JP2022185978A - 表面改質無機酸化物粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヘキサメチルジシラザンに依存することなく、高い疎水性と流動性をともに発揮できる粉体を提供する。【解決手段】無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積で除した値が1.2~2.4%であり、(2)疎水率が80%以上であり、(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、ことを特徴とする表面改質無機酸化物粉末に係る【選択図】なし
Description
本発明は、表面改質無機酸化物粉末及びその製造方法に関する。
微細なシリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粉末の表面を有機物によって処理することにより、当該粉末表面の帯電性、疎水性等を改質することができる。このようにして得られた表面改質無機酸化物粉末は、例えば複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ等を含む電子写真に用いられるトナーの流動性改善剤、帯電性調整剤等として広く用いられている。このようなトナー用途に用いられる表面改質無機酸化物粉末は、いわゆる外添剤として知られているものである。
このような用途に用いられる無機酸化物粉末の表面処理剤としては、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等の有機ケイ素化合物が用いられている。これらの有機ケイ素化合物による表面処理により、例えばシリカ微粒子表面のシラノール基を有機基で置換して疎水化処理を施すことができる。これらの有機ケイ素化合物のうち、ヘキサメチルジシラザンが、十分な疎水性を示し、かつ、表面エネルギーが低いことから、トナー等に高い流動性と疎水性とを付与できる疎水化処理剤として知られている(特許文献1、特許文献2など)。
しかしながら、昨今においては、ヘキサメチルジシラザンの安全性が危惧される状況が生じており、これに代わる材料に置き換える要請が高まりつつある。これに関し、高い疎水性を付与できる表面処理剤の代表例としてシリコーンオイルがある。ところが、表面処理剤としてシリコーンオイルを用いた場合、流動性が極端に低下する場合があり、その点においてさらなる改善の余地がある。
従って、本発明の主な目的は、ヘキサメチルジシラザンに依存することなく、高い疎水性と流動性をともに発揮できる粉体を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、シリコーンオイルとして特定のシリコーンオイルを特定の固定化率で無機酸化物粉末に付与することにより本発明の目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記の表面改質無機酸化物粉末及びその製造方法に係る。
1. 無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積(m2/g)で除した値が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
2. 無機酸化物粉末がフュームドシリカである、前記項1に記載の表面改質無機酸化物粉末。
3. トナーに添加した時の乾式流動性評価法による流動性のエネルギー値を、添加前のエネルギー値で除した値が0.22以下である、前記項1又は2に記載の表面処理無機酸化物粉末。
4. 反応性シリコーンオイルが、シロキサン結合からなる主鎖の両末端にOH基を有し、かつ、その動粘度が30~100csである、前記項1~3のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末。
5. 前記項1~4のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末を含むトナー用又は粉体塗料用の外添剤。
6. 前記項5に記載の外添剤と結着性樹脂粒子とを含む電子写真用トナー組成物又は粉体塗料組成物。
7. 表面改質無機酸化物粉末を製造する方法であって、
(a)無機酸化物粉末と反応性シリコーンオイルとを含む混合物を調製する工程、
(b)前記混合物を80~380℃の温度で熱処理する工程
を含むことを特徴とする、表面改質無機酸化物粉末の製造方法。
1. 無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積(m2/g)で除した値が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
2. 無機酸化物粉末がフュームドシリカである、前記項1に記載の表面改質無機酸化物粉末。
3. トナーに添加した時の乾式流動性評価法による流動性のエネルギー値を、添加前のエネルギー値で除した値が0.22以下である、前記項1又は2に記載の表面処理無機酸化物粉末。
4. 反応性シリコーンオイルが、シロキサン結合からなる主鎖の両末端にOH基を有し、かつ、その動粘度が30~100csである、前記項1~3のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末。
5. 前記項1~4のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末を含むトナー用又は粉体塗料用の外添剤。
6. 前記項5に記載の外添剤と結着性樹脂粒子とを含む電子写真用トナー組成物又は粉体塗料組成物。
7. 表面改質無機酸化物粉末を製造する方法であって、
(a)無機酸化物粉末と反応性シリコーンオイルとを含む混合物を調製する工程、
(b)前記混合物を80~380℃の温度で熱処理する工程
を含むことを特徴とする、表面改質無機酸化物粉末の製造方法。
本発明によれば、ヘキサメチルジシラザンに依存することなく、高い疎水性と流動性をともに発揮できる粉体を提供することができる。特に、無機酸化物粒子の表面に反応性シリコーンオイル(特に水酸基含有シリコーンオイル)含有層で覆われた構造を有し、かつ、特定の物性範囲に制御されているため、高い疎水性を発揮するととも、特にトナーに外添した場合には高い流動性を付与することができる。
従って、本発明粉末を含む電子写真用トナー組成物にあっては、流動性及び帯電防止性に優れ、かぶり、各種の支障(クリーニング不良、感光体へのトナー等の付着、画像欠陥等)を効果的に抑制ないしは防止することができる。
このような本発明粉末は、電子写真用トナーをはじめ、粉体塗料、化粧料等の粉体材料系において、流動性改善、固結防止、帯電調整等の目的で添加される表面改質無機酸化物粉末として工業的に極めて有用である。
1.表面改質無機酸化物粉末
本発明の表面改質無機酸化物粉末(本発明粉末)は、無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積で除した値が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする。
本発明の表面改質無機酸化物粉末(本発明粉末)は、無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積で除した値が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする。
<本発明粉末の構成(組成)>
本発明粉末を構成する粒子は、無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む。すなわち、無機酸化物粒子をコア粒子(原体)とし、その表面の一部又は全部が反応性シリコーンオイル含有層でコートされた構造(被覆粒子)を基本構成とするものである。
本発明粉末を構成する粒子は、無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む。すなわち、無機酸化物粒子をコア粒子(原体)とし、その表面の一部又は全部が反応性シリコーンオイル含有層でコートされた構造(被覆粒子)を基本構成とするものである。
コア粒子となる無機酸化物粒子は、その種類は限定されず、例えば酸化ケイ素、酸化チタニウム、酸化アルミニウム等が挙げられるが、これに限定されない。これらの中でも、本発明では、酸化ケイ素(シリカ)(特にフュームドシリカ)を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これら粒子自体は、公知又は市販のものを用いることができる。
無機酸化物粒子の粒径は、限定的ではないが、通常は一次粒子径が5~150nm程度の範囲から、目的とする表面改質無機酸化物粉末の平均粒径の範囲等に応じて適宜選択することができる。また、無機酸化物粒子は、窒素吸着法(BET)による比表面積が105~500m2/g程度であり、特に110~400m2/g程度であることが望ましい。BET比表面積が小さ過ぎると、電子写真トナーに外添した場合に流動化剤としての効果が小さくなる。また、BET比表面積が大き過ぎると、電子写真トナーに外添した場合にトナーへの埋没が速く、性能の経時劣化が大きくなる。
また、無機酸化物粒子の製造方法は、フュームド法による粉末を用いることが好ましい。フュームド法は、公知の製法であり、例えばケイ素化合物(四塩化ケイ素等)又は金属ケイ素を酸素-水素火炎中に導入して加水分解反応させる工程を含む方法によりシリカを合成することができる。このような粉末は、例えばゾルゲル法で製造されたシリカよりも球形から外れた粒子形状であるため、トナー表面からの遊離を効果的に抑制できる等のメリットが得られる。また、溶媒を使用しないため、乾燥時に凝集粒子を生成しにくいという利点も得られる。
このようなフュームド法による無機酸化物粒子も、市販のものを用いることができる。例えば、後記の実施例で示す市販品も好適に用いることができる。
本発明において、無機酸化物粒子の表面に反応性シリコーンオイル含有層が形成されている。すなわち、無機酸化物粒子の表面をコートする有機ケイ素化合物として、反応性シリコーンオイルを用いる。
反応性シリコーンオイル含有層に含まれる当該反応性シリコーンオイルは、シロキサン結合からなる主鎖の両末端、片末端及び側鎖の少なくとも1つに官能基を有するシリコーンオイルである。本発明において、反応性シリコーンオイルを用いることにより、無機酸化物粒子に対するシリコーンオイルの反応性を高め、固定率を高めることができる。上記層中に占める反応性シリコーンオイルの割合は、例えば90~100重量%程度とすることができるが、これに限定されない。
上記のシロキサン結合からなる主鎖(主骨格)としては、限定的ではないが、特にポリ(ジメチルシロキサン)等を好適に採用することができる。また、官能基としては、特に限定されず、例えば水酸基、アミノ基、カルビノール基、エポキシ基、カルボキシル基等の少なくとも1種が挙げられる。
従って、本発明では、例えば下記式で示される反応性シリコーンオイルを好適に用いることができる。
上記式のように、シロキサン結合-(Si-O)-を繰り返し単位とし、少なくともシロキサン結合からなる主鎖両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイルを好適に用いることができる。すなわち、前記両末端のケイ素原子に少なくとも1個の水酸基が結合した構造を好適に採用することができる。
これらの反応性シリコーンオイル自体は、公知又は市販のものを用いることができる。また、反応性シリコーンオイルは、1種又は2種以上で用いることができる。
反応性シリコーンオイルの動粘度(測定温度25℃)(以下「粘度」という。)は、特に限定されないが、通常は30~100csであることが好ましい。粘度が30cs未満の場合は、熱処理中に低分子量の反応性シリコーンオイルが揮発して十分な表面処理を行うことが難しくなるだけでなく、また環境面からも好ましくない場合がある。一方、粘度が100csを超える場合、反応性シリコーンオイルが無機酸化物粒子の凝集を促進して流動性が極端に損なわれるおそれがある。
また、反応性シリコーンオイルの分子量の範囲は、上記の粘度範囲を満たすものであれば良く、例えば3000~7500程度の範囲で適用することが可能であるが、これに限定されない。
反応性シリコーンオイルの含有量は、特に上記炭素含有量の範囲内となる限りは特に限定されないが、一般的には無機酸化物粉末100重量部に対して10~45重量部程度とすることが好ましく、特に11~42重量部とすることがより好ましく、その中でも13~40重量部とすることが最も好ましい。反応性シリコーンオイルの含有量が少な過ぎると疎水率の高い表面改質無機酸化物粉末を得ることができない。一方、反応性シリコーンオイルの含有量が多くなりすぎると粒子の凝集が生じやすくなり、流動性が損なわれるおそれがある。
本発明では、本発明の効果を妨げない範囲内において、非反応性シリコーンオイルを用いることができる。この場合、非反応性シリコーンオイルの含有量は、例えば無機酸化物粉末100重量部に対して1重量部以下の範囲内とすれば良い。
また、本発明の効果を妨げない範囲内で、上記シリコーンオイル以外の有機ケイ素化合物が含まれていても良い。特に、ヘキサメチルジシラザン(アルキルシラザン類、さらにはシラザン類)の含有量は、無機酸化物粉末100重量部に対して0.1重量部以下であることが好ましく、特に実質的に0重量部であることがより好ましい。
<本発明粉末の特性>
本発明粉末の特性として、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積(m2/g)で除した値(カーボン値)が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする。
本発明粉末の特性として、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積(m2/g)で除した値(カーボン値)が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする。
本発明粉末におけるカーボン値は、上記のように通常1.2~2.4%である。カーボン値が1.2%未満である場合、当該無機粉末表面を被覆するに十分な有機物量が表面に存在せず、十分な疎水性、流動性を発現することができなくなる。一方、カーボン値が2.4%を超える場合、表面を被覆する有機物量が過剰になり過ぎて流動性に悪影響を与える。カーボン値の算出方法については、例えば炭素含有量(カーボン量)が4.6重量%であり、無機酸化物粒子の比表面積が200m2/gであれば、[4.6/200]×100=2.3%として求めることができる。
カーボン値に関連して、本発明粉末の炭素含有量は、限定的ではないが、通常は2.0~8重量%程度であり、特に2.5~7.0重量%とすることが好ましい。
疎水率は、通常80%以上であり、特に80~99%であることが好ましい。疎水率が80%未満の場合は、特に高温高湿下で十分な帯電が得られなくなるおそれがある。
帯電量は、通常-140~-330μC/g程度であり、特に-150~-320μC/gであることが好ましい。帯電量が-140μC/gより帯電量がゼロ側に近づくと、その粉末をトナーに添加した際、トナーに安定的な帯電特性を発現することが困難となり、トナーを所定の帯電量範囲に制御することが困難となる。一方、帯電量が-330μC/gよりさらに負帯電側になると、この場合もそれを添加したトナーに安定的な帯電特性を制御することが困難となる。
本発明粉末における遊離オイル分量は、通常0.3重量%以下である。遊離オイル分量が0.3重量%を超えると、十分な流動性が得られなくなるおそれがある。
また、本発明粉末において、トナー等に対して流動性を付与できる性能の指標として、パウダーレオメータによるエネルギー値に基づく比率がある。すなわち、本発明粉末をトナーに添加した時の乾式流動性評価法による流動性のエネルギー値を、その添加前のエネルギー値で除した値が0.22以下であることが望ましい。前記値を0.22以下とすることによって、本発明粉末が外添されたトナー製品によりいっそう高い流動性を与えることができる。
また、本発明粉末の平均粒径は、特に限定されないが、通常は5nm以上18nm以下程度とすれば良い。従って、例えば6~17nmとすることもできる。なお、本発明における平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって任意に選んだ1000個の粒子の粒子径の算術平均値を言う。
2.本発明粉末の製造方法
本発明粉末の製造方法は、上記のような構成・特性を有する粉末が得られる限り、特に制約されないが、例えば(a)無機酸化物粉末と反応性シリコーンオイルとを含む混合物を調製する工程(混合物調製工程)、(b)前記混合物を80~380℃の温度で熱処理する工程(熱処理工程)を含む方法によって好適に製造することができる。
本発明粉末の製造方法は、上記のような構成・特性を有する粉末が得られる限り、特に制約されないが、例えば(a)無機酸化物粉末と反応性シリコーンオイルとを含む混合物を調製する工程(混合物調製工程)、(b)前記混合物を80~380℃の温度で熱処理する工程(熱処理工程)を含む方法によって好適に製造することができる。
混合物調製工程
混合物調製工程では、無機酸化物粉末を構成する各粒子の表面を反応性シリコーンオイルで被覆できる方法であれば限定されず、例えば攪拌下で無機酸化物粉末と気化した反応性シリコーンオイルとを混合する方法、攪拌下で無機酸化物粉末に反応性シリコーンオイルを噴霧する方法等を好適に採用することができる。
混合物調製工程では、無機酸化物粉末を構成する各粒子の表面を反応性シリコーンオイルで被覆できる方法であれば限定されず、例えば攪拌下で無機酸化物粉末と気化した反応性シリコーンオイルとを混合する方法、攪拌下で無機酸化物粉末に反応性シリコーンオイルを噴霧する方法等を好適に採用することができる。
この場合、反応性シリコーンオイルは、例えばヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~8の脂肪族アルコール)、アセトン等のほか、場合によっては水等を用いて、例えば5~70重量%程度に希釈して用いることもできる。
混合物調製工程における温度条件は、特に限定されず、例えば10~40℃の範囲内であれば良いが、これに限定されない。また、雰囲気は、通常は不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等を好適に用いることができる。
有機ケイ素化合物の種類、使用量等については、前記「1.表面改質無機酸化物粉末」で説明したものと同様のものを採用することができる。
熱処理工程
熱処理工程における熱処理温度は、限定的ではないが、通常は80~380℃(特に150~380℃、さらには280~380℃)とすることが好ましい。熱処理温度が380℃を超える場合は、反応性シリコーンオイルの一部分解が生じ、熱エネルギー的及び環境的に好ましくない。また、熱処理温度が80℃未満の場合は、反応性シリコーンオイルの無機酸化物粉末への固定化が十分でなく、遊離オイル量が増加し、疎水性又は流動性が低くなるおそれがある。
熱処理工程における熱処理温度は、限定的ではないが、通常は80~380℃(特に150~380℃、さらには280~380℃)とすることが好ましい。熱処理温度が380℃を超える場合は、反応性シリコーンオイルの一部分解が生じ、熱エネルギー的及び環境的に好ましくない。また、熱処理温度が80℃未満の場合は、反応性シリコーンオイルの無機酸化物粉末への固定化が十分でなく、遊離オイル量が増加し、疎水性又は流動性が低くなるおそれがある。
熱処理雰囲気は、前記工程と同様、通常は不活性ガス雰囲気で実施することが好ましい。例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等を好適に用いることができる。特に、密閉された反応器中で前記工程を実施し、そのまま継続として当該雰囲気を維持した状態で熱処理工程を好適に実施することができる。
熱処理時間は、反応性シリコーンオイルが無機酸化物粉末を構成する各粒子の表面に固定化(固着)するのに十分な時間とすれば良く、例えば5~80分程度とすることができるが、これに限定されない。
3.本発明粉末の使用
本発明粉末は、例えば複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ等を含む電子写真に用いられるトナーのほか、粉末塗料、化粧料等において、例えば流動性改善剤、帯電性調整剤等として利用することができる。特に、本発明粉末は、トナーの外添剤として好適に用いることができる。従って、本発明は、本発明粉末と結着性樹脂粒子とを含む電子写真用トナー組成物又は粉体塗料組成物(以下、両者をまとめて「本発明組成物」ともいう。)も包含する。
本発明粉末は、例えば複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ等を含む電子写真に用いられるトナーのほか、粉末塗料、化粧料等において、例えば流動性改善剤、帯電性調整剤等として利用することができる。特に、本発明粉末は、トナーの外添剤として好適に用いることができる。従って、本発明は、本発明粉末と結着性樹脂粒子とを含む電子写真用トナー組成物又は粉体塗料組成物(以下、両者をまとめて「本発明組成物」ともいう。)も包含する。
本発明組成物は、上述の本発明の表面改質無機酸化物粉末を含むものであり、その組成、その製造方法等には特に制限はなく、公知の組成及び方法を採用することもできる。
本発明組成物中における本発明粉末の含有量は、所望の特性向上効果が得られる限り、特に制限されないが、通常は0.01~5.0重量%程度含有されていることが好ましい。本発明組成物中の本発明の表面改質無機酸化物粉末の含有量が0.01重量%未満では、表面改質無機酸化物粉末を添加したことによる流動性の改善効果あるいは帯電性の安定効果が十分に得られないことがある。また、表面改質無機酸化物粉末の含有量が5.0重量%を超えると、表面改質無機酸化物粉末単独で行動するものが増え、例えば画像、クリーニング性等に問題が生じるおそれがある。
本発明組成物では、結着性樹脂粒子のほか、例えば顔料、電荷制御剤(帯電制御剤)、ワックス等が含まれていても良い。これらの成分は、公知又は市販のトナー組成物と同様とすることもできる。また、トナーのタイプは、負帯電性のトナーが好ましい。それ以外の点については特に限定されない。従って、例えば、磁性又は非磁性の1成分系トナー又は2成分系トナーのいずれでも良い。さらには、モノクロ又はカラーのどちらでも良い。
本発明粉末は、例えばスチレン-アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の少なくとも1種を含む結着性樹脂粒子の外添剤(特にトナー用外添剤)として好適に用いることができる。
なお、本発明組成物では、外添剤としての本発明粉末は、単独で使用される場合に限られず、使用目的等に応じて他の金属酸化物微粉末と併用しても良い。例えば、本発明の表面改質無機酸化物粉末と、他の表面改質された乾式シリカ微粉末、表面改質された乾式酸化チタン微粉末、表面改質された湿式酸化チタン微粉末等を必要に応じて併用することができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
なお、各実施例及び比較例で用いたフュームドシリカ、反応性シリコーンオイル及び非反応性シリコーンオイルの仕様は、次の通りである。
<フュームドシリカ>
・フュームドシリカ380:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)380」(BET比表面積380m2/g)
・フュームドシリカ300:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)300」(BET比表面積300m2/g)
・フュームドシリカ200:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)200」(BET比表面積200m2/g)
・フュームドシリカ130:日本アエロジル(株)製,商品名「AEROSIL(登録商標)130」(BET比表面積130m2/g)
・フュームドシリカ380:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)380」(BET比表面積380m2/g)
・フュームドシリカ300:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)300」(BET比表面積300m2/g)
・フュームドシリカ200:日本アエロジル(株)製、商品名「AEROSIL(登録商標)200」(BET比表面積200m2/g)
・フュームドシリカ130:日本アエロジル(株)製,商品名「AEROSIL(登録商標)130」(BET比表面積130m2/g)
<反応性シリコーンオイル>
・DMO-SiOH(30cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度30cs)
・DMO-SiOH(40cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度40cs)
・DMO-SiOH(60cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度60cs)
・DMO-SiOH(30cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度30cs)
・DMO-SiOH(40cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度40cs)
・DMO-SiOH(60cs):ポリ(ジメチルシロキサン)の両末端に水酸基を有する反応性シリコーンオイル(粘度60cs)
<非反応性シリコーンオイル>
・PDMS(50cs):ポリ(ジメチルシロキサン)(粘度50cs)
・PDMS(50cs):ポリ(ジメチルシロキサン)(粘度50cs)
[実施例1~6]
表1に示すフュームドシリカ100重量部を反応器に入れ、窒素ガス雰囲気下で攪拌下において、表1に示す反応性シリコーンオイルをヘキサンで希釈したものを表1に示す反応性シリコーンオイル添加量となるように導入し、攪拌を継続した状態で表面処理を行った。表面処理されたシリカの緩い凝集を解すため、最後にサンプルミル(奈良機械製作所社製)により解砕を行った。このようにして、表面処理フュームドシリカを得た。
表1に示すフュームドシリカ100重量部を反応器に入れ、窒素ガス雰囲気下で攪拌下において、表1に示す反応性シリコーンオイルをヘキサンで希釈したものを表1に示す反応性シリコーンオイル添加量となるように導入し、攪拌を継続した状態で表面処理を行った。表面処理されたシリカの緩い凝集を解すため、最後にサンプルミル(奈良機械製作所社製)により解砕を行った。このようにして、表面処理フュームドシリカを得た。
[比較例1~5]
表1に示す組成となるようにしたほかは、実施例1と同様にして表面処理を行うことにより、表面処理フュームドシリカを得た。
表1に示す組成となるようにしたほかは、実施例1と同様にして表面処理を行うことにより、表面処理フュームドシリカを得た。
[試験例1]
各実施例及び比較例で得られた表面処理フュームドシリカについて遊離オイル分量、カーボン量、疎水率、帯電量、流動性等を測定した。その結果を表1に示す。なお、各表面処理フュームドシリカ粉末の平均粒径は、5nm以上18nm以下である。
各実施例及び比較例で得られた表面処理フュームドシリカについて遊離オイル分量、カーボン量、疎水率、帯電量、流動性等を測定した。その結果を表1に示す。なお、各表面処理フュームドシリカ粉末の平均粒径は、5nm以上18nm以下である。
表面処理フュームドシリカ粉末の遊離オイル分量、カーボン量、疎水率、帯電量及び流動性の測定方法は、次の通りである。
(1)遊離オイル分量・カーボン量
BUCHI社製ソックスレー抽出装置を用い、表面処理フュームドシリカ0.5gを直径28mmの円筒濾紙に入れ、抽出溶媒にはヘキサンを使用し、抽出時間60分、リンス時間30分の条件で表面処理フュームドシリカ上の遊離オイルを抽出した。オイルを抽出除去した後の表面処理フュームドシリカのカーボン量を測定し、抽出前の表面処理フュームドシリカのカーボン量から抽出後のカーボン量の差を遊離オイル分量とした。
表面処理フュームドシリカのカーボン量は、(株)堀場製作所製の金属中炭素分解装置(EMIA-110)を用いて測定した。
BUCHI社製ソックスレー抽出装置を用い、表面処理フュームドシリカ0.5gを直径28mmの円筒濾紙に入れ、抽出溶媒にはヘキサンを使用し、抽出時間60分、リンス時間30分の条件で表面処理フュームドシリカ上の遊離オイルを抽出した。オイルを抽出除去した後の表面処理フュームドシリカのカーボン量を測定し、抽出前の表面処理フュームドシリカのカーボン量から抽出後のカーボン量の差を遊離オイル分量とした。
表面処理フュームドシリカのカーボン量は、(株)堀場製作所製の金属中炭素分解装置(EMIA-110)を用いて測定した。
(2)疎水率
表面処理フュームドシリカ1gを200mLの分液ロートに計り採り、これに純水100mLを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振盪した。振盪後、10分間静置した。その静置後、下層の20~30mLをロートから抜き取った後に下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その波長500mmの光の透過率を疎水率とした。光透過率が高いほど疎水性が高いことを示す。これは、疎水性の高い表面処理フュームドシリカ(粉末)は、水中に分散することなく水面に浮く傾向にあるので、それだけ水が濁りにくくなって光透過率が高くなるためである。
表面処理フュームドシリカ1gを200mLの分液ロートに計り採り、これに純水100mLを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振盪した。振盪後、10分間静置した。その静置後、下層の20~30mLをロートから抜き取った後に下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その波長500mmの光の透過率を疎水率とした。光透過率が高いほど疎水性が高いことを示す。これは、疎水性の高い表面処理フュームドシリカ(粉末)は、水中に分散することなく水面に浮く傾向にあるので、それだけ水が濁りにくくなって光透過率が高くなるためである。
(3)流動性
ヘンシェルミキサーを用いてトナー(負帯電スチレンアクリルトナー母体(結着性樹脂),平均粒径6μm)99gに対して各実施例及び比較例で得られた表面処理フュームドシリカ粉末1gを外添した後、得られた混合粉末についてパウダーレオメータでトナーサンプルの通気試験を行った。1サンプルにつき全13回のトータルエネルギー値の測定を行い、1回目は通気せずに、2回目以降は線速度0.04mm/sで通気しながら測定した。そして、13回目のトータルエネルギー値E1(mJ)を計測した。
表面処理フュームドシリカ粉末を外添しないほかは、上記と同様にしてトナー単体のトータルエネルギー値E0を計測した。
次いで、上記で得られた値E1及びE0に基づいて、[E1/E0]を求めた。[E1/E0]の値が小さいほど、高い流動性を付与できる性能があることを示す。
ヘンシェルミキサーを用いてトナー(負帯電スチレンアクリルトナー母体(結着性樹脂),平均粒径6μm)99gに対して各実施例及び比較例で得られた表面処理フュームドシリカ粉末1gを外添した後、得られた混合粉末についてパウダーレオメータでトナーサンプルの通気試験を行った。1サンプルにつき全13回のトータルエネルギー値の測定を行い、1回目は通気せずに、2回目以降は線速度0.04mm/sで通気しながら測定した。そして、13回目のトータルエネルギー値E1(mJ)を計測した。
表面処理フュームドシリカ粉末を外添しないほかは、上記と同様にしてトナー単体のトータルエネルギー値E0を計測した。
次いで、上記で得られた値E1及びE0に基づいて、[E1/E0]を求めた。[E1/E0]の値が小さいほど、高い流動性を付与できる性能があることを示す。
(4)帯電量
キャリア(還元鉄粉)100重量部に対して表面処理フュームドシリカ0.2重量部を含む試料をターブラーミキサーにて一定時間混合して摩擦帯電させた後、温度20℃及び湿度45%RHの条件下でブローオフ粉体帯電量測定装置にて帯電量(摩擦帯電量)を測定した。
キャリア(還元鉄粉)100重量部に対して表面処理フュームドシリカ0.2重量部を含む試料をターブラーミキサーにて一定時間混合して摩擦帯電させた後、温度20℃及び湿度45%RHの条件下でブローオフ粉体帯電量測定装置にて帯電量(摩擦帯電量)を測定した。
表1の結果からも明らかなように、各実施例の粉末は、本発明で規定する特性を全て満たし、高い疎水性と流動性とを兼ね備えていることがわかる。
Claims (7)
- 無機酸化物粒子と、その粒子表面に形成された反応性シリコーンオイル含有層とを含む粒子からなる粉末であって、
(1)当該粉末中の炭素含有率(重量%)を前記無機酸化物粒子の比表面積(m2/g)で除した値が1.2~2.4%であり、
(2)疎水率が80%以上であり、
(3)帯電量が-140~-330μC/gであり、
(4)遊離オイル分量が0.3重量%以下である、
ことを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。 - 無機酸化物粉末がフュームドシリカである、請求項1に記載の表面改質無機酸化物粉末。
- トナーに添加した時の乾式流動性評価法による流動性のエネルギー値を、添加前のエネルギー値で除した値が0.22以下である、請求項1又は2に記載の表面処理無機酸化物粉末。
- 反応性シリコーンオイルが、シロキサン結合からなる主鎖の両末端にOH基を有し、かつ、その動粘度が30~100csである、請求項1~3のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末。
- 請求項1~4のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末を含むトナー用又は粉体塗料用の外添剤。
- 請求項5に記載の外添剤と結着性樹脂粒子とを含む電子写真用トナー組成物又は粉体塗料組成物。
- 表面改質無機酸化物粉末を製造する方法であって、
(a)無機酸化物粉末と反応性シリコーンオイルとを含む混合物を調製する工程、
(b)前記混合物を80~380℃の温度で熱処理する工程
を含むことを特徴とする、表面改質無機酸化物粉末の製造方法。
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JP2021093949A JP2022185978A (ja) | 2021-06-03 | 2021-06-03 | 表面改質無機酸化物粉末及びその製造方法 |
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