JP2022521804A - 灰処理のための方法及びシステム - Google Patents

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Abstract

本発明の金属回収のための粒子状材料の処理方法は、炉を第1の温度に加熱するステップと、炉に粒子状材料を供給するステップと、原材料の加熱の前後に、炉に還元ガス流を通過させるステップとを含む。灰に含まれる1つ又は複数の金属をガス流に揮発させるために、粒子状材料は炉内で加熱され、揮発した粒子は、1つ又は複数の収集ユニットに回収される。金属回収のための粒子状材料の処理システムは、還元ガス及び粒子状材料の流れを受け入れるため加熱炉と、揮発した粒子用の収集ユニットと、不揮発材料用の収集ユニットとを含む。

Description

本発明は、燃焼灰から金属を回収するための灰処理方法及びシステムに関する。
廃棄物(又は複数の廃棄物)は、不要又は使用不能な材料であり、一次使用後に廃棄される、又は価値がなく、欠陥があり、役に立たない、何らかの物質からなる可能性がある。廃棄物は、原材料の抽出及び処理などの人間活動によって発生する。
廃棄物処理とは、廃棄物の環境への実際の影響を最小限に抑えるために必要な活動を指す。多くの国では、様々な形態の廃棄物処理が法律で義務付けられている。
廃棄物は、固体、液体、又は気体である可能性があり、種類ごとに処分方法及び管理方法が異なる。廃棄物管理は、工業、生物学、及び家庭を含むあらゆる種類の廃棄物を取り扱う。固形廃棄物の処理は、廃棄物管理の重要な要素である。
廃棄物管理(又は廃棄物処分)とは、廃棄物の発生から廃棄物の最終処分までを管理するために必要な活動及び行動である。これには、廃棄物の収集、輸送、処理、及び処分、並びに廃棄物管理プロセスの監視及び規制が含まれる。
資源回収とは、廃棄物を投入材料として使用して、新たな産出物として有価生成物を作り出すことである。目的は、発生する廃棄物の量を削減することである。資源回収は、製造プロセスにおいて新しい原材料を使用する必要性を遅らせる。都市固形廃棄物に含まれる材料は、新たな生成物の製造に使用することができる。プラスチック、紙、アルミニウム、ガラス、及び金属は、廃棄物に価値を見出すことができるものの例である。
焼却とは、廃棄材料に含まれる有機物質の燃焼を含む高温廃棄物処理プロセスであり、そのようなプロセスにおけるシステムを「熱処理」と呼ぶ。一般に熱処理と見なされるシステムは、一般に、廃棄物の貯蔵及び供給の準備、並びに炉内での燃焼、高温ガス及び処分用の主灰残留物の生成を含む。どのような焼却施設も、廃棄物の貯蔵及び取扱い、廃棄物を準備するための処理、燃焼、大気汚染の制御、並びに残留物(灰)の取扱いのようなプロセスを組み込むことになる。
廃棄物焼却施設は、一般に、廃棄物の貯蔵及び反応器供給原料の準備と、廃棄物自体の燃焼と、高温生成ガス及び灰残留物の取扱いとに関連するいくつかのユニット操作で構成される。
廃棄材料の焼却は、廃棄物を、灰、煙道ガス、及び熱に変換する。灰は主に、廃棄物の無機成分によって形成される。主灰は、炉又は焼却炉での焼却による不燃性残留物の一部である。飛灰(フライ・アッシュ)又は煙道灰は、ボイラーから煙道ガスとともに排出される粒子状物質(燃焼された燃料の微粒子)で構成される石炭燃焼生成物である。ボイラーの底に落下する灰は、主灰(ボトム・アッシュ)又はボトム・スラグとも呼ばれる。
廃棄物燃焼による灰及びスラグはしばしば、かなりの量の重金属及び塩素を含有する。重金属は一般に、灰又はスラグに金属塩化物の形態で存在する。これは、金属回収及び金属再利用の処理プロセスに影響を与える。灰処理は、灰から金属を回収する方法であると同時に、灰の毒性を還元する方法である。
飛灰は、廃棄物焼却プロセスで大量に生成される。塩化物は通常、ポリ塩化ビニルプラスチックなどの有害物質の焼却によって生成される飛灰に存在する。飛灰中の特定の不純物の濃度が高いと、飛灰の取扱い及び処分が困難になる。これらの不純物質には、容易に浸出(リーチング)される塩化物、重金属、及び残留性有機汚染物質が含まれる。飛灰の処分による環境への悪影響を回避するためには、可溶性塩化物の含有量を低減する必要がある。塩化物除去のために現在利用可能な選択肢の1つは、フィルタ・プレスによる浸出及び置換洗浄である。
焼却炉及び他のプロセスから生成される飛灰及び大気汚染防止残留物(APCr:Air Pollution Control residues)の管理のための別の先行技術の方法はプラズマ技術であり、廃棄物が燃焼によって処理されて、例えば廃棄物発電プロセスなどでの燃料源を生産する。これは、APC及び飛灰処理に対処する技術として利用される。このようなプラズマ強化プロセスにより、材料供給原料を密閉炉に供給し、単一又は複数のプラズマ電極/トーチによって作成されたプラズマ・アークを使用して、管理された環境で加熱することが可能になる。高い温度及び強い紫外線を適用すると、資源の回収及び破壊、並びに廃棄物処分及び廃棄物処理のための有害成分の除去の割合が高くなる。プロセス化学は、有害元素を破壊しながら、有価な金属、鉱物、及び他の材料を供給原料から分離して回収し、無害なガラス化物質を残すように設計されることが可能である。このガラス化物質を、例えば建設業界向けの建築製品として採用することができる。
したがって、燃焼灰の最終処分の問題は、燃焼灰における、塩化物、並びに/又は鉛(Pb)、カドミウム(Cd)及び亜鉛(Zn)などの重金属の含有量が高いことである。特に、飛灰は有害廃棄物とされており、その処理及び処分の際には特別な環境上の側面を考慮しなければならない。
「金属生産」という用語は、金属鉱石などの原材料を、金属を何らかの商業目的又は工業目的に使用できる最終形態に変換することに関与するすべてのプロセスを指す。
鉱石は、経済的に重要な元素、通常は金属を含む、十分な鉱物を含有する地質物質の産出物であり、鉱床から経済的に抽出することができる。鉱石は、遊離状態又は結合状態での採掘によって地面から抽出される。従来の金属生産の最初のステップには、何らかの形の採掘が含まれる。次いで、鉱石は、1つ又は複数の有価元素を抽出するために(多くの場合、製錬によって)精製される。
未開拓の原材料の供給が減少するにつれて、金属のリサイクル、回収、及び資源効率がますます重要になっている。工業プロセスからの2次金属材料、及び廃棄された消費者製品は、現代の新たな採鉱場である。
都市廃棄物の焼却残留物からの金属抽出は、環境的に有益であるだけでなく、収益性も高い。飛灰、主灰、及びボイラー灰など、様々な焼却技術による様々な種類の灰は、環境の観点からも健康の観点からも非常に有害な高濃度の有毒金属化合物を含有している。
また、科学者たちは近い将来に金属が不足すると結論づけており、さらにこの不足が、これらの灰の含有金属を回収できるように灰を処理すべきである理由の1つである。この処理は化学浸出によって実施することができる。灰の浸出は酸性溶液中で実行されるべきであることが判明している。
このように、工業用焼却炉によって生成される主灰の使用は、経済的に重要な金属を回収するための、注目されている原材料資源である。例えば、Ismail Agcasulu及びAta Akcilによる論文「Metal Recovery from Bottom Ash of an Incineration Plant:Laboratory Reactor Tests」、オンラインで公開:2017年4月13日では、2つの酸性試薬(HCl及びHSO)並びにアルカリ試薬(NaOH)を使用して、様々な濃度で前処理した主灰試料から、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び銅(Cu)などの金属有価物を回収した。
湿式化学的浸出法を用いて飛灰を処理することによって飛灰から金属を回収する方法の先行技術として、米国特許第8,349,282号が挙げられる。このような方法は、東秀特許第2786070号でも開示されている。
灰の入手可能性は、鉱石と比較して、その生産に余分なエネルギー又は人力が必要ないので、大幅に安価である。
廃棄物焼却灰残留物は、一般的に金属値の濃度が低く、採掘された金属鉱石とは鉱物学が異なる。したがって、採掘された金属鉱石の選鉱に使用される既存のプロセスは、灰の選鉱に適していることはめったにない。
今日の灰の主なリサイクル目標は、埋め立て材料として又は建築材料として灰を利用することである。しかしながら、廃棄物焼却プロセスによる飛灰は、かなりの量の塩化物並びにカドミウム(Cd)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、及び鉛(Pb)などの有害金属を含有しており、したがって何らかの形態の処理なしでは使用することができない。飛灰から金属を回収して塩化物を除去し、その灰を有用な用途に、例えば、建築材料及び有価金属の最終製品の製造に使用する方がはるかに経済的である。
米国特許第8,349,282号 欧州特許第EP2786070号
Ismail Agcasulu及びAta Akcilによる論文「Metal Recovery from Bottom Ash of an Incineration Plant:Laboratory Reactor Tests」、オンラインで公開:2017年4月13日 Lyyranen,J.、Jokiniemi,J.、Kauppinen,E.I.、Backman,U.、Vesala,H.、Comparison of Different Dilution Methods for Measuring Diesel Particle Emissions、(2004)Aerosol Science and Technology、38(1)、12~23頁 Backman,U.、Jokiniemi J.K.、Auvinen,A.、Lehtinen,K.E.J.、(2002)The Effect of Boundary Conditions on Gas Phase Synthesised Silver Nanoparticles、Journal of Nanoparticle Research 4:325~335 http://ec.europa.eu/growth/sectors/raw-materials/specific-interest/critical/
したがって、本発明の目的は、使用及びさらなる処理のための有価金属が得られる、より効率的なプロセスである。
本発明の金属回収のための粒子状材料の処理方法は、炉を第1の温度に加熱するステップと、炉に粒子状材料を供給するステップと、原材料の加熱の前後に、炉に還元ガス流を通過させるステップとを含む。灰に含まれる1つ又は複数の金属をガス流に揮発させるために、粒子状材料は炉内で加熱され、揮発した粒子は、1つ又は複数の収集ユニットに回収される。
金属回収のための粒子状材料の処理システムは、還元ガス及び粒子状材料の流れを受け入れるための加熱炉と、揮発したエアロゾル粒子のための収集ユニットと、不揮発材料のための収集ユニットとを含む。
本発明の好ましい実施例は、従属請求項の特徴を有する。
方法の加熱ステップは、ロータリ・キルン炉などのフロー・スルー反応器、又は誘導炉において実行することができる。誘導炉を使用する場合、還元ガスが大幅に温められないので、急冷は必要ない。
ロータリ・キルン反応器などのフロー・スルー反応器を使用する場合、回収される揮発した金属は、別個のユニット又は冷却ユニットにおいて超急冷によって希釈される。急冷された金属は、例えば、フィルタ・バッグに収集することによって回収することができる。回収された金属は、様々な用途に利用することができる。例えば、NaCl、KCl、及びCaClを道路塩として、またZn/ZnO及びCu/CuOなどの化合物を電子機器、塗料、日焼け止め、化粧品、センサ、太陽電池などで使用することができる。
シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、リン(P)、チタン(Ti)、ヒ素(As)、及びバナジウム(V)のうちの1つ又は複数である不揮発の金属及び化合物、並びに不揮発性形態のナトリウム(Na)及びカリウム(K)は残留物であり、分離され、加熱され、微粉化される。残留灰は、埋め立て地、コンクリート混合物、及び酸化触媒として利用することができる。
(原材料)
本発明で使用する原材料は、飛灰又は主灰などの直接燃焼灰であるが、有価揮発性金属を含有する、建設廃棄物、都市廃棄物、電子廃棄物又はガラス廃棄物などの他の粒子状材料で構成される可能性もある。
原材料は、例えば、主灰又はボトム・スラグと通常は呼ばれるスラグ又は灰など、発電所での燃焼プロセスから又は廃棄物焼却プラントからの残留物である。特に、主灰は、炉又は焼却炉での焼却による不燃性残留物の一部である。主灰は、石炭焚きボイラーの底に落下する灰でもある。廃棄物の焼却は、廃棄物1トンごとに約250~350kgの灰又はスラグを残留生成物として生成する。本文章で使用する「主灰」という用語は、これらすべての残留生成物及び材料を含む。
飛灰又は煙道灰は、微粉燃料灰とも呼ばれ、石炭焚きボイラーから煙道ガスとともに排出される粒子状物質(燃焼された燃料の微粒子)で構成される石炭燃焼生成物である。燃焼する石炭の供給源及び組成によって、飛灰の成分は大幅に異なる。しかしながら、すべての飛灰が、かなりの量の二酸化ケイ素(SiO)(非結晶質と結晶質の両方)、酸化アルミニウム(Al)、及び酸化カルシウム(CaO)を含む。飛灰の微量成分は固有の石炭層組成に依存するが、微量濃度(最大で数百ppmまで)で検出される次の元素又は化合物、すなわち、ヒ素(As)、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、六価クロム、コバルト(Co)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、水銀(Hg)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)、ストロンチウム(Sr)、タリウム(Tl)、及びバナジウム(V)、並びに非常に低濃度のダイオキシン及びPAH化合物のうちの1つ又は複数を含むことがある。飛灰は、未燃炭素も含む。ボイラー灰に加えて、飛灰も、煙道ガス洗浄装置、すなわち静電集塵機(ESP:Electrostatic Precipitator)又は繊維フィルタ(FF:Fabric Filter)からの灰であり、大気汚染防止(APC)灰である場合がある。本文章で使用する「飛灰」という用語は、これらすべての残留生成物を含む。
本文章で使用する「燃焼灰」という用語は、主灰と飛灰の両方を含む。
本発明で使用する燃焼灰は、特に主灰又は飛灰であり、一般に、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、塩素(Cl)、硫黄(S)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、及びバナジウム(V)を含有する。Cu、Bi、Zn、及びSbは、有価金属に関して本発明において特に興味深い。塩化ナトリウム(NaCl)及び塩化カリウム(KCl)は、例えば道路塩として使用するのに有用な生成物である。
(一般的な加熱ステップ)
本発明では、原材料を加熱し、その結果、有価金属を還元条件で揮発させ、その後収集することによって、有価金属を回収することができる。
原材料が塩化物を含有する場合、最初に塩化物を除去する必要があり、この除去も加熱によって行われるが酸化条件で行われ、その結果、塩化物が揮発し、その後収集される。
本発明において、燃焼灰の加熱は炉内での熱処理によって実行され、炉は、例えば、ロータリ・キルン炉などのフロー・スルー反応器、又は誘導炉であり得る。
誘導炉を使用する利点は、灰の温度を非常に速く高温に上昇させることができることである。別の利点は、灰試料上を流れるガスが誘導炉で大幅に温められないことである。
ロータリ・キルン炉などのフロー・スルー反応器では、灰が炉の壁に沿ってより広がるので、流動ガスは、温められて、少なくとも部分的に灰試料とより容易に相互作用する。
回収する金属の揮発を実現するために、1つ又は複数のステップにおいて熱処理によって加熱が実行される。これにより、方法ステップ及び揮発させる金属に応じて、炉が800~1600°の温度に加熱され、これにより燃焼灰は600~1400℃で加熱される。
加熱は、温度及びガス雰囲気下で実行され、揮発性化合物は、塩化物の除去(必要な場合)のためのステップとZn及び重金属の回収のためのステップとの連続したステップで気化される。Zn、Cu、Sb、及びBiの一般的な回収率は90%である。熱処理は、溶解と組み合わせることができる。例えば、Znは酸に部分的に溶解する。
(加熱-Cdを回収するための予備ステップ)
燃焼灰は必ずしもCdを含有しているとは限らないが、含有している場合、塩化物を酸化条件で揮発させるステップを実行する前に、予備加熱ステップにおいてCdを還元条件で揮発させて除去することが好ましい。Cdは有価且つ有害であり、したがってCdを個別に削除する方が実用的であるので、予備ステップが実行される。Cdは、比較的低温の還元条件で揮発する。CdClも、他の塩化物とともに酸化条件で揮発する可能性がある。
Cdを個別に揮発させる場合、揮発は、Cdを揮発させるための予備温度に加熱された炉に還元ガスを導くことによって実行される。Cdの回収は、特にロータリ・キルン炉が使用される場合、約500℃の温度で、還元H/N雰囲気下で実行されることが好ましい。
いくつかの実施例において、Cdは、空気中で加熱されると、CdClとして回収することができ、その典型的な回収率は80%である。回収は、(必要に応じて)急冷、及びその後のフィルタ・バッグを用いた収集によって行われる。
(加熱-塩化物除去のための第1のステップ)
Na、K、Cu、Pbのうちの1つ又は複数の塩化物の形態である塩化物を揮発させるための酸化性ガスは、炉内に導かれた空気のガス流である。特に飛灰は、揮発するCu及びPbを含有する。第1のステップにおける塩化物を揮発させるための温度は、塩化物を揮発させるのに十分な温度であるが、Zn、Sb、及びBiを揮発させるための温度よりも低い。
炉がロータリ・キルン反応器である場合、塩化物を揮発させるための温度は、Zn、Bi、又はSbを揮発させることのない800℃~1000℃以内の温度である。また、炉が誘導炉である場合、塩化物を揮発させるための温度は800℃~900℃以内の温度である。
塩化物は、(必要に応じて急冷後に)例えばフィルタ・バッグで収集することによって除去され、塩化物の形態で道路塩として使用することができる。典型的には、塩化物のほぼ100%を、Na、K、Cu、及び/又はPbの塩化物の形態で回収することができる。飛灰から回収された金属として算出される典型的な回収率は、Na(60%)、K(80%)、Cu(50%)、及びPb(50%)である。
(加熱-Zn、Bi、及びSnを回収するための第2のステップ)
第2の加熱ステップでは、Zn、Bi、及び/又はSnの揮発に適するように温度を上昇させる。炉がロータリ・キルン反応器である場合、温度は約1000℃である。炉が誘導炉である場合も、温度は約1000℃である。このステップは、例えば、窒素ガスと水素ガスの混合物及び/又は一酸化炭素COガスの還元条件で実行される。
Sb、Bi、及び/又はZnは、そのまま揮発し、(必要に応じて急冷後に)例えばフィルタ・バッグに回収される。
飛灰を使用する場合、典型的な回収率は、Znが80%、Cuが50%である。主灰を使用する場合、Cuの回収率は最大90%になる可能性がある。典型的な回収率は、Biが90%、Sbが80%である。
次いで、揮発したZnは燃焼灰から分離される。Zn(及びCu)から、化粧品、塗料、電子機器、センサ、及びナノ材料などの最終製品を製造することができる。Znを揮発させるための還元ガスは、窒素ガスと水素ガスの混合物及び/又は一酸化炭素COガスである。
(加熱-Cu及び他の重金属を回収するための第3のステップ)
第2のステップにおける温度は、Cu及び/又は他の重金属(例えば、銀(Ag)などを揮発させるのに十分な温度である。炉がロータリ・キルン反応器である場合、温度は1000~1400℃以内である。また、炉が誘導炉である場合、温度は1000~1400℃である。
Cuを揮発させるための還元ガスは、Znと同様に、窒素ガスと水素ガスの混合物及び/又は一酸化炭素COガスである。Cuの典型的な回収率は50%~90%である。
Cuはそのまま揮発し、(必要に応じて急冷後に)例えばフィルタ・バッグに回収される。
還元条件は、窒素ガスと水素ガスの混合物によって、又は一酸化炭素によって発生する。加熱は、空気と窒素と水素-窒素の混合物においてなど様々な雰囲気において、同様に様々な加熱速度及び遅延で実行することができる。金属の還元は、水素又は一酸化炭素を用いて行われる。金属還元は、触媒及び水洗浄に適した材料の製造に使用することができる。
(加熱ステップの概要)
a)予備加熱ステップ:原材料にCdが含まれているときにCdを気化させるため。これは特に、原材料が飛灰で構成されている場合に該当する。
b)第1の加熱ステップ:原材料に塩化物が含まれているときに様々な塩化物を気化させるため。これは特に、原材料が飛灰で構成されている場合に該当する。
c)第2の加熱ステップ:Zn、Bi、及び/又はSbを気化させるため。
d)第3の加熱ステップ:Cuを気化させるため
したがって、原材料が、例えば主灰であり塩化物を含有しない場合、予備加熱ステップ及び第1の加熱ステップはなく、第2及び第3の加熱ステップのみが実行される。
(揮発した金属の回収)
金属の揮発後、回収される化合物は炉から流出し、冷却され、静電集塵器(ESP)又はバッグ・フィルタなどのフィルタ及びクリーナに収集される。
使用する反応器がロータリ・キルン反応器などのフロー・スルー反応器である場合、揮発した金属は、最初に別個のユニット又は冷却ユニットで急冷される。誘導炉を使用する場合、急冷は必要ない。
誘導炉を使用する場合、加熱された材料及び揮発した材料が、温められていない還元ガスと接触して混合すると、ナノ粒子が自然に形成される。
回収は、室温及び空気雰囲気下で実行されることが好ましい。揮発した金属は、可能な急冷ステップの後に、例えばフィルタ・バッグに収集することによって回収することができる。
(不揮発材料の処理)
不揮発の金属及び他の化合物は、熱処理後に残り、反応器の底部から収集される残留灰である。それらは、例えば、粉砕、及び水素ガス(H)中での例えば850℃の温度での熱処理によって、分離、加熱、及び微粉化される。特に飛灰を使用する場合、不揮発の金属及び化合物は、Si、Ca、Al、Fe、Co、Cu、Ni、及びVのうちの1つ又は複数である。これらから、触媒又は処理薬品として使用するための最終製品を調製することができる。
様々な留分をよりグレードの高い精製品に処理することができる。
このような残留化合物は1300℃で加熱され、揮発及び急冷され、フィルタ・バッグに回収される。触媒及び水処理薬品などの最終製品を調製することができる。
(目標)
灰中の有害物質を還元するとともに灰中の金属を回収及び精製するという本発明の目標は、本発明のプロセスを用いて達成される。
本発明は、背景技術の節で言及した問題を解決し、一方では揮発性塩素含有化合物(塩化物など)を除去するための方法、他方では有価金属を回収するための方法を提供し、その後、灰はもはや危険であると分類されることはなく、安全な方法で最終処分の準備をすることができる。
さらなる利点は、残留灰を処理することによって最終処分用の灰の量を削減するか又は完全に無視することができ、その結果、灰中の金属(Ni、Co、及びFeなど)を触媒活性材料にすることができ、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、及び酸化アルミニウム(Al)などの他の鉱物は、活性触媒元素(Ni、Co、及びFeなど)の担体材料として機能し、これによりスタッキングの必要性が排除又は削減される。
Zn、Cu、Bi、及びSnなどの揮発した化合物を急速冷却、すなわち急冷することによって回収するとき、それらからナノ材料が有利に調製される。化合物が安全且つ慎重にフィルタに収集されるように、冷却及び希釈時には注意が必要である。回収された塩化物は、少量の塩化物Pb及びCuを有し得る道路塩として使用することができる。必要に応じて、塩化物を道路塩から分離することができる。
以下では、本発明について、本発明が限定されないいくつかの有利な実施例及び実例を用いて説明する。
一相ロータリ・キルン炉において飛灰から金属を回収するための本発明のシステムの第1の実施例の概略図である。 二相ロータリ・キルン炉において飛灰から金属を回収するための本発明のシステム及び方法の第2の実施例の概略図である。 ロータリ・キルン炉において主灰から金属を回収するための本発明のシステム及び方法の第3の実施例の概略図である。 誘導炉において飛灰から金属を回収するための本発明のシステム及び方法の第4の実施例の概略図である。
図1は、飛灰から金属を回収するために一相ロータリ・キルン炉を使用する、本発明のシステム及び方法の第1の実施例の概略図である。図1の実施例は、以下のステップ及びユニットを含む。
本実施例において、ユニット1は燃焼灰、飛灰用のコンテナであり、燃焼灰、飛灰は、このコンテナから、参照番号4で示す連続ロータリ・キルン炉に供給される。
ユニット2は、空気などの酸化性ガス用のコンテナであり、酸化性ガスは炉4に供給され、炉4を通過する。
ユニット3は、水素ガス/窒素ガス(H/N)混合物などの還元ガス用のコンテナであり、還元ガスも炉4に供給され、炉4を通過する。
飛灰がCdを含有する場合、予備ステップにおいて、H/N混合物などの還元ガスをユニット3から炉4に供給すること、及び炉4を約500℃の予備温度に加熱することによって、飛灰を揮発させる。揮発したCdは、冷却ユニット(図示せず)内で例えば窒素を用いて又は場合によっては空気を用いて急冷され、1つ又は複数のフィルタ・バッグで構成され得る収集ユニット(図示せず)に収集される。
次いで、飛灰に含まれる(他の)既存の塩化物を空気などの酸化ガス中で揮発させるために、炉4を約850℃の第1の温度に加熱する。塩化物はほとんどがNaCl及びKClの形態であるため、そのように揮発する。CdClも存在する可能性があり、これも揮発する。灰がCaClを含有する場合、塩化物はHClとしてCaClから遊離し、Caは灰中に残りCaOに変換される。Pb及び/又はCuの塩化物も存在する可能性があり、これらもそのように収集される。
次いで、Na及び/又はKの揮発した塩化物のガス流は、冷却ユニット5に供給され、ユニット6に収集できるように空気を用いて急冷され、ユニット5及びユニット6は、CdClの急冷及び収集に使用されるものとは別のユニットである。
揮発したNaCl及び/又はKClは、1つ又は複数のフィルタ・バッグで構成され得る参照番号6で示す収集ユニットに収集される。揮発性塩化物において、少量の塩化鉛(II)(PbCl)及び塩化銅(II)(CuCl)も見出される可能性がある。上記の予備ステップでCdが除去されなかった場合、さらに塩化カドミウム(CdCl)が見出される可能性がある。PbCl及びCuClは、それらの濃度が許容範囲を超える場合、NaCl及び/又はKCl生成物から沈殿(結晶化)する可能性がある。
ガス流は現時点でまだ塩化水素(HCl)を含有しているが、HClはガス洗浄器によって除去される。そのような洗浄器は、一般に、工業排気流から何らかの粒子状物質及び/又はガスを除去するために使用することができる。従来、「洗浄器」という用語は、液体を使用してガス流から不要な汚染物質を洗浄する汚染制御装置を指していた。最近、この用語は、汚れた排気流に乾燥した試薬又はスラリーを注入して酸性ガスを「洗い落とす」システムを説明するためにも使用されている。
HClガスの形態である揮発性塩化物の一部は、反応器4に残され、ステップ7で洗浄器によって除去される。
NaCl及びKClの除去後、還元ガス流、例えばH/N混合物をガス・コンテナ3から炉4へ供給して炉4を通過させること、及びコンテナ2から炉4への酸化ガスの流れを停止することによって、炉4内の条件は変化する。
前記還元ガスの雰囲気中でZn、Bi、及びSbを揮発させるために、炉4において約1000℃の温度に加熱することによって、飛灰の加熱を継続する。
灰の不揮発化合物は、例えば触媒又は水処理薬品などの最終製品を製造するために、ユニット8に収集される残留物である。
次いで、気化したZn、Bi、及び/又はSbを伴うガス流は、気化した金属がナノサイズのエアロゾル粒子を形成する速度で窒素又は場合によっては空気を用いて急冷するために、冷却ユニット9に供給される。このステップでは、ナノサイズの粒子の形成に関して、ガス流を急冷に使用される希釈ガスと混合する前にガス流が冷却されないことが重要である。したがって、希釈ガス入口の場所並びに希釈ガス流の速度、量、及び温度をその後選択しなければならない。
しかしながら、粒子がナノサイズであることは、金属回収自体に重要ではないが、最終製品の調製には有利である。
次いで、ナノサイズのエアロゾルZn、Bi、及びSb粒子が、フィルタ・バッグであり得る収集ユニット10に回収される。
炉4では飛灰の加熱が継続され、炉4は、今度は1000~1400℃の温度に加熱され、これにより、燃焼灰中のCuなどの揮発金属のさらなる部分がガスの形態で揮発してガス流になる。
次いで、揮発したCu及び他の揮発金属を伴うガス流は、揮発した金属のこれらのさらなる部分がナノサイズのエアロゾル粒子を形成する速度で窒素又は空気を用いて急冷するために、Zn、Bi、及びSbと同じ冷却ユニット9に供給される。一般に、急冷前にガス流が冷えてはならないので、ナノサイズの粒子が形成されるように、急冷及び希釈ガスの速度、温度、及び場所が重要である。
次いで、ナノサイズのエアロゾルCu及び可能な他の金属は、同様にフィルタ・バッグであり得る別個の収集ユニット11に回収される。
図2は、飛灰から金属を回収するために二相法を使用する、本発明のシステム及び方法の第2の実施例の概略図である。図2の実施例は、以下のステップ及びユニットを含む。
本実施例において、ユニット1は燃焼灰、飛灰用のコンテナであり、燃焼灰、飛灰は、このコンテナから、参照番号3で示す連続ロータリ・キルン炉に供給される。
ユニット2は、空気などの酸化性ガス用のコンテナであり、酸化性ガスは炉3に供給され、炉3を通過する。
飛灰がCdを含有する場合、予備ステップにおいて、H/N混合物などの還元ガスをユニット9から炉3に供給すること、及び炉3を約500℃の予備温度に加熱することによって、飛灰を揮発させることができる。揮発したCdは、冷却ユニット(図示せず)内で窒素を用いて又は場合によっては空気を用いて急冷され、フィルタ・バッグによって収集ユニット(図示せず)に収集される。
次いで、飛灰に含まれる既存の塩化物を空気などの酸化ガス中で揮発させるために、炉3を約850℃の温度に加熱する。塩化物はほとんどがNaCl及びKClの形態であるため、そのように揮発する。少量のCdClも存在する可能性がある。灰がCaClを含有する場合、塩化物はHClとしてCaClから遊離し、Caは灰中に残りCaOに変換される。
次いで、揮発した塩化物のガス流は、冷却ユニット5に供給され、収集できるように空気を用いて急冷される。
揮発したNaCl及び/又はKClは、1つ又は複数のフィルタ・バッグで構成され得る参照番号6で示す収集ユニットに収集される。揮発性塩化物において、少量のPbCl及びCuClも見出される可能性がある。上記の予備ステップでCdが除去されない場合、さらにCdClが見出される可能性がある。PbCl及びCuClは、それらの濃度が許容範囲を超える場合、塩化物の混合物から沈殿(結晶化)する可能性がある。
揮発塩化物の一部がHClガスの形態で反応器3に残り、後のステップで洗浄器を用いて除去される(参照番号7を参照)。
NaCl及びKClの除去後、金属のさらなる処理及び回収のために、飛灰の不揮発化合物はユニット4に回収される。
この灰はユニット8に供給され、そこからさらにロータリ・キルン炉10に供給される。
ユニット9は、H/N混合物などの還元ガス用のコンテナであり、還元ガスもロータリ・キルン炉10にガス流として供給される。
前記還元ガスの雰囲気中でZn、Bi、及び/又はSbを揮発させるために、炉10において約1000℃の温度に加熱することによって、飛灰の加熱を継続する。
次いで、気化したZn、Bi、及び/又はSbを伴うガス流は、気化したZn、Bi、及び/若しくはSbがナノサイズのエアロゾル粒子を形成する速度及び条件で、窒素又は場合によっては空気を用いて急冷するために、冷却ユニット12に供給される。
次いで、ナノサイズのエアロゾルZn、Bi、及びSb粒子が、フィルタ・バッグであり得る収集ユニット13に回収される。
前記還元ガスの雰囲気中でCuなどの揮発金属の残りの部分を揮発させるために、炉10において約1000℃~1400℃の温度に加熱することによって、飛灰の加熱を継続する。Cuはガスの形態に気化してガス流になる。
次いで、気化したCu及び他の残りの揮発金属を伴うガス流は、揮発した金属のこの部分がナノサイズのエアロゾル粒子を形成する速度及び条件で、窒素又は場合によっては空気を用いて急冷するために、Zn、Bi、及びSbと同じ冷却ユニット12に供給される。
次いで、ナノサイズのエアロゾルCu及び他の可能な金属は、同様にフィルタ・バッグであり得る別個の収集ユニット14に回収される。
灰の不揮発化合物は、例えば触媒又は水処理薬品などの最終製品を製造するために、ユニット11に収集される残留物である。
ガス流は現時点でまだHClを含有しているが、HClはガス洗浄器15によって除去される。そのような洗浄器は、一般に、工業排気流から何らかの粒子状物質及び/又はガスを除去するために使用することができる。
図3は、ロータリ・キルン炉において主灰から金属を回収するための本発明のシステム及び方法の第3の実施例の概略図である。図3の実施例は、以下のステップ及びユニットを含む。
本実施例において、ユニット1は燃焼灰、主灰用のコンテナであり、燃焼灰、主灰は、このコンテナから、参照番号4で示す連続ロータリ・キルン炉に供給される。
ユニット3は、H/N混合物などの還元ガス用のコンテナであり、還元ガスも炉4に供給され、炉4を通過する。
前記還元ガスの雰囲気中でZn、Bi、及び/又はSbを揮発させるために、炉4において約1000℃の温度に加熱することによって、主灰の加熱を継続する。
次いで、揮発したZn、Bi、及び/又はSbを伴うガス流は、揮発した金属がナノサイズのエアロゾル粒子を形成する速度及び条件で、窒素又は場合によっては空気を用いて急冷するために、冷却ユニット8に供給される。
次いで、ナノサイズのエアロゾルZn、Bi、及びSb粒子が、フィルタ・バッグであり得る収集ユニット9に回収される。
前記還元ガスの雰囲気中でCuなどの揮発金属のさらなる部分も揮発させるために、炉4において約1000℃~1400℃の温度に加熱することによって、飛灰の加熱を継続し、Cuはガスの形態に気化してガス流になる。
灰の不揮発化合物は、例えば触媒又は水処理薬品などの最終製品を製造するために、ユニット7に収集される残留物である。
次いで、揮発したCu及び他の揮発金属を含有するガス流は、揮発した金属のこのさらなる部分がナノサイズのエアロゾル粒子を形成する条件及び速度で窒素又は場合によっては空気を用いて急冷するために、Zn、Bi、及びSbと同じ冷却ユニット8に供給される。
次いで、ナノサイズのエアロゾルCu及び他の金属は、同様にフィルタ・バッグであり得る別個の収集ユニット10に回収される。
参照番号11は最終製品の調整を表す。Cu及びZnからの最終製品は、化粧品、塗料、電子機器、及び様々なナノ材料において必要になる可能性がある。
図4は、誘導炉において飛灰から金属を回収するための本発明のシステム及び方法の第4の実施例の概略図である。図4の実施例は、以下のステップ及びユニットを含む。
本実施例において、ユニット1は燃焼灰、飛灰用のコンテナであり、燃焼灰、飛灰は、このコンテナから、参照番号4で示す誘導炉に供給される。
ユニット2は、空気などの酸化性ガス用のコンテナであり、酸化性ガスは炉4に供給され、炉4を通過する。
ユニット3は、H/N混合物などの還元ガス用のコンテナであり、還元ガスも炉4に供給され、炉4を通過する。
飛灰がCdを含有する場合、予備ステップにおいて、H/N混合物などの還元ガスをユニット3から炉4に供給すること、及び炉4を約500℃の予備温度に加熱することによって、飛灰を揮発させる。揮発したCdは、冷却ユニット(図示せず)内で例えば窒素を用いて又は場合によっては空気を用いて急冷され、1つ又は複数のフィルタ・バッグで構成され得る収集ユニット(図示せず)に収集される。
次いで、飛灰に含まれる(他の)既存の塩化物を空気などの酸化ガス中で揮発させるために、炉4を約850℃の第1の温度に加熱する。塩化物はほとんどがNaCl及びKClの形態であるため、そのように揮発する。少量のCdCl2も存在する可能性がある。灰がCaClを含有する場合、塩化物はHClとしてCaClから遊離し、Caは灰中に残りCaOに変換される。Pb及び/又はCuの塩化物も存在する可能性があり、これらもそのように収集される。
次いで、Na及び/又はKの揮発した塩化物のガス流は、冷却ユニット5に供給され、ユニット6に収集できるように空気を用いて急冷され、ユニット5及びユニット6は、CdClの急冷及び収集に使用されるものとは別のユニットである。
揮発したNaCl及び/又はKClは、1つ又は複数のフィルタ・バッグで構成され得る参照番号6で示す収集ユニットに収集される。揮発性塩化物において、少量のPbCl及びCuClも見出される可能性がある。上記の予備ステップでCdが除去されない場合、さらにCdClが見出される可能性がある。PbCl及びCuClは、それらの濃度が許容範囲を超える場合、NaCl及び/又はKCl生成物から沈殿(結晶化)する可能性がある。
HClガスの形態である揮発性塩化物の一部は、反応器4に残され、ステップ7で洗浄器によって除去される。そのような洗浄器は、一般に、工業排気流から何らかの粒子状物質及び/又はガスを除去するために使用することができる。
NaCl及びKClの除去後、還元ガス流、例えばH/N混合物をガス・コンテナ3から炉4へ供給して炉4を通過させることによって、炉4内の条件は変化する。
前記還元ガスの雰囲気中でZn、Bi、及びSbを揮発させるために、炉4において約1000℃の温度に加熱することによって、飛灰の加熱を継続する。
灰の不揮発化合物は、例えば触媒又は水処理薬品などの最終製品を製造するために、ユニット8に収集される残留物である。
気化した金属は、ガス流と相互作用してナノサイズのエアロゾル粒子を形成する。次いで、ナノサイズのエアロゾルZn、Bi、及びSb粒子が、例えば、フィルタ・バッグであり得る収集ユニット9に回収される。
炉4では飛灰の加熱が継続され、炉4は、今度は1000~1400℃の温度に加熱され、これにより、燃焼灰中のCuなどの揮発金属のさらなる部分がガスの形態で揮発してガス流になる。
次いで、ナノサイズのエアロゾルCu及び可能な他の金属は、同様にフィルタ・バッグであり得る別個の収集ユニット10に回収される。
主灰の処理に誘導炉を使用する場合、塩化物除去を実行する必要がなく、これによりユニット2、5、6、及び7は不要である。
(実例)
本発明の条件において飛灰から覆われる塩化物及び金属の揮発性を一般的に示すために、以下の実例を実行した。
(実例1)フロー・スルー炉
下の表に示す化学組成を有し、最大粒子サイズが250μmである、火格子燃焼都市固形廃棄物焼却(MSWI:municipal solid waste incineration)プラントからの飛灰試料(0.05~1.0g)を、電気加熱した層流フロー・スルー管型反応器内で範囲200~1050℃にわたる様々な温度で加熱した。
最初に酸化性ガス雰囲気(空気)中で(=事例a))、次いで10%v/vHと90%v/vNからなる還元ガス雰囲気中で(=事例b))、試料を加熱した。
反応器管の出口に接続され反応器内に配置された多孔管希釈器を使用して、加熱の結果として気化した高温生成ガスを急冷及び希釈した(Lyyranen他、2004、Backman他、2002)。
前記生成ガスの急冷中に形成された金属凝縮物の試料を、水晶フィルタ要素上に収集した。
フーリエ変換赤外(FTIR:Fourier-Transform Infrared)ガス分析器を用いてガス排出量を測定し、反応器を出るガス組成を得た。
飛灰の元素成分の揮発性を、熱処理された灰の化学分析に基づく物質収支によって定量化した。
Figure 2022521804000002

Figure 2022521804000003
(事例a)空気中の気相への元素成分の放出
塩素として算出された塩化物の放出は600℃から700℃の間で始まり、900℃で実質的に完了した(>99%が放出された)。Sの放出は800℃から850℃の間で始まり、温度が1050℃に上昇すると41%まで上昇した。炭素は主に500℃から600℃の間で放出された。Cの放出は400℃未満で始まり、1000℃でほぼ完了した(>99%が放出された)。Na及びK(それらの塩化物として)の放出は600℃から700℃の間で始まった。900℃では、Naの約55%及びKの約80%が気相に放出された。飛灰を900℃を超えてさらに加熱しても、Na及びKのさらなる放出は起こらなかった。
熱処理された灰の粉末X線回折分析及び熱力学的平衡計算は、残留のNaが不揮発アルミノケイ酸塩の形態で灰中に保持されることを示した。Cdの放出は700℃から750℃の間で始まり、1050℃で95%に達した。Pdの放出は650℃から720℃の間で始まり、1050℃で94%に達した。Znの放出は約850℃で始まった。1050℃では、Znのわずかな割合(<15%)しか放出されなかった。銅は700~900℃の温度範囲で放出された。900℃を超える温度で加熱すると、Cuの約50%が放出された。ビスマスは1000℃以下では不揮発であった。1050℃では、Biのわずかな割合(15%)しか放出されなかった。次の元素、P、Ca、Mg、Ti、Al、Sb、Sn、及びAsは、1050℃未満の空気中では、ごくわずかな揮発性を示した。
したがって、本発明で回収される金属は、酸化条件で著しく気化することはない。
(事例b)水素10%及び窒素90%からなるガス状混合物中の気相への元素成分の放出
Cl及びKの10%H中の放出特性は、空気中の放出特性と同様であった。Naの10%H中の放出は、900℃未満の温度での空気ガス雰囲気での放出とほぼ同一であった。この温度を超えると、Naは空気中よりも10%H中で大量に放出された。1050℃では、Naの10%H中の放出は78%であった(参考、1050℃で空気中の場合は53%)。硫黄は、空気中よりも10%H中で大量に放出された。Sの10%H中の放出は、600℃から700℃の間で始まった(Sの空気中の放出の開始温度より少なくとも100℃低い)。水素ガス雰囲気は、炭素の完全な放出を阻害した。1050℃での熱処理後、Cの約8%が灰中に残った(参考、1050℃で空気中の場合のCの残存率は<1%)。Cdの放出は290℃から400℃の間で始まり、460℃で約80%、700℃で約90%に達した。Znの放出は、600℃を超える温度で顕著であり、900℃で約80%、1050℃で約87%に達した。Pbの放出は、600~725℃の温度範囲で空気中よりも10%H中の方が多かった。785~1050℃の範囲内の温度の場合、10%HでのPbの放出の程度は、空気中の放出と同様であった。銅は、空気中よりも10%H中の方が著しく揮発性が低かった。Cuの放出は、880℃未満ではわずかであった(<10%が放出された)。1050℃では、Cuの約25%が気相に放出された。Sb及びSnの放出は、600℃から700℃の間で始まり、1000℃で約70~75%に達した。ヒ素はごくわずかしか放出されなかった(1050℃で約30%)。As放出の開始は、約700~800℃で始まった。Biの放出は約500~600℃で始まり、880℃で約85~90%に達した。次の元素、P、Ti、Ca、Mg、及びAlは、1050℃未満の10%Hでは、ごくわずかな揮発性を示した。
(実例2)誘導炉
実例1で使用したものと同じ飛灰試料を、誘導炉においてH(10%v/v)及びN(90%v/v)からなるガス雰囲気中で加熱した。飛灰の試料(10~14g)を誘導炉に投入した。次いで、誘導炉を密閉して1100℃まで加熱した。1100℃で飛灰から揮発した材料を急冷し、次いでフィルタに回収した。
収集された凝縮物は、重量測定で秤量した質量のZn(36.8%)、K(19.0%)、Na(11.5%)、Pb(2.6%)、Sn(0.9%)で構成されていた。残りの1.2%は微量元素(Cr、Mn、Co、Ni、Cu、As、Mo、Ag、Cd、Sb、Ti、Bi)で構成され、28%は未分析であり、おそらく塩素及び硫黄であった。
収集された材料を、加圧酸分解後に誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS:inductively-coupled plasma mass spectrometry)によって金属及びメタロイドの濃度について分析した。硝酸と塩酸の混合物で試料を分解した後、処理された灰残留物を秤量し、蛍光X線(XRF:X-ray fluorescence)によって金属及びメタロイドについて分析した。気相に放出された無機元素の割合は、Cl40.6%、S69.5%、K40.4%、Cu0%、Ca41.2%、P81.1%、Pb76.1%、及びZn97.2%であった。
(飛灰の元素成分の熱分別)
金属及びメタロイドで汚染されたMSWI飛灰を2段階で熱処理して、金属及びメタロイドの好ましい分別を実現することができる。第1の段階では、空気中で飛灰を900℃で加熱して、塩化物の形態で除去された灰から塩化物(Clとして算出して>99%の除去)、C(>98%の除去)、及びかなりの量のK、Na、Cd、Pb、及びCuを除去する。
揮発した材料を、高温ガス希釈によって急冷し(Lyyranen他、2004、Backman他、2002)、静電集塵機(ESP)又はバッグ・フィルタに収集することができる。収集された材料は、場合によっては道路塩として利用できる可能性がある。
第2の段階の処理では、窒素ガスをフラッシュすることによって高温(900℃)の反応器から酸素をパージし、次いで、水素を反応器に供給して、水素と窒素の両方で構成されるガス雰囲気を作成する。第2の段階の処理では、Znを揮発させ、少量の有価汎用元素、具体的にはSn、Sb、及びBiを揮発させる。アンチモンとビスマスはどちらもEUによって重要な原材料として分類されている。(http://ec.europa.eu/growth/sectors/raw-materials/specific-interest/critical/)。
次いで、揮発した材料を高温ガス希釈(Lyyranen他、2004)によって急冷して、亜鉛に富む凝縮物を形成する。凝縮物は、ESP又はバッグ・フィルタに収集することができる。ガス状亜鉛は、高温ガス希釈中に亜鉛ナノ粒子に変換される。亜鉛ナノ粒子は、場合によっては様々な高価値製品(例えば、日焼け止め、塗料、電子機器、太陽電池、センサなど)の製造に使用できる可能性がある。
Znと同様の手順をCuに対して後から実行することができ、特に主灰の場合、塩化物がないのでCuの量が比較的多くなるが、Cuは約1100℃で気化し始め、化学平衡に従い約1350℃で完了するので、反応器温度が高くなる。

Claims (21)

  1. 金属回収のための燃焼灰の処理方法であって、
    a)連続フロー・スルー炉を第1の温度に加熱するステップと、
    b)前記炉に燃焼灰を供給するステップと、
    c)前記炉を通して酸化性ガスを供給するステップと、
    d)前記炉に供給された前記燃焼灰を前記第1の温度に加熱するステップであって、それにより前記灰に含まれる塩化物を揮発させ、前記塩化物を除去するステップと、
    e)前記炉通して還元ガス流を供給させることによって、前記炉内の条件を変化させるステップと、
    f)前記炉内の前記燃焼灰を加熱するために前記温度を第2の温度に変更するステップであって、それにより前記灰に含まれる1又は複数の金属を前記ガス流内に揮発させるステップと、
    g)前記気化した粒子を1又は複数の収集ユニットで回収するステップと
    を含む、方法。
  2. 前記燃焼灰が、主灰又は飛灰のうちの一方から選択され、飛灰がSi、Ca、Al、Zn、Na、Sb、Bi、K、Fe、Co、Cu、Ni、及び/Vのうちの1又は複数を含み、主灰がSi、Al、Zn、Sb、Bi、Fe、Co、Cu、Ni、及び/Vを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記燃焼灰が主灰であり、前記第1の温度がZn、Bi、及び/又はSbを揮発させるのに十分な温度、好ましくは約1000℃である、請求項2に記載の方法。
  4. ステップf)において、Cuなどの前記燃焼灰中の前記残りの揮発性金属がガス形態で前記ガス流に揮発し、その後、Cuに対してもステップg)を実行する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
  5. ステップe)における前記還元ガスが、窒素ガスと水素ガスの混合物及び/又は一酸化炭素COガスである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記回収ステップg)の前に、前記揮発したガスを伴う前記ガス流が急冷される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記揮発金属を伴う前記ガス流が、ナノサイズのエアロゾル粒子を形成するような条件及び速度で冷える前に、前記急冷が急冷ガスを用いて実行される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記燃焼灰が、Na、K、Ca、及び/又はCdのうちの1又は複数の塩化物をさらに含む飛灰である、請求項1から2まで及び5から7までのいずれか一項に記載の方法。
  9. 塩化物を揮発させるための前記第1の温度が800~900℃であり、ステップf)で金属を揮発させるための前記第2の温度が、Zn、Bi、及びSbを揮発させるのに十分な温度、好ましくは約1000℃である、請求項8に記載の方法。
  10. Na、K、Cu、Pbのうちの1又は複数の塩化物を揮発させるための前記酸化性ガスが、前記炉に供給される空気のガス流である、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記塩化物が、揮発及び急冷後、フィルタ・バッグで収集することによって除去される、請求項8から10までのいずれか一項に記載の方法。
  12. ステップf)の後、前記炉において前記温度を第3の温度に上昇させることによって前記燃焼灰の前記加熱が継続され、それによりCuなどの前記燃焼灰中の残りの揮発性金属がガスの形態で前記ガス流内に揮発し、その後Cu及び前記他の気化したガスに対してステップg)を実行する、請求項8から11までのいずれか一項に記載の方法。
  13. ステップa)の前に、Cdを揮発させるための予備温度、好ましくは約500°の温度に加熱された前記炉を通して還元ガスを供給することによって、Cdが揮発及び除去される、請求項1から2まで及び5から12までのいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記塩化物除去が1つのロータリ・キルン炉内で実行され、前記燃焼灰が、塩化物除去後に、ステップf)を実行するために別のロータリ・キルン炉に供給される、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
  15. ステップf)が前記塩化物除去と同じロータリ・キルン反応器内で実行される、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記金属が、フィルタ上に収集することによって回収される、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
  17. ステップf)において揮発されない化合物が残留物であり、それらは分離され、加熱され、微粉化される、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記非気化化合物が、Si、Ca、Al、Fe、Co、Mg、Ni、P、Ti、As、及びV、並びに不揮発性形態のNa及びKである、請求項17に記載の方法。
  19. 金属回収のための燃焼灰の処理システムであって、
    a)還元ガス及び燃焼灰の流れを受け入れるための、加熱された連続フロー・スルー炉と、
    b)揮発した粒子用の収集ユニットと、
    c)不揮発材料用の収集ユニットと
    を含む、システム。
  20. 前記燃焼灰から形成されたエアロゾル粒子を急冷するための冷却ユニットをさらに含む、請求項19に記載のシステム。
  21. 前記炉がロータリ・キルン反応器である、請求項19又は20に記載のシステム。
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