JP2022179935A - セリア-ジルコニア系微結晶粉末、それを用いた酸素吸放出材料、及びその製造方法 - Google Patents

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彰 森川
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Abstract

【課題】高い酸素放出速度を示す酸素吸放出材料に用いられるセリア-ジルコニア系複合材料粉末を提供すること。【解決手段】X線回折パターンに基づいてシェラーの式により求められる体積基準の平均結晶子径が1~10nmの範囲内にあり、50体積%以上がセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相である、ことを特徴とするセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末。【選択図】なし

Description

本発明は、セリア-ジルコニア系微結晶粉末、それを用いた酸素吸放出材料、及びその製造方法に関する。
自動車エンジン等の内燃機関から排出されるガスにはNOxや燃料の未燃焼成分が含まれており、これらを効率的に除去するためには、雰囲気をストイキオメトリに維持することが重要である。このようなストイキオメトリ雰囲気を維持するために、従来から、酸素を吸蔵・放出する機能を有するセリア-ジルコニア複合酸化物を含有する酸素吸放出材料が用いられている。
例えば、特開2016-8168号公報(特許文献1)には、ジルコニア粒子と、その上に担持されたセリア-ジルコニア複合酸化物とを有し、前記セリア-ジルコニア複合酸化物がパイロクロア相を含み、10~22.9nmの平均結晶子径を有する酸素吸蔵材料が開示されている。しかしながら、この平均結晶子径は、個数基準の平均結晶子径であり、これを体積基準の平均結晶子径に換算すると、10nmよりも大きくなる。また、特許文献1には、この酸素吸蔵材料の製造方法として、(i)水溶性セリウム塩と、水溶性ジルコニウム塩又はオキシジルコニウム塩と、アルキルカルボン酸及び/又はアルキルカルボン酸塩である錯化剤と、金属酸化物粒子とを含む水溶液を調製する工程と、(ii)(i)の水溶液にアルカリ性水溶液を加える工程と、(iii)(ii)の水溶液混合物を150~220℃の温度に0.5~72時間保持して沈殿により固体生成物を生成させる工程と、(iv)前記固体生成物を500~700℃の温度に1~5時間保持した後、さらに700~1100℃の温度に1~5時間保持する工程と、(v)さらに前記固体生成物に昇温還元処理を行う工程とを順次含む方法が開示されている。しかしながら、特許文献1においては、固体生成物を加熱した場合に生成する炭化物が錯化剤であるアルキルカルボン酸及び/又はアルキルカルボン酸塩に由来するものであるため、700~1100℃の温度に保持する際や昇温還元処理を行う際に、セリア-ジルコニア複合酸化物の粒成長が十分に抑制されず、個数基準の平均結晶子径が約10~999nmのセリア-ジルコニア複合酸化物粒子が形成される。このため、特許文献1に記載の方法では、体積基準の平均結晶子径が10nm以下のセリア-ジルコニア微結晶粉末を得ることは困難であった。
また、特開2014-105132号公報(特許文献2)には、パイロクロア相を有し、平均粒子径が50nm以下であるセリア-ジルコニア複合酸化物粒子を含むセリア-ジルコニア複合材料が開示されている。特許文献2には、このセリア-ジルコニア複合材料の製造方法として、セリア原料及びジルコニア原料を水滴中に含む油中水滴型のエマルションを形成し、前記エマルションに中和剤を添加して不溶性のセリウム-ジルコニウム水酸化物粒子を取得して、前記セリウム-ジルコニウム水酸化物粒子を、還元雰囲気下で焼成してセリア-ジルコニア複合酸化物と炭化物とを含む第1の焼成体を取得し、前記第1の焼成体を酸化雰囲気下で焼成して前記第1の焼成体中の炭化物を除去して第2の焼成体を取得し、水と少なくとも二つのヒドロキシ基を含むヒドロキシ基含有化合物と前記第2の焼成体とを含有し、アルカリ性である原料液を加熱して、前記第2の焼成体からセリア-ジルコニア複合酸化物の粒子を分離する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法においては、第1の焼成体中の炭化物がエマルションの油分や界面活性剤に由来するものであるため、還元雰囲気下及び酸化雰囲気下で焼成する際に、セリア-ジルコニア複合酸化物の粒成長が十分に抑制されず、10~20nm程度の1次粒子が5~6個程度凝集した2次粒子が数珠繋ぎのように更に凝集した第2焼成体が形成される。このため、特許文献2に記載の方法では、結晶子径が10nm以下のセリア-ジルコニア微結晶粉末を得ることは困難であった。さらに、エマルションを形成する際に、水に比べて大量の有機溶媒が必要(例えば、水の10倍量の有機溶媒が必要)であり、また、エマルションを一度に大量に形成することが困難であるため、セリウム-ジルコニウム水酸化物粒子の合成効率が非常に低いという問題もあった。
さらに、従来のセリア-ジルコニア系複合酸化物粒子を含有する酸素吸放出材料においては、酸素放出速度が必ずしも十分に高いものではなかった。
特開2016-8168号公報 特開2014-105132号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い酸素放出速度を示す酸素吸放出材料、それに用いるセリア-ジルコニア系複合酸化物粉末、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、熱硬化性樹脂中に特定の体積平均粒子径を有するセリア-ジルコニア系固溶体微粒子が分散している複合材料粉末を加熱して前記熱硬化性樹脂を炭化させた後、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物中に前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子が分散している前駆体粉末を加熱還元することによって、体積基準の平均結晶子径が小さく、パイロクロア相等の陽イオン規則配列相を特定の割合で含有するセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末が得られることを見出し、さらに、このセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末を含有する酸素吸放出材料が高い酸素放出速度を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末は、X線回折パターンに基づいてシェラーの式により求められる体積基準の平均結晶子径が1~10nmの範囲内にあり、50体積%以上がセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相である、ことを特徴とするものである。
また、本発明の酸素吸放出材料は、前記本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末を含有することを特徴とするものである。
さらに、本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末の製造方法は、熱硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂中に分散している体積平均粒子径が0.5~3nmの範囲内にあるセリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する複合材料粉末を250~400℃の範囲内の温度で加熱することによって前記熱硬化性樹脂を炭化させ、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物と前記炭化物中に分散している前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する前駆体粉末を得る第一の工程と、前記前駆体粉末を還元性ガス雰囲気下、900~1100℃の範囲内の温度で加熱することによって、前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子を還元してセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相に相変態させる第二の工程とを含むことを特徴とする方法である。
また、本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末の製造方法は、前記第二の工程の後に、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物を酸化除去する第三の工程を更に含むことが好ましい。
なお、本発明によって、体積基準の平均結晶子径が小さく、パイロクロア相等の陽イオン規則配列相を特定の割合で含有するセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、熱硬化性樹脂中に体積平均粒子径が小さいセリア-ジルコニア系固溶体微粒子が分散している複合材料粉末を加熱して前記熱硬化性樹脂を炭化させるため、この熱硬化性樹脂由来の炭化物がセリア-ジルコニア系固溶体微粒子の表面を被覆する。その結果、セリア-ジルコニア系固溶体微粒子の粒成長が抑制されるため、体積基準の平均結晶子径が小さいセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相が形成されると推察される。また、セリア-ジルコニア系固溶体微粒子の体積平均粒子径が小さく維持されているため、900~1100℃の加熱温度でもセリア-ジルコニア系固溶体微粒子が相変態され、セリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相の割合が多くなると推察される。
また、本発明の酸素吸放出材料が高い酸素放出速度を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、セリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相は、パイロクロア相、κ相及びこれらの中間的な酸化状態からなる結晶相を含むものであり、陽イオンがランダムに配置した固溶体に比べて、結晶内部の酸素拡散係数が10倍以上大きくなる。そして、セリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相においては、Ceイオンのほとんどすべてが酸化還元によって3価と4価となり得るため、Ceイオンの利用効率が理論値に近い大きな値となり、飽和酸素吸放出容量が大きくなる。また、セリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相においては、陽イオンがランダムに配置した固溶体に比べて、低温での酸素移動が容易であるため、低温での酸素の吸放出が可能となる。本発明の酸素吸放出材料においては、このような飽和酸素吸放出容量が大きく、低温での酸素の吸放出が可能なセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相の割合が多いため、高い酸素放出速度が得られると推察される。
本発明によれば、高い酸素放出速度を示す酸素吸放出材料、及びそれに用いるセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末を得ることが可能となる。
実施例1で得られたセリア-ジルコニア固溶体ナノコロイド粒子の粒子径分布を示すグラフである。 実施例1で得られた尿素樹脂とセリア-ジルコニア固溶体ナノコロイド粒子とを含有する粉末の粒子径分布を示すグラフである。 実施例1で得られたセリア-ジルコニア複合酸化物微結晶粉末のX線回折パターンを示すグラフである。 図3に示したX線回折パターンの拡大図である。 実施例1及び比較例1~2で得られたセリア-ジルコニア粉末に白金を担持した酸素吸放出材料の酸素放出速度を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
〔セリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末及びその製造方法〕
先ず、本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末について説明する。本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末(CZ系微結晶粉末)は、X線回折パターンに基づいてシェラーの式により求められる体積基準の平均結晶子径が1~10nmの範囲内にあり、50体積%以上がセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相により形成されるものである。
本発明のCZ系微結晶粉末は、CeイオンとZrイオンとが規則的に配列しているセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相(超格子構造)を有するものであり、前記セリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相(CZ系陽イオン規則配列相)には、パイロクロア相(CeZr)、κ相(CeZr)及びこれらの中間的な酸化状態からなる結晶相が含まれる。本発明のCZ系微結晶粉末においては、このようなCZ系陽イオン規則配列相が50体積%以上含まれていることが必要である。CZ系陽イオン規則配列相の割合が前記下限未満になると、酸素放出速度が低下する。また、より高い酸素放出速度が得られるという観点から、CZ系陽イオン規則配列相の割合は、60体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、100体積%であること、すなわち、CZ系微結晶粉末がすべてCZ系陽イオン規則配列相で構成されていることが特に好ましい。なお、CZ系微結晶粉末におけるCZ系陽イオン規則配列相の存在は、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおいて、2θ=14~15deg、26~27deg、36~38deg、44~45degの範囲内に回折ピークが存在することによって確認することができる。
本発明のCZ系微結晶粉末においては、体積基準の平均結晶子径が1~10nmの範囲内にあることが必要である。前記平均結晶子径が前記上限を超えると、酸素放出速度が低下する。また、より高い酸素放出速度が得られるという観点から、前記平均結晶子径は、1~8nmの範囲内にあることが好ましく、1~6nmの範囲内にあることがより好ましい。なお、前記平均結晶子径が1nm未満のCZ系微結晶粉末を得るために、体積平均粒子径が極めて小さい(例えば、0.5nm未満の)セリア-ジルコニア系固溶体微粒子(CZ系固溶体微粒子)を用いても、体積平均粒子径が極めて小さいCZ系固溶体微粒子は耐熱性が低く、焼結が進行しやすいため、加熱還元において異常粒成長が起こりやすく、得られるCZ系微結晶粉末は、平均結晶子径が10nmを超えるものとなる。また、CZ系微結晶粉末における体積基準の平均結晶子径は、CuKαを用いたX線回折測定により得られるX線回折パターンにおける2θ=48~50degの範囲内に存在する(400)ピークの半値幅に基づいて、シェラーの式により求めることができる。
また、本発明のCZ系微結晶粉末において、CeとZrとの含有モル比としては特に制限はないが、Ce:Zr=40:60~60:40が好ましく、45:55~55~45がより好ましい。Ceの割合が前記下限未満になる(Zrの割合が前記上限を超える)と、遊離したジルコニアの存在(共存)量が顕著に多くなり、CZ系陽イオン規則配列相の割合が低下する傾向にあり、他方、Ceの割合が前記上限を超える(Zrの割合が前記下限未満になる)と、CZ系陽イオン規則配列相中へのセリアの固溶量が過多となるため、酸素放出速度が低下する傾向にある。
また、本発明のCZ系微結晶粉末には、Ce以外のランタノイド及びYからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素が更に含まれていることが好ましい。これにより、本発明のCZ系微結晶粉末は優れた耐熱性を示す。また、CZ系微結晶粉末の耐熱性がより向上するという観点から、前記添加元素としては、La、Pr、Nd、Yが好ましい。さらに、このような添加元素は、ランタノイドがCeサイトに、YがCeサイト及びZrサイトに固溶していることが好ましい。
このような添加元素の含有量としては、CeとZrと添加元素の合計量に対して、1~20mol%が好ましく、2~10mol%がより好ましい。添加元素の含有量が前記下限未満になると、耐熱性が十分に向上しない場合があり、他方、前記上限を超えると、酸素放出速度が低下する傾向にある。
次に、このような本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末(CZ系微結晶粉末)の製造方法について説明する。本発明のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末の製造方法は、熱硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂中に分散している体積平均粒子径が0.5~3nmの範囲内にあるセリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する複合材料粉末を250~400℃の範囲内の温度で加熱することによって前記熱硬化性樹脂を炭化させ、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物と前記炭化物中に分散している前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する前駆体粉末を得る第一の工程と、前記前駆体粉末を還元性ガス雰囲気下、900~1100℃の範囲内の温度で加熱することによって、前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子を還元してセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相に相変態させる第二の工程とを含む方法であり、これにより、CZ系微結晶粉末が得られる。
本発明に用いられる複合材料粉末は、熱硬化性樹脂とセリア-ジルコニア系固溶体微粒子(CZ系固溶体微粒子)とを含有するものである。前記熱硬化性樹脂は、複合材料粉末中において、前記CZ系固溶体微粒子の表面を被覆しており、この熱硬化性樹脂が加熱により炭化して前記CZ系固溶体微粒子の表面が前記熱硬化性樹脂由来の炭化物で被覆されるため、加熱還元時のCZ系固溶体微粒子の粒成長が抑制され、平均結晶子径が10nmを超えるCZ系陽イオン規則配列相の形成が抑制される。
このような熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、特に、セリア-ジルコニア系固溶体ナノコロイド(CZ系ナノコロイド)粒子を被覆する場合には、水溶性のモノマーを用い、CZ系ナノコロイド粒子の存在下で前記熱硬化性樹脂を合成することが好ましい。
前記CZ系固溶体微粒子は、セリアとジルコニアとが固溶した微粒子であり、その体積平均粒子径は0.5~3nmの範囲内にあることが必要である。前記体積平均粒子径が前記下限未満になると、CZ系固溶体微粒子は耐熱性が低く、焼結性が極めて高くなるため、加熱還元において異常粒成長が起こりやすく、得られるCZ系結晶粉末は、平均結晶子径が10nmを超えるものとなる。他方、前記体積平均粒子径が前記上限を超えると、得られるCZ系微結晶粉末における体積基準の平均結晶子径が大きくなり、酸素放出速度が低下する。また、平均結晶子径が小さいCZ系微結晶粉末が得られるという観点から、前記体積平均粒子径は0.8~2nmの範囲内にあることが好ましく、1~1.5nmの範囲内にあることがより好ましい。なお、CZ系固溶体微粒子の体積平均粒子径は、粒子径測定装置を用いて動的光散乱法により測定することができる。また、このような体積平均粒子径が小さいCZ系固溶体微粒子の調製方法としては特に制限はないが、例えば、特開2010-022894号公報に記載の方法によって調製することが好ましい。
前記CZ系固溶体微粒子において、CeとZrとの含有モル比としては特に制限はないが、Ce:Zr=40:60~60:40が好ましく、45:55~55~45がより好ましい。Ceの割合が前記下限未満になる(Zrの割合が前記上限を超える)と、得られるCZ系微結晶粉末においては、遊離したジルコニアの存在(共存)量が顕著に多くなり、CZ系陽イオン規則配列相の割合が低下する傾向にあり、他方、Ceの割合が前記上限を超える(Zrの割合が前記下限未満になる)と、得られるCZ系微結晶粉末においては、CZ系陽イオン規則配列相中へのセリアの固溶量が過多となるため、酸素放出速度が低下する傾向にある。
また、前記CZ系固溶体微粒子には、Ce以外のランタノイド及びYからなる群から選択される少なくとも1種の添加元素が更に含まれていることが好ましい。これにより、耐熱性に優れたCZ系固溶体微粒子及びCZ系微結晶粉末が得られる。また、CZ系固溶体微粒子及びCZ系微結晶粉末の耐熱性がより向上するという観点から、前記添加元素としては、La、Pr、Nd、Yが好ましい。さらに、このような添加元素は、ランタノイドがCeサイトに、YがCeサイト及びZrサイトに固溶していることが好ましい。
このような添加元素の含有量としては、CeとZrと添加元素の合計量に対して、1~20mol%が好ましく、2~10mol%がより好ましい。添加元素の含有量が前記下限未満になると、耐熱性が十分に向上しない場合があり、他方、前記上限を超えると、酸素放出速度が低下する傾向にある。
本発明に用いられる複合材料粉末は、前記CZ系固溶体微粒子が前記熱硬化性樹脂中に分散したものである。このような複合材料粉末においては、前記CZ系固溶体微粒子の表面が前記熱硬化性樹脂で覆われており、この熱硬化性樹脂が加熱により炭化して前記CZ系固溶体微粒子の表面を前記熱硬化性樹脂由来の炭化物で被覆するため、加熱還元時における前記CZ系固溶体微粒子の粒成長を抑制することができ、体積基準の平均結晶子径が小さいCZ系陽イオン規則配列相を形成することができる。
また、前記複合材料粉末において、前記CZ系固溶体微粒子及び前記熱硬化性樹脂の含有量としては特に制限はないが、前記複合材料粉末100質量%に対して、前記CZ系固溶体微粒子の含有量が25~30質量%の範囲内にあり、前記熱硬化性樹脂の含有量が75~70質量%の範囲内にあることが好ましく、前記CZ系固溶体微粒子の含有量が25~26質量%の範囲内にあり、前記熱硬化性樹脂の含有量が75~74質量%の範囲内にあることがより好ましい。CZ系固溶体微粒子の含有量が前記下限未満になる(熱硬化性樹脂の含有量が前記上限を超える)と、炭化ジルコニウム(ZrC)の生成が顕著となり、CZ系陽イオン規則配列相の割合が低下する傾向にあり、他方、CZ系固溶体微粒子の含有量が前記上限を超える(熱硬化性樹脂の含有量が前記下限未満になる)と、CZ系固溶体微粒子の焼結が、熱硬化性樹脂由来の炭化物によって十分に抑制されず、所望の平均結晶子径を有するCZ系陽イオン規則配列相が得られない傾向にある。
このような複合材料粉末の調製方法としては特に制限はなく、例えば、前記熱硬化性樹脂と前記CZ系固溶体微粒子とを混合して造粒する方法、前記CZ系固溶体微粒子の存在下で熱硬化性樹脂を合成する方法等が挙げられるが、熱硬化性樹脂中で前記CZ系固溶体微粒子が均一に分散している複合材料粉末が得られるという観点から、後者の方法が好ましい。
本発明に用いられる複合材料粉末の体積平均粒子径として特に制限はないが、1~100μmの範囲内にあることが好ましく、30~80μmの範囲内にあることがより好ましい。前記体積平均粒子径が前記下限未満になると、複合材料粉末を洗浄し、共存する副生成塩を除去する際に、ろ過工程の効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、加熱還元の際に、CZ系固溶体微粒子の内部と外部の雰囲気を同レベルの還元雰囲気に維持することが困難となる傾向にある。
(第一の工程)
先ず、本発明においては、このような複合材料粉末を加熱することによって前記熱硬化性樹脂を炭化させる。これにより、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物と前記炭化物中に分散している前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する前駆体粉末が得られる。このような前駆体粉末においては、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物が前記CZ系固溶体微粒子の表面を被覆しているため、後述する加熱還元時において、CZ系固溶体微粒子の粒成長が抑制される。その結果、CZ系固溶体微粒子が、粒子径が小さい状態を保持したまま、加熱還元によりCZ系陽イオン規則配列相に相変態されるため、体積基準の平均結晶子径が小さいCZ系陽イオン規則配列相が形成され、本発明のCZ系微結晶粉末が得られる。
第一の工程における加熱温度は、250~400℃の範囲内にあることが必要である。前記加熱温度が前記下限未満になると、前記熱硬化性樹脂が十分に炭化されず、第二の工程において、加熱炉(還元炉)を汚損する可能性が高くなる。他方、前記加熱温度が前記上限を超えると、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物中の炭素が焼失し、前駆体粉末中の炭素含有量が低下するおそれがある。前記熱硬化性樹脂からの揮発成分を十分に除去し、かつ、炭化による炭素を十分に確保するという観点から、第一の工程における加熱温度は300~380℃の範囲内にあることが好ましい。
また、第一の工程における加熱時間としては特に制限はないが、0.5~2時間が好ましく、0.5~1時間がより好ましい。前記加熱時間が前記下限未満になると、前記熱硬化性樹脂からの揮発成分が十分に除去されずに残留し、第二の工程において、加熱炉(還元炉)を汚損する可能性が高くなる。他方、前記加熱時間が前記上限を超えると、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物中の炭素が焼失し、前駆体粉末中の炭素含有量が低下するおそれがある。
(第二の工程)
次に、本発明においては、前記前駆体粉末を還元性ガス雰囲気下で加熱することによって前記CZ系固溶体微粒子を還元してCZ系陽イオン規則配列相に相変態させる。前記前駆体粉末においては、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物が前記CZ系固溶体微粒子の表面を被覆しているため、加熱還元時におけるCZ系固溶体微粒子の粒成長が抑制される。その結果、CZ系固溶体微粒子が、粒子径が小さい状態を保持したまま、加熱還元によりCZ系陽イオン規則配列相に相変態されるため、体積基準の平均結晶子径が小さいCZ系陽イオン規則配列相が形成され、本発明のCZ系微結晶粉末が得られる。
前記還元性ガス雰囲気としては、水素(H)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、カーボン(C)、アンモニア(NH)ガス等の還元性ガスを含有する窒素雰囲気が挙げられる。このような還元性ガスの中でも、炭化ジルコニウム(ZrC)等の副生成物の生成を防止するという観点から、炭素(C)を含まないものが好ましい。
本発明において、加熱還元温度は900~1100℃の範囲内にあることが必要である。加熱還元温度が前記下限未満になると、得られるCZ系微結晶粉末において、CZ系陽イオン規則配列相の割合が低下し、高い酸素放出速度が得られない。他方、加熱還元温度が前記上限を超えると、CZ系固溶体微粒子が粒成長するため、得られるCZ系微結晶粉末において、体積基準の平均結晶子径が増大し、高い酸素放出速度が得られない。また、より高い酸素放出速度が得られるという観点から、加熱還元温度は950~1000℃の範囲内にあることが好ましい。
また、加熱還元時間としては特に制限はないが、1~10時間が好ましく、2~5時間がより好ましい。加熱還元時間が前記下限未満になると、得られるCZ系微結晶粉末において、CZ系陽イオン規則配列相の割合が低下し、高い酸素放出速度が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、CZ系固溶体微粒子が粒成長するため、得られるCZ系微結晶粉末において、体積基準の平均結晶子径が増大し、高い酸素放出速度が得られない。
(第三の工程)
本発明においては、このような還元処理(第二の工程)の後に、酸化処理を施して前記熱硬化性樹脂由来の炭化物を除去することが好ましい。酸化処理の方法としては、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物を除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば、酸素を含む酸化雰囲気下で、前記CZ系微結晶粉末と前記炭化物との混合物を加熱する方法が挙げられる。このときの加熱酸化温度としては特に制限はないが、300~500℃が好ましく、350~400℃がより好ましい。また、加熱酸化時間としては特に制限はないが、0.5~5時間が好ましく、1~2時間がより好ましい。
〔酸素吸放出材料〕
次に、本発明の酸素吸放出材料について説明する。本発明の酸素吸放出材料は、前記本発明のCZ系微結晶粉末を含有するものである。このような本発明の酸素吸放出材料においては、前記CZ系微結晶粉末に貴金属が担持されていることが好ましい。前記貴金属としては特に制限はなく、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、金(Au)等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<セリア-ジルコニア固溶体微粒子の調製>
先ず、硝酸アンモニウムセリウム(IV)(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)54.82gとオキシ硝酸ジルコニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、和光一級)26.72gとグリシン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)14.76gとを粉末状態で容量1Lのビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、イオン交換水を添加して全量が約500mlの原料溶液Aを調製した。また、中和剤としてモノエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)12.21gをイオン交換水に溶解し、全量が約500mlの原料溶液Bを調製した。
次に、特開2010-022894号公報に記載の超微粒子製造装置(以下、「スーパーアジテーションリアクター(SAリアクター)」ともいう)を用いて、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ独立に高剪断速度領域に直接導入して均質混合し、セリア-ジルコニア固溶体ナノコロイド(CZナノコロイド)溶液を調製した。すなわち、ホモジナイザーの先端を100mlのイオン交換水に浸るようにセットし、ホモジナイザーにおけるローターを5000rpmで回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ独立に0.5ml/minでローターと内側ステータとの間の高剪断速度領域に送液して混合し、0.1molのCZナノコロイド粒子(Ce/Zr(モル比)=50/50)を含有するCZナノコロイド溶液(総量:1100ml)を調製した。
得られたCZナノコロイド粒子の粒子径分布を、粒子径測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZSP)を用いて動的光散乱法により測定した。その結果を図1に示す。図1に示した体積基準の粒子径分布に基づいて、前記CZナノコロイド粒子の平均粒子径を求めたところ、1.5nmであった。
<複合材料粉末の調製>
先ず、尿素(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)40.17gをイオン交換水175mlに溶解し、原料溶液Cを調製した。また、ホルムアルデヒド液(和光純薬工業株式会社製、試薬特級、濃度:30質量%)111.58gをイオン交換水175mlに溶解し、原料溶液Dを調製した。
次に、前記CZナノコロイド溶液(総量:1100ml)をマグネチックスターラーで撹拌しながら、これに前記原料溶液Cと前記原料溶液Dとを同時に約1分間かけてゆっくりと添加して混合した。このとき、CZナノコロイド溶液の色が明るい黄色からやや暗めの黄色に変化した。その後、撹拌を継続したところ、混合開始から約5分後には、微黄白色化したCZナノコロイド溶液が得られ、約1時間後には、全く透明感のない微黄白色スラリーが得られた。
この微黄白色スラリーに含まれる粉末の粒子径分布を、粒子径分布測定装置(マイクロトラック社製「MT3300」)を用いてレーザー回折法により測定した。その結果を図2に示す。図2に示した体積基準の粒子径分布に基づいて、前記粉末の体積平均粒子径を求めたところ、50μmであった。なお、この粉末は、尿素樹脂中にCZナノコロイド粒子が分散した複合材料粉末である。
<前駆体粉末の調製>
次に、前記微黄白色スラリーを室温で15時間静置した後、定量ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、No.5C)を用いて吸引ろ過し、水を除去した。その後、吸引を停止し、ろ滓にイオン交換水を噴霧してろ滓を湿らせ、吸引を再開して水を除去した。この一連の操作(吸引停止→水を噴霧→吸引再開)を5回繰り返した後、得られた微黄白色のろ滓を解してステンレス製シャーレに広げ、室温で24時間乾燥させた。得られた複合材料粉末を蓋付ルツボに入れ、さらに、それをより大きな蓋付ルツボに入れ、これを脱脂炉に入れて350℃で30分間加熱することにより尿素樹脂を炭化するとともに、余分な水分や有機物を除去して、尿素樹脂由来の炭素中にCZナノコロイド粒子が分散した前駆体粉末を得た。
<セリア-ジルコニア複合酸化物微結晶粉末の調製>
得られた前駆体粉末約0.5gを磁製ルツボに入れて小型アルミナトレイに乗せ、このトレイを石英管に入れて管状炉に入れ、3%水素含有ガス(残部:窒素)を1L/分で流通させながら970℃で2時間還元処理を行って、尿素樹脂由来の炭素中に分散されたCZナノコロイド粒子をCZ系陽イオン規則配列相に相変態させた。その後、10%酸素含有ガス(残部:窒素)を1L/分で流通させながら350℃で30分間酸化処理を行って炭素を酸化除去して、セリア-ジルコニア複合酸化物微結晶粉末(CZ微結晶粉末)を得た。
〔粉末X線回折測定〕
得られたCZ微結晶粉末のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用い、CuKαを光源として測定した。その結果を図3に示す。なお、図3中、上のX線回折パターンは下のX線回折パターンを拡大したものである。図3に示したように、超格子構造(CZ系陽イオン規則配列相)を示すピーク(図中の矢印)が観察された。
〔平均結晶子径〕
図3に示したX線回折パターンにおける(440)ピーク(κ相に由来するピーク)の拡大図を図4に示す。図4に示したX線回折パターンに基づいて、κ相に由来するピークの半値幅(FWHM)を求め、さらに、シェラーの式を用いて体積基準の平均結晶子径を求めた。その結果を表1に示す。
〔CZ系陽イオン規則配列相の割合〕
図3に示したX線回折パターンにおいて、(440)ピークは、規則相の存在割合にかかわらず、高さ(面積)が一定のピークである。したがって、各試料間で、ピークの高さの比や面積比を対比する際には、この(440)ピークを対比の基準となるピークとして採用することができる。特に、本発明においては、隣接する大きなピークが存在せず、ベースラインを決定しやすいことから、(440)ピークを対比の基準となるピークとして採用した。
また、図3に示したX線回折パターンにおいて、(111)ピークはCZ系陽イオン規則配列相に帰属されるピークである。したがって、得られたCZ微結晶粉末のX線回折パターンにおける(111)ピークと(440)ピークの高さの比や面積比と、CZ系陽イオン規則配列相の割合が100%のセリア-ジルコニア複合酸化物結晶粉末(CZ結晶粉末)のX線回折パターンにおける(111)ピークと(440)ピークの高さの比や面積比とを対比することによって、得られたCZ微結晶粉末におけるCZ系陽イオン規則配列相の割合を求めることができる。なお、本発明においては、CZ微結晶粉末の平均結晶子径が小さく、X線回折パターンにおいてはピークの高さが低くなり、ブロード化する傾向にあったため、ピークの面積(積分値)比を対比してCZ系陽イオン規則配列相の割合を求めた。
そこで、得られたCZ微結晶粉末について、図3に示したX線回折パターンに基づいて、(111)ピークの積分値A(111)と(440)ピークの積分値A(440)とを、XRD解析ソフトウェア(株式会社ライトストーン製「JADE」)を用いて算出し、これらの比(A(111)/A(440))を求めたところ、0.0486であった。
一方、JCPDSカードには、CZ系陽イオン規則配列相の合成温度が1300℃であることが記載されている。すなわち、CZ系固溶体微粒子を1300℃で還元することによって、得られるCZ結晶粉末においては、CZ系陽イオン規則配列相の割合が100%になると解釈することができる。そこで、尿素樹脂中にCZナノコロイド粒子が分散した前記複合材料粉末に、焼結炉(富士電波工業株式会社製「FVPS-R-150」)を用いて1300℃で5時間の還元処理を施して、CZ系陽イオン規則配列相の割合が100%のCZ結晶粉末を調製した。このCZ結晶粉末のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用いて測定し、得られたX線回折パターンに基づいて、(111)ピークの積分値A100 (111)と(440)ピークの積分値A100 (440)とを、XRD解析ソフトウェア(株式会社ライトストーン製「JADE」)を用いて算出し、これらの比(A100 (111)/A100 (440))を求めたところ、0.0761であった。
したがって、得られたCZ微結晶粉末における(111)ピークと(440)ピークの積分値の比(A(111)/A(440))と、CZ系陽イオン規則配列相の割合が100%のCZ結晶粉末における(111)ピークと(440)ピークの積分値の比(A100 (111)/A100 (440))とを対比して、得られたCZ微結晶粉末におけるCZ系陽イオン規則配列相の割合を求めたところ、63.9%であった(表1)。
(比較例1)
<セリア-ジルコニア固溶体粉末の調製>
先ず、硝酸アンモニウムセリウム(IV)(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)54.82gとオキシ硝酸ジルコニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、和光一級)26.72gとを粉末状態で容量1Lのビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、イオン交換水を添加して全量が約500mlの原料溶液Aを調製した。また、中和剤として0.72mol相当量の25%アンモニア水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製、和光一級)をイオン交換水に溶解し、全量が約500mlの原料溶液Bを調製した。
次に、プロペラ撹拌機で撹拌しながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとを同時に容量1Lのビーカーに約30秒かけて入れて混合したところ、沈殿が生成した。撹拌を10分間継続した後、沈殿を吸引ろ過により回収し、150℃で10時間乾燥し、さらに、400℃で5時間焼成して、セリア-ジルコニア固溶体粉末(CZ固溶体粉末、Ce/Zr(モル比)=50/50)を得た。
得られたCZ固溶体粉末のX線回折パターンを、実施例1と同様にして測定したところ、超格子構造(CZ系陽イオン規則配列相)を示すピークは観察されなかった。また、得られたCZ固溶体粉末の体積基準の平均結晶子径及びCZ系陽イオン規則配列相の割合を実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
(比較例2)
<セリア-ジルコニア複合酸化物結晶粉末の還元処理>
尿素樹脂とCZナノコロイド粒子とを含有する複合材料粉末の代わりに比較例1で得られたCZ固溶体粉末約0.5gを用いた以外は実施例1と同様にして、還元処理及び酸化処理を行い、セリア-ジルコニア複合酸化物結晶粉末(CZ結晶粉末)を得た。
得られたCZ結晶粉末のX線回折パターンを、実施例1と同様にして測定したところ、超格子構造(CZ系陽イオン規則配列相)を示すピークが観察された。また、得られたCZ結晶粉末の体積基準の平均結晶子径及びCZ系陽イオン規則配列相の割合を実施例1と同様にして求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2022179935000001
〔酸素放出速度〕
実施例及び比較例で得られたセリア-ジルコニア粉末(CZ粉末)をそれぞれ、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液をイオン交換水で希釈した水溶液に投入した後、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら80℃に設定したホットプレート上で蒸発乾固させて、前記CZ粉末100質量部に対して1質量部の白金を担持した酸素吸放出材料を調製した。
この酸素吸放出材料15mgを白金製試料セルに入れ、これを熱重量分析計(株式会社島津製作所製「TGA-50」)に装着し、5%水素含有ガス(残部:窒素)と5%酸素含有ガス(残部:窒素)とを250℃、2L/分で5分間ずつ交互に流通させた。定常状態において、酸素含有ガスから水素含有ガスに切り替えた後の60秒間の前記酸素吸放出材料の質量変化を測定し、酸素放出速度を求めた。その結果を図5に示す。
図5に示したように、平均結晶子径及びCZ系陽イオン規則配列相の割合が所定の範囲内にあるCZ微結晶粉末(実施例1)に白金を担持した酸素吸放出材料は、CZ系陽イオン規則配列相が存在しないCZ固溶体粉末(比較例1)に白金を担持した酸素吸放出材料及び平均結晶子径が所定の範囲よりも大きいCZ結晶粉末(比較例2)に白金を担持した酸素吸放出材料に比べて、高い酸素放出速度を示すことがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、体積基準の平均結晶子径が小さく、パイロクロア相等の陽イオン規則配列相を特定の割合で含有するセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末ことが可能となる。このようなセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末を含有する本発明の酸素吸放出材料は、高い酸素放出速度を示すため、低温で活性化する排ガス浄化用触媒、酸化還元を伴うエネルギー変換触媒、燃料合成触媒等における酸素吸放出材料として有用である。

Claims (4)

  1. X線回折パターンに基づいてシェラーの式により求められる体積基準の平均結晶子径が1~10nmの範囲内にあり、
    50体積%以上がセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相である、
    ことを特徴とするセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末。
  2. 請求項1に記載のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末を含有することを特徴とする酸素吸放出材料。
  3. 熱硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂中に分散している体積平均粒子径が0.5~3nmの範囲内にあるセリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する複合材料粉末を250~400℃の範囲内の温度で加熱することによって前記熱硬化性樹脂を炭化させ、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物と前記炭化物中に分散している前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子とを含有する前駆体粉末を得る第一の工程と、
    前記前駆体粉末を還元性ガス雰囲気下、900~1100℃の範囲内の温度で加熱することによって、前記セリア-ジルコニア系固溶体微粒子を還元してセリア-ジルコニア系陽イオン規則配列相に相変態させる第二の工程と
    を含むことを特徴とするセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末の製造方法。
  4. 前記第二の工程の後に、前記熱硬化性樹脂由来の炭化物を酸化除去する第三の工程を更に含むことを特徴とする請求項3に記載のセリア-ジルコニア系複合酸化物微結晶粉末の製造方法。
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