JP2023011360A - 溶融金属用ポンプ、金属板のめっき装置、およびめっき金属板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ケーシングのインペラに対向する内面にセラミックス製ライナーを配置した溶融金属用ポンプにおいて、ケーシングとライナー間に溶融金属の侵入を防止し、ポンプ自体の寿命を長くすることを課題とし、そのような溶融金属用ポンプを供給することを目的とする。【解決方法】ケーシングと、インペラに対応するケーシングの内面(インペラ対向面)に配置したライナーとの間に不定形耐火物を配置する。さらには、不定形耐火物を2層以上の複層構造にし、熱膨張係数をケーシング側からライナー側に向かって順に小さくなるよう配置するか、嵩密度をケーシング側からライナー側に向かって一様に変化するよう配置する。【選択図】図1
Description
本発明は、溶融金属の移送に用いる溶融金属用ポンプ、当該ポンプを有する金属板のめっき装置、および当該めっき装置によるめっき金属板の製造方法に関する。
亜鉛めっき鋼板やアルミめっき鋼板などめっきを施した金属板(めっき金属板)を製造する際に、鋼板などの金属板をめっき金属の溶融金属浴(めっき浴)中を通過させ、金属板表面にめっき金属層を形成する方法がある。特に自動車用鋼板などの亜鉛めっき鋼板やアルミめっき鋼板では、高効率生産できることから、このような溶融金属浴(めっき浴)中に連続的に鋼板を通過させる方法が適用されている。このような連続生産に供する装置を連続めっき装置という。
連続めっき装置においては、通常スナウトを介してめっき浴中に鋼板が浸入する。スナウトは雰囲気制御されたダクト構造になっており、その一方の端部はめっき浴中に浸漬されており、スナウトの内部を鋼板が通過しめっき浴に侵入する。そのため、スナウト内のめっき浴面にはスカムやドロスなどの浮遊異物が蓄積し易い。これら異物は、めっき浴中の金属成分と通過する鋼板成分とが反応し形成したものである。これらの異物が浴面に浮遊すると、通過する鋼板にひきずられ、これら異物がめっき層中に巻き込まれ、めっき品質の劣化につながる。そのため、スナウト内の浴面の浮遊異物を、溶融金属用ポンプを用いてプッシュプル方式でスナウト外に排出している(例えば特許文献1)。
めっき浴に適用される溶融金属用ポンプ(浴中ポンプ)は、一般的にケーシング、インペラ、シャフト、枝管などの部品で構成される(例えば図1)。ケーシング、枝管は溶融金属の温度に耐えられる耐熱鋳鋼で構成されるが、溶融金属の流速が速い部分では溶融金属(特にアルミニウム)による浸食や異種金属接触による腐食(以下、本明細書において浸食と腐食を合せて浸食という。)が問題になるため、インペラやシャフトはセラミックで構成される場合が多い。
インペラ周辺部は溶融金属の流れが速くなり、特にインペラに対向するケーシング内面(インペラ対向面)も溶融金属の速い流れに晒される。ケーシングは耐熱鋳鋼製とはいえ、この溶融金属の流れにより浸食され、最悪の場合破損するおそれがある。このインペラ対向面の浸食は激しく、浴中ポンプの寿命を極端に短くしていた。即ち、インペラ対向面の浸食が浴中ポンプの寿命律速になっており、めっき装置全体の修繕計画にも影響している。
インペラ対向面の浸食対策として、例えば図4(a)に示すように耐摩耗性金属の溶射皮膜13を形成する方法が提案されている。しかし、耐摩耗性金属を溶射しても溶射皮膜の貫通気孔により溶融金属の侵入を完全に防ぐことができず、溶射した金属が部分的に剥離してしまうため、その浸食抑制効果は限定的である。
また、インペラだけでなくケーシングもセラミックス化することも考えられる。しかし、セラミックスは摩耗には強いものの衝撃に弱いため、ケーシングまでもセラミックス化するとハンドリング性が悪く、設置時などの取扱いにおいて破損するおそれがある。さらに、価格も著しく高くなるため実用的ではない。
特許文献2では、溶融金属により浸食され易いインペラ対向面にセラミックス製のライナー(特許文献2ではカセットと称している。)を配置したケーシングが提案されている(図4(b))。このセラミックス製ライナーを配置することは、ケーシングの浸食に対して一定の効果がある。しかし、ケーシングを構成する耐熱鋳鋼などの金属材料とセラミックスとの熱膨張係数の差が大きく、常温下でライナーをケーシングにはめ込んだとしても、稼働時は溶融金属浴の温度が高く熱膨張差によりライナーとケーシング間に間隙が生じる。この間隙に溶融金属が浸入しケーシングの金属材料を侵食していることが分かった。さらに、セラミックス製ライナーとケーシングの間隙が大きくなると、場合によってはライナーの振動を誘発し破損の原因ともなることが分かった。
そこで、本発明は、ケーシング内面のインペラに対向する面(インペラ対向面)にセラミックス製ライナーを配置した溶融金属用ポンプにおいて、ケーシングとライナー間に溶融金属の侵入を防止しポンプ自体の寿命を延ばすことを課題とし、そのような溶融金属用ポンプを供給することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討し、以下の知見を得た。
(a)
ケーシングと、ケーシングのインペラ対向面に配置したライナーとの間に不定形耐火物を配置することにより、高温下においてケーシングとライナーの熱膨張差で間隙が生じたとしても、不定形耐火物が間隙を埋め溶融金属の侵入を抑制することができることを見出した。
例えば、ケーシングが耐熱鋳鋼製であって、ライナーがセラミックス製であったとしても、それらの間に不定形耐火物を配置することにより、それらの間隙に溶融金属が浸入することを抑制することができる(間隙封止効果)。
(a)
ケーシングと、ケーシングのインペラ対向面に配置したライナーとの間に不定形耐火物を配置することにより、高温下においてケーシングとライナーの熱膨張差で間隙が生じたとしても、不定形耐火物が間隙を埋め溶融金属の侵入を抑制することができることを見出した。
例えば、ケーシングが耐熱鋳鋼製であって、ライナーがセラミックス製であったとしても、それらの間に不定形耐火物を配置することにより、それらの間隙に溶融金属が浸入することを抑制することができる(間隙封止効果)。
(b)
さらに、不定形耐火物を2層以上の複層構造にすることにより、間隙封止効果が高まることを見出した。
さらに、不定形耐火物を2層以上の複層構造にすることにより、間隙封止効果が高まることを見出した。
(c)
複層構造の場合、不定形耐火物の熱膨張係数を、ケーシング側の方が高くなるようにすることにより、より間隙封止効果を高めることができることを見出した。なお、熱膨張係数は、熱膨張率および線膨張率と同義として扱う。
複層構造の場合、不定形耐火物の熱膨張係数を、ケーシング側の方が高くなるようにすることにより、より間隙封止効果を高めることができることを見出した。なお、熱膨張係数は、熱膨張率および線膨張率と同義として扱う。
(d)
もしくは、複層構造の場合、不定形耐火物の嵩密度が異なるものにするとよく、好ましくはケーシング側から一様に変化するように配置することにより、ケーシングとライナーの熱膨張差により生じる熱応力を緩和し、間隙封止効果を高めることができることを見出した。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
もしくは、複層構造の場合、不定形耐火物の嵩密度が異なるものにするとよく、好ましくはケーシング側から一様に変化するように配置することにより、ケーシングとライナーの熱膨張差により生じる熱応力を緩和し、間隙封止効果を高めることができることを見出した。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]
少なくとも管状のケーシングと前記ケーシングの内部に配置されるインペラとを有する溶融金属用ポンプであって、
前記ケーシングの内面であって、インペラに対向する面の少なくとも一部にライナーが配置され、
前記ライナーと前記ケーシングの間に不定形耐火物が配置されたことを特徴とする溶融金属用ポンプ。
[2]
前記不定形耐火物は、前記ケーシングから前記ライナーに向けて2層以上の複層構造になっている、[1]に記載の溶融金属用ポンプ。
[3]
前記不定形耐火物の熱膨張係数が、前記ケーシングと前記ライナーの熱膨張係数の間の値であって、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に小さくなるよう配置されている、[1]または[2]に記載の溶融金属用ポンプ。
[4]
前記不定形耐火物の嵩密度が、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に一様に変化するよう配置されている、[2]に記載の溶融金属用ポンプ。
[5]
前記ケーシングが耐熱鋳鋼製であり、前記ライナーがセラミックス製である、[1]~[4]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[6]
前記ケーシングと前記不定形耐火物の間に離型剤を配置した、[1]~[5]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[7]
前記溶融金属のアルミニウム(Al)含有量が50質量%以上である、[1]~[6]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[8]
[1]~[6]に記載の溶融金属用ポンプを有することを特徴とする金属板のめっき装置。
[9]
[8]に記載のめっき装置を用いることを特徴とするめっき金属板の製造方法。
少なくとも管状のケーシングと前記ケーシングの内部に配置されるインペラとを有する溶融金属用ポンプであって、
前記ケーシングの内面であって、インペラに対向する面の少なくとも一部にライナーが配置され、
前記ライナーと前記ケーシングの間に不定形耐火物が配置されたことを特徴とする溶融金属用ポンプ。
[2]
前記不定形耐火物は、前記ケーシングから前記ライナーに向けて2層以上の複層構造になっている、[1]に記載の溶融金属用ポンプ。
[3]
前記不定形耐火物の熱膨張係数が、前記ケーシングと前記ライナーの熱膨張係数の間の値であって、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に小さくなるよう配置されている、[1]または[2]に記載の溶融金属用ポンプ。
[4]
前記不定形耐火物の嵩密度が、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に一様に変化するよう配置されている、[2]に記載の溶融金属用ポンプ。
[5]
前記ケーシングが耐熱鋳鋼製であり、前記ライナーがセラミックス製である、[1]~[4]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[6]
前記ケーシングと前記不定形耐火物の間に離型剤を配置した、[1]~[5]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[7]
前記溶融金属のアルミニウム(Al)含有量が50質量%以上である、[1]~[6]の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
[8]
[1]~[6]に記載の溶融金属用ポンプを有することを特徴とする金属板のめっき装置。
[9]
[8]に記載のめっき装置を用いることを特徴とするめっき金属板の製造方法。
本発明により、めっき金属板の製造に用いる溶融金属用ポンプの寿命を延ばすことができる。それにより溶融金属用ポンプのみならずめっき装置のメンテナンス周期を伸ばすことができ、生産性向上および補修費用の削減といった効果を奏する。
本発明に係る溶融金属用ポンプは、溶融した金属の移送に使用するものであり、金属の種類や、その用途は特に限定はしない。ここでは、主に溶融亜鉛めっき鋼板や溶融アルミめっき鋼板(以下、両者をまとめてめっき鋼板と呼ぶ。)の製造に用いる溶融金属用ポンプを例として説明する。
前述したようにめっき鋼板の製造においては溶融金属浴(めっき浴)中に連続的に鋼板を通過させる。この時、めっき浴表面(浴面)にあるスカムやドロスなどの浮遊異物、特にスナウト内の浮遊異物を除去するため、浴中に溶融金属用ポンプ(浴中ポンプまたは単にポンプと呼ぶ場合がある。)を配置し、プッシュプル方式で浴面に流れを形成して浮遊異物を除去するものである。
図1に、浴中ポンプの一例としてポンプ断面の概要図を示す。図1のポンプ1は、プッシュ側(浴面に溶融金属を押し出す側)のポンプの例である。図1のポンプは、管状のケーシング2と、その内部にあって、回転することにより溶融金属に流れを生じさせるインペラ3と、インペラに連結しケーシングの管軸に沿って配置されたシャフト4と、シャフトを回転させるためのモータ5(例えばエアーモータ)、さらに溶融金属を吐出するための枝管6を有している。図1の浴中ポンプは、インペラ3を回転させることにより、ケーシングの軸方向(図面上方)に溶融金属の流れを形成し、枝管6を通して浴面7に溶融金属を吐出する。いわゆる軸流ポンプである。インペラ3の回転により、主にはケーシングの軸方向(図面上方)に溶融金属は流れるが、同時にインペラ3の回転による遠心力も作用されるため、ケーシング内面方向への流れも発生する。このケーシング内面方向の流れによりケーシング2が浸食される。この浸食を防止するため、ケーシング内面であってインペラに対向する面(インペラ対向面)にライナー10を配置する。
インペラ対向面とは、インペラによる溶融金属の流れが衝突するケーシング内面の部分を指す。ライナー10の目的がケーシング内面の浸食を防止するものであるので、ケーシング2の内面で浸食が懸念される部分であると考えてもよい。例えば、図1のような軸流ポンプの場合、その断面で見た時に、ケーシング2の内面においてインペラ下端(溶融金属の吸入側端部)に相当する位置から、インペラ高さ(溶融金属の流れ方向(ケーシングの軸方向)でインペラ上端(溶融金属の吐出側端部)からインペラ下端までの距離)の1.2~3.0倍の長さに相当する部分を含むようにするとよい。ライナー10は、インペラ対向面の少なくとも一部に配置されていればよい。もちろん、インペラ対向面の全面に配置されていることが好ましいが、ポンプ構造により適宜選定することができる。
図1は軸流ポンプの例であるが、ポンプ形式(遠心ポンプ、斜流ポンプなど)は特に限定されない。軸流ポンプ以外のポンプ形式であっても、同様にインペラによる溶融金属の流れが衝突するケーシング内面の部分、またはケーシングの内面で浸食が懸念される部分がインペラ対向面と考えるとよい。
ポンプ材質は特に限定しないが、一般にケーシング2や枝管6などの非可動部は金属材料が、シャフト4やインペラ3などの可動部はセラミックスが使用される。溶融亜鉛めっきの場合は浴温度が460℃前後、溶融アルミめっきの場合は浴温度が680℃前後となり高温になるため、ケーシング2や枝管6の金属材料として例えば耐熱鋳鋼やステンレス鋼が使用される。インペラ3などに用いられるセラミックスは、一般に高温耐性を有し溶融金属に対する耐食性や耐摩耗性を有しているので、セラミックスの種類は特に限定しない。例えば、サイアロン、Si3N4、SiC、SiN、ZrO2、アルミナ(Al2O3)などから適宜選択できる。
図2に、図1で示した溶融金属用ポンプ1のインペラ周辺部の断面の概要を示す。ケーシング内面とライナー10は、常温において組み立てられる。従来の浴中ポンプにおいてはケーシング2とライナー10の間には、組立を容易にするため僅かではあるが間隙12を設ける場合がある(例えば図4(b))。特に補修時にはケーシングが変形している場合があり、これを見込んでケーシングとライナー間に間隙を設けるようする場合がある。さらに、ポンプを浴中に配置した際に、上記のような高温に晒されるためケーシングもライナーもそれぞれ膨張する。しかし、ケーシング2は金属材料、ライナー10はセラミックスの場合、その熱膨張差により両者の間の間隙が広がる。ここに間隙が生じると、そこに溶融金属が浸入し、ケーシングを浸食する。このため、本発明では、予めケーシング2とライナー10の間に不定形耐火物11を配置する。不定形耐火物11を配置することにより、高温下においてケーシング2とライナー10の熱膨張差により間隙が広がったとしても、その間隙を不定形耐火物により埋めることができ、ケーシング2への溶融金属の接触を抑制し、ケーシング2の浸食を抑制することができるものである。例えば、耐熱鋳鋼の熱膨張係数は14~16×10-6/K(500℃)であるのに対し、セラミックスは、例えばSiCで3.7×10-6/K(400℃)、Si3N4で2.8×10-6/K(400℃)、サイアロンで3.0×10-6/K(20~800℃)程度である。不定形耐火物の熱膨張係数は、目安として5~10×10-6/K程度であって、金属材料とセラミックスの中間程度の熱膨張係数である。従って、ケーシング2とライナー10の間に不定形耐火物11を配置することにより、両者の緩衝層として機能することが期待される。
不定形耐火物の材質は特に限定されない。アルミナ質、粘土質、炭化珪素質、溶融シリカ質、やマグネシア質、モルタルなど適宜選択すればよい。高温での耐衝撃性の観点からアルミナ質または炭化珪素質の不定形耐火物が好ましい。
不定形耐火物11の層は、単層であっても2層以上の複層構造であってもよい。好ましくは2層以上の複層構造にするとよい。図3に不定形耐火物を2層にした場合を示す。複層構造にすることにより、ケーシング2とライナー10の緩衝層として機能効果が増加する。例えば、不定形耐火物11(11A、11B)の熱膨張係数をケーシング2とライナー10の熱膨張係数の間の値とし、さらにケーシングからライナーに向かって不定形耐火物も含めて順に熱膨張係数が変化するように配置するとよい。例えばライナーがセラミックスでケーシングが金属材料の場合、ライナー側の不定形耐火物11Bの熱膨張係数がケーシング側の不定形耐火物11Bの熱膨張係数より小さくなるようにするとよい。このように熱膨張係数の観点から傾斜配置することによりケーシング2とライナー10の間の熱膨張差による熱応力を緩衝することができ、不定形耐火物11の破壊を抑制することができる。よって、ケーシングとライナー間の間隙を安定して埋めることができ、ケーシング2への溶融金属のアタックを軽減し、浸食を抑制することができる。
また、不定形耐火物を複層構造にした時に、不定形耐火物の各層を嵩密度の観点で傾斜配置してもよい。即ち、ケーシング2側からライナー10側に向かって順に不定形耐火物の嵩密度が一様に変化する(順に大きくなるか、または順に小さくなるように変化する)ように、不定形耐火物の層を配置してもよい。例えば、ライナー側の不定形耐火物11Bの嵩密度がケーシング側の不定形耐火物11Bの嵩密度より順に大きくなるようにするとよい。また、その逆にケーシング側から順に嵩密度が小さくなるように配置してもよい。嵩密度が小さいと気孔率が高く、嵩密度が大きいと気孔率が低くなることから、ケーシング2側からライナー10に向けて嵩密度が大きくなるように配置することは、順に気孔率が低くなるように不定形耐火物の層を配置することになる。これにより、熱膨張による変形に追従し易くなり、ケーシング2とライナー10の熱膨張差による熱応力を緩衝することができ、不定形耐火物11の破壊を抑制することができる。よって、ケーシング2とライナー10の間の間隙を安定して埋めることができ、ケーシング2への溶融金属のアタックを軽減し、浸食を抑制することができる。好ましくは、熱膨張係数の大きいケーシング側に嵩密度の小さい(気孔率の高い)不定形耐火物層を配置し、ライナーに向けて嵩密度が大きくなるように配置するとよい。嵩密度が小さい方(気孔率が高い方)が、熱膨張による変形の大きいケーシングに対する追従性がよいからである。
ケーシング2と不定形耐火物11の間、またはライナー10と不定形耐火物11の間の一方もしくは両方に離型剤を配置してもよい。離型剤を配置することにより、ケーシング2とライナー10の間に不定形耐火物11を挿入する時に、ケーシング2やライナー10に対する不定形耐火物11の濡れ性を悪くして不定形耐火物の流動性を改善し、不定形耐火物を挿入し易くすることができる。よって、ケーシング2とライナー10間の間隙をより安定して埋めることができケーシング2への溶融金属のアタックを軽減し、浸食を抑制することができる。離型剤の成分等は耐熱性があれば特に限定されない。例えばZrO2系の離型剤(ZrO2:66%、SiO2:32%含有)など、市販の離型剤を適宜使用することができる。
不定形耐火物を配置するための施工方法は特に限定されない。例えばケーシング2の底部の押え板8を取り外し、ライナー10を装着後、ケーシング2とライナー10の間に不定形耐火物11を挿入してもよい。挿入後、乾燥硬化させた後、押え板8をケーシング2にボルト等(図示せず。)で締結固定すればよい。もしくは、ケーシング2にライナー10を装着する前に、ケーシング2に不定形耐火物11を塗布し、乾燥硬化させた後に、ライナー10を装着させてもよい。
不定形耐火物を複層構造にする場合は、ケーシング2に、ケーシング側の不定形耐火物11Aを先に塗布し、乾燥硬化させ、その後ライナー側の不定形耐火物11Bを塗布するとよい。ケーシング側の不定形耐火物とライナー側の不定形耐火物の2層構造とする場合は、双方の不定形耐火物のうち硬い方をケーシング側の不定形耐火物として用いることが好ましい。硬い不定形耐火物をケーシングの内部に配置するためには、硬い不定形耐火物を水湿して施工するなどの施工方法を採用することができる。3層以上の複層構造の場合は、上記の施工方法を繰り返すとよい。所定の不定形耐火物の層を形成した後にライナー10を装着し、押え板で固定するとよい。
ケーシング2と不定形耐火物11の間に離型剤を配置する場合は、不定形耐火物を塗布する前に、ケーシング2の内面に離型剤を塗布し、その後不定形耐火物を配置すればよい。
不定形耐火物を複層構造にする場合は、ケーシング2に、ケーシング側の不定形耐火物11Aを先に塗布し、乾燥硬化させ、その後ライナー側の不定形耐火物11Bを塗布するとよい。ケーシング側の不定形耐火物とライナー側の不定形耐火物の2層構造とする場合は、双方の不定形耐火物のうち硬い方をケーシング側の不定形耐火物として用いることが好ましい。硬い不定形耐火物をケーシングの内部に配置するためには、硬い不定形耐火物を水湿して施工するなどの施工方法を採用することができる。3層以上の複層構造の場合は、上記の施工方法を繰り返すとよい。所定の不定形耐火物の層を形成した後にライナー10を装着し、押え板で固定するとよい。
ケーシング2と不定形耐火物11の間に離型剤を配置する場合は、不定形耐火物を塗布する前に、ケーシング2の内面に離型剤を塗布し、その後不定形耐火物を配置すればよい。
溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合に用いられる亜鉛めっき浴とアルミめっき鋼板を製造する場合に用いられるアルミめっき浴とでは、その浴温が違う。浴温は、それぞれ主体となる金属成分により異なる。上記したように、亜鉛めっき浴(Zn含有量が50質量%以上)の温度は460℃前後、アルミめっき浴(Al含有量が50質量%以上)の温度は680℃前後であり、アルミめっき浴の方が高温になる。温度が高いほど金属材料のケーシングに対する浸食は過酷になる。より高温の溶融金属(例えばアルミめっき浴)になるほど、本発明の効果の貢献度が高くなる。
以上、めっき鋼板製造用浴中ポンプを例として説明したが、本発明に係る溶融金属用ポンプは、溶融金属浴を有する金属板のめっき装置であれば、特に制限なく適用することができる。また、プッシュタイプ、プルタイプのどちらにも適用できる。また、同様に溶融めっきによるめっき金属板の製造方法であれば、本発明の溶融金属用ポンプを有するめっき装置を使用できる。
溶融アルミめっき鋼板の製造装置におけるスナウト用溶融金属用ポンプを使用し、以下に示す水準で実験し、耐用時間(寿命)の比較試験を行った。
ア.WC溶射皮膜(厚さ0.1mm)(図4(a))
イ.セラミックス製ライナーのみ(不定形耐火物なし)(図4(b))
ウ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物単層配置(図2と同様)
エ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物2層配置(図3と同様)
不定形耐火物の熱膨張係数: ケーシング側>ライナー側
嵩密度 : ケーシング側>ライナー側
オ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物2層配置(図3と同様)
不定形耐火物の熱膨張係数: ケーシング側>ライナー側
嵩密度 : ケーシング側<ライナー側
ア.WC溶射皮膜(厚さ0.1mm)(図4(a))
イ.セラミックス製ライナーのみ(不定形耐火物なし)(図4(b))
ウ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物単層配置(図2と同様)
エ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物2層配置(図3と同様)
不定形耐火物の熱膨張係数: ケーシング側>ライナー側
嵩密度 : ケーシング側>ライナー側
オ.ケーシングとライナー間に不定形耐火物2層配置(図3と同様)
不定形耐火物の熱膨張係数: ケーシング側>ライナー側
嵩密度 : ケーシング側<ライナー側
使用した溶融金属用ポンプは、図1の概要図に示すものであり、各部の材質は以下のとおりである。
・ケーシング:耐熱鋳鋼
・シャフト :セラミックス(サイアロン)
・インペラ :セラミックス(サイアロン)
・枝管 :耐熱鋳鋼
・セラミックスライナー(水準イ~エ共通):サイアロン
・不定形耐火物(水準ウ):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.13g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
・不定形耐火物(水準エ):
1層目(ケーシング側):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.13g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
2層目(ライナー側) :高アルミナ質不定形耐火物
嵩密度 :2.10g/cm3
熱膨張係数:5.7×10-6/℃
・不定形耐火物(水準オ):
1層目(ケーシング側):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.0g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
2層目(ライナー側) :高アルミナ質不定形耐火物
嵩密度 :2.10g/cm3
熱膨張係数:5.7×10-6/℃
・ケーシング:耐熱鋳鋼
・シャフト :セラミックス(サイアロン)
・インペラ :セラミックス(サイアロン)
・枝管 :耐熱鋳鋼
・セラミックスライナー(水準イ~エ共通):サイアロン
・不定形耐火物(水準ウ):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.13g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
・不定形耐火物(水準エ):
1層目(ケーシング側):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.13g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
2層目(ライナー側) :高アルミナ質不定形耐火物
嵩密度 :2.10g/cm3
熱膨張係数:5.7×10-6/℃
・不定形耐火物(水準オ):
1層目(ケーシング側):高アルミナ質モルタル
嵩密度 :2.0g/cm3
熱膨張係数:8.1×10-6/℃
2層目(ライナー側) :高アルミナ質不定形耐火物
嵩密度 :2.10g/cm3
熱膨張係数:5.7×10-6/℃
通常の溶融アルミめっき鋼板の製造工程に適用し、設備補修時にケーシングおよびライナーを確認し、補修が必要となるまでの累計通板時間を耐用時間(寿命)とした。試験の結果を表1に示す。
本発明は溶融金属用のポンプに適用することができ、そのポンプは例えば金属板の溶融金属めっき製造に利用することができる。
1 溶融金属用ポンプ(浴中ポンプ)
2 ケーシング
3 インペラ
4 シャフト
5 モータ
6 枝管
7 浴面
8 押え板
10 ライナー
11、11A、11B 不定形耐火物
12 ケーシングとライナー間の間隙
13 溶射皮膜
2 ケーシング
3 インペラ
4 シャフト
5 モータ
6 枝管
7 浴面
8 押え板
10 ライナー
11、11A、11B 不定形耐火物
12 ケーシングとライナー間の間隙
13 溶射皮膜
Claims (9)
- 少なくともケーシングと前記ケーシングの内部に配置されるインペラとを有する溶融金属用ポンプであって、
前記ケーシングの内面であって、インペラに対向する面の少なくとも一部にライナーが配置され、
前記ライナーと前記ケーシングの間に不定形耐火物が配置されたことを特徴とする溶融金属用ポンプ。 - 前記不定形耐火物は、前記ケーシングから前記ライナーに向けて2層以上の複層構造になっている、請求項1に記載の溶融金属用ポンプ。
- 前記不定形耐火物の熱膨張係数が、前記ケーシングと前記ライナーの熱膨張係数の間の値であって、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に小さくなるよう配置されている、請求項1または2に記載の溶融金属用ポンプ。
- 前記不定形耐火物の嵩密度が、前記ケーシング側から前記ライナー側に向かって順に一様に変化するよう配置されている、請求項2に記載の溶融金属用ポンプ。
- 前記ケーシングが耐熱鋳鋼製であり、前記ライナーがセラミックス製である、請求項1~4の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
- 前記ケーシングと前記不定形耐火物の間に離型剤を配置した、請求項1~5の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
- 前記溶融金属のアルミニウム(Al)含有量が50質量%以上である、請求項1~6の何れか一項に記載の溶融金属用ポンプ。
- 請求項1~6に記載の溶融金属用ポンプを有することを特徴とする金属板のめっき装置。
- 請求項8に記載のめっき装置を用いることを特徴とするめっき金属板の製造方法。
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JP2021115183A JP2023011360A (ja) | 2021-07-12 | 2021-07-12 | 溶融金属用ポンプ、金属板のめっき装置、およびめっき金属板の製造方法 |
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- 2021-07-12 JP JP2021115183A patent/JP2023011360A/ja active Pending
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