JP2023002020A - 金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法 - Google Patents

金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】未処理金属粉末から酸化膜を除去することにより、高密度の金属焼結体を製造可能な被処理金属粉末を得ることができる金属粉末の酸化膜除去方法、および、かかる金属粉末の酸化膜除去方法により得られる被処理金属粉末を用いて金属焼結体を得る金属焼結体の製造方法を提供すること。【解決手段】陰極を備える容器にアルカリ性水溶液を入れ、前記陰極に前記アルカリ性水溶液を接触させる工程と、コア粒子と前記コア粒子の表面に存在する酸化膜とを有する未処理金属粉末を、前記アルカリ性水溶液に投入し、前記陰極と前記未処理金属粉末とを接触させる工程と、前記未処理金属粉末が投入された前記アルカリ性水溶液に陽極を接触させる工程と、前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加することにより、前記酸化膜に還元反応を生じさせて前記酸化膜を除去し、被処理金属粉末を得る工程と、を有することを特徴とする金属粉末の酸化膜除去方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法に関するものである。
三次元の立体物を造形する技術として、近年、金属粉末を用いた積層造形法が普及しつつある。この技術は、立体物について積層方向と直交する面で薄くスライスしたときの断面形状を計算する工程と、金属粉末を層状にならして粉末層を形成する工程と、計算により求めた形状に基づいて粉末層の一部を固化させる工程と、を有し、粉末層を形成する工程と一部を固化させる工程とを繰り返すことにより、立体物を造形する技術である。
立体物を造形する手法としては、固化させる原理に応じて、熱溶融積層法(FDM : Fused Deposition Molding)、粉末焼結積層造形法(SLS : Selective Laser Sintering)、バインダージェッティング法等が知られている。
粉末層を固化させる場合、金属粉末の粒子表面に酸化膜があると、造形される立体物の密度を高めにくくなる。このため、立体物の密度を高めるためには、酸化膜を除去する必要がある。
特許文献1には、エッチング液を用いて金属粉末から酸化膜を除去する方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、金属粉末をエッチング液に添加するステップと、エッチング液に添加された金属粉末を撹拌しながら、金属粉末の酸化膜を除去するステップと、を備える三次元積層造形用金属粉末の製造方法が開示されている。エッチング液としては、グラード液、フッ化水素、王水等が挙げられている。
特開2018-119202号公報
特許文献1に記載のエッチング液は、多くの水を含んでいる。このため、特許文献1に記載の方法で金属粉末の酸化膜を除去しても、エッチング液に含まれた水によって、酸化膜を除去した後の金属粉末が再び酸化することが懸念される。そこで、被処理後の金属粉末が再び酸化されるのを抑制可能な酸化膜除去方法が求められている。
本発明の適用例に係る金属粉末の酸化膜除去方法は、
陰極を備える容器にアルカリ性水溶液を入れ、前記陰極に前記アルカリ性水溶液を接触させる工程と、
コア粒子と前記コア粒子の表面に存在する酸化膜とを有する未処理金属粉末を、前記アルカリ性水溶液に投入し、前記陰極と前記未処理金属粉末とを接触させる工程と、
前記未処理金属粉末が投入された前記アルカリ性水溶液に陽極を接触させる工程と、
前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加することにより、前記酸化膜に還元反応を生じさせて前記酸化膜を除去し、被処理金属粉末を得る工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の適用例に係る金属焼結体の製造方法は、
本発明の適用例に係る金属粉末の酸化膜除去方法により得られる前記被処理金属粉末を成形し、成形体を得る工程と、
前記成形体を焼結し、金属焼結体を得る工程と、
を有することを特徴とする。
実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するためのフローチャートである。 実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。 実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。 実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。 実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。 実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。 実施形態に係る金属焼結体の製造方法を説明するためのフローチャートである。 比較例2の粉末(未処理金属粉末)から取得されたFe2p3ピークを含むXPSスペクトルである。 実施例1で得られた被処理金属粉末から取得されたFe2p3ピークを含むXPSスペクトルである。 図9に示す結合エネルギー(Binding energy)範囲をより広い範囲で示したXPSスペクトルである。
以下、本発明の金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.金属粉末の酸化膜除去方法
まず、実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法について説明する。
図1は、実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するためのフローチャートである。図2ないし図6は、それぞれ実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法を説明するための模式図である。
図1に示す金属粉末の酸化膜除去方法は、陰極浸漬工程S104と、未処理金属粉末投入工程S106と、陽極浸漬工程S108と、電圧印加工程S110と、を有する。陰極浸漬工程S104では、陰極2を備える容器20にアルカリ性水溶液3を入れ、陰極2にアルカリ性水溶液3を接触させる。未処理金属粉末投入工程S106では、コア粒子42とその表面に存在する酸化膜44とを有する未処理金属粉末4を、アルカリ性水溶液3に投入し、陰極2と未処理金属粉末4とを接触させる。陽極浸漬工程S108では、未処理金属粉末4が投入されたアルカリ性水溶液3に陽極6を接触させる。電圧印加工程S110では、陰極2と陽極6との間に電圧を印加することにより、酸化膜44に還元反応を生じさせて酸化膜44を除去し、被処理金属粉末7を得る。
このようにして未処理金属粉末4から被処理金属粉末7を得ることができれば、未処理金属粉末4から酸化膜44を電解還元によって除去して被処理金属粉末7を得た後、被処理金属粉末7が再び酸化するのを抑制することができる。これにより、例えば、被処理金属粉末7を焼結した場合、放出される酸化膜44由来のガスの量を減らすことができる。その結果、高密度の金属焼結体を製造することができる。
以下、各工程について順次説明する。
1.1.アルカリ性水溶液調製工程
本実施形態では、上述した陰極浸漬工程S104に先立ち、アルカリ性水溶液調製工程S102を行う。
アルカリ性水溶液調製工程S102では、アルカリ性物質と、水と、を含む、図2に示すアルカリ性水溶液3を調製する。
アルカリ性水溶液3に対しては、未処理金属粉末4中のコア粒子42に含まれる金属元素が溶解しにくい。以下、その理由について説明する。
金属元素が水等の溶媒に溶解するためには、下記式(1)で表される金属のイオン化反応が生じる必要がある。
M→Ma++ae … (1)
上記式(1)中、Mは、コア粒子42に含まれる金属元素であり、aは、金属元素Mのイオンの価数である。
しかし、この反応は、単独では起こらず、遊離した電子を受け取る反応が必要である。
仮に、溶媒が酸性水溶液である場合、水素イオン濃度が高いため、酸性水溶液中には多くの水素イオンが存在している。このため、下記式(2)で表される水素イオンの還元反応が生じやすくなる。
2H+2e→H … (2)
上記式(2)で表される反応は、遊離した電子を受け取る反応であるため、上記式(1)で表される反応の進行を促進する。このため、酸性水溶液下では、金属のイオン化反応が生じやすくなる。そして、生じた金属イオンは、酸性水溶液中の酸素と結合し、酸化膜を生じさせる。このため、酸性水溶液では、未処理金属粉末4から酸化膜44を除去するための溶液には向いていない。
これに対し、アルカリ性水溶液3では、水素イオン濃度が低いため、上記式(2)で表される反応は進みにくい。このため、上記式(1)で表される反応の進行は促進されない。したがって、後述する未処理金属粉末投入工程S106で未処理金属粉末4をアルカリ性水溶液3に投入しても、未処理金属粉末4のさらなる酸化が抑制される。また、アルカリ性水溶液3を用いることで、後述する電圧印加工程S110後に得られる被処理金属粉末7が再び酸化されることも抑制される。
アルカリ性水溶液3が含むアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))のような強アルカリ、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化銅(Cu(OH))のような弱アルカリ、アンモニア水、テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH水)のようなアミン系弱アルカリ溶液等が挙げられる。
したがって、アルカリ性水溶液3は、強アルカリの水溶液、弱アルカリの水溶液、アミン系弱アルカリの水溶液等が挙げられる。このうち、アルカリ性水溶液3は、強アルカリの水溶液またはアミン系弱アルカリの水溶液であるのが好ましい。これらのアルカリ性水溶液3は、比較的入手が容易であるとともに、それ自体が、酸化膜44を溶解させ、除去する能力を有する。このため、後述する電気還元による酸化膜44の除去だけでなく、溶解によって酸化膜44を除去することができる。
また、特にアミン系弱アルカリ溶液は、陽イオンが非金属イオンであるため、被処理金属粉末7の表面に残留したとしても、被処理金属粉末7の利用に悪影響を及ぼしにくい。つまり、非金属イオンが被処理金属粉末7に付着したとしても、金属焼結体の特性を低下させにくいため、不具合を生じにくい。
また、アルカリ性水溶液3のpHは、9以上であるのが好ましく、10以上15以下であるのがより好ましい。アルカリ性水溶液3のpHを前記範囲内に設定することにより、アルカリ性水溶液3中の水素イオン濃度を特に低くすることができる。これにより、未処理金属粉末4中のコア粒子42に含まれる金属元素がアルカリ性水溶液3に溶解するのを特に抑制することができる。
なお、アルカリ性水溶液3のpHが前記下限値を下回ると、アルカリ性水溶液3中の水素イオン濃度がやや高くなるため、上記式(1)、(2)で表される反応が進行しやすくなるおそれがある。一方、アルカリ性水溶液3のpHが前記上限値を上回ってもよいが、アルカリ性水溶液3を調製しにくくなるおそれがある。
アルカリ性水溶液3のpHは、JIS Z 8802:2011に規定の、ガラス電極を用いるpHによるpH測定方法、により測定される。
また、本工程では、必要に応じて、アルカリ性水溶液3に不活性ガスをバブリングによって注入する操作を含んでいてもよい。このような操作により、アルカリ性水溶液3中の溶存酸素量を減らすことができる。これにより、溶存酸素に起因した水酸化物が生成されるのを抑制することができる。水酸化物は、最終的にFe・HOのような水和酸化鉄やFe、FeOのような酸化鉄となるため、酸化膜44を形成し得る。したがって、不活性ガスのバブリングによってアルカリ性水溶液3中の溶存酸素量を減らすことにより、アルカリ性水溶液3中における酸化膜44の形成が特に抑制される。
不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
また、上記操作は、必要に応じて他工程でも行うようにしてもよい。
以上、アルカリ性水溶液調製工程S102について説明したが、調製済みのアルカリ性水溶液3を入手可能な場合には、本工程を省略してもよい。また、アルカリ性水溶液3には、任意の添加物が添加されていてもよい。
1.2.陰極浸漬工程
陰極浸漬工程S104では、図3に示すように、陰極2を備える容器20にアルカリ性水溶液3を入れ、陰極2にアルカリ性水溶液3を接触させる。つまり、陰極浸漬工程S104では、アルカリ性水溶液3に陰極2を浸漬する。
本実施形態では、容器20が導電性を有し、底部が陰極2として用いられる。陰極2には、電源5の負極が電気的に接続される。
導電性を有する容器20の構成材料としては、例えば、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Ni、Sn等の元素を含む金属材料が挙げられる。
このうち、容器20の底部、すなわち陰極2の構成材料は、AlまたはZnを含むことが好ましい。これらは、多くの金属材料よりもイオン化傾向が大きい。このため、陰極2の構成材料としてAlまたはZnを含む材料を用いることにより、仮に、AlやZnがアルカリ性水溶液3に溶解したとしても、それらが、例えば酸化鉄のような還元対象の酸化物が還元されるよりも先に析出してしまうのを抑制することができる。その結果、AlやZnよりもイオン化傾向が小さい金属元素を含む酸化膜44の還元において、AlやZnを含む陰極2が好ましく用いられる。
なお、上記の理由から、陰極2は、未処理金属粉末4のコア粒子42が含む金属元素よりもイオン化傾向が大きい金属元素を含む電極であってもよい。例えば、コア粒子42が鉄基合金で構成されている場合、陰極2は、Feよりもイオン化傾向が大きい金属元素の単体または基合金で構成されていればよい。
また、本実施形態では、容器20が金属材料を含み、陰極2は、容器20の一部である。すなわち、本実施形態では、容器20の一部が陰極2を兼ねている。このため、未処理金属粉末4に対して酸化膜44を除去する装置構成の簡略化およびメンテナンス性の向上を図ることができる。
なお、容器20および陰極2は、互いに異なる部材であってもよい。例えば、容器20の底面に、別体の陰極2が配置されていてもよい。また、陰極2は、異なる材料を複合化した複合材料であってもよい。
1.3.未処理金属粉末投入工程
未処理金属粉末投入工程S106では、図4に示すように、アルカリ性水溶液3に未処理金属粉末4を投入する。未処理金属粉末4とは、前述したように、コア粒子42とその表面に存在する酸化膜44とを有する未処理金属粒子の集合体である。投入された未処理金属粉末4は、図4に示すように、容器20の底部に沈降し、陰極2と接触する。
未処理金属粉末4が有する酸化膜44は、例えば自然に形成された酸化物による被膜である。このような酸化膜44は、コア粒子42の表面に含まれていた元素が酸化することによって形成される。酸化膜44に含まれる酸化物としては、コア粒子42が含む金属元素の酸化物であるが、一例として、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅等が挙げられる。
未処理金属粉末4には、いかなる金属粉末も用いられ、例えば、粉末冶金用粉末、積層造形用粉末、軟磁性粉末等が用いられる。粉末冶金用粉末は、粉末冶金に供される金属粉末であり、焼結性を有する。積層造形用粉末は、積層造形に供される金属粉末である。軟磁性粉末は、軟磁性を有する金属粉末である。
粉末冶金用粉末や積層造形用粉末の構成材料としては、例えば、Fe、Ni、Co等の単体、またはこれらを主成分とする合金、金属間化合物等が挙げられる。
Fe系合金としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼のようなステンレス鋼、低炭素鋼、炭素鋼、耐熱鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、Fe-Ni合金、Fe-Ni-Co合金等が挙げられる。
Ni系合金としては、例えば、Ni-Cr-Fe系合金、Ni-Cr-Mo系合金、Ni-Fe系合金等が挙げられる。
Co系合金としては、例えば、Co-Cr系合金、Co-Cr-Mo系合金、Co-Al-W系合金等が挙げられる。
未処理金属粉末4の各粒子が有する結晶構造は、結晶質であっても、非晶質(アモルファス)であっても、微結晶質(ナノ結晶質)であってもよい。
軟磁性粉末を構成する軟磁性材料としては、例えば、純鉄、ケイ素鋼のようなFe-Si系合金、パーマロイのようなFe-Ni系合金、パーメンジュールのようなFe-Co系合金、センダストのようなFe-Si-Al系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Cr-Al系合金等の各種Fe系合金の他、各種Ni系合金、各種Co系合金等が挙げられる。このうち、透磁率、磁束密度等の磁気特性、および、コスト等の観点から、各種Fe系合金が好ましく用いられる。
非晶質の軟磁性材料および微結晶質の軟磁性材料としては、例えば、Fe-Si-B系、Fe-Si-B-C系、Fe-Si-B-Cr-C系、Fe-Si-Cr系、Fe-B系、Fe-P-C系、Fe-Co-Si-B系、Fe-Si-B-Nb系、Fe-Si-B-Nb-Cu系、Fe-Zr-B系のようなFe系合金、Ni-Si-B系、Ni-P-B系のようなNi系合金、Co-Si-B系のようなCo系合金等が挙げられる。
したがって、コア粒子42は、Fe基合金粒子であるのが好ましい。Fe基合金粒子は、前述した粉末冶金用粉末、積層造形用粉末および軟磁性粉末のいずれにも好適に用いられる。また、Fe基合金粒子は、比較的安価で入手が容易であるため、コア粒子42として有用である。
このようなFe基合金粒子は、Cr、Si、MnおよびCuのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなFe基合金粒子では、含有する元素の酸化物が比較的還元されやすい。このため、このようなFe基合金粒子を含む未処理金属粉末4を用いることにより、前述した粉末冶金用粉末、積層造形用粉末または軟磁性粉末として有用な被処理金属粉末7が得ることができる。
アルカリ性水溶液3に投入する未処理金属粉末4の量は、特に限定されないが、例えば、アルカリ性水溶液3の量300mLに対し、300g以下であるのが好ましく、3g以上150g以下であるのがより好ましく、15g以上100g以下であるのがさらに好ましい。これにより、酸化膜44が除去し切れなくなるのを抑制しつつ、除去能力が過剰になるのを避けることができる。
未処理金属粉末4の製造方法は、特に限定されないが、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、回転水流アトマイズ法等の各種アトマイズ法の他、粉砕法等が挙げられる。
アトマイズ法は、溶融金属を、高速で噴射された液体または気体に衝突させることにより、溶湯を微粉化するとともに冷却して、金属粉末を製造する方法である。アトマイズ法では、溶融金属が微細化された後、固化に至る過程で球形化が進むため、より真球に近い粒子を製造することができる。
このうち、水アトマイズ法は、冷却液として水等の液体を使用し、これを一点に集束する逆円錐状に噴射するとともに、この集束点に向けて溶融金属を流下させ、衝突させることにより、溶融金属から金属粉末を製造する方法である。
また、回転水流アトマイズ法は、冷却用筒体の内周面に沿って冷却液を供給し、内周面に沿って旋回させる一方、溶融金属に液体または気体のジェットを吹き付け、飛散させた溶融金属を冷却液中に取り込むことにより、金属粉末を製造する方法である。
さらに、ガスアトマイズ法は、冷却媒として気体(ガス)を使用し、これを一点に集束する逆円錐状に噴射するとともに、この集束点に向けて溶融金属を流下させ、衝突させることにより、溶融金属から金属粉末を製造する方法である。
1.4.陽極浸漬工程
陽極浸漬工程S108では、図5に示すように、未処理金属粉末4が投入されたアルカリ性水溶液3に陽極6を接触させる。つまり、陽極浸漬工程S108では、アルカリ性水溶液3に陽極6を浸漬する。
陽極6は、未処理金属粉末4と対向する範囲に広がる大きさを有しているのが好ましい。つまり、陽極6と陰極2は、互いに平行平板を構成しているのが好ましい。これにより、広い範囲において未処理金属粉末4に電解還元処理を施すことができる。
陽極6は、図示しない保持手段によって、未処理金属粉末4およびアルカリ性水溶液3を介した、陰極2と対向する位置に保持される。
陽極6の構成材料としては、例えば、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Ni、Sn等の元素を含む金属材料が挙げられる。
このうち、陽極6の構成材料は、AlまたはZnを含むことが好ましい。これらは、多くの金属材料よりもイオン化傾向が大きい。このため、陽極6の構成材料としてAlまたはZnを含む材料を用いることにより、AlやZnが良好な還元剤として機能する。つまり、AlまたはZnがアルカリ性水溶液3に対して良好に溶解することで、電子を効率よく発生させることができる。
1.5.電圧印加工程
電圧印加工程S110では、図5に示すように、陰極2と陽極6との間に電源5を接続し、電圧を印加する。これにより、酸化膜44に還元反応を生じさせて酸化膜44を除去し、図6に示す被処理金属粉末7を得る。
陰極2と陽極6との間に電圧を印加すると、陽極6では、含まれる金属元素がアルカリ性水溶液3中に溶解する。そして、発生した電子が陽極6を介して電源5に流れ出す。この溶解反応は、下記式(3)で表される。
X→Xn++ne … (3)
上記式(3)中、Xは、陽極6に含まれる金属元素であり、nは、金属元素Xのイオンの価数である。
一方、陰極2では、電源5から送り出された電子が、酸化膜44に含まれる金属酸化物と結びつき、金属酸化物が還元される。この還元反応は、下記式(4)で表される。
MO+4e→M+mO2- … (4)
上記式(4)中、Mは、金属酸化物に含まれる金属元素であり、mは、1個のM原子に結合するO原子の個数である。
上記式(4)の反応により、酸化膜44の少なくとも一部が除去される。その結果、酸化膜44を除去する処理が施された被処理金属粉末7が得られる。
電圧印加工程S110におけるアルカリ性水溶液3の温度は、特に限定されないが、5℃以上100℃以下であるのが好ましく、10℃以上50℃以下であるのがより好ましい。アルカリ性水溶液3の温度を前記範囲内に設定することにより、加熱に要するエネルギーを抑えつつ、上記式(3)、(4)で表される反応の速度が低下するのを抑制することができる。このため、酸化膜44をより短時間で効率よく除去することができる。
陰極2と陽極6との間に電圧を印加する時間は、酸化膜44の厚さ、未処理金属粉末4の量等に応じて適宜設定されるが、30秒以上10時間以下であるのが好ましく、3分以上1時間以下であるのがより好ましく、5分以上30分以下であるのがさらに好ましい。
陰極2と陽極6との間に印加する電圧は、酸化膜44に含まれる金属酸化物の種類等に応じて適宜設定されるが、1V以上であるのが好ましく、2V以上10V以下であるのがより好ましい。
1.6.洗浄工程
本実施形態は、必要に応じて設けられる洗浄工程S112を有する。
洗浄工程S112では、被処理金属粉末7を洗浄する処理を施す。前述した電圧印加工程S110では、酸化膜44中の金属酸化物がアルカリ性水溶液3に溶解することで、酸化膜44の少なくとも一部が除去されるが、被処理金属粉末7には、例えば陽極6から溶出した金属イオン等の異物が付着している場合がある。そこで、被処理金属粉末7に対して洗浄処理を施すことにより、付着している異物を引き離す。
洗浄処理では、まず、酸化膜44の除去が完了した被処理金属粉末7をアルカリ性水溶液3から取り出す。被処理金属粉末7の分離には、例えば、ろ過分離、沈降分離、遠心分離、磁気分離のような各種固液分離処理が用いられる。
次に、洗浄処理を施す。異物を除去することにより、異物が被処理金属粉末7に付着したまま回収されるのを抑制することができる。
洗浄処理としては、例えば、洗浄液に被処理金属粉末7を接触させる処理、洗浄液に被処理金属粉末7を浸漬する処理、洗浄液に被処理金属粉末7を浸漬し、さらに撹拌する処理等が挙げられる。撹拌には、例えば超音波撹拌、振とう撹拌、撹拌翼による撹拌等が挙げられる。
洗浄液は、特に限定されず、例えば水や有機溶媒とされるが、アルカリ性水溶液3と同様のpHを示す溶媒が好ましく用いられる。これにより、洗浄処理に伴う被処理金属粉末7の酸化を抑制することができる。
回収した被処理金属粉末7は、任意の目的で使用される。例えば、被処理金属粉末7では、酸化膜44の少なくとも一部が除去されているため、粒子同士の凝集の軽減が図られている。このため、被処理金属粉末7は、未処理金属粉末4に比べて流動性が良好であり、その特性を利用して積層造形用粉末として好適に用いられる。
また、酸化膜44の少なくとも一部が除去されていることにより、被処理金属粉末7は、未処理金属粉末4に比べて、粒子表面におけるバインダーの濡れ性が良好である。このため、より高い成形密度が得られ、高密度で機械的特性に優れた金属焼結体を製造することができる。
未処理金属粉末4および被処理金属粉末7について、X線光電子分光法による酸素定量分析を行ったとき、被処理金属粉末7から得られる酸素比率は、質量比で、未処理金属粉末4から得られる酸素比率の85%以下であるのが好ましく、75%以下であるのがより好ましい。このような被処理金属粉末7は、未処理金属粉末4から十分に酸素比率の低減が図られたものとなる。X線光電子分光法における酸素の検出深さは、10nm程度である。被処理金属粉末7では、酸素が表面近傍に集積する傾向がある。したがって、X線光電子分光法で得られる情報は、酸化膜44由来の情報が支配的である。このような極めて表面敏感な分析手法でも、上記範囲を満たす酸素比率の低減が図られるということは、被処理金属粉末7全体では、酸素比率の十分な低減が図られている証左である。よって、様々な用途で良好に用いられる被処理金属粉末7が得られる。
また、X線光電子分光法により、被処理金属粉末7から得られる酸素比率は、50質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下であるのがより好ましい。これにより、被処理金属粉末7全体で、酸素比率の十分な低減が図られる。
なお、X線光電子分光法は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)と呼ばれる。XPSによる分析条件としては、X線がAlKα線、照射エリアが直径100μm、照射角度が45°、出力管電圧が15kV、出力電力25Wが採用される。
未処理金属粉末4および被処理金属粉末7について、エネルギー分散型X線分析に基づく酸素定量分析を行ったとき、被処理金属粉末7から得られる酸素比率は、質量比で、未処理金属粉末4から得られる酸素比率の20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましく、5%以下であるのがさらに好ましい。このような被処理金属粉末7は、未処理金属粉末4から十分に酸素比率の低減が図られたものとなる。エネルギー分散型X線分析における酸素の検出深さは、15μm程度である。このような検出深さで取得された酸素比率で前記範囲を満たす低減が認められるということは、被処理金属粉末7全体でも同様に酸素比率の十分な低減が図られている証左である。よって、様々な用途で良好に用いられる被処理金属粉末7が得られる。
また、エネルギー分散型X線分析により、被処理金属粉末7から得られる酸素比率は、5.00質量%以下であるのが好ましく、1.00質量%以下であるのがより好ましい。これにより、被処理金属粉末7全体で、酸素比率の十分な低減が図られる。
なお、エネルギー分散型X線分析は、EDX(Energy dispersive X-ray spectroscopy)と呼ばれる。
被処理金属粉末7の平均粒径は、特に限定されないが、1.0μm以上30.0μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上10.0μm以下であるのがより好ましい。これにより、例えば、被処理金属粉末7をそのまま用いて金属焼結体を製造する場合、焼結密度の高い金属焼結体を得ることができる。
被処理金属粉末7の平均粒径は、レーザー回折法により取得された体積基準の粒度分布において、小径側から累積50%となるときの粒径D50として求められる。
2.金属焼結体の製造方法
次に、実施形態に係る金属焼結体の製造方法について説明する。
図7は、実施形態に係る金属焼結体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図7に示す金属焼結体の製造方法は、成形工程S302と、脱脂工程S304と、焼結工程S306と、を有する。成形工程S302では、前述した実施形態に係る金属粉末の酸化膜除去方法により得られる被処理金属粉末7を成形し、成形体を得る。脱脂工程S304では、成形体に脱脂処理を施し、脱脂体を得る。焼結工程S306では、脱脂体に焼結処理を施し、金属焼結体を得る。
このような焼結体の製造方法では、未処理金属粉末4から酸化膜44の少なくとも一部が除去されてなる被処理金属粉末7を用いる。前述した金属粉末の酸化膜除去方法では、電解還元によって酸化膜44を除去する。このため、酸化膜44を除去した後、被処理金属粉末7が再び酸化することが抑制され、酸素比率の低い被処理金属粉末7が得られる。そして、焼結の際、放出される酸化膜44由来のガスの量を減らすことができる。その結果、高密度で、機械的特性に優れた金属焼結体を製造することができる。
成形工程S302では、被処理金属粉末7とバインダー樹脂とを混合し、混合物を得る。混合物としては、例えば、被処理金属粉末7とバインダー樹脂との混練物、被処理金属粉末7とバインダー樹脂とを含む造粒粉末等が挙げられる。
次に、混合物を成形し、成形体を得る。成形方法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、積層造形法等が挙げられる。このうち、積層造形法としては、例えば、材料押出堆積法やバインダージェッティング法等が挙げられる。
脱脂工程S304では、成形体に脱脂処理を施し、脱脂体を得る。脱脂処理としては、例えば、成形体を加熱してバインダー樹脂を熱分解する方法、酸化雰囲気下で成形体を加熱する方法、バインダー樹脂を分解する周波数の超音波照射下で成形体を加熱する方法、赤外線を成形体に照射する方法等が挙げられる。脱脂処理により、成形体中のバインダー樹脂の全部または一部が除去される。
なお、後述する焼結工程S306において脱脂処理と焼結処理とを行う場合には、脱脂工程S304を省略してもよい。
焼結工程S306では、脱脂体に焼結処理を施す。焼結処理は、脱脂体を加熱して、被処理金属粉末7の粒子同士の界面に拡散を生じさせる。これにより、金属焼結体が得られる。
焼結処理には、脱脂体を加熱する方法が挙げられる。焼結処理の雰囲気は、特に限定されず、酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気、減圧雰囲気等が挙げられる。雰囲気圧力は、大気圧であっても、大気圧未満(減圧)であっても、大気圧超(加圧)であってもよい。
以上、本発明の金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、本発明の金属粉末の酸化膜除去方法および金属焼結体の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
3.金属粉末の酸化膜の除去
3.1.実施例1
まず、アルカリ性物質と水とを含むアルカリ性水溶液を調製した。具体的には、アルカリ性物質には、アンモニア濃度30質量%のアンモニア水を使用し、これを水で希釈して25℃でpH10のアルカリ性水溶液を調製した。
次に、調製したアルカリ性水溶液をアルミニウム製の容器に入れた。続いて、アルカリ性水溶液に未処理金属粉末を投入し、容器の底部に未処理金属粉末を広げるように配置した。未処理金属粉末には、水アトマイズ法で製造した、平均粒径7.0μmのFe-Cr系合金粉末を用いた。Fe-Cr系合金粉末は、Crを含むFe基合金の粉末である。
次に、アルカリ性水溶液にアルミニウム製の陽極を浸漬した。そして、容器(陰極)および陽極を、電源に接続した。
次に、電源から陰極と陽極との間に電圧3Vを10分間印加した。これにより、電解還元によって未処理金属粉末が有する酸化膜の少なくとも一部を除去し、被処理金属粉末を得た。
次に、アルカリ性水溶液から被処理金属粉末をろ過分離した後、取り出した被処理金属粉末を水に浸漬した。これにより、被処理金属粉末を洗浄した。洗浄後の被処理金属粉末を、再びろ過分離して回収した。
3.2.実施例2
以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして未処理金属粉末から酸化膜を除去し、被処理金属粉末を得た。
アルカリ性物質には、水酸化ナトリウムを使用し、これを水に溶解して25℃でpH13のアルカリ性水溶液を調製した。
3.3.実施例3~6
酸化膜を除去する処理の条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして被処理金属粉末を得た。
3.4.比較例1
溶液としてグラード液を使用した以外は、実施例1と同様にして被処理金属粉末を得た。なお、グラード液は、水75mLに対して塩酸19mLおよび塩化鉄6gを添加した溶液である。塩酸の濃度は、37質量%である。
3.5.比較例2
酸化膜の除去を省略し、未処理金属粉末をそのまま、比較例2の粉末とした。
4.被処理金属粉末の評価
4.1.XPSによる酸素比率の測定
各実施例および比較例1で得られた被処理金属粉末について、それぞれXPSによって酸素比率を測定した。また、未処理金属粉末について測定した酸素比率に対する被処理金属粉末について測定した酸素比率の割合を算出した。測定結果および算出結果を表1に示す。
4.2.EDXによる酸素比率の測定
各実施例および比較例1で得られた被処理金属粉末について、それぞれEDXによって酸素比率を測定した。また、未処理金属粉末について測定した酸素比率に対する被処理金属粉末について測定した酸素比率の割合を算出した。測定結果および算出結果を表1に示す。
4.3.XPSによる酸化鉄の分布状況
各実施例および比較例1で得られた被処理金属粉末について、それぞれXPSによるFeのピーク位置を確認した。次に、酸化鉄に由来するFeのピーク高さと、合金に由来するFeのピーク高さと、の比較を行った。そして、比較結果を以下の評価基準に照らして評価した。
A:酸化鉄由来のFeのピークが、合金由来のFeのピークより低い
B:酸化鉄由来のFeのピークが、合金由来のFeのピークより高い
評価結果を表1に示す。
Figure 2023002020000002
表1に示すように、各実施例で得られた被処理金属粉末では、比較例2の粉末(未処理金属粉末)に比べて、XPSによって測定された酸素比率、および、EDXによって測定された酸素比率の双方で低下が認められた。
また、XPSによるFeのピークの分析結果から、各実施例で得られた被処理金属粉末では、酸化膜の除去の結果、酸化鉄由来のFeのピークが、合金由来のFeのピークより低くなった。このことから、酸化膜の除去の結果、酸化膜に含まれている酸化鉄も除去することができたと推定される。
これに対し、比較例1で得られた被処理金属粉末では、比較例2の粉末に比べて、酸素比率の十分な低下が認められなかった。よって、比較例1で得られた被処理金属粉末では、酸化膜が十分に除去されているとはいえない。
図8は、比較例2の粉末(未処理金属粉末)から取得されたFe2p3ピークを含むXPSスペクトルである。図9は、実施例1で得られた被処理金属粉末から取得されたFe2p3ピークを含むXPSスペクトルである。
図8に示すXPSスペクトルでは、712eV付近にFe2p3ピークが認められる。このピーク位置から、未処理金属粉末の表面では、酸化鉄が支配的であると考えられる。
図9に示すXPSスペクトルでは、707eV付近にFe2p3ピークが認められる。このピーク位置から、被処理金属粉末の表面では、金属の鉄が支配的であると考えられる。
以上のようなXPSの分析結果により、酸化膜に含まれている酸化鉄も除去できたと推定される。
図10は、図9に示す結合エネルギー(Binding energy)範囲をより広い範囲で示したXPSスペクトルである。
図10に示すXPSスペクトルでは、73eV付近にピークが観測されなかった。73eVは、Al2pピークの位置である。したがって、実施例1で得られた被処理金属粉末の表面には、陽極由来のAlイオンがほとんど付着していないと推定される。つまり、電解還元ではアルミニウム製の陽極が溶解するものの、溶解によって生成されたAlイオンは、被処理金属粉末の表面にはほとんど付着しないか、付着しても洗浄処理によって十分に除去可能であることが確認できた。
なお、アルミニウム製の容器を亜鉛製の容器に代えて、上記と同様の実験を行ったところ、上記と同様の傾向を示す評価結果が得られた。
また、Fe-Cr系合金粉末に代えて、Fe-Si-B系アモルファス合金粉末およびFe-Si-B-Nb-Cu系ナノ結晶合金粉末を用いた場合も、上記と同様の電解還元を行うことで、酸化膜を除去することができた。
2…陰極、3…アルカリ性水溶液、4…未処理金属粉末、5…電源、6…陽極、7…被処理金属粉末、20…容器、42…コア粒子、44…酸化膜、S102…アルカリ性水溶液調製工程、S104…陰極浸漬工程、S106…未処理金属粉末投入工程、S108…陽極浸漬工程、S110…電圧印加工程、S112…洗浄工程、S302…成形工程、S304…脱脂工程、S306…焼結工程

Claims (13)

  1. 陰極を備える容器にアルカリ性水溶液を入れ、前記陰極に前記アルカリ性水溶液を接触させる工程と、
    コア粒子と前記コア粒子の表面に存在する酸化膜とを有する未処理金属粉末を、前記アルカリ性水溶液に投入し、前記陰極と前記未処理金属粉末とを接触させる工程と、
    前記未処理金属粉末が投入された前記アルカリ性水溶液に陽極を接触させる工程と、
    前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加することにより、前記酸化膜に還元反応を生じさせて前記酸化膜を除去し、被処理金属粉末を得る工程と、
    を有することを特徴とする金属粉末の酸化膜除去方法。
  2. 前記被処理金属粉末を洗浄する処理を施す工程を有する請求項1に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  3. 前記アルカリ性水溶液のpHは、9以上である請求項1または2に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  4. 前記アルカリ性水溶液は、強アルカリの水溶液またはアミン系弱アルカリの水溶液である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  5. 前記容器は、金属材料を含み、
    前記陰極は、前記容器の少なくとも一部である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  6. 前記コア粒子は、Fe基合金粒子である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  7. 前記Fe基合金粒子は、Cr、Si、MnおよびCuのうちの少なくとも1種を含む請求項6に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  8. 前記陰極は、AlまたはZnを含む請求項6または7に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  9. 前記陽極は、AlまたはZnを含む請求項6ないし8のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  10. 前記未処理金属粉末および前記被処理金属粉末についてX線光電子分光法による酸素定量分析を行ったとき、前記被処理金属粉末から得られる酸素比率は、前記未処理金属粉末から得られる酸素比率の85%以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  11. 前記未処理金属粉末および前記被処理金属粉末についてエネルギー分散型X線分析に基づく酸素定量分析を行ったとき、前記被処理金属粉末から得られる酸素比率は、前記未処理金属粉末から得られる酸素比率の20%以下である請求項1ないし10のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  12. 前記アルカリ性水溶液に不活性ガスをバブリングによって注入する操作を含む請求項1ないし11のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の金属粉末の酸化膜除去方法により得られる前記被処理金属粉末を成形し、成形体を得る工程と、
    前記成形体を焼結し、金属焼結体を得る工程と、
    を有することを特徴とする金属焼結体の製造方法。
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