JP2022518863A - 量子計算を実行する方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

量子計算を実行する方法は、複数のキュービットを有する量子システムを提供するステップを有する。この方法は、計算問題を量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップを有する。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、コード化は、計算問題から複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む。この方法は、N(N≧2)回の演算を実行するステップを有する。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを決定する手順を含み、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子であるか、或いは、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子である。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することにより、量子システムを発展させる手順を含む。N回の演算の各回は、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行する手順を含む。この方法は、量子計算の結果を出力するステップを有する。【選択図】図8

Description

特許法第30条第2項適用申請有り (掲載日)平成30年2月4日(掲載アドレス)https://arxiv.org/abs/1802.01157v1
本発明は、量子計算を実行する装置及び方法、より具体的には、量子システム、さらに具体的には、複数の量子ビット(キュービット)を有する量子システムを用いて、計算問題の解を計算する装置及び方法に関する。
量子計算装置は、計算問題を解くために量子力学的効果を利用する計算装置である。量子計算装置、すなわち量子コンピュータでは、情報は、例えば、量子ビット(「キュービット」)等の量子システムによって運ばれる。これは、古典的ビット、つまり0と1とで動作する従来のコンピュータとは対照的である。量子計算中に、量子システムを発展させることによって、量子ビットを処理できる。例えば、量子システムのキュービットのグループは、特定の相互作用に従って、互いに結合することができる。量子システムを発展させることにより、量子システムによって運ばれる情報は、計算を実行するために、すなわち、計算問題を解くために、処理され得る。多くの場合、量子コンピュータは、古典的コンピュータ、つまり古典的ビットで動作するコンピュータによって支援され得る。古典的コンピュータは、システム内のキュービットが量子コンピュータによってどのように処理されるかについて、量子コンピュータに指示を与えることができる。
量子計算への多くのアプローチにおいて、任意の量子計算を実行するために、長距離の相互作用を実行することが必要である。長距離の相互作用は、量子システム内で互いに遠く離れているキュービットを結合する相互作用である。このような長距離の相互作用は、実際の実現が難しいため、障害となる。一部の設定では、長距離の相互作用を一連の短距離の相互作用に置き換えることができる。しかし、これらのアプローチには、一連の短距離の相互作用が本質的にシーケンシャルであるという欠点がある。つまり、並列化できないため、量子計算の実行時間が長くなる。また、このようなシーケンスを並列化できないという事実は、このような原理に基づく量子コンピュータの拡張性を損なう可能性がある。
或いは、量子計算へのいくつかのアプローチは、短距離の相互作用のみを用いるが、これらが完全にはプログラム可能ではないという欠点を有する。つまり、このような量子コンピュータは、ある特定の計算問題を解くように調整されているという意味で制限されており、任意の計算問題を解くことはできない。
したがって、量子計算を実行するための改善された方法及び装置が必要である。
一実施形態によれば、量子計算を実行する方法が提供される。この方法は、複数のキュービットを有する量子システムを提供するステップを有する。この方法は、計算問題を量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップを有する。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンである。コード化は、計算問題から、複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む。この方法は、N≧2であるN回の演算を実行するステップを有する。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを決定する手順を含み、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子である。或いは、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子である。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することにより、量子システムを発展させる手順を含む。N回の演算の各回は、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行する手順を含む。この方法は、量子計算の結果を出力するステップを有する。
更なる実施形態によれば、量子計算を実行する装置が提供される。この装置は、複数のキュービットを有する量子システムを備える。この装置は、古典的計算システムを備える。古典的計算システムは、計算問題を入力として計算問題を受信するステップを実行するように構成されている。古典的計算システムは、計算問題を量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップを実行するように構成されている。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンである。コード化は、計算問題から、複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む。この装置は、古典的計算システムに接続された単体処理装置を備える。単体処理装置は、古典的計算システムから、複数の調整可能なパラメータの問題コード化設定を受信するステップを実行するように構成されている。単体処理装置は、問題ハミルトニアンの時間発展に従って量子システムを発展させるステップを実行するように構成されている。この装置は、古典的計算システムに接続された短距離結合装置を備え、短距離結合装置は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンの時間発展に従って量子システムを発展させるステップを実行するように構成されている。この装置は、古典的計算システムに接続された測定装置を備え、測定装置は、複数のキュービットの少なくとも一部を測定するように構成されている。古典的計算システムは、測定装置から1つ又は複数の測定結果を受信するステップを更に実行するように構成されている。古典的計算システムは、単体処理装置及び/又は短距離結合装置に指示するステップを更に実行するように構成されている。古典的計算システムは、量子計算の結果を出力するステップを実行するように構成されている。
更なる実施形態によれば、ゲート型の量子計算を実行する装置が提供される。この装置は、複数の超伝導キュービットを有する量子システムを備える。この装置は、制御装置を備える。この装置は、制御装置に接続された磁束バイアスアセンブリを備え、磁束バイアスアセンブリは、複数の調整可能な時間依存の磁束を生成するように構成された複数の磁束バイアスユニットを有し、各調整可能な時間依存性の磁束が、複数の超伝導超伝導キュービットのうちの単一のキュービットに作用する。この装置は、制御装置に接続された結合装置を備え、結合装置は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンに従って複数の超伝導キュービットを結合するように構成された少なくとも1つの超伝導量子干渉装置を有する。この装置は、制御装置に接続された測定装置を備え、測定装置は、複数のキュービットの少なくとも一部を測定するように構成されている。制御装置は、演算のシーケンスに従って量子システムを発展させるように、磁束バイアスアセンブリ及び結合装置に指示するように構成されている。制御装置は、問題ハミルトニアンの時間発展によって量子システムを発展させるように、磁束バイアスアセンブリに指示するように構成されている。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、複数の調整可能なパラメータが、計算問題をコード化する。制御装置は、短距離ハミルトニアンの時間発展に従って量子システムを発展させるように、結合装置に指示するように構成されている。
実施形態は、開示されたシステム及び装置を操作するための方法、並びに、本明細書に記載の実施形態に係る前記方法を実行するための開示されたシステムの使用を対象としている。
本明細書に記載の実施形態と組み合わせることができる更なる利点、特徴、態様及び詳細は、従属請求項、明細書及び図面から明らかである。
当業者への完全且つ実施可能な開示は、添付図面への参照を含む本明細書の残りの部分でより具体的に説明されている。
本明細書に記載の実施形態に係る複数のキュービットを有する量子システムの例を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る複数のキュービットを有する量子システムの例を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る複数のキュービットを有する量子システムの例を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る単体ハミルトニアンの概念を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る格子の基本距離の概念を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る短距離ハミルトニアンの例を示す。 本明細書に記載の実施形態に係るユニタリ演算子の積の深さの概念を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る量子計算装置を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る、問題ハミルトニアンへの計算問題の具体的なコード化を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る、問題ハミルトニアンへの計算問題の具体的なコード化を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る、問題ハミルトニアンへの計算問題の具体的なコード化を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る、問題ハミルトニアンへの計算問題の具体的なコード化を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 明細書に記載の実施形態に係る短距離ユニタリ演算子の具体的な実施形態を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る補助粒子のシャトリング(shuttling)の概念を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る補助粒子のシャトリング(shuttling)の概念を示す。 本明細書に記載の実施形態に係る補助粒子のシャトリング(shuttling)の概念を示す。
ここで、種々の例示的な実施形態を詳細に参照し、そのうちの1つ又は複数の例を各図に示す。各例は説明のために提供されており、限定を意味するものではない。例えば、1つの実施形態の一部として図示又は説明されている特徴は、他の実施形態において又は他の実施形態と組み合わせて用いられることで、更なる実施形態をもたらすことができる。本明細書の開示は、このような改良や変形を含むことが意図されている。
以下の図面の説明において、同一の参照符号は同一の構成要素を指している。一般に、各実施形態については相違点のみを説明する。図面に示されている構造は、必ずしも実際の縮尺で描かれているわけではなく、実施形態を理解し易くするために誇張された描写を含む場合がある。
本明細書に記載の実施形態は、複数のキュービットを有する量子システムを含む。本明細書に記載のように、キュービットは、量子力学2準位システム(quantum mechanical two-level system)である。キュービットは、起こり得るキュービットの量子状態を表す2つの量子基底状態(quantum basis states)|0>及び|1>を有することができる。量子力学の重ね合わせの原理によれば、a|0>+b|1>の形式の全ての重ね合わせが、キュービットに起こり得る量子状態である。上記のa及びbは複素数である。数学的には、キュービットは2次元のベクトル空間で表すことができる。複数のキュービットは、複数のキュービットの各キュービットが量子状態|0>又は量子状態|1>のいずれかにある形態に対応する量子基底状態を有することができる。例えば、5つのキュービットを考えると、5つのキュービットの例示的な量子基底状態は、|0 0 1 0 1>であり得る。量子状態|0 0 1 0 1>は、第1、第2及び第4キュービットが量子状態|0>にあり、第3及び第5キュービットが量子状態|1>にある形態を表している。m個の複数のキュービットの場合、2通りの量子基底状態が存在する。重ね合わせの原理を考慮すると、複数のキュービットに対して2通りの量子状態を考えると、量子基底状態の重ね合わせも複数のキュービットに対する量子状態になる。例えば、a、b及びcの複素数を有するa|00101>+b|11110>+c|11111>の形式の重ね合わせは、複数のキュービットの量子状態である。数学的には、m個の複数のキュービットで構成される量子システムは、2次元のベクトル空間で表すことができる。
本明細書に記載のように、複数のキュービットは、複数の超伝導キュービット(例えば、トランスモン(transmon)キュービット又は磁束キュービット)を含んでもよいし、又は複数の超伝導キュービットから構成されてもよい。超伝導キュービットは、一次及び二次超伝導ループを含んでもよい。一次超伝導ループ内をそれぞれ時計回り及び反時計回りに伝搬する超伝導電流は、超伝導キュービットの量子基底状態|1>及び|0>を形成可能である。更に、二次超伝導ループを通る磁束バイアスは、量子基底状態|0>及び|1>を結合可能である。
別の態様として、本明細書に記載の量子システムは、トラップされたイオンのシステムを用いて実現してもよい。この場合、キュービットの量子基底状態|0>及び|1>は、ゼーマン若しくは超微細マニホールドの2段階によって形成されるか、又はCa40+等のアルカリ土類イオン若しくはアルカリ土類のように正に帯電したイオンの禁止された禁制光学遷移(forbidden optical transition)を横切って形成される。
更に別の態様として、本明細書に記載の量子システムは、レーザフィールドから光格子又は間隔の広い格子にトラップされた、超低温の中性アルカリ原子等の超低温原子を用いて実現してもよい。上記の原子は、レーザ冷却を用いて基底状態に向かって発展することができる。キュービットの量子基底状態は、原子の基底状態及び高位のリュードベリ状態(high-lying Rydberg state)によって形成される。キュービットは、レーザ光によって扱うことができる。
更に別の態様として、本明細書に記載の量子システムは、量子ドットを用いて実現してもよい。量子ドットキュービットは、GaAs/AlGaAsヘテロ構造から製造してもよい。キュービットは、スピン状態でコード化され、スピン状態は、ポテンシャルを単一井戸型から二重井戸型に断熱的に調整することで作成すればよい。
更に別の態様として、本明細書に記載の量子システムは、ダイヤモンド結晶の点欠陥であるNVセンター等の固体結晶中の不純物を用いて実現してもよい。他の不純物、例えば、クロム不純物に関係する色中心、固体結晶の希土類イオン、又は炭化ケイ素の欠陥中心については調査中である。NVセンターは、2つの不対電子を有し、スピン1基底状態(spin-1 ground state)を与える。スピン1基底状態により、場合によっては周囲の核スピンと共に、キュービットを実現するために使用できる、長寿命の2つの鋭い欠陥レベルの識別が可能になる。
実施形態によれば、量子システムは、1つ以上又は複数の個別のq段階量子システムを有してもよい。qは定数であり得る。例えば、qは2~8の範囲内(例えば、3、4、5又は6)にある。個別のq段階量子システムは、q状態|0>,|1> ,・・・|q-1>から構成される基底を有してもよい。個別の3段階量子システムは、「キュートリット」と称される。
量子システムのハミルトニアンは、量子システムの単一の相互作用又は複数の相互作用を表すことができる。ハミルトニアンは、量子システムに作用する演算子である。ハミルトニアンの固有値は、量子システムのエネルギースペクトルに対応する。ハミルトニアンの基底状態は、最小のエネルギーを有する量子システムの量子状態である。ハミルトニアンの基底状態は、零度での量子状態であってもよい。
本明細書に記載の実施形態は、量子システムに作用するユニタリ演算子の概念を含む。ユニタリ演算子は、量子システムに作用する演算子(行列)である。ユニタリ演算子は、量子システムのコヒーレントな時間発展に対応する。量子システムが最初に状態|Ψ>にある場合、ユニタリ演算子Uによって量子システムを発展させることは、ユニタリ演算子が実行された後の量子システムの状態がU|Ψ>であることを意味する。Hが量子システムのハミルトニアンである場合、演算子exp(itH)はユニタリ演算子である。ここで、tは時間パラメータであり、exp(・)は指数関数である。exp(itH)の形式のユニタリ演算子は、本明細書では、ハミルトニアンHによるユニタリ時間発展と称される。実施形態によれば、量子システムは、ハミルトニアン(例えば、本明細書に記載されている問題ハミルトニアン)のユニタリ時間発展によって発展することができる。ハミルトニアンHのユニタリ時間発展exp(itH)によって量子システムを発展させることは、複数のキュービット間の相互作用をオンにすることを含んでもよく、相互作用はハミルトニアンHによって定義される。相互作用は期間tの間オンにすることができる。相互作用は、期間tが経過した後にオフにすることができる。
いかなる現実的なシステムにおいても、少なくとも少量のノイズが常に存在する。したがって、本明細書に記載の問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展又は短距離ユニタリ演算子等のユニタリ演算子は、100%の精度で実行することができない。「ユニタリ演算子」という用語は、小さな誤差範囲内で実行されるユニタリ演算子、すなわち、少量のノイズの存在下で実行されるユニタリ演算子も包含することを理解されたい。
古典的計算システムは、本明細書に記載のように、古典的ビットで作動する計算システムを指す場合がある。古典的計算システムは、古典的ビットで情報を処理する中央処理装置(CPU) 及び/ 又は古典的ビットで情報を記憶する記憶装置を有してもよい。古典的計算システムは、パーソナルコンピュータ(PC)等の、1つ又は複数の従来型コンピュータ及び/又は従来型コンピュータのネットワークを有してもよい。
本明細書に記載の実施形態は、ゲート型の量子計算に関する。本明細書に記載の方法は、ゲート型の量子計算を実行する方法であってもよい。本明細書に記載の装置は、ゲート型の量子計算を実行する装置であってもよい。ゲート型の量子計算又はデジタル量子計算は、量子計算がユニタリ演算子のシーケンスによって駆動される計算方法を指す。ゲート型の量子計算は、他のアプローチ、例えば、量子計算が断熱発展又は測定のシーケンスによってそれぞれ駆動される、断熱量子計算(量子アニーリング)又は測定型の量子計算と区別される。
理解し易くするために、しかし、範囲を限定することを意図することなく、以下に、本開示で提供される量子計算方法の概要を与える。その後、実施形態の詳細な説明を提供する。
本明細書に記載の量子計算方法は、計算問題の解を計算するように設計されている。計算問題は、例えば、巡回セールスマン問題又はイジングスピンモデル問題であり、何れもNP困難問題である。
この方法は、複数のキュービット、例えば、2次元格子上に配置された複数の超電導キュービットを有する量子システムを提供することを含む。
この方法は、N回の演算を実行することを含む。各回において、量子システムは、ユニタリ演算子の特定のファミリーFから取得されたユニタリ演算子のシーケンスに従って発展する。各回で、ユニタリ演算子のシーケンスによって量子システムを発展させた後、量子システムの測定を実行することができる。測定が実行された後、次の回の演算で量子システムに適用されるユニタリ演算子のシーケンスが決定される。次の回のユニタリ演算子のシーケンスは、現在の回のユニタリ演算子のシーケンスと異なる場合があるし、現在の回のユニタリ演算子のシーケンスと同じ場合がある。
ユニタリ演算のどの特定のシーケンスが各回に適用されるかは、アルゴリズムの設計に応じたいくつかの側面に依存し得る。場合によっては、ある1回の演算に適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスは、前回の演算で実行された1つ又は複数の測定の結果に依存することがある。換言すれば、この方法は、ある1回の演算から次の回の演算への情報のフィードフォワードを含むことができ、前回に得られた測定結果が、次の回に適用するユニタリ演算を決定するために用いられる。
各回のユニタリ演算子が選択されるファミリーFは、2種類の演算子、すなわち、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展と、短距離ユニタリ演算子の積と、を含む。
本明細書に記載の問題ハミルトニアンは、解くべき計算問題をコード化する単体ハミルトニアンである。すなわち、計算の初期(「前処理」)段階で、解くべき計算問題は、古典的計算システムによって、問題ハミルトニアンにマッピング可能である。問題ハミルトニアンを設計するためのいくつかのアプローチを提供できる。例えば、問題ハミルトニアンは、Hp r o b=Σσ (k)の形式を有することができる。ここで、σ (k)は、複数のキュービットのうちのk番目のキュービットに作用するパウリ演算子であり、各Jは、1つ又は複数の外部実体(external entities)、例えば、磁場によって決定される調整可能なパラメータであり、これは、キュービットk毎に個別に調整できる。例えば、Jは、k番目のキュービットに影響を与える調整可能な磁場の強度であってもよい。複数の調整可能な外部実体、例えば、磁場であって、各調整可能な外部実体が複数のキュービットのうちの1つのキュービットに影響を与えるものを提供できる。外部実体を調整することにより、計算問題に応じてパラメータJを調整可能である。
短距離演算子は、互いに近接しているキュービットのグループ間の相互作用、例えば、2次元格子上に配置された最近傍キュービット間の相互作用を伴う。問題ハミルトニアンと異なり、短距離ユニタリ演算子は、計算問題から独立していてもよい。
本発明者らは、ファミリーFが、ファミリーFから取得されたユニタリ演算子の少なくとも1つのシーケンスが存在するという特性を有する結果、量子システムが、ユニタリ演算子の前記シーケンスに従って発展すると、測定されると計算問題の解を明らかにする量子状態をもたらすことを見出した。先験的に、ユニタリ演算子のどの特定のシーケンスが問題の特性を有するのかが明らかでない場合がある。本開示の側面によれば、ユニタリ演算子の適切なシーケンスは、ファミリーFからのユニタリ演算子の異なるシーケンスが実行されるいくつかの回の演算を実行することによって、ファミリーF内で検索される。したがって、反復プロセス又は変分法が提供される。十分に長い時間実行されると、このプロセスは、測定されたときに計算問題の解を提供するターゲット量子状態をもたらす。
上記に照らして、一実施形態によれば、量子計算を実行する方法が提供される。この方法は、複数のキュービットを有する量子システムを提供するステップを有する。この方法は、計算問題を量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップを有する。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンである。コード化は、計算問題から、複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む。この方法は、N≧2であるN回の演算を実行するステップを有する。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを決定する手順を含み、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子である。或いは、シーケンス内の各ユニタリ演算子は、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子である。N回の演算の各回は、ユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することにより、量子システムを発展させる手順を含む。N回の演算の各回は、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行する手順を含む。この方法は、量子計算の結果を出力するステップを有する。
したがって、本明細書に記載の実施形態によれば、量子システムを用いて、NP困難問題等の計算問題の解を決定することが可能になる。古典的計算システムのみを用いて、すなわち量子システムを用いずに計算問題の解を決定する場合と比較すると、本明細書に記載の実施形態では、計算問題を解くのに必要な計算時間を短縮することができる。換言すれば、古典的計算システムと比較して、本明細書に記載の実施形態では、計算問題をより速く解くことが可能となり、又は解の計算が古典的計算システムで計算するには時間がかかりすぎるような解であっても見つけることが可能になるかも知れない。
更なる利点は、問題ハミルトニアンHが単体ハミルトニアンであるという側面に関連する。問題ハミルトニアンHが単体ハミルトニアンであるため、問題ハミルトニアンの時間発展exp(itH)は、積U・・・の形式を有する演算子である。ここで、各Uはi番目のキュービットのみに作用する、すなわち、i番目のキュービット以外のキュービットには作用しない演算子である。換言すれば、時間発展exp(itH)は、単体演算子の積である。他の種類の問題ハミルトニアン、特にキュービットの大きなグループ間の相互作用又は互いに離れているキュービット間の相互作用(長距離の相互作用)を伴う問題ハミルトニアンは、実行不可能であるか、或いは、少なくとも量子システム及び量子計算を行う構成要素の非常に複雑なセットアップを必要とする場合がある。一方、本明細書に記載のように、単体の問題ハミルトニアンの時間発展は、非常に単純なセットアップ、すなわち、非常に単純な量子処理装置を用いて実現可能である。
更に別の利点として、調整可能なパラメータを有する本明細書に記載の実施形態の問題ハミルトニアンは、広範囲の計算問題をコード化することができる完全にプログラム可能なシステムを提供する。したがって、本明細書に記載の実施形態に係る装置及び方法により、NP困難問題等の広範囲の計算問題の解を計算することが可能になる。問題ハミルトニアンによって必要とされる特定の相互作用がシステムのハードウェアに組み込まれているため、限られた数の問題しかコード化できないシステムと比較すると、柔軟性が向上した非常に強力な装置及び方法が提供される。
更なる別の利点は、本明細書に記載されているように、ユニタリ演算子のシーケンスが、短距離演算子の積を伴うという側面に関する。短距離演算子を有することで、離れたキュービット間の相互作用を設計する必要がないという利点が得られる。これもまた、量子システム上で実現することが不可能であるか、或いは、少なくとも量子処理装置の非常に複雑なセットアップを必要とする可能性がある長距離の相互作用を必要とする量子発展と大いに異なる。
本明細書に記載の実施形態は、計算問題の解を計算するための拡張可能なアーキテクチャを提供する。所定の量子システムでは、特定の最大サイズの多種多様な計算問題の解を計算することができる。最大サイズは、量子システムのキュービットの数によって決定される。この最大サイズを超える計算問題の解を計算するために、より大きな量子システム、すなわち、より多くのキュービットを有する量子システムを、本明細書に記載の実施形態に係る対応する問題ハミルトニアンと共に提供することで、より大きなサイズの計算問題を処理することができる。したがって、適度に多くのキュービットを有する量子システムを選択することにより、任意の所望サイズの計算問題について解を計算することができる。本明細書に記載されているように、量子システムのキュービットの数に関係なく、問題ハミルトニアンは単体ハミルトニアンであり、量子システムが発展するユニタリ演算子のシーケンスには、問題ハミルトニアンの時間発展及び/又は短距離ユニタリ演算子の積が含まれる。したがって、計算問題の解を計算する拡張可能なアーキテクチャが提供される。
本明細書に記載の実施形態によれば、量子システムは、複数のキュービットを有することができる。複数のキュービットは、少なくとも3つのキュービット、特に少なくとも8つのキュービットを含んでよい。追加的に又は代替的に、複数のキュービットは、K個のキュービットを含んでよい。Kは、100以上(例えば、100~10000)であり、好ましくは10000よりも大きい。本明細書に記載の図に示される複数のキュービットは、図示の便宜や説明する目的のために示されているだけであり、実際のキュービットの数は、そこから逸脱する可能性があることを理解されたい。
量子システムの複数のキュービットは、平面であるか又は曲率を含む2次元表面に沿って配置されてもよい。図1~3は、本明細書に記載の実施形態に係る複数のキュービット100の異なる空間的配置を示す。これらの空間的配置は、量子計算装置、例えば、キュービット及び/又は他の個別の量子システム(キュートリットのようなq段階システム)が統合された量子チップのレイアウトであってもよい。図1に示すように、複数のキュービット100は、図1に破線で示す2次元の平面的な表面110に沿って配置されてもよい。図1に示す2次元表面110は、複数のキュービットの2次元の空間的配置を視覚的に表現する目的で描かれており、2次元表面110は、複数のキュービット100が配置された物理的で有形の表面である必要がないことを理解されたい。以下に説明するように、複数のキュービットが2次元格子に沿って配置される実施形態にも同様の考えが適用される。
更なる実施形態によれば、図2に示すように、複数のキュービット100は、破線で示される2次元格子120又は少なくともその一部に沿って配置されてもよい。例えば、 2次元格子のような格子は、規則的なグリッドに沿って空間的に配置された複数のノードを含み得る。図2において、複数の黒い点で表された複数のキュービット100は、2次元格子120のノードに対応する。図2に示すように、複数のキュービット100の各キュービットは、2次元格子120のノードに配置されてもよい。図2に示す例示的な実施形態では、2次元格子120は、2次元正方格子である。代替の実施形態によれば、2次元格子120は、例えば、六方格子若しくは三角格子、又は他の任意の種類の2次元格子であり得る。
2次元格子は平面的な構造であり、例えば、3次元格子又はいくつかの不規則な空間的配置と比較して、キュービットのより単純な空間的配置を提供するという利点を有する。
実施形態によれば、複数のキュービットは、2次元格子の一部に沿って配置されてもよい。図3は、複数のキュービット100が2次元格子の三角形部分121に沿って配置されている例示的な実施形態を示している。三角形の部分は、本明細書に記載の方法を実行するように構成されたいくつかの実施形態に係る量子計算装置のレイアウトに対応する。異なる形状を有する格子の部分もまた考えることができる。
実施形態によれば、複数のキュービットは、2次元格子に沿って配置されてもよい。
いくつかの実施形態によれば、計算問題は決定問題であってもよい。決定問題は、イエスかノーかを問う質問として定式化された計算問題を指す。決定問題の解は、「イエス」か「ノー」のいずれかである。或いは、決定問題の解は、1つの古典的ビット、すなわち、0か1のいずれかであってもよい。他の実施形態によれば、計算問題は、決定問題と異なる態様で定式化されてもよい。
計算問題は、例えば、コンピュータ科学、物理学、化学又は工学の分野で考えられる種々の計算問題のうちのいずれか1つであってもよい。範囲を限定することを意図したものではなく、説明目的で、3つの計算問題の例を以下で検討する。以下で検討する3つの例は、決定問題の例である。
本明細書に記載の実施形態に係る計算問題の第1の例は、「巡回セールスマン問題」である。巡回セールスマン問題は、都市の第1リストと、第1リストの中の各2都市間の距離の第2リストとを伴う。巡回セールスマン問題では、次の質問がなされる。「第1リスト、第2リスト及び定数Kが与えられた場合に、セールスマンが(i)第1リスト中の各都市を必ず一度だけ訪問し、(ii)巡回開始時の都市に戻るという条件で、最大Kの巡回距離は存在するのか?」
本明細書に記載の実施形態に係る計算問題の第2の例は、数学的グラフの彩色に関する「3彩色問題」である。数学的グラフには、頂点のセットと、2つの頂点を結ぶ辺のセットとが含まれる場合がある。数学的グラフの3彩色では、数学的グラフの各頂点が3色(例えば、「赤」、「緑」、「青」)のいずれかに割り当てられる。この際、辺で結ばれるいずれの2つの頂点にも異なる色が割り当てられる。いくつかの数学的グラフでは、3彩色が存在しないかも知れない。3彩色問題では、「数学的グラフが与えられた場合に、3彩色は存在するのか?」という質問がなされる。
本明細書に記載の実施形態に係る計算問題の第3の例は、イジングスピンモデルに関する。イジングスピンモデルは、複数のスピンs,s,・・・,s間の相互作用を表す物理モデルである。各スピンsは、1か-1のいずれかの値を有する変数であり、iは1からnまでの値である。複数のスピンの場合、イジングエネルギー関数H(s,s,・・・s)を考えることができる。イジングエネルギー関数は以下の形式を有する。
H(s,s,・・・s)=Σijij+Σ
ここで、各cijは結合係数であり、各cはフィールド係数である。イジングエネルギー関数は、対相互作用(pair-wise interactions)を伴う。スピンsとsとの間の対相互作用は、イジングエネルギー関数中の項cijで表される。結合係数cijの絶対値は、スピンsとsとの間の対相互作用の強度を反映している。結合係数cijの符号は、例えば、強磁性又は反強磁性の相互作用等の対相互作用の性質を反映している。イジングスピンモデルは、長距離イジングスピンモデルであってもよい。長距離イジングスピンモデルは、距離測度に応じて互いに離れているスピンの対間の相互作用を含んでもよい。長距離イジングスピンモデルは、少なくとも2つのスピン間の最大距離の対数である距離を隔てて互いに離れているスピンの対間の相互作用を含んでもよい。いくつかの長距離イジングスピンモデル、例えば、全対全イジングスピンモデル(all-to-all Ising spin models)は、スピンの全ての対間の相互作用を伴ってもよい。例えば、各結合係数cijが零でないイジングスピンモデルは、長距離イジングスピンモデルと見なすことができる。
イジングエネルギー関数は、スピンsとスピンsに影響を与えるが他のスピンには影響を与えない外部フィールドとの間の相互作用を表す項cを更に含む。スピンsに影響を与えるフィールドの強度と方向は、それぞれフィールド係数cの絶対値と符号で表される。イジングスピンモデルに関連する計算問題(本明細書では、イジングスピンモデル問題と称される)は、次のように定式化できる。「結合係数cijのセット、フィールド係数cのセット及び定数Kが与えられた場合に、H(s,s,・・・s)がKよりも小さくなるようなスピンの形態(s,s,・・・s)は存在するのか?」
本明細書に記載の実施形態によれば、計算問題は、複数の入力変数を含んでもよい。複数の入力変数は、解くべき計算問題に関する情報を表すことができる。例えば、前述の3つの計算問題の例を参照すると、複数の入力変数は、巡回セールスマン問題の場合、都市の第1リスト及び距離の第2リストを含み、3彩色問題の場合、グラフの頂点及び辺のセットを含み、イジングスピンモデル問題の場合、結合係数cij及びフィールド係数cのセットを含むことができる。
本明細書に記載のように、計算問題のサイズは、計算問題を特定するために必要とされる古典的情報単位の数の大きさを指してもよい。計算問題のサイズは、計算問題の入力変数の数に依存してもよい。計算問題のサイズは、入力変数の数が増えるに従って増加してもよい。計算問題のサイズは、入力変数の数と等しくてもよい。例えば、本明細書に記載のように、巡回セールスマン問題の場合、前記サイズは、第1リストと第2リストの長さの総和を指してもよい。更なる例として、イジングスピンモデル問題の場合、前記サイズは、スピンsの数nを指してもよい。
問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンである。量子システムの単体ハミルトニアンは、2つ以上のキュービットのグループ間で相互作用が生じないハミルトニアンを指す場合がある。単体ハミルトニアンは、複数の被加数ハミルトニアン(summand Hamiltonians)の総和であってもよい。各被加数ハミルトニアンは、複数のキュービットのうちの1つのキュービットに作用することができる。単体ハミルトニアンは、H=Σの形式を有してもよい。各Hは、i番目のキュービットのみに作用する被加数ハミルトニアンである。単体ハミルトニアンは、複数のキュービットと磁場又は電場等の外部実体との間の相互作用を表してもよい。この場合、各キュービットは外部実体と個別に相互作用する。
図4は、本明細書に記載の実施形態に係る単体ハミルトニアンの概略図を示す。範囲を限定することを意図することなく具体性を持たせるため、図4に示す複数のキュービットは、三角形を形成する2次元正方格子の一部分に配置された10個のキュービット、すなわち、キュービット201~210を含む。図4を参照して説明する単体ハミルトニアンは、10個の被加数ハミルトニアン221~230の総和である。図4において、各被加数ハミルトニアン221~230は、各被加数ハミルトニアンが1つのキュービットに作用することを示すため、1つのキュービットを囲む正方形として概略的に図示している。
単体ハミルトニアンである問題ハミルトニアンは、前述の被加数ハミルトニアンの総和であってもよい。問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータは、被加数ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータを含んでもよい。単体ハミルトニアンの1つ又は複数の被加数ハミルトニアン、特に各被加数ハミルトニアンは、1つ又は複数の調整可能なパラメータを含んでもよい。
本明細書に記載のように、問題ハミルトニアンの調整可能なパラメータは、複数のキュービットのうちの1つのキュービットと外部実体との間の相互作用の強度及び/又は方向を表すパラメータを指してもよい。外部実体は、フィールドの場合がある。外部実体は、例えば、1つ又は複数の磁場、1つ又は複数の電界、1つ又は複数のレーザフィールド、1つ又は複数のマイクロ波、機械的変形からの1つ又は複数の位相シフトのうちの少なくとも1つを含んでもよい。問題ハミルトニアンの調整可能なパラメータを調整することは、外部実体を調整することによって、及び/又は、キュービットと外部実体との間の相互作用の強度及び/又は種類を調整することによって、実現することができる。したがって、調整可能なパラメータは、量子システムのハードウェアに組み込まれていない相互作用等の調整可能な相互作用を表すことができる。
実施形態によれば、問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する。問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータは、複数のキュービットに作用する単体フィールドの複数のフィールド強度及び/又は複数のフィールド方向を含んでもよい。複数のキュービットに作用する単体フィールドは、例えば、超伝導キュービットに関する実施形態において、1つ又は複数の磁場、及び/又は、1つ又は複数の電場を含んでもよい。
単体フィールドは、複数のキュービット内の1つのキュービットに影響を与えるフィールドを指してもよい。複数の単体フィールドは、異なり得るフィールド強度及び/又は異なり得るフィールド方向に従って、対応するキュービットに影響を与える異なる単体フィールドを含んでもよい。例えば、第1の単体フィールド及び第2の単体フィールドは、複数のキュービット内において、それぞれ、第1のキュービット及び第2のキュービットに影響を及ぼし得る。この場合、第1の単体フィールド及び第2の単体フィールドは、両方とも例えば磁場であり、異なるフィールド強度及び/又はフィールド方向を有してもよい。
問題ハミルトニアンは、Σσ (k)の形式を有してもよい。σ (k)は、複数のキュービットのうちのk番目のキュービットのパウリ演算子であり、各Jは係数であり、係数Jは、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータを形成する。いくつかの実施形態によれば、パウリ演算子σ (k)は、第1の空間方向に関連するパウリ演算子であってもよい。
複数の超伝導キュービットを有する量子システムの場合、例えば、問題ハミルトニアン等の単体ハミルトニアンは、複数の超伝導キュービットと相互作用する複数の磁束によって実現できる。磁束又は磁束バイアスは、超伝導キュービットの一次超伝導ループを通り、二次超伝導ループも通って広がる可能性がある。問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータは、複数の磁束又は磁束バイアスを調整することで調整可能である。
或いは、複数の超伝導キュービットを有する量子システムの場合、単体ハミルトニアンは、複数の超伝導キュービットと相互作用する複数の電荷によって実現できる。問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータは、複数の電荷バイアス場を調整することで調整可能である。
トラップされたイオンで実現される量子システムの場合、各イオンを空間的に分離するか、又は、エネルギーで分離することにより対処可能である。空間的分離の場合は、音響光学偏向器、音響光学変調器、マイクロミラーデバイス等を通過した、及び/又は、これらから反射されたレーザビームの使用を伴う。エネルギーでの分離の場合は、内部遷移周波数を変化させる磁場勾配の使用を伴い、これにより、エネルギーの違い、すなわち、印加されたフィールドの離調(detunings)による選択が可能になる。単体ハミルトニアンは、内部遷移とのレーザフィールド若しくはマイクロ波の共鳴又は非共鳴によって、又は空間的な磁場の違いによって実現可能である。
量子ドットで実現される量子システムの場合、単体ハミルトニアンは電場で実現できる。
NVセンターで実現される量子システムの場合、マイクロ波パルスを適用した磁気共鳴を用いて、キュービットの状態をナノ秒の時間尺度でコヒーレントに操作可能である。キュービットの状態の選択的な操作は、すぐ近くの核スピンの状態を条件として達成することもできる。
本明細書に記載されるように、計算問題は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータの問題コード化設定上にマッピングされてもよい。問題コード化設定は、計算問題に関する情報に依存してもよいし、及び/又は、その情報を含んでもよい。問題コード化設定を決定する動作は、複数の調整可能なパラメータのそれぞれの値を決定する及び/又は計算することを含んでもよい。各値は、計算問題に基づいて決定及び/又は計算することができる。計算問題を問題ハミルトニアンの調整可能なパラメータの問題コード化構成にコード化する特定のコード化の例を以下で説明する。
異なる計算問題は、対応する異なる問題コード化設定を決定することにより、問題ハミルトニアンにコード化され得る。例えば、第1の計算問題及び第2の計算問題は、問題ハミルトニアンにコード化され、複数の調整可能なパラメータに対する第1の問題コード化設定及び第2の問題コード化設定につながる。第2の計算問題が第1の計算問題と異なる場合、調整可能なパラメータの第2の問題コード化設定は、第1の問題コード化設定と異なる可能性がある。
本明細書に記載の実施形態に係る方法は、計算問題又は少なくとも計算問題に関する情報を古典的計算システムに提供することを含んでもよい。例えば、本明細書に記載のように、計算問題の複数の入力変数は、古典的計算システムに提供されてもよい。実施形態によれば、計算問題は、古典的計算システムによって、複数の調整可能なパラメータの問題コード化設定でコード化されてもよい。
本明細書で使用する用語「短距離ユニタリ演算子」は、複数のキュービットのうちキュービットのサブグループのみに作用するユニタリ演算子を指し、キュービットのサブグループ内の任意の2つのキュービットは、最大でも量子システムの相互作用遮断距離だけ互いに離れている。短距離ユニタリ演算子は、キュービットのサブグループ外のキュービットには作用しない。キュービットのサブグループは、1つ又は複数のキュービットを含む場合がある。数学的には、短距離ユニタリ演算子は、以下の形式を有する。
Figure 2022518863000002
ここで、U’はキュービットのサブグループに作用するユニタリ演算子であり、Iはキュービットのサブグループ外の全てのキュービットに作用する恒等演算子(identity operator)である。
量子システム内のキュービットの数に関わらず、量子システム内の2つのキュービットのみに作用するユニタリ演算子が、短距離ユニタリ演算子として考慮されなければならない。前記2つのキュービットは、量子システムの隣接するキュービット(「最近接」(nearest-neighbor)キュービット)である。2次元格子上に配置された複数のキュービットの場合、2つの隣接するキュービット間の距離は、2次元格子の基本距離(格子定数)に等しくてもよい。
量子システム内のキュービットの数に関わらず、量子システムの1つのキュービットに作用するユニタリ演算子、例えば、i番目のキュービットに作用し、量子システムの他のキュービットに作用しないユニタリ演算子は、短距離ユニタリ演算子と見なされる。
本明細書に記載のように、相互作用遮断距離は、一定の距離であってもよい。相互作用遮断距離は、複数のキュービット内のキュービット間の最大キュービット距離よりも非常に小さくてもよい。例えば、相互作用遮断距離は、最大キュービット距離の30%以下、具体的には20%以下、より具体的には10%以下であってもよい。格子に沿って配置された複数のキュービットの場合、短距離ユニタリ演算子は、r範囲のユニタリ演算子であってもよい。r範囲のユニタリ演算子は、複数のキュービットのうちキュービットのサブグループのみに作用するユニタリ演算子であり得る。キュービットのサブグループ内のキュービットの任意の対は、最大で格子の基本距離(格子定数)のr倍の距離だけ互いに離れている。例えば、rは1~5であり、例えば、r = √2,2,3,4又は5である。
本明細書に記載の実施形態に係る格子の基本距離の概念を図5に示す。図5は、2次元正方格子120に沿って配置された複数のキュービット100を示す。キュービットは、2次元正方格子の三角形部分を形成する2次元正方格子のノードの位置にある。範囲を限定することを意図することなく具体性を持たせるため、図5に示す例示的な2次元正方格子120は、10行10列からなる10×10正方格子内に三角形状に配置された55個のキュービットを含む。例えば、点線で示す行391のように、X方向310に沿った2次元格子120のキュービットの任意の行を検討した場合、その行において連続するキュービットは、互いに基本距離Dだけ離れて配置されており、これをX方向の格子定数ともいう。基本距離Dは、参照符号350で示されている。同様に、例えば、列392のように、Y方向320に沿った2次元格子120のキュービットの任意の列を検討した場合、その列において連続するキュービットは、基本距離だけ離れて配置されており、これをY方向の格子定数ともいう。図5では、格子は正方格子であり、X方向及びY方向の基本距離(格子定数)は同じである。しかしながら、X方向及びY方向の格子定数が異なることもある。図示のように、X方向310は、Y方向320に対して垂直である。
図5に示す複数のキュービット100の最大キュービット距離は、キュービット301と302との間の距離である。最大キュービット距離は、(9√2)Dに等しい。相互作用遮断距離は基本距離Dに等しい。したがって、相互作用遮断距離は、最大キュービット距離よりも非常に小さい。すなわち、相互作用遮断距離Dは、最大キュービット距離の10%未満である。
図5を参照すると、短距離ユニタリ演算子の例は、ユニタリ演算子366である。ユニタリ演算子36は、2体ユニタリ演算子(2-body unitary operator)である。ユニタリ演算子36は、量子システム内の2つのキュービット362及び364のみに作用する。 2つのキュービット362及び364は、格子上で隣接するキュービットである。キュービット362と364との間の距離は、基本距離Dに等しい。
図5を参照すると、短距離ユニタリ演算子の更なる例は、演算子368である。演算子368は、図示のように、量子システムの1つのキュービットに作用する。演算子368は、単体ユニタリ演算子である。
実施形態によれば、複数のキュービットは、2次元格子に沿って配置される。N回の演算のそれぞれの各短距離ユニタリ演算子は、2次元格子の隣接するキュービットに作用する2体ユニタリ演算子又は単体ユニタリ演算子のいずれかであり得る。
本明細書に記載のように、2体ユニタリ演算子は、複数のキュービットのうち最大2つのキュービットを含むサブグループのみに作用するユニタリ演算子を指す。2体ユニタリ演算子は、キュービットのサブグループ外のキュービットには作用しない。数学的には、2体ユニタリ演算子は、U=U’(X)Iの形式を有する。ここで、U’はキュービットのサブグループに作用するユニタリ演算子であり、Iはキュービットのサブグループ外の全てのキュービットに作用する恒等演算子である。
2つのキュービットが、格子の辺で結ばれる格子の2つのノードに対応する場合、2つのキュービットは、2次元格子の隣接するキュービットである。例えば、図5に示すキュービット362及び364は、図5に示す格子の隣接するキュービットである。
本明細書に記載のように、単体ユニタリ演算子は、量子システムの1つのキュービット、例えば、i番目のキュービットに作用する演算子である。数学的には、単体のユニタリ演算子は、U=U’(X)Iの形式を有する。ここで、U’は1つのキュービットに作用するユニタリ演算子であり、Iはその1つキュービットを除く全てのキュービットに作用する恒等演算子である。本明細書では、単体のユニタリ演算子は、2体演算子の例と見なされるものとする。
実施形態によれば、N回のそれぞれの各短距離演算子は、制御ノット演算子又は単体ユニタリ演算子のいずれかであってよい。制御ノット(CNOT)演算子は、2体演算子である。CNOT演算子は、2つのキュービットの基底ベクトルのセットに対して以下のように作用する。|00>は|00>にマッピングされる。|01>は|01>にマッピングされる。|10>は|11>にマッピングされる。|11>は|10>にマッピングされる。第1のキュービットはCNOT演算子の制御キュービットであり、第2のキュービットはCNOT演算子のターゲットキュービットである。
N回のそれぞれの各短距離演算子は、制御ノット演算子又は単体ユニタリ演算子のいずれかであってよく、各単体ユニタリ演算子は、exp(itσ)又はexp(itσ)の形式を有する。σ及びσはパウリ演算子を表す。
超伝導電荷キュービット又は磁束キュービットの場合、CNOT演算は、2つのキュービットに結合された追加の容量性要素で実現することができる。相互作用の強度は、前記追加の要素に適用される磁束又は電束によって調整される。或いは、2つのキュービットは、ジョセフソンリング変調器(Josephson ring modulator)の2つのモードに結合される。単体ユニタリ演算子exp(itσ)は、制御された外部磁束又は制御された外部電束で実現可能である。
トラップ型イオンシステムの場合、イオン間のCNOT演算は、フォノンバスを介して実現することができ、相互作用の強度は、フォノンモードの周波数変調によって調整可能である。単体ユニタリ演算子exp(itσ)は、制御された磁気双極子遷移又は制御されたラマン遷移を介して実現することができる。
リュードベリ原子の場合、リュードベリ原子間のCNOT演算は、高度に励起された状態に離調するレーザで原子遷移を駆動することによって実施される。単体ユニタリ演算子exp(itσ)は、リュードベリ遷移の離調レーザ駆動で実現可能である。
量子ドットの場合、量子ドット間のCNOT演算は、電場勾配又は磁場勾配によって実現可能である。単体ユニタリ演算子exp(itσ)は、電気パルスシーケンス及び磁場で実現可能である。
本明細書に記載のように、ユニタリ演算子のシーケンスは、順序付けられたリストO,O,・・・として理解されるであろう。ここで、各Oは、ユニタリ演算子である。ユニタリ演算子のシーケンス内の各ユニタリ演算子Oは、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるか、或いは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子であってもよい。シーケンス内のユニタリ演算子の順序は、ユニタリ演算子が量子システムに適用される順序に対応する。ユニタリ演算子のシーケンスは、順序付けられたリストO,O,・・・内の演算子Oの数であるシーケンス長を有する場合がある。
本明細書に記載のように、ユニタリ演算子のシーケンスを決定する動作は、ユニタリ演算子の順序付けられたリストを決定又は選択することとして理解されるであろう。ユニタリ演算子のシーケンスを決定することは、シーケンスのシーケンス長を決定すること、及び/又は、シーケンス内の各i番目の位置毎に、i番目の位置のユニタリ演算子を決定することを含んでもよい。i番目の位置のユニタリ演算子を決定することは、i番目の位置のユニタリ演算子が問題ハミルトニアンの時間発展であるか、又は2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるかを決定することを含んでもよい。i番目の位置のユニタリ演算子が問題ハミルトニアンの時間発展exp(itH)であると決定された場合、i番目の位置のユニタリ演算子を決定することには、時間発展が実行されるべきである期間tを決定することが含まれる場合がある。i番目の位置のユニタリ演算子が1つ又は複数の短距離演算子の積であると決定された場合、i番目の位置のユニタリ演算子を決定することには、いくつの短距離演算子が積に含まれるか、及び/又は、どの短距離演算子が積に含まれるかを決定することが含まれる場合がある。
実施形態によれば、N回の演算の各回は、その回のユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することにより、量子システムを発展させることを含む。ユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することは、シーケンス内のすべてのユニタリ演算子が、ユニタリ演算子のシーケンスによって規定された順序で量子システムに適用されることを意味する。ユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することは、ユニタリ演算子のシーケンス内のすべてのユニタリ演算子の積である総ユニタリ演算子(total unitary operator)によって量子システムを発展させることに対応する。積は、シーケンスで規定された順序で実行される。
実施形態によれば、N回の演算の各i番目の回は、i番目の回毎に初期量子状態を準備することを含み得る。初期量子状態は、N回の演算の全てについて同じであってもよい。例えば、各回の初期量子状態は、複数のキュービットの各キュービットが状態|+>=|0>+|1>である量子状態であり得る。或いは、異なる初期量子状態が、異なる回の演算のために準備されてもよい。 N回の演算のそれぞれについて、i番目の回のユニタリ演算のシーケンスを、i番目の回の初期量子状態に適用してもよい。
実施形態によれば、N回の演算の各回は、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行することを含む。N回の演算のそれぞれについて、i番目の回の測定は、i番目の回のユニタリ演算子のシーケンスを適用した後に実行すればよい。
N回の演算は、2回以上、具体的には10回以上、より具体的には1000回以上の演算を含み得る。
N回の演算のそれぞれについて、1回のユニタリ演算子のシーケンスは、2つ以上、具体的には5つ以上、より具体的には200以上のユニタリ演算子を含み得る。
N回の演算は、ユニタリ演算子の第1のシーケンスを含んでもよい。ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、第1の複数のユニタリ演算子を含んでもよい。第1の複数のユニタリ演算子の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの時間発展である。第1の複数のユニタリ演算子は、2つ以上、具体的には10以上、より具体的には100以上のユニタリ演算子を含み得る。
ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、第1の期間tの問題ハミルトニアンHの時間発展である第1のユニタリ演算子exp(it)を含んでもよい。ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、第1の期間tと異なる第2の期間tの問題ハミルトニアンの時間発展である第2のユニタリ演算子exp(it)を含んでもよい。ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、第1の期間t及び第2の期間tのうちの少なくとも1つと異なる第3の期間tの問題ハミルトニアンの時間発展である第3のユニタリ演算子exp(it)を含んでもよい。
ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、第2の複数のユニタリ演算子を含んでもよい。第2の複数のユニタリ演算子の各ユニタリ演算子は、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積である。第2の複数のユニタリ演算子は、2つ以上、具体的には5つ以上、より具体的には200以上のユニタリ演算子を含み得る。
ユニタリ演算子の第1のシーケンスは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の第1の積であるユニタリ演算子を含んでもよい。ユニタリ演算子のシーケンスは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の第2の積であるユニタリ演算子を含んでもよい。第1の積は第2の積と異なる場合がある。ユニタリ演算子のシーケンスは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の第3の積であるユニタリ演算子を含んでもよい。第3の積は、第1の積及び第2の積のうちの少なくとも1つと異なる場合がある。
N回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスは、A,B,A,B,・・・の形式の交互のシーケンスであってもよい。各Aは、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であってもよい。各Bは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記方法は、情報のフィードフォワードを含み、ある1回の演算に適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスは、1回又は複数回前の演算の回で実行された測定の測定結果に依存することがある。N回の演算は、1つ又は複数の適応回の演算を含んでもよい。各適応回の演算について、適応回のユニタリ演算子のシーケンスのユニタリ演算子は、N回の演算の前の回で実行された測定の少なくとも1つの測定結果に基づいて決定される。
1つ又は複数の適応回の演算は、第1の適応回の演算を含んでもよい。本明細書に記載の実施形態に係る方法は、例えば、本明細書に記載のような古典的計算システムによって、演算の第1の適応回に先行する演算の回の1つ又は複数の測定結果を処理することを含んでもよい。この方法は、第1の適応回の演算に先行する回の演算の1つ又は複数の測定結果の処理に応答して、第1の適応回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを決定することを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、適応回で適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスは、前の2つの回の演算の測定結果に依存してもよい。この方法は、第1の適応回の演算に先行する2回の演算の測定結果を処理することを含んでもよい。この方法は、第1の適応回の演算に先行する2回の演算の測定結果の処理に応答して、第1の適応回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを決定することを含んでもよい。
本明細書に記載のように、演算の1つ又は複数の適応回は、複数の適応回であってもよい。複数の適応回は、2つ以上、場合によっては最大10000以上の適応回を含み得る。
実施形態によれば、N回の演算の各回は、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行することを含む。1つ又は複数のキュービットは、複数のキュービットの一部を含み得る。1つ又は複数のキュービットは、複数のキュービットの70%以下、具体的には60%以下、より具体的には50%以下を含み得る。
本明細書に記載のように、1つ又は複数のキュービットの測定を実行することは、1つ又は複数のキュービットの各キュービットを個別に測定することを含んでもよい。1つ又は複数のキュービットの測定を実行することは、1つ又は複数のキュービットのそれぞれに対して、パウリ演算子、例えば、パウリ演算子σzを測定することを含んでもよい。1つ又は複数のキュービットの測定を実行することは、1つ又は複数のキュービットのそれぞれについて2つの結果の測定(two-outcome measurement)を実行することを含んでもよい。2つの結果の測定は、2つの可能性がある結果、例えば、0又は1のうちの1つを提供する場合がある。
N回の演算のうちの少なくとも2回について、同じ測定を実行してもよい。換言すれば、1つ又は複数の量子オブザーバブル(quantum observables)をN回の演算の第1回で測定でき、1つ又は複数の量子オブザーバブルをN回の演算の第2回でも測定することができる。複数回の演算で同じ測定を実行すると、異なる回の演算で同じ測定の測定結果を比較することができる。例えば、本明細書に記載のように、ユニタリ演算の異なるシーケンスによって生成される量子状態のエネルギーを、互いに比較することができ、それによって、基底状態を効率的に検索する方法を提供できる。
複数のK個の超伝導キュービットを有する量子システムの場合、複数の超伝導量子干渉装置、具体的には、特定のK個のヒステリシスDC超伝導量子干渉装置(hysteretic DC superconducting quantum interference devices)と、数が√Kであるバイアス線によって制御されるK個のRF超伝導量子干渉装置(RF superconducting quantum interference device)のラッチと、を有する測定装置を用いて、複数のキュービットにおけるキュービットの状態|0>及び|1>を高精度に測定することができる。
トラップされたイオンで実現される量子システムの場合、量子システムの測定は、蛍光分光法によって実行することができる。この場合、イオンが2つのスピン状態のいずれか1つにある場合、イオンは短い寿命の遷移で駆動される。その結果、駆動された状態のイオンは多くのフォトンを放出するが、他のイオンは暗いままである。放出されたフォトンは、市販のCCDカメラで記録できる。蛍光分光法の前の適切な単一キュービットパルス(single-qubit pulses)によって、ブロッホ球(Bloch sphere)上の任意の方向の測定が可能である。
低温原子で実現される量子システムの場合、キュービットは、基底状態の原子の選択的一掃(selective sweep)及び単一の位置分解能(single site resolutions)での蛍光撮像を実行することで測定可能である。
量子ドットで実現される量子システムの場合、キュービットは、高速断熱通過(rapid adiabatic passage)によるパルスシーケンスから読み出し可能である。
N回の演算は、第1回の演算を含み得る。第1回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを適用すると、量子システムの第1の量子状態が得られる可能性がある。例えば、|Ψin>は、第1回の演算の初期量子状態を示し、Uは、第1回のユニタリ演算子のシーケンス内の全てのユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子を示してもよい。この場合、|Ψ>=U|Ψin>は、量子システムの第1の量子状態であるかもしれない。
本明細書に記載の実施形態に係る方法は、第1の量子状態のエネルギー、具体的には平均エネルギー又は期待されるエネルギーを測定することを含んでもよい。第1の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムのハミルトニアンを測定することを含んでもよい。第1の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムのハミルトニアンの期待値を測定することを含んでもよい。ハミルトニアンHの期待値は、<Ψ|H|Ψ>として表してもよい。本明細書に記載のように、第1の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムの総ハミルトニアン(total Hamiltonian)を測定することを含んでもよい。
エネルギーの測定は、システム内のキュービットを個別に測定すること、例えば、パウリ演算子σを測定することによって実行可能である。このような測定から得られる測定結果に基づき、例えば、本明細書に記載のような古典的計算システムによって、エネルギーを計算することができる。
N回の演算は、第1回の演算の後に実行される第2回の演算を含み得る。第2回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを適用すると、量子システムの第2の量子状態が得られる可能性がある。例えば、|Ψin>は、第2回の演算の初期量子状態、すなわち、第1回の演算と同じ初期状態を示し、Uは、第2回のユニタリ演算子のシーケンス内の全てのユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子を示してもよい。この場合、|Ψ>=U|Ψin>は、量子システムの第2の量子状態であるかもしれない。
本明細書に記載の実施形態に係る方法は、第2の量子状態のエネルギー、具体的には平均エネルギー又は期待されるエネルギーを測定することを含んでもよい。第2の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムのハミルトニアンを測定することを含んでもよい。第2の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムのハミルトニアンの期待値を測定することを含んでもよい。第1の量子状態について測定されたハミルトニアンは、第2の量子状態について測定されたハミルトニアンと同じであるかもしれない。第2の量子状態のエネルギーを測定することは、量子システムの総ハミルトニアンを測定することを含んでもよい。
この方法は、第1の量子状態のエネルギーを第2の量子状態のエネルギーと比較することを含んでもよい。この方法は、N回の演算の第3回で適用されるユニタリ演算子のシーケンスを決定することを含んでもよい。第3回は、第2回の後に実行される。第3回で適用されるユニタリ演算子のシーケンスは、少なくとも、第1の量子状態のエネルギーを第2の量子状態のエネルギーとの比較することによって決定すればよい。
例えば、第1の量子状態のエネルギーを第2の量子状態のエネルギーと比較することで、第1の量子状態のエネルギーが第2の量子状態のエネルギーよりも小さいことが明らかになった場合、演算子は、第1の量子状態が、第2の量子状態よりも測定されたハミルトニアンの基底状態に近いと結論付けてもよい。これに照らして、演算子は、第2回のユニタリ演算子のシーケンスを拒否し、第1回のユニタリ演算のシーケンスに戻ることができる。第1回のユニタリ演算のシーケンスから開始して、演算子は、例えば、前記シーケンスの1つ又は少数の演算子を別の演算子に置き換えることによって、前記シーケンスに小さな摂動(perturbation)を加えることができる。結果として得られるシーケンスは、第3回の演算で適用されるユニタリ演算子のシーケンスであるかもしれない。
或いは、第1の量子状態のエネルギーを第2の量子状態のエネルギーと比較することで、第1の量子状態のエネルギーが第2の量子状態のエネルギーよりも大きい(又は等しい)ことが明らかになった場合、演算子は、第2の量子状態が、第1の量子状態よりも測定されたハミルトニアンの基底状態に近いと結論付けてもよい。これに照らして、演算子は、第2回のユニタリ演算子のシーケンスを受け入れることができる。第2回のユニタリ演算のシーケンスから開始して、演算子は、前記シーケンスに小さな調整又は摂動を加えることができる。結果として得られる調整されたシーケンスは、第3回の演算で適用されるユニタリ演算子のシーケンスであるかもしれない。
演算子は、全ての回の演算を通じて同様の方法で進めることができる。すなわち、(i)現在の回の演算のユニタリ演算のシーケンスを適用した後に得られる量子状態のエネルギーを測定する。(ii)現在の回の測定されたエネルギーを前の回の測定されたエネルギーと比較する。(iii)現在の回の測定されたエネルギーが前の回の測定されたエネルギーよりも大きい場合、現在の回の量子状態を拒否し、前の回のユニタリ演算のシーケンスを受け入れるか、或いは、現在の回の測定されたエネルギーが前の回の測定されたエネルギーよりも小さい場合、現在の回のユニタリ演算のシーケンスを受け入れる。(iv)受け入れられたユニタリ演算のシーケンスから開始して、前記受け入れられたシーケンスを摂動させて、次の回の演算のための演算のシーケンスを取得する。
回数Nが増加するにつれて、より多くの量子状態のセットが準備され、その後の量子状態のエネルギーは徐々に減少する(又は、少なくとも増加しない)。したがって、エネルギーは、測定されたハミルトニアンの基底状態のエネルギーに徐々に近づく。これに照らして、本明細書に記載の実施形態は、測定されたハミルトニアンの基底状態への漸進的に改善する近似を提供する。
演算のそれぞれの回で適切なハミルトニアンを測定することによって、計算問題の解を決定することができる。実施形態によれば、N回の演算の複数回はそれぞれ、量子システムの総ハミルトニアンを測定することを含んでもよい。総ハミルトニアンは、計算問題の解に関する情報を含む基底状態を有するかもしれない。
総ハミルトニアンは、問題のハミルトニアンHと短距離ハミルトニアンHSRとの総和であり得る。総ハミルトニアンは、Htotal=H+HSRとして表すことができる。総ハミルトニアンでは、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在するかもしれない。いくつかの実施形態では、短距離ハミルトニアンは、プラケットに対応するキュービットのグループ間の相互作用を表すプラケットハミルトニアン(plaquette Hamiltonian)であり得る。プラケットは、例えば、キュービットが配置される2次元正方格子の基本の正方形であってもよい。短距離ハミルトニアンは、4体プラケットハミルトニアン等のd体ハミルトニアンであってもよく、dは計算問題とは無関係である。短距離ハミルトニアンは、計算問題とは無関係であってもよい。
本明細書で使用する用語である短距離ハミルトニアンは、複数のキュービットの相互作用を表すハミルトニアンを指す場合があり、本明細書に記載のように、相互作用遮断距離よりも長い距離だけ互いに離れているキュービット間で相互作用は生じない。本明細書に記載のように、格子に従って配置された複数のキュービットの場合、短距離ハミルトニアンは、r範囲のハミルトニアンであってもよい。r範囲のハミルトニアンでは、格子の基本距離(格子定数)のr倍よりも長い距離だけ互いに離れているキュービット間で相互作用が生じない。rは1~5であり、例えば、r = √2,2,3,4又は5である。
量子システムのキュービットの数に関わらず、本明細書に記載のように、量子システムのプラケットハミルトニアン及び最近接対ハミルトニアン(pairwise nearest-neighbor Hamiltonian)は、短距離ハミルトニアンと見なされなければならない。
本明細書に記載のように、短距離ハミルトニアンの例は、単体ハミルトニアンである。単体ハミルトニアンの場合、相互作用遮断距離は零と見なすことができる。これは、2つ以上のキュービットのグループ間に相互作用が生じず、各キュービットと磁場や電場等の外部実体との間の相互作用のみが生じるからである。
図6は、複数のキュービット100が、2次元正方格子120に沿って配置され、2次元正方格子の三角形部分を成す2次元正方格子のノードの位置にある実施形態について、短距離ハミルトニアンの更なる例を示す。図6を参照して説明する短距離ハミルトニアンの例は、最近接対ハミルトニアンである。最近接対ハミルトニアンは、2次元格子120上の隣接するキュービットの対(「最近接」キュービット)間の相互作用のみを伴い得る。隣接するキュービットの対は、互いに基本距離Dだけ離れたキュービットの対を指し得る。図6に示すキュービット382及び384は、隣接するキュービットの対の例になっている。最近接対ハミルトニアンは、複数の被加数ハミルトニアンの総和であってもよく、各被加数ハミルトニアンは、隣接するキュービットの対の間の相互作用を表す。図6を参照して説明する最近接対ハミルトニアンの場合、相互作用遮断距離は基本距離Dに等しい。したがって、相互作用遮断距離は、最大キュービット距離に比べて非常に短い。すなわち、相互作用遮断距離Dは、最大キュービット距離の10%未満である。
図6を参照して説明する短距離ハミルトニアンの更なる例は、プラケットハミルトニアンである。図6において参照符号370で示すように、2次元正方格子120のプラケットは、2次元正方格子120の基本の正方形である。プラケット370は、キュービット371、372、373及び374を有する。キュービット371は、キュービット372及びキュービット374から基本距離Dだけ離れて配置され、キュービット373もまた、キュービット372及び374から基本距離Dだけ離れて配置されている。更に、キュービットのプラケットを完成させるために、黒色の矩形で示される予備キュービット(auxiliary qubits)が新たな線上に追加される。例えば、予備キュービット305は、キュービット302、303及び304のプラケットを完成させる。予備キュービットは、特定の量子状態、例えば、|1>で準備することができる。この格子形状の場合、プラケットハミルトニアンは、2次元正方格子120のプラケットに対応する、4つのキュービットのグループ間、又は3つのキュービットと1つの予備キュービットのグループ間の相互作用のみを伴ってもよい。プラケットハミルトニアンは、複数の被加数ハミルトニアンの総和であってもよい。各被加数ハミルトニアンは、格子上のキュービットのプラケットに対応する相互作用、又はキュービット及び予備キュービットのプラケットに対応する相互作用を表してもよい。或いは、予備キュービットを使用せず、プラケットハミルトニアンは、3つのキュービットのみの間の相互作用を示す被加数ハミルトニアンを含む。図6を参照して説明するプラケットハミルトニアンの場合、プラケット内の2つのキュービット間の最大距離が√2Dであるため、相互作用遮断距離は√2Dである。例えば、キュービット371及び373の間の距離は√2Dである。したがって、相互作用遮断距離は、最大キュービット距離に比べて非常に短い。すなわち、相互作用遮断距離√2Dは、最大キュービット距離の12%未満である。
上記のように、計算問題は、問題ハミルトニアン、具体的には、調整可能なパラメータの問題コード化設定でコード化される。コード化は、問題ハミルトニアン及び短距離ハミルトニアンの総和である総ハミルトニアンが、計算問題の解に関する情報を含む基底状態を有するように行われてもよい。したがって、量子システムが、総ハミルトニアンの基底状態にあるか、基底状態に近い場合、量子システムを測定することにより、計算問題に関する情報が明らかになり得る。
例えば、本明細書に記載のように、複数回の演算で総ハミルトニアンを測定し、異なる回で測定された総ハミルトニアンのエネルギーを互いに比較し、続いて、現在の回又は前の回のユニタリ演算のシーケンスを受け入れることによって、本明細書に記載の実施形態は、総ハミルトニアンの基底状態のより良好な近似を形成する量子状態のシーケンスを生成する方法を提供する。したがって、量子システムを測定することにより、計算問題の解を決定することができる。
上記の例は、エネルギーが複数の適応回の演算で測定される方法の例であるが、代替の実施形態では、エネルギーは、適応回の演算を有することなく測定され得る。例えば、この方法は、非適応回のみを含み、各回の演算において、ハミルトニアンのエネルギーが測定される。全てのN回が実行された後、異なる測定エネルギーを互いに比較することができる。最も低い測定エネルギー及び対応する量子状態を選択できる。したがって、ハミルトニアンの基底状態の近似は、適応回を実行せずに計算できる。このような非適応法と比較して、1つ又は複数の適応回を有する方法には、計算効率がより高いという利点がある。すなわち、後者の方法では、基底状態への適切な近似をより速く見つけることができる。
上記の例は、測定されたハミルトニアンが、本明細書に記載の総ハミルトニアンである方法の例であるが、他のハミルトニアンも測定されてもよい。具体的には、総ハミルトニアンは、修正ハミルトニアン(modified Hamiltonian)の形式が総ハミルトニアンと異なるように修正又は変換されてもよい。しかしながら、修正ハミルトニアンは、修正ハミルトニアンの基底状態が計算問題の解に関する情報を含むという特性を有する。例えば、各キュービット、又はキュービットの複数の小さなグループの基底変換(change of basis)によって総ハミルトニアンを修正すると、ハミルトニアンの形式が変更される場合があるが、修正ハミルトニアンの基底状態が計算問題の解に関する情報を含むという特性は変更されない。
上記の例は、1つ又は複数のエネルギーが測定される方法の例であるが、更なる測定又は代替の測定も実行されてもよい。例えば、量子状態(本明細書に記載のような第1又は第2の量子状態等)のエネルギーを測定する代わりに、ターゲット状態に対する量子状態の量子忠実度(quantum fidelity)を測定してもよい。例えば、ターゲット状態は、ターゲットハミルトニアン(本明細書に記載のような総ハミルトニアン、又は他のハミルトニアン等)の基底状態であり得る。2つの量子状態|Ψ>及び|Ψ>の量子忠実度は、量、<Ψ|Ψ>を指す。
本明細書に記載の実施形態に係る方法は、量子計算の結果を出力することを含む。この方法は、例えば、本明細書に記載のような古典的計算システムによって、N回の演算中に実行される1つ又は複数の測定の1つ又は複数の測定結果を処理することを含んでもよい。この方法は、1つ又は複数の測定結果の処理に基づいて、量子計算の結果を出力することを含んでもよい。
量子計算の出力結果は、計算問題の解、具体的には試行解(trial solution)であってもよい。試行解は、計算問題に対する真の解である場合とそうでない場合がある。試行解は、計算問題の近似解であってもよい。例えば、計算問題は、スピンモデル、例えば、本明細書に記載のようなイジングスピンモデルの基底状態のエネルギーを計算することを含んでもよい。計算問題の近似解を計算することは、イジングスピンモデル問題の基底状態のエネルギーを近似するエネルギーを計算することを含んでもよい。計算問題が複雑性クラスNP(complexity class NP)に属する実施形態では、計算問題の解を計算することは、本明細書に記載のように、証拠変数(witness variables)のセットの計算を含んでいてもよい。
本明細書に記載の実施形態に係る方法は、計算問題の解を計算する方法であってもよい。
実施形態によれば、N回の演算に含まれる2つ以上の短距離ユニタリ演算子の各積は、一定の深さに並列化可能であり得る。
本開示で使用される「深さ」という用語は、コンピュータ科学の分野で知られている論理ゲートの回路の回路深さの概念を指す。n個の入力のセットに作用する論理ゲートの回路は、回路内の論理ゲートを論理ゲートのD個の層(スライス)にグループ化でき、各層において同じ入力に作用する2つの論理ゲートが存在しない場合、深さDに並列化可能であるといえる。換言すれば、各層内で、各入力は最大で1つの論理ゲートの影響を受ける。量子計算の現在の状況では、量子システムの複数のキュービットは、n個の入力に対応し、1つのユニタリ演算子は、1つの論理ゲートに対応し、ユニタリ演算子の1つの積又はシーケンスは、1つの論理ゲートの回路に対応し得る。したがって、本明細書に記載のように、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積は、積中の短距離ユニタリ演算子がD個の層にグループ化できれば、深さDに並列化可能であり、各層内で、量子システムの各キュービットは、層の最大で1つのユニタリ演算子によって作用される。
深さは、回路又は積をどれだけ並列化できるかの尺度である。1つの層内のゲート/演算子が異なる入力/キュービットに作用するため、各層内の演算は、同じ時間ステップで(「並列に」)実行することができる。したがって、深さDに並列化可能な回路又は積は、D個の時間ステップで実行することができる。
「深さ」の概念を説明するために、図7は、短距離演算子の積の例を示す。範囲を限定することを意図することなく具体性を持たせるため、図7は、6つのキュービットから構成される量子システムと、7つの短距離ユニタリ演算子から構成される積を示している。6つのキュービットは、図7において6本の水平線で表されている。短距離ユニタリ演算子は、矩形のボックスで表されている。積内の短距離ユニタリ演算子は、3つの層710,720及び730にグループ化されている。矢符750は、時間の方向を表している。すなわち、層710の演算子が最初に量子システムに適用され、その後、層720の演算子が適用され、更にその後、層730の演算子が適用される。層710は、2つのユニタリ演算子、すなわち、2つのキュービットに作用するユニタリ演算子(2体演算子)712及び3つのキュービットに作用するユニタリ演算子(3体演算子)714を含む。層720は、2つのユニタリ演算子722及び724を含み、それぞれが2つの各キュービットに作用する。層730は、3つのユニタリ演算子、すなわち、1つのキュービットに作用するユニタリ演算子(単一キュービット演算子)732、2つのキュービットに作用するユニタリ演算子734、及び1つのキュービットに作用する別のユニタリ演算子736を含む。演算の各層内で、2つのユニタリ演算子が同じキュービットに作用することはない。換言すれば、各層において、各キュービットは最大で1つのユニタリ演算子によって作用される。したがって、図7に示される積は、3の深さに並列化可能である。
一定の深さは、量子システムのサイズに依存せず、より具体的には、量子システム内のキュービットの数に依存しない深さを指す。一定の深さは、量子システム内のキュービットの数よりも非常に小さな深さであってもよい。例えば、一定の深さは、量子システム内のキュービットの数の30%以下、具体的には20%以下、より具体的には10%以下の深さであってもよい。
本明細書に記載の方法は、サイズが大きくなる計算問題を解くために使用されるので、システムサイズが大きくなる量子システムが必要である。すなわち、量子システム内のキュービットの数は、計算問題のサイズの関数として増加する。実施形態によれば、計算問題のサイズに関わらず、N回の演算に含まれる2つ以上の短距離ユニタリ演算子の各積は、一定の深さに並列化可能であり得る。すなわち、量子システム内のキュービットの数と異なり、深さは、計算問題のサイズの関数として大きくならないが、定数、例えば20によって上に有界である。
実施形態によれば、N回の演算に含まれる2つ以上の短距離ユニタリ演算子の各積は、深さDに並列化可能であってもよい。ここで、Dは、100以下、より具体的には6以下である。
実施形態によれば、計算問題は、NP困難問題、具体的には、イジングスピンモデル問題であり得る。量子計算の出力結果は、NP困難問題の解になる可能性がある。
本明細書に記載のように、計算問題は、コンピュータ科学の分野で考えられる複雑性クラスNPに関連してもよい。「NP」は、「非決定性多項式時間(nondeterministic polynomial time)」の略称である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせ可能な実施形態によれば、計算問題は複雑性クラスNPに属する。複雑性クラスNPは、決定問題を含む。口語的に言えば、複雑性クラスNPに属する計算問題の場合、計算問題の解が「イエス」だということを検証可能であることに基づく証拠変数のセットが存在する。NPの計算問題の場合、解が「イエス」であることを検証するプロセスは、計算問題のサイズによって多項式的にのみ変化する実行時間を有する検証アルゴリズムによって実行可能である。換言すれば、証拠変数のセットは解に関する情報を含み、その情報は、解が「イエス」であることを検証するための検証アルゴリズムによって多項式実行時間で処理され得る。複雑性クラスNPの正式な定義に関しては、関連するコンピュータ科学の文献を参照して頂きたい。
例えば、本明細書に記載のように、巡回セールスマン問題、3彩色問題及びイジングスピンモデル問題は、複雑性クラスNPの決定問題の例である。例えば、イジングスピンモデル問題を検討してみる。結合係数及びフィールド係数の所定のセット並びに所定の定数K についてのイジングスピンモデル問題の解が「イエス」である場合、関連するイジングエネルギー関数H(s,s ,・・・,s)がKよりも小さくなるスピン(s,s,・・・,s)の形態は、証拠変数のセットと見なすことができる。証拠変数(s,s,・・・,s)が与えられると、エネルギーH(s,s,・・・,s)は、H(s,s,・・・,s)の数を計算しKと比較することにより、確かにKよりも小さいということが多項式時間で検証され得る。したがって、イジングスピンモデル問題は複雑性クラスNPに含まれる。
検証アルゴリズムが多項式実行時間を有するのに対して、決定問題で「イエス」又は「ノー」である解を決定するタスクは、NPのいくつかの計算問題に対し多項式時間アルゴリズムを有していなくてもよく、指数関数的な実行時間を有しさえすればよい。複雑性クラスNPのいくつかの計算問題は、古典的計算システムではコンピュータ的に解決困難であると考えられる。「コンピュータ的に解決困難である」計算問題という用語は、計算問題の解が「イエス」であるか「ノー」であるかを決定するための多項式実行時間を有する古典的計算システムで実行されるアルゴリズムが存在しない計算問題を指す場合がある。具体的には、巡回セールスマン問題、3彩色問題及びイジングスピンモデル問題は、古典的計算システムでは解決困難であると考えられ、少なくともこれらの問題を多項式実行時間で解けるアルゴリズムは知られていない。
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせ可能な実施形態によれば、量子システムを用いて解を計算できる計算問題は、本明細書に記載のように、NP完全問題又はNP困難問題である。NP完全問題は、クラスNPに属しており、古典的計算システムではコンピュータ的に解決困難であると考えられる。全てのNP困難問題がNPに属するわけではないが、NP困難問題もまた古典的計算システムではコンピュータ的に解決困難であると考えられる。
NP完全問題のような複雑性クラスNPに属する計算問題についての実施形態によれば、量子計算の出力結果は、計算問題の証拠変数のセット、又は少なくともこのセットの一部分を含んでもよい。
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせ可能ないくつかの実施形態によれば、問題コード化設定を決定することは、予備の計算問題に計算問題をマッピングすることを含んでもよい。この場合、予備の計算問題は、長距離スピンモデルの基底状態を決定することを含む。予備の計算問題は計算問題に依存する。計算問題を予備の計算問題にマッピングすることは、計算問題の入力パラメータを予備の計算問題の入力パラメータにマッピングすることを含んでもよい。計算問題を予備の計算問題にマッピングすることは、計算問題の解が予備の計算問題の解から決定されるものであってもよい。
実施形態によれば、予備の計算問題は、本明細書に記載のように、イジングスピンモデル問題であってもよい。更なる実施形態によれば、計算問題は、本明細書に記載のように、巡回セールスマン問題等の複雑性クラスNPの問題であってもよい。イジングスピンモデル問題はNP完全問題であるため、例えば巡回セールスマン問題のような複雑性クラスNPの全ての問題がイジングスピンモデル問題にマッピングされてもよい。例えば、本明細書に記載のように、第1リスト及び第2リストを含む巡回セールスマン問題の場合、第1リスト及び第2リストが、本明細書に記載のように、イジングスピンモデル問題の結合係数及びフィールド係数のセットにマッピングされてもよい。巡回セールスマン問題の解は、対応する結合係数及びフィールド係数を有するイジングスピンモデル問題の解から計算されてもよい。このようなマッピングは既知である。
実施形態によれば、問題コード化設定を決定することは、イジングスピンモデル等の長距離スピンモデルから問題コード化設定を決定することを含んでもよい。図9~図12を参照して、この決定を実行する具体的な方法について詳細に説明する。
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせ可能な実施形態によれば、長距離スピンモデルは、mが1、2又は3のm体相互作用(m-body interactions)を有する長距離スピンモデルであってもよい。
量子システムは、複数の補助粒子を有してもよい。複数の補助粒子は、本明細書に記載のような複数のキュービットとは異なってもよい。各補助粒子は、キュービット、すなわち、補助キュービット(ancillary qubit)であり得る。例えば、本明細書に記載のトラップされたイオンを含む量子システムのように、いくつかの実施形態では、異なる空間位置間で粒子を移動させること(補助粒子の「シャトリング」)が可能である。実施形態によれば、補助粒子の移動を利用して、システムの実際の(非補助の)キュービットに対してユニタリ演算を実行することができる。具体的には、短距離ユニタリ演算子は、複数のキュービットのサブグループ内の各キュービットに隣接する異なる位置の間で補助粒子を移動させることによって、複数のキュービットのサブグループに適用することができる。換言すれば、補助粒子のシャトリングを実行することにより、補助粒子は、キュービットのサブグループ間の相互作用を「仲介」することができる。
本明細書に記載の量子システムは、第1の補助粒子を含む複数の補助粒子を有してもよい。本明細書に記載の方法は、複数のキュービットうちの第1のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。この方法は、第1の補助粒子を第1のキュービットから複数のキュービットのうちの第2のキュービットに移動させることを含んでもよい。この方法は、第2のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。
本明細書に記載のように、キュービットを補助粒子と結合することは、短距離ユニタリ演算、具体的にはキュービット及び補助粒子のみに作用する2体ユニタリ演算によって、キュービット及び補助粒子を発展させることを含んでもよい。短距離ユニタリ演算は、CNOT演算であってもよい。
2次元格子上に配置された量子システムの場合、プラケット相互作用(plaquette interactions)は、シャトリングを実行することによって実現可能である。補助粒子は、各プラケットに提供することができる。プラケットの補助粒子は、プラケットの各キュービットにシャトリングされ、それと相互作用することができる。おそらく、数回のシャトリングが実行される。すなわち、補助粒子がプラケットの各キュービットを数回訪れる可能性がある。したがって、プラケットの全てのキュービットに一緒に作用するユニタリ演算子を実現することができる。例えば、シャトリングを実行することにより、図19(a)~(c)を参照して以下に説明するように、exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)の形式のプラケット演算子を実行可能である。
実施形態によれば、複数のキュービットを2次元格子上に配置することができる。2次元格子は、複数のプラケットを有することができる。複数の補助粒子の各補助粒子は、2次元格子のプラケットに配置してもよい。複数のプラケットは、第1のプラケットを含んでもよい。複数の補助粒子は、第1の補助粒子を含んでもよい。本明細書に記載の方法は、第1のプラケットの第1のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。この方法は、第1の補助粒子を第1のキュービットから第1のプラケットの第2のキュービットに移動させることを含んでもよい。この方法は、第2のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。
この方法は、第1の補助粒子を第2のキュービットから第1のプラケットの第3のキュービットに移動させることを含んでもよい。この方法は、第3のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。
この方法は、第1の補助粒子を第3のキュービットから第1のプラケットの第4のキュービットに移動させることを含んでもよい。この方法は、第4のキュービットを第1の補助粒子と結合することを含んでもよい。
本明細書に記載の方法は、量子システムを50mK以下、具体的には1mK以下の動作温度に維持することを含んでもよい。
図8に示すように、更なる実施形態によれば、量子計算を実行する装置400が提供される。装置400は、本明細書に記載のように、複数のキュービット120を有する量子システム420を備える。装置400は、古典的計算システム450を備える。古典的計算システム450は、本明細書に記載のように、計算問題452を入力として受信するように構成されている。古典的計算システム450は、本明細書に記載のように、計算問題452を量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するように構成されている。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンである。コード化は、計算問題から複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定することを含む。装置400は、古典的計算システム450に接続された単体処理装置432を備える。単体処理装置432は、古典的計算システム450から、複数の調整可能なパラメータの問題コード化設定を受信するように構成されている。単体処理装置432は、問題ハミルトニアンの時間発展、具体的には問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展に従って量子システム420を発展させるように構成されている。装置400は、古典的計算システム450に接続された短距離結合装置434を備え、短距離結合装置434は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンの時間発展、具体的にはユニタリ時間発展に従って量子システム420を発展させるように構成されている。装置400は、古典的計算システム450に接続された測定装置440を備え、測定装置440は、複数のキュービット100の少なくとも一部425を測定するように構成されている。古典的計算システム450は、測定装置440から1つ又は複数の測定結果を受信するように更に構成されている。古典的計算システム450は、単体処理装置432及び/又は短距離結合装置434に指示するように更に構成されている。古典的計算システム450は、量子計算の結果490を出力するように構成されている。
本明細書に記載の装置は、本明細書に記載の方法の実施形態を実行するように構成されてもよい。
本明細書に記載の装置は、本明細書に記載のように、N回の演算を実行するように構成されてもよい。
本明細書に記載の古典的計算システムは、本明細書に記載のN回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスを決定するように構成されてもよい。シーケンス内の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子であってもよいし、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子であってもよい。
本明細書に記載の装置は、本明細書に記載のように、N回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することによって、量子システムを発展させるように構成されてもよい。単体処理装置は、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子のシーケンスの各ユニタリ演算子を実行するように構成されてもよい。短距離結合装置は、短距離演算子であるユニタリ演算子のシーケンスの各ユニタリ演算子を実行するように構成されてもよい。
本明細書に記載の測定装置は、N回の演算のそれぞれについて、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行するように構成されてもよい。
本明細書に記載の古典的計算システムは、量子計算の結果を出力するように構成されてもよい。
本明細書に記載の古典的計算システムは、古典的計算システムによって測定装置から受信された1つ又は複数の測定結果に基づいて、単体処理装置及び/又は短距離結合装置に指示するように構成されてもよい。N回の演算は、1つ又は複数の適応回の演算を含んでもよい。古典的計算システムは、N回の演算の前の回で実行された測定の少なくとも1つの測定結果に基づいて、各適応回のユニタリ演算子のシーケンスのユニタリ演算子を決定するように構成されてもよい。
本明細書に記載の測定装置は、本明細書に記載の量子システムのエネルギー、例えば、本明細書に記載の第1の量子状態のエネルギー及び/又は本明細書に記載の第2の量子状態のエネルギーを測定するように構成されてもよい。
本明細書に記載の古典的計算システムは、第1のエネルギーを第2のエネルギーと比較するように構成されてもよい。例えば、古典的計算システムは、本明細書に記載の第1の量子状態のエネルギーを、本明細書に記載の第2の量子状態のエネルギーと比較するように構成されてもよい。
本明細書に記載の古典的計算装置は、N回の演算の将来の回で適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスを決定するように構成されてもよい。将来の回で適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスは、少なくとも第1のエネルギーと第2のエネルギーとの比較に基づいて決定される。
量子システムは、複数の補助粒子を有してもよい。この装置は、複数の補助粒子のうちの少なくとも第1の補助粒子を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成されてもよい。
短距離結合装置は、複数のキュービットのうちの第1のキュービットを第1の補助粒子と結合するように構成されてもよい。この装置は、第1の補助粒子を第1のキュービットから複数のキュービットのうちの第2のキュービットに移動させるように構成されてもよい。短距離結合装置は、第2のキュービットを第1の補助粒子と結合するように構成されてもよい。
実施形態によれば、複数のキュービットを2次元格子上に配置することができる。2次元格子は、複数のプラケットを有することができる。複数の補助粒子の各補助粒子が、2次元格子のプラケットに配置されてもよい。複数のプラケットは、第1のプラケットを含み得る。複数の補助粒子は、第1の補助粒子を含み得る。短距離結合装置は、第1のプラケットの第1のキュービットを第1の補助粒子と結合するように構成されてもよい。この装置は、第1の補助粒子を第1のキュービットから第1のプラケットの第2のキュービットに移動させるように構成されてもよい。短距離結合装置は、第2のキュービットを第1の補助粒子と結合するように構成されてもよい。
更なる実施形態によれば、量子計算を実行する装置が提供される。この装置は、複数の超伝導キュービットを有する量子システムを備える。この装置は、制御装置を備える。この装置は、制御装置に接続された磁束バイアスアセンブリを備え、磁束バイアスアセンブリは、複数の調整可能な時間依存性の磁束を生成するように構成された複数の磁束バイアスユニットを有し、各調整可能な時間依存性の磁束が、複数の超伝導キュービットのうちの単一の超伝導キュービットに作用する。この装置は、制御装置に接続された結合装置を備え、結合装置は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンに従って複数の超伝導キュービットを結合するように構成された少なくとも1つの超伝導量子干渉装置を有する。この装置は、制御装置に接続された測定装置を備え、測定装置は、複数のキュービットの少なくとも一部を測定するように構成されている。制御装置は、演算のシーケンスに従って量子システムを発展させるように、磁束バイアスアセンブリ及び結合装置に指示するように構成されている。制御装置は、問題ハミルトニアンの時間発展によって量子システムを発展させるように、磁束バイアスアセンブリに指示するように構成されている。問題ハミルトニアンは、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、複数の調整可能なパラメータが計算問題をコード化している。制御装置は、短距離ハミルトニアンの時間発展に従って量子システムを発展させるように、結合装置に指示するように構成されている。
複数の超伝導キュービットは、2次元格子に沿って配置してもよい。
本明細書に記載の超伝導量子干渉装置は、プラケットハミルトニアンに従って複数の超伝導キュービットを結合するように構成されてもよい。
本明細書に記載の複数の磁束バイアスユニットは、複数の交流(AC)磁束バイアスユニット及び/又は直流(DC)磁束バイアスユニットであり得る。
本明細書に記載の制御装置は、本明細書に記載の古典的計算システムであるか又はそれを備えることができる。
この装置は、本明細書に記載の方法の実施形態を実行するように構成してもよい。この装置は、ゲート型の量子計算を実行する装置であってもよい。
この装置は、本明細書に記載のように、N回の演算を実行するように構成されてもよい。
本明細書に記載の制御装置は、本明細書に記載のN回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスを決定するように構成されてもよい。シーケンス内の各ユニタリ演算子は、問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが問題コード化設定に存在する、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子であってもよいし、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子であってもよい。
この装置は、本明細書に記載のように、N回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスを量子システムに適用することによって、量子システムを発展させるように構成されてもよい。磁束バイアスアセンブリは、問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子のシーケンスの各ユニタリ演算子を実行するように構成されてもよい。結合装置は、短距離演算子であるユニタリ演算子のシーケンスの各ユニタリ演算子を実行するように構成されてもよい。
測定装置は、N回の演算のそれぞれについて、量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行するように構成されてもよい。
制御装置は、量子計算の結果を出力するように構成されてもよい。
制御装置は、測定装置から制御装置によって受信された1つ又は複数の測定結果に基づいて、磁束バイアスアセンブリ及び/又は結合装置に指示するように構成されてもよい。N回の演算は、1つ又は複数の適応回の演算を含み得る。制御装置は、N回の演算の前の回で実行された測定の少なくとも1つの測定結果に基づいて、各適応回のユニタリ演算子のシーケンスのユニタリ演算子を決定するように構成されてもよい。
測定装置は、本明細書に記載の量子システムのエネルギー、例えば、本明細書に記載の第1の量子状態のエネルギー及び/又は本明細書に記載の第2の量子状態のエネルギーを測定するように構成されてもよい。
制御装置は、第1のエネルギーを第2のエネルギーと比較するように構成されてもよい。例えば、制御装置は、本明細書に記載の第1の量子状態のエネルギーを、本明細書に記載の第2の量子状態のエネルギーと比較するように構成されてもよい。
制御装置は、N回の演算の将来の回で適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスを決定するように構成されてもよい。将来の回で適用されるべきユニタリ演算子のシーケンスは、少なくとも第1のエネルギーと第2のエネルギーとの比較に基づいて決定される。量子システムは、複数の補助超伝導キュービットを有してもよい。この装置は、複数の補助超伝導キュービットのうちの少なくとも第1の補助超伝導キュービットを第1の位置から第2の位置に移動させるように構成されてもよい。
結合装置は、複数の超伝導キュービットのうちの第1の超伝導キュービットを第1の補助超伝導キュービットと結合するように構成されてもよい。この装置は、第1の補助超伝導キュービットを第1の超伝導キュービットから複数の超伝導キュービットのうちの第2の超伝導キュービットに移動させるように構成されてもよい。結合装置は、第2の超伝導キュービットを第1の補助超伝導キュービットと結合するように構成されてもよい。
実施形態によれば、複数の超伝導キュービットを2次元格子上に配置することができる。2次元格子は、複数のプラケットを有することができる。複数の補助超伝導粒子の各補助超伝導粒子が、2次元格子のプラケットに配置されてもよい。複数のプラケットは、第1のプラケットを含み得る。複数の補助超伝導粒子は、第1の補助超伝導粒子を含み得る。結合装置は、第1のプラケットの第1の超伝導キュービットを第1の補助超伝導粒子と結合するように構成されてもよい。この装置は、第1の補助超伝導粒子を第1の超伝導キュービットから第1のプラケットの第2の超伝導キュービットに移動させるように構成されてもよい。結合装置は、第2の超伝導キュービットを第1の補助超伝導粒子と結合するように構成されてもよい。
図9~図12を参照して、本開示の更なる側面について説明する。計算問題の問題ハミルトニアンへの具体的なコード化、すなわち、長距離相互作用を有するイジングスピンモデル問題の単体の問題ハミルトニアンへのコード化について説明する。長距離相互作用を有する(古典的な)イジングスピンモデル問題はNP完全であり、その量子化は些細なものであるため、ここでは古典的なイジングスピンモデルと量子イジングスピンモデルとを区別しない。他の古典的計算問題をイジングスピンモデル問題へマッピングすることは公知である。
dが2以下のd体相互作用のみを含むイジングスピンモデル問題の場合について考える。具体的なコード化は、本明細書に記載のように、最大で2体相互作用と対応する結合係数cijを有する、n個のスピンに対するイジングスピンモデル問題から始まる。添字i及びjは1~nの範囲で、jはiよりも小さい。第1のケースでは、全てのフィールド係数cは零に等しい。図9は、n=6のスピンに対するイジングスピンモデル問題を示す。ここで、スピンには、1~6の符号が付されている。図9においてスピンの対を結ぶ線で示すように、スピン間にはn(n-1)/2=15対の対相互作用がある。例えば、符号12で示す線は、スピン1とスピン2との間の対相互作用を表す。15対の対相互作用は、15個の結合係数cijに対応する。相互作用は長距離相互作用である。
イジングスピンモデルにおけるスピンの全ての対について、量子システムにおける対応するキュービットが与えられる。例えば、図9に示す15対の対相互作用を有する6つのスピンの場合、対応する量子システムは15個のキュービットを有する。イジングスピンモデルのスピンの設定は、対応するキュービットの設定にマッピングされる。この際、キュービットの設定は、スピンの相対的な向きに依存する。同じ方向を向くスピンの対(平行配列)は、量子基底状態「|1>」のキュービットにマッピングされる。さらに、反対方向を向くスピンの対(逆平行配列)は、量子基底状態「|0>」のキュービットにマッピングされる。このマッピングを図10に示す。図10において、符号0及び1は、それぞれ量子基底状態|0>及び|1>に対応する。
イジングスピンモデルの結合係数cijは、計算問題(この場合は、イジングスピンモデル問題)をコード化する問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータJにマッピングされる。問題ハミルトニアンは、Σσ (k)の形式を有する。k=n*1+jであり、kの範囲は1~Mであり、M=n(n-1)/2である。イジングスピンモデル問題は、問題ハミルトニアンの調整可能なパラメータJが、結合係数cijに対応するイジングスピンモデルのスピン間の相互作用を表すように、問題ハミルトニアンにマッピングされる。
イジングスピンモデル問題を問題ハミルトニアンにコード化するために必要なキュービットの数は、n個のスピンに対するイジングスピンモデル問題と比較して二次的に増加する。なぜなら、スピン間の2体相互作用の数がM = n(n-1)/2に等しいからである。いくつかの実施形態によれば、追加の自由度が考慮され得る。量子システム内のキュービットの総数は、M+n-2以上であってもよい。n-2個の追加の補助キュービット及び/又は追加の予備キュービットが、以下に説明する理由で追加され得る。したがって、キュービットの数はスピンの数nよりも大きくなるかもしれない。具体的には、キュービットの数は、スピンの数nにM-2の追加の自由度を付加したものであり得る。問題ハミルトニアンには、局所的な相互作用、具体的には外部フィールドとの単体相互作用のみで量子処理装置のプログラミングを可能にするという利点がある。
イジングスピンモデルと比較した、量子システムの自由度の増加数は、M-n個の4体被加数ハミルトニアンCの総和である短距離ハミルトニアンによって相殺される。これを制約ハミルトニアン(constraint Hamiltonians)と称し、キュービットの一部を固定するための制約を表す。短距離ハミルトニアンは、Σの形式を有し、添字lの範囲は1~(n-3n)/2であり、各被加数ハミルトニアンCは、下記の形式を有し得る制約ハミルトニアンである。
Figure 2022518863000003
上記の式を参照して、制約ハミルトニアンの2通りの可能な実行を考えることができる。上記の式の総和は、補助型の実行(ancilla-based implementation)を表すかもしれない。この総和は、キュービットが配置される2次元格子のプラケットの4つの要素(北、東、南、西)にまたがる。さらに、各S は、量子システムに含まれる補助キュートリットに作用する演算子である。補助キュートリットは、本実施形態では、|0>、|2>及び|4>と表される3つの基底状態からなる基底を有する。短距離ハミルトニアンの2つ目の実行は、補助キュートリットを必要としない相互作用型の実行(interaction-based implementation)である。相互作用型の実行では、Cは格子のプラケットを形成するキュービット間の4体相互作用である。さらに、上記の式において、Cは一定の制約強度等の制約強度を表す。
上記のように、問題ハミルトニアンにおけるイジングスピンモデルのコード化は、イジングスピンモデルのスピンの設定を量子システム内のキュービットの設定にマッピングすることを伴う。この場合、キュービットの設定は、対応するスピンの設定におけるスピンの対の相対的な向きに依存する。一貫したマッピングを提供するために、以下で説明するように、イジングスピンモデルにおける閉ループに関わる側面が考慮される。イジングスピンモデルにおけるスピンの各閉ループでは、逆平行配列を有するスピンの対の数は偶数である。例えば、図9を参照して、破線で示す連結部14、24、23及び13によって形成された閉ループ等を考える。この閉ループは、スピン1、2、3及び4を含む。スピン1、2、3及び4の何れの設定も、0対、2対又は4対の逆平行スピンを含む。スピン1、2、3及び4の何れの設定も、1対又は3対の逆平行スピンを含まない。したがって、スピン1、2、3及び4の全ての設定が、偶数の逆平行スピンを有する。
逆平行スピンの対が、量子基底状態|0>にあるキュービットにマッピングされるため、イジングスピンモデルのスピンの閉ループに対応する量子システム内のキュービットの全てのセットは、偶数個の量子基底状態|0>を有する。これにより、量子システムのキュービットの少なくとも一部に制約のセットが提供される。例えば、図9を参照して上述した閉ループの場合、対応する4つのキュービットのグループが、イジングモデルのスピンの対と、量子システム内のキュービットとの間の対応関係を考慮して、参照符号14、24、23及び13を付して図11に示される。図11に示すように、キュービット14、24、23及び13は、2次元格子120のプラケットに対応する。前述のような閉ループに対する制約を考慮すると、キュービット14、24、23及び13に対する量子基底状態の何れの設定も、図12に示すように、0、2つ又は4つの何れかの量子基底状態|0>を含む。
全ての閉ループに対応する制約が満たされることを確実にするためには、閉ループの適切なサブセットに関連する制約を実行することで十分である。本実施形態によれば、最大4つのスピンのグループを含む閉ループの特定の構成要素(building blocks)が、全ての制約が満たされることを保証するのに十分であるため、イジングスピンモデルから量子システムへの一貫したマッピングが提供される。前記構成要素は、4つの連結部によって連結された4つのスピンからなる閉ループを含む。1つの連結部は添字距離(index distance)sを有し、2つの連結部は添字距離s+1を有し、1つの連結部は添字距離s+2を有する。sは1~N-2の範囲であり、スピンsとsとの間の「添字距離」の概念は、数|i-j|を指す。s=1の閉ループ構成要素のセットは、n-2個の制約を提供する。例えば、図9に示すように、スピン1、2、3及び4の間の連結部14、24、23及び13を含む閉ループは、上記のように、s=1の閉ループ構成要素である。
更なる側面は、量子システムの境界に関する。いくつかの閉ループ構成要素は、4つの連結部で連結された4つのスピンではなく、3つの連結部で連結された3つのスピンのグループを伴う。この点に関し、例えば、図9を参照すると、スピン1、2及び3の間の連結部12、23及び13を含む閉ループが考えることができる。量子システムにおける対応するキュービットのグループは、2次元格子の三角形状のプラケットに沿って配置された3つのキュービット12、23及び13を含む。3つのスピンの閉ループに対応する制約を実行するために、3体制約ハミルトニアンCが、3つのキュービットの対応するグループに作用すると見なすことができる。或いは、図11に破線の円で示すように、量子基底状態|1>に固定されたn-2個の予備キュービットの追加の線が量子システムに含まれてもよい。3つのスピンの閉ループ、例えば、キュービット12、23、13に対応する閉ループに対応する制約を実行するため、制約ハミルトニアンCが、対応する3つのキュービット及び予備キュービットの1つ(すなわち、図11に示す予備キュービット1101)に作用すると見なすことができる。したがって、制約ハミルトニアンCは、前述と同じ形式を有する拡大された2次元格子のプラケットに作用する4体ハミルトニアンである。後者の実現には、全ての制約ハミルトニアンが2次元格子のプラケットに対応する4体ハミルトニアンであるため、全ての制約ハミルトニアンを同じ条件で扱うことができるという利点がある。
制約ハミルトニアンCは、閉ループ構成要素に対応する制約、ひいては全ての閉ループに対応する制約が満たされることを保証する。したがって、短距離ハミルトニアンは、イジングスピンモデルにおけるスピンの制約から量子システムに課せられる制約への一貫したマッピングを提供する。
総ハミルトニアンHを考える。総ハミルトニアンHは、問題ハミルトニアンH = Σσ (k)と短距離ハミルトニアンHSR =Σとの総和である。換言すれば、H=H +HSR =Σσ (k)+Σである。上記に照らして、総ハミルトニアンは、以下の特性を有する。量子システムが最終ハミルトニアンの基底状態にある場合、キュービットの一部は、イジングスピンモデルの基底状態にあるスピンの設定に対応する量子基底状態の設定に存在するであろう。具体的には、図11に示す部分425のキュービットは、イジングスピンモデルの基底状態におけるスピンの設定に対応する量子基底状態の設定に存在するであろう。量子システムが基底状態に近い総ハミルトニアンの熱状態にある場合、すなわち、十分に低い温度である場合、問題の特性は高い確率で真になる。
したがって、部分425を測定することにより、少なくとも高い確率で、イジングスピンモデル問題の解を決定することができる。N回の演算が実行された後、量子システムが総ハミルトニアンの基底状態によく近似した量子状態にある場合、部分425を測定すると、そこから試行解を計算できるイジングモデルの基底状態に関する情報が少なくとも得られる。次に、多項式時間の古典的計算によって、試行解が真の解であるかどうかをテストできる。もし、試行解が真の解でなければ、真の解が見つかるまで計算を続行できる。
本明細書に記載の実施形態の更なる利点として、イジングスピンモデルに関する情報は、量子システムにおいて冗長な方法でコード化されるため、そこから計算問題の解を決定可能な読み出しを提供するために、生じ得るキュービットの様々なグループを測定可能である。
上記に照らして、本実施形態に係る短距離ハミルトニアンの構造は、(i)制約がスピン間の全ての相互作用を網羅し、(ii)制約の数が(n-3n)/2であり、(iii)短距離ハミルトニアンが、d体相互作用を有する単純な2次元形状で実現できる。ここで、d=4であり、相互作用は2次元格子のプラケットに対応する。更に、イジングスピンモデルに1つのスピンを追加することは、量子システムにn個のスピンの線を追加することと同等であるため、本実施形態は、拡張性のある実行を可能にする。
図9~図12を参照して説明する実施形態は、n個のスピン間の対相互作用を伴うイジングスピンモデルに関するもので、フィールド係数は零である。零でないフィールド係数を有するイジングスピンモデルについても、同様のコード化が考えられる。追加のスピンsn+1をイジングモデルに含めることができ、sn+1は+1の値に固定される。そして、零でないフィールド係数は、n個のスピンと追加のスピンsn+1との間の結合係数として再定式化され得る。したがって、零でないフィールド係数を有するイジングスピンモデルは、フィールド係数が零であるイジングスピンモデルにマッピングされる。このため、前述の方法によって量子システムへのマッピングを適用することができる。追加のスピンsn+1を追加することは、量子システムにn個のキュービットの追加ラインを含めることを伴う。
上記のように、総ハミルトニアンH=H +HSR =Σσ (k)+Σの基底状態は、計算問題(イジングスピンモデル問題)の解に関する情報を含む。このため、基底状態を測定することで、計算問題の解を計算できる。本明細書に記載の実施形態は、総ハミルトニアンの基底状態に近似する量子状態を生成するための方法を提供する。
H(t)=A(t)H+B(t)Hの形式を有する補間ハミルトニアン(interpolation Hamiltonian)を考えることができる。Hは、例えば、H=Σσ (k)のような単体ハミルトニアン(「ドライバハミルトニアン」)である。tは時間パラメータである。A(t)及びB(t)は、時間パラメータtに依存する補間係数である。tが初期時間tの場合、補間係数A(t)は1に等しくてもよく、B(t)は0に等しくてもよいため、H(t)は単体ハミルトニアンHに等しくなる。tが最終時間tfinの場合、補間係数A(tfin)は0に等しくてもよく、B(tfin)は1に等しくてもよいため、H(tfin)は総ハミルトニアンHに等しくなる。例えば、量子力学の断熱定理を考慮するが、特定の理論に縛られることを望まない場合、初期時間tで量子システムが単体ハミルトニアンHの基底状態で始まり、時間パラメータtが初期時間tから最終時間tfinまで徐々に増加し、tからtfinまでの期間が十分に長い場合、その期間が経過した後、量子システムの状態は、総ハミルトニアンHの基底状態になるか、或いは、少なくとも総ハミルトニアンHの基底状態に十分に近似した状態になるであろう。換言すれば、時間依存性のハミルトニアンである補間ハミルトニアンH(t)の時間発展は、総ハミルトニアンHの基底状態をもたらすであろう。 H(t)は、H(t)=A(t)Σσ (k)+B(t)Σσ (k)+B(t)Σの形式を有するため、非可換演算子(non-commuting operators)の総和の指数関数を分解するためのトロッターの積公式(Trotter product formula)を用いることで、本発明者らは、H(t)のユニタリ時間発展が、ユニタリ演算子のシーケンスによって任意の精度で近似できることを見出した。シーケンス内の各ユニタリ演算子は、以下の通りである。
(a)問題ハミルトニアンH=Σσ (k)のユニタリ時間発展であるユニタリ演算子exp(iaH)であって、複数の調整可能なパラメータJが問題コード化設定に存在するか、或いは、
(b)2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子。
より具体的には、ケース(b)に属する各短距離ユニタリ演算子は、exp(ibσ)の形式又はexp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)の形式の何れかの演算子にすることができる。σ(X)σ(X)σ(X)σは、2次元格子のプラケットを形成する4つの各キュービットに関連付けられた4つのパウリ演算子σの(テンソル)積を表す。演算子exp(iaH)、exp(ibσ)及びexp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)の量a、b及びcはパラメータである。
各演算子がケース(a)又は(b)に属するユニタリ演算子のシーケンスに従って量子システムが発展するN回の演算を実行することにより、総ハミルトニアンH=H +HSR =Σσ (k)+Σの基底状態の基底状態(の近似)を決定できる。演算子exp(iaH)、exp(ibσ)及びexp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)のパラメータa、b及びcは、異なる回で変更可能である(変動パラメータである)。低エネルギー部分空間はσ(X)σ(X)σ(X)σの変化の下でゲージ不変であるため、制約強度は自由パラメータを気にする。相互作用と局所的なフィールドとの分離により、演算子exp(iaH)及びexp(ibσ)は、単一キュービット回転(single-qubit rotations)と位相回転(の積)として実現可能である。プログラム可能な(したがって、無秩序な)ハミルトニアンはHだけである。相互作用を含む演算子(すなわち、exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ))は問題に依存しない。この相互作用の独立性及びコード化された問題により、2つのキュービットゲートは均一であり、以下では、並列化可能な実行について説明する。
図13は、2次元格子に沿って配置された複数のキュービットの例を示す。キュービット(円で表される)のz成分は、2つのスピンi及びj(符号12,13,・・で表される)の相対的な座標を表し、最適化問題は、本明細書に記載のように、例えば、図9~図12に関連して、各キュービットに作用する局所的なフィールドでコード化される。相互作用は、格子のプラケットに関連する4体相互作用であり、図13に正方形で表されている。ユニタリ演算子exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)を実現するために必要な4体相互作用は、問題に依存しないため、各プラケットで同一である。これらの各プラケットの条件は、図14に示すように、6つのCNOTゲート1410及び1つの単一キュービット回転(single-qubit rotation)1420(z回転)を使用して実現可能である。最初の3つのCNOTゲートは、4つの全てのキュービットを接続する経路に沿って実行でき、その後に単一キュービット回転1420が続き、最後の3つのCNOTゲートが経路に沿って逆の順序で実行される。図14に示すようなZ字状の経路を使用できる。他の経路、例えば、プラケットに沿った時計回りの経路も可能である。図14に示すゲートシーケンスを使用して各プラケット演算子exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)を実現すると、図15に示すような特定の連結グラフが得られる。図16に示すように、2次元の規則的な正方格子に再配置することにより、CNOTゲートは最近傍のみに作用する。プラケットの相互作用は、物理グラフにおける2つのプラケットを結ぶ線に沿ったCNOTゲートのシーケンスに変換される。これらの相互作用は全てのプラケットで同一であるため、並列に実行できる。図17は、7つの並列ゲート演算で構成される全ての4体相互作用を実現するための、並列CNOTゲートのシーケンス(線で表される)及びZ回転(正方形で表される)の例を示す。全てのプラケットに到達するために、パターンは1行上にシフトされ、1列右にシフトされ、右上にシフトされ(矢符で表される)、繰り返される。このようにして、システムサイズに関係なく、全ての制約を実現するために、合計28個の並列ゲートが使用される。
図13~図17は、4体プラケットを有する2次元正方格子の例を示しているが、他の2次元格子(例えば、六方格子)も同様の方法で扱うことができる。
プラケットの制約強度cσ(X)σ(X)σ(X)σは、z回転のみによって決定される。更に、CNOTゲートは、問題から独立しており、制約からも独立している。したがって、局所的なZ演算のみに無秩序が含まれ、全てのCNOTゲートは問題に依存せず、2次元グリッド上で並列化できる。
本明細書に記載のように、いくつかの実施形態は、フィードバック駆動法(本明細書に記載のよな適応回の演算)を含む。フィードバックには、ユニタリ演算子のシーケンスを適用した後に測定を実行し、古典的な最適化手法を使用して、演算子exp(iaH)、exp(ibσ)及びexp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)のパラメータa、b及びcを改善することが含まれる。上記のように、演算子のパラメータa、b及びcは自由パラメータであり、変更可能である。したがって、本明細書に記載の実施形態は、パラメータの大きなセットを変更可能である、すなわち、自由度の大きなセットがあり、効率的な方法で計算問題の解を計算することを可能にするという利点を提供する。
本明細書に記載の実施形態は、以下の少なくとも2つの考えられるアルゴリズムによる改善の方向を可能にする。すなわち、i)ユニタリ演算子のシーケンスにおける演算子の順序および形式を決定するプロトコル、及び、ii)変更可能なパラメータa、b、cの選択、である。例として、異なるアプローチを比較するために、フィードバックの繰り返し回数を固定したままにする。これが実験の制限要因だからである。演算の各回の初期状態は、計算ベースで均一な重ね合わせになるように、すなわち、全てのキュービットが状態|+>=|0>+|1>|になるように、選択される。説明のために、以下の3つの特定のプロトコルP1、P2及びP3を考える。
=T(a)X(b)T(a)X(b)・・・
=U(a)V(c)X(b)U(a)V(c)X(b)・・・
=U(a)V({cpl})X(b)U(a)V({cpl})X(b)・・・
ここで、T(a)=exp(-iaH)・Πplexp(-iaσ(X)σ(X)σ(X)σ)であり、Πplは2次元格子の全てのプラケットの積である。更に、X(b)=Πexp(-ibσ)であり、Πは格子の全てのキュービットに亘る積である。更に、U(a)=exp(-iaH)である。更に、V(c)=Πplexp(-icσ(X)σ(X)σ(X)σ)であり、係数cは各プラケットで同一である。更に、V({cpl})=Πplexp(-icplσ(X)σ(X)σ(X)σ)であり、係数cplはプラケット毎に異なる可能性がある。第1のプロトコルP1は、総ハミルトニアンの時間発展とドライバハミルトニアンの時間発展とを交互に繰り返す。第2のプロトコルP2は、局所的なフィールドの項と相互作用の項との間の分割を利用し、パラメータa、b及びcを個別に最適化するが、パラメータcは全てのプラケットについて同一に保つ。第3のプロトコルP3は、制約強度の更新、ひいては総ハミルトニアン自体の更新も含む。
範囲を制限することを意図することなく説明するために、3つのプラケットを有する正方格子上に配置されたK=6のキュービットでコード化された最適化問題を考えることができる。パラメータは、以下のモンテカルロ法を使用して最適化できる。
1)パラメータは、演算子exp(-iaH)に対してa=1となり、各演算子exp(-ibσ)、すなわち、各キュービットに対してb=1となり、各演算子exp(-icσ(X)σ(X)σ(X)σ)、すなわち、各プラケットに対してc=2となるように初期化される。結合係数の相互作用行列は、区間cij∈{-1,・・・,1}からランダムに選択される。
2)最終的な量子状態は、上記のプロトコルP1、P2及びP3に従って準備される。
3)総ハミルトニアンの期待値E及び総ハミルトニアンの基底状態に対する忠実度Fが決定される。
4)これがM=4000回繰り返され、各モンテカルロステップで、ランダムに選択されたパラメータが{-1,・・・,1}の範囲の乱数によって更新される。パラメータのセットは、期待値Eが減少した場合に受け入れられ、そうでない場合は拒否される。比較のために、パラメータを最適化して忠実度Fを直接改善することもできる。この場合、忠実度が上がると更新が受け入れられる。
5)この手順は、cijのランダムなインスタンスに対して繰り返される。平均値は、L=2000の実現化に亘って取得される。3つのプロトコルは、繰り返し回数m=1、2及び3について同じインスタンスを使用して比較される。第3のプロトコルでは、{cpl}の更新が10ステップごとに実行される。
図18(a)~(d)は、プロトコルP1、P2及びP3を比較しての忠実度を示す。図18(a)は、繰り返しサイクル数の関数として、最終状態と総ハミルトニアンの基底状態との重なりとして定義される平均忠実度を示す。平均値は、Fを最適化するL=400のランダムインスタンス(破線で表される)及び期待値Eを最適化するL=2000のインスタンス(実線で表される)で取得される。図示のように、プロトコルP1は繰り返し回数と共に向上する。問題ハミルトニアン(プロトコルP2)を分離し、制約(プロトコルP3)も最適化すると、全てのm、つまり繰り返し回数の忠実度が向上する。図18(b)は、期待値(実線)及び忠実度(破線)を最適化する、パネルm=3の繰り返しと同じパラメータの忠実度の正規化されたヒストグラムPを示す。図18(c)は、図18(a)と同じパラメータを使用した忠実度最適化の散布図を示し、m=2の繰り返しで、プロトコルP1とプロトコルP2とを直接比較し、プロトコルP1とプロトコルP3とを直接比較している。図18(d)は、m=3の繰り返しサイクルでの図18(c)のようなプロトコルを比較する忠実度の散布図を示す。
図18(a)に示すように、局所的なフィールドの項と相互作用の項との分離は有利であり、プロトコルP3を使用した制約の追加の最適化は、忠実度を更に改善する。このプロトコルは、より多くの測定が使用される場合、更なる改善をもたらす可能性があることに注意されたい。種々のプロトコルの忠実度のヒストグラムは、プロトコルP3が最高の平均パフォーマンスを示し、F=1に近い忠実度で最大の寄与を示している(図18(b)参照)。プロトコルの直接比較[図18(c)-(d)参照]は、プロトコルP3と比較して、プロトコルP1を使用すると、殆どのインスタンスの忠実度が低くなることを示している。
図19(a)~(c)は、本明細書に記載のように、exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)の形式のプラケット演算子が、補助粒子のシャトリングによってどのように実行できるかを示す。
図19(a)は、4つのキュービット1942、1944、1946及び1948、並びに補助キュービット1950を示す。9つのユニタリ演算のシーケンス、すなわち、4つのCNOTゲート1910の第1のシーケンス、それに続くボックス1920で表される単一キュービット回転exp(icσ)、それに続く4つのCNOTゲート1910の第2のシーケンスが示されている。各CNOTゲートは、補助キュービットと非補助キュービットの1つとに作用する。単一キュービット回転exp(icσ)は、補助キュービットのみに作用する。
図19(b)は、2次元格子のプラケットのキュービットとして配置された4つのキュービット1942、1944、1946及び1948を示す。キュービット1942、1944、1946及び1948は、それぞれプラケットの「北」、「東」、「南」及び「西」キュービットと呼ばれることがある。補助キュービット1950は、プラケット上の4つのキュービット1942、1944、1946及び1948の間に位置する。図19(a)の4つのCNOT演算の第1のシーケンスは、補助キュービット1950をプラケットの各キュービットに移動させる(及びその逆)ことと、各CNOTゲートを適用することで、実行可能である。これらの4つのCNOT演算が実行された後、単一キュービット回転exp(icσ)を補助キュービット1950に適用できる。その後、補助キュービット1950をプラケットの各キュービットに再び移動することと、各CNOTゲートを適用することで、4つのCNOT演算の第2のシーケンスを実行可能である。
図19(c)は、図19(b)の補助粒子と同様の補助キュービットが格子のプラケットのサブセットに配置されている2次元格子の一部を示す。補助キュービットが配置されるプラケットのサブセットは以下の通りである。格子のプラケットは、格子の辺を共有しない場合、任意の2つのプラケットが同じ色を有するように、2色(「黒」及び「白」)で着色できる(「2着色」)。図19(c)に関して考慮されたプラケットのサブセットは、格子のプラケットが全て「白い」プラケットのセットである可能性がある。プラケット演算子exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)は、図19(a)、(b)に関して説明したように、関連する補助粒子をシャトリングすることにより、サブセット内の各プラケットについて実行可能である。問題のCNOT演算はシステム内の異なるキュービットに作用するため、サブセットの全てのプラケットに亘って、関連するプラケットの「北」キュービットに向かう補助キュービットの移動と、それに続くCNOT演算とを並列に実行できる。同様に、全ての「東」、「南」、「西」の移動を並列に実行できる。格子の「黒い」プラケットのサブセットに対して同じ手順を繰り返すと、全てのプラケット演算子exp(icσ(X)σ(X)σ(X)σ)が適用される。すなわち、格子の全てのプラケットに適用される。したがって、補助粒子のシャトリングは、ユニタリ演算の高度な並列化を可能にする。更なる利点として、各(非補助)キュービットは全ての第2のステップで使用され、各補助キュービットは全ての単一ステップで使用される。
図19(a)~(c)は、4体プラケットを有する2次元正方格子の例を示しているが、他の2次元格子(例えば、六方格子)も同様の方法で扱うことができる。
上記に照らして、本明細書に記載の実施形態は、それぞれドライバハミルトニアン及び問題ハミルトニアンに対応するユニタリ演算子によって表される量子クエンチ(quantum quenches)のシーケンスを適用することによって量子計算を実行する方法を含む。繰り返し回数は少なくすることができ、各ユニタリの角度は、古典的なフィードバックループを介して最適化される自由パラメータである。量子システムに適用されるユニタリ演算は、最近傍CNOT演算子及び単一キュービット回転のみを含んでもよい。本明細書に記載の実施形態は、網羅的に接続された組み合わせ最適化問題(all-to-all connected combinatorial optimization problems)を解くことを可能にする。計算問題を単体の問題ハミルトニアンにマッピングすることにより、問題は局所的なフィールドによって完全に決定されるが、相互作用は均一で問題に依存しない。したがって、本明細書に記載の実施形態は、対ユニタリ演算子(pair-wise unitary operators)が最近傍接続性(nearest-neighbor connectivity)を有する正方格子上で並列に実行され得る量子計算方法を提供する。量子計算の実行に使用されるユニタリ演算子(ゲート)には、(i)exp(itσ)形式の単体ユニタリ演算、(ii)exp(itσ)形式の単体ユニタリ演算、及び、(iii)最近傍CNOT演算及びキュービット回転から構成される問題に依存しない相互作用が含まれる。本明細書に記載の実施形態は、方法の効率を高めるために使用することができる追加の自由パラメータを更に導入する。
上述の内容は本発明のいくつかの実施形態を対象にしているが、それ以外の更なる実施形態についても、特許請求の範囲によって決まる範囲から逸脱することなく創出されてもよい。

Claims (15)

  1. 量子計算を実行する方法であって、
    複数のキュービットを有する量子システムを提供するステップと、
    計算問題を前記量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップであって、前記問題ハミルトニアンが、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、前記コード化が、前記計算問題から前記複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む、前記コード化するステップと、
    N(N≧2)回の演算を実行するステップと、
    前記量子計算の結果を出力するステップと、を有し、
    前記演算の各回は、
    ユニタリ演算子のシーケンスを決定する手順であって、前記シーケンス内の各ユニタリ演算子が、前記問題ハミルトニアンの前記複数の調整可能なパラメータが前記問題コード化設定に存在する、前記問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であるユニタリ演算子であるか、或いは、前記シーケンス内の各ユニタリ演算子が、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積であるユニタリ演算子である、前記シーケンスを決定する手順と、
    前記ユニタリ演算子のシーケンスを前記量子システムに適用することにより、前記量子システムを発展させる手順と、
    前記量子システムの1つ又は複数のキュービットの測定を実行する手順と、を含む、
    量子計算方法。
  2. 前記N回の演算が、1つ又は複数の適応回の演算を含み、各適応回の演算について、前記適応回のユニタリ演算子のシーケンスのユニタリ演算子は、前記N回の演算よりも前の回の演算で実行された測定の少なくとも1つの測定結果に基づいて決定される、請求項1に記載の量子計算方法。
  3. 前記N回の演算に含まれる2つ以上の短距離ユニタリ演算子の各積が、一定の深さに並列化可能である、請求項1又は2に記載の量子計算方法。
  4. 前記N回の演算のそれぞれのユニタリ演算子のシーケンスは、Ai及びBiを交互に並べた形式のシーケンスであり、
    各Aiは、前記問題ハミルトニアンのユニタリ時間発展であり、前記問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが、前記問題コード化設定に存在し、
    各Biは、2つ以上の短距離ユニタリ演算子の積である、請求項1から3の何れかに記載の量子計算方法。
  5. 前記N回の演算が、第1回の演算を含み、前記第1回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを適用することで、前記量子システムの第1の量子状態が得られ、
    前記量子計算方法が、前記第1の量子状態のエネルギーを測定するステップを有する、請求項1から4の何れかに記載の量子計算方法。
  6. 前記N回の演算が、前記第1回の演算の後に実行される第2回の演算を含み、前記第2回の演算のユニタリ演算子のシーケンスを適用することで、前記量子システムの第2の量子状態が得られ、
    前記量子計算方法が、
    前記第2の量子状態のエネルギーを測定するステップと、
    前記第1の量子状態のエネルギーを前記第2の量子状態のエネルギーと比較するステップと、
    前記N回の演算の第3回で適用されるユニタリ演算子のシーケンスを決定するステップであって、前記第3回が、前記第2回の後に実行され、前記第3回で適用されるユニタリ演算子のシーケンスが、少なくとも、前記第1の量子状態のエネルギーを前記第2の量子状態のエネルギーと比較することによって決定される、前記決定するステップと、を有する請求項5に記載の量子計算方法。
  7. 前記問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータが、前記複数のキュービットに作用する単体フィールドの複数のフィールド強度及び/又は複数のフィールド方向を含む、請求項1から6の何れかに記載の量子計算方法。
  8. 前記問題ハミルトニアンがΣσ (k)の形式を有し、σ (k)が前記複数のキュービットのうちのk番目のキュービットのパウリ演算子であり、各Jが係数であり、前記係数Jが前記問題ハミルトニアンの複数の調整可能なパラメータを形成する、請求項1から7の何れかに記載の量子計算方法。
  9. 前記複数のキュービットが、2次元格子に沿って配置されている、請求項1から8の何れかに記載の量子計算方法。
  10. 前記複数のキュービットが、2次元格子に沿って配置され、前記N回の演算のそれぞれの各短距離ユニタリ演算子が、前記2次元格子の隣接するキュービットに作用する2体ユニタリ演算子又は単体ユニタリ演算子である、請求項1から9の何れかに記載の量子計算方法。
  11. 前記N回のそれぞれの各短距離演算子が、制御ノット演算子又は単体ユニタリ演算子である、請求項1から10の何れかに記載の量子計算方法。
  12. 前記計算問題が、NP困難問題(具体的にはイジングスピンモデル問題)であり、前記量子計算の出力結果が前記NP困難問題の解である、請求項1から11の何れかに記載の量子計算方法。
  13. 前記量子システムが、第1の補助粒子を含む複数の補助粒子を有し、
    前記量子計算方法が、
    前記複数のキュービットのうちの第1のキュービットを前記第1の補助粒子と結合するステップと、
    前記第1の補助粒子を前記第1のキュービットから前記複数のキュービットのうちの第2のキュービットに移動させるステップと、
    前記第2のキュービットを前記第1の補助粒子と結合するステップと、を更に有する請求項1から12の何れかに記載の量子計算方法。
  14. 量子計算を実行する装置であって、
    複数のキュービットを有する量子システムと、
    古典的計算システムと、
    前記古典的計算システムに接続された単体処理装置と、
    前記古典的計算システムに接続された短距離結合装置と、
    前記古典的計算システムに接続された測定装置と、を備え、
    前記古典的計算システムは、計算問題を入力として受信するステップと、前記計算問題を前記量子システムの問題ハミルトニアンにコード化するステップであって、前記問題ハミルトニアンが、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、前記コード化が、前記計算問題から前記複数の調整可能なパラメータに対する問題コード化設定を決定する手順を含む、前記コード化するステップと、を実行するように構成されており、
    前記単体処理装置は、前記古典的計算システムから、前記複数の調整可能なパラメータの問題コード化設定を受信するステップと、前記問題ハミルトニアンの時間発展に従って前記量子システムを発展させるステップと、を実行するように構成されており、
    前記短距離結合装置は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンの時間発展に従って前記量子システムを発展させるステップを実行するように構成されており、
    前記測定装置は、前記複数のキュービットの少なくとも一部を測定するように構成されており、
    前記古典的計算システムは、前記単体処理装置及び/又は短距離結合装置に指示するステップと、前記測定装置から測定結果を受信するステップと、前記量子計算の結果を出力するステップと、を更に実行するように構成されている、
    量子計算装置。
  15. ゲート型の量子計算を実行する装置であって、
    複数の超伝導キュービットを有する量子システムと、
    制御装置と、
    前記制御装置に接続された磁束バイアスアセンブリと、
    前記制御装置に接続された結合装置と、
    前記制御装置に接続された測定装置と、を備え、
    前記磁束バイアスアセンブリは、複数の調整可能な時間依存性の磁束を生成するように構成された複数の磁束バイアスユニットを有し、各調整可能な時間依存性の磁束が、前記複数の超伝導キュービットのうちの単一の超伝導キュービットに作用し、
    前記結合装置は、1つ又は複数の短距離ハミルトニアンに従って前記複数の超伝導キュービットを結合するように構成された少なくとも1つの超伝導量子干渉装置を有し、
    前記測定装置は、前記複数のキュービットの少なくとも一部を測定するように構成されており、
    前記制御装置は、演算のシーケンスに従って前記量子システムを発展させるように、前記磁束バイアスアセンブリ及び前記結合装置に指示するように構成されており、
    前記制御装置は、問題ハミルトニアンの時間発展によって前記量子システムを発展させるように、前記磁束バイアスアセンブリに指示するように構成されており、前記問題ハミルトニアンが、複数の調整可能なパラメータを有する単体ハミルトニアンであり、前記複数の調整可能なパラメータが、計算問題をコード化しており、
    前記制御装置は、短距離ハミルトニアンの時間発展に従って前記量子システムを発展させるように、前記結合装置に指示するように構成されている、
    量子計算装置。
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