JP2022520100A - 義歯床および義歯 - Google Patents

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Abstract

本発明は、複数の歯槽区画を有する義歯床であって、歯槽区画の1つ以上が階段状の構造で構成された凸面と階段状の構造の1つ以上の突起部とを含む義歯床に関する。本発明はさらに、義歯床と少なくとも1種のボンディング材と複数の人工歯とを含む義歯に関する。各人工歯が歯槽区画において各突起部の上に支持され得るように、人工歯は歯槽区画内に接着されており、その結果、人工歯と義歯床との間に所定の量のボンディング材が維持される。本発明の義歯床および義歯は、義歯床における人工歯のより容易で、より効率的かつ信頼できる排列の必要性により良好に対処し、かつ義歯床における人工歯のより一貫性があり、かつ予測可能な接着を保証することができる。【選択図】図6A

Description

(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2019年2月15日に出願された米国出願第16/277,342号の利益および優先権を主張するものであり、これは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
歯科補綴学の分野では、義歯床内への歯の排列は重要な作業である。それは義歯作製プロセス全体、すなわち歯の設計(幅および長さ)、咬合角および全体的な歯の配置スキームの十分な知識を有する熟練した技術者を必要とする。熟練した技術者であっても、義歯床における人工歯の正確な配置およびフィッティングは繰り返しの介入を必要とする場合が多い。例えば、予め作製された歯の基底表面積ならびに受け入れ義歯床の歯槽の内面に形成された僅かな寸法のばらつきまたは欠陥は、義歯床における歯の配置の不安定性(例えば、揺動または回転)あるいは調整不良(例えば、傾斜またはアンバランス)の一因となり得る。患者のために義歯の適切な機能および審美性の両方を達成するために、存在する(人工歯または義歯床のいずれかにおける)寸法の逸脱または不適合を慎重に調整および補正するプロセスにおいてかなりの時間および努力が費やされる場合がある。従って、正確な歯の排列は望むよりも難しく、かつ従ってより時間がかかり、かつ高価なプロセスのままである。
注型成形された歯の重要な利点の1つはそれらの審美性である。多くの場合、これらの歯の外面シェードおよび特徴部はそれらを本物のように見せ、従って天然歯と区別することは難しい。全体的な注型成形プロセスにより、多種多様な設計を有する一般的に良好な寸法一貫性が得られる。しかし歯表面における望ましくないばらつきの形成を最小限に抑えるか無くすための努力にも関わらず、注型成形プロセスにより少なくとも1つの歯表面に小さい表面異常または欠陥(例えば、鋳型の継ぎ目線またはスプルー領域の膨らみすなわち隆起部)が導入されることは珍しいことではない。典型的には、目に見える歯表面に対する有害な外観を回避するために、製造業者はそのような欠陥を、義歯床に配置して取り付けられる型取りされた歯の基底すなわち下位部分に隔離するように歯の型を設計する。しかしこれらの表面欠陥を目に見えない基底の歯表面に隔離するために、次いでそのような表面異常またはばらつきは、義歯床の歯槽との密着および突出妨害を受け、このようにして義歯床における歯の配置の上記不安定性および調整不良における原因因子となる。従って、適合を向上させるかそうでなければこれらの問題を克服するために、技術者はかなりの経験および判断を活用して注意を払い、削合または研磨により歯のいくらかの表面積を労を惜しまず除去することが必要となる。彼らは、満足が行く結果のために義歯を完成するために必要とされる複数の歯にわたるそのような努力を繰り返し、従って完成のためにより多くの時間と費用を追加することさえ必要となる場合がある。
CNCフライス加工または付加製造(すなわち3次元印刷)を利用するCAD/CAM設計および作製技術における最近の向上と共に、より従来の注型成形技術と比較して好ましい正確性および効率で義歯床および義歯を作製することができる。デジタル環境で義歯床および義歯を設計することにより、様々な人工歯形状の仮想ライブラリーを適用して、予め形成された人工歯を受け入れるための義歯床表面に相補的すなわち一致する修飾を施すことができる。但し、歯と義歯床との間で正確に一致する表面を作り出すにはさらなる困難または不足に直面し得る。第一に、互いに対するこれらの表面の挿入および位置決めの間に、そのようなぴったり合った配置による広範囲な表面間摩擦または粘着により、望ましくない妨害すなわち「強固な結合」効果が生じる可能性がある。これは技術者が義歯床内での歯の向きおよび位置合わせを最適化するための微妙であるが重要な位置変更を行うのを妨げる可能性がある。そのような場合、技術者は小さい除去的調整を行って(例えば、人工歯および/または義歯床の表面積を除去して)、表面間により多くの余裕を作り出すことを余儀なくされる場合がある。このようにして、適合を向上させるために善かれと思ってなされた介入により、望ましくない物理的アンバランス/歪みまたは目に見える欠陥が不注意で生じ、なおさらなる時間のかかる補正行為が必要になり得る。第2に、各人工歯を義歯床に永久的に固定するプロセス中に、典型的には1つ以上の硬化性接着剤またはボンディング材を人工歯の基底面と義歯床の歯槽との間に配置してそれらを互いに固定させる。人工歯の基底面と義歯床の歯槽との嵌合領域を正確に一致させてそれらの表面全体にわたって互いに接触させる場合、接着プロセスの完全性および接着品質が損なわれる可能性がある。すなわち、接着品質は同じ義歯内の異なる歯ならびに異なる義歯の両方にわたってより可変的になる可能性がある(一貫性が低くなる可能性がある)。より詳細には、歯と義歯床とを互いに嵌合させる場合に、接着品質は供給されるボンディング材の量および粘度ならびに技術者によって加えられる圧力の量などの因子によってより強く影響され得る(すなわち、より一貫性のない予測不可能な接着層界面が作り出される)。
上記理由のために、特にフライス加工および付加製造される義歯床のために、作製するのにあまり大きな労働力を要しない、人工歯のより容易で、より効率的かつ信頼できる排列ならびに人工歯のより一貫性のある接着を提供することができる義歯床および義歯が必要とされている。
本発明は、これらおよび他の必要性を満たす義歯床および義歯に関する。本発明の特徴を有する義歯床は、歯列弓形態と歯列弓形態内に凹状に形成された複数の歯槽区画とを含む。これらの歯槽区画の1つ以上は凸面を含み、凸面は、踏面様の舌側基底面および蹴込み様の頬側基底面を特徴とする階段状の構造を有する。階段状の構造は歯槽区画の舌に面している側から歯槽区画の頬に面している側に向かって外向きに突出または延在していてもよく、かつ近心から遠心方向に歯槽区画の幅を実質的に横切っている。1つ以上の突起部は階段状の構造上の位置から突出していてもよく、当該位置は、
a)階段状の構造の舌側基底面、
b)階段状の構造の頬側基底面、
c)階段状の構造の舌側基底面および階段状の構造の頬側基底面、
d)突起部が舌側基底面および頬側基底面の両方の少なくとも一部にわたって連続的な形態で延在している階段状の構造の舌側基底面および頬側基底面の両方、ならびに
e)それらの組み合わせ
からなる群から選択される。
本発明の一実施形態では、歯槽区画の階段状の構造の舌側基底面は、舌側基底面から突出している突起部を除外して、その領域の全長にわたって実質的に平らであってもよい。
本発明の別の実施形態では、歯槽区画の階段状の構造の頬側基底面は、頬側基底面から突出している突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に平らであってもよい。
本発明のさらに別の実施形態では、歯槽区画の階段状の構造の頬側基底面は、頬側基底面から突出している突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に凸状であってもよい。
一実施形態では、突起部は少なくとも約25ミクロンの高さであって約500ミクロン以下の高さであってもよい。
さらに別の実施形態では、突起部はそれらの最大幅において少なくとも約25ミクロンの幅であって、それらの最大幅において約10ミリメートル以下の幅であってもよい。
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも2つの突起部は歯槽区画の階段状の構造の舌側基底面から突出していてもよい。同様に、本発明の別の実施形態では、少なくとも2つの突起部は歯槽区画の階段状の構造の頬側基底面から突出していてもよい。
少なくとも2つの突起部が階段状の構造の舌側基底面から突出している実施形態では、舌側基底面上の突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであってもよい。同様に、少なくとも2つの突起部が階段状の構造の頬側基底面から突出している実施形態では、頬側基底面上の突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであってもよい。
少なくとも2つの突起部が階段状の構造の舌側基底面から突出している他の実施形態では、舌側基底面上の突起部は歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置していてもよく、ここでは歯槽区画の二等分面は歯槽区画の近心から遠心方向に本質的に直交している。同様に、少なくとも2つの突起部が階段状の構造の頬側基底面から突出している実施形態では、頬側基底面上の突起部は歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置していてもよく、ここでは歯槽区画の二等分面は歯槽区画の近心から遠心方向に本質的に直交している。
少なくとも2つの突起部が階段状の構造の舌側基底面および/または頬側基底面から突出しているさらに他の実施形態では、突起部は、突起部の基部においてその周囲から測定した場合に少なくとも約25ミクロンであって約8ミリメートル以下の距離で分離されていてもよい。
義歯は、本発明の1つ以上の特徴を具体化している義歯床を含んでいてもよい。義歯は少なくとも1種のボンディング材と、義歯床に接着された複数の人工歯とをさらに含んでいてもよい。各人工歯の基底面のサイズおよび形状は、本発明の義歯床の歯槽区画の少なくとも1つに受け入れられるように構成されている。各人工歯は少なくとも1種のボンディング材によって歯槽区画内に接着されており、それにより各人工歯の基底面は歯槽区画内の突起部に支持され、その結果、所定の量のボンディング材が人工歯と義歯床との間に維持される。
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、例示的な実施形態および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面に関してより良く理解されるであろう。
本発明のいくつかの態様を具体化している上部(上顎)の完全義歯床のデジタル画像の斜視図を示す。 図1の義歯床の一部のデジタル画像の部分拡大斜視図を示す。 歯列弓形態の一部内の歯槽区画および階段状の構造上の突起部のデジタル画像の部分拡大側面図を示す。 実質的に平らな舌側基底面が歯槽区画の周囲に出会う遷移表面積の一実施形態を含む単一の歯槽区画の側面図を示す。 歯槽区画内の階段状の構造および突起部を表す断面図(すなわち、近心から遠心に向かう方向すなわち歯列弓形態の湾曲方向に直交する図)を示す。 凸状の頬側基底面が歯槽区画の周囲に出会う遷移表面積の異なる実施形態を含む単一の歯槽区画の上面図(すなわち、歯槽区画と共に上方に面する方向に向けられた歯列弓形態を見下ろす図)を示す。 凸状の頬側基底面が歯槽区画の周囲に出会う遷移表面積の異なる実施形態を含む単一の歯槽区画の上面図(すなわち、歯槽区画と共に上方に面する方向に向けられた歯列弓形態を見下ろす図)を示す。 図5A~図5Hは断面プロファイル形状または突起部の輪郭のいくつかの代表的な形態を示す。 その基底面が、歯槽区画内の階段状の構造の舌側基底面および頬側基底面にある本質的に等しい、すなわち一致する高さの突起部上に支持されているか位置している状態の人工歯の断面図を示す。 その基底面が歯槽区画内の階段状の構造の舌側基底面および頬側基底面にある等しくない、すなわち一致していない高さの突起部上に支持されているか位置している状態の人工歯の断面図を示す。
上記概要ならびに添付の図面と共に以下に提供されている詳細な説明および特許請求の範囲では、本発明の特定の特徴および実施形態を参照する。当然のことながら、本明細書における本発明の開示はそのような特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含む。例えば、特定の特徴が本発明の特定の態様または実施形態または特定の請求項の文脈において開示されている場合、その特徴は可能な程度で、本発明の他の特定の態様および実施形態と組み合わせて、および/またはそれらの文脈で、ならびに広く本発明において使用することもできる。
以下のさらなる定義は、特に具体的に指示がない限り、本発明の明細書および特許請求の範囲の全体を通して適用されるものとする。
「約」という用語は、指定された値の±5%、好ましくは指定された値の±3%、より好ましくは指定された値の±1%を意味するように近似用語として本明細書で使用されている。
「本質的に」および「実質的に」という用語は、記載されている基本的性質または支配的特徴に関連して必ずしも全体または完全ではないが大抵の場合であることを意味するように近似用語として本明細書で使用されている。
数の前の「少なくとも」という用語は、その数で始まる範囲(これは定義されている変数に応じて上限を有するか上限を有しない範囲であってもよい)の開始を意味するように本明細書で使用されている。例えば「少なくとも1つ」は1つまたは2つ以上を意味する。
数の前の「最大で」または「以下」という用語は、その数で終わる範囲(これは定義されている変数に応じてその下限として1または0を有する範囲あるいは下限を有しない範囲であってもよい)の終わりを意味するように本明細書で使用されている。例えば「最大で100個」または「100個以下」は100個または100個未満を意味する。本明細書において範囲が「(第1の数)から(第2の数)」または「(第1の数)~(第2の数)」として与えられている場合、これはその下限が第1の数であり、かつその上限が第2の数である範囲を意味する。例えば1から5mmはその下限が1mmであり、かつその上限が5mmである範囲を意味する。
本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに二者択一(「または」)で解釈される場合には組み合わせの欠如を含む。例えば「Aおよび/またはB」はAのみ、Bのみ、あるいはAおよびBの両方またはそれらの混合物を意味する。
「の下に(under)」「の下に(below)」「の下に(beneath)」「下側」「の上に(over)」「上側」「の上に(above)」「の上に(on top)」などの方向的または空間的に相対的な用語は、図に示されている要素または特徴部の他の要素または特徴部との関係を記述するための説明を容易にするために本明細書で使用されている場合がある。当然のことながら、空間的に相対的な用語は、図に描かれている向きに加えて装置の異なる向きを包含することが意図されている。例えば図の中の装置が反転された場合に、他の要素または特徴部「の上に(above)」または「の上に(on top)」のように記載されている要素または特徴部は、他の要素または特徴部「の下に(below)」または「の下に(under)」向けられる。当該装置はそれ以外の方向に向けられる場合があり(例えば90°またはそれ以外の向きに回転される場合があり)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。同様に「上方」、「下方」、「垂直」および「水平」などという用語は、特に具体的に指示がない限り、相対的な説明のためにのみ本明細書で使用されている。
「歯列弓形態」という用語は、歯槽頂および歯列が存在する輪郭に似ている、歯列弓すなわち上部(上顎)アーチまたは下部(下顎)アーチのいずれかの3次元に湾曲した構成または形状を意味するように本明細書で使用されている。「歯列弓形態」は完全義歯床および義歯のみに限定されず、部分的義歯床および義歯にも適用されることが意図されていることも理解すべきである。
「階段状の」という用語は、階段形状の輪郭に似ている、すなわちそのように見える構成または形状を意味するように本明細書で使用されている。
「踏面様の」という用語は、階段の水平の踏面部分に似ている、すなわちそのように見える「階段状の」構造の実質的に水平の上部または上面を意味するように本明細書で使用されている。
「蹴込み様の」という用語は、階段の別個の踏面表面間の垂直蹴込み部分に似ている、すなわちそのように見える「階段状の」構造の実質的に垂直の直立部または直立面を意味するように本明細書で使用されている。
「舌に面している側」という用語は、口腔の舌の隣に面しているかそれに向かって面している方向または空間を意味するように本明細書で使用されている。
「頬に面している側」という用語は、口腔の頬および/または唇の隣に面しているかそれに向かって面している方向または空間を意味するように本明細書で使用されている。
「基底」という用語は、基礎に関する位置あるいは要素または特徴部の土台または底領域に位置しているか、それらを形成しているかそれらに属している位置を意味するように本明細書で使用されている。
「舌側基底」という用語は、義歯床の舌に面している側に隣接または近接している歯槽区画内の実質的に水平の部分を意味するように本明細書で使用されている。
「頬側基底」という用語は、義歯床の頬に面している側に隣接または近接している歯槽区画内の実質的に垂直の直立部分を意味するように本明細書で使用されている。
「近心から遠心方向に」という用語は、歯列弓の中心線または正中の矢状面から歯列弓の遠心または遠隔端までの歯列弓の湾曲方向を意味するように本明細書で使用されている。
上部(または上顎)の完全義歯床について図1に示されているように、義歯床(100)は、歯列弓形態(110)と歯列弓形態内に凹状に形成された複数の歯槽区画(120)とを含む。歯列弓形態はさらに、舌に面している側(図1に示されている「LF側」)および頬に面している側(図1に示されている「BF側」)を有するものとしてみなしてもよい。図1に示すように、歯槽区画は有利には、近心から遠心方向(図1に示されているMDO線)に沿って歯列弓形態に関して隣接する位置に配置されていてもよい。より自然に見える義歯を保証するために、歯槽区画のそれぞれが好適な人工歯形態を受け入れるように構成されていることも有利である。限定することを意図するものではないが、好適な人工歯形態は、その外側の輪郭または形状プロファイルおよびサイズが適当な人工歯の種類(すなわち、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯)および/または歯列弓に沿った生まれつきの口腔解剖学的構造および位置に関連する歯の番号(FDI国際歯科連盟表記法で使用されているような番号)に一致するものである。また図1は本発明の形態の代表例であるが、本発明は上部(上顎)の完全義歯床のみに限定されるものではないことも理解すべきである。また本発明の実施形態を上部の部分義歯床、下部(下顎)の完全義歯床および下部の部分義歯床に適用してもよい。
図2に示すように、これらの歯槽区画の少なくとも1つ、好ましくは複数の歯槽区画は凸面によって定められていてもよく、ここでは凸面は、踏面様(実質的に水平の部分)の舌側基底面(210)および蹴込み様(実質的に垂直部分)の頬側基底面(220)を特徴とする階段状の構造(200)に構成されている。階段状の構造は歯槽区画の舌に面している側(「LF側」)から歯槽区画の頬に面している側(「BF側」)に向かって外向きに突出または延在しており、かつ近心から遠心方向に歯槽区画の幅を実質的に横切っている。
図2には、踏面様の舌側基底面(210)から外向きに突出または延在している突起部(215a、215b)が示されている。突起部は、歯槽区画内の階段状の構造(200)の表面から外向きに突出または延在している表面構造または表面特徴部である。蹴込み様の頬側基底面(220)から外向きに突出または延在しているさらなる突起部(225a、225b)が示されている。図3は歯列弓形態内の歯槽区画の拡大側面図を示す。ここでも、踏面様の舌側基底面(210)から外向きに突出または延在している突起部(215a、215b)が示されており、かつ蹴込み様の頬側基底面(220)から外向きに突出または延在している突起部(225a、225b)が示されている。
階段状の構造
本発明の一実施形態では、歯槽区画の階段状の構造は舌側基底面から突出している突起部を除外して、歯槽区画内のその領域の全長にわたって実質的に平らな踏面様の舌側基底面を有していてもよい。本明細書では「実質的に平ら」とは、必ずしも全体または完全にではないが、その領域が大体すなわち大部分が平らであることを意味する。例えば図4Aおよび図4Bに示されている本発明の形態では、踏面様の舌側基底面(210)の中央部分全体にわたって延在している大体すなわち大部分が平らな表面積が存在してもよく、これは、舌側基底面は歯槽区画(120)の周囲に出会う弓状すなわち曲がった表面積(230)に遷移する。追加または代わりとして、図4Bに示されている本発明の別の形態では、踏面様の舌側基底面の中央部分全体にわたって延在している大体すなわち大部分が平らな表面積が存在してもよく、これは、舌側基底面(210)の外側に延在している遠位遊離端が歯槽区画の頬側基底面(220)の外側に延在している遠位遊離端に出会う弓状すなわち曲がった表面積(235)に遷移する。
本発明の別の実施形態では、歯槽区画の階段状の構造は、頬側基底面から突出している突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さにわたって実質的に平らである蹴込み様の頬側基底面を有していてもよい。本明細書では、「実質的に凸状」とは、その領域が必ずしも全体または完全にではないが、大体すなわち大部分が凸状であることを意味する。例えば図4Cに示されている本発明の1つの形態では、その幅にわたって蹴込み様の頬側基底面(220)の中央部分全体に延在している大体すなわち大部分が凸状の表面積が存在してもよく、これは、頬側基底面が歯槽区画(120)の周囲に出会う平らな表面積(250)に遷移する。あるいは図4Dに示すように、その幅にわたって蹴込み様の頬側基底面(220)の中央部分全体に延在している大体すなわち大部分が凸状の表面積が存在してもよく、これは、頬側基底面が歯槽区画(120)の周囲に出会う弓状すなわち曲がった表面積(250)に遷移する。本発明の他の実施形態では、歯槽区画の階段状の構造は、頬側基底面から突出している突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さにわたって実質的に凸状である蹴込み様の頬側基底面を有していてもよい。
本発明の一実施形態では、踏面様の舌側基底面と蹴込み様の頬側基底面との間に形成されている図4Bに示されている角度(α)は、少なくとも約80°であって約110°以下であってもよい。より好ましい実施形態では、踏面様の舌側基底面と蹴込み様の頬側基底面との間に形成されている角度は、少なくとも約85°であって約100°以下であってもよい。
突起部
本発明の一実施形態では、1つ以上の突起部は舌側基底面のみから外向きに突出または延在していてもよい。本発明の別の実施形態では、1つ以上の突起部は頬側基底面のみから外向きに突出または延在していてもよい。
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上の突起部は舌側基底面から外向きに突出または延在していてもよく、かつ1つ以上の突起部は頬側基底面から外向きに突出または延在していてもよい。
さらに別の好ましい実施形態では、1つ以上の突起部は、舌側基底面および頬側基底面の両方から連続的すなわち途切れずに外向きに突出または延在していてもよい。
一実施形態では、突起部は、階段状の構造の表面から発出している一体化した緊密に結びついた構造として、(例えば、注型成形、除去加工(CNCフライス加工)または付加製造(3D印刷)プロセスによって)形成されていてもよい。本明細書では、突起部は周囲の歯槽区画および義歯床の歯列弓形態と同じ材料または組成物からなっていてもよい。別の実施形態では、突起部は、隣接させるように別個すなわち独立したプロセスによって(オーバーモールドまたは3D印刷などによって)形成され、かつ階段状の構造の表面にしっかりと固定または接着されていてもよい。本明細書では、突起部は周囲の歯槽区画および義歯床の歯列弓形態とは異なる少なくとも1種の材料または組成物からなっていてもよい。少なくとも1種の異なる材料または組成物は例えば、周囲の歯槽区画および歯列弓形態の材料または組成物に対してあまり硬くない、すなわち剛体でない(すなわち、より柔軟性、圧縮性または弾性を有する)ようにするために、物理的特性に基づいて選択してもよい。そのような材料または組成物は、ショア〇〇ジュロメータースケールで約10の値からショアDジュロメータースケールで約100の値までの範囲のジュロメーター硬さを有していてもよい。
突起部は限定されることなく様々な形状で形成されていてもよい。図5は、突起部の断面プロファイル形状すなわち輪郭のいくつかの代表的な形態を示す。これらは、本発明の可能な輪郭実施形態の全てではないがいくつかを示すことを目的とした代表的な形態である。一実施形態では、突起部の上部は点状または線状の形態をなしていてもよい(図5A~図5Bに例示されている)。他の実施形態では、突起部の上部は丸い表面すなわち曲面の形態をなしていてもよい(図5C~図5Eに例示されている)。好ましい他の実施形態では、突起部の上部は実質的に平らな表面すなわち平面の形態(図5F~図5Hに例示されている)をなしていてもよい。突起部の上部が実質的に平らな表面すなわち平面の形態をなしているそのような実施形態では、平面の表面積それ自体は任意の形状であってもよい。限定することを意図するものではないが、そのような形状は円形、卵形、半円形、半月形、三角形、四角形、矩形、菱形、対称的な形状または非対称的な形状(すなわち不規則な形状)であってもよい。
例えば図5Aに示されている突起部の高さ(hp)は、その頂点(例えば、人工歯と接触することができる上面/外面)とその下底すなわち階段状の構造の表面(210、220)から外向きに延在する起点との間の距離である。突起部の高さは義歯床の設計および作製の際に、歯槽区画の階段状の構造と突起部上に支持されているか位置している人工歯の基底面との間に有効な所定の隙間間隔すなわち分離間隙を確実に確立することができるように選択してもよい。有効な隙間間隔により、人工歯と歯槽区画との間の隙間空間に予測可能な所定の量のボンディング材を保持または含有することが可能になる。有効な隙間間隔を確立して、人工歯の基底面におけるあらゆる寸法の欠陥/ばらつきを回避することもできる。例えば、図6Aおよび図6Bの断面図に示されているように、歯槽区画における階段状の構造上の突起部(215a、225a)の高さにより、突起部上に支持されているか位置している人工歯(300)の基底面における膨らみ部分すなわち寸法欠陥(335)を回避するのに有効な隙間間隔が確立される。好ましい実施形態では、突起部の高さは少なくとも約25ミクロンであって約500ミクロン以下であってもよい。より好ましい実施形態では、突起部の高さは少なくとも約40ミクロンであって約300ミクロン以下であってもよい。さらにより好ましい実施形態では、突起部の高さは少なくとも約50ミクロンであって約250ミクロン以下であってもよい。
別の好ましい実施形態では、突起部の幅は、それらの最大幅において少なくとも約25ミクロンであって約10ミリメートル以下であってもよい。より好ましい実施形態では、突起部の幅はそれらの最大幅において少なくとも約40ミクロンであって約8ミリメートル以下であってもよい。さらにより好ましい実施形態では、突起部の幅は少なくとも約50ミクロンであって約7ミリメートル以下であってもよい。
本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも2つの突起部は舌側基底面から外向きに突出または延在していてもよく、かつ少なくとも2つの突起部は頬側基底面から外向きに突出または延在していてもよい。少なくとも2つの突起部が舌側基底面および頬側基底面の両方から突出している実施形態では、舌側基底面上の突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであってもよく、かつ頬側基底面上の突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであってもよい。
好ましい実施形態では、1つ以上の突起部は歯槽区画の二等分面に関して実質的に中心にあってもよく(但し必須ではない)、ここでは歯槽区画の二等分面は歯槽区画の近心から遠心方向に本質的に直交している。少なくとも2つの突起部が舌側基底面上に存在するさらなる好ましい実施形態では、突起部は歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置していてもよい(例えば、図4Cおよび図4Dにおいて突起部215aおよび215bによって示されている)。同様に、少なくとも2つの突起部が頬側基底面上に存在する場合、突起部は歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置していてもよい(但し必須ではない)(例えば、図4Cおよび図4Dにおいて突起部225aおよび225bによって示されている)。少なくとも2つの突起部が表面に存在する実施形態では、それらは突起部の基部においてその周囲から測定した場合に、少なくとも約25ミクロンであって約8ミリメートル以下の距離で分離されていてもよい。少なくとも2つの突起部が表面に存在するより好ましい実施形態では、それらは突起部の基部においてその周囲から測定した場合に、少なくとも約50ミクロンであって約7ミリメートル以下の距離で分離されていてもよい。少なくとも2つの突起部が表面に存在するさらにより好ましい実施形態では、それらは突起部の基部においてその周囲から測定した場合に、少なくとも約100ミクロンであって約6ミリメートル以下の距離で分離されていてもよい。
好ましい実施形態では、突起部は、舌側基底面および/または頬側基底面にある表面積の少なくとも約1%から約80%以下を占めていてもよい。より好ましい実施形態では、突起部は舌側基底面および/または頬側基底面にある表面積の少なくとも約5%から約70%以下を占めていてもよい。さらにより好ましい実施形態では、突起部は舌側基底面および/または頬側基底面にある表面積の少なくとも約10%から約50%以下を占めていてもよい。
舌側基底面にある1つ以上の突起部は、頬側基底面上に確立されているものと同じ特徴(例えば、形状、高さ、幅、間隔)に本質的に一致するかそれらを複製するように確立されていてもよい。あるいは、舌側基底面にある1つ以上の突起部は、頬側基底面上に確立されているものの特徴とは実質的に異なるように確立されていてもよい。これは、歯の位置または位置合わせの患者固有の設計必要性をより良く満たすか、義歯床の製造においてより高い効率または正確性を与えるか、あるいは向上した接着強度のためにボンディング材が義歯の人工歯と義歯床との間で占める空間のより好ましい分布または割当てを与えるために有利であり得る。例えば図6Bに示すように、歯槽区画の舌側基底面上での突起部(215a)の高さは、歯槽区画の頬側基底面上での突起部(225a)の高さよりも大きいものであるように表されている。
義歯床および義歯の作製
歯列弓形態および歯槽区画は、多くの公知の方法および材料のいずれかを用いて義歯床内に形成されていてもよい。歯列弓形態およびその中に含まれる歯槽区画を含む義歯床の最終的なサイズおよび形状は患者固有の必要性に対して決定し、かつ患者の口腔内顎構造(必要とされるものに応じて上顎および/または下顎)、口腔内イメージング、口腔外イメージングまたはそれらのいくつかの組み合わせから採得された物理的印象すなわち型から決定してもよい。義歯床は様々な耐久性のある材料から形成されていてもよい。ポリマー樹脂組成物は義歯基材を形成するのに特に適しており、当業者に公知である。CNCフライス加工プロセスを用いて作製される義歯床の場合、公知の手法は、円板すなわち「パック」の形状に固形状に硬化されたポリマー樹脂組成物を使用することである。そのような円板は、プログラムされたCNCフライス加工システムによってその円板を切り出すために患者の歯列弓の高さおよび全長の両方に対応する十分な直径および厚さで提供される。注型成形プロセスを用いて作製される義歯床のために、未硬化もしくは部分硬化ポリマー樹脂組成物(例えば、流動状、液体またはペースト状)を患者固有の予め形成された義歯床型の中に注ぎ入れるか押し込んでもよい。あるいは、付加製造(すなわち3次元印刷)プロセスを用いて作製される義歯床のために、未硬化もしくは部分硬化ポリマー樹脂組成物を、SLAもしくはDLP方式などのプログラム可能なデジタル制御される光硬化システムにおいて仮想の設計を用いて層ごとに患者固有の義歯床を形成するための3次元印刷装置の好適にサイズ決めされた樹脂バットの中に入れてもよい。
人工歯を印刷またはフライス加工された義歯床に接着するために使用される数多くの歯科用接着剤またはボンディング材が市販されている。これらは一般に、酸化還元、熱または可視光重合技術のいずれかにより硬化されるアクリル系モノマーおよび/またはプレポリマーからなる。典型的な事例では、少なくとも1種のボンディング材が歯槽区画に塗布されるか、歯表面に塗布されるか、あるいは歯の挿入の直前に両方に塗布され、歯が歯槽区画に挿入され、次いで接着プロセスを完了させるために熱および/または光が当てられる。ボンディング材は歯表面と義歯床との間の接着を形成する。溶媒とモノマーとの組み合わせを含む特別なボンディング材が歯表面を膨らませる場合に、ボンディング材と組み合わせて歯の前処理を用いることもできる。これはさらなる表面接着層を提供し、かつ一緒に全体的な接着強度を高めることができる。これらの接着剤またはボンディング材の粘度、シェードおよび着色は異なってもよく、必要に応じて選択または修正して義歯床および人工歯の所与の材料選択および/または他の患者固有の必要性に合わせてもよい。
各人工歯の基底面のサイズおよび形状が本発明の歯槽区画の少なくとも1つに受け入れられるように構成されるように、好適な予め形成された人工歯形態を設計、作製および選択してもよい。好適な人工歯形態は、外側の輪郭または形状プロファイルおよびサイズが、適当な人工歯の種類(すなわち、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯)および/または生まれつきの口腔解剖学的構造および歯列弓に沿った位置に関連する歯の番号(FDI国際歯科連盟表記法において使用されているような番号)に一致しているものである。本発明の一実施形態では、各人工歯は少なくとも1種のボンディング材により歯槽区画内に接着されてもよく、それにより各人工歯の基底面は歯槽区画内の各突起部の上に支持または設置され(各突起部上への人工歯の設置のための代表的な断面図を提供する図6Aおよび図6Bを参照)、その結果、所定の量のボンディング材が人工歯と義歯床との間に維持される。このようにして、より一貫性があり、かつ予測可能な接着層界面および各人工歯と義歯床との間に確立されている接着完全性を有する義歯を準備してもよい。
本発明の先に記載されている実施形態は、義歯床における人工歯のより一貫性があり、かつ予測可能な接着を保証することに加えて、義歯床における人工歯のより容易で、より効率的かつ信頼できる排列の必要性により良好に対処することを含む多くの異なる利点を提供し、それにより義歯作製のプロセスはより一貫性があり、あまり大きな労働力を要しないものになる。
歯槽区画内に凸状の階段状の構造(200)を確立することは、いくつかの理由のために有利であることが分かった。第1に、凸面により歯槽区画の面積を増加または拡大させることにより、より大きい接着表面がボンディング材で覆うために利用可能になり、かつ義歯床と人工歯との間でより高い接着強度を支持する。さらに凸状の構造は、凹状に形成された歯槽区画内の義歯基材の寸法の薄型化および損失を最小限に抑えるのに役立つ。そのような薄型化は有害であり、あまり堅牢でない物理的構築が原因で義歯床の歪み、破損または歯の全体破壊が生じ得る。さらに階段状の形状は、使用中に遭遇する垂直および水平の機械的応力(例えば、咬んだり咀嚼したりする場合の剪断/引裂および圧縮/臼磨の力)の両方を制限する効率的な構造的形態を提供する。この構成は歯槽における歯位置の安定性および耐久性をさらに保証する。さらに階段状の形状は、各歯槽区画内での歯のための初期の所定の巨視的規模での支持位置または排列の確立を容易にする。
歯槽区画内の舌側基底および頬側基底面の面積に関連して先に記載されている遷移する表面積(230、235、240、250)は、いくつかの意味で有利であり得る。それらの利点のうち、これらの遷移表面積は例えば製作公差に関して(除去的処理ツール公差または付加製造印刷解像度のいずれかにおいて)、歯槽区画内により必要性に対応する制限性の少ない表面プロファイルを提供してもよく、かつ/または人工歯の基底エッジまたは角に存在し得る小さい輪郭のばらつきに反して適合の容易性をさらに促進してもよい。さらに、歯槽区画のためにより好ましい耐荷重もしくは荷重分散構成を与えるためにこれらの遷移表面積を含めてもよく、それにより義歯床の時期尚早な弱化または破損を引き起こし得る歯槽区画における望ましくない局所化された機械的応力集中を減らす。
歯槽区画内の階段状の構造表面に突起部構造を含めることにより、さらなる利点を実現することができる。1つの注目すべき態様では、突起部は歯槽区画内に追加の微小規模の設置表面を提供して、技術者が歯の配置および位置決めを微調整するのをさらに助けることができる。踏面様の舌側基底面上に含められる突起部を確立して、蹴込み様の頬側基底面上に含められるあらゆる突起部とは独立して垂直の歯の位置決めの制御を助けることができる。同様に、蹴込み様の頬側基底面上に含められる突起部を確立して、踏面様の舌側基底面上に含められるあらゆる突起部とは独立して水平の歯の位置決めの制御を助けることができる。このようにして、これらの独立して確立された水平および垂直の突起部表面構造を利用して、義歯床の歯槽区画のそれぞれの中での人工歯のさらにより正確な位置決め、向きおよび位置合わせをより容易に達成することができる。さらなる態様では、突起部は、歯槽区画の階段状の表面と突起部上に設置または支持されている歯の基底面との間に所定の隙間間隔または中間間隙を保証するために、確立された制御構造を提供することができる。この所定の隙間間隔を作り出すことにより、歯槽区画を予め形成された人工歯の多様な範囲により対応させることができる。このようにして歯槽区画を、そうしなければ歯の不安定性(例えば、揺動または回転)あるいは調整不良(例えば、傾斜またはアンバランス)を生じさせる人工歯の基底面にある様々な小さい表面欠陥をより良好に受け入れて同等化または補償するように構成することができる。突起部は必要に応じて、人工歯の基底面において観察される表面欠陥/ばらつき(または恐らく歯槽区画を製造する際に観察される他の寸法限界)を最良に軽減または対応するように構成されていてもよく、このようにして、より容易で、より効率的かつ信頼できる歯排列プロセスを保証する。
突起部の数、サイズ/寸法、形状および間隔は、義歯床を設計する際に技術者によって前もって好適に選択および/または修正して特定の必要性に合わせることができる。例えば、突起部のそれぞれを表面の実質的に中心および/または歯槽区画の二等分面から等距離位置に有することは、歯槽区画内の人工歯表面のバランスの取れた、すなわち均等に分布された物理的支持を保証するのに特に有利であり得る。また、突起部を上に開示されている好ましい距離で分離させることは、階段状の構造上の突起部の間または周囲へのボンディング材の効率的な流動、分布または充填を保証するのに特に有利であり得る。さらに所定の隙間間隔は、より一貫性のある接着層界面を確立するために歯の基底面と歯槽区画との間の制御された間隙または分離を保証することができる。ここでも、突起部の数、サイズ/寸法、形状および間隔は、義歯床を設計する際に技術者によって前もって好適に選択および/または調整して特定の必要性に合わせることができる。突起部は必要に応じて、歯表面と歯槽表面との間の隙間空間を占めているボンディング材の所望の体積および/または深さ/厚さを最良に達成するように構成されていてもよい。このようにして、接着プロセスにおいてかなりの量の技術者に左右されるばらつきを減少させることができ、より予測可能、かつ信頼できる接着品質を達成することが可能になる。
但し本発明は、好ましい特徴または有利な特徴を必要とすることもなければ、全ての利点が本発明の全ての実施形態に組み込まれている必要もないことも認識すべきである。本発明についてその特定の好ましい形態を参照しながらかなり詳細に説明してきたが、本発明の範囲内で他の形態が可能である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は本明細書に含まれている好ましい形態の説明に限定されるべきではない。明示的に別段の定めをした場合を除き、添付の特許請求の範囲、要約書および図面のいずれかを含む本明細書に開示されている全ての特徴を同じ、当量もしくは同様の目的を果たす他の特徴で置き換えてもよい。従って明示的に別段の定めをした場合を除き、開示されている各特徴は一般的な一連の当量もしくは同様の特徴の1つの例にすぎない。

Claims (20)

  1. 歯列弓形態と、
    前記歯列弓形態内に凹状に形成された複数の歯槽区画であって、前記歯槽区画の1つ以上は凸面を含み、前記凸面は、階段状の構造が前記歯槽区画の舌に面している側から前記歯槽区画の頬に面している側に向かって突出し、かつ前記歯槽区画の幅を近心から遠心方向に実質的に横切るように、踏面様の舌側基底面および蹴込み様の頬側基底面を特徴とする前記階段状の構造を有する複数の歯槽区画と、
    前記階段状の構造上の位置から突出している1つ以上の突起部であって、前記位置は、
    a)前記階段状の構造の前記舌側基底面、
    b)前記階段状の構造の前記頬側基底面、
    c)前記階段状の構造の前記舌側基底面および前記階段状の構造の前記頬側基底面、
    d)前記突起部が前記舌側基底面および前記頬側基底面の両方の少なくとも一部にわたって連続的な形態で延在している前記階段状の構造の前記舌側基底面および前記頬側基底面の両方、ならびに
    e)それらの組み合わせ
    からなる群から選択される1つ以上の突起部と
    を含む、義歯のための義歯床。
  2. 前記舌側基底面は、前記舌側基底面から突出している前記突起部を除外して、その領域の全長にわたって実質的に平らである、請求項1に記載の義歯床。
  3. 前記頬側基底面は、前記頬側基底面から突出している前記突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に平らである、請求項1に記載の義歯床。
  4. 前記頬側基底面は、前記頬側基底面から突出している前記突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に凸状である、請求項1に記載の義歯床。
  5. 前記1つ以上の突起部は、少なくとも約25ミクロンであって約500ミクロン以下の高さである、請求項1に記載の義歯床。
  6. 前記1つ以上の突起部は、それらの最大幅において少なくとも約25ミクロンであって約10ミリメートル以下の幅である、請求項5に記載の義歯床。
  7. 少なくとも2つの突起部は前記舌側基底面から突出しており、かつ少なくとも2つの突起部は前記頬側基底面から突出している、請求項6に記載の義歯床。
  8. 前記舌側基底面上の前記突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであり、かつ前記頬側基底面上の前記突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さである、請求項7に記載の義歯床。
  9. 前記舌側基底面上の前記突起部および前記頬側基底面上の前記突起部は前記歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置しており、ここでは前記歯槽区画の前記二等分面は前記歯槽区画の近心から遠心方向に本質的に直交している、請求項8に記載の義歯床。
  10. 前記突起部は、前記突起部の基部においてその周囲から測定した場合に少なくとも約25ミクロンであって約8ミリメートル以下の距離で分離されている、請求項9に記載の義歯床。
  11. (a)義歯床であって、
    歯列弓形態と、
    前記歯列弓形態内に凹状に形成された複数の歯槽区画であって、前記歯槽区画の1つ以上は凸面を含み、前記凸面は、階段状の構造が前記歯槽区画の舌に面している側から前記歯槽区画の頬に面している側に向かって突出し、かつ前記歯槽区画の幅を近心から遠心方向に実質的に横切るように、踏面様の舌側基底面および蹴込み様の頬側基底面を特徴とする前記階段状の構造を有する複数の歯槽区画と、
    前記階段状の構造上の位置から突出している1つ以上の突起部であって、前記位置は、
    i)前記階段状の構造の前記舌側基底面、
    ii)前記階段状の構造の前記頬側基底面、
    iii)前記階段状の構造の前記舌側基底面および前記階段状の構造の前記頬側基底面、
    iv)前記突起部が前記舌側基底面および前記頬側基底面の両方の少なくとも一部にわたって連続的な形態で延在している前記階段状の構造の前記舌側基底面および前記頬側基底面の両方、ならびに
    v)それらの組み合わせ
    からなる群から選択される1つ以上の突起部と
    からなる義歯床と、
    (b)少なくとも1種のボンディング材と、
    (c)複数の人工歯であって、各人工歯の基底面のサイズおよび形状は前記歯槽区画の少なくとも1つに受け入れられるように構成されており、かつ各人工歯は前記少なくとも1種のボンディング材によって前記歯槽区画内に接着されており、それにより各人工歯の前記基底面は前記歯槽区画内の各突起部の上に支持され、その結果、所定の量のボンディング材が前記人工歯と前記義歯床との間に維持される複数の人工歯と、
    を含む義歯。
  12. 前記舌側基底面は、前記舌側基底面から突出している前記突起部を除外して、その領域の全長にわたって実質的に平らである、請求項11に記載の義歯。
  13. 前記頬側基底面は、前記頬側基底面から突出している前記突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に平らである、請求項11に記載の義歯。
  14. 前記頬側基底面は、前記頬側基底面から突出している前記突起部を除外して、その幅にわたって実質的に凸状であり、かつその蹴上げ高さに沿って実質的に凸状である、請求項11に記載の義歯。
  15. 前記1つ以上の突起部は、少なくとも約25ミクロンであって約500ミクロン以下の高さである、請求項11に記載の義歯。
  16. 前記1つ以上の突起部は、それらの最大幅において少なくとも約25ミクロンであって約10ミリメートル以下の幅である、請求項15に記載の義歯。
  17. 少なくとも2つの突起部は前記舌側基底面から突出しており、かつ少なくとも2つの突起部は前記頬側基底面から突出している、請求項16に記載の義歯。
  18. 前記舌側基底面上の前記突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さであり、かつ前記頬側基底面上の前記突起部のそれぞれは互いに本質的に同等の高さである、請求項17に記載の義歯。
  19. 前記舌側基底面上の前記突起部および前記頬側基底面上の前記突起部は前記歯槽区画の二等分面から実質的に等距離位置に位置しており、ここでは前記歯槽区画の前記二等分面は前記歯槽区画の近心から遠心方向に本質的に直交している、請求項18に記載の義歯。
  20. 前記突起部は、前記突起部の基部においてその周囲から測定した場合に少なくとも約25ミクロンであって約8ミリメートル以下の距離で分離されている、請求項19に記載の義歯。

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