JP2023007694A - 車両用制御装置、及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】インバータ及び回転電機が過熱状態になることを抑制しつつ、車輪に制動トルクを付与できる車両用制御装置及びプログラムを提供する。【解決手段】ブレーキCU63は、ブレーキ装置60から車両10の車輪に付与する摩擦制動トルクを制御すべく、ブレーキ装置60の制御を行う。MGCU36は、回転電機20の回生発電によって発生する回生トルクを制御すべく、インバータ30のスイッチング制御を行う。MGCU36は、回転電機20及びインバータ30の少なくとも一方の温度を取得し、取得した温度が制限開始温度を超えたか否かを判定する。回生発電が行われている場合において、取得した温度が制限開始温度を超えたとMGCU36により判定されたとき、ブレーキCU63は、回生トルクが低下して0になる前に、車輪に摩擦制動トルクを付与するようにブレーキ装置60を制御する。【選択図】 図1

Description

本発明は、車両用制御装置、及びプログラムに関する。
従来、回転電機と、回転電機のステータ巻線に電気的に接続されるインバータと、回転電機のロータから動力が伝達されることにより回転する駆動輪と、機械式のブレーキ装置とを備える車両が知られている。この車両に適用される制御装置は、ブレーキ装置から車輪に付与する摩擦制動トルクを制御すべく、ブレーキ装置を制御し、回転電機の回生発電によって発生する回生トルクを制御すべく、インバータのスイッチング制御を行う。
特許文献1には、回転電機の回生発電を用いた制動からブレーキ装置を用いた制動に切り替える制御装置が記載されている。詳しくは、この制御装置は、摩擦制動トルクの指令値と回生制動トルクの指令値との和が要求制動トルクになる関係を維持しながら、回生制動トルクの指令値を漸減しつつ、摩擦制動トルクの指令値を漸増させる。
特許第3613046号公報
車輪に制動トルクを付与するために回生発電が行われている場合、ステータ巻線及びインバータに電流が流れ、回転電機及びインバータの少なくとも一方が過熱状態になり得る。このため、回転電機及びインバータを過熱から保護しつつ、車輪に制動トルクを付与する技術が要求される。
本発明は、インバータ及び回転電機が過熱状態になることを抑制しつつ、車輪に制動トルクを付与できる車両用制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
第1の発明は、ロータ及びステータ巻線を有する回転電機と、
前記ステータ巻線に電気的に接続されるインバータと、
前記ロータから動力が伝達されることにより回転する駆動輪と、
機械式のブレーキ装置と、
を備える車両に適用される車両用制御装置において、
前記ブレーキ装置から前記車両の車輪に付与する摩擦制動トルクを制御すべく、前記ブレーキ装置の制御を行うブレーキ制御部と、
前記回転電機の回生発電によって発生する回生トルクを制御すべく、前記インバータのスイッチング制御を行うインバータ制御部と、
前記回転電機及び前記インバータの少なくとも一方の温度を取得し、取得した温度が判定温度を超えたか否かを判定する判定部と、を備え、
前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記判定温度を超えたと判定されたとき、前記回生トルクが低下して0になる前に、前記車輪に摩擦制動トルクを付与するように前記ブレーキ制御部により前記ブレーキ装置を制御する。
回転電機及びインバータの少なくとも一方が過熱状態になる場合、この過熱状態を解消するために、回生発電を用いた制動からブレーキ装置を用いた制動に切り替えることが望ましい。
そこで、第1の発明では、回生発電が行われている場合において、取得した温度が判定温度を超えたと判定部により判定されたとき、回転電機の回生トルクを低下させて0にする。これにより、ステータ巻線及びインバータに電流が流れないようにでき、回転電機及びインバータが過熱状態になることを抑制できる。
ここで、第1の発明では、回生トルクが低下して0になる前に、車輪に摩擦制動トルクを付与するようにブレーキ装置が制御される。このため、回生発電を用いた制動、及びブレーキ装置を用いた制動のうち、少なくとも一方により車輪に制動トルクを付与できる。これにより、インバータ及び回転電機が過熱状態になることを抑制しつつ、車輪に制動トルクを付与できる。
第1の発明は、例えば第2の発明のように具体化できる。第2の発明では、前記ブレーキ制御部は、前記摩擦制動トルクを摩擦制動指令トルクに制御すべく、前記ブレーキ装置の制御を行い、
前記インバータ制御部は、前記回生トルクを回生制動指令トルクに制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が、前記判定温度としての制限開始温度を超えたと判定されたとき、前記ブレーキ制御部で用いられる前記摩擦制動指令トルクを増加し、かつ、前記インバータ制御部で用いられる前記回生制動指令トルクを0に向かって減少させる処理部を備え、
前記インバータ制御部は、
前記回生トルクの制御に用いる前記回生制動指令トルクにローパスフィルタ処理を施し、
前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が前記制限開始温度以下であると判定されるときよりも、前記ローパスフィルタ処理の時定数を大きくする。
ブレーキ装置により車輪に付与される摩擦制動トルクの応答性は、回生発電により駆動輪に付与される回生制動トルクの応答性よりも一般的に低い。このため、例えば、摩擦制動指令トルクと回生制動指令トルクとの和が所定トルクになる関係を維持しながら、回生制動指令トルクを0に向かって漸減しつつ、摩擦制動指令トルクを要求制動トルクに向かって漸増させたとしても、回生トルクから摩擦制動トルクへと要求制動トルクの配分を変える過渡期間において、上記所定トルクに対する実際の制動トルクの不足度合いが大きくなり得る。
一方、回生トルクの制御に用いる回生制動指令トルクには、例えば回転電機のトルクが急変することを防止するために、ローパスフィルタ処理が施される。
ここで、第2の発明は、上記ローパスフィルタ処理を利用して、実際の制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止する。詳しくは、第2の発明では、回生発電が行われている場合において、取得した温度が制限開始温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が制限開始温度以下であると判定されるときよりも、ローパスフィルタ処理の時定数が大きくされる。この場合、インバータ制御部で用いられる回生制動指令トルクが減少し始めてから0になるまでの時間が、取得した温度が制限開始温度以下であると判定されるときよりも長くなる。このため、回生トルクから摩擦制動トルクへと要求制動トルクの配分を変える過渡期間において、実際の制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
以上説明した第2の発明によれば、インバータ及び回転電機が過熱状態になることを抑制しつつ、実際の制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
また、第1の発明は、例えば第3の発明のように具体化できる。第3の発明では、前記インバータ制御部は、前記回転電機の回生トルクを回生制動指令トルクに制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
前記判定部は、取得した温度が、前記判定温度としての通知温度、又は前記通知温度よりも高い制限開始温度を超えたか否かを判定し、
前記ブレーキ制御部は、前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記通知温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定される前であっても、前記車輪に前記摩擦制動トルクを付与するように前記ブレーキ装置を制御し、
前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定されたとき、前記回生トルクの制御に用いる前記回生制動指令トルクを0に向かって減少させる処理又は前記スイッチング制御を停止する処理のいずれかを行う処理部を備える。
第3の発明では、回生発電が行われている場合において、取得した温度が制限開始温度を超えたと判定されたとき、回生トルクの制御に用いる回生制動指令トルクを0に向かって減少させる処理又はインバータのスイッチング制御を停止する処理のいずれかが行われる。
ここで、ブレーキ装置を用いて車輪に付与される摩擦制動トルクの応答性は、回生発電を用いて駆動輪に付与される回生制動トルクの応答性よりも一般的に低い。このため、回転電機及びインバータの少なくとも一方が過熱状態になる場合において、回生発電を用いた制動からブレーキ装置を用いた制動に切り替えるとき、制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止するには、極力早期に車輪に摩擦制動トルクを付与することが望ましい。
そこで、第3の発明では、回生発電が行われている場合において、取得した温度が通知温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が制限開始温度を超えたと判定される前であっても、車輪に摩擦制動トルクを付与するようにブレーキ装置が制御される。このため、回生発電を用いた制動からブレーキ装置を用いた制動に切り替える場合において、インバータ及び回転電機が過熱状態になることを抑制しつつ、制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
第1実施形態に係るシステムの全体構成図。 ブレーキCUが行う制動制御処理の手順を示すフローチャート。 MGCUが行うトルク制御の機能ブロック図。 MGCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャート。 回転電機の動作点の動作領域を示す図。 モータ温度と制限係数との関係を示す図。 EVCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャート。 第2実施形態に係るMGCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャート。 EVCUが行う過熱保護処理の手順を示すフローチャート。
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を電動車両に搭載した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両10は、回転電機20を備えている。回転電機20は、3相の同期機であり、星形結線された各相のステータ巻線21を備えている。各相のステータ巻線21は、電気角で120°ずつずれて配置されている。本実施形態の回転電機20は、ロータ22に永久磁石(「界磁極」に相当)を備える永久磁石同期機である。
回転電機20は、車載主機であり、ロータ22が車両10の駆動輪11と動力伝達可能とされている。回転電機20が電動機として機能することにより発生するトルクが、ロータ22から駆動輪11に伝達される。これにより、駆動輪11が回転駆動させられる。なお、回転電機20は、例えば、車両10の駆動輪に一体に設けられるインホイールモータであってもよいし、車両の車体に備えられるオンボードモータであってもよい。
車両10は、インバータ30と、コンデンサ31(「蓄電部」に相当)と、蓄電池40とを備えている。インバータ30は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態において、各スイッチSWH,SWLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、具体的にはIGBTである。このため、各スイッチSWH,SWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
U,V,W相において、上アームスイッチSWHのエミッタと、下アームスイッチSWLのコレクタとには、ステータ巻線21の第1端が接続されている。各相のステータ巻線21の第2端同士は、中性点で接続されている。なお、本実施形態において、各相のステータ巻線21は、ターン数が同じに設定されている。
各相の上アームスイッチSWHのコレクタと、蓄電池40の正極端子とは、正極側母線Lpにより接続されている。各相の下アームスイッチSWLのエミッタと、蓄電池40の負極端子とは、負極側母線Lnにより接続されている。正極側母線Lpと負極側母線Lnとは、コンデンサ31により接続されている。なお、コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
蓄電池40は例えば組電池であり、蓄電池40の端子電圧は例えば数百Vである。蓄電池40は、例えば、リチウムイオン電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。
車両10は、電流センサ32、電圧センサ33、回転角センサ34、モータ温度センサ35、及びMGCU36(Motor Generator Control Unit、「インバータ制御部」に相当)を備えている。電流センサ32は、各相のうち少なくとも2相分の巻線21に流れる電流を検出する。電圧センサ33は、コンデンサ31の端子電圧を検出する。回転角センサ34は、例えばレゾルバであり、ロータ22の回転角(電気角)を検出する。モータ温度センサ35は、回転電機20の温度をモータ温度Tmgdとして検出する。本実施形態において、モータ温度センサ35は、ステータ巻線21の温度をモータ温度Tmgdとして検出する。モータ温度センサ35は、例えばサーミスタである。各センサ32~35の検出値は、MGCU36に入力される。
MGCU36は、マイコン36a(「第1コンピュータ」に相当)を主体として構成され、マイコン36aは、CPUを備えている。マイコン36aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン36aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン36aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図4等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
MGCU36は、後述するEVCU50(Electric Vehicle Control Unit)から送信された指令トルクTreqを受信する。MGCU36は、受信した指令トルクTreqに基づいて、回転電機20のトルクを制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行う。各相において、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとは交互にオンされる。
MGCU36は、力行駆動制御を行う。力行駆動制御は、蓄電池40から出力された直流電力を交流電力に変換してステータ巻線21に供給するためのインバータ30のスイッチング制御である。この制御が行われる場合、回転電機20は、電動機として機能し、力行トルクを発生する。また、MGCU36は、回生駆動制御を行う。回生駆動制御は、回転電機20で発電される交流電力を直流電力に変換して蓄電池40に供給するためのインバータ30のスイッチング制御である。この制御が行われる場合、回転電機20は、発電機として機能し、回生トルクを発生する。
車両10は、EVCU50(「上位制御部」に相当)を備えている。EVCU50は、マイコン50a(「第2コンピュータ」に相当)を主体として構成され、マイコン50aは、CPUを備えている。マイコン50aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン50aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン50aは、自身が備える記憶部に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図7等に示す処理とのプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
車両10は、ブレーキ装置60と、ブレーキセンサ61と、ブレーキランプ62と、ブレーキCU63(「ブレーキ制御部」に相当)とを備えている。ブレーキセンサ61は、ドライバのブレーキ操作部材としてのブレーキペダルの踏込量であるブレーキストロークを検出する。ブレーキセンサ61の検出値は、ブレーキCU63に入力される。
ブレーキ装置60は、駆動輪11を含む車輪に設けられたディスクロータと、ディスクロータに押し当てられるブレーキパッドと、ブレーキパッドをディスクロータに押し当てるためのブレーキキャリパとを備えている。ディスクロータにブレーキパッドが押し当てられることにより、車輪に摩擦制動トルクが付与される。
ブレーキ装置60は、例えば、油圧式又は電動式のブレーキ装置である。電動式のブレーキ装置60は、EMB(Electro Mechanical Brake)とも呼ばれる。
油圧式のブレーキ装置60のブレーキキャリパは、油圧駆動式のピストンを備えている。ブレーキペダルが踏み込まれることにより、ブレーキ装置60を構成する油圧機構の油圧が上昇し、ピストンが第1方向に変位する。これにより、ブレーキパッドがディスクロータに押し当てられる。一方、ブレーキペダルの踏み込みを解除することにより、油圧機構の油圧が低下し、ピストンが第1方向とは逆方向の第2方向に変位する。これにより、ブレーキパッドがディスクロータから離れる。
電動式のブレーキ装置60のブレーキキャリパは、モータと、ピストンと、モータの回転軸の回転によりピストンを変位させる機構(例えば、ボールねじ)とを備えている。ブレーキペダルが踏み込まれることにより、モータの巻線に通電され、モータの回転軸が回転し、ピストンが第1方向に変位する。これにより、ブレーキパッドがディスクロータに押し当てられる。一方、ブレーキペダルの踏み込みを解除することにより、モータの巻線への通電が停止され、ピストンが第2方向に変位する。これにより、ブレーキパッドがディスクロータから離れる。
ブレーキCU63は、マイコン63a(「第3コンピュータ」に相当)を主体として構成され、マイコン63aは、CPUを備えている。マイコン63aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン63aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン63aは、自身が備える記憶部に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、ブレーキ装置60の制動力制御処理等のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
ブレーキCU63は、ブレーキペダルが踏み込まれていると判定した場合、ブレーキランプ62を点灯させる処理も行う。
MGCU36、EVCU50及びブレーキCU63は、所定の通信形式(例えばCAN)により互いに情報のやりとりが可能になっている。
車両10は、アクセルセンサ70と、操舵角センサ71とを備えている。アクセルセンサ70は、ドライバのアクセル操作部材としてのアクセルペダルの踏込量であるアクセルストロークを検出する。操舵角センサ71は、ドライバによるステアリングホイールの操舵角を検出する。アクセルセンサ70及び操舵角センサ71の検出値は、EVCU50に入力される。EVCU50は、アクセルセンサ70により検出されたアクセルストロークと、操舵角センサ71により検出された操舵角とに基づいて、ロータ22の指令回転速度Nm*を算出する。EVCU50は、ロータ22の回転速度を、算出した指令回転速度Nm*にフィードバック制御するための操作量として、指令トルクTreqを算出する。EVCU50は、算出した指令トルクTreqをMGCU36に送信する。ちなみに、自動運転機能が車両10に備えられている場合、EVCU50は、自動運転モードが実行されるときにおいて、例えば、車両10が備える自動運転CUにより設定される車両10の目標走行速度に基づいて、指令回転速度Nm*を算出してもよい。
図2を用いて、ブレーキCU63により実行される制動制御について説明する。この処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS10では、ブレーキセンサ61により検出されたブレーキストロークに基づいて、車輪に対して付与すべき要求制動トルクFbrkを算出する。
ステップS11では、回生可能制動トルクFgmaxをEVCU50から受信する。回生可能制動トルクFgmaxは、回生駆動制御によって車輪に付与可能な制動トルクの現状の最大値である。
ステップS12では、受信した回生可能制動トルクFgmaxと、算出した要求制動トルクFbrkとに基づいて、回生制動指令トルクFgbと、摩擦制動指令トルクFfbとを算出する。本実施形態では、回生制動指令トルクFgbを、回生可能制動トルクFgmaxと同じ値にする。また、要求制動トルクFbrkから回生制動指令トルクFgbを差し引くことにより、摩擦制動指令トルクFfbを算出する。
ステップS13では、算出した回生制動指令トルクFgbをEVCU50に送信する。EVCU50は、受信した回生制動指令トルクFgbを指令トルクTreqとしてMGCU36に送信する。回生制動指令トルクFgbが大きいほど、回転電機20からインバータ30を介して蓄電池40へと供給される発電電力が大きくなる。
ステップS14では、算出した摩擦制動指令トルクFfbをブレーキ装置60に送信する。これにより、ブレーキ装置60により車輪へと付与される摩擦制動トルクが摩擦制動指令トルクFfbに制御される。
続いて、図3を用いて、MGCU36により実行される回転電機20のトルク制御について説明する。図3に示す例では、トルク制御として、電流フィードバック制御が行われる。なお、電流フィードバック制御に代えて、トルクフィードバック制御が行われてもよい。
第1フィルタ部80及び第2フィルタ部81には、EVCU50から送信された指令トルクTreqが入力される。第1フィルタ部80及び第2フィルタ部81は、入力された指令トルクTreqにローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理は、例えば、1次遅れ要素のローパスフィルタ処理である。第1フィルタ部80は、例えば、指令トルクTreqが急変した場合であっても、回転電機20の実際のトルクの急変を防止するために設けられている。第1フィルタ部80におけるローパスフィルタ処理の時定数τ1は、第2フィルタ部81におけるローパスフィルタ処理の時定数τ2よりも小さい。
切替部82は、第1フィルタ部80においてローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreq、又は第2フィルタ部81においてローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreqのいずれかを選択して出力する。
指令電流設定部83は、切替部82から出力された指令トルクTreqである要求トルクTrq*を取得する。指令電流設定部83は、要求トルクTrq*に基づいて、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。d,q軸指令電流Id*,Iq*は、例えば、最小電流最大トルク制御(MTPA)により算出されればよい。
2相変換部84は、電流センサ32の検出値と、回転角センサ34により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
d軸偏差算出部85は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算することにより、d軸電流偏差ΔIdを算出する。q軸偏差算出部86は、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算することにより、q軸電流偏差ΔIqを算出する。
d軸指令電圧算出部87は、d軸電流偏差ΔIdに基づいて、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。q軸指令電圧算出部88は、q軸電流偏差ΔIqに基づいて、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。なお、d軸指令電圧算出部87及びq軸指令電圧算出部88で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
3相変換部89は、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*及び電気角θeに基づいて、2相回転座標系におけるd,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*は、電気角で位相が120°ずつずれた正弦波状の波形となる。
信号生成部90は、U,V,W相指令電圧VU*,VV*,VW*及び電圧センサ33により検出された電源電圧Vdcに基づいて、U相の上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動信号GUH,GULと、V相の上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動信号GVH,GVLと、W相の上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動信号GWH,GWLとを生成する。詳しくは、U相を例にして説明すると、信号生成部90は、U相指令電圧VU*を電源電圧Vdcの1/2で除算することにより、U相規格化指令電圧VUSを算出する。信号生成部90は、U相規格化指令電圧VUSと、キャリア信号Scとの大小比較に基づくPWM制御により、U相の上,下アームスイッチSWH,SWLの駆動信号GUH,GULを生成する。キャリア信号Scは、例えば、上昇速度及び下降速度が等しい三角波信号である。
信号生成部90は、生成したU相の各駆動信号GUH,GULをU相の各スイッチSWH,SWLのゲートに対して出力し、生成したV相の各駆動信号GVH,GVLをV相の各スイッチSWH,SWLのゲートに対して出力し、生成したW相の各駆動信号GWH,GWLをW相の各スイッチSWH,SWLのゲートに対して出力する。なお、MGCU36の制御周期は、キャリア信号Scの周期よりも十分に短い。
続いて、MGCU36及びEVCU50が行う過熱保護制御について説明する。
まず、図4を用いて、MGCU36が行う過熱保護制御について説明する。図4に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、MGCU36、ブレーキCU63及びEVCU50の制御周期は、同じ周期であってもよいし、異なる周期であってもよい。
ステップS20では、回転電機20の現在のトルクTrq及び回転速度Nmを取得し、現在の回転速度Nm及びトルクTrqから定まる動作点が保護対象領域内であるか否かを判定する。トルクTrqが正の値の場合、力行駆動制御が行われる。一方、トルクTrqが負の値の場合、回生駆動制御が行われる。ちなみに、現在のトルクTrqは、例えば、電流センサ32及び回転角センサ34の検出値に基づいて算出されたトルクであってもよいし、切替部82から出力された要求トルクTrq*であってもよい。また、現在の回転速度Nmは、例えば回転角センサ34の検出値に基づいて算出されればよい。
保護対象領域は、図5に示すように、高速領域Rhr、力行側高トルク領域Rhtm及び回生側高トルク領域Rhtgである。高速領域Rhrは、連続動作領域Rccに隣接して、かつ、連続動作領域Rccに対して高速側の領域である。本実施形態において、高速領域Rhrは、ステータ巻線21に弱め界磁電流を流す弱め界磁制御が行われる領域である。高速領域Rhrにおいて回転速度が高い側の境界が、回転速度Nmの最大値Nmaxである。
連続動作領域Rccは、その領域内の回転速度及びトルクであれば、回転電機20及びインバータ30が過熱状態になることなく連続して駆動できる領域である。連続動作領域Rccにおいて高トルク側の境界が、力行駆動制御が行われる場合の連続トルクの上限値TmC、及び回生駆動制御が行われる場合の連続トルクの上限値TgCである。
力行側高トルク領域Rhtm及び回生側高トルク領域Rhtgは、連続動作領域Rccに隣接して、かつ、連続動作領域Rccに対して高トルク側の領域である。また、力行側高トルク領域Rhtm及び回生側高トルク領域Rhtgの高速側は、高速領域Rhrに隣接している。各高トルク領域Rhtm,Rhtg及び連続動作領域Rccと、高速領域Rhrとの境界を規定する回転速度が高速側閾値Nthである。MGCU36は、回転速度Nmが高速側閾値Nth以上であると判定した場合、現在の動作点が高速領域Rhrであると判定する。
高速領域Rhr、力行側高トルク領域Rhtm及び回生側高トルク領域Rhtgは、その領域内の回転速度及びトルクであると、回転電機20及びインバータ30の少なくとも一方が過熱状態になるおそれがあるため、回転電機20を継続して駆動する時間が制約される領域である。
なお、図5において、TmLは、高速領域Rhr及び力行側高トルク領域Rhtmにおける正の上限トルクを示し、TgLは、高速領域Rhr及び回生側高トルク領域Rhtgにおける負の上限トルクを示す。
図4の説明に戻り、ステップS20において現在の動作点が保護対象領域外であると判定した場合には、ステップS21に進み、モータ温度センサ35により検出されたモータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超えているか否かを判定する。制限開始温度TempHは、回転電機20及びインバータ30の少なくとも一方が過熱状態であることを判定できる温度に設定されている。本実施形態において、ステップS21の処理が「判定部」に相当する。
ステップS21においてモータ温度Tmgdが制限開始温度TempH以下であると判定した場合には、ステップS22に進み、第1フィルタ部80によりローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreqが、切替部82から指令電流設定部83に出力されるようにする。
一方、ステップS21においてモータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超えていると判定した場合には、ステップS23に進み、回転電機20のトルクが、切替部82から出力された要求トルクTrq*よりも小さくなるように上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行う。ステップS23のトルク制限処理では、例えば、図6に示すように、要求トルクTrq*に制限係数Klimを乗算し、この乗算値に回転電機20のトルクを制御すべく上,下アームスイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行えばよい。制限係数Klimは、モータ温度Tmgdが制限開始温度TempH以下の場合に1となり、モータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超える場合、モータ温度Tmgdが高いほど小さい値になる。モータ温度Tmgdが最終制限温度THH(>TempH)になる場合、制限係数Klimが0になる。
また、ステップS23では、トルク制限処理を行っている旨をEVCU50に対して送信する。なお、モータ温度Tmgdが制限開始温度TempH以下になったと判定した場合、EVCU50に対するトルク制限処理の通知を停止する。
ステップS24では、後述するステップS26の過熱予測通知がEVCU50に送信されたとの第1条件、及び回生駆動制御が行われているとの第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。ステップS24において第1,第2条件の少なくとも一方が成立していないと判定した場合には、ステップS22に進む。
ステップS20において現在の動作点が保護対象領域内であると判定した場合には、ステップS25に進み、モータ温度Tmgdが通知温度TempL(<TempH)を超えているか否かを判定する。通知温度TempLは、回転電機20のトルク制御を継続した場合に回転電機20及びインバータ30の少なくとも一方が過熱状態になるか否かを予測するための閾値である。通知温度TempLは、例えば、動作点が高速領域Rhr内である場合においてモータ温度Tmgdが制限開始温度TempHに到達する前に、車両10を所定の減速度で減速させて停止させるのに必要な時間を確保できるような値に設定されていればよい。
ステップS25においてモータ温度Tmgdが通知温度TempLを超えていると判定した場合には、ステップS26に進み、EVCU50に対して過熱予測通知を送信する。
ステップS26の処理の完了後、ステップS21において肯定判定した場合には、ステップS23を経由してステップS24に進む。ステップS24において第1,第2条件が成立していると判定した場合には、ステップS27に進み、第2フィルタ部81によりローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreqが、切替部82から指令電流設定部83に出力されるようにする。
ステップS25においてモータ温度Tmgdが通知温度TempL以下であると判定した場合には、ステップS28に進み、過熱予測通知がEVCU50に送信されたとの上記第1条件が成立しているか否かを判定する。ステップS28において第1条件が成立していないと判定した場合には、ステップS22に進む。
一方、ステップS28において第1条件が成立していると判定した場合には、ステップS29に進み、モータ温度Tmgdが解除温度Temp0(<TempL)まで低下したか否かを判定する。モータ温度Tmgdが解除温度Temp0よりも高いと判定した場合には、ステップS27に進む。
一方、モータ温度Tmgdが解除温度Temp0まで低下したと判定した場合には、ステップS30に進み、EVCU50に過熱予測通知の解除信号を送信する。この場合、ステップS24の過熱予測通知がEVCU50に送信されたとの第1条件が成立しなくなり、また、ステップS28で肯定判定されなくなる。
続いて、図7を用いて、EVCU50が行う過熱保護制御について説明する。図7に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS33では、MGCU36から過熱予測通知を受信したか否かを判定する。MGCU36から過熱予測通知がまだ送信されていない場合、又はMGCU36から過熱予測通知の解除信号が送信された場合には、ステップS33において否定判定する。
ステップS33において肯定判定した場合には、ステップS34に進み、ドライバに対して、その後車両10の走行速度が低下させられる旨、又は回転電機20のトルクが低下させられる旨を通知する。これは、その旨をドライバに通知しておくことにより、後述するステップS35の処理が実行されたとしても、ドライバに違和感を与えることを極力防止するためである。
ちなみに、ドライバに対しては、例えば、ナビゲーション装置等の表示部、光、振動、音及び匂いのうち、少なくとも1つにより通知すればよい。また、ステップS34において、ブレーキランプ62を点灯させる指示をブレーキCU63に対して行ってもよい。これにより、自車両10の後続車両等、自車両10がこれから減速することを自車両10の周囲の車両に対して知らせることができる。
ステップS35では、現在の動作点が高速領域Rhr内であると判定した場合、動作点を高速領域Rhrから連続動作領域Rccに移行させるために、MGCU36に送信する指令トルクTreqを低下させる。この場合、MGCU36の制御により、ロータ22の回転速度が低下させられ、車両10の走行速度が低下する。これにより、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。本実施形態では、ステップS35において、車両10の減速度が所定の減速度以下となるように、送信する指令トルクTreqを0に向かって漸減させる。これにより、車両10を安全な場所まで退避走行させて停車させるのに必要な時間を確保する。なお、所定の減速度は、車両10の乗員の安全を確保できる値(例えば、0.2G)に設定されている。また、ステップS35の処理が「回転低下部」に相当する。
ここで、ロータ22の回転速度を低下させるのは、以下に説明する理由のためである。高速領域Rhrでは弱め界磁制御が行われているため、所定トルクを発生させるためにステータ巻線21に流す電流ベクトルの大きさが、弱め界磁制御が行われていない場合よりも大きくなる。その結果、高速領域Rhrにおいて指令トルクTreqを例えば0まで低下させたとしても、ステータ巻線21に流れる相電流の実効値[Arms]を回転電機20(具体的にはステータ巻線21)の常時許容電流以下にできないことがある。
この場合、モータ温度Tmgdがさらに上昇してシャットダウン温度Tshut(>THH)に到達し、各相の上,下アームスイッチSWH,SWLを全てオフするシャットダウン制御がMGCU36により行われる。しかしながら、高速領域Rhrではステータ巻線21に発生する逆起電圧が高いため、電力回生が発生し、ステータ巻線21、上アームスイッチSWHのダイオードDH、コンデンサ31、及び下アームスイッチSWLのダイオードDLを含む閉回路に電流が流れる。その結果、回転電機20及びインバータ30の温度がさらに上昇し、回転電機20及びインバータ30が故障し得る。そこで、指令トルクTreqを低下させることにより、逆起電圧を低下させ、電力回生が発生しないようにする。これにより、回転電機20及びインバータ30が過熱異常で故障することを防止する。
ステップS35において、現在の動作点が高速領域Rhr内であると判定した場合、指令トルクTreqの低下処理に加えて、ブレーキ装置60により車輪に摩擦制動トルクを付与する指示をブレーキCU63に行ってもよい。機械式のブレーキ装置60によれば、回生トルクを発生させるための電流をステータ巻線21に流す必要がない。このため、回転電機20及びインバータ30の温度上昇を好適に抑制しつつ、ロータ22の回転速度を低下させることができる。また、ブレーキ装置60により車輪に摩擦制動トルクを付与する処理は、例えば以下の場合にも有効である。車両10の走行路面が下り勾配の場合、指令トルクTreqを低下させたとしても、ロータ22の回転速度が低下しない場合があり得る。また、蓄電池40のSOCが規定量よりも高い高SOC状態の場合、蓄電池40の過充電を防止するために回生トルクが制限されたり、回生トルクを発生できなかったりする場合があり得る。これらの場合において、ブレーキ装置60により車輪に摩擦制動トルクを付与する処理が有効である。
なお、ステップS35において、現在の動作点が高トルク領域Rhtm,Rhtg内であると判定した場合、動作点を高トルク領域Rhtm,Rhtgから連続動作領域Rccに移行させるために、MGCU36に送信する指令トルクTreqを徐々に低下させてもよい。この場合、MGCU36の制御により、回転電機20のトルクが低下させられる。これにより、回転電機20及びインバータ30を過熱から保護する。
ステップS36では、MGCU36からトルク制限処理の通知を受信したとの第3条件、及び回生駆動制御が行われているとの上記第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。ステップS36において第2,第3条件が成立していると判定した場合には、ステップS37に進む。ステップS37の処理は、「処理部」に相当し、回生駆動制御の実行に起因して回転電機20及びインバータ30が過熱状態になることを抑制するための処理である。ステップS37の処理の開始タイミングにおいてブレーキCU63で用いられる摩擦制動指令トルクFfbとMGCU36で用いられる回生制動指令トルクFgbとの和を合計制動トルクFsum(=Ffb+Fgb)と称すこととする。
ステップS37では、ブレーキCU63で用いられる摩擦制動指令トルクFfbを現在の値から合計制動トルクFsumに向かってステップ状に増加させる指示をブレーキCU63に送信する。例えば、現時点で摩擦制動トルクが車輪に付与されていない場合、摩擦制動指令トルクFfbが0から合計制動トルクFsumに向かってステップ状に増加させられる。
また、ステップS37では、ブレーキCU63に対する上記指示とともに、MGCU36に送信する回生制動指令トルクFgbを現在の値から0に向かってステップ状に減少させる。
ステップS37の処理が行われる状況は、図3に示した指令電流設定部83で用いられる要求トルクTrq*として、時定数が相対的に大きい第2フィルタ部81のローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreqが用いられる状況である。この場合、MGCU36で用いられる要求トルクTrq*がステップS37の処理によって減少し始めてから0になるまでの時間は、指令電流設定部83で用いられる要求トルクTrq*が、時定数が相対的に小さい第1フィルタ部80のローパスフィルタ処理が施された指令トルクTreqである場合よりも長くなる。このため、ブレーキ装置60を用いて車輪に付与される摩擦制動トルクの応答性が、駆動輪11に付与される回生制動トルクの応答性よりも低い場合であっても、回生トルクから摩擦制動トルクへと合計制動トルクFsumの配分を変える過渡期間において、合計制動トルクFsumに対する実際の制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
ちなみに、第2フィルタ部81のローパスフィルタ処理の時定数τ2と、摩擦制動指令トルクFfbがステップ状に変化させられた場合におけるブレーキ装置60の摩擦制動トルクの時定数とが同じ値にされていればよい。
また、合計制動トルクFsumに対する実際の制動トルクの乖離を小さくするために、以下に説明する第2時間T2に対する第1時間T1の時間比率RT(=T1/T2)が所定範囲になるように、第2フィルタ部81のローパスフィルタ処理の時定数τ2が設定されていてもよい。
ブレーキ装置60が油圧式の場合、第1時間T1は、ブレーキペダルの踏み込みが開始されてブレーキ装置60の油圧が上昇し始めてから、ブレーキパッドがディスクロータに当接するまでの時間である。ブレーキ装置60が電動式の場合、第1時間T1は、ブレーキペダルの踏み込みが開始されてモータの巻線に通電され始めてから、ブレーキパッドがディスクロータに当接するまでの時間である。
第2時間T2は、MGCU36に送信する回生制動指令トルクFgbが現在の値から0に向かってステップ状に減少させられてから、ステータ巻線21に流れる電流が0になるまで、又は指令電流設定部83に入力される要求トルクTrq*が0になるまでの時間である。
時間比率RTが、例えば、「0.5≦RT≦1.5」になり、望ましくは「0.7≦RT≦1.3」になり、より望ましくは「0.8≦RT≦1.2」になるように、上記時定数τ2が設定されればよい。これにより、回生トルクから摩擦制動トルクへと合計制動トルクFsumの配分を変える過渡期間において、実際の回生トルク及び摩擦制動トルクの和が、例えば、「0.9×Fsum~1.1×Fsum」の範囲、又は「0.95×Fsum~1.05×Fsum」の範囲になるようにすればよい。
以上説明した本実施形態によれば、インバータ30及び回転電機20が過熱状態になることを抑制しつつ、合計制動トルクFsumに対する実際の制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
図4の説明に戻り、MGCU36は、ステップS27の処理の実行後、ステップS21又はS24において否定判定した場合、切替部82により、指令トルクTreqにローパスフィルタ処理を施す主体を第2フィルタ部81から第1フィルタ部80に切り替える。これにより、指令トルクTreqに施されるローパスフィルタ処理の時定数が小さくなる。
その後、MGCU36は、ステップS28,S29において肯定判定した場合、ステップS30においてEVCU50に過熱予測通知の解除信号を送信する。この場合、EVCU50は、図7におけるステップS35の処理の実行を中止する。これにより、車両10の走行制限を解除することができる。
<第1実施形態の変形例>
・MGCU36は、モータ温度Tmgdが通知温度TempLを超えたと判定した場合、モータ温度Tmgdが通知温度TempL以下であると判定する場合よりも、ステータ巻線21に流れる電流の制限度合い(例えば、電流の低下速度)を高くしてもよい。
また、MGCU36は、モータ温度Tmgdが許容上限温度を超えたと判定した場合、モータ温度Tmgdが許容上限温度以下であると判定する場合よりも、図4のステップS23における要求トルクTrq*の制限度合いを高くしてもよい。ここで、許容上限温度は、シャットダウン温度Tshutよりも高い温度であり、回転電機20及びインバータ30の信頼性を維持可能な温度の上限値である。
・図7のステップS35において指令トルクTreqを0ではなく、0よりも高い所定値まで低下させてもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、MGCU36及びEVCU50が実行する過熱保護制御が変更されている。また、本実施形態において、MGCU36は、先の図3に示す第1フィルタ部80、第2フィルタ部81及び切替部82を備えていない。このため、EVCU50から送信された指令トルクTreqは、指令電流設定部83に入力される。指令電流設定部83は、要求トルクTrq*に代えて、指令トルクTreqに基づいてd,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。
まず、図8を用いて、MGCU36が行う過熱保護制御について説明する。図8に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS40では、図4のステップS20と同様に、回転電機20の現在のトルクTrq及び回転速度Nmを取得し、現在の回転速度Nm及びトルクTrqから定まる動作点が保護対象領域内であるか否かを判定する。
ステップS40において現在の動作点が保護対象領域外であると判定した場合には、ステップS41に進み、モータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超えているか否かを判定する。
ステップS41においてモータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超えていると判定した場合には、ステップS42に進み、ステップS23と同様の処理を行う。
ステップS40において現在の動作点が保護対象領域内であると判定した場合には、ステップS43に進み、モータ温度Tmgdが通知温度TempL(<TempH)を超えているか否かを判定する。本実施形態において、ステップS43の処理が「判定部」に相当する。
ステップS43においてモータ温度Tmgdが通知温度TempLを超えていると判定した場合には、ステップS44に進み、EVCU50に対して過熱予測通知を送信する。その後、ステップS41に進む。
ステップS43においてモータ温度Tmgdが通知温度TempL以下であると判定した場合には、ステップS45に進み、過熱予測通知がEVCU50に送信されたとの上記第1条件が成立しているか否かを判定する。ステップS45において第1条件が成立していると判定した場合には、ステップS46に進み、モータ温度Tmgdが解除温度Temp0(<TempL)まで低下したか否かを判定する。モータ温度Tmgdが解除温度Temp0まで低下したと判定した場合には、ステップS47に進み、EVCU50に対して過熱予測通知の解除信号を送信する。
続いて、図9を用いて、EVCU50が行う過熱保護制御について説明する。図9に示す処理は、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
ステップS50では、ステップS33と同様に、MGCU36から過熱予測通知を受信したか否かを判定する。MGCU36から過熱予測通知がまだ送信されていない場合、又はMGCU36から過熱予測通知の解除信号が送信された場合には、ステップS50において否定判定する。
ステップS50において肯定判定した場合には、ステップS51に進み、ステップS34と同様の処理を行う。続くステップS52では、ステップS35と同様の処理を行う。ステップS52の処理が「回転低下部」に相当する。
ステップS53では、動作点が保護対象領域内になった後、最初にステップS50において肯定判定してからの経過時間をカウントする。そして、カウントした経過時間が判定時間Cjdeに到達したか否かを判定する。
ステップS53において到達したと判定した場合には、ステップS54に進み、ブレーキ装置60により車輪に摩擦制動トルクを付与する指示をブレーキCU63に対して送信する。ステップS52においてブレーキ装置60から車輪に摩擦制動トルクが付与されていない場合には、過熱予測通知が受信されてから判定時間Cjdeが経過した場合に、ブレーキ装置60から車輪に摩擦制動トルクが付与される。ちなみに、判定時間Cjdeは、モータ温度Tmgdが上昇して制限開始温度TempHに到達する前にステップS54の処理を実行できる値に設定されていればよい。
ステップS55では、MGCU36からトルク制限処理の通知を受信したか否かを判定する。ステップS55において肯定判定した場合には、ステップS56に進み、MGCU36に送信する回生制動指令トルクFgbを現在の値から0に向かって漸減させる。
ちなみに、ステップS56の処理の開始タイミングにおいてブレーキCU63で用いられる摩擦制動指令トルクFfbとMGCU36で用いられる回生制動指令トルクFgbとの和を合計制動トルクFsumと称すこととする。この場合、実際の回生トルク及び摩擦制動トルクの和が、例えば、「0.9×Fsum~1.1×Fsum」の範囲、又は「0.95×Fsum~1.05×Fsum」の範囲になるように、回生制動指令トルクFgbの漸減に伴い摩擦制動指令トルクFfbを漸増させてもよい。
以上説明した本実施形態では、回生駆動制御が行われている場合において、モータ温度Tmgdが通知温度TempLを超えたと判定された場合、モータ温度Tmgdが制限開始温度TempHを超えたと判定される前であっても、車輪に摩擦制動トルクを付与するようにブレーキ装置60が制御される。このため、回生発電を用いた制動からブレーキ装置60を用いた制動に切り替える場合において、インバータ30及び回転電機20が過熱状態になることを抑制しつつ、制動トルクの不足度合いが大きくなることを防止できる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第2実施形態において、図9のステップS56の処理を、インバータ30を構成する全相の上,下アームスイッチSWH,SWLをオフする処理に変更してもよい。
・上記各実施形態の各処理において、モータ温度Tmgdに代えて、インバータ30の温度が用いられたり、モータ温度Tmgd及びインバータ30の温度のうち高い方の温度が用いられたりしてもよい。ここで、インバータ30の温度は、例えば、インバータ30を構成する上,下アームスイッチSWH,SWLの温度を検出するセンサ(例えば、感温ダイオード又はサーミスタ)により検出されればよい。
EVCU50は、指令回転速度Nm*をMGCU36に送信してもよい。この場合、MGCU36は、ロータ22の回転速度を、受信した指令回転速度Nm*にフィードバック制御するための操作量として、指令トルクTreqを算出すればよい。また、EVCU50は、図7のステップS32又は図9のステップS52において、MGCU36に送信する指令回転速度Nm*を所定回転速度まで低下させればよい。ここで、所定回転速度は、0であってもよいし、0よりも高い値であってもよい。
・EVCU50、MGCU36及びブレーキCU63の演算機能が1つのCUに集約されていてもよい。
・インバータを構成する半導体スイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、ボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。この場合、スイッチの高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
・回転電機としては、星形結線されたものに限らず、例えばΔ結線されたものであってもよい。
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
10…車両、20…回転電機、30…インバータ、36…MGCU、50…EVCU、60…ブレーキ装置、63…ブレーキCU。

Claims (7)

  1. ロータ(22)及びステータ巻線(21)を有する回転電機(20)と、
    前記ステータ巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、
    前記ロータから動力が伝達されることにより回転する駆動輪(11)と、
    機械式のブレーキ装置(60)と、
    を備える車両(10)に適用される車両用制御装置において、
    前記ブレーキ装置から前記車両の車輪に付与する摩擦制動トルクを制御すべく、前記ブレーキ装置の制御を行うブレーキ制御部(63)と、
    前記回転電機の回生発電によって発生する回生トルクを制御すべく、前記インバータのスイッチング制御を行うインバータ制御部(36)と、
    前記回転電機及び前記インバータの少なくとも一方の温度を取得し、取得した温度が判定温度(TempH,TempL)を超えたか否かを判定する判定部と、を備え、
    前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記判定温度を超えたと判定されたとき、前記回生トルクが低下して0になる前に、前記車輪に摩擦制動トルクを付与するように前記ブレーキ制御部により前記ブレーキ装置を制御する、車両用制御装置。
  2. 前記ブレーキ制御部は、前記摩擦制動トルクを摩擦制動指令トルクに制御すべく、前記ブレーキ装置の制御を行い、
    前記インバータ制御部は、前記回生トルクを回生制動指令トルクに制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
    前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が、前記判定温度としての制限開始温度(TempH)を超えたと判定されたとき、前記ブレーキ制御部で用いられる前記摩擦制動指令トルクを増加し、かつ、前記インバータ制御部で用いられる前記回生制動指令トルクを0に向かって減少させる処理部を備え、
    前記インバータ制御部は、
    前記回生トルクの制御に用いる前記回生制動指令トルクにローパスフィルタ処理を施し、
    前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が前記制限開始温度以下であると判定されるときよりも、前記ローパスフィルタ処理の時定数を大きくする、請求項1に記載の車両用制御装置。
  3. 取得した温度が前記制限開始温度よりも低い通知温度(TempL)を超えたと判定された場合、前記ブレーキ制御部による前記ブレーキ装置の制御、及び前記インバータ制御部による前記回生発電のための前記スイッチング制御の少なくとも一方により、前記ロータの回転速度を低下させる処理を行う回転低下部を備える、請求項2に記載の車両用制御装置。
  4. 前記インバータ制御部は、前記回転電機の回生トルクを回生制動指令トルクに制御すべく、前記スイッチング制御を行い、
    前記判定部は、取得した温度が、前記判定温度としての通知温度(TempL)、又は前記通知温度よりも高い制限開始温度(TempH)を超えたか否かを判定し、
    前記ブレーキ制御部は、前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記通知温度を超えたと判定されたとき、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定される前であっても、前記車輪に前記摩擦制動トルクを付与するように前記ブレーキ装置を制御し、
    前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記制限開始温度を超えたと判定されたとき、前記回生トルクの制御に用いる前記回生制動指令トルクを0に向かって減少させる処理又は前記スイッチング制御を停止する処理のいずれかを行う処理部を備える、請求項1に記載の車両用制御装置。
  5. 取得した温度が前記通知温度を超えたと判定された場合、前記ブレーキ制御部による前記ブレーキ装置の制御、及び前記インバータ制御部による前記回生発電のための前記スイッチング制御の少なくとも一方により、前記ロータの回転速度を低下させる処理を行う回転低下部を備える、請求項4に記載の車両用制御装置。
  6. 前記判定部は、取得した温度が前記通知温度を超えたと判定された後、取得した温度が前記通知温度よりも低い解除温度(Temp0)以下になったか否かを判定し、
    前記回転低下部は、取得した温度が前記解除温度以下になったと判定された場合、前記ロータの回転速度を低下させる処理の実行を中止する、請求項3又は5に記載の車両用制御装置。
  7. ロータ(22)及びステータ巻線(21)を有する回転電機(20)と、
    前記ステータ巻線に電気的に接続されるインバータ(30)と、
    前記ロータから動力が伝達されることにより回転する駆動輪(11)と、
    機械式のブレーキ装置(60)と、
    コンピュータ(36a,50a,63a)と、
    を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
    前記コンピュータに、
    前記ブレーキ装置から前記車両の車輪に付与する摩擦制動トルクを制御すべく、前記ブレーキ装置の制御を行う処理と、
    前記回転電機の回生発電によって発生する回生トルクを制御すべく、前記インバータのスイッチング制御を行う処理と、
    前記回転電機及び前記インバータの少なくとも一方の温度を取得し、取得した温度が判定温度(TempH,TempL)を超えたか否かを判定する処理と、
    前記回生発電が行われている場合において、取得した温度が前記判定温度を超えたと判定したとき、前記回生トルクが低下して0になる前に、前記車輪に摩擦制動トルクを付与するように前記ブレーキ装置を制御する処理と、を実行させる、プログラム。
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