JP2023019106A - 電極用複合粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、電極用複合粒子、電極活物質、電極、二次電池及び電極用複合粒子の製造方法に関する。詳しくは、硫黄の結晶質相と、結晶質相に分散した炭素粒子とを含む電極用複合粒子に関する。
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車等の自動車、太陽電池、風力発電等の発電装置において、電力を貯蔵するためのリチウムイオン二次電池の需要が増大している。また、安全性の確保の観点から、電解質層に液体を使用せず、固体電解質を使用した全固体電池が盛んに研究されている。これらのリチウムイオン二次電池や全固体電池は、更なる高性能化が求められている。開発中の全固体電池の多くは、金属酸化物を正極活物質に用いているが、EVなどに求められる蓄電容量から考えると、より理論容量の大きい活物質材料を使用することが求められている。この内、活物質材料として硫黄を用いることが注目されている。
硫黄は大きな理論容量(1672 mAh g-1)を有していることから、次世代の全固体電池の活物質材料として期待されている。しかし、硫黄は電子・イオン導電性が低いため、単独では電極活物質として用いることはできない。これまで、この硫黄を利用しようとする試みがなされており、例えば、特開2010-095390号公報(特許文献1)や特開2020-161288号公報(特許文献2)では、硫黄を炭素粒子に蒸着させた複合体が開示されている。
上に挙げた方法など、硫黄を電極活物質として用いた電極用の複合材料についての報告はいくつかあるが、報告されている複合材料を用いた電池の性能は依然として低い。このことから、硫黄を用いつつも電極としての性能に優れた電極用複合材料を提供することを課題とする。
本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、絶縁性である硫黄に電子導電性を与えるために、電子導電性に優れた導電助剤として炭素粒子を付与し、さらにこれらを二軸溶融混練機に供して加熱混練することで電極材料として優れた性質を有する電極用複合粒子を製造できることを見出し、本発明に至った。
かくして、本発明は、硫黄の結晶質相と、結晶質相内に分散した炭素粒子とを含む電極用複合粒子であって、炭素粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~999nmの範囲にあり、炭素粒子は、該炭素粒子の表面及び/又は内部に非晶質の硫黄を有し、複合粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~1000μmの範囲にある電極用複合粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記電極用複合粒子を含む電極活物質、電極及び二次電池が提供される。
さらに、本発明によれば、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程を含む、電極用複合粒子の製造方法が提供される。
かくして、本発明は、硫黄の結晶質相と、結晶質相内に分散した炭素粒子とを含む電極用複合粒子であって、炭素粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~999nmの範囲にあり、炭素粒子は、該炭素粒子の表面及び/又は内部に非晶質の硫黄を有し、複合粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~1000μmの範囲にある電極用複合粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記電極用複合粒子を含む電極活物質、電極及び二次電池が提供される。
さらに、本発明によれば、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程を含む、電極用複合粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、硫黄を用いつつも電極としての性能に優れた電極用複合材料を提供することができる。
(電極用複合粒子)
本発明の電極用複合粒子は、硫黄の結晶質相と、前記結晶質相内に分散した炭素粒子とを含んでなる。
電極用複合粒子は、体積平均粒子径(D50)が、1~1000μmの範囲にある。本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準粒子径分布に基づく。レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置としては、例えば、島津製作所社製「SALD-2100」、マイクロトラック・ベル株式会社の「エアロトラックLDSA-SPR」、Malvern Panalytical社の「Mastersizer 3000」などが挙げられる。体積平均粒子径(D50)とは、体積中位径とも呼ばれ、体積基準粒子径分布において頻度の累積が50%になる粒子径である。すなわち、D50の値以下の粒子径を有する粒子は総体積の50%を占める。同様に、D10は体積基準粒子径分布において頻度の累積が10%になる粒子径であり、D90は体積基準粒子径分布において頻度の累積が90%になる粒子径である。
本発明の電極用複合粒子は、硫黄の結晶質相と、前記結晶質相内に分散した炭素粒子とを含んでなる。
電極用複合粒子は、体積平均粒子径(D50)が、1~1000μmの範囲にある。本発明において、体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準粒子径分布に基づく。レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置としては、例えば、島津製作所社製「SALD-2100」、マイクロトラック・ベル株式会社の「エアロトラックLDSA-SPR」、Malvern Panalytical社の「Mastersizer 3000」などが挙げられる。体積平均粒子径(D50)とは、体積中位径とも呼ばれ、体積基準粒子径分布において頻度の累積が50%になる粒子径である。すなわち、D50の値以下の粒子径を有する粒子は総体積の50%を占める。同様に、D10は体積基準粒子径分布において頻度の累積が10%になる粒子径であり、D90は体積基準粒子径分布において頻度の累積が90%になる粒子径である。
電極用複合粒子の体積平均粒子径(D50)の範囲は、例えば、1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 16.9, 17, 20, 25, 30, 34, 34.7, 35, 40, 45, 50, 55, 58, 60, 60.3, 64.1, 64.8, 65, 66.1, 67, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 99, 100, 110, 120, 125, 150, 175, 200, 225, 250, 300, 350, 400, 450, 499, 500, 550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 975, 990, 999又は1000μmの値から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。電極用複合粒子の体積平均粒子径(D50)は、1~999μmの範囲にあるのが好ましく、1~900μmの範囲にあるのがより好ましく、1~700μmの範囲にあるのがより好ましく、1~500μmの範囲にあるのがより好ましく、1~400μmの範囲にあるのがより好ましく、1~300μmの範囲にあるのがより好ましく、1~200μmの範囲にあるのがより好ましく、1~100μmの範囲にあるのがより好ましく、10~100μmの範囲にあるのがより好ましく、25~100μmの範囲にあるのがより好ましく、50~100μmの範囲にあるのがより好ましい。
電極用複合粒子の体積平均粒子径(D10)の範囲は、例えば、0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3, 3.5, 4, 4.11, 4.5, 5.0, 5.21, 5.25, 5.5, 6, 6.5, 7, 7.5, 8, 8.5, 9, 9.5, 9.9, 10, 10.1, 10.5, 11, 12, 12.5, 13, 13.5, 13.9, 14, 14.1, 14.2, 14.3, 14.4, 14.5, 14.6, 15, 15.2, 15.3, 15.4, 15.5, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 35, 40, 45, 49, 50, 51, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 98, 99, 99.9又は100μmの値から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。電極用複合粒子の体積平均粒子径(D10)は、0.5~100μmの範囲にあり、0.5~90μmの範囲にあるのが好ましく、0.5~80μmの範囲にあるのがより好ましく、0.5~70μmの範囲にあるのがより好ましく、0.5~60μmの範囲にあるのがより好ましく、0.5~50μmの範囲にあるのがより好ましく、1~50μmの範囲にあるのがより好ましく、1~40μmの範囲にあるのがより好ましく、5~40μmの範囲にあるのがより好ましく、5~30μmの範囲にあるのがより好ましく、10~30μmの範囲にあるのがより好ましく、10~20μmの範囲にあるのがより好ましい。
電極用複合粒子の体積平均粒子径(D90)の範囲は、例えば、5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 50, 55, 60, 65, 70, 74, 74.9, 75, 80, 85, 90, 95, 99, 100, 101, 105, 110, 120, 130, 140, 145, 150, 155, 158, 159, 160, 165, 170, 175, 180, 185, 190, 195, 196, 197, 198, 199, 200, 205, 208, 210, 220, 225, 229, 230, 240, 245, 248, 249, 250, 260, 275, 300, 325, 350, 375, 400, 425, 450, 475, 490, 499, 500, 550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 980, 990, 999, 1000, 1100, 1200, 1250, 1300, 1400, 1500, 1600, 1700, 1750, 1800, 1900, 1950, 1990, 1999又は2000μmの値から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。電極用複合粒子の体積平均粒子径(D90)は、5~2000μmの範囲にあり、5~1750μmの範囲にあるのが好ましく、5~1500μmの範囲にあるのがより好ましく、5~1250μmの範囲にあるのがより好ましく、5~1000μmの範囲にあるのがより好ましく、5~999μmの範囲にあるのがより好ましく、5~900μmの範囲にあるのがより好ましく、5~800μmの範囲にあるのがより好ましく、5~700μmの範囲にあるのがより好ましく、5~600μmの範囲にあるのがより好ましく、5~500μmの範囲にあるのがより好ましく、10~500μmの範囲にあるのがより好ましく、20~500μmの範囲にあるのがより好ましく、30~500μmの範囲にあるのがより好ましく、40~500μmの範囲にあるのがより好ましく、50~500μmの範囲にあるのがより好ましく、60~500μmの範囲にあるのがより好ましく、70~500μmの範囲にあるのがより好ましく、80~500μmの範囲にあるのがより好ましく、90~500μmの範囲にあるのがより好ましく、100~500μmの範囲にあるのがより好ましい。
上述したD10, D50及びD90の組み合わせは、体積平均粒子径(D10)が、0.5~50μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D50)が、1~100μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D90)が、5~500μmの範囲にあることが好ましく、体積平均粒子径(D10)が、10~20μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D50)が、50~100μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D90)が、100~500μmの範囲にあることがより好ましい。このような粒子径の範囲にある電極用複合粒子を用いることで、より充放電特性に優れた電極を得ることができる。
硫黄の結晶質相は硫黄単体のみの状態に加え、結晶質相に金属硫化物が微分散している状態も含まれる。金属硫化物としては、例えば、TiS2、MoS2、FeS、FeS2、CuS、Ni3S2、NbSe3などが挙げられる。微分散している金属硫化物は、電極用複合粒子の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
電極用複合粒子中の硫黄の割合は特に限定されないが、電極用複合粒子の全質量に対して20質量%~90質量%の範囲にあることが好ましく、30質量%~80質量%にあることがより好ましい。
炭素粒子は、硫黄の結晶質相内に分散している。電極用複合粒子中の炭素粒子の割合は特に限定されないが、電極用複合粒子の全質量に対して5質量%~60質量%の範囲にあることが好ましく、10質量%~50質量%の範囲にあることがより好ましい。
炭素粒子の体積平均粒子径(D50)は、1~999nmの範囲にある。炭素粒子の体積平均粒子径(D50)の範囲は、例えば、1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 22.5, 25, 27.5, 30, 32.5, 34, 35, 37.5, 40, 42.5, 45, 47.5, 50, 55, 60, 65, 70, 80, 90, 99, 100, 110, 125, 150, 175, 200, 225, 250, 300, 350, 400, 450, 499, 500, 550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 975, 990又は999nmの値から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。炭素粒子の体積平均粒子径(D50)は、1~900nmの範囲にあることが好ましく、1~800nmの範囲にあることがより好ましく、1~700nmの範囲にあることがより好ましく、1~600nmの範囲にあることがより好ましく、1~500nmの範囲にあることがより好ましく、1~400nmの範囲にあることがより好ましく、1~300nmの範囲にあることがより好ましく、1~200nmの範囲にあることがより好ましく、1~100nmの範囲にあることがより好ましく、10~100nmの範囲にあることがより好ましく、10~50nmの範囲にあることがより好ましい。
炭素粒子の構造は特に限定されず、孔を有さない炭素粒子であっても多孔質の炭素粒子であってもよいが、多孔質の炭素粒子であることが好ましい。炭素粒子が孔を有しているかどうかは、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)によって確認することができる。あるいは、多孔質の炭素粒子とは、窒素吸着量が100ml(STP)/g以上である炭素粒子としてもよい。本発明において、窒素吸着量とは、液体窒素温度(77K)の窒素ガスを用い、相対圧力(P/P0)が0から1の範囲で吸着側の吸着等温線を測定した際の、窒素吸着等温線のP/P0が0.98の窒素吸着量を指す。多孔質の炭素粒子は、窒素吸着量が、500ml(STP)/g以上であることが好ましく、750ml(STP)/g以上であることがより好ましく、1000ml(STP)/g以上であることがより好ましく、1200ml(STP)/g以上であることがより好ましい。
電極用複合粒子に含まれる炭素粒子は、主に多孔質の炭素粒子であってもよい。主に多孔質の炭素粒子であるとは、電極用複合粒子に含まれる炭素粒子の50質量%より多くの炭素粒子が、多孔質の炭素粒子であることを指す。電極用複合粒子に含まれる炭素粒子は、60質量%以上が多孔質の炭素粒子であることが好ましく、70質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、80質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、90質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、95質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、98質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、99質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましく、99.9質量%以上が多孔質の炭素粒子であることがより好ましい。また、電極用複合粒子に含まれる炭素粒子が実質的に多孔質の炭素粒子であることが好ましい。実質的に多孔質の炭素粒子であるとは、多孔質の炭素粒子に多孔質ではない炭素粒子が微量に含まれていることを指す。
炭素粒子としては、例えば、ナノカーボン又は繊維状カーボン(例えば気相成長炭素繊維(VGCF)又はカーボンナノファイバー)が挙げられ、より具体的には天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。電極用複合粒子に含まれる炭素粒子は1種類のみでもよいし、複数種類を組み合わせてもよい。
硫黄の結晶質相内に含まれる炭素粒子の表面及び/又は内部には、非晶質の硫黄が含まれる。好ましくは炭素粒子の孔に非晶質の硫黄が含まれていることが好ましい。非晶質であるとは当業者が一般的に非晶質と認識するものと同じで、明確な結晶性を有しない状態を指す。明確な結晶性を有しない状態は、例えば、CuKα線を用いたXRD(X線回折)において、ピークが確認されないことによって確認してもよいし、XRDの硫黄に由来する2θのピークが、2°以上の半値幅(半値全幅)を有さないことによって確認してもよい。また、透過型電子顕微鏡を用いて明確な結晶子が確認されないことによって確認してもよい。非晶質の硫黄には、100%非晶質の状態であることに加え、実質的に非晶質の状態であることも含まれる。硫黄が実質的に非晶質であるとは、非晶質の硫黄に結晶状態の硫黄が微分散している場合を含んでいる。
電極用複合粒子の窒素吸着量は特に限定されないが、電極用複合粒子の窒素吸着量が、電極用複合粒子に含まれている炭素粒子の(その表面及び/又は内部に硫黄を有しない状態での)窒素吸着量の50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがより好ましい。また、電極用複合粒子に含まれている炭素粒子の窒素吸着量が、1000ml(STP)/g以上であり、かつ電極用複合粒子の窒素吸着量が、電極用複合粒子に含まれている炭素粒子の(その表面及び/又は内部に硫黄を有しない状態での)窒素吸着量の50%以下であることが特に好ましい。
硫黄と、炭素粒子との質量比は、特に限定されないが、硫黄と、炭素粒子との質量比が、硫黄:炭素粒子=1.0:0.1~1.0の範囲にあることが好ましく、硫黄:炭素粒子=1.0:0.1~0.5の範囲にあることがより好ましく、硫黄:炭素粒子=1.0:0.1~0.4の範囲にあることがより好ましい。
電極用複合粒子は、安息角が50°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。ここで、本発明の安息角とは、重力場において漏斗より排出された粉体が堆積して自由面を形成するとき、静止粉体層表面が水平面となす角度である。安息角は、例えば、セイシン企業製マルチテスターMT-1001k型を用いて測定することができる。
電極用複合粒子は、固体電解質粒子を更に含んでいてもよい。固体電解質粒子の固体電解質は、特に限定されず、硫化物系固体電解質でも酸化物系固体電解質でもよいが、硫化物系固体電解質であることが好ましい。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-GeS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li10GeP2S12、Li7P3S11、Li3.25P0.75S4又はLi7-xPS6-xYx(式中、xは0~1.8であり、Yはハロゲンである)などが挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O3、Li2O-SiO2、Li2O-P2O5、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3.6Si0.6P0.4O4又はLi3BO3-Li2SO4-Li2CO3等が挙げられる。
固体電解質粒子は、一種類の固体電解質からなる粒子でもよいし、複数の固体電解質が組み合わされた固体電解質粒子であってもよい。固体電解質粒子は、1種類のみでもよいし、複数種類を組み合わせてもよい。固体電解質は、非晶質であってもなくてもよいが実質的に非晶質の状態であることが好ましい。固体電解質が実質的に非晶質であるとは、非晶質の固体電解質に結晶状態の固体電解質が微分散している場合を含んでいる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-GeS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li10GeP2S12、Li7P3S11、Li3.25P0.75S4又はLi7-xPS6-xYx(式中、xは0~1.8であり、Yはハロゲンである)などが挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O3、Li2O-SiO2、Li2O-P2O5、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3.6Si0.6P0.4O4又はLi3BO3-Li2SO4-Li2CO3等が挙げられる。
固体電解質粒子は、一種類の固体電解質からなる粒子でもよいし、複数の固体電解質が組み合わされた固体電解質粒子であってもよい。固体電解質粒子は、1種類のみでもよいし、複数種類を組み合わせてもよい。固体電解質は、非晶質であってもなくてもよいが実質的に非晶質の状態であることが好ましい。固体電解質が実質的に非晶質であるとは、非晶質の固体電解質に結晶状態の固体電解質が微分散している場合を含んでいる。
固体電解質粒子の体積平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、固体電解質粒子の体積平均粒子径(D50)の範囲は、例えば、0.01, 0.05, 0.07, 0,09, 0,1, 0.15, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 0.99, 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 8.4, 8.5, 8.6, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 22.5, 25, 27.5, 30, 32.5, 34, 35, 37.5, 40, 42.5, 45, 47.5, 49又は50μmの値から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。固体電解質粒子の体積平均粒子径(D50)は、0.01~50μmの範囲にあることが好ましく、0.01~40μmの範囲にあることがより好ましく、0.01~30μmの範囲にあることがより好ましい。
硫黄及び炭素粒子と、固体電解質粒子との質量比は、特に限定されないが、硫黄及び炭素粒子と、固体電解質粒子との質量比が、硫黄+炭素粒子:固体電解質=1.0:0.1~1.0の範囲にあることが好ましく、硫黄+炭素粒子:固体電解質=1.0:0.3~1.0の範囲にあることがより好ましく、硫黄+炭素粒子:固体電解質=1.0:0.5~1.0の範囲にあることがより好ましい。
電極用複合粒子は、BET比表面積が、200m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積は、窒素吸着等温線に対して公知のBET吸着等温式(Brunauer Emmrtt Teller adsorption isotherm)を用いて得ることができる。BET比表面積は、180m2/g以下であることが好ましく、160m2/g以下であることがより好ましく、150m2/g以下であることがより好ましく、125m2/g以下であることがより好ましく、100m2/g以下であることがより好ましく、90m2/g以下であることがより好ましく、80m2/g以下であることがより好ましく、70m2/g以下であることがより好ましく、60m2/g以下であることがより好ましく、50m2/g以下であることがより好ましく、40m2/g以下であることがより好ましく、30m2/g以下であることがより好ましく、25m2/g以下であることがより好ましく、20m2/g以下であることがより好ましく、15m2/g以下であることがより好ましく、10m2/g以下であることがより好ましい。
電極用複合粒子の全細孔容積Vt (cm3/g)は、特に限定されないが、0.5(cm3/g)以下であることが好ましく、0.45(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.43(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.4(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.3(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.25(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.2(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.1(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.09(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.08(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.07(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.0691(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.05(cm3/g)以下であることがより好ましく、0.04(cm3/g)以下であることがより好ましい。全細孔容積Vtとは、窒素吸着等温線に対して公知のBJH(Barrett Joyner Halenda)式を用いることで計算することができる。
電極用複合粒子は、結着材をさらに含んでいてもよい。結着材としては、当該分野において一般に用いられる結着材であれば特に限定されるものではない。結着材としては、フッ素系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル系ポリマー、ポリビニル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマーが挙げられ、具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリイミド、ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリロニトリルおよびこれらの共重合体などが挙げられる。
結着材は、電極用複合粒子の20質量%以下で含むことができ、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
結着材は、電極用複合粒子の20質量%以下で含むことができ、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
(電極用複合粒子の製造方法)
本発明の一実施形態は、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程を含む電極用複合粒子の製造方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程と、加熱混練後に固体電解質粒子を加えて混合する工程を含む電極用複合粒子の製造方法を提供する。電極用複合粒子の製造に用いる炭素粒子については、上述したとおりである。
ここでいう硫黄の組成物とは、硫黄に金属硫化物などが含まれているものを指す。金属硫化物としては、例えば、TiS2、MoS2、FeS、FeS2、CuS、Ni3S2、NbSe3などが挙げられる。金属硫化物は、硫黄の組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
本発明の一実施形態は、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程を含む電極用複合粒子の製造方法を提供する。また、本発明の一実施形態は、硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程と、加熱混練後に固体電解質粒子を加えて混合する工程を含む電極用複合粒子の製造方法を提供する。電極用複合粒子の製造に用いる炭素粒子については、上述したとおりである。
ここでいう硫黄の組成物とは、硫黄に金属硫化物などが含まれているものを指す。金属硫化物としては、例えば、TiS2、MoS2、FeS、FeS2、CuS、Ni3S2、NbSe3などが挙げられる。金属硫化物は、硫黄の組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
二軸溶融混練装置の概略図を図1に示す。二軸溶融混練機は、加熱制御が可能なバレルと、バレル内部の二軸の並列スクリューとで構成され、単軸の混練機よりも強い剪断力を試料に与えることができる。また、バレルに熱を加えることで試料を加熱しながら連続的に混練することが可能な装置である。二軸溶融混練装置にはホッパーなどの装置が付加されていてもよい。
二軸溶融混練装置に硫黄の組成物と、炭素粒子とを加え、加熱混練することによって、硫黄を融解させつつ硫黄と炭素粒子とを混練することができる。加熱混練時の温度は、硫黄の沸点を超える温度でなければ特に限定されないが、120℃~400℃であることが好ましく、120℃~300℃の範囲であることがより好ましく、120℃~250℃の範囲であることがより好ましく、120℃~200℃の範囲であることがより好ましく、140℃~200℃の範囲であることがより好ましい。
スクリューの回転速度は、特に限定されないが、例えば1rpm~400rpmの範囲で設定することができる。スクリューの直径も特に限定されず、二軸溶融混練装置の大きさによって変化し得るが、例えば0.5mm~50mmの範囲で設定することができる。スクリューの形状も特に限定されない。二軸溶融混練処理した試料を回収したのち、再度二軸溶融混連装置に加えて同様の処理を行ってもよい。
二軸溶融混練装置に硫黄の組成物と、炭素粒子とを加え、加熱混練することによって、硫黄を融解させつつ硫黄と炭素粒子とを混練することができる。加熱混練時の温度は、硫黄の沸点を超える温度でなければ特に限定されないが、120℃~400℃であることが好ましく、120℃~300℃の範囲であることがより好ましく、120℃~250℃の範囲であることがより好ましく、120℃~200℃の範囲であることがより好ましく、140℃~200℃の範囲であることがより好ましい。
スクリューの回転速度は、特に限定されないが、例えば1rpm~400rpmの範囲で設定することができる。スクリューの直径も特に限定されず、二軸溶融混練装置の大きさによって変化し得るが、例えば0.5mm~50mmの範囲で設定することができる。スクリューの形状も特に限定されない。二軸溶融混練処理した試料を回収したのち、再度二軸溶融混連装置に加えて同様の処理を行ってもよい。
二軸溶融混練機に供する際に、硫黄の組成物と、炭素粒子に加えて、固体電解質を加えてもよい。固体電解質には上述したものを用いることができる。
二軸溶融混練装置で処理したあとの電極用複合粒子に対して、更にボールミルによる混合を行ってもよい。ボールミルとしては、例えば遊星型ボールミルが挙げられる。例えば、遊星型ボールミルを使用する場合、例えば、ボールの直径4~10mm、50~600rpmの回転速度、0.1~100時間の処理時間、1~100 kWh/原料1kgの条件が挙げられる。ボールの素材としては、例えばジルコニアが挙げられる。
二軸溶融混練装置で処理したあとの電極用複合粒子に、更に固体電解質を加えてボールミルによる混合を行ってもよい。ボールミルの条件については上述したとおりである。硫黄と、炭素粒子と、固体電解質を含む電極用複合粒子を製造する際は、硫黄と、炭素粒子と、固体電解質とを二軸溶融混練装置に加えて処理するよりも、硫黄と、炭素粒子に対して二軸溶融混練処理を行った後に、固体電解質を加えて、例えばボールミルによる混合を行うことが好ましい。
二軸溶融混練装置で処理したあとの電極用複合粒子に対して、更にボールミルによる混合を行ってもよい。ボールミルとしては、例えば遊星型ボールミルが挙げられる。例えば、遊星型ボールミルを使用する場合、例えば、ボールの直径4~10mm、50~600rpmの回転速度、0.1~100時間の処理時間、1~100 kWh/原料1kgの条件が挙げられる。ボールの素材としては、例えばジルコニアが挙げられる。
二軸溶融混練装置で処理したあとの電極用複合粒子に、更に固体電解質を加えてボールミルによる混合を行ってもよい。ボールミルの条件については上述したとおりである。硫黄と、炭素粒子と、固体電解質を含む電極用複合粒子を製造する際は、硫黄と、炭素粒子と、固体電解質とを二軸溶融混練装置に加えて処理するよりも、硫黄と、炭素粒子に対して二軸溶融混練処理を行った後に、固体電解質を加えて、例えばボールミルによる混合を行うことが好ましい。
(電極活物質)
本発明は、本発明の電極用複合粒子を含む電極活物質を提供する。電極活物質は、本発明の電極用複合粒子のみからなっていてもよいが、結着材、導電材、固体電解質等を含んでいてもよい。結着材、固体電解質については、上述の通りである。
電極活物質は、本発明の電極用複合粒子を主成分として含むことが好ましい。主成分として含むとは、電極活物質の全質量に対して電極用複合粒子を50質量%より多く含むことを指す。電極用複合粒子の質量割合は、電極活物質の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
本発明は、本発明の電極用複合粒子を含む電極活物質を提供する。電極活物質は、本発明の電極用複合粒子のみからなっていてもよいが、結着材、導電材、固体電解質等を含んでいてもよい。結着材、固体電解質については、上述の通りである。
電極活物質は、本発明の電極用複合粒子を主成分として含むことが好ましい。主成分として含むとは、電極活物質の全質量に対して電極用複合粒子を50質量%より多く含むことを指す。電極用複合粒子の質量割合は、電極活物質の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
導電材としては、主に炭素系導電材と金属系導電材とがある。炭素系導電材としては、例えば、上述した炭素粒子が挙げられる。金属系導電材としては、例えば、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt、Zn又はMn等の金属又はこれらの合金等が挙げられる。このうち、炭素系導電材を用いることが好ましい。導電材は、1種類の導電材であってもよいし、複数の導電材の組み合わせであってもよい。
電極活物質中の電極用複合粒子以外の結着材、導電材及び固体電解質の含有量の範囲は、それぞれ、40質量%、35質量%、30質量%、25質量%、20質量%、15質量%、10質量%、8質量%、6質量%、5質量%、4質量%、3質量%、2.5質量%、2質量%、1.5質量%、1質量%、0.75質量%、0.5質量%、0.4質量%、0.3質量%、0.2質量%、0.1質量%から選択される任意の上限値及び下限値の組み合わせで表される範囲とすることができる。電極活物質中の結着材、導電材及び固体電解質の含有量は、それぞれ電極活物質の全質量の40質量%以下であり、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。ただし、結着材、導電材及び固体電解質の含有量の和は、好ましくは50質量%を越えず、より好ましくは40質量%未満であり、より好ましくは35質量%未満であり、より好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは30質量%未満であり、より好ましくは25質量%未満であり、より好ましくは20質量%未満であり、より好ましくは15質量%未満であり、より好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは7.5質量%未満であり、より好ましくは5質量%未満である。
(電極)
本発明は、本発明の電極用複合粒子又は上述の本発明の電極活物質を含む電極を提供する。電極は、本発明の電極用複合粒子又は上述の本発明の電極活物質のみからなっていてもよいが、結着材、導電材、固体電解質、電極活物質等を更に含んでいてもよい。結着材、導電材、固体電解質については、上述の通りである。本発明の電極は正極又は負極のいずれであってもよいが、好ましくは正極である。
電極は、本発明の電極用複合粒子を主成分として含むことが好ましい。主成分として含むとは、電極の全質量に対して電極用複合粒子を50質量%より多く含むことを指す。電極用複合粒子の質量割合は、電極の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
本発明は、本発明の電極用複合粒子又は上述の本発明の電極活物質を含む電極を提供する。電極は、本発明の電極用複合粒子又は上述の本発明の電極活物質のみからなっていてもよいが、結着材、導電材、固体電解質、電極活物質等を更に含んでいてもよい。結着材、導電材、固体電解質については、上述の通りである。本発明の電極は正極又は負極のいずれであってもよいが、好ましくは正極である。
電極は、本発明の電極用複合粒子を主成分として含むことが好ましい。主成分として含むとは、電極の全質量に対して電極用複合粒子を50質量%より多く含むことを指す。電極用複合粒子の質量割合は、電極の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
本発明の電極に、必要に応じて、本発明の電極活物質以外の電極活物質を加えてもよい。電極活物質としては、例えば、電極が正極であれば、Li4Ti5O12、LiCoO2、LiMnO2、LiVO2、LiCrO2、LiNiO2、Li2NiMn3O8、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiFeO2、Li3V2(PO4)3又はLiMn2O4等が挙げられる。電極が負極であれば、負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック又はVGCFのような炭素系材料、Si、Li合金、Na合金、Au, Pt, Pd, Ag, Al, Bi, Sn, Sb, Zn, Mg, K, Ca又はNa等の金属、Li4/3Ti5/3O4、Li3V2(PO4)3又はSnO等の種々の遷移金属酸化物等が挙げられる。これらの負極活物質はそれぞれ単独で用いられていてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられてもよい。電極活物質の含有量は、電極の全質量の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
電極は、例えば、LiNbO3、NaNbO3、Al2O3又はNiS等の材料で被覆されていてもよい。これらの電極はそれぞれ単独で用いられていてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
電極は、例えば、LiNbO3、NaNbO3、Al2O3又はNiS等の材料で被覆されていてもよい。これらの電極はそれぞれ単独で用いられていてもよく、また2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
電極は、例えば、電極活物質及び、任意に結着材、導電材又は電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。プレスの圧力は、例えば50-2000MPaの範囲の圧力から選択されてもよい。
(電極複合体)
本発明は、電極(好ましくは正極)と集電体とが組み合わされた電極複合体も提供する。集電体と組み合わされる電極は、上記本発明の電極である。
集電体としては、本発明の電極と組み合わせることができ、集電体としての機能が果たせるものであれば材質、形状等は特に限定されない。集電体の形状としては、均一な合金板の様なものであっても、孔を有した形状であってもよい。また、箔、シート状、フィルム状の形態であってもよい。
本発明は、電極(好ましくは正極)と集電体とが組み合わされた電極複合体も提供する。集電体と組み合わされる電極は、上記本発明の電極である。
集電体としては、本発明の電極と組み合わせることができ、集電体としての機能が果たせるものであれば材質、形状等は特に限定されない。集電体の形状としては、均一な合金板の様なものであっても、孔を有した形状であってもよい。また、箔、シート状、フィルム状の形態であってもよい。
集電体の素材としては、例えば、Al、Ni、Cu、Ti、Fe、Co、Ge、Cr、Mo、W、Ru、Pd、ステンレス鋼、又は鋼等が挙げられる。集電体は、上記素材に加えて、Au、Alのいずれかによってコーティングされていてもよい。コーティングの厚さは特に限定されないが、10nm~100μmであることが好ましい。また、コーティングは均一の厚さを有していることが好ましい。
コーティング方法としては、集電体をコーティングできれば特に限定されないが、例えばスパッタコーターを用いて表面に蒸着させて形成することができる。
本発明の電極複合体は、それぞれ電極、集電体として形成したものを合わせて電極複合体としてもよいし、集電体上に直接電極を形成してもよい。直接形成する場合は、公知の方法を用いて、集電体の表面に電極活物質を塗布してもよい。
コーティング方法としては、集電体をコーティングできれば特に限定されないが、例えばスパッタコーターを用いて表面に蒸着させて形成することができる。
本発明の電極複合体は、それぞれ電極、集電体として形成したものを合わせて電極複合体としてもよいし、集電体上に直接電極を形成してもよい。直接形成する場合は、公知の方法を用いて、集電体の表面に電極活物質を塗布してもよい。
(二次電池)
本発明は、本発明の電極又は電極複合体を含む二次電池を提供する。二次電池としては、一般的なリチウムイオン二次電池でも、全固体二次電池であってもよい。本発明の電極は、正極及び負極のいずれにも用いることができる。
本発明の電極を正極として用いた場合、負極は、充放電時に、Liが可動イオンとして正極との間でやりとりすることができれば特に限定されない。このような負極としては、酸化還元電位の低いものが好ましく、Liの酸化還元電位に対して0.7V以下の平均充放電電位を有するものがより好ましい。また、本発明の電極を負極として用いた場合、正極は、充放電時に、Liが可動イオンとして負極との間でやりとりすることができれば特に限定されない。このような正極としては、酸化還元電位の高いものが好ましく、Liの酸化還元電位に対して3.5V以上の平均充放電電位を有するものがより好ましい。正極及び負極に用いられる電極活物質は、上記の電極活物質等から構成され得る。本発明の電極と組み合わせ得る正極及び負極は、電極活物質のみからなっていてもよく、上述の結着材、導電材、固体電解質等と混合されていてもよい。
本発明は、本発明の電極又は電極複合体を含む二次電池を提供する。二次電池としては、一般的なリチウムイオン二次電池でも、全固体二次電池であってもよい。本発明の電極は、正極及び負極のいずれにも用いることができる。
本発明の電極を正極として用いた場合、負極は、充放電時に、Liが可動イオンとして正極との間でやりとりすることができれば特に限定されない。このような負極としては、酸化還元電位の低いものが好ましく、Liの酸化還元電位に対して0.7V以下の平均充放電電位を有するものがより好ましい。また、本発明の電極を負極として用いた場合、正極は、充放電時に、Liが可動イオンとして負極との間でやりとりすることができれば特に限定されない。このような正極としては、酸化還元電位の高いものが好ましく、Liの酸化還元電位に対して3.5V以上の平均充放電電位を有するものがより好ましい。正極及び負極に用いられる電極活物質は、上記の電極活物質等から構成され得る。本発明の電極と組み合わせ得る正極及び負極は、電極活物質のみからなっていてもよく、上述の結着材、導電材、固体電解質等と混合されていてもよい。
二次電池に使用される電解質層は、主として電解液で構成されるタイプと、固体電解質で構成されるタイプに大別できる。
(1)非水電解質層
本発明に使用する非水電解質層は、電解質と非水溶媒との混合物から構成できる。
電解質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3又はLiN(SO3CF3)2等が挙げられる。
非水溶媒としては、特に制限されず、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの代表的なものとして、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルホルメート、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、エチルメチルカーボネート、1,4-ジオキサン、4-メチル-2-ペンタノン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2-ジクロロエタン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に使用する非水電解質層は、電解質と非水溶媒との混合物から構成できる。
電解質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiB(C6H5)4、LiCl、LiBr、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3又はLiN(SO3CF3)2等が挙げられる。
非水溶媒としては、特に制限されず、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの代表的なものとして、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルホルメート、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、エチルメチルカーボネート、1,4-ジオキサン、4-メチル-2-ペンタノン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2-ジクロロエタン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(2)固体電解質層
固体電解質層を構成する固体電解質は、特に限定されず、全固体二次電池に用いることができるものが使用できる。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料で構成される。
硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-GeS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、Li7P3S11、Li3PS4、又はLi3.25P0.75S4等が挙げられる。これらの硫化物系固体電解質材料はそれぞれ単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
酸化物系固体電解質材料の例としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O3、Li2O-SiO2、Li2O-P2O5、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3.6SI0.6P0.4O4又はLi3BO3-Li2SO4-Li2CO3等が挙げられる。また、本発明の固体電解質を用いることもできる。これらの酸化物系固体電解質材料はそれぞれ単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
固体電解質層を構成する固体電解質は、特に限定されず、全固体二次電池に用いることができるものが使用できる。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料で構成される。
硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-GeS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、Li7P3S11、Li3PS4、又はLi3.25P0.75S4等が挙げられる。これらの硫化物系固体電解質材料はそれぞれ単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
酸化物系固体電解質材料の例としては、例えば、Li2O-B2O3-P2O3、Li2O-SiO2、Li2O-P2O5、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3.6SI0.6P0.4O4又はLi3BO3-Li2SO4-Li2CO3等が挙げられる。また、本発明の固体電解質を用いることもできる。これらの酸化物系固体電解質材料はそれぞれ単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
固体電解質層には、上記固体電解質材料以外に、全固体二次電池に使用される他の成分を含んでいてもよい。例えば、P、As、Ti、Fe、Zn又はBi等の金属酸化物、上記結着材、導電材などが挙げられる。
固体電解質は、例えば、所定の厚さになるようにプレスすることにより固体電解質層とすることができる。プレスの圧力は、50-2000 MPaの範囲の圧力から選択されてもよい。
(二次電池の製造方法)
本発明は、本発明の電極、電極複合体を用いた二次電池の製造方法も提供する。
(I) リチウムイオン二次電池
リチウムイオン二次電池を製造する場合、例えば、本発明の正極と、セパレータと、リチウムイオン二次電池用の負極との積層体を電池缶に挿入し、電池缶に電解質及び非水溶媒の混合物を注ぐことによりリチウムイオン二次電池を得ることができる。
セパレータとしては、微多孔性の高分子フィルムを用いることが好ましい。具体的には、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリブテン等のポリオレフィン高分子よりなるセパレータを使用できる。
正極、セパレータ及び負極は、積層してもよいし、捲いた形状にしてもよい。正極、負極の代わりに、本発明の電極複合体を用いてもよい。
(II) 全固体電池
全固体電池は、例えば、本発明の正極と、固体電解質層と、負極及び集電体を積層し、プレスすることによりセルを得、これを容器に固定して得ることができる。
電極と固体電解質層との間には、Au、Pt、In、Al、Sn又はSi等から選択される金属層を設けてもよい。金属層の厚みは、10 nm~100μmであることが好ましい。
本発明は、本発明の電極、電極複合体を用いた二次電池の製造方法も提供する。
(I) リチウムイオン二次電池
リチウムイオン二次電池を製造する場合、例えば、本発明の正極と、セパレータと、リチウムイオン二次電池用の負極との積層体を電池缶に挿入し、電池缶に電解質及び非水溶媒の混合物を注ぐことによりリチウムイオン二次電池を得ることができる。
セパレータとしては、微多孔性の高分子フィルムを用いることが好ましい。具体的には、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリブテン等のポリオレフィン高分子よりなるセパレータを使用できる。
正極、セパレータ及び負極は、積層してもよいし、捲いた形状にしてもよい。正極、負極の代わりに、本発明の電極複合体を用いてもよい。
(II) 全固体電池
全固体電池は、例えば、本発明の正極と、固体電解質層と、負極及び集電体を積層し、プレスすることによりセルを得、これを容器に固定して得ることができる。
電極と固体電解質層との間には、Au、Pt、In、Al、Sn又はSi等から選択される金属層を設けてもよい。金属層の厚みは、10 nm~100μmであることが好ましい。
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。以下の実施例及び比較例において、硫黄としては鶴見化学工業社のものを、炭素粒子としてはライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社のECP-600JDを用いた。
二軸溶融混練機としてThree-Tec GmbH社のHot-Melt Kneader: HMK, ZE-9を用いた。遊星ボールミルを用いた混合にはFritsch製遊星型ボールミル装置PULVERISETTE 7(P-7)を用いた。定電流充放電測定の測定には、ナガノ製充放電測定装置(BTS-2004)を用いた。走査型電子顕微鏡(SEM)としては、日立ハイテクノロジーズ製SU-3500を用い、エネルギー分散型X線分析(EDX)としては、EDAX社製ELEMENT EDSを用いた。イオン伝導度の測定にはエーディーシー株式会社製のデジタルエレクトロメーター8252を用いた。
二軸溶融混練機としてThree-Tec GmbH社のHot-Melt Kneader: HMK, ZE-9を用いた。遊星ボールミルを用いた混合にはFritsch製遊星型ボールミル装置PULVERISETTE 7(P-7)を用いた。定電流充放電測定の測定には、ナガノ製充放電測定装置(BTS-2004)を用いた。走査型電子顕微鏡(SEM)としては、日立ハイテクノロジーズ製SU-3500を用い、エネルギー分散型X線分析(EDX)としては、EDAX社製ELEMENT EDSを用いた。イオン伝導度の測定にはエーディーシー株式会社製のデジタルエレクトロメーター8252を用いた。
以下に示すように複数の電極用複合粒子及び比較例の試料を作製しその性質について検討した。
(LPSの製造)
以下の実験において、固体電解質としてLi3PS4(LPS)を用いた。ここではLPSの製造方法について記載する。
LPSは、Li2SとP2S5を原料として、液相加振法によって合成した。Li2SとP2S5をモル比が3 : 1となるよう秤量し、Li2SとP2S5の総量1 gあたり10 mLとなるようにプロピオン酸エチル(SIGMA-ALDRICH, 99 %)を加え、溶液を調製した。この溶液にジルコニアボールを加え、振とう混合機(CM-1000, EYELA)で6時間振とうさせることによって固体電解質前駆体を得た。その後、上澄み液を除去し、1時間の減圧乾燥(25℃, -0.1 MPa)の後、2時間熱処理(200℃)することでLPSを合成した。合成したLi3PS4のイオン導電度は8.2×10-5 S/cmであった。
(LPSの製造)
以下の実験において、固体電解質としてLi3PS4(LPS)を用いた。ここではLPSの製造方法について記載する。
LPSは、Li2SとP2S5を原料として、液相加振法によって合成した。Li2SとP2S5をモル比が3 : 1となるよう秤量し、Li2SとP2S5の総量1 gあたり10 mLとなるようにプロピオン酸エチル(SIGMA-ALDRICH, 99 %)を加え、溶液を調製した。この溶液にジルコニアボールを加え、振とう混合機(CM-1000, EYELA)で6時間振とうさせることによって固体電解質前駆体を得た。その後、上澄み液を除去し、1時間の減圧乾燥(25℃, -0.1 MPa)の後、2時間熱処理(200℃)することでLPSを合成した。合成したLi3PS4のイオン導電度は8.2×10-5 S/cmであった。
実施例1(電極用複合粒子の作製1)
硫黄、炭素粒子及びLPSを二軸溶融混練機で加熱混練した電極用複合粒子を以下の手順で作製した。
硫黄、炭素粒子及びLPSを、質量比で硫黄:炭素粒子:LPS=50:10:40の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物を、二軸溶融混練機に加え、処理温度150℃、30rpm、パス回数1回で処理して実施例1の電極用複合粒子を作製した。
硫黄、炭素粒子及びLPSを二軸溶融混練機で加熱混練した電極用複合粒子を以下の手順で作製した。
硫黄、炭素粒子及びLPSを、質量比で硫黄:炭素粒子:LPS=50:10:40の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物を、二軸溶融混練機に加え、処理温度150℃、30rpm、パス回数1回で処理して実施例1の電極用複合粒子を作製した。
比較例1
比較として、二軸溶融混練機を用いず、遊星ボールミルを用いて処理した試料を以下の手順で作製した。
硫黄、炭素粒子及びLPSを、質量比で硫黄:炭素粒子:LPS=50:10:40の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物0.4gを、遊星型ボールミル装置に加えてボールミル処理を行い、比較例1の試料を作製した。ボールミル処理の条件としては、直径5mmのジルコニアボールを40g用い、370rpmの速度で120分間処理して行った。
比較として、二軸溶融混練機を用いず、遊星ボールミルを用いて処理した試料を以下の手順で作製した。
硫黄、炭素粒子及びLPSを、質量比で硫黄:炭素粒子:LPS=50:10:40の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物0.4gを、遊星型ボールミル装置に加えてボールミル処理を行い、比較例1の試料を作製した。ボールミル処理の条件としては、直径5mmのジルコニアボールを40g用い、370rpmの速度で120分間処理して行った。
比較例2
ボールミルの処理時間を180分にすること以外は比較例1と同様にして比較例2の試料を作製した。
ボールミルの処理時間を180分にすること以外は比較例1と同様にして比較例2の試料を作製した。
比較例3
ボールミルの処理時間を240分にすること以外は比較例1と同様にして比較例3の試料を作製した。
ボールミルの処理時間を240分にすること以外は比較例1と同様にして比較例3の試料を作製した。
比較例4
LPSを加えず、硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れること以外は比較例1と同様にして比較例4の試料を作製した。
LPSを加えず、硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れること以外は比較例1と同様にして比較例4の試料を作製した。
実施例2(電極用複合粒子の作製2)
硫黄と、炭素粒子とを二軸溶融混練機で加熱混練した電極用複合粒子を以下の手順で作製した。
硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物を、二軸溶融混練機に加え、処理温度150℃、30rpm、パス回数1回で処理し実施例2の電極用複合粒子を作製した。
硫黄と、炭素粒子とを二軸溶融混練機で加熱混練した電極用複合粒子を以下の手順で作製した。
硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合した。この混合物を、二軸溶融混練機に加え、処理温度150℃、30rpm、パス回数1回で処理し実施例2の電極用複合粒子を作製した。
実施例3(電極用複合粒子の作製3)
二軸溶融混練機による処理温度を170℃にすること以外は、実施例2と同様にして実施例4の電極用複合粒子を作製した。
二軸溶融混練機による処理温度を170℃にすること以外は、実施例2と同様にして実施例4の電極用複合粒子を作製した。
実施例4(電極用複合粒子の作製4)
二軸溶融混練機による処理温度を190℃にすること以外は、実施例2と同様にして実施例4の電極用複合粒子を作製した。
二軸溶融混練機による処理温度を190℃にすること以外は、実施例2と同様にして実施例4の電極用複合粒子を作製した。
実施例5(電極用複合粒子の作製5)
二軸溶融混練機による処理時のパス回数を2回にすること以外は、実施例2と同様にして実施例5の電極用複合粒子を作製した。
二軸溶融混練機による処理時のパス回数を2回にすること以外は、実施例2と同様にして実施例5の電極用複合粒子を作製した。
実施例6(電極用複合粒子の作製6)
二軸溶融混練機による処理時のパス回数を3回にすること以外は、実施例2と同様にして実施例6の電極用複合粒子を作製した。
二軸溶融混練機による処理時のパス回数を3回にすること以外は、実施例2と同様にして実施例6の電極用複合粒子を作製した。
実施例7(電極用複合粒子の作製7)
作製した実施例6の電極用複合粒子とLPSとを、遊星型ボールミル装置に質量比で電極用複合粒子:LPS=60:40の割合になるように合計0.4g加えた。これに対してボールミル処理を行い、LPSを含む実施例7の電極用複合粒子を作製した。ボールミル処理の条件としては、直径5mmのジルコニアボールを40g用い、370rpmの速度で120分間処理した。
作製した実施例6の電極用複合粒子とLPSとを、遊星型ボールミル装置に質量比で電極用複合粒子:LPS=60:40の割合になるように合計0.4g加えた。これに対してボールミル処理を行い、LPSを含む実施例7の電極用複合粒子を作製した。ボールミル処理の条件としては、直径5mmのジルコニアボールを40g用い、370rpmの速度で120分間処理した。
実施例8(電極用複合粒子の作製8)
ボールミルの処理時間を180分にすること以外は、実施例7と同様にして実施例8の電極用複合粒子を作製した。
ボールミルの処理時間を180分にすること以外は、実施例7と同様にして実施例8の電極用複合粒子を作製した。
実施例9(電極用複合粒子の作製9)
ボールミルの処理時間を240分にすること以外は、実施例7と同様にして実施例9の電極用複合粒子を作製した。
ボールミルの処理時間を240分にすること以外は、実施例7と同様にして実施例9の電極用複合粒子を作製した。
実施例10(電極用複合粒子の作製10)
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=75:25の比にすること以外は、実施例2と同様にして実施例10の電極用複合粒子を作製した。
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=75:25の比にすること以外は、実施例2と同様にして実施例10の電極用複合粒子を作製した。
実施例11(電極用複合粒子の作製11)
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=50:50の比にすること以外は、実施例2と同様にして実施例11の電極用複合粒子を作製した。
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=50:50の比にすること以外は、実施例2と同様にして実施例11の電極用複合粒子を作製した。
比較例5
比較として、硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合しただけの比較例5の試料を作製した。
比較として、硫黄と炭素粒子とを質量比で硫黄:炭素粒子=50:10の比になるように容器に入れ、ボルテックスミキサーで5分間振とうして混合しただけの比較例5の試料を作製した。
比較例6
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=75:25の比にすること以外は、比較例5と同様にして比較例6の試料を作製した。
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=75:25の比にすること以外は、比較例5と同様にして比較例6の試料を作製した。
比較例7
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=50:50の比にすること以外は、比較例5と同様にして比較例7の試料を作製した。
硫黄と炭素粒子との混合比を質量比で硫黄:炭素粒子=50:50の比にすること以外は、比較例5と同様にして比較例7の試料を作製した。
上述した実施例1~11、比較例1~7の特徴をまとめると以下の表1のようになる。
(充放電容量測定)
作製した電極用複合粒子及び試料を用いて充放電試験を行った。試験に用いるハーフセルには、円筒容器中の正極層、固体電解質層及び負極を一対のSUS製集電体で挟み、200MPaで1分間加圧することにより得た直径10 mmの圧縮成型体を使用した。正極層には調製した複合粒子7.5mgを、電解質層には80 mgのLPSを、負極にはリチウム/インジウム合金箔(モル比 Li/In = 0.79)を使用した。作製したハーフセルの電池性能は電池充放電試験装置(BTS2004, (株)ナガノ)を用いて25℃の恒温槽内で評価した。電圧範囲は0.5-2.5V(Li/Li+基準で1.1-3.1 V)とした。1サイクル目は充電・放電ともに電流密度0.25 mA/cm2 (0.04 C相当)で定電流(CC)充電モードで測定した。2サイクル目は充電・放電ともに0.38 mA/cm2 (0.06 C相当)で、定電流(CC)充電モードで測定した。3サイクル以降は、充電・放電ともに0.64 mA/cm2 (0.1 C相当)で、定電流(CC)充電モードで測定した。
作製した電極用複合粒子及び試料を用いて充放電試験を行った。試験に用いるハーフセルには、円筒容器中の正極層、固体電解質層及び負極を一対のSUS製集電体で挟み、200MPaで1分間加圧することにより得た直径10 mmの圧縮成型体を使用した。正極層には調製した複合粒子7.5mgを、電解質層には80 mgのLPSを、負極にはリチウム/インジウム合金箔(モル比 Li/In = 0.79)を使用した。作製したハーフセルの電池性能は電池充放電試験装置(BTS2004, (株)ナガノ)を用いて25℃の恒温槽内で評価した。電圧範囲は0.5-2.5V(Li/Li+基準で1.1-3.1 V)とした。1サイクル目は充電・放電ともに電流密度0.25 mA/cm2 (0.04 C相当)で定電流(CC)充電モードで測定した。2サイクル目は充電・放電ともに0.38 mA/cm2 (0.06 C相当)で、定電流(CC)充電モードで測定した。3サイクル以降は、充電・放電ともに0.64 mA/cm2 (0.1 C相当)で、定電流(CC)充電モードで測定した。
実施例1の電極用複合粒子及び比較例1の試料を用いて製造したハーフセルに対して充放電試験を行った結果を図2に示した。図2より、実施例1の電極用複合粒子の初期放電容量は383 mAh/g-Sであるのに対し、比較例1の試料は193 mAh/g-Sであることから、二軸溶融混練機を用いて作製した実施例1の電極用複合粒子は、比較例1の試料よりも優れた初期放電容量を有していることが示された。
実施例2~6、10及び11の電極用複合粒子を用いて製造したハーフセルに対して充放電試験を行った結果を図3A~Cにそれぞれ示した。また、これらの電極用複合粒子の充放電容量について以下の表2に示す。図3A~C及び表2より、実施例2~6、10及び11の電極用複合粒子は比較例1の試料よりも優れた充放電容量を有していることが示された。
(電極用複合粒子の観察)
作製した実施例2~4の電極用複合粒子及び比較例5の試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図4A、図4B、図5A及び図5Bにそれぞれ示した。図4Aは比較例5の試料のSEM画像を、図4Bは実施例2の電極用複合粒子のSEM画像を、図5Aは実施例2~4の電極用複合粒子のSEM画像を、図5Bは実施例2、5及び6のSEM画像をそれぞれ示す。参考に、本発明で用いた硫黄(D50=23.5μm)、炭素粒子(一次粒子径34nm)及びLPS(D50=8.5μm)のSEM画像を図6A~Cにそれぞれ示す。図6Aは硫黄を、図6Bは炭素粒子を、そして図6CはLPSのSEM画像である。図4A及び図4Bより、図4Aではナノメートルサイズの炭素粒子の凝集体が多数確認されたのに対し、図4Bでは炭素粒子の凝集体はほとんど確認されず、数十μm程度の粒子が観察されることがわかる。図5A及び図5Bから、実施例2~6のいずれの粒子においても、粒子径が数十μmから100μm程度の粒子が観察されることが分かる。また、各粒子の表面は、炭素粒子で覆われていることが分かる。これらのことから、二軸溶融混練機を用いて溶融混練することで、溶融した硫黄が炭素粒子を取り込んで大型化し、炭素粒子が硫黄の表面及び内部に分散した電極用複合粒子を製造できることが示された。
作製した実施例2~4の電極用複合粒子及び比較例5の試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図4A、図4B、図5A及び図5Bにそれぞれ示した。図4Aは比較例5の試料のSEM画像を、図4Bは実施例2の電極用複合粒子のSEM画像を、図5Aは実施例2~4の電極用複合粒子のSEM画像を、図5Bは実施例2、5及び6のSEM画像をそれぞれ示す。参考に、本発明で用いた硫黄(D50=23.5μm)、炭素粒子(一次粒子径34nm)及びLPS(D50=8.5μm)のSEM画像を図6A~Cにそれぞれ示す。図6Aは硫黄を、図6Bは炭素粒子を、そして図6CはLPSのSEM画像である。図4A及び図4Bより、図4Aではナノメートルサイズの炭素粒子の凝集体が多数確認されたのに対し、図4Bでは炭素粒子の凝集体はほとんど確認されず、数十μm程度の粒子が観察されることがわかる。図5A及び図5Bから、実施例2~6のいずれの粒子においても、粒子径が数十μmから100μm程度の粒子が観察されることが分かる。また、各粒子の表面は、炭素粒子で覆われていることが分かる。これらのことから、二軸溶融混練機を用いて溶融混練することで、溶融した硫黄が炭素粒子を取り込んで大型化し、炭素粒子が硫黄の表面及び内部に分散した電極用複合粒子を製造できることが示された。
(粒度分布の測定)
作製した実施例2~6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の粒度分布を測定した。粒度分布の測定には島津製作所製SALD2100を用いて測定した。ここでの粒度は、体積平均粒子径を指す。実施例2~6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の粒度分布の結果を図7A及び図7Bに、D10、D50及びD90の測定結果を表3にそれぞれ示す。
作製した実施例2~6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の粒度分布を測定した。粒度分布の測定には島津製作所製SALD2100を用いて測定した。ここでの粒度は、体積平均粒子径を指す。実施例2~6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の粒度分布の結果を図7A及び図7Bに、D10、D50及びD90の測定結果を表3にそれぞれ示す。
表3、図7A及び図7Bより、二軸溶融混練機を用いて溶融混練することで、溶融混練を行わない試料に比べて粒子径が大きくなっていることが分かる。
実施例2~6の電極用複合粒子と同様に、実施例10、11の電極用複合粒子と比較例6及び7の試料に対しても粒度分布を測定した。実施例10及び比較例6の結果を図7Cに、実施例11及び比較例7の結果を図7Dにそれぞれ示す。また、D10、D50及びD90の測定結果を表4にそれぞれ示す。
表4、図7C及び図7Dより、二軸溶融混練機を用いて溶融混練した実施例10の電極用複合粒子は、硫黄と炭素粒子を実施例10と同じ割合で混合しただけの比較例6に比べて粒子径が大きくなっていることが分かる。実施例11の電極用複合粒子についても、同様に比較例7の試料に比べて粒子径が大きくなっていることが分かる。二軸溶融混練機を用いて溶融混練することで、溶融した硫黄同士が炭素粒子を取り込みながらくっつき、粒子径の大きな粒子になることが分かる。
(窒素の吸着試験)
作製した実施例2~6、10、11の電極用複合粒子と比較例5~7の試料の窒素吸着等温線を作成した。窒素吸着等温線の作成は以下のようにして行った。
試料を1Pa, 50℃の条件下に置き3時間減圧乾燥を行った。減圧乾燥後の試料のN2吸着等温線(77 K)を、ガス/蒸気吸着装置(BELSOP-mini II, マイクロトラック・ベル製)で測定した。
作製した実施例2~6、10、11の電極用複合粒子と比較例5~7の試料の窒素吸着等温線を作成した。窒素吸着等温線の作成は以下のようにして行った。
試料を1Pa, 50℃の条件下に置き3時間減圧乾燥を行った。減圧乾燥後の試料のN2吸着等温線(77 K)を、ガス/蒸気吸着装置(BELSOP-mini II, マイクロトラック・ベル製)で測定した。
測定した窒素吸着等温線を図8A~Dに示す。図8Aには実施例2~4の電極用複合粒子と比較例5の試料の測定結果を示し、図8Bには実施例2、5及び6の電極用複合粒子と比較例5の試料の測定結果を示し、図8Cには実施例6の電極用複合粒子と比較例4、5の試料の測定結果を示し、図8Dには実施例2、10、11の電極用複合粒子と比較例5~7の試料の測定結果をそれぞれ示している。これらの測定結果をもとに算出したBET比表面積及び全細孔容積を表5に示す。
表5及び図8A、Bより、二軸溶融混練機を用いて溶融混練した実施例2~6の電極用複合粒子は、硫黄と炭素粒子を同じ割合で混合しただけの比較例5に比べてBET比表面積が低下していることがわかる。表5及び図8Cより、二軸溶融混練機を用いて溶融混練した実施例6の電極用複合粒子についても同様に、硫黄と炭素粒子を同じ割合で混合しただけの比較例5に比べてBET比表面積が低下していることがわかる。表5及び図8Dより、二軸溶融混練機を用いて溶融混練した実施例10の電極用複合粒子は、同じ割合で混合しただけの比較例6に比べてBET比表面積が低下していることがわかる。実施例11の電極用複合粒子についても同様に、比較例7の試料に比べてBET比表面積が低下していることがわかる。
本実験において、用いている炭素粒子単体の窒素最大吸着量は1500 ml(STP)/gであり、硫黄が細孔を持たないと仮定した場合、硫黄と炭素粒子の混合物の窒素最大吸着量は実施例2の場合、硫黄:炭素粒子=50:10で250 ml(STP)/gなのに対し、実施例2の電極用複合粒子の吸着量は36.6 ml(STP)/gであり、吸着量が低下した。以上のことから、溶融混練により硫黄が炭素粒子を取り込み、炭素粒子の孔に硫黄が含浸したことが示された。
本実験において、用いている炭素粒子単体の窒素最大吸着量は1500 ml(STP)/gであり、硫黄が細孔を持たないと仮定した場合、硫黄と炭素粒子の混合物の窒素最大吸着量は実施例2の場合、硫黄:炭素粒子=50:10で250 ml(STP)/gなのに対し、実施例2の電極用複合粒子の吸着量は36.6 ml(STP)/gであり、吸着量が低下した。以上のことから、溶融混練により硫黄が炭素粒子を取り込み、炭素粒子の孔に硫黄が含浸したことが示された。
(XRD測定)
実施例6の電極用複合粒子及び比較例1、5の試料に対してX線回折(XRD)測定を行った。X線回折装置としては、Rigaku社製 SmartLabを用い、試料をセルのくぼみが完全に埋まるように一定のかさ体積で充填して、CuKα線(= 1.54056×10 -10 m)を用い、管電圧45 kV、管電流200 mA、走査角度2θ=10°~60°、サンプリング間隔0.02°、および走査速度10°min-1の条件で構造解析を行った。
実施例6の電極用複合粒子及び比較例1、5の試料に対してX線回折(XRD)測定を行った。X線回折装置としては、Rigaku社製 SmartLabを用い、試料をセルのくぼみが完全に埋まるように一定のかさ体積で充填して、CuKα線(= 1.54056×10 -10 m)を用い、管電圧45 kV、管電流200 mA、走査角度2θ=10°~60°、サンプリング間隔0.02°、および走査速度10°min-1の条件で構造解析を行った。
XRD測定の結果を図9A及び9Bにそれぞれ示す。図9A及び9Bより、比較例1及び5の試料には硫黄に由来するピークが強く表れているに対し、実施例6の電極用複合粒子ではピークが小さくなっていることが分かる。これは、溶融混練によって炭素粒子内に含浸した硫黄が非晶質になったためだと考えられる。このことから、溶融混練処理を行うことで、炭素粒子の内部に非晶質の硫黄を有した電極用複合粒子を得られることが示された。
(安息角の測定)
実施例6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の安息角を測定した。ここでの安息角は静的安息角であり、具体的には、セイシン企業製マルチテスターMT-1001k型を用いて以下のように測定した。
測定対象となる電極用複合粒子又は試料を一定の高さの漏斗から水平な基板の上に重力落下させ、堆積した粉体が形成する自由表面が水平面となる角度を測定することで測定した。
実施例6の電極用複合粒子及び比較例5の試料の安息角を測定した。ここでの安息角は静的安息角であり、具体的には、セイシン企業製マルチテスターMT-1001k型を用いて以下のように測定した。
測定対象となる電極用複合粒子又は試料を一定の高さの漏斗から水平な基板の上に重力落下させ、堆積した粉体が形成する自由表面が水平面となる角度を測定することで測定した。
安息角の測定結果を図10A及び10Bに示す。比較例5の試料の安息角は58.4°だったのに対し、実施例6の電極用複合粒子の安息角は44.1°であった。このことから、溶融混練によって製造した電極用複合粒子は流動性が向上することがわかる。
(SEM-EDX測定)
実施例6の電極用複合粒子及び比較例5の試料をSEM-EDXに供した。測定は加速電圧8kVで行った。
実施例6の電極用複合粒子の測定結果を図11Aに、比較例5の試料の結果を図11Bにそれぞれ示した。図11A及び11B中のCは炭素のマッピング画像であり、Sは硫黄のマッピング画像を示す。図11A及び11Bより、比較例5の試料ではCとSのマッピングが一致していないのに対し、実施例6の電極用複合粒子ではCとSのマッピングが一致していることが分かる。このことから、溶融混練によって溶融した硫黄が炭素粒子を取り込んで粒子を形成していることが示された。
実施例6の電極用複合粒子及び比較例5の試料をSEM-EDXに供した。測定は加速電圧8kVで行った。
実施例6の電極用複合粒子の測定結果を図11Aに、比較例5の試料の結果を図11Bにそれぞれ示した。図11A及び11B中のCは炭素のマッピング画像であり、Sは硫黄のマッピング画像を示す。図11A及び11Bより、比較例5の試料ではCとSのマッピングが一致していないのに対し、実施例6の電極用複合粒子ではCとSのマッピングが一致していることが分かる。このことから、溶融混練によって溶融した硫黄が炭素粒子を取り込んで粒子を形成していることが示された。
(充放電レートの変化による影響)
実施例7~9の電極用複合粒子及び比較例1~3の試料を用いて作製したハーフセルを用い、充放電レートを変化させて充放電容量を測定して比較した。充放電容量の測定は上述した方法と同様にして行った。
実施例7~9の電極用複合粒子及び比較例1~3の試料を用いて作製したハーフセルを用い、充放電レートを変化させて充放電容量を測定して比較した。充放電容量の測定は上述した方法と同様にして行った。
実施例7の電極用複合粒子及び比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの充放電曲線を図12に示す。図12より、実施例7の電極用複合粒子を用いて作製したハーフセルの初期放電容量は871 mAh/g-Sであり、比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの初期放電容量は185 mAh/g-Sであった。このことから、実施例7の電極用複合粒子を用いて作製したハーフセルの初期放電容量は比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの初期放電容量の約4.7倍と高い容量を示すことがわかる。
実施例7の電極用複合粒子及び比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの充放電レートを変化させた結果を図13に示す。図13より、比較例1の試料を用いて作製したハーフセルでは、充放電レートを高くすることで容量が大きく低下し、0.1Cの時に充放電容量がほぼ0になることがわかった。対して、実施例7の電極用複合粒子を用いて作製したハーフセルでは、充放電レートが0.1の時の初期放電容量が532 mAh/g-S、初期充電容量が193 mAh/g-Sと高い容量を有していることがわかる。
実施例7の電極用複合粒子及び比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの充放電サイクル毎の充放電容量を図14に示す。各サイクルのCレートは1サイクル目が0.04 C、2サイクル目が0.06 C、3-5サイクル目が0.1 Cである。図14より、比較例1の試料を用いて作製したハーフセルの充放電容量は3サイクル目には充放電容量がほぼ0になったのに対し、実施例7の電極用複合粒子を用いて作製したハーフセルでは、5サイクルでも充放電容量が維持されることがわかった。このことから、溶融混練処理を行った電極用複合粒子を用いて全固体電池を製造することにより、電池の性能が向上することが示された。
実施例7~9の電極用複合粒子及び比較例1~3の試料を用いて作製したハーフセルの充放電容量を測定して比較した。ここでの結果は、各ハーフセルに対して2回充放電試験を行い、その平均値を示している。測定結果を図15及び表6に示す。図15及び表6より、ボールミルの処理時間に関わらず、溶融混練処理を行った電極用複合粒子を用いた実施例7~9のハーフセルは、ボールミルのみを行った比較例1~3の試料を用いたハーフセルに比べ、優れた充放電容量を有していることが示された。
(インピーダンス測定)
実施例7~9の電極用複合粒子及び比較例1~3の試料を用いて作製したハーフセルを用い、インピーダンス測定を行った。インピーダンス測定は以下の手順で行った。
各ハーフセルを、ナガノ製充放電測定装置を用いて25℃の恒温槽内で1サイクル充放電、2サイクル放電した。このときの電圧範囲は0.5-2.5 V(Li/Li+基準で1.1~3.1 V)で、電流密度は、1, 2サイクルともに0.25 mA/cm2 (0.04 C相当)、定電流(CC)充放電モードとして設定した。2サイクル放電後の各ハーフセルを、高性能電気化学測定システム(SP-200,Bio-Logic,Sciences Instruments)を用いて交流インピーダンス測定を行うことで電荷移動抵抗を評価した。このとき印加電圧は10 mV、周波数範囲は7 MHz~1 mHzとした。
実施例7~9の電極用複合粒子及び比較例1~3の試料を用いて作製したハーフセルを用い、インピーダンス測定を行った。インピーダンス測定は以下の手順で行った。
各ハーフセルを、ナガノ製充放電測定装置を用いて25℃の恒温槽内で1サイクル充放電、2サイクル放電した。このときの電圧範囲は0.5-2.5 V(Li/Li+基準で1.1~3.1 V)で、電流密度は、1, 2サイクルともに0.25 mA/cm2 (0.04 C相当)、定電流(CC)充放電モードとして設定した。2サイクル放電後の各ハーフセルを、高性能電気化学測定システム(SP-200,Bio-Logic,Sciences Instruments)を用いて交流インピーダンス測定を行うことで電荷移動抵抗を評価した。このとき印加電圧は10 mV、周波数範囲は7 MHz~1 mHzとした。
インピーダンス測定を行った結果を図16及び表7にそれぞれ示す。図16及び表7より、溶融混練処理の有無によって抵抗値は変化しなかった。
(イオン伝導度の測定)
実施例9の電極用複合粒子及び比較例3の試料のイオン伝導度を、電子ブロッキングセルを用いて測定した。図17に電子ブロッキングセルの概略図を示す。電子ブロッキングセルは以下のようにして製造した。
内径10.1 mmのポリカーボネートチューブに固体電解質として上記のLPSを40mg加えて、ロッド(SKD製, 直径:10.0 mm)で上部を押さえた後、プレス機(理研機器(株), MS05-100)を用いて3分間75 MPaでプレスした。プレス後のLPSのペレットの上に、実施例7の電極用複合粒子又は比較例1の試料を80 mg加えてロッドを乗せ、ポリカーボネートチューブを左右8.5周ずつ回転させて試料を均一にした後、プレス機で3分間75 MPaでプレスした。プレス後のペレットの上にさらにLPSを40 mg加えて、ロッド上部を押さえた後、プレス機で3分間200 MPaでプレスした。この成形体の両端に光沢が出るまで表面を削ったLi箔(直径:7 mm, 厚さ0.1 mm)を重ねた。更に、Li箔に、光沢が出るまで表面を削ったIn箔(直径:9 mm, 厚さ0.3 mm)を重ねることでLi-In合金(モル比 Li /In = 0.79)の層を作製することで電子ブロッキングセルを作製した。
実施例9の電極用複合粒子及び比較例3の試料のイオン伝導度を、電子ブロッキングセルを用いて測定した。図17に電子ブロッキングセルの概略図を示す。電子ブロッキングセルは以下のようにして製造した。
内径10.1 mmのポリカーボネートチューブに固体電解質として上記のLPSを40mg加えて、ロッド(SKD製, 直径:10.0 mm)で上部を押さえた後、プレス機(理研機器(株), MS05-100)を用いて3分間75 MPaでプレスした。プレス後のLPSのペレットの上に、実施例7の電極用複合粒子又は比較例1の試料を80 mg加えてロッドを乗せ、ポリカーボネートチューブを左右8.5周ずつ回転させて試料を均一にした後、プレス機で3分間75 MPaでプレスした。プレス後のペレットの上にさらにLPSを40 mg加えて、ロッド上部を押さえた後、プレス機で3分間200 MPaでプレスした。この成形体の両端に光沢が出るまで表面を削ったLi箔(直径:7 mm, 厚さ0.1 mm)を重ねた。更に、Li箔に、光沢が出るまで表面を削ったIn箔(直径:9 mm, 厚さ0.3 mm)を重ねることでLi-In合金(モル比 Li /In = 0.79)の層を作製することで電子ブロッキングセルを作製した。
作製した電子ブロッキングセルのイオン導電度測定は以下の手順で行った。
セル電圧が0Vになるまで静置した後、エーディーシー株式会社製デジタルエレクトロメーター8252を用いてDCVモードで行い10分後の直流抵抗を測定することで評価した。
セル電圧が0Vになるまで静置した後、エーディーシー株式会社製デジタルエレクトロメーター8252を用いてDCVモードで行い10分後の直流抵抗を測定することで評価した。
イオン伝導度の測定結果を表8に示した。表8より、溶融混練処理を行った電極用複合粒子は、ボールミルを行っただけの試料よりもイオン伝導度が向上することが示された。
以上のことから、硫黄と炭素粒子に対して溶融混練処理を行うことで、硫黄の中に炭素粒子が分散した電極用複合粒子を得ることができ、この電極用複合粒子は優れた固固接触界面を有しているため、単に硫黄と炭素粒子を混合した物やボールミル処理を行った試料よりも電極材料として優れた性質を有していることが分かった。そして、この電極用複合粒子は二軸溶融混練装置を用いて製造することができるため、生産性にも優れている。
Claims (21)
- 硫黄の結晶質相と、前記結晶質相内に分散した炭素粒子とを含む電極用複合粒子であって、
前記炭素粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~999nmの範囲にあり、
前記炭素粒子は、該炭素粒子の表面及び/又は内部に非晶質の硫黄を有し、
前記複合粒子の体積平均粒子径(D50)が、1~1000μmの範囲にある、電極用複合粒子。 - 前記複合粒子が、体積平均粒子径(D50)が0.01~50μmの範囲にある固体電解質粒子を更に含む、請求項1に記載の電極用複合粒子。
- 前記複合粒子の窒素吸着量が、前記複合粒子に含まれている炭素粒子の窒素吸着量の50%以下である、請求項1又は2に記載の電極用複合粒子。
- 前記炭素粒子の、窒素最大吸着量が、1000ml(STP)/g以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記炭素粒子がケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、天然黒鉛、人工黒鉛又は気相成長炭素繊維から選択される少なくとも1つである、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記炭素粒子が、多孔質の炭素粒子であり、前記炭素粒子の孔内に非晶質の硫黄が含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記固体電解質が、硫化物系固体電解質である、請求項2又は請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~6のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記固体電解質が、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-GeS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li10GeP2S12、Li7P3S11、Li3.25P0.75S4又はLi7-xPS6-xYx(式中、xは0~1.8であり、Yはハロゲンである)から選択される少なくとも1つである、請求項2又は請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~7のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記硫黄の結晶質相と、前記炭素粒子との質量比が、硫黄:炭素粒子=1.0:0.1~1.0の範囲にある、請求項1~8のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記硫黄及び前記炭素粒子と、前記固体電解質粒子との質量比が、硫黄+炭素粒子:固体電解質=1.0:0.1~1.0の範囲にある、請求項2又は請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3~9のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記複合粒子の窒素吸着等温線によるBET比表面積が、200m2/g以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記複合粒子の窒素吸着等温線によるBET比表面積が、10m2/g以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記複合粒子の体積平均粒子径(D10)が、0.5~50μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D50)が、1~100μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D90)が、5~500μmの範囲にある、請求項1~12のいずれか1項に記載の電極用複合粒子。
- 前記複合粒子の体積平均粒子径(D10)が、10~20μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D50)が、50~100μmの範囲にあり、体積平均粒子径(D90)が、100~500μmの範囲にある、請求項13に記載の電極用複合粒子。
- 請求項1~14のいずれか1項に記載の電極用複合粒子を含む電極活物質。
- 請求項1~14のいずれか1項に記載の電極用複合粒子又は請求項15に記載の電極活物質を含む電極。
- 請求項16に記載の電極を含む二次電池。
- 前記二次電池が、全固体二次電池である、請求項17に記載の二次電池。
- 硫黄の組成物と、炭素粒子とを二軸溶融混練機に供して加熱混練する工程を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の電極用複合粒子の製造方法。
- 前記加熱混練時の温度が120℃~200℃の範囲である、請求項19に記載の電極用複合粒子の製造方法。
- 加熱混練後に固体電解質粒子を加えて混合する工程をさらに含む、請求項2又は請求項2を直接又は間接的に引用する請求項19又は20に記載の電極用複合粒子の製造方法。
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