JP2023012427A - 剥離フィルム - Google Patents

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悠樹 豊嶋
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Abstract

【課題】セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制でき、セラミックグリーンシートの剥離性に優れるセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムを提供すること。【解決手段】剥離層と、粒子を実質的に含有しないポリエステル基材と、粒子含有層とをこの順に有するセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムであって、剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が3.0GPa以上であり、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面が凸部を有し、粒子含有層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面の凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である、剥離フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、剥離フィルムに関する。
電子機器の高性能化及び小型化に伴い、電子機器に用いられる電子部品に対しても、高性能化及び小型化が求められている。電子部品の中でも、例えば、積層セラミックコンデンサーは、基板への実装点数が増加しており、小型化の要求が強い。
積層セラミックコンデンサーの製造においては、剥離層を有する剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布し、乾燥してセラミックグリーンシートを形成する方法が一般的である。なお、剥離フィルムを巻き取った際に剥離フィルムの表面と裏面が密着すること(ブロッキング)を防ぐ目的で、剥離フィルムの剥離層とは反対側の面の表面に、粒子を含ませる等の方法で凹凸を設けることも一般的である。
上記セラミックグリーンシート製造に用いる剥離フィルムにおいて、剥離層の弾性率を大きくすることで、剥離性を向上する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、無機粒子を実質的に含有していないポリエステルフィルムを基材とし、基材の一方の表面上に離型塗布層を有し、基材のもう一方の表面上に粒子を含有する易滑塗布層を有する、離型フィルムが開示されている。
国際公開第2019/065214号公報
一方、近年のセラミックコンデンサーの小型化に伴い、セラミックグリーンシートの薄膜化が求められている。セラミックグリーンシートの薄膜化により、より微小な欠陥を抑制する要求があった。
本発明者らは、特許文献1に記載されたセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムを用いてセラミックグリーンシートを製造したところ、セラミックグリーンシートに欠陥が生じる場合があることを知見した。
また、剥離フィルムにおいては、製造されたセラミックグリーンシートの剥離性に優れることも求められる。
本発明は、上記事情に鑑みて、セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制でき、セラミックグリーンシートの剥離性に優れるセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムの提供を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
〔1〕 剥離層と、粒子を実質的に含有しないポリエステル基材と、粒子含有層とをこの順に有するセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムであって、
上記剥離層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が3.0GPa以上であり、
上記粒子含有層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面が凸部を有し、
上記粒子含有層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面の上記凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である、剥離フィルム。
〔2〕 上記剥離層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が6.0GPa以下である、〔1〕に記載の剥離フィルム。
〔3〕 上記粒子含有層が、無機粒子を含み、上記粒子含有層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面の最大突起高さが300nm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の剥離フィルム。
〔4〕 上記粒子含有層が、有機粒子を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の剥離フィルム。
〔5〕 上記剥離層の上記ポリエステル基材とは反対側の表面の表面自由エネルギーが10~35mJ/cmである、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の剥離フィルム。
〔6〕 上記剥離層がシリコーン樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の剥離フィルム。
〔7〕 上記剥離フィルムの厚みが、40μm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の剥離フィルム。
〔8〕 上記粒子含有層の厚みが、1~500nmである、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の剥離フィルム。
〔9〕上記粒子含有層が、炭化水素系界面活性剤、及び、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の剥離フィルム。
本発明によれば、セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制でき、セラミックグリーンシートの剥離性に優れるセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムを提供できる。
本発明に係る剥離フィルムの構成の一例を示す断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「長手方向」とは、剥離フィルムの製造時における剥離フィルムの長尺方向を意味し、「搬送方向」及び「機械方向」と同義である。
本明細書において、「幅方向」とは、長手方向に直交する方向を意味する。本明細書において、「直交」は、厳密な直交に限られず、略直交を含む。「略直交」とは、90°±5°の範囲内で交わることを意味し、90°±3°の範囲内で交わることが好ましく、90°±1°の範囲内で交わることがより好ましい。
また、本明細書において、「フィルム幅」とは、剥離フィルムの幅方向の両端間の距離を意味する。
<構成>
本発明の剥離フィルム(以下、単に「剥離フィルム」ともいう。)の構成を、図面を参照しながら説明する。
図1は、剥離フィルムの構成の一例を示す断面図である。剥離フィルム1は、剥離層2と、ポリエステル基材4と、粒子含有層6とをこの順に有する。
なお、本発明の剥離フィルムは、図1に示した態様に制限されず、剥離層2とポリエステル基材4との間、及び/又は、ポリエステル基材4と粒子含有層6との間に、中間層を有していてもよい。
本発明の剥離フィルムの特徴点としては、上記構成を有し、剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が3.0GPa以上であり、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面が凸部を有し、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面の凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である点が挙げられる。
上記特徴点を満たす剥離フィルムを用い、セラミックグリーンシートを製造する際に欠陥が抑制され、セラミックグリーンシートの剥離性に優れる機序は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
剥離フィルムはその使用に際して、剥離フィルム搬送時及び剥離フィルム巻取り時等のハンドリングが行われる。上記ハンドリングの際(特に剥離フィルムの搬送時)に、ハンドリングに用いられる装置の一部と粒子含有層における粒子とが接触して粒子含有層における粒子に力が作用し、粒子が粒子含有層から脱落し、最終的に剥離層の表面に付着し得る。剥離層の表面に粒子が付着した状態でセラミックグリーンシートを剥離層上に形成すると、付着した粒子に起因してセラミックグリーンシートに欠陥を生じやすい。
ここで、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面において、AFMにより測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下であると、粒子含有層の粒子に力が作用しても、粒子含有層が変形しやすいため、粒子が脱落しにくくなると考えられる。結果として、セラミックグリーンシートの製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥が抑制できる。
更に、剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が3.0GPa以上であることで、セラミックグリーンシートの剥離性に優れ、粒子含有層から脱落した粒子が剥離層に付着しにくい。加えて、粒子含有層と剥離層とにおける押し込み弾性率が上記範囲であることで、剥離フィルムの巻き取りの際に粒子含有層の粒子と剥離層とが接触しても、剥離層の変形が抑制され、剥離層に粒子の形状が転写されることが抑制され、セラミックグリーンシートの製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥が更に抑制できる。
また、本発明の剥離フィルムでは、粒子を実質的に含有しないポリエステル基材と、粒子を含有する塗布層とを備える構成とすることにより、フィルムの平滑性が向上するため、剥離層表面における転写痕の形成が抑制され、セラミックグリーンシートの製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥が抑制できる。
以下、本発明の剥離フィルムが備える各層について説明する。なお、剥離フィルムの製造方法、及び、各層の製造方法は後段で説明する。
<剥離層>
剥離層は、ポリエステル基材の粒子含有層が設けられる側とは反対側に設けられる層であり、剥離層上でセラミックグリーンシートが製造される。剥離層上においては、セラミックグリーンシートが剥離可能に製造される。
なお、剥離層は、ポリエステル基材の表面に直接設けてもよく、他の層を介してポリエステル基材上に設けてもよいが、平滑性がより優れる点で、ポリエステル基材の表面に直接設けることが好ましい。
剥離層は、上記のようにセラミックグリーンシートを剥離可能に製造できればその構成は特に制限されないが、剥離剤を含むことが好ましい。
以下、剥離層に含まれる成分について詳述する。
[剥離剤]
剥離剤は、樹脂であることが好ましい。
剥離剤としての樹脂は特に制限されないが、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、各種ワックス、及び、脂肪族オレフィンが挙げられ、セラミックグリーンシートの剥離性により優れる点から、シリコーン樹脂が好ましい。
剥離剤は、架橋構造を有していることが好ましい。つまり、剥離層は、架橋膜であることが好ましい。
架橋構造を有する剥離剤を形成するためには、後述するように、架橋剤を含む剥離層形成用組成物を用いて剥離層を形成する方法が挙げられる。
シリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂を意味する。シリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂、シリコーングラフト樹脂、及び、アルキル変性等の変性シリコーン樹脂が挙げられ、反応性の硬化型シリコーン樹脂が好ましい。
反応性の硬化型シリコーン樹脂としては、付加反応系のシリコーン樹脂、縮合反応系のシリコーン樹脂、及び、紫外線又は電子線硬化系のシリコーン樹脂が挙げられる。
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端又は側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させることにより得られる樹脂が挙げられる。
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基を有するポリジメチルシロキサンと、末端にH基を有するポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させることにより形成される、3次元架橋構造を有する樹脂が挙げられる。
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、シリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線又は電子線でオニウム塩を分解して強酸を生成し、エポキシ基を開裂させて架橋させるもの、及び、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するものが挙げられる。より具体的には、アクリレート変性されたポリジメチルシロキサン、及び、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。
[他の樹脂]
剥離層は、上記剥離剤としての樹脂以外に、剥離剤以外の樹脂(以下、「他の樹脂」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の樹脂としては、公知の樹脂を利用することができる。その他の樹脂としては、例えば、紫外線硬化性樹脂、及び、熱硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、ウレタン樹脂等が挙げられる。後述する剥離層形成用組成物において、他の樹脂と、重合開始剤及び/又は触媒とを含んでいてもよく、剥離層は、重合開始剤及び/又は触媒の残渣物を含んでいてもよい。
[添加剤]
剥離層は、上記剥離剤としての樹脂及びその他の樹脂以外に、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、剥離力を調整するための軽剥離添加剤及び重剥離添加剤、密着向上剤、並びに、帯電防止剤等の添加剤等を添加してもよい。
剥離層に含まれる剥離剤としての樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
剥離層における上記剥離剤としての樹脂の含有量は、剥離層の全質量に対して、0.1~98質量%が好ましく、0.5~50質量%がより好ましい。剥離層における他の樹脂の含有量は、剥離層の全質量に対して、0~98質量%が好ましく、1~95質量%がより好ましい。剥離層における剥離剤としての樹脂及び他の樹脂以外の残部は、上記の添加剤、及び/又は、剥離層の形成に使用した剥離層形成用組成物(後述)に含まれる溶剤、重合開始剤、及び、触媒等の残渣物であってよい。
[剥離層の性状]
(押し込み弾性率)
剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率は、3.0GPa以上である。押し込み弾性率を3.0GPa以上とすることで、上述したように、セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制でき、セラミックグリーンシートの剥離性に優れると考えられる。
押し込み弾性率の上限は、6.0GPa以下が好ましい。
剥離層の押し込み弾性率は、剥離層を設けた剥離フィルムに対し、剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法で測定することにより得られる。詳細な測定方法については後述する。
剥離層の押し込み弾性率は、用いる剥離剤としての樹脂、他の樹脂、及び/又は、添加剤等の種類及び配合量等によって調整できる。
(厚み)
剥離層の厚みは、剥離性能及び剥離層表面の平滑性がバランス良く優れる点で、10~1000nmが好ましく、30~700nmがより好ましい。
剥離層の厚みは、剥離フィルムの主面に対して垂直な断面を有する切片を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて測定される、上記切片の5か所の厚みの算術平均値とする。
(剥離面の表面自由エネルギー)
剥離層のポリエステル基材とは反対側の表面(以下、「剥離面」ともいう。)の表面自由エネルギーは、5~50mJ/mが好ましく、10~35mJ/mがより好ましい。
剥離面の表面自由エネルギーが上記範囲であることで、セラミックグリーンシートが剥離しやすく、また、セラミックグリーンシートを製造する際のセラミックスラリーの塗布性が良好となる。
剥離面の表面自由エネルギーは、剥離層を形成する樹脂の種類及び添加剤により調整できる。
なお、剥離面の表面自由エネルギーは、接触角計(例えば、協和界面化学社製「DROPMASTER-501」等)を用いて、25℃の条件にて、剥離面に精製水、ヨウ化メチレン及びエチレングリコールの液滴を滴下し、液滴が表面に付着してから1秒後の接触角を測定し、得られたそれぞれの接触角から北崎・畑の方法に従って算出することにより求められる。
なお、上記の方法で得られる「表面自由エネルギー」は、表面自由エネルギーの極性成分及び水素結合成分の合計である。
(剥離面の最大突起高さSp、面平均粗さSa)
剥離面に形成するセラミックグリーンシートを平滑にする点で、剥離面はできるだけ平滑であることが好ましい。具体的には、剥離面の最大突起高さSpは、1~60nmが好ましく、1~40nmがより好ましい。
また、剥離面の面平均粗さSaは、0~10nmが好ましく、0~5nmがより好ましく、0~2nmが更に好ましい。
剥離面の最大突起高さSp及び面平均粗さSaは、剥離層を設ける際に剥離層に粒子を入れないこと、並びに、剥離層を形成する樹脂及び添加剤を選択することにより調整できる。
なお、剥離面の最大突起高さSp及び面平均粗さSaは、剥離面の表面を、光学干渉計(株式会社日立ハイテク製「Vertscan 3300G Lite」)を用いて下記の条件で測定し、その後、内蔵されているデータ解析ソフトにて解析することにより求められる。
最大突起高さSpの測定では、測定位置を変えて5回測定し、得られる測定値の最大値を最大突起高さSpの測定値とする(内蔵されているデータ解析ソフトではPと表記される)。また、面平均粗さSaの測定では、測定位置を変えて5回測定し、得られる測定値の平均値を面平均粗さSaの測定値とする。具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定モード:WAVEモード
対物レンズ:50倍
測定面積:186μm×155μm
<ポリエステル基材>
ポリエステル基材は、主たる重合体成分としてポリエステル樹脂を含む、フィルム状の物体である。ここで、「主たる重合体成分」とは、フィルム状の物体に含まれる全ての重合体のうち最も含有量(質量)が多い重合体を意味する。
ポリエステル基材は、1種単独のポリエステル樹脂を含んでいてもよく、2種以上のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、主鎖にエステル結合を有する重合体である。ポリエステル樹脂は、通常、後述するジカルボン酸化合物とジオール化合物とを重縮合させることにより形成される。
ポリエステル樹脂としては特に制限されず、公知のポリエステル樹脂を利用できる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び、それらの共重合体が挙げられ、なかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)、及び、それらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、PETが好ましい。
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.50dl/g以上0.80dl/g未満が好ましく、0.55dl/g以上0.70dl/g未満がより好ましい。
ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、220~270℃が好ましく、245~265℃がより好ましい。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、65~90℃が好ましく、70~85℃がより好ましい。
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知の方法を利用できる。例えば、触媒存在下で、少なくとも1種のジカルボン酸化合物と、少なくとも1種のジオール化合物とを重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造できる。
以下、ポリエステルの製造に用いる材料、及び、製造条件について説明する。
(ジカルボン酸化合物)
ジカルボン酸化合物としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、及び、芳香族ジカルボン酸化合物等のジカルボン酸、並びに、それらジカルボン酸のメチルエステル化合物及びエチルエステル化合物等のジカルボン酸エステルが挙げられる。中でも、芳香族ジカルボン酸、又は、芳香族ジカルボン酸メチルが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、及び、エチルマロン酸が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸化合物としては、例えば、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及び、デカリンジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、及び、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸、及び、それらのメチルエステル体が挙げられる。
中でも、テレフタル酸、又は、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
ジカルボン酸化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ジカルボン酸化合物として、テレフタル酸を使用する場合、テレフタル酸単独で用いてもよく、イソフタル酸等の他の芳香族ジカルボン酸、又は、脂肪族ジカルボン酸と共重合してもよい。
(ジオール化合物)
ジオール化合物としては、例えば、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、及び、芳香族ジオール化合物が挙げられ、脂肪族ジオール化合物が好ましい。
脂肪族ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、及び、ネオペンチルグリコールが挙げられ、エチレングリコールが好ましい。
脂環式ジオール化合物としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、及び、イソソルビドが挙げられる。
芳香族ジオール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、1,3-ベンゼンジメタノール,1,4-ベンゼンジメタノール、及び、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
ジオール化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(触媒)
ポリエステル樹脂の製造に使用する触媒は、特に制限されず、ポリエステル樹脂の合成に使用可能な公知の触媒を利用できる。
触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、カリウム化合物、ナトリウム化合物)、アルカリ土類金属化合物(例えば、カルシウム化合物、マグネシウム化合物)、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、及び、リン化合物が挙げられる。中でも、触媒活性、及び、コストの観点から、チタン化合物が好ましい。
触媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カリウム化合物、ナトリウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、及び、ゲルマニウム化合物から選択される少なくとも1種の金属触媒と、リン化合物とを併用することが好ましく、チタン化合物とリン化合物を併用することがより好ましい。
チタン化合物としては、有機キレートチタン錯体が好ましい。有機キレートチタン錯体は、配位子として有機酸を有するチタン化合物である。
有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、及び、リンゴ酸が挙げられる。
チタン化合物としては、特許第5575671号公報の[0049]~[0053]に記載されたチタン化合物も利用でき、上記公報の記載内容は、本明細書に組み込まれる。
(末端封止剤)
ポリエステル樹脂の製造においては、必要に応じて、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤を用いることで、ポリエステル樹脂の末端に末端封止剤に由来する構造が導入される。
末端封止剤としては、制限されず、公知の末端封止剤を利用できる。末端封止剤としては、例えば、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、及び、エポキシ系化合物が挙げられる。
末端封止剤としては、特開2014-189002号公報の[0055]~[0064]に記載の内容も参照でき、上記公報の内容は、本明細書に組み込まれる。
(製造条件)
反応温度は、制限されず、原材料に応じて適宜設定すればよい。反応温度は、260~300℃が好ましく、275~285℃がより好ましい。
圧力は、制限されず、原材料に応じて適宜設定すればよい。圧力は、1.33×10-3~1.33×10-5MPaが好ましく、6.67×10-4~6.67×10-5MPaがより好ましい。
ポリエステル樹脂の合成方法としては、特許第5575671号公報の[0033]~[0070]に記載された方法も利用でき、上記公報の内容は、本明細書に組み込まれる。
[配向性]
ポリエステル基材は、2軸配向ポリエステル基材であることが好ましい。
「2軸配向」とは、2軸方向に分子配向性を有する性質を意味する。分子配向性は、マイクロ波透過型分子配向計(例えば、MOA-6004、株式会社王子計測機器社製)を用いて測定する。二軸方向のなす角は、90°±5°の範囲内が好ましく、90°±3°の範囲内がより好ましく、90°±1°の範囲内が更に好ましい。本発明の剥離フィルムにおける2軸配向ポリエステル基材は、長手方向及び幅方向に分子配向性を有することが好ましい。2軸配向ポリエステル基材は、後述する方法で製造できる。
[ポリエステル樹脂含有量]
ポリエステル基材におけるポリエステル樹脂の含有量は、ポリエステル基材中の重合体の全質量に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。
ポリエステル樹脂の含有量の上限は、特に制限されず、ポリエステル基材中の重合体の全質量に対して、例えば100質量%以下の範囲で適宜設定できる。
ポリエステル基材がポリエチレンテレフタレートを含む場合、ポリエチレンテレフタレートの含有量は、ポリエステル基材中のポリエステル樹脂の全質量に対して、90~100質量%が好ましく、95~100質量%がより好ましく、98~100質量%が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
ポリエステル基材は、ポリエステル樹脂以外の成分(例えば、触媒、未反応の原料成分、粒子、及び、水等)を含んでいてもよい。
剥離フィルムの平滑性が向上する観点から、ポリエステル基材は、粒子を実質的に含まないことが好ましい。粒子としては、例えば、後述する粒子含有層が含む粒子が挙げられる。
「粒子を実質的に含まない」とは、ポリエステル基材について、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、粒子の含有量がポリエステル基材の全質量に対して50質量ppm以下であることで定義され、好ましくは10質量ppm以下であり、より好ましくは検出限界以下である。これは積極的に粒子をポリエステル基材中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分、原料樹脂、又は、ポリエステル基材の製造工程におけるライン若しくは装置に付着した汚れが剥離して、ポリエステル基材中に混入する場合があるためである。
[密度]
ポリエステル基材の密度は、1.39~1.41g/cmが好ましく、1.395~1.405g/cmがより好ましく、1.398~1.400g/cmが更に好ましい。
ポリエステル基材の密度は、電子比重計(製品名「SD-200L」、アルファーミラージュ社製)を使用して測定できる。
[厚み]
ポリエステル基材の厚みは、剥離性を制御できる点で、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。厚みの下限は特に制限されないが、強度が向上し、加工性が向上する点で、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。
ポリエステル基材の厚みは、連続式触針式膜厚計を用いて測定したものとする。具体的には、ポリエステル基材の厚みを、長手方向に沿って10mにわたり連続式触針式膜厚計で測定する。この測定を、幅方向の位置が異なる5か所において行う。得られた測定値の算術平均値を厚みとする。
なお、ポリエステル基材の厚みは、剥離フィルムの厚みを上記方法で測定して得たあと、得られた剥離フィルムの厚みから、上述した方法で得られた剥離層の厚み、及び、後述する方法で得られる粒子含有層の厚みを減算して得てもよい。
<粒子含有層>
粒子含有層は、粒子を含む層のことをいう。
粒子含有層は、ポリエステル基材の剥離層が設けられる側とは反対側の表面に設けられる層であり、剥離フィルムの搬送性を向上できる。具体的には、巻き品質を向上(ブロッキングを抑制)し、搬送時のキズ及び欠陥の発生を抑制し、高速搬送における搬送シワを低減できる。
なお、粒子含有層において、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面が凸部を有する。ここで凸部とは、粒子含有層に含まれる粒子によって形成される、突起部分のことをいう。
また、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面の凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である。
粒子含有層は、ポリエステル基材の表面に直接設けてもよく、他の層を介してポリエステル基材の表面に設けてもよいが、生産性がより優れる点で、ポリエステル基材の表面に直接設けることが好ましい。
また、粒子含有層はバインダーを含むことが好ましい。粒子含有層は、バインダーの他にも、添加剤を含んでいてもよい。
以下、粒子及び添加剤について説明する。
(粒子)
粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径は、特に制限されず、1~1000nmが好ましく、搬送性がより優れる点及び転写痕が抑制できる点で、50~500nmがより好ましい。
また、搬送性がより優れる点及び転写痕が抑制できる点で、粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径が50~500nmであり、粒子含有層の厚みが1~200nm(より好ましくは30~130nm)であり、かつ、粒子の平均粒子径が粒子含有層の厚みよりも大きいことが好ましい。粒子含有層を塗布により形成する場合には、粒子の平均粒子径を粒子含有層の厚みよりも大きくすることで、粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面に凸部を形成できる。
粒子含有層に含まれる粒子としては、1種単独で用いてもよく、2種以上の粒子を用いてもよい。
粒子含有層が、粒子径の異なる2種以上の粒子を含む場合、粒子含有層は、平均粒子径が上記範囲内にある粒子を少なくとも1種含むことが好ましく、粒子径の異なる2種以上の粒子がいずれも平均粒子径が上記範囲内にある粒子であることがより好ましい。
粒子含有層に含まれる粒子としては、例えば、有機粒子及び無機粒子が挙げられる。
有機粒子としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、及び、スチレン-アクリル樹脂が挙げられる。樹脂粒子は、架橋構造を有していても、有していなくてもよい。具体的には、非架橋のアクリル樹脂粒子、架橋のアクリル樹脂粒子、及び、ジビニルベンゼン架橋粒子が挙げられる。
なお、本明細書において、アクリル樹脂とは、アクリレート又はメタクリレート由来の構成単位を含む樹脂を意味する。
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子(二酸化ケイ素粒子、コロイダルシリカ)、チタニア粒子(酸化チタン粒子)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及び、アルミナ粒子(酸化アルミニウム粒子)が挙げられる。上記の中でも、無機粒子は、ヘイズ、及び、耐久性がより向上する観点から、シリカ粒子が好ましい。
粒子の形状は、特に制限されず、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、鱗片状、凝集状、及び、不定形状が挙げられる。凝集状とは、1次粒子が凝集した状態を意味する。凝集状にある粒子の形状は制限されないが、球状又は不定形状が好ましい。
凝集粒子としては、ヒュームドシリカ粒子が好ましい。入手可能な市販品としては、例えば、日本アエロジル株式会社のアエロジルシリーズが挙げられる。
非凝集粒子としては、コロイダルシリカ粒子が好ましい。入手可能な市販品としては、例えば、日産化学株式会社製のスノーテックスシリーズが挙げられる。
粒子含有層における粒子の含有量は、搬送性、及び、剥離層の塗布性の観点から、粒子含有層の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、1~15質量%が更に好ましい。
また、粒子の含有量は、ポリエステル基材の全質量に対して、0.0001~0.01質量%が好ましく、0.0005~0.005質量%がより好ましい。
(バインダー)
粒子含有層は、バインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては、樹脂バインダーが好ましい。樹脂バインダーとしては、非ポリエステル樹脂が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び、オレフィン樹脂が挙げられる。
バインダーは、水分散体を塗布して形成されることが好ましい。
また、バインダーとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又は、オレフィン樹脂が好ましい。アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又は、オレフィン樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を利用できる。
また、樹脂バインダーは、酸変性樹脂であってもよい。つまり、樹脂バインダーは、酸基または酸無水物基を有する樹脂であってもよい。
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む樹脂であり、スチレンなどのビニル単量体を共重合していていもよい。アクリル樹脂としては、特に制限されないが、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことがより好ましい。
アクリル樹脂は、酸変性成分を有していてもよい。アクリル樹脂は、酸変性成分として、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含んでいてもよい。また、(メタ)アクリル酸は、酸無水物を形成していていもよいし、アルカリ金属、有機アミン及びアンモニアから選択される少なくとも1つで中和されていてもよい。
アクリル樹脂の酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。酸価の下限は、特に制限されず、例えば、0mgKOH/gであるが、水分散体として塗布する点からは、2mgKOH/g以上が好ましい。
ポリエステル樹脂との溶解度パラメータ(SP値)が離れたアクリル樹脂を用いた場合、アクリル樹脂とポリエステル樹脂との相溶性が不十分となり、結果として、長期保管における欠陥抑制をより向上することができる。このようなアクリル樹脂は、例えば、酸価を上記範囲にすること、及び、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含ませること、の少なくとも一方を満たすように調節して得ることができる。酸価を上記範囲にすること、及び、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含ませること、の両方を満たすように調節すると、長期保管における欠陥抑制をより向上することができる。
オレフィン樹脂は、主鎖にオレフィンに由来する構成単位を含む樹脂であればよい。主鎖にオレフィン構造を有することで、ポリエステル樹脂との相溶性が不十分となり、結果として、長期保管における欠陥抑制をより向上することができる。
オレフィンとしては、特に制限されないが、炭素数2~6のアルケンが好ましく、エチレン、プロピレン、又は、ヘキセンがより好ましく、エチレンが更に好ましい。
ポリオレフィンが有するオレフィンに由来する構成単位は、ポリオレフィンの全ての構成単位に対して、50~99モル%が好ましく、60~98%がより好ましい。
オレフィン樹脂としては、酸変性オレフィン樹脂が好ましい。酸変性オレフィン樹脂としては、例えば、上記オレフィン樹脂を、不飽和カルボン酸又はその無水物等の酸変性成分で変性した共重合体が挙げられる。
酸変性オレフィン樹脂の市販品としては、例えば、ザイクセンAC、A、L、NC、N等のザイクセン(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)、ケミパールS100、S120、S200、S300、S650、SA100等のケミパール(登録商標)シリーズ(三井化学(株)製)、ハイテックS3121、S3148K等のハイテック(登録商標)シリーズ(東邦化学(株)製)、アローベースSE-1013、SE-1010、SB-1200、SD-1200、SD-1200、DA-1010、DB-4010等のアローベース(登録商標)シリーズ(ユニチカ(株)製)、ハードレンAP-2、NZ-1004、NZ-1005(東洋紡(株)製)、及び、セポルジョンG315、VA407(住友精化(株)製)が挙げられる。
また、特開2014-076632号公報の[0022]~[0034]に記載の酸変性オレフィン樹脂も好ましく用いることができる。
ウレタン樹脂としては、ウレタン結合を有する重合体であれば制限されず、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応生成物等の公知のウレタン樹脂を利用できる。
粒子含有層の製造にウレタン樹脂を含む水分散体を用いる場合、水分散体は、酸性基(例えばカルボキシ基)を有するウレタン樹脂を含むこと、又は、ウレタン樹脂と分散剤とを含むことが好ましい。これにより、粒子含有層の製膜性が良好になる。
ウレタン樹脂は、例えば、原料となるポリオール化合物の構造、原料となるポリオールの疎水性又は親水性、原料となるポリイソシアネート化合物の構造、及び、原料となるポリイソシアネート化合物の疎水性又は親水性のうち、少なくとも1つを調節することで、所望のSP値とすることができる。このようにして、疎水的になるように調節されたウレタン樹脂を用いることで、ウレタン樹脂とポリエステル樹脂との相溶性が不十分となり、結果として、長期保管における欠陥抑制をより向上することができる。
ウレタン樹脂の中でも、疎水的であって、長期保管における欠陥抑制をより向上できる点から、ポリエステル構造を有するウレタン樹脂(ポリエステル系ウレタン樹脂)が好ましい。
ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、ハイドラン(登録商標)AP-20、AP-40N及びAP-201(以上、DIC社製)、タケラック(登録商標)W-605、W-5030及びW-5920(以上、三井化学社製)、並びに、スーパーフレックス(商標登録)210及び130、並びに、エラストロン(登録商標)H-3-DF、E-37及びH-15(以上、第一工業製薬社製)が挙げられる。
粒子含有層に含まれるバインダーは、架橋構造を有していてもよい。つまり、粒子含有層は、架橋膜であってもよい。
架橋構造を有するバインダーを形成するためには、後述するように、架橋剤を含む粒子含有層形成用組成物を用いて粒子含有層を形成する方法が挙げられる。
粒子含有層は、1種単独のバインダーを含んでいてもよく、2種以上のバインダーを含んでいてもよい。
バインダーの含有量は、欠陥を抑制する点で、粒子含有層の全質量に対して、30~99.8質量%が好ましく、50~99.5質量%がより好ましい。
(添加剤)
粒子含有層は、上記の粒子及びバインダー以外の添加剤を含んでいてもよい。
粒子含有層に含まれる添加剤としては、例えば、界面活性剤、ワックス、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、強化剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、防錆剤、及び、防黴剤が挙げられる。
粒子含有層は、その表面において、粒子により形成される突起が存在する箇所以外の領域の平滑性が向上する点で、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限されず、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及び、炭化水素系界面活性剤が挙げられ、なかでも、フッ素系界面活性剤(特に、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤)、及び、炭化水素系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、疎水基としてケイ素含有基を有する界面活性剤であれば特に制限されず、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、及び、ポリメチルアルキルシロキサンが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK(登録商標)-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、及び、BYK-349(以上、BYK社製)、並びに、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、及び、KF-6017(以上、信越化学株式会社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、疎水基としてフッ素含有基を有する界面活性剤であれば特に制限されず、例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸、及び、パーフルオロカルボン酸が挙げられる。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F-114、F-410、F-440、F-447、F-553、及び、F-556(以上、DIC社製)、並びに、サーフロン(登録商標)S-211、S-221、S-231、S-233、S-241、S-242、S-243、S-420、S-661、S-651、及びS-386(AGCセイミケミカル社製)が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤を使用することが好ましい。
また、フッ素系界面活性剤としては、剥離層の塗布性を向上できる点で、炭素数が6以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤と比較して、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることが好ましい。炭素数1~4のパーフルオロアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。なかでも、炭素数1~4の直鎖状のパーフルオロアルキル基、又は、炭素数3の分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数1若しくは2のパーフルオロアルキル基、又は、炭素数3の分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤が更に好ましい。
上記のパーフルオロアルキル基としては、例えば、CF-*、C-*、C-*、n-C-*、及び、(CFCF-*が挙げられる。ここで、*は、フッ素原子により置換されている炭素原子以外の炭素原子との結合位置を示す。これらのパーフルオロアルキル基と結合する炭素原子は、水素原子を有するか、又は、炭素原子のみと結合しているかのいずれかであることが好ましい。
炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、フタージェント(登録商標)100、100C、110、150、150H、212M、215M、250、251、222F、245F、208G、FTX-218、DFX-18、300、310、320、400SW、710FL、683、601AD、602A、及び681、(以上、(株)ネオス製)、並びに、PF-136A、PF-156A、PF-151N、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520、及びPF-652-NF(以上、OMNOVA社製)が挙げられる。
炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いると、炭素数が6以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いる場合と比較して、剥離層の塗布性が向上する理由は定かではないが、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤は、表面張力の低いCF基を重量あたりに数多く含むために、少ない添加量で塗布液の表面張力を低下させることができる。これにより、後述する剥離帯電を抑制し、剥離層の塗布性を向上することができるものと推察している。
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、及び、脂肪酸塩が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノ又はジアルキルエステル、及び、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル・モノアルキルエーテルが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第1級~第3級アルキルアミン塩、及び、第4級アンモニウム化合物が挙げられる。
両性界面活性剤としては、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両者を有する界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、ラピゾール(登録商標)A-90、A-80、BW-30、B-90、及び、C-70(以上、日油(株)製)、NIKKOL(登録商標)OTP-100(以上、日光ケミカル(株)製)、コハクール(登録商標)ON、L-40、及び、フォスファノール(登録商標)702(以上、東邦化学工業(株)製)、並びに、ビューライト(登録商標)A-5000、及び、SSS(以上、三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、ナロアクティー(登録商標)CL-95、及び、HN-100(商品名:三洋化成工業(株)製)、リソレックスBW400(商品名:高級アルコール工業(株)製)、EMALEX(登録商標)ET-2020(以上、日本エマルジョン(株)製)、並びに、サーフィノール(登録商標)104E、420、440、465、及び、ダイノール(登録商標)604、607(以上、日信化学工業(株)製)、が挙げられる。
炭化水素系界面活性剤のなかでも、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。
アニオン性の炭化水素系界面活性剤は、平滑性がより向上する点で、複数個の疎水性末端基を有することが好ましい。疎水性末端基は、炭化水素系界面活性剤が有する炭化水素基の一部であってよい。例えば、分岐鎖構造を有する炭化水素基を末端に有する炭化水素系界面活性剤は、複数個の疎水性末端基を有することになる。
複数個の疎水性末端基を有するアニオン性の炭化水素系界面活性剤としては、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端基を4つ有する)、スルホコハク酸ジ-2-エチルオクチルナトリウム(疎水性末端基を4つ有する)、及び、分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端基を2つ有する)が挙げられる。
界面活性剤は1種用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、粒子含有層の全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、表面平滑性により優れる点で、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~2質量%が更に好ましい。
ワックスとしては、特に制限されず、天然ワックスも合成ワックスでもよい。天然ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、モンタンワックス、パラフィンワックス、及び、石油ワックスが挙げられる。その他、国際公開第2017/169844号明細書の[0087]の記載の滑り剤も使用できる。
ワックスの含有量は、粒子含有層の全質量に対して、0~10質量%が好ましい。
[粒子含有層の性状]
(押し込み弾性率)
粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面の凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である。押し込み弾性率を8.0GPa以下とすることで、上述したように、セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制できると考えられる。
粒子含有層の押し込み弾性率は、7.0GPa以下が好ましく、5.5GPa以下がより好ましい。粒子含有層の押し込み弾性率の下限は特に制限されないが、0.1GPa以上が挙げられ、0.5GPa以上が好ましく、1.0GPa以上がより好ましい。
粒子含有層の押し込み弾性率は、用いるバインダー、添加剤及び/又は後述する架橋剤の種類及び配合量等によって調整できる。
本明細書において、AFMにより粒子含有層の押し込み弾性率を測定する方法は、以下の方法によるものとする。粒子含有層の凸部以外の領域において、AFMのカンチレバーに設置された探針を粒子含有層表面に近づける際に探針が受ける力、及び、探針を粒子含有層表面から遠ざける際に探針が受ける力を測定して、探針と粒子含有層表面との距離に対する、探針が受ける力の関係を表すフォースカーブを得る。フォースカーブの傾きから、Hertz接触理論により弾性率を求める。3.0μm角の視野において上記測定を5回行い、5視野の算術平均から粒子含有層の押し込み弾性率を求める。詳細については実施例の部分で後述する。
(厚み)
粒子含有層は、例えば、粒子を含む組成物をポリエステル基材の一方の表面上に塗布して形成することにより、その厚みが1μm以下になることが多い。粒子含有層は、ポリエステル基材を形成するポリエステル樹脂と、粒子を含む粒子含有層を形成する樹脂とを共押出して形成してもよく、その場合には、粒子含有層の厚さは、1~10μmになることが多い。
粒子含有層の厚みは、1nm~3μmが好ましく、粒子含有層の製造適性、及び、ヘイズ低減の観点から、1~500nmがより好ましく、10~200nmが更に好ましく、40~150nmが特に好ましい。
粒子含有層の厚みは、剥離フィルムの主面に対して垂直な断面を有する切片を作製し、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される、上記切片の5か所の厚みの算術平均値とする。
粒子含有層が柔らかく、安定して断面切片を作製することが難しい場合には、分光光度計を用いて測定してもよい。具体的には、測定される反射率スペクトルを粒子含有層の厚み及び屈折率とポリエステル基材の屈折率とでフィッテングすることにより、粒子含有層の厚みを求めることができる。
(粒子含有層の表面自由エネルギー)
粒子含有層のポリエステル基材とは反対側の表面(以下、単に「粒子含有層の表面」ともいう。)における表面自由エネルギーは、25~65mJ/mが好ましく、25~45mJ/mがより好ましく、30~45mJ/mが更に好ましい。
粒子含有層の表面における表面自由エネルギーが上記範囲であることにより、ポリエステル基材に含まれるオリゴマー等の不純物が粒子含有層に析出することを抑制し、セラミックグリーンシートにおける欠陥を抑制することができる。
なお、オリゴマーとは、ポリエステルの重合時に生じる低分子量の副生成物ポリエステル基材に不純物として含まれる成分である。
(粒子含有層の最大突起高さSp、表面の面平均粗さSa)
セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥をより抑制できる点で、粒子含有層の表面における最大突起高さSpは、300nm以下が好ましい。特に、粒子含有層が無機粒子を含む場合、粒子含有層の表面における最大突起高さSpは、300nm以下が好ましい。最大突起高さSpの下限は特に制限されないが、10nm以上が好ましい。
また、粒子含有層の表面における面平均粗さSaは0~10nmが好ましく、0~5nmがより好ましく、1~3nmが更に好ましい。
粒子含有層の表面の最大突起高さSp及び面平均粗さSaの測定方法は、上述した剥離面の最大突起高さSp及び面平均粗さSaの測定方法と同様である。
<剥離フィルムの性状>
[厚み]
剥離フィルムの厚みは、剥離性がより優れる点で、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。また、剥離フィルムの厚みは、強度が向上し、加工性が向上する点で、3μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が更に好ましい。
剥離フィルムの厚みは、連続式触針式膜厚計により測定される5か所の厚さの算術平均値とする。
[剥離帯電量]
剥離層を有さない粒子含有層付きポリエステル基材は、下記の測定方法により、温度23℃、相対湿度(RH)20%の環境下で測定された、直径1.5cmφの円形に相当する粒子含有層の表面とポリエステル基材表面との剥離帯電量の絶対値が、0~0.12nC(ナノクーロン)であることが好ましく、0~0.11ncであることがより好ましく、0~0.1nCであることが更に好ましい。ここで、単位のnC(ナノクーロン)は、10-9クーロンである。
剥離帯電量の全体値が上記範囲であると、後述する剥離層を形成するための剥離層形成組成物を塗布する際に生じる異物付着が生じにくく、剥離層塗布性が良好となる。
粒子含有層付きポリエステル基材の剥離帯電量の測定方法は、以下の通りである。
測定装置として、粒子含有層付きポリエステル基材の基準サンプル(ポリエステル基材の表面を上面)を置く台と、粒子含有層付きポリエステル基材の測定サンプル(粒子含有層の表面を下面)を保持しながら鉛直方向に沿って上昇及び下降することにより、基準サンプルの上面に対して測定サンプルの下面の圧着及び剥離を繰り返し行うことができるヘッドと、このヘッドにつながっており測定サンプルの帯電量を測定できるエレクトロメーターとを備える装置を使用する。
より具体的には、粒子含有層付きポリエステル基材を、直径1.5cmの大きさの円形に切り取って剥離帯電量測定用の測定サンプルを作製し、また、13cm×4cmの大きさの長方形に切り取って剥離帯電量測定の基準サンプルを作製する。次いで、得られた粒子含有層付きポリエステル基材のサンプルを、予め上記の測定温度及び湿度の環境下で2時間以上放置する。その後、基準サンプルを測定装置の台に載せ、ヘッドに測定サンプルを装着する。このとき、基準サンプルのポリエステル基材の表面と測定サンプルの粒子含有層の表面とが互いに対向するように、台に載せる基準サンプルにおいてポリエステル基材の表面を上面側に、ヘッドに装着する測定サンプルの粒子含有層の表面を下面側に、それぞれ配置する。
測定サンプルを除電したのち、ヘッドを上昇又は下降させて、測定サンプルに対する基準フィルムの圧着及び剥離を繰り返す(接触圧は566g/cm、接触時間2秒間)。同じ測定サンプルを用いて1回目から5回目の剥離後のそれぞれにおいて測定サンプルの帯電量を測定し、測定値の平均値を算出する。測定サンプルを換えるとともに、基準サンプルにおいて測定サンプルが接触する位置を測定サンプルごとに変えて、合計で4つのサンプルで測定を行い、全てを平均したものを剥離帯電量とする。測定は、温度23℃、相対湿度(RH)20%の環境下で行う。
ポリエステルフィルムの剥離帯電量の測定方法については、特開2003-194865号公報(特に[0053]~[0067])に記載の内容も参照でき、上記公報の記載内容は、本明細書に組み込まれる。
剥離帯電量は、ポリエステル基材と、粒子含有層に含まれるバインダー及び界面活性剤等の成分の種類及び量とを選択することにより調整できる。より具体的には、ポリエステル基材、バインダー及び界面活性剤からなる群より選択される2つについて、帯電列においてより近い材料を選択することにより、剥離帯電量を上記の範囲に調整できる。
<剥離フィルムの製造方法>
本発明の剥離フィルムの製造方法について説明する。
本発明の剥離フィルムの製造方法は、上述した特性の剥離フィルムが得られれば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
なかでも、本発明の剥離フィルムを生産性よく製造できる点で、本発明の剥離フィルムの製造方法としては、
押出成形により、未延伸のポリエステル基材を形成する押出成形工程と、
未延伸のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向のいずれか一方に延伸して1軸配向されたポリエステル基材を形成する第1延伸工程、及び、1軸配向されたポリエステル基材を搬送方向及び幅方向の他方に延伸して2軸配向されたポリエステル基材を形成する第2延伸工程を段階的又は同時に実施する延伸工程と、を含み、
押出成形工程と延伸工程との間、第1延伸工程と第2延伸工程との間、又は、延伸工程の後に、ポリエステル基材の一方の表面側に粒子含有層形成用組成物を塗布して粒子含有層を形成する粒子含有層形成工程を含み、
押出成形工程と延伸工程との間、第1延伸工程と第2延伸工程との間、又は、延伸工程の後に、ポリエステル基材の他方の表面側に剥離層形成用組成物を塗布して剥離層を形成する剥離層形成工程を含む、製造方法が挙げられる。
以下、上記好ましい製造方法の態様について詳述する。
[押出成形工程]
押出成形工程は、押出成形により、未延伸のポリエステル基材を形成する工程である。より具体的には、原料ポリエステル樹脂を含む溶融樹脂をフィルム状に押し出して、未延伸のポリエステル基材を形成する工程である。原料のポリエステル樹脂については、上記の(ポリエステル樹脂)の項目において説明したポリエステル樹脂と同義である。
なお、粒子を実質的に含有しないポリエステル基材を作製するためには、押出成形の際に、粒子を含有しないポリエステルペレットを用いることが好ましい。
押出成形法は、例えば押出機を用いて原料樹脂の溶融体を押し出すことによって、原料樹脂を所望の形状に成形する方法である。
押出ダイから押し出された溶融体は、冷却されることによってフィルム状に成形される。例えば、溶融体をキャスティングロールに接触させ、キャスティングロール上で溶融体を冷却及び固化することで、溶融体をフィルム状に成形できる。溶融体の冷却においては、更に、溶融体に風(好ましくは冷風)を当てることが好ましい。
[延伸工程]
延伸工程は、未延伸のポリエステル基材を搬送方向及び幅方向のいずれか一方に延伸して1軸配向されたポリエステル基材を形成する第1延伸工程、及び、1軸配向されたポリエステル基材を搬送方向及び幅方向の他方に延伸して2軸配向されたポリエステル基材を形成する第2延伸工程を段階的又は同時に実施する工程である。
第1延伸工程及び第2延伸工程の一方は、ポリエステル基材を搬送方向に延伸(以下、「縦延伸」ともいう。)する縦延伸工程であり、第1延伸工程及び第2延伸工程の他方は、ポリエステル基材を幅方向に延伸(以下、「横延伸」ともいう。)する横延伸工程である。延伸時には、それぞれの方向にポリエステル高分子が配列する。
上記延伸工程は、縦延伸及び横延伸を同時に行う同時2軸延伸であってもよく、縦延伸及び横延伸を段階的に分けて行う逐次2軸延伸であってもよい。逐次2軸延伸の形態としては、例えば、縦延伸→横延伸、縦延伸→横延伸→縦延伸、及び、縦延伸→縦延伸→横延伸が挙げられ、縦延伸→横延伸が好ましい。
以下、縦延伸→横延伸の態様について説明するが、上記製造方法はその態様に限られない。
縦延伸工程における延伸倍率は、適宜設定されるが、2.0~5.0倍が好ましく、2.5~4.0倍がより好ましく、2.8~4.0倍が更に好ましい。
縦延伸工程における延伸速度は、800~1500%/秒が好ましく、1000~1400%/秒がより好ましく、1200~1400%/秒が更に好ましい。ここで、「延伸速度」とは、縦延伸工程において1秒間に延伸されたポリエステル基材の搬送方向の長さΔdを、延伸前のポリエステル基材の搬送方向の長さd0で除した値を、百分率で表した値である。
縦延伸工程においては、未延伸のポリエステル基材を加熱することが好ましい。加熱により縦延伸が容易になるためである。
横延伸工程においては、横延伸前に、1軸配向されたポリエステル基材を予熱することが好ましい。1軸配向されたポリエステル基材を予熱することで、1軸配向されたポリエステル基材を容易に横延伸できる。
横延伸工程における1軸配向されたポリエステル基材の幅方向の延伸倍率(横延伸倍率)は特に制限されないが、上記縦延伸工程における延伸倍率より大きいことが好ましい。横延伸工程における延伸倍率は、3.0~6.0倍が好ましく、3.5~5.0倍がより好ましく、3.5~4.5倍が更に好ましい。
横延伸工程における延伸速度は、8~45%/秒が好ましく、10~30%/秒がより好ましく、15~20%/秒が更に好ましい。
[粒子含有層形成工程]
粒子含有層形成工程は、ポリエステル基材の一方の表面側に粒子含有層形成用組成物を塗布して粒子含有層を形成する工程である。
粒子含有層形成工程は、押出成形工程と第1延伸工程との間、第1延伸工程と第2延伸工程との間、又は、延伸工程の後に実施される。
粒子含有層形成工程によりポリエステル基材の一方の表面に形成される粒子含有層については、上記粒子含有層の項目において説明した層と同義である。
以下、粒子含有層形成用組成物を塗布する態様について説明する。
まず、粒子含有層形成用組成物について説明する。
粒子含有層形成用組成物は、粒子含有層に含まれる粒子、必要に応じて添加されるバインダー、及び、必要に応じて添加される添加剤、並びに、溶剤を混合することにより調製できる。
溶剤としては、例えば、水、アルコール溶媒が挙げられる。
粒子含有層形成用組成物は、1種単独の溶剤を含んでいてもよく、2種以上の溶剤を含んでいてもよい。
溶剤の含有量は、粒子含有層形成用組成物の全質量に対して、80~99.5質量%が好ましく、90~99質量%がより好ましい。
すなわち、粒子含有層形成用組成物において、溶剤以外の成分(固形分)の合計含有量は、粒子含有層形成用組成物の全質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
粒子含有層形成用組成物に含まれる粒子、必要に応じて添加されるバインダー、及び、必要に応じて添加される添加剤については、それらの好ましい態様も含めて、上記粒子含有層の項目において説明した通りである。
粒子含有層形成用組成物における溶剤以外の各成分については、粒子含有層形成用組成物の固形分の全質量に対する各成分の含有量が、上記の粒子含有層の全質量に対する各成分の好ましい含有量と同じになるように、粒子含有層形成用組成物における各成分の含有量を調整することが好ましい。
また、粒子含有層形成用組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤としては、特に制限されず、公知のものを使用できる。
架橋剤としては、例えば、メラミン系化合物、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、及び、カルボジイミド系化合物が挙げられ、オキサゾリン系化合物及びカルボジイミド系化合物が好ましい。市販品としては、例えば、カルボジライトV-02-L2(日清紡(株)製)及びエポクロスK-2020E(日本触媒(株)製)が挙げられる。エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、及び、メラミン系化合物の詳細については、特開2015-163457号公報の[0081]~[0083]の記載を参照することができる。国際公開2017/169844号明細書の[0082]~[0084]の記載の架橋剤も好ましく使用できる。カルボジイミド系化合物としては、特開2017-087421号公報の[0038]~[0040]の記載を参照できる。
オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、及び、イソシアネート系化合物については、国際公開第2018/034294号明細書の[0074]~[0075]の記載の架橋剤も好ましく使用できる。
架橋剤の含有量は、粒子含有層の全質量に対して、0~50質量%が好ましい。
粒子含有層形成用組成物における、バインダーに対する架橋剤の質量比は、2~50質量%が好ましい。
粒子含有層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法を利用できる。塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、スリットコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法及びディップコート法が挙げられる。
粒子含有層形成工程は、第1延伸工程と第2延伸工程との間に実施されることが好ましい。
粒子含有層の形成における加熱温度は、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、60℃以上であってよい。
また、ポリエステル基材と粒子含有層との密着性を向上させるために、粒子含有層を設ける前に、ポリエステル基材の表面に対して、アンカーコート、コロナ処理、及び、プラズマ処理等の前処理を施してもよい。
なお、粒子含有層の押し込み弾性率は、粒子含有層を上記粒子含有層形成用組成物によって形成する場合、バインダーの種類、架橋剤の種類、及び、添加剤の種類、並びに、それらの配合比等によって調整できる。また、粒子含有層の膜厚によっても粒子含有層の押し込み弾性率を調整できる。
粒子含有層の押し込み弾性率を上記範囲とする方法として、具体的には、ガラス転移温度が低いバインダーの使用、ガラス転移温度が低い架橋剤の使用(例えば、上記オキサゾリン系化合物(エポクロスK2020E(日本触媒(株)製)等の使用)、及び、上記カルボジイミド系化合物の使用)、架橋密度の低減(例えば、架橋剤使用量の低減、バインダー等における架橋剤と反応する反応部位の低減)、可塑剤の添加(例えば、ポリエチレンオキサイド系化合物の添加)、及び、粒子含有層の膜厚の増大等が挙げられる。
[剥離層形成工程]
剥離層形成工程は、ポリエステル基材の粒子含有層とは反対側の表面側に剥離層形成用組成物を塗布して剥離層を形成する工程である。
剥離層形成工程は、押出成形工程と第1延伸工程との間、第1延伸工程と第2延伸工程との間、又は、延伸工程の後に実施される。
剥離層形成工程が延伸工程の後に実施される場合、後述する冷却工程の後に行われることが好ましく、後述する巻取り工程、及び、トリミング工程の後に行われることがより好ましい。
剥離層形成工程によりポリエステル基材の一方の表面に形成される剥離層については、上記剥離層の項目において説明した層と同義である。
まず、剥離層形成用組成物について説明する。
剥離層形成用組成物は、剥離剤、及び、必要に応じて添加される添加剤、並びに、溶剤を混合することにより調製できる。
溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、及び、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
剥離層形成用組成物は、1種単独の溶剤を含んでいてもよく、2種以上の溶剤を含んでいてもよい。
溶剤の含有量は、剥離層形成用組成物の全質量に対して、80~99.5質量%が好ましく、90~99質量%がより好ましい。
即ち、剥離層形成用組成物において、溶剤以外の成分(固形分)の合計含有量は、剥離層形成用組成物の全質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
剥離層形成用組成物に含まれる剥離剤、及び、必要に応じて添加される添加剤については、それらの好ましい態様も含めて、上記剥離層の項目において説明した通りである。
なお、剥離層形成用組成物は、上記の樹脂及び溶剤を含み、必要に応じて、上記の添加剤及び/又は樹脂の硬化に使用される上記の触媒を含んでいてもよい。
また、剥離層形成用組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は特に制限されず、公知のものを用いることができる。
また、剥離層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤が挙げられ、公知のものを用いることができる。
剥離層形成用組成物における溶剤以外の各成分については、剥離層形成用組成物の固形分の全質量に対する各成分の含有量が、上記の剥離層の全質量に対する各成分の好ましい含有量と同じになるように、剥離層形成用組成物における各成分の含有量を調整することが好ましい。
剥離層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法を利用できる。塗布方法の具体例は、粒子含有層形成工程で述べたとおりである。
剥離層の形成における加熱温度は、180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、60℃以上であってよい。
また、ポリエステル基材と剥離層との密着性を向上させるために、剥離層を設ける前に、ポリエステル基材の表面に対して、アンカーコート、コロナ処理、及び、プラズマ処理等の前処理を施してもよい。
なお、剥離層の押し込み弾性率は、剥離剤の種類、及び、添加剤の種類、並びにそれらの配合比等によって調整できる。
剥離層の押し込み弾性率を上記範囲とする方法として、具体的には、多官能架橋剤の使用(例えば、3官能以上のイソシアネート化合物、エポキシ化合物、及び、アクリルアクリレート化合物、メラミン化合物、アルコキシシラン化合物等の使用)、ガラス転移温度が高い樹脂、架橋剤の使用(例えば、低分子架橋剤の使用、及び、ガラス転移温度が高い架橋剤の使用)、及び、フィラーの添加(例えば、コロイダルシリカ等の添加)が挙げられる。上記低分子架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、及び、メラミン化合物等が挙げられ、ガラス転移温度が高い架橋剤としては、例えば、オキサゾリン系化合物(エポクロスWS-700(日本触媒(株)製)等)が挙げられる。
[熱固定工程]
上記剥離フィルムの製造方法は、延伸工程の後に、延伸工程で得られたポリエステルフィルムに対する加熱処理として、熱固定工程を有していてもよい。
熱固定工程においては、延伸工程により得られたポリエステルフィルムを加熱して、熱固定することができる。熱固定によってポリエステル樹脂を結晶化させることにより、ポリエステル基材の収縮を抑えることができる。
熱固定工程におけるポリエステルフィルムの表面温度(熱固定温度)は、特に制限されないが、240℃未満が好ましく、235℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、190℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、210℃以上が更に好ましい。
熱固定工程における加熱時間は、5~50秒間が好ましく、5~30秒間がより好ましく、5~10秒間が更に好ましい。
[熱緩和工程]
上記剥離フィルムの製造方法は、熱固定工程の後に、熱緩和工程を有していてもよい。
熱緩和工程においては、熱固定工程により熱固定されたポリエステルフィルムを、熱固定工程よりも低い温度で加熱することで熱緩和することが好ましい。熱緩和によってポリエステルフィルムの残留歪みを緩和できる。
熱緩和工程におけるポリエステルフィルムの表面温度(熱緩和温度)は、熱固定温度より、5℃以上低い温度が好ましく、15℃以上低い温度がより好ましく、25℃以上低い温度が更に好ましく、30℃以上低い温度が特に好ましい。即ち、熱緩和温度は、235℃以下が好ましく、225℃以下がより好ましく、210℃以下が更に好ましく、200℃以下が特に好ましい。
熱緩和温度の下限は、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。
[冷却工程]
上記剥離フィルムの製造方法は、熱緩和されたポリエステルフィルムを冷却する冷却工程を有していてもよい。
上記製造方法において、冷却工程におけるポリエステルフィルムの冷却速度は、2000℃/分超4000℃/分未満が好ましく、2000~3500℃/分がより好ましく、2200℃/分超3000℃/分未満が更に好ましく、2300~2800℃/分が特に好ましい。熱収縮を小さくして寸法安定性を付与するには、冷却工程におけるポリエステルフィルムの冷却速度は、500℃/分超4000℃/分未満が好ましく、700~3000℃/分が更によりより好ましく、1000~2500℃/分が特に好ましい。上記範囲であることで、剥離フィルムの剥離層の表面に生じるスジ状のシワを抑制し易くなり、厚みムラが抑制されたセラミックグリーンシートを製造することができる。
上記冷却工程において、熱緩和されたポリエステルフィルムを幅方向に拡張する工程(拡張工程)を有することも好ましい。
拡張工程によるポリエステルフィルムの幅方向の拡張率、即ち、冷却工程の開始前におけるポリエステルフィルム幅に対する冷却工程の終了時におけるポリエステルフィルム幅の比率は、0%以上が好ましく、0.001%以上がより好ましく、0.01%以上が更に好ましい。
拡張率の上限は特に制限されないが、1.3%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。
なお、上記の剥離フィルムの製造方法としては、粒子含有層形成工程において、粒子含有層形成用組成物を塗布して粒子含有層を形成する方法を述べたが、粒子含有層形成方法は上記態様に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、共押出成形により、粒子含有層が積層された未延伸のポリエステル基材を形成する方法が挙げられる。
[巻き取り工程]
上記製造方法は、上記の工程を経て得られたポリエステルフィルムを巻き取ることにより、ロール状のポリエステルフィルムを得る巻き取り工程を有していてもよい。
[トリミング工程]
上記製造方法は、上記巻き取り工程を実施する前に、ポリエステルフィルムを搬送方向に沿って連続的に切断して、ポリエステルフィルムの幅方向の少なくとも一方の端部を切り取るトリミング工程を更に有してもよい。
[その他の条件]
本製造方法の縦延伸工程以外の各工程におけるポリエステルフィルムの搬送速度は、特に制限されないが、横延伸工程、熱固定工程、熱緩和工程、及び、冷却工程において、生産性及び品質の点で、50~200m/分が好ましく、80~150m/分がより好ましい。
上記で具体的に説明した剥離フィルムの製造方法において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
<用途>
本発明の剥離フィルムは、剥離フィルム上に形成したセラミックグリーンシートの欠陥を抑制できることから、セラミックグリーンシート製造用(好ましくは、薄層セラミックグリーンシート製造用)の剥離フィルム(キャリアフィルム)として用いることが好ましい。上記の剥離フィルムを用いて製造されるセラミックグリーンシートは、小型化及び大容量化に伴って内部電極の多層化が求められているセラミックコンデンサー用、及び、積層インダクタ用に好適に用いることができる。
上記剥離フィルムを使用してセラミックグリーンシートを製造する方法は、特に制限されず、公知の方法で実施できる。セラミックグリーンシートの製造方法としては、例えば、準備したセラミックスラリーを、上記剥離フィルムの剥離層表面に塗布し、セラミックスラリーに含まれる溶媒を乾燥除去する方法が挙げられる。
セラミックスラリーの塗布方法は、特に制限されず、例えば、セラミック粉体及びバインダー剤を溶媒に分散させてなるセラミックスラリーを、リバースロール法により塗布し、加熱乾燥により溶媒を除去する方法等の公知の方法が適用できる。バインダー剤としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラールが挙げられる。また、溶媒としても特に限定されず、例えば、エタノール及びトルエンが挙げられる。
また、本発明の剥離フィルムは、ドライフィルムレジストの保護フィルム、加飾層及び樹脂シート等のシート成形用フィルム、半導体製造工程用等のプロセス製造用の剥離フィルム、偏光板製造工程用の剥離フィルム、並びに、ラベル用、医療用及び事務用品用等の粘着フィルムのセパレーターとしても用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
まず、各実施例及び比較例に用いた剥離フィルムの作製方法について説明する。
<実施例1>
[押出成形工程]
重合触媒として特許第5575671号公報に記載のチタン化合物(クエン酸キレートチタン錯体、VERTEC AC-420、ジョンソン・マッセイ社製)を用いて、ポリエチレンテレフタレートのペレットを製造した。得られたペレットを、含水率が50ppm以下になるまで乾燥させた後、直径30mmの1軸混練押出し機のホッパーに投入し、次いで、280℃で溶融して押出した。溶融体(メルト)を、濾過器(孔径3μm)に通した後、ダイから25℃の冷却ドラムに押し出すことにより、ポリエチレンテレフタレートからなる未延伸のポリエステル基材を得た。なお、押し出された溶融体(メルト)は、静電印加法により冷却ドラムに密着させた。
未延伸のポリエステル基材を構成するポリエチレンテレフタレートの融点(Tm)は258℃であり、ガラス転移温度(Tg)は80℃であった。
[縦延伸工程]
上記未延伸のポリエステル基材に対し、以下の方法により縦延伸工程を施した。
予熱された未延伸のポリエステル基材を、下記の条件にて、周速の異なる2対のロールの間に通過させて縦方向(搬送方向)に延伸することにより、1軸配向ポリエステル基材を作製した。
(縦延伸条件)
予熱温度:75℃
延伸温度:90℃
延伸倍率:3.4倍
延伸速度:1300%/秒
[粒子含有層形成工程]
縦延伸された1軸配向ポリエステル基材の片面に、下記の組成物A1(粒子含有層形成用組成物)をバーコーターで塗布し、形成された塗布膜を100℃の熱風にて乾燥させて、粒子含有層を形成した。すなわち、組成物A1を1軸配向ポリエステル基材にインラインコーティングした。このとき、横延伸後の状態で成膜された粒子含有層、及び、剥離層の厚みが100nmとなるように、組成物A1の塗布量を調整した。
(組成物A1)
下記に示す各成分を混合することにより、組成物A1を調製した。調製された組成物A1に対して、孔径が6μmであるフィルター(F20、株式会社マーレフィルターシステムズ製)を用いたろ過処理、及び、膜脱気(2x6ラジアルフロースーパーフォビック、ポリポア株式会社製)を実施し、組成物A1を得た。
・アクリル樹脂1(メタクリル酸メチル、スチレン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びアクリル酸を質量比59:8:26:5:2で重合させてなる共重合体の水分散液、固形分濃度25質量%、酸価16mgKOH/g) 167質量部
・架橋剤1(カルボジイミド化合物、カルボジライトV-02-L2、日清紡ケミカル(株)製、固形分濃度10質量%希釈) 16.8質量部
・W-1:ノニオン性界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分100質量%) 0.7質量部
・W-2:アニオン性炭化水素系界面活性剤(ラピゾール(登録商標)A-90、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、日油株式会社製、固形分濃度1質量%水希釈液) 56質量部
・粒子1(スノーテックス(登録商標)MP-2040、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径200nm、固形分濃度40質量%水分散液) 11質量部
・水 776質量部
[横延伸工程]
縦延伸工程、及び、粒子含有層形成工程を行ったポリエステル基材に対し、テンターを用いて下記の条件にて幅方向に延伸し、2軸配向ポリエステル基材を作製した。
(横延伸条件)
予熱温度:100℃
延伸温度:120℃
延伸倍率:4.2倍
延伸速度:50%/秒
[熱固定工程]
上記横延伸工程を施して得られたポリエステルフィルムに対して、テンターを用いて下記条件で加熱することにより、ポリエステルフィルムを熱固定する熱固定工程を行った。
(熱固定条件)
熱固定温度:227℃
熱固定時間:6秒間
[熱緩和工程]
次いで、熱固定されたポリエステルフィルムに対して、下記条件で加熱することにより、ポリエステルフィルムの緊張を緩和する熱緩和工程を行った。また、熱緩和工程において、ポリエステルフィルムの両端を把持するテンターの把持部材間の距離(テンター幅)を狭めることにより、熱固定工程終了時と比較してフィルム幅を縮小した。下記の熱緩和率Lrは、熱緩和工程の開始時におけるフィルム幅L1に対する熱緩和工程の終了時におけるフィルム幅L2から、Lr=(L1-L2)/L1×100の式により求めた。
(熱緩和条件)
熱緩和温度:190℃
熱緩和率Lr:4%
[冷却工程]
熱緩和されたポリエステルフィルムに対して、下記条件で冷却する冷却工程を行った。
下記の冷却速度は、ポリエステルフィルムが延伸機の冷却部に搬入されてから搬出されるまでの滞在時間を冷却時間taとして、冷却部への搬入時に測定したフィルム表面温度と冷却部からの搬出時に測定したフィルム表面温度との温度差ΔT(℃)を、冷却時間taで割ることにより求めた。
(冷却条件)
冷却速度:2500℃/分
[巻き取り工程]
冷却工程により冷却されたポリエステルフィルムに対して、トリミング装置を用いて、フィルムの幅方向の両端から20cmの位置で搬送方向に沿って連続的にポリエステルフィルムを切断して、フィルムの両端部をトリミングした。次いで、ポリエステルフィルムの両端から幅方向10mmまでの領域に対して、押出し加工(ナーリング)を行った後、張力40kg/mでポリエステルフィルムを巻き取った。
以上の方法により、2軸延伸フィルムを作製した。得られた2軸延伸フィルムの厚みは31μmであり、幅は1.5mであり、巻長は7000mであった。
[剥離層形成工程]
得られた2軸延伸フィルムを搬送速度30m/分で巻きだし、2軸延伸フィルムの粒子含有層とは反対側の面(粒子含有層がない方の面)に、下記の組成物B1をバーコーターで塗布し、90℃で乾燥させ、組成物B1の塗布層を得た。組成物B1の塗布量は、得られた剥離層の厚さが500nmとなるように調整した。その後、70mJ/cmの紫外線を照射して組成物B1の塗布層を硬化し、剥離層を形成した。得られた剥離層付2軸延伸フィルムを張力40kg/mで巻き取り、剥離フィルムを得た。
(組成物B1)
下記に示す各成分を混合することにより、組成物B1を調製した。調製された組成物B1に対して、孔径が6μmであるフィルター(F20、株式会社マーレフィルターシステムズ製)を用いたろ過処理、及び、膜脱気(2x6ラジアルフロースーパーフォビック、ポリポア株式会社製)を実施し、組成物B1を得た。
・シリコーン樹脂(GL-04R、共栄社化学(株)製、固形分濃度20質量%) 2質量部
・重合性化合物(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、A-DPH、新中村化学工業(株)製、固形分100質量%) 38質量部
・光重合開始剤(Omnirad127、IGM Resins B.V社製、固形分100質量%) 1.6質量部
・イソプロピルアルコール 74質量部
・メチルエチルケトン 18質量部
<実施例2>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて下記の組成物A2を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A2の塗布量を調整したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って、剥離フィルムを作製した。
(組成物A2)
組成物A1におけるアクリル樹脂1を以下のオレフィン樹脂に変更した以外は、組成物A1と同様にして組成物A2を調製した。
・オレフィン樹脂(ザイクセンNC、住友精化(株)製)
<実施例3>
粒子含有層形成工程において、組成物A1における架橋剤1の含有量を50.4質量部に変更した組成物A3を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A3の塗布量を調整したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って、剥離フィルムを作製した。
<実施例4>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて下記の組成物A4を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A4の塗布量を調整したこと以外は、実施例1に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物A4)
下記に示す各成分を混合し、組成物A1と同様にして組成物A4を調製した。
・上記アクリル樹脂1 167質量部
・上記架橋剤1 50.4質量部
・上記ノニオン性界面活性剤(W-1) 0.7質量部
・上記アニオン性炭化水素系界面活性剤(W-2) 56質量部
・粒子2(スノーテックス(登録商標)XL、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径50nm、固形分濃度40質量%水分散液) 2.2質量部
・粒子3(スノーテックス(登録商標)MP-4540M、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径450nm、固形分濃度40質量%水分散液) 0.6質量部
・水 776質量部
<実施例5>
粒子含有層形成工程において、組成物A3における架橋剤1の含有量を79.8質量部に変更した組成物A5を用いた以外は、実施例3に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例6>
剥離層形成工程において、組成物B1に代えて下記組成物B2を用い、90℃で乾燥して塗布層を得た後、形成された塗布膜を120℃、1分にて熱硬化して剥離層を形成した以外は、実施例1に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物B2)
下記に示す各成分を混合し、組成物B1と同様にして組成物B2を調製した。
・ポリエステル変性シリコーン樹脂(BYK-370、ビックケミー・ジャパン(株)製、固形分濃度25質量%) 4質量部
・熱重合性化合物(ヘキサメトキシメラミン、東京化成工業(株)製、固形分100質量%) 36質量部
・酸触媒(p-トルエンスルホン酸、富士フイルム和光純薬(株)製、固形分100質量%) 2質量部
・イソプロピルアルコール 74質量部
・イソブチルアルコール 18質量部
<実施例7>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて上記組成物A4を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A4の塗布量を調整したこと以外は、実施例6に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例8>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて上記組成物A5を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A5の塗布量を調整したこと以外は、実施例6に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例9>
剥離層形成工程において、組成物B1に代えて下記組成物B3を用いた以外は、実施例1に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物B3)
下記に示す各成分を混合し、組成物B1と同様にして組成物B3を調製した。
・シリコーン樹脂(UV POLY215、荒川化学工業(株)製、固形分100質量%) 3.2質量部
・重合性化合物(エポキシ化合物、セロキサイド2021P、(株)ダイセル製、固形分100質量%) 28質量部
・光重合開始剤(UV CATA211、荒川化学工業(株)製、固形分100質量%) 8.3質量部
・イソプロピルアルコール 74質量部
・イソブチルアルコール 18質量部
<実施例10>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて上記組成物A4を用いた以外は、実施例9に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例11>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて上記組成物A5を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A5の塗布量を調整したこと以外は、実施例9に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例12>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて下記組成物A12を用い、粒子含有層の厚みを50nmとなるように組成物A12の塗布量を調整したこと以外は、実施例9に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物A12)
組成物A4における架橋剤1を以下の架橋剤2に変更し、添加量を45.9質量部に変更した以外は、組成物A4と同様にして組成物A12を調製した。
・架橋剤2(エポクロス(登録商標)WS-700、(株)日本触媒製、固形分濃度39質量%希釈)
<実施例13>
粒子含有層形成工程において、組成物A12に代えて、組成物A12における粒子を粒子1に変更した組成物A13を用いた以外は、実施例12に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
<実施例14>
粒子含有層形成工程において、組成物A13に代えて下記組成物A14を用いた以外は、実施例13に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物A14)
組成物A13における粒子1を以下の粒子4に変更した以外は、組成物A13と同様にして組成物A14を調製した。
・粒子4(MP-1000、綜研化学(株)製、非架橋アクリル樹脂粒子、平均粒子径400nm)
<実施例15~20>
粒子含有層形成工程において、粒子含有層形成組成物を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルムを作製した。なお、表中、界面活性剤W-1~W-5は、後述のとおりである。
なお、組成物A15は、使用する界面活性剤を界面活性剤W-2のみに変更した以外は組成物A12と同様である。
組成物A16は、界面活性剤W-1を使用しなかった以外は組成物A2と同様である。
組成物A17は、界面活性剤W-2の使用量を2倍に変更した以外は組成物A16と同様である。
組成物A18は、界面活性剤W-2を界面活性剤W-3に変更した以外は組成物A16と同様である。
組成物A19は、界面活性剤W-2を界面活性剤W-4に変更した以外は組成物A16と同様である。
組成物A20は、組成物A16に対して、界面活性剤W-5(固形分1質量%水希液に希釈)5質量部を更に添加した。
<比較例1>
粒子含有層形成工程において、組成物A1に代えて下記組成物AC1を用いた以外は、実施例12に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物AC1)
・アクリル樹脂2(アクリル樹脂2:メタクリル酸メチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸を質量比28:48:24で重合させてなる共重合体をトリエチルアミンで中和した水分散液、固形分濃度20質量%) 165.7質量部
・架橋剤2(エポクロス(登録商標)WS-700、(株)日本触媒製、固形分濃度25質量%に希釈) 56.8質量部
・フッ素系界面活性剤(サーフロンS-211、AGCセイミケミカル株式会社製、固形分濃度1質量%水希釈液) 56質量部
・上記粒子2 2.2質量部
・上記粒子3 0.6質量部
・水 776質量部
<比較例2>
剥離層形成工程において、組成物B2に代えて下記組成物BC1を用い、粒子含有層形成工程において、組成物A5に代えて組成物AC2を用いた以外は、実施例8に記載の方法に従って剥離フィルムを作製した。
(組成物BC1)
下記に示す各成分を混合し、組成物B1と同様にして組成物BC1を調製した。
・シリコーン樹脂(CF-2152、東レダウコーニング(株)製、固形分100質量%) 8質量部
・白金触媒(SRX-212、東レダウコーニング(株)製、固形分100質量%) 0.16質量部
・トルエン 99質量部
・メチルエチルケトン 230質量部
(組成物AC2)
・上記アクリル樹脂1 167質量部
・上記架橋剤1 50.4質量部
・フッ素系界面活性剤(サーフロンS-211、AGCセイミケミカル株式会社製、固形分濃度1質量%水希釈液) 56質量部
・上記粒子1 11質量部
・水 776質量部
<評価>
各実施例及び比較例における評価方法について説明する。
[欠陥評価]
各実施例及び比較例の剥離フィルムにおいて離型層側の表面に、下記セラミックスラリーを幅250mm、長さ10mにわたってダイコーターで塗布した。塗布量は、乾燥後の膜厚が0.5μmになるように調整した。その後、乾燥機により90℃で1分間乾燥し、セラミックグリーンシート付き剥離フィルムを得た。
上記の方法で作製されたセラミックグリーンシート付き剥離フィルムを、長さ250mmにカットし、セラミックグリーンシートの表面と粒子含有層の表面とが接するように重ね合わせ、1kg/cmの荷重を10分間かけた。その後、セラミックグリーンシート付き剥離フィルムから剥離フィルムを剥離して、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートの表面において3波長蛍光灯の光を反射させて、得られたすべてのセラミックグリーンシートの面を目視で2m検査し、以下の判断基準により欠陥数を評価した。
(セラミックスラリー)
セラミックスラリーは、下記に示す各成分を混合し、ジルコニアビーズを加えてボールミルで分散したあと、ビーズを除去して得た。
・チタン酸バリウム粉末(BaTiO;堺化学工業社製、製品名「BT-03」) 100質量部
・ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、製品名「エスレックB・K BM-2」) 8質量部
・フタル酸ジオクチル(関東化学社製、フタル酸ジオクチル) 4質量部
・トルエン及びエタノールの混合液(質量比6:4) 135質量部
(評価基準)
A:セラミックグリーンシートに欠陥がなかった。
B:セラミックグリーンシートに1~5個の欠陥が発生した。
C:セラミックグリーンシートに6個以上の欠陥が発生した。
[剥離性評価]
セラミックグリーンシート(乾燥後のスラリー塗布膜)の厚みが3μmとなるように調整した以外は、欠陥評価と同様にしてセラミックグリーンシート付き剥離フィルムを得た。セラミックグリーンシート付き剥離フィルムにおけるセラミックグリーンシートの表面に、ポリエステル粘着テープNo31B(日東電工(株)製)を貼り付けた。その状態で、室温にて24時間静置した後、セラミックグリーンシート付き剥離フィルムを20mm幅に裁断し、サンプルを作製した。サンプルの粘着テープ側をガラス板上に固定し、(株)エーアンドディー製テンシロン万能試験機を用いて、剥離角度180°、100mm/分の剥離速度の条件で、セラミックグリーンシートから剥離フィルムを剥離し、剥離するのに必要な力を測定した。
剥離性は以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
A:セラミックグリーンシートから剥離する際に、45mN以下の力で剥離可能
B:セラミックグリーンシートから剥離する際に、45mN超の力が必要
[剥離層の塗布性]
各実施例及び比較例で得られた剥離フィルムを長手方向に30mの長さで切り出した。3波長蛍光灯の下、得られたサンプルの剥離層側の表面を反射光により観察し、以下の基準に従って、剥離層の塗布性を評価した。
(評価基準)
A:異物による欠陥が観察されなかった。
B:異物による欠陥が観察された。
[剥離層の押し込み弾性率の測定]
各実施例及び各比較例で得られた剥離フィルムを、10mm×10mmサイズに裁断した。次いで、裁断した剥離フィルムの粒子含有層側の面と、ガラス板とをエポキシ接着剤で貼合して固定し、試験体を得た。
微小硬度評価装置(Burker製、ナノトライボインデンターTI-950)を用い、試験体の表面(剥離フィルムの剥離層側の表面)の押し込み弾性率を測定した。詳細な測定条件は以下の通りとした。
圧子:三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子、圧子の内角:142.35°、中心線と面のなす角:65.35°)
圧子の最大押し込み深さ:50nm
測定温度:23℃
[粒子含有層の押し込み弾性率の測定]
各実施例及び各比較例で得られた剥離フィルムを、10mm×10mmサイズに裁断した。次いで、裁断した剥離フィルムの剥離層側の面と、ガラス板とをエポキシ接着剤で貼合して固定し、試験体を得た。
試験体の粒子含有層における凸部以外の領域について、AFM(Burker製、DimensionIcon)のピークフォースタッピングモードで測定を行い、フォースカーブを得て、押し込み弾性率を求めた。具体的な手順を以下に示す。
まず、予備測定を実施し、カンチレバー及び探針の校正を実施した。
カンチレバーの反り感度は、石英基板のフォースカーブを測定し、そのカーブの傾きから算出した。カンチレバーの反り感度は、75.57nm/Vであった。
バネ定数は、プローブの熱ゆらぎを測定して算出した。具体的には、Bruker社製AFMのソフトウェアに含まれるThermal Tune法を用いて算出した。バネ定数は、12.88N/mであった。
探針の先端曲率は、先端曲率校正用サンプル(RM-12M:Ti Roughness Sample)の形状を測定し、Bruker社製AFMのソフトウェアに付属の画像解析モード(Tip Qualification)を用いて算出した。探針の先端曲率は、10.4nmであった。
次に、走査領域を3μm×3μm、最大押し込み荷重25nNとして、試験体の表面形状を取得した。得られた表面形状を参照して、凸部以外の領域(樹脂層領域)の1点について、最大押し込み荷重を180nNとし、フォースカーブを得た。戻りのフォースカーブの傾き(最大荷重の20~90%の領域)から、Hertz接触理論を用いて弾性率を求めた。樹脂層領域における弾性率を、同一走査領域内で5点となるまで測定した。その後、走査領域を変更し、同様の手順で弾性率を得た。1つの試験体につき、5か所の走査領域で測定を行い、計25回の弾性率の測定で得られた値の算術平均をとり、粒子含有層の押し込み弾性率とした。
測定条件の詳細を以下に示す。
カンチレバー :ブルカー社製RTESPA-300
(メーカーカタログ値:材質:Si、バネ定数K:40(N/m)、共振周波数f:300(kHz)、先端曲率R:8(nm))
測定雰囲気 : 23℃、大気中
分解能 : 256×256
Scan Rate: 1.5Hz
<結果>
以下、評価結果について表1に記載する。
表1中、「最大突起高さSp」、及び、「面平均粗さSa」の定義は上述の通りであり、測定方法も上述の通りで、光学干渉計(株式会社日立ハイテク製「Vertscan 3300G Lite」)を用いて測定した。
表1中、「表面自由エネルギー」は上述の通りであり、測定方法も上述の通りで、接触角計(協和界面化学社製「DROPMASTER-501」)を用いて、25℃の条件にて、剥離面に精製水、ヨウ化メチレン及びエチレングリコールの液滴を滴下した結果から求めた。
表1中、「厚み」の測定方法は、上述の通りであり、剥離フィルムの断面をミクロトームで断面を出した後、Arイオンでエッチング処理を行い、Ptを蒸着してSEM(S-4800、日立ハイテク製)で観察して測定した。
表1中、「架橋剤/樹脂」の欄は、樹脂の溶媒を除いた固形分に対する、架橋剤の重量(質量%)を表す。
表1中、「剥離帯電量」の定義は上述の通りであり、測定方法も上述の通りで、剥離層を塗布する前のポリエステルフィルム(粒子含有層付きポリエステル基材)について測定した。
表1中、「樹脂」欄、「界面活性剤」欄、「添加剤」欄、及び、「粒子」欄に記載した材料は、それぞれ下記の成分を使用したことを示す。
(樹脂)
アクリル樹脂1:メタクリル酸メチル、スチレン、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びアクリル酸を質量比59:8:26:5:2で重合させてなる共重合体、水分散体
アクリル樹脂2:メタクリル酸メチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びメタクリル酸を質量比28:48:24で重合させてなる共重合体をトリエチルアミンで中和した水分散体
オレフィン樹脂:ザイクセン NC(住友精化(株)製、酸変性ポリオレフィン、水分散体)
(添加剤)
架橋剤1:カルボジイミド化合物、カルボジライトV-02-L2、日清紡ケミカル(株)製
架橋剤2:エポクロス(登録商標)WS-700、(株)日本触媒製、Tg50℃
(粒子)
粒子1: スノーテックス(登録商標)MP-2040、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径200nm
粒子2: スノーテックス(登録商標)XL、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径50nm
粒子3:スノーテックス(登録商標)MP-4540M、日産化学(株)製、コロイダルシリカ、平均粒子径450nm
粒子4:MP-1000、綜研化学(株)製、非架橋アクリル樹脂粒子、平均粒子径400nm
(界面活性剤)
W-1:ノニオン性炭化水素系界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製)
W-2:アニオン性炭化水素系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油株式会社製)
W-3:フッ素系界面活性剤(サーフロンS-211、AGCセイミケミカル株式会社製、炭素数6以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を含む構造)
W-4:シリコーン系界面活性剤(BYK-346、BYK社製)
W-5:フッ素系界面活性剤(フタージェント215M、(株)ネオス製、パーフルオロイソプロピル基を含み、炭素数6以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を含まない構造)
Figure 2023012427000001
Figure 2023012427000002
表1の結果より、本発明の剥離フィルムは、セラミックグリーンシート製造時におけるセラミックグリーンシートの欠陥を抑制でき、セラミックグリーンシートの剥離性に優れることが確認された。
実施例12と実施例1~11及び13との対比から、粒子含有層が無機粒子を含み、粒子含有層の表面の最大突起高さが300nm以下である場合、セラミックグリーンシートの欠陥がより抑制されることが確認された。
実施例12と実施例14との対比から、粒子含有層が有機粒子を含む場合、セラミックグリーンシートの欠陥がより抑制されることが確認された。
実施例18および19と、その他の実施例の対比から、粒子含有層が、炭化水素系界面活性剤、及び、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む場合、剥離層の塗布性が良好となることが確認された。
また、冷却工程の冷却速度が1500℃/分となるようにした以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを得て、実施例1と同様の評価を行ったところ、実施例1と同様の評価結果となった。
1:剥離フィルム
2:剥離層
4:ポリエステル基材
6:粒子含有層

Claims (9)

  1. 剥離層と、粒子を実質的に含有しないポリエステル基材と、粒子含有層とをこの順に有するセラミックグリーンシート製造用の剥離フィルムであって、
    前記剥離層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が3.0GPa以上であり、
    前記粒子含有層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面が凸部を有し、
    前記粒子含有層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面の前記凸部以外の領域において、原子間力顕微鏡により測定される押し込み弾性率が8.0GPa以下である、剥離フィルム。
  2. 前記剥離層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面において、ナノインデンテーション法により測定される押し込み弾性率が6.0GPa以下である、請求項1に記載の剥離フィルム。
  3. 前記粒子含有層が、無機粒子を含み、前記粒子含有層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面の最大突起高さが300nm以下である、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  4. 前記粒子含有層が、有機粒子を含む、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  5. 前記剥離層の前記ポリエステル基材とは反対側の表面の表面自由エネルギーが10~35mJ/cmである、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  6. 前記剥離層がシリコーン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  7. 前記剥離フィルムの厚みが、40μm以下である、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  8. 前記粒子含有層の厚みが、1~500nmである、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
  9. 前記粒子含有層が、炭化水素系界面活性剤、及び、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つの界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の剥離フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024181063A1 (ja) * 2023-02-28 2024-09-06 富士フイルム株式会社 剥離フィルム、電池の製造方法

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