―第1実施形態―
(1)エリア通知システム100の全体構成
本実施形態のエリア通知システム100は、施設10の利用者U(U1,U2,・・・)に、施設10内の複数のエリアA(A1,A2,・・・)の中から、利用者Uが利用すべきエリアAを通知する。図1に示されるように、エリア通知システム100は、例えば、空調管理システム190に用いられる。空調管理システム190は、主として、エリア通知システム100と、1つまたは複数の空調システム20とを有する。本実施形態では、空調管理システム190は、1つの空調システム20を有する。
施設10には、複数のエリアAの空気環境(温度、湿度および風量等)を調整するための1つの空調システム20が設置されている。空調システム20は、主として、熱源ユニット21と、利用ユニット23と、集中コントローラ26とを備える。空調システム20は、1台の熱源ユニット21に複数台の利用ユニット23が接続される1つの冷凍サイクル(冷媒系統)を備える。そのため、本実施形態では、施設10には、1つの冷媒系統が設置されている。本実施形態では、熱源ユニット21は、室外機22であり、利用ユニット23は、室内機24である。
空調システム20は、集中コントローラ26によって、1台の室外機22で複数台の室内機24を制御することができるマルチエアコンシステムである。室外機22は、空調システム20の冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮する圧縮機を有する。エリア通知システム100は、空調システム20の集中コントローラ26に接続されている。
施設10は、空調システム20によって内部空間の空気環境が調整される建物、または、建物の一部である。施設10は、例えば、ビルの一部または全体を占める、オフィス、病院、ホテル、学校、大型店舗、研究施設および飲食店である。空調システム20は、施設10内の複数のエリアAにまたがって施設10の空調を行う。
施設10内の各エリアAには、1台の室内機24が設置される。施設10内のエリアAは、壁等によって他のエリアAから区画された空間であってもよい。例えば、エリアAは、施設10内の比較的小さい部屋(会議室等)であってもよい。この場合、1つのエリアAのみからなる部屋には、1台の室内機24が設置される。
また、施設10内の複数のエリアAは、同一の空間に含まれてもよい。複数のエリアAを含む空間において、各エリアAは互いに重ならないように配置される。例えば、複数のエリアAを含む空間は、施設10内の比較的大きい部屋(ロビー等)であってもよい。この場合、複数のエリアAからなる部屋には、エリアAの数と同じ複数台の室内機24が設置される。
エリア通知システム100は、施設10の案内係(または管理者)が、所定の1つのエリアAに利用者Uを案内するために用いられる。エリア通知システム100は、施設10の利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、施設10の案内係に提供し、案内係は、その情報に基づいて、利用者Uを所定のエリアAに案内する。この場合、施設10の案内係は、施設10を訪れた利用者Uを所定のエリアAに案内するか、または、既に所定のエリアAを利用している利用者Uを他のエリアAに案内する。利用者Uは、1人であってもよく、複数人から構成されるグループであってもよい。
図1に示されるように、エリア通知システム100は、主として、制御部110と、入力部120と、出力部130と、設定部140と、記憶部150とを有する。
制御部110は、エリア通知システム100の種々の機能を実現するための演算処理を実行するハードウェアである。制御部110は、所定のデータを用いて所定のプログラムを実行することによって、これらの機能を実現する。制御部110は、例えば、CPU、ASIおよびFPGA等の集積回路である。制御部110は、施設10の利用方法を決定するための処理を実行する。施設10の利用方法とは、例えば、施設10の利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報、および、空調システム20の制御に関する情報である。空調システム20の制御に関する情報は、空調システム20の複数の室内機24の稼働情報を含む。稼働情報は、例えば、複数の室内機24のうち稼働するべき室内機24に関する情報、および、各エリアAに設置される室内機24の設定温度、設定湿度および設定風量等に関する情報である。
入力部120は、制御部110が施設10の利用方法を決定するために使用する情報を入力するためのハードウェアである。入力部120は、施設用端末30等と通信するためのネットワーク機器である。施設用端末30とは、施設10によって所有され、かつ、施設10の案内係および管理者等が業務上用いるPCおよび携帯端末等である。
出力部130は、制御部110によって決定された施設10の利用方法に含まれる情報を出力するためのハードウェアである。出力部130は、施設用端末30等と通信するためのネットワーク機器である。
設定部140は、制御部110によって決定された施設10の利用方法に含まれる情報を出力して、空調システム20の集中コントローラ26に送信するためのハードウェアである。設定部140は、例えば、空調システム20の集中コントローラ26と通信するためのネットワーク機器である。
記憶部150は、制御部110が実行するプログラム、および、制御部110が施設10の利用方法を決定するために使用するデータを記憶するハードウェアである。記憶部150は、例えば、入力部120によって入力されたデータ、および、出力部130および設定部140が出力するデータを記憶するための補助記憶装置(RAM、HDDおよびSSD等)である。
図2に示されるように、エリア通知システム100は、外部から入力部120に入力された各種情報を用いて、制御部110に施設10の利用方法を決定させ、施設10の利用方法に含まれる情報を出力部130および設定部140を介して外部に出力する。エリア通知システム100は、これらの一連の処理で用いられるプログラムおよびデータを、記憶部150に永続的にまたは一時的に記憶する。
(2)入力情報
エリア通知システム100は、施設10の利用方法を決定するために、入力部120に入力される種々のデータを用いる。次に、外部から入力部120に入力される主なデータについて具体的に説明する。
(2-1)建物図面情報
建物図面情報は、主に、施設10を含む建物に関する情報、および、施設10内の空間に関する情報である。建物図面情報は、更新頻度が低い静的な情報である。建物図面情報は、具体的には、以下の項目に関する情報である。
・施設10のレイアウト
・施設10の壁、扉および窓等の材質
・施設10内に設置されるOA機器の内部発熱量
・施設10の換気量
施設10のレイアウトは、例えば、施設10内の部屋の間取り、および、各エリアA(部屋)の空調面積(床面積)を含む。施設10の換気量は、例えば、各エリアA(部屋)の換気量を含む。
建物図面情報は、例えば、施設10の施工業者、および、エリア通知システム100の管理者によって施設用端末30等を用いて入力される。エリア通知システム100の管理者とは、例えば、エリア通知システム100の設置を提案する営業担当者、および、エリア通知システム100の設置を担当するエンジニアである。入力された建物図面情報は、記憶部150に保存される。
(2-2)設備図面情報
設備図面情報は、主に、施設10内における空調システム20の設置に関する情報である。設備図面情報は、更新頻度が低い静的な情報である。空調対象空間であるエリアAにおいて室内機24が冷媒と空気との熱交換を行う直接膨張式の空調システム20の場合、設備図面情報は、具体的には、以下の項目に関する情報である。
・冷媒系統
・冷媒配管長
・室外機22および室内機24の配置
・室外機22の圧縮機等の機器の性能特性
本実施形態のように、使用される空調システム20が1つの場合、冷媒系統は1つであるので、冷媒系統に関する情報は用いられない。
室外機22および室内機24の配置に関する情報は、室内機24と、室内機24が設置されるエリアAとを紐づける設置情報を含む。この設置情報により、各エリアAに設置されている室内機24を特定できる。
また、冷媒と熱交換された媒体(空気および水等)を、空調対象空間であるエリアAに移送する間接膨張式の空調システム20の場合、設備図面情報は、具体的には、以下の項目に関する情報である。
・ダクト系統
・水配管系統
・室外機22の圧縮機等の機器の性能特性
設備図面情報は、例えば、空調システム20の施工業者、および、エリア通知システム100の管理者によって施設用端末30等を用いて入力される。入力された設備図面情報は、記憶部150に保存される。
(2-3)気象情報
気象情報は、施設10が位置する地域の環境に関する情報である。気象情報は、例えば、施設10が位置する地域の温度、湿度、日射量、風向および風量である。気象情報は、入力部120に入力されるタイミングに応じて異なる動的な情報である。気象情報は、例えば、気象予報サービス等の外部ネットワーク34から自動的に入力される。入力された気象情報は、記憶部150に保存される。施設10の利用方法の決定処理によっては、入力部120に入力されるデータは、気象情報を含んでいなくてもよい。
(2-4)運用情報
運用情報は、施設10の利用状況に関する情報である。運用情報は、入力部120に入力されるタイミングに応じて異なる動的な情報である。運用情報は、具体的には、以下の項目に関する情報である。
・利用者Uの環境許容情報
・利用者Uの利用情報
・エリアAの利用情報
・空調システム20の運転情報
利用者Uの環境許容情報とは、エリアAにいる利用者Uが許容できる、当該エリアAの温度範囲、湿度範囲および風量範囲に関する情報である。利用者Uの環境許容情報は、時間帯ごとに設定されてもよい。また、利用者Uの環境許容情報は、デマンドイベント参加条件に関する情報であってもよい。デマンドイベント参加条件とは、利用者Uが参加できるタイプのデマンド制御において、利用者Uがデマンド制御に参加するための条件である。施設10の利用方法の決定処理によっては、入力部120に入力されるデータは、利用者Uの環境許容情報を含んでいなくてもよい。
利用者Uの環境許容情報は、例えば、利用者Uによって施設用端末30等を用いて入力される。しかし、エリア通知システム100が、利用者Uが利用しているSNSシステムと連携している場合、入力部120は、SNSシステムを介して、利用者Uの環境許容情報を取得してもよい。この場合、利用者Uは、自身のアカウントでSNSシステムにログインして自身の環境許容情報を入力し、入力部120は、利用者Uによって入力された環境許容情報を取得する。また、利用者Uは、自身の携帯端末にインストールされたエリア通知システム100専用のアプリケーションを用いて自身の環境許容情報を入力してもよい。この場合、入力部120は、利用者Uによって入力された環境許容情報を取得する。
利用者Uの利用情報とは、各利用者Uが利用しているエリアAに関するリアルタイムの情報(施設10の利用状況に関する情報等)である。エリアAの利用情報とは、各エリアAを利用している利用者Uに関するリアルタイムの情報(利用者Uの人数および利用目的等)である。空調システム20の運転情報とは、稼働している室外機22および室内機24の制御に関するリアルタイムの情報(圧縮機の消費電力量、および、エリアAの設定温度、設定湿度、設定風量等)である。利用者Uの利用情報、エリアAの利用情報、および、空調システム20の運転情報は、例えば、空調システム20の集中コントローラ26から自動的に入力される。入力された運用情報は、記憶部150に保存される。
(3)出力情報
エリア通知システム100は、制御部110によって決定された、施設10の利用方法に含まれる種々の情報を出力部130および設定部140を介して外部に出力する。
出力部130を介して外部に出力される情報は、例えば、施設10の利用者Uが利用すべきエリアA(第1エリア)に関する情報である。この情報は、エリア通知システム100から、施設用端末30等に送信される。これにより、施設10の案内係は、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受ける。施設10の案内係は、出力部130から送信されて施設用端末30の画面に表示された情報を参照して、利用者Uを、当該利用者Uが利用すべき所定のエリアAに案内する。また、出力部130を介して外部に出力される情報は、施設用端末30の他に、または、施設用端末30の代わりに、利用者端末32に送信されてもよい。利用者端末32とは、施設10の利用者Uが使用するPCおよび携帯端末等である。この場合、利用者Uは、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受ける。利用者Uは、出力部130から送信されて利用者端末32の画面に表示された情報を参照して、自身が利用すべき所定のエリアAに移動することができる。
設定部140を介して外部に出力される情報は、空調システム20の制御信号等、空調システム20の制御に用いられる情報である。設定部140を介して外部に出力される情報は、例えば、空調システム20の複数の室内機24のうち稼働するべき室内機24に関する情報、および、各エリアAに設置される室内機24の設定温度、設定湿度および設定風量等に関する情報を含む。これらの情報は、エリア通知システム100から、空調システム20の集中コントローラ26に送信される。集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、室外機22および室内機24を制御する。
エリア通知システム100は、上記以外の情報を、出力部130および設定部140を介して外部に出力してもよい。例えば、制御部110が、施設10の利用状況に基づいて空調システム20の消費電力量の予測値を算出する場合、エリア通知システム100は、当該予測値を、出力部130を介して、施設用端末30等に送信してもよい。
入力部120に入力されるデータが、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uのデマンドイベント参加条件に関する情報を含んでいる場合、エリア通知システム100は、利用者Uにインセンティブを付与してもよい。この場合、エリア通知システム100は、デマンド制御に参加した利用者Uに付与されるインセンティブに関する情報を、出力部130および設定部140を介して外部に出力してもよい。例えば、利用者Uがデマンド制御に参加した後、エリア通知システム100は、利用者Uが利用しているSNSシステムで使用可能なポイントを、デマンド制御終了後に当該SNSシステムを介して利用者Uに付与してもよい。
(4)施設10の利用方法の決定処理
エリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって設置される空調システム20の全体の運転効率に基づく制御を行うために用いられる。エリア通知システム100は、入力部120に入力された入力情報を用いて、所定のルールに従って、空調システム20の消費電力量ができるだけ小さくなるように、利用者Uが利用すべきエリアAをリアルタイムで決定する。エリア通知システム100は、利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、出力部130を介して施設10の案内係または利用者Uに通知したり、設定部140を介して空調システム20の集中コントローラ26に送信したりする。
制御部110は、空調システム20の処理負荷、冷凍効率および機器効率の少なくとも1つに基づいて、稼働するべき室内機24を選定し、稼働するべき室内機24が設置されているエリアAに関する情報を通知する。
空調システム20の処理負荷は、各エリアAの空気環境を維持するために必要な空調負荷に基づいている。各エリアAは、面積(例えば、床面積)、施設10内における位置、および、他のエリアAとの相対的な位置に応じて、異なる空調負荷を有する。エリアAの空調負荷は、当該エリアAに設置されている室内機24の処理負荷に相当する。空調システム20の処理負荷は、空調システム20の空調対象である全てのエリアAの空調負荷の合計、および、空調システム20の全ての室内機24の処理負荷の合計と近似的に見なすことができる。
空調システム20の冷凍効率とは、空調システム20の冷凍サイクルの成績係数等の熱力学的効率である。冷凍効率は、冷房運転時の場合、冷凍サイクルにおける蒸発温度(暖房運転時の場合は凝縮温度。以下同じ。)を緩和することで増加する。蒸発温度を緩和する(高くする)ためには、例えば、エリアAの設定温度を高くしたり、エリアAに設置される室内機24の風量を増加させたりする。また、冷凍効率は、冷凍サイクルの熱交換効率を高くすることで増加する。熱交換効率を高くするためには、例えば、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷を平準化する。空調システム20の冷凍効率を高くすることで、室外機22の圧縮機の仕事量が低減し、圧縮機の消費電力量が低減する。
空調システム20の機器効率とは、室外機22の圧縮機の運転効率である。機器効率を高くするためには、例えば、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷を平準化する。機器効率は、冷房運転時の場合、冷凍サイクルにおける蒸発温度を緩和することでも増加する。
空調システム20の消費電力量は、空調システム20の処理負荷が低いほど小さくなる。空調システム20の消費電力量は、空調システム20の冷凍効率および機器効率が高いほど小さくなる。一般的に、空調システム20の消費電力量への影響は、空調システム20の処理負荷が最も大きく、空調システム20の冷凍効率がその次に大きく、空調システム20の機器効率が最も小さい。そのため、制御部110は、図2に示されるように、最初に、空調システム20の処理負荷が最小となるように施設10の利用方法を決定し、次に、空調システム20の冷凍効率が最大となるように施設10の利用方法を決定し、次に、空調システム20の機器効率が最大となるように施設10の利用方法を決定する。
次に、空調システム20の処理負荷、冷凍効率および機器効率のそれぞれに基づいて、制御部110が施設10の利用方法を決定する処理の具体例について説明する。以下に説明される処理は、いずれか1つの処理が単独で用いられてもよく、複数の処理が組み合わされて用いられてもよい。
(4-1)処理負荷に基づく処理
空調システム20の処理負荷に基づく処理では、制御部110は、空調システム20の処理負荷が最小となる施設10の利用方法を決定する。これにより、空調負荷が少ないエリアAを利用者Uが優先的に利用できるので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
(4-1-1)空調面積に基づく処理
この処理では、制御部110は、空調面積がより小さいエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、利用者Uによって利用されている全てのエリアAの空調面積の合計が最小となるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。空調面積は、エリアAが占める面積であり、具体的にはエリアAの床面積である。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、各エリアAの空調面積に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図3および図4では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通の室外機22に接続される1台の室内機24が設置されている。4つのエリアA1~A4は、同じ空調面積を有する。エリアA1~A4の空調面積は、エリアA5の空調面積よりも小さい。エリアA1~A5の空調面積が大きいほど、エリアA1~A5の空調負荷が高い。例えば、エリアA1~A4の空調負荷は、1.0kWであり、エリアA5の空調負荷は、1.5kWである。図3および図4において、各エリアA1~A5の下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
空調面積に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図3に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA5を利用している。エリアA2~A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A5の室内機24のみが稼働している。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、2.5kWである。図3および図4において、利用されているエリアは、ハッチングされた領域として示されている。図5~20,23~44でも、利用されているエリアは、ハッチングされた領域として示されている。
しかし、図4に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用するように、エリアA1の空調面積に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、空調システム20の処理負荷は、2.0kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の空調面積に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.5kW小さくなるように施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U2を、エリアA5からエリアA3に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U2は、エリアA5からエリアA3に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5の室内機24の運転を停止して、エリアA3の室内機24の運転を開始する。
(4-1-2)エリアの位置に基づく処理
この処理では、制御部110は、施設10が入っている建物の外壁からより離れているエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、建物の外壁に面しているエリアAが利用者Uによってできるだけ利用されないように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。建物の外壁に面しているエリアAは、建物の外壁に面していないエリアAと比較して、部屋の窓から入る日射の量が多いため室内の気温が上昇しやすく、空調負荷が大きい。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される気象情報に基づいて、日射量に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図5および図6では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通の室外機22に接続される1台の室内機24が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。エリアA5は、施設10が入っている建物の外壁に面し、外壁には窓が取り付けられている。他の4つのエリアA1~A4は、建物の外壁に面しておらず、壁には窓が取り付けられていない。そのため、エリアA5の空調負荷は、窓から入る日射により、エリアA1~A4の空調負荷よりも高い。例えば、エリアA1~A4の空調負荷は、1.0kWであり、エリアA5の空調負荷は、1.5kWである。図5および図6において、各エリアA1~A5の下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
エリアA1~A5の位置に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図5に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA3を利用し、利用者U3はエリアA5を利用している。エリアA2,A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A3,A5の室内機24のみが稼働している。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.5kWである。
しかし、図6に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA2を利用するように、エリアA1~A5の位置に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、空調システム20の処理負荷は、3.0kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の位置に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.5kW小さくなるように、施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U3を、エリアA5からエリアA2に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U3は、エリアA5からエリアA2に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5の室内機24の運転を停止して、エリアA2の室内機24の運転を開始する。
なお、エリアAの空調負荷は、建物の外壁からより離れているほど小さくなる傾向がある。例えば、図5および図6において、エリアA5は、建物の外壁に面しており日射によって温度が上昇しやすい。この場合、エリアA5に隣接するエリアA4は、エリアA4とエリアA5とを区画する壁を介して、エリアA5からの貫流熱が伝達されやすいので、エリアA1~A3と比較して温度が上昇しやすい。そのため、エリアAの位置に基づく処理では、制御部110は、施設10が入っている建物の外壁から最も離れているエリアAを利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定することが好ましい。図5に示される状態の場合、制御部110は、利用者U3がエリアA4を利用するよりも、図6に示されるように利用者U3がエリアA2を利用するように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定することが好ましい。
(4-1-3)貫流負荷に基づく処理
この処理では、制御部110は、互いに隣接しているエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、複数の利用者Uが、互いに隣接している複数のエリアAを利用するように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置、および、各エリアAの貫流負荷に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図7および図8では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通の室外機22に接続される1台の室内機24が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。
貫流負荷に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図7に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA3を利用し、利用者U3はエリアA5を利用している。エリアA2,A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A3,A5の室内機24のみが稼働している。この場合、利用されているエリアA1,A3,A5のそれぞれの空調負荷は1.2kWとすると、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.6kWである。図7および図8において、利用されているエリアの下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
互いに隣接している2つのエリアAは、当該2つのエリアAを区画する壁を介して貫流熱が伝達する。図7において、エリアA1は、エリアA2および施設10外の空間との間で貫流熱が伝達し、エリアA3は、エリアA2,A4との間で貫流熱が伝達し、エリアA5は、エリアA4および施設10外の空間との間で貫流熱が伝達する。そのため、エリアA1~A5間の貫流熱の伝達に起因する負荷(貫流負荷)の分、利用されているエリアA1,A3,A5の空調負荷が高くなる。
しかし、図8に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA2を利用するように、各エリアA1~A5の貫流負荷に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、利用されているエリアA1~A3は互いに隣接しているので、貫流負荷が抑えられる。特に、エリアA2は、利用されているエリアA1,A3と隣接しているので、エリアA4,A5と比較して貫流負荷が小さい。そのため、例えば、エリアA1,A3のそれぞれの空調負荷は1.1kWとなり、エリアA2の空調負荷は1.0kWとなる。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.2kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の貫流負荷に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.4kW小さくなるように施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U3を、エリアA5からエリアA2に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U3は、エリアA5からエリアA2に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5の室内機24の運転を停止して、エリアA2の室内機24の運転を開始する。
(4-2)冷凍効率および機器効率に基づく処理
空調システム20の冷凍効率および機器効率に基づく処理では、制御部110は、空調システム20の冷凍効率および機器効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、室外機22の圧縮機の仕事量が低減するので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
本実施形態では、制御部110は、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷が平準化するように、施設10の利用方法を決定する。室内機24の処理負荷を平準化することで、冷凍サイクルの熱交換効率が高くなり、空調システム20の冷凍効率および機器効率が向上する。次に、冷凍効率および機器効率に基づく処理の具体例を2つ説明する。
(4-2-1)利用者Uの配置を変更する処理
この処理では、制御部110は、複数のエリアAの室内機24の処理負荷が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを変更して、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図9および図10では、施設10は、5個のエリアA1~A5を含む1つの大きな部屋を有する。エリアA1~A5は、壁等によって区画されていない。各エリアA1~A5には、共通の室外機22に接続される1台の室内機24が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。図9および図10では、各エリアA1~A5の境界は鎖線で示されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図9に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA2を利用し、利用者U3はエリアA3を利用している。エリアA4,A5は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1~A3の室内機24のみが稼働している。例えば、利用されているエリアA1~A3のそれぞれの空調負荷は1.5kWであり、利用されていないエリアA4,A5のそれぞれの空調負荷は0kWである。図9および図10において、利用されているエリアの下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
図9に示される状態では、空調システム20の処理負荷は、4.5kWであり、エリアA1~A5の空調負荷の標準偏差は、1.64kWである。標準偏差は、エリアA1~A5に設置される室内機24の処理負荷の平準化の程度を表す。標準偏差が小さいほど、各エリアA1~A5に設置される室内機24の処理負荷の平準化の程度が大きい。
しかし、図10に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA5を利用するように、各利用者U1~U3の間隔をあけ、かつ、全てのエリアA1~A5が利用されるように、施設10の利用方法を決定する。この場合、利用されているエリアA1,A3,A5のそれぞれの空調負荷は1.0kWであり、利用されていないエリアA2,A4のそれぞれの空調負荷は0.75kWである。空調システム20の処理負荷は、4.5kWであり、エリアA1~A5の空調負荷の標準偏差は、0.27kWである。
従って、制御部110は、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷を平準化するために、利用者Uの配置を変更するように、施設10の利用方法を決定することができる。室内機24の処理負荷を平準化することで、同一の冷媒系統の室内機24を効率的に運転できるので、空調システム20の冷凍効率および機器効率が増加する。また、冷房運転時の場合、室内機24の処理負荷を平準化することで、冷凍サイクルにおける蒸発温度が緩和されるので、空調システム20の冷凍効率および機器効率が増加する。例えば、図9に示される状態における蒸発温度は、6℃であり、図10に示される状態における蒸発温度は、8℃である。
図9および図10の場合、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U2を、エリアA2からエリアA5に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U2は、エリアA2からエリアA5に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA1~A5の室内機24の処理負荷を平準化させる。
(4-2-2)利用者Uの配置を入れ替える処理
この処理では、制御部110は、複数のエリアAの室内機24の処理負荷が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを入れ替えて、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される気象情報に基づいて、日射量に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの環境許容情報および利用情報等を取得する。本実施形態では、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uの許容温度レベルが用いられる。利用者Uの許容温度レベルは、利用者Uが室内機24の設定温度の緩和をどの程度許容できるかを表す。
図11および図12では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通の室外機22に接続される1台の室内機24が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。エリアA5は、施設10が入っている建物の外壁に面し、外壁には窓が取り付けられている。他の4つのエリアA1~A4は、建物の外壁に面しておらず、壁には窓が取り付けられていない。
施設10の利用方法を決定する前では、図11に示されるように、利用者U1~U5は、それぞれ、エリアA1~A5を利用している。利用者U1の許容温度レベルは、利用者U2~U5の許容温度レベルと異なる。例えば、冷房運転時において、利用者U1は、エリアA1の室内機24の設定温度を28℃に設定し、利用者U2~U5は、それぞれ、エリアA2~A5の室内機24の設定温度を26℃に設定している。この場合、次の表に示されるように、図11に示される利用状況において、エリアA1の室内機24の換気負荷および内部発熱は、それぞれ、エリアA2~A5の室内機24の換気負荷および内部発熱よりも低い。図11および図12において、各エリアA1~A5の下には、当該エリアの室内機24の設定温度が記載されている。
上の表において、各エリアA1~A5の室内機24の処理負荷は、室内機24の換気負荷と内部発熱と日射負荷との合計である。エリアA5は、施設10が入っている建物の外壁に面しているので、エリアA5の室内機24の日射負荷は、エリアA1~A4の室内機24の日射負荷よりも高い。その結果、エリアA1の室内機24の処理負荷が最も低く、エリアA5の室内機24の処理負荷が最も高い。
しかし、図12に示されるように、制御部110は、許容温度レベルが互いに異なる利用者U1と利用者U5とを入れ替えるように、施設10の利用方法を決定する。この場合、利用者U1がエリアA5を利用し、利用者U5がエリアA1を利用するので、次の表に示されるように、エリアA1およびエリアA5の室内機24の換気負荷および内部発熱の値が入れ替わる。その結果、全てのエリアA1~A5の室内機24の空調負荷が同じになり、エリアA1~A5の室内機24の処理負荷が平準化される。
従って、制御部110は、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷を平準化するために、利用者Uの配置を入れ替えるように、施設10の利用方法を決定することができる。室内機24の処理負荷を平準化することで、同一の冷媒系統の室内機24を効率的に運転できるので、空調システム20の冷凍効率および機器効率が増加する。また、冷房運転時の場合、室内機24の処理負荷を平準化することで、冷凍サイクルにおける蒸発温度が緩和されるので、空調システム20の冷凍効率および機器効率が増加する。例えば、図11に示される状態における蒸発温度は、6℃であり、図12に示される状態における蒸発温度は、8℃である。
図11および図12の場合、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U1を、エリアA1からエリアA5に案内し、同時に、利用者U5を、エリアA5からエリアA1に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U1は、エリアA1からエリアA5に移動し、同時に、通知を受けた利用者U5は、エリアA5からエリアA1に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA1~A5の室内機24の処理負荷を平準化させる。
(5)効果
本実施形態のエリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって空調を行う空調システム20の全体の運転効率を最適化することができる。具体的には、エリア通知システム100は、空調システム20全体の消費電力量が抑制されるように、空調システム20の処理負荷、冷凍効率および機器効率の少なくとも1つに基づいて、施設10の利用方法を決定することができる。空調システム20は、エリア通知システム100が決定した、施設10の利用方法に基づいて、室外機22および室内機24を制御する。これにより、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、空調システム20の消費電力量を抑制する省エネ制御を効率的に行うことができる。
―第2実施形態―
本実施形態のエリア通知システム100は、第1実施形態のエリア通知システム100と基本的な構成および動作が共通しているので、以下、両者の相違点を中心に説明する。
本実施形態では、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20を有する。エリア通知システム100が用いられる施設10には、複数のエリアAの空気環境(温度、湿度および風量等)を調整するための複数の空調システム20が設置されている。各空調システム20は、1台の室外機22に複数台の室内機24が接続される1つの冷凍サイクル(冷媒系統)を備える。そのため、本実施形態では、施設10には、複数の冷媒系統が設置されている。各冷媒系統は、互いに独立している。
各空調システム20は、施設10内の複数のエリアAにまたがって施設10の空調を行うことができる。しかし、複数の空調システム20は、共通のエリアAの空調を行わない。言い換えると、各空調システム20によって空調が行われるエリアAは、互いに重なり合わない。
エリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって設置される複数の空調システム20の全体の運転効率に基づく制御を行うために用いられる。エリア通知システム100は、入力部120に入力された入力情報を用いて、所定のルールに従って、各空調システム20の消費電力量ができるだけ小さくなるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。エリア通知システム100は、利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、出力部130を介して施設10の案内係または利用者Uに通知したり、設定部140を介して各空調システム20の集中コントローラ26に送信したりする。
次に、複数の空調システム20の処理負荷、冷凍効率および機器効率のそれぞれに基づいて、制御部110が施設10の利用方法を決定する処理の具体例について説明する。以下に説明される処理は、いずれか1つの処理が単独で用いられてもよく、複数の処理が組み合わされて用いられてもよい。
(1)冷凍効率に基づく処理
空調システム20の冷凍効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の冷凍効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20の室外機22の圧縮機の仕事量が低減するので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
以下の具体例において、施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されているとする。制御部110は、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bのそれぞれにおいて、1台の室外機22に接続されている複数台の室内機24の処理負荷が平準化するように、施設10の利用方法を決定する。室内機24の処理負荷を平準化することで、冷凍サイクルの熱交換効率が高くなり、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの冷凍効率が向上する。
(1-1)利用者Uの許容風量に基づく処理
この処理では、制御部110は、空調システム20ごとに、複数のエリアAの室内機24の処理負荷が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを入れ替えて、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの環境許容情報および利用情報等を取得する。本実施形態では、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uの許容風量レベルが用いられる。利用者Uの許容風量レベルは、利用者Uが室内機24の設定風量の緩和をどの程度許容できるかを表す。
図13および図14では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通の室外機22aに接続される1台の室内機24aが設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通の室外機22bに接続される1台の室内機24bが設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図13に示されるように、利用者U1~U10は、それぞれ、エリアA1~A10を利用している。利用者U1~U10によって、許容風量レベルは異なっている。許容風量レベルは、室内機24の通常レベル(強め)の風量を許容できる「強」レベル、および、室内機24の通常レベルの風量を許容できない「弱」レベルのいずれかである。例えば、図13では、利用者U4~U5,U8~U10の許容風量レベルは「強」であり、利用者U1~U3,U6~U7の許容風量レベルは「弱」である。例えば、許容風量レベルが「強」の利用者U4~U5,U8~U10は、強い風量を許容でき、許容風量レベルが「弱」の利用者U1~U3,U6~U7は、弱い風量のみを許容できる。図13および図14において、各エリアA1~A10の下には、当該エリアを利用している利用者U1~U10が許容できる風量が「強」または「弱」で記載されている。
冷房運転時の場合、室内機24a,24bから供給される空気の風量(設定風量)が多いほど、冷凍サイクルにおける蒸発温度を緩和することができる。しかし、蒸発温度は、同一の冷媒系統(空調システム20)に接続されている複数の室内機24の設定風量のうち、最も少ない設定風量に応じて決まる。そのため、図13に示される第1空調システム20aのように、許容風量レベルが「弱」の利用者U1~U3が利用する室内機24aが一台でも存在する場合、第1空調システム20a全体の蒸発温度を緩和することができない。同様に、図13に示される第2空調システム20bでも、許容風量レベルが「弱」の利用者U6~U7が利用する室内機24bが存在するため、第2空調システム20b全体の蒸発温度を緩和することができない。
しかし、図14に示されるように、制御部110は、利用者U1~U10を入れ替えて、許容風量レベルが同じ利用者U1~U10が、同一の冷媒系統に属する室内機24が設置されるエリアA1~A10を利用できるように、施設10の利用方法を決定する。図14では、許容風量レベルが「弱」である利用者U1~U3,U6~U7は、第1空調システム20aによって空調が制御されるエリアA1~A5を利用している。また、許容風量レベルが「強」である利用者U4~U5,U8~U10は、第2空調システム20bによって空調が制御されるエリアA6~A10を利用している。これにより、各空調システム20の室内機24の処理負荷が平準化されると共に、第2空調システム20b全体の蒸発温度が緩和される。例えば、図13に示される状態における第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの蒸発温度は、7℃である。一方、図14に示される状態における第1空調システム20aの蒸発温度は、7℃であり、第2空調システム20bの蒸発温度は、9℃である。
従って、エリア通知システム100は、各空調システム20の室内機24の処理負荷を平準化することで、第2空調システム20bの蒸発温度を緩和し、複数の空調システム20全体の冷凍効率を増加させることができる。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(1-2)利用者Uの許容温度に基づく処理
この処理では、制御部110は、空調システム20ごとに、複数のエリアAの室内機24の処理負荷が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを入れ替えて、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの環境許容情報および利用情報等を取得する。本実施形態では、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uの許容温度レベルが用いられる。利用者Uの許容温度レベルは、利用者Uが室内機24の設定温度の緩和をどの程度許容できるかを表す。
図15および図16では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通の室外機22aに接続される1台の室内機24aが設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通の室外機22bに接続される1台の室内機24bが設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図15に示されるように、利用者U1~U10は、それぞれ、エリアA1~A10を利用している。利用者U1~U10によって、許容温度レベルは異なっている。許容温度レベルは、室内機24の通常レベルの温度の緩和を許容できる「強」レベル、および、室内機24の通常レベルの温度の緩和を許容できない「弱」レベルのいずれかである。例えば、図15では、利用者U4~U5,U8~U10の許容温度レベルは「強」であり、利用者U1~U3,U6~U7の許容温度レベルは「弱」である。冷房運転時において、許容温度レベルが「強」の利用者U4~U5,U8~U10は、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3,U6~U7よりも、より高い設定温度を許容できる。例えば、許容温度レベルが「強」の利用者U4~U5,U8~U10は、28℃までの設定温度を許容でき、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3,U6~U7は、24℃までの設定温度を許容できる。図15および図16において、各エリアA1~A10の下には、当該エリアを利用している利用者U1~U10が冷房運転時において許容できる設定温度の最大値が記載されている。
冷房運転時の場合、室内機24a,24bから供給される空気の温度(設定温度)が高いほど、冷凍サイクルにおける蒸発温度を緩和することができる。しかし、蒸発温度は、同一の冷媒系統(空調システム20)に接続されている複数の室内機24の設定温度のうち、最も低い設定温度に応じて決まる。そのため、図15に示される第1空調システム20aのように、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3が利用する室内機24aが一台でも存在する場合、第1空調システム20a全体の蒸発温度を緩和することができない。同様に、図15に示される第2空調システム20bでも、許容温度レベルが「弱」の利用者U6~U7が利用する室内機24bが存在するため、第2空調システム20b全体の蒸発温度を緩和することができない。
しかし、図16に示されるように、制御部110は、利用者U1~U10を入れ替えて、許容温度レベルが同じ利用者U1~U10が、同一の冷媒系統に属する室内機24が設置されるエリアA1~A10を利用できるように、施設10の利用方法を決定する。図16では、許容温度レベルが「弱」である利用者U1~U3,U6~U7は、第1空調システム20aによって空調が制御されるエリアA1~A5を利用している。また、許容温度レベルが「強」である利用者U4~U5,U8~U10は、第2空調システム20bによって空調が制御されるエリアA6~A10を利用している。これにより、各空調システム20の室内機24の処理負荷が平準化されると共に、第2空調システム20b全体の蒸発温度が緩和される。例えば、図15に示される状態における第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの蒸発温度は、7℃である。一方、図16に示される状態における第1空調システム20aの蒸発温度は、7℃であり、第2空調システム20bの蒸発温度は、9℃である。
従って、エリア通知システム100は、各空調システム20の室内機24の処理負荷を平準化することで、第2空調システム20bの蒸発温度を緩和し、複数の空調システム20全体の冷凍効率を増加させることができる。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(1-3)室内機24の稼働台数に基づく処理
この処理では、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれにおいて稼働する室内機24の数を変更することにより、稼働する室内機24を有する空調システム20の数が小さくなるように、稼働する室内機24を選定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図17および図18では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通の室外機22aに接続される1台の室内機24aが設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通の室外機22bに接続される1台の室内機24bが設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図17に示されるように、利用者U1~U2は、それぞれ、エリアA1~A2を利用し、かつ、利用者U3~U4は、それぞれ、エリアA6~A7を利用している。エリアA1~A2では、第1空調システム20aの室内機24aが稼働し、エリアA6~A7では、第2空調システム20bの室内機24bが稼働しているので、稼働する室内機24を有する空調システム20の数は2である。
しかし、図18に示されるように、制御部110は、利用者U1~U4を入れ替えて、利用者U1~U4が、同一の冷媒系統に属する室内機24が設置されるエリアA1~A10を利用できるように、施設10の利用方法を決定する。図18では、全ての利用者U1~U4が、第1空調システム20aによって空調が制御されるエリアA1~A4を利用している。エリアA1~A4では、第1空調システム20aの室内機24aのみが稼働しているので、稼働する室内機24を有する空調システム20の数は1である。
そのため、制御部110は、施設10の利用方法を決定することにより、稼働する室内機24を有する空調システム20の数を小さくすることができる。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(2)機器効率に基づく処理
空調システム20の機器効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の機器効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20の室外機22の圧縮機の仕事量が低減するので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
この処理では、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれの室外機22の圧縮機の効率(機器効率)ができるだけ高くなるように、複数の空調システム20のそれぞれにおいて稼働する室内機24の数を変更する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、室内機24とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図19および図20では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通の室外機22aに接続される1台の室内機24aが設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通の室外機22bに接続される1台の室内機24bが設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図19に示されるように、利用者U1~U5は、それぞれ、エリアA1~A5を利用し、かつ、利用者U6は、エリアA6を利用している。そのため、第1空調システム20aの系統負荷率は100%であり、第2空調システム20bの系統負荷率は20%である。系統負荷率とは、空調システム20(冷媒系統)に含まれる全ての室内機24の数に占める、稼働している室内機24の数の割合である。第2空調システム20bの場合、エリアA6~A10に設置される5台の室内機24bのうち、エリアA6に設置される室内機24bのみが稼働しているので、系統負荷率は20%である。
図21に示されるように、室外機22の運転効率COPは、空調システム20の系統負荷率が50%近傍において最大となる。しかし、図19に示される状態では、各空調システム20の系統負荷率は100%および20%であるので、各空調システム20の室外機22の運転効率COPは最大ではない。
しかし、図20に示されるように、制御部110は、利用者U1~U6を入れ替えて、施設10の利用方法を決定する。これにより、利用者U1~U3は、第1空調システム20aの室内機24aが設置されるエリアA1~A3を利用でき、利用者U4~U6は、第2空調システム20bの室内機24bが設置されるエリアA4~A6を利用できる。この場合、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの系統負荷率は、共に60%である。図21に示されるように、空調システム20の系統負荷率が60%のときの室外機22の運転効率COPは、空調システム20の系統負荷率が20%または100%のときの室外機22の運転効率COPよりも高い。従って、図20に示される状態は、図19に示される状態と比較して、各空調システム20の室外機22の運転効率COPが高い。
そのため、制御部110は、施設10の利用方法を決定することにより、各空調システム20の室外機22の運転効率COPを増加させて、各空調システム20の機器効率を高くすることができる。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(3)効果
本実施形態のエリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって空調を行う複数の空調システム20の全体の運転効率を最適化することができる。具体的には、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制されるように、複数の空調システム20のそれぞれの処理負荷、冷凍効率および機器効率の少なくとも1つに基づいて、施設10の利用方法を決定することができる。各空調システム20は、エリア通知システム100が決定した、施設10の利用方法に基づいて、室外機22および室内機24を制御する。これにより、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20の消費電力量を抑制する省エネ制御を効率的に行うことができる。
―第3実施形態―
本実施形態のエリア通知システム100は、第1実施形態のエリア通知システム100と基本的な構成および動作が共通しているので、以下、両者の相違点を中心に説明する。
本実施形態では、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、1つの空調システム20を有する。エリア通知システム100が用いられる施設10には、複数のエリアAの空気環境(温度、湿度および風量等)を調整するための1つの空調システム20が設置されている。空調システム20は、1台の熱源ユニット21に複数台の利用ユニット23が接続される1つの冷凍サイクル(冷媒系統)を備える。そのため、本実施形態では、施設10には、1つの冷媒系統が設置されている。
本実施形態では、空調システム20は、空気および水を媒体として熱を搬送する。図22に示されるように、空調システム20は、主として、チラー121と、二次ポンプ122と、エアハンドリングユニット(AHU)123と、ダクト124と、変風量ユニット(VAV)125とから構成される。熱源ユニット21は、主として、チラー121と、二次ポンプ122と、AHU123と、ダクト124とから構成されるユニットである。利用ユニット23は、VAV125である。施設10内の各エリアAには、1台のVAV125が設置される。AHU123は、各エリアAのVAV125に、温度が調整された空気を送り出す。VAV125は、温度が調整された空気をエリアAに供給する。
チラー121は、第1実施形態の室外機22と同様に、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮する圧縮機を有する。チラー121は、冷凍サイクルを循環する冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の温度を調節する。熱搬送媒体は、チラー121およびAHU123を通過しながら循環する液体である。本実施形態では、熱搬送媒体は、水である。
チラー121によって温度が調整された水は、二次ポンプ122によって、AHU123に送られる。AHU123は、外気ダンパ123aと、送風ファン123bと、熱交換コイル123cとを有する。AHU123は、送風ファン123bの駆動によって、屋外および室内から空気を取り込み、熱交換コイル123cに送る。AHU123は、外気ダンパ123aの開度を調整することで、屋外から取り込む空気の量を調整することができる。熱交換コイル123cは、屋外および室内から取り込まれた空気と、チラー121から送られてきた水との間で熱交換を行う。AHU123は、熱交換コイル123cで熱交換されて温度が調整された空気をダクト124に送る。ダクト124は、各エリアAのVAV125と連結されている。ダクト124を流れる空気は、VAV125を介して各エリアAに送られる。これにより、各エリアAには、AHU123によって温度が調整された空気が供給される。VAV125は、エリアAに供給される風量を調整するための給気ダンパ125aを有する。VAV125は、給気ダンパ125aの開度を取得し、かつ、給気ダンパ125aの開度を所定の値に設定するためのコントローラを有する。
本実施形態の空調システム20は、空調制御および換気制御を行う。空調制御とは、各エリアAの空調負荷を処理するために必要な空気の量を調整する制御である。空調制御では、制御部110は、各エリアAの空調負荷に応じて、各VAV125の給気ダンパ125aの開度を調整して、各エリアAに供給される空気の量(給気量)を調整する。換気制御とは、各エリアAの換気量を満たすために必要な空気の量を調整する制御である。換気制御では、制御部110は、外気ダンパ123aの開度を調整して、AHU123に導入される外気の量(外気量)を調整する。制御部110は、外気ダンパ123aおよび給気ダンパ125aの開度、および、送風ファン123bの能力(回転数)を取得および設定することができる。制御部110は、VAV125の運転を開始または停止することができる。運転が開始されて稼働しているVAV125の給気ダンパ125aの開度は、ゼロより大きい。運転が停止されて稼働していないVAV125の給気ダンパ125aの開度は、ゼロである。
エリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって設置される空調システム20の全体の運転効率に基づく制御を行うために用いられる。エリア通知システム100は、入力部120に入力された入力情報を用いて、所定のルールに従って、空調システム20の消費電力量ができるだけ小さくなるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。エリア通知システム100は、利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、出力部130を介して施設10の案内係または利用者Uに通知したり、設定部140を介して空調システム20の集中コントローラ26に送信したりする。
次に、空調システム20の処理負荷、熱搬送効率および外気導入率のそれぞれに基づいて、制御部110が施設10の利用方法を決定する処理の具体例について説明する。以下に説明される処理は、いずれか1つの処理が単独で用いられてもよく、複数の処理が組み合わされて用いられてもよい。複数の処理が組み合わされて用いられる場合、処理負荷に基づく処理、熱搬送効率に基づく処理、および、外気導入率に基づく処理、の順で処理が実行されることが好ましい。
本実施形態において、設備図面情報とは、具体的には、以下の項目に関する情報である。
・ダクト124の系統
・チラー121およびAHU123を循環する水の配管の系統
・チラー121、AHU123およびVAV125の配置
・チラー121、二次ポンプ122、AHU123およびVAV125等の機器の性能特性
(1)処理負荷に基づく処理
空調システム20の処理負荷に基づく処理では、制御部110は、空調システム20の処理負荷が最小となる施設10の利用方法を決定する。これにより、空調負荷が少ないエリアAを利用者Uが優先的に利用できるので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
(1-1)空調面積に基づく処理
この処理では、制御部110は、空調面積がより小さいエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、利用者Uによって利用されている全てのエリアAの空調面積の合計が最小となるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。空調面積は、エリアAが占める面積であり、具体的にはエリアAの床面積である。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、各エリアAの空調面積に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図23および図24では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。4つのエリアA1~A4は、同じ空調面積を有する。エリアA1~A4の空調面積は、エリアA5の空調面積よりも小さい。エリアA1~A5の空調面積が大きいほど、エリアA1~A5の空調負荷が高い。例えば、エリアA1~A4の空調負荷は、1.0kWであり、エリアA5の空調負荷は、1.5kWである。図23および図24において、各エリアA1~A5の下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
空調面積に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図23に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA5を利用している。エリアA2~A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A5のVAV125のみが稼働している。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、2.5kWである。
しかし、図24に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用するように、エリアA1の空調面積に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、空調システム20の処理負荷は、2.0kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の空調面積に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.5kW小さくなるように施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U2を、エリアA5からエリアA3に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U2は、エリアA5からエリアA3に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5のVAV125の運転を停止して、エリアA3のVAV125の運転を開始する。
(1-2)エリアの位置に基づく処理
この処理では、制御部110は、施設10が入っている建物の外壁からより離れているエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、建物の外壁に面しているエリアAが利用者Uによってできるだけ利用されないように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。建物の外壁に面しているエリアAは、建物の外壁に面していないエリアAと比較して、部屋の窓から入る日射の量が多いため室内の気温が上昇しやすく、空調負荷が大きい。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される気象情報に基づいて、日射量に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図25および図26では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。エリアA5は、施設10が入っている建物の外壁に面し、外壁には窓が取り付けられている。他の4つのエリアA1~A4は、建物の外壁に面しておらず、壁には窓が取り付けられていない。そのため、エリアA5の空調負荷は、窓から入る日射により、エリアA1~A4の空調負荷よりも高い。例えば、エリアA1~A4の空調負荷は、1.0kWであり、エリアA5の空調負荷は、1.5kWである。図25および図26において、各エリアA1~A5の下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
エリアA1~A5の位置に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図25に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA3を利用し、利用者U3はエリアA5を利用している。エリアA2,A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A3,A5のVAV125のみが稼働している。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.5kWである。
しかし、図26に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA2を利用するように、エリアA1~A5の位置に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、空調システム20の処理負荷は、3.0kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の位置に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.5kW小さくなるように、施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U3を、エリアA5からエリアA2に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U3は、エリアA5からエリアA2に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5のVAV125の運転を停止して、エリアA2のVAV125の運転を開始する。
なお、エリアAの空調負荷は、建物の外壁からより離れているほど小さくなる傾向がある。例えば、図25および図26において、エリアA5は、建物の外壁に面しており日射によって温度が上昇しやすい。この場合、エリアA5に隣接するエリアA4は、エリアA4とエリアA5とを区画する壁を介して、エリアA5からの貫流熱が伝達されやすいので、エリアA1~A3と比較して温度が上昇しやすい。そのため、エリアAの位置に基づく処理では、制御部110は、施設10が入っている建物の外壁から最も離れているエリアAを利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定することが好ましい。図25に示される状態の場合、制御部110は、利用者U3がエリアA4を利用するよりも、図26に示されるように利用者U3がエリアA2を利用するように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定することが好ましい。
(1-3)貫流負荷に基づく処理
この処理では、制御部110は、互いに隣接しているエリアA(部屋)を利用者Uが優先的に利用するように、施設10の利用方法を決定する。具体的には、制御部110は、複数の利用者Uが、互いに隣接している複数のエリアAを利用するように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置、および、各エリアAの貫流負荷に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図27および図28では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。
貫流負荷に基づいて施設10の利用方法を決定する前では、図27に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA3を利用し、利用者U3はエリアA5を利用している。エリアA2,A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A3,A5のVAV125のみが稼働している。この場合、利用されているエリアA1,A3,A5のそれぞれの空調負荷は1.2kWとすると、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.6kWである。図27および図28において、利用されているエリアの下には、当該エリアの空調負荷が記載されている。
互いに隣接している2つのエリアAは、当該2つのエリアAを区画する壁を介して貫流熱が伝達する。図27において、エリアA1は、エリアA2および施設10外の空間との間で貫流熱が伝達し、エリアA3は、エリアA2,A4との間で貫流熱が伝達し、エリアA5は、エリアA4および施設10外の空間との間で貫流熱が伝達する。そのため、エリアA1~A5間の貫流熱の伝達に起因する負荷(貫流負荷)の分、利用されているエリアA1,A3,A5の空調負荷が高くなる。
しかし、図28に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA2を利用するように、各エリアA1~A5の貫流負荷に基づいて施設10の利用方法を決定する。この場合、利用されているエリアA1~A3は互いに隣接しているので、貫流負荷が抑えられる。特に、エリアA2は、利用されているエリアA1,A3と隣接しているので、エリアA4,A5と比較して貫流負荷が小さい。そのため、例えば、エリアA1,A3のそれぞれの空調負荷は1.1kWとなり、エリアA2の空調負荷は1.0kWとなる。この場合、空調システム20の処理負荷(エリアA1~A5の空調負荷の合計)は、3.2kWである。
従って、制御部110は、エリアA1~A5の貫流負荷に基づいて、空調システム20の処理負荷が0.4kW小さくなるように施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U3を、エリアA5からエリアA2に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U3は、エリアA5からエリアA2に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5のVAV125の運転を停止して、エリアA2のVAV125の運転を開始する。
(2)熱搬送効率に基づく処理
空調システム20の熱搬送効率に基づく処理では、制御部110は、AHU123から各VAV125へ送り出される空気による熱搬送効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、空調負荷が少ないエリアAを利用者Uが優先的に利用できるので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
この処理では、制御部110は、ダクト抵抗による圧力損失が少ないVAV125が優先的に使用されるように、利用者Uが利用するエリアAを変更して、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図29および図30では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは5個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A5のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A5には、共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。全てのエリアA1~A5は、同じ空調面積を有する。
施設10の利用方法を決定する前では、図29に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA3を利用し、利用者U3はエリアA5を利用している。エリアA2,A4は、利用されていない。エリアA1~A5のうち、利用されているエリアA1,A3,A5のVAV125のみが稼働している。
以下において、各エリアA1~A5のダクト距離を、AHU123から送り出された空気が、各エリアA1~A5のVAV125に到達するまでに、ダクト124内を通過する距離と定義する。図29および図30に示されるように、エリアA1~A5は、AHU123から近い順に配置されている。言い換えると、エリアA1は、AHU123に最も近く、エリアA5は、AHU123に最も遠い。そのため、ダクト距離は、エリアA1~A5の順で長くなる。エリアA1~A5のダクト距離が長いほど、エリアA1~A5に設置されるVAV125のダクト抵抗が大きくなる。VAV125のダクト抵抗が大きいほど、VAV125に必要な風量を通過させるための、送風ファン123bの能力が高くなり、空調システム20の消費電力量が増加する。従って、エリアA1~A5のVAV125のダクト抵抗の合計が小さいほど、空調システム20の消費電力量が小さくなる。
図29および図30では、エリアA1に設置されるVAV125のダクト抵抗が最も小さく、エリアA5に設置されるVAV125のダクト抵抗が最も大きい。図29に示される状態では、例えば、エリアA5に設置されて稼働しているVAV125のダクト抵抗は、エリアA2に設置されて稼働していないVAV125のダクト抵抗よりも大きい。そのため、エリアA5のVAV125の代わりに、エリアA2のVAV125を稼働させることで、エリアA1~A5のVAV125のダクト抵抗の合計を減少させることができる。このように、ダクト抵抗が小さいVAV125から優先的に使用されるように、利用者Uが利用するエリアAを変更して、利用者Uが利用すべきエリアAを決定することで、空調システム20の消費電力量が小さくなる。
本実施形態では、図30に示されるように、制御部110は、利用者U1がエリアA1を利用し、利用者U2がエリアA3を利用し、利用者U3がエリアA2を利用するように、施設10の利用方法を決定する。この場合、図30で利用されているエリアA1~A3のVAV125のダクト抵抗の合計は、図29で利用されているエリアA1,A3,A5のVAV125のダクト抵抗の合計よりも小さい。
従って、制御部110は、1台のAHU123に接続されている複数台のVAV125のダクト抵抗の合計を小さくするために、利用者Uの配置を変更するように、施設10の利用方法を決定することができる。ダクト抵抗を小さくすることで、送風ファン123bの能力を抑えることができるので、同一の冷媒系統の複数台のVAV125を効率的に運転でき、空調システム20の熱搬送効率が向上する。図29および図30の場合、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U3を、エリアA5からエリアA2に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U3は、エリアA5からエリアA2に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5のVAV125の運転を停止して、エリアA2のVAV125の運転を開始する。
(3)外気導入率に基づく処理
空調システム20の外気導入率に基づく処理では、制御部110は、エリアAのVAV125の外気導入率が平準化されるように施設10の利用方法を決定する。VAV125の外気導入率とは、VAV125が設置されるエリアAの要求給気量に占める要求外気量の割合である。要求給気量とは、エリアAの空調負荷を処理するために、AHU123からエリアAに供給される必要がある空気の量である。エリアAの空調負荷が高いほど、要求給気量は大きくなる。要求外気量とは、エリアAの換気量を満たすために、AHU123からエリアAに供給される必要がある外気の量である。エリアA内の利用者Uの数が多いほど、要求外気量は大きくなる。要求給気量および要求外気量の単位は、例えば、毎時立法メートル(m3/h)である。外気導入率を平準化する制御とは、複数のエリアAのそれぞれの外気導入率の最大値と最小値との差を小さくする制御である。次に説明するように、複数のエリアAの外気導入率を平準化することで、エリアAに外気を過剰に取り入れることが抑制されるので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
この処理では、制御部110は、エリアAの外気導入率が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを変更して、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図31および図32では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは3個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A3のいずれか1つに対応し、各エリアA1~A3には、共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。全てのエリアA1~A3は、同じ空調面積を有する。エリアA3は、施設10が入っている建物の外壁に面し、外壁には窓が取り付けられている。他の2つのエリアA1~A2は、建物の外壁に面しておらず、壁には窓が取り付けられていない。そのため、エリアA3の空調負荷は、窓から入る日射により、エリアA1~A2の空調負荷よりも高い。
以下、図22に示される、外気OA、室内空気RA、混合空気MAおよび供給空気SAを次のように定義する。
・外気:外気ダンパ123aを介してAHU123に取り入れられる空気。
・室内空気:エリアAからAHU123に取り入れられる空気。
・混合空気:外気と室内空気との混合物であって、熱交換コイル123cで熱交換される前の空気。
・供給空気:熱交換コイル123cで熱交換された後の混合空気であって、ダクト124を介して各エリアAに供給される空気。
施設10の利用方法を決定する前では、図31に示されるように、利用者U1,U2はエリアA1を利用し、利用者U3はエリアA2を利用し、利用者U4はエリアA3を利用している。利用されているエリアA1~A3では、VAV125が稼働している。冷房運転時の場合、図31に示される状態では、外気OA、室内空気RA、混合空気MAおよび供給空気SAの風量および温度は、例えば、以下の通りである。
図31に示される状態では、各エリアA1~A3の要求給気量、要求外気量および外気導入率は、例えば、以下の通りである。要求外気量の値は、エリアAの利用者Uの数に30を乗じた値である。
制御部110が、エリアA1~A3の外気導入率が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを変更した後では、図32に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U3はエリアA2を利用し、利用者U2,U4はエリアA3を利用している。利用されているエリアA1~A3では、VAV125が稼働している。そのため、図31に示される状態と比較して、利用者U2は、エリアA1からエリアA3に移動している。図32に示される状態では、外気OA、室内空気RA、混合空気MAおよび供給空気SAの風量および温度は、例えば、以下の通りである。
図32に示される状態では、各エリアA1~A3の要求給気量、要求外気量および外気導入率は、例えば、以下の通りである。
図31に示される状態では、エリアA1~A3の外気導入率は互いに異なっており、かつ、外気導入率の最大値は20%であり、外気導入率の最小値は5%である。一方、図32に示される状態では、エリアA1~A3の外気導入率は全て10%である。
外気導入率に基づく処理では、制御部110は、エリアAの要求給気量が高いほど、そのエリアAを利用する利用者Uの数が多くなるように、利用者Uが利用するエリアAを変更して、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。エリアAを利用する利用者Uの数が多いほど、そのエリアAの要求外気量が高くなる。そのため、外気導入率が高いエリアAの利用者Uを、外気導入率が低いエリアAに移動させることで、複数のエリアAの外気導入率が平準化される。上述の例の場合、外気導入率が最大のエリアA1の利用者U2を、外気導入率が最小のエリアA3に移動させることで、エリアA1の外気導入率を減少させ、かつ、エリアA3の外気導入率を増加させている。これにより、エリアA1~A3の外気導入率の最大値と最小値との差が小さくなるので、外気導入率が平準化される。
制御部110は、複数のエリアAのそれぞれの外気導入率の最大値に基づいて、AHU123の外気ダンパ123aの開度を調整する。具体的には、制御部110は、エリアAの外気導入率の最大値が高いほど、AHU123の外気ダンパ123aの開度を大きくする。そのため、供給空気SAの風量が一定の場合、エリアAの外気導入率の最大値が高いほど、供給空気SAの風量に占める外気OAの風量の割合は高くなる。例えば、図31に示される状態では、エリアA1~A3の外気導入率の最大値は20%であり、供給空気SAの風量に占める外気OAの風量の割合は20%である。図32に示される状態では、エリアA1~A3の外気導入率の最大値は10%であり、供給空気SAの風量に占める外気OAの風量の割合は10%である。
従って、制御部110は、利用者Uが利用すべきエリアAを決定して、外気導入率を平準化することで、供給空気SAの風量に占める外気OAの風量の割合を小さくして、AHU123に導入される外気OAの風量を抑制することができる。これにより、各エリアAに外気OAが過剰に取り入れられることが抑制されるので、冷房運転時の場合に、混合空気MAの温度を、室内空気RAの温度に近付けることができる。そのため、チラー121および二次ポンプ122の能力を抑制することができるので、空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
図31および図32の場合、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U2を、エリアA1からエリアA3に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U2は、エリアA1からエリアA3に移動する。
(4)効果
本実施形態のエリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって空調を行う空調システム20の全体の運転効率を最適化することができる。具体的には、エリア通知システム100は、空調システム20全体の消費電力量が抑制されるように、空調システム20の処理負荷、熱搬送効率および外気導入率の少なくとも1つに基づいて、施設10の利用方法を決定することができる。空調システム20は、エリア通知システム100が決定した、施設10の利用方法に基づいて、外気ダンパ123aおよび給気ダンパ125aの開度、および、送風ファン123bの能力を制御する。これにより、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、空調システム20の消費電力量を抑制する省エネ制御を効率的に行うことができる。
―第4実施形態―
本実施形態のエリア通知システム100は、第3実施形態のエリア通知システム100と基本的な構成および動作が共通しているので、以下、両者の相違点を中心に説明する。
本実施形態では、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20を有する。エリア通知システム100が用いられる施設10には、複数のエリアAの空気環境(温度、湿度および風量等)を調整するための複数の空調システム20が設置されている。各空調システム20は、1台の熱源ユニット21に複数台の利用ユニット23が接続される1つの冷凍サイクル(冷媒系統)を備える。そのため、本実施形態では、施設10には、複数の冷媒系統が設置されている。各冷媒系統は、互いに独立している。
各空調システム20は、第3実施形態と同様の熱源ユニット21および利用ユニット23を有する。熱源ユニット21は、主として、チラー121と、二次ポンプ122と、AHU123と、ダクト124とから構成されるユニットである。利用ユニット23は、VAV125である。
各空調システム20は、施設10内の複数のエリアAにまたがって施設10の空調を行うことができる。しかし、複数の空調システム20は、共通のエリアAの空調を行わない。言い換えると、各空調システム20によって空調が行われるエリアAは、互いに重なり合わない。
エリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって設置される複数の空調システム20の全体の運転効率に基づく制御を行うために用いられる。エリア通知システム100は、入力部120に入力された入力情報を用いて、所定のルールに従って、各空調システム20の消費電力量ができるだけ小さくなるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。エリア通知システム100は、利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、出力部130を介して施設10の案内係または利用者Uに通知したり、設定部140を介して各空調システム20の集中コントローラ26に送信したりする。
次に、複数の空調システム20の熱搬送効率および機器効率のそれぞれに基づいて、制御部110が施設10の利用方法を決定する処理の具体例について説明する。以下に説明される処理は、いずれか1つの処理が単独で用いられてもよく、複数の処理が組み合わされて用いられてもよい。
(1)熱搬送効率に基づく処理
空調システム20の熱搬送効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の熱搬送効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20のAHU123の送風ファン123bの能力を抑制することができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
以下の具体例において、施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されているとする。制御部110は、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bのそれぞれにおいて、1台の熱源ユニット21のAHU123に接続されている複数台のVAV125の処理負荷が平準化するように、施設10の利用方法を決定する。
この処理では、制御部110は、空調システム20ごとに、複数のエリアAのVAV125の処理負荷が平準化されるように、利用者Uが利用するエリアAを入れ替えて、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの環境許容情報および利用情報等を取得する。本実施形態では、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uの許容温度レベルが用いられる。利用者Uの許容温度レベルは、利用者UがエリアAの設定温度の緩和をどの程度許容できるかを表す。
図33および図34では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図33に示されるように、利用者U1~U10は、それぞれ、エリアA1~A10を利用している。利用者U1~U10によって、許容温度レベルは異なっている。許容温度レベルは、エリアA1~A10の通常レベルの温度の緩和を許容できる「強」レベル、および、エリアA1~A10の通常レベルの温度の緩和を許容できない「弱」レベルのいずれかである。例えば、図33では、利用者U4~U5,U8~U10の許容温度レベルは「強」であり、利用者U1~U3,U6~U7の許容温度レベルは「弱」である。冷房運転時において、許容温度レベルが「強」の利用者U4~U5,U8~U10は、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3,U6~U7よりも、より高い設定温度を許容できる。例えば、許容温度レベルが「強」の利用者U4~U5,U8~U10は、28℃までの設定温度を許容でき、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3,U6~U7は、24℃までの設定温度を許容できる。図33および図34において、各エリアA1~A10の下には、当該エリアを利用している利用者U1~U10が冷房運転時において許容できる設定温度の最大値が記載されている。
冷房運転時の場合、VAV125から供給される空気の温度(設定温度)が高いほど、チラー121の冷凍サイクルにおける蒸発温度を緩和することができる。しかし、蒸発温度は、同一の冷媒系統(空調システム20)に接続されている複数のVAV125が設置されるエリアAの設定温度のうち、最も低い設定温度に応じて決まる。そのため、図33に示される第1空調システム20aのように、許容温度レベルが「弱」の利用者U1~U3が利用するエリアA1~A3が1つでも存在する場合、第1空調システム20a全体の蒸発温度を緩和することができない。同様に、図33に示される第2空調システム20bでも、許容温度レベルが「弱」の利用者U6~U7が利用するエリアA6~A7が存在するため、第2空調システム20b全体の蒸発温度を緩和することができない。
しかし、図34に示されるように、制御部110は、利用者U1~U10を入れ替えて、許容温度レベルが同じ利用者U1~U10が、同一の冷媒系統に属するVAV125が設置されるエリアA1~A10を利用できるように、施設10の利用方法を決定する。図34では、許容温度レベルが「弱」である利用者U1~U3,U6~U7は、第1空調システム20aによって空調が制御されるエリアA1~A5を利用している。また、許容温度レベルが「強」である利用者U4~U5,U8~U10は、第2空調システム20bによって空調が制御されるエリアA6~A10を利用している。これにより、各空調システム20のVAV125の処理負荷が平準化されると共に、第2空調システム20b全体の蒸発温度が緩和される。例えば、図34に示される状態における第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの蒸発温度は、7℃である。一方、図34に示される状態における第1空調システム20aの蒸発温度は、7℃であり、第2空調システム20bの蒸発温度は、9℃である。従って、エリア通知システム100は、各空調システム20のVAV125の処理負荷を平準化することで、第2空調システム20bの蒸発温度を緩和することができる。
制御部110は、各空調システム20のVAV125の処理負荷を平準化させることで、各空調システム20のVAV125の給気ダンパ125aの開度を平準化する制御を行うことができる。給気ダンパ125aの開度を平準化する制御とは、給気ダンパ125aの開度の標準偏差を小さくする制御である。標準偏差が小さいほど、給気ダンパ125aの開度の平準化の程度が大きい。
各空調システム20において、VAV125の給気ダンパ125aの開度を平準化させることで、各VAV125の給気ダンパ125aの開度を一律に大きくすることが可能となる。これにより、AHU123から送り出された空気が各VAV125を通過する際における、各VAV125の給気ダンパ125aの抵抗を低減することができる。その結果、AHU123から送り出されてダクト124を流れる空気による熱搬送効率が向上し、各VAV125に必要な風量を通過させるための送風ファン123bの能力を低減することができる。
従って、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の熱搬送効率を増加させることができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
本実施形態では、利用者Uの環境許容情報として、利用者Uの許容温度レベルが用いられるが、代わりに、利用者Uの許容風量レベルが用いられてもよい。利用者Uの許容風量レベルは、利用者UがエリアAの設定風量の緩和をどの程度許容できるかを表す。
(2)機器効率に基づく処理
空調システム20の機器効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の機器効率の制約の範囲内で、各空調システム20の機器効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20のAHU123の送風ファン123bの能力を抑制することができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
以下の具体例において、施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されているとする。制御部110は、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの間において、AHU123の送風ファン123bの負荷が分散されるように、施設10の利用方法を決定する。
この処理では、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれの送風ファン123bの運転効率(機器効率)ができるだけ高くなるように、複数の空調システム20のそれぞれにおいて稼働するVAV125の数を変更する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、VAV125とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図35および図36では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通のAHU123に接続される1台のVAV125が設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図35に示されるように、利用者U1~U4は、それぞれ、エリアA1~A4を利用している。エリアA5~A10は利用されていない。そのため、第1空調システム20aの系統負荷率は80%であり、第2空調システム20bの系統負荷率は0%である。系統負荷率とは、空調システム20(冷媒系統)に含まれる全てのVAV125の数に占める、稼働しているVAV125の数の割合である。第1空調システム20aの場合、エリアA1~A5に設置される5台のVAV125のうち、エリアA1~A4に設置されるVAV125のみが稼働しているので、系統負荷率は80%である。
しかし、図36に示されるように、制御部110は、利用者U1~U4を入れ替えて、施設10の利用方法を決定する。これにより、利用者U1~U2は、第1空調システム20aのVAV125が設置されるエリアA1~A2を利用でき、利用者U3~U4は、第2空調システム20bのVAV125が設置されるエリアA6~A7を利用できる。この場合、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの系統負荷率は、共に40%である。
各空調システム20において、AHU123の送風ファン123bの消費電力は、送風ファン123bが各VAV125に送り出す空気の量である給気量の3乗に比例する。各空調システム20において、給気量は、系統負荷率に比例する。そのため、送風ファン123bを定格よりも低い能力で運転させるために、複数の空調システム20の間で系統負荷率を分散させることで、各空調システム20のAHU123の送風ファン123bの消費電力を低減することができる。
そのため、制御部110は、施設10の利用方法を決定することにより、複数の空調システム20の間で系統負荷率を分散させて、各空調システム20の機器効率を高くすることができる。従って、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(3)効果
本実施形態のエリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって空調を行う複数の空調システム20の全体の運転効率を最適化することができる。具体的には、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制されるように、複数の空調システム20のそれぞれの熱搬送効率および機器効率の少なくとも1つに基づいて、施設10の利用方法を決定することができる。各空調システム20は、エリア通知システム100が決定した、施設10の利用方法に基づいて、外気ダンパ123aおよび給気ダンパ125aの開度、および、送風ファン123bの能力を制御する。これにより、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20の消費電力量を抑制する省エネ制御を効率的に行うことができる。
―第5実施形態―
本実施形態のエリア通知システム100は、第4実施形態のエリア通知システム100と基本的な構成および動作が共通しているので、以下、両者の相違点を中心に説明する。
本実施形態では、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20を有する。エリア通知システム100が用いられる施設10には、複数のエリアAの空気環境(温度、湿度および風量等)を調整するための複数の空調システム20が設置されている。各空調システム20は、1台の熱源ユニット21に複数台の利用ユニット23が接続される1つの冷凍サイクル(冷媒系統)を備える。そのため、本実施形態では、施設10には、複数の冷媒系統が設置されている。各冷媒系統は、互いに独立している。
本実施形態では、空調システム20は、水を媒体として熱を搬送する。空調システム20は、主として、チラー221と、ファンコイルユニット(FCU)222と、二次ポンプ223とから構成される。各空調システム20では、1台のチラー221に、複数台のFCU222が接続されている。熱源ユニット21は、主として、チラー221と、二次ポンプ223とから構成されるユニットである。利用ユニット23は、FCU222である。施設10内の各エリアAには、1台のFCU222が設置される。
チラー221は、第3実施形態のチラー121と同様に、冷凍サイクルを循環する冷媒を圧縮する圧縮機を有する。チラー221は、冷凍サイクルを循環する冷媒との熱交換によって、熱搬送媒体の温度を調節する。熱搬送媒体は、チラー221およびFCU222を通過しながら循環する液体である。本実施形態では、熱搬送媒体は、水である。
チラー221によって温度が調整された水は、二次ポンプ223によって、各FCU222に送られる。FCU222は、主として、コイルとファンとを備える。FCU222のコイルは、エリアAから取り込まれた空気と、チラー221から送られてきた水との間で熱交換を行う。FCU222のファンは、エリアAから取り込まれてコイルで温度が調整された空気をエリアAに戻す。各FCU222は、チラー221から送られてきた水が流れる配管に設けられる弁をさらに備える。FCU222の弁は、例えば、電磁弁である。FCU222の弁が閉じられている場合、そのFCU222では熱交換が行われない。FCU222の弁が開いている場合、そのFCU222では熱交換が行われる。FCU222が稼働しているとき、FCU222の弁は開いている。
各空調システム20は、施設10内の複数のエリアAにまたがって施設10の空調を行うことができる。しかし、複数の空調システム20は、共通のエリアAの空調を行わない。言い換えると、各空調システム20によって空調が行われるエリアAは、互いに重なり合わない。
エリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって設置される複数の空調システム20の全体の運転効率に基づく制御を行うために用いられる。エリア通知システム100は、入力部120に入力された入力情報を用いて、所定のルールに従って、各空調システム20の消費電力量ができるだけ小さくなるように、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。エリア通知システム100は、利用者Uが利用すべきエリアAに関する情報を、出力部130を介して施設10の案内係または利用者Uに通知したり、設定部140を介して各空調システム20の集中コントローラ26に送信したりする。
次に、複数の空調システム20の熱搬送効率および機器効率のそれぞれに基づいて、制御部110が施設10の利用方法を決定する処理の具体例について説明する。以下に説明される処理は、いずれか1つの処理が単独で用いられてもよく、複数の処理が組み合わされて用いられてもよい。
(1)熱搬送効率に基づく処理
空調システム20の熱搬送効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の熱搬送効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20の二次ポンプ223の運転効率を向上させることができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
以下の具体例において、施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されているとする。制御部110は、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値が小さくなるように、施設10の利用方法を決定する。二次ポンプ223の揚程とは、二次ポンプ223が汲み上げることができる水の高さである。二次ポンプ223は、チラー221によって温度が調整された水を、空調システム20のFCU222に供給する。そのため、二次ポンプ223は、チラー221から送られてきた水を、FCU222の高さ位置まで汲み上げる必要がある。従って、二次ポンプ223の揚程は、二次ポンプ223の吸い込み口を基準とした場合における、FCU222の高さ位置に相当する。
この処理では、制御部110は、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値が小さくなるように、利用者Uが利用するエリアAを入れ替えて、利用者Uが利用すべきエリアAを決定する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、FCU222とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図37および図38では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通のチラー221に接続される1台のFCU222が設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通のチラー221に接続される1台のFCU222が設置されている。
施設10において、エリアA1~A5は、エリアA6~A10よりも高い位置にある。第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの二次ポンプ223は、同じ高さ位置にある。各エリアA1~A5に設置されるFCU222は、第1空調システム20aの二次ポンプ223の吸い込み口より10m上方に位置している。各エリアA6~A10に設置されるFCU222は、第2空調システム20bの二次ポンプ223の吸い込み口より5m上方に位置している。そのため、エリアA1~A5の少なくとも1つが利用されている場合、第1空調システム20aの二次ポンプ223の揚程は10mである。エリアA6~A10の少なくとも1つが利用されている場合、第2空調システム20bの二次ポンプ223の揚程は5mである。
施設10の利用方法を決定する前では、図37に示されるように、利用者U1はエリアA1を利用し、利用者U2はエリアA6を利用している。そのため、第1空調システム20aの二次ポンプ223の揚程は10mであり、第2空調システム20bの二次ポンプ223の揚程は5mである。従って、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値は10mである。
しかし、図38に示されるように、制御部110は、利用者U1~U2が利用するエリアAを変更して、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値が短くなるように、施設10の利用方法を決定する。図38では、利用者U1,U2は、それぞれ、第2空調システム20bによって空調が制御されるエリアA7,A6を利用している。これにより、利用者U1が利用するエリアが、エリアA1からエリアA7に変更されている。その結果、図38では、エリアA1~A5は利用されていない。そのため、図38では、第1空調システム20aの二次ポンプ223を稼働させる必要はなく、第2空調システム20bの二次ポンプ223のみを稼働させればよい。従って、図38に示される状態では、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値は5mである。稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値が短いほど、各空調システム20の二次ポンプ223の消費電力の合計が小さくなる。従って、エリア通知システム100は、各二次ポンプ223の運転効率を向上させることができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
また、各空調システム20において、二次ポンプ223の揚程が短いほど、チラー221によって温度が調整された水が各FCU222まで搬送される時における熱損失が小さい。従って、エリア通知システム100は、稼働している二次ポンプ223の揚程の最大値を短くすることで、複数の空調システム20全体の熱搬送効率を増加させることができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(2)機器効率に基づく処理
空調システム20の機器効率に基づく処理では、制御部110は、各空調システム20の機器効率が最大となる施設10の利用方法を決定する。これにより、各空調システム20のチラー221および二次ポンプ223の能力を抑制することができるので、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制される。
以下の具体例において、施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されているとする。制御部110は、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの間において、チラー221および二次ポンプ223の負荷が分散されるように、施設10の利用方法を決定する。
この処理では、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれのチラー221および二次ポンプ223の運転効率(機器効率)ができるだけ高くなるように、複数の空調システム20のそれぞれにおいて稼働するFCU222の数を変更する。制御部110は、記憶部150に記憶される建物図面情報に基づいて、エリアAの位置に関する情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される設備図面情報に基づいて、FCU222とエリアAとを紐づける設置情報を取得する。制御部110は、記憶部150に記憶される運用情報に基づいて、利用者Uの利用情報等を取得する。
図39および図40では、施設10は、壁および扉で区画された複数の部屋(ここでは10個の部屋)を有する。各部屋は、エリアA1~A10のいずれか1つに対応し、エリアA1~A5は、第1空調システム20aによって空調が制御され、エリアA6~A10は、第2空調システム20bによって空調が制御される。各エリアA1~A5には、第1空調システム20aの共通のチラー221に接続される1台のFCU222が設置されている。各エリアA6~A10には、第2空調システム20bの共通のチラー221に接続される1台のFCU222が設置されている。
施設10の利用方法を決定する前では、図39に示されるように、利用者U1~U5は、それぞれ、エリアA1~A5を利用し、利用者U6は、エリアA6を利用している。エリアA7~A10は利用されていない。そのため、第1空調システム20aの系統負荷率は100%であり、第2空調システム20bの系統負荷率は20%である。系統負荷率とは、空調システム20(冷媒系統)に含まれる全てのFCU222の数に占める、稼働しているFCU222の数の割合である。第2空調システム20bの場合、エリアA6~A10に設置される5台のFCU222のうち、エリアA6に設置されるFCU222のみが稼働しているので、系統負荷率は20%である。
しかし、図40に示されるように、制御部110は、利用者U1~U6を入れ替えて、施設10の利用方法を決定する。これにより、利用者U1~U3は、第1空調システム20aのFCU222が設置されるエリアA1~A3を利用でき、利用者U4~U6は、第2空調システム20bのFCU222が設置されるエリアA4~A6を利用できる。この場合、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bの系統負荷率は、共に60%である。
チラー221の運転効率COPは、図21に示される室外機22の運転効率COPと同様の傾向を示す。言い換えると、チラー221の運転効率COPは、空調システム20の系統負荷率が50%近傍において最大となる。そのため、図21に示されるように、空調システム20の系統負荷率が60%のときのチラー221の運転効率COPは、空調システム20の系統負荷率が20%または100%のときのチラー221の運転効率COPよりも高い。従って、図40に示される状態は、図39に示される状態と比較して、各空調システム20のチラー221の運転効率COPが高い。
そのため、制御部110は、施設10の利用方法を決定することにより、複数の空調システム20の間で系統負荷率を分散させて、各空調システム20の機器効率を高くすることができる。従って、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
また、各空調システム20において稼働しているFCU222の数が少ないほど、冷媒系統当たりの負荷が低減する。これにより、各空調システム20における、チラー221の処理熱量、および、二次ポンプ223の処理流量が低減するので、チラー221および二次ポンプ223の消費電力が低減する。従って、エリア通知システム100は、複数の空調システム20の系統当たりの負荷を低減させて、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(3)効果
本実施形態のエリア通知システム100は、複数のエリアAにまたがって空調を行う複数の空調システム20の全体の運転効率を最適化することができる。具体的には、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量が抑制されるように、複数の空調システム20のそれぞれの熱搬送効率および機器効率の少なくとも1つに基づいて、施設10の利用方法を決定することができる。各空調システム20は、エリア通知システム100が決定した、施設10の利用方法に基づいて、チラー221および二次ポンプ223の能力を制御する。これにより、エリア通知システム100を用いる空調管理システム190は、複数の空調システム20の消費電力量を抑制する省エネ制御を効率的に行うことができる。
―変形例―
以下に実施形態の変形例を示す。各変形例の内容の一部または全部は、互いに矛盾しない範囲で他の変形例の内容と組み合わされてもよい。
(1)変形例A
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20によって空調が制御される複数のエリアAが同一の空間に含まれる場合、各空調システム20の処理負荷が最小となるように、施設10の利用方法を決定してもよい。
図41および図42では、施設10は、10個のエリアA1~A10を含む部屋を有する。施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されている。第1空調システム20aは、1台の室外機22aと、エリアA1~A5にそれぞれ設置される5台の室内機24aとを有している。第2空調システム20bは、1台の室外機22bと、エリアA6~A10にそれぞれ設置される5台の室内機24bとを有している。
施設10の利用方法を決定する前では、図41に示されるように、利用者U1~U6は、それぞれ、エリアA1,A3,A5,A6,A8,A10を利用している。この状態では、利用されているエリアA1,A3,A5,A6,A8,A10の室内機24a,24bのみが稼働している。この場合、利用されているエリアA1,A3,A5,A6,A8,A10のそれぞれの空調負荷は1.5kWとすると、2つの空調システム20a,20bの処理負荷(エリアA1~A10の空調負荷の合計)は、9.0kWである。図41および図42において、利用されているエリアの室内機24a,24bには、当該エリアの空調負荷が記載されている。
しかし、図42に示されるように、制御部110は、利用者U1~U6の配置を入れ替えることで、利用者U1~U6がエリアA1~A3,A6~A8を利用するように、施設10の利用方法を決定する。この場合、利用されているエリアA1~A3,A6~A8は互いに隣接しているので、2つの空調システム20a,20bの処理負荷が抑えられる。特に、エリアA2は、利用されているエリアA1,A3と隣接し、エリアA7は、利用されているエリアA6,A8と隣接しているので、他のエリアA1,A3,A6,A8と比較して処理負荷が小さい。そのため、例えば、エリアA1,A3,A6,A8のそれぞれの空調負荷は1.3kWとなり、エリアA2,A7の空調負荷は1.2kWとなる。この場合、2つの空調システム20a,20bの処理負荷(エリアA1~A10の空調負荷の合計)は、7.6kWである。
従って、制御部110は、利用者U1~U6の配置を入れ替えて、互いに隣接するエリアA1~A3,A6~A8を優先的に利用することで、2つの空調システム20a,20bの処理負荷が1.4kW小さくなるように施設10の利用方法を決定することができる。施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた施設10の案内係は、利用者U1~U6を、エリアA1~A3,A6~A8に案内する。または、施設10の利用方法に関してエリア通知システム100から通知を受けた利用者U1~U6は、エリアA1~A3,A6~A8に移動する。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA5,A10の室内機24の運転を停止して、エリアA2,A7の室内機24の運転を開始する。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(2)変形例B
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20によって空調が制御される複数のエリアAが同一の空間に含まれる場合、各空調システム20の室内機24の処理負荷が平準化されるように、施設10の利用方法を決定してもよい。
図43および図44では、施設10は、10個のエリアA1~A10を含む部屋を有する。施設10には、第1空調システム20aおよび第2空調システム20bからなる2つの空調システム20が設置されている。第1空調システム20aは、1台の室外機22aと、エリアA1~A5にそれぞれ設置される5台の室内機24aとを有している。第2空調システム20bは、1台の室外機22bと、エリアA6~A10にそれぞれ設置される5台の室内機24bとを有している。
施設10の利用方法を決定する前では、図43に示されるように、利用者U1~U6は、それぞれ、エリアA1,A3,A5,A6,A8,A10を利用している。この状態では、利用されているエリアA1,A3,A5,A6,A8,A10の室内機24a,24bのみが稼働している。この場合、利用されているエリアA1,A3,A5,A6,A8,A10のそれぞれの空調負荷は1.5kWとすると、2つの空調システム20a,20bの処理負荷(エリアA1~A10の空調負荷の合計)は、9.0kWである。図43および図44において、利用されているエリアの室内機24a,24bには、当該エリアの空調負荷が記載されている。
しかし、図44に示されるように、制御部110は、利用者U1~U6の配置を変更することなく、各空調システム20の室内機24の処理負荷が平準化されるように、施設10の利用方法を決定する。例えば、第1空調システム20aでは、利用されているエリアA1,A3,A5の空調負荷が1.0kWとなり、利用されていないエリアA2,A4の空調負荷が0.75kWとなる。また、第2空調システム20bでは、利用されているエリアA6,A8,A10の空調負荷が1.0kWとなり、利用されていないエリアA7,A9の空調負荷が0.75kWとなる。その結果、第1空調システム20aの室内機24aの処理負荷、および、第2空調システム20bの室内機24bの処理負荷が平準化される。なお、この場合、2つの空調システム20a,20bの処理負荷(エリアA1~A10の空調負荷の合計)は、9.0kWのままである。
従って、制御部110は、各空調システム20の室内機24の処理負荷を平準化することで、各空調システム20の蒸発温度を緩和して、複数の空調システム20全体の冷凍効率を増加させるように施設10の利用方法を決定することができる。空調システム20の集中コントローラ26は、エリア通知システム100から受信した情報に基づいて、エリアA1~A10の室内機24の処理負荷を平準化させる。これにより、エリア通知システム100は、複数の空調システム20全体の消費電力量を抑制することができる。
(3)変形例C
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれに対して、第1実施形態において制御部110が施設10の利用方法を決定するために用いる任意の処理を実行してもよい。
例えば、第2実施形態において、制御部110は、各空調システム20に対して、第1実施形態の「(4-1-1)空調面積に基づく処理」の欄で説明される処理を実行してもよい。この場合、制御部110は、各空調システム20の処理負荷が最小となる施設10の利用方法を決定することができる。
同様に、制御部110は、各空調システム20に対して、第1実施形態の「(4-1-2)エリアの位置に基づく処理」、「(4-1-3)貫流負荷に基づく処理」、「(4-2-1)利用者Uの配置を変更する処理」および「(4-2-2)利用者Uの配置を入れ替える処理」の各欄で説明される処理を実行してもよい。
(4)変形例D
第1実施形態において、制御部110は、空調システム20の処理負荷を算出し、空調システム20が許容できる処理負荷の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれの処理負荷を算出し、複数の空調システム20のそれぞれが許容できる処理負荷の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
(5)変形例E
第1実施形態において、制御部110は、空調システム20の冷凍効率を算出し、空調システム20が許容できる冷凍効率の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれの冷凍効率を算出し、複数の空調システム20のそれぞれが許容できる冷凍効率の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
(6)変形例F
第1実施形態において、制御部110は、空調システム20の機器効率を算出し、空調システム20が許容できる機器効率の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
第2実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれの機器効率を算出し、複数の空調システム20のそれぞれが許容できる機器効率の範囲内で、稼働する室内機24を選定してもよい。
(7)変形例G
第4実施形態において、制御部110は、複数の空調システム20のそれぞれに対して、第3実施形態において制御部110が施設10の利用方法を決定するために用いる任意の処理を実行してもよい。
例えば、第4実施形態において、制御部110は、各空調システム20に対して、第3実施形態の「(1)処理負荷に基づく処理」、「(2)熱搬送効率に基づく処理」および「(3)外気導入率に基づく処理」の各欄で説明される処理を実行してもよい。複数の処理が組み合わされて用いられる場合、処理負荷に基づく処理、熱搬送効率に基づく処理、機器効率に基づく処理、および、外気導入率に基づく処理、の順で処理が実行されることが好ましい。
(8)変形例H
第1乃至第5実施形態において、エリア通知システム100は、エネルギーマネジメント支援ツールとして用いられてもよい。この場合、例えば、エネルギーマネジメントのコンサルタントは、エリア通知システム100を用いて、施設10のエネルギーマネジメントの改善に関する提案を顧客に提示する。本変形例では、空調システム20は、集中コントローラ26を備えなくてもよい。
入力部120に入力される情報は、主として、建物図面情報、設備図面情報、および、運用情報である。運用情報は、施設10内のエリアAの利用情報を含む。エリアAの利用情報は、例えば、エリアAの運用ルールに関する。エリアAの運用ルールは、例えば、室内機24の設定温度が互いに異なる複数のエリアAの配置に関する情報である。この場合、エリアAの運用ルールは、冷房運転時において許容できる設定温度の最大値が互いに異なる利用者Uに関する情報に基づいて設定される。
出力部130に出力される情報は、例えば、施設10の利用方法に関する情報、および、空調システム20の消費電力量の予測値である。運用情報が、上述のエリアAの運用ルールに関する場合、施設10の利用方法に関する情報は、例えば、冷房運転時において許容できる設定温度の最大値が28℃である利用者UのためのエリアA、および、当該最大値が24℃である利用者UのためのエリアAの配置に関する情報である。エリア通知システム100は、入力部120に入力される情報に基づいて、空調システム20の消費電力量の予測値が最小となる、施設10の利用方法を決定する。コンサルタントは、出力部130に出力される情報に基づいて、施設10の利用方法に関する提案を顧客に提示する。
(9)変形例I
第1乃至第5実施形態において、エリア通知システム100は、施設10の利用に関するスケジュールを管理するために用いられてもよい。この場合、例えば、エリア通知システム100は、施設10内のエリアAの利用の予約状況に基づいて、利用可能なエリアAを利用者Uに割り当て、空調システム20をスケジュールに基づいて制御する。
入力部120に入力される情報は、主として、建物図面情報、設備図面情報、気象情報、および、予約情報である。予約情報は、エリアAの利用の予約に関する情報である。予約情報は、例えば、エリアAの利用を予約した利用者Uに関する情報、および、エリアAの利用希望時間帯に関する情報を含む。エリア通知システム100が、エリア予約システムと連携している場合、利用者Uは、エリア予約システムを用いて予約情報の入力、変更および取消等を行ってもよい。
出力部130に出力される情報は、例えば、エリアAの利用に関するスケジュール情報、および、空調システム20の消費電力量の予測値である。スケジュール情報は、例えば、エリアAの利用を予約した利用者Uが利用すべきエリアAの位置、および、当該エリアAの利用可能時間帯に関する情報を含む。エリア通知システム100は、入力部120に入力される情報に基づいて、空調システム20の消費電力量の予測値が最小となる、スケジュール情報を決定する。エリア通知システム100は、出力部130に出力されたスケジュール情報に基づいて、空調システム20の制御を行ってもよい。
―むすび―
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。