JP2023003634A - シリコンウェーハ用リンス剤組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】一態様において、シリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)を低減できるリンス剤組成物を提供する。【解決手段】本開示は、一態様において、カチオン性界面活性剤(成分A)を含み、成分Aは、分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム又はその塩(成分A1)、及び、分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム又はその塩(成分A2)の少なくとも一方である、シリコンウェーハ用リンス剤組成物に関する。【選択図】なし

Description

本開示は、シリコンウェーハ用リンス剤組成物及びその使用方法に関する。
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコンウェーハ(ベアウェーハ)の表面欠陥(LPD:Light point defects)や表面粗さ(ヘイズ)の低減に対する要求はますます厳しくなっている。
シリコンウェーハの品質を向上する目的で、シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨工程は、ヘイズの抑制と研磨されたシリコンウェーハ表面の濡れ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等のLPDの低減とを目的として行われている。
砥粒を含む研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨した場合、通常、研磨液組成物中の砥粒等が研磨後のシリコンウェーハに付着する。この付着した砥粒等を除去するため、研磨後のシリコンウェーハをリンス剤組成物でリンスすることが一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、第4級ポリアンモニウム塩、炭素数6以上の第4級アンモニウム塩、及び、アミド構造を有するアルキル化されたポリマーから選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに、水性キャリヤを含む、リンス組成物が提案されている。同文献の実施例では、炭素数6以上の第4級アンモニウム塩として、塩化オクチルトリメチルアンモニウムや塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが用いられている。
特開2020-203980号公報
特許文献1では、表面粗さ(ヘイズ)を改善するリンス剤組成物が提案されているが、近年、研磨後のシリコンウェーハの表面品質に対する要求はますます厳しくなっており、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減化が望まれている。
そこで、本開示は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減できるリンス剤組成物及び該リンス剤組成物の使用方法を提供する。
本開示は、一態様において、カチオン性界面活性剤(成分A)を含み、成分Aは、分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム又はその塩(成分A1)、及び、分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム又はその塩(成分A2)の少なくとも一方である、シリコンウェーハ用リンス剤組成物に関する。
本開示は、一態様において、研磨に用いた研磨機と同じ研磨機に供給されるリンス剤組成物の使用方法であって、本開示のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、又は、研磨に用いた研磨液組成物の研磨機への供給停止後、本開示のリンス剤組成物を研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む、リンス剤組成物の使用方法。
に関する。
本開示によれば、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減可能なリンス剤組成物及びその使用方法を提供できる。
本開示は、特定のカチオン性界面活性剤を有するリンス剤組成物を用いて、シリコンウェーハの表面をリンス処理することで、ウェーハ表面の濡れ性が良好となり、表面粗さ(ヘイズ)を低減できるという知見に基づく。
すなわち、本開示は、一態様において、カチオン性界面活性剤(成分A)を含み、成分Aは、分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム又はその塩(成分A1)、及び、分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム又はその塩(成分A2)の少なくとも一方である、シリコンウェーハ用リンス剤組成物(以下、「本開示のリンス剤組成物」ともいう)に関する。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減できる。
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
例えば、単結晶構造のシリコンウェーハは、ヒドロキシイオンで溶解されるが、溶解される部分と溶解されない部分が存在し、表面を均一溶解できないため、表面粗さ(ヘイズ)が悪化すると推定される。不溶解部分の化学構造は不明であるが、親水性の高いヒドロキシイオンで溶解反応が進行しないことから、疎水的な性質を有していると推定される。
本開示では、2以上の長鎖アルキル鎖を有する第4級アンモニウム又はその塩(成分A1)及び1つ以上の長鎖アルキル鎖を有する第4級ホスホニウム又はその塩(成分A2)の少なくとも一方の疎水性の高いカチオン性界面活性剤を用いる。疎水性の長鎖アルキル鎖がシリコン基板上の疎水的な不溶解部分に吸着し、カチオン性界面活性剤のカチオン部(N+、P+)が溶解剤であるマイナス電荷を帯びたヒドロキシイオンを引き付けるため溶解が進行するか、カチオン性界面活性剤によって溶解されると考えられる。その結果、溶解部分と不溶解部分の溶解量差が小さくなり、表面粗さ(ヘイズ)を低減できると考えられる。
さらに、カチオン性界面活性剤の疎水性が高くなり、疎水性の不溶解部分への吸着量が多くなることで、エッチング反応はより進行すると考えられ、1つの長鎖アルキル鎖を有するよりも、2つ以上の長鎖アルキル鎖を有する疎水性の高いカチオン性界面活性剤が、より高いエッチング性能を有すると考えられる。その結果、溶解部分と不溶解部分の溶解量差をより小さくし、表面粗さ(ヘイズ)を低減できると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
[カチオン性界面活性剤(成分A)]
本開示のリンス剤組成物は、カチオン性界面活性剤(以下、「成分A」ともいう)を含有する。成分Aは、分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム又はその塩(以下、「成分A1」ともいう)、及び、分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム又はその塩(以下、「成分A2」ともいう)の少なくとも一方である。成分A1は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分A2は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示において、「分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム」とは、一又は複数の実施形態において、少なくとも2つの炭素数10以上18以下のアルキル基が、窒素原子に結合していることを意味する。本開示において、「分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム」とは、一又は複数の実施形態において、少なくとも1つの炭素数10以上18以下のアルキル基が、リン原子に結合していることを意味する。前記アルキル基の炭素数は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、10以上であって、11以上が好ましく、12以上がより好ましく、そして、18以下であって、16以下が好ましく、15以下がより好ましい。同様の観点から、前記アルキル基の炭素数は、10以上18以下であって、11以上18以下が好ましく、12以上18以下が好ましく、12以上16以下がより好ましく、12以上15以下が更に好ましい。分子内に含まれる炭素数10以上18以下のアルキル基の数は、成分A1の場合、2以上、3以上又は4が挙げられ、好ましくは2又は3、より好ましくは2である。成分A2の場合、1以上、2以上、3以上又は4が挙げられ、好ましくは1又は2である。
成分Aは、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、分子内の炭素数の合計が22以上が好ましく、24以上がより好ましく、26以上が更に好ましく、そして、38以下が好ましく、34以下がより好ましく、32以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Aは、分子内の炭素数の合計が22以上38以下であることが好ましく、より好ましくは24以上38以下、更に好ましくは26以上38以下、更に好ましくは26以上34以下、更に好ましくは26以上32以下である。
成分Aは、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、一又は複数の実施形態において、下記式(I)又は下記式(II)で表される構成を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2023003634000001
前記式(I)中、R1は同一又は異なって、炭素数10以上18以下のアルキル基を示し、R2は同一又は異なって、炭素数1以上6以下の炭化水素基又は-(CH2CH2O)nH(但し、nは1~3である)であり、Zはリン原子であり、X-は対イオンである。
前記式(II)中、R1は同一又は異なって、炭素数10以上18以下のアルキル基を示し、R2は同一又は異なって、炭素数1以上6以下の炭化水素基又は-(CH2CH2O)nH(但し、nは1~3である)であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、X-は対イオンである。
前記式(I)及び(II)において、R2は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、炭素数1以上6以下の炭化水素基が好ましい。前記対イオンとしては、例えば、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3 -)、臭化物イオン(Br-)等が挙げられる。
成分A1としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(C12-C18の混成品)、及びジオクタデジルジメチルアンモニウム塩、から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
成分A2としては、例えば、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム塩等が挙げられる。
本開示のリンス剤組成物中の成分Aの含有量は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、10ppm以上が好ましく、15ppm以上がより好ましく、そして、濡れ性の観点から、40ppm以下が好ましく、30ppm以下がより好ましい。同様の観点から、本開示のリンス剤組成物中の成分Aの含有量は、10ppm以上40ppm以下が好ましく、15ppm以上30ppm以下がより好ましい。成分Aが2種以上の組合せの場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。なお、本開示において、10,000ppmは1質量%である(以下同じ)。
[水]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、媒体として水を含有する。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。
本開示のリンス剤組成物における水の含有量は、溶液安定性の観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、そして、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、99.9990質量%以下が好ましく、99.9900質量%以下がより好ましく、99.9815質量%以下が更に好ましい。
[水溶性高分子(成分B)]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、濡れ性付与と表面粗さ(ヘイズ)低減とを両立する観点から、ヒドロキシアルキルセルロース及びポリグリセリンの少なくとも一方の水溶性高分子(以下、「成分B」ともいう)をさらに含んでもよい。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
前記ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロースから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらのなかでも、成分Bは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びポリグリセリンの少なくとも一方が好ましい。
成分Bがヒドロキシアルキルセルロースである場合、成分Bの重量平均分子量は、濡れ性付与と表面粗さ(ヘイズ)低減とを両立する観点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、15万以上が更に好ましく、そして、50万以下が好ましく、40万以下がより好ましく、30万以下が更に好ましい。
成分Bがポリグリセリンである場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、2,000以上が好ましく、2,500以上がより好ましく、2,800以上が更に好ましく、そして、10,000以下が好ましく、8,000以下がより好ましく、6,000以下が更に好ましい。
成分Bの重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定できる。
本開示のリンス剤組成物が成分Bを含む場合、本開示のリンス剤組成物中の成分Bの含有量は、濡れ性付与と表面粗さ(ヘイズ)低減とを両立する観点から、10ppm以上が好ましく、30ppm以上がより好ましく、50ppm以上が更に好ましく、そして、1,000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、300ppm以下が更に好ましく、150ppm以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示のリンス剤組成物中の成分Bの含有量は、10ppm以上1,000ppm以下が好ましく、30ppm以上500ppm以下がより好ましく、50ppm以上300ppm以下が更に好ましく、50ppm以上150ppm以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せの場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[ポリエチレングリコール(成分C)]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、ポリエチレングリコール(以下、「成分C」ともいう)をさらに含んでもよい。
成分Cの重量平均分子量は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、600以上が好ましく、800以上がより好ましく、1,000以上が更に好ましく、そして、濡れ性付与の観点から、10,000未満以下が好ましく、8,000以下がより好ましく、6,000以下が更に好ましい。濡れ性付与の観点から、成分Cの重量平均分子量は、600以上10,000未満が好ましく、800以上8,000以下が好ましく、1000以上6,000以下が更に好ましい。成分Cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示のリンス剤組成物が成分Cを含む場合、本開示のリンス剤組成物中の成分Cの含有量は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、0.1ppm以上が好ましく、1ppm以上がより好ましく、3ppm以上が更に好ましく、10ppm以上が更に好ましく、そして、濡れ性付与の観点から、1,000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、100ppm以下が更に好ましく、50ppm以下が更に好ましく、30ppm以下が更に好ましい。本開示のリンス剤組成物中の成分Cの含有量は、表面粗さ(ヘイズ)低減と濡れ性付与との両立の観点から、0.1ppm以上1,000ppm以下が好ましく、1ppm以上500ppm以下がより好ましく、3ppm以上100ppm以下が更に好ましく、3ppm以上50ppm以下が更に好ましく、10ppm以上50ppm以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せの場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[含窒素塩基性化合物(成分D)]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、pH調整と溶液安定性の観点から、含窒素塩基性化合物(以下、「成分D」ともいう)をさらに含んでもよい。成分Dは、水溶性の含窒素塩基性化合物であることが好ましい。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。本開示において、「水溶性の含窒素塩基性」とは、水に溶解したときに塩基性を示す含窒素化合物をいう。成分Dは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Dは、一又は複数の実施形態において、成分Aを含まない。
成分Dとしては、一又は複数の実施形態において、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Dとしては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N一ジエタノ-ルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノ-ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、及びヒドロキシアミンから選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられる。なかでも、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減の観点から、成分Dとしては、アンモニア、又は、アンモニアとヒドロキシアミンの混合物が好ましく、アンモニアがより好ましい。
本開示のリンス剤組成物中の成分Dの含有量は、pH調整と溶液安定性の観点から、5ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、そして、500ppm以下が好ましく、250ppm以下がより好ましく、200ppm以下が更に好ましく、150ppm以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示のリンス剤組成物中の成分Dの含有量は5ppm以上500ppm以下が好ましく、5pm以上250ppm以下がより好ましく、5ppm以上200ppm以下が更に好ましく、10ppm以上150ppm以下が更に好ましい。成分Dが2種以上の組合せの場合、成分Dの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[シリカ粒子(成分E)]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減の観点から、シリカ粒子(以下、「成分E」ともいう)をさらに含んでもよい。成分Eとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、及びそれらを表面修飾したシリカ等が挙げられ、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、コロイダルシリカが好ましい。成分Eは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Eは、一又は複数の実施形態において、研磨に用いるシリカ砥粒と同じシリカ砥粒を用いることができる。
成分Eの使用形態としては、操作性の観点から、スラリー状が好ましい。本開示のリンス剤組成物に含まれる成分Eがコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコン基板の汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
成分Eの平均一次粒子径は、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Eの平均一次粒子径は、10nm以上40nm以下が好ましく、15nm以上35nm以下がより好ましく、20nm以上30nm以下が更に好ましい。本開示において、成分Eの平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
成分Eの平均二次粒子径は、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、そして、80nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、70nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Eの平均二次粒子径は、20nm以上80nm以下が好ましく、30nm以上75nm以下がより好ましく、40nm以上70nm以下が更に好ましい。本開示において、平均二次粒子径は、動的光散乱(DLS)法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
成分Eの会合度は、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減の観点から、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下が更に好ましく、そして、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましい。
本開示において、成分Eの会合度は、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
成分Eの会合度の調整方法としては、例えば、特開平6-254383号公報、特開平11-214338号公報、特開平11-60232号公報、特開2005-060217号公報、特開2005-060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
本開示のリンス剤組成物中の成分Eの含有量は、表面粗さ(ヘイズ)のさらなる低減の観点から、SiO2換算で、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上が更に好ましく、そして、2.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が更に好ましい。本開示のリンス剤組成物中の成分Eの含有量は、表面欠陥低減の観点から、SiO2換算で、0.01質量%以上2.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上0.5質量%以下が更に好ましく、0.07質量%以上0.2質量%以下が更に好ましい。成分Eが2種以上の組合せの場合、成分Eの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[その他の成分]
本開示のリンス剤組成物は、本開示の効果が妨げられない範囲で、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、一又は複数の実施形態において、成分A以外の界面活性剤、成分B及び成分C以外の水溶性高分子、成分D以外のpH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、消泡剤及び酸化剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分をさらに含むことができる。
[リンス剤組成物のpH]
本開示のリンス剤組成物の25℃におけるpHは、溶液安定性の観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、9以上が更に好ましく、そして、表面粗さ(ヘイズ)低減の観点から、14以下が好ましく、13以下が更に好ましい。pHの調整は、必要に応じて、pH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
[リンス剤組成物の製造方法]
本開示のリンス剤組成物は、例えば、成分Aと水と必要に応じて任意成分(成分B、成分C、成分D、成分E、その他の成分)とを公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。本開示において「配合する」とは、成分A、水及び必要に応じて任意成分(成分B、成分C、成分D、成分E、その他の成分)を、同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示のリンス剤組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、上述した本開示のリンス剤組成物中の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
本開示において、「リンス剤組成物中の各成分の含有量」は、リンス剤組成物の使用時、すなわち、リンス剤組成物をリンス処理に使用する時点における前記各成分の含有量をいう。
[リンス剤組成物の濃縮液]
本開示のリンス剤組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。本開示のリンス剤組成物の濃縮液は、使用時に各成分の含有量が上述した各成分の含有量となるように水で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、好ましくは2倍以上、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは20倍以上である。
本開示のリンス剤組成物が濃縮液である場合、本開示のリンス剤組成物の濃縮液中の成分Aの含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、そして、保存安定性の向上の観点から、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本開示のリンス剤組成物が濃縮液である場合、本開示のリンス剤組成物の濃縮液の25℃におけるpHは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。
[リンス剤組成物の使用方法]
本開示のリンス剤組成物は、シリカ粒子を含む研磨液組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハをリンス処理するためのものである。
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、研磨に用いた研磨機と同じ研磨機に供給され、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触するように使用される。
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、前記研磨液組成物と共に研磨機に供給されてもよいし、前記研磨液組成物の研磨機への供給停止後に研磨機に供給されてもよい。
したがって、本開示は、一態様において、研磨に用いた研磨機と同じ研磨機に供給されるリンス剤組成物の使用方法であって、本開示のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、又は、研磨に用いた研磨液組成物の研磨機への供給停止後、本開示のリンス剤組成物を、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む、リンス剤組成物の使用方法(以下、「本開示のリンス剤組成物の使用方法」ともいう)に関する。中でも、本開示のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む、リンス剤組成物の使用方法が好ましい。
本開示のリンス剤組成物の使用方法によれば、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減できる。
[リンス方法]
本開示は、一態様において、シリカ粒子を含む研磨液組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハをリンス処理するリンス方法であって、本開示のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、又は、研磨に用いた研磨液組成物の研磨機への供給停止後、本開示のリンス剤組成物を研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む、リンス方法(以下、「本開示のリンス方法」ともいう)に関する。本開示のリンス方法におけるリンス処理の方法は、後述する本開示の半導体基板製造方法におけるリンス工程(2)と同様にして行うことができる。
本開示のリンス方法によれば、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減できる。
[半導体基板の製造方法]
本開示のリンス剤組成物は、一又は複数の実施形態において、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハの研磨工程後のリンス工程に用いられる。
すなわち、本開示は、一態様において、下記工程(1)、(2)及び(3)を含み、下記工程(1)及び(2)を同一研磨機で行う、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板製造方法」ともいう)に関する。
(1)シリカ粒子を含む研磨液組成物を用いて被研磨シリコンウェーハを研磨する研磨工程
(2)工程(1)で研磨されたシリコンウェーハ(以下、「研磨後シリコンウェーハ」ともいう)を、本開示のリンス剤組成物を用いてリンス処理するリンス工程
(3)工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハ(以下、「リンス後シリコンウェーハ」ともいう)を洗浄する洗浄工程
<被研磨シリコンウェーハ>
被研磨シリコンウェーハとしては、例えば、単結晶100面シリコンウェーハ、111面シリコンウェーハ、110面シリコンウェーハ等が挙げられる。シリコンウェーハの抵抗率としては、ウェーハ表面上の残留物低減の観点から、好ましくは0.0001Ω・cm以上、より好ましくは0.001Ω・cm以上、更に好ましくは0.01Ω・cm以上、更により好ましくは0.1Ω・cm以上であり、そして、好ましくは100Ω・cm以下、より好ましくは50Ω・cm以下、更に好ましくは20Ω・cm以下である。同様の観点から、シリコンウェーハの抵抗率は、好ましくは0.0001Ω・cm以上100Ω・cm以下、より好ましくは0.001Ω・cm以上100Ω・cm以下、更に好ましくは0.01Ω・cm以上100Ω・cm以下、更に好ましくは0.1Ω・cm以上100Ω・cm以下であり、更に好ましくは0.1Ω・cm以上50Ω・cm以下、更に好ましくは0.1Ω・cm以上20Ω・cm以下である。
<工程(1):研磨工程>
前記研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本開示のリンス剤組成物は、上記仕上げ研磨工程の後に用いられるとより好ましい。
前記研磨工程では、例えば、被研磨シリコンウェーハと研磨パッドとの間に研磨液組成物を供給し、被研磨シリコンウェーハと研磨パッドが接した状態で、研磨パッドを被研磨シリコンウェーハに対して相対運動させる。研磨パッドの種類、研磨パッドの回転数、被研磨基板の回転数、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重、研磨液組成物の供給速度、研磨時間、研磨液組成物の温度、研磨パッドの表面温度等の研磨条件は、従来公知の研磨条件と同じでもよく、適宜設定可能である。
研磨荷重としては、例えば、40~150g/cm2が挙げられる。研磨荷重とは、研磨時に被研磨シリコン基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。
研磨時間としては、例えば、100~600秒が挙げられる。
研磨時における研磨液組成物の温度及び研磨パッドの表面温度としては、例えば、15℃~40℃が挙げられる。
前記研磨工程で使用される研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、砥粒としてシリカ粒子を含む。シリカ粒子としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、及びそれらを表面修飾したシリカ等が挙げられる。研磨速度向上及び表面粗さ(ヘイズ)低減とウェーハ表面上の表面欠陥(LPD)低減の観点から、コロイダルシリカが好ましい。シリカ粒子は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。研磨液組成物中のシリカ粒子の含有量は、例えば、0.05質量%以上10質量%以下が挙げられる。
前記研磨液組成物は、研磨速度向上と表面粗さ(ヘイズ)低減と表面欠陥(LPD)低減とを達成する観点から、好ましくはノニオン性水溶性高分子、より好ましくは分子内にアルキレンオキサイド基又は水酸基を有し、重量平均分子量が1,000以上50万未満であるノニオン性水溶性高分子を含有する。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。前記ノニオン性高分子が分子内にアルキレンオキサイド基を有する場合、アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基等が挙げられる。前記ノニオン性高分子は、研磨速度向上と表面粗さ(ヘイズ)低減と表面欠陥(LPD)低減とを達成する観点から、ポリグリセリン、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、及びポリヒドロキシエチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記研磨液組成物のpHは、研磨速度向上と保存安定性とを両立する観点から、8.5超が好ましく、9以上がより好ましく、9.5以上が更に好ましく、10以上が更に好ましく、そして、表面品質を向上する観点から、14以下が好ましく、13以下がより好ましく、12.5以下が更に好ましく、12以下が更に好ましく、11.5以下が更に好ましく、11以下が更に好ましい。
前記研磨液組成物は、媒体として水を含み、研磨液組成物中の水の含有量は、シリカ粒子及び前記ノニオン性高分子および後述する任意成分の残余とすることができる。
前記研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、水溶性高分子、塩基性化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤等の任意成分を含んでいてもよい。
<工程(2):リンス工程>
前記リンス工程は、一又は複数の実施形態において、本開示のリンス剤組成物の使用方法又は本開示のリンス方法を用いてリンス処理を行うことができる。よって、前記リンス工程は、一又は複数の実施形態において、工程(1)の後、前記研磨液組成物の研磨機への供給を停止せず、本開示のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、研磨されたシリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、又は、工程(1)の後、前記研磨液組成物の研磨機への供給停止し、本開示のリンス剤組成物を研磨機に供給し、本開示のリンス剤組成物を、研磨されたシリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む。
前記リンス工程では、例えば、工程(1)で研磨されたシリコンウェーハ(以下、「研磨後シリコンウェーハ」ともいう)と研磨パッドとの間に本開示のリンス剤組成物を供給し、研磨後シリコンウェーハと研磨パッドとが接した状態で、研磨パットを研磨後シリコンウェーハに対して相対運動させる。
前記リンス工程におけるリンス処理は、研磨工程で用いられる研磨装置を用いて行える。研磨パッドの種類、研磨パッドの回転数、研磨後シリコンウェーハの回転数、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される荷重、リンス剤組成物の供給速度等は、研磨工程における対応する条件と同じでもよいし異なっていてもよい。リンス時間は、砥粒の付着抑制の観点から、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上であり、生産性の向上の観点から、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。ここで、リンス時間とは、リンス剤組成物を供給している時間を意味する。
前記リンス工程で使用される研磨パッドは、研磨工程で使用される研磨パッドと同じでよく、不織布タイプ、スウェードタイプ等のいずれの種類のものであってもよい。また、研磨工程で使用された研磨パッドは交換せずに、そのままリンス工程に用いてもよく、この場合は、研磨パッド中に研磨液組成物の砥粒が若干含まれていてもよい。前記リンス工程は、前記研磨工程の直後、研磨装置に取り付けられたままのシリコンウェーハに対して行うこともできる。
前記リンス工程で使用されるリンス剤組成物の温度としては、例えば、5~60℃が挙げられる。
前記リンス工程は、少なくとも仕上げ研磨工程の後に行うのが好適であるが、粗研磨工程及び仕上げ研磨工程の各工程の後に、各々行ってもよい。
前記リンス工程は、本開示のリンス剤組成物を用いて行われるリンス処理の前後に、リンス液として水を用いる水リンス処理を含んでいてもよい。水リンス処理時間は、好ましくは2秒以上30秒以下である。
<工程(3):洗浄工程>
前記洗浄工程では、例えば、工程(2)でリンス処理されたシリコンウェーハ(以下、「リンス後シリコンウェーハ」ともいう)を、洗浄剤に浸漬するか、又は、リンス後シリコンウェーハの洗浄されるべき面に洗浄剤を射出する。洗浄剤には、従来から公知の洗浄剤を用いればよく、例えば、オゾン、過酸化水素、アンモニア、塩酸、硫酸、フッ酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種を含む無機物洗浄剤が挙げられる。洗浄時間は、洗浄方法に応じて設定すればよい。
本開示の半導体基板製造方法は、素子分離膜の形成工程、層間絶縁膜の平坦化工程、金属配線の形成工程等をさらに含んでいてもよい。
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
1.各種パラメータの測定方法
(1)水溶性高分子(成分B、成分C)の重量平均分子量の測定
水溶性高分子(成分B、成分C)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出した。
<測定条件>
装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
カラム:α-M+α-M
溶離液:0.15mol/L Na2SO4,1質量%酢酸、溶媒:水
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:ショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器
標準物質:分子量が既知のプルラン
(2)シリカ粒子(成分E)の平均一次粒子径の測定
成分Eの平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
成分Eの比表面積Sは、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
[前処理]
(a)スラリー状の成分Eを硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の成分Aをシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過する。
(e)フィルタ上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルタをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(成分E)をフィルタ屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
(3)シリカ粒子(成分E)の平均二次粒子径
成分Eの平均二次粒子径(nm)は、成分Eの濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水分散液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:「ゼータサイザーNano ZS」、シスメックス社製)を用いて測定した。
(4)リンス剤組成物のpH
リンス剤組成物及びその濃縮液の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM-30G」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をリンス剤組成物又はその濃縮物へ浸漬して1分後の数値である。
2.リンス剤組成物の調製(実施例1~15及び比較例1~3)
表1に示すカチオン性界面活性剤(成分A又は非成分A)、表1に示す添加剤(成分B、成分C、成分D、成分E)及び超純水を攪拌混合し、必要に応じてpH調整剤(アンモニア)を用いて、25℃におけるpHを10~11に調整し、実施例1~15及び比較例1~3のリンス剤組成物の濃縮液(濃縮倍率:20倍)を得た。
なお、表1に示す各成分の含有量は、濃縮液を20倍に希釈して得たリンス剤組成物についての値である。超純水の含有量は、成分A又は非成分Aと添加剤(成分B、成分C、成分D、成分E)とpH調整剤とを除いた残余である。
リンス剤組成物の調製に用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
(成分A)
ジデシルジメチルアンモニウムクロライド[花王社製、コータミンD10E](式(II)中、R1:C1021、R2:CH3、Z:N、X:Cl-
ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウムクロライド[花王社製、コータミンD2345P](式(II)中、R1:C12-18のアルキル基、R2:CH3、Z:N、X:Cl-
ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド[東京化成工業社製](式(II)中、R1:C1837、R2:CH3、Z:N、X:Cl-
ジデシルジメチルアンモニウム重炭酸塩[ロンザジャパン社製、Carboquat HE](式(II)中、R1:C1021、R2:CH3、Z:N、X:HCO3 -
トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロミド[東京化成工業社製](式(I)中、R1:C1429、R2:C613、Z:P、X:Br-
(非成分A)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド[東京化成工業社製]
(成分B)
ポリグリセリン[ダイセル社製、XPW、重合度40、重量平均分子量2,980]
HEC[ヒドロキシエチルセルロース、ダイセル社製、SE400、重量平均分子量250,000]
(成分C)
PEG 1000[ポリエチレングリコール、日油社製、PEG#1000、重量平均分子量1,000]
(成分D)
アンモニア[28質量%アンモニア水、キシダ化学社製、試薬特級]
(成分E)
コロイダルシリカ[平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径49nm、会合度2.0]
3.リンス方法
リンス剤組成物(濃縮液)を超純水で20倍に希釈して得たリンス剤組成物(pH10)を、下記のリンス条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ、伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対してリンス処理を行った。
当該リンス処理に先立って、シリコンウェーハに対して市販の研磨液組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。その後、下記の条件で仕上げ研磨を行い、その直後に各リンス剤組成物を用いて下記の条件でリンス処理をした。なお、粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハのヘイズは2-3(ppm)であった。ヘイズは、KLA Tencor社製「Surfscan SP1-DLS」を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
実施例1~11、13~15及び比較例2では、研磨液組成物を150秒間供給して仕上げ研磨を行った後、リンス剤組成物を研磨液組成物と共に30秒間供給してリンス処理を行った。
実施例12では、研磨液組成物を150秒間供給して仕上げ研磨を行った後、研磨液組成物の供給を停止して、リンス剤組成物を30秒間供給してリンス処理を行った。
[仕上げ研磨に使用した研磨液組成物A及びB]
(研磨液組成物A)
仕上げ研磨に使用した研磨液組成物Aは、シリカ粒子(扶桑化学工業(株)社製の“PL-2”、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径49nm、会合度2.0)、ポリグリセリン(ダイセル社製のXPW、重量平均分子量2,980)、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体(ニットーボーメディカル PAS-2201、重量平均分子量3,000)、アンモニア(キシダ化学(株)社製、試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して濃縮液を調製した。そして、該濃縮液を使用直前にイオン交換水で100倍に希釈して研磨液組成物Aを得た。研磨液組成物A中の各成分の含有量は、シリカ粒子が0.1質量%、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体が75ppm、ポリグリセリンが75ppm、アンモニアが60ppmであった。研磨液組成物AのpHは10であった。
(研磨液組成物B)
仕上げ研磨に使用した研磨液組成物Bは、シリカ粒子(扶桑化学工業(株)社製の“PL-2”、平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径49nm、会合度2.0)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース、ダイセル社製の“SE400”、重量平均分子量250,000)、PEG(ポリエチレングリコール、日油社製の“PEG#6000”、重量平均分子量6,000)、アンモニア(キシダ化学(株)社製、試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して濃縮液を調製した。そして、該濃縮液を使用直前にイオン交換水で20倍に希釈して研磨液組成物Bを得た。研磨液組成物B中の各成分の含有量は、シリカ粒子が0.1質量%、HECが200ppm、アンモニアが70ppm、PEGが10ppmであった。研磨液組成物BのpHは10であった。
[仕上げ研磨条件]
研磨機:岡本工作製片面8インチ研磨機「GRIND-X SPP600s」
研磨パッド:東レ コーテックス社製スエードパッド(アスカー硬度:64、厚さ:1.37mm、ナップ長:450μm,開口径:60μm)
荷重:125g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:150秒
研磨液組成物の供給速度:100mL/分
研磨液組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:62rpm
[リンス条件]
(実施例1~11、13~15、比較例2)
研磨機:仕上げ研磨で用いた研磨機と同じ研磨機
研磨パッド:仕上げ研磨で用いた研磨パッドと同じ研磨パッド
荷重:125g/cm2
定盤回転速度:60rpm
リンス時間:30秒
リンス剤組成物の供給速度:100mL/分
リンス剤組成物の温度:25℃
研磨液組成物の供給速度:100mL/分
研磨液組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:62rpm
(実施例12)
研磨機:仕上げ研磨で用いた研磨機と同じ研磨機
研磨パッド:仕上げ研磨で用いた研磨パッドと同じ研磨パッド
荷重:125g/cm2
定盤回転速度:60rpm
リンス時間:30秒
リンス剤組成物の供給速度:100mL/分
リンス剤組成物の温度:25℃
キャリア回転速度:62rpm
4.洗浄方法
リンス処理後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/min、600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5質量%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/min、600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1,500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
5.評価
[シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の評価]
洗浄後のシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の評価には、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1-DLS」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値(DWOヘイズ)を用いた。DWOヘイズの数値は小さいほど、表面の平滑性が高いことを示す。
表面粗さ(ヘイズ)の測定は、2枚のシリコン基板に対して行い、平均値を求めた。結果を表1に示した。
[シリコンウェーハ表面の濡れ性の評価]
研磨処理後もしくはリンス処理後のシリコンウェーハを、研磨機盤上から超純水を張った桶に移し、引き上げ、垂直にシリコンウェーハを固定し、超純水のシャワーを流量2000ml/分で30秒間、シリコンウェーハの上部に噴射し、シャワー停止後5秒後の親水部面積を目視で評価した。なお、シリコンウェーハの全面が濡れている場合を100%とした。
<評価基準>
A:100%
B:91%以上100%未満
C:90%以下
Figure 2023003634000002
上記表1に示すとおり、実施例1~15のリンス剤組成物は、ウェーハ表面の濡れ性が良好で、比較例1~3に比べて、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)が低減していた。
本開示のリンス剤組成物は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を低減できるため、表面品質に優れるシリコンウェーハを製造でき、半導体基板の量産において有用である。

Claims (9)

  1. カチオン性界面活性剤(成分A)を含み、
    成分Aは、分子内に2つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム又はその塩(成分A1)、及び、分子内に1つ以上の炭素数10以上18以下のアルキル基を有する第4級ホスホニウム又はその塩(成分A2)の少なくとも一方である、シリコンウェーハ用リンス剤組成物。
  2. 成分Aは、分子内の炭素数の合計が22以上38以下である、請求項1に記載のリンス剤組成物。
  3. 成分Aは、下記式(I)又は(II)で表される構成を有する化合物である、請求項1又は2に記載のリンス剤組成物。
    Figure 2023003634000003
    前記式(I)中、R1は同一又は異なって、炭素数10以上18以下のアルキル基を示し、R2は同一又は異なって、炭素数1以上6以下の炭化水素基又は-(CH2CH2O)nH(但し、nは1~3である)であり、Zはリン原子であり、X-は対イオンである。
    前記式(II)中、R1は同一又は異なって、炭素数10以上18以下のアルキル基を示し、R2は同一又は異なって、炭素数1以上6以下の炭化水素基又は-(CH2CH2O)nH(但し、nは1~3である)であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、X-は対イオンである。
  4. 成分Aの含有量が、10ppm以上40ppm以下である、請求項1から3のいずれかに記載のリンス剤組成物。
  5. ヒドロキシアルキルセルロース及びポリグリセリンの少なくとも一方の水溶性高分子(成分B)をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載のリンス剤組成物。
  6. ポリエチレングリコール(成分C)をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載のリンス剤組成物。
  7. 含窒素塩基性化合物(成分D)を含む、請求項1から6のいずれかに記載のリンス剤組成物。
  8. シリカ粒子(成分E)をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載のリンス剤組成物。
  9. 研磨に用いた研磨機と同じ研磨機に供給されるリンス剤組成物の使用方法であって、
    請求項1から8のいずれかに記載のリンス剤組成物を、シリカ粒子を含む研磨液組成物と共に研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、又は、
    研磨に用いた研磨液組成物の研磨機への供給停止後、請求項1から8のいずれかに記載のリンス剤組成物を研磨機に供給し、シリコンウェーハ及び研磨パッドと接触させること、を含む、リンス剤組成物の使用方法。
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