和対象となるベースコンクリート中のセメントと同程度かそれ以上の粉末度であることが好ましく、例えば、ブレーン比表面積3000~6500cm2/gの粉末度が挙げられる。
カルシウムアルミネートは、例えば、CaO源となる原料及びAl2O3源となる原料を、目的とする化学成分としてのCaOとAl2O3の含有モル比が得られるように配合した原料混合物を、溶融するまで加熱することで得られる。また、製造時の加熱後の冷却過程の違いにより、冷却後のカルシウムアルミネートの構造状態に様々な差異が生じるため、冷却速度等の冷却条件に応じて、非晶質化の度合であるガラス化率を調整できる。
カルシウムアルミネートの含有率は、急結材料全質量を基準として、60~85質量%であることが好ましく、65~83質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることが更に好ましい。カルシウムアルミネートの含有率が上記範囲内であれば、急結性及び混合性を両立しやすい。
アルカリ金属の硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、中でもナトリウムが好ましい。アルカリ金属の硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ金属の硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で4~16質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましく、6~14質量部であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、急結性及び強度発現性に優れやすい。
アルカリ土類金属の硫酸塩は、特に限定されるものではなくいずれのものも使用することができ、反応性に優れることから無水物であることが好ましい。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、中でもカルシウムが好ましい。アルカリ土類金属の硫酸塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。アルカリ土類金属の硫酸塩の粒径や粒度も特に制限されるものではなく、例えば、ブレーン比表面積が4000~8500cm2/g程度のものが挙げられる。アルカリ土類金属の硫酸塩の含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で10~35質量部であることが好ましく、11~30質量部であることがより好ましく、12~25質量部であることが更に好ましい。アルカリ土類金属の硫酸塩の含有量が上記範囲内であれば、長期の強度発現性に優れやすい。
急結材料中におけるアルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩の質量比([アルカリ土類金属の硫酸塩の質量]/[アルカリ金属の硫酸塩の質量])は、無水物換算で1.1~2.5であることが好ましく、1.2~2.4であることがより好ましく、1.3~2.35であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩の質量比が上記範囲内であれば、急結性、混合性、長期の強度発現性が得られやすい。
硫酸アルミニウムはいずれの形態でもよく、例えば、16水和物、無水物等が挙げられ、中でも16水和物が好ましい。硫酸アルミニウムの含有量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無水物換算で0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~7質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。硫酸アルミニウムの含有量が上記範囲内であれば、低温環境下で急結性を高めた場合であっても長期の強度発現性を確保しやすい。
急結材料中におけるアルカリ金属の硫酸塩及び硫酸アルミニウムの質量比([硫酸アルミニウムの質量]/[アルカリ金属の硫酸塩の質量])は、無水物換算で0.05~2であることが好ましく、0.1~1.8であることがより好ましく、0.2~1.5であることが更に好ましい。アルカリ金属の硫酸塩及び硫酸アルミニウムの質量比が上記範囲内であれば、急結性、混合性、及び強度発現性が得られやすい。
急結材料は、上記の各成分を混合して製造される。混合方法は特に制限されるものではなく、例えば、傾動ミキサ、パン型ミキサ、2軸ミキサ、グラウトミキサ、ホバートミキサ、オムニミキサ等の汎用的なミキサを用いることができる。
ベースコンクリートに添加する急結材料の量は、セメント100質量部に対し、5~15質量部であることが好ましく、6~14質量部であることがより好ましく、7~13質量部であることが更に好ましい。急結材料の添加量が上記範囲内であれば、急結性及び混合性を両立しやすい。
・急結助剤
本発明において用いられる急結助剤は、石膏類を含むものである。石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられるが、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。石膏類の粉末度は、極初期の強度発現をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3500~18000cm2/gであることが好ましく、5000~15000cm2/gであることがより好ましく、5500~14000cm2/gであることが更に好ましく、7000~12000cm2/gであることが特に好ましい。
本発明において用いられる急結助剤は、石膏類を含むものである。石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられるが、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。石膏類の粉末度は、極初期の強度発現をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3500~18000cm2/gであることが好ましく、5000~15000cm2/gであることがより好ましく、5500~14000cm2/gであることが更に好ましく、7000~12000cm2/gであることが特に好ましい。
急結助剤には、石膏類以外の成分も、本発明の効果を阻害しない範囲で含有することができる。含有可能な成分として、アルカリ金属の炭酸塩、水等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩としては上述したものが挙げられ、中でも炭酸ナトリウムが好ましい。急結助剤として石膏類以外の成分を含有する場合、急結助剤の固形分100質量部に対し、石膏類が55~98質量部であることが好ましく、65~90質量部であることがより好ましく、75~85質量部であることが更に好ましい。
ベースコンクリートに添加する急結助剤の量は、セメント100質量部に対し、固形分として、5~20質量部であることが好ましく、6~18質量部であることがより好ましく、7~15質量部であることが更に好ましい。急結助剤の添加量が上記範囲内であれば、極初期から長期にわたる強度発現性を一層高めることができる。
[吹付工法]
本発明の吹付工法は、セメント及び減水剤を含むベースコンクリートに対し、石膏類を含む急結助剤を添加した後、アルカリ金属の炭酸塩を含む急結材料を添加・混合して、施工対象物に吹付けを行うものである。すなわち、従来、ベースコンクリートや急結材料に必要に応じて含有させている石膏類とは別に、石膏類を含む急結助剤を、ベースコンクリートに急結材料を添加する前に添加すること、及びベースコンクリートに減水剤、急結材料にアルカリ金属の炭酸塩の含有を必須とすることを特徴とする。本発明の吹付工法によれば、極初期の強度発現性に優れた吹付施工を行うことができる。そのため、通常のトンネル壁面や斜面への吹き付けだけでなく、水が多い場所等の付着性が悪く早期の急結性が求められる環境下における施工にも好適に適用することができる。
本発明の吹付工法は、セメント及び減水剤を含むベースコンクリートに対し、石膏類を含む急結助剤を添加した後、アルカリ金属の炭酸塩を含む急結材料を添加・混合して、施工対象物に吹付けを行うものである。すなわち、従来、ベースコンクリートや急結材料に必要に応じて含有させている石膏類とは別に、石膏類を含む急結助剤を、ベースコンクリートに急結材料を添加する前に添加すること、及びベースコンクリートに減水剤、急結材料にアルカリ金属の炭酸塩の含有を必須とすることを特徴とする。本発明の吹付工法によれば、極初期の強度発現性に優れた吹付施工を行うことができる。そのため、通常のトンネル壁面や斜面への吹き付けだけでなく、水が多い場所等の付着性が悪く早期の急結性が求められる環境下における施工にも好適に適用することができる。
[吹付装置]
本発明の吹付工法は、以下に例を示す吹付装置を用いて行うことができる。以下、図面を適宜参照しながら吹付装置の一実施形態について説明する。各図は模式図であり、各構成要素の大きさ等は図面に示されたものに限定されるものではない。
本発明の吹付工法は、以下に例を示す吹付装置を用いて行うことができる。以下、図面を適宜参照しながら吹付装置の一実施形態について説明する。各図は模式図であり、各構成要素の大きさ等は図面に示されたものに限定されるものではない。
図1(a)及び(b)は、吹付装置の一実施形態を示す模式図である。本実施形態の吹付装置10は、セメントを含むベースコンクリートを圧送するための圧送管1と、空気供給部2と、急結材料を供給する急結材料供給部3と、吹付ノズル4とを備えており、圧送管1の側部に、圧送方向に対して順に空気供給部2及び急結材料供給部3が配置され、さらに、空気供給部2の側部、及び/又は空気供給部2と急結材料供給部3との間における圧送管1の側部に、急結助剤を添加するための急結助剤添加部5を少なくとも一つ備える。
圧送管1は耐圧管であれば特に限定されず、金属製の耐圧管であってもよく、耐圧ホースであってもよく、これらの複合体であってもよい。圧送管1の長さは、施工箇所までの距離に応じて適宜調整することができる。圧送管1の内径は特に限定されず、例えば5~13cmとすることができる。圧送管1は、セメントを含むベースコンクリートをアジテーター車、モルタル撹拌機等のコンクリート材料供給機からベースコンクリートを受け取り、空気供給部2から供給される空気によりベースコンクリートを圧送する。
空気供給部2は、空気を圧送できるものであればよく、エアーコンプレッサー等が挙げられる。空気供給部で供給する空気の量を調整することで吹付材料の吐出圧を制御することができる。吹付材料とは、ベースコンクリート、急結材料及び急結助剤を含むものである。空気供給部2の設置位置は、吹き付ける際の作業性がより一層向上するという観点から、吹付ノズルの4の先端から6~18mであることが好ましく、8~15mであることがより好ましい。
急結材料供給部3は、急結材料を圧送するものであり、急結材料の形状によって好適なものを選択することができる。急結材料が粉体やスラリー状である場合にはエアーコンプレッサー等を用いることができ、液体の場合にはシャワーリング、ウォーターリング、O-リング等と呼ばれる環の中心方向に液体が供給される環状部材を用いることができる。急結材料供給部3の設置位置は、ベースコンクリート、急結材料及び急結助剤が十分に混合されやすいという観点から、吹付ノズルの先端から0.5~5mであることが好ましく、0.8~4.5mであることがより好ましく、1~3mであることが更に好ましい。
吹付ノズル4は通常吹付等に用いられるものであれば特に限定されない。吹付ノズル4の長さは、10~50cmであることが好ましく、15~40cmであることがより好ましく、20~35cmであることが更に好ましい。吹付ノズル4の長さが上記範囲であれば、吐出範囲が更に制御しやすく、発生する粉塵量も一層低減することができる。
急結助剤供給部5は、急結助剤をエアーコンプレッサー等で圧送するものである。急結助剤は、粉体であってもよく、スラリー状であってもよい。急結助剤供給部5は、図1(a)のように空気供給部2に連結されていてもよく、図1(b)のように空気供給部2と急結助剤供給部3との間の圧送管1に連結されていてもよく、図1(a)及び(b)の構成を組み合わせて空気供給部2と圧送管1の両方に、それぞれ急結助剤供給部5を連結してもよい。このような吹付装置を用いることにより、急結助剤をあらかじめベースコンクリートに添加することなく吹付過程で添加することで極初期の強度発現性が向上するとともに、ベースコンクリートのフレッシュ性状に影響を与えないことから減水剤の使用を抑えることができる。
急結助剤供給部5の設置位置は、ベースコンクリート及び急結助剤が十分に混合されやすいという観点から、急結助剤添加部から急結材料供給部までの長さが、3~18mであることが好ましく、4~15mであることがより好ましく、4~12mであることが更に好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例は、特記しない限り、20±1℃の環境下で行った。
実施例1~3、比較例1~3
[材料]
カルシウムアルミネート:CaO/Al2O3が2.5、ブレーン比表面積5400cm2/g、ガラス化率95質量%
硫酸ナトリウム試薬(無水芒硝)
硫酸カルシウム試薬(無水石膏)
硫酸アルミニウム試薬(16水和物)
炭酸ナトリウム試薬
急結助剤:無水石膏、ブレーン比表面積11000cm2/g
セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3200cm2/g、密度3.15g/cm3
細骨材:石灰石細骨材(表乾密度;2.65g/cm3、中心粒径;0.6mm)
粗骨材:砕石(表乾密度;2.74g/cm3、粒径5~15mm)
減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
[材料]
カルシウムアルミネート:CaO/Al2O3が2.5、ブレーン比表面積5400cm2/g、ガラス化率95質量%
硫酸ナトリウム試薬(無水芒硝)
硫酸カルシウム試薬(無水石膏)
硫酸アルミニウム試薬(16水和物)
炭酸ナトリウム試薬
急結助剤:無水石膏、ブレーン比表面積11000cm2/g
セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3200cm2/g、密度3.15g/cm3
細骨材:石灰石細骨材(表乾密度;2.65g/cm3、中心粒径;0.6mm)
粗骨材:砕石(表乾密度;2.74g/cm3、粒径5~15mm)
減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
[ベースコンクリートの作製]
セメント100質量部に対し、細骨材260質量部、粗骨材180質量部、水45質量部、表1に示す量の減水剤をコンクリートミキサで2分間混合し、ベースコンクリートを作製した。なお、比較例1~3については、上記各材料に加え、急結助剤を表1に示す割合で混合(内添)してベースコンクリートを作製した。
[急結材料の作製]
カルシウムアルミネート100質量部に対し、硫酸アルミニウム2.7質量部、硫酸ナトリウム10.8質量部、硫酸カルシウム20質量部、炭酸ナトリウム2.7質量部となるように配合設計し、これらをヘンシェルミキサーで混合して急結材料を作製した。
セメント100質量部に対し、細骨材260質量部、粗骨材180質量部、水45質量部、表1に示す量の減水剤をコンクリートミキサで2分間混合し、ベースコンクリートを作製した。なお、比較例1~3については、上記各材料に加え、急結助剤を表1に示す割合で混合(内添)してベースコンクリートを作製した。
[急結材料の作製]
カルシウムアルミネート100質量部に対し、硫酸アルミニウム2.7質量部、硫酸ナトリウム10.8質量部、硫酸カルシウム20質量部、炭酸ナトリウム2.7質量部となるように配合設計し、これらをヘンシェルミキサーで混合して急結材料を作製した。
[吹付コンクリートの作製]
ベースコンクリートを混練後直ちに供給用タンクに入れ、そこから長さ約10m、内径6cmの樹脂製ホースを介して吹付装置へポンプ圧送した。吹付装置は、ベースコンクリートが圧送される内径2インチの圧送管と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに空気を供給添加するための円筒状側管(空気供給部)と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに添加物(急結材料)を供給添加するための円筒状側管(急結材料供給部)と、吹付コンクリートを吹き付ける内径(先端孔径)2インチの噴射用ノズルとを基本構成とする市販品である。
急結材料供給部である側管は、圧送管本管と噴射用ノズルとの間に鋼製ト字状管(三方管)を介すことで形成させた。ト字状管の直線上に位置する二方の管口に圧送管本管と噴射用ノズルがそれぞれ接続され、残りの管口に、別送される急結材料の供給管が接続される構造とした。ト字状管内でのベースコンクリートへの急結材料の添加位置(ベースコンクリートと急結材料の合流地点)から噴射用ノズル孔端までの距離の間に、ベースコンクリートと急結材料の混合がなされ、その距離(以下、混合距離と称す)は2mとした。また、空気供給部にト字状管を介して、急結助剤供給部を接続した。急結助剤供給部から急結材料供給部までの長さは6mとした。
急結材料は圧搾空気により所定量を空気圧送することで、吹付装置内で圧送中のベースコンクリートに添加される。添加されたコンクリートは所定の混合距離を進む間に混合され、吹付コンクリートが作製される。急結材料の添加量は表1に示すとおりである。ここで、実施例1~3については、急結助剤を表1に示す割合で急結助剤供給部から添加(外添)した。
ベースコンクリートを混練後直ちに供給用タンクに入れ、そこから長さ約10m、内径6cmの樹脂製ホースを介して吹付装置へポンプ圧送した。吹付装置は、ベースコンクリートが圧送される内径2インチの圧送管と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに空気を供給添加するための円筒状側管(空気供給部)と、圧送管の側面に約30度の傾斜角で連通するベースコンクリートに添加物(急結材料)を供給添加するための円筒状側管(急結材料供給部)と、吹付コンクリートを吹き付ける内径(先端孔径)2インチの噴射用ノズルとを基本構成とする市販品である。
急結材料供給部である側管は、圧送管本管と噴射用ノズルとの間に鋼製ト字状管(三方管)を介すことで形成させた。ト字状管の直線上に位置する二方の管口に圧送管本管と噴射用ノズルがそれぞれ接続され、残りの管口に、別送される急結材料の供給管が接続される構造とした。ト字状管内でのベースコンクリートへの急結材料の添加位置(ベースコンクリートと急結材料の合流地点)から噴射用ノズル孔端までの距離の間に、ベースコンクリートと急結材料の混合がなされ、その距離(以下、混合距離と称す)は2mとした。また、空気供給部にト字状管を介して、急結助剤供給部を接続した。急結助剤供給部から急結材料供給部までの長さは6mとした。
急結材料は圧搾空気により所定量を空気圧送することで、吹付装置内で圧送中のベースコンクリートに添加される。添加されたコンクリートは所定の混合距離を進む間に混合され、吹付コンクリートが作製される。急結材料の添加量は表1に示すとおりである。ここで、実施例1~3については、急結助剤を表1に示す割合で急結助剤供給部から添加(外添)した。
[吹付コンクリートの強度発現性の評価]
前記吹付装置を用いて、吹付コンクリートを内寸30×40×20cmの成形用型枠内に吹き付け、型枠内を満たすようにした。これを20℃(±1℃)の恒温庫に入れ、所定時間経過後、型枠内の硬化コンクリートからコアドリルによって直径5cm、高さ10cmの円柱状供試体を採取し、材齢28日にした供試体を得た。この材齢28日供試体の一軸圧縮強度をアムスラー式圧縮強度試験機で測定した。
また、土木学会規準JSCE-G561に規定するプルアウト試験用型枠と埋込具を使用し、同様に作製した吹付コンクリートを、JSCE-G561に準拠したプルアウト試験に供した。当該試験により材齢15分及び3時間の吹付コンクリートの圧縮強度を測定した。各供試体の強度測定の結果を表1に示す。
前記吹付装置を用いて、吹付コンクリートを内寸30×40×20cmの成形用型枠内に吹き付け、型枠内を満たすようにした。これを20℃(±1℃)の恒温庫に入れ、所定時間経過後、型枠内の硬化コンクリートからコアドリルによって直径5cm、高さ10cmの円柱状供試体を採取し、材齢28日にした供試体を得た。この材齢28日供試体の一軸圧縮強度をアムスラー式圧縮強度試験機で測定した。
また、土木学会規準JSCE-G561に規定するプルアウト試験用型枠と埋込具を使用し、同様に作製した吹付コンクリートを、JSCE-G561に準拠したプルアウト試験に供した。当該試験により材齢15分及び3時間の吹付コンクリートの圧縮強度を測定した。各供試体の強度測定の結果を表1に示す。
実施例1a~3a(急結性の評価)
前述のベースコンクリートの配合において、それぞれ含有する粗骨材と細骨材の合計含有量に相当する量を全て細骨材の含有量にし、粗骨材を含まず、また他の成分とその含有量は変更せずに、モルタル配合に変更したベースモルタルをベースコンクリートと同様の手順で作製した。得られたベースモルタルに対し、まず急結助剤を表2に示す割合で添加混合した後、急結材料を表2に示す割合で添加し、高速ミキサで5秒間混合し、モルタル混練物を作製した。
急結材料添加から、30秒経過後及び60秒経過後のモルタル混練物のプロクター貫入抵抗値を測定し、急結性を評価した。プロクター貫入抵抗の測定方法は、土木学会コンクリート標準示方書「吹付コンクリート用急結剤品質規格」附属書「急結剤を添加したモルタルの貫入抵抗による瞬結時間測定方法」に準拠し、断面積0.125cm2のプロクター針を使用した。この貫入抵抗値の測定結果を表2に示す。また、表中「>16(N/mm2)」の記載はプロクター針の打込みはできたが、今回の使用機材の測定限界(最大16N/mm2)を超えたものである。
前述のベースコンクリートの配合において、それぞれ含有する粗骨材と細骨材の合計含有量に相当する量を全て細骨材の含有量にし、粗骨材を含まず、また他の成分とその含有量は変更せずに、モルタル配合に変更したベースモルタルをベースコンクリートと同様の手順で作製した。得られたベースモルタルに対し、まず急結助剤を表2に示す割合で添加混合した後、急結材料を表2に示す割合で添加し、高速ミキサで5秒間混合し、モルタル混練物を作製した。
急結材料添加から、30秒経過後及び60秒経過後のモルタル混練物のプロクター貫入抵抗値を測定し、急結性を評価した。プロクター貫入抵抗の測定方法は、土木学会コンクリート標準示方書「吹付コンクリート用急結剤品質規格」附属書「急結剤を添加したモルタルの貫入抵抗による瞬結時間測定方法」に準拠し、断面積0.125cm2のプロクター針を使用した。この貫入抵抗値の測定結果を表2に示す。また、表中「>16(N/mm2)」の記載はプロクター針の打込みはできたが、今回の使用機材の測定限界(最大16N/mm2)を超えたものである。
本発明によれば、吹付コンクリートは十分な急結性を示すとともに、材齢15分という極初期の強度発現性が向上するとともに長期においても十分な強度発現性を維持した。
1 圧送管
2 空気供給部
3 急結材料供給部
4 吹付ノズル
5 急結助剤添加部
10 吹付装置
2 空気供給部
3 急結材料供給部
4 吹付ノズル
5 急結助剤添加部
10 吹付装置
Claims (4)
- セメントを含むベースコンクリートに急結材料を添加・混合した後、施工対象物に吹付けを行う吹付工法において、前記ベースコンクリートが減水剤を含み、かつ、前記急結材料がアルカリ金属の炭酸塩を含み、前記急結材料の添加の前に、ベースコンクリートに対し石膏類を含む急結助剤を添加する、吹付工法。
- ベースコンクリートを圧送するための圧送管(1)と、
該圧送管(1)の側部に、圧送方向に対して順に配置された、空気供給部(2)及び急結材料を供給するための急結材料供給部(3)と、
該圧送管(1)の末端部に、吹付ノズル(4)を備え、
前記空気供給部(2)の側部、及び/又は前記空気供給部(2)と前記急結材料供給部(3)との間における前記圧送管(1)の側部に、急結助剤を添加するための急結助剤添加部(5)を少なくとも一つ備える吹付装置(10)を用いて行う、請求項1に記載の吹付工法。 - 前記急結助剤添加部(5)から前記急結材料供給部(3)までの長さが3~18mである、請求項2に記載の吹付工法。
- 前記急結助剤の添加量が、前記セメント100質量部に対し、5~20質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の吹付工法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2021127662A JP2023022666A (ja) | 2021-08-03 | 2021-08-03 | 吹付工法 |
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2021
- 2021-08-03 JP JP2021127662A patent/JP2023022666A/ja active Pending
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