JP2022546248A - アルコールフリー飲料の製造 - Google Patents

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Abstract

本発明は、アルコール低減発酵飲料を製造する方法及びそれにより得られたアルコール低減発酵飲料に関する。本発明は、更に、アルコール低減発酵飲料の製造のための、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全変換することが不可能である発酵性酵母の使用にも関する。

Description

本発明は、アルコールフリーを含むアルコール低減ビール製品を製造する方法、及び、この方法により得られるビールに関する。本発明は、特に、そのようなアルコール低減ビール製品の製造のための、特定の酵母株の使用に関する。
1 発明の背景
発酵は、発酵性糖をエタノールに変換する働きをすると共に、多様な新しいフレーバー化合物、中でもエステルの形成をもたらす。更に、ビール発酵はアルデヒドの大半を除去し、それにより、得られるビールの麦汁臭を抑制する。発酵後にビールをろ過及び/又は貯蔵することがあるが、これは外観及び味を最適化することを目的としている。
ビールのアルコール含有量に関連した健康不安及び交通安全意識向上により、アルコール含有量が低い又は更にはゼロであるビールへの関心が急激に高まっている。現時点では、アルコール含有量が低い又はゼロであるビールの調製には主に2つの手法がある。通常のビールからアルコールを除去する手法、及び、制限アルコール発酵(restricted alcohol fermentation)によりビールを調製する手法である。
ビールのアルコール除去は、通常の方法で醸造されたビールに対して実施され、エタノールは除去するがフレーバー成分はできるだけ除去しないように設計される。アルコール除去は、通常のビールを例えば精留、逆浸透又は透析にかけることにより達成し得る。しかし、ビールのアルコール除去の際にフレーバーの喪失を回避することはきわめて難しい。そのため、アルコール除去されたビールの欠点はフレーバーが単調なことであり、受け入れられるビールを得るためには、フレーバー及びアロマ化合物を人工的に添加することによってこの欠点を補わなければならない。しかし、味の付与に関わり合っている化合物が多種多様であることから味及び匂いは複雑なので、アルコール除去され続いて人工的にフレーバー付けされたビールは、通常のビールの味と比較して好まれにくい味になっていると一般的に考えられる。
低又はゼロアルコールビールは、制限アルコール発酵により調製することもできる。制限アルコール発酵は、エタノールがほとんど又は全く形成されない条件下で麦汁を発酵させるプロセスである。重要なプロセスの1つは、冷温接触発酵(cold contact fermentation)である。麦汁を冷温で発酵させると、酵母は、なんと、アルコールをほとんど産生しないにもかかわらず、エステル等のいくつかのフレーバー成分は産生するのである。但し、その場合のエステル換算量(quantity per ester)は、通常の発酵によって得られる量とは差があり得る。冷温では、麦汁臭の原因となるアルデヒドの分解に働く酵母の活性は低減している。結果的に、冷温接触プロセス(又は別の制限発酵プロセス)を用いて製造された低又はゼロアルコールビールは、アルデヒド含有量が相対的に高く、それにより麦汁臭のある低又はゼロアルコールビールになる、という欠点を有する。加えて、そのようなビールは一般的に、発酵性糖が残存していることにより相対的に甘味が強い。
一般的に、ビールの味は、アルコールフリービールを含め、多様な糖の量及び種類と、多様なフレーバー化合物、例えばエステル等の量及び種類と、多様な麦汁由来アルデヒド臭の量及び種類との微妙なバランスによって生じたものである。しかし、US2012/0207909に記載されているように、アルデヒドはベースレベルがわずかであってもビールの味に影響を及ぼす。加えて、特に塩及びアミノ化合物、例えばペプチド及びアミノ酸等の量及び種類も味に影響することがある。
US2012/0207909 独国特許第2145298号 独国特許第2413236号 ベルギー国特許第717847号 独国特許第2323094号 独国特許第2339206号 米国特許第4,317,217号 欧州特許出願第332,738号
Dietvorstら、2005、Yeast 22、775~788頁 Hittinger、2013、Trends Genet 29、309~317頁 Naseebら、2017、Int J Syst Evol Microbiol 67、2046~2052頁 Libkindら、2011、Proc Natl Acad Sci 108、14539~44頁 Perisら、2014、Mol Ecol 23、2031~45頁 Bingら、2014、Curr Biol 24、R380-1 Gayevskiy及びGoddard、2016、Environ Microbiol 18、1137~47頁 Heblyら、2015、FEMS Yeast Res 15、fov005 Krogerusら、2015、J Ind Microbiol Biotechnol 42、769~78頁 Gibsonら、2013、Yeast 30、255~266頁 Gibsonら、2017、FEMS Yeast Res 17、fox038 Narzissら、1993、Brauwelt 133、1806~1820頁 Kern、1994、Alimentacion Equipos y Tecnologia 13、37~41頁 Zufall及びWackerbauer、2000、Monatsschrift fuer Brauwissenschaft 53、124~137頁 Wieczorkeら、1999、FEBS Lett 464、123~128頁 Wijsmanら、2019、FEMS Yeast Res 19、10.1093 Royら、2016、Mol Biol Cell 27、862~871頁 Mukaiら、2010、J Bioscie Bioeng 109、564~569頁 Solis-Escalanteら、2013、FEMS Yeast Res 13、126~139頁 Lookeら、2011、Biotechniques 50、325~328頁 Gietz及びSchiestl、2007、Nature Prot 2、31~34頁 Verduynら、1992、Yeast 8、501~517頁 Vosら、2015、Microbial Cell Fact 14、133頁 de Kokら、2012、FEMS Yeast Res 12、359~374頁 Bakerら、2015、Mol Biol Evol 32、2818~2831頁 Li及びDurbin、2009、Bioinformatics 25、1754~1760頁 Liら、2009、Bioinformatics 25、2078~2079頁 Li及びDurbin、2010、Bioinformatics 26、589~595頁 Walkerら、2015、Plos One 9、e112963頁 Pengelly及びWheals、2013、FEMS Yeast Res 13、156~161頁 Haase及びReed、2002、Cell Cycle 1、132~136頁 Van den Broekら、2015、Appl Environ Microbiol 81、6253~6267頁 Entian及びKotter、2007、Yeast genetic strain and plasmid collections.、収録先:Stansfield I、Stark MJR(編)、Yeast Gene Analysis第36巻、第2版、Amsterdam、Academic Press、Elsevier社、629~66頁
既存の低又はゼロアルコールビールは、一般的に、ドリンカビリティー(drinkability)に欠けるという難点がある。大半の人はグラス1~2杯飲んだだけでその味に倦み、この点が、通常のアルコール含有ビールを飲む場合とは対照的である。味に倦むのは、一般的に、アルデヒドレベルが高く且つ未発酵の麦芽由来糖(malt sugar)の濃度が高いことにより麦汁臭が強くなりすぎることによってもたらされる強烈なフレーバーが原因である。加えて、既存の低又はゼロアルコールビールは、多くの場合、バランスが悪い。本発明は、これらの欠点を克服する方法を提供する。
2 発明の概要
本発明は、アルコール低減発酵ビール、好ましくはアルコールフリービール(すなわち、アルコールを含まないビール)を製造する方法であって、発酵性酵母を麦汁に添加して前記麦汁を少なくとも部分的に発酵させ、これにより該麦汁中に存在する発酵性糖、例えばスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースの少なくとも一部を保持する工程と、該麦汁から該酵母を除去する工程と、こうして得られた発酵ビールのアルコール含有量を低減させ、これによりアルコール低減発酵ビール、例えばアルコールフリービールを製造する工程とを含む、方法を提供する。
この方法により製造されたアルコールフリービールのドリンカビリティーは、得られた製品の甘味/酸味比が、得られた製品に例えば未発酵麦汁又はグルコース等の甘味料を添加しなくても高値である場合には大幅に改善されていることが見出された。
一態様において、麦汁中、好ましくは原麦汁(starting wort)中に存在するスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースの少なくとも一部を保持することは、発酵を早期(中途)停止し、且つ、麦汁から酵母を除去することによって遂行される。
本発明による、アルコールフリービールを含むアルコール低減発酵ビールを製造する方法は、発酵性酵母を麦汁に添加して前記麦汁を少なくとも部分的に発酵させる工程を含み得、前記発酵性酵母は、六炭糖、例えばグルコース及び/若しくはフルクトース等、二糖、例えばスクロース及び/若しくはマルトース等、並びに/又は三糖、例えばマルトトリオース等をエタノールに変換すること、又は六炭糖、好ましくはグルコース及び/若しくはフルクトース等、二糖、例えばスクロース及び/若しくはマルトース等、並びに/又は三糖、例えばマルトトリオース等をエタノールに完全変換することが不可能である。
該発酵性酵母は、好ましくは、少なくとも、三糖、例えばマルトトリオース等、好ましくはマルトトリオースと、六炭糖、例えばグルコース及びフルクトース等とをエタノールに変換することが不可能であるか、又は、少なくとも、三糖、例えばマルトトリオース等、好ましくはマルトトリオースと、六炭糖、例えばグルコース及びフルクトース等とをエタノールに完全変換することが不可能である。不完全発酵によりビール中に残っているマルトトリオースは、品質面及び経済面の両方において問題を引き起こすことが報告されている(Dietvorstら、2005、Yeast 22、775~788頁)。ところが今回、驚くべきことに、アルコール低減ビール製品、好ましくはアルコールフリービール製品であって、発酵の途中及び/又は後の段階でアルコール含有量を低減させてあり、且つ、原料麦汁(input wort)由来のマルトトリオースが存在している製品は、同じプロセスで通常の醸造用酵母を用い原料マルトトリオースの全部又は一部が発酵してエタノールになっている場合に比べて「こく」があることが見出された。得られたアルコール低減ビール製品、好ましくはアルコールフリービール製品の官能特性は、従来型の高アルコールビールのものに近い。
該発酵性酵母は、より好ましくは、六炭糖、例えば少なくともグルコース等をエタノールに完全変換することが不可能であり、これ自体が不可能であるのか、又は、マルトトリオースをエタノールに変換することができないことに加えてであるのかは問わない。これにより得られたアルコール低減ビール製品、好ましくはアルコールフリービール製品の官能特性は、従来型の高アルコールビールのものに近い。
該発酵性酵母は、好ましくは、サッカロミセス・センス・ストリクト(Saccharomyces sensu stricto)複合種(complex)の酵母、より好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及び/又はS.ユーバヤヌス(S.eubayanus)酵母、及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.pastorianus)(別名S.カールスベルゲンシス(S.carlsbergensis))である。
該発酵性酵母は、好ましくは、低減したフェノール酸脱炭酸活性を有し、好ましくは、4-ビニルグアヤコール非産生性である。このために、該発酵性酵母は、好ましくは、遺伝子PAD1及びFDC1のうち少なくとも1つの不活性化、並びに/又は、フェノール酸、好ましくはフェルラ酸の取込に関与している若しくは脱炭酸フェノール化合物、好ましくは4-ビニルグアヤコールのエクスポート(搬出、排出)に関与しているタンパク質をコードする遺伝子の不活性化をもたらす突然変異を含む。
該発酵は、好ましくは、温度6~25℃、好ましくは8~15℃で実施される。
該発酵ビール製品のアルコール含有量は、好ましくは、精留によって低減される。
該アルコール低減発酵ビール製品は、好ましくは、アルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービール、ワイルドラガー、ピルスナー、ペールエール又はセゾンである。
本発明は、更に、本発明の方法のうちいずれか1つにより製造されているアルコール低減発酵ビール製品を提供する。該アルコール低減発酵ビール製品は、好ましくは、アルコールフリービール、より好ましくは、アルコール低減された又はアルコールフリーラガービール、ワイルドラガー、ピルスナー、ペールエール又はセゾンである。
本発明は、更にアルコール低減発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービールであって、発酵前の原麦汁中に存在した発酵性糖すなわちスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースのうち少なくとも1つを含む、製品を提供する。該アルコール低減発酵ビール製品は、好ましくは、原麦汁中に存在した、六炭糖、例えばフルクトース及びグルコースを実質的に全部、又は、三糖、例えばマルトトリオースを全部と、又は、三糖、例えばマルトトリオース全部と六炭糖、例えばフルクトース及びグルコースを全部とを、含む。
更に好ましいアルコール低減発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービールは、原麦汁中に存在したグルコースを全部、例えばグルコース及びマルトトリオースを全部という形で、含む。
好ましいアルコール低減発酵飲料は、脱炭酸フェノール化合物である4-ビニルグアヤコールが存在しない飲料である。
本発明は、更に、アルコール低減発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービールの製造のための、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全変換することが不可能である発酵性酵母の使用を提供する。該発酵性酵母は、好ましくは、サッカロミセス・センス・ストリクト複合種の酵母、好ましくはS.セレビシエ、S.ユーバヤヌス酵母及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.カールスベルゲンシス)、好ましくは、4-ビニルグアヤコール非産生性である、S.セレビシエ、S.ユーバヤヌス及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.カールスベルゲンシス)である。
フェルラ酸が脱炭酸により4-ビニルグアヤコール(4-VG)になることを示す図である。 96ウェルマイクロタイタープレートを用いTecan Infinite Pro 200で計測することにより決定した250~400nmの吸収スペクトルを示すグラフである。細胞(S.ユーバヤヌスCBS12357のUV突然変異バリアント(UV mutagenized variant))は、24ディープウェルプレートを用い、1mMフェルラ酸を含有する合成麦汁3ml中で生育させた。フェルラ酸を4-VGに変換すると、300nm超の吸収値が大きく減少した。グラフ線は、8種の異なるバリアント由来のスペクトルを表す。例として、バリアントE2は、フェルラ酸変換量が大きく低減していることを意味するスペクトルを示している。 フェルラ酸が4-VGに変換することを示す図3のうち、フェルラ酸について示すグラフである。細胞は、24ディープウェルプレートを用い、1mMケイ皮酸を含有する合成麦汁3ml中で生育させた。S.ユーバヤヌスCBS1257の生育度を、FDC1-PAD1シングルノックアウト、FDC1-PAD1ダブルノックアウト、並びに、CBS12357のUV突然変異バリアントのうち選抜した5種類、すなわちHTSE-22、HTSE-23、HTSE-33、HTSE-37及びHTSE-42と比較した。フェルラ酸(図3A)から4-VG(図3B)への変換度は、HPLCにより決定した。フェルラ酸が4-VGに変換することを示す図3のうち、4-VGについて示すグラフである。細胞は、24ディープウェルプレートを用い、1mMケイ皮酸を含有する合成麦汁3ml中で生育させた。S.ユーバヤヌスCBS12357の生育度を、FDC1-PAD1シングルノックアウト、FDC1-PAD1ダブルノックアウト、並びに、CBS12357のUV突然変異バリアントのうち選抜した5種類、すなわちHTSE-22、HTSE-23、HTSE-33、HTSE-37及びHTSE-42と比較した。フェルラ酸(図3A)から4-VG(図3B)への変換度は、HPLCにより決定した。 16°Pのフルモルト麦汁(full malt wort)の発酵段階における糖及びエタノール(Ethanol)の濃度を示すグラフである。六炭糖に属する糖であるグルコース及びフルクトースは、六炭糖輸送能欠損性酵母(hexose-transport deficient yeast)IMX1812では発酵しない。
4 発明の詳細な説明
4.1 定義
用語「発酵ビール製品」は、本明細書においては、例として作物及びその産物、例えば穀物、コメ、ブドウ及び他の果物、ナッツ、並びに/又は例えばリュウゼツラン、ユッカ及びサボテンの滲出物等を発酵させることにより製造されるビール製品を指す。
用語「アルコール低減発酵ビール製品」は、本明細書においては、対応する普通の飲料と比較するとエタノールのレベルが低減している発酵ビールを指す。例を挙げると、アルコール低減ビールは、好ましくは、5体積%未満、例えば0.5~1.2%(体積%)等のエタノールをアルコール分として含む。
用語「アルコールフリーの発酵ビール製品」は、本明細書においては、製品中にエタノールがまったく存在しないか又は0.03体積%未満存在する発酵ビール製品を指す。アルコールフリービールとして認められる最大パーセンテージは国によって異なる場合があることに留意されたい。例を挙げると、アルコールフリービール、別名「ノンアルコールビール」が含有し得るアルコールは、米国及び欧州数カ国では0.5体積%未満であるが、英国では0.05体積%以下である。但し、本明細書においては、用語「アルコールフリーの発酵ビール製品」は、製品中にエタノールがまったく存在しないか又は0.03体積%未満存在する発酵ビール製品を指す。
用語「発酵性酵母」は、本明細書においては、サッカロミセス・センス・ストリクト複合種の酵母、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ、S.ユーバヤヌス、及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.カールスベルゲンシス)等を指す。
用語「サッカロミセス・センス・ストリクト複合種」は、本明細書においては、9つの異なる種、すなわち、サッカロミセス・セレビシエ、S.パラドクスス(S.paradoxus)、S.カリオカヌス(S.cariocanus)、S.ウヴァルム(S.uvarum)、S.ミカタエ(S.mikatae)、S.クドリアヴゼヴィイ(S.kudriavzevii)、S.アルボリコラ(S.arboricola)、S.ユーバヤヌス及び近年発見されたS.ユレイ(S.jurei)を現時点で含むサブファミリーを指す(Hittinger、2013、Trends Genet 29、309~317頁;Naseebら、2017、Int J Syst Evol Microbiol 67、2046~2052頁)。
用語「マルトトリオース」は、本明細書においては、α-1,4-グリコシド結合で連結されている3つのグルコース分子からなる三糖を指す。
用語「フェノール酸脱炭酸活性」は、本明細書においては、変換されて脱炭酸形態になるフェノール酸の量、好ましくは、酵素的に変換されて脱炭酸形態になるフェノール酸の量を指す。酵素的変換は、好ましくは、フェニルアクリル酸デカルボキシラーゼ(PAD1)及び/又はフェルラ酸デカルボキシラーゼ(FDC1)をコードする遺伝子によってコードされている2種類のタンパク質のうち少なくとも一方又は両方により触媒される。これら2つの遺伝子のうち一方を不活性化させればフェノール酸脱炭酸を十分妨害できることが示されている。フェノール酸脱炭酸活性、すなわち、変換されて脱炭酸形態になるフェノール酸の量は、当技術分野で公知の任意の方法により決定することができる。例を挙げると、フェルラ酸と4-VGとでは、200~400nmの範囲における光吸収スペクトルに大きな差がみられる。フェルラ酸は300nm超で高い吸収値を示すが、4-VGに変換されると、300nm超の吸収値は減少する。この差を用いて、フェノール酸脱炭酸活性の推定値として、フェルラ酸の4-VGへの潜在的変換能力を推定することができる。例を挙げると、例えば、フェルラ酸の存在下、合成麦汁中で生育させたマイクロタイタープレート培養物の上清を例えば4℃、2500xgで5分間の遠心分離により回収してマイクロタイタープレートに移し、この96ウェルマイクロタイタープレートの250nmから400nmまでの吸収スペクトルを決定する、ということが可能である。別の例として、脱炭酸活性の決定は、酵母細胞又は酵母細胞培養物を基質すなわちフェノール酸、例えばフェルラ酸又はケイ皮酸等の存在下でインキュベートし、フェノール酸からその脱炭酸形態への変換量を質量分析又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定することによっても実施可能である。
用語「低減したフェノール酸脱炭酸活性」とは、本明細書においては、酵母の脱炭酸活性のパーセンテージについて言及するものである。例えば、所定の期間中のフェノール酸変換量を決定し、これを同期間中の対照酵母細胞又は酵母細胞培養物におけるフェノール酸変換量と比較することが可能である。別の例として、脱炭酸活性はもっと間接的な方法で決定することもできる。その場合の手段は、ケイ皮酸存在下で培養した酵母細胞の増殖量の、ケイ皮酸非存在下での酵母細胞培養物の増殖量に対する比を決定することによる。ケイ皮酸の酵母細胞に対する毒性はその脱炭酸形態であるスチレンより強いことから、酵母細胞又は酵母細胞培養物のうちケイ皮酸存在下においた酵母細胞の増殖量が参照株と比較して低減していれば、脱炭酸活性が低減していることになる。低減度(%)は、例えば、ケイ皮酸存在下で培養した酵母細胞の増殖比を決定することにより決定できる。或いは、ケイ皮酸の存在下又は非存在下での酵母細胞の増殖量を決定し、ケイ皮酸存在下で培養した酵母細胞の増殖量の、ケイ皮酸非存在下で培養した酵母細胞の増殖量に対する比を、脱炭酸活性の尺度として決定することもできる。参考として、発酵プロセスで日常的に使用される普通酵母株、例えばビール発酵用のHeineken-A酵母及び/又はHeineken-D酵母を、フェノール酸脱炭酸活性の低減度を決定するための参考として使用できる。該低減度は、先に述べた、発酵プロセスにおいて日常的に使用される普通酵母株に対して好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99%である。これはつまり、フェノール酸脱炭酸活性が低減している酵母の脱炭酸活性は、参照株の脱炭酸活性に対して多くても40%、より好ましくは該参照株の脱炭酸活性に対して多くても30%、より好ましくは多くても25%、より好ましくは多くても20%、より好ましくは多くても15%、より好ましくは多くても10%、より好ましくは多くても5%、最も好ましくは多くても1%であることを意味する。
用語「突然変異」は、本明細書においては、酵母のゲノムDNAにおける改変を指し、これには、点突然変異、1個又は複数個のヌクレオチドの挿入又は欠失、1個又は複数個のヌクレオチドの置換、フレームシフト突然変異、及び一本鎖又は二本鎖DNAの切断、例えば染色体切断又はサブテロメア切断(subtelomeric break)等、並びにこれらの任意の組合せが包含されるが限定されない。
用語「遺伝子」は、本明細書においては、遺伝子によってコードされている産物が確実に発現されるようにするありとあらゆるシス作用性ゲノム配列を指し、これにはエンハンサー及びプロモーター配列、エキソン及びイントロン配列が包含される。該産物は、mRNA分子等のRNA分子、及び/又はタンパク質であり得る。
用語「別の遺伝子の転写制御に関与している遺伝子」は、本明細書においては、本用語にいう「別の遺伝子」の発現を調節する転写調節因子又は転写因子をコードしている遺伝子を指す。
用語「不活性化された遺伝子」は、本明細書においては、その通常の機能を果たす能力がない遺伝子を指す。例えば、タンパク質をコードする遺伝子の場合、「不活性化」とは、その遺伝子が、タンパク質に翻訳されないか、不活性なタンパク質をコードしているか、又は、低活性のタンパク質をコードしていることを意味する。該不活性化は、例えば、プロモーター配列の改変によりプロモーターが遺伝子の転写を開始できなくなっていること、又は、イントロンのスプライシング部位の改変により、転写されたpre-mRNAの正確なスプライシングが妨害されること、又は、遺伝子のコード領域の改変により、コードされているタンパク質を低活性化若しくは更には不活性化させることによって生じたものであってもよい。該不活性化の程度は、不活性化されていない遺伝子に対して、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99%である。
用語「プロモーター」は、本明細書においては、遺伝子の転写開始に必要な当該遺伝子における調節領域と考えられるゲノム配列を指す。プロモーターは、典型的には、遺伝子の5'部分に位置している。
用語「プラトー(Plato)度」又は「°P」は、本明細書においては、発酵前の麦汁100グラム中の糖の量を指す。10°Pは、糖約10グラムに等しい。糖のパーセンテージが高いほど、酵母はより多くの糖を代謝してアルコールにすることができる。糖の量は、フーリエ変換赤外分光法等の赤外線手法でも、また、例えば屈折計によっても測定できる。
4.2 アルコール低減発酵飲料を製造する方法
酵母は昔から、製パン、醸造及び蒸留に、例えば、パンの製造並びにビール及びワインの発酵等に使用されてきた。
約12°Pの醸造用麦汁は、マルトース(50~60%)、マルトトリオース(15~20%)及びグルコース(10~15%)等の発酵性糖を含む。本発明の方法は、麦汁中に存在する発酵性麦芽由来糖の少なくとも一部、例として、二糖、例えばスクロース及び/若しくはマルトース等、六炭糖、例えばフルクトース及び/若しくはグルコース等、並びに/又は三糖、例えばマルトトリオース等が、得られた発酵ビールのアルコール含有量を0.03体積%未満に低減させた後も当該発酵ビール製品中に保持されることを確実にする。本明細書において先述したように、得られたアルコールフリービールのドリンカビリティーは、得られた製品の甘味/酸味比が高値である場合には大幅に改善されており、得られた製品に例えば未発酵麦汁又はグルコース等の甘味料の添加を必要としないことが見出された。
麦汁中、好ましくは原麦汁中に存在するスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースの少なくとも一部を保持することは、発酵を早期(中途)停止すること、及び麦汁から酵母を除去することによって遂行され得る。発酵の早期(中途)停止により、麦汁中に存在するマルトース及びマルトトリオースの少なくとも一部は、得られた発酵ビール製品中に保持されることが確実になる。発酵は、マルトース及びマルトトリオースの少なくとも一部に加え、麦汁中に最初から存在する六炭糖、例えばグルコース及びフルクトース等の一部も発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービール中に保持されている時点で停止されることが好ましい。
ビールの甘味は、次式により表すことができる:
0.7×[グルコース]+1.6×[フルクトース]+0.5×[マルトース]+1×[スクロース]+0.3×[マルトトリオース]。式中、スクロース濃度([スクロース])を1と設定する。
当業者は、ラガービール等のビールの完全な発酵には、例えば温度及び発酵に使用する酵母液(yeast starting culture)にもよるが、S.ユーバヤヌス酵母の場合で最大6週間、その他の酵母の場合で好ましくは最大約2週間かかることがあるということを認識している。したがって、発酵の早期(中途)停止とは、発酵を進行させる期間が6週間未満、好ましくは約7~14日間、例えば約8日間、9日間、10日間、11日間、12日間又は13日間等であることを意味する。より高い温度、例えば18℃超等で発酵が実施される場合には、該早期(中途)停止発酵は、発酵を進行させる期間が3~7日間、例えば4日間、5日間及び6日間であることを意味するが、そのことは当業者には自明であろう。
本発明の方法は、好ましくは、麦汁中に存在する発酵性麦芽由来糖、例えばグルコース、フルクトース、マルトース及び/又はマルトトリオース等をエタノールに完全変換することが不可能である酵母を用いる。該酵母は、好ましくは、サッカロミセス・センス・ストリクト複合種の天然由来酵母、好ましくはS.セレビシエ、S.ユーバヤヌス酵母及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.カールスベルゲンシス)である。
S.ユーバヤヌスは、北西パタゴニアにおいて、ナンキョクブナ属(Nothofagus)の樹木、及び、キッタリア・ハリオティ(Cyttaria harioti)のストロマから初めて単離された(Libkindら、2011、Proc Natl Acad Sci 108、14539~44頁)。S.ユーバヤヌス株は、続いて、北米(Perisら、2014、Mol Ecol 23、2031~45頁)、アジア(Bingら、2014、Curr Biol 24、R380-1)及びオセアニア(Gayevskiy及びGoddard、2016、Environ Microbiol 18、1137~47頁)の地域からも単離された。パタゴニアのS.ユーバヤヌス株CBS12357Tについての初期の生理学的特徴付けから、この株は、10℃を下回る温度ではS.セレビシエより早く生育すること(Heblyら、2015、FEMS Yeast Res 15、fov005)、凝集沈降(flocculation)をあまり示さないこと(Krogerusら、2015、J Ind Microbiol Biotechnol 42、769~78頁)、及び、マルトースを消費するがマルトトリオースを消費しないこと(Gibsonら、2013、Yeast 30、255~266頁)ことが明らかになった。(Gibsonら、2017、FEMS Yeast Res 17、fox038;Heblyら、2015、FEMS Yeast Res 15、fov005)
該酵母は、1つ又は複数の自然発生突然変異及び/又は突然変異誘発による突然変異を更に含み得る。この突然変異は、遺伝子PAD1及びFDC1のうち少なくとも一方における、該遺伝子のうち少なくとも一方の転写制御に関与している遺伝子における、並びに/又は、フェノール酸、好ましくはフェルラ酸の取込に関与しているか若しくは脱炭酸フェノール化合物、好ましくは4-ビニルグアヤコールのエクスポートに関与しているタンパク質をコードする遺伝子における、並びに/又は、該遺伝子の転写制御に関与している遺伝子における突然変異である。
アルコール低減発酵ビール製品を製造する該方法は、すりつぶした穀物粒、好ましくはオオムギを水性溶液、好ましくは水に浸して麦芽由来糖を放出させることを含む。この製麦工程に続いて、得られた麦汁をホップの存在下で煮沸する工程、及び、得られた煮沸麦汁を冷却してから発酵させる工程を実施する。発酵が完了した段階で、ビールをろ過及び瓶詰めしてもよい。
発酵プロセスにおいて、発酵性糖は、アルコール、例えばエタノール等、CO2、及びフレーバー化合物、例えばエステル、例として酢酸イソアミル等に変換される。当業者には公知であるように、得られる製品の外観及び味に影響する因子としては、限定されるものではないが、穀粒の焙煎温度及び焙煎時間、穀粒の浸漬、発芽及び焙燥の温度及び時間、穀粒の粉砕及び仕込の際や、これにより得られたもろみをロータリングして麦汁を生成する際の温度及び時間、麦汁煮沸の温度及び時間、ホップ添加のタイミング及び量、使用されるホップの仕様、発酵の温度及び時間、酵母の種類、酵母除去に際して機械的ろ過を行うか又はろ過剤を添加するかの別、そして最後に、ビールのカーボネーション(carbonating)及び容器詰めが挙げられる。熟成工程は、発酵後、但し、ろ過前に開始され得る工程であり、数日から数週間にわたる時間が与えられるこの段階において酵母は、熟成途中の(under-conditioned)又は「若」ビールによくみられる異臭、例えばイオウ臭、バター臭及び青リンゴ臭等を吸収する。
本発明の方法において、発酵プロセスは、通常の温度で、好ましくは2~35℃、6~25℃、より好ましくは7~20、8~16、又は8~13℃等で実施される。ラガービール発酵は、一般的に7~13℃の範囲の温度で実施される。驚くべきことに、全ての発酵性麦芽由来糖、例えばスクロース、フルクトース、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオース等を完全変換することが不可能である酵母、特に、S.セレビシエ酵母、S.ユーバヤヌス酵母及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌス(S.カールスベルゲンシス)をこれらの温度で用いた場合、産生されたエタノールの精留を経て得られた製品は官能特性が改善していることが見出された。
得られる製品の甘味/酸味比は、発酵プロセスの温度を低下させることにより更に高めることができる。驚くべきことに、温度を低下させると、得られるビール製品中に存在する酸の量は減少することが見出された。酸の量が低減することにより、得られる製品の甘味/酸味比は高くなる。
最終ビール製品中のアルコールの量を低減させるには、アルコール濃度が4体積%超である得られたビール製品を、物理的プロセス、例えば精留及び/又は透析等にかける。透析には逆浸透が含まれる。
精留は、通常は減圧下で実施されることで、他の含有成分、例えばタンパク質及び糖等の分解を生じない温度での揮発性エタノールの煮沸を達成する。該精留は、発酵の後に、減圧下、20~50℃の昇温で好ましくは実施される。アルコールレベルを低減させるための真空精留の方法は、例えば、Narzissら、1993、Brauwelt 133、1806~1820頁、及び、Kern、1994、Alimentacion Equipos y Tecnologia 13、37~41頁に記載されている。さらなる好適な方法としては、流下薄膜式精留が挙げられる(Zufall及びWackerbauer、2000、Monatsschrift fuer Brauwissenschaft 53、124~137頁)。好適な大規模精留システムは、例えば、KmX Chemical Corporation社、New Church、Virginia;Pope Scientific,Inc.社、Saukville、Wisconsin;M&L Engineering GmbH社、Hofheim am Taunus、ドイツ;Centec社、Maintal、ドイツ及びAPI Schmidt Bretten GmbH&Co.KG社、Bretten、ドイツから入手可能である。
発酵飲料のアルコール含有量を低減させるための透析としては、当該飲料に半透膜を通過させることが挙げられる(独国特許第2145298号及び2413236号)。好ましい透析プロセスは、飲料を濃縮液とろ液とに分離する単段逆浸透法(single reverse osmosis process)である(ベルギー国特許第717847号、独国特許第2323094号、独国特許第2339206号)。さらなる変形は、逆浸透(米国特許第4,317,217号)及び浸透気化法(欧州特許出願第332,738号)を含む。使用される膜の閾値特性(threshold feature)によって、低分子量分子、例えば塩、エステル及びアルデヒド等のどれが発酵飲料からアルコールと一緒に除去されるかが決定する。更に、そのプロセスの実施中にかけられる高圧が分子の変性を引き起こし、その結果、物理化学的特性、例えば濁度や凝集沈降の増加等、並びに官能特性、例えば修飾されたフレーバー及び味等が改変されることもある。好適な大規模透析システムは、例えば、Alfa Laval社、Lund、スウェーデン及びOsmonics Inc.社、Minnetonka、Minnesotaから入手可能である。
4.3 発酵性酵母を突然変異させる方法
突然変異誘発は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて実施することができ、このような方法としては、従来のランダム突然変異誘発法、例えば放射線及び化学的処理等、並びに、組換えDNA技術、例えば位置指定突然変異誘発又は標的化突然変異誘発等が挙げられる。したがって、一実施形態において、酵母細胞は、UV照射、X線照射、γ線照射及び突然変異誘発剤を用いた処理を包含するランダム突然変異誘発、又は遺伝子操作が施されたものであってもよい。
「ランダム突然変異誘発」とは突然変異誘発の手法であって、それによって生じる突然変異の正確な部位が予測できず、酵母細胞(1つ若しくは複数)又は胞子(1つ又は複数)の染色体のどこにでも突然変異が生じる可能性がある手法を指す。一般的に、これらの方法は、少なくとも1つの突然変異を誘発させる目的での化学物質又は放射線の使用を伴う。ランダム突然変異誘発は、更に、エラープローンPCR(error prone PCR)を用いて達成することもできる。この方法では、DNAポリメラーゼのコピー精度が低くそのため比較的高率でPCR産物に突然変異が生じる条件下で、PCRが実施される。
「遺伝子操作」は当技術分野で周知であり、生物工学的な方法を用いて酵母のゲノムを改変することを指す。この場合の方法は、酵母のゲノムDNA改変を、好ましくは所定の部位に、且つ所定の改変内容で導入するもので、位置指定突然変異誘発と呼ばれる。
位置指定突然変異誘発は、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発を用いて関心対象のゲノムDNA配列に位置特異的突然変異を生じさせることで達成できる。標的化突然変異誘発は、in vivoで特異的遺伝子を改変することにより特異的位置に狙いを定めた遺伝子構造変化を得る突然変異誘発法を指し、そのための手段は例えば、プログラム可能なRNAガイドヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease)、例えばTALEN、CRISPR-Cas、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ又はメガヌクレアーゼ技術等による。
ある好ましい実施形態において、突然変異誘発は、酵母を放射線、例えばUV照射、X線照射、γ線照射等、又は突然変異誘発剤、好ましくは化学物質、例えばNTG(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)若しくはEMS(エチルメタンスルホナート)等での処理にかけることにより実施される。特に好ましい突然変異誘発手順は、UV照射を例えば10秒間~3分間、好ましくはおよそ1~2分間行うことを含む。好ましい方法としては、紫外線(UVCランプ、36W、MSC-Advantage Biological Safety Cabinet、ThermoFisher Scientific社、Waltham、MA)に80秒間曝露して生存率が1%になるようにする方法が挙げられる。
グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全変換することが不可能である発酵性酵母は、突然変異誘発により生み出されたものであり得る。例を挙げると、該発酵性酵母は、1個又は複数個の輸送体遺伝子に改変が生じているものであってもよく、そのような輸送体遺伝子の例としては、六炭糖輸送体、主にグルコース及びフルクトース輸送体で例えばHXT輸送体ファミリーに属するもの、例としてHXT1~HXT17、GAL2、AGT1、YDL247w及びYJR160c(Wieczorkeら、1999、FEBS Lett 464、123~128頁)、好ましくはこれら21個の輸送体全て;マルトース輸送体、例えばMALファミリーのマルトース-H+共輸送体に属するもの、例としてMAL1、MAL2、MAL3、MAL4及びMAL6、MAL11(AGT1)、MPH2及びMPH3;並びにマルトトリオース輸送体、例としてMAL輸送体ファミリーに属するもの、例えばMAL31、MPH2、MPH3、AGT1及びMTY1が挙げられ、好ましくは少なくともAGT1及び/又はMTY1に改変が生じているもので、改変には、輸送体自体及び/又は上流のγ-グルコシダーゼ及び/又は下流の転写活性化因子における1つ又は複数の改変が包含される。そのような輸送体遺伝子及びその調節因子の例は、例えばWijsmanら、2019により提供されている(Wijsmanら、2019、FEMS Yeast Res 19、10.1093)。
同様に、酵母における細胞表面グルコースセンサーRgt2及び/若しくはSnf3並びに/又は下流の核転写因子Rgt1の改変を用いることで、グルコース輸送体をコードする遺伝子を抑制することができる(Royら、2016、Mol Biol Cell 27、862~871頁)。当業者であれば、グルコース、マルトース及びマルトトリオースのうち1つ又は複数の取込、発酵及び/又は好気的分解において鍵となる酵素をコードする1個又は複数個の遺伝子の改変、好ましくはランダム突然変異誘発による改変を行えば、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全変換することが不可能である発酵性酵母が得られる、ということを理解するであろう。関連遺伝子は公知であり、これらの遺伝子にランダム突然変異を誘発する方法についても同様である。
当業者には知られているように、スクロースは、酵母の細胞外インベルターゼ活性によりグルコース及びフルクトースに変換され得る二糖である。したがって、そのような細胞外インベルターゼの阻害によっても、麦汁を少なくとも部分的に発酵させ、それにより麦汁中に存在する糖の少なくとも一部を保持することが可能な酵母を得ることができる。
好ましくは改変されている、好ましくはその改変がランダム突然変異誘発によるものであるさらなる遺伝子は、フェノール酸脱炭酸活性に、好ましくは4-ビニルグアヤコールの産生に、より好ましくは4-ビニルグアヤコールへのフェルラ酸脱炭酸に関与している遺伝子である。フェノール化合物が一般的に異臭とみなされる発酵飲料としては、ビール、より好ましくは、ラガー、ワイルドラガー、ピルスナー、ペールエール及びセゾンからなる群から選択されるビールが挙げられる。
ビールにおいては、フェノール性(異)臭は、麦汁を直接の発生源とするものもあれば、酵母による酵素的変換の結果、又は、酸素及び温度の影響を受けた(例えば麦汁煮沸若しくは瓶内熟成の段階で)ことにより化学的変換が起きた結果生じるものもある。ビール発酵の段階で、麦汁中に存在するフェルラ酸は酵素的脱炭酸を経由してフェノール性異臭4-VGに変換される(図1)。当初、脱炭酸にはフェニルアクリル酸デカルボキシラーゼをコードするPad1のみが関与していると考えられたが、Mukaiらによる結果(Mukaiら、2010、J Bioscie Bioeng 109、564~569頁)は、Pad1と、フェルラ酸デカルボキシラーゼをコードするFdc1との両方が必要であることを示唆している。上面発酵酵母はPad1とFdc1との活性セットを一般的に含有するが、下面発酵酵母は、フェノール酸を対応するフェノール性異臭に変換することができない。
好ましい発酵性酵母は、遺伝子PAD1及びFDC1のうち少なくとも一方の、並びに/又は、該遺伝子のうち少なくとも一方の転写制御に関与している遺伝子の、並びに/又は、フェノール酸、好ましくはフェルラ酸の取込に関与しているか若しくは脱炭酸フェノール化合物、好ましくは4-ビニルグアヤコールのエクスポートに関与しているタンパク質をコードする遺伝子の、並びに/又は、該遺伝子の転写制御に関与している遺伝子の、突然変異を含む。
該フェノール酸は、好ましくは、PAD1によりコードされるタンパク質及び/又はFDC1によりコードされるタンパク質により変換できるフェノール酸であり、より好ましくは、フェルラ酸、4-ヒドロキシベンゾアート、シナピン酸、カフェー酸、ケイ皮酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、没食子酸、p-クマル酸、4-メトキシケイ皮酸、p-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、プロトカテク酸、サリチル酸、シリンガ酸、タンニン酸及び/又はバニリン酸から選択される。特に好ましい基質はフェルラ酸であり、その取込が、本発明の方法において使用される好ましい発酵性酵母では低減されているか又は更には阻害されていることが好ましい。
PAD1によりコードされるタンパク質及び/又はFDC1によりコードされるタンパク質の産生物のエクスポートに関与しているタンパク質の例は、Pdr16/YNL231C、Pdr8/YLR266C、Pdr12/YPL058C、Pdr10/YOR328W、Pdr5/YOR153W、Pdr18/YNR070W、Pdr3/YBL005W、Pdr15/YDR406W、Pdr17/YNL264C及びPdr11/YIL013Cである。該産生物は、好ましくは脱炭酸フェノール化合物、より好ましくは4-VG、4-ビニルフェノール、4-エチルフェノール、グアヤコール及びオイゲノールである。特に好ましい産生物は、4-VGである。
5 実施例
(実施例1)
FDC1及びPAD1欠失突然変異株の構築
4-ビニルグアヤコール(4-vinylguiacol)(4-VG)の形成におけるPad1及びFdc1の関わり方を検証するために、S.ユーバヤヌス株CBS12357に欠失を導入した。これら2つの酵素をコードする遺伝子同士は近接しているので、両遺伝子の欠失は、形質転換1ラウンドで実施できた。PAD1-FDC1欠失カセットは、ベクターpUG-amdSYM由来のamdSYMカセットを増幅することにより構築し(Solis-Escalanteら、2013、FEMS Yeast Res 13、126~139頁)、このとき、PAD1-FDC1遺伝子座の上流及び下流領域との相同配列を付加したプライマーであるAmdSYM_FDC1_fw(5'-CAATATTCGACACACCTATGCTGTAAAGTTTATAAAATATGTAAGTCATTAATTTGAGAACAAATACGCTGAACGAACCTTTTCAAAGAACTGTTAACAACAGCTGAAGCTTCGTACGC)とamdSYM_PAD1_rv(5'-GAATTGTTGACACATGGAATTCCAAATAAGTAGATACATATGACTACTAGCTTTATTCTCCATTGCCCGATAAACCTAGCAGAGCTCAATTGGTGAATGCATAGGCCACTAGTGGATCTG)とを用いた。
PCR増幅は、Phusion(登録商標)Hot Start II High Fidelity Polymerase(Thermo Scientific社、Waltham、MA)をメーカーの取扱説明書に従って用い、HPLC精製しカスタム合成されたオリゴヌクレオチドプライマー(Sigma Aldrich社、Zwijndrecht、オランダ)をBiometra TGradient Thermocycler(Biometra社、Gottingen、ドイツ)で用いて実施した。続いて、Zymoclean Gel DNA recovery Kit(Zymo Research Corporation社、Irvine、CA)を用い、欠失カセットを1%アガロースゲルから単離した。指数増殖期のCBS12357を、Gietzらのプロトコール(Gietz及びSchiestl、2007、Nature Prot 2、31~34頁)に従い、amdSYMカセットで形質転換させた。形質転換を経た細胞を、単一窒素源としてのアセトアミドと共に合成培地プレートに播種した(Solis-Escalanteら、2013、FEMS Yeast Res 13、126~139頁)。形質転換されたコロニーがPAD1/FDC1の代わりにamdSYMカセットを有することをコロニーDNA単離(Lookeら、2011、Biotechniques 50、325~328頁)により確認し、続いてPCRを行った。ここでは、DreamTaq PCR Master Mix(2×)(Thermo Fisher Scientific社)を、kanA(5'-CGCACGTCAAGACTGTCAAG)、fw_repair_FDC1_DS(5'-GCGGCTGAACATATCTCCTG)及びrv_checking_oligo_for_FDC1(5'-CGGCGAAATGCATGGATACG)の各プライマーと共に用い、amdSYMマーカーの内側とFDC1-PAD1遺伝子座の外側とを結合させた。単一コロニー単離物の画線培養を3回繰り返した(re-streak)後、菌株をIMK747(MATa/MATα Sepad1-Sefdc1Δ::amdS/SePAD1-SeFDC1)としてストックした。
pad1-fdc1Δ::amdS/ pad1-fdc1Δ::amdS突然変異を保有するホモ接合性二倍体の構築は、IMK747の胞子形成及びテトラド解析(tetrad dissection)によって実施した。IMK747株の指数増殖後期培養菌塊(biomass)を遠心分離(5分、3000xg)によって回収し、脱塩水で2回洗浄した。続いて、洗浄した菌塊を、オービタルインキュベーター(Infors Multitron、Infors 509 HT、Bottmingen、スイス)中、200rpmの条件下、20mlの胞子形成培地(2%酢酸カリウム、pH7)にて20℃で72時間インキュベートした。子嚢の存在を顕微鏡観察により調べた。子嚢壁をザイモリアーゼ(Zymo research社、Irvine、CA)(5U/mlのザイモリアーゼ、1Mソルビトール中)により20℃で20分間消化させた。マイクロマニピュレーター(Singer Instruments社、Watchet、英国)を用いてテトラド1個から胞子4個を分離し、単一窒素源としてのアセトアミドと共に合成培地(Synthetic Medium)プレート上で生育させた。生育を示したコロニーにはFDC1/PAD1のコピーは一切残っていないことを、先述のとおりコロニーPCRにより確認した。画線培養を3回繰り返した後、コロニーをIMK749株(MATa/MATα Sepad1-Sefdc1Δ::amdS/ Sepad1-Sefdc1Δ::amdS)としてストックした。親株のS.ユーバヤヌスCBS12357と同様、IMK749株は異体性であり、接合型を転換する特性を有することから、安定なホモ接合性二倍体細胞を形成する。IMK749が二倍体株であることは、先述のとおりこれに胞子形成させることにより確認した。
紫外線への曝露によるS.ユーバヤヌスバリアントの作製
フェルラ酸を4-VGに変換する能力が低減しているS.ユーバヤヌスを構築するために、S.ユーバヤヌスを紫外線に曝露させて突然変異誘発を誘導した。突然変異誘発の程度は、紫外線への曝露の時間及び強度を変えることにより制御した。紫外線により単一突然変異を有するかなり大規模な細胞集団を得られることが理想的である。次に、紫外線に曝露させて生存率1%としたS.ユーバヤヌスCBS12357細胞バリアントの単離及びスクリーニングについて説明する。
二倍体S.ユーバヤヌス株CBS12357(Libkindら、2011、PNAS 108、14539~14544頁)をYPD(10g/l Bacto酵母エキス、20g/l Bactoペプトン、20g/l グルコース)で定常期初期になるまで生育した。その後、細胞を遠心分離(1000xg、4℃、5分間)により収穫し、脱塩H2Oで洗浄した。次いで、細胞を胞子形成培地(2%(w/v)酢酸カリウム、pH7)にて20℃で72時間インキュベートした。子嚢胞子の存在を顕微鏡観察法により調べた。胞子形成されたS.ユーバヤヌスCBS12357細胞をUV照射(UVCランプ、36W、MSC-Advantage Biological Safety Cabinet、Thermo Fisher Scientific社)に80秒間曝露させて生存率1%とした。突然変異細胞を1プレート当たり平均200コロニーで播種した。細胞を暗所にて室温で5日間インキュベートした。Pickoloコロニーピッカー(Sci Robotics社、Kfar Saba、イスラエル)が装備されたTecan Freedom Evo 2000(Tecan社、Mannedorf、スイス)を用いて合計2000個の単一コロニーをコロニーピッキングし、合成麦汁200μlを満たした96ウェルマイクロタイタープレートにアレイ分注(array)した。
スクリーニングを目的として、5倍希釈麦汁に似せた合成麦汁で酵母を生育した。合成麦汁は、14.4g/l グルコース、2.3g/l フルクトース、85.9g/l マルトース、26.8g/l マルトトリオース、5g/l (NH4)2SO4、3g/l KH2PO4、0.5g/l MgSO4・7H2O、1ml/l 微量元素溶液、1ml/l ビタミン溶液を含有し、嫌気性成長因子エルゴステロール及びTween 80(それぞれ0.01g/l及び0.42g/l)を添加したものであった(Verduynら(Verduynら、1992、Yeast 8、501~517頁)の記載に従った)。
4-VGを産生する能力が低減している株のスクリーニング
前培養の96ウェルマイクロタイタープレートを、250rpmの条件下、オービタルインキュベーター(Infors Multitron)にて20℃で48時間インキュベートした。続いて、このマイクロタイタープレートを、3つの異なる培地を用いたレプリカ平板法に供した。その際の手段は、各前培養物10μlずつを、合成麦汁か、又は1mMフェルラ酸を含有する合成麦汁か、又は1mMケイ皮酸を含有する合成麦汁かのいずれか200μlを満たした新鮮なマイクロタイタープレートに移すことによった。0.5Mフェルラ酸及び0.5Mケイ皮酸のストック溶液を100%エタノールで作製した。参照株S.ユーバヤヌスCBS12357を陽性対照として各マイクロタイタープレートに加えた。マイクロタイタープレートの1つのカラムには培地のみを含有させて、ウェル間のコンタミネーションを評価するための対照とした。突然変異が誘発された単離物を、250rpmの条件下、オービタルインキュベーター(Infors Multitron)にて20℃で3日間生育させた。生育度は、Tecan Infinite 200を用い、660nmでの培養物の光学密度を計測することにより推定した。ケイ皮酸をスチレンに変換する潜在能力の低減を発現している菌株は、ケイ皮酸に対してより高い感受性を呈する。次いで、生育阻害度を、ケイ皮酸存在下で計測した3日経過時OD660nmの、ケイ皮酸非存在下で計測した3日経過時OD660nmに対する比率を計算することにより推定した。親株CBS12357が示した、ケイ皮酸が存在する場合の存在しない場合に対する3日経過時OD660nmの比率の変動値は50~75%の範囲であった。単離された突然変異バリアントのうちおよそ10%が示した比率(5~50%の範囲)は、親株の比率でみられた変動値より低かった。このことから、これらはケイ皮酸に阻害されやすい株であることが示唆された。
フェルラ酸と4-VGとでは、200~400nmの範囲での光吸収スペクトルに大規模な差がみられる。フェルラ酸は300nm超で高い吸収値を示すが、4-VGに変換されると、300nm超での吸収値が減少する。この差を用いて、フェルラ酸から4-VGへの潜在的変換能力を単一の突然変異株において推定することが可能である。フェルラ酸の存在下、合成麦汁中で生育したマイクロタイタープレート培養物の上清を、4℃、2500xgで5分間の遠心分離によって回収した。上清は、Tecan Freedom Evo 2000(Tecan社)を用いてマイクロタイタープレートに移した。96ウェルマイクロタイタープレートの250nmから400nmまでの吸収スペクトルを、Tecan Infinite Pro 200を用い、脱塩水での5倍希釈物から決定した。フェルラ酸濃度の変換は、吸光度の減少を伴った。フェルラ酸から4-VGへの変換度が低い場合には300nm超の吸収値の増加を伴っており、このことは、培養物には活性が全くなかったか、又は、特にフェルラ酸から4-VGへの変換における活性がなかったことを示している。
S.ユーバヤヌスCBS12357バリアントのうち、合成麦汁で正常に生育すること、合成麦汁での生育度のケイ皮酸添加合成麦汁での生育度に対する比率により決定されるケイ皮酸感受性が高値であること、及び、フェルラ酸添加合成麦汁で生育した場合の吸収スペクトルから決定したフェルラ酸変換度が低値であることを示したバリアントを単離し、さらなる分析に供した。定常期初期の細胞に30%(v/v)グリセロールを添加し、1mlアリコートに分け、さらなる使用に備えて-80℃で保存した。
4-VGを産生する潜在能力が低減している菌株の特徴付け
S.ユーバヤヌスCBS1237のUV曝露バリアント2000種類のスクリーニングにより、フェルラ酸を4-VGに変換する潜在能力が低減している可能性がある酵母株28種類を得た。選抜されたバリアントは、スクリーニングにおいて、合成麦汁での生育は妨げられないこと、ケイ皮酸添加合成麦汁での生育度は合成麦汁での生育度と比較して50%以下であること、及び、フェルラ酸添加合成麦汁では300nm超の吸光度値が高値であることを示していた。
選抜株を、合成麦汁、1mMフェルラ酸を添加した合成麦汁、及び1mMケイ皮酸を添加した合成麦汁それぞれ3mlを用い、オービタルインキュベーター(Infors Multitron)にて、ディープウェルプレート中、250rpmの条件下、20℃で培養した。28種類の菌株を、生育度、ケイ皮酸による阻害度及びフェルラ酸変換度について評価した。一例として、バリアントE2は、フェルラ酸変換度が大きく低減していることを意味するスペクトルを示している(図2)。
28種類の選抜株のうち5種類のサブセットをより詳細に試験し、親株S.ユーバヤヌスCBS1237、並びに対照である欠失株IMK747(MATa/MATα Sepad1-Sefdc1Δ::amdS/ SePAD1-SeFDC1)及びIMK749(MATa/MATα Sepad1-Sefdc1Δ::amdS/ Sepad1-Sefdc1Δ::amdS)と比較した。細胞は、1mMフェルラ酸又は1mMケイ皮酸を含有する合成麦汁を用い、オービタルインキュベーター(Infors Multitron)中、200rpm、20℃の条件下、50ml Greinerチューブ中の20mlの培養液にて2連で生育させた。試料を一定時間間隔で採取し、生育度、フェルラ酸消費量及び4-VG産生量について分析した(図3)。
フェルラ酸、4-ビニルグアヤコール及びケイ皮酸を214nmで計測した。ここではAgilent Zorbax SB-C18 Column(4.6×5.0、3.5ミクロン)を用い、操作は30℃で行った(Vosら、2015、Microbial Cell Fact 14、133頁)。アセトニトリル及び20mM KH2PO4(pH2)+1%アセトニトリルのグラジエントを溶離液として使用し、流速は1ml分-1、アセトニトリルを6分間で0%から10%まで増加させ、続いて、アセトニトリルを40%に増加させて23分まで継続した。23分から27分までは、20mM KH2PO4+1%アセトニトリルを溶離液として使用した。フェルラ酸、4-ビニルグアヤコール及びケイ皮酸の較正用標準品は、Sigma Aldrich(Sigma-Aldrich社、Zwijndrecht、オランダ)から入手した。
IMK747株(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ::amdS/SePAD1-SeFDC1)及びIMK749株(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ::amdS/Sepad1-Sefdc1Δ::amdS)は、ケイ皮酸を含有する合成麦汁中での生育3日経過時の最終OD660nmがそれぞれ25%及び75%の低減を示した。選抜したバリアントのうち3種類が示したケイ皮酸による阻害度は親株CBS12357(MATa/MATαSePAD1-SeFDC1/SePAD1-SeFDC1)及びIMK747(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ::amdS/SePAD1-SeFDC1)と同程度であったが、選抜したバリアントのうちHTSE-37及びHTSE-42の2種類が示した阻害度はIMK749(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ::amdS/Sepad1-Sefdc1Δ::amdS)と同程度であった。
選抜したバリアントのうちHTSE-22、HTSE-23及びHTSE-33の3種類が示した4-VGへのフェルラ酸変換量は、親株CBS12357と同程度であった(図3)。SeFDC1-ScPAD1シングルノックアウト株IMK747が示したフェルラ酸変換量は、親株CBS12357のほぼ半分であった。選抜したバリアントのうちHTSE-37及びHTSE-42の2種類においては、4-VGへのフェルラ酸変換量は大きく低減したか、又はFDC1-PAD1ダブルノックアウト株IMK749と同様ゼロであった。
4-VGネガティブUV突然変異株HTSE-42の配列分析。
過去の記載に従って、CBS12357株及びHTSE-42株のゲノムDNAを調製した(de Kokら、2012、FEMS Yeast Res 12、359~374頁)。CBS12357及びHTSE-42それぞれに用いる平均挿入サイズ413bp及び323bpのライブラリーを構築し、リード長を150bpとするペアエンドシーケンシングに供した。
CBS12357株及びHTSE-42株それぞれについて、合計21,345,630リード及び20,998,964リードが生成されたが、これは、菌株1種類当たりのデータは3Gb超に相当し、S.ユーバヤヌスの二倍体ゲノムのカバレッジは最低でも125倍になるということである。各菌株の配列リードは、Burrows-Wheeler Alignmentツール(BWA)を用いてS.ユーバヤヌスCBS12357(ゲノムPRJNA243390。Bakerら、2015、Mol Biol Evol 32、2818~2831頁)上にマッピングし、SAMtoolsを用いて更に処理した(Li及びDurbin、2009、Bioinformatics 25、1754~1760頁;Liら、2009、Bioinformatics 25、2078~2079頁;Li及びDurbin、2010、Bioinformatics 26、589~595頁)。
単一ヌクレオチド変異及びインデルは、Pilonを用いて決定した(Walkerら、2015、Plos One 9、e112963頁)。Pilonの結果が示された.vcfファイルは、IGV(http://software.broadinstitute.org/software/igv/)を用いて視覚化した。HTSE-42配列において143箇所のバリアント位置を同定したが、その大半は切断箇所に近接した領域において同定され、参照株CBS12357においても見出された。しかし、第XIII染色体の右テロメア方向に大規模な欠失が観察された。約27kbの領域がHTSE-42においては欠失していた。この領域に遺伝子SePAD1及びSeFDC1が隠れていたのである。
4-VGを産生する潜在能力が低減している、S.ユーバヤヌス株との雑種の作製
フェルラ酸を4-VGに変換する能力が低減している雑種を、S.セレビシエの一倍体栄養細胞とS.ユーバヤヌスIMK749(PCRにより得られたPAD1/FDC1破壊型のCBS12357(CBS12357 with a PCR-based disrupted version of PAD1/FDC1))の胞子との集団接合(mass-mating)によって作製した。胞子は、前述のとおりに調製した。集団接合は、Heblyらの記載に従って、以下のとおり実施した(Heblyら、2015、FEMS Yeast Res 15、fov005):S.セレビシエIMK439(MATαHIS3 TRP1 LEU2 SUC2 MAL2-8 C ura3Δ::KanMX)の指数増殖中期細胞懸濁液100μlをS.ユーバヤヌス胞子に添加し、200rpmの条件下、オービタルインキュベーター(Infors Multitron)中、30℃で4時間インキュベートした後、選択プレートに播種した。選択プレートは、Verduynら、1992、Yeast 8、501~517頁に従って作った。ここでは、硫酸アンモニウムをグルタミン酸で置き換えて、抗生物質として添加するG418を妨害しないようにする。3つの単一コロニーは、画線培養を3回繰り返した後、コロニーをストックした。単一コロニー分離物は、合成麦汁でおよそ50世代安定化させてからストックし、フェルラ酸を4-VGに変換する能力について評価した。得られた雑種をHTSH-012、HTSH-013及びHTSH-014(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ::amdS/Scpad1-fdc1)と命名した。
同様にして、S.セレビシエの一倍体栄養細胞とS.ユーバヤヌスHTSE-42(4-VG産生の低減を呈する、CBS12357のUV突然変異バリアント)の胞子とを集団接合に供した。得られた雑種をHTSH-009、HTSH-011及びHTSH-012(MATa/MATαSepad1-Sefdc1Δ/Scpad1-Scfdc1)と命名した。
交雑の成功をPCR及びフローサイトメトリーにより確認した。S.セレビシエに特異的なプライマー(Scer F2: 5'-GCGCTTTACATTCAGATCCCGAG及びScer R2: 5'-TAAGTTGGTTGTCAGCAAGATTG)とS.ユーバヤヌスに特異的なプライマー(Seub F3: 5'-GTCCCTGTACCAATTTAATATTGCGC及びSeub R2: 5'-TTTCACATCTCTTAGTCTTTTCCAGACG)とを記載に従って(Pengelly及びWheals、2013、FEMS Yeast Res 13、156~161頁)用いたところ、今回作製した雑種ではS.セレビシエ特異的なバンドとS.ユーバヤヌス特異的なバンドとの両方が検出された。SYTOX Green Nucleic Acid Stainを用いた細胞染色を文献の記載に従って実施した(Haase及びReed、2002、Cell Cycle 1、132~136頁)。染色した細胞を、488nmレーザー搭載のフローサイトメーター(BD Accuri C6、BD Biosciences社、Sparks、MD)で分析した。雑種を、倍数性が既知の菌株(nはCEN.PK113-7D、2nは214CEN.PK122、3nはFRY153)と比較した(van den Broekら、2015、Appl Environ Microbiol 81、6253~6267頁)。全ての雑種すなわちHTSH-009~HTSH014は、2N対照株と同様の蛍光強度ピークを示した。このこととUra+ G418+株の生育要求性とから、これらの株の雑種性が確認された。
(実施例2)
材料及び方法
実施例1に記載の4-ビニルグアヤコール(4VG)産生能力を欠損したサッカロミセス・ユーバヤヌス酵母を用いてベースビールを製造した。通常のフルモルト麦汁を基本原料として使用したが、醸造プロセスでホップを添加しなかった点と麦汁煮沸後のpH調整を行わなかった点とが通常と異なっていた。麦汁の初期糖濃度は、Anton Paar Beer Alcolyzerにより測定したところ15.6°Platoであった。酵母は1.0×107CFU/mlで植菌した。発酵は、8℃で酵母投入(pitch)し麦汁1000l中で13℃まで自然昇温させる条件で実施した。2週間が経過した段階で発酵液を-1℃に冷却して1日おき、その後、BMFフィルターでビールをろ過した。Sigmatec(登録商標)アルコール除去システム(API Schmidt-Bretten GmbH&Co.KG社、Bretten、ドイツ)をメーカー条件に従って用いることにより、ろ過を経たビールからアルコールを除去して、アルコール含有量を0.03体積%未満とした。得られたビールは醸造用水を用いて標準化し、目盛り付きの屈折計又は比重計で測定した比重を5.3プラトー度(°P)とした。更に、ホップエキスを用いて苦味を16EBU(European Bitterness Units(欧州苦味単位))に設定し、その際、インターネットアドレス://analytica-ebc.comでアクセス可能なAnalytica-EBC(2004)に掲載されている標準分析に従った。続いて、ビールを瓶詰め及び低温殺菌した。発酵性糖の濃度を超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)(Waters Co社)により測定した。
糖含有量を超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)で計測した。UPLCは、温度65℃で好適に実施できる。溶離液として、比率75/25(v/v)のアセトニトリル/水混合液を使用した。使用した検出器は、屈折率(RI)検出器であった。試料の糖含有量は、試料のUPLC曲線を糖濃度が既知の標準試料の較正曲線と比較することにより決定した。
UPLCに用いる試料は、次のように調製した。ビール又は麦汁の試料を、アセトニトリル/水混合液(50/50、等体積部)の添加により5倍に希釈した。CO2が存在する場合は、希釈に先行して除去した(例えば、試料を振とう又は撹拌することによった)。希釈を経た試料をろ過して清澄な溶液を得た。ろ過した試料は、先述の溶離液を用いて65℃でUPLCに注入した。
エステル及び高級アルコール含有量をガスクロマトグラフィーにより計測した。計測には、Gerstel MPSヘッドスペースサンプラー、DBWaxETRカラム(60m、ID 0.32mm、FD 1μm(Agilent社))及びフレームイオン化検出器(Flame Ionisation Detector)を備えた、Agilent 7820Aを用いた。
内部標準溶液は、70.0mlのエタノール、0.600mlの4-ヘプタノン及び6.00mlの1-ブタノールを混合し蒸留水を加えて総体積1000mlとすることにより調製した。各試料のエタノール含有量は、エタノールを添加するか、又は試料を蒸留水で希釈するかのいずれかにより4.4%~5.6%の範囲に設定した。体積5.0ml分を10ml GCバイアルに移し、40μlの内部標準溶液を添加してからバイアルに栓をした。結果は、標準試料の較正曲線を既知濃度と比較することによって定量化した。
結果:
0.0ビールを製造するために、発酵性糖を全部は消費しない酵母、今回はS.ユーバヤヌスを使用した醸造プロセスを用いた。更に、この特別な酵母株は、4VGを産生する能力をもたなかった。このようにして、アルコール除去プロセスに基づく通常の0.0ビールに比べてより「口当たり」のよいビールを製造することができた。通常の醸造プロセスに続いて、アルコール含有ビール(alcoholic beer)を得る通常のプロセスである熟成を行った。アルコール含有ビールからアルコールを除去し、得られた製品を5.3°P及び16EBUに標準化した。TABLE 1(表1)に、この新しいビールの特性の一部を、通常のアルコール除去ビールとの比較で示す。更に、ビールの口当たりについてテイスティングにより評価した。口当たりは、通常のアルコール除去ビールと比較して向上していた。
Figure 2022546248000001
(実施例3)
材料及び方法
酵母株
本実施例において使用したサッカロミセス・セレビシエ酵母株はTable 2(表2)にリスト化してあり、Delft UniversityのIndustrial Microbiology部門のDaran-Lapujade教授の厚意により提供されたものである(Wijsmanら、2019、FEMS Yeast Res 19、10.1093)。作業用ストック培養物をYPM培地(10g.L-1 Bacto酵母エキス、20g.L-1 Bactoペプトン及び20g.L-1 マルトース)で指数増殖中期になるまで培養し、滅菌グリセロールで仕上げ(最終濃度30%(v/v))、次の植菌まで1mLアリコートとして-80℃で保存した。
Figure 2022546248000002
培地及び生育条件
本試験における標準的生育条件は、200rpmに設定したMultitron Standard振とうインキュベーター(INFORS HT社、Velp、オランダ)中、20℃とした。前培養物は、フィルタースクリューキャップ付き50mL CELLSTAR(登録商標)細胞リアクターチューブ(Greiner Bio-One社)に20mLのYPM培地が入った状態の-80℃ストックから得た。一晩インキュベーションの後、培養物0.5mlを50mL CELLSTAR(登録商標)チューブ中の新鮮なYPM培地20mlに移した。2日後、培養物を用いて、滅菌及びろ過済みの麦汁60ml(16プラトー度(°P))に植菌した。条件は、100mlセプタムフラスコ(septum flask)中、OD660nmを0.5とした。培養物を毎日サンプリングして、糖、エタノール、見かけの抽出分(AE)(apparent extract)及びODを分析した。
分析方法
比重は、DMA35携帯型密度計(Anton Paar社、Graz、オーストリア)で計測した。
グルコース、フルクトース、マルトース、マルトトリオース及びエタノールについて、Bio-Rad HPX-87Hイオン交換カラム(Bio-Rad社、Hercules、CA、USA)を取り付けたAgilent 1260 HPLCでの高性能液体クロマトグラフィー分析により分析した。操作条件は、60℃、移動相5mM H2SO4、流速0.6mL.min-1とした。検出は、Agilent屈折率検出器及びAgilent 1260 Infinity Diode Array and Multiple Wavelength Detectorを用いて行った。
結果:
マルトースを全く含まないが六炭糖に属する糖であるグルコース及びフルクトースは発酵終了時点で依然として存在する0.0ビールを製造する目的で、六炭糖輸送能欠損性のサッカロミセス・セレビシエ酵母株(IMX1812)でフルモルト麦汁を発酵させた。六炭糖輸送能欠損性酵母が麦汁代わりの複合種培地中でマルトースを発酵させたという報告は過去にないので、産業用途について十分な記載のあるサッカロミセス・セレビシエモデル株を参照株として用いた(CEN.PK2-1C。Entian及びKotter、2007、Yeast genetic strain and plasmid collections.、収録先:Stansfield I、Stark MJR(編)、Yeast Gene Analysis第36巻、第2版、Amsterdam、Academic Press、Elsevier社、629~66頁)。参照株は通常の醸造用酵母として振る舞い、グルコース(Glucose)及びフルクトース(Fructose)を含め全ての発酵性糖を消費したが、六炭糖輸送能欠損性酵母は、六炭糖に属する糖を発酵させなかった一方でマルトース(Maltose)及びスクロースについては完全に発酵させた(図4)。その結果得られた発酵ベースは、Table 3(表3)に示すとおりの組成を有する。通常のプロセスの場合と比較して、この発酵ベースは、マルトトリオース(Maltotriose)及び六炭糖に属する糖が豊富であり、したがって甘味/酸味比が高く口当たりが改善されている。特に、精留によりアルコールを低減又は除去するとそれが顕著である。こうして得た発酵ベースのさらなる利点は、アルコール含有量が少ないこと、つまり、アルコールを低減又は除去するための精留に要する手間が少ないことである。
Figure 2022546248000003

Claims (19)

  1. アルコール低減発酵ビール、好ましくはアルコールフリービールを製造する方法であって、
    - 発酵性酵母を麦汁に添加して前記麦汁を少なくとも部分的に発酵させ、これにより前記麦汁中に存在するグルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースの少なくとも一部を保持する工程と、
    - 任意で、前記麦汁から前記酵母を除去する工程と、
    - こうして発酵したビールのアルコール含有量を低減させ、これによりアルコール低減発酵ビール、好ましくはアルコールフリービールを製造する工程と
    を含む方法。
  2. 前記麦汁中に存在するグルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースの少なくとも一部が、発酵を早期停止することによって保持される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記発酵性酵母が、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全に変換することができない、請求項1に記載の方法。
  4. 前記発酵性酵母が、少なくともマルトトリオースをエタノールに完全に変換することができない、請求項3に記載の方法。
  5. 前記発酵性酵母が、少なくとも六炭糖、好ましくはフルクトース及び/又はグルコースをエタノールに完全に変換することができない、請求項3に記載の方法。
  6. 前記発酵性酵母が、サッカロミセス・セレビシエ、S.ユーバヤヌス酵母、及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌスである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記発酵性酵母が、低減したフェノール酸の脱炭酸活性を有し、好ましくは、4-ビニルグアヤコール非産生性である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記発酵性酵母が、遺伝子PAD1及びFDC1のうち少なくとも一方の不活性化、並びに/又はフェノール酸、好ましくはフェルラ酸の取込に関与しているか、若しくは脱炭酸フェノール化合物、好ましくは4-ビニルグアヤコールの排出に関与しているタンパク質をコードする遺伝子の不活性化をもたらす突然変異を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 発酵が、6~25℃、好ましくは8~15℃で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記発酵飲料のアルコール含有量が精留によって低減される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記アルコール低減発酵ビールが、アルコールフリービール、好ましくはアルコールフリーラガービールである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により製造されるアルコール低減発酵ビール製品。
  13. アルコールフリービール、好ましくはアルコールフリーラガービールである、請求項12に記載のアルコール低減発酵ビール製品。
  14. 発酵前の原麦汁中に存在したグルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースのうち少なくとも1つを含む、アルコール低減発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、より好ましくはアルコールフリーラガービール。
  15. 前記原麦汁中に存在したマルトトリオースを全て含む、請求項14に記載のアルコール低減発酵ビール製品。
  16. 前記原麦汁中に存在したグルコースを全て含む、請求項14に記載のアルコール低減発酵ビール製品。
  17. 4-ビニルグアヤコールが存在しない、請求項12から16のいずれか一項に記載のアルコール低減発酵ビール製品。
  18. アルコール低減発酵ビール製品、好ましくはアルコールフリービール、最も好ましくはアルコールフリーラガービールの製造のための、グルコース、マルトース及び/又はマルトトリオースをエタノールに完全に変換することができない、サッカロミセス・セレビシエ、S.ユーバヤヌス酵母及び/又はこれらの雑種、例えばS.パストリアヌスから選択される発酵性酵母の使用。
  19. 前記発酵性酵母が、4-ビニルグアヤコール非産生性である、請求項18に記載の使用。
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