JP2023018534A - 接着性タンパク質を調製する方法、接着性タンパク質及び接着剤組成物 - Google Patents

接着性タンパク質を調製する方法、接着性タンパク質及び接着剤組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 接着性タンパク質の効率的な調製方法を提供する。【解決手段】 DOPA含有接着性タンパク質を調製する方法であって、前記タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換大腸菌の高密度培養物に、0.1~1mMの濃度のIPTGを用いて前記遺伝子の発現を誘導する誘導工程と、前記発現誘導された菌体を、タンパク質変性剤を含有する溶液を用いて可溶化する可溶化工程と、前記可溶化された菌体溶液中の前記遺伝子産物を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ担体に吸着させ、競合剤により溶出させる精製工程と、前記溶出液を、5%未満の酢酸を含有する溶液に対して透析する透析工程と、を含む方法。【選択図】なし

Description

本発明は、接着性タンパク質の調製方法に関する。より詳しくは、本発明は、医療用接着剤等として有用な接着性タンパク質の調製方法に関する。
イガイ類(Mytilus edulis、M. galloprovincialis、M. coruscus等)は、水中で接着能を有する特殊な接着性タンパク質(MAPs)を分泌することにより、海洋で基材に固着することができる。イガイ由来の接着性タンパク質は、高レベルの3,4-ジヒドロキシフェニル-L-アラニン(DOPA)残基を含み、DOPAの含有量は、MAPsの接着強度と直線状に相関することが報告されている。さらに、DOPA残基に由来するカテコール基がその接着能に極めて重要であることが明らかにされている。
この接着性タンパク質は、耐水性、生体適合性であること等から、医療用バイオ接着剤等として利用されることが期待され、研究及び応用が進められている。いくつかの発現系により機能的組換え体MAPsが作製されてきた。しかし、生産収率及び精製収率が低く、その実用性は限定的であった。
特表2008-504016号公報
Hwang, et al.,"Practical recombinant hybrid mussel bioadhesive fp-151", Biomaterials, vol.28, No.24, pp.3560-3568, 2007 Hwang, et al.,"Expression of Functional Recombinant Mussel Adhesive Protein Type 3A in Escherichia coli", Biotechnol. Prog.,2005,21,965-970
本発明は、効率的な接着性タンパク質の調製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題について鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、
DOPA含有接着性タンパク質を調製する方法であって、
前記タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換大腸菌の高密度培養物に、0.1~1mMの濃度のIPTGを用いて前記遺伝子の発現を誘導する誘導工程と、
前記発現誘導された菌体を、タンパク質変性剤を含有する溶液を用いて可溶化する可溶化工程と、
前記可溶化された菌体溶液中の前記遺伝子産物を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ担体に吸着させ、競合剤により溶出させる精製工程と、
前記溶出液を、5%未満の酢酸を含有する溶液に対して透析する透析工程と、
を含む方法が提供される。
本発明の第二の態様によれば、
DOPA含有接着性タンパク質を調製する方法であって、
前記タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換大腸菌の高密度培養物に、0.1~1mMの濃度のIPTGを用いて前記遺伝子の発現を誘導する誘導工程と、
前記発現誘導された菌体を、タンパク質変性剤を含有する溶液を用いて可溶化する可溶化工程と、
前記可溶化された菌体溶液中の前記遺伝子産物を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ担体に吸着させ、競合剤により溶出させる精製工程と、
前記溶出液を、5%未満の酢酸を含有する溶液に対して透析する透析工程と、
前記透析後の前記遺伝子産物中のチロシン残基をDOPAに置換するDOPA置換工程と
を含む方法が提供される。
前記第一の態様及び第二の態様において、前記大腸菌の高密度培養物は、OD600=0.6~2.0、1.0~2.0、又は1.5~2.0であることができる。
前記第一の態様及び第二の態様において、前記タンパク質変性剤は、6~8Mの尿素であることができる。
前記第一の態様及び第二の態様において、前記競合剤は、イミダゾールであることができる。
前記第一の態様及び第二の態様において、前記透析工程は、前記可溶化工程において使用したタンパク質変性剤を含む酢酸溶液に対して透析する第一の透析と、その後に前記タンパク質変性剤を含まない酢酸溶液に対して透析する第二の透析とを含むことができる。
上述した第一の態様及び第二の態様の調製方法によって、DOPA含有接着性タンパク質が提供される。さらに、DOPA含有接着性タンパク質を含む接着剤組成物が提供される。
本発明によれば、医療用接着剤・美容用接着剤等として有用な接着性タンパク質を簡便な工程で効率的に調製することが可能となる。
図1は、FP151発現量に対する発現誘導時間及びIPTG濃度の影響を表す図である。 図2は、FP151発現量に対するIPTG濃度(1.0mM)の影響を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。パネルA、B、Cはそれぞれ独立した実験の結果である。 図3は、FP151発現量に対するIPTG濃度(0.1mM)の影響を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。パネルA、B、Cはそれぞれ独立した実験の結果である。 図4は、FP151発現量に対する発現誘導時の菌体密度(高密度)の影響を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。パネルA、B、Cはそれぞれ独立した実験の結果である。 図5は、FP151発現量に対する発現誘導時の菌体密度(低密度)の影響を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。パネルA、B、Cはそれぞれ独立した実験の結果である。 図6は、FP151を、酢酸を用いた可溶化及び凍結乾燥、及び低pH緩衝液を用いた溶出により調製した結果を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。 図7は、FP151を、酢酸を用いた可溶化及び凍結乾燥、及び低pH緩衝液を用いた溶出の後、さらにイミダゾールを用いた溶出を行って調製した結果を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。 図8は、FP151を、尿素を用いた可溶化、及びイミダゾールを用いた溶出により調製した結果を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。 図9は、Mfp3(S)を、尿素を用いた可溶化、低pH緩衝液を用いた溶出、及びその後のイミダゾールを用いた溶出により調製した結果を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。 図10は、Mfp3(F)を、尿素を用いた可溶化、及び低pH緩衝液を用いた溶出、及びその後のイミダゾールを用いた溶出により調製した結果を表すSDS-PAGEのゲルの写真の図である。
以下、本発明について詳述する。
<発現ベクター及び形質転換体>
本発明において使用される遺伝子は、接着性タンパク質をコードするものであれば特に制限はない。接着性タンパク質としては、チロシン残基を多く含むアミノ酸配列が好ましく、例えば接着性タンパク質のアミノ酸配列中に2%以上、10%以上、又は20%以上のチロシン残基を含むアミノ酸配列を有するものが好ましい。チロシン残基の含有量は、40%以下、35%以下、又は30%以下であることができる。接着性タンパク質の遺伝子は、例えば、イガイ類から単離されたFP(foot protein)-1~FP-6の天然の配列を有するものであってもよく、それらを改変した配列、二種以上のFPの融合配列等を有する組換え体をコードする遺伝子であってもよい。これらの遺伝子は、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ精製のためにヒスチジンタグ(His-tag;6~10個程度のポリヒスチジンのタグ)をコードする配列を含むように改変される。なお、上記アミノ酸配列中のチロシン残基の含有量は、His-tag等の付加的配列及び開始コドンを含まないアミノ酸残基数を100%として算出される。
具体的には、例えば、組換えタンパクであるFP151(チロシン残基22.6%)、Mfp3(S)(チロシン残基24.4%)、Mfp3(F)(チロシン残基23.8%)が挙げられる。FP151は、ムラサキイガイ(Mytilus galloprovincialis)由来のFP1及びFP5の融合タンパク質である。配列的特徴は、FP5モチーフの両末端側に、FP1に由来するモチーフが6回リピートした配列が付加されている(非特許文献1)。Mfp3(S)は、Mytilus californianu由来の接着性タンパク質でシグナルペプチドを除いた45残基のタンパク質である。配列的特徴はチロシン及びグリシンなどのアミノ酸を多く含む。Mfp3(F)は、Mytilus californianu由来の接着性タンパク質でシグナルペプチドを除いた42残基のタンパク質である。配列的特徴はチロシン及びグリシン、リジンなどのアミノ酸を多く含む。
このような遺伝子を含む発現ベクターは、選択した遺伝子を公知の発現ベクターに挿入することにより、公知の方法で構築することができる。発現誘導を行うためのlacプロモーター又はtacプロモーターを持つ発現ベクターが好ましい。pETシステムが利用可能なプラスミド、すなわち、T7プロモーターにより発現制御される発現ベクターが特に好ましい。
宿主としては、大腸菌の各種菌株を使用することができる。染色体にλファージDE3が溶原化され、lacUV5プロモーターに制御されたT7 RNAポリメラーゼを発現する株が望ましい。具体的には、例えばBL21(DE3)、NovaBlue(DE3)、Tuner(DE3)が挙げられる。
培地は、大腸菌の培養が可能な培地であればよく、使用する宿主に合わせて適宜選択して使用することができ、例えば、LB培地、YT培地等の公知の培地を使用することができる。
発現ベクターで宿主を形質転換して形質転換体を得る方法及び形質転換体を選択し、培養する方法は、公知である。例えば、適量(例えば5~50ng)のプラスミドを、エレクトロポレーション法により大腸菌に導入することができる。形質転換体の選択は、好適な抗生物質等を使用することにより容易に行うことができ、例えば、接着性タンパク質遺伝子がpET22bベクターに導入されている場合はアンピシリン含有のLB培地にて選択することができる。
タンパク発現のための培養は、得られた形質転換体又はそのストックを公知の方法でスケールアップして培養することにより行うことができる。培養条件は宿主に合わせて適宜選択することができ、大腸菌は、一般に、30~37℃で好気的に培養することができる。
<誘導工程>
本発明に係る一態様の方法においては、形質転換体の培養の特定の時点、すなわち細胞が高密度になった時点で発現誘導を行う。例えば、大腸菌の場合、600nmの吸光度(OD600)で表される密度が0.6以上、例えば0.6~2.0、好ましくは1.0~2.0、さらに好ましくは1.5~2.0に達した時点に誘導を開始することができる。誘導を開始する時点の細胞密度が高いと、低密度(すなわちOD600<0.6)の場合と比較して目的のタンパク質の収量を3~5倍程度に増大させることができる。
誘導は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を培地に添加することにより開始する。培地中のIPTGの最終濃度は、0.1~1mMとなるように添加することができる。0.1~0.8mMが好ましく、さらには0.1~0.5mMであることが好ましい。0.1mM程度までの低濃度の使用は、より高濃度で誘導した場合と同等量又はそれ以上のタンパク質が得られるうえ、コスト削減になるため好ましい。
IPTG添加後、培養温度で培養を継続することにより発現を誘導する。誘導時間は、1~20時間、好ましくは4~14時間、さらに好ましくは6~14時間であることができる。ある条件下では、誘導時間は、10時間程度でタンパク質収量が最大となるため、8~12時間が好ましい。
誘導終了後、細胞を常法により回収する。必要に応じて回収した細胞ペレットを緩衝液等で洗浄してもよい。
<可溶化工程>
本発明に係る一態様の方法においては、回収した細胞を、タンパク質変性剤を用いて可溶化する。タンパク質変性剤としては、カオトロピック剤が好ましく、6~8M程度の濃度の尿素又は塩酸グアニジンが好ましい。タンパク質変性剤を含有する溶液は、タンパク質変性剤を含有する水溶液、水性溶液、又は緩衝液であることができる。
可溶化は、溶液成分が析出しない温度で行うことができ、室温で行うことが好ましい。可溶化工程の時間は、例えば1時間以上とすることができ、12時間以内であることが好ましい。一般に2~10時間が望ましく、6~8時間程度がさらに望ましい。12時間を超えると粘性が高くなり、ろ過を行う場合にはろ過が困難になることがある。タンパク質変性剤の添加割合は、培養液100mLあたりの大腸菌ペレットに対して10~40mL程度であることができ、15~35mLが好ましい。
従来の方法では、細胞を可溶化するために酢酸を使用していたが、酢酸が存在すると、その後の精製が困難になる。そのため、精製前に凍結乾燥及び緩衝液置換等の酢酸除去工程が必要になる。さらに、酢酸は、これらの工程において乾燥機の金属を腐食させる恐れがある。本発明に係る一態様の方法においては、精製前に酢酸を使用せず、尿素等を使用することにより、凍結乾燥及び緩衝液置換を回避することができる。
<精製工程>
本発明に係る一態様の方法においては、形質転換体細胞の可溶化された溶液(ライセート)を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ(Immobilized Metal Chromatography(IMAC))を使用して精製することができる。金属イオンとしては、銅、ニッケル、亜鉛、コバルトが一般に使用され、担体としては、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロース、セファロース(登録商標)等を使用することができる。固定化金属アフィニティクロマトグラフィによる精製は、変性条件下で行うことができ、可溶化工程で使用したものと同じタンパク質変性剤を用いることが好ましい。
本発明に係る一態様の方法においては、溶出は、ヒスチジンよりも金属との親和性の高い競合剤、典型的にはイミダゾールを使用して行う。溶出液は、少なくとも、競合剤、例えば0.1~1M程度の濃度のイミダゾールと、上記のタンパク質変性剤、例えば6~8M程度の尿素とを含有する溶液(水溶液、水性溶液又は緩衝液)であることができる。溶出は、変性条件下、弱アルカリ性(pH8.0付近)条件下で、溶液成分が析出しない温度、好ましくは室温で行うことができる。したがって、具体的には、例えば50mMトリス塩酸(pH8)、0.5M塩化ナトリウム、8M尿素、0.5Mイミダゾールの溶液を使用することができる。
本発明に係る一態様の方法においては、溶出時にイミダゾール等の競合剤を使用することにより、安定的に精製が可能になる。His-tag精製に用いられる溶出方法としてはpH低下により担体のpKaをヒスチジンのpKa以下にすることで目的タンパク質を解離させる方法があるが、接着性タンパク質に関してはpH低下による溶出は不適であることが判明した。これは、pH低下により、接着性タンパク質が担体やカラム内表面に接着するようになることがあるためと考えられる。
回収された画分について、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)等を行うことにより、目的のタンパク質の存在及び精製の程度を確認することができる。
<透析工程>
本発明に係る一態様の方法においては、目的のタンパク質を含む画分を集めて、透析を行うことにより精製に使用した不要な成分を除去する。透析は、溶液成分が析出しない温度で行うことができ、室温で行うことが好ましい。分子量カットオフ値は、目的のタンパク質の分子量に応じて適宜選択することができ、例えばFP151については6,000~8,000Da、Mfp3(S)及びMfp3(F)については3,500Daとすることができる。
従来の5%酢酸溶液による透析は、接着性タンパク質の凝集が起こりやすいことが判明した。したがって、本発明に係る一態様の方法においては、それより低濃度の酢酸を含有する溶液(水溶液、水性溶液又は緩衝液)が使用される。具体的には、酢酸の濃度は、0.01~3%が好ましく、0.1~1%程度であることがさらに好ましい。さらに、透析を二段階で行い、第一段階では可溶化に使用したタンパク質変性剤を含む低濃度の酢酸溶液を使用して緩衝液を酢酸溶液に交換し、第二段階でタンパク質変性剤を含まない低濃度の酢酸溶液を使用することにより、タンパク質の凝集をさらに防止することができる。あるいは、透析を三段階以上で行い、第一段階では可溶化に使用したタンパク質変性剤を含む低濃度の酢酸溶液を使用し、第二段階以降でタンパク質変性剤の濃度を次第に低減させ、最終的にタンパク質変性剤を含まない低濃度の酢酸溶液に対して透析してもよい。第一段階の透析において、タンパク質変性剤としては、可溶化及び/又は溶出液に使用したものと同じタンパク質変性剤を、可溶化及び/又は溶出液に使用した濃度と同じ濃度で用いることが好ましい。また、各段階の透析時間は、透析する試料及び使用する外液の容量などに応じて適宜選択することができる。例えば、1~3回外液を交換し、各回1~12時間、さらには4~8時間程度が望ましい。
本発明に係る一態様の方法は、必要に応じて、菌体破砕(例えば超音波処理)、洗浄、濃縮、ろ過等の工程を、透析工程の前の任意の時点にさらに含んでもよい。
<DOPA置換工程>
精製した接着性タンパク質を、チロシナーゼによるDOPA置換工程に供することにより、接着性タンパク質の粘性をさらに高めることができる。DOPA置換工程において、接着性タンパク質中のチロシンは、ホウ砂、アスコルビン酸、及びチロシナーゼを含む反応系において反応させることにより、DOPAに置換される。ホウ砂はタンパク系間の錯体形成に役立ち、アスコルビン酸はDOPA置換の際の電子供与として役立つ。具体的には、例えば、25mMホウ砂、20mMアスコルビン酸、及び10~100μg/mLの濃度範囲のチロシナーゼを含む溶液中で、接着性タンパク質(1mg/mL)を室温(20~30℃の範囲内)で1時間反応させることにより、DOPA置換を行うことができる。
DOPA置換された接着性タンパク質は、限外濾過(ポアサイズ3k又は10kDa)により20倍濃縮後に等量の1M塩化カルシウム水溶液を添加し、遠心分離して回収することで粘性化した接着性タンパク質を得ることができる。
<接着剤組成物>
本発明に係る一態様の方法により調製した接着性タンパク質を使用して、接着剤組成物を製造することができる。本発明の接着性タンパク質は、生体適合性であり、安全性が高いため、医療用接着剤として使用したり、化粧又は美容用の接着剤として生体に使用することができる。
このような用途の接着剤は、生体に使用可能な公知の賦形剤、界面活性剤、酸化剤及び充填剤等の成分を含む組成物とすることができる。界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性界面活性剤等のいずれであってもよい。酸化剤としては、チロシナーゼ、カテコールオキシダーゼ、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ビス(スルホスクシニミディル)スベレート、3,3’-ジチオビス(スルホスクシニミディルプロピオネート)、過酸化水素等が挙げられる。充填剤としては、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイタンスルフェート、エラスチン、ラミニン、カゼイン、ヒドロキシアパタイト、アルブミン、フィブロネクチン及びヒブリン等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1. FP151発現におけるIPTG濃度の影響評価(1))
菌株として、pET22bベクター上にFP151遺伝子を含む発現プラスミドとしてpET22b_FP151(pET22bベクター(Novagen社製、品番69744)のクローニングサイトのNde1及びXho1の領域内にインサートDNA(FP151遺伝子)を挿入して作製したもの)を用いてエレクトロポレーション法により形質転換した大腸菌(BL21(DE3)株)を使用した。
上記菌を、培地(2×YT培地、500mL)に植菌し、37℃で培養した。0.1mM又は1.0mMのIPTG濃度で、OD600=1.0の時点で発現誘導し、IPTG添加後、4、6、8、10、12、又は14時間経過時点で80mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、0.1Mトリス塩酸(pH8.0)、0.5M塩化ナトリウム緩衝液で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、変性緩衝液(8M尿素、50mMトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム)を20mL加え、可溶化した。
ライセートを遠心分離(11000rpm、30分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、Ni2+固定化カラムである「Ni Sepharose 6 Fast Flow」(商品名、Cytiva)を用いて組換えFP151を吸着させ、0.5Mイミダゾール、8M尿素、0.5M塩化ナトリウム、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)(以下、「0.5Mイミダゾール溶出緩衝液」ということがある)で溶出させた(His-tag精製)。
精製画分を回収し、透析チューブ(商品名「スペクトラ/ポア1」(MWCO:6,000~8,000)、再生セルロース製、REPLIGEN社)に入れて8M尿素、0.5%酢酸水溶液に対して透析した(100mL中に1~2時間程度)。
「Qubit Protein Assay kit」(商品名、Invitrogen)を使用してタンパク濃度を測定し、回収液量から回収量を推定した。以下のすべてのタンパク質濃度測定は同様に行った。
各画分のサンプル(いずれもアプライ量は5μL)を12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供し、クマシーブリリアントブルーで染色した。以下のすべての電気泳動は同様に行った。
結果を図1及び表1に示す(2回の実験の平均値である)。
Figure 2023018534000001
培養液80mLあたりのタンパク質収量は、IPTG濃度0.1mMで2.6~3.5mg、1mMで2.9~3.4mgであり、IPTG濃度に依存せずに2.6~3.5mg付近を示した。したがって、IPTG濃度は0.1~1.0mMの範囲内ではタンパク質収量に影響を与えない可能性が示された。また、誘導時間に関しては、この実験結果からは4~14時間の範囲内では収量に顕著な差は観察されず、この範囲であれば問題ないことがわかった。
(2. FP151発現におけるIPTG濃度の影響評価(2))
菌株として、上記1.と同じ大腸菌を使用した。
上記菌を、培地(2×YT培地、400mL)に植菌し、37℃で培養した。0.1mM又は1.0mMのIPTG濃度で、OD600=0.6~1.0(IPTG 1.0mMについては0.60、0.70、及び1.00;IPTG 0.1mMについては0.89、0.96、及び1.00)の時点で発現誘導し、IPTG添加後、6~14時間(IPTG 1.0mMについては6、6、及び12時間;IPTG 0.1mMについては14、14、及び14時間)経過時点で400mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.0)で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、変性緩衝液(8M尿素、50mMトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム)を20mL加え、可溶化した。
ライセートを遠心分離(11000rpm、30分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、上記1.と同じNi2+固定化カラムを用いて組換えFP151を吸着させ、0.5Mイミダゾール溶出緩衝液で溶出させた(His-tag精製)。
精製画分を回収し、上記1.と同じ透析チューブに入れて8M尿素、0.5%酢酸水溶液に対して透析した(100mL中に1~2時間程度)。液を回収し、タンパク質濃度測定及びSDS-PAGEを行った。
IPTG濃度1.0mMの3回の実験の結果を図2及び表2、IPTG濃度0.1mMの3回の実験の結果を図3及び表3にそれぞれ示す。図2及び図3において、パネルA、B、Cはそれぞれ表2及び表3に示す3回の独立した実験を表し、各レーンは、M=タンパク質マーカー、レーン1=不溶性画分、レーン2=素通り画分、レーン3=洗浄画分、レーン4=溶出画分1、レーン5=溶出画分1、レーン6=溶出画分2、レーン7=溶出画分3、レーン8=溶出画分4である。FP151のバンドは約28~29kDaの位置に見られる。
Figure 2023018534000002
Figure 2023018534000003
培養液400mLあたりのタンパク質収量は、IPTG濃度1mMでは平均9.03mg、0.1mMでは13.6mgとなった。この実験では、IPTG濃度0.1mMの方が1.5倍高い収量を示した。また、IPTG濃度1mMの同一系列内では、初期OD(誘導直前の菌体量)又は誘導時間の値が大きいほど収量が高くなる傾向があった。
(3. FP151発現における誘導時菌体密度の影響評価)
タンパク質収量に及ぼす初期菌体量の影響を、高密度又は低密度状態でタンパク質誘導を行い、その収量を比較することにより調べた。
菌株として、上記1.と同じ大腸菌を使用した。
上記菌を、培地(2×YT培地、400mL)に植菌し、37℃で培養した。0.1mMのIPTG濃度で、OD600=1.5~2.0(1.79、1.57、及び1.67)又はOD600<0.6(0.55、0.42、及び0.39)の時点で発現誘導し、IPTG添加後、12時間経過時点で400mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.0)で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、変性緩衝液(8M尿素、50mMトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム)を20mL加え、可溶化した。
ライセートを遠心分離(11000rpm、30分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、上記1.と同じNi2+固定化カラムを用いて組換えFP151を吸着させ、0.5Mイミダゾール溶出緩衝液で溶出させた(His-tag精製)。
精製画分を回収し、上記1.と同じ透析チューブに入れて8M尿素、0.5%酢酸水溶液に対して透析した(100mL中に1~2時間程度)。
液を回収し、タンパク質濃度測定及びSDS-PAGEを行った。
高密度(OD600=1.5~2.0)の3回の実験の結果を図4及び表4、低密度(OD600<0.6)の3回の実験の結果を図5及び表5に示す。図4及び図5において、パネルA、B、Cはそれぞれ表4及び図5に示す3回の独立した実験を表し、各レーンは、M=タンパク質マーカー、レーン1=不溶性画分、レーン2=素通り画分、レーン3=洗浄画分、レーン4=溶出画分1、レーン5=溶出画分1、レーン6=溶出画分2、レーン7=溶出画分3、レーン8=溶出画分4である。
Figure 2023018534000004
Figure 2023018534000005
培養液400mLあたりのタンパク質収量は、低密度培養物では6.27mg、高密度培養物では35.6mgと推定された。収量の差は約5.7倍あり、誘導開始時の菌体密度が収量に及ぼす影響が非常に大きいことが示された。
(4. FP151のHis-tag精製 溶出条件の最適化(pH低下による溶出とイミダゾール溶出の比較))
公知のプロトコル(非特許文献1)に基づいて、FP151の抽出精製方法を検討した。
菌株として、上記1.と同じ大腸菌を使用した。
上記菌を、培地(LB培地、100mL)に植菌し、37℃で培養した。OD600=0.32の時点で1.0mMのIPTG濃度で発現誘導し、IPTG添加後、12.7時間経過時点で100mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)で洗浄後、同じ緩衝液で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、25%酢酸水溶液を加え(ペレット1gあたり5mL)、可溶化した。
ライセートを凍結乾燥し、8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に溶解した後、遠心分離(11000rpm、15分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、上記1.と同じNi2+固定化カラムを用いて組換えFP151を吸着させ、8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で溶出させた(His-tag精製)。
精製画分(2mLずつ)を回収し、SDS-PAGEを行った。
結果を図6に示す。図6において、各レーンは、レーン1=タンパク質マーカー、レーン2=酢酸抽出直後、レーン3=凍結乾燥後、レーン4=素通り画分、レーン5=洗浄画分、レーン6=溶出画分1、レーン7=溶出画分2、レーン8=溶出画分3、レーン9=溶出画分4、レーン10=溶出画分5、レーン11=溶出画分6、レーン12=溶出画分7、レーン13=溶出画分8、レーン14=溶出画分9、レーン15=溶出画分10である。矢印は、FP151のバンドを表す。
酢酸抽出及びその抽出液の凍結乾燥後のサンプルにはFP151のバンド(約28kDa)が確認された。一方、溶出画分にはFP151は確認されなかった。したがって、この方法ではカラムからFP151を溶出できないことが判明した。
pH4.5の条件下で溶出されなかったカラムに、溶出液として0.5Mイミダゾール溶出緩衝液を加えて、再度溶出を行った。結果を、図7に示す。図7において、各レーンは、レーン1=タンパク質マーカー、レーン2=溶出画分1、レーン3=溶出画分2、レーン4=溶出画分3、レーン5=溶出画分4、レーン6=溶出画分5、レーン7=溶出画分6、レーン8=溶出画分7、レーン9=溶出画分8、レーン10=溶出画分9、レーン11=溶出画分10である。
イミダゾールを用いて溶出した場合、溶出画分にもFP151が確認された。したがって、この方法で可溶化した場合であってもイミダゾールでの溶出の方が適していることが示された。
(5. FP151のHis-tag精製 可溶化条件の最適化(酢酸溶液と尿素溶液との比較))
上記4.における酢酸による可溶化の代わりに使用できるFP151の抽出方法を検討した。
菌株として、上記1.と同じ大腸菌を使用した。
上記菌を、培地(LB培地、100mL)に植菌し、37℃で培養した。OD600=0.27の時点で1.0mMのIPTG濃度で発現誘導し、IPTG添加後、12.7時間経過時点で100mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.0)で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、変性緩衝液(8M尿素、50mMトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム)を20mL加え、可溶化した。
ライセートを遠心分離(11000rpm、15分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、上記1.と同じNi2+固定化カラムを用いて組換えFP151を吸着させ、0.5Mイミダゾール溶出緩衝液で溶出させた(His-tag精製)。精製画分(2mLずつ)を回収し、SDS-PAGEを行った。
結果を図8に示す。図8において、各レーンは、レーン1=タンパク質マーカー、レーン2=尿素抽出、レーン3=素通り画分、レーン4=洗浄画分、レーン5=溶出画分1、レーン6=溶出画分2、レーン7=溶出画分3、レーン8=溶出画分4、レーン9=溶出画分5、レーン10=溶出画分6、レーン11=溶出画分7、レーン12=溶出画分8、レーン13=溶出画分9である。
尿素抽出(可溶化)のサンプルにはFP151のバンド(約28kDa)が確認された。また、溶出画分にもFP151(矢印)が確認された。したがって、FP151は尿素で抽出可能であることが確認された。
(6. Mfp3(S,F)のHis-tag精製 溶出条件の最適化(pH低下とイミダゾールの比較))
公知のプロトコル(非特許文献2)に基づいて、Mfp3(S,F)の抽出精製方法を検討した。
菌株として、pET22bベクター上にコドン最適化したMfp3(S)又はMfp3(F)遺伝子を含む発現プラスミド(pET22bベクター(Novagen社製、品番69744)のクローニングサイトのNde1及びXho1の領域内にインサートDNA(コドン最適化したMfp3(S)又はMfp3(F)遺伝子)を挿入して作製したもの)を用いてエレクトロポレーション法で形質転換した大腸菌(BL21(DE3)株)を使用した。
上記菌を、培地(LB培地、100mL)に植菌し、37℃で培養した。Mfp3(S)についてはOD600=1.08、Mfp3(F)についてはOD600=1.00の時点で1.0mMのIPTG濃度で発現誘導し、IPTG添加後、7.6時間経過時点で100mLの培養物を、3000×g、15分、4℃で遠心分離し、集菌した。
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で洗浄後、0.1Mトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム緩衝液(pH8.0)で菌体を懸濁し、超音波破砕した。菌体破砕物を遠心分離(11000rpm、15分、4℃)し、不溶性画分を回収し、変性緩衝液(8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム、pH8.0)を20mL加え、可溶化した。
ライセートを遠心分離(11000rpm、30分、室温)し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。ろ液を、上記1.と同じNi2+固定化カラムを用いて組換えMfp3を吸着させた。カラムを、8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.3)で洗浄(10mL)した後、8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.9)で洗浄(10mL)した。
その後、8M尿素、10mMトリス塩酸、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で溶出させた(2mLずつ回収)。
追加で、pH低下による溶出後の同じカラムを、8M尿素、50mMトリス塩酸、0.5M塩化ナトリウム、0.5Mイミダゾール緩衝液(pH8.0)で再度溶出させた(His-tag精製)。
Mfp3(S)及びMfp3(F)についての結果を、図9及び図10にそれぞれ示す。図9及び図10において、各レーンは、レーン1=タンパク質マーカー、レーン2=尿素可溶化直後、レーン3=素通り画分、レーン4=洗浄1、レーン5=洗浄2、レーン6=低pH溶出画分1、レーン7=低pH溶出画分2、レーン8=低pH溶出画分3、レーン9=低pH溶出画分4、レーン10=低pH溶出画分5、レーン11=低pH溶出画分6、レーン12=低pH溶出画分7、レーン13=低pH溶出画分8、レーン14=低pH溶出画分9、レーン15=低pH溶出画分10である。レーン16=イミダゾール溶出画分1、レーン17=イミダゾール溶出画分2、レーン18=イミダゾール溶出画分3、レーン19=イミダゾール溶出画分4、レーン20=イミダゾール溶出画分5である。Mpf3のバンドは約6.4kDaの位置に見られる。なお、理論的な分子量は、Mfp3(S)が6.4kDaであるのに対し、Mfp3(F)は6.3kDaであるが、後者はアミノ酸含有量の影響を受けてやや上に出る。
FP151の場合と同様、pH低下による溶出画分にはMfp3のバンドは確認できず、イミダゾールによる溶出画分にはMfp3のバンドが確認された。したがって、溶出条件はpH低下よりもイミダゾールでの溶出の方が適していることが示された。
(7. 透析条件の最適化(1))
精製された接着性タンパク質から尿素を除去するためには透析操作を行う。この際、高濃度のタンパク質が存在する場合、急激な溶媒変化に伴ってタンパクの凝集が観察されることがある。そこで、透析用緩衝液の種類についてFP151の最適な透析条件を検討した。
上記1.(OD600=1、IPTG濃度1.0mM)と同様に調製し、His-tag精製直後のFP151溶液(5mL)を、上記1.と同じ透析チューブに入れ、1Lの各溶液(5%酢酸水溶液、1%酢酸水溶液、0.5%酢酸水溶液、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、又は生理食塩水(PBS))中にそれぞれ浸漬して室温で透析した。溶液は、3回交換(1回目は約4時間、2回目は約12時間、3回目は約4時間)し、尿素を完全に除去した。透析終了後、凝集の有無を目視で確認した。
結果を表6に示す。
Figure 2023018534000006
50mMトリス塩酸緩衝液又はPBSで透析を行った場合、タンパク質の白い凝集が確認された。また、5%酢酸水溶液及び1%酢酸水溶液でも凝集が確認できたが、酢酸濃度が高いほど凝集が多く見られる傾向にあることが判明した。したがって、この結果からは、5%未満の酢酸水溶液が好ましく、0.5%酢酸水溶液が最も適していることが分かった。
(8. 透析条件の最適化(2))
段階的に尿素を除去することでタンパク質の凝集を防止する方法を検討した。
<一段階透析法>
FP151、Mfp3(S)及びMfp3(F)は、上記7.と同様に調製したものを使用した。ただし、Mfp3(S)はOD600=0.79~1.84、Mfp3(F)はOD600=0.62~1.33で発現誘導を開始した。His-tag精製直後のFP151、Mfp3(S)、Mfp3(F)の溶液(10mL)を1Lの0.5%酢酸水溶液中に浸漬して透析した。透析チューブは、Mfp3にはスペクトラ/ポアRC透析チューブ(商品名、再生セルロース製)、スペクトラ/ポア3(MWCO:3,500)、FP151にはスペクトラ/ポアRC透析チューブ(商品名、再生セルロース製)、スペクトラ/ポア1(MWCO:6,000~8,000)を使用し、室温で各回6時間程度、行った。外液は、3回交換し、尿素を完全に除去した。
<二段階透析法>
上記と同じHis-tag精製直後のFP151、Mfp3(S)、Mfp3(F)の溶液(10mL)を100mLの8M尿素、0.5%酢酸水溶液中に浸漬して透析し、精製画分中の緩衝液成分(トリス緩衝液(pH8.0)、0.5M塩化ナトリウム)を酢酸と交換した。次に、尿素を完全に除去するために、一段階透析法の場合と同様に1Lの0.5%酢酸水溶液を3回交換して透析した。透析終了後、凝集の有無を目視で確認した。
結果を表7に示す。
Figure 2023018534000007
溶出緩衝液と同じ尿素濃度で緩衝液を変更した後、尿素除去を行うことにより、タンパク質の凝集をさらに有効に防止できることが示された。


Claims (10)

  1. DOPA含有接着性タンパク質を調製する方法であって、
    前記タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換大腸菌の高密度培養物に、0.1~1mMの濃度のIPTGを用いて前記遺伝子の発現を誘導する誘導工程と、
    前記発現誘導された菌体を、タンパク質変性剤を含有する溶液を用いて可溶化する可溶化工程と、
    前記可溶化された菌体溶液中の前記遺伝子産物を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ担体に吸着させ、競合剤により溶出させる精製工程と、
    前記溶出液を、5%未満の酢酸を含有する溶液に対して透析する透析工程と、
    を含む方法。
  2. DOPA含有接着性タンパク質を調製する方法であって、
    前記タンパク質をコードする遺伝子を含む形質転換大腸菌の高密度培養物に、0.1~1mMの濃度のIPTGを用いて前記遺伝子の発現を誘導する誘導工程と、
    前記発現誘導された菌体を、タンパク質変性剤を含有する溶液を用いて可溶化する可溶化工程と、
    前記可溶化された菌体溶液中の前記遺伝子産物を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィ担体に吸着させ、競合剤により溶出させる精製工程と、
    前記溶出液を、5%未満の酢酸を含有する溶液に対して透析する透析工程と、
    前記透析後の前記遺伝子産物中のチロシン残基をDOPAに置換するDOPA置換工程と
    を含む方法。
  3. 前記大腸菌の高密度培養物が、OD600=0.6~2.0である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記大腸菌の高密度培養物が、OD600=1.0~2.0である、請求項3記載の方法。
  5. 前記大腸菌の高密度培養物が、OD600=1.5~2.0である、請求項4記載の方法。
  6. 前記タンパク質変性剤が、6~8Mの尿素である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記競合剤が、イミダゾールである、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記透析工程が、前記可溶化工程において使用したタンパク質変性剤を含む酢酸溶液に対して透析する第一の透析と、その後に前記タンパク質変性剤を含まない酢酸溶液に対して透析する第二の透析とを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
  9. 請求項1~8のいずれか1項記載の方法によって調製されたDOPA含有接着性タンパク質。
  10. 請求項9記載のDOPA含有接着性タンパク質及び賦形剤を含む接着剤組成物。


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