JP2022187295A - スクロール流体機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】傾斜部を有するスクロール流体機械であってもチップ隙間からの流体漏れを可及的に低減することができるスクロール流体機械を提供する。【解決手段】壁体3b,5bの最内周部に設けられた内周側壁体平坦部3b2,5b2と、端板3a,5aの最内周部に設けられ、内周側壁体平坦部3b2,5b2に対応した内周側端板平坦部3a2と、壁体の高さが連続的に増大する壁体傾斜部3b1,5b1と、壁体傾斜部5b1の歯先に対向する歯底面が壁体傾斜部5b1の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部3a1と、対向する歯底に接触して流体をシールするチップシールと、端板3a,5aの中央に形成されて圧縮された高圧冷媒が流通する吐出ポート3cと、備え、内周側壁体平坦部3b2,5b2および内周側端板平坦部3a2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12の範囲にわたって設けられている。【選択図】図4
Description
本開示は、スクロール流体機械に関するものである。
一般に、端板上に渦巻状の壁体が設けられた固定スクロール部材と旋回スクロール部材とを噛み合わせ、公転旋回運動を行わせて流体を圧縮または膨張するスクロール流体機械が知られている。
このようなスクロール流体機械として、特許文献1に示すようないわゆる段付きスクロール圧縮機が知られている。この段付きスクロール圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールの渦巻状の壁体の歯先面および歯底面の渦巻き方向に沿う位置に各々段部が設けられ、各段部を境に壁体の外周側の高さが内周側の高さよりも高くされている。段付きスクロール圧縮機は、壁体の周方向だけでなく、高さ方向にも圧縮(三次元圧縮)されるため、段部を備えていない一般的なスクロール圧縮機(二次元圧縮)に比べ、押しのけ量を大きくし、圧縮機容量を増加することができる。
しかし、段付きスクロール圧縮機は、段部における流体漏れが発生し、効率低下する場合がある。
これに対して、特許文献2に示されているように、壁体及び端板に設けられた段部に代えて連続的な傾斜部を設けることが提案されている。
特許文献2では、壁体の歯先が傾斜していると計測点の設定が難しく計測精度を上げることが困難となるという問題点に鑑みて、壁体及び端板の最外周部および/または最内周部に平坦部を設けることとし、形状測定を精度良く行うこととしている。そして、壁体平坦部および端板平坦部は、スクロール部材の中心回りに180°以上の領域にわたって設けられていることが開示されている。ただし、平坦部の範囲が180°を大きく超えてしまうと、傾斜部の領域が減少し傾斜部の傾きが大きくなってしまい流体漏れが大きくなるおそれがある。このため、壁体平坦部および端板平坦部は180°の領域とすることが好ましいと記載されている(特許文献2の段落[0018])。
しかし、本発明者等が鋭意検討したところ、スクロール部材の最内周に形成される圧縮室は最も圧力が高くなるため圧力差が大きくなり、歯先(壁体)と歯底(端板)との間の隙間であるチップ隙間からの流体漏れが大きくなる。そして、最内周部に壁体平坦部および端板平坦部を設けたとしても、最内周の圧縮室を形成する領域に傾斜部が存在していると、傾斜部におけるチップ隙間は旋回角度に応じて変化するためチップ隙間が大きくなり流体漏れがさらに増大する。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、傾斜部を有するスクロール流体機械であってもチップ隙間からの流体漏れを可及的に低減することができるスクロール流体機械を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示のスクロール流体機械は、第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材と、向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部と、前記第1壁体および前記第2壁体の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、高さが変化しない壁体平坦部と、前記第1端板および前記第2端板の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、前記壁体平坦部に対応した端板平坦部と、前記壁体平坦部から外周側に向かって前記傾斜部を形成するように前記壁体の高さが連続的に増大する壁体傾斜部と、前記端板平坦部から外周側に向かって前記壁体傾斜部の歯先に対向する歯底面が該壁体傾斜部の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部と、前記壁体平坦部及び前記壁体傾斜部の歯先に形成された溝部に設けられ、対向する歯底に接触して流体をシールするチップシールと、前記第1端板または前記第2端板の中央に形成されて圧縮された高圧流体または外部から導かれた高圧流体が流通する高圧ポートと、備え、前記壁体平坦部および前記端板平坦部は、前記高圧ポートに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室の範囲にわたって設けられている。
チップ隙間からの流体漏れを可及的に低減することができる。
以下に、本開示にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、スクロール圧縮機(スクロール流体機械)1の固定スクロール(第1スクロール部材)3と旋回スクロール(第2スクロール部材)5が示されている。スクロール圧縮機1は、例えば空調機等の冷凍サイクルを行うガス冷媒(流体)を圧縮する圧縮機として用いられる。
図1には、スクロール圧縮機(スクロール流体機械)1の固定スクロール(第1スクロール部材)3と旋回スクロール(第2スクロール部材)5が示されている。スクロール圧縮機1は、例えば空調機等の冷凍サイクルを行うガス冷媒(流体)を圧縮する圧縮機として用いられる。
固定スクロール3及び旋回スクロール5は、アルミ合金製や鉄製等の金属製の圧縮機構とされ、図示しないハウジング内に収容されている。固定スクロール3及び旋回スクロール5は、ハウジング内に導かれた流体を外周側から吸い込み、固定スクロール3の中央の吐出ポート(高圧ポート)3cから外部へと圧縮後の流体を吐出する。
固定スクロール3は、ハウジングに固定されており、略円板形状の端板(第1端板)3aと、端板3aの一側面上に立設された渦巻状の壁体(第1壁体)3bとを備えている。旋回スクロール5は、略円板形状の端板(第2端板)5aと、端板5aの一側面上に立設された渦巻状の壁体(第2壁体)5bとを備えている。各壁体3b,5bの渦巻形状は、例えば、インボリュート曲線やアルキメデス曲線を用いて定義されている。
固定スクロール3と旋回スクロール5は、その中心を旋回半径ρだけ離し、壁体3b,5bの位相を180°ずらして噛み合わされ、両スクロールの壁体3b、5bの歯先と歯底間に常温で僅かな高さ方向のクリアランス(チップクリアランス)を有するように組み付けられている。これにより、両スクロール3,5間に、その端板3a,5aと壁体3b、5bとにより囲まれて形成される複数対の圧縮室がスクロール中心に対して対称に形成される。旋回スクロール5は、図示しないオルダムリング等の自転防止機構によって固定スクロール3の周りを公転旋回運動する。
向かい合う両端板3a,5a間の対向面間距離Lは、渦巻状の壁体3b,5bの外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部が設けられている。
図2に示すように、旋回スクロール5の壁体5bには、内周側から外周側に向かって高さが連続的に増大する壁体傾斜部5b1が設けられている。この壁体傾斜部5b1の歯先が対向する固定スクロール3の歯底面には、壁体傾斜部5b1の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部3a1(図1参照)が設けられている。これら壁体傾斜部5b1及び端板傾斜部3a1によって、連続的な傾斜部が構成されている。同様に、図1に示したように、固定スクロール3の壁体3bにも高さが内周側から外周側に向かって連続的に傾斜する壁体傾斜部3b1が設けられ、この壁体傾斜部3b1の歯先に対向する端板傾斜部5a1が旋回スクロール5の端板5aに設けられている。
なお、本実施形態でいう傾斜部における連続的という意味は、滑らかに接続された傾斜に限定されるものではなく、加工時に不可避的に生じるような小さな段部が階段状に接続されており、傾斜部を全体としてみれば連続的に傾斜しているものも含まれる。ただし、いわゆる段付きスクロールのような大きな段部は含まれない。
図2に示されているように、旋回スクロール5の壁体5bの最内周側と最外周側には、それぞれ、高さが一定とされた内周側壁体平坦部5b2及び外周側壁体平坦部5b3が設けられている。
内周側壁体平坦部5b2は、旋回スクロール5の中心O2(図1参照)側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられている。より具体的には、内周側壁体平坦部5b2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12(図4参照)を規定する範囲にわたって設けられている。第1圧縮室12の外周位置を規定する基準外周位置(壁体傾斜接続部5b4)は、図11Aに示すように、基準外周線L1上に設けられる。基準外周線L1は、壁体5bの渦巻き方向の角度位置を示し、第1圧縮室12の外周位置に一致する。
内周側壁体平坦部5b2は、旋回スクロール5の中心O2(図1参照)側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられている。より具体的には、内周側壁体平坦部5b2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12(図4参照)を規定する範囲にわたって設けられている。第1圧縮室12の外周位置を規定する基準外周位置(壁体傾斜接続部5b4)は、図11Aに示すように、基準外周線L1上に設けられる。基準外周線L1は、壁体5bの渦巻き方向の角度位置を示し、第1圧縮室12の外周位置に一致する。
図2に示すように、外周側壁体平坦部5b3は、旋回スクロール5の最外周端5b6から内周側に180°の領域にわたって設けられている。ただし、180°を超えていても良いし、180°未満であっても良い。また、外周側壁体平坦部5b3は省略して壁体傾斜部5b1を最外周端まで形成しても良い。
壁体平坦部5b2,5b3と壁体傾斜部5b1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる壁体傾斜接続部5b4,5b5が設けられている。内周側の壁体傾斜接続部5b4は、図11Aに示すように、基準外周線L1上に設けられている。
壁体平坦部5b2,5b3と壁体傾斜部5b1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる壁体傾斜接続部5b4,5b5が設けられている。内周側の壁体傾斜接続部5b4は、図11Aに示すように、基準外周線L1上に設けられている。
図2に示すように、旋回スクロール5の端板5aの歯底についても同様に、高さが一定とされた内周側端板平坦部5a2及び外周側端板平坦部5a3が設けられている。内周側端板平坦部5a2は、旋回スクロール5の中心O2(図1参照)側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられている。より具体的には、内周側端板平坦部5a2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12(図4参照)を規定する範囲にわたって設けられている。第1圧縮室12の外周位置を規定する基準外周位置(端板傾斜接続部5a4)は、図11Aに示すように、基準外周線L2上に設けられる。基準外周線L2は、渦巻き方向の角度位置を示し、第1圧縮室12の外周位置に一致する。
図2に示すように、外周側端板平坦部5a3は、旋回スクロール5の中心まわりに180°の領域にわたって180°の領域にわたって設けられている。
端板平坦部5a2,5a3と端板傾斜部5a1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる端板傾斜接続部5a4,5a5が設けられている。内周側の端板傾斜接続部5a4は、図11Aに示すように、基準外周線L2上に設けられている。なお、端板傾斜接続部5a4は、図11Aのように平面視すると半円となっており、この半円の両端が基準外周線L2に一致するように設けられている。
端板平坦部5a2,5a3と端板傾斜部5a1とが接続される位置には、それぞれ、屈曲部となる端板傾斜接続部5a4,5a5が設けられている。内周側の端板傾斜接続部5a4は、図11Aに示すように、基準外周線L2上に設けられている。なお、端板傾斜接続部5a4は、図11Aのように平面視すると半円となっており、この半円の両端が基準外周線L2に一致するように設けられている。
図3に示すように、固定スクロール3についても、旋回スクロール5と同様に、内周側壁体平坦部3b2及び外周側壁体平坦部3b3が設けられている。内周側壁体平坦部3b2は、固定スクロール3の中心O1(図1参照)側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられている。より具体的には、内周側壁体平坦部3b2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12(図4参照)を規定する範囲にわたって設けられている。内周側壁体平坦部3b2と壁体傾斜部3b1とが接続される位置には、屈曲部となる壁体傾斜接続部3b4が設けられている。内周側壁体平坦部3b2の外周位置となる壁体傾斜接続部3b4は、図11Aに示すように、第1圧縮室12の外周位置を規定する基準外周位置を通る基準外周線L2上に設けられている。
図3に示すように、固定スクロール3の端板3aの歯底についても同様に、高さが一定とされた内周側端板平坦部3a2及び外周側端板平坦部3a3が設けられている。内周側端板平坦部3a2は、固定スクロール3の中心O1(図1参照)側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられている。より具体的には、内周側端板平坦部3a2は、吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12(図4参照)を規定する範囲にわたって設けられている。内周側端板平坦部3a2と端板傾斜部3a1とが接続される位置には、屈曲部となる端板傾斜接続部3a4が設けられている。内周側端板平坦部3a2の外周位置となる端板傾斜接続部3a4は、図11Aに示すように、第1圧縮室12の外周位置を規定する基準外周位置を通る基準外周線L1上に設けられている。なお、端板傾斜接続部3a4は、図11Aのように平面視すると半円となっており、この半円の両端が基準外周線L1に一致するように設けられている。
図3に示すように、固定スクロール3の端板3aには、インジェクションポート10が2箇所設けられている。インジェクションポート10は、端板3aを厚さ方向に貫通する貫通孔とされており、図示しない凝縮器を通過した後の冷媒が導かれる。各インジェクションポート10は、互いに正対する位置に設けられている。インジェクションポート10は、吐出ポート3cに連通するタイミングで形成される第1圧縮室の外周側に位置する第2圧縮室に開口する位置に形成される。
図4には、図3に示した固定スクロール3に対して図2に示した旋回スクロール5を重ねて噛み合わせた状態が示されている。同図から分かるように、吐出ポート3cに連通するタイミング、より具体的には吐出ポート3cに連通する直前のタイミングで形成される第1圧縮室12は、固定スクロール3の内周側端板平坦部3a2及び内周側壁体平坦部3b2と、旋回スクロール5の内周側端板平坦部5a2及び内周側壁体平坦部5b2とによって画成されている。すなわち、第1圧縮室12は、平坦部3a2,3b2,5a2,5b2のみによって密閉された状態で規定されており、第1圧縮室12内には傾斜部が形成されていない。これは、第1圧縮室12内に、内周側端板平坦部3a2と端板傾斜部3a1とが接続される端板傾斜接続部3a4と、内周側端板平坦部5a2と端板傾斜部5a1とが接続される端板傾斜接続部5a4が設けられていないことから理解できる。なお、第1圧縮室12は、スクロール3,5の中心O1,O2を挟んで対称に正対して2つ(1対)設けられている。
図4には、第1圧縮室12の外周側に位置する第2圧縮室14に、インジェクションポート10が開口していることが示されている。第2圧縮室14は、スクロール3,5の中心O1,O2を挟んで対称に正対して2つ(1対)設けられている。
図5には、渦巻き方向に伸ばして表示した壁体3b,5bが示されている。同図に示されているように、内周側壁体平坦部3b2,5b2が距離D2にわたって設けられ、外周側壁体平坦部3b3,5b3が距離D3にわたって設けられている。距離D2は、各スクロール3,5の中心O1,O2まわりに360°以上とされた領域に相当する長さとなっている。距離D3は、各スクロール3,5の中心O1,O2まわりに180°とされた領域に相当する長さとなっている。内周側壁体平坦部3b2,5b2と外周側壁体平坦部3b3,5b3との間に、壁体傾斜部3b1,5b1が距離D1にわたって設けられている。内周側壁体平坦部3b2,5b2と外周側壁体平坦部3b3,5b3との高低差をhとすると、壁体傾斜部3b1,5b1の傾きφは下式とされる。
φ=tan-1(h/D1) ・・・(1)
このように、傾斜部における傾きφは、渦巻状の壁体3b,5bが延在する周方向に対して一定とされている。距離D1は、距離D2よりも長く、また、距離D3よりも長い。
例えば、本実施形態において、スクロール3,5の諸元は以下の通りである。
(1)旋回半径ρ[mm]: 2以上15以下、好ましくは3以上10以下
(2)壁体3b、5bの巻数:
1.5以上4.5以下、好ましくは2.0以上3.5以下
(3)高低差h[mm]: 2以上20以下、好ましくは5以上15以下
(4)h/Lout(最外周側の壁体高さ):
0.05以上0.35以下、好ましくは0.1以上0.25以下
(5)傾斜部の角度範囲(距離D1に相当する角度範囲)[°]:
180以上1080以下、好ましくは360以上720以下
(6)傾斜部の傾きφ[°]: 0.2以上4以下、好ましくは0.5以上2.5以下
φ=tan-1(h/D1) ・・・(1)
このように、傾斜部における傾きφは、渦巻状の壁体3b,5bが延在する周方向に対して一定とされている。距離D1は、距離D2よりも長く、また、距離D3よりも長い。
例えば、本実施形態において、スクロール3,5の諸元は以下の通りである。
(1)旋回半径ρ[mm]: 2以上15以下、好ましくは3以上10以下
(2)壁体3b、5bの巻数:
1.5以上4.5以下、好ましくは2.0以上3.5以下
(3)高低差h[mm]: 2以上20以下、好ましくは5以上15以下
(4)h/Lout(最外周側の壁体高さ):
0.05以上0.35以下、好ましくは0.1以上0.25以下
(5)傾斜部の角度範囲(距離D1に相当する角度範囲)[°]:
180以上1080以下、好ましくは360以上720以下
(6)傾斜部の傾きφ[°]: 0.2以上4以下、好ましくは0.5以上2.5以下
図6には、図4の符号Zで示した領域の拡大図が示されている。図6に示されているように、固定スクロール3の壁体3bの歯先には、チップシール7が設けられている。チップシール7は樹脂製とされており、対向する旋回スクロール5の端板5aの歯底に接触して流体をシールする。チップシール7は、壁体3bの歯先に周方向にわたって形成されたチップシール溝3d内に収容されている。このチップシール溝3d内に圧縮流体が入り込み、チップシール7を背面から押圧して歯底側に押し出すことで対向する歯底に接触させるようになっている。なお、旋回スクロール5の壁体5bの歯先に対しても、同様にチップシールが設けられている。
図7A及び図7Bに示すように、壁体3bの高さ方向におけるチップシール7の高さHcは、周方向に一定とされている。
両スクロール3,5が相対的に公転旋回運動を行うと、旋回直径(旋回半径ρ×2)分だけ歯先と歯底の位置が相対的にずれる。この歯先と歯底の位置ずれに起因して、傾斜部では、歯先と歯底との間のチップクリアランスが変化する。チップクリアランス変化量Δh[mm]は、例えば、0.05以上1.0以下、好ましくは0.1以上0.6以下とされる。例えば、図7AではチップクリアランスTが小さく、例えば図8Aの実線に示した状態となる。一方、旋回が進み図7Bの状態になるとチップクリアランスTが大きくなり、例えば図8Bの破線に示した状態となる。チップシール7は、このチップクリアランスTが旋回運動によって変化しても、図8Aの太矢印で示すように、背面から圧縮流体によって端板5aの歯底側に押圧されるので、追従してシールできるようになっている。
両スクロール3,5が相対的に公転旋回運動を行うと、旋回直径(旋回半径ρ×2)分だけ歯先と歯底の位置が相対的にずれる。この歯先と歯底の位置ずれに起因して、傾斜部では、歯先と歯底との間のチップクリアランスが変化する。チップクリアランス変化量Δh[mm]は、例えば、0.05以上1.0以下、好ましくは0.1以上0.6以下とされる。例えば、図7AではチップクリアランスTが小さく、例えば図8Aの実線に示した状態となる。一方、旋回が進み図7Bの状態になるとチップクリアランスTが大きくなり、例えば図8Bの破線に示した状態となる。チップシール7は、このチップクリアランスTが旋回運動によって変化しても、図8Aの太矢印で示すように、背面から圧縮流体によって端板5aの歯底側に押圧されるので、追従してシールできるようになっている。
一方で、第1圧縮室12(図4参照)には傾斜部が設けられていないので、図8Aのようにチップクリアランスが旋回角度に応じて変化することはない。具体的には、図8Bに示したように、チップクリアランスを一定に維持したままで旋回スクロール5の旋回が行われる。これにより、第1圧縮室12では他の圧縮室に比べてチップ隙間からの流体漏れを可及的に小さくできる。
上述したスクロール圧縮機1は、以下のように動作する。
図示しない電動モータ等の駆動源によって、旋回スクロール5が固定スクロール3回りに公転旋回運動を行う。これにより、各スクロール3,5の外周側から流体を吸い込み、各壁体3b,5b及び各端板3a,5aによって囲まれた圧縮室に流体を取り込む。圧縮室内の流体は外周側から内周側に移動するに従い順次圧縮され、最終的に固定スクロール3に形成された吐出ポート3cから圧縮流体が吐出される。流体が圧縮される際に、端板傾斜部3a1,5a1及び壁体傾斜部3b1,5b1によって形成された傾斜部では壁体3b,5bの高さ方向にも圧縮されて、三次元圧縮が行われる。
図示しない電動モータ等の駆動源によって、旋回スクロール5が固定スクロール3回りに公転旋回運動を行う。これにより、各スクロール3,5の外周側から流体を吸い込み、各壁体3b,5b及び各端板3a,5aによって囲まれた圧縮室に流体を取り込む。圧縮室内の流体は外周側から内周側に移動するに従い順次圧縮され、最終的に固定スクロール3に形成された吐出ポート3cから圧縮流体が吐出される。流体が圧縮される際に、端板傾斜部3a1,5a1及び壁体傾斜部3b1,5b1によって形成された傾斜部では壁体3b,5bの高さ方向にも圧縮されて、三次元圧縮が行われる。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
チップシール7を設けた上で、壁体3b,5b及び端板3a,5aの最内周部に平坦部3a2,3b2,5a2,5b2を設けることとし、内周側壁体平坦部3b2,5b2および内周側端板平坦部3a2,5a2を吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12の範囲にわたって設けることとした。
内周側壁体平坦部3b2,5b2と内周側端板平坦部3a2,5a2との間では、傾斜部とは異なり、旋回角に応じてチップクリアランスTが変化することはなく、傾斜部に比べて漏れが少ない。したがって、吐出ポートに連通するタイミングで形成される最内周の第1圧縮室12すなわち最も高圧となる圧縮室から高圧冷媒がチップ隙間を介して外周側に位置する他の圧縮室に漏れ出すことを抑制することができ、効率向上を図ることができる。
チップシール7を設けた上で、壁体3b,5b及び端板3a,5aの最内周部に平坦部3a2,3b2,5a2,5b2を設けることとし、内周側壁体平坦部3b2,5b2および内周側端板平坦部3a2,5a2を吐出ポート3cに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室12の範囲にわたって設けることとした。
内周側壁体平坦部3b2,5b2と内周側端板平坦部3a2,5a2との間では、傾斜部とは異なり、旋回角に応じてチップクリアランスTが変化することはなく、傾斜部に比べて漏れが少ない。したがって、吐出ポートに連通するタイミングで形成される最内周の第1圧縮室12すなわち最も高圧となる圧縮室から高圧冷媒がチップ隙間を介して外周側に位置する他の圧縮室に漏れ出すことを抑制することができ、効率向上を図ることができる。
図9には、上述の効果が示されている。同図において横軸は旋回スクロール5の旋回角、縦軸は筒内圧である。筒内圧は、閉じられた圧縮室内の圧力を意味する。
同図において、破線はチップ隙間で漏れが生じない理想的とされた比較例1の圧縮過程を示す。一点鎖線は、第1圧縮室12まで傾斜部が設けられている比較例2を示す。実線は、本実施形態のように第1圧縮室12が平坦部3a2,3b2,5a2,5b2のみによって形成されている場合である。
同図から分かるように、比較例2では、第1圧縮室12における漏れが比較的大きいので、旋回角が比較例1や本実施形態から進んだ後に最高筒内圧に到達する。本実施形態では、チップ隙間漏れがない比較例1よりは旋回角が進んだ後に最高筒内圧に到達するが、比較例2よりも第1圧縮室12でのチップ隙間漏れが少ないので比較例2よりも早い旋回角で最高筒内圧に到達することができる。
同図において、破線はチップ隙間で漏れが生じない理想的とされた比較例1の圧縮過程を示す。一点鎖線は、第1圧縮室12まで傾斜部が設けられている比較例2を示す。実線は、本実施形態のように第1圧縮室12が平坦部3a2,3b2,5a2,5b2のみによって形成されている場合である。
同図から分かるように、比較例2では、第1圧縮室12における漏れが比較的大きいので、旋回角が比較例1や本実施形態から進んだ後に最高筒内圧に到達する。本実施形態では、チップ隙間漏れがない比較例1よりは旋回角が進んだ後に最高筒内圧に到達するが、比較例2よりも第1圧縮室12でのチップ隙間漏れが少ないので比較例2よりも早い旋回角で最高筒内圧に到達することができる。
最内周の第1圧縮室12の外周側に位置する第2圧縮室14が形成されるように壁体3b,5bの巻数が規定される。第1圧縮室12の外周側に閉じた圧縮空間となる第2圧縮室14が形成されるので、仮に第1圧縮室12から第2圧縮室14に流体が漏れたとしてもスクロール圧縮機1の外側(吸入側)まで流出することがないので、効率低下を抑制することができる。
第2圧縮室14が閉じた空間とされているので、インジェクションポート10から流体を供給することによってインジェクションの効果を有効に実現することができる。
なお、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2が形成される領域を図11Bや図11Cのように変形することができる。
図11Bに示すように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を、図11Aに示した基準外周線L1,L2上の基準外周位置よりも渦巻き方向の内周側に設けても良い。具体的には、基準外周線L1,L2よりも渦巻き方向の内周側に90°(-90°)端板3a,5aの中心回りに回転させた基準外周線L1’,L2’上に平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を設けてもよい。これにより、第1圧縮室12の範囲に傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の一部が形成されることになり、第1圧縮室12に存在する傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1によって流体漏れの発生のおそれが生じる。しかし、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の内周側における開始位置が基準外周位置よりも内周側に設けられることになるので、同じ傾斜高さ(図5の高低差hに相当)を得ようとした場合、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1全体の渦巻き方向の寸法を大きくすることができる。傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の渦巻き方向の寸法を大きくすることによって傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の傾きφを小さくできるので、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の漏れを抑制することができる。このように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を基準外周位置に設けた図11Aに比べて、第1圧縮室12の流体漏れを増大させてしまうが、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の漏れを減少させることができる。そこで、平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置の下限を基準外周位置の渦巻き方向の内周側に90°とすることが好ましい。
図11Bに示すように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を、図11Aに示した基準外周線L1,L2上の基準外周位置よりも渦巻き方向の内周側に設けても良い。具体的には、基準外周線L1,L2よりも渦巻き方向の内周側に90°(-90°)端板3a,5aの中心回りに回転させた基準外周線L1’,L2’上に平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を設けてもよい。これにより、第1圧縮室12の範囲に傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の一部が形成されることになり、第1圧縮室12に存在する傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1によって流体漏れの発生のおそれが生じる。しかし、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の内周側における開始位置が基準外周位置よりも内周側に設けられることになるので、同じ傾斜高さ(図5の高低差hに相当)を得ようとした場合、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1全体の渦巻き方向の寸法を大きくすることができる。傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の渦巻き方向の寸法を大きくすることによって傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の傾きφを小さくできるので、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の漏れを抑制することができる。このように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を基準外周位置に設けた図11Aに比べて、第1圧縮室12の流体漏れを増大させてしまうが、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の漏れを減少させることができる。そこで、平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置の下限を基準外周位置の渦巻き方向の内周側に90°とすることが好ましい。
図11Cに示すように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を、図11Aに示した基準外周線L1,L2上の基準外周位置よりも渦巻き方向の外周側に設けても良い。具体的には、基準外周線L1,L2よりも渦巻き方向の外周側に90°(+90°)端板3a,5aの中心回りに回転させた基準外周線L1”,L2”上に平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を設けてもよい。これにより、第1圧縮室12の範囲に傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1が存在しないので、第1圧縮室12からの流体漏れを抑制することができる。しかし、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の内周側における開始位置を基準外周位置よりも外周側に設けることによって、同じ傾斜高さ(図5の高低差hに相当)を得ようとした場合、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1全体の渦巻き方向の寸法が小さくなってしまう。傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の渦巻き方向の寸法が小さくなると傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の傾きφが大きくなるので、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の流体漏れの発生が増大するおそれがある。このように、最内周の平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置を基準外周位置よりも内周側に設けた図11Bに比べて、傾斜部3a1,3b1,5a1,5b1の漏れを増大させてしまうが、第1圧縮室12の流体漏れが減少させることができる。そこで、平坦部3a2,3b2,5a2,5b2の外周位置の上限を基準外周位置の渦巻き方向の外周側に90°とすることが好ましい。
また、本実施形態では、端板傾斜部3a1,5a1及び壁体傾斜部3b1,5b1を両スクロール3,5に設けることとしたが、いずれか一方に設けても良い。
具体的には、図10Aに示すように、一方の壁体(例えば旋回スクロール5)に壁体傾斜部5b1を設け、他方の端板3aに端板傾斜部3a1を設けた場合には、他方の壁体と一方の端板5aは平坦としても良い。
また、図10Bに示すように、従来の段付き形状と組み合わせた形状、すなわち、固定スクロール3の端板3aに端板傾斜部3a1を設ける一方で、旋回スクロール5の端板5aに段部が設けられた形状と組み合わせても良い。
具体的には、図10Aに示すように、一方の壁体(例えば旋回スクロール5)に壁体傾斜部5b1を設け、他方の端板3aに端板傾斜部3a1を設けた場合には、他方の壁体と一方の端板5aは平坦としても良い。
また、図10Bに示すように、従来の段付き形状と組み合わせた形状、すなわち、固定スクロール3の端板3aに端板傾斜部3a1を設ける一方で、旋回スクロール5の端板5aに段部が設けられた形状と組み合わせても良い。
本実施形態では、スクロール圧縮機として説明したが、膨張機として用いるスクロール膨張機に対しても本開示を適用することができる。
以上説明した各実施形態に記載のスクロール流体機械は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係るスクロール流体機械(1)は、第1端板(3a)上に渦巻状の第1壁体(3b)が設けられた第1スクロール部材(3)と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板(5a)上に渦巻状の第2壁体(5b)が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材(5)と、向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部(3a1,5a1)と、前記第1壁体および前記第2壁体の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、高さが変化しない壁体平坦部(3b2,5b2)と、前記第1端板および前記第2端板の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、前記壁体平坦部に対応した端板平坦部(3a2,5a2)と、前記壁体平坦部から外周側に向かって前記傾斜部を形成するように前記壁体の高さが連続的に増大する壁体傾斜部(3b1,5b1)と、前記端板平坦部から外周側に向かって前記壁体傾斜部の歯先に対向する歯底面が該壁体傾斜部の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部(3a1,5a1)と、前記壁体平坦部及び前記壁体傾斜部の歯先に形成された溝部に設けられ、対向する歯底に接触して流体をシールするチップシール(7)と、前記第1端板または前記第2端板の中央に形成されて圧縮された高圧流体または外部から導かれた高圧流体が流通する高圧ポート(3c)と、備え、前記壁体平坦部および前記端板平坦部は、前記高圧ポート側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられ、前記外周位置は、前記高圧ポートに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室(12)の範囲を規定する外周位置を基準外周位置とした場合に、前記基準外周位置から前記第1壁体及び前記第2壁体の渦巻き方向の内周側に90°から外周側に90°までの範囲に設けられている。
本開示の一態様に係るスクロール流体機械(1)は、第1端板(3a)上に渦巻状の第1壁体(3b)が設けられた第1スクロール部材(3)と、前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板(5a)上に渦巻状の第2壁体(5b)が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材(5)と、向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部(3a1,5a1)と、前記第1壁体および前記第2壁体の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、高さが変化しない壁体平坦部(3b2,5b2)と、前記第1端板および前記第2端板の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、前記壁体平坦部に対応した端板平坦部(3a2,5a2)と、前記壁体平坦部から外周側に向かって前記傾斜部を形成するように前記壁体の高さが連続的に増大する壁体傾斜部(3b1,5b1)と、前記端板平坦部から外周側に向かって前記壁体傾斜部の歯先に対向する歯底面が該壁体傾斜部の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部(3a1,5a1)と、前記壁体平坦部及び前記壁体傾斜部の歯先に形成された溝部に設けられ、対向する歯底に接触して流体をシールするチップシール(7)と、前記第1端板または前記第2端板の中央に形成されて圧縮された高圧流体または外部から導かれた高圧流体が流通する高圧ポート(3c)と、備え、前記壁体平坦部および前記端板平坦部は、前記高圧ポート側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられ、前記外周位置は、前記高圧ポートに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室(12)の範囲を規定する外周位置を基準外周位置とした場合に、前記基準外周位置から前記第1壁体及び前記第2壁体の渦巻き方向の内周側に90°から外周側に90°までの範囲に設けられている。
第1端板と第2端板との対向面間距離が壁体の外周側から内周側に向かって連続的に減少する傾斜部が設けられているので、外周側から吸い込まれた流体は内周側に向かうにしたがい、壁体の渦巻形状に応じた圧縮室の減少によって圧縮されるだけでなく、端板間の対向面間距離の減少によって更に圧縮されることになる。これにより、三次元圧縮が可能となり、小型化を実現することができる。
傾斜部が連続的に減少するようになっており、従来の壁体及び歯底に段部が設けられた段付きスクロール流体機械に比べて、流体漏れを少なくすることができる。
傾斜部が連続的に減少するようになっており、従来の壁体及び歯底に段部が設けられた段付きスクロール流体機械に比べて、流体漏れを少なくすることができる。
連続的な傾斜部とは、滑らかに接続された傾斜部に限定されるものではなく、小さな段差が階段状に接続されており、傾斜部を全体としてみれば連続的に傾斜しているものも含まれる。
壁体の高さが内周側から外周側に向かって増大する壁体傾斜部と、この壁体傾斜部の歯先に対向する歯底面が壁体傾斜部の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部とを設けることで、端板間の対向面間距離が外周側から内周側に向かって減少する傾斜部を形成することができる。
壁体傾斜部および端板傾斜部は、第1スクロールおよび第2スクロールに設けても良いし、いずれか一方に設けても良い。一方の壁体に壁体傾斜部を設け、他方の端板に端板傾斜部を設けた場合には、他方の壁体と一方の端板は平坦としても良いし、従来の段付き形状と組み合わせた形状としても良い。
傾斜部は、両スクロール部材が相対的に公転旋回運動を行うと、旋回直径(旋回半径×2)分だけ歯先と歯底の位置がずれる。この歯先と歯底の位置ずれに起因して歯先と歯底との間の隙間(チップクリアランス)が変化する。このチップクリアランスの変化の影響によるも流体漏れを抑制するために、傾斜部に対応する各壁体の歯先にチップシールが設けられている。
チップシールを設けた上で、壁体及び端板の最内周部に平坦部を高圧ポート側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けることとした。平坦部の外周位置は、壁体平坦部および端板平坦部を高圧ポートに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室の範囲を規定する外周位置を基準外周位置とした場合に、基準外周位置から第1壁体及び第2壁体の渦巻き方向の内周側に90°から外周側に90°までの範囲に設けられている。なお、本開示において「圧縮室が形成される」とは両スクロール部材によって閉じられた圧縮空間が形成されることを意味する。
壁体平坦部と端板平坦部との間では、傾斜部とは異なり、旋回角に応じてチップクリアランスが変化することはなく、傾斜部に比べて漏れが少ない。したがって、平坦部の外周位置を基準外周位置に一致させれば、高圧ポートに連通するタイミングで形成される最内周の第1圧縮室すなわち最も高圧となる圧縮室から高圧流体がチップ隙間を介して外周側に位置する他の圧縮室に漏れ出すことを抑制することができ、効率向上を図ることができる。
平坦部の外周位置を基準外周位置の渦巻き方向の内周側に設けた場合は、第1圧縮室の範囲に傾斜部の一部が形成されることになる。したがって、第1圧縮室に存在する傾斜部によって流体漏れの発生のおそれがある。しかし、傾斜部の内周側における開始位置を基準外周位置よりも内周側に設けることによって、同じ傾斜高さを得ようとした場合、傾斜部全体の渦巻き方向の寸法を大きくすることができる。傾斜部の渦巻き方向の寸法を大きくすることによって傾斜部の傾きを小さくできるので、傾斜部の漏れを抑制することができる。そこで、平坦部の外周位置の下限を基準外周位置の渦巻き方向の内周側に90°とした。
平坦部の外周位置を基準外周位置の渦巻き方向の外周側に90°の範囲で設けた場合は、第1圧縮室の範囲に傾斜部が存在しないので、第1圧縮室からの流体漏れを抑制することができる。しかし、傾斜部の内周側における開始位置を基準外周位置よりも外周側に設けることによって、同じ傾斜高さを得ようとした場合、傾斜部全体の渦巻き方向の寸法が小さくなってしまう。傾斜部の渦巻き方向の寸法が小さくなると傾斜部の傾きが大きくなるので、傾斜部の流体漏れの発生が増大するおそれがある。そこで、平坦部の外周位置の上限を基準外周位置の渦巻き方向の外周側に90°とした。
本開示の一態様に係るスクロール流体機械では、前記高圧ポートに連通するタイミングで形成される前記第1圧縮室の外周側に位置する第2圧縮室(14)が形成される。
最内周の第1圧縮室の外周側に位置する第2圧縮室が形成されるように第1壁体および第2壁体の巻数が規定される。第1圧縮室の外周側に閉じた圧縮空間となる第2圧縮室が形成されるので、仮に第1圧縮室から第2圧縮室に流体が漏れたとしてもスクロール流体機械の外側まで流出することがないので、効率低下を抑制することができる。
また、本開示の一態様に係るスクロール流体機械では、前記第2圧縮室内に流体を供給するインジェクションポート(10)が設けられている。
第2圧縮室が閉じた空間とされているので、インジェクションポートから流体を供給することによってインジェクションの効果が有効に実現することになる。インジェクションポートを設けたスクロール流体機械は、冷凍サイクルにおいて冷媒を圧縮する圧縮機として好適に用いられ、凝縮器を通過した後の冷媒が導かれる。
1 スクロール圧縮機(スクロール流体機械)
3 固定スクロール(第1スクロール部材)
3a 端板(第1端板)
3a1 端板傾斜部
3a2 内周側端板平坦部
3a3 外周側端板平坦部
3a4 端板傾斜接続部
3b 壁体(第1壁体)
3b1 壁体傾斜部
3b2 内周側壁体平坦部
3b3 外周側壁体平坦部
3b4 壁体傾斜接続部
3c 吐出ポート(高圧ポート)
3d チップシール溝
5 旋回スクロール(第2スクロール部材)
5a 端板(第2端板)
5a1 端板傾斜部
5a2 内周側端板平坦部
5a3 外周側端板平坦部
5a4 端板傾斜接続部
5b 壁体(第2壁体)
5b1 壁体傾斜部
5b2 内周側壁体平坦部
5b3 外周側壁体平坦部
5b4 壁体傾斜接続部
5b6 最外周端
7 チップシール
10 インジェクションポート
12 第1圧縮室
L 対向面間距離
L1,L2 基準外周線
T チップクリアランス
φ 傾き
3 固定スクロール(第1スクロール部材)
3a 端板(第1端板)
3a1 端板傾斜部
3a2 内周側端板平坦部
3a3 外周側端板平坦部
3a4 端板傾斜接続部
3b 壁体(第1壁体)
3b1 壁体傾斜部
3b2 内周側壁体平坦部
3b3 外周側壁体平坦部
3b4 壁体傾斜接続部
3c 吐出ポート(高圧ポート)
3d チップシール溝
5 旋回スクロール(第2スクロール部材)
5a 端板(第2端板)
5a1 端板傾斜部
5a2 内周側端板平坦部
5a3 外周側端板平坦部
5a4 端板傾斜接続部
5b 壁体(第2壁体)
5b1 壁体傾斜部
5b2 内周側壁体平坦部
5b3 外周側壁体平坦部
5b4 壁体傾斜接続部
5b6 最外周端
7 チップシール
10 インジェクションポート
12 第1圧縮室
L 対向面間距離
L1,L2 基準外周線
T チップクリアランス
φ 傾き
Claims (3)
- 第1端板上に渦巻状の第1壁体が設けられた第1スクロール部材と、
前記第1端板に向かい合うように配置された第2端板上に渦巻状の第2壁体が設けられ、該第2壁体が前記第1壁体と噛み合って相対的に公転旋回運動を行う第2スクロール部材と、
向かい合う前記第1端板と前記第2端板との対向面間距離が、前記第1壁体及び前記第2壁体の外周側から内周側に向かって、連続的に減少する傾斜部と、
前記第1壁体および前記第2壁体の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、高さが変化しない壁体平坦部と、
前記第1端板および前記第2端板の少なくともいずれか一方の最内周部に設けられ、前記壁体平坦部に対応した端板平坦部と、
前記壁体平坦部から外周側に向かって前記傾斜部を形成するように前記壁体の高さが連続的に増大する壁体傾斜部と、
前記端板平坦部から外周側に向かって前記壁体傾斜部の歯先に対向する歯底面が該壁体傾斜部の傾斜に応じて傾斜する端板傾斜部と、
前記壁体平坦部及び前記壁体傾斜部の歯先に形成された溝部に設けられ、対向する歯底に接触して流体をシールするチップシールと、
前記第1端板または前記第2端板の中央に形成されて圧縮された高圧流体または外部から導かれた高圧流体が流通する高圧ポートと、
を備え、
前記壁体平坦部および前記端板平坦部は、前記高圧ポート側の最内周位置から外周位置までの範囲にわたって設けられ、
前記外周位置は、前記高圧ポートに連通するタイミングで最内周に形成される第1圧縮室の範囲を規定する外周位置を基準外周位置とした場合に、前記基準外周位置から前記第1壁体及び前記第2壁体の渦巻き方向の内周側に90°から外周側に90°までの範囲に設けられているスクロール流体機械。 - 前記高圧ポートに連通するタイミングで形成される前記第1圧縮室の外周側に位置する第2圧縮室が形成される請求項1に記載のスクロール流体機械。
- 前記第2圧縮室内に流体を供給するインジェクションポートが設けられている請求項2に記載のスクロール流体機械。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A625 | Written request for application examination (by other person) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A625 Effective date: 20240527 |