JP2022518506A - キナーゼ依存性障害の治療のための化合物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、プロテインキナーゼ酵素活性を調節することによって、増殖、分化、プログラム細胞死、遊走、及び化学浸潤のような細胞活性を調節する化合物、ならびにそれらの組成物、ならびにそのような化合物を使用する方法に関する。

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2019年1月25日に出願された米国仮特許出願第62/797,130号及び2019年7月24に出願された米国仮特許出願第62/878,173号に対する優先権を主張し、それら双方の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、プロテインキナーゼ酵素活性を調節することによって、増殖、分化、プログラム細胞死、遊走、及び化学浸潤のような細胞活性を調節する化合物、ならびにそれらの組成物、ならびにそのような化合物を使用する方法に関する。
ヒトAxlはMerを含む受容体型チロシンキナーゼのTAMサブファミリーに属する。TAMキナーゼは、2つの免疫グロブリン様ドメインと2つのフィブロネクチンIII型ドメインから成る細胞外リガンド結合ドメインを特徴とする。Axlはいくつかの腫瘍細胞型で過剰発現しており、慢性骨髄性白血病の患者から最初にクローン化された。過剰発現すると、Axlは形質転換能を示す。Axlシグナル伝達は、増殖性及び抗アポトーシス性のシグナル伝達経路の活性化を介して腫瘍増殖を引き起こすと考えられている。Axlは、肺癌、骨髄性白血病、子宮癌、卵巣癌、神経膠腫、黒色腫、甲状腺癌、腎細胞癌、骨肉腫、胃癌、前立腺癌、乳癌のようながんに関連づけられている。Axlの過剰発現は、示されたがんの患者の予後不良をもたらす。
Merの活性化は、Axlと同様に、腫瘍の増殖と活性化を引き起こす下流のシグナル伝達経路を伝達する。Merは可溶性タンパク質Gas-6のようなリガンドと結合する。Gas-6がMerに結合すると、細胞内ドメインでMerの自己リン酸化が誘導され、下流のシグナルの活性化を生じる。がん細胞におけるMerの過剰発現は、おそらくデコイ受容体として可溶性Mer細胞外ドメインタンパク質が生成されることにより、転移の増加をもたらす。腫瘍細胞は、可溶性Gas-6リガンドが内皮細胞上でMerを活性化する能力を低下させる細胞外Mer受容体の可溶性型を分泌し、がんの進行を引き起こす。
したがって、選択されたがんの治療のために、AxlやMerのようなTAM受容体チロシンキナーゼを阻害する化合物が必要とされる。
一態様では、本発明は、式I’:
Figure 2022518506000001

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
AはC1-6アルコキシ、またはC(O)NRであり、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
はハロであり、
はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
はハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
及びRはそれぞれ独立してHまたはC1-6アルキルであり、
R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
、Q、及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
xは0、1、2、3または4であり、
yは0、1、2、3または4であり、
zは0、1、2、3、4または5である。
別の態様では、本発明は、式I:
Figure 2022518506000002

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
はハロであり、
はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
はハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
xは0、1、2、3または4であり、
yは0、1、2、3または4であり、
zは0、1、2、3、4または5である。
別の態様は、式II:
Figure 2022518506000003

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
2aはHまたはハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択される。
別の態様は、プロテインキナーゼの生体内活性を調節することが少なくとも部分的に介在する疾患、障害、または症候群の治療のために、式I’、式Iまたは式IIの化合物または薬学的に許容されるその塩を使用する方法を提供する。
さらなる態様は、式I’、式I及び式IIの化合物を製造するためのプロセスを提供する。
これら及び他の態様及び実施形態を以下に説明する。
略語と定義
以下の略語及び用語は、全体を通して、ここで示された意味を有する。
Figure 2022518506000004
Figure 2022518506000005
記号「-」は単結合を意味し、「=」は二重結合を意味する。
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形の参照を含む。
可変要素が一般的に定義され、いくつかの可能な置換基がある場合、個々のラジカルそれぞれは結合の有無にかかわらず定義することができる。例えば、Rが水素であることができれば、これは、Rの定義にて「-H」または「H」として示すことができる。
化学構造が描かれている、または記載されている場合、別様に明記されていない限り、炭素はすべて4価に適合する水素置換を有すると見なされる。例えば、下の概略図の左側の構造には9つの水素が暗示されている。9つの水素は右側の構造で描かれている。構造における特定の原子は、テキスト式で、置換として水素(単数)または水素(複数)(明示的に定義された水素)を有するもの、例えば、-CHCH-として記載されることがある。前述の記述手法は、そうでなければ複雑な構造となる記述に簡潔さと単純さを提供するために化学技術において一般的であることが当業者によって理解される。
Figure 2022518506000006
本明細書で使用されるとき、波線
Figure 2022518506000007

は化学部分の結合点を示すことができる。例えば、構造
Figure 2022518506000008

では、フェニル基はメチル基に対してパラ位にて分子の残りの部分に結合される。
基「R」が環系上で「フローティング」として、例えば、次の式のように表されているならば、
Figure 2022518506000009

特に定義されていない限り、置換基「R」は、安定な構造が形成される限り、環原子の1つからの図示される、暗示される、または明示的に定義される水素の置換を仮定して、環系の任意の原子上に存在してもよい。
基「R」が飽和炭素を含有する環系に存在するものとして、例えば、次の式で描かれ、
Figure 2022518506000010

この例において、「y」が、それぞれが、環上に現在描かれている、暗示されている、または明示的に定義されている水素を置き換えると仮定して複数であることができる場合、特に定義されていない限り、結果として得られる構造が安定している場合、2つの「R」は同じ炭素上に存在してもよい。簡単な例は、Rがメチル基の場合、描かれている環の炭素(「環状」炭素)上にジェミナルジメチルが存在することができることである。別の例では、同じ炭素(その炭素を含む)上の2つのRが環を形成してもよく、したがって、例えば、次の式のように、描写された環を有するスピロ環(「スピロシクリル」基)構造を作り出してもよい。
Figure 2022518506000011
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
「Cn-m」または「C-C」という用語は端点を含む範囲を示し、その際、n及びmは整数であり、炭素の数を示す。例には、C1-4、C-C、C1-6、C-C、などが挙げられる。
「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びヘプチルのような、1~8の炭素原子の分岐鎖または直鎖の炭化水素鎖を指す。「Cn-mアルキル」または(C-C)アルキルという用語はnからm個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
「アルキレン」は、1~10の炭素原子、1~8の炭素原子、1~6の炭素原子、1~4の炭素原子、または1~2の炭素原子を有する任意で置換された二価の飽和脂肪族ラジカルを指す。「Cn-mアルキレン」という用語はnからm個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。アルキレン基の例には、メチレン、エタン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,3-ジイルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「アルコキシ」基は、アルキル-O-基を指し、「アルキル」は前に定義されている。
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクロ」は、環構造の一部として1以上のアルケニレン基を任意で含有してもよく、ホウ素、窒素、イオウ、酸素、及びリンから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子環員を有し、4~14の環員、4~10の環員、4~7の環員、または4~6の環員を有する非芳香族の環または環系を指す。「ヘテロシクロアルキル」という用語の範囲内に含まれるのは、単環式の4-、5-、6-、及び7-員環のヘテロシクロアルキル基である。ヘテロシクロアルキル基は、単環式または二環式または多環式の(例えば、2または3の縮合環または架橋環を有する)環系またはスピロ環を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、窒素、イオウ、及び酸素から独立して選択される1、2、または3個のヘテロ原子を有する単環式基である。ヘテロシクロアルキル基の環形成炭素原子及びヘテロ原子は任意で酸化されて、オキソ基またはスルフィド基または他の酸化された結合(例えば、C(O)、S(O)、C(S)、S(O)、N-オキシドなど)を形成することができ、または窒素原子を四級化することができる。ヘテロシクロアルキル基は環形成炭素原子または環形成ヘテロ原子を介して結合することができる。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は0~3の二重結合を含有する。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は0~2の二重結合を含有する。ヘテロシクロアルキルの定義に含まれるのはまた、ヘテロシクロアルキル環、例えば、ピペリジン、モルフォリン、アゼピンなどのベンゾ誘導体またはチエニル誘導体に縮合した(すなわち、共通の結合を有する)1以上の芳香環を有する部分である。縮合芳香環を含有する縮合芳香環を含むヘテロシクロアルキル基は、縮合芳香環の環形成原子を含む、任意の環形成原子を介して結合することができる。ヘテロシクロアルキル基の例には、アゼチジニル、アゼパニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、モルホリノ、3-オキサ-9-アザスピロ[5.5]ウンデカニル、1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デカニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、ピラニル、ピロリジニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、トロパニル、4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジニル、及びチオモルホリノが挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「脱離基」(LG)は、不均等結合開裂において電子対と共に離れる分子断片を指す当該技術分野で理解されている用語であり、その際、分子断片はアニオン分子または中性分子である。本明細書で使用されるとき、脱離基は求核試薬によって置換され得る原子または基であることができる。例えば、Smith,March Advanced Organic Chemistry,6th ed.(501-502)を参照のこと。例示的な脱離基には、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)、-ORLG(O原子がカルボニル基に結合している場合)、-O(C=O)RLG、または-O(SO)LG(例えば、トシル、メシル、ベシル)が挙げられるが、これらに限定されず、その際、RLGは任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアリール、または任意で置換されたヘテロアリールである。ある特定の実施形態では、脱離基はハロゲンである。
本明細書に記載されている反応のそれぞれについての「収率」は理論収量の百分率として表される。
本発明の目的のための「患者」には、ヒト及び他の動物、特に哺乳動物、及び他の生物が含まれる。したがって、この方法はヒトの治療と獣医用途の双方に適用できる。好ましい実施形態では、患者は哺乳動物であり、最も好ましい実施形態では、患者はヒトである。好ましい哺乳動物の例には、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、及び霊長類が挙げられる。
「キナーゼ依存性の疾患または状態」は、1以上のキナーゼの活性に依存する病的状態を指す。キナーゼは、増殖、接着、遊走、分化、及び浸潤を含む種々の細胞活動のシグナル伝達経路に直接的にまたは間接的に関与する。キナーゼ活性に関連する疾患には、腫瘍増殖や、固形腫瘍増殖を支援する、及び眼疾患(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症など)及び炎症(乾癬、関節リウマチなど)のような過剰な局所血管新生が関与する他の疾患に関連する病的血管新生が含まれる。
「治療有効量」は、患者に投与されたときに疾患の症状を改善する本発明の化合物の量である。「治療有効量」とみなされる本発明の化合物の量は、化合物、病状及びその重症度、治療される患者の年齢などに応じて変化するであろう。治療有効量は、当業者によって、自身の知識及び本開示を考慮して日常的に決定することができる。
「がん」は:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;頭頸部:頭頸部の扁平上皮癌、喉頭癌及び下咽頭癌、鼻腔癌及び鼻傍洞癌、鼻咽頭癌、唾液腺癌、口腔癌及び咽頭癌;肺:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌、非小細胞の肺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支の腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過誤腫、中皮腫;結腸:大腸癌、腺癌、消化管間質の腫瘍、リンパ腫、カルチノイド、ターコット症候群;胃腸:胃癌、胃食道接合部腺癌、食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カルポシ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);乳癌:転移性乳癌、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、管状腺癌、髄質癌、粘液性癌、非浸潤性小葉癌、トリプルネガティブ乳癌;泌尿生殖器:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病、腎細胞癌)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌、尿路上皮癌)、前立腺(腺癌、肉腫、去勢耐性前立腺癌)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫)、明細胞癌、乳頭癌;肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨形成性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(網状細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞性軟骨腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、及び巨細胞腫瘍;甲状腺:甲状腺髄様癌、分化型甲状腺癌、乳頭状甲状腺癌、濾胞性甲状腺癌、ヒュルトレ細胞癌、及び未分化甲状腺癌;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜腫(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚芽腫[松果体腫瘍]、多形性神経膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、腫瘍前子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、肉芽腫-髄腔細胞腫瘍、セルトリ-ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胚性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫);血液:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ異形成性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫を含むが、これらに限定されない細胞増殖性疾患の状態を指す。したがって、本明細書で提供されているような「がん性細胞」という用語は、上記で特定された状態のいずれか1つを患う細胞を含む。
「薬学的に許容される塩」には、「薬学的に許容される酸付加塩」及び「薬学的に許容される塩基付加塩」が含まれる。「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、生物学的にまたはその他の望ましくないものではなく、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸、ならびに例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などのような有機酸と共に形成される塩を指す。
「薬学的に許容される塩基付加塩」には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などのような無機塩基に由来するものが挙げられる。例示的な塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩には、一級、二級、及び三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などのような塩基性イオン交換樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、及びカフェインである。(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、S.M.Berge,et al.,”Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977;66:1-19を参照のこと。)
本明細書で使用されるとき「化合物」という用語は、描写される構造の立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体すべてを含むことを意味する。その用語はまた、それらがどのように、例えば、合成的に、生物学的プロセス(例えば、代謝または酵素変換)、またはそれらの組み合わせに介して調製されるかに関係なく、本発明の化合物を指すことを意味する。
本発明の化合物はまた、中間体または最終化合物に存在する原子の同位体すべてを含むこともできる。同位体には同じ原子番号を有するが、質量数が異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体にはトリチウムと重水素が挙げられる。
本明細書で開示されている及び/または請求されているプロセスステップまたはプロセス順序のいずれも、不活性気体の雰囲気下、さらに具体的にはアルゴンまたは窒素のもとで実施することができる。加えて、本発明の方法は、半連続的または連続的なプロセスとして、さらに好ましくは連続的プロセスとして実施することができる。
さらに、本明細書に記載されているプロセスステップ及びプロセス順序の多くはテレスコーピングを行うことができる。
一般に、本出願で使用される命名法は国際純正応用化学連合(IUPAC)によって採用された命名規則に基づく。本明細書に示す化学構造はCHEMDRAW(登録商標)を使用して作成された。本明細書の構造における炭素原子、酸素原子、または窒素原子に現れる任意の開放原子価は水素原子の存在を示す。
本発明の実施形態
一態様は、式I’:
Figure 2022518506000012

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
AはC1-6アルコキシ、またはC(O)NRであり、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
はハロであり、
はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
はハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
及びRはそれぞれ独立してHまたはC1-6アルキルであり、
R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
、Q、及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
xは0、1、2、3または4であり、
yは0、1、2、3または4であり、
zは0、1、2、3、4または5である。
いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルまたは
Figure 2022518506000013

である。いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000014

である。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000015

である。
いくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、Rはハロである。いくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはそれぞれ独立してFである。
この態様のいくつかの実施形態では、xは0または1である。いくつかの実施形態では、yは0または1である。またいくつかの実施形態では、zは0または1である。いくつかの実施形態では、x、y、及びzはそれぞれ独立して0または1である。いくつかの実施形態では、yは0である。いくつかの実施形態では、zは1である。いくつかの実施形態では、yは0であり、zは1である。
この態様のいくつかの実施形態では、R及びRの一方は-CHR’R”であり、他方はHである。この態様のいくつかの実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、R及びRはそれぞれ独立して-CHR’R”である。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、R及びRはそれぞれメチルである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHO-(C-Cアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rはs-CHO-(C-Cアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、QはCHである。この態様のいくつかの実施形態では、QはCHである。いくつかの実施形態では、Q及びQはそれぞれCHである。この態様のいくつかの実施形態では、QはCHであり、QはNである。他の実施形態では、QはNであり、QはCHである。さらに他の実施形態では、Q及びQはそれぞれNである。
この態様のいくつかの実施形態では、AはC1-6アルコキシである。別の実施形態では、Aはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、またはt-ブトキシである。さらなる実施形態では、Aはメトキシである。
この態様のいくつかの実施形態では、AはC(O)NRであり、その際、R及びRはそれぞれ独立してHまたはC1-6アルキルである。
一実施形態では、R及びRの一方はHであり、他方はC1-6アルキルである。別の実施形態では、R及びRの双方がHである。別の実施形態では、R及びRの双方がC1-6アルキルである。
いくつかの実施形態では、各C1-4アルキルは独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、またはt-ブチルである。さらなる実施形態では、各C1-4アルキルはメチルである。
いくつかの実施形態では、QはCHである。いくつかの実施形態では、QはNである。
別の態様は、式I:
Figure 2022518506000016

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
はハロであり、
はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
はハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
xは0、1、2、3または4であり、
yは0、1、2、3または4であり、
zは0、1、2、3、4または5である。
いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルまたは
Figure 2022518506000017

である。いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000018

である。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000019

である。
この態様のいくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、Rはハロである。いくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、RはFである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRはそれぞれ独立してFである。
この態様のいくつかの実施形態では、xは0または1である。いくつかの実施形態では、yは0または1である。またいくつかの実施形態では、zは0または1である。いくつかの実施形態では、x、y、及びzはそれぞれ独立して0または1である。いくつかの実施形態では、yは0である。いくつかの実施形態では、zは1である。いくつかの実施形態では、yは0であり、zは1である。
この態様のいくつかの実施形態では、R及びRの一方は-CHR’R”であり、他方はHである。この態様のいくつかの実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、R及びRはそれぞれ独立して-CHR’R”である。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、R及びRはそれぞれメチルである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHO-(C-Cアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rはs-CHO-(C-Cアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、QはCHである。この態様のいくつかの実施形態では、QはCHである。いくつかの実施形態では、Q及びQはそれぞれCHである。この態様のいくつかの実施形態では、QはCHであり、QはNである。他の実施形態では、QはNであり、QはCHである。さらに他の実施形態では、Q及びQはそれぞれNである。
この態様のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は式IA:
Figure 2022518506000020

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、Q、Q、x、y及びzは、式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、Rは-CHR’R”である(その際、R’及びR”は式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりである)。この実施形態のいくつかの実施形態では、Rはメチルである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOHである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は式IA-1:
Figure 2022518506000021

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、Q、Q、x、y及びzは式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、R’”はHまたはメチルである。この実施形態のいくつかの実施形態では、R’”はHである。
この態様のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は式IB:
Figure 2022518506000022

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、Q、Q、x、y及びzは、式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、Rは-CHR’R”である(その際、R’及びR”は式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりである)。この実施形態のいくつかの実施形態では、Rはメチルである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOHである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、式Iの化合物は式IB-1:
Figure 2022518506000023

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、Q、Q、x、y及びzは式Iの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、R””はHまたはメチルである。この実施形態のいくつかの実施形態では、R””はHである。
別の態様は、式II:
Figure 2022518506000024

の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し、式中、
はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
2aはHまたはハロであり、
及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
R’及びR”のそれぞれは独立してH、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択される。
いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルまたは
Figure 2022518506000025

である。いくつかの実施形態では、RはC1-6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000026

である。他の実施形態では、R
Figure 2022518506000027

である。
この態様のいくつかの実施形態では、R2aはHまたはFである。いくつかの実施形態では、R2aはHである。別の実施形態では、R2aはFである。
この態様のいくつかの実施形態では、R及びRの一方は-CHR’R”であり、他方はHである。この態様のいくつかの実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、Rは-CHR’R”であり、RはHである。この態様の他の実施形態では、R及びRはそれぞれ独立して-CHR’R”である。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルであり、RはHである。いくつかの実施形態では、R及びRはそれぞれメチルである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。いくつかの実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、式IIの化合物は式IIA:
Figure 2022518506000028

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R及びR2aは式IIの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、Rは-CHR’R”である(その際、R’及びR”は式IIの実施形態のいずれかで定義されているとおりである)。この実施形態のいくつかの実施形態では、Rはメチルである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOHである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOCHである。この態様のいくつかの実施形態では、式IIの化合物は式IIA-1:
Figure 2022518506000029

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R及びR2aは式IまたはIIの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、R’”はHまたはメチルである。この実施形態のいくつかの実施形態では、R’”はHである。この実施形態のいくつかの実施形態では、R’”はメチルである。
この態様のいくつかの実施形態では、式IIの化合物は式IIB:
Figure 2022518506000030

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R及びR2aは式IIの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、Rは-CHR’R”である(その際、R’及びR”は式IIの実施形態のいずれかで定義されているとおりである)。この実施形態のいくつかの実施形態では、Rはメチルである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOHである。この実施形態の他の実施形態では、Rは-CHOCHである。
この態様のいくつかの実施形態では、式IIの化合物は式IIB-1:
Figure 2022518506000031

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R及びR2aは式IまたはIIの実施形態のいずれかで定義されているとおりであり、R””はHまたはメチルである。この実施形態のいくつかの実施形態では、R””はHである。
いくつかの実施形態では、式I’の化合物は式IIIa:
Figure 2022518506000032

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、Q、Q、x及びzは式I’の実施形態のいずれかで定義されているとおりである。
いくつかの実施形態では、式I’の化合物は式IIIb:
Figure 2022518506000033

の化合物または薬学的に許容されるその塩であり、式中、R、R、R、R、R,R,Q、Q、x及びzは式I’の実施形態のいずれかで定義されているとおりである。
いくつかの実施形態では、AはC1-6アルコキシである。さらなる実施形態では、Aはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、またはt-ブトキシである。その上さらなる実施形態では、Aはメトキシである。
いくつかの他の実施形態では、AはC(O)NRである。
別の実施形態では、R及びRの一方はHであり、他方はC1-6アルキルである。さらなる実施形態では、R及びRの一方はHであり、他方はメチルである。
他のいくつかの実施形態では、R及びRの双方がHである。
いくつかの実施形態では、Rはハロである。さらなる実施形態では、RはFである。
いくつかの実施形態では、RはFである。
一実施形態では、部分
Figure 2022518506000034


Figure 2022518506000035

である。
いくつかの実施形態では、Q、Q、及びQはそれぞれCHである。
いくつかの実施形態では、Q及びQはそれぞれCHであり、QはNである。
いくつかの実施形態では、Q及びQはそれぞれCHであり、QはNである。
別の態様では、本発明は表1に提供されている、式I’、I、またはIIの化合物またはその薬学的に許容されるその塩を提供する。
表1.式I’、I、またはIIの化合物
Figure 2022518506000036
Figure 2022518506000037
Figure 2022518506000038
Figure 2022518506000039
Figure 2022518506000040
一般的な投与
本発明の化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩の、純粋な形態または適切な医薬組成物での投与は、同様の有用性を提供するための許容される投与様式または薬剤のいずれかを介して実施することができる。したがって、投与は、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、軟質弾性カプセル剤及び硬質ゼラチンカプセル剤、粉末、溶液、懸濁液、エアロゾルなどのような固体、半固体の形態、凍結乾燥した粉末、または液体の剤形にて、好ましくは正確な投与量の単純な投与に好適な単位剤形にて例えば、経口で、経鼻で、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)で、局所に、経皮で、膣内に、膀胱内に、嚢内に、または直腸で行うことができる。
組成物は、従来の医薬担体または賦形剤と、単一の活性剤/活性剤の1つとしての本発明の化合物とを含むが、加えて、他の薬剤、医薬剤、担体、補助剤などを含んでもよい。本発明の組成物は、がんの治療を受けている患者に一般的に投与される抗癌剤または他の薬剤と組み合わせて使用されてもよい。補助剤には保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味料、香味料、芳香剤、乳化剤、及び分散剤が挙げられる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確保することができる。等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを含めることも望ましくあり得る。注射可能な医薬品形態の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
所望であれば、本発明の医薬組成物はまた、例えば、クエン酸、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのような、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤などのような少量の補助物質も含有してもよい。
非経口注射に好適な組成物は、生理学的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、及び無菌の注射可能溶液または分散液に再構成するための無菌の粉末を含んでもよい。好適な水性及び非水性の担体、希釈液、溶媒、またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合に必要な粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
1つの好ましい投与経路は経口であり、治療される病状の重症度に従って調整することができる好都合な毎日の投与計画を使用する。
経口投与用の固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、及び顆粒剤が挙げられる。そのような固形剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの不活性な通常の賦形剤(もしくは担体)、または(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸のような充填剤または増量剤、(b)結合剤、例えば、セルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシアガム、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカのデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、錯体ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、及びモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムなど、(h)吸着剤、例えば、カオリン及びベントナイト、ならびに(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤も含んでもよい。
上述のような固形剤形は、腸溶コーティング及び当該技術分野で周知の他のもののようなコーティング及びシェルと共に調製することができる。それらは緩和剤を含有してもよく、またそれらが腸管のある特定の部分にて遅延して活性化合物(単数)または活性化合物(複数)を放出するような組成のものであることができる。使用できる埋め込まれた組成物の例は高分子物質及びワックスである。活性化合物はまた、適切な場合、上記の賦形剤の1以上を伴うマイクロカプセル化された形態であることもできる。
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルが挙げられる。そのような剤形は、例えば、本発明の化合物(複数可)、または薬学的に許容されるその塩と、任意の医薬補助剤とを、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどのような担体;可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びジメチルホルムアミド;油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル;またはこれらの物質の混合物などに溶解、分散などすることによって調製され、それによって溶液または懸濁液を形成する。
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、またはこれらの物質の混合物などを含有してもよい。
直腸投与用の組成物は、例えば、本発明の化合物を、例えば、常温で固体であるが、体温で液体であるので、好適な体腔内で溶融し、その中に活性成分を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスのような好適な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製することができる坐剤である。
本発明の化合物の局所投与用の剤形には軟膏、粉剤、スプレー、及び吸入剤が挙げられる。活性成分は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体及び必要に応じて任意の防腐剤、緩衝液、または高圧ガスと混合される。眼科用製剤、眼軟膏、粉剤、及び溶液もまた、本発明の範囲内であることが企図される。
一般に、意図される投与様式に応じて、薬学的に許容される組成物は、約1重量%~約99重量%の本発明の化合物(複数可)または薬学的に許容されるその塩と、99重量%~1重量%の好適な医薬賦形剤とを含有するであろう。一例では、組成物は、約5重量%~約75重量%の間の本発明の化合物(複数可)または薬学的に許容されるその塩であり、残りは好適な医薬賦形剤である。
そのような剤形を調製する実際の方法は、この技術分野の当業者に知られている、または明らかになるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)を参照のこと。投与される組成物は、いずれにしても、本発明の教示に従って病状を治療するために、治療有効量の本発明の化合物、または薬学的に許容されるその塩を含有するであろう。
本発明の化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩は、治療有効量で投与される。治療有効量は、採用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、モード、及び 投与方法及び時間、排泄率、薬物の組み合わせ、特定の病状の重症度、及び治療を受けている宿主を含む種々の要因に応じて変化するであろう。本発明の化合物は、1日あたり約0.1~約1,000mgの範囲の投与量レベルで患者に投与することができる。約70キログラムの体重を有する正常な成人については、1日あたり体重1キログラムあたり約0.01から約100mgの範囲の投与量が一例である。しかしながら、使用される特定の投与量は異なることができる。例えば、投与量は、患者の要件、治療される状態の重症度、及び使用される化合物の薬理学的活性を含む多数の要因に左右され得る。特定の患者に最適な投与量の決定は当業者に周知である。
併用療法
本明細書で開示されている化合物は、単剤療法として、または疾患または障害、例えば、がんのような過剰増殖に関連する疾患または障害の治療のための1以上の追加の治療法との併用(「同時投与」)で投与することができる。本明細書で開示されている化合物と組み合わせて使用されてもよい治療法には、(i)手術、(ii)放射線療法(例えば、ガンマ線、中性子ビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、陽子線療法、近接照射療法、及び全身放射性同位元素)、(iii)内分泌療法、(iv)アジュバント療法、免疫療法、CART細胞療法、及び(v)他の化学療法剤が挙げられる。
「同時投与される」(「同時投与すること」)という用語は、本発明の化合物またはその塩と、細胞傷害剤及び放射線治療を含むさらなる活性医薬成分(単数)または成分(複数)との同時投与または任意の方法の別個の連続投与のいずれかを指す。投与が同時ではない場合、化合物は互いに近接した時間で投与される。さらに、化合物が同じ剤形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所に投与されてもよく、且つ別の化合物が経口で投与されてもよい。
通常、治療されている疾患または状態に対して活性を有する任意の薬剤が同時投与されてもよい。がん治療のためのそのような薬剤の例は、例えば、https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/drugs(最後のアクセス:2019年1月22日)及びCancer Principles and Practice of Oncology by V.T.Devita and S.Hellman(editors),11th edition(2018),Lippincott Williams & Wilkins Publishersのような公共で利用できる情報源に見いだすことができる。当業者は、薬物の特定の特徴及び関与する疾患に基づいて、どの薬剤の組み合わせが有用であるかを識別することができる。
一実施形態では、治療方法は、本明細書で開示されているような化合物または薬学的に許容されるその塩と少なくとも1つの免疫療法との同時投与を含む。免疫療法(生物学的反応修飾物質療法、生物学的療法、生物療法、免疫療法、または生物学的療法とも呼ばれる)は、免疫系の一部を使用して病気と戦う治療法である。免疫療法は、免疫系ががん細胞を認識するのを助けたり、がん細胞に対する反応を高めたりすることができる。免疫療法には、能動免疫療法と受動免疫療法が含まれる。能動免疫療法は身体自体の免疫系を刺激するが、受動免疫療法は一般に体外で作り出された免疫系成分を使用する。
能動免疫療法の例には、がんワクチン、腫瘍細胞ワクチン(自己または同種異系)、樹状細胞ワクチン、抗原ワクチン、抗イディオタイプワクチン、DNAワクチン、ウイルスワクチン、もしくはインターロイキン-2(IL-2)を伴う腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)ワクチンを含むワクチンを含むワクチン、またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞療法が挙げられるが、これらに限定されない。
受動免疫療法の例には、モノクローナル抗体、及び毒素を含有する標的療法が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体には、裸の抗体及びコンジュゲートモノクローナル抗体(タグ付き抗体、標識された抗体、または負荷された抗体とも呼ばれる)が含まれる。裸のモノクローナル抗体は薬物や放射性物質が結合されていないのに対して、コンジュゲートモノクローナル抗体は、例えば、化学薬品(化学標識)、放射性粒子(放射性標識)、または毒素(免疫毒素)に結合される。これらの裸のモノクローナル抗体薬の例には、例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫の治療に使用されるCD20抗原に対する抗体であるリツキシマブ(リツキサン)、例えば、進行性乳癌の治療に使用されるHER2タンパク質に対する抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)、例えば、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)の治療に使用されるCD52抗原に対する抗体であるアレムツズマブ(カンパス)、例えば、進行性結腸直腸癌及び頭頸部癌を治療するために、例えば、イリノテカンと組み合わせて使用されるEGFRタンパク質に対する抗体であるセツキシマブ(アービタックス)、VEGFタンパク質に対して作用する抗血管新生療法であり、例えば、転移性結腸直腸癌を治療するために化学療法と組み合わせて使用されるベバシズマブ(アバスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。コンジュゲートモノクローナル抗体の例には、放射活性をがん性Bリンパ球に直接送達し、例えばB細胞非ホジキンリンパ腫の治療に使用される放射性標識抗体であるイブリツモマブチウキセタン(ゼバリン)、例えば、ある特定の種類の非ホジキンリンパ腫の治療に使用される放射性標識抗体であるトシツモマブ(ベキサール)、カリケアマイシンを含有し、例えば急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用される免疫毒素ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)が挙げられるが、これらに限定されない。BL22は、例えば、有毛細胞白血病を治療するためのコンジュゲートモノクローナル抗体、例えば、白血病、リンパ腫、及び脳腫瘍を治療するための免疫毒素、ならびに例えば、結腸直腸癌及び卵巣癌のためのOncoScint及び例えば、前立腺癌のためのProstaScintのような放射性標識抗体である。
使用することができる治療用抗体のさらなる例には、転移性乳癌患者の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)(Genentech,Calif.)、血餅形成を防止するための血小板上の抗糖タンパク質IIb/IIIa受容体であるREOPRO.RTM(アブシキシマブ)(セントコール)、急性腎同種移植片拒絶反応を防止するための免疫抑制性のヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals,Switzerland)、マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor)、マウス抗イディオタイプ(GD3epitope)IgG抗体であるBEC2(ImClone System)、キメラ抗EGFRIgG抗体であるIMC-C225(ImClone System)、ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(商標)(Applied Molecular Evolution/Medlmmune)、ヒト化抗CD52IgG1抗体であるCampath1H/LDP-03(Leukosite)、ヒト化抗CD33IgG抗体であるSmartM195(Protein Design Lab/Kanebo)、キメラ抗CD20IgG1抗体であるRITUXAN(商標)(IDEC Pharm/Genentech、Roche/Zettyaku)、ヒト化抗CD22IgG抗体であるLYMPHOCIDE(商標)(Immunomedics)、LYMPHOCIDE(商標)Y-90(Immunomedics)、リンフォスキャン(Tc-99m標識、ラジオイメージング、Immunomedics)、Nuvion(CD3に対する、Protein Design Labs)が挙げられるが、これらに限定されない。CM3はヒト化抗ICAM3抗体(ICOS Pharm)である。IDEC-114は霊長類化された抗CD80抗体である(IDEC Pharm/Mitsubishi)。ZEVALIN(商標)は放射性標識されたマウス抗CD20抗体である(IDEC/ScheringAG)。IDEC-131はヒト化抗CD40L抗体である(IDEC/Eisai)。IDEC-151は霊長類化された抗CD4抗体である(IDEC)。IDEC-152は霊長類化された抗CD23抗体である(IDEC/Seikagaku)。SMART抗CD3はヒト化抗CD3IgGである(Protein Design Lab)。5G1.1はヒト化抗補体因子5(C5)抗体である(Alexion Pharm)。D2E7はヒト化抗TNF-α抗体である(CAT/BASF)。CDP870ヒト化抗TNF-αFab断片である(Celltech)。IDEC-151は霊長類化された抗CD4IgG1抗体である(IDEC Pharm/SmithKline Beecham)。MDX-CD4はヒト抗CD4IgG抗体である(Medarex/Eisai/Genmab)。CD20-スレプトダビジン(+ビオチン-イットリウム90、NeoRx)。CDP571はヒト化抗TNF-αIgG4抗体である(Celltech)。LDP-02はヒト化抗α4β7抗体である(LeukoSite/Genentech)。OrthoCloneOKT4Aはヒト化抗CD4IgG抗体である(OrthoBiotech)。ANTOVA(商標)はヒト化抗CD40LIgG抗体である(Biogen)。ANTEGREN(商標)はヒト化抗VLA-4IgG抗体である(Elan)。またCAT-152はヒト抗TGF-β抗体である(Cambridge Ab Tech)。他は後の段落で提供されている。
本明細書で開示されているような化合物と組み合わせて使用することができる免疫療法にはアジュバント免疫療法が挙げられる。例には、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1-α、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、及びIL-27)、腫瘍壊死因子(TNF-αを含む)、及びインターフェロン(IFN-α、IFN-β、及びIFN-ガンマを含む)のようなサイトカイン;水酸化アルミニウム(ミョウバン);カルメット・ゲラン桿菌(BCG);スカシガイヘモシアニン(KLH);不完全フロイントアジュバント(IFA);QS-21;DETOX;レバミゾール;及びジニトロフェニル(DNP)、及びそれらの組み合わせ、例えば、インターロイキン、例えば、IL-2と、IFN-αのような他のサイトカインとの組み合わせが挙げられる。
種々の実施形態では、本発明の化合物は免疫療法及び/または免疫治療剤と組み合わせることができる。種々の実施形態では、免疫療法及び/または免疫治療剤には、以下:養子細胞移入、血管新生阻害剤、カルメット・ゲラン桿菌療法、生化学療法、がんワクチン、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、サイトカイン療法、遺伝子療法、免疫チェックポイント調節剤、免疫複合体、放射性複合体、腫瘍溶解性ウイルス療法、または標的薬物療法の1以上を挙げることができる。免疫療法または免疫治療剤は本明細書ではまとめて「免疫療法剤」と呼ばれる。
本開示は、本発明の化合物と免疫療法剤とを含む治療有効量の組み合わせを投与することを含む、新生物、腫瘍またはがんを予防する、治療する、軽減する、抑制するまたは制御することを、それを必要とする対象にて行うための方法を提供する。非限定的な一実施形態では、方法は免疫療法剤と組み合わせて本発明の化合物を含む治療有効量の組み合わせを投与することを含む。種々の実施形態では、組み合わせは、各治療単独と比較して、組み合わせで治療された場合にがん細胞の数を減少させることにおいて協調効果、相加効果、または相乗効果を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物と免疫療法剤とを含む治療有効量の組み合わせの投与は、本発明の化合物または免疫療法剤単独の投与の相加効果よりも強力である相乗的な抗腫瘍活性及び/または抗腫瘍活性を生じる。
ヒトのがんは、多数の遺伝的な及びエピジェネティックな変化を内部に有し、免疫系によって潜在的に認識可能なネオアンチゲンを生成する(Sjoblom,et al.(2006),Science,314:268-74)。Tリンパ球とBリンパ球で構成される適応免疫系は、強力な抗がん能を有し、多様な腫瘍抗原に応答する幅広い能力と絶妙な特異性を備えている。さらに、免疫系はかなりの可塑性と記憶成分を示す。適応免疫系のこれらすべての属性をうまく利用することで、免疫療法はすべてのがん治療様式の中で独特になる。
本開示は本発明の化合物と免疫療法剤との組み合わせを提供する。これらの例示された組み合わせを用いてがんを有する対象を治療することができる。種々の実施形態では、本発明の組成物、製剤及び方法で有用性を見いだす免疫療法剤には、養子細胞移入、血管新生阻害剤、カルメット・ゲラン桿菌療法、生化学療法、がんワクチン、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、サイトカイン療法、遺伝子療法、免疫チェックポイント調節剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤、免疫複合体、放射性複合体、腫瘍溶解性ウイルス療法、または標的薬物療法を含む1以上の薬剤または治療法を挙げることができる。
本開示のある特定の実施形態では、治療上有効な組み合わせは本発明の化合物及び免疫療法剤を含む。種々の関連する実施形態では、本発明の化合物は免疫療法剤の活性を増強する。
前述の態様のそれぞれのある特定の実施形態、ならびに本明細書の他の場所に記載される他の態様及び実施形態では、免疫療法剤は本発明の化合物の活性を増強する。
前述の態様のそれぞれのある特定の実施形態、ならびに本明細書の他の場所に記載される他の態様及び実施形態では、本発明の化合物及び免疫療法剤は相乗的に作用する。本明細書に記載されている種々の実施形態では、例示的な免疫療法剤は、共刺激分子のアゴニストまたは活性化因子から選択される免疫細胞(例えば、T細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞など)修飾物質であり、その際、修飾物質はモノクローナル抗体、1以上の免疫チェックポイント抗原結合部分を含む二重特異性抗体、三重特異性抗体、または当該技術分野で知られている免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は共刺激分子を調節し、免疫細胞またはがん細胞の表面上の抗原に結合する抗体であることができる。これらのさまざまな実施形態のそれぞれでは、抗体修飾物質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性または多重特異性フォーマット抗体、融合タンパク質、またはその断片、例えば、ダイアボディ、単鎖(sc)ダイアボディ(scFv)2、ミニ抗体、ミニボディ、バルナーゼ・バルスター、scFv-Fc、sc(Fab)2、三量体抗体構築物、トリアボディ抗体構築物、三量体抗体構築物、トリボディ抗体構築物、コラボディ抗体構築物、(scFv-TNFa)3、またはF(ab)3/DNL抗体構築物であることができる。
前述の態様のそれぞれのある特定の実施形態、ならびに本明細書の他の場所に記載される他の態様及び実施形態では、免疫療法剤は、免疫応答を調節する薬剤、例えば、チェックポイント阻害剤またはチェックポイントアゴニストである。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は抗腫瘍免疫応答を増強する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は細胞性免疫を高める薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はT細胞活性を高める薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は細胞傷害性T細胞(CTL)活性を高める薬剤である。
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法は、分子、例えば、結合剤、例えば、チェックポイントタンパク質を調節する(活性化するまたは阻害する)抗体またはその機能的断片と組み合わせて一緒に本発明の化合物を投与することを含んでもよい。チェックポイント阻害剤は、例えば、内在性免疫チェックポイント阻害剤を促進することによって、免疫チェックポイントの発現に関与する転写因子を阻害することによって、及び/またはいくつかの追加の外的因子と協調して作用することによって免疫チェックポイントを阻害する、及び/または、免疫チェックポイントの阻害剤を促進する任意の分子、薬剤、治療及び/または方法であることができる。例えば、チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント遺伝子の発現に関与する転写因子を阻害する、または腫瘍抑制遺伝子、例えば、BACH2(Luan et al.,(2016).Transcription Factors and Checkpoint Inhibitor Expression with Age:Markers of Immunosenescence.Blood,128(22),5983))の転写因子の発現を促進する治療を含み得る。さらに、チェックポイント阻害剤は免疫チェックポイント遺伝子の転写、免疫チェックポイントmRNAの修飾及び/またはプロセッシング、免疫チェックポイントタンパク質の翻訳、及び/または免疫または免疫チェックポイント経路に関与する分子、例えば、HIF-1、STAT3、NF-κB、及びAP-1のようなPD-1転写因子、または例えば、JAK/STAT、RAS/ERK、またはPI3K/AKT/mTORのような一般的な発癌経路の活性化(開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるZerdes et al.,Genetic,transcriptional and post-translational regulation of the programmed death protein ligand 1 in cancer:biology and clinical correlations,Oncogene,volume,37,pages4639-4661(2018))を阻害することができる。
チェックポイント阻害剤は、例えば、RNA干渉経路の共抑制及び/または転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)(例えばマイクロRNA、miRNA;サイレンシング-RNA、低分子干渉-RNA、または短鎖干渉-RNA(siRNA))を用いて転写レベルで免疫チェックポイントを調節する治療、分子、薬剤、及び/または方法を含むことができる。チェックポイント分子の転写調節は、チェックポイントmRNA CD80、CD274(PD-L1)及びCD40の3’UTRを標的とすることが示されているmir-16が関与することが示されている(Leibowitz et al.,Post-transcriptional regulation of immune checkpoint genes by mir-16 in melanoma,Annals of Oncology,(2017),28;v428-v448)。Mir-33aも、肺腺癌の場合のPD-1の発現の調節に関与することが示されている(開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるBoldini et al.,Role of microRNA-33a in regulating the expression of PD-1 in lung adenocarcinoma,Cancer Cell Int.2017;17:105)。
T細胞特異的アプタマー・siRNAキメラは、免疫チェックポイント経路の分子を阻害する非常に特異的な方法として提案されている(開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるHossain et al.,The aptamer-siRNA conjugates:reprogramming T cells for cancer therapy,Ther.Deliv.2015,Jan;6(1):1-4)。
あるいは、免疫チェックポイント経路のメンバーは関連する経路、例えば、代謝に影響を与える治療を使用して阻害することができる。例えば、CADマクロファージ由来ミトコンドリアにて解糖系中間体ピルビン酸を過剰に供給すると、骨形成タンパク質4/リン酸化SMAD1/5/IFN調節因子1(BMP4/p-SMAD1/5/IRF1)シグナル伝達経路の誘導を介してPD-L1の発現が促進された。したがって、代謝経路を調節する治療を実施すると、免疫抑制性PD-1/PD-L1チェックポイント経路のその後の調節を生じることができる(Watanabe et al.,Pyruvate controls the checkpoint inhibitor PD-L1 and suppresses T cell immunity,J.Clin.Invest.2017,Jun.30;127(7):2725-2738)。
チェックポイント免疫は、腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍微小環境で急性免疫応答を誘発する腫瘍溶解性ウイルスを介して、すなわち、特定の薬剤(例えば、抗体、miRNA、siRNAなど)をがん細胞に運ぶ遺伝子ベクターとして作用し、サイトカイン及びケモカインの腫瘍溶解及び分泌を達成して、免疫チェックポイント阻害と相乗作用を行うことによって調節することができる(Shi et al.,Cancer Immunotherapy:A Focus on the Regulation of Immune Checkpoints,Int.J.Mol.Sci.2018,May;19(5):1389)。現在、以下のウイルス、すなわちポリオウイルス、はしかウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、コクサッキーウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、T-VEC(GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)と共にコードされるヘルペスウイルス)、及びH101(Shi et al.,上記)をチェックポイント阻害剤として利用する臨床試験が進行中である。
チェックポイント阻害剤は、チェックポイント免疫の翻訳レベルで機能することができる。mRNAのタンパク質への翻訳は遺伝子発現の調節における重要な事象を表すので、免疫チェックポイント翻訳の阻害は、免疫チェックポイント経路を阻害することができる方法である。
免疫チェックポイント経路の阻害は、免疫チェックポイントの翻訳プロセスのどの段階でも発生することができる。例えば、薬物、分子、薬剤、治療、及び/または方法は、開始プロセスを阻害することができる(それによって、40SリボソームサブユニットがmRNAの5’末端に動員され、その3’末端に向かってmRNAの5’UTRを走査する)。阻害は、免疫チェックポイント特異的遺伝子の翻訳にてイニシエーターのメチオニル転移RNA(tRNA)(Met-tRNAi)のアンチコドン、開始コドンとの塩基対形成、または60Sサブユニットの動員を標的にしてアミノ酸の伸長と連続的な付加を開始することによって発生することができる。あるいは、チェックポイント阻害剤は、三元複合体(TC)、すなわち、真核生物開始因子(eIF)2(またはそのα、β、及びγサブユニットの1以上)、GTP、及びMet-tRNAiの形成を妨げることによって翻訳レベルでチェックポイントを阻害することができる。
チェックポイント阻害は、プロテインキナーゼR(PKR)、PERK、GCN2、またはHRIを介したそのリン酸化を排除することにより、またはTCが40Sリボソーム及び/または他の開始因子と結合することを排除することにより、したがって前開始複合体(PIC)が形成するのを妨げることによって、eIF4F複合体及び/またはそのキャップ結合タンパク質eIF4E、足場タンパク質eIF4G、またはeIF4Aヘリカーゼを阻害することによってeIF2αの不安定化を介して発生することができる。がんの翻訳制御を考察する方法は、Truitt et al.,New frontiers in translational control of the cancer genome,Nat.Rev.Cancer.2016,Apr.26;16(5):288-304で考察されおり、その開示はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
チェックポイント阻害剤はまた、例えば免疫チェックポイント受容体を阻害することによって、細胞レベル及び/またはタンパク質レベルで免疫チェックポイントを調節する治療、分子、薬剤、及び/または方法も含むことができる。チェックポイントの阻害は、抗体、抗体断片、抗原結合断片、小分子、及び/または他の薬物、薬剤、治療、及び/または方法の使用を介して発生することができる。
免疫チェックポイントは、自己寛容を維持し、免疫系の反応の程度を調節して末梢組織の損傷を最小限に抑えるのに関与する免疫系の抑制経路を指す。しかしながら、腫瘍細胞は免疫系のチェックポイントを活性化して、腫瘍組織に対する免疫応答の有効性を低下させる(免疫応答を「ブロック」する)こともできる。大多数の抗癌剤とは対照的に、チェックポイント阻害剤は腫瘍細胞を直接標的とすることはないが、むしろ免疫系の内在性抗腫瘍活性を増強するためにリンパ球受容体またはそれらのリガンドを標的とする(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer,12:252-264)。
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、PD-1活性の修飾物質、PD-L1活性の修飾物質、PD-L2活性の修飾物質、CTLA-4活性の修飾物質、CD28活性の修飾物質、CD80活性の修飾物質、CD86活性の修飾物質、4-1BB活性の修飾物質、OX40活性の修飾物質、KIR活性の修飾物質、Tim-3活性の修飾物質、LAG3活性の修飾物質、CD27活性の修飾物質、修飾物質CD40活性、GITR活性の修飾物質、TIGIT活性の修飾物質、CD20活性の修飾物質、CD96活性の修飾物質、IDO1活性の修飾物質、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバー、または免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント修飾物質、すなわち、阻害剤またはアンタゴニストである、または活性化因子またはアゴニストであり、例えば、CD28修飾物質、4-1BB修飾物質、OX40修飾物質、CD27修飾物質、CD80修飾物質、CD86修飾物質、CD40修飾物質、またはGITR修飾物質、Lag-3修飾物質、41BB修飾物質、LIGHT修飾物質、CD40修飾物質、GITR修飾物質、TGF-β修飾物質、TIM-3修飾物質、SIRP-α修飾物質、TIGIT修飾物質、VSIG8修飾物質、BTLA修飾物質、SIGLEC7修飾物質、SIGLEC9修飾物質、ICOS修飾物質、B7H3修飾物質、B7H4修飾物質、FAS修飾物質、及び/またはBTNL2修飾物質である。いくつかの実施形態では、免疫治療剤は、上述のような免疫チェックポイント修飾物質である(例えば、モノクローナル抗体、1以上の免疫チェックポイント抗原結合部分を含む二重特異性抗体、三重特異性抗体、または当該技術分野で知られている免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物の形態であることができる、免疫チェックポイント修飾物質抗体)。
いくつかの実施形態では、免疫療法剤はPD-1の活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はPD-L1及び/またはPD-L2の活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はCTLA-4の活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はCD80及び/またはCD86の活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はTIGITの活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はKIRの活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫チェックポイント受容体を活性化する活性を増強するまたは刺激する薬剤である。
PD-1(Programmed Death 1、CD279、PDCD1としても知られている)は、免疫系の刺激シグナルと抑制シグナルの間のバランスを調節し、末梢性免疫寛容を維持する上で重要な役割を持つ細胞表面受容体である(Ishida,Y.et al.1992,EMBO J.11,3887;Kier,Mary E.et al.2008,Annu.Rev.Immunol.26,677-704;Okazaki,Taku et al.2007,International Immunology,19,813-824)。PD-1はCD28と相同性のある免疫グロブリンスーパーファミリーの抑制性メンバーである。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様細胞外ドメインと、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を含む細胞質ドメインとから成る単量体1型膜貫通タンパク質である。PD-1の発現は、例えば、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のシグナル伝達を介したリンパ球の活性化の際、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球で誘導可能である(Kier,Mary E.et al.2008,Annu.Rev.Immunol.26,677-704;Agata,Y.et al.1996,Int.Immunol.8,765-72)。PD-1は、B7ファミリーの細胞表面発現メンバーであるリガンドCD80、CD86、PD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)の受容体である(Freeman,Gordon et al.2000,J.Exp.Med.192:1027、Latchman,Y.et al.2001,Nat.Immunol,2:261)。リガンドが結合すると、PD-1はSHP-1やSHP-2のようなホスファターゼを、その細胞内チロシンモチーフに動員し、その後、TCRまたはBCRのシグナル伝達によって活性化されたエフェクター分子を脱リン酸化する(Chemnitz,J.et al.2004,J.Immunol.173:945-954、Riley,James L.2009,Immunological Reviews,229:114-125)。このように、PD-1は、TCRまたはBCRと同時に結合する場合にのみ、阻害シグナルをT細胞及びB細胞に伝達する。
PD-1は、細胞内在性及び細胞外来性の双方の機能メカニズムを介してエフェクターT細胞応答を下方調節することが実証されている。PD-1を介した抑制性シグナル伝達はT細胞に無反応状態を誘導し、その結果、細胞がクローン状に増殖する、または最適なレベルのエフェクターサイトカインを産生することができなくなる。PD-1は、共刺激による生存シグナルを阻害する能力を介してT細胞のアポトーシスを誘導し得、それはBcl-XLのような主要な抗アポトーシス分子の発現の低下につながる(Kier,Mary E.et al.2008,Annu.Rev.Immunol.26:677-704)。これらの直接的な影響に加えて、最近の出版物は、PD-1を制御性T細胞(TREG)の誘導と維持を促進することによってエフェクター細胞の抑制に関与していると意味づけている。例えば、樹状細胞で発現したPD-L1は、TGF-βと相乗的に作用して、サプレッサー機能が強化されたCD4+FoxP3+TREGの誘導を促進することが示された(Francisco,Loise M.et al.2009,J.Exp.Med.206:3015-3029)。
TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3、TIM-3、A型肝炎ウイルス細胞受容体2、HAVCR2、HAVcr-2、KIM-3、TIMD-3、TIMD3、Tim-3、CD366としても知られる)は、免疫応答に関与する約33.4kDaの膜1回貫通I型膜タンパク質である(Sanchez-Fueyo et al.,Tim-3 inhibits T helper type 1-mediated auto- and alloimmune responses and promotes immunological tolerance,Nat.Immunol.4:1093-1101(2003))。
TIM-3は、Th1細胞、及び食細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞)にて選択的に発現される。ヒトの発現を低下させるsiRNAまたはブロッキング抗体の使用は、CD4陽性T細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌を高め、ヒトT細胞におけるTIM-3の阻害性の役割を意味づけている。自己免疫疾患患者由来の臨床試料の分析は、CD4陽性細胞におけるTIM-3の発現を示さなかった。特に、多発性硬化症患者の脳脊髄液由来のT細胞クローンでは、正常な健常者由来のクローンよりもTIM-3の発現レベルが低く、IFN-γの分泌が高い(Koguchi K.et al.,J.Exp.Med.203:1413-8.(2006))。
TIM-3は、β-ガラクトシド;ホスファチジルセリン(PtdSer)(DeKryff et al.,T cell/transmembrane,Ig,and mucin-3 allelic variants differentially recognize phosphatidylserine and mediate phagocytosis of apoptotic cells,J.Immunol.2010,Feb.15;184(4):1918-30);高移動度群タンパク質1(HMGB1、HMG1、HMG3、SBP-1、HMG-1、及び高移動度群ボックス1としても知られている)(Chiba et al.,Tumor-infiltrating DCs suppress nucleic acid-mediated innate immune responses through interactions between the receptor TIM-3 and the alarmin HMGB1,Nat.Immunol.2012,Sep;13(9):832-42);及び癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1、BGP、BGP1、BGPI、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1としても知られる)(Huang et al.,CEACAM1 regulates TIM-3-mediated tolerance and exhaustion,Nature.2015,Jan.15;517(7534):386-90)と結合する種々の細胞型で遍在的に発現されるガレクチンファミリーのメンバーであるリガンドガレクチン-9の受容体である。
BTLA(B及びTリンパ球アテニュエーター、BTLA1、CD272、及びB及びTリンパ球関連としても知られている)は、免疫応答中のリンパ球阻害に関与する約27.3kDaの膜1回貫通I型膜タンパク質である。BTLAはB細胞とT細胞の双方で構成的に発現されている。BTLAは、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのメンバーであるHVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)と相互作用する(Gonzalez et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2005,102:1116-21)。免疫グロブリンスーパーファミリーのCD28ファミリーに属するBTLAと、共刺激性腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TNFR)であるHVEMとの相互作用は、これら2つの受容体ファミリー間のクロストークを定義するという点で独特である。BTLAは、膜近位免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)と膜遠位免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を含有する。ITIMまたはITSMのいずれかが破壊されると、BTLAがSHP1またはSHP2のいずれかを動員する能力が失われるということは、BTLAがPD-1とは異なる方法でSHP1及びSHP2を動員し、T細胞の活性化を阻止するには双方のチロシンモチーフが必要であることを示唆している。BTLA細胞質尾部は、Grb-2動員部位(YXN)に配列で類似する、細胞質ドメイン内の第3の保存されたチロシン含有モチーフも含有する。また、このBTLAのN末端チロシンモチーフを含有するリン酸化ペプチドは、試験管内でGRB2及びPI3Kのp85サブユニットと相互作用することができるが、この相互作用の機能的効果は生体内では未解明のままである(Gavrieli et al.,Bioochem.Biophysi.Res.Commun.2003,312,1236-43)。BTLAはリガンドPTPN6/SHP-1、PTPN11/SHP-2、TNFRSF14/HVEM、及びB7H4の受容体である。
VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサーVSIR、B7-H5、B7H5、GI24、PP2135、SISP1、DD1α、VISTA、C10orf54、第10染色体オープンリーディングフレーム54、PD-1H、及びVセット免疫調節受容体としても知られる)は、T細胞阻害応答、BMP4シグナル伝達阻害を介した胚性幹細胞の分化、及びMMP14が介在するMMP2の活性化に関与する約33.9kDaの膜1回貫通I型膜タンパク質である(Yoon et al.,Control of signaling-mediated clearance of apoptotic cells by the tumor suppressor p53,Science.2015,Jul.31;349(6247)。VISTAはリガンドVSIG-3と相互作用する(Wang et al.,VSIG-3 as a ligand of VISTA inhibits human T-cell function,Immunology,2019,Jan;156(1):74-85)。
LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3、LAG3、CD223、及びリンパ球活性化3としても知られている)は、HLAクラスII抗原にも結合するリンパ球活性化に関与する約57.4kDaの膜1回貫通I型膜タンパク質である。LAG-3は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、活性化T細胞(Huard et al.,1994,Immunogenetics,39:213)、NK細胞(Triebel et al.,1990,J.Exp.Med.171:1393-1405)、制御性T細胞(Huang et al.,2004,Immunity,21:503-513、Camisaschi et al.,2010,J.Immunol.184:6545-6551、Gagliani et al.,2013,Nat.Med.19:739-746)、及び形質細胞様樹状細胞(DC)(Workman et al.,2009,J.Immunol.182:1885-1891)で発現される。LAG-3は第12染色体上に位置する遺伝子によってコードされる膜タンパク質であり、構造的に且つ遺伝的にCD4に関連する。CD4と同様に、LAG-3は細胞表面のMHCクラスII分子と相互作用することができる(Baixeras et al.,1992,J.Exp.Med.176:327-337;Huard et al.,1996,Eur.J.Immunol.26:1180-1186)。LAG-3のMHCクラスIIへの直接結合はCD4+Tリンパ球の抗原依存性刺激を下方調節することに役割を担っていること(Huard et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:3216-3221)が示唆されており、且つLAG-3遮断は、腫瘍抗原または自己抗原(Gross et al.,2007,J.Clin.Invest.117:3383-3392)及びウイルスモデル(Blackburn et al.,2009,Nat.Immunol.10:29-37)の双方でCD8+リンパ球を再活性化することも示されている。さらに、LAG-3の細胞質内領域は、CD3/TCR活性化経路の下方調節に関与するシグナル伝達分子であるLAP(LAG-3関連タンパク質)と相互作用することができる((Iouzalen et al.,2001,Eur.J.Immunol.31:2885-2891))。さらに、CD4+CD25+制御性T細胞(Treg)は活性化の際にLAG-3を発現することが示されており、それはTreg細胞のサプレッサー活性に寄与する(Huang,C.et al.,2004,Immunity,21:503-513)。LAG-3は、T細胞依存性及び非依存性の双方のメカニズムでTreg細胞によるT細胞の恒常性を負に調節することもできる(Workman,C.J.及びVignali,D.A.,2005,J.Immunol.174:688-695)。
LAG-3はMHCクラスII分子と相互作用することが示されている(Huard,et al.,CD4/major histocompatibility complex class II interaction analyzed with CD4-and lymphocyte activation gene-3(LAG-3)-Ig fusion proteins,Eur.J.Immunol.1995,Sep;25(9):2718-21)。
さらに、いくつかのキナーゼがチェックポイント阻害剤であることが知られている。例えば、CHEK-1、CHEK-2、及びA2aRである。
CHEK-1(CHK1キナーゼ、CHK1、及びチェックポイントキナーゼ1としても知られている)は、チェックポイントが介在する細胞周期停止、及びDNA損傷及び/または複製されていないDNAに応答したDNA修復の活性化に関連する約54.4kDaのセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。
CHEK-2(CHK2キナーゼ、CDS1、CHK2、HuCds1、LFS2、PP1425、RAD53、hCds1、及びチェックポイントキナーゼ2としても知られる)はチェックポイントが介在する細胞周期停止、DNA修復の活性化、及び二本鎖切断が介在するアポトーシスに関与する約60.9kDaのセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。
A2aR(アデノシンA2A受容体、ADORA2A、アデノシンA2a受容体、A2aR、ADORA2、及びRDC8としても知られる)は、アデノシン及びその他のリガンドの約44.7kDaに対する複数回貫通膜受容体である。
いくつかの実施形態では、実例となる免疫療法剤には、当該技術分野で既知の数ある中でもPD-1、PD-L1、PD-L2、CEACAM(例えば、CEACAM-1、3及び/または-5)、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFβ、OX40、41BB、LIGHT、CD40、GITR、TGF-β、TIM-3、SIRP-α、VSIG8、BTLA、SIGLEC7、SIGLEC9、ICOS、B7H3、B7H4、FAS、及び/またはBTNL2を標的とする1以上の抗体修飾物質を挙げることができる。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高める薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は免疫応答の抑制を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はサプレッサー細胞またはサプレッサー細胞の活性を阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤はTreg活性を阻害する薬剤または治療法である。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は阻害性免疫チェックポイント受容体の活性を阻害する薬剤である。
いくつかの実施形態では、本開示の組み合わせは、本発明の化合物と免疫療法剤とを含み、その際、免疫療法剤は、共刺激分子のアゴニストまたは活性化因子から選択されるT細胞修飾物質を含む。一実施形態では、共刺激分子のアゴニストは、GITR、OX40、SLAM(例えば、SLAMF7)、HVEM、LIGHT、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD30、CD40、BAFFR、CD7、NKG2C、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83のリガンドのアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体またはその抗原結合断片、または可溶性融合物)から選択される。他の実施形態では、エフェクター細胞の組み合わせは二重特異性T細胞エンゲージャー(例えば、CD3及び腫瘍抗原(例えば、とりわけEGFR、PSCA、PSMA、EpCAM、HER2)に結合する二重特異性抗体分子)を含む。
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、PD-1活性の修飾物質、PD-L1活性の修飾物質、PD-L2活性の修飾物質、CTLA-4活性の修飾物質、CD28活性の修飾物質、CD80活性の修飾物質、CD86活性の修飾物質、4-1BB活性の修飾物質、OX40活性の修飾物質、KIR活性の修飾物質、Tim-3活性の修飾物質、LAG3活性の修飾物質、CD27活性の修飾物質、修飾物質CD40活性、GITR活性の修飾物質、TIGIT活性の修飾物質、CD20活性の修飾物質、CD96活性の修飾物質、IDO1活性の修飾物質、SIRP-α活性の修飾物質、TIGIT活性の修飾物質、VAIG8活性の修飾物質、BTLA活性の修飾物質、SIGLEC7活性の修飾物質、SIGLEC9活性の修飾物質、ICOS活性の修飾物質、B7H3活性の修飾物質、B7H4活性の修飾物質、FAS活性の修飾物質、BTNL2活性の修飾物質、サイトカイン、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバー、または免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、免疫チェックポイント修飾物質(例えば、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1活性の阻害剤、PD-L1活性の修飾物質、PD-L2活性の修飾物質、CTLA-4の修飾物質、またはCD40アゴニスト(例えば、抗CD40抗体分子)、(xi)OX40アゴニスト(例えば、抗OX40抗体分子)、または(xii)CD27アゴニスト(例えば、抗CD27抗体分子))である。一実施形態では、免疫療法剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、3及び/または-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/またはTGFβ、ガレクチン9、CD69、ガレクチン-1、CD113、GPR56、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、及びTIM-4の阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、3及び/または-5)、CTLA-4、またはそれらの任意の組み合わせを阻害する。
一実施形態では、免疫療法剤は、B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3及びCD28HのようなT細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニストである。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている組み合わせで(例えば、本発明の化合物と組み合わせて)使用される免疫療法剤は、共刺激分子の活性化因子またはアゴニストである。一実施形態では、共刺激分子のアゴニストは、CD2、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83のリガンドのアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体またはその抗原結合断片、または可溶性融合物)から選択される。
阻害性分子の阻害は、DNA、RNA、またはタンパク質のレベルで実行することができる。実施形態では、阻害性核酸(例えば、dsRNA、siRNAまたはshRNA)を使用して、阻害性分子の発現を阻害することができる。他の実施形態では、阻害性シグナルの阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3及び/または-5)、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/またはTGFβ、ガレクチン9、CD69、ガレクチン-1、CD113、GPR56、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、TIM-4、またはそれらの組み合わせに結合する阻害性分子、例えば、抗体またはその断片(本明細書では「抗体分子」とも呼ばれる)に結合するポリペプチド、例えば、可溶性リガンド(例えば、PD-1-IgまたはCTLA-4 Ig)、またはその抗体もしくはその抗原結合断片、例えば、モノクローナル抗体、1以上の免疫チェックポイント抗原結合部分を含む二重特異性抗体、三重特異性抗体、または当該技術分野で知られている免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物である。
いくつかの実施形態では、組み合わせが本発明の化合物及び免疫療法剤を含む場合、免疫療法剤はモノクローナル抗体または二重特異性抗体である。例えば、モノクローナル抗体または二重特異性抗体は、c-Met経路のメンバー及び/または免疫チェックポイント修飾物質と特異的に結合し得る(例えば、二重特異性抗体は、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)及び本明細書に記載されている免疫チェックポイント修飾物質、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、またはCTLA-4、LAG-3、OX40、41BB、LIGHT、CD40、GITR、TGF-β、TIM-3、SIRP-α、TIGIT、VSIG8、BTLA、SIGLEC7、SIGLEC9、ICOS、B7H3、B7H4、FAS、BTNL2またはCD27と結合する抗体の双方に結合する)。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、ヒトHGFRタンパク質と、PD-1、PD-L1及びCTLA-4のうちの1つと特異的に結合する。
本明細書に記載されている方法のいくつかの実施形態では、免疫療法剤は、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニスト、PD-L2アンタゴニスト、CTLA-4アンタゴニスト、CD80アンタゴニスト、CD86アンタゴニスト、KIRアンタゴニスト、Tim-3アンタゴニスト、LAG3アンタゴニスト、TIGITアンタゴニスト、CD20アンタゴニスト、CD96アンタゴニスト、またはIDO1アンタゴニストである。
いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-1と特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1と結合する抗体は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、MK-3475;メルク)、ピジリズマブ(CT-011;Curetech Ltd.)、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106;Bristol Myer Squibb)、MEDI0680(AMP-514;AstraZenenca/MedImmune)、REGN2810(Regeneron Pharmaceuticals)、BGB-A317(BeiGene Ltd.)、PDR-001(Novartis)、またはSTI-A1110(Sorrento Therapeutics)である。いくつかの実施形態では、PD-1と結合する抗体は、PCT公開WO 2014/179664に記載されており、例えば、APE2058、APE1922、APE1923、APE1924、APE1950、またはAPE1963(Anaptysbio)として識別される抗体、またはこれらの抗体のいずれかのCDR領域を含有する抗体である。他の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-L1またはPD-L2の細胞外ドメインを含む融合タンパク質、例えば、AMP-224(AstraZeneca/MedImmune)である。他の実施形態では、PD-1アンタゴニストはペプチド阻害剤、例えば、AUNP-12(Aurigene)である。
いくつかの実施形態では、PD-L1アンタゴニストはPD-L1と特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1と結合する抗体は、アテゾリズマブ(RG7446、MPDL3280A;Genentech)、MEDI4736(AstraZeneca/MedImmune)、BMS-936559(MDX-1105;Bristol Myers Squibb)、アベルマブ(MSB0010718C;Merck KGaA)、KD033(Kadmon)、KD033の抗体部分、またはSTI-A1014(Sorrento Therapeutics)である。いくつかの実施形態では、PD-L1と結合する抗体はPCT公開WO2014/055897に記載されており、例えば、Ab-14、Ab-16、Ab-30、Ab-31、Ab-42、Ab-50、Ab-52またはAb-55、またはこれらの抗体のいずれかのCDR領域を含有する抗体であり、その開示は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの実施形態では、CTLA-4アンタゴニストはCTLA-4と特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、CTLA-4と結合する抗体はイピリムマブ(YERVOY(登録商標);Bristol Myer Squibb)またはトレメリムマブ(CP-675,206;Pfizer)である。いくつかの実施形態では、CTLA-4アンタゴニストは、CTLA-4融合タンパク質または可溶性CTLA-4受容体、例えば、KARR-102(Kahr Medical Ltd.)である。
いくつかの実施形態では、LAG3アンタゴニストはLAG3と特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、LAG3と結合する抗体は、IMP701(Prima BioMed)、IMP731(Prima BioMed/GlaxoSmithKline)、BMS-986016(Bristol Myer Squibb)、LAG525(Novartis)、及びGSK2831781(GlaxoSmithKlin)である。いくつかの実施形態では、LAG3アンタゴニストには可溶性LAG3受容体、例えば、IMP321(Prima BioMed)が含まれる。
いくつかの実施形態では、KIRアンタゴニストはKIRと特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、KIRと結合する抗体はリリルマブ(Bristol Myer Squibb/Innate Pharma)である。
いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、サイトカイン、例えば、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、または腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーである。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL15、またはインターフェロンγである。
上記の態様のいずれかまたは本明細書の他の場所に記載されているもののいくつかの実施形態では、がんは、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、腎臓癌(例えば、腎臓尿路上皮)、膀胱癌(例えば、膀胱尿路上皮(移行細胞)癌)、乳癌、大腸癌(例えば、結腸腺癌)、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、食道癌、中皮腫、黒色腫(例えば、皮膚黒色腫)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、甲状腺癌、肉腫(例えば、軟組織肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨形成性肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、平滑筋肉腫、または横紋筋肉腫)、前立腺癌、神経膠癌、子宮頸癌、胸腺癌、白血病(例えば、急性リンパ球ic白血病(ALL)、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄細胞性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病、または慢性リンパ球性白血病(CLL))、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫(NHL))、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫(MM))、菌状息肉腫、メルケル細胞癌、血液悪性腫瘍、血液組織の癌、B細胞癌、気管支癌、胃癌、脳または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、子宮癌または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸癌または盲腸癌、唾液腺癌、副腎癌、腺癌、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、胃腸間質腫瘍(GIST)、結腸癌、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性障害(MPD)、真性多血症、脊索腫、滑膜腫、ユーイング腫瘍、有棘細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄質癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、好酸球増多症候群、全身性肥満細胞症、家族性好酸球増多症、神経内分泌癌、またはカルチノイド腫瘍から成る群から選択される。
上記の態様のいずれかまたは本明細書の他の場所に記載されているもののいくつかの実施形態では、対象のがんまたは腫瘍は、免疫チェックポイント阻害(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストのような本明細書に記載されている免疫チェックポイント阻害剤)に応答しない、または対象のがんまたは腫瘍は、免疫チェックポイント阻害(例えば、PD-1アンタゴニストまたはPD-L1アンタゴニストのような本明細書に記載されている任意の免疫チェックポイント阻害剤)に対する最初の応答に続いて進行している。
種々の実施形態では、免疫療法剤は抗体またはその抗原結合断片を含むことができる。この定義の範囲内で、免疫チェックポイント阻害剤には、当該技術分野で知られている二重特異性抗体及び免疫細胞に関与する多価抗体/融合タンパク質/構築物が含まれる。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体を含む免疫療法剤は二価であり、且つ免疫チェックポイント分子の同じエピトープ、同じ免疫チェックポイント分子の2つの異なるエピトープ、または2つの異なる免疫チェックポイントの異なるエピトープのいずれかと結合する二重特異性抗体を含んでもよい。
当業者はこの分野で知られているいくつかの二重特異性抗体フォーマットを組み込んで、CTLA4、PD1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、種々のB-7リガンド、B7H3、B7H4、CHK1及びCHK2キナーゼ、BTLA、A2aR、OX40、41BB、LIGHT、CD40、GITR、TGF-β、SIRP-α、TIGIT、VSIG8、SIGLEC7、SIGLEC9、ICOS、FAS、BTNL2及び本明細書に記載されている組み合わせで使用するためのその他の1以上を標的とすることができる。
種々の実施形態では、免疫療法剤は、免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物を含むことができる。
本開示の一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用して、他の部位への原発腫瘍もしくはがんの転移、または原発腫瘍もしくはがんから遠位の他の部位での転移性の腫瘍もしくはがんの形成もしくは確立を低減し、または抑制し、それによって腫瘍もしくはがんの再発または腫瘍もしくはがんの進行を抑制する、または低減する。
本開示のさらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、がんを治療するための併用療法であり、それは、本発明の化合物と、強化された治療効果及びさらに管理しやすい毒性を持つ強力で耐久性のある免疫応答を誘発する能力のあるチェックポイント阻害剤とを含む。
本開示のさらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、がんを治療するための併用療法であり、それは本発明の化合物と免疫チェックポイント阻害剤とを含む。本明細書で提供される本開示の一実施形態では、本明細書で提供されるのは、本発明の化合物を採用することによってがんを治療する、及び/または転移の確立を防止する方法であり、本発明の化合物はチェックポイント阻害剤と相乗的に作用する。
さらなる実施形態では、本開示は、以下:1)転移を潜在的に発症するまたは発症する腫瘍細胞またはがん細胞の成長、増殖、移動性または浸潤性を低減するまたは阻害すること、2)原発の腫瘍またはがんとは異なる1以上の他の部位、場所、または領域への原発の腫瘍またはがんから生じる転移の形成または確立を低減するまたは阻害すること、3)転移が形成された、または確立された後の原発の腫瘍またはがんとは異なる1以上の他の部位、場所または領域での転移の成長または増殖を低減するまたは阻害すること、4)転移が形成された、または確立された後の追加の転移の形成または確立を低減するまたは阻害すること、5)全生存期間の延長、6)無増悪生存期間の延長、または7)疾患の安定化のうちの1以上のための方法を提供する。方法は、本明細書に記載されているようなチェックポイント阻害剤と併用して、本発明の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
本開示の一実施形態では、免疫療法剤を伴う本発明の化合物の投与は、所与の対象の状態において検出可能または測定可能な改善、例えば、細胞増殖性または細胞性過剰増殖性の障害、新生物、腫瘍またはがん、または転移の存在に関連する1以上の有害な(身体的)症状または結果を緩和するまたは改善すること、すなわち、治療的利益または有益な効果を提供する。
治療上の利益または有益な効果は、例えば、新生物、腫瘍またはがん、または転移のような細胞増殖障害または細胞過剰増殖性障害に関連するまたはそれが原因である有害症状の状態または病状、発症、重症度、期間または頻度の減少における客観的または主観的、一過性、一時的、または長期の改善である。それは改善された生存をもたらし得る。本開示に係る治療方法の満足のいく臨床エンドポイントは、例えば、1以上の関連する病状、有害な症状または合併症の重症度、期間または頻度の漸進的または部分的な減少がある場合、あるいは新生物、腫瘍またはがん、または転移のような細胞増殖障害または細胞過剰増殖性障害の生理学的、生化学的または細胞の症状または特徴の1以上の阻害または逆転がある場合に達成される。したがって、治療上の利益または改善は、標的増殖細胞(例えば、新生物、腫瘍またはがん、または転移)の破壊、あるいは新生物、腫瘍またはがん、または転移のような細胞増殖障害または細胞増殖性障害に関連するまたはそれが原因である病状、有害症状または合併症の1以上、ほとんどまたはすべての消失であってもよいが、これらに限定されない。しかしながら、治療上の利益または改善は、標的増殖細胞(例えば、新生物、腫瘍またはがん、または転移)の治癒または完全な破壊、あるいは新生物、腫瘍またはがん、または転移のような細胞増殖障害または細胞増殖性障害に関連するまたはそれが原因である病状、有害症状または合併症の完全な消失である必要はない。例えば、腫瘍またはがんの進行または悪化を抑制することによる腫瘍またはがんの細胞塊の部分的破壊、または腫瘍またはがんの塊、サイズまたは細胞数の安定化は、たとえ腫瘍またはがんの塊、サイズ、または細胞の一部または大部分が残っていても、死亡率を低下させ、数日、数週間、または数ヵ月であっても、寿命を延ばすことができる。
治療効果の具体的な非限定的な例には、新生物、腫瘍またはがん、または転移の容積(サイズまたは細胞質量)または細胞数の減少、新生物、腫瘍またはがんの容積の増加を抑制するまたは防ぐこと(例えば、安定化)、新生物、腫瘍またはがんの進行、悪化または転移を遅らせるまたは抑制すること、あるいは新生物、腫瘍またはがんの増殖、成長または転移を阻害することが挙げられる。
本開示の一実施形態では、本発明の化合物との併用療法での免疫療法剤の投与は、以下:(i)irCR--測定可能かどうかにかかわらず、すべての病変が完全に消失し、新しい病変がない(最初に文書化された日から4週間以上の繰り返しの連続評価による確認)、(ii)irPR--ベースラインと比較して50%以上の全身腫瘍組織量の減少(最初の文書化から少なくとも4週間後の連続評価によって確認される)の1以上を含む(時点応答評価から導出され、全身腫瘍組織量に基づくような)irRCに従って検出可能なまたは測定可能な改善または全体的応答を提供する。
任意で、本明細書に記載されている方法は直ちに効力を生じなくてもよい。例えば、治療の後に、新生物、腫瘍またはがんの細胞の数または質量の増加が続き得るが、時間の経過とともに、所与の対象にて腫瘍細胞の質量、サイズまたは細胞数の最終的な安定化または減少がその後に生じ得る。
抑制する、軽減する、減らす、遅延させるまたは予防することができる、新生物、腫瘍、がん及び転移に関連する追加の有害な症状及び合併症には、例えば、悪心、食欲の欠如、嗜眠、疼痛及び不快感が挙げられる。したがって、細胞の過剰増殖性障害に関連する、またはそれが原因である有害症状または合併症の重症度、期間または頻度の部分的なまたは完全な減少または軽減、対象の生活の質及び/または健全性、例えば、エネルギーの増加、食欲、心理的健全性における改善はすべて、治療効果の特定の非限定的な例である。
したがって、治療上の利益または改善には、治療される対象の生活の質の主観的な改善も挙げることができる。追加の実施形態では、方法は対象の寿命(生存)を延ばすまたは延長する。さらなる実施形態では、方法は対象の生活の質を改善する。
一実施形態では、本発明の化合物との併用療法での免疫療法剤の投与は、以下:(i):全体生存率、(ii):進行のない生存率、(iii):全体的な奏効率、(iv):転移性疾患の減少、(v):炭水化物抗原19.9(CA19.9)や癌胎児性抗原(CEA)または腫瘍に応じたその他のような腫瘍抗原の循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii):疼痛管理または鎮痛薬の使用、(ix):CRP/アルブミン比の1以上から選択される病状及び進行の1以上のマーカーでの臨床的に関連する改善をもたらす。
免疫療法剤と併用した本発明の化合物による治療は、自然免疫及び1型免疫の発達だけでなく、適切な免疫機能をさらに効率的に回復させる免疫調節も含む、さらに複雑な免疫を生じさせる。
種々の例示的な方法では、目的のチェックポイント分子(例えば、PD-1)に向けられたチェックポイント阻害剤抗体(モノクローナルまたはポリクローナル、二重特異性、三重特異性、または免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物)を配列決定し、次に、ポリヌクレオチド配列を発現または増殖のためにベクターにクローニングしてもよい。目的の抗体またはその抗原結合断片をコードする配列は、宿主細胞内のベクターで維持されてもよく、次いで、宿主細胞は、将来の使用のために増殖させ、凍結することができる。細胞培養における組換えモノクローナル抗体の産生は、当該技術分野で知られている手段により、B細胞からの抗体遺伝子のクローニングを介して実施することができる。例えば、Tiller et al.,2008,J.Immunol.Methods,329,112;米国特許第7,314,622号を参照のこと。
本開示に係る本発明の化合物を含有する医薬組成物は、通常、薬学的に許容される担体に分散される有効量の本発明の化合物、免疫療法剤、及び/またはその双方を含むであろう。「薬学的または薬理学的に許容される」という表現は、必要に応じて、例えばヒトのような動物に投与されたときに有害な、アレルギー性のまたは他の厄介な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本発明の化合物を含有する医薬組成物の調製は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990に例示されているように、本開示に照らして当業者に知られるであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)投与のためには、製剤は、無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度の基準を満たす必要があることが理解されるであろう。本明細書に記載されている免疫療法剤と混合した本発明の化合物を含有する、併用組成物のための薬理学的に許容される担体の具体例は、ホウ酸緩衝液または滅菌生理食塩水(0.9%NaCl)である。
免疫療法剤の製剤、例えば、本開示に従って使用される免疫チェックポイント修飾物質抗体は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980]にて十分に記載され、例示説明されているように、凍結乾燥製剤または水溶液及び/または懸濁液の形態で所望の純度を有する抗体を任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって保存のために調製することができる。許容される担体、賦形剤、緩衝剤または安定剤は、採用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、本開示の医薬組成物で採用されてもよい好適な水性及び/または非水性の賦形剤、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材の使用によって、分散液の場合に必要な粒度の維持によって、及び界面活性剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝液の使用によって維持することができる。酸化防止剤、例えば、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性酸化防止剤、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどのような油溶性抗酸化剤、(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤、防腐剤(例えば、塩化オクタド-シルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)が含まれてもよい。他の例示的な薬学的に許容される賦形剤には、ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/または、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標) またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が挙げられてもよい。
例示的な一実施形態では、医薬組成物は任意で、pH調整剤及び緩衝剤及び毒性調整剤のような生理学的条件に近似するために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムを含有することができる。いくつかの実施形態では、本開示のチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片は、保存のために製剤化され、凍結乾燥することができ、当該技術分野で知られている凍結乾燥及び再構成の技術に従って使用する前に好適な賦形剤で再構成することができる。1以上のチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片を含有する1つの例示的な医薬組成物では、組成物は、静脈内投与または皮下投与のための1以上のチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片の無菌の防腐剤を含まない溶液として製剤化される。製剤は、単回使用のプレフィルドペンとして、例えば約1mLのプレフィルドガラスシリンジを含有する単回使用として、または単回使用の施設用バイアルとして供給することができる。好ましくは、チェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物は、透明で無色であり、pHは約6.9~5.0、好ましくはpH6.5~5.0、一層さらに好ましくはpHは約6.0から約5.0の範囲である。種々の実施形態では、医薬組成物を含む製剤は再構成されて対象に投与される際に、溶液のmLあたり約500mg~約10mg、または約400mg~約20mg、または約300mg~約30mg、または約200mg~約50mgのチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片を含有することができる。例示的な注射賦形剤または注入賦形剤は、非経口投与、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下の投与のために、マンニトール、クエン酸一水和物、二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、一塩基性リン酸ナトリウム二水和物、ポリソルベート80、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び水を含むことができる。
別の例示的な実施形態では、1以上の免疫療法剤、またはその抗原結合断片は、約5から6の範囲のpHにて酢酸ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムと共に1~75mg/mL、またはさらに好ましくは約5~60mg/mL、またはその上さらに好ましくは約10~50mg/mL、または一層さらに好ましくは約10~40mg/mLの抗体を含有する無菌水溶液として静脈内投与または皮下投与のために製剤化される。好ましくは、静脈内製剤または皮下製剤は、pH5.5にて20mM酢酸ナトリウム、0.2mg/mLポリソルベート80、及び140mM塩化ナトリウムと共に5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mg/mLの免疫療法剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片を含有する無菌水溶液である。さらに、チェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片を含む溶液は、他の多数の化合物の中でも、ヒスチジン、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリシン、ポリ(エチレングリコール)グリコール、EDTA、メチオニン、及びそれらの任意の組み合わせ、及び関連技術で知られている他の多数の化合物を含むことができる。
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、以下の成分:5~500mgの本開示の免疫療法剤またはその抗原結合断片、10mMのヒスチジン、5%のスクロース、及びpH5.8での0.01%のポリソルベート80、及び本発明の化合物を含む。この組成物は凍結乾燥粉末として提供されてもよい。粉末が全量で再構成されるとき、組成物は同じ配合を保持する。あるいは、粉末を半容量で再構成してもよく、その場合、組成物は、10~500mgの本開示の免疫療法剤またはその抗原結合断片、20mMのヒスチジン、10%のスクロース、及びpH5.8での0.02%のポリソルベート80を含む。
一実施形態では、用量の一部は静脈内ボーラスによって投与され、残りは免疫療法剤製剤の注入によって投与される。例えば、約0.001~約200mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約100mg/kg、または約0.001mg/kg~約50mg/kg、または約0.001mg/kg~約10mg/kgの免疫療法剤またはその抗原結合断片の静脈内注射をボーラスとして与えてもよく、残りの抗体用量は静脈内注射によって投与されてもよい。免疫療法剤またはその抗原結合断片の所定の用量が、例えば、1時間~2時間~5時間の時間にわたって投与されてもよい。
さらなる実施形態では、用量の一部は皮下注射及び/またはボーラス形態の注入によって投与され、残りは免疫療法剤製剤の注入によって投与される。一部の例示的な用量では、免疫療法剤製剤は、約0.001~約200mg/kg、例えば、約0.001mg/kg~約100mg/kg、または約0.001mg/kg~約50mg/kg、または約0.001mg/kg~約10mg/kgの範囲の免疫療法剤またはその抗原結合断片の静脈内注射の用量で皮下に投与することができる。いくつかの実施形態では、用量は、ボーラスとして与えられてもよく、免疫療法剤用量の残りは、皮下注射または静脈内注射によって投与されてもよい。免疫療法剤またはその抗原結合断片の所定の用量が、例えば、1時間~2時間~5時間の時間にわたって投与されてもよい。
本明細書の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な1を超える活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補活性を有するものを含有してもよい。例えば、他の特異性を持つ1以上の免疫療法剤を提供することが望ましくあり得る。代わりに、またはさらに、組成物は、抗炎症剤、化学療法剤、細胞傷害剤、サイトカイン、増殖阻害剤及び/または小分子アンタゴニストを含んでもよい。そのような分子は、意図された目的に有効である量で組み合わせて好適に存在する。
生体内投与に使用される製剤は、無菌でなければならない、またはほぼ無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
種々の実施形態では、本明細書に記載されている医薬組成物の例示的な製剤は、医薬製剤の分野で広く知られている方法を使用して調製することができる。一般に、そのような調製方法は、活性成分を担体または1以上の他の付属成分と合わせ、次いで、必要に応じて、製品を所望の単回または複数回の投与単位に包装するステップを含むことができる。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を含む組成物はまた、小胞で送達することもでき、免疫療法剤は、同じリポソーム製剤、または本発明の化合物を含有するリポソーム製剤と適合性のある別個の製剤で送達することができる。いくつかの例示的な例では、リポソームが1以上のリポソーム表面部分、例えば、ポリエチレングリコールと、所望の腫瘍表面抗原、受容体、増殖因子、糖タンパク質、糖脂質またはネオアンチゲンを標的とする抗体、及びその抗体断片とを含有し、それらは特定の細胞または器官に選択的に輸送され、そのようにして標的化された薬物送達が強化される。
別の実施形態では、本発明の化合物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langer,Science,249:1527-1533(1990)、Treat et al.,in LIPOSOMES IN THE THERAPY OF INFECTIOUS DISEASE AND CANCER,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,N.Y.,pp.353-365(1989)、Lopez-Berestein,同上,pp.317-327を参照;一般的に同上を参照)。
さらに別の実施形態では、本発明の化合物、または組み合わせを含有する組成物、または免疫療法剤を含有する組成物は制御放出システムで送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,上記、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.,Surgery,88:507(1980)、Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態では、本発明の化合物の制御放出は、持続放出、中間放出、パルス放出、または代替放出を提供するためのポリマー材料を含むことができる(MEDICAL APPLICATIONS OF CONTROLLED RELEASE, Langer及びWise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974)、CONTROLLED DRUG BIOAVAILABILITY,DRUG PRODUCT DESIGN AND PERFORMANCE,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984)、Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと。Levy et al.,Science,228:190(1985)、During et al.,Ann.Neurol.25:351(1989)、Howard et al.,J.Neurosurg.71:105(1989)も参照のこと)。Langer(Science,249:1527-1533(1990))による概説で考察されている他の徐放性システムを使用することができる。
選択された媒体における活性成分(複数可)の最適濃度は、当業者に周知の手順に従って経験的に決定することができ、所望の最終的な医薬製剤及び採用される用途に左右されるであろう。
本開示はまた、本開示の医薬組成物の成分の1以上で満たされた1以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供し、それは最低限、本発明の化合物と、本明細書に記載されているような1以上のチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片とを含むであろう。他の実施形態では、キットは薬学的に許容される賦形剤、例えば希釈剤を提供する1以上のさらなる容器を含有してもよい。一実施形態では、キットは少なくとも1つの容器を含んでもよく、その際、容器は、本発明の化合物と、本開示のチェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片とを含むことができる。キットはまた、チェックポイント分子が介在する疾患または障害の治療のために最終的な医薬組成物を調製し、それを必要とする対象に投与するための一連の使用説明書も含んでもよい。
本開示のいくつかの実施形態では、免疫療法剤は免疫細胞の集団であり、それは、がんを有する対象を治療するために本発明の化合物と併用して投与することができる。いくつかの実施形態では、免疫療法剤は、目的の抗原に結合する受容体を含む(例えば、発現する)白血球(有核白血球)のような免疫細胞の集団である。本開示の白血球は、例えば、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、または単球であってもよい。いくつかの実施形態では、白血球はリンパ球である。リンパ球の例には、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはNKT細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、T細胞はCD4+Th(Tヘルパー)細胞、CD8+細胞傷害性T細胞、γδT細胞、または制御性(サプレッサー)T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は樹状細胞である。
本開示の免疫細胞は、いくつかの実施形態では、抗原結合受容体を発現するように遺伝子操作されている。細胞が操作された(外来性の)核酸を含む場合、細胞は「操作された」と見なされる。本開示の操作された核酸を、任意の既知の(例えば、従来の)方法によって細胞に導入してもよい。例えば、操作された核酸は、エレクトロポレーション(例えば、Heiser W.C.Transcription Factor Protocols:Methods in Molecular Biology.TM.2000;130:117-134を参照)、化学的に(例えば、リン酸カルシウムまたは脂質)、形質移入(例えば、Lewis W.H.,et al.,Somatic Cell Genet.1980,May;6(3):333-47、Chen C.,et al.,Mol.Cell Biol.1987,August;7(8):2745-2752を参照)、組換えプラスミドを含有する細菌プロトプラストとの融合(例えば、Schaffner W.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1980,April;77(4):2163-7を参照)、精製されたDNAの細胞の核への直接微量注入(例えば、Capecchi M.R.Cell.1980,November;22(2Pt 2):479-88を参照)、またはレトロウイルスによる形質導入によって細胞に導入されてもよい。
本開示のいくつかの態様は、がんを有する対象から免疫細胞(例えば、T細胞)を単離し、免疫細胞を(例えば、キメラ抗原受容体のような抗原結合受容体を発現するように)遺伝子操作し、細胞を生体外で増殖させ、次いで免疫細胞を対象に再導入することを含む「養子細胞」アプローチを提供する。この方法は、従来の遺伝子送達法及びワクチン接種法によって達成され得るものと比べて、対象にてさらに多くの操作された免疫細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫細胞は対象から単離され、遺伝子操作なしに生体外で増殖させ、次いで、対象に再導入される。
本開示の免疫細胞は、本明細書で提供されるように、体外から送達された核酸によってコードされる抗原のような抗原に結合する受容体を含む。いくつかの実施形態では、白血球は、抗原に結合する受容体を発現するように改変される(例えば、遺伝子改変される)。受容体は、いくつかの実施形態では、天然に存在する抗原受容体(通常は免疫細胞上で発現される)、組換え抗原受容体(通常は免疫細胞上で発現されない)またはキメラ抗原受容体(CAR)であってもよい。本開示に包含される天然に存在する及び組換えの抗原受容体には、T細胞受容体、B細胞受容体、NK細胞受容体、NKT細胞受容体及び樹状細胞受容体が挙げられる。「キメラ抗原受容体」は、腫瘍細胞によって発現される抗原を認識してそれに結合するように操作された人工的な免疫細胞受容体を指す。一般に、CARはT細胞用に設計されており、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメインと抗原認識ドメイン(例えば、抗体の単鎖断片(scFv))のキメラである(開示の全体が、参照によって本明細書に組み込まれるEnblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505))。
いくつかの実施形態では、抗原結合受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。CARを発現したT細胞を「CART細胞」と呼ぶ。CART細胞受容体は、いくつかの実施形態では、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメインと抗原認識ドメイン(例えば、抗体の単鎖断片(scFv))とを含む(開示の全体が参照によってそ本明細書に組み込まれるEnblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505))。
CARには4つの世代があり、そのそれぞれが異なる成分を含有する。第1世代のCARは、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介して抗体由来のscFvをT細胞受容体のCD3ζ(ζまたはz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第2世代のCARは、共刺激シグナルを供給するために追加のドメイン、例えば、CD28、4-1BB(41BB)、またはICOSを組み込んでいる。第3世代のCARはTcRのCD3ζ鎖と融合した2つの共刺激ドメインを含有する。第3世代の共刺激ドメインには、例えば、CD3z、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、またはOX40の組み合わせが含まれてもよい。CARは、いくつかの実施形態では、通常、単鎖可変断片(scFv)に由来する細胞外ドメイン(例えば、CD3)と、ヒンジと、膜貫通ドメインと、CD3Z及び/または共刺激分子に由来する1つ(第1世代)、2つ(第2世代)、3つ(第3世代)のシグナル伝達ドメインを有する細胞内ドメインとを含有する(開示の全体参照によって本明細書に組み込まれる、Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023、Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151-155))。
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、第4世代CARとしても知られる、普遍的なサイトカイン殺傷に向け直されたT細胞(TRUCK)である。TRUCKは、標的組織、例えば標的腫瘍組織に蓄積するトランスジェニックサイトカインを産生し、放出するのに媒体として使用されるCARリダイレクトT細胞である。トランスジェニックサイトカインは、標的のCAR結合の際に放出される。TRUCK細胞は標的にて種々の治療用サイトカインを沈着させてもよい。これは、標的部位に治療濃度をもたらし、全身毒性を回避し得る。
CARは通常、その機能的特性で異なる。T細胞受容体のCD3ζのシグナル伝達ドメインは、結合すると、T細胞の増殖を活性化し、誘導するが、アネルギー(生体の防御機構による反応の欠如であって、末梢リンパ球寛容の直接誘導をもたらす)につながり得る。リンパ球は特異抗原に反応できないと、アネルギーと見なされる。第2世代のCARにおける共刺激ドメインの追加は、操作されたT細胞の複製能力と持続性を改善した。同様の抗腫瘍効果がCD28または4-1BB CARで試験管内にて観察されるが、前臨床の生体内試験は、4-1BB CARが優れた増殖及び/または持続性を生じ得ることを示唆している。臨床試験は、これらの第2世代CARの双方が生体内で実質的なT細胞増殖を誘導できることを示唆しているが、4-1BB共刺激ドメインを含有するCARはさらに長く持続するようである。第3世代のCARは、複数のシグナル伝達ドメイン(共刺激)を組み合わせて効力を増強する。第4世代のCARは、トランスジェニックサイトカインの構成的なまたは誘導性の発現カセットでさらに操作され、それはCAR T細胞によって放出されてT細胞応答を調節する。例えば、開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるEnblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505、Chmielewski and Hinrich,Expert Opinion on Biological Therapy.2015;15(8):1145-1154を参照のこと。
いくつかの実施形態では、例示的な免疫療法剤は第1世代のキメラ抗原受容体CARである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は第3世代のCARである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は第2世代のCARである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は第3世代のCARである。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、第4世代CARまたは普遍的なサイトカイン殺傷に向け直されたT細胞(TRUCK)である。
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原結合ドメインを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞質ドメインとを含む。いくつかの実施形態では、CARは完全にヒト型である。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは1以上の抗原に特異的である。いくつかの実施形態では、「スペーサー」ドメインまたは「ヒンジ」ドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間、またはCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。「スペーサードメイン」は、ポリペプチド鎖にて膜貫通ドメインを細胞外ドメイン及び/または細胞質ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。「ヒンジドメイン」は、CARまたはそのドメインに柔軟性を提供するように、またはCARまたはそのドメインの立体障害を防止するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、スペーサードメインまたはヒンジドメインは、最大300のアミノ酸(例えば、10~100のアミノ酸、または5~20のアミノ酸)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1以上のスペーサードメイン(複数可)がCARの他の領域に含まれてもよい。
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、腫瘍抗原に特異的な単鎖Fv(scFv)のような抗原結合ドメインを含む。結合ドメインの選択は標的細胞の表面を規定するリガンドの種類と数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、がんまたは自己免疫疾患のような特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択されてもよい。したがって、本開示のCARにおける抗原結合ドメインのリガンドとして作用し得る細胞表面マーカーの例には、がん細胞及び/または他の形態の罹患細胞に関連するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、CARは、本明細書に提供されているように、操作された核酸によってコードされる腫瘍細胞上の抗原に特異的に結合する所望の抗原結合ドメインを操作することによって、目的の腫瘍抗原を標的とするように操作される。
標的またはエピトープに「特異的に結合する」抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は当該技術分野で理解されている用語であり、そのような特異的結合を決定する方法も当該技術分野で知られている。分子は、代替の標的よりも特定の標的抗原とさらに頻繁に、さらに迅速に、さらに長い持続時間及び/またはさらに大きな親和性で反応するまたは会合するならば、「特異的結合」を示すと言われる。第1の標的抗原に特異的に結合する抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は、第2の標的抗原に特異的に結合してもよいし、または結合しなくてもよい。したがって、「特異的結合」は、排他的結合を(含むことはできるが)必ずしも必要としない。
いくつかの実施形態では、CARを発現する免疫細胞は、複数の標的または抗原を認識するように遺伝子改変され、これによって、腫瘍細胞上の固有の標的または抗原の発現パターンの認識が可能になる。複数の標的と結合することができるCARの例には、複数の抗原を発現する腫瘍に完全な免疫細胞の活性化を限定する「スプリットシグナルCAR」、2つのscFvを有する細胞外ドメインを含有する「タンデムCAR」(TanCAR)、及び、アビジンまたはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)に特異的なscFvを組み込んでタグ付きモノクローナル抗体(Mab)とインキュベートした腫瘍細胞を認識する「普遍的な細胞外ドメインCAR」が挙げられる。
CARは、2つの異なる抗原を認識する(2つの異なる抗原認識ドメインを有する)ならば、「二重特異性」と見なされる。いくつかの実施形態では、二重特異性CARは、単一のトランスジェニック受容体上に縦一列になって存在する2つの別個の抗原認識ドメインから構成される(TanCARと呼ばれる。例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれるMolecular Therapy Nucleic Acids 2013;2:e105を参照のこと)。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、本発明の化合物と本発明の化合物と免疫療法剤が抗原をコードする操作された核酸である免疫療法剤とを含む組み合わせを腫瘍に送達すること、または自己抗原の発現を誘導する操作された核酸を腫瘍に送達すこと、及びそのうちの一方は操作された核酸によってコードされる2つの抗原に結合する二重特異性CARを発現する免疫細胞を腫瘍に送達することを含む。
いくつかの実施形態では、CARは、例えば、腫瘍外毒性を回避するために使用されてもよい、抗原特異的阻害性CAR(iCAR)である(全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2013年12月11日オンラインで公開されたFedorov,V.D.et al.Sci.Transl.Med)。iCARは、例えば、余分な腫瘍標的の発現に起因してもよい非特異的免疫抑制を阻止するための抗原特異的阻害性受容体を含有する。iCARは、例えば、阻害分子CTLA-4またはPD-1に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、これらのiCARは、それらの内在性T細胞受容体または活性化CARのいずれかによって活性化されたT細胞からのT細胞応答を遮断する。いくつかの実施形態では、この阻害効果は一時的なものである。
いくつかの実施形態では、CARは養子細胞移入において使用されてもよく、その際、免疫細胞が対象から取り出され、抗原、例えば、腫瘍特異的抗原に特異的な受容体を発現するように操作される。次にがん細胞を認識して殺傷し得る操作された免疫細胞が対象に再導入される(それぞれが参照によって全体が本明細書に組み込まれるPule,et al.,Cytotherapy.2003;5(3):211-226、Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017-4023)。
本開示の他の態様によれば、本発明のワクチンにおける腫瘍抗原性成分は、任意の天然または合成の腫瘍関連のタンパク質もしくはペプチド、または腫瘍関連のタンパク質及び/またはペプチドもしくは糖タンパク質もしくは糖ペプチドの組み合わせである。その上さらなる他の態様では、抗原性成分は、患者特異的である、または特定の型の癌を持つ多くのまたはほとんどの患者に共通であることができる。一態様によれば、抗原性成分は、治療されている患者から取り出された腫瘍組織に由来する細胞溶解物から成る。別の態様では、溶解物は、腫瘍組織に由来するエクソソームから操作するまたは合成することができる。さらに別の態様では、抗原性成分は、1以上の無関係な個体または腫瘍細胞株から抽出された腫瘍組織に由来する細胞溶解物から成る。
種々の実施形態では、例示的な免疫療法剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用するための1以上のがんワクチンを含む。ワクチンの腫瘍関連抗原成分は、種々の周知の技術のいずれかによって製造されてもよい。個々のタンパク質成分については、抗原性タンパク質は、例えば、高圧液体クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーのような標準的なクロマトグラフィー手段によって腫瘍組織または腫瘍細胞株から単離される、または代わりに、好適な発現系、例えば、大腸菌、酵母、植物において標準的な組換えDNA技術によって合成される。次に、腫瘍関連抗原性タンパク質は、標準的なクロマトグラフィー手段によって発現系から精製される。ペプチド抗原性成分の場合、これらは一般に標準的な自動合成によって調製される。タンパク質及びペプチドは、アミノ酸、脂質、及びその他の薬剤の付加によって改変されて、ワクチンの送達システム(多層リポソームなど)への取り込みを改善することができる。患者自身の腫瘍または他の個体に由来する腫瘍または細胞株に由来する腫瘍関連抗原性成分については、腫瘍組織、または腫瘍組織に由来する単個細胞浮遊液は通常、好適な緩衝液中でホモジネートされる。ホモジネートはまた、遠心分離などによって分画されて、細胞膜または可溶性物質のような特定の細胞成分を単離することができる。腫瘍材料を直接使用することができ、または界面活性剤のような好適な薬剤を低濃度で含有する緩衝液を使用して、ワクチンに組み込むために腫瘍関連抗原を抽出することができる。腫瘍組織、腫瘍細胞、及び腫瘍細胞膜から抗原性タンパク質を抽出するための好適な界面活性剤の例は、ジヘプタノイルホスファチジルコリンである。腫瘍組織または腫瘍細胞に由来するエクソソームは、患者にとって自家または異種であるかどうかにかかわらず、ワクチンに組み込むための抗原性成分に、または腫瘍関連抗原の抽出のための出発物質として使用することができる。
本開示のいくつかの実施形態では、併用療法はがんワクチン免疫療法剤との併用で本発明の化合物を含む。種々の例では、がんワクチンは、少なくとも1つの腫瘍関連抗原と、少なくとも1つの免疫刺激剤と、任意で、少なくとも1つの細胞に基づいた免疫療法剤とを含む。いくつかの実施形態では、本開示のがんワクチンにおける免疫刺激成分は、治療用がんワクチンの有効性を増強して患者におけるがん細胞に対する液性及び細胞性の免疫応答を誘導するする能力を有する任意の生体応答調節剤(BRM)である。一態様によれば、免疫刺激剤はサイトカインまたはサイトカインの組み合わせである。そのようなサイトカインの例には、IFN-γのようなインターフェロン、IL-2、IL-15及びIL-23のようなインターロイキン、M-CSF及びGM-CSFのようなコロニー刺激因子、及び腫瘍壊死因子が挙げられる。別の態様によれば、開示されているがんワクチンの免疫刺激成分は、免疫刺激サイトカインの有無にかかわらず、APC Toll様受容体アゴニストまたは共刺激/細胞接着膜タンパク質のような1以上のアジュバント型免疫刺激剤を含む。Toll様受容体アゴニストの例には、リピドA及びCpG、及びCD80、CD86、ICAM-1のような共刺激/接着タンパク質が挙げられる。
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、IFN-γ、IL-2、IL-15、IL-23、M-CSF、GM-CSF、腫瘍壊死因子、リピドA、CpG、CD80、CD86、ICAM-1、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される。他の態様によれば、細胞に基づく免疫療法剤は、樹状細胞、腫瘍浸潤性Tリンパ球、患者の腫瘍型に向けられたキメラ抗原受容体修飾Tエフェクター細胞、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、骨髄細胞、及び患者の免疫系の他の細胞、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される。一態様では、がんワクチン免疫刺激剤には、インターロイキン2(IL-2)、GM-CSF、M-CSF、及びインターフェロン-γ(IFN-γ)のような1以上のサイトカイン、モノホスホリルリピドA、リピドA、ムラミルジペプチド(MDP)脂質複合体及び二本鎖RNAのような1以上のToll様受容体アゴニスト及び/またはアジュバント、またはCD80、CD86及びICAM-1のような1以上の共刺激膜タンパク質及び/または細胞接着タンパク質、または上記の任意の組み合わせが挙げられる。一態様では、がんワクチンには、インターロイキン2(IL-2)、GM-CSF、M-CSF、及びインターフェロン-γ(IFN-γ)から成る群から選択されるサイトカインである免疫刺激剤が含まれる。別の態様では、がんワクチンには、モノホスホリルリピドA、リピドA、及びムラミルジペプチド(MDP)脂質抱合体及び二本鎖RNAから成る群から選択されるToll様受容体アゴニスト及び/またはアジュバントである免疫刺激剤が含まれる。さらに別の態様では、がんワクチンには、CD80、CD86、及びICAM-1から成る群から選択される共刺激膜タンパク質及び/または細胞接着タンパク質である免疫刺激剤が含まれる。
種々の実施形態では、免疫療法剤は、がんワクチンを含むことができ、その際、がんワクチンは、本発明に従って融合タンパク質を構築するのに潜在的に使用することができる任意の腫瘍抗原及び特に以下を組み込む:(a)例えば、黒色腫、肺、頭頸部、NSCLC、乳房、胃腸、及び膀胱の腫瘍に対処するために使用することができるNY-ESO-1、SSX2、SCP1、ならびにRAGE、BAGE、GAGE及びMAGEファミリーポリペプチド、例えば、GAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、及びMAGE-12を含む癌精巣抗原、(b)種々の固形腫瘍、例えば、大腸癌、肺癌、頭頸部癌に関連するp53;例えば、黒色腫、膵臓癌、結腸直腸癌に関連するp21/Ras;例えば、黒色腫に関連するCDK4;例えば、黒色腫に関連するMUM1;例えば、頭頸部癌に関連するカスパーゼ-8;例えば、膀胱癌に関連するCIA0205;例えば黒色腫に関連するHLA-A2-R1701、βカテニン;例えば、T細胞非ホジキンリンパ腫に関連するTCR;例えば慢性骨髄性白血病に関連するBCR-abl;トリオースリン酸イソメラーゼ;KIA0205;CDC-27、及びLDLR-FUT含む変異抗原、(c)例えば、大腸癌に関連するガレクチン4;例えば、ホジキン病に関連するガレクチン9;例えば、慢性骨髄性白血病に関連するプロテイナーゼ3;例えば、種々の白血病に関連するWT1;例えば、腎癌に関連する炭酸脱水酵素;例えば、肺癌に関連するアルドラーゼA;黒色腫などに関連するPRAME;例えば、乳癌、結腸癌、肺癌、及び卵巣癌に関連するHER-2/neu;例えば肝細胞癌に関連するマンマグロビン、α-フェトプロテイン;例えば、大腸癌に関連するKSA;例えば、膵臓癌及び胃癌に関連するガストリン;例えば、乳癌及び卵巣癌に関連するテロメラーゼ触媒タンパク質、MUC-1;例えば、腎細胞癌に関連するG-250;例えば、乳癌、結腸癌に関連するp53;及び、例えば、乳癌、肺癌、及び大腸癌のような消化管の癌に関連する癌胎児性抗原を含む過剰発現された抗原、(d)例えば、黒色腫に関連するMART-1/MelanAのような黒色腫-メラノサイト分化抗原;gpl00;MC1R;メラノサイト刺激ホルモン受容体;チロシナーゼ;チロシナーゼ関連タンパク質-1/TRP1及びチロシナーゼ関連タンパク質-2/TRP2を含む共有抗原、(e)例えば前立腺癌に関連するPAP、PSA、PSMA、PSH-P1、PSM-P1、PSM-P2を含む前立腺関連抗原、(f)骨髄腫及びB細胞リンパ腫に関連する免疫グロブリンイディオタイプ。ある特定の実施形態では、1以上のTAAは、pi5、Hom/Mel-40、H-Ras、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、E6及びE7を含むヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、B型及びC型の肝炎ウイルス抗原、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス抗原、TSP-180、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、mn-23H1、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、pi6、TAGE、PSCA、CT7、43-9F、5T4、791Tgp72、β-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、またはそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトタンパク質のアミノ酸配列全体、その一部、または特定の免疫原性エピトープを含む腫瘍抗原を含むことができるがんワクチンと組み合わせて使用するための本発明の化合物を提供する。
種々の実施形態では、例示的な免疫療法剤は、がんワクチンを合成するのに有用な前述のがん抗原のいずれか1以上をコードするように動作可能なmRNAを含んでもよい。いくつかの例示的な実施形態では、mRNAに基づくがんワクチンは、以下の特性のうちの1以上を有し得る:a)各がん抗原をコードするmRNAが切断感受性部位によって散在している、b)各がん抗原をコードするmRNAがリンカーなしで互いに直接連結される、c)各がん抗原をコードするmRNAが単一のヌクレオチドリンカーで互いに連結される、d)各がん抗原が20~40アミノ酸を含み、中心に位置するSNP変異を含む、e)がん抗原の少なくとも40%が対象由来のクラスIMHC分子に対して最も高い親和性を有する、f)がん抗原の少なくとも40%が対象由来のクラスIIMHC分子に対して最も高い親和性を有する、g)がん抗原の少なくとも40%がHLA-A、HLA-B、及び/またはDRB1に対してIC>500nMの予測される結合親和性を有する、h)mRNAは1~15のがん抗原をコードする、i)がん抗原の10~60%がクラスIMHCに対して結合親和性を有し、がん抗原の10~60%がクラスIIMHCに対して結合親和性を有する、及び/またはj)がん抗原をコードするmRNAががん抗原が偽エピトープを最小化するように順序付けられるように配置される。
種々の実施形態では、本発明の化合物及び本明細書で開示されているようながんワクチン免疫療法剤を含む組み合わせは、がん抗原に対する対象における免疫応答を誘導するために使用することができる。この方法は、同時に投与される、または連続して投与される同じ組成物または別個の組成物のいずれかで、本発明の化合物を投与することと併用して少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドを含むRNAワクチンを対象に投与し、それによって、対象にて抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片に特異的な免疫応答を誘導することを含み、その際、がんに対する従来のワクチンの予防有効用量でワクチン接種された対象における抗原性ポリペプチド抗体力価と比べて、対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価はワクチン接種に続いて上昇する。「抗抗原性ポリペプチド抗体」は、抗原性ポリペプチドに特異的に結合する血清抗体である。
予防有効用量は、臨床的に許容できるレベルでがんの進行を防ぐ治療有効用量である。いくつかの実施形態では、治療有効用量はワクチンの添付文書に記載されている用量である。本明細書で使用されるとき従来のワクチンは本発明のmRNAワクチン以外のワクチンを指す。例えば、従来のワクチンには、生微生物ワクチン、死滅微生物ワクチン、サブユニットワクチン、タンパク質抗原ワクチン、DNAワクチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、従来のワクチンは、規制当局の承認を達成した、及び/または国の医薬品規制機関、例えば米国の食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)によって登録されているワクチンである。
いくつかの実施形態では、対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価は、がんに対する予防有効用量の従来のワクチンでワクチン接種された対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価と比べて、ワクチン接種後に1logから10log上昇する。いくつかの実施形態では、対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価は、がんに対する予防有効用量の従来のワクチンでワクチン接種された対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価と比べて、ワクチン接種後に1log上昇する。いくつかの実施形態では、対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価は、がんに対する予防有効用量の従来のワクチンでワクチン接種された対象における抗抗原性ポリペプチド抗体力価と比べて、ワクチン接種後に2log上昇する。
本発明の態様は、第1の抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンを提供し、その際、RNAポリヌクレオチドは、宿主への生体内投与のための製剤中に存在し、それは、許容可能なパーセントのヒト対象に対する第1の抗原の血清保護の基準より優れた抗体力価を付与する。いくつかの実施形態では、本発明のmRNAワクチンによって作り出される抗体力価は中和抗体力価である。いくつかの実施形態では、中和抗体力価はタンパク質ワクチンよりも大きい。いくつかの実施形態では、本発明のmRNAワクチンによって作り出される中和抗体力価はアジュバント化タンパク質ワクチンよりも大きい。さらに他の実施形態では、本発明のmRNAワクチンによって作り出される中和抗体力価は、1,000~10,000、1,200~10,000、1,400~10,000、1,500~10,000、1,000~5,000、1,000~4,000、1,800~10,000、2000~10,000、2000~5,000、2,000~3,000、2,000~4,000、3,000~5,000、3,000~4,000、または2,000~2,500である。中和力価は通常、プラーク数を50%減らすために必要な最高の血清希釈として表される。
好ましい態様では、本開示のRNAワクチン免疫療法剤(例えば、mRNAワクチン)は、ワクチン接種された対象の血液または血清にて、予防上及び/または治療上有効なレベル、濃度及び/または力価の抗原特異的抗体を産生する。本明細書で定義されているように、抗体力価という用語は、対象、例えば、ヒト対象において産生される抗原特異的抗体の量を指す。例示的な実施形態では、抗体力価は、依然として陽性の結果を与える最大希釈(連続希釈における)の逆数として表される。例示的な実施形態では、抗体力価は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される、または測定される。例示的な実施形態では、抗体力価は、中和アッセイによって、例えば、マイクロ中和アッセイによって決定される、または測定される。ある特定の態様では、抗体力価測定は1:40、1:100のような比率として表される。
本発明の例示的な実施形態では、有効なワクチンは、1:40を超える、1:100を超える、1:400を超える、1:1000を超える、1:2000を超える、1:3000を超える、1:4000を超える、1:500を超える、1:6000を超える、1:7500を超える、1:10000を超える抗体力価を生じる。例示的な実施形態では、抗体力価は、ワクチン接種後10日までに、ワクチン接種後20日までに、ワクチン接種後30日までに、ワクチン接種後40日までに、またはワクチン接種後50日以上までに作り出される、または達成される。例示的な実施形態では、力価は対象に投与されたワクチンの単回投与後に作り出される、または達成される。他の実施形態では、力価は、複数回投与後、例えば、第1及び第2回の投与(例えば、追加免疫投与)後に作り出される、または達成される。本発明の例示的な態様では、抗原特異的抗体はg/mlの単位で測定される、またはIU/L(1リットルあたりの国際単位)またはmIU/ml(1mlあたりのミリ国際単位)の単位で測定される。本発明の例示的な実施形態では、有効なワクチンは、0.5μg/mL超、0.1μg/mL超、0.2μg/mL超、0.35μg/mL超、0.5μg/mL超、1μg/mL、2μg/mL超、5μg/mL超または10μg/mL超を作り出す。本発明の例示的な実施形態では、有効なワクチンは、10mIU/mL超、20mIU/mL超、50mIU/mL超、100mIU/mL超、200mIU/mL超、500mIU/ml超、または1000mIU/ml超を作り出す。例示的な実施形態では、抗体のレベルまたは濃度は、ワクチン接種後10日までに、ワクチン接種後20日までに、ワクチン接種後30日までに、ワクチン接種後40日までに、またはワクチン接種後50日以上までに作り出される、または達成される。例示的な実施形態では、レベルまたは濃度は対象に投与されたワクチンの単回投与後に作り出される、または達成される。他の実施形態では、レベルまたは濃度は、複数回投与後、例えば、第1及び第2の投与(例えば、追加免疫投与)後に作り出される、または達成される。例示的な実施形態では、抗体のレベルまたは濃度は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される、または測定される。例示的な実施形態では、抗体のレベルまたは濃度は、中和アッセイによって、例えば、マイクロ中和アッセイによって決定される、または測定される。提供されるのはまた、第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンであり、その際、RNAポリヌクレオチドは、安定化要素を有するまたはアジュバントと共に製剤化され、第1の抗原性ポリペプチドをコードしているmRNAワクチンによって誘導される抗体力価よりも長く持続する高抗体力価を誘導するように宿主への生体内投与用の製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、RNAポリヌクレオチドは、単回投与の1週間以内に中和抗体を産生するように製剤化される。いくつかの実施形態では、アジュバントはカチオン性ペプチド及び免疫刺激性核酸から選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性ペプチドはプロタミンである。
免疫療法剤は、少なくとも1つの化学修飾を含む、または任意でヌクレオチド修飾を含まないオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンを含み、該オープンリーディングフレームは第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードし、その際、RNAポリヌクレオチドは、宿主における抗原発現のレベルが、安定化要素を有するまたはアジュバントと共に製剤化され、第1の抗原性ポリペプチドをコードしているmRNAワクチンによって産生される抗原発現のレベルを有意に超えるように宿主への生体内投与用の製剤に存在する。
他の態様は、少なくとも1つの化学修飾を含むか、または任意でヌクレオチド修飾を含まないオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンを提供し、該オープンリーディングフレームは第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードし、その際、ワクチンは同等の抗体力価を生じるのに未修飾のmRNAワクチンに必要とされるものよりも少なくとも10倍少ないRNAポリヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、RNAポリヌクレオチドは25~100マイクログラムの投与量で存在する。
本発明の態様はまた、ヒト対象への送達のために製剤化される、オープンリーディングフレームが第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードする、少なくとも1つの化学修飾を含む、または任意でヌクレオチド修飾を含まないオープンリーディングフレームを有する10μg~400μgの間の1以上のRNAポリペプチドと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む使用単位ワクチンを提供する。いくつかの実施形態では、ワクチンはさらにカチオン性脂質ナノ粒子を含む。
本発明の態様は、(a)少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドであって、少なくとも1つの化学修飾を含むまたは任意でヌクレオチド修飾を含まない、且つ2以上のコドン最適化オープンリーディングフレームを含み、前記オープンリーディングフレームが一組の参照抗原性ポリペプチドをコードする、少なくとも1つの前記RNAポリヌクレオチドと、(b)任意で薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、抗原性メモリーブースター核酸ワクチンを個体または個体の集団に投与することを含む、前記個体または個体の集団にて腫瘍に対する抗原性メモリーを作り出す、維持するまたは復元する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ワクチンは、筋肉内投与、皮内投与及び皮下投与から成る群から選択される経路を介して個体に投与される。いくつかの実施形態では、投与ステップは、組成物の注射に好適なデバイスと対象の筋肉組織を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、投与ステップは、エレクトロポレーションと組み合わせた組成物の注射に好適なデバイスと対象の筋肉組織を接触させることを含む。
本発明の態様は、有効量での第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリペプチドを含む核酸ワクチン25μg/kg~400μg/kgの単回投与量を対象に投与して対象にワクチン接種することを含む、対象にワクチン接種する方法を提供する。
他の態様は、少なくとも1つの化学修飾を含むオープンリーディングフレームを有する1以上のRNAポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンを提供し、オープンリーディングフレームは第1の抗原性ポリペプチドまたは鎖状体ポリペプチドをコードし、その際、ワクチンは同等の抗体力価を生じるのに未修飾のmRNAワクチンに必要とされるものよりも少なくとも10倍少ないRNAポリヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、RNAポリヌクレオチドは25~100マイクログラムの投与量で存在する。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、二重特異性抗体免疫療法剤と組み合わせて使用することができる。二重特異性抗体は、第1の抗原結合部分と、細胞傷害性免疫細胞に結合する第2の抗原結合部位とを有するタンパク質構築物を含むことができる。第1の抗原結合部位は、本発明の組み合わせで特異的に処置されている腫瘍抗原に結合することができる。例えば、第1の抗原結合部分は、とりわけ、EGFR、HGFR、Her2、Ep-CAM、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、MUC1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP及びテネイシンから選択される腫瘍抗原の非限定的な例に結合し得る。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、対応する非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上で過剰発現されるタンパク質またはペプチドに対して特異性を有する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、対応する非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上で過剰発現されるタンパク質対して特異性を有する。本明細書で使用されるとき「対応する非腫瘍細胞」は、腫瘍細胞の起源と同じ細胞型のものである非腫瘍細胞を指す。そのようなタンパク質は必ずしも腫瘍抗原と異なるわけではないことに留意する。非限定的な例には、ほとんどの結腸、直腸、乳房、肺、膵臓、及び消化管の癌腫で過剰発現される癌胎児性抗原(CEA)、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌で頻繁に過剰発現されるヘレグリン受容体(HER-2、neuまたはc-erbB-2)、乳房、頭頸部、非小細胞肺、及び前立腺のものを含むさまざまな固形腫瘍で高度に発現される上皮成長因子受容体(EGFR)、アシアロ糖タンパク質受容体、トランスフェリン受容体、肝細胞で発現されるセルピン酵素複合体受容体、膵管腺癌細胞で過剰発現される線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、抗血管新生遺伝子治療用の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、非粘液性卵巣癌の90%で選択的に過剰発現される葉酸受容体、細胞表面グリコカリックス、炭水化物受容体、ならびに高分子免疫グロブリン受容体が挙げられる。
第2の抗原結合部分は、細胞傷害性免疫細胞(CIK細胞)の表面に発現される抗原またはタンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する任意の分子である。本開示での使用に好適な細胞傷害性免疫細胞の表面に発現される例示的な非限定抗原には、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD16a、CD27、CD28、CD45、CD45RA、CD56、CD62L、Fc受容体、LFA、LFA-1、TCRαβ、CCR7、マクロファージ炎症性タンパク質1a、パーフォリン、PD-1、PD-L1、PD-L2、またはCTLA-4、LAG-3、OX40、41BB、LIGHT、CD40、GITR、TGF-β、TIM-3、SIRP-α、TIGIT、VSIG8、BTLA、SIGLEC7、SIGLEC9、ICOS、B7H3、B7H4、FAS、BTNL2、CD27及びFasリガンドが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は細胞傷害性免疫細胞、例えば、CIK細胞のCD3に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は細胞傷害性免疫細胞のCD56に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は細胞傷害性免疫細胞のFc受容体に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体のFc領域は細胞傷害性免疫細胞のFc受容体に結合する。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は細胞傷害性免疫細胞(CIK細胞)の表面に発現される抗原に特異的に結合する任意の分子である。第2の抗原結合部分は、細胞傷害性免疫細胞上の抗原に特異的である。例示的な細胞傷害性免疫細胞には、CIK細胞、T細胞、CD8+T細胞、活性化T細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、マクロファージ及び樹状細胞が挙げられるが、これらに限定されない。第2の抗原結合部分は、細胞傷害性免疫細胞の表面に発現される抗原に特異的に結合する。本開示による調節に好適な細胞傷害性免疫細胞の表面に発現される例示的な非限定抗原には、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11a、CD11b、CD14、CD16a、CD27、CD28、CD45、CD45RA、CD56、CD62L、Fc受容体、LFA、LFA-1、TCRαβ、CCR7、マクロファージ炎症性タンパク質1a、パーフォリン、PD-1、PD-L1、PD-L2、またはCTLA-4、LAG-3、OX40、41BB、LIGHT、CD40、GITR、TGF-β、TIM-3、SIRP-α、TIGIT、VSIG8、BTLA、SIGLEC7、SIGLEC9、ICOS、B7H3、B7H4、FAS、BTNL2、CD27及びFasリガンドが挙げられ得る。他の実施形態では、二重特異性抗体修飾物質は共刺激分子の活性化因子(例えば、OX40アゴニスト)である。一実施形態では、OX40アゴニストは、OX40及び別の腫瘍抗原または共刺激抗原に対する二重特異性抗体分子である。OX40アゴニストは、単独で、または他の免疫調節剤との併用で、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3及び/または-5)、TIM-3またはLAG-3の阻害剤(例えば、抗体構築物)との併用で投与することができる。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体分子は、GITR及びPD-1、PD-L1、CTLA-4、CEACAM(例えば、CEACAM-1、-3及び/または-5)、TIM-3またはLAG-3に結合する二重特異性抗体である。例示的な一実施形態では、OX40抗体分子は、抗PD-1抗体分子(例えば、本明細書に記載されるような抗PD-1分子)と併用して投与される。OX40抗体分子及び抗PD-1抗体分子は、別個の抗体組成物の形態であってもよく、または二重特異性抗体分子としてであってもよい。他の実施形態では、OX40アゴニストは、他の共刺激分子、例えば、GITR、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、またはCD83のリガンドのアゴニストとの併用で投与することができる。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分は細胞傷害性免疫細胞、例えば、CIK細胞のFc受容体に結合する。
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体免疫療法剤は、腫瘍抗原及びCIK細胞に対する特異性を有し、それは、腫瘍抗原発現腫瘍細胞をCIK細胞に近接させ、CIK細胞の抗腫瘍細胞傷害を介した腫瘍細胞の排除につながる。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、腫瘍抗原に対する特異性を有するが、CIK細胞に対する特異性を有さず、しかしながら、二重特異性抗体のFc領域はCIK細胞のFc受容体に結合することができ、それは次に腫瘍細胞をCIK細胞に近接させ、CIK細胞の抗腫瘍細胞傷害を介した腫瘍細胞の排除につながる。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、CIK細胞に対する特異性を有するが、腫瘍細胞に対する特異性を有さず、しかしながら、二重特異性抗体のFc領域は腫瘍細胞のFc受容体に結合することができ、それは次に腫瘍細胞をCIK細胞に近接させ、CIK細胞の抗腫瘍細胞傷害を介した腫瘍細胞の排除につながる。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物の免疫療法剤と組み合わせて使用することができる。種々の実施形態では、例示的な免疫療法剤は、組換え構造、例えば、元のIgG構造を模倣しないすべての操作された抗体を含んでもよい免疫細胞に結合する多価抗体/融合タンパク質/構築物を含むことができる。ここでは、抗体断片を多量体化するためのさまざまな戦略が利用されている。例えば、Vドメイン間のペプチドリンカーを短くすることにより、scFvを二量体(ダイアボディ、55kDa)に自己会合させる。二重特異性ダイアボディは、同じ細胞で発現される2つのVHA-VLB断片及びVHB-VLA断片の非共有結合によって形成される。これは、2つの異なる結合部位を有するヘテロダイマーの形成につながる。単鎖ダイアボディ(sc-ダイアボディ)は、VHA-VLB断片とVHB-VLA断片が追加の第3のリンカーによって一緒に連結されている二重特異性分子である。タンデムダイアボディ(タンダブ)は、2つのscダイアボディによって生成される4価の二重特異性抗体である。
含まれるのはまた当該技術分野で知られているジダイアボディである。この130kDaの分子は、IgGのVH3ドメインのN末端にダイアボディが融合することによって形成され、IgG様の構造を生じる。さらなるダイアボディ誘導体は、トリアボディ及びテトラボディであり、それらはリンカーを5未満または0~2残基まで短縮することによって三量体断片及び四量体断片に折り畳まれる。例示されるのはまた、「二重特異性T細胞エンゲージャー」(BITE)として知られる(scFv)構築物である。BITEは、柔軟なリンカーを介して連結される2つのscFv抗体断片から成り、標的細胞上の表面抗原とT細胞上のCD3に向けられる二重特異性単鎖抗体である。2価(Fab)2及び3価(Fab)3の抗体フォーマットも例示される。また、scFvから生成されたミニボディ及びトリマーボディも例示されている。腫瘍抗原を標的とするのに有用な例示的な構築物には、ダイアボディ、単鎖(sc)-ダイアボディ(scFv)2、ミニ抗体、ミニボディ、バルナーゼ-バースター、scFv-Fc、sc(Fab)2、三量体抗体構築物、トリアボディ抗体構築物、トリマーボディ抗体構築物、トリボディ抗体構築物、コラボディ抗体構築物、(scFv-TNFa)3、F(ab)3/DNLの1以上を挙げることができる。例示的な細胞傷害性免疫細胞には、CIK細胞、T細胞、CD8+T細胞、活性化T細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、マクロファージ及び樹状細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、放射性複合体免疫療法剤と組み合わせて使用することができる。
種々の実施形態では、放射性複合体は放射性核種または複数の放射性核種に結合され、または他の方法で付加される小分子または大分子(本明細書では「細胞標的化剤」と呼ばれる)、例えば、抗体またはその抗体断片であり、放射性複合体のその標的(がん細胞上またはがん細胞内のタンパク質または分子)への結合が前記がん細胞の死または罹患をもたらす。種々の実施形態では、放射性複合体は放射性核種で標識された細胞標的剤であることができ、または細胞標的剤は、複数の放射性核種を含有する粒子、もしくは微粒子、もしくはナノ粒子に結合されてもよく、もしくは他の方法で付加されてもよく、その際、放射性核種は同じである、または異なる。放射性複合体を合成するための方法は当該技術分野で知られており、毒性放射性核種に結合される免疫グロブリンのクラスまたはその抗原結合部分を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、がん細胞に結合する分子は、「細胞標的化剤」として知られ得る。本明細書で使用されるとき、例示的な細胞標的化剤は、薬物含有ナノ粒子または放射性核種が、目的の特定の型の細胞を標的とすることを可能にすることができる。細胞標的化剤の例には、腫瘍関連抗原に結合するまたはそれを標的とする小分子(例えば、葉酸、アデノシン、プリン)及び高分子(例えば、ペプチドまたは抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍関連抗原の例には、アデノシン受容体、αvβ3、アミノペプチダーゼP、αフェトプロテイン、がん抗原125、癌胚性抗原、cカベオリン-1、ケモカイン受容体、クラステリン、癌胎児性抗原、CD20、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、Ras、p53、Her2/Neu、ErbB2、ErbB3、ErbB4、葉酸受容体、前立腺特異的膜抗原、前立腺特異的抗原、プリン受容体、放射線誘発細胞表面受容体、セルピンB3、セルピンB4、扁平細胞がん抗原、トロンボスポンジン、腫瘍抗原4、腫瘍関連糖タンパク質72、チオシナーゼ、及びチロシンキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞標的化剤は葉酸受容体(FR)に特異的に結合する葉酸または葉酸誘導体である。いくつかの実施形態では、細胞標的化剤は、とりわけ、EGFR、HGFR、Her2、Ep-CAM、CD20、CD30、CD33、CD47、CD52、CD133、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、MUC1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP及びテネイシンから選択されるがん抗原に特異的に結合する抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、またはそれらの抗原結合構築物である。
放射性複合体における標的化剤として葉酸を使用することにより、腫瘍細胞と制御性T(Treg)細胞の双方を破壊の標的にすることもできる。多数のTreg細胞が腫瘍免疫を抑制することは広く認められている。具体的には、Treg細胞は、(外来及び自己の)反応性T細胞を、接触依存性またはサイトカイン(例えば、IL-10、TGF-βなど)分泌を介してそれらを殺傷することなく、抑制する。FR4はTreg細胞で選択的に上方調節される。FR4の抗体遮断が担癌マウスにてTreg細胞を枯渇させ、腫瘍免疫を誘発したことが示されている。したがって、細胞傷害剤を保持する葉酸でコーティングされたPBMナノ粒子は、FR発現細胞をそれらの破壊のための対象とし、直接的(すなわち、BrCa細胞)及び間接的(すなわち、乳房腫瘍関連及び末梢Treg細胞)の双方で腫瘍の進行を阻害する。
別のさらなる実施形態では、標的化剤は、アデノシン受容体、αvβ3、アミノペプチダーゼP、αフェトプロテイン、がん抗原125、癌胚性抗原、cカベオリン-1、ケモカイン受容体、クラステリン、癌胎児性抗原、CD20、ヒト成長因子受容体(HGFR)、上皮腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、MUC1、Ras、p53、Her2/Neu、ErbB2、ErbB3、ErbB4、葉酸受容体、前立腺特異的膜抗原、前立腺特異的抗原、プリン受容体、放射線誘発細胞表面受容体、セルピンB3、セルピンB4、扁平細胞がん抗原、トロンボスポンジン、腫瘍抗原4、腫瘍関連糖タンパク質72、チロシナーゼ、及びチロシンキナーゼなどから成るが、これらに限定されない腫瘍関連抗原に結合することができる抗体、ペプチド、または免疫細胞関連の多価抗体/融合タンパク質/構築物である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、がんの治療のためのワクチン接種プロトコールと組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、ワクチンのような免疫療法剤と組み合わせて使用することができる。種々の実施形態では、例示的なワクチンには、がん抗原に対する免疫応答を刺激するのに使用されるものが挙げられる。
本明細書で開示されている化合物またはその塩、及び担体材料と組み合わせて単一の剤形を生成してもよい追加の1以上の追加の治療剤(上述のような追加の治療剤を含む組成物中)の双方の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変化するであろう。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は本発明の化合物0.01~100mg/kg体重/日の投与量を投与することができるように製剤化される。
本明細書で開示されている追加の治療剤及び化合物は相乗的に作用し得る。したがって、そのような組成物における追加の治療剤の量は、その治療剤のみを利用する単剤療法で必要とされる量よりも少なくてもよく、またはさらに低い用量が使用された患者に対する副作用がさらに少なくてもよい。ある特定の実施形態では、そのような組成物では追加の治療剤の0.01~10,000μg/kg体重/日の投与量を投与することができる。
標識化合物及びアッセイ法
本発明の別の態様は、画像化技術においてだけでなく、ヒトを含む組織試料中のプロテインキナーゼを局在化し、定量するための、及び標識された化合物の阻害結合によってプロテインキナーゼリガンドを同定するための生体内及び生体内の双方でのアッセイにおいても有用である本発明の標識化合物(放射性標識、蛍光標識など)に関する。したがって、本発明はそのような標識化合物を含有するプロテインキナーゼアッセイを含む。
本発明はさらに、本発明の同位体標識化合物を含む。「同位体標識された」または「放射性標識された」化合物は、1以上の原子が、自然界で通常見られる(すなわち、天然に存在する)原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子によって置き換えられる、または置換される本発明の化合物である。本発明の化合物に組み込まれてもよい好適な放射性核種には、H(重水素を示すようにDとも表記)、H(トリチウムを示すようにTとも表記)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが挙げられるが、これらに限定されない。本放射性標識化合物に組み込まれる放射性核種はその放射性標識化合物の特定の用途に左右されるであろう。例えば、試験管内メタロプロテアーゼ標識及び競合アッセイのためには、H、14C、82Br、125I、131I、または35Sを組み込んでいる化合物が一般に最も有用であろう。放射性画像化応用のためには、11C、18F、125I、123I、124I、131I、75Br、76Brまたは77Brが一般に最も有用であろう。
「放射性標識」または「標識化合物」は少なくとも1つの放射性核種を組み込んでいる化合物であることが理解される。いくつかの実施形態では、放射性核種は、H、14C、125I、35S、及び82Brから成る群から選択される。
本発明はさらに、本発明の化合物に放射性同位体を組み込むための合成方法を含むことができる。放射性同位体を有機化合物に組み込むための合成方法は当該技術分野で周知であり、当業者は本発明の化合物に適用可能な方法を容易に認識するであろう。
本発明の標識化合物は、化合物を同定する/評価するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。例えば、標識される新たに合成されたまたは同定された化合物(すなわち、試験化合物)を、標識の追跡を介して、プロテインキナーゼと接触するときのその濃度変動をモニターすることによって、プロテインキナーゼと結合するその能力について評価することができる。例えば、(標識された)試験化合物は、プロテインキナーゼに結合することが知られている別の化合物(すなわち、標準化合物)の結合を低減させるその能力について評価することができる。したがって、プロテインキナーゼへの結合について標準化合物と競合する試験化合物の能力はその結合親和性と直接相関する。逆に、他のいくつかのスクリーニングアッセイでは、標準化合物は標識されており、試験化合物は標識されていない。したがって、標準化合物と試験化合物との間の競合を評価するために標識された標準化合物の濃度をモニターし、試験化合物の相対的結合親和性をこうして確認する。
合成
本発明の化合物は、以下に記載されている合成手順によって作製することができる。これらの化合物の調製に使用される出発物質及び試薬は、例えば、Sigma Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wis.)、またはBachem(Torrance,Calif.)のような商業的供給業者から入手でき、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes1-17(John Wiley and Sons,1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989)、Organic Reactions,Volumes1-40(John Wiley and Sons,1991)、March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,4th Edition)、ならびにLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)のような参考文献に記述されている手順に従って当業者に既知の方法によって調製される。これらのスキームは、本発明の化合物を合成することができるいくつかの方法の単なる例示であり、これらのスキームに種々の修正を加えることができ、それらは本開示を参照する当業者に示唆されるであろう。反応の出発物質及び中間体は、所望であれば、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されない従来の技術を使用して単離し、且つ精製されてもよい。そのような材料は、物理定数及びスペクトルデータを含む従来の手段を使用して特徴付けられ得る。
反対に明記されない限り、本明細書に記載されている反応は、大気圧にて及び約-78℃~約150℃、さらに好ましくは約0℃~約125℃、最も好ましくはほぼ室温(または周囲温度)、例えば、約20℃の温度範囲で行われる。(水素化の場合のように)特に明記しない限り、反応はすべて窒素雰囲気下で行われる。
本明細書開示され、請求されている化合物はその構造中に不斉炭素原子または四級化窒素原子を有していてもよく、本明細書に記載されている合成を介して単一の立体異性体、ラセミ化合物、またはエナンチオマーやジアステレオマーの混合物として調製されてもよい。化合物は幾何異性体としても存在してもよい。そのようなすべての単一の立体異性体、ラセミ化合物、及び幾何異性体、及びそれらの混合物は本発明の範囲内にあることが意図されている。
本発明の化合物のいくつかは互変異性体として存在してもよい。例えば、ケトンまたはアルデヒドが存在する場合、分子はエノールの形態で存在してもよく、アミドが存在する場合、分子はイミド酸として存在してもよく、エナミンが存在する場合、分子はイミンとして存在してもよい。そのような互変異性体はすべて本発明の範囲内にある。
立体異性体のラセミ混合物または非ラセミ混合物からの単一の立体異性体の調製及び/または分離及び単離のための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、光学活性がある(R)及び(S)異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製されてもよく、または従来の技術を使用して分割されてもよい。エナンチオマー(R異性体及びS異性体)は、当業者に知られている方法によって、例えば、結晶化によって分離されてもよいジアステレオマー塩または錯体の形成;例えば、結晶化によって分離されてもよいジアステレオマー誘導体の形成を介して;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば、酵素的酸化または還元、その後の修飾及び非修飾エナンチオマーの分離;または、キラル環境での、例えば、キラル配位子が結合したシリカのようなキラル支持体上、もしくはキラル溶媒の存在下での気体・液体クロマトグラフィーもしくは液体クロマトグラフィーによって分割されてもよい。所望のエナンチオマーが上述の分離手順の1つによって別の化学物質に変換される場合、所望のエナンチオマー形態を遊離するためにさらなるステップが必要とされ得ることが理解されるであろう。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒、もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または不斉変換によりエナンチオマーを他のエナンチオマーに変換することによって合成されてもよい。特定のエナンチオマーが富化されたエナンチオマーの混合物については、主成分のエナンチオマーが、再結晶化によってさらに富化されてもよい(同時に収率が低下する)。
さらに、本発明の化合物は、溶媒和されていない形態、ならびに水、エタノールなどのような薬学的に許容される溶媒によって溶媒和された形態で存在することができる。一般に、溶媒和された形態は、本発明の目的では溶媒和されていない形態と同等であると見なされる。
本発明の方法は、半連続的または連続的なプロセスとして、さらに好ましくは連続的プロセスとして実施され得る。
上述の本発明は、別様に示されない限り、1つの溶媒または2以上の溶媒の混合物の存在下で実施されてもよい。特に、溶媒は、水性溶媒、または例えば、エーテル様溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、またはジブチルエーテル)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、またはペンタン)、飽和脂環式炭化水素溶媒(例えば、シクロヘキサンまたはシクロペンタン)、または芳香族溶媒(例えば、トルエン、o-、m-、またはp-キシレン、またはt-ブチル-ベンゼン)またはそれらの混合物のような有機溶媒である。
出発物質及び試薬は、それらの合成経路が本明細書に明示的に開示されていないものは、一般に商業的供給源から入手可能である、または当業者に周知の方法を使用して容易に調製される。
プロセス
一態様は、式IA:
Figure 2022518506000041

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製するプロセスを提供し、該プロセスは、
式(A)の化合物
Figure 2022518506000042

(式中、R、R、Q、Q、及びxは、本明細書で開示されている式IまたはIAの任意の実施形態で定義されている通りである)
を、式(B)の化合物
Figure 2022518506000043

(式中、R、R、y、zは、本明細書で開示されている式IまたはIAのいずれかの実施形態で定義されている通りであり、Rはメチルであり、Rは脱離基である)
と反応させて式IAの化合物を生成することを含む。
この態様のいくつかの実施形態では、Rはハロであり、いくつかの例では、RはClである。
別の態様は、式IIA:
Figure 2022518506000044

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製するプロセスを提供し、該プロセスは、
式(C)の化合物
Figure 2022518506000045

(式中、R、Rは、本明細書で開示されている式IIまたはIIAのいずれかの実施形態で定義されている通りである)
を、式(D)の化合物
Figure 2022518506000046

(式中、Rはメチルであり、Rは脱離基である)
と反応させて式IIAの化合物を生成することを含む。
この態様のいくつかの実施形態では、Rはハロであり、いくつかの例では、RはClである。
別の態様は以下を含むプロセスを提供する:
式(E)の化合物
Figure 2022518506000047

(式中、Rはメチルである)
を、式(F)の化合物
Figure 2022518506000048

と反応させて式(G)の化合物
Figure 2022518506000049

を生成し、任意で、式(G)の化合物をLiOHとさらに反応させて、式(H)の化合物
Figure 2022518506000050

を形成し、任意で、式(H)の化合物をSOClとさらに反応させて、式(J)の化合物
Figure 2022518506000051

を形成することを含む。
この態様のいくつかの実施形態では、式(E)及び(F)の反応はHATU及びDIPEAの存在下で行われる。
この態様のいくつかの実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、Rは-CHOHである。他の実施形態では、Rは-CHOCHである。
別の態様は、式IIIA:
Figure 2022518506000052

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製するプロセスを提供し、該プロセスは、
式(K)の化合物
Figure 2022518506000053

(式中、R、R、Q、Q、及びxは、本明細書で開示されている式I’またはIIIaのいずれかの実施形態で定義されている通りである)
を、式(L)の化合物
Figure 2022518506000054

(式中、R、zは、本明細書で開示されている式I’またはIIIaのいずれかの実施形態で定義されている通りであり、Rはメチルであり、Rは脱離基である)
と反応させて式IIIaの化合物を生成することを含む。
別の態様は、式ICまたはIC’:
Figure 2022518506000055

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製する方法を提供し、該方法は、
式IまたはI’の化合物をCYP450酵素と接触させて、式ICまたはIC’の化合物(式I及びI’の化合物は以下:
Figure 2022518506000056

の構造を有する)、または薬学的に許容されるその塩を生成することを含み、式中、A、R、R、R、R、R、R、Q、Q、Q、x、y及びzは式Iまたは式I’の実施形態のいずれかで定義されているとおりである。
別の態様は、式IEまたはIE’:
Figure 2022518506000057

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製する方法を提供し、該方法は、
式IDまたはID’の化合物をCYP450酵素と接触させて、式IEまたはIE’の化合物(式ID及びID’の化合物は以下:
Figure 2022518506000058

の構造を有する)または薬学的に許容されるその塩を生成することを含み、式中、A、R、R、R、R、Q、Q、Q、x、y及びzは本明細書で開示されている式Iまたは式I’の実施形態のいずれかで定義されているとおりである。
別の態様は、式IGまたはIG’:
Figure 2022518506000059

の化合物または薬学的に許容されるその塩を作製する方法を提供し、該方法は、
式IFまたはIF’の化合物をCYP450酵素と接触させて、式IGまたはIG’の化合物(式IF及びIF’の化合物は以下:
Figure 2022518506000060

の構造を有する)または薬学的に許容されるその塩を生成することを含み、式中、A、R、R、R、R、Q、Q、Q、x、y及びzは本明細書で開示されている式Iまたは式I’の実施形態のいずれかで定義されているとおりである。
この態様のいくつかの実施形態では、プロセスは有機溶媒の存在下で実施される。
以下の実施例は、さらなる説明の目的で提供されており、請求されている発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1:4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)アニリン(3)
Figure 2022518506000061

6,7-ジメトキシ-4-(4-ニトロフェノキシ)キノリン(2):2,6-ジメチルピリジン(50mL)中の化合物1(10g、44.7mmol、1当量)と4-ニトロフェノール(8.70g、62.5mmol、1.4当量)の混合物にDMAP(1.10g、9.0mmol、2.01e-1当量)を加えた。混合物を140℃で36時間撹拌した。反応物を室温に冷却し、MeOH(32g)を加え、続いてKCO水溶液(水中4g(62g))を加えた。得られた混合物を0℃2時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過し、水(200mL)で洗浄して黄色固形物(8.0g、54.8%の収率)として化合物2を得た。H-NMR(400MHz、CDCl)δ8.63(d,1H),8.39-8.28(m,2H),7.49(s,1H),7.38(s,1H),7.30-7.15(m,1H),7.26(s,1H),6.70(d,1H),4.07(s,3H),4.01(s,3H);C1714のMS(EI)、実測値326.8(MH+)。
4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)アニリン(3):EtOH(40mL)及び水(8mL)中の化合物2(2.0g、6.1mmol、1当量)の混合物にFe(1.71g、30.6mmol、5.0当量)とNHCl(2.62g、49.0mmol、8.0当量)を加えた。混合物を85℃で3時間撹拌した。反応物を濾過し、濾液を無水NaSOで乾燥させ、濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物にEtOAc(150mL)及びDCM(150mL)を加えた。得られた混合物を濾過し、濾液を濃縮して黄色の固体(1.1g、60.6%の収率)として化合物3を得た。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ8.42(d,1H),7.50(s,1H),7.36(s,1H),6.99-6.84(m,2H),6.74-6.56(m,2H),6.36(d,1H),5.16(s,2H),3.93(d,6H);C1716のMS(EI)、実測値297.2(MH+)。
実施例2:1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボニルクロリド(8)
Figure 2022518506000062

メチル1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボキシレート(6):HATU(73g、192.0mmol、1.2当量)をDMF(100mL)中の化合物4(20g、159.8mmol、19.23mL、1当量)、化合物5(23.03g、159.82mmol、1当量)、及びDIPEA(59g、456.5mmol、79.51mL、2.9当量)の溶液に加えた。反応混合物を10~20℃で17時間撹拌した。混合物を水(500mL)で希釈し、EtOAc(2×500mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(3×100mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮して、褐色の油(85g)として粗化合物6を得、それをさらに精製することなくその後の反応に使用した。C1314FNOのMS(EI)、実測値251.9(MH+)。
1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボン酸(7):THF(200mL)及び水(40mL)中の化合物6(40g、79.6mmol、1当量)の溶液にLiOH・HO(6.68g、159.2mmol、2当量)を加えた。混合物を50℃で6時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮して有機溶媒を除去した。得られた水性混合物をEtOAc(300ml)で洗浄し、次にHCl水溶液(12M)でpH4~5に酸性化した。得られた沈殿物を濾過によって回収し、真空下で乾燥させて黄色固形物(9.0g、37.56mmol、47.2%の収率)として化合物7を得た。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ12.53(brs,1H),7.35(brd,2H),7.23-7.19(m,2H),3.13(s,3H),1.20(brs,2H),0.96(brs,2H);C1212FNOのMS(EI)、実測値237.8(MH+)。
塩化1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボニル(8):SOCl(20mL)中の化合物7(1.3g、5.48mmol、1当量)の混合物を85℃で12時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、無水DCM(4×30mL)と共蒸発させて、褐色の油として化合物8(1.3g、収率92.8%)を得、それをさらに精製することなくその後の反応に使用した。対応するメチルエステルC1314FNOを得るためのメタノールによる試験クエンチの後のMS(EI)、実測値252.1(MH+)。
あるいは、化合物8は、WO2012109510A1及びWO2010051373A1に以前に記載されているように、関連化合物、塩化1-((4-フルオロフェニル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボニルを合成するために使用されるのと同じ方法を使用し、4-フルオロアニリンを4-フルオロ-N-メチルアニリンで置き換えて合成することができる。
実施例3:1-N-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド塩酸塩(9)
Figure 2022518506000063

1-N-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド塩酸塩(9):DCM(30mL)中の化合物3(1.5g、5.1mmol、1当量)の混合物に化合物8(1.3g、5.1mmol、1.0当量)を加えた。混合物を6~11℃で12時間撹拌した。反応混合物を濾過し、得られた固形物をDCM(3×50mL)で洗浄し、乾燥させて、灰色の固形物として化合物9の塩酸塩を得た(1.76g、収率63.2%)。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ9.83(brs,1H),8.82(d,1H),7.74(s,2H),7.56(brs,2H),7.33-7.27(m,4H),7.10(t,2H),6.79(d,1H),4.04(s,6H),3.25(s,3H),1.45-1.39(m,2H),1.25(brs,2H);C2926FNのMS(EI)、実測値516.3(MH+)。
実施例4:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(10)
Figure 2022518506000064

N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(10):CHCl(10mL)中の化合物8(1.08g、4.22mmol、1.33当量。)及び化合物3a(1.0g、3.18mmol、1当量)の溶液を10~20℃で16時間撹拌した。混合物をNaHCO(30mL)水溶液で希釈し、DCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%~100%石油中のEtOAc)によって精製し、濃縮し、凍結乾燥して、白色の固形物(957.0mg、56.4%の収率)として化合物10を得た。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ9.93(brs,1H),8.49(d,1H),7.52(s,1H),7.48(brd,1H),7.41(s,1H),7.38-7.32(m,1H),7.28(brd,3H),7.10(brt,2H),6.41(d,1H),3.95(s,6H),3.24(s,3H),1.47-1.40(m,2H),1.30-1.18(m,2H);C2925のMS(EI)、実測値534.0(MH+)。化合物3aは、実施例1の化合物1及び4-ニトロフェノールから化合物3を作製したのと同じ方法で、化合物1及び4-ニトロ-2-フルオロフェノールから作製することができる。
実施例5:N-(3-フルオロ-4-((6-メトキシ-7-(3-モルホリノプロポキシ)キノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(11)を、化合物3の代わりに3-フルオロ-4-[6-メトキシ-7-(3-モルフォリン-4-イル-プロポキシ)-キノリン-4-イルオキシ]-フェニルアミン(US2013/0197230)を使用して実施例4に従って調製した。H-NMR(400MHz、CDCl)δ8.54(s,1H),8.48(d,1H),7.69-7.63(m,1H),7.57(s,1H),7.44(s,1H),7.23-7.19(m,2H),7.15-7.09(m,4H),6.39(d,1H),4.28(t,2H),4.04(s,3H),3.73(t,4H),3.38(s,3H),2.61-2.55(m,2H),2.49(s,4H),2.13(quin,2H),1.38-1.32(m,2H),1.13-1.07(m,2H);C3536のMS(EI)、実測値669.1[M+Na]
実施例8:4-((3-フルオロ-5-(1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボキサミド)ピリジン-2-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸(33)
Figure 2022518506000065

4-((3-フルオロ-5-ニトロピリジン-2-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸メチル(30):化合物28(5.0g、21.44mmol、1当量)のCHCN(80mL)溶液にCsCO(13.97g、42.88mmol、2当量)を16℃で一度に加えた。混合物を16℃で30分間撹拌した。化合物29(4.54g、25.73mmol、1.2当量)を加えた。混合物を16℃で12時間撹拌した。得られた固形物を濾過し、150mLのEtOAcで洗浄した。濾過ケーキを水(200mL)で希釈し、DCM(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄し、濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の固形物として化合物30を得た(3.5g、収率43.7%)。H-NMR(400MHz、CDCl)δ8.93(d,1H),8.85(d,1H),8.46(s,1H),8.42(dd,1H),7.59(s,1H),7.22(d,1H),4.06(s,3H),3.95(s,3H);C1712FNのMS(EI)、実測値373.9(MH+)。
4-((5-アミノ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸メチル(31):水(5mL)及びEtOH(40mL)中の化合物30(3.5g、9.38mmol、1当量)の混合物にFe(2.62g、46.88ミリモル、5当量)及びNHCl(5.02g、93.76ミリモル、10当量)を加え、混合物を80℃で2時間撹拌した。EtOH(250mL)を加え、得られた懸濁液をセライト(登録商標)のパッドを介して濾過した。濾過ケーキをEtOH(3×80mL)で洗浄した。濾液を乾燥するまで濃縮し、水(50mL)で洗浄し、真空乾燥し、黄色の固形物として化合物31(2.5g、77.67%収率)を得、それをさらに精製することなくその後の反応に使用した。C1314FNのMS(EI)、実測値343.9(MH+)。
4-((3-フルオロ-5-(1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボキサミド)ピリジン-2-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸メチル(32):化合物7(600mg、2.53mmol、1当量)を無水DCM(8mL)に10℃で懸濁し、窒素下で撹拌しながら(COCl)(321.02mg、2.53mmol、221.40μL、1当量)を加え、続いてDMF(18.49mg、252.92μmol、19.46μL、0.1当量)を加えた。混合物を10℃で1時間撹拌した。試料をベンジルアミン(BnNH)でクエンチした。溶媒を減圧下で除去し、得られた粗精製の酸塩化物を、化合物31(600mg、1.75mmol、1当量)のDMAC(8mL)溶液にゆっくり加えた。得られた反応混合物を10℃で1時間撹拌し、次に飽和NHCl水溶液(50mL)に注ぎ、DCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaHCO水溶液(20mL)、飽和NaCl水溶液(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空で濃縮し、黄色の固形物として化合物32を得た(730mg、74.2%収率)。C2924のMS(EI)、実測値563.5(MH+)。
4-((3-フルオロ-5-(1-((4-フルオロフェニル)(メチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボキサミド)ピリジン-2-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボン酸(33):水(10mL)及びTHF(2mL)中の化合物32(730mg、1.30mmol、1当量)の混合物に、LiOH(2M、3.24mL、5当量)をゆっくり加え、反応混合物を10℃で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を水(20mL)で希釈し、pH=3になるまでHCl水溶液(1M)で酸性化した。得られた固体を濾過し、HO(2.0ml)で洗浄し、黄色固形物として化合物33(600mg、84.3%の収率)を得た。C2924のMS(EI)、実測値549.0(MH+)。
実施例9:1-N-[5-フルオロ-6-[7-メトキシ-6-(メチルカルバモイル)キノリン-4-イル]オキシピリジン-3-イル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(34)
Figure 2022518506000066

1-N-[5-フルオロ-6-[7-メトキシ-6-(メチルカルバモイル)キノリン-4-イル]オキシピリジン-3-イル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(34):化合物33(200mg、364.64μmol、1当量)のDMF(3mL)溶液にHATU(152.51mg、401.10μmol、1.1当量)及びDIEA(141.38mg、1.09mmol、190.54μL、3当量)を加え、10℃で30分間撹拌した。塩酸メタンアミン(73.86mg、1.09mmol、3当量)を加え、反応混合物を10℃で12時間撹拌した。反応混合物を水(30mL)に注ぎ、DCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(10mL)で洗浄し、真空で濃縮し、得られた残留物を分取HPLC(カラム:HTC18Highload150mm*25mm*5μm、勾配:アセトニトリル中24~54%水(0.04%NH・HO+10mMのNHHCO)、流速:30mL/分)によって精製し、黄色固形物(81.6mg、39.8%の収率)として化合物34を得た。H-NMR(400MHzの、DMSO-d)δ8.78(d,1H),8.45(s,1H),8.38(brd,1H),8.08(brs,1H),7.88(brs,1H),7.56(s,1H),7.33-7.24(m,2H),7.17-7.09(m,2H),6.91(d,1H),4.03(s,3H),3.24(s,3H),2.83(d,3H),1.48-1.41(m,2H),1.23(brs,2H);C2925のMS(EI)、実測値562.0(MH+)。
実施例10:1-N-[6-(6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ-5-フルオロピリジン-3-イル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(35)を、塩酸メタナミンの代わりにNHClを使用して実施例9に従って調製した。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ10.21(brs,1H),8.78(d,1H),8.53(s,1H),8.09(brs,1H),7.93-7.70(m,3H),7.56(s,1H),7.35-7.22(m,2H),7.18-7.08(m,2H),6.91(d,1H),4.04(s,3H),3.24(s,3H),1.50-1.39(m,2H),1.23(brs,2H);C2823のMS(EI)、実測値548.0(MH+)。
実施例11:1-N-[4-[(6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-イル)オキシ]-3-フルオロフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(44)
Figure 2022518506000067

2,3-ジメトキシ-5-ニトロピリジン(37):新たに切断したナトリウム(0.6g、26mmol)を少しずつMeOH(50mL)に加え、ナトリウムが溶解するまで混合物を室温で撹拌した。化合物36(3.0g、15.9mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。水(100mL)を加え、混合物を濾過した。固形物を水で洗浄し、乾燥させて化合物37(2.78g、95%の収率)を得た。CのMS、実測値185(MH+)。
2,3-ジメトキシ-5-ニトロピリジン(38):アルゴン下、化合物37(2.78g、15.1mmol)のEtOAc(40mL)溶液に10%Pd/C(53%水、880mg)を加えた。反応混合物を1気圧のH下、室温で一晩撹拌し、次にセライト(登録商標)を介して濾過した。濾液を真空下で濃縮して、褐色の固形物として粗化合物38を得た(2.31g、100%収率)。C10のMS、実測値155(MH+)。
5-(((5,6-ジメトキシピリジン-3-イル)イミノ)メチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(40):オルトギ酸トリエチル(12mL)と化合物39(1.44g、10.0ミリモル)の溶液を106℃で2.5時間撹拌し、続いて同じ温度を維持しながら化合物38(1.54g、10.0ミリモル)を加えた。数分以内に沈殿物が現れた。不均質な混合物を105℃でさらに10分間加熱し、室温に冷却し、濾過した。固形物をヘキサンで洗浄し、乾燥させて粗化合物40(3.6g)を得た。C1416のMS、実測値309(MH+)。
6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-オール(41):化合物40(1.55g、5.03mmol)のジフェニルエーテル(12mL)溶液を250℃で30分間加熱し、次に室温まで冷却した。ジエチルエーテルを加え、混合物を濾過し、褐色の固形物として粗化合物40を得た(0.92g、89%収率)。C1010のMS、実測値207(MH+)。
8-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)-2,3-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン(42):アセトニトリル(20mL)中の化合物41(1.0g、4.8ミリモル)、1,2-ジフルオロ-4-ニトロベンゼン(0.93g、6.8ミリモル)、及びCsCO(6.6g、20ミリモル)の混合物を室温で一晩撹拌した。EtOAc(80mL)を加え、得られた混合物を濾過した。濾液を真空で蒸発させ、得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して化合物42(670mg、40%収率)を得た。C1612FNのMS、実測値346(MH+)。
4-((6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-イル)オキシ)-3-フルオロアニリン(43):MeOH/水(20/5mL)中の化合物42(620mg、1.8mmol)、NHCl(500mg、9.3ミリモル)、及びFe(260mg、4.6ミリモル)の混合物を1時間還流し、室温に冷却した。混合物を、セライト(登録商標)を介して濾過し、濾液を濃縮してMeOHを除去した。残留物に飽和NaHCO(6mL)水溶液を加え、得られた混合物をEtOAcで抽出した。有機抽出物を無水NaSO上で乾燥させ、真空で濃縮し、褐色の固形物(530mg、94%の収率)として粗化合物43を得た。C1614FNのMS、実測値316(MH+)。
1-N-[4-[(6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-イル)オキシ]-3-フルオロフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(44):DMF(1mL)中の化合物43(31mg、0.10mmol)と化合物7(46mg、0.20mmol)の混合物にHATU(120mg、0.32mmol)を加え、続いてDIEA(0.10mL、0.57ミリモル)を加えた。反応物を室温で一晩撹拌した。飽和NaHCO水溶液(2mL)及び水(2mL)を加え、得られた懸濁液を濾過した。固形物をシリカゲルクロマトグラフィー、続いて分取HPLCにより精製して、化合物44(12mg、23%収率)を得た。H-NMR(400MHz、CDCl)δ8.71(s,1H),8.42(d,1H),8.25(s,1H),7.74-7.59(m,1H),7.22(dd,2H),7.04(s,2H),7.02(d,2H),6.82(dd,1H),4.15(s,3H),4.08(s,3H),3.30(s,3H),1.28(q,2H),1.02(q,2H);C2824のMS、実測値535(MH+)。
実施例12:1-N-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-(メトキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(49)
Figure 2022518506000068
1-((4-フルオロフェニル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボン酸メチル(46):化合物45(1.00g、4.48mmol、1当量)のMeOH(10mL)溶液に0℃でSOCl(5.33g、44.80mmol、3.25mL、10当量)を加えた。混合物を65℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc=1/0から3/1)によって精製し、灰白色の固形物として化合物46を得た(550mg、収率51.8%)。C1212FNOのMS、実測値237.9(MH+)。
1-((4-フルオロフェニル)(メトキシメチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボン酸メチル(47):化合物46(400mg、1.69mmol、1当量)のTHF(5mL)溶液に0℃でNaH(202.32mg、5.06mmol、60%純度、3.0当量)を加えた。反応混合物を10℃で0.5時間撹拌した。クロロ(メトキシ)メタン(678.79mg、8.43mmol、640.37μL、5.0当量)を加え、得られた混合物を窒素雰囲気下、10℃で12時間撹拌した。水(20mL)を加え、得られた混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(10mL)、飽和NaCl水溶液(3×10mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、黄色の油(474mg)として粗化合物47を得、それをさらに精製することなくその後の反応に使用した。C1416FNOのMS、実測値303.9[M+Na]
1-((4-フルオロフェニル)(メトキシメチル)カルバモイル)シクロプロパン-1-カルボン酸(48):THF(3mL)及び水(3mL)中の化合物47(474mg、1.69mmol、1当量)の溶液にLiOH・HO(282.86mg、6.74mmol、4.0当量)を加えた。混合物を10℃で12時間撹拌した。水(20mL)を加え、得られた混合物をEtOAc(3×20mL)で洗浄した。1NのHCl水溶液の添加によって水性層をpH3~4に酸性化した。得られた混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(20mL)、飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、無色の油(290mg、64.4%の収率)として化合物48を得、それをさらに精製することなくその後の反応に使用した。
1-N-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-(メトキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(49):化合物48(260mg、972.86μmol、1当量)及び化合物3(230.62mg、778.29μmol、0.8当量)のピリジン(5mL)溶液にEDCI(373.00mg、1.95mmol、2.0当量)を加えた。混合物を10℃で12時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮した。水(50mL)を加え、得られた混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(20mL)、飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=1/0~5/1)で精製し、続いてさらに分取HPLC(カラム:Venusil ASBフェニル150*30mm*5μm、移動相:[水(0.05%HCl)-ACN]、B%:30%~60%、10分)によって精製して溶液を得た。飽和NaHCO水溶液(2mL)を該溶液に加え、次いでそれをDCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(10mL)、飽和NaCl水溶液(10mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残留物を水(20mL)及びアセトニトリル(MeCN)(5mL)の混合物に溶解し、得られた溶液を凍結乾燥し、白色固形物として化合物49(41mg、72.9%の収率)を得た。H-NMR(400MHz、DMSO-d)δ9.58(brs,1H),8.48(d,1H),7.51(s,1H),7.46(brd,2H),7.40(s,1H),7.29(brdd,2H),7.19-7.08(m,4H),6.43(d,1H),5.03(s,2H),3.95(d,6H),3.30(s,3H),1.47-1.41(m,2H),1.27(brs,2H);C3028FNのMS、実測値546.1(MH+)。
実施例13:1-N’-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ-3-フルオロフェニル]-1-N-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(51)
Figure 2022518506000069
4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)-3-フルオロ-N-メチルアニリン(50):化合物3a(200mg、636.31μmol、1当量)と(HCHO)(3.82mg、1.27mmol、2当量)のDCM(5mL)中の混合物にNaBH(OAc)(269.72mg、1.27mmol、2当量)及びDIEA(164.48mg、1.27mmol、221.67μL、2当量)を加えた。混合物を60℃で12時間撹拌した。反応物を水(10mL)で希釈し、DCM(20mL)で抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液(5mL)で洗浄し、濃縮して粗生成物を得、次にこれをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の100%酢酸エチル)によって精製し、無色の固形物(200mg、95.73%の収率)として化合物50を得た。C1817FNのMS、実測値328.9(MH+)。
1-N’-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ-3-フルオロフェニル]-1-N-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド(51):化合物45(150mg、672.04μmol、1当量)のSOCl(5mL)溶液を60℃で1時間撹拌した。反応物を濃縮し、黄色の固形物として化合物45の粗精製酸塩化物を得(150mg、収率92.4%)、これを精製することなく次のステップに使用した。化合物50(200mg、609.13μmol、1当量)のDCM(10mL)溶液に、化合物45の上記の酸塩化物とEtN(67.80mg、670.04μmol、93.26μL、1.1当量)とを加えた。得られた混合物を60℃で12時間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、粗生成物を20℃にてEtOAcで粉砕し、続いて20℃にてMeOHで粉砕した。得られた粗生成物を分取HPLC(カラム:AgelaASB150*25mm*5μm、移動相:[水(0.05%HCl)-ACN]、B%:32%~62%、9分)で精製し、白色固形物として化合物51を得た(99.9mg、30.1%収率)。H-NMR(400 MHz、DMSO-d6)δ9.92(s,1H),8.89(d,1H),7.82(s,1H),7.69(s,1H),7.50(d,4H),7.32(d,1H),7.08(t,2H),6.74(d,1H),4.03(s,6H),3.32(s,3H),1.48(s,2H),1.30(s,2H);C2925のMS、実測値534.1(MH+)。
生物学的実施例
実施例A:A-172細胞におけるAXLの自己リン酸化ELISA。A-172神経膠芽腫細胞(ATCC#CRL-1620)を、10%のFBS(Thermo Fisher#26140-079)、1%MEM NEAA(Thermo Fisher#11140-050)、1%GluTAMax(Thermo Fisher#35050-061)、及び1%ペニシリンストレプトマイシン(Thermo Fisher#15140-122)を含有するDMEM(Thermo Fisher#11995-040)中、24ウェルプレート(Greiner#662165)に2.5×10細胞/ウェルで播種した。A-172細胞を37℃、5%COにて24時間インキュベートした後、無血清培地で24時間飢餓状態にした。試験化合物を連続希釈して、新鮮な無血清培地で0.3%DMSO(ビヒクル)の最終濃度まで8ポイント用量曲線を作成し、細胞に添加して1時間インキュベートした。次いで、細胞を1μg/mLの組換えヒトGas6(R&D Systems#885-GSB-500)で15分間刺激し、冷PBSで洗浄し、直ちに冷1×溶解緩衝液[20mMトリス、137mM塩化ナトリウム、2mMのEDTA、10%グリセロール、1%NP-40代替物、1mM活性化オルトバナジン酸ナトリウム、1mMのPefaBloc SC(Sigma-Aldrich#11429868001)、プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤錠剤(Thermo Fisher#A32959)]150μLで溶解した。溶解物を回収し、100μL/ウェルをヒトホスホ-AXL DuoSet IC ELISA(R&D Systems#DYC2228-2)に加えた。アッセイを製造元の指示に従って実施し、標準としてヒトホスホ-AXL対照(R&D Systems#841645)を使用して試料のホスホ-AXL濃度を外挿した。陽性対照ウェル(100%活性)はGas6で刺激したDMSO処理した細胞溶解物を含有した。陰性対照ウェル(0%活性)はGas6で刺激した参照阻害剤で処理した細胞溶解物を含有した。IC50値を、ActivityBase XE(IDBS)に適合した4パラメーターロジスティック曲線を使用した非線形回帰分析によって算出した。
実施例B:PC-3細胞におけるMetの自己リン酸化ELISA。PC-3前立腺癌細胞(ATCC#CRL-1435)を、10%のFBS(Thermo Fisher#26140-079)、1%MEM NEAA(Thermo Fisher#11140-050)、1%GluTAMax(Thermo Fisher#35050-061)、及び1%ペニシリンストレプトマイシン(Thermo Fisher#15140-122)を含有するDMEM(Thermo Fisher#11995-040)にて24ウェルプレート(Greiner#662165)に4×10細胞/ウェルで播種した。PC-3細胞を37℃、5%COにて24時間インキュベートした後、無血清培地で3時間飢餓状態にした。試験化合物を連続希釈して、新鮮な無血清培地で0.3%DMSO(ビヒクル)の最終濃度まで8ポイント用量曲線を作成し、細胞に添加して1時間インキュベートした。次いで、細胞を100ng/mLの組換えヒトHGF(R&D Systems#294-HG-250)で10分間刺激し、冷PBSで洗浄し、直ちに冷1×溶解緩衝液[20mMトリス、137mM塩化ナトリウム、2mMのEDTA、10%グリセロール、1%NP-40代替物、1mM活性化オルトバナジン酸ナトリウム、1mMのPefaBloc SC(Sigma-Aldrich#11429868001)、プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤錠剤(Thermo Fisher#A32959)]130μLで溶解した。溶解物を遠心分離により清澄化し、100μL/ウェルをPathScanホスホMet(panTyr)サンドイッチELISA(Cell Signaling Technology#7333)に加えた。製造業者の指示に従ってアッセイを実施した。陽性対照ウェル(100%活性)はHGFで刺激したDMSO処理した細胞溶解物を含有した。陰性対照ウェル(0%活性)はHGFで刺激した参照阻害剤で処理した細胞溶解物を含有した。IC50値を、ActivityBase XE(IDBS)に適合した4パラメーターロジスティック曲線を使用した非線形回帰分析によって算出した。
実施例C:HUVEC細胞におけるKDRの自己リン酸化ELISA。ヒト臍帯静脈内皮細胞またはHUVEC(Lonza#C2519A)を1%ペニシリンストレプトマイシン(Thermo Fisher#15140-122)を含有するEGM-2増殖培地(Lonza#CC-3162)にて96ウェルプレート(Corning#3904)に2×10細胞/ウェルで播種した。HUVEC細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした後、1%ペニシリンストレプトマイシンを含有する無血清EBM-2基本培地(Lonza#CC-3156)にて24時間飢餓状態にした。試験化合物を連続希釈して、新鮮な無血清培地で0.3%DMSO(ビヒクル)の最終濃度まで8ポイント用量曲線を作成し、細胞に添加して1時間インキュベートした。次いで、細胞を100ng/mLの組換えヒトVEGF165(R&D Systems#293-VE-500)で5分間刺激し、冷PBSで洗浄し、直ちに冷1×溶解緩衝液[20mMトリス、137mM塩化ナトリウム、2mMのEDTA、10%グリセロール、1%NP-40代替物、1mM活性化オルトバナジン酸ナトリウム、1mMのPefaBloc SC(Sigma-Aldrich#11429868001)、プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤錠剤(Thermo Fisher#A32959)]130μLで溶解した。溶解物を回収し、100μL/ウェルをヒトホスホ-KDR DuoSet IC ELISA(R&D Systems#DYC1766-2)に加えた。アッセイを製造元の指示に従って実施し、標準としてヒトホスホ-KDR対照(R&D Systems#841421)を使用して試料のホスホ-KDR濃度を外挿した。陽性対照ウェル(100%活性)はVEGF165で刺激したDMSO処理した細胞溶解物を含有した。陰性対照ウェル(0%活性)は無刺激細胞溶解物を含有した。IC50値を、ActivityBase XE(IDBS)に適合した4パラメーターロジスティック曲線を使用した非線形回帰分析によって算出した。
実施例D:一過性に形質移入した293A細胞におけるMerの自己リン酸化ELISA。293A細胞(Thermo Fisher#R70507)を、10%FBS(Thermo Fisher#26140-079)、1%MEM NEAA(Thermo Fisher#11140-050)、1%GlutaMax(Thermo Fisher#35050-061)、及び1%ペニシリンストレプトマイシン(Thermo Fisher#15140-122)を含有するDMEM(Thermo Fisher#11995-040)にて1.5×10細胞/ウェルで100mmディッシュ(Greiner#664169)に播種した。293A細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートし、次いでTransIT LT1形質移入試薬(Mirus-Bio#MIR2305)を使用して6μgのMERTK DNA(Genecopoeia#EX-Z8208-M02)で形質移入した。24時間のインキュベート後、形質移入された293A細胞をDMEM増殖培地にて1×10細胞/ウェルで96ウェルプレート(Corning#3904)に一晩播種した。試験化合物を連続希釈して、新鮮な無血清培地で0.3%DMSO(ビヒクル)の最終濃度まで8ポイント用量曲線を作成し、細胞に添加して1時間インキュベートした。次いで、細胞を直ちに冷1×溶解緩衝液[20mMトリス、137mM塩化ナトリウム、2mMのEDTA、10%グリセロール、1%NP-40代替物、1mM活性化オルトバナジン酸ナトリウム、1mMのPefaBloc SC(Sigma-Aldrich#11429868001)、プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤錠剤(Thermo Fisher#A32959)]150μLで溶解した。溶解物を遠心分離によって清澄化し、50μL/ウェルをヒトホスホ-Mer DuoSet IC ELISA(R&D Systems#DYC2579-2)に加えた。アッセイを製造元の指示に従って実施し、標準としてヒトホスホ-Mer対照(R&D Systems#841793)を使用して試料のホスホ-Mer濃度を外挿した。陽性対照ウェル(100%活性)はDMSO処理した細胞溶解物を含有した。陰性対照ウェル(0%活性)は参照阻害剤で処理した細胞溶解物を含有した。IC50値を、ActivityBase XE(IDBS)に適合した4パラメーターロジスティック曲線を使用した非線形回帰分析によって算出した。
実施例E:本発明の化合物を、本明細書に例示されるように、実施例A、B、C、及びDのアッセイで試験し、以下の範囲のIC50値を示した。A:IC50≦10nM、B:10nM<IC50≦100nM、C:100nM<IC50≦300nM、D:IC50>300nM。「NT」は試験しなかったことを意味する。結果を表2に提供する
表2.選択した化合物の生物活性
Figure 2022518506000070
Figure 2022518506000071
Figure 2022518506000072
実施例F:ミクロソームアッセイ
肝ミクロソーム組織画分を、シトクロムP450(CYP450)(例えば、CYP3A4、CYP2C9)が介在するフェーズIの酸化、及び他の経路を介した代謝による化合物の代謝安定性の試験管内評価に使用した。ヒト、マウス、ラット、及びイヌの肝臓ミクロソーム組織画分を、Corning Gentest及びBioreclamationIVTから入手した。
アッセイは96ウェルマイクロタイタープレートで実施した。化合物を肝ミクロソームの存在下にて37℃でインキュベートした(N=1)。反応混合物(25μL)は3.3mMのMgClを伴った100mMリン酸カリウム、pH7.4の緩衝液にて1μMの最終濃度の試験化合物と、0.5mg/mlの肝ミクロソーム(LM)タンパク質と、1mMのNADPHとを含有した。代謝の程度を、0分の対照反応インキュベートと比較した、試験化合物の消失として算出した。ベラパミルを、アッセイ性能を検証するための陽性対照として含めた。
4つの時点のそれぞれで、内部標準(陽性ESIモードのブセチン)を含む150μLのクエンチ溶液(0.1%ギ酸を含む100%アセトニトリル)を各ウェルに移した。プレートを密封し、4000rpmで10℃にて15分間遠心分離した。LC/MS/MS分析のために上清を新しいプレートに移した。
試料はすべて、島津LC-20AD LCポンプシステムに接続されたAB Sciex API4000機器を使用してLC/MS/MSで分析した。分析試料を、Waters Atlantis T3 dC18逆相HPLCカラム(20mmx2.1mm)を使用して0.5mL/分の流速で分離した。移動相は、0.1%ギ酸水溶液(溶媒A)と100%アセトニトリル中の0.1%ギ酸(溶媒B)から成った。アッセイ条件を表3に要約する。溶出条件を表4に詳述する。
表3.アッセイ条件
Figure 2022518506000073
表4.溶出条件
Figure 2022518506000074
結果:本発明の化合物を、本明細書に例示されるように、本実施例Fのアッセイで試験した。肝ミクロソームにおける試験化合物の算出された固有クリアランス及びt1/2値としての代謝安定性の結果を表5に列挙する。参照化合物ベラパミルは予想どおりに作用した。
表5.ミクロソームの安定性データ
Figure 2022518506000075
他の実施形態
前述の開示を、明確性及び理解の目的で、例示説明及び例としてある程度詳細に説明した。本発明を、種々の特定の及び好ましい実施形態及び技術を参照して説明した。しかしながら、本発明の精神及び範囲内にとどまりながら、多くの変形及び修正を行うことができることを理解すべきである。変更及び修正が添付のクレームの範囲内で実施することができることは当業者には明らかであろう。したがって、上記の説明は例示説明を意図したものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明を参照せずに決定されるべきではなく、代わりに、以下の添付のクレームと共にそのようなクレームが権利を与えられる同等物の全範囲を参照して決定されるべきである。

Claims (55)

  1. 式I’:
    Figure 2022518506000076

    による化合物または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
    AはC1-6アルコキシ、またはC(O)NRであり、
    はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
    はハロであり、
    はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
    はハロであり、
    及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
    及びRはそれぞれ独立してHまたはC1-6アルキルであり、
    R’及びR”のそれぞれは独立してH、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
    、Q、及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
    xは0、1、2、3または4であり、
    yは0、1、2、3または4であり、
    zは0、1、2、3、4または5である、
    前記化合物または薬学的に許容されるその塩。
  2. がC1-6アルキルまたは
    Figure 2022518506000077

    である、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  3. がC1-6アルキルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  4. がメチルである、請求項3に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。

  5. Figure 2022518506000078

    である、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  6. 、R、及びRがそれぞれ独立してFである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  7. x、y及びzがそれぞれ独立して0または1である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  8. 及びQがそれぞれCHである、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  9. 及びRの一方が-CHR’R”であり、他方がHである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  10. が-CHR’R”である、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  11. がメチルである、請求項10に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  12. が-CHOHまたは-CHOCHである、請求項10に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  13. が-CHR’R”である、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  14. がメチルである、請求項13に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  15. が-CHOHまたは-CHOCHである、請求項13に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  16. AがC1-6アルコキシである、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
  17. Aが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、またはt-ブトキシである、請求項16に記載の化合物。
  18. Aがメトキシである、請求項17に記載の化合物。
  19. 式IIIa:
    Figure 2022518506000079

    を有する請求項1に記載の化合物。
  20. AがC(O)NRである、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
  21. 及びRの一方がHであり、他方がC1-6アルキルである、請求項20に記載の化合物。
  22. 及びRの一方がHであり、他方がメチルある、請求項21に記載の化合物。
  23. 及びRの双方がHである、請求項20に記載の化合物。
  24. 式IIIb:
    Figure 2022518506000080

    を有する請求項1に記載の化合物。
  25. xが1、2、3または4である、請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物。
  26. がFである、請求項25に記載の化合物。
  27. がFであり、zが1、2、3または4である、請求項1~26のいずれか1項に記載の化合物。
  28. 部分
    Figure 2022518506000081


    Figure 2022518506000082

    である、請求項27に記載の化合物。
  29. 、Q、及びQがそれぞれCHである、請求項1~18及び20~28のいずれか1項に記載の化合物。
  30. 及びQがそれぞれCHであり、QがNである、請求項1~18及び20~28のいずれか1項に記載の化合物。
  31. 及びQがそれぞれCHであり、QがNである、請求項1~23及び25~28のいずれか1項に記載の化合物。
  32. 式I:
    Figure 2022518506000083

    の化合物または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
    はC1-6アルキルまたはヘテロシクロアルキル-C1-6アルキレン-であり、
    はハロであり、
    はハロ、OH、C1-4アルコキシ、またはCFであり、
    はハロであり、
    及びRの一方は-CHR’R”であり、R及びRの他方はHまたは-CHR’R”であり、
    R’及びR”のそれぞれは独立して、H、OH及びC1-6アルコキシから成る群から選択され、
    及びQはそれぞれ独立してCHまたはNであり、
    xは0、1、2、3または4であり、
    yは0、1、2、3または4であり、
    zは0、1、2、3、4または5である、
    前記化合物または薬学的に許容されるその塩。
  33. 式IA:
    Figure 2022518506000084

    を有する、請求項32に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  34. 式IB:
    Figure 2022518506000085

    を有する、請求項32に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  35. 式II:
    Figure 2022518506000086

    を有し、式中、R2aがHまたはハロである、
    請求項32に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  36. がC1-6アルキルまたは
    Figure 2022518506000087

    である、請求項35に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  37. がC1-6アルキルである、請求項35に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  38. がメチルである、請求項37に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。

  39. Figure 2022518506000088

    である、請求項35に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  40. 2aがHまたはFである、請求項35~39のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  41. 及びRの一方が-CHR’R”であり、他方がHである、請求項35~40のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  42. が-CHR’R”である、請求項41に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  43. がメチルである、請求項42に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  44. が-CHOHまたは-CHOCHである、請求項42に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  45. が-CHR’R”である、請求項41に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  46. がメチルである、請求項45に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  47. が-CHOHまたは-CHOCHである、請求項45に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  48. 式IIA:
    Figure 2022518506000089

    を有する、請求項35~40のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  49. 式IIB:
    Figure 2022518506000090

    を有する、請求項35~40のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
  50. N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(3-フルオロ-4-((6-メトキシ-7-(3-モルホリノプロポキシ)キノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(3-フルオロ-4-((6-メトキシ-7-(3-モルホリノプロポキシ)キノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    1-N-[5-フルオロ-6-[7-メトキシ-6-(メチルカルバモイル)キノリン-4-イル]オキシピリジン-3-イル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(5-フルオロ-6-((7-メトキシ-6-(メチルカルバモイル)キノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    1-N-[6-(6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ-5-フルオロピリジン-3-イル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(6-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)-5-フルオロピリジン-3-イル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    1-N-[4-[(6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-イル)オキシ]-3-フルオロフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    N-(4-((6,7-ジメトキシ-1,5-ナフチリジン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-N-(4-フルオロフェニル)-N-(ヒドロキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、
    1-N-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシフェニル]-1-N’-(4-フルオロフェニル)-1-N’-(メトキシメチル)シクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド、または
    1-N’-[4-(6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ-3-フルオロフェニル]-1-N-(4-フルオロフェニル)-1-N’-メチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキサミド
    から選択される請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
  51. 請求項1~50のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
  52. 患者にてプロテインキナーゼの生体内活性を調節することが少なくとも部分的に介在する疾患、障害、または症候群を治療する方法であって、それを必要とする前記患者に請求項1~50のいずれかに記載の化合物または請求項51に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
  53. プロテインキナーゼの生体内活性を調節することが少なくとも部分的に介在する前記疾患、障害、または症候群ががんである、請求項52に記載の方法。
  54. プロテインキナーゼを阻害する方法であって、前記プロテインキナーゼを請求項1~50のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを含む、前記方法。
  55. 前記プロテインキナーゼがAxl、Mer、c-Met、KDR、またはそれらの組み合わせである、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
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