JP2022189518A - 抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法 - Google Patents

抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維本来の風合いを損なわず、耐久性が良好な抗菌性を発現することができる抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法を提供する。【解決手段】繊維と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmであり、繊維に吸着してなる粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法に関する。
近年、健康志向が高まり、繊維の抗菌処理が注目されている。また、抗菌処理された繊維を用いた防臭効果を有する繊維製品なども種々提案され、実用に供されている。
抗菌処理剤としては、銀、酸化チタンなどの金属又は金属化合物、植物由来成分であって抗菌性を繊維に付与しうる茶カテキン、クマザサエキス、竹、アロエなどが提案されており、カテキン、銀等を用いた抗菌性繊維製品は、上市されている。
しかしながら、抗菌成分として公知のカテキン、銀などは高価であり、安定的な抗菌効果が得られ、より安価な抗菌性成分が検討されている。
日本の伝統的な建造物に使用される建材に含まれる消石灰(水酸化カルシウム)は、漆喰の主成分であり、安価な材料である。従来、漆喰は、抗菌効果及び吸湿効果があることが知られており、シックハウス症候群を生じさせない建材として注目されている。また、珪藻土の粒子も、多孔質構造に起因して消臭効果を有することが知られている。
例えば、水酸化カルシウム粒子を含む抗菌性繊維及び抗菌性フィルタが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、布帛又は繊維の表面に、抗ウイルス性の水酸化カルシウムを含む樹脂製塗料、又は印刷インキを布帛又は繊維に付与して、水酸化カルシウムを繊維等の表面に付着させること、及び樹脂製塗料等の塗膜の厚みを水酸化カルシウム粒子の平均粒子径以下として、塗膜の表面に水酸化カルシウム粒子を露出させて水酸化カルシウムの抗菌性を発現させることが開示されている。
消石灰の利用に関しては、活性炭とバインダー樹脂と消石灰とを含む減臭処理液を塗布した消臭性の内装用布帛が提案されている(特許文献2参照)。
バインダー樹脂を含まない抗菌性繊維として、抗菌性成分である茶葉由来のポリフェノール類を、植物性タンパク質、金属塩と反応させて不溶化させることで、繊維に定着させる技術が提案されている(特許文献3参照)。
特許文献3には、さらに、繊維素材表面に珪藻土、パーライト、及びシリカゲルから選ばれる多孔質粒子が付着している態様が開示されている。
特開2010-249490号公報 特開2006-9199号公報 特開2015-117458号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、水酸化カルシウム粒子は、樹脂製塗料、樹脂バインダーにより繊維に固定化されているため、繊維の風合いが樹脂製の塗膜により変化する、水酸化カルシウムの抗菌性を十分に発揮できない等の問題点がある。
本発明者の検討によれば、漆喰は強アルカリ性であり、例えば、漆喰壁として、漆喰組成物を壁面に塗布し、水分を除去して乾燥させた場合でも、pHは11.0程度であるため、消石灰をそのまま繊維に固定化させて抗菌性繊維とした場合には、皮膚に繊維が接触すると刺激性を発現する虞があることが見出された。
従って、特許文献1及び特許文献2に記載の繊維は、被服などの肌に接触する可能性のある用途に適用するのは困難である。
特許文献3に記載の技術では、抗菌性成分として茶葉由来のポリフェノール類を必須に含むため、抗菌性、コストの点でなお改良の余地がある。また、植物性タンパク質、又は金属塩との反応で、茶葉由来のポリフェノール類を繊維に付着させても、多孔質粒子の安定的な固定化は困難であるという問題があった。
本発明の一実施形態の課題は、繊維本来の風合いを損なわず、耐久性が良好な抗菌性を発現することができる抗菌性繊維を提供することにある。
本発明の別の実施形態の課題は、簡易な処理により、繊維本来の風合いを損なわず、抗菌性に優れ、抗菌効果の耐久性が良好な繊維を得る抗菌性繊維の製造方法を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1> 繊維と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmであり、前記繊維に吸着してなる粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維。
<2> 金属媒染剤が、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種である<1>に記載の抗菌性繊維。
<3> 粒子吸着助剤をさらに含む<1>又は<2>に記載の抗菌性繊維。
<4> グリコール類、トコフェロール、アラニン、リシン、トレハロース、イヌリン、及びオリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性成分をさらに含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の抗菌性繊維。
<5> 前記繊維に吸着してなる平均粒子径が0.1μm~1μmの鉱石粒子をさらに含み、前記鉱石粒子は、鉄、アルミニウム、チタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の抗菌性繊維。
<6> 消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、粒子吸着助剤と、水系溶媒とを含む処理液を調製する工程、調製した処理液に繊維を浸漬し、加温する工程、及び、繊維を処理液から取り出し、水にて洗浄し、その後、乾燥して抗菌性繊維を得る工程を含む抗菌性繊維の製造方法。
<7> 繊維原料となる樹脂と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を調製する工程、及び、調製した抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を紡糸して、抗菌性繊維を得る工程を含む抗菌性繊維の製造方法。
<8> 金属媒染剤が、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種である<6>又は<7>に記載の抗菌性繊維の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、繊維本来の風合いを損なわず、耐久性が良好な抗菌性を発現することができる抗菌性繊維を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、簡易な処理により、繊維本来の風合いを損なわず、抗菌性に優れ、抗菌効果の耐久性が良好な繊維を得る抗菌性繊維の製造方法を提供することができる。
以下、本開示の抗菌性繊維及び抗菌性繊維の製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「室温」とは、特に断らない限り、25℃を指す。
「加温」とは、外部から熱エネルギーを与えて、処理液の温度を上昇させることを指す。従って、処理液に含まれる各成分の反応よる処理液の昇温は、本開示における「加温」には包含されない。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
なお、本開示において、「抗菌効果の耐久性が良好」とは、標準的な洗濯を10回行っても繊維の抗菌効果が維持される状態を指す。
[抗菌性繊維]
本開示の抗菌性繊維は、繊維と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmであり、前記繊維に吸着してなる粒子と、金属媒染剤と、を含む。
ある実施形態において、抗菌性繊維には、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤とが吸着され、固定化されている。
-繊維-
本開示の抗菌性繊維における繊維には特に制限はない。公知の繊維はいずれも使用することができる。
本開示の抗菌性繊維に適用可能な繊維の代表的な例を以下に挙げるが、これに制限されるものではない。
綿、麻、葉脈繊維などの天然繊維;レーヨン、キュプラ、ポリノジック、トウモロコシデンプン由来の再生繊維であるトウモロコシ繊維などの再生繊維;及び、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維。これらの繊維は、いずれもセルロース骨格を含むため、本開示では、「セルロース繊維」と総称することがある。
シルク、ウールなどの天然繊維;再生タンパク質繊維であるカゼイン繊維;及び、ミルクカゼインとアクリロニトリルから得られるプロミックス等の半合成繊維。これらの繊維は、いずれもタンパク質を含むため、「タンパク質繊維」と総称することがある。
ポリエステル、ポリアミド(ナイロン:登録商標)、芳香族ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ベンゾエート、ビニロン、ポリ塩化ビニル等の合成繊維
繊維の形態としては、綿などが紡糸される前の原料繊維;撚り糸などの糸;不織布、編物、織物などの布;などが挙げられる。抗菌性繊維の製造に用いる処理液中に浸漬することができれば特に繊維の形態に制限はない。
また、シャツなどの被服、下着、スカーフ、靴下、タオルなどの繊維製品も本開示における繊維に含まれる。
-消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子-
抗菌性繊維における繊維には、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子が吸着している。
以下、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子を、「特定粒子」と称することがある。
例えば、漆喰の原料として用いられる消石灰の平均粒子径は3μm以上であることが知られている。本開示の抗菌性繊維においては、粒子の平均粒子径が1μm以下であることで、後述するように、繊維への吸着性が向上し、繊維に対し、持続的な高い抗菌性を付与できると考えられる。
珪藻土は、多孔質の粒子であって、吸湿性、消臭性などが良好な粒子である。珪藻土についても、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子は、繊維に吸着して良好な抗菌性を繊維に与えることができる。
なかでも、抗菌性及び抗菌性の維持性がより良好であるという観点から、特定粒子としては、消石灰の粒子が好ましい。
本開示における特定粒子の平均粒子径は、0.1μm~1μmの範囲であり、0.1μm~0.6μmの範囲が好ましく、0.2μm~0.4μmの範囲がより好ましい。
また、粒度分布の観点からは、60体積%以上の粒子が粒子径0.2μm~0.4μmの範囲であって、粒子径1.0μmを超えるサイズの粒子の含有量が少ないことが好ましく、粒子径1μmを超える粒子を含まないことがより好ましい。
本開示においては、特定粒子の平均粒子径が1μm以下であることにより粒子の繊維への吸着性が高まると考えている。
本開示における特定粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置により、測定することができる。
本開示における平均粒子径は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(LS200型 ベックマン・コールター(株))により測定した値を採用している。上記装置では、付属のソフトウエアにより、粒度分布解析が可能である。
特定粒子の平均粒子径を0.1μm~1μmの範囲に調整する方法としては、公知の粉砕法を適宜適用することができる。なかでも、均一な粒度分布の粒子を得やすいという観点から、湿式粉砕法が好ましく挙げられる。
湿式粉砕法に用いる粉砕装置としては、中空の回転容器の中に、被粉砕物である消石灰等と、水を含む分散媒と、粉砕用の球状メディアと、を封入し、回転させて粉砕するボールミル、前記回転容器が自転及び公転する遊星型ボールミル等の粉砕装置が好ましく用いられる。
特定粒子の製造に用いる粉砕装置としては、例えば、ヴァーダー・サイエンティフィック(株)のボールミル、遊星ボールミル、中工精機(株)の湿式ボールミルなどの市販の粉砕装置が挙げられ、これらを適宜選択して用いることができる。
ボールミル等の粉砕に用いられる球状メディア(ボール)には特に制限はない。例えば、セラミック製ボール、アルミナ、ジルコニア、ステンレス等の金属製ボール等が挙げられる。目的とする粒子径を得やすいという観点からは、例えば、直径50mm~200mm程度、好ましくは直径70mm~110mm程度の金属製ボールを挙げることができる。
特定粒子の繊維に対する吸着性の観点からは、特定粒子は、平均粒子径が0.1μm~1μmの範囲であって、粒子径が1μmを超える特定粒子の含有量が少ないことが好ましい。即ち、既述のように、粒度分布がシャープであって、1μmを超える特定粒子の含有率が20質量%以下であることが好ましい。粒子径が1μmを超える粒子は、金属媒染剤を共存させた場合においても繊維への吸着性が著しく低下し、安定して繊維に吸着することによる良好な抗菌性が得難い懸念がある。また、繊維の微細な空隙に直径1μmを超えるサイズの粒子が入り込んだ場合、繊維の感触が低下する、洗濯などにより粒子が脱落しやすい等の問題が生じうるため好ましくない。同様の観点から、粒子径が3μm以上の粒子は含まないか、或いは、粒子全量に対して1質量%以下であることが好ましい。
抗菌性繊維にわずかでも特定粒子が吸着していると、特定粒子に起因した抗菌効果は発現するため、繊維に対する特定粒子の吸着量には特に制限はない。
抗菌効果と、抗菌効果の持続性の観点からは、特定粒子の吸着量は、繊維の質量に対し0.1%OWF(on the weight of fiber)~10%OWFの範囲が好ましく、0.5%OWF~5%OWFの範囲がより好ましく、1%OWF~4%OWFの範囲であることが更に好ましい。
ここで、「%OWF」は、繊維の単位質量に対する特定粒子の付着量を示す。より具体的には、繊維100gに特定粒子1gが付着している場合、付着量は1%OWFと表記する。
繊維に吸着する特定粒子の量が上記範囲であると、抗菌性がより良好となり、繊維製品を身につけたときの感触もより良好となる。
抗菌性繊維に特定粒子が吸着していることは、抗菌性繊維を倍率500倍の光学顕微鏡にて観察することで、確認することができる。
-金属媒染剤-
本開示の抗菌性繊維は、金属媒染剤を含む。
金属媒染剤は、通常、染色に用いられる金属媒染剤であれば特に制限なく使用することができる。金属媒染剤としては、例えば、水に溶解した場合、アルミニウムイオン、錫イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン及びクロムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種を生成する金属塩が挙げられる。
金属媒染剤である金属塩としてより具体的には、例えば、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、酢酸クロム、二クロム酸カリウム、塩化鉄、塩化錫、及び硫酸銅等が挙げられる。
金属媒染剤は、液状の媒染剤として調製された市販品を用いてもよい。
金属媒染剤は、水溶性であり、繊維の処理液に添加した場合、容易に均一な溶液となり、繊維に吸着し易くなる。金属媒染剤が繊維に吸着する際に、特定粒子を取り込んで、繊維に吸着することで、比較的pHの低い金属媒染剤が、特定粒子のアルカリ性を中和する方向に機能すると本発明者は推測している。
水系溶媒に溶解した剤型で提供される金属媒染剤の常温(25℃)におけるpHは、硫酸鉄及び、木酢酸鉄はpH2.4~2.8であり、錫酸ナトリウムはpH3.0~3.5であり、酢酸アルミニウムはpH3.8~4.0であり、酢酸銅は4.3~4.6であり、酢酸クロムはpH4.8~5.3であり、酸化チタンはpH2.0~2.3である。
金属媒染剤のpHは、公知のpH測定装置を用いて測定することができる。本開示では、(株)堀場製作所のpH測定装置を用いて測定した値を採用している。
また、繊維に特定粒子を固定化する方法として、繊維紡糸用樹脂組成物に特定粒子と金属媒染剤とを添加する場合においては、金属媒染剤が特定粒子を取り込んだ状態で紡糸されて、特定粒子と金属媒染剤が吸着した繊維となるので、比較的pHの低い金属媒染剤が、共存する特定粒子のアルカリ性を中和する方向に機能すると本発明者は推測している。
金属媒染剤のなかでも、繊維への吸着性が良好であり、特定粒子の吸着助剤として有用であるという観点から、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
抗菌性繊維が含む金属媒染剤の含有量は、特定粒子との比率で適宜調整される。例えば、特定粒子に対して抗菌性繊維のpHをより良好な範囲に維持しやすいという観点から、金属媒染剤は、特定粒子100質量部に対して、1質量部~10質量部の範囲が好ましく、1質量部~5質量部の範囲がより好ましく、1質量部~3質量部の範囲がさらに好ましい。
本開示の抗菌性繊維の作用は明確ではないが、本発明者は以下のように考えている。
本開示の抗菌性繊維は、特定粒子の平均粒子径が1μm以下であることで、繊維の微細な空隙に特定粒子が入り込みやすくなっている。ここで、特定粒子と金属媒染剤とが共存することで、金属媒染剤が特定粒子とともに繊維に吸着し、特定粒子の繊維への吸着性を向上させている。さらに、金属イオンを含む金属媒染剤が、特定粒子を被覆するように吸着しており、特定粒子のアルカリ性が中和されることで、抗菌性を低下させることなく、繊維が接触する皮膚への影響をも抑制していると推定される。
本開示において、繊維に特定粒子が吸着しているとは、水洗、漂白などの物理的処理又は化学的処理に供しても、特定粒子が繊維から分離しない状態を指す。抗菌性繊維への特定粒子の吸着の態様には制限はなく、物理的、化学的な吸着、反応による結合、水素結合性の相互作用による結合、合成繊維への練り込みなど、いずれの態様であってもよい。
本開示の抗菌性繊維に、特定粒子、及び金属媒染剤が吸着していることは、以下に示す方法で確認することができる。
特定粒子が抗菌性繊維に吸着していることは、抗菌性繊維を顕微鏡にて観察することにより確認することができる。例えば、光学顕微鏡にて抗菌性繊維を、倍率約100倍~500倍で観察すると、繊維の微細な空隙に特定粒子が吸着していることを確認できる。
抗菌性繊維に金属媒染剤が吸着していることは、抗菌性繊維が金属媒染剤により着色されていることで傍証することができる。抗菌性繊維に金属媒染剤が吸着すると、抗菌性繊維は金属媒染剤に由来する色に着色される。
抗菌性繊維の色相が洗濯しても変色しないことで、吸着が維持されていることが確認できる。本開示では、洗濯後も抗菌性繊維への金属媒染剤の吸着が維持されていることは、以下の条件で少なくとも10回洗濯した後の抗菌性繊維の色相が、洗濯前の抗菌性繊維の色相と比較して、目視により退色が認められないことにより確認している。
退色の有無を確認するための洗濯は、洗剤としてJAFET標準配合洗剤を使用し、JIS L 0217 103号の試験方法に基づき、洗濯及び乾燥を10回繰り返す方法で実施される。上記洗濯方法を、以下、標準的洗濯法と称することがある。
JAFET標準配合洗剤は、一般社団法人繊維評価技術協会発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」に使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテル及びα-オレフィンスルホン酸ナトリウムから選ばれる界面活性剤を含む洗剤である。
抗菌性繊維に、特定粒子と金属媒染剤とが吸着していることは、抗菌性繊維を40℃の温水に5時間浸漬し、その後、温水の温度を25℃に降温させた後に測定したpHが、中性域(pH:6.0~8.0)にあることによっても傍証することができる。
-その他の成分-
抗菌性繊維は、特定粒子及び金属媒染剤以外の成分(以下、その他の成分と称する)をさらに含むことができる。その他の成分としては、粒子吸着助剤、親水性成分、チタン、鉄、及びアルミニウムからなる群より選ばれる金属を含む鉱石の微粉末、特定粒子以外の抗菌性成分などが挙げられる。
(1.粒子吸着助剤)
本開示の抗菌性繊維は、粒子吸着助剤を含むことができる。
抗菌性繊維は、ある実施形態において、特定粒子が既述の金属媒染剤の機能で吸着し、固定化しているが、さらに、金属媒染剤以外の粒子吸着助剤を含むことで、繊維に対する特定粒子の吸着性及び吸着安定性がより向上する。
粒子吸着助剤は、抗菌性繊維に用いられる繊維に応じて選択される。
繊維がセルロース繊維である場合には、粒子吸着助剤として第4級アンモニウム塩を併用することが好適である。セルロース繊維はマイナスの電荷を持つと考えられ、カチオン性の第4級アンモニウム塩と相互作用を形成し易いため、金属媒染剤と第4級アンモニウム塩の機能により、繊維に特定粒子がより強固に吸着すると考えられる。
即ち、第4級アンモニウム塩は、特定粒子が本来有するアルカリ条件下でセルロース繊維と接触し、分子内に有する窒素と繊維との間に相互作用を形成して固定化される。その際に、繊維に固定化した第4級アンモニウムが、特定粒子を被覆することで、特定粒子の繊維への吸着性を向上させることができ、第4級アンモニウム塩を用いない場合に比較し、特定粒子がより強固に繊維に吸着するものと考えられる。
粒子吸着助剤として用い得る第4級アンモニウム塩としては、以下に示すアンモニウム塩化合物の如き、カチオン性界面活性剤として知られる4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤を挙げることができる。
セルロースを含む繊維に対する粒子吸着助剤として用い得る第4級アンモニウム塩の例を以下に示す。
以下に示す構造中、Cellは、第4級アンモニウム塩の部分構造が結合する繊維又は繊維集合体を表し、繊維を構成するセルロース骨格に酸素原子を介して第4級アンモニウム塩が吸着することを模式的に示す。
Figure 2022189518000001

第4級アンモニウム塩としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、シオールCHP(商品名:第4級アンモニウム塩水溶液、(株)シオンテック)、PEシオールCT(商品名:ポリエステル樹脂粒子/油剤の水溶媒調整品/第4級アンモニウム塩の混合物、(株)シオンテック)等が挙げられる。
粒子吸着助剤としての第4級アンモニウム塩は、抗菌性繊維に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれていてもよい。
本開示の抗菌性繊維の繊維が綿、麻などのセルロース繊維であり、且つ、粒子吸着助剤としての第4級アンモニウム塩を含む場合、第4級アンモニウム塩の含有量は、処理液に対しては、特定粒子の吸着性維持効果がより良好となるという観点から、5%OWF~100%OWFの範囲とすることができる。処理液に第4級アンモニウム塩を、100%OWFを上限として大量に含有させることで、吸着助剤としての第4級アンモニウム塩を効率よく繊維に導入することができるため好ましい。
抗菌性繊維に導入される第4級アンモニウム塩の含有量としては、1%OWF~20%OWFの範囲が好ましく、3%OWF~15%OWFの範囲がより好ましく、5%OWF~12%OWFの範囲がさらに好ましい。
繊維がタンパク質繊維である場合には、粒子吸着助剤として塩基性アミンを併用することが好ましい。タンパク質はアミノ酸の重合体であり、分子内に親水性基と窒素原子とを含む。羊毛、シルクなどのタンパク質繊維は、アルカリ性の雰囲気では、繊維が傷みやすくなるため、処理液に溶解してもアルカリ性を呈さない塩基性アミンが粒子吸着助剤として好適である。
塩基性アミンとしては、公知の塩基性アミンであれば、特に制限なく用いることができる。粒子吸着助剤として適用し得る塩基性アミンとしては、例えば、シオールX(商品名:(株)シオンテック)が挙げられる。
塩基性アミンは、タンパク質の親水性基、窒素原子等と親和性を有し、タンパク質を含む繊維の微細な空隙に界面活性能により浸透し、繊維に対し、塩基性アミンの分子内に有する窒素原子に起因した相互作用を形成する。この相互作用により、塩基性アミンを共存させることで、金属媒染剤の機能と相俟って繊維間に存在する特定粒子の繊維への吸着性がより向上すると考えられる。
粒子吸着助剤としての塩基性アミンは、抗菌性繊維に1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
本開示の抗菌性繊維の繊維が羊毛、シルクなどのタンパク質繊維であり、且つ、粒子吸着助剤として塩基性アミンを含む場合、塩基性アミンの含有量は、特定粒子の吸着性維持効果がより良好となるという観点から、処理液に対し、1%OWF~30%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~20%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~10%OWFの範囲がさらに好ましい。
繊維が合成繊維である場合には、粒子吸着助剤として、合成繊維と同一又は類似の化学構造を有する粉末が水系溶媒に溶解又は分散した分散液を用いることが好ましい。
合成繊維と同一又は類似の化学構造を有する粉末(以下、同質粉末と称することがある)としては、例えば、合成繊維がポリエステル繊維である場合、ポリエステル粉末の水分散物、或いは、改質により一部可溶化された水溶性ポリエステル粉末の溶液又は分散液を用いることができる。
同質粉末としては、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアラミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ビニリデン、ポリプロピレンなど、抗菌性繊維における合成繊維の種類に応じて適宜選択される。
同質粉末が水不溶性の場合には、繊維への吸着性がより良好となるという観点から、平均粒子径は、0.001μm~1.0μmの範囲であることが好ましく、0.001μm~0.3μmの範囲であることがより好ましい。
同質粉末を含む処理剤の市販品としては、例えば、ポリエステル繊維に好適な粒子吸着助剤であるPEシオールCHP(商品名:ポリエステル同質粉末/油剤の水溶媒調整品/第4級アンモニウム塩の混合物、(株)シオンテック)が挙げられる。
同質粉末としては、合成繊維を構成する合成樹脂と同質の合成樹脂の粉末に加え、合成樹脂に水性溶媒への溶解性及び分散性を向上させる目的で、官能基を導入するなどにより化学的に改質を行った合成樹脂粉末を用いてもよい。具体的には、官能基を導入して水系媒体との親和性を向上させた同質粉末、官能基を導入して水系溶媒に可溶化した同質粉末を用いてもよい。可溶化された水溶性ポリエステルとしては、例えば、互応化学工業製、プラスコート等が挙げられる。
同質粉末を粒子吸着助剤として使用することで、ファンデルワールス力の作用により合成繊維の間隙に同質粉末が浸入し易くなり、同質粉末の繊維の間隙への浸入に伴って、金属媒染剤と特定粒子とが繊維間の空隙に浸入しやすくなる。このため、特定粒子が吸着し難い合成樹脂の繊維に対しても、金属媒染剤のみを用いた場合と比較して、同質粉末を併用することで、特定粒子の繊維間への浸透性及び吸着性がより向上すると考えられる。
粒子吸着助剤としての同質粉末は、抗菌性繊維に1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
本開示の抗菌性繊維の繊維がポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維であり、且つ、粒子吸着助剤として同質粉末を含む場合、同質粉末の含有量は、特定粒子の吸着性維持効果がより良好となるという観点から、処理液に対して、1%OWF~30%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~20%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~10%OWFの範囲がさらに好ましい。
抗菌性繊維に対する同質粉末の導入量としては、1%OWF~20%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~10%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~7%OWFの範囲がさらに好ましい。
(2.親水性成分)
本開示の抗菌性繊維は、親水性成分をさらに含むことができる。親水性成分としては、分子内に水酸基又はカルボキシ基を有する化合物が挙げられる。本開示における親水性成分は、吸水性及び保水性を有するため、特定粒子の近傍に親水性成分が存在することで、特定粒子の抗菌性の耐久性を向上させるのに有用と考えられる。
親水性成分としては、プロピレングルコールなどのグリコール類、α-トコフェロール等のトコフェロール、アラニン、リシン等の植物由来のアミノ酸、トレハロース、ラクトース、マルトース等のオリゴ糖、イヌリン等の多糖類などの植物由来の糖類などが挙げられる。
上記親水性成分は、いずれも、分子内に水酸基又はカルボキシ基を有し、繊維との親和性が良好であり、無機粒子である特定粒子に対して親水性を付与する機能を有するため、特定粒子の繊維への付着性と、特定粒子が有する抗菌性とを、より安定に維持するために有用と考えられる。
親水性成分は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、水溶性の食物繊維として知られるイヌリンであるイヌリア(登録商標:帝人(株))が挙げられる。
抗菌性繊維は、親水性成分を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
本開示の抗菌性繊維が親水性成分を含む場合の含有量は、0.1%OWF~10%OWFの範囲が好ましく、0.2%OWF~7%OWFの範囲がより好ましく、0.3%OWF~6%OWFの範囲がさらに好ましい。
(3.鉄、アルミニウム、チタン及びセリウムからなる群より選ばれる金属を含み、繊維に吸着してなる平均粒子径が0.1μm~1μmの鉱石粒子)
本開示の抗菌性繊維は、鉄、アルミニウム、チタン及びセリウムからなる群より選ばれる金属を含み、繊維に吸着してなる平均粒子径が0.1μm~1μmの鉱石粒子(以下、鉱石粒子と称することがある)をさらに含むことができる。
鉱石粒子としては、トルマリン(アルミニウムを含むケイ酸塩鉱物:別名電気石)、モナサイト(セリウムを含むリン酸塩鉱物 別名:モナザイト)、医王石(二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化カルシウムを含む鉱石:別名緑石凝灰岩)、貴陽石(ケイ酸アルミニウムを主成分とする天然鉱石)、チタン、ルチル(二酸化チタンの結晶)、鉄鉱石等が挙げられる。
セリウム以外に、トリウムを含むリン酸塩鉱物としてのモナサイトもある。トリウムを含むモナサイトも、本開示の鉱石粒子として使用することができる。
特定粒子は無機粒子であり、繊維に吸着した状態で皮膚に接触すると冷たく感じることがある。抗菌性繊維が、特定粒子に比較して熱伝導率が高い鉱石粒子を含むことで、抗菌性繊維が皮膚に接触すると、体温の影響を受けて暖かく感じる。また、医王石、貴陽石等は遠赤外線を発生するため、遠赤外線効果により暖かく感じる。
鉱石粒子の平均粒子径は0.1μm~1μmの範囲であり、平均粒子径は0.1μm~0.5μmの範囲が好ましく、0.2μm~0.4μmの範囲の粒子であることがより好ましい。
鉱石粒子の平均粒子径は、既述の特定粒子の平均粒子径と同様にして測定することができる。
鉱石粒子の平均粒子径が上記範囲にあることで、鉱石粒子の繊維への吸着性が良好となる。鉱石粒子の平均粒子径を上記範囲に調製する方法としては、公知の粉砕法を適宜適用することができる。
鉱石粒子の製造に際しては、鉱石は消石灰よりも硬質であるため、一般に鉱物の粉砕に使用される粉砕装置、例えば、金属ギアを用いた湿式粉砕法を適用することが好ましい。
鉱石粒子は、例えば、以下の方法で製造することができる。
鉱石粒子の原料となる鉱石を、ステンレス製の200メッシュ~300メッシュのフィルターと、鉱石粉砕用の金属ギアとを備えた粉砕装置に投入し、粉砕による金属ギアの温度を制御する目的で水を供給しながら、まず、粗粉砕を行い、200メッシュ~300メッシュのフィルターを通過した鉱石粒子(粒子径:55μm~90μm)を得る。
その後、開口サイズの異なるメッシュのフィルターと金属ギアとを備えた粉砕装置に複数回に分けて粗粉砕された鉱石と水とを供給しながら粉砕し、粒子のサイズを3μm以下、1μm以下、0.5μm以下、さらに、0.3μm以下となるまで多段階で粉砕する。粒子径が0.3μm以下となったスラリーに界面活性剤を3質量%~5質量%加え、鉱石粒子のスラリーを得ることができる。
界面活性剤としては、鉱石粒子の比重などを考慮し、分散性の観点から、適宜選択することが好ましい。
スラリーの固形分濃度は、10質量%~30質量%の範囲が、作業性の観点から好ましい。スラリーの固形分濃度は、分散媒である水の量により容易に調整することができる。
得られたスラリーは、そのまま抗菌性繊維の加工に使用することができる。
抗菌性繊維は、鉱石粒子を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
本開示の抗菌性繊維が鉱石粒子を含む場合の含有量は、1%OWF~10%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~7%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~5%OWFの範囲がさらに好ましい。
(4.特定粒子以外の抗菌性成分)
本開示の抗菌性繊維は、特定粒子以外の抗菌性成分(以下、「他の抗菌性成分」と称する)を含むことができる。
他の抗菌性成分としては、特定粒子の機能を阻害しない限り、公知の抗菌性成分を制限なく使用することができる。
他の抗菌性成分としては、例えば、カテキン、タンニン等の茶葉由来の抗菌性成分、クマザサ、ニーム、キンセンカ、クローブ、サルトリイバラ、ガーリック、エキナセア等の植物から抽出した成分、納豆菌、銀粒子、銅粒子、酸化ジルコニウム粒子などが挙げられる。なかでも、繊維への吸着性が良好であるという観点からは、植物由来の成分であるカテキン、タンニン、ニーム抽出成分、クマザサエキス(クマザサ抽出成分)等が好ましい。
抗菌性繊維は、他の抗菌性成分を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
抗菌性繊維が他の抗菌性成分を含む場合の含有量としては、特に制限はなく、抗菌性繊維の用途に応じて、吸着性を考慮して含有量を調整すればよい。
例えば、抗菌性繊維がカテキンを含む場合の含有量は、1%OWF~10%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~7%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~5%OWFの範囲がさらに好ましい。
本開示の抗菌性繊維は、抗菌性成分である特定粒子が、金属媒染剤と共に繊維に安定に吸着され、繊維本来の風合いを損なわず、抗菌性とその持続性が良好である。さらに、特定粒子による皮膚刺激の懸念もないため、種々の用途に好適に使用しうる。
なお、実施例において詳述するように、本開示の抗菌性繊維は、黄色ブドウ状菌に対する抗菌効果が確認された。
抗菌性繊維の形態は任意である。即ち、短繊維の状態でも、糸の状態でも、織布、編布、不織布などの布であっても、下着、被服、スカーフ、ロープ、タオル、カーテンなどの最終製品でもよい。
また、抗菌繊維である短繊維を撚って糸としても、糸を織ったり、編んだりした布としてもよく、糸を織ったニット製品などの繊維製品としてもよく、布を裁断し、縫製した繊維製品としてもよい。
本開示の抗菌性繊維は、抗菌性とその持続性に優れるため、種々の分野に利用することができる。
本開示の抗菌性繊維の製造方法には特に制限はなく、抗菌性成分である特定粒子を繊維に吸着させることができればいずれの方法で製造してもよい。
なかでも、本開示の抗菌性繊維は、以下に示す抗菌性繊維の製造方法(I)又は抗菌性繊維の製造方法(II)により製造されることが好ましい。
[抗菌性繊維の製造方法(I)]
本開示の抗菌性繊維の製造方法の第1の態様(本開示の製造方法(I)とも称する)は、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、粒子吸着助剤と、水系溶媒とを含む処理液を調製する工程(工程a)、調製した処理液に繊維を浸漬し、加温する工程(工程b)、及び、繊維を処理液から取り出し、水にて洗浄し、その後、乾燥して抗菌性繊維を得る工程(工程c)を含む。
抗菌性繊維の製造方法の第1の態様を、以下、本開示の製造方法(I)と称する。
処理液を調製する工程aと、繊維を処理液に浸漬し、加温する工程bとは、それぞれ複数回行ってもよい。
〔工程a〕
工程aでは、特定粒子と、金属媒染剤と、粒子吸着助剤と、水系溶媒とを含む処理液を調製する。
工程aにおいて調製される処理液は、特定粒子と金属媒染剤と粒子吸着助剤と水系溶媒の全てを含む処理液であってもよく、特定粒子、金属媒染剤、粒子吸着助剤及び水系溶媒から選ばれる1種以上を含む複数の処理液であってもよい。
複数の処理液を調製する場合の例を挙げれば、例えば、粒子吸着助剤と水系溶媒とを含む第1の処理液を調製し、第1の処理液にて繊維を処理した後、特定粒子と金属媒染剤と水系溶媒とを含む第2の処理液を調製し、第1の処理液で処理した繊維を、第2の処理液で処理する例が挙げられる。
工程aは、複数の処理液を調製することを含む。
-特定粒子-
工程aにおける特定粒子は、抗菌性繊維において説明した粒子と同様の粒子を使用する。即ち、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子(特定粒子)である。
処理液の均一性向上のため、特定粒子は、粉体で処理液に投入せず、予め、特定粒子と水系溶媒と、を含むスラリーを調製し、得られたスラリーを用いて特定粒子を含む処理液を調製することが好ましい。なお、特定粒子の平均粒子径を0.1μm~1μmの範囲に調整するため、湿式粉砕法を適用した場合、湿式粉砕法に用いた水系溶媒を含んだスラリーを、水系溶媒に含まれる成分に問題がない場合、そのまま特定粒子を含む処理液の調製に用いてもよい。
特定粒子が分散されたスラリーにおける特定粒子の含有量は、10質量%~50質量%の範囲であることが好ましい。
-金属媒染剤-
工程aにおける金属媒染剤は、抗菌性繊維において説明した金属媒染剤と同じであり、好ましい例も同様である。即ち、金属媒染剤は、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
金属媒染剤は、予め水系溶媒に溶解又は分散させた後、得られた溶液又は分散液を用いて処理液を調整することが、処理液の均一性向上の観点から好ましい。また、水系溶媒に溶解された剤型で提供される市販の金属媒染剤、例えば、木酢酸鉄などをそのまま処理液の調製に用いてもよい。
金属媒染剤の繊維への吸着性は、例えば、セルロース繊維の場合には、イオン的な相互作用で吸着し、タンパク質繊維には、金属媒染剤が有する親水性の官能基が相互作用して吸着すると考えられる。金属媒染剤は、本来、染料を繊維に吸着させる機能を有する成分であり、金属媒染剤が繊維の微細な空隙に浸入して固定化される際に、1μm以下の微細な平均粒子径を有する特定粒子を染料の吸着と同様に吸着させ、条件によっては、特定粒子を被覆するように固定化すると考えられる。
従って、複数の処理液を調製する際においては、金属媒染剤と特定粒子とは同じ処理液に含まれることが好ましい。
-粒子吸着助剤-
工程aにおける粒子吸着助剤は、抗菌性繊維において説明した粒子吸着助剤と同じであり、好ましい例も同様である。粒子吸着助剤は、既述のように、抗菌性繊維に適用される繊維に応じて選択される。
繊維がセルロース繊維である場合、粒子吸着助剤としては、第4級アンモニウム塩が用いられる。第4級アンモニウム塩は、アルカリ条件下でセルロース繊維と接触すると、第4級アンモニウム塩の分子内に有する窒素とセルロース繊維との間に相互作用を形成して固定化されるものと考えられる。繊維に固定化した第4級アンモニウムは、既述の金属媒染剤の機能と相俟って、処理液中に分散される特定粒子のセルロース繊維への吸着性がより良好になる。
第4級アンモニウム塩を含む処理液には、第4級アンモニウム塩の繊維への吸着を促進する目的で、さらに、アルカリ剤を含有することができる。アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
第4級アンモニウム塩を含む処理液にアルカリ剤を用いる場合の含有量は、処理液の量や浸漬に用いる装置により適宜選択することができる。一般的には、アルカリ剤は処理液のpHが9~13となる量を添加することが好ましい。
粒子吸着助剤は、複数の処理液を調製する際には、第1の処理液に含まれることが好ましい。第1の処理液に含まれ、繊維に固定化した第4級アンモニウムは、繊維から第1の処理液が除去された後も、繊維に固定化されており、除去されない。従って、例えば、予め第4級アンモニウム塩を粒子吸着助剤として含む第1の処理液に繊維を浸漬し、その後、第1の処理液を除去した後、金属媒染剤と特定粒子を含む第2の処理液に繊維を浸漬した場合においても、繊維に固定化された第4級アンモニウム塩の機能により、金属媒染剤の繊維への吸着、金属媒染剤の機能による特定粒子の繊維への吸着性をより向上させることができる。
繊維がタンパク質繊維である場合、粒子吸着助剤としては、塩基性アミンが好ましい。塩基性アミンは、タンパク質の親水性基、窒素原子等と親和性を有し、タンパク質を含む繊維の微細な空隙に入り込み、繊維と、塩基性アミンとが分子内に有する窒素原子に起因した相互作用を形成する。この相互作用により、塩基性アミンを共存させることで、金属媒染剤の機能と相俟って繊維間に存在する特定粒子の繊維への吸着性をより向上させると考えられる。
繊維が合成繊維である場合には、粒子吸着助剤として、合成繊維と同一又は類似の化学構造を有する粉末(同質粉末)が水系溶媒に溶解又は分散した分散液を用いることが好ましい。
同質粉末としては、例えば、合成繊維がポリエステル繊維である場合、ポリエステル粉末の水分散物、或いは、改質により一部可溶化された水溶性ポリエステル粉末の溶液又は分散液を用いることができる。
同質粉末は、抗菌性繊維における合成繊維の種類に応じて適宜選択される。
同質粉末が水不溶性の場合には、繊維への吸着性がより良好となるという観点から、平均粒子径は、0.1μm~1.0μmの範囲であることが好ましく、特定粒子と同程度であるか、又はそれ以下の平均粒子径である同質粉末を用いることがより好ましい。
同質粉末を粒子吸着助剤として使用することで、ファンデルワールス力の作用により合成繊維の間隙に同質粉末が浸入し易くなり、同質粉末の繊維の間隙への浸入に伴って、金属媒染剤と特定粒子とが繊維間の空隙に浸入しやすくなる。このため、特定粒子が吸着し難い合成樹脂の繊維に対しても、金属媒染剤のみを用いた場合と比較して、同質粉末を併用することで、特定粒子の繊維間への浸透性及び吸着性がより向上すると考えられる。
-水系溶媒-
水系溶媒は水を含有する。水系溶媒としては水のみからなる溶媒であってもよく、水と、水溶性有機溶媒を含む溶媒であってもよい。水系溶媒が水溶性有機溶媒を含む場合、水溶性有機溶媒は、全水系溶媒中の5質量%~50質量%の範囲で含有することができる。水系溶媒が、水溶性有機溶媒を含む場合、例えば、粒子吸着助剤の一例であるカチオン性化合物の溶解性をより向上させることができる。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールエチレン、ジメチルアルデヒドなどが挙げられる。
処理液における上記各成分は、それぞれ1種のみであってもよく、目的に応じて2種以上であってもよい。
処理液における上記各成分の含有量は、抗菌性繊維の目的に応じて適宜選択される。効果の観点からは、各成分の含有量は、既述の抗菌性繊維における各成分の好ましい含有量と同等か、同等以上の含有量であることが好ましい。処理液に含まれる各成分は、速やかに繊維に吸着し、その機能を発揮するが、処理液に残存する成分も存在するため、抗菌性繊維に吸着させる各成分の含有量よりも、処理液における各成分の含有量は同等か、同等以上が好ましい。
具体的には、抗菌効果と、抗菌効果の持続性の観点からは、抗菌性繊維における特定粒子の含有量は、繊維の質量に対し0.1%OWF~5%OWFの範囲が好ましいが、処理液における特定粒子の含有量は、繊維の質量に対し0.1%OWF~7%OWFの範囲が好ましく、0.5%OWF~5%OWFの範囲がより好ましく、2%OWF~4%OWFの範囲であることが更に好ましい。
抗菌性繊維に吸着する金属媒染剤の含有量は、特定粒子100質量部に対して、10質量部~30質量部の範囲が好ましく、12質量部~25質量部の範囲がより好ましく、15質量部~25質量部の範囲がさらに好ましい。
粒子吸着助剤としての第4級アンモニウム塩の、処理液における含有量は、5%OWF~100%OWFの範囲とすることができる。処理液に第4級アンモニウム塩を、100%OWFを上限として大量に含有させることで、吸着助剤としての第4級アンモニウム塩を効率よく繊維に導入することができるため好ましい。
抗菌性繊維に導入される第4級アンモニウム塩の含有量としては、1%OWF~25%OWFの範囲が好ましく、3%OWF~20%OWFの範囲がより好ましく、5%OWF~15%OWFの範囲がさらに好ましい。
粒子吸着助剤として塩基性アミンの、処理液における含有量は、1%OWF~30%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~20%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~10%OWFの範囲がさらに好ましい。
粒子吸着助剤として同質粉末の含有量は、処理液に対して、1%OWF~30%OWFの範囲が好ましく、2%OWF~20%OWFの範囲がより好ましく、3%OWF~10%OWFの範囲がさらに好ましい。
処理液には、既述の他の成分をさらに含むことができる。他の成分としては、親水性成分、鉱石粒子、特定粒子以外の抗菌性成分等が挙げられる。
これらの成分は、処理液に含有させる際、1液型の処理液の場合には、そのまま、或いは、溶液又は分散液として含有させればよい。
2種以上の処理液を調製する場合、親水性成分及び鉱石粒子は、特定粒子及び金属媒染剤と同じ処理液に含有させることが好ましい。
他の抗菌性成分として、銀粒子、銅粒子、酸化ジルコニウム粒子などから選ばれる少なくとも1種の固体粒子を用いる場合には、特定粒子及び金属媒染剤と同じ処理液に含有させることが好ましい。
特定粒子以外の抗菌性成分として、茶葉由来の抗菌性成分、納豆菌、及び植物から抽出した他の抗菌性成分から選ばれる少なくとも1種を用いる場合には、特定粒子及び金属媒染剤を含む処理液で処理した後、他の抗菌成分を含む処理液を調製し、特定粒子及び金属媒染剤が吸着した繊維を、得られた処理液で処理することができる。
処理液における各成分の含有量は、抗菌性繊維における各成分の含有量と同等か、同等以上であることが好ましい。
〔工程b〕
工程bでは、工程aで調製した処理液に繊維を浸漬し、加温する。
浸漬される繊維は、布、糸、繊維製品の状態であれば、そのまま浸漬すればよいが、短繊維、短い糸状である場合には、布製袋、不織布製袋、メッシュ状の袋など、液透過性の袋又はカゴなどの容器に入れて浸漬してもよい。
処理液に浸漬する際には、処理液を撹拌することが、繊維と処理液との接触がより効率よく行われる観点から好ましい。
撹拌は、公知の方法で実施することができる。例えば、撹拌は、浸漬する容器に備えられた撹拌翼で行ってもよく、容器に備えられた循環装置で処理液を循環させて行ってもよい。
加温する温度は、繊維の種類により、適宜選択される。
綿などのセルロース繊維の場合には、加温する温度は、60℃~100℃が好ましく、70℃~90℃の範囲がより好ましい。処理液に浸漬して加温する時間は、30分~60分が好ましく、40分~50分が好ましい。
セルロース繊維の場合、第4級アンモニウム塩を含む第1の処理液に浸漬し、70℃~90℃にて40分~50分保持し、第1の処理液で繊維を処理する。その後、第1の処理液を除去し、特定粒子、金属媒染剤及び粒子吸着助剤を含む第2の処理液に繊維を浸漬し、70℃~90℃にて、30分~50分保持して、第2の処理液で処理することが好ましい。
シルクなどのタンパク質繊維の場合には、加温する温度は、40℃~90℃が好ましく、50℃~80℃の範囲がより好ましい。処理液に浸漬して加温する時間は、20分~50分が好ましく、30分~45分が好ましい。
合成繊維の場合には、加温する温度は、60℃~100℃が好ましく、80℃~90℃の範囲がより好ましい。処理液に浸漬して加温する時間は、30分~60分が好ましく、40分~50分が好ましい。
〔工程c〕
工程cでは、工程bで処理した繊維を処理液から取り出し、水にて洗浄し、その後、乾燥して抗菌性繊維を得る。
処理液から取り出した繊維は、まず、処理液を除去し、その後、水にて洗浄し、脱水する。
工程cでは、乾燥に先立って、水洗を行なって処理液を繊維から十分に除去することが好ましい。十分な水洗が行われず、繊維に吸着されなかった特定粒子、金属媒染剤、粒子吸着助剤等が繊維間に残存すると、繊維の感触が損なわれる、皮膚への刺激が懸念されるなどの問題が生じる虞がある。
繊維は水洗した後、脱水し、乾燥して抗菌性繊維を得る。
乾燥は、公知の方法で行うことができる。乾燥は、タンブラー乾燥機などの公知の乾燥機で、繊維の種類に応じた温度にて行えばよい。例えば、繊維がセルロース繊維の場合、乾燥温度は100℃~120℃とすることができる。
得られた抗菌性繊維に、特定粒子、及び金属媒染剤が吸着していることは、既述の方法で確認することができる。
本開示の抗菌性繊維の製造方法の第1の態様では、工程a、工程b、及び工程cに加え、更に任意の工程を含むことができる。
任意の工程としては、繊維を処理液に浸漬する前に、繊維に付着した油分などの不純物を除去する不純物除去工程、繊維を任意の色相に予め染色する染色工程、繊維を漂白する漂白工程等が挙げられる。
所望により行われる繊維の染色工程及び漂白工程は、繊維を抗菌処理する前に行ってもよく、抗菌性繊維を製造した後、後処理として行ってもよい。
[抗菌性繊維の製造方法(II)]
本開示の抗菌性繊維の製造方法の第2の態様(本開示の製造方法(II)とも称する)は、繊維原料となる樹脂と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を調製する工程〔工程A〕、及び、調製した抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を紡糸して、抗菌性繊維を得る工程〔工程B〕を含む。
〔工程A〕
工程Aでは、繊維原料となる樹脂と、特定粒子と、金属媒染剤と、を含有する抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する)を調製する。
樹脂組成物は、所望により、さらに、着色剤、分散剤、溶剤などの任意成分を含むことができる。
本開示の製造方法(II)で用いられる特定粒子及び金属媒染剤は、本開示の製造方法(I)で用いたものと同じであり、好ましい例も同様である。
繊維原料となる樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、繊維の製造は溶融紡糸法により行うことができる。溶融紡糸法では、原料となる樹脂を溶融混練装置内に投入する。樹脂としては、例えば、粒状の樹脂であるペレットを用いることができる。
溶融紡糸法に用いる樹脂組成物は、繊維原料となる樹脂、特定粒子、金属媒染剤、及び、所望により用いられる任意の成分(例えば、他の抗菌性成分等)を溶融混練装置に投入し、十分に加熱混練することで得ることができる。
混練温度は、繊維原料である樹脂の種類により決定される樹脂の溶融温度を考慮して適宜選択される。ポリエステル、ポリアミド等の樹脂を用いる場合には、加熱温度は、例えば、180℃~300℃とすることができる。樹脂及びその他の成分を上記温度範囲に加熱し、十分に混練して、樹脂組成物を得る。
乾式紡糸法、及び湿式紡糸法では、繊維原料となる樹脂と、上記樹脂を溶解する溶剤と、特定粒子と、金属媒染剤とを含有する混合物を、十分に撹拌、混合することで、樹脂組成物を調製することができる。
特定粒子の均一分散性をより向上させるため、樹脂組成物は、分散剤をさらに含むことが好ましい。
溶融紡糸法、乾式紡糸法、及び湿式紡糸法のいずれにおいても、繊維の原料となる樹脂に対する特定粒子及び金属媒染剤の含有量は、そのまま、得られる抗菌性繊維に反映される。得られる繊維の抗菌性が良好となるという観点から、樹脂組成物における特定粒子の含有量は、0.1%OWF~5%OWFの範囲が好ましく、0.5%OWF~4%OWFの範囲がより好ましく、1%OWF~3%OWFの範囲であることが更に好ましい。
樹脂組成物における金属媒染剤の含有量は、特定粒子100質量部に対して、1質量部~10質量部の範囲が好ましく、1質量部~5質量部の範囲がより好ましく、1質量部~3質量部の範囲がさらに好ましい。
なお、本開示の抗菌性繊維では、特定粒子、鉱石粒子、他の抗菌性成分である銀粒子等の固形物を含むが、本発明者の検討によれば、樹脂組成物全量に対する固形分の含有量が15質量%以下であれば、問題のない強度の繊維が得られる。樹脂組成物全量に対する固形分の含有量は、好ましくは10質量%以下である。
〔工程B〕
工程Bでは、工程Aで調製した樹脂組成物を紡糸して、抗菌性繊維を得る。
繊維の紡糸方法は、繊維の原料となる樹脂の特性を考慮し、公知の方法を適宜選択して適用する。
例えば、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を繊維の原料として用いる場合には、樹脂を加熱溶融し、紡糸口金から吐出して繊維状にした後、冷却して固化する溶融紡糸法が好適である。
溶融紡糸法では、工程Aで得られた樹脂組成物を溶融混練装置に備えられたノズル(紡糸口金)から吐出させ、吐出して形成されたフィラメント状の樹脂組成物を冷却し、固化して繊維(糸)を得る。吐出された樹脂組成物は、水流のある樋に吐出して、水により冷却してもよく、吐出された樹脂組成物に、吐出方向に沿って冷却した気体を吹き付けて気体により冷却してもよい。
アセテート、アクリル等を繊維の原料として用いる場合には、樹脂を熱で気化する溶剤に溶解して樹脂組成物を調製し、熱雰囲気下に紡糸口金から吐出して溶剤を気化させて、繊維状にする乾式紡糸法を適用することができる。
アクリル、再生繊維であるレーヨン等を繊維の原料として用いる場合には、原料を溶剤に溶解し、凝固浴中に、紡糸口金から押し出して化学反応させて固化させ、溶剤を除去して繊維を得る湿式紡糸法を適用することができる。
上記溶融紡糸法、乾式紡糸法及び湿式紡糸法は、いずれも公知の方法を適用できる。それぞれの紡糸法は、繊維の原料となる樹脂に応じて選択され、上記いずれの紡糸法も、本開示の製造方法(II)の工程Bに適用できる。
吐出又は押出しに用いる紡糸口金の口径を選択することで、得られる繊維の直径を調整することができる。紡糸口金の口径は、得られる抗菌性繊維の加工性がより良好となるという観点から、5μm~30μmとすることができ、5μm~15μmの範囲であることが好ましい。紡糸口金の口径が上記範囲であれば、樹脂組成物が、特定粒子、鉱石粒子等の固形分を含む場合においても、良好な繊維形成性を達成できる。
紡糸口金の形状を選択することによって、異形断面繊維を製造することもできる。
紡糸法によって、吐出され、成形された繊維(フィラメント)は、例えば、20m程度の長尺なフィラメントの状態であってもよく、短繊維の状態であってもよい。
長尺なフィラメントは、延伸するか、又は、未延伸の状態で巻き取って糸とすることができる。また、撚り糸を形成する場合には、得られた長尺なフィラメントを、適切な長さに裁断して短繊維とした後、紡績機にかけて撚り糸を製造してもよい。
例えば、20m程度のフィラメントを紡績機に合わせて3.5cm~8cm程度にバイアスカット等で裁断し、得られた短繊維を紡績機にかけて撚り糸を得ることができる。
また、紡糸口金から吐出された糸を延伸し、捲縮して短繊維であるステープルを製造することができる。紡糸口金からの吐出条件を制御することで、所望の長さの短繊維を製造することもできる。
得られたステープル及び短繊維は、それぞれ、紡績機にかけて撚り糸を製造することができる。
短繊維を用いて撚り糸を製造する際は、目的とする撚り糸の太さ、柔軟性等に応じて、撚りに用いる短繊維の太さ及び長さ、短繊維の数、撚りの条件等を調整すればよい。
例えば、3デニールの繊維を50本撚り合わせて150デニールの撚り糸を製造することができる。撚り糸は、巻き取って保存され、織布(布帛)、編布(ニット)等の布の形成に用いられる。
本開示の抗菌性繊維からなる撚り糸を用いることで、抗菌性の布が得られる。
布の製造に際しては、本開示の製造方法(II)により得られた抗菌性繊維からなる撚り糸を、目的に応じて他の繊維からなる撚り糸と組み合わせて用いてもよい。
紡糸口金から吐出され、紡糸された抗菌性繊維は、短繊維又は長尺なフィラメントの状態では、一般に、直径が5μm~15μmの範囲であり、樹脂中に分散された平均粒子径0.1μm~1μmの特定粒子が繊維の表面に露出する量は極めて少ない。しかし、紡糸により得られた繊維を撚り糸に加工する際、得られた撚り糸を編む又は織るなどして布を製造する際等において、繊維に微細なひび割れが生じる。繊維に発生した微細なひび割れにより、繊維に取り込まれた特定粒子は抗菌性を発現すると考えられる。
特定粒子を樹脂組成物に含有させ、紡糸する場合には、特定粒子は繊維の中に安定に存在する。繊維中には、特定粒子と金属媒染剤とが共存しており、特定粒子が繊維中に含まれる場合でも、特定粒子に近接して金属媒染剤が存在することにより、特定粒子の安定性がより良好となり、特定粒子のアルカリ性に起因する皮膚への影響がより抑制されると考えられる。
本開示の製造方法(II)においても、本開示の製造方法(I)と同様に、工程A及び工程Bに加え、更に任意の工程を含むことができる。
任意の工程としては、繊維を処理液に浸漬する前に、繊維に付着した油分などの不純物を除去する不純物除去工程、繊維を任意の色相に予め染色する染色工程、繊維を漂白する漂白工程等が挙げられる。
(繊維を染色する工程)
抗菌性繊維の製造方法に適用する繊維は、予め染色されたものであってもよい。即ち、本開示の製造方法(I)及び本開示の製造方法(II)は、繊維を染色する工程を含むことができる。
繊維を染色する工程(以下、染色工程と称することがある)を行うことで、抗菌性繊維を任意の色相とすることができる。本開示の抗菌性繊維の製造方法によれば、染色工程を実施しても繊維の抗菌性に影響を与えないため、種々の色相の抗菌性繊維を得ることができ、繊維の応用範囲をより広げることができる。
繊維の染色工程は、常法により行うことができる。
原料となる繊維、繊維製品の染色に用いられる染色機としては、オーバーマイヤー機、かせ染機、チーズ染色機、ウインス機、ジッカー機、液流機、パデイング・マングル機、連染機、ドラム機、ワッシャー機、ビーム染色機等を適用することができる。
また、常圧染色機、高圧染色機、密閉染色機、捺染機を用いて、染料を混入することで繊維を染色することができる。
染色工程では、染料として、反応染料、分散染料などを用いることができる。なかでも、染色工程において反応染料を用いることで、反応染料が繊維に吸着する際に、繊維に吸着した特定粒子の安定性をより高めることができる。
染色工程に用いうる反応染料には特に制限はない。例えば、住化ケムテックス(株)、ダイスター(DyStar)・ジャパン(株)、及びチバ・ジャパン(株)より入手可能な反応染料、分散型反応染料等は、いずれも使用できる。代表的な染料としては、例えば、CI Reactive Blue、CI Reactive Red等が挙げられるがこれらに限定されない。
染色工程は、例えば、反応染料を溶解した染料液を染色浴中で50℃~90℃に加温して、上記染料液に繊維を40分~60分浸漬することで実施することができる。
分散染料としては、例えば、DyStar BlackCC、DyStar Blue、DyStar yellow等が挙げられるが、これらに限定されない。分散染料を用いた染色工程も、既述の反応染料を用いた場合と同様に行うことができる。
染色後は、余剰の染料を除去するため、界面活性剤によるソーピング処理を行うことができる。
ソーピング処理には、染料に応じてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などを用いることができる。ソーピング処理に用い得る界面活性剤は、例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)、BASF・ジャパン(株)等から入手可能である。
界面活性剤の含有量としては、例えば、ソーピング処理液全量に対して1質量%~5質量%の範囲で用いることができる。
(繊維を漂白する工程)
得られた抗菌性繊維は、そのまま使用してもよいが、白色の繊維とする場合、或いは、さらに繊維を所望の色に着色する場合には、クエン酸、過酸化水素などにより抗菌性繊維に漂白処理を行ってもよい。
クエン酸、過酸化水素などによる漂白処理は、常法により行うことができる。
以下、実施例を挙げて本開示の抗菌性繊維及びその製造方法について具体的に説明するが、本開示は、これらの実施例に制約されず、その主旨を損なわない限り種々の変型例を包含する。
[実施例1]
繊維は、繊維製品とする場合、基本的には染色するので、実施例1では、染料で染色した木綿繊維製のTシャツについて抗菌性繊維の製造方法を適用した。
<繊維を染色する工程>
水7L(リットル)が入った製品染機ワッシャー(染色浴)に、2/50番手の木綿繊維で製造されたTシャツを浸漬し、よく水を浸透させた。
青色の反応性染料(CI Reactive Blue)0.3%OWFを、40℃の湯に溶解し、溶液をTシャツの入った染色浴に投入し、水を60℃に昇温し、50分間染色した。その後、芒硝(硫酸ナトリウム10水和物)10%OWFを入れて10分間かけて染料をTシャツに定着させた。
染色浴の温度90℃とし、アニオン性界面活性剤(ビスノール(登録商標)AD:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株))の含有量を1質量%として10分間ソーピング処理を行い、残余の染料を除去した。染色浴から取り出したTシャツを20分間水洗して、青色に染色されたTシャツ(200g)を得た。
<第1の処理液の調製と浸漬>
製品染機ワッシャーに水7Lを入れ、第4級アンモニウム塩(粒子吸着助剤:(株)シオンテック、シオールHP:商品名 20質量%水溶液)を第4級アンモニウム塩換算で15%OWF、及び水酸化ナトリウム(アルカリ剤)20質量%を、水酸化ナトリウム換算で3%OWFを投入し、十分に撹拌、混合し、第1の処理液を調製した。第1の処理液にTシャツを浸漬して80℃に昇温し、45分間浸漬した。その後、メッシュ上に配置してTシャツに含まれる第1の処理液を分離し、水洗し、脱水した。
<特定粒子の製造>
漆喰の原料となる消石灰 1kgと、メディアとしての直径1cmのステンレスボールとを湿式粉砕装置(ボールミル)に投入して1時間湿式粉砕し、消石灰の微粉末(特定粒子)を得た。
得られた特定粒子について、粒子径を、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(LS200型 ベックマン・コールター(株))により測定したところ、平均粒子径は0.3μmであり、粒度分布によれば、60体積%の粒子が0.2μm~0.4μmの範囲にあり、粉砕された微粉末には、粒子径3μm以上の粒子は含まれなかった。
<鉱石粒子の製造>
ブラジル産のピンクトルマリン鉱石(アルミニウムを含むケイ酸塩鉱物)を1kg準備した。
鉱石を、ステンレス製の200メッシュのフィルターと、鉱石粉砕用の金属ギアとを備えた粉砕装置に投入し、水を供給しながら粗粉砕を行い、200メッシュのフィルターを通過した鉱石粒子(粒子径:55μm~90μm)を得た。
その後、開口サイズの異なるメッシュのフィルターと金属ギアとを備えた粉砕装置に複数回に分けて粗粉砕された鉱石と水とを供給しながら粉砕し、平均粒子径0.3μm程度となるまで多段階で粉砕した。鉱石粒子の平均粒子径は、特定粒子と同様にして測定した。
平均粒子径が0.3μmとなった鉱石粒子の水分散物(固形分濃度20質量%)に、水分散物の全量に対し、アニオン性界面活性剤を3質量%加えて、鉱石粒子のスラリーを得た。
<第2の処理液の調製と浸漬>
製品染機ワッシャーに水7リットルを入れ、粒子吸着助剤を含む第1の処理液で処理したTシャツを入れた。
消石灰(上記方法で製造した特定粒子:平均粒子径0.3μm)を5質量倍の水に分散させた分散液を消石灰換算で2%OWFの量、酢酸アルミニウム(金属媒染剤)0.5%OWF、キクイモ抽出粉体(イヌリンを含む親水性成分)0.5%OWF、ブラジル産のピンクトルマリン(上記で得た鉱石粒子 平均粒子径0.3μm)3%OWFを十分に撹拌混合し、第2の処理液を調製した。ピンクトルマリンは、上記で得たスラリーを添加して、鉱物粒子の含有量が3%OWFとなる量に調整した。
第2の処理液を、Tシャツの入った製品染機ワッシャーに投入し、80℃に昇温して35分間浸漬処理した。
<乾燥>
その後、Tシャツをメッシュ上に配置してTシャツに含まれる第2の処理液を分離し、10分間水洗し、脱水した。
脱水したTシャツを120℃のタンブラー乾燥機で45分間乾燥して実施例1の抗菌繊維であるTシャツを得た。
<評価:特定粒子の吸着評価>
実施例1で得た抗菌性繊維のTシャツを裁断した試料である綿布について、特定粒子の吸着を評価した。
試料である綿布を光学顕微鏡にて500倍で観察したところ、洗濯前及び10回洗濯後の試料は、いずれも視野角内の全域に亘って、繊維間に特定粒子が吸着していることが確認できた。
<評価:抽出液のpH>
実施例1で得た抗菌性繊維のTシャツを10mm×10mm裁断した綿布を試料として、JIS L1096(2010年)A法に従い、蒸留水を用いて試料を浸漬し、得られた抽出液のpHを測定した。抽出液のpHは7.8であり、pHが中性域(pH:6.0~8.0)であることが確認された。pHの測定結果より、抗菌性繊維には、特定粒子と金属媒染剤とが吸着していることがわかる。
<評価:抗菌性試験>
実施例1で得た抗菌性繊維のTシャツを裁断した試料である綿布に対し、JIS L1902(2015年) 定量試験(菌液吸収法)により抗菌性試験を行った。
標準綿布としては、抗菌性を付与する前のTシャツを裁断した綿布を用いた。
洗濯方法は、JIS L 0217 103号、の試験方法による。
〔洗剤はJAFET標準配合洗剤(本実施例では、TWEEN(登録商標)80:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含む洗剤)を使用した。〕
[抗菌性試験:黄色ぶどう球菌]
生菌数の測定方法:混釈平板培養法
殺菌性試験対象菌体:黄色ぶどう球菌 Staphylococcus aureus NBRC 12732
〔抗菌性の算出方法〕
算出方法:増殖活性値=Mb-Ma
Ma:標準綿布の接種直後の生菌数の常用対数値
Mb:標準綿布の18時間後の生菌数の常用対数値

抗菌活性値=(Mb-Ma)-(Mc-Mo)
Mb:標準綿布の18時間後の生菌数の常用対数値
Ma:標準綿布の接種直後の生菌数の常用対数値
Mc:試験試料の18時間後の生菌数の常用対数値
Mo:試験試料の接種直後の生菌数の常用対数値
標準綿布の試験結果を表1に示す。また、実施例1で得られた抗菌性繊維(綿布)における抗菌性の試験結果を表2に示す。
Figure 2022189518000002

Figure 2022189518000003

表2に明らかなように、実施例1で得た抗菌性繊維(Tシャツを裁断した試料である綿布)は、未処理の綿布に比較して、黄色ぶどう球菌に対して優れた抗菌性を示し、抗菌効果は、繊維を10回洗濯した後も維持されることがわかる。
<評価:消臭性試験>
実施例1で得た抗菌性繊維であるTシャツを裁断した試料(綿布)に対し、消臭性試験を行った。
消臭性試験は、一般社団法人 繊維評価技術協議会 SEKマーク繊維製品認証基準 21.消臭性試験(検知管法、ガスクロマトグラフ法)を適用した。
試験条件は以下の通りである。
-ガス初発濃度- :アンモニア 100ppm
酢酸 30ppm
イソ吉草酸 約30ppm
-試験試料- :検知管法 100cm、ガスクロマトグラフ法 50cm
-測定時間- :2時間

洗濯方法は、一般社団法人 繊維評価技術協議会「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」-標準的洗濯法を適用し、上記抗菌性試験と同様の洗剤を使用した。
結果を表3に示す。
Figure 2022189518000004

表3に明らかなように、実施例1で得た抗菌性繊維Tシャツを裁断した試料である綿布は、アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸に対して、良好な消臭性を示し、洗濯を10回繰り返した後も良好な消臭性が維持されていることがわかった。
<評価:着用試験>
実施例1で得た抗菌性繊維であるTシャツを、モニター5名に6時間連続して着用させ、着用感を評価した。その結果、モニターは全員、Tシャツを着用した感触はソフトで、温かさを感じたと評価した。
この温かさは、第2の処理液に含まれる鉱石粒子の良好な熱伝導率に起因すると考えられる。
[実施例2]
繊維として、シルク布〔(株)シオンテックの工房染めシルク製のタフタ(90cm幅、200g/1m)〕を用いた。
<第1の処理液の調製と浸漬>
10L容量のステンレスの容器に、40℃の温水4Lを入れ、容器に予め40℃の温水に溶解した塩基性アミン入り処理剤(粒子吸着助剤:(株)シオンテック製、カチオノンX:商品名)塩基性アミン換算で5%OWFを入れて撹拌して、第1の処理液を調製した。第1の処理液に、シルク布を浸漬した。第1の処理液からシルク布を引き上げ、水洗し、粒子吸着助剤による処理を行った。
<第2の処理液の調製と浸漬>
10L容量のステンレスの容器に、40℃の温水4リットルを入れ、粒子吸着助剤で処理したシルク製のタフタを入れた。
消石灰(実施例1で得た特定粒子:平均粒子径0.3μm)を5質量倍の水に分散させた分散液を消石灰換算で3%OWFの量、酢酸アルミニウム(金属媒染剤)0.5%OWF、プロピレングルコール(親水性成分)0.3%OWFを十分に撹拌混合し、第2の処理液を調製した。
第2の処理液を、シルク布の入ったステンレス容器に投入し、80℃に昇温して30分間、撹拌しながら浸漬処理した。
<乾燥>
その後、シルク布を別の10L容量のステンレス容器に移し、10分間水洗し、脱水した。
脱水したシルク布を80℃のタンブラー乾燥機で40分間乾燥して実施例2の抗菌繊維であるシルク布(布帛)を得た。
<評価:特定粒子の吸着評価>
実施例2で得た抗菌性繊維であるシルク布について、実施例1と同様にして特定粒子の吸着を評価した。
光学顕微鏡にて500倍で観察したところ、試料であるシルク布については、標準的洗濯法による洗濯前及び10回洗濯後の試料は、いずれも視野角内の全域に亘って、繊維間に特定粒子が吸着していることが確認できた。
<評価:抗菌性試験>
実施例2で得た抗菌性繊維であるシルク布(シルク製のタフタ)に対し、抗菌性試験を行った。
標準綿布としては、抗菌性を付与する前のシルク布(シルク製のタフタ)を裁断した未処理のシルク布を用いた。
その結果、実施例2で得た抗菌性繊維(シルク布)は、未処理のシルク布に比較して、黄色ぶどう球菌に対して優れた抗菌性を示す。また、実施例2で得た抗菌性繊維(シルク布)は、上記標準的洗濯法で洗濯を10回行った後も抗菌性は維持されていた。
[実施例3]
実施例1で用いたのと同じ染色したTシャツ(200g)を用いて抗菌性繊維を製造した。
<第1の処理液の調製と浸漬>
製品染機ワッシャーに水7Lを入れ、染色したTシャツを入れて、水に浸漬した。
第4級アンモニウム塩(粒子吸着助剤:(株)シオンテック、シオールCHP:商品名 20質量%水溶液)を第4級アンモニウム塩換算で10%OWF、及び水酸化ナトリウム(アルカリ剤)20質量%を、水酸化ナトリウム換算で2%OWFを含む水を十分に撹拌、混合し、第1の処理液を調製した。
第1の処理液をTシャツの浸漬された製品染機ワッシャーに投入して80℃に昇温し、Tシャツを45分間浸漬した。その後、ブローして水洗し、脱水した。
<第2の処理液の調製と浸漬>
製品染機ワッシャーに水7リットルを入れ、染色し、第1の処理液で処理したTシャツを入れ、水に浸漬した。
消石灰(上記方法で製造した特定粒子:平均粒子径0.3μm)を5倍量の水に分散させた分散液を消石灰換算で3%OWFの量、硝酸アルミニウム(金属媒染剤)0.5%OWF、プロピレングルコール(親水性成分)0.5%OWFを十分に撹拌混合し、第2の処理液を調製した。
第2の処理液を、Tシャツの入った製品染機ワッシャーに投入し、80℃に昇温し、Tシャツを35分間浸漬処理した。
<乾燥>
第2の処理液で処理したTシャツをメッシュ上に配置してTシャツに含まれる第2の処理液を分離し、10分間水洗し、脱水した。
脱水したTシャツを120℃のタンブラー乾燥機で45分間乾燥して実施例3の抗菌繊維のTシャツを得た。
<評価:特定粒子の吸着評価>
実施例3で得た抗菌性繊維のTシャツを裁断した試料である綿布を、光学顕微鏡にて500倍で観察したところ、試料である綿布の視野角内の全域に亘って、繊維間に特定粒子が吸着していることが確認できた。
抗菌性繊維のTシャツを、後述する条件による標準的洗濯法で10回洗濯し、その後、Tシャツを裁断した試料である綿布を得て、上記と同様に光学顕微鏡にて観察した。洗濯後の試料である綿布についても、顕微鏡の視野角内の全域に亘って、繊維間に特定粒子が吸着していることが確認できた。
<評価:抗菌性試験>
実施例3で得た抗菌性繊維であるTシャツを裁断した試料(綿布)に対し、実施例1と同様にして、抗菌性試験を行った。
標準綿布としては、実施例1と同じ、抗菌性を付与する前のTシャツを裁断した未処理の綿布を用いた。
その結果、実施例3で得た抗菌性繊維Tシャツを裁断した試料である綿布は、未処理の綿布に比較して、黄色ぶどう球菌に対して、実施例1の抗菌性繊維と同等の優れた抗菌性を示す。また、実施例3で得た抗菌性繊維(綿布)は、上記標準的洗濯法で洗濯を10回行った後も抗菌性は維持されていた。
[比較例1]
実施例1で用いたのと同じ染色したTシャツ(200g)を用いて抗菌性繊維を製造した。
<消石灰粒子の製造>
漆喰の原料となる消石灰 1kgを準備した。漆喰の原料として用いられる消石灰の平均粒子径は通常3μm以上である。漆喰の原料としての消石灰に含まれる塊を乳鉢で粉砕して均質化し、消石灰粒子を得た。
得られた消石灰粒子について、平均粒子径を実施例1に記載の方法と同様にして測定したところ、平均粒子径は3μmであった。
実施例1における第2の処理液において、平均粒子径0.3μmの特定粒子に代えて、上記の製造方法で得た平均粒子径3μmの消石灰粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてTシャツを処理した。
<評価:特定粒子の吸着評価>
比較例1で得たTシャツを裁断した試料である綿布を、光学顕微鏡にて500倍で観察したところ、試料である綿布の視野角内において、繊維に吸着した消石灰粒子は確認できなかった。これは、消石灰粒子の粒径が大きいため、金属媒染剤及び粒子吸着助剤を併用しても、繊維に安定に吸着されなかったためと考えられる。
このため、比較例1の試料に対しては、抗菌性の試験を実施しなかった。

Claims (8)

  1. 繊維と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmであり、前記繊維に吸着してなる粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維。
  2. 前記金属媒染剤が、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の抗菌性繊維。
  3. 粒子吸着助剤をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の抗菌性繊維。
  4. グリコール類、トコフェロール、アラニン、リシン、トレハロース、イヌリン、及びオリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性成分をさらに含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の抗菌性繊維。
  5. 前記繊維に吸着してなる平均粒子径が0.1μm~1μmの鉱石粒子をさらに含み、前記鉱石粒子は、鉄、アルミニウム、チタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の抗菌性繊維。
  6. 消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、粒子吸着助剤と、水系溶媒とを含む処理液を調製する工程、
    調製した処理液に繊維を浸漬し、加温する工程、及び、
    繊維を処理液から取り出し、水にて洗浄し、その後、乾燥して抗菌性繊維を得る工程を含む抗菌性繊維の製造方法。
  7. 繊維原料となる樹脂と、消石灰及び珪藻土からなる群より選ばれ、平均粒子径が0.1μm~1μmの粒子と、金属媒染剤と、を含む抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を調製する工程、及び、
    調製した抗菌性繊維紡糸用樹脂組成物を紡糸して、抗菌性繊維を得る工程を含む抗菌性繊維の製造方法。
  8. 前記金属媒染剤が、酢酸アルミニウム、錫酸ナトリウム、硫酸鉄、木酢酸鉄、酢酸銅、及び酢酸クロムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6又は請求項7に記載の抗菌性繊維の製造方法。
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