JP2023009587A - 新規化合物、no産生抑制剤、抗炎症剤および化合物の製造方法 - Google Patents

新規化合物、no産生抑制剤、抗炎症剤および化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 生体における一酸化窒素(NO)産生の抑制活性を有する新規化合物、NO産生抑制剤、抗炎症剤、および、NO産生抑制活性を有する化合物を製造する方法を提供する。【解決手段】 化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする、生体におけるNOの産生抑制剤。本発明によれば、炎症メディエイターであるNOの産生を抑制できることから、炎症反応を抑制することができ、もって、過剰な炎症反応や慢性炎症による組織障害や疾病の発症、疾病の悪化の抑制に寄与することができる。【選択図】 図2

Description

本発明は、新規化合物、NO産生抑制剤、抗炎症剤および化合物の製造方法に関する。より詳細には、化2に示す新規化合物またはその塩に関する。また、化1に示す化合物、化2に示す化合物もしくはそれらの塩、または、それらを含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする、生体における一酸化窒素(NO)の産生抑制剤に関する。また、化1に示す化合物、化2に示す化合物もしくはそれらの塩、または、それらを含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする、抗炎症剤に関する。また、化1に示す化合物および化2に示す化合物の製造方法に関する。
NOは、大気中では雷放電などによる高温環境や化石燃料の燃焼に伴い発生するが、生体内でも産生されている。生体内では、NO合成酵素により、血管内皮細胞や神経細胞、マクロファージなどの免疫系細胞で産生される。血管内皮細胞から産生されるNOは、血管平滑筋の弛緩を介して血圧の調節に関与し、神経細胞から産生されるNOは、ニューロン間の情報伝達に関与している。一方、免疫系細胞から産生されるNOは、病原微生物の殺菌等の炎症反応を亢進することが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。
ここで、炎症は、生体に加わる有害刺激に対する生体防御反応であり、恒常性を維持するために必須の生理反応である。しかし、これが過度ないし過剰に長期にわたる場合は、組織障害や疾病の原因となることが知られており、炎症を抑制する技術が求められている。この点、特に産生量の多い免疫系細胞のNO産生を制御することは、炎症を制御することに有効と考えられる。
松本明郎、一酸化窒素(NO)による生理機能調節とその破綻、基礎老化研究、第38巻、第3号、第11-18頁、2014年 青木玲二、4)マクロファージを用いたNO産生の簡易評価、平成19年度農林水産省補助事業(食料産業クラスター展開事業)食品機能性評価マニュアル集第II集、社団法人日本食品科学工学会、第118-123頁
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、生体におけるNO産生抑制活性を有する新規化合物、NO産生抑制剤、抗炎症剤、および、NO産生抑制活性を有する化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、キンセンカ属(Calendula)に、化1に示す化合物、および、化2に示す新規化合物が含まれることを見出した。また、当該化合物が生体におけるNO産生を抑制できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
Figure 2023009587000002
Figure 2023009587000003
(1)本発明に係る新規化合物は、化2に示す化合物またはその塩である。
(2)本発明に係る生体におけるNOの産生抑制剤の第1の態様は、化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする。
(3)本発明に係る生体におけるNOの産生抑制剤の第2の態様は、化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする。
(4)本発明に係る抗炎症剤の第1の態様は、化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする。
(5)本発明に係る抗炎症剤の第2の態様は、化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする。
(6)本発明において、キンセンカ属の植物はトウキンセンカ(Calendula officinalis)であってもよい。
(7)本発明に係る化1に示す化合物またはその塩の製造方法は、キンセンカ属から化1に示す化合物またはその塩を抽出する工程を有する。
(8)本発明に係る化2に示す化合物またはその塩の製造方法は、キンセンカ属から化2に示す化合物またはその塩を抽出する工程を有する。
化1に示す化合物や化2に示す化合物またはそれらの塩は、生体におけるNOの産生を抑制できる活性を有する。本発明によれば、係る有用な化合物を得ることができる。
本発明のNO産生抑制剤や抗炎症剤は、生体におけるNOの産生を抑制することができる。すなわち、炎症メディエイターであるNOの産生を抑制できることから、炎症反応を抑制することができ、よって、過剰な炎症反応や慢性炎症による組織障害や疾病の発症、疾病の悪化の抑制に寄与することができる。
トウキンセンカ根部50%(v/v)エタノール抽出物のHPLCクロマトグラムを示す図である。 化合物1の存在下で培養したマクロファージ様細胞におけるNO量率および細胞生存率を示すグラフである。 化合物2の存在下で培養したマクロファージ様細胞におけるNO量率および細胞生存率を示すグラフである。 クルクミン、化合物1および化合物2のラジカル捕捉率を示す棒グラフである。 化合物2の存在下で培養したヒト線維芽細胞における細胞生存率を示す棒グラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るNO産生抑制剤は、生体におけるNOの産生を抑制する剤である。ここで、生体におけるNOの産生を抑制するとは、生体内のいずれかの細胞で産生されるNOの量を小さくすることをいう。NOは反応性が極めて高く、短時間で消失するため、生体内におけるNOの産生が抑制されたか否かを直接確認することは困難である。よって、NOの産生を抑制するか否かは、後述する実施例で示すように、培養細胞にて確認することができる。すなわち、NO産生能を有する培養細胞に被験物質を投与した後、グリース試薬を用いた比色法でNO量(亜硝酸の量)を測定する。被験物質の投与によりNO量が減少すれば、生体におけるNOの産生抑制活性を有すると判断することができる。
本発明に係るNO産生抑制剤には、下記の第1および第2の態様がある。
第1の態様;化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする。
第2の態様;化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする。
NOは、上述のとおり、組織障害や殺菌といった炎症反応を亢進する炎性メディエイターである。よって、生体におけるNOの産生を抑制することにより、炎症反応を抑制できるといえる。このことから、本発明は、NO産生抑制剤と同じ物質を有効成分とする抗炎症剤も提供する。すなわち、本発明に係る抗炎症剤には、下記の第1および第2の態様がある。
第1の態様;化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする。
第2の態様;化1に示す化合物、化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする。
キンセンカ属は、キク科キンセンカ属に属する植物をいう。キンセンカ属としては、例えば、トウキンセンカ(Calendula officinalis、ポットマリーゴールド、カレンデュラ)や、ヒメキンセンカ(Calendula arvensis、ホンキンセンカ、フユシラズ、フユザキキンセンカ)などを例示することができる。
化1に示す化合物(化合物1)およびその塩、ならびに化2に示す化合物(化合物2)およびその塩(以下、化合物1、化合物1の塩、化合物2および化合物2の塩をまとめて、またはいずれかを指して、「本化合物」という場合がある。)は、後述する実施例で示すように高いNO産生抑制活性を有する。よって、少なくともこの点で有用な物質であり、本化合物は生体におけるNO産生抑制剤あるいは抗炎症剤として用いることができる。
なお、本化合物のうち化合物2はこれまでに報告のない新規化合物である。化合物2は、生体におけるNO産生の抑制や炎症抑制に限らず、意義のあるすべての用途に用いることができる。
本化合物は、キンセンカ属に含まれる。よって、本化合物を含むキンセンカ属の抽出物もまた、生体におけるNO産生抑制剤あるいは抗炎症剤として用いることができる。
化合物1および化合物2はその水酸基で塩を形成しうるが、本発明においては、これらの塩を用いてもよい。ここで、塩は、「薬理学的に許容される塩」を含み、広義に解釈される。例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等、各種の塩であってよい。金属塩の例としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としてはアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としてはモルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としてはグリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩が挙げられる。
本化合物は、合成品を用いてもよく、市販の試薬を用いてもよい。または、本化合物を含む動植物等の天然物から抽出、精製等して用いることもでき、本化合物を化学的に合成して用いることもできる。
本化合物は上述のとおりキンセンカ属に含まれるため、キンセンカ属から抽出することにより、本化合物を得ることができる。キンセンカ属における本化合物の含有量は、植物種や植物体の部位、採集時期、生育場所、採集後の処理法などにより変わりうるが、例えば、化合物2は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量分析したところ、トウキンセンカ根部乾燥物1gあたり約0.2mgが含まれていたことが本発明者らにより確認されている。なお、後述する実施例では、トウキンセンカ根部乾燥物135gから2.3mgの化合物2が単離された。この単離量がHPLCによる定量分析値と比して小さい理由としては、(i)抽出後の粗分画から化合物2を単離精製する過程でロスが生じたため、(ii)定量分析時と実施例の単離時とで、サンプルのスケールや抽出時間が異なるため、などが考えられた。
キンセンカ属からの本化合物の抽出は、例えば、抽出溶媒にキンセンカ属の植物体を浸漬することにより行うことができる。具体的には、以下の方法を例示することができる。
≪キンセンカ属の植物体≫
キンセンカ属の植物体は、葉、茎、花、根あるいはこれらを含む全部(全草)など、いずれの部位を用いてもよいが、根部を含むことが好ましい。また、生育地から採集したものをそのまま用いてもよく、乾燥させてから用いてもよい。また、葉、茎、花、根などの形態のものをそのまま用いてもよく、破片状や粉末状に砕いてから用いてもよい。
≪抽出溶媒≫
キンセンカ属から本化合物を抽出することができれば特に制限はなく、製品の最終用途に応じて適宜設定できる。例えば、溶媒は、低級アルコール類(エタノール、プロパノールなど)、酢酸エチル、グリコール類(グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオールなど)、クロロホルム、これらの混液あるいはこれらと水との混液などの極性溶媒、油脂類(ヒマシ油、ツバキ油、オリーブ油、アプリコット油、コメ胚芽油、ダイズ油、アマニ油、米油、ゴマ油、コーン油、菜種油など)、液体ロウ類(ホホバ油、マッコウ鯨油など)、エステル類、高級アルコール類などを例示することができる。
≪抽出条件≫
抽出溶媒に植物体を浸漬し、温度1~30℃あるいは室温で、2~24時間、静置または攪拌しながら置いておく。
上記のように抽出操作を行った後の溶媒には、本化合物が含まれるため、これをそのまま用いてもよく、必要に応じて精製や濃縮あるいは希釈、殺菌などを行ってから用いてもよい。精製は、濾過や遠心分離による植物体残渣の除去や、液体クロマトグラフィーによる分画精製などを行うことができる。また、スプレードライや凍結乾燥などの方法により固体化してから用いてもよい。
例えば、トウキンセンカ根部の50%(v/v)エタノール抽出物を下記条件のHPLCに供すれば、図1に示すクロマトグラムが得られる。図1において、保持時間24分の画分を分取すれば化合物1を、保持時間27分の画分を分取すれば化合物2を、それぞれ得ることができる。
《HPLCの条件》
カラム:SHISEDO CAPCELL PAK C18 UG120 (5μm,φ4.6×250 mm)
溶媒:(A)H2O(0.1 %(v/v) TFA) (B)アセトニトリル(MeCN)(0.1 %(v/v) TFA)
勾配:(B)0 %(v/v)(0分)→(B)100 %(40分)
流速:1.0 mL/分
検出:吸光光度検出器(210 nm)
注入量:10μL
本化合物、NO産生抑制剤および抗炎症剤は、任意の形態ないし任意の用途で用いることができる。例えば、皮膚において効果を発揮させる目的で用いることができ、そのような場合には、経皮的に用いられる医薬品や医薬部外品(湿布や軟膏など)、化粧品(パックや化粧水、乳液、ジェル、クリーム、リップクリームなど)の形態、またはこれらに配合して使用される原料ないし添加物とすることができる。また、例えば、体内で効果を発揮させる目的で用いることができ、そのような場合には、経口摂取で用いられる医薬品や医薬部外品、健康食品、食品、飲料、飼料の形態、またはこれらに配合して使用される原料ないし添加物とすることができる。いずれの形態であっても、本化合物を配合した上で、常法により製造することができる。製品における有効成分の配合量または生体への投与量も、当該製品の用途や安全性、他の原材料などに応じて適宜設定することができる。
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。本実施例において、単位に用いられるMはmol/Lを表す。
<実施例1>化合物の同定
(1)トウキンセンカ根エタノール抽出物の調製
北海道白老町にて採集したトウキンセンカの根を水で洗い、45℃の恒温槽に2日間置くことにより、乾燥させた。これをハサミで細かく切断した後、ミキサーを用いて粉末状にした。得られた根の乾燥粉末135gに50%(v/v)エタノール1Lを加え、スターラーを用いて500回転/分(rpm)、室温にて72時間攪拌し、抽出液を得て上清(1回目)を回収した。残渣に50%(v/v)エタノール1Lを加えてスターラーを用いて500回転/分(rpm)、室温にて72時間攪拌し、抽出液を得て上清(2回目)を回収した。1回目と2回目の上清をそれぞれ吸引濾過して濾液を回収し、エバポレーターを用いて減圧濃縮し、濃縮液を得た。続いて、1回目と2回目の濃縮液を併せて24時間凍結乾燥し、固体状のトウキンセンカ根エタノール抽出物24.0gを得た。
(2)化合物の単離
トウキンセンカ根エタノール抽出物24.0gを超純水(MilliQ水)に溶解させて全量を500mLとした。ヘキサン500mLを添加し、水層とヘキサン層とに分画して水層500mLを回収した。ここに酢酸エチル2000mLを添加し、水層と酢酸エチル層とに分画して酢酸エチル層を回収し、濃縮乾固して酢酸エチル画分0.82gを得た。これを下記条件のシリカゲルクロマトグラフィーに供した。溶媒[4]のヘキサン:酢酸エチル=3:2で溶出した画分を分取して乾燥させ、27.9mgの粗精製物を得た。
《シリカゲルクロマトグラフィーの条件》
カラム:Glass column(φ50×280 mm)
固定相:Silica gel 60 N
勾配:[1]ヘキサン:酢酸エチル=9:1(300mL)
[2]ヘキサン:酢酸エチル=4:1(400mL)
[3]ヘキサン:酢酸エチル=7:3(500mL)
[4]ヘキサン:酢酸エチル=3:2(500mL)
[5]ヘキサン:酢酸エチル=1:1(500mL)
[6]ヘキサン:酢酸エチル=0:1(600mL)
[7]メタノール(600mL)
粗精製物(乾燥重量27.9mg)を下記条件のHPLCに供し、保持時間34分の第1画分(乾燥重量0.2mg)および保持時間55分の第2画分(乾燥重量2.3mg)を分取した。
《HPLCの条件》
カラム:SHISEIDO CAPCELLPAK UG120 (5μm,φ20×250 mm)
溶媒:H2O : アセトニトリル(MeCN)=65 : 35(v:v)(0.1%(v/v) TFA)
流速:9.6 mL/分
検出:吸光光度検出器(210 nm)
(3)第1画分の化合物の同定
第1画分(保持時間34分、乾燥重量0.2mg)について、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)装置および液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)を用いて構造解析を行った結果、化1に示す化合物((E)-4-(3-acetyl-2,6-dihydroxyphenyl)-2-methylbut-2-enal、分子式C1314、分子量234.25、本発明において「化合物1」という場合がある。)であることが明らかになった。NMRおよびLC-MSのデータを以下に示す。
Figure 2023009587000004
<化1のNMRおよびLC-MSデータ>
1H NMR: 400 MHz, 13C NMR:100 MHz (測定溶媒CD3OD)
1H NMR: δ(ppm) 1.97 [d, 3H, J = 1.3 Hz], 2.53 [s, 3H], 3.50 [d, 2H, J =7.4 Hz], 6.43 [d, 1H, J = 8.8 Hz], 6.63 [tq, 1H, J = 1.3, 7.4 Hz], 7.66 [d, 1H, J = 8.8 Hz], 9.32 [s, 1H];
13C NMR: δ(ppm) 9.1 [CH3], 23.5 [CH2], 26.2 [CH3], 108.2 [CH], 112.8 [C], 114.3 [C], 132.5 [CH], 140.2 [C], 154.8 [CH], 164.0 [C], 197.5 [CH], 204.5 [C].
HR-ESIMS : m/z = 233.0815([M-H]-)
(4)第2画分の化合物の単離・同定
第2画分(保持時間55分、乾燥重量2.3mg)について、NMR装置およびLC-MSを用いて構造解析を行った結果、化2に示す化合物(methyl (E)-4-(3-acetyl-2,6-dihydroxyphenyl)-2-methylbut-2-enoate、分子式C1416、分子量264.28、本発明において「化合物2」という場合がある。)であることが明らかになった。化合物2は、これまでに報告の無い新規の物質である。NMRおよびLC-MSのデータを以下に示す。
Figure 2023009587000005
<化2のNMRおよびLC-MSデータ>
1H NMR: 400 MHz, 13C NMR:100 MHz (測定溶媒CD3OD)
1H NMR: δ(ppm)1.97 [d, 3H, J = 1.4 Hz], 2.53 [s, 3H], 3.50 [d, 2H, J =7.5 Hz], 3.87 [s, 3H], 6.42 [d, 1H, J = 8.8 Hz], 6.77 [tq, 1H, J = 1.4, 7.5 Hz], 7.63 [d, 1H, J = 8.8 Hz];
13C NMR: δ(ppm)12.5 [CH3], 23.1 [CH2], 26.2 [CH3], 52.2 [CH3], 108.2 [CH], 113.4[C], 114.2 [C], 128.2 [C], 132.3[CH], 142.0 [CH], 163.9 [C], 170.6 [C], 204.5 [C].
HR-ESIMS: m/z = 265.1069([M+H]+)
<実施例2>NO量率の評価
(1)被験物質の調製
培地はRPMI1640培地に、NO産生刺激物質として大腸菌由来リポ多糖(LPS)を0.1%(v/v)となるよう添加したものを用いた。化合物1および化合物2を、それぞれ10mMとなるようジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。これを、化合物の濃度(細胞培養時の最終濃度)が12.5μM、25μM、50μMおよび100μMとなるよう培地に添加して、被験物質とした。
(2)NO量率の測定
下記ア)~カ)の手順により一酸化窒素(NO)量率を測定した。
ア)マウス由来マクロファージ様細胞(J774.1細胞、RCB0434、理化学研究所 バイオリソース研究センター 細胞材料開発室)を、約1.0×10個/ウェルの密度になるように100μLずつ96穴プレートの各ウェルに播種し、37℃、5%COの条件下で1日間培養した。
イ)各ウェルの培地に被験物質100μLを添加し、同条件下で24時間培養した(評価試料)。被験物質を添加せず同量の培地のみ添加したウェルも設定し、同様に培養した(対照試料)。
ウ)リン酸0.5mLを脱イオン水19.5mLに加え、スルファニルアミド200mgとN-1-ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩20mgとを溶解させることにより、グリース試薬 (1%スルファニルアミド、0.1%N-1-ナフチルエチレンジアミン、2.5%リン酸) を調製した。
エ)96穴プレート各ウェルの上清100μLを新しい96穴プレートへ移した後、そのプレートの各ウェルにグリース試薬を100μLずつ添加して、室温で30分静置した。
オ)マイクロプレートリーダーで540nmの吸光度を測定した。ブランク試料として、培地100μLとグリース試薬100μLとを入れたウェルも設定し、同様に測定した。
カ)下記の式1によりNO量率を算出し、50%阻害濃度(IC50)を求めた。
式1:NO量率(%)={(評価試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)/(対照試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)}×100
(3)細胞生存率の測定
下記ア)~カ)の手順により細胞生存率を測定した。
ア)J774.1細胞を、約1.0×10個/ウェルの密度になるように100μLずつ96穴プレートの各ウェルに播種し、37℃、5%COの条件下で1日間培養した。
イ)各ウェルの培地に被験物質100μLを添加し、同条件下で24時間培養した(評価試料)。被験物質を添加せず同量の培地添加のみ行ったウェルも設定し、同様に培養した(対照試料)。
ウ)96穴プレートから上清を取り除いて3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT)試薬5μLを添加し、同条件下で3時間呈色反応させた。
エ)各ウェルの上清を除去し、DMSO200μLを添加し、3分間振とう撹拌した。
オ)マイクロプレートリーダーで535nmの吸光度を測定した。ブランク試料として、DMSO200μLを入れたウェルも設定し、同様に測定した。
カ)下記の式2により細胞生存率を算出した。
式2:細胞生存率(%)={(評価試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)/(対照試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)}×100
(4)結果
被験物質として化合物1を用いた場合のNO量率および細胞生存率を図2に示す。図2に示すように、NO量率は、化合物1の濃度が高いほど小さかった。また、化合物1のIC50は57.4μMであった。この値は、NO産生酵素阻害物質として知られているNG-monomethyl-L-arginine(L-NMMA)のIC50(116.2μM)よりも顕著に小さいことから、化合物1のNO量阻害活性は顕著に強いと言える。一方、細胞生存率はいずれの濃度においても低下は見られなかった。すなわち、細胞毒性は無いにもかかわらず、化合物1の濃度依存的にNO量率が低下した。この結果から、化合物1は細胞におけるNOの産生ないし存在を抑制できることが明らかになった。
また、被験物質として化合物2を用いた場合のNO量率および細胞生存率を図3に示す。図3に示すように、NO量率は、化合物2の濃度が高いほど小さかった。また、化合物2のIC50は69.2μMであった。この値は、L-NMMAのIC50(116.2μM)よりも顕著に小さいことから、化合物2のNO量阻害活性は顕著に強いと言える。一方、細胞生存率はいずれの濃度においても低下は見られなかった。すなわち、細胞毒性は無いにもかかわらず、化合物2の濃度依存的にNO量率が低下した。この結果から、化合物2は細胞からのNOの産生ないし存在を抑制できることが明らかになった。
<実施例3>NOラジカル捕捉活性の評価
液体に溶解させることによりNOラジカルを発生するニトロプルシド(SNP)を用いて、化合物のNOラジカル捕捉活性を検討した。陽性対照としてNOラジカル捕捉物質として知られているクルクミンを用いた。すなわち、被験物質は化合物1、化合物2およびクルクミンとした。
まず、SNPをリン酸緩衝食塩水(pH7.4、PBS) に溶解させ、10mMのSNP-PBS溶液を調製した。クルクミン、化合物1および化合物2を、それぞれ濃度が25μM、50μM、100μMおよび200μMとなるようエタノールに溶解させ、被験物質-エタノール溶液を調製した。被験物質-エタノール溶液を50μLずつ96穴プレートに添加した後、SNP-PBS溶液を50μLずつ添加して、150分室温で静置した(被験物質の最終濃度が12.5μM、25μM、50μMおよび100μM)。SNP-PBS溶液50μLとエタノール50μLとを入れたウェルも設定し、同様に静置した(対照試料)。続いて、実施例2(2)ウ)に記載のとおり調製したグリース試薬を各ウェルに100μLずつ添加し、マイクロプレートリーダーで546nmの吸光度を測定した。ブランク試料として、PBS50μLとエタノール50μLとを入れたウェルも設定し、同様に測定した。測定結果に基づき下記の式3によりNOラジカル捕捉率 (%) を算出した。その結果を図4に示す。
式3:NOラジカル捕捉率(%)=[1-{(評価試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)/(対照試料の吸光度-ブランク試料の吸光度)}]×100
図4に示すように、被験物質としてクルクミンを用いた場合のNOラジカル捕捉率は、濃度依存的に高くなった。これに対して、化合物1を用いた場合のNOラジカル捕捉率は、濃度が高いほど小さくなる傾向が見られた。化合物2を用いた場合のNOラジカル捕捉率は、濃度にかかわらず殆ど変化がなかった。これらの結果から、化合物1および化合物2は、NOラジカルの捕捉活性を有さないことが明らかになった。
本実施例3の結果と、実施例2の結果とを考え合わせると、化合物1および化合物2によるNO量率の抑制効果は、一旦産生したNOを捕捉した結果ではなく、細胞におけるNOの産生を抑制したためと考えられた。すなわち、化合物1および化合物2は、細胞からのNOの産生を抑制できることが明らかになった。
<実施例4>細胞毒性の評価
実施例2において化合物1および化合物2はマウス癌細胞由来マクロファージ様細胞(J774.1細胞)に対して細胞毒性が無いことが確認された。さらに、正常細胞に対する細胞毒性を確認するため、化合物2について、ヒト皮膚由来正常二倍体線維芽細胞(ASF4-1、集団倍加数(PDL)=43、加治和彦氏から提供)を用いて下記ア)~カ)の手順により細胞生存率を測定した。培地はMEM培地を用いた。
ア)化合物2を10mMとなるようDMSOに溶解した後、培地で希釈して、被験物質とした。
イ)細胞を、約3.5×10個/ウェルの密度になるように100μLずつ96穴プレートの各ウェルに播種し、37℃、5%COの条件下で24時間培養して細胞を接着させた。
ウ)化合物2の最終濃度が12.5μM、25μM、50μMおよび100μMとなるように、各ウェルに被験物質を添加して、同条件下で24時間培養した(評価試料)。被験物質を添加しないウェルも設定し、同様に培養した(対照試料)。
エ)96穴プレートから上清を取り除いてMTT試薬10μLを添加し、同条件下で4時間呈色反応させた。
オ)各ウェルの上清を除去し、DMSO200μLを添加してホルマザンを溶解した。 カ)マイクロプレートリーダーで535nmの吸光度を測定した。ブランク試料として、DMSO200μLを入れたウェルも設定し、同様に測定した。実施例2(3)の式2により細胞生存率を算出した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、化合物2の濃度にかかわらず細胞生存率はほぼ一定であった。すなわち、化合物2の濃度の上昇に伴う細胞生存率の低下は見られなかった。この結果から、化合物2は、癌細胞のみならず正常細胞に対しても目立った細胞毒性を有さないことが明らかになった。

Claims (9)

  1. 下記の化2に示す化合物またはその塩。
    Figure 2023009587000006
  2. 下記の化1に示す化合物、下記の化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする、生体における一酸化窒素(NO)の産生抑制剤。
    Figure 2023009587000007
    Figure 2023009587000008
  3. 下記の化1に示す化合物、下記の化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする、生体における一酸化窒素(NO)の産生抑制剤。
    Figure 2023009587000009
    Figure 2023009587000010
  4. 下記の化1に示す化合物、下記の化2に示す化合物またはそれらの塩を有効成分とする、抗炎症剤。
    Figure 2023009587000011
    Figure 2023009587000012
  5. 下記の化1に示す化合物、下記の化2に示す化合物またはそれらの塩を含むキンセンカ属の抽出物を有効成分とする、抗炎症剤。
    Figure 2023009587000013
    Figure 2023009587000014
  6. 前記キンセンカ属が、トウキンセンカ(Calendula officinalis)である、請求項3または請求項5に記載の剤。
  7. キンセンカ属から下記の化1に示す化合物またはその塩を抽出する工程を有する、下記の化1に示す化合物またはその塩を製造する方法。
    Figure 2023009587000015
  8. キンセンカ属から下記の化2に示す化合物またはその塩を抽出する工程を有する、下記の化2に示す化合物またはその塩を製造する方法。
    Figure 2023009587000016
  9. 前記キンセンカ属が、トウキンセンカ(Calendula officinalis)である、請求項7または請求項8に記載の方法。
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