JP2023020832A - 断熱シート、断熱シートの製造方法及び組電池 - Google Patents

断熱シート、断熱シートの製造方法及び組電池 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂層の剥離を抑え、断熱材成分の脱落を抑制し、熱伝導率が低く、且つ、難燃性を有する断熱シート、断熱シートの製造方法、及び上記断熱シートを有する組電池を提供する。【解決手段】無機粒子41を含有する断熱材2と、前記断熱材2の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂皮膜1と、を有する断熱シート10。【選択図】図2

Description

本発明は、断熱シート及びその製造方法、並びに該断熱シートを用いた組電池に関する。
従来、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる断熱シートが用いられている。
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられているが、電池の内部短絡や過充電などが原因で1つの電池セルに熱暴走が生じた場合(すなわち「異常時」の場合)、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こることで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
そこで、リチウムイオン二次電池のような蓄電装置において、電池セル間に配置される断熱材が種々検討されている。
例えば特許文献1には、電池セル間に配置され得る断熱材として、無機断熱材料と、前記無機断熱材料の表面上に配置されたポリマーコーティング層とを有する絶縁体が開示されており、ポリマーコーティング層を有することにより、無機断熱材料中に含まれる無機粒子材料の成分脱落を防止できる旨が記載されている。
また、特許文献2には、樹脂及び膨張性黒鉛を有し、その厚さが10μm~3mmである層を表面に有する断熱材料が開示されている。
特表2019-508632号公報 特開2020-2979号公報
しかしながら、特許文献1に記載の絶縁体では、加工時の収縮差による反りや、通常使用温度域での収縮膨張差によって、無機断熱材料からポリマーコーティング層が剥離する懸念があった。
また、特許文献2に記載の断熱材料では、表面層に膨張率の高い黒鉛を配合しているため、バッテリーの熱暴走時に耐火性が不十分となる懸念があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、樹脂層の剥離を抑え、断熱材成分の脱落を抑制し、熱伝導率が低く、且つ、難燃性を有する断熱シート及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記断熱シートを有する組電池を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、断熱シートに係る下記〔1〕の構成により達成される。
〔1〕 無機粒子を含有する断熱材と、
前記断熱材の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂皮膜と、を有する断熱シート。
また、断熱シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の〔2〕~〔13〕に関する。
〔2〕 前記樹脂皮膜の平均厚みは1~95μmである、〔1〕に記載の断熱シート。
〔3〕 前記樹脂皮膜の厚みは、0を超え100μm未満である、〔1〕又は〔2〕に記載の断熱シート。
〔4〕 前記樹脂皮膜は、前記断熱材の表面形状に沿って不規則に湾曲している、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の断熱シート。
〔5〕 前記樹脂皮膜は複数の孔を有する、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の断熱シート。
〔6〕 前記孔が、前記樹脂皮膜の全面に分散して配置された、〔5〕に記載の断熱シート。
〔7〕 前記樹脂皮膜側の面のデジタルマイクロスコープ画像観察により算出した、樹脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B)が、7/3~99/1である、〔5〕又は〔6〕に記載の断熱シート。
〔8〕 前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の断熱シート。
〔9〕 前記断熱材は、さらに、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする、〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の断熱シート。
〔10〕 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、〔9〕に記載の断熱シート。
〔11〕 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、〔9〕に記載の断熱シート。
〔12〕 前記無機粒子が、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、〔9〕に記載の断熱シート。
〔13〕 複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される、〔1〕~〔12〕のいずれか一つに記載の断熱シート。
また、本発明の上記目的は、断熱シートの製造方法に係る下記〔14〕の構成により達成される。
〔14〕 〔1〕~〔13〕のいずれか1つに記載の断熱シートの製造方法であって、
前記無機粒子を含む断熱材用材料をシート状に成形する工程と、
スクリーン印刷法又はスプレーコート印刷法により、前記シート状の断熱材の表面に樹脂皮膜形成用組成物を塗布し、前記樹脂皮膜を形成する工程と、を有する、断熱シートの製造方法。
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記〔15〕の構成により達成される。
〔15〕 複数の電池セルと、〔13〕に記載の断熱シートと、を有し、該複数の電池セルが直列または並列に接続された組電池。
本発明によれば、樹脂層の剥離を抑え、断熱材成分の脱落を抑制し、熱伝導率が低く、且つ、難燃性を有する断熱シート及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、樹脂層の剥離を抑え、断熱材成分の脱落を抑制し、熱伝導率が低く、且つ、難燃性を有する断熱シートを含む組電池を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る断熱シートを模式的に示した平面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る断熱シートを模式的に示した断面図である。 図3は、本発明の実施形態に係る断熱シートの断面SEM(走査型電子顕微鏡)画像である。 図4は、本発明の実施形態に係る断熱シートにおける樹脂皮膜の平均厚みの測定方法を説明するための模式図である。 図5は、2種の無機粒子を含有する断熱材を使用した断熱シートを模式的に示した断面図である。 図6は、本発明の実施形態に係る断熱シートを適用した組電池の例を模式的に示す断面図である。 図7は、実施例1の断熱シートの表面をデジタルマイクロスコープにより撮影した図面代用写真である。 図8は、本発明の実施例における測定方法を説明するための模式図である。 図9は、本発明の実施例における測定方法を説明するための模式図である。
本発明者らは、樹脂層の剥離を抑え、断熱材成分の脱落を抑制し、熱伝導率が低く、且つ、難燃性を有する断熱シートを提供するため、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者らは、無機粒子を含有する断熱材表面の少なくとも一部に、樹脂を含む皮膜状の樹脂皮膜を設けることにより上記課題を解決できることを見出した。
本発明の実施形態に係る断熱シートは、断熱材表面に樹脂皮膜を有することにより、断熱材中に含まれる無機粒子の脱落を抑制することができる。また、この樹脂皮膜が、薄く柔軟性に優れる皮膜であると、加熱時の収縮差等による断熱材からの剥離を抑制することができる。
さらには、樹脂皮膜が薄いと、樹脂皮膜を設けたことによる断熱シート全体に占める樹脂の含有率の変化も小さく、断熱シートの難燃性低下や熱伝導率上昇といったことも抑制することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
〔1.断熱シート〕
本発明の実施形態に係る断熱シートは、無機粒子を含有する断熱材と、前記断熱材の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂皮膜と、を有する。
[1-1.樹脂皮膜]
本実施形態に係る断熱シートは、断熱材の表面の少なくとも一部が樹脂皮膜により被覆されている。
図1は、本発明の実施形態に係る断熱シートを模式的に示した平面図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る断熱シートを模式的に示した断面図である。
図1及び図2に示す断熱シートにおいては、本実施形態に係る断熱シート10は、無機粒子41を含む断熱材2の表面の一部が樹脂皮膜1により被覆されている。断熱材2は無機繊維42を含んでいてもよい。
断熱材2の表面は、樹脂皮膜1により被覆されていない非被覆部分があることが好ましく、樹脂皮膜1は複数の孔31を有していてもよい。孔31の部分を非被覆部分とすることができる。樹脂皮膜1が複数の孔31を有することによって、樹脂皮膜の柔軟性がより向上し、断熱材表面からの剥離をさらに抑制することができる。また、断熱シートの熱伝導率上昇、難燃性低下をより抑制することができる。
図3は、本発明の実施形態に係る断熱シートの断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。また、図4は、本発明の実施形態に係る断熱シートにおける樹脂皮膜の平均厚みの測定方法を説明するための模式図である。
樹脂皮膜1は、図2~図4に示すように、不均一な厚みを有していることが好ましい。樹脂皮膜1の厚みが不均一であることによって、厚みが厚い(膜厚が大きい)部分がもたらす皮膜強度と、厚みが薄い(膜厚が小さい)部分がもたらす皮膜の柔軟性とを両立することができる。
また、図2~図4に示すように、樹脂皮膜1は、断熱材2の表面形状に沿って不規則に湾曲していることが好ましい。樹脂皮膜が不規則に湾曲していることによって、発熱体との熱伝導面積を小さくすることができ、断熱シートの熱伝導率上昇を抑制することができる。
樹脂皮膜の厚みは、0を超え100μm未満であることが好ましい。
樹脂皮膜の厚みは、1μm以上がより好ましく、4μm以上がさらに好ましく、8μm以上がよりさらに好ましい。また、樹脂皮膜の厚みは50μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましく、15μm以下がよりさらに好ましい。
樹脂皮膜の厚みを0超とすることにより、良好な皮膜強度となる。また、樹脂皮膜の厚みを100μm未満とすることにより、樹脂皮膜の断熱材からの剥離抑制効果、熱伝導率上昇抑制効果、難燃性低下抑制効果が得られやすい。
樹脂皮膜の平均厚みは、1~95μmであることが好ましい。
樹脂皮膜の平均厚みは、1μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。また、樹脂皮膜の平均厚みは、50μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましく、15μm以下がよりさらに好ましい。
樹脂皮膜の平均厚みを1μm以上とすることにより、良好な皮膜強度となる。また、樹脂皮膜の平均厚みを95μm以下とすることにより、樹脂皮膜の断熱材からの剥離抑制効果、熱伝導率上昇抑制効果、難燃性低下抑制効果が得られやすい。
なお、樹脂皮膜の厚みは、断熱シートの断面のSEM画像の解析により求めることができる。
樹脂皮膜の平均厚みは、樹脂皮膜の厚みを一定間隔で複数箇所測定した平均値である。例えば、図3及び図4に示すように、断熱シートの断面のSEM画像の解析により、測定位置W1~W7の7箇所における樹脂皮膜の厚み(図中の矢印)を測定し、平均厚みを算出することができる。図4において測定位置は7箇所であるが、その数に特に限定はなく、7箇所以上であればよく、7~10箇所であることが好ましい。
樹脂皮膜の厚み、及び平均厚みは、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
上述のように樹脂皮膜は、断熱材の表面の少なくとも一部を被覆するものであればよいが、断熱材の表面に一部非被覆部分があることが好ましく、樹脂皮膜は複数の孔を有することがより好ましい。樹脂皮膜が複数の孔を有することによって、樹脂皮膜の柔軟性がより向上し、断熱材表面からの樹脂皮膜の剥離をさらに抑制することができる。また、熱伝導率上昇、難燃性低下をさらに抑制することができる。
上記効果向上の観点から、孔は樹脂皮膜の全面に分散して配置されていることが好ましい。
樹脂皮膜側の面のデジタルマイクロスコープ画像観察により算出した、樹脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B)は、7/3~99/1であることが好ましい。
A/Bは、8/2以上がより好ましく、85/15以上がさらに好ましく、9/1以上がよりさらに好ましい。また、A/Bは、99/1以下が好ましく、97/3以下がより好ましい。
A/Bを7/3以上とすることによって、断熱材中に含まれる無機粒子の脱落抑制効果、熱伝導率上昇抑制効果、難燃性低下抑制効果が得られやすい。
また、A/Bを99/1以下とすることにより、樹脂皮膜の剥離抑制効果が得られやすい。
A/Bの算出は、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VHX-5000)により、断熱シートの樹脂皮膜が設けられた面を20倍の倍率にて観察し、輝度設定96-255の範囲を孔部分の総面積B、輝度設定0-96の範囲を樹脂皮膜部分の総面積Aとして算出した。
樹脂皮膜を形成する樹脂種は、本発明の効果が得られる限り限定されるものではないが、難燃性樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、自然消火性を持つ樹脂や、酸素指数の高い樹脂がより好ましい。
樹脂皮膜には樹脂以外の成分を含んでいてもよく、例えば、有機繊維、無機繊維、有機フィラー、無機フィラー、有機顔料、無機顔料等が含まれていてもよい。
[1-2.断熱材]
本実施形態に係る断熱シートに用いられる断熱材としては、無機粒子を含有し、且つ、断熱効果を有するものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
無機粒子としては、単一の材質の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の材質の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できるため、断熱性能を向上させることができる。2種以上の無機粒子が含有されている場合に、各無機粒子の好ましい材質、形状及び粒子径について、以下に説明する。
図5は、2種の無機粒子を含有する断熱材を使用した断熱シートを模式的に示した断面図である。ただし、図5に示す断熱材には、後述する2種の無機繊維も含まれている。
第1の無機粒子51及び第2の無機粒子54としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子51とし、大径の無機粒子を第2の無機粒子54として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
<1-2-1.第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において断熱材内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
また、断熱材中にシリカナノ粒子のような微細な粒子を用いる場合、本発明の断熱シートによる断熱材成分の脱落抑制効果が得られやすい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって断熱シートが圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、断熱シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
なお、本発明において、無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、断熱シートの両側に配置された電池セルが熱膨張し、断熱シートに対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱シートの断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
なお、後述するように、本実施形態に係る断熱シート10は、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子51として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱シート10の中心付近にある第1の無機粒子51(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、シート中心付近の第1の無機粒子51が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材は、無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、断熱材の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
<1-2-2.第2の無機粒子>
断熱材に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子54は、第1の無機粒子51と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子54としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、断熱シートに圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子51として、ナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子54として、第1の無機粒子51よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、断熱材に含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子54を断熱材に含有させる場合に、第2の無機粒子54の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子54の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
(第1の無機粒子と第2の無機粒子の含有量)
第1の無機粒子51がシリカナノ粒子であり、第2の無機粒子54が金属酸化物である場合に、第1の無機粒子51の含有量が、第1の無機粒子51と第2の無機粒子54との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であると、輻射伝熱の抑制に必要な金属酸化物粒子の量と、伝導・対流伝熱の抑制とクッション性に必要なシリカナノ粒子の量を最適化できる。
その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わってもバランスよく高い断熱性が得られると考えられる。
<1-2-3.第1の無機繊維及び第2の無機繊維>
断熱材は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53を有することも好ましい。性状が互いに異なる2種の無機繊維を含有することにより、断熱シートの機械的強度及び無機粒子の保持性を向上させることができる。
(平均繊維径及び繊維形状が異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維52の平均繊維径が、第2の無機繊維53の平均繊維径よりも大きく、第1の無機繊維52が線状又は針状であり、第2の無機繊維53が樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。平均繊維径が大きい(太径の)第1の無機繊維52は、断熱シートの機械的強度や形状保持性を向上させる効果を有する。2種の無機繊維のうち一方、例えば、第1の無機繊維52を第2の無機繊維53よりも太径にすることにより、上記効果を得ることができる。断熱シートには、外部からの衝撃が作用することがあるため、断熱材に第1の無機繊維52が含まれることにより、耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
また、断熱シートの機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維52が線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
より具体的には、熱伝達抑制シートの機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維52の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。第1の無機繊維52が太すぎると、断熱材への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、第1の無機繊維52の平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
なお、第1の無機繊維52は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、第1の無機繊維52は短すぎても形状保持性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
一方、平均繊維径が細い(細径の)第2の無機繊維53は、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるとともに、断熱材の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第2の無機繊維53を第1の無機繊維52よりも細径にすることが好ましい。
より具体的に、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるためには、第2の無機繊維53は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径である第2の無機繊維53は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細径の無機繊維が細すぎると破断しやすく、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が低下する。また、他の無機繊維や無機粒子等を保持せずに、繊維が絡み合ったままで断熱材中に存在する割合が多くなり、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力の低下に加えて、成形性や形状保持性にも劣るようになる。そのため、第2の無機繊維53の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
なお、第2の無機繊維53は、長くなりすぎると成形性や形状保持性が低下するため、第2の無機繊維53の繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
また、第2の無機繊維53は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。第2の無機繊維53がこのような形状であると、断熱材において、他の無機繊維や無機粒子等と絡み合う。そのため、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が向上する。また、断熱シートが押圧力や風圧を受けた際に、第2の無機繊維53が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
なお、樹枝状とは、2次元的又は3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
第2の無機繊維53が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、第2の無機繊維53の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力や、第2の無機繊維53同士、第1の無機繊維52と第2の無機繊維53との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
上述の実施形態では、熱伝達抑制シートの機械的強度や形状保持性、並びに無機粒子や無機繊維等の保持性を向上させる方法として、平均繊維径及び繊維形状が互いに異なる第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53を用いている。ただし、ガラス転移点や平均繊維径が互いに異なる第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53を用いることによっても、熱伝達抑制シートの機械的強度、形状保持性及び粒子の保持性を向上させることができる。
上記のとおり、本実施形態においては、熱伝達抑制シートの機械的強度や形状保持性及び粒子の保持性を向上させるために、種々の組み合わせの無機繊維を使用することが好ましい。以下、上記図5に示す実施形態とは異なる組み合わせの第1の無機繊維及び第2の無機繊維について説明するが、本明細書においては、便宜上、無機繊維に関する他の実施形態を、図5を用いて説明する。
(ガラス転移点が互いに異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維52は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維53は、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。また、上記2種の無機繊維とともに、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含む第1の無機粒子51を使用することにより、さらに一層断熱性能を向上させることができる。
結晶質の無機繊維の融点は、通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維52は、高温にさらされると、その表面が第2の無機繊維53より先に軟化して、他の無機繊維や無機粒子等を結着する。したがって、断熱材に上記のような第1の無機繊維52を含有させることにより、断熱層の機械的強度を向上させることができる。
第1の無機繊維52としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiOを含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
第2の無機繊維53は、上述のとおり、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維53としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
第2の無機繊維53が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維52よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維52が軟化しても、第2の無機繊維53は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。
また、第2の無機繊維53が溶融又は軟化しないと、断熱材に含まれる各粒子間、粒子と繊維との間、及び各繊維間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
第2の無機繊維53が結晶質である場合に、第2の無機繊維53としては、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維及びジルコニア繊維等のセラミックス系繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、グラスウール、ロックウール、カーボンファイバ、バサルトファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等を使用することができる。
第2の無機繊維53として挙げられた繊維のうち、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維53は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
なお、上記第2の無機繊維53として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
また、第2の無機繊維53が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維52よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維53として用いてもよい。
なお、第2の無機繊維53としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
なお、上記のとおり、第1の無機繊維52は第2の無機繊維53よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維52が先に軟化するため、第1の無機繊維52で他の無機繊維や無機粒子等を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維53が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維52の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維52と第2の無機繊維53とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維53が先に軟化するおそれがある。
したがって、第2の無機繊維53が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維53のガラス転移点は、第1の無機繊維52のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
なお、第1の無機繊維52の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維53の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
(ガラス転移点及び平均繊維径が互いに異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維52は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維53は、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、第1の無機繊維52の平均繊維径が、第2の無機繊維53の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
上述のとおり、本実施形態に係る断熱材が2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維52の平均繊維径が、第2の無機繊維53よりも大きいことが好ましい。また、太径の第1の無機繊維52が非晶質の繊維であり、細径の第2の無機繊維53が、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であることが好ましい。これにより、第1の無機繊維52のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、細径である第2の無機繊維53が、第1の無機繊維52よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維53が繊維の形状で残存するため、断熱シートの構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
なお、この場合であっても、第1の無機繊維52の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維53の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
また、断熱材には、上記第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53の他に、異なる無機繊維が含まれていてもよい。
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維52の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維53の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
また、第1の無機繊維52の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、第2の無機繊維53の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、第1の無機繊維52による形状保持性や押圧力耐性、抗風圧性、及び第2の無機繊維53による無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。
<1-2-4.その他の材料>
本発明に用いる断熱材は、上記第1の無機粒子51及び第2の無機粒子54、第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53の他に、断熱材の強度を向上させる効果を有する有機繊維や、結合材、着色剤等のように、断熱材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
(結合材)
本発明に断熱材は、結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に断熱材がシリカナノ粒子を含む場合には、断熱材としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、無機粒子を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。上記第1の無機繊維52及び第2の無機繊維53も結合剤として機能する。
なお、バインダとしては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
有機繊維としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアセタール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニルフタルアミド繊維等が挙げられる。
本発明に用いる断熱材において、結合材の含有量は、断熱材全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。本発明に用いる断熱材において、結合材の含有量は、断熱材全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
本発明に用いる断熱材の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。断熱材の厚さが上記範囲内であると、充分な機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
〔2.断熱シートの製造方法〕
続いて、本発明に係る断熱シートの製造方法について説明する。
本実施形態に係る断熱シートの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、無機粒子を含む断熱材用材料をシート状に成形することにより得た断熱材上に、樹脂皮膜形成用組成物を塗布、乾燥することにより得ることができる。ただし、本実施形態に係る断熱シートは、樹脂皮膜の厚みが100μm未満であることが好ましいため、樹脂皮膜の形成方法を適切に選択することが好ましい。
[2-1.断熱材の成形]
断熱材は、無機粒子を含む断熱材用材料を、湿式抄造法、乾式成形法、または湿式成形法により型成形して製造しても、押出成形法により製造してもよい。以下に、断熱材をそれぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。
<2-1-1.湿式抄造法による断熱材の製造方法>
湿式抄造法では、まず、無機粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、濾過用のメッシュを介して、得られた混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、断熱材を得ることができる。なお、加熱および加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱および加圧してもよい。
<2-1-2.乾式成形法による断熱シートの製造方法>
乾式成形法では、まず、無機粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入する。そして、混合機に投入された材料を充分に混合した後、所定の型内に混合物を投入し、プレスすることにより断熱材を得ることができる。プレス時には、必要に応じて加熱してもよい。
上記プレス圧は、0.98~9.80MPaの範囲であることが好ましい。プレス圧が0.98MPa未満であると、得られる断熱材において、強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度の圧縮によって加工性が低下したり、更に、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、断熱性が低下するおそれがある。
<2-1-3.押出成形法による断熱シートの製造方法>
押出成形法では、まず、無機粒子、ならびに必要に応じて結合材である無機繊維、有機繊維、または有機バインダに水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用いてスリット状のノズルから押出しさらに乾燥させることにより、断熱材を得ることができる。有機バインダとしては、メチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
[2-2.樹脂皮膜の成膜]
樹脂皮膜の形成方法は、特に制限されるものではないが、例えば、樹脂皮膜形成用組成物を断熱材に塗布、乾燥することにより形成することができる。
樹脂皮膜形成用組成物に含まれる原料樹脂としては、本発明の効果が得られる限り限定されるものではないが、難燃性樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、自然消火性を持つ樹脂や、酸素指数の高い樹脂がより好ましい。
樹脂皮膜形成用組成物には樹脂以外の成分を含んでいてもよく、例えば、有機繊維、無機繊維、有機フィラー、無機フィラー、有機顔料、無機顔料等が含まれていてもよい。
樹脂皮膜形成用組成物に用いる溶媒としては、特に限定されないが、水、有機溶剤等が挙げられ、汎用性の観点から水を用いることが好ましい。
樹脂皮膜形成用組成物における樹脂濃度(樹脂皮膜形成用組成物全質量に対する樹脂の含有量)としては、25~100質量%とすることが好ましい。上記範囲とすることによって、所望の厚みや形状を有する樹脂皮膜を形成しやすくなる。
組成物の塗布方法としては、ディップコート法、ダイコート法、バーコード法、スピンコート法、オフセット法、スプレーコート法などの他、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法などの印刷による塗布が挙げられる。
樹脂皮膜形成用組成物の塗布方法は特に限定されないが、所望の厚みや形状を有する樹脂皮膜を形成しやすい点から、スクリーン印刷法又はスプレーコート印刷法を用いることが好ましく、スクリーン印刷法を用いることがより好ましい。
〔3.断熱シートの用途〕
本発明の実施形態に係る断熱シートは、複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される。例えば、前記電池セル間に介在される組電池用として好適に用いられる。
本発明の実施形態に係る断熱シートを組電池用として用いる場合には、断熱シートが電池セルに接する面のいずれにも樹脂皮膜が形成されていることが好ましい。
〔4.組電池〕
本発明の実施形態に係る組電池は、複数の電池セルと、本実施形態に係る断熱シートとを有し、該複数の電池セルが直列又は並列に接続されたものである。
図6は、本発明の実施形態に係る断熱シートを適用した組電池の例を模式的に示す断面図である。例えば、図6に示すように、本発明の実施形態に係る組電池100は、複数個の電池セル20a、20b、20cが並設され、直列又は並列に接続されて電池ケース30に格納されたものであり、電池セル20a、20b、20c間に、断熱シート10が介在されている。
このように構成された組電池100においては、断熱シート10は、断熱材の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂皮膜を有するため、断熱材表面からの樹脂皮膜の剥離を抑制することができるとともに、熱伝導率上昇、難燃性低下を抑制することができる。
また、各電池セル20a、20b、20cの間に、断熱シート10が介在されている場合に、通常使用時において、各電池セル20a、20b、20c間の熱の伝播を抑制することができる。
さらに、複数の電池セル20a、20b、20cのうち、一つの電池セルが熱暴走して高温になり、膨張したり発火したりする場合でも、本実施形態に係る断熱シート10が存在することにより、電池セル20a、20b、20c間の熱の伝播を抑制することができる。したがって、熱暴走の連鎖を阻止することができ、他の電池セルへの悪影響を最小限に抑えることができる。
なお、本実施形態の組電池100は、図6に例示した組電池に限定されず、電池セル20aと電池セル20bとの間や電池セル20bと電池セル20cとの間のみでなく、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に、断熱シート10を配置することもできる。
このように構成された組電池においては、ある電池セルが発火した場合に、電池ケース30の外側に炎が広がることを抑制することができる。
例えば、本実施形態に係る組電池100は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、断熱シート10を、各電池セル間に介在させるだけでなく、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池100を構成することができる。
本実施形態の組電池において、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に配置された断熱シート10と、電池セル20a、20b、20cとは、接触していても、隙間を有していてもよい。ただし、断熱シート10と電池セル20a、20b、20cとの間に隙間を有していると、複数ある電池セルのうち、いずれかの電池セルの温度が上昇し、体積が膨張した場合であっても、電池セルの変形を許容することができる。
なお、本実施形態に係る断熱シートは、樹脂皮膜及び断熱材の種類及び厚さの選択によっては、容易に屈曲可能なものとなる。したがって、電池セル20a、20b、20c及び電池ケース30の形状に影響されず、どのような形状のものにも対応させることができる。具体的には、角型電池の他、円筒形電池、平板型電池等にも適用することができる。
以下に、本実施形態に係る断熱シートの実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<比較例1>
下記無機粒子および結合材を準備し、これらの材料を十分に撹拌混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを用いて、抄造法により断熱材を形成した。
シリカナノ粒子(平均粒子径5nm)を56質量%、チタニア(平均粒子径8μm)を24質量%(シリカナノ粒子:チタニア粒子=70質量%:30質量%)、結合材としては、ガラス繊維(平均繊維径10μm、平均繊維長5mm)を11質量%、パルプ繊維を8質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して断熱材を得、表面に樹脂層を有さない断熱材を比較例1の断熱シートとした。
なお、乾燥は110℃で実施し、得られた断熱材のサイズは、幅が80mm、長さが80mm、厚さが1mmであった。
<比較例2、3>
樹脂層形成用組成物として、樹脂濃度50質量%のアクリル樹脂水溶液を用い、バーコーターによる塗布方法により、上記断熱材上に膜厚60μm、300μmの樹脂層をそれぞれ形成し、140℃にて加熱乾燥することにより、比較例2、比較例3の断熱シートを得た。
比較例2、3の断熱シートにおける樹脂層を設けた面の目視観察の結果、いずれの断熱シートにおいても、樹脂層に亀裂が認められた。
<実施例1>
樹脂皮膜形成用組成物として、樹脂濃度10質量%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂水溶液を用い、スクリーン印刷機により、上記断熱材上に樹脂皮膜形成用組成物を塗布し、130℃にて加熱乾燥することにより、樹脂皮膜を成膜し、実施例1の断熱シートを得た。
実施例1の断熱シートにおける樹脂皮膜を設けた面の目視観察により、実施例1における樹脂皮膜は、皮膜に亀裂がなく、複数の孔が樹脂皮膜の全面に分散して配置されているものであることが確認された。
図7は、実施例1の断熱シートの表面をデジタルマイクロスコープにより撮影した図面代用写真である。図7において、白い部分は孔を表し、黒い部分は樹脂皮膜を表す。
図7に示すように、デジタルマイクロスコープによる画像においても、複数の孔が視野全体に分散して配置されていることが確認できた。さらに、デジタルマイクロスコープ画像観察により算出した樹脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B)は17.5であった。
また、例えば図3に示す断熱シートの断面SEM画像観察により、断熱シート10の樹脂皮膜1は断熱材2の表面形状に沿って不規則に湾曲しており、厚みに幅を有するものであることが確認された。
後述の条件にて、断熱シートの断面のSEM画像より、樹脂皮膜の厚みを45点測定したところ、厚みは0超40.3μmの範囲となり、平均厚みは13.8μmとなった。なお、孔の箇所は厚みを測定していない。
[測定及び評価]
実施例1及び比較例1の断熱シートについて、以下の測定及び評価を行った。
(脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B))
樹脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B)を樹脂皮膜側の面のデジタルマイクロスコープ画像観察により算出した。
A/Bの算出は、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VHX-5000)により、断熱シートの樹脂皮膜が設けられた面を20倍の倍率にて観察し、輝度設定96-255の範囲を孔部分の総面積B、輝度設定0-96の範囲を樹脂皮膜部分の総面積Aとして算出した。
(樹脂皮膜の厚み)
樹脂皮膜の厚みは、例えば、図3に示すように、断熱シート5箇所の断面SEM画像における樹脂皮膜の厚みを35.8μm間隔で9箇所の45点測定した平均値である。
(粉落ち)
図8に示すように、支柱24の頂点に稼働するように、アーム25を取り付け、そのアーム25の先端に試験材23が取り付けられる装置において、任意の角度までアーム25を引き上げ固定し、その後固定を解除し落下させることよって支柱24とアーム25を衝突させ衝撃を与えた。なお試験材23のサイズを100mm×100mmとし、アームの長さは915mm、衝撃を与える回数を3回、支柱とアームの角度を90°とした。そして衝撃前の重量をF0(g)、衝撃後の重量をFw(g)として以下の式により粉落ちE(無機粒子の脱落量)(g/m)を評価した。
E=(F0-Fw)/試験材面積
上記評価方法において、粉落ちが0.5g/m未満であれば、粉落ち抑制性能が良好といえる。
(難燃性)
UL試験規格におけるUL94(高分子材料の難燃性試験)に準拠して難燃性試験を行った。
UL94の試験規格における94V-0の判定基準に合格するものが、難燃性が良好といえる。
(熱伝導率)
室温(25℃)において、熱伝導率(W/m・K)を測定した。なお、熱伝導率は、JIS A 1412-2に記載の「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法 第2部熱流計法(HFM法)」に準拠して、測定した。
(圧縮率)
図9に示すように、万能試験機を使用し、上板21と下板22との間に試験材23を配置し、上板21を下方に移動させることにより、試験材23を押圧した。なお、試験材23のサイズを25mm×25mmとし、圧縮速度を0.5(mm/分)とし、圧縮応力を0.5、3.5MPaとした。
そして、試験材23の初期厚さをD(mm)、圧縮量(減少した厚さ)をD(mm)として、以下の式により圧縮率C(%)を算出した。
C=(D/D)×100
なお、圧縮率の測定は、実施例1及び比較例1の断熱シート(試験材23)について、実施した。
評価結果を表1に示す。
Figure 2023020832000002
樹脂皮膜を有する実施例1の断熱シートでは、樹脂皮膜を設けていない比較例1の断熱シートに比して、粉落ちが90%程度抑制された。また、樹脂層が皮膜状で薄いため、樹脂層形成による難燃性低下や熱伝導率上昇が抑えられ、樹脂皮膜を設けていない場合と同等の良好な難燃性及び熱伝導率を維持できていることが分かった。
さらに、樹脂皮膜を設けていない比較例1の断熱シートよりも圧縮率が低く、例えば組電池の電池セル間などに介在させて好適に使用し得ることが確認された。
1 樹脂皮膜
2 断熱材
10 断熱シート
20a,20b,20c 電池セル
21 上板
22 下板
23 試験材
24 支柱
25 アーム
30 電池ケース
31 孔
41 無機粒子
42 無機繊維
100 組電池

Claims (15)

  1. 無機粒子を含有する断熱材と、
    前記断熱材の表面の少なくとも一部を被覆する樹脂皮膜と、を有する断熱シート。
  2. 前記樹脂皮膜の平均厚みは1~95μmである、請求項1に記載の断熱シート。
  3. 前記樹脂皮膜の厚みは、0を超え100μm未満である、請求項1又は2に記載の断熱シート。
  4. 前記樹脂皮膜は、前記断熱材の表面形状に沿って不規則に湾曲している、請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱シート。
  5. 前記樹脂皮膜は複数の孔を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱シート。
  6. 前記孔が、前記樹脂皮膜の全面に分散して配置された、請求項5に記載の断熱シート。
  7. 前記樹脂皮膜側の面のデジタルマイクロスコープ画像観察により算出した、樹脂皮膜部分の総面積Aと孔部分の総面積Bとの比(A/B)が、7/3~99/1である、請求項5又は6に記載の断熱シート。
  8. 前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の断熱シート。
  9. 前記断熱材は、さらに、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の断熱シート。
  10. 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、
    前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、請求項9に記載の断熱シート。
  11. 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
    前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
    前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、請求項9に記載の断熱シート。
  12. 前記無機粒子が、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含み、
    前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
    前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、請求項9に記載の断熱シート。
  13. 複数の電池セルが直列又は並列に接続される組電池に使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の断熱シート。
  14. 請求項1~13のいずれか1項に記載の断熱シートの製造方法であって、
    前記無機粒子を含む断熱材用材料をシート状に成形する工程と、
    スクリーン印刷法又はスプレーコート印刷法により、前記シート状の断熱材の表面に樹脂皮膜形成用組成物を塗布し、前記樹脂皮膜を形成する工程と、を有する、断熱シートの製造方法。
  15. 複数の電池セルと、請求項13に記載の断熱シートと、を有し、該複数の電池セルが直列または並列に接続された組電池。
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