JP2023018629A - 磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置 - Google Patents

磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置 Download PDF

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渉 菊池
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Abstract

【課題】走行を繰り返しても電磁変換特性の低下が少ない磁気テープを提供すること。【解決手段】非磁性支持体と強磁性粉末を含む磁性層とを有する磁気テープ。上記磁気テープは、非磁性支持体上の磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含み、磁気ヘッドとの摺動前に上記磁性層の表面において測定される水接触角に対する、磁気ヘッドとの摺動後に上記磁性層の表面において測定される水接触角の比率θrが0.70以上である。上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置。【選択図】なし

Description

本発明は、磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置に関する。
近年、各種データを記録するための記録媒体として、磁気記録媒体が広く使用されている(特許文献1~3参照)。
特開2006-188596号公報 特開平9-16949号公報 特開平7-320254号公報
磁気記録媒体にはテープ状のものとディスク状のものがあり、データバックアップ、アーカイブ等のデータストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープが主に用いられている。
磁気テープへのデータの記録および記録されたデータの再生は、通常、磁気テープ装置(一般に「ドライブ」と呼ばれる。)において磁気テープを繰り返し走行させて行われる。磁気テープに望まれる性能としては、かかる繰り返し走行後に電磁変換特性の低下が少ないことが挙げられる。
本発明の一態様は、走行を繰り返しても電磁変換特性の低下が少ない磁気テープを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープであって、
上記非磁性支持体上の磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含み、
磁気ヘッドとの摺動前に上記磁性層の表面において測定される水接触角に対する、磁気ヘッドとの摺動後に上記磁性層の表面において測定される水接触角の比率θrが0.70以上である磁気テープ、
に関する。
一形態では、上記比率θrは、0.80以上であることができる。
一形態では、上記比率θrは、0.85以上であることができる。
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を1層以上更に有することができる。
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体の上記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有することができる。
一形態では、上記強磁性粉末は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末であることができる。
一形態では、上記強磁性粉末は、六方晶バリウムフェライト粉末であることができる。
一形態では、上記強磁性粉末は、ε-酸化鉄粉末であることができる。
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープ装置に関する。
本発明の一態様によれば、走行を繰り返しても電磁変換特性の低下が少ない磁気テープ、ならびに、この磁気テープを含む磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置を提供することができる。
磁気テープと磁気ヘッドとを摺動させるために使用する装置例を示す。 データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。 LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットテープのサーボパターン配置例を示す。
[磁気テープ]
本発明の一態様は、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープに関する。上記磁気テープは、上記非磁性支持体上の磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含み、磁気ヘッドとの摺動前に上記磁性層の表面において測定される水接触角に対する、磁気ヘッドとの摺動後に上記磁性層の表面において測定される水接触角の比率θr(以下、単に「比率θr」とも記載する。)が0.70以上である。
上記磁気テープは、非磁性支持体上の磁性層側の部分に、フッ素含有化合物を含む。本発明および本明細書において、「非磁性支持体上の磁性層側の部分」とは、非磁性支持体上に直接磁性層を有する磁気テープについては磁性層であり、非磁性支持体と磁性層との間に詳細を後述する非磁性層を有する磁気テープについては、磁性層および/または非磁性層である。以下において、「非磁性支持体上の磁性層側の部分」を、単に「磁性層側の部分」とも記載する。フッ素含有化合物が磁気テープの磁性層側の表面上に存在していることも、フッ素含有化合物が磁性層側の部分に含まれることに包含される。本発明および本明細書において、磁性層(の)表面は、磁気テープの磁性層側の表面と同義である。
磁気テープへのデータの記録および記録されたデータの再生は、通常、磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとを接触させて摺動させることによって行われる。磁性層表面と磁気ヘッドとの摺動時の摩擦を低減することは、電磁変換特性向上の観点から望ましい。上記の摩擦の低減のための手段としては、磁性層表面に潤滑性を付与できる成分(所謂潤滑剤)を、磁気テープに含有させることが挙げられる。例えば先に示した特許文献1(特開2006-188596号公報)、特許文献2(特開平9-16949号公報)および特許文献3(特開平7-320254号公報)には、それぞれ、潤滑剤としてフッ素含有化合物が記載されている。
これに対し本発明者の鋭意検討の結果、磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含み、かつ比率θrが0.70以上である磁気テープは、走行を繰り返しても電磁変換特性の低下が少ないことが明らかとなった。比率θrが0.70以上であることは、磁気ヘッドと摺動しながら走行を繰り返しても磁気テープからのフッ素含有化合物の遊離量が少ないこと、即ち繰り返し走行後もフッ素含有化合物の多くが磁気テープに留まっていることを示していると本発明者は考えている。走行を繰り返しても多くのフッ素含有化合物が磁気テープに留まっていることが、フッ素含有化合物によってもたらされる磁性層表面の潤滑性の低下を抑制することにつながり、その結果、繰り返し走行後の電磁変換特性の低下を抑制することが可能になると本発明者は推察している。ただし本発明は、本明細書に記載の推察に限定されるものではない。
以下、上記磁気テープについて、更に詳細に説明する。
<比率θr>
(水接触角の測定およびθrの算出)
磁気ヘッドとの摺動前の水接触角を「θbefore」と呼び、磁気ヘッドとの摺動後の水接触角を「θafter」と呼ぶ。同じ磁気テープの長手方向の任意の位置からテープ試料を2つ切り出す。2つのテープ試料のうちの一方の長さは100mとする。他方のテープ試料の長さは、水接触角の測定が可能な長さであればよく任意である。任意の長さのテープ試料については、磁気ヘッドとの摺動なしで、磁性層表面の無作為に選択した部分で水接触角を求める。このテープ試料について求められる水接触角を、磁気ヘッドとの摺動前の水接触角θbeforeとする。長さ100mのテープ試料については、磁気ヘッドとの摺動後、磁性層表面の無作為に選択した部分で水接触角を求める。このテープ試料について求められる水接触角を、磁気ヘッドとの摺動後の水接触角θafterとする。磁気ヘッドとの摺動については後述する。本発明および本明細書において、「水接触角」とは、液滴法により測定される値とする。具体的には、水接触角は、雰囲気温度25℃および相対湿度50%の測定環境において、θ/2法により、測定対象のテープ試料について磁性層表面の6箇所の異なる部分で測定を行い得られた値の算術平均をいうものとする。使用する水は、温度25℃の蒸留水とする。測定条件の具体的形態の一例は、実施例について後述する。そして、比率θrは、「θafter/θbefore」として算出される比率である。水接触角の測定は、測定対象のテープ試料を、温度25℃相対湿度50%の環境下に2時間以上放置した後に行うものとする。
(磁気ヘッドとの摺動)
上記の長さ100mのテープ試料の磁性層表面と磁気ヘッドとを摺動させるために、2つのテープリールを有するリールテスターを使用する。リールテスターとしては、市販品または公知の方法で組み立てたリールテスターを使用することができる。一例として、図1に、磁気テープ(詳しくは上記テープ試料)と磁気ヘッドとを摺動させるために使用する装置例を示す。
磁気テープと磁気ヘッドとの摺動は、雰囲気温度23℃±1℃相対湿度50%の環境において行う。
上記テープ試料の一方の端部をリールテスターの一方のテープリールに固定し、他方の端部をリールテスターの他方のテープリールに固定して上記テープ試料をリールテスターに取り付ける。
リールテスターに取り付ける磁気ヘッドとしては、LTO(Linear Tape-Open)8ヘッドを使用する。本発明および本明細書において、「LTO8ヘッド」とは、LTO8規格にしたがう磁気ヘッドである。LTO8ヘッドとしては、LTO8ドライブに搭載されている磁気ヘッドを取り出して使用してもよく、LTO8ドライブ用の磁気ヘッドとして市販されている磁気ヘッドを使用してもよい。ここで「LTO8ドライブ」とは、LTO8規格にしたがうドライブ(磁気テープ装置)である。この点は、他の世代(Generation)のドライブについても同様である。例えば、「LTO9ドライブ」とは、LTO9規格にしたがうドライブである。なお、LTO8規格が近年の高密度記録化に対応し得る規格であることを考慮し、上記摺動のための磁気ヘッドとしてLTO8ヘッドを採用したものであって、上記磁気テープはLTO8ドライブにおいて使用されるものに限定されない。上記磁気テープには、LTO8ドライブにおいてデータの記録および/または再生が行われてもよく、LTO9ドライブもしくは更に次世代のドライブにおいてデータの記録および/または再生が行われてもよく、または、LTO7等のLTO8より前の世代のドライブにおいてデータの記録および/または再生が行われてもよい。
リールテスターにおいて上記テープ試料を走行させ、磁性層の表面を磁気ヘッドと接触させて摺動させる。磁気テープ(上記テープ試料)の走行条件は、以下の条件とする。以下の磁気テープの長手方向にかけるテンションの値および磁気テープの走行速度は、リールテスターにおける設定値である。単位に関して、「gf」はグラム重であり、1N(ニュートン)は約102gfである。
磁気テープの走行速度:4m/秒
磁気テープの長手方向にかけるテンション:100gf
磁気テープの走行パス:20,000シングルパス
ラップ角θ:1°
上記磁気テープにおいて、繰り返し走行後の電磁変換特性の低下を抑制する観点から、比率θrは0.70以上であり、0.72以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.77以上であることが更に好ましく、0.80以上であることが一層好ましく、0.82以上であることがより一層好ましく、0.85以上であることが更に一層好ましい。比率θrは、θbefore=θafterの場合、1.00である。比率θrは、1.00であることもでき、1.00以下であることもでき、1.00未満であることもできる。比率θrは、例えば、0.98以下、0.96以下または0.94以下であることができる。ただし、ここに例示した値を上回ることもできる。比率θrの値がより大きいことは、磁気ヘッドとの摺動後に磁気テープに留まっているフッ素含有化合物の量がより多いことを示しているということができると本発明者は考えている。この点は、繰り返し走行後の電磁変換特性の低下をより一層抑制するうえで好ましいと本発明者は推察している。
<フッ素含有化合物>
上記磁気テープは、磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含む。本発明および本明細書において、「フッ素含有化合物」とは、1分子あたり1つ以上のフッ素原子(F)を含有する化合物をいうものとする。比率θrを0.70以上に制御するためには、フッ素含有化合物は、磁性層表面と磁気ヘッドとが摺動しても磁気テープに留まり易い化合物であることが好ましい。この点からは、所謂吸着官能基と呼ばれる官能基を有するフッ素含有化合物が好ましく、1分子中に2つ以上の複数の吸着官能基を有する化合物がより好ましく、1分子中により多くの吸着官能基を有する化合物が更に好ましい。一形態では、フッ素含有化合物は、重合体(「フッ素含有重合体」とも呼ぶ。)であることができる。フッ素含有重合体は、単独重合体または共重合体であることができる。フッ素含有重合体は、主鎖と、主鎖から分岐した1つまたは2つ以上の複数の側鎖と、を含む分岐構造を有することができる。吸着官能基は、側鎖および/または主鎖の少なくとも一方の末端に含まれ得る。主鎖の片方の末端または両方の末端に吸着官能基が含まれてもよい。側鎖に吸着官能基を含むフッ素含有重合体は、θrの値をより大きくするうえで好ましく、より多くの側鎖が吸着官能基を有することがより好ましい。また、フッ素含有重合体において、フッ素原子は側鎖および/または主鎖に含まれ得る。例えば、フッ素含有重合体は、フッ素原子を構成原子として含む官能基(「フッ素含有官能基」とも呼ぶ。)を側鎖に含むことができる。より優れた潤滑性を磁性層表面にもたらす観点からは、フッ素含有重合体において、より多くの側鎖がフッ素含有官能基を含むことがより好ましい。
一形態では、上記フッ素含有重合体は、
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位と、
を含む、分岐状構造を有する重合体(以下、「重合体A」とも呼ぶ。)、
であることができる。
Figure 2023018629000001
一般式(1)中、
およびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
およびLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。
Rf、Rf、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子またはパーフルオロアル
キル基を表す。
uは1以上の整数を表す。
pは2以上の整数を表す。
tは0以上の整数を表す。
複数のRfは同一でもよいし、異なっていてもよい。
複数のRfは同一でもよいし、異なっていてもよい。
Rfが複数存在する場合、複数のRfは同一でもよいし、異なっていてもよい。
Rfが複数存在する場合、複数のRfは同一でもよいし、異なっていてもよい。
Figure 2023018629000002
一般式(2)中、
は水素原子またはメチル基を表す。
は単結合または2価の連結基を表す。
は-OH、-COOH、-POH、{-OP(=O)(OH)}、-OM、-CO、-SO、-NT、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキサゾリン基、-NGまたはベタイン構造を有する基を表す。
はアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、AlまたはQを表す。
、Q、QおよびQはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
およびTはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基を表す。
とTとが結合してもよい。
はアニオンを表す。
、GおよびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
Figure 2023018629000003
一般式(3)中、
は水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
およびUはそれぞれ独立に-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCOO-またはNH-を表す。
およびRはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
とRとが結合してもよい。
は単結合または2価の連結基を表す。
重合体A中は、一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含み、1種のみまたは2種以上含むことができる。
重合体Aは、一般式(2)で表される繰り返し単位のみを有してもよいし、一般式(3)で表される繰り返し単位のみを有してもよいし、一般式(2)で表される繰り返し単位と一般式(3)で表される繰り返し単位とを有してもよい。また、重合体Aが一般式(2)で表される繰り返し単位を有する場合、重合体Aは一般式(2)で表される繰り返し単位を1種のみまたは2種以上含むことができる。重合体Aが一般式(3)で表される繰り返し単位を有する場合、重合体Aは一般式(3)で表される繰り返し単位を1種のみまたは2種以上含むことができる。
重合体Aは、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むため、フッ素含有官能基を側鎖に有することができる。
また、一般式(2)で表される繰り返し単位および一般式(3)で表される繰り返し単位は、吸着官能基を有する繰り返し単位ということができる。重合体Aは、これら繰り返し単位を1種以上含むため、磁性層表面と磁気ヘッドとが摺動しても磁気テープに留まり易い化合物であることができる。
以下、重合体Aについて更に詳細に説明する。
本発明および本明細書における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と、これに加えて、置換基を含む基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本発明および本明細書において、「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
置換基としては、特に断らない限り、1価の置換基が好ましい。
本発明および本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
本発明および本明細書において、表記される2価の連結基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、Yは、-CO-O-であってもよく、-O-CO-であってもよい。上記化合物は「X-CO-O-Z」であってもよく、「X-O-CO-Z」であってもよい。
本発明および本明細書において、重合体が、「分岐状構造を有する」または「分岐状である」とは、重合体の主鎖が分岐状であることを意味する。分岐状構造を有する重合体は、典型的には、三次元架橋構造を有することができ、および/または、重合開始剤断片が末端に少なくとも1つ組み込まれていることができる。
重合体Aは、後述するように、2個以上の重合性基を有する含フッ素化合物をラジカル重合させてなる部分構造を含むことができる。
重合体Aの合成時、重合開始剤量、重合開始剤種等を調整することによって、重合体Aに重合開始剤断片を組み込むことができ、重合開始点を増やし架橋サイズをコンパクトにし、多数の重合体末端を生成させることで、溶解性を向上できると推察される。
重合体Aを重合させる際に用いる重合開始剤の構造によって重合開始剤断片は異なり、NMR(Nuclear Magnetic Resonance(核磁気共鳴))スペクトル測定、IR(赤外)スペクトル測定、質量分析測定、または元素分析測定等の方法により、重合体Aに重合体断片が組み込まれていることを確認できる。
重合体Aは、一般式(1)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、一般式(2)で表される繰り返し単位および下記一般式(3)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも1つと、を含む、分岐状構造を有する重合体である。
(一般式(1)で表される繰り返し単位)
一般式(1)で表される繰り返し単位は、パーフルオロポリエーテル基を有する繰り返し単位である。
一般式(1)中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)中のLおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基は特に限定されず、例えば、-COO-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~20)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20)、-SO-、-SO-、-NH-、-NR-、およびこれらを2つ以上組み合わせてなる2価の連結基が挙げられる。上記Rはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、またはアリール基(好ましくは炭素数6~20)を表す。
一般式(1)中のLおよびLは、-COO-、アルキレン基、およびNH-を組み合わせてなる2価の連結基であることが好ましく、下記一般式(L-1)で表される2価の連結基がより好ましい。
Figure 2023018629000004
一般式(L-1)中、AおよびAはそれぞれ独立にアルキレン基を表す。*1および*2は結合位置を表す。
一般式(L-1)中のAおよびAのアルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましい。
およびAが表すアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
一般式(1)中のLおよびLは、-O-、アルキレン基、およびアリーレン基を組み合わせてなる2価の連結基であることも好ましく、下記一般式(L-2)で表される2価の連結基であることも好ましい。
Figure 2023018629000005
一般式(L-2)中、Arはアリーレン基を表し、AおよびAはそれぞれ独立にアルキレン基を表す。*3および*4は結合位置を表す。
一般式(L-2)中のArで表されるアリーレン基は、炭素数6~20のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6~15のアリーレン基であることがより好ましく、炭素数6~10のアリーレン基であることが更に好ましく、フェニレン基であることが特に好ましい。
一般式(L-2)中のAおよびAで表されるアルキレン基は、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましい。
およびAが表すアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
一般式(1)中のRf、Rf、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子またはパーフルオロアルキル基を表す。
Rf、Rf、RfおよびRfの1つまたは2つ以上がそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を表す場合、かかるパーフルオロアルキル基は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
Rf、Rf、RfおよびRfはフッ素原子を表すことが好ましい。
一般式(1)中のuは1以上の整数を表し、1~10の範囲の整数を表すことが好ましく、1~6の範囲の整数を表すことがより好ましく、1~3の範囲の整数を表すことが更に好ましい。
一般式(1)中のpは2以上の整数を表し、2~100の範囲の整数を表すことが好ましく、6~80の範囲の整数を表すことがより好ましく、10~60の範囲の整数を表すことが更に好ましい。
p個の[CRfRf]uOは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)中のtは0以上の整数を表し、1~10の範囲の整数を表すことが好ましく、1~6の範囲の整数を表すことがより好ましく、1~3の範囲の整数を表すことが更に好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(1m)で表される化合物(K1)を重合することによって得ることができる。
Figure 2023018629000006
一般式(1m)中、R、R、L、L、Rf、Rf、Rf、Rf、u、pおよびtは、それぞれ一般式(1)中のR、R、L、L、Rf、Rf、Rf、Rf、u、pおよびtと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
重合体A中の一般式(1)で表される繰り返し単位の含有率は、重合体A中の全繰り返し単位に対して、一形態では、10~99質量%であることが好ましく、20~95質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましく、40~90質量%であることが特に好ましい。
(一般式(2)で表される繰り返し単位)
一般式(2)中のRは水素原子またはメチル基を表す。
一般式(2)中のLは単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は特に限定されず、例えば、-COO-、-CO-、-O-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~20)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20)、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR-、およびこれらを2つ以上組み合わせてなる2価の連結基が挙げられる。上記Rはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、またはアリール基(好ましくは炭素数6~20)を表す。
が2価の連結基を表す場合、-O-、-COO-、-CONH-、-OCO-、およびアルキレン基からなる群から選択される少なくとも1つからなる2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基は、炭素数1~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることが更に好ましい。
は単結合または下記一般式(L-3)で表される2価の連結基を表すことが好ましい。
Figure 2023018629000007
一般式(L-3)中、Zは-O-またはNH-を表す。Aはアルキレン基を表す。
kは1~30の範囲の整数を表す。*5および*6は結合位置を表す。
が表すアルキレン基は、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましい。
が表すアルキレン基は、置換基を有していてもよい。
が表すアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
kは1~30の範囲の整数であり、1~15の範囲の整数であることが好ましく、1~10の範囲の整数であることがより好ましく、1~5の範囲の整数であることが更に好ましい。
一般式(2)中のXは-OH、-COOH、-POH、{-OP(=O)(OH)}、-OM、-CO、-SO、-NT、エポキシ基、脂環エポキシ基、オキサゾリン基、-NGまたはベタイン構造を有する基を表す。
はアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、AlまたはQを表す。
、Q、QおよびQはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
およびTはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基を表す。
とTとが結合してもよい。
はアニオンを表す。
、GおよびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
が-OMを表す場合、塩の状態である-O・(Mとなっていることが好ましい。(Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Mg2+、Al3+またはQを表す。なお、(MがMg2+である場合、1つのMg2+と2つのOとが塩を形成していることが好ましい。(MがAl3+である場合、1つのAl3+と3つのOとが塩を形成していることが好ましい。
が-COを表す場合、塩の状態である-CO ・(Mとなっていることが好ましい。(Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Mg2+、Al3+またはQを表す。なお、(MがMg2+である場合、1つのMg2+と2つのCO とが塩を形成していることが好ましい。(MがAl3+である場合、1つのAl3+と3つのCO とが塩を形成していることが好ましい。
が-SOを表す場合、塩の状態である-SO ・(Mとなっていることが好ましい。(Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Mg2+、Al3+またはQを表す。なお、(MがMg2+である場合、1つのMg2+と2つのSO とが塩を形成していることが好ましい。(MがAl3+である場合、1つのAl3+と3つのSO とが塩を形成していることが好ましい。
が表すアルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)およびセシウム(Cs)が挙げられる。
が表すアルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)が挙げられる。
が表すQ(第4級アンモニウム塩)におけるQ、Q、QおよびQはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。Q、Q、QおよびQの1つ以上がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
、Q、QおよびQの1つ以上がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は置換基を有していてもよい。
、Q、QおよびQの1つまたは2つ以上がそれぞれ独立に表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、n(normal)-プロピル基、イソプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec(secondary)-ブチル基、tert(tertiary)-ブチル基、4-ヒドロキシブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
の具体例としては、Q~Qが全て同じである場合、例えば、(CH、(C、(C、(C、(C11、(C13、(C15、(C17、(C19、(C1021等が挙げられる。
~Qが全てメチル基の場合、Qは、例えば、(C)、(C13)、(C17)、(C19)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等であることができる。
およびQがメチル基の場合、Q3およびQ4は、例えば、(C17)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)であることができる。
がメチル基の場合、Q2~Q4は、全て、例えば、(C)、(C17)等であることができる。
が-NTを表す場合、TおよびTはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20のアルキル基または炭素数1~20のアルコキシ基を表す。TとT2とが結合してもよい。
およびTの一方または両方がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
およびTの一方または両方がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は置換基を有していてもよい。
およびTの一方または両方がそれぞれ独立に表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、4-ヒドロキシブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
およびTの一方または両方がアルコキシ基を表す場合、かかるアルコキシ基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~7のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましい。
およびTの一方または両方がアルコキシ基を表す場合、かかるアルコキシ基は置換基を有していてもよい。
およびTの一方または両方がそれぞれ独立に表すアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、3-ヒドロキシプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、4-ヒドロキシブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
とTとが結合する場合、-NTは環状の基になる。このような基としては、例えばモルホリノ基等が挙げられる。
およびTは水素原子を表すことが最も好ましい。
脂環エポキシ基とは、エポキシ環と飽和炭化水素基とが縮環し構造を有する環状基をいい、例えば以下の3,4-エポキシシクロヘキシル基を挙げることができる。以下において、*は結合位置を表す。
Figure 2023018629000008
が-NGを表す場合、塩の状態である-N・Eとなっていることが好ましい。
が表すアニオンは特に限定されず、例えば、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオン;水酸化物イオン(OH);シアン化物イオン(CN);硝酸イオン(NO );炭酸イオン(CO 2-);硫酸イオン(SO 2-);メタンスルホネートアニオン(CHSO )、ベンゼンスルホネートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン等のスルホネートアニオン;パークロレートアニオン;テトラフルオロボレートアニオン、テトラフェニルボレートアニオン等のボレートアニオン;ヘキサフルオロホスフェートアニオン;アセテートアニオン等が挙げられる。なお、Eが2価のアニオンである場合、1つのEと2つのNGとが塩を形成していることが好ましい。
、GおよびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
、GおよびGの1つ以上がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましい。
、GおよびGの1つ以上がアルキル基を表す場合、かかるアルキル基は置換基を有していてもよい。
、GおよびGの1つまたは2つ以上がそれぞれ独立に表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、4-ヒドロキシブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
一般式(2)中のXがベタイン構造を有する基を表す場合、かかる基は、ベタイン構造を有する基であれば特に限定されない。ベタイン構造を有する基としては、下記一般式(BT1)、(BT2)、(BT3)または(BT4)で表される基が好ましい。
Figure 2023018629000009
一般式(BT1)中、
およびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
は2価の連結基を表す。
*は結合位置を表す。
Figure 2023018629000010
一般式(BT2)中、
およびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
は2価の連結基を表す。
*は結合位置を表す。
Figure 2023018629000011
一般式(BT3)中、
、GおよびG10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表
す。
は2価の連結基を表す。
*は結合位置を表す。
Figure 2023018629000012
一般式(BT4)中、
11およびG12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
L8は2価の連結基を表す。
*は結合位置を表す。
一般式(BT1)中のGおよびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。かかる炭素数1~20のアルキル基についての説明、具体例および好ましい範囲は、G、GおよびGが表す炭素数1~20のアルキル基について記載したものと同様である。
は2価の連結基を表し、アルキレン基を表すことが好ましい。アルキレン基は、炭素数1~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることが更に好ましい。
が表すアルキレン基は、置換基を有していてもよい。
が表すアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2-ヒドロキシトリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2-メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
一般式(BT2)中のGおよびGはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。かかる炭素数1~20のアルキル基についての説明、具体例および好ましい範囲は、G、GおよびGが表す炭素数1~20のアルキル基について記載したものと同様である。
L6は2価の連結基を表す。L6についての説明、具体例および好ましい範囲は、前述の
L5について記載したものと同様である。
一般式(BT3)中のG、GおよびG10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。かかる炭素数1~20のアルキル基についての説明、具体例および好ましい範囲は、G、GおよびGが表す炭素数1~20のアルキル基について記載したものと同様である。
は2価の連結基を表す。Lについての説明、具体例および好ましい範囲は、Lについて記載したものと同様である。
一般式(BT4)中のG11およびG12はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。かかる炭素数1~20のアルキル基についての説明、具体例および好ましい範囲は、G、GおよびGが表す炭素数1~20のアルキル基について記載したものと同様である。
は2価の連結基を表す。Lについての説明、具体例および好ましい範囲は、Lについて記載したものと同様である。
重合体Aは、
一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、一般式(2)中のXが-COOH、-POH、{-OP(=O)(OH)}、-CO、-SO、-NT、オキサゾリン基、-NGまたはベタイン構造を有する基を表すことが好ましく、
が-NGまたはベタイン構造を有する基を表すことがより好ましく、
が一般式(BT1)、(BT2)、(BT3)または(BT4)で表される基を表すことが更に好ましく、
が一般式(BT1)、(BT2)または(BT3)で表される基を表すことが特に好ましい。
一般式(2)で表される繰り返し単位は、下記一般式(2m)で表される化合物(K2)を重合することで得ることができる。
Figure 2023018629000013
一般式(2m)中、R、LおよびXは、それぞれ一般式(2)中のR、Lおよび
と同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m)で表される化合物は、下記一般式(2m-1)~一般式(2m-4)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
Figure 2023018629000014
一般式(2m-1)中、Rは、一般式(2)中のRと同義であり、Rについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-1)中、Aおよびkは、それぞれ一般式(L-3)中のAおよびkと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-1)中、G、G、GおよびEは、それぞれ一般式(2)中のXが-NGを表す場合のG、G、GおよびEと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
Figure 2023018629000015
一般式(2m-2)中、Rは、一般式(2)中のRと同義であり、Rについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-2)中、Aおよびkは、それぞれ一般式(L-3)中のAおよびkと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-2)中、G、GおよびLは、それぞれ一般式(BT1)中のG4、GおよびLと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
Figure 2023018629000016
一般式(2m-3)中、Rは、一般式(2)中のRと同義であり、Rについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-3)中、Aおよびkは、それぞれ一般式(L-3)中のA5およびkと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-3)中、G、GおよびLは、それぞれ一般式(BT2)中のG、GおよびLと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
Figure 2023018629000017
一般式(2m-4)中、Rは、一般式(2)中のRと同義であり、Rについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-4)中、Aおよびkは、それぞれ一般式(L-3)中のAおよびkと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m-4)中、G、G、G10およびLは、それぞれ一般式(BT3)中のG、G、G10およびLと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(2m)で表される化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、s-カルボキシエチルアクリレート、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、イソプロペニルオキサゾリン、スチレンボロン酸、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N-tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド類;N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=クロリド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=ブロミド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=ヨージド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム=メタンスルホネート、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム=メタンスルホネート、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N-ブチル-N,N-ジメチルアンモニウム=ヨージド、N-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)-N,N-ジエチル-N-メチルアンモニウム=クロリド等の(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム塩類;2-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)アセテート(N-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)-N,N-ジメチルグリシンともいう)、3-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパノエート、4-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタノエート、5-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ペンタノエート等のカルボキシベタイン類;((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)メタンスルホネート、2-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)エタンスルホネート、3-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート等のスルホベタイン類;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル=ジビドロゲン=ホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル=ジビドロゲン=ホスフェート等の(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル類;(2-(メタ)アクリ
ロイルオキシエチル)ホスホリルコリン、(4-(メタ)アクリロイルオキシブチル)ホ
スホリルコリン等のホスホリルコリン類等が挙げられる。ただし、これらに限定されない。
(一般式(3)で表される繰り返し単位)
一般式(3)中のRは水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
が表すアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~7のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
は水素原子またはメチル基を表すことが好ましい。
一般式(3)中のUおよびUはそれぞれ独立に-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCOO-またはNH-を表し、-O-またはNH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
一般式(3)中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。RとRとが結合してもよい。
およびRの一方または両方が脂肪族炭化水素基を表す場合、かかる脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
およびRの一方または両方が脂肪族炭化水素基を表す場合、かかる脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基またはアルキニル基が挙げられる。
アルキル基は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~7のアルキル基が更に好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-メチルヘキシル基等の直鎖状または分枝状のアルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~15のシクロアルキル基がより好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-ノルボルニル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数2~20のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~7のアルケニル基が更に好ましく、炭素数2~4のアルケニル基が特に好ましい。
アルケニル基としては、具体的には、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基等の直鎖状または分枝状のアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、炭素数3~20のシクロアルケニル基が好ましく、炭素数5~15のシクロアルケニル基がより好ましい。
シクロアルケニル基としては、具体的には、例えば、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数2~20のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましく、炭素数2~7のアルキニル基が更に好ましく、炭素数2~4のアルキニル基が特に好ましい。
アルキニル基としては、具体的には、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-オクチニル基等が挙げられる。
およびRの一方または両方がアリール基を表す場合、かかるアリール基は、置換基を有していてもよい。
およびRの一方または両方がアリール基を表す場合、かかるアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
また、RおよびRの一方または両方がアリール基を表す場合、かかるアリール基は、例えば、1個から4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と不飽和五員環とが縮合環を形成したもの等であってもよい。
およびRの一方または両方がアリール基を表す場合、かかるアリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
およびRの一方または両方がヘテロアリール基を表す場合、かかるヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。
上記ヘテロアリール基としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環上の水素原子を1個除し、ヘテロアリール基としたもの等が挙げられる。
窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環としては、具体的には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等が挙げられる。
およびRが有していてもよい置換基としては、水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基群Yから選ばれる。
置換基群Y:
ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキルウレイド基、N’-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アリール-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基およびその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SOH)およびその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基およびその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(alkyl))およびその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(aryl))およびその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(alkyl)およびその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(aryl))およびその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(-Si(OH))およびその共役塩基基、ホスホノ基(-PO)およびその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(-PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(-PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-POH(alkyl))およびその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-POH(aryl))およびその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO)およびその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPOH(alkyl))およびその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPOH(aryl))およびその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基およびアルキニル基。また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、または置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよい。
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましく、水素原子またはアルキル基を表すことがより好ましい。
およびRは共に水素原子を表すか、または共にアルキル基を表し、RとRとが結合している(すなわち、RとRとがアルキレン連結基を表す)ことが更に好ましい。
一般式(3)中のLは単結合または2価の連結基を表す。
が表す2価の連結基は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CONR13-、-NR13COO-、-CR13N-、置換または無置換の2価の脂肪族基、置換または無置換の2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基を表すことが好ましい。R13は水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。
が置換または無置換の2価の脂肪族基を含む場合には、脂肪族基の炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10であることが更に好ましい。
が置換または無置換の2価の芳香族基を含む場合には、芳香族環の数は1~3が好ましく、1~2がより好ましく、1であることが更に好ましい。
は、-O-、-COO-、-OCO-、-CONR13-、-NR3COO-、置換または無置換の2価の脂肪族基、置換または無置換の2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基であることが好ましく、-O-、-COO-、-OCO-、置換または無置換の2価の脂肪族基、置換または無置換の2価の芳香族基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基であることがより好ましく、-O-、-COO-、-OCO-、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアリーレン基、および、これらの組み合わせからなる群から選択される2価の連結基であることが更に好ましい。
一般式(3)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3m)で表される化合物(K3
)(親水性モノマー)を重合することで得ることができる。
Figure 2023018629000018
一般式(3m)中、R、U、U、R、RおよびLは、それぞれ一般式(3)中のR、U、U、R、RおよびLと同義であり、それぞれについての説明、具体例および好ましい範囲も同じである。
一般式(3m)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式3-1~3-26で表される単量体が挙げられる。ただし、これらに限定されない。
Figure 2023018629000019
Figure 2023018629000020
Figure 2023018629000021
Figure 2023018629000022
重合体A中の一般式(2)で表される繰り返し単位の含有率と一般式(3)で表される繰り返し単位の含有率の合計は、一形態では、重合体A中の全繰り返し単位に対して、1~90質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、10~70質量%であることが更に好ましく、10~60質量%であることが一層好ましく、10~50質量%であることがより一層好ましい。
(その他の繰り返し単位)
重合体Aは、繰り返し単位として、上記繰り返し単位のみを含むこともでき、または一般式(1)~(3)以外の繰り返し単位を有していてもよい。
重合体A中の一般式(1)~(3)以外の繰り返し単位の含有率は、重合体A中の全繰り返し単位に対して、0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが更に好ましく、0質量%である(一般式(1
)~(3)以外の繰り返し単位を有しない)ことが特に好ましい。
重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された値をポリスチレン換算して求められる値として、1000~20000であることが好ましく、1000~15000であることがより好ましく、1000~10000であることが更に好ましい。
重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって下記の条件で測定された値をポリスチレン換算して求められる。
[溶離液]:テトラヒドロフラン(THF)
[装置名]:EcosecHLC-8220GPC(東ソー社製)
[カラム]:TSKgelSuperHZM-H、TSKgelSuperHZ4000、TSKgelSuperHZM200(東ソー社製)
[カラム温度]:40℃
[流速]:50ml/分
(重合体Aの製造方法)
重合体Aは、上記一般式(1m)で表される化合物(K1)と、上記一般式(2m)で表される化合物(K2)および上記一般式(3m)で表される化合物(K3)からなる群から選択される少なくとも1種とを、重合開始剤の存在下で重合反応させることによって得ることができる。ここで、重合開始剤の使用量は、化合物(K1)、化合物(K2)および化合物(K3)の総量に対して、例えば、210~3000モル%とすることができる。
上記の重合開始剤の使用量(重合開始剤量)は、下記式(J)で求められ、化合物(K1)、化合物(K2)および化合物(K3)の総量に対して、一形態では、210~3000モル%であることが好ましく、260~1500モル%であることがより好ましく、260~1000モル%であることが更に好ましく、260~700モル%であることが特に好ましい。
式(J):重合開始剤量(モル%)=100×重合開始剤の物質量/(化合物(K1)の物質量+化合物(K2)の物質量+化合物(K3)の物質量)
重合開始剤:
重合開始剤としては、好ましくはアゾ系重合開始剤を用いることができる。
アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)~(6)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等。
(2)アゾアミド化合物:
2 ,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等。
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロリド等。
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等。
(5)その他:
2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等。
(6)フルオロアルキル基含有アゾ系重合開始剤:
4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸-2-(パーフルオロメチル)エチル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸-2-(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸-2-(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
上記アゾ系重合開始剤の中でも、得られる重合体の表面エネルギーの観点から、極性の比較的低い置換基を有するものが望ましく、特に2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチルまたは2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)が好ましい。また、フルオロアルキル基含有アゾ系重合開始剤である4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸-2-(パーフルオロメチル)エチル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸-2-(パーフルオロヘキシル)エチル)も好ましい。
重合体Aは、公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等により重合することができる。中でも溶液重合または沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系またはエステルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン等の複素環式化合物系溶媒、ハイドロフルオロエーテル系(商品名Novec7200(3M社製)等)のフッ素系溶媒、ならびにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、フッ素系溶媒等であり、特に好ましいものはトルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、メチルイソブ
チルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、Nocec7200、Novec7300(3M社製)等であり、2種以上の混合溶媒も好ましい。
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶媒の含有量は、化合物(K1)の1質量部に対し、好ましくは0.1~100質量部、更に好ましくは0.5~50質量部である。
重合反応は常圧下、加圧密閉下、または減圧下で行うことができ、装置および操作の簡便さから常圧下で行うことが好ましい。また、N等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。重合反応の温度は好ましくは50~200℃、更に好ましくは70~150℃である。より好ましくは、重合反応の温度は重合開始剤の10時間半減期温度より10℃以上高い温度で実施することができ、より具体的には、化合物(K1)、化合物(K2)および化合物(K3)からなる群から選択される少なくとも1つ、重合開始剤および有機溶媒を含む溶液を、重合開始剤の10時間半減期温度より10℃以上高い温度に保たれた有機溶媒中へ滴下することにより、重合反応を行うことが好ましい。重合反応の終了後、得られた重合体Aを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行うことができる。反応溶液から重合体Aを回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
化合物(K2)および化合物(K3)からなる群から選択される少なくとも1種の使用量は、溶媒溶解性、樹脂分散性等の観点から、化合物(K1)に対して1~1000モル%であることが好ましく、5~500モル%であることがより好ましい。
重合体Aの合成にあたり、分子量の制御の観点から重合反応はラジカル重合反応であることが好ましい。
ラジカル重合反応で得られた重合体Aにおける二重結合残存率は、重合体1モルに対して0.05モル%以下が好ましく、0.01モル%以下がより好ましく、最も好ましくは、0.001モル%以下である。二重結合残存率は、NMR(核磁気共鳴)測定を行いピーク強度から簡便に算出することができる。
重合体Aの具体例としては、後述の実施例において使用されている重合体(1-1)~(1-8)を挙げることができる。更に、重合体Aの具体例としては、以下の重合体(1-9)~(1-21)を挙げることもできる。各重合体について、「a」および「b」は、それぞれ重合体中の全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有率(単位:質量%)を表す。詳細は、先に記載した通りである。一形態では、各重合体について、「b」は10~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが更に好ましい。
Figure 2023018629000023
Figure 2023018629000024
フッ素含有化合物は、1種または2種以上を磁気テープの製造のために使用することができる。一形態では、フッ素含有化合物を含む塗布液を調製し、この塗布液を磁性層の表面に塗布(いわゆるオーバーコート)することによって、フッ素含有化合物を磁性層側の部分に存在させることができる。ここでの塗布量は、単位面積あたりのフッ素含有化合物の塗布量として、0.1~50mg/mとすることが、比率θrの値をより大きくする観点から好ましい。フッ素含有化合物を含む塗布液は、フッ素含有化合物を1種以上の溶媒と混合することによって調製することができる。かかる塗布液の調製に使用する溶媒の種類および塗布液中のフッ素含有化合物の濃度は特に限定されるものではない。溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒(例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、フッ素系溶媒(例えば1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン等)の1種または2種以上を用いることができる。また、一形態では、磁性層形成用組成物の成分としてフッ素含有化合物を添加することによって、磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含む磁気テープを作製することもできる。この場合、磁性層形成用組成物(または磁性層)におけるフッ素含有化合物の含有量は、比率θrの値をより大きくする観点から、強磁性粉末100.0質量部に対して0.5~1.5質量部の範囲であることが好ましい。
以下、上記磁気テープについて更に説明する。
<磁性層>
(強磁性粉末)
磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
強磁性粉末の粒子サイズに関して、粒子サイズの指標としては、平均粒子体積を挙げることもできる。平均粒子体積は、記録密度向上の観点から、2500nm以下であることが好ましく、2300nm以下であることがより好ましく、2000nm以下であることが更に好ましく、1500nm以下であることが一層好ましい。磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子体積は、500nm以上であることが好ましく、600nm以上であることがより好ましく、650nm以上であることが更に好ましく、700nm以上であることが一層好ましい。上記の平均粒子体積は、後述する方法によって求められる平均粒子サイズから、球相当体積として求められる値である。
六方晶フェライト粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
本発明および本明細書において、「六方晶フェライト粉末」とは、X線回折分析によって、主相として六方晶フェライトの結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。主相とは、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが帰属する構造をいう。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが六方晶フェライトの結晶構造に帰属される場合、六方晶フェライトの結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。X線回折分析によって単一の構造のみが検出された場合には、この検出された構造を主相とする。六方晶フェライトの結晶構造は、構成原子として、少なくとも鉄原子、二価金属原子および酸素原子を含む。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、ストロンチウム原子、バリウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。本発明および本明細書において、六方晶ストロンチウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がストロンチウム原子であるものをいい、六方晶バリウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がバリウム原子であるものをいう。主な二価金属原子とは、この粉末に含まれる二価金属原子の中で、原子%基準で最も多くを占める二価金属原子をいうものとする。ただし、上記の二価金属原子には、希土類原子は包含されないものとする。本発明および本明細書における「希土類原子」は、スカンジウム原子(Sc)、イットリウム原子(Y)、およびランタノイド原子からなる群から選択される。ランタノイド原子は、ランタン原子(La)、セリウム原子(Ce)、プラセオジム原子(Pr)、ネオジム原子(Nd)、プロメチウム原子(Pm)、サマリウム原子(Sm)、ユウロピウム原子(Eu)、ガドリニウム原子(Gd)、テルビウム原子(Tb)、ジスプロシウム原子(Dy)、ホルミウム原子(Ho)、エルビウム原子(Er)、ツリウム原子(Tm)、イッテルビウム原子(Yb)、およびルテチウム原子(Lu)からなる群から選択される。
以下に、六方晶フェライト粉末の一形態である六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、更に詳細に説明する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800~1600nmの範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化された六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800nm以上であり、例えば850nm以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、1500nm以下であることがより好ましく、1400nm以下であることが更に好ましく、1300nm以下であることが一層好ましく、1200nm以下であることがより一層好ましく、1100nm以下であることが更により一層好ましい。六方晶バリウムフェライト粉末の活性化体積についても、同様である。
「活性化体積」とは、磁化反転の単位であって、粒子の磁気的な大きさを示す指標である。本発明および本明細書に記載の活性化体積および後述の異方性定数Kuは、振動試料型磁力計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで測定し(測定温度:23℃±1℃)、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。異方性定数Kuの単位に関して、1erg/cc=1.0×10-1J/mである。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、好ましくは1.8×10J/m以上のKuを有することができ、より好ましくは2.0×10J/m以上のKuを有することができる。また、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のKuは、例えば2.5×10J/m以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含んでいてもよく、含まなくてもよい。六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、鉄原子100原子%に対して、0.5~5.0原子%の含有率(バルク含有率)で希土類原子を含むことが好ましい。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、希土類原子表層部偏在性を有することができる。本発明および本明細書における「希土類原子表層部偏在性」とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により部分溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子表層部含有率」または希土類原子に関して単に「表層部含有率」と記載する。)が、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により全溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子バルク含有率」または希土類原子に関して単に「バルク含有率」と記載する。)と、
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、希土類原子含有率(バルク含有率)は、鉄原子100原子%に対して0.5~5.0原子%の範囲であることが好ましい。上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることは、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することに寄与すると考えられる。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末が上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることにより、異方性定数Kuを高めることができるためと推察される。異方性定数Kuは、この値が高いほど、いわゆる熱揺らぎと呼ばれる現象の発生を抑制すること(換言すれば熱的安定性を向上させること)ができる。熱揺らぎの発生が抑制されることにより、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の粒子表層部に希土類原子が偏在することが、表層部の結晶格子内の鉄(Fe)のサイトのスピンを安定化することに寄与し、これにより異方性定数Kuが高まるのではないかと推察される。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気テープの走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記バルク含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる含有率である。本発明および本明細書において、特記しない限り、原子について含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められるバルク含有率をいうものとする。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子として1種の希土類原子のみ含んでもよく、2種以上の希土類原子を含んでもよい。2種以上の希土類原子を含む場合の上記バルク含有率は、2種以上の希土類原子の合計について求められる。この点は、本発明および本明細書における他の成分についても同様である。即ち、特記しない限り、ある成分は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いられる場合の含有量または含有率とは、2種以上の合計についていうものとする。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、含まれる希土類原子は、希土類原子のいずれか1種以上であればよい。繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点から好ましい希土類原子としては、ネオジム原子、サマリウム原子、イットリウム原子およびジスプロシウム原子を挙げることができ、ネオジム原子、サマリウム原子およびイットリウム原子がより好ましく、ネオジム原子が更に好ましい。
希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、偏在の程度は限定されるものではない。例えば、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は1.0超であり、1.5以上であることができる。「表層部含有率/バルク含有率」が1.0より大きいことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。また、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は、例えば、10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、または4.0以下であることができる。ただし、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、上記の「表層部含有率/バルク含有率」は、例示した上限または下限に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の部分溶解および全溶解について、以下に説明する。粉末として存在している六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、部分溶解および全溶解する試料粉末は、同一ロットの粉末から採取する。一方、磁気テープの磁性層に含まれている六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、磁性層から取り出した六方晶ストロンチウムフェライト粉末の一部を部分溶解に付し、他の一部を全溶解に付す。磁性層からの六方晶ストロンチウムフェライト粉末の取り出しは、例えば、特開2015-91747号公報の段落0032に記載の方法によって行うことができる。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、希土類原子を含むものの希土類原子表層部偏在性を持たない六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含まない六方晶ストロンチウムフェライト粉末と比べてσsが大きく低下する傾向が見られた。これに対し、そのようなσsの大きな低下を抑制するうえでも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末は好ましいと考えられる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のσsは、45A・m/kg以上であることができ、47A・m/kg以上であることもできる。一方、σsは、ノイズ低減の観点からは、80A・m/kg以下であることが好ましく、60A・m/kg以下であることがより好ましい。σsは、振動試料型磁力計等の磁気特性を測定可能な公知の測定装置を用いて測定することができる。本発明および本明細書において、特記しない限り、質量磁化σsは、磁場強度15kOeで測定される値とする。1[kOe]=10/4π[A/m]である。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の構成原子の含有率(バルク含有率)に関して、ストロンチウム原子含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば2.0~15.0原子%の範囲であることができる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、この粉末に含まれる二価金属原子がストロンチウム原子のみであることができる。また他の一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、ストロンチウム原子に加えて1種以上の他の二価金属原子を含むこともできる。例えば、バリウム原子および/またはカルシウム原子を含むことができる。ストロンチウム原子以外の他の二価金属原子が含まれる場合、六方晶ストロンチウムフェライト粉末におけるバリウム原子含有率およびカルシウム原子含有率は、それぞれ、例えば、鉄原子100原子%に対して、0.05~5.0原子%の範囲であることができる。
六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。結晶構造は、X線回折分析によって確認することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によって、単一の結晶構造または2種以上の結晶構造が検出されるものであることができる。例えば一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によってM型の結晶構造のみが検出されるものであることができる。例えば、M型の六方晶フェライトは、AFe1219の組成式で表される。ここでAは二価金属原子を表し、六方晶ストロンチウムフェライト粉末がM型である場合、Aはストロンチウム原子(Sr)のみであるか、またはAとして複数の二価金属原子が含まれる場合には、上記の通り原子%基準で最も多くをストロンチウム原子(Sr)が占める。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の二価金属原子含有率は、通常、六方晶フェライトの結晶構造の種類により定まるものであり、特に限定されるものではない。鉄原子含有率および酸素原子含有率についても、同様である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、少なくとも、鉄原子、ストロンチウム原子および酸素原子を含み、更に希土類原子を含むこともできる。更に、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、これら原子以外の原子を含んでもよく、含まなくてもよい。一例として、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、アルミニウム原子(Al)を含むものであってもよい。アルミニウム原子の含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば0.5~10.0原子%であることができる。繰り返し再生における再生出力低下をより一層抑制する観点からは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子を含み、これら原子以外の原子の含有率が、鉄原子100原子%に対して、10.0原子%以下であることが好ましく、0~5.0原子%の範囲であることがより好ましく、0原子%であってもよい。即ち、一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子以外の原子を含まなくてもよい。上記の原子%で表示される含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる各原子の含有率(単位:質量%)を、各原子の原子量を用いて原子%表示の値に換算して求められる。また、本発明および本明細書において、ある原子について「含まない」とは、全溶解してICP分析装置により測定される含有率が0質量%であることをいう。ICP分析装置の検出限界は、通常、質量基準で0.01ppm(parts per million)以下である。上記の「含まない」とは、ICP分析装置の検出限界未満の量で含まれることを包含する意味で用いるものとする。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、ビスマス原子(Bi)を含まないものであることができる。
金属粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
ε-酸化鉄粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気テープの磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300~1500nmの範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化されたε-酸化鉄粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300nm以上であり、例えば500nm以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、1400nm以下であることがより好ましく、1300nm以下であることが更に好ましく、1200nm以下であることが一層好ましく、1100nm以下であることがより一層好ましい。
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。ε-酸化鉄粉末は、好ましくは3.0×10J/m以上のKuを有することができ、より好ましくは8.0×10J/m以上のKuを有することができる。また、ε-酸化鉄粉末のKuは、例えば3.0×10J/m以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し、好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、一形態では、ε-酸化鉄粉末のσsは、8A・m/kg以上であることができ、12A・m/kg以上であることもできる。一方、ε-酸化鉄粉末のσsは、ノイズ低減の観点からは、40A・m/kg以下であることが好ましく、35A・m/kg以下であることがより好ましい。
本発明および本明細書において、特記しない限り、強磁性粉末等の各種粉末の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、以下の方法により測定される値とする。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントするか、ディスプレイに表示する等して、粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している形態に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している形態も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
粒子サイズ測定のために磁気テープから試料粉末を採取する方法としては、例えば特開2011-048878号公報の段落0015に記載の方法を採用することができる。
本発明および本明細書において、特記しない限り、粉末を構成する粒子のサイズ(粒子サイズ)は、上記の粒子写真において観察される粒子の形状が、
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、粉末の針状比は、上記測定において粒子の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、上記500個の粒子について得た長軸長の算術平均(平均長軸長)と短軸長の算術平均(平均短軸長)から、「平均長軸長/平均短軸長」として求められる。ここで、特記しない限り、短軸長とは、上記粒子サイズの定義で(1)の場合は、粒子を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚みまたは高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(平均長軸長/平均短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
磁性層における強磁性粉末の含有率(充填率)は、磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。磁性層において強磁性粉末の充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
(結合剤)
上記磁気テープは塗布型の磁気テープであることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤を含む磁性層では、強磁性粉末の粒子の表面の多くの部分が結合剤によって被覆され得るため、結合剤によって被覆されていない粒子と比べて、結合剤以外の成分の粒子への吸着力は低くなる傾向があると推察される。これに対し、多くの吸着官能基を含むフッ素含有化合物であれば、そのような状態の粒子にも強く吸着できると考えられる。この点は、塗布型の磁気テープにおいて比率θrの値をより大きくするうえで好ましいと本発明者は推察している。結合剤とは、1種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。
以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における重量平均分子量とは、特記しない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記測定条件により測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。後述の実施例に示す結合剤の重量平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。結合剤は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば1.0~30.0質量部の量で使用することができる。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、7.8mmID(Inner Diameter)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
(硬化剤)
結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一態様では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一態様では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。この点は、他の層を形成するために用いられる組成物が硬化剤を含む場合に、この組成物を用いて形成される層についても同様である。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011-216149号公報の段落0124~0125を参照できる。硬化剤は、磁性層形成用組成物中に、結合剤100.0質量部に対して例えば0~80.0質量部、磁性層の強度向上の観点からは好ましくは50.0~80.0質量部の量で使用することができる。
(添加剤)
磁性層には、必要に応じて1種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。例えば分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061および0071を参照できる。分散剤を非磁性層形成用組成物に添加してもよい。非磁性層形成用組成物に添加し得る分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061を参照できる。
上記磁気テープは、磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含む。先に記載したように、フッ素含有化合物は、潤滑剤として機能し得る。また、潤滑剤として機能し得る化合物として、フッ素含有化合物に加えて、1種以上の他の化合物を用いて上記磁気テープを作製することもできる。そのような化合物としては、脂肪酸およびその誘導体(例えば脂肪酸アミド、脂肪酸エステル等)からなる群から選択される1種以上の化合物を挙げることができる。上記化合物を含む磁性層形成用組成物および/または非磁性層形成用組成物を用いることにより、磁性層側の部分に上記化合物を含む磁気テープを作製することができる。
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エライジン酸等を挙げることができ、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。脂肪酸は、金属塩等の塩の形態で磁性層側の部分に含まれていてもよい。
脂肪酸アミドとしては、上記の各種脂肪酸のアミド、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げることができる。
脂肪酸エステルとしては、上記の各種脂肪酸のエステル、例えば、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル(ブチルステアレート)、ネオペンチルグリコールジオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、オレイン酸オレイル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ブトキシエチル等を挙げることができる。
脂肪酸量は、磁性層形成用組成物(または磁性層;以下同様)における含有量として、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0.1~10.0質量部であり、好ましくは0.5~7.0質量部である。磁性層形成用組成物に2種以上の異なる脂肪酸を添加する場合、含有量とは、それらの合計含有量をいうものとする。この点は、本明細書において、特記しない限り、他の成分の含有量についても同様である。
非磁性層形成用組成物(または非磁性層;以下同様)中の脂肪酸含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば1.0~10.0質量部であり、好ましくは0.5~7.0質量部である。
磁性層形成用組成物中の脂肪酸アミド含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0~3.0質量部であり、好ましくは0.1~3.0質量部であり、より好ましくは 0.1~1.0質量部である。
非磁性層形成用組成物中の脂肪酸アミド含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0.1~3.0質量部であり、好ましくは0.1~1.0質量部である。
磁性層形成用組成物中の脂肪酸エステル量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0~10.0質量部であり、好ましくは1.0~7.0質量部である。
非磁性層形成用組成物中の脂肪酸エステル含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0~10.0質量部であり、好ましくは1.0~7.0質量部である。
磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末を挙げることができる。研磨剤を含む磁性層に研磨剤の分散性を向上するために使用され得る添加剤の一例としては、特開2013-131285号公報の段落0012~0022に記載の分散剤を挙げることができる。
磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(例えば非磁性コロイド粒子、カーボンブラック等)等が挙げられる。突起形成剤としては、例えば、平均粒子サイズが5~300nmのものを使用することができる。なお、後述の実施例に示すコロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)の平均粒子サイズは、特開2011-048878号公報の段落0015に平均粒径の測定方法として記載されている方法により求められた値である。磁性層の突起形成剤含有量は、例えば強磁性粉末100.0質量部あたり、0.1~3.5質量部であることが好ましく、0.1~3.0質量部であることがより好ましい。
以上説明した磁性層は、非磁性支持体表面上に直接、または非磁性層を介して間接的に、設けることができる。
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末を含む1層または2層以上の複数の非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。
磁性層表面の平滑性を高める観点からは、その上に磁性層が形成される面となる非磁性層の表面平滑性を高めることが好ましい。この点から、非磁性層に含まれる非磁性粉末として、平均粒子サイズが小さい非磁性粉末を使用することは好ましい。非磁性粉末の平均粒子サイズは、500nm以下の範囲であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが一層好ましい。また、非磁性粉末の分散性向上の容易性の観点からは、非磁性粉末の平均粒子サイズは、5nm以上であることが好ましく、7nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましい。
非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。
非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、例えば特開2010-24113号公報の段落0040~0041を参照できる。カーボンブラックは一般に粒度分布が大きい傾向があり、分散性に乏しい傾向がある。そのため、カーボンブラックを含む非磁性層は表面平滑性が低い傾向がある。この点から、一形態では、磁性層と隣接する非磁性層としては、非磁性粉末としてカーボンブラック以外の非磁性粉末を含む非磁性層、または、複数種の非磁性粉末の1種としてカーボンブラックを含む非磁性層であって非磁性粉末全量に占めるカーボンブラックの割合が低い非磁性層を設けることが好ましい。また、非磁性層を複数設け、磁性層の最も近くに位置する非磁性層を非磁性粉末としてカーボンブラック以外の非磁性粉末を含む非磁性層とすることは好ましい。例えば、非磁性支持体と磁性層との間に2層の非磁性層を設け、非磁性支持体側の非磁性層(「下層非磁性層」とも記載する。)を非磁性粉末としてカーボンブラックを含む非磁性層とし、磁性層側の非磁性層(「上層非磁性層」とも記載する。)を非磁性粉末としてカーボンブラック以外の非磁性粉末を含む非磁性層とすることは好ましい。また、複数種の非磁性粉末を含む非磁性層形成用組成物では、1種の非磁性粉末を含む非磁性層形成用組成物と比べて非磁性粉末の分散性は低下し易い傾向がある。この点から、複数の非磁性層を設け、各非磁性層に含まれる非磁性粉末の種類を少なくすることは好ましい。また、一形態では、複数種の非磁性粉末を含む非磁性層形成用組成物において非磁性粉末の分散性を高めるために分散剤を使用することが好ましい。かかる分散剤については後述する。
無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。
非磁性粉末の一形態としては、非磁性酸化鉄粉末を挙げることができる。その上に磁性層が形成される非磁性層の表面平滑性を高める観点からは、非磁性酸化鉄粉末として粒子サイズが小さいものを使用することは好ましい。この点から、平均粒子サイズが先に記載した範囲の非磁性酸化鉄粉末を使用することが好ましい。なお、非磁性酸化鉄粉末が先に記載の(1)の粒子形状を有する場合、平均粒子サイズとは、平均長軸長である。非磁性酸化鉄粉末の針状比(平均長軸長/平均短軸長)は、1.0超であることができる。非磁性酸化鉄粉末として、針状比の値が小さいものを使用することは、非磁性層の表面平滑性向上の観点から好ましい。非磁性酸化鉄粉末の針状比(平均長軸長/平均短軸長)は、例えば、7.0以下であることができ、3.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。非磁性酸化鉄粉末としては、一形態では、α-酸化鉄粉末が好ましい。α-酸化鉄とは、主相がα相の酸化鉄である。
非磁性層における非磁性粉末の含有率(充填率)は、非磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。複数の非磁性層が設けられている場合、少なくとも1層の非磁性層において非磁性粉末の含有率が上記範囲であることが好ましく、より多くの非磁性層において非磁性粉末の含有率が上記範囲であることがより好ましい。
非磁性層は、非磁性粉末を含み、非磁性粉末とともに結合剤を含むこともできる。非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、非磁性層に関する公知技術が適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有量、添加剤の種類および含有量等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。
非磁性層に含まれ得る添加剤としては、非磁性粉末の分散性向上に寄与し得る分散剤を挙げることができる。かかる分散剤としては、例えば、RCOOH(Rはアルキル基またはアルケニル基)で表される脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸等);上記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩;上記脂肪酸のエステル;上記脂肪酸のエステルのフッ素を含有した化合物;上記脂肪酸のアミド;ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル;レシチン;トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(含有されるアルキル基は炭素数1~5のアルキル基、含有されるオレフィンはエチレン、プロピレン等);フェニルフォスフォン酸;銅フタロシアニン等を使用することができる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。分散剤の含有量は、非磁性粉末100.0質量部に対して、0.2~5.0質量部であることが好ましい。
また、添加剤の一例として、有機三級アミンを挙げることができる。有機三級アミンについては、特開2013-049832号公報の段落0011~0018および0021を参照できる。有機三級アミンは、カーボンブラックの分散性向上に寄与し得る。有機三級アミンによりカーボンブラックの分散性を高めるための組成物の処方等については、同公報の段落0022~0024、0027を参照できる。
上記アミンは、より好ましくはトリアルキルアミンである。トリアルキルアミンが有するアルキル基は、好ましくは炭素数1~18のアルキル基である。トリアルキルアミンが有する3つのアルキル基は、同一であっても異なっていてもよい。アルキル基の詳細については、特開2013-049832号公報の段落0015~0016を参照できる。トリアルキルアミンとしては、トリオクチルアミンが特に好ましい。
本発明および本明細書において、非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
<非磁性支持体>
次に、非磁性支持体について説明する。非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
<バックコート層>
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもでき、有さなくてもよい。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層は、結合剤を含むことができ、添加剤を含むこともできる。バックコート層の結合剤および添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
<各種厚み>
磁気テープの厚み(総厚)に関して、近年の情報量の莫大な増大に伴い、磁気テープには記録容量を高めること(高容量化)が求められている。高容量化のための手段としては、磁気テープの厚みを薄くし(以下、「薄型化」とも記載する。)、磁気テープカートリッジ1巻あたりに収容される磁気テープ長を増すことが挙げられる。この点から、上記磁気テープの厚み(総厚)は、5.6μm以下であることが好ましく、5.5μm以下であることがより好ましく、5.4μm以下であることがより好ましく、5.3μm以下であることが更に好ましく、5.2μm以下であることが一層好ましい。また、ハンドリングの容易性の観点からは、磁気テープの厚みは3.0μm以上であることが好ましく、3.5μm以上であることがより好ましい。
例えば、磁気テープの厚み(総厚)は、以下の方法によって測定することができる。
磁気テープの任意の部分からテープサンプル(例えば長さ5~10cm)を10枚切り出し、これらテープサンプルを重ねて厚みを測定する。測定された厚みを10分の1して得られた値(テープサンプル1枚当たりの厚み)を、テープ厚みとする。上記厚み測定は、0.1μmオーダーでの厚み測定が可能な公知の測定器を用いて行うことができる。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0~5.0μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等により最適化することができ、一般には0.01μm~0.15μmであり、高密度記録化の観点から、好ましくは0.02μm~0.12μmであり、更に好ましくは0.03μm~0.1μmである。磁性層は少なくとも1層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。2層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。この点は、複数の非磁性層を有する磁気テープにおける非磁性層の厚みについても同様である。
非磁性層の厚みについては、厚い非磁性層を形成するほど、非磁性層形成用組成物の塗布工程および乾燥工程で非磁性粉末の粒子の存在状態が不均一になり易く、各位置での厚みの違いが大きくなって非磁性層の表面が粗くなる傾向がある。磁性層表面の平滑性を高める観点からは非磁性層の表面平滑性が高いことは好ましい。この点からは、非磁性層の厚みは1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。また、非磁性層の厚みは、非磁性層形成用組成物の塗布の均一性向上の観点からは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
バックコート層の厚みは、0.9μm以下であることが好ましく、0.1~0.7μmであることが更に好ましい。
磁性層の厚み等の各種厚みは、以下の方法により求めることができる。
磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビームにより露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡による断面観察を行う。断面観察において任意の2箇所において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各種厚みは、製造条件等から算出される設計厚みとして求めることもできる。
<製造工程>
(各層形成用組成物の調製)
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体の製造に通常用いられる各種溶媒の1種または2種以上を用いることができる。溶媒については、例えば特開2011-216149号公報の段落0153を参照できる。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記磁気テープを製造するためには、公知の製造技術を各種工程において用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することが好ましい。混練処理の詳細については、特開平1-106338号公報および特開平1-79274号公報を参照できる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を調製する任意の段階において、公知の方法によってろ過を行ってもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01~3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
(塗布工程)
磁性層は、磁性層形成用組成物を、非磁性支持体表面上に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次もしくは同時に重層塗布することにより形成することができる。バックコート層は、バックコート層形成用組成物を、非磁性支持体の非磁性層および/または磁性層を有する(または非磁性層および/または磁性層が追って設けられる)表面とは反対側の表面に塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010-231843号公報の段落0066を参照できる。
(その他の工程)
塗布工程後には、乾燥処理、磁性層の配向処理、表面平滑化処理(カレンダ処理)等の各種処理を行うことができる。各種工程については、例えば特開2010-24113号公報の段落0052~0057等の公知技術を参照できる。例えば、磁性層形成用組成物の塗布層には、この塗布層が未乾燥状態にあるうちに配向処理を施すことができる。配向処理については、特開2010-231843号公報の段落0067の記載をはじめとする各種公知技術を適用することができる。例えば、垂直配向処理は、異極対向磁石を用いる方法等の公知の方法によって行うことができる。配向ゾーンでは、乾燥風の温度、風量および/または配向ゾーンにおける上記塗布層を形成した非磁性支持体の搬送速度によって塗布層の乾燥速度を制御することができる。また、配向ゾーンに搬送する前に塗布層を予備乾燥させてもよい。また、カレンダ処理については、カレンダ条件を強化すると、磁性層表面の平滑性は高まる傾向がある。カレンダ条件としては、カレンダ処理を行う回数(以下、「カレンダ回数」とも記載する。)、カレンダ圧力、カレンダ温度(カレンダロールの表面温度)、カレンダ速度、カレンダロールの硬度等が挙げられる。カレンダ回数を増やすほど、カレンダ処理は強化される。カレンダ圧力、カレンダ温度およびカレンダロールの硬度は、これらの値を大きくするほどカレンダ処理は強化され、カレンダ速度は遅くするほどカレンダ処理は強化される。例えば、カレンダ圧力(線圧)は200~500kg/cmであることができ、250~350kg/cmであることが好ましい。カレンダ温度(カレンダロールの表面温度)は、例えば85~120℃であることができ、90~110℃であることが好ましく、カレンダ速度は、例えば50~300m/分であることができ、50~200m/分であることが好ましい。
各種工程を経ることによって、長尺状の磁気テープ原反を得ることができる。得られた磁気テープ原反は、公知の裁断機によって、例えば、磁気テープカートリッジに巻装すべき磁気テープの幅に裁断(スリット)される。上記の幅は規格にしたがい決定され、通常、1/2インチである。1/2インチ=12.65mmである。
スリットして得られた磁気テープには、通常、サーボパターンが形成される。サーボパターンについて、詳細は後述する。
(熱処理)
一形態では、上記磁気テープは、以下のような熱処理を経て製造された磁気テープであることができる。また、他の一形態では、上記磁気テープは、以下のような熱処理を経ずに製造された磁気テープであることができる。
熱処理としては、スリットして規格にしたがい決定された幅に裁断された磁気テープを、芯状部材に巻き付け、巻き付けた状態で行う熱処理を行うことができる。
一形態では、熱処理用の芯状部材(以下、「熱処理用巻芯」と呼ぶ。)に磁気テープを巻き付けた状態で上記熱処理を行い、熱処理後の磁気テープを磁気テープカートリッジのリールに巻き取り、磁気テープがリールに巻装された磁気テープカートリッジを作製することができる。
熱処理用巻芯は、金属製、樹脂製、紙製等であることができる。熱処理用巻芯の材料は、スポーキング等の巻き故障の発生を抑制する観点から、剛性が高い材料であることが好ましい。この点から、熱処理用巻芯は、金属製または樹脂製であることが好ましい。また、剛性の指標として、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は0.2GPa(ギガパスカル)以上が好ましく、0.3GPa以上がより好ましい。他方、高剛性の材料は一般に高価であるため、巻き故障の発生を抑制できる剛性を超える剛性を有する材料の熱処理用巻芯を用いることはコスト増につながる。以上の点を考慮すると、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は250GPa以下が好ましい。曲げ弾性率は、ISO(International Organization for Standardization)178にしたがい測定される値であり、各種材料の曲げ弾性率は公知である。また、熱処理用巻芯は中実または中空の芯状部材であることができる。中空状の場合、剛性を維持する観点から、肉厚は2mm以上であることが好ましい。また、熱処理用巻芯は、フランジを有していてもよく、有さなくてもよい。
熱処理用巻芯に巻き付ける磁気テープとして最終的に磁気テープカートリッジに収容する長さ(以下、「最終製品長」と呼ぶ。)以上の磁気テープを準備し、この磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態で熱処理環境下に置くことにより熱処理を行うことが好ましい。熱処理用巻芯に巻き付ける磁気テープ長は最終製品長以上であり、熱処理用巻芯等への巻き取りの容易性の観点からは、「最終製品長+α」とすることが好ましい。このαは、上記の巻き取りの容易性の観点からは5m以上であることが好ましい。熱処理用巻芯への巻き取り時のテンションは、0.1N(ニュートン)以上が好ましい。また、過度な変形が発生することを抑制する観点から、熱処理用巻芯への巻き取り時のテンションは1.5N以下が好ましく、1.0N以下がより好ましい。熱処理用巻芯の外径は、巻き付けの容易性およびコイリング(長手方向のカール)の抑制の観点から、20mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましい。また、熱処理用巻芯の外径は100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましい。熱処理用巻芯の幅は、この巻芯に巻き付ける磁気テープの幅以上であればよい。また、熱処理後、熱処理用巻芯から磁気テープを取り外す際には、取り外す操作中に意図しないテープ変形が生じることを抑制するために、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外すことが好ましい。取り外した磁気テープは、一度別の巻芯(「一時巻き取り用巻芯」と呼ぶ。)に巻き取り、その後、一時巻き取り用巻芯から磁気テープカートリッジのリール(一般に外径は40~50mm程度)へ磁気テープを巻き取ることが好ましい。これにより、熱処理時の磁気テープの熱処理用巻芯に対する内側と外側との関係を維持して、磁気テープカートリッジのリールへ磁気テープを巻き取ることができる。一時巻き取り用巻芯の詳細およびこの巻芯へ磁気テープを巻き取る際のテンションについては、熱処理用巻芯に関する先の記載を参照できる。上記熱処理を「最終製品長+α」の長さの磁気テープに施す形態においては、任意の段階で、「+α」の長さ分を切り取ればよい。例えば、一形態では、一時巻き取り用巻芯から磁気テープカートリッジのリールへ最終製品長分の磁気テープを巻き取り、残りの「+α」の長さ分を切り取ればよい。切り取って廃棄される部分を少なくする観点からは、上記αは20m以下であることが好ましい。
上記のように芯状部材に巻き付けた状態で行われる熱処理の具体的形態について、以下に説明する。
熱処理を行う雰囲気温度(以下、「熱処理温度」と呼ぶ。)は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。一方、過度な変形を抑制する観点からは、熱処理温度は75℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。
熱処理を行う雰囲気の重量絶対湿度は、0.1g/kg Dry air以上が好ましく、1g/kg Dry air以上がより好ましい。重量絶対湿度が上記範囲の雰囲気は、水分を低減するための特殊な装置を用いずに準備できるため好ましい。一方、重量絶対湿度は、結露が生じて作業性が低下することを抑制する観点からは、70g/kg Dry air以下が好ましく、66g/kg Dry air以下がより好ましい。熱処理時間は、0.3時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、熱処理時間は、生産効率の観点からは、48時間以下が好ましい。
(サーボパターンの形成)
上記磁気テープは、磁性層にサーボパターンを有することができる。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。以下に、サーボパターンの形成について説明する。
サーボパターンは、通常、磁気テープの長手方向に沿って形成される。サーボ信号を利用する制御(サーボ制御)の方式としては、タイミングベースサーボ(TBS)、アンプリチュードサーボ、周波数サーボ等が挙げられる。
ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319(June 2001)に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボパターンは、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる。)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。本発明および本明細書において、「タイミングベースサーボパターン」とは、タイミングベースサーボ方式のサーボシステムにおけるヘッドトラッキングを可能とするサーボパターンをいう。上記のように、サーボパターンが互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボパターン上を通過するサーボ信号読み取り素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボ信号読み取り素子がその間隔を読み取ることによって、サーボパターンとサーボ信号読み取り素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボパターン上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。このサーボバンドは、通常、磁気テープに複数本設けられる。例えば、LTOテープにおいて、その数は5本である。隣接する2本のサーボバンドに挟まれた領域が、データバンドである。データバンドは、複数のデータトラックで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
また、一形態では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(identification)」または「UDIM(Unique DataBand Identification Method)情報」とも呼ばれる。)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボ信号読み取り素子で読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に(uniquely)特定することができる。
なお、サーボバンドを一意に特定する方法には、ECMA―319(June 2001)に示されているようなスタッガード方式を用いたものもある。このスタッガード方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(サーボストライプ)の群を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせは、磁気テープ全体においてユニークなものとされているため、2つのサーボ信号読み取り素子によりサーボパターンを読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となっている。
また、各サーボバンドには、ECMA―319(June 2001)に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS(Longitudinal Position)情報」とも呼ばれる。)も埋め込まれている。このLPOS情報も、UDIM情報と同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、UDIM情報とは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
上記のUDIM情報およびLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、UDIM情報のようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
サーボパターン形成用ヘッドは、サーボライトヘッドと呼ばれる。サーボライトヘッドは、通常、上記一対の磁気ストライプに対応した一対のギャップを、サーボバンドの数だけ有する。通常、各一対のギャップには、それぞれコアとコイルが接続されており、コイルに電流パルスを供給することによって、コアに発生した磁界が、一対のギャップに漏れ磁界を生じさせることができる。サーボパターンの形成の際には、サーボライトヘッド上に磁気テープを走行させながら電流パルスを入力することによって、一対のギャップに対応した磁気パターンを磁気テープに転写させて、サーボパターンを形成することができる。各ギャップの幅は、形成されるサーボパターンの密度に応じて適宜設定することができる。各ギャップの幅は、例えば、1μm以下、1~10μm、10μm以上等に設定可能である。
磁気テープにサーボパターンを形成する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石または交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンド毎に行ってもよい。
形成されるサーボパターンの磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボパターンの形成は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号の出力を、大きくすることができる。なお、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、双極パルス形状となる。
また、一形態では、サーボ信号を利用して走行中の磁気テープの幅方向の寸法情報を取得し、取得された寸法情報に応じて磁気テープの長手方向にかかるテンションを調整して変化させることによって、磁気テープの幅方向の寸法を制御することができる。このようなテンション調整を行うことは、記録または再生時、磁気テープの幅変形によってデータを記録または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録または再生を行ってしまうことを抑制することに寄与し得る。
[磁気テープカートリッジ]
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
上記テープカートリッジに含まれる磁気テープの詳細は、先に記載した通りである。
磁気テープカートリッジでは、一般に、カートリッジ本体内部に磁気テープがリールに巻き取られた状態で収容されている。リールは、カートリッジ本体内部に回転可能に備えられている。磁気テープカートリッジとしては、カートリッジ本体内部にリールを1つ具備する単リール型の磁気テープカートリッジおよびカートリッジ本体内部にリールを2つ具備する双リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。単リール型の磁気テープカートリッジは、磁気テープへのデータの記録および/または再生のために磁気テープ装置に装着されると、磁気テープカートリッジから磁気テープが引き出されて磁気テープ装置側のリールに巻き取られる。磁気テープカートリッジから巻き取りリールまでの磁気テープ搬送経路には、磁気ヘッドが配置されている。磁気テープカートリッジ側のリール(供給リール)と磁気テープ装置側のリール(巻き取りリール)との間で、磁気テープの送り出しと巻き取りが行われる。この間、磁気ヘッドと磁気テープの磁性層表面とが接触し摺動することにより、データの記録および/または再生が行われる。これに対し、双リール型の磁気テープカートリッジは、供給リールと巻き取りリールの両リールが、磁気テープカートリッジ内部に具備されている。
[磁気テープ装置]
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープ装置に関する。上記磁気テープ装置において、磁気テープへのデータの記録および/または磁気テープに記録されたデータの再生は、例えば、磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとを接触させて摺動させることにより行うことができる。
本発明および本明細書において、「磁気テープ装置」とは、磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方を行うことができる装置を意味するものとする。かかる装置は、一般にドライブと呼ばれる。上記磁気テープ装置は、磁気ヘッドを含むことができる。上記磁気ヘッドは、磁気テープへのデータの記録を行うことができる記録ヘッドであることができ、磁気テープに記録されたデータの再生を行うことができる再生ヘッドであることもできる。また、上記磁気テープ装置は、一形態では、別々の磁気ヘッドとして、記録ヘッドと再生ヘッドの両方を含むことができる。他の一形態では、上記磁気テープ装置に含まれる磁気ヘッドは、記録素子と再生素子の両方を1つの磁気ヘッドに備えた構成を有することもできる。再生ヘッドとしては、磁気テープに記録された情報を感度よく読み取ることができる磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)素子を再生素子として含む磁気ヘッド(MRヘッド)が好ましい。MRヘッドとしては、公知の各種MRヘッド(例えば、GMR(Giant Magnetoresistive)ヘッド、TMR(Tunnel Magnetoresistive)ヘッド等)を用いることができる。また、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドには、サーボ信号読み取り素子が含まれていてもよい。または、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドとは別のヘッドとして、サーボ信号読み取り素子を備えた磁気ヘッド(サーボヘッド)が上記磁気テープ装置に含まれていてもよい。例えば、データの記録および/または記録されたデータの再生を行う磁気ヘッド(以下、「記録再生ヘッド」とも呼ぶ。)は、サーボ信号読み取り素子を2つ含むことができ、2つのサーボ信号読み取り素子のそれぞれが、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドを同時に読み取ることができる。2つのサーボ信号読み取り素子の間に、1つまたは複数のデータ用素子を配置することができる。データの記録のための素子(記録素子)とデータの再生のための素子(再生素子)を、「データ用素子」と総称する。
データの記録および/または記録されたデータの再生の際には、まず、サーボ信号を用いたトラッキングを行うことができる。即ち、サーボ信号読み取り素子を所定のサーボトラックに追従させることによって、データ用素子が、目的とするデータトラック上を通過するように制御することができる。データトラックの移動は、サーボ信号読み取り素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行われる。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
図2に、データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。図2中、磁気テープMTの磁性層には、複数のサーボバンド1が、ガイドバンド3に挟まれて配置されている。2本のサーボバンドに挟まれた複数の領域2が、データバンドである。サーボパターンは、磁化領域であって、サーボライトヘッドにより磁性層の特定の領域を磁化することによって形成される。サーボライトヘッドにより磁化する領域(サーボパターンを形成する位置)は規格により定められている。例えば業界標準規格であるLTO Ultriumフォーマットテープには、磁気テープ製造時に、図3に示すようにテープ幅方向に対して傾斜した複数のサーボパターンが、サーボバンド上に形成される。詳しくは、図3中、サーボバンド1上のサーボフレームSFは、サーボサブフレーム1(SSF1)およびサーボサブフレーム2(SSF2)から構成される。サーボサブフレーム1は、Aバースト(図3中、符号A)およびBバースト(図3中、符号B)から構成される。AバーストはサーボパターンA1~A5から構成され、BバーストはサーボパターンB1~B5から構成される。一方、サーボサブフレーム2は、Cバースト(図3中、符号C)およびDバースト(図3中、符号D)から構成される。CバーストはサーボパターンC1~C4から構成され、DバーストはサーボパターンD1~D4から構成される。このような18本のサーボパターンが5本と4本のセットで、5、5、4、4、の配列で並べられたサブフレームに配置され、サーボフレームを識別するために用いられる。図3には、説明のために1つのサーボフレームを示した。ただし、実際には、タイミングベースサーボ方式のヘッドトラッキングが行われる磁気テープの磁性層には、各サーボバンドに、複数のサーボフレームが走行方向に配置されている。図3中、矢印は走行方向を示している。例えば、LTO Ultriumフォーマットテープは、通常、磁性層の各サーボバンドに、テープ長1mあたり5000以上のサーボフレームを有する。
上記磁気テープ装置において、一形態では、磁気テープは取り外し可能な媒体(いわゆる可換媒体)として扱われ、磁気テープを収容した磁気テープカートリッジが磁気テープ装置に挿入され、取り出される。他の一形態では、磁気テープは可換媒体として扱われず、磁気ヘッドを備えた磁気テープ装置のリールに磁気テープが巻き取られ、磁気テープ装置内に磁気テープが収容される。一形態では、かかる磁気テープ装置において、磁気テープおよび磁気ヘッドを、磁気テープ装置中の密閉空間内に収容することができる。本発明および本明細書において、「密閉空間」とは、JIS Z 2331:2006 ヘリウム漏れ試験方法に規定されているヘリウム(He)を使用する浸せき法(ボンビング法)によって評価される密閉度が10×10-8Pa・m/秒以下である空間をいうものとする。密閉空間の密閉度は、例えば、5×10―9Pa・m/秒以上10×10-8Pa・m/秒以下であることができ、または上記範囲を下回ってもよい。一形態では、筐体中の空間全体が上記密閉空間であることができ、他の一形態では筐体中の一部空間が上記密閉空間であることができる。上記密閉空間は、磁気テープ装置の全体または一部を覆う筐体の内部空間であることができる。筐体の材質および形状は特に限定されず、例えば、通常の磁気テープ装置の筐体の材質および形状と同様であることができる。一例として、筐体の材質としては、金属、樹脂等を挙げることができる。
以下に、本発明の一態様を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「部」、「%」の表示は、特に断らない限り、「質量部」、「質量%」を示す。「eq」は、当量(equivalent)であり、SI単位に換算不可の単位である。
また、以下の各種工程および操作は、特記しない限り、温度20~25℃および相対湿度40~60%の環境において行った。
後述の表2中、「BaFe」は平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末を示す。
後述の表2中、「SrFe」は以下に記載の方法によって作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末を示し、「ε-酸化鉄」は以下に記載の方法によって作製されたε-酸化鉄粉末を示す。
以下に記載の各種強磁性粉末の平均粒子体積は、先に記載の方法により求められた値である。以下に記載の各種粉末の粒子のサイズに関する各種値も先に記載の方法により求められた値である。
異方性定数Kuは、各強磁性粉末について振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて先に記載の方法により求められた値である。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度15kOeで測定された値である。
[強磁性粉末の作製方法]
<六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法>
SrCOを1707g、HBOを687g、Feを1120g、Al(OH)を45g、BaCOを24g、CaCOを13g、およびNdを235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800ml加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(後述の表2中、「SrFe」)の平均粒子体積は900nm、異方性定数Kuは2.2×10J/m、質量磁化σsは49A・m/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
上記で得られた粉末が六方晶フェライトの結晶構造を示すことは、CuKα線を電圧45kVかつ強度40mAの条件で走査し、下記条件でX線回折パターンを測定すること(X線回折分析)により確認した。上記で得られた粉末は、マグネトプランバイト型(M型)の六方晶フェライトの結晶構造を示した。また、X線回折分析により検出された結晶相は、マグネトプランバイト型の単一相であった。
PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
<ε-酸化鉄粉末の作製方法>
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装填し、4時間の熱処理を施した。
熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES;Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε-酸化鉄(ε-Ga0.28Co0.05Ti0.05Fe1.62)であった。また、先に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法について記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε-酸化鉄の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε-酸化鉄粉末(後述の表2中、「ε-酸化鉄」)の平均粒子体積は750nm、異方性定数Kuは1.2×10J/m、質量磁化σsは16A・m/kgであった。
[フッ素含有化合物]
<重合体(1-1)>
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた300ミリリットル三口フラスコに、n-プロピルアルコール16.25g、シクロヘキサノン16.25gおよびNovec7200(3M社製)20.00gを仕込んで、液温を97℃まで昇温した。次いで、フルオロリンクMD700(ソルベイ社製)9.00g(5.0ミリモル)、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸1.00g(3.8ミリモル)、n-プロピルアルコール7.00g、シクロヘキサノン5.50g、Novec7200を15.00gおよび重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬社製)10.00g(43.4ミリモル)からなる混合溶液を、60分で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、更に6時間撹拌を続け、以下に示す重合体(1-1)のポリマー溶液を82.9g得た。ポリマー溶液の固形分濃度は13.2%であった。以下において、aおよびbは、表1に示す値である。
Figure 2023018629000025
<重合体(1-2)~(1-9)、(1-12)、(1-15)、(1-20)>
以下の構造を有する重合体(1-2)~(1-9)、(1-12)、(1-15)、(1-20)を、表1に示す項目を表1に示すように変更して重合体(1-1)について記載した方法と同様の方法によってそれぞれ合成した。表1中、重合体(1-8)(a)、(b)および(c)は、組成比が異なる重合体(1-8)である。
Figure 2023018629000026
Figure 2023018629000027
[実施例1]
(1)アルミナ分散物の調製
アルファ化率約65%、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積20m/gのアルミナ粉末(住友化学社製HIT-80)100.0部に対し、3.0部の2,3-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)、極性基としてSONa基を有するポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR-4800(極性基量:80meq/kg))の32%溶液(溶媒はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒)を31.3部、溶媒としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合溶液570.0部を混合し、ジルコニアビーズ存在下で、ペイントシェーカーにより5時間分散させた。分散後、メッシュにより分散液とビーズとを分け、アルミナ分散物を得た。
(2)磁性層形成用組成物の処方
(磁性液)
強磁性粉末(種類:表2参照) 100.0部
SONa基含有ポリウレタン樹脂 14.0部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.2meq/g
シクロヘキサノン 150.0部
メチルエチルケトン 150.0部
(研磨剤液)
上記(1)で調製したアルミナ分散物 6.0部
(突起形成剤液)
突起形成剤 2.0部
種類:コロイダルシリカ(平均粒子サイズ120nm)
メチルエチルケトン 1.4部
(その他の成分)
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L) 2.5部
(仕上げ添加溶媒)
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 200.0部
(3)下層非磁性層形成用組成物の処方
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm) 100.0部
トリオクチルアミン 4.0部
塩化ビニル樹脂 12.0部
ステアリン酸 1.5部
ステアリン酸アミド 0.3部
ブチルステアレート 1.5部
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 510.0部
(4)上層非磁性層形成用組成物の処方
非磁性無機粉末 α-酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):30nm
平均短軸長:15nm
針状比:2.0
SONa基含有ポリウレタン樹脂 18.0部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.2meq/g
ステアリン酸 1.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
(5)バックコート層形成用組成物の処方
カーボンブラック 100.0部
DBP(Dibutyl phthalate)吸油量:74cm/100g
ニトロセルロース 27.0部
スルホン酸基および/またはその塩を含有するポリエステルポリウレタン樹脂
62.0部
ポリエステル樹脂 4.0部
アルミナ粉末(BET比表面積:17m/g) 0.6部
メチルエチルケトン 600.0部
トルエン 600.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L) 15.0部
(6)各層形成用組成物の調製
磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。上記磁性液を、上記成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散(ビーズ分散)することにより調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。上記サンドミルを用いて、調製した磁性液および上記研磨剤液および他の成分(突起形成剤液、その他の成分および仕上げ添加溶媒)と混合し5分間ビーズ分散した後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で0.5分間処理(超音波分散)を行った。その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過を行い磁性層形成用組成物を調製した。
上記の下層非磁性層形成用組成物および上層非磁性層形成用組成物のそれぞれについて、上記成分をオープンニーダで240分間混練した後、サンドミルで分散させた。各非磁性層形成用組成物の分散条件としては、分散時間は24時間とし、分散ビーズとしてはビーズ径0.1mmのジルコニアビーズを使用した。こうして得られた分散液にポリイソシアネート(東ソー社製コロネート3041)をそれぞれ4.0部加え、更に20分間撹拌混合した後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過した。以上により、下層非磁性層形成用組成物および上層非磁性層形成用組成物を調製した。
バックコート層形成用組成物を、以下の方法により調製した。ポリイソシアネートを除く上記成分を、ディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で30分間撹拌した後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、ポリイソシアネートを添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌および混合処理を施し、バックコート層形成用組成物を調製した。
(7)磁気テープおよび磁気テープカートリッジの作製
厚み4.1μmの二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート製支持体の表面上に、下層非磁性層形成用組成物を乾燥後の厚みが表2に記載の厚みになるように塗布し、雰囲気温度100℃の環境下で乾燥させて下層非磁性層を形成した。下層非磁性層上に、乾燥後の厚みが表2に記載の厚みになるように上層非磁性層形成用組成物を塗布し、雰囲気温度100℃の環境下で乾燥させて上層非磁性層を形成した。
次いで、上層非磁性層上に乾燥後の厚みが0.1μmとなるように上記(6)で調製した磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。その後に、磁性層形成用組成物の塗布層が未乾燥状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布層の表面に対し垂直方向に印加して垂直配向処理を行った後、乾燥させ、磁性層を形成した。
その後、支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面に、乾燥後の厚みが0.3μmとなるように上記(6)で調製したバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させてバックコート層を形成した。
その後、金属ロールのみから構成されるカレンダロールを用いて、速度100m/分、線圧300kg/cm、および90℃のカレンダ温度(カレンダロールの表面温度)にて、表面平滑化処理(カレンダ処理)を1回行った。
カレンダ処理後、表2に示すフッ素含有化合物を溶媒(シクロヘキサノンとメチルエチルケトン1:1(質量比)の混合溶媒を使用)と混合し、フッ素含有化合物濃度0.1%の塗布液を調製した。この塗布液を磁性層表面に、フッ素含有化合物の塗布量が表2に記載の値となる液量でワイヤーバーによって塗布し乾燥させた。
上記オーバーコート後、長尺状の磁気テープ原反を雰囲気温度70℃の熱処理炉内に保管することにより熱処理を行った(熱処理時間:36時間)。熱処理後、1/2インチ幅にスリットして、磁気テープを得た。得られた磁気テープの磁性層に市販のサーボライターによってサーボ信号を記録することにより、LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を有する磁気テープを得た。こうして形成されたサーボパターンは、JIS(Japanese Industrial Standards) X6175:2006およびStandard ECMA-319(June 2001)の記載にしたがうサーボパターンである。サーボバンドの合計本数は5、データバンドの合計本数は4である。
上記サーボパターン形成後の磁気テープ(長さ970m)を熱処理用巻芯に巻き取り、この巻芯に巻き付けた状態で熱処理した。熱処理用巻芯としては、曲げ弾性率0.8GPaの樹脂製の中実状の芯状部材(外径:50mm)を使用し、巻き取り時のテンションは0.6Nとした。熱処理は、熱処理温度50℃で5時間行った。熱処理を行った雰囲気の重量絶対湿度は、10g/kg Dry airであった。
上記熱処理後、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外し、一時巻き取り用巻芯に巻き取り、その後、一時巻き取り用巻芯から磁気テープカートリッジ(LTO Ultrium7データカートリッジ)のリール(リール外径:44mm)へ最終製品長分(960m)の磁気テープを巻き取り、残り10m分は切り取り、切り取り側の末端に、市販のスプライシングテープによって、Standard ECMA(European Computer Manufacturers Association)-319(June 2001) Section 3の項目9にしたがうリーダーテープを接合させた。一時巻き取り用巻芯としては、熱処理用巻芯と同じ材料製で同じ外径を有する中実状の芯状部材を使用し、巻き取り時のテンションは0.6Nとした。
以上により、長さ960mの磁気テープがリールに巻装された単リール型の磁気テープカートリッジを作製した。
[実施例2、3]
フッ素含有化合物の塗布量が表2に記載の値となる液量でオーバーコートを行った点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
[実施例4~10、15~20、比較例2]
フッ素含有化合物を表2に示すものに変更した点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
[実施例11]
強磁性粉末を表2に示すものに変更した点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
[実施例12]
非磁性層を以下のように1層のみ形成した点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
<非磁性層形成用組成物の処方>
非磁性無機粉末:α-酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):150nm
針状比:7.0
BET比表面積:52m/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
SONa基含有ポリウレタン樹脂 18.0部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.2meq/g
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
非磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を除く上記成分を、オープンニーダにより混練および希釈処理し、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌および混合処理を施して非磁性層形成用組成物を調製した。
厚み4.1μmの二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート製支持体の表面上に、乾燥後の厚みが表2に示す厚みとなるように上記で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を1層形成した。
[実施例13]
強磁性粉末を表2に示すものに変更した点以外、実施例12について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
[実施例14]
磁性層形成用組成物に表2に示すフッ素含有化合物を強磁性粉末100.0質量部に対して0.5質量部添加し、フッ素含有化合物を含む塗布液のオーバーコートを実施しなかった点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
[比較例1]
フッ素含有化合物を含む塗布液のオーバーコートを実施しなかった点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープおよび磁気テープカートリッジを作製した。
実施例および比較例について、それぞれ磁気テープカートリッジを2つ作製し、1つを以下の比率θrを求めるための水接触角の測定に使用し、他の1つを後述の電磁変換特性の評価に使用した。
[比率θr]
実施例および比較例の各磁気テープの長手方向の無作為に選択した位置から長さ5cmのテープ試料と長さ100mのテープ試料を切り出した。長さ5cmのテープ試料については磁気ヘッドとの摺動は行わずに水接触角θbeforeを求めた。長さ100mのテープ試料は、IBM社製LTO8テープドライブに搭載されている記録再生ヘッドを固定した1/2インチリールテスターに先に記載したように取り付け、先に記載した走行条件にて、雰囲気温度23℃±1℃相対湿度50%の環境において磁気ヘッド(LTO8ヘッド)と摺動させた。この摺動後のテープ試料の無作為に選択した位置から長さ5cmのテープ試料を切り出し、このテープ試料において水接触角θafterを求めた。
水接触角の測定は、接触角測定機(協和界面科学社製接触角測定装置DropMaster700)を用いて、以下の方法によってテープ試料の磁性層表面について実施した。
テープ試料を、バックコート層表面がスライドガラス表面と接触するようにスライドガラス上に設置した。テープ試料の表面(磁性層表面)に測定用液体(水)2.0μlを滴下し、滴下した液体が安定した液滴を形成したことを目視で確認した後、上記接触角測定機に付随の接触角解析ソフトウェアFAMASにより液滴像を解析し、サンプル片と液滴の接触角を測定した。接触角の算出はθ/2法によって行い、1つのテープ試料につき磁性層表面の6箇所の異なる部分で測定して得られた値の算術平均を水接触角θbeforeまたはθafterとした。測定は、雰囲気温度25℃および相対湿度50%の環境で行い、以下の解析条件で接触角を求めた。こうして求められたθbeforeおよびθafterから、比率θrを算出した。
手法:液滴法(θ/2法)
着滴認識:自動
着滴認識ライン(針先からの距離):50dot
アルゴリズム:自動
イメージモード:フレーム
スレッシホールドレベル:自動
比較例1については、磁性層表面と磁気ヘッドとの摺動時の摩擦が高すぎてテープ試料を磁気ヘッドと繰り返し摺動させることができなかった。そのため、比較例1については比率θrを求めることができなかった(表2中、「-」と表記)。
[繰り返し走行における電磁変換特性の評価]
雰囲気温度23℃±1℃相対湿度50%の環境にて、 以下の評価を行った。
実施例および比較例について、それぞれ、磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープの長手方向の無作為に選択した位置から切り出した長さ100mのテープ試料を、IBM社製LTO8テープドライブに搭載されている記録再生ヘッドを固定した1/2インチリールテスターに先に記載したように取り付け、データの記録および再生を行った。記録再生時の走行条件としては、比率θrを求めるために行われる磁気ヘッドとの摺動について先に記載した走行条件を採用した。
記録は線記録密度300kfciで行い、再生を行った際の再生出力を測定し、信号対雑音比(再生出力とノイズとの比)としてSNR(Signal-to-Noise Ratio)を求めた。単位kfciとは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。
1シングルパス目に記録再生した時のSNRと、20,000シングルパス目に記録再生したときのSNRとの差(20,000シングルパス目のSNR-1シングルパス目のSNR)を算出した。算出された値を、表2中、「SNR低下」の欄に示す。
比較例1では、磁性層表面と磁気ヘッドとの摺動時の摩擦が高すぎて磁気テープを繰り返し走行させることができなかった。そのため、20,000シングルパス目のSNRを求めることができなかった(表2中、「測定不可」と表記)。
以上の結果を、表2に示す。
Figure 2023018629000028
表2に示すように、比較例2では、20,000シングルパス目のSNRが1シングルパス目のSNRに対して5.0dB超低下し、繰り返し走行後の電磁変換特性の低下が顕著であった。
これに対し、実施例1~20では、比較例2と比べて繰り返し走行後のSNR低下が抑制されていた。この結果から、実施例1~20の磁気テープが、走行を繰り返しても電磁変換特性の低下が少ない磁気テープであることが確認できる。
本発明の一態様は、データストレージ用磁気テープの技術分野において有用である。

Claims (10)

  1. 非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープであって、
    前記非磁性支持体上の磁性層側の部分にフッ素含有化合物を含み、
    磁気ヘッドとの摺動前に前記磁性層の表面において測定される水接触角に対する、磁気ヘッドとの摺動後に前記磁性層の表面において測定される水接触角の比率θrが0.70以上である磁気テープ。
  2. 前記比率θrが0.80以上である、請求項1に記載の磁気テープ。
  3. 前記比率θrが0.85以上である、請求項1または2に記載の磁気テープ。
  4. 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を1層以上更に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  5. 前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  6. 前記強磁性粉末は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  7. 前記強磁性粉末は、六方晶バリウムフェライト粉末である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  8. 前記強磁性粉末は、ε-酸化鉄粉末である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気テープ。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気テープを含む磁気テープカートリッジ。
  10. 請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気テープを含む磁気テープ装置。
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