以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書における各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本明細書における各図において、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する場合がある。
<第1実施形態>
図1~図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るシート固定器具10の一例について説明する。図1は、本実施形態のシート固定器具10を取り付けるシーラー20について説明する図であり、同図(A)がシール装置100の主要部を示す正面概要図であり、同図(B)、同図(C)、同図(G)がシート固定器具10を取り付けたシーラー20を示す図であり、同図(D)~同図(F)がシーラー20のみを示す図である。同図(B)が平面図、同図(C)が正面図、同図(D)が平面図、同図(E)が正面図、同図(F)が同図(D)のA-A線断面図、同図(G)がシート30を固定した状態を示す同図(F)に対応する断面図である。
図1を参照して、本実施形態のシート固定器具10は、シーラー20に保護シート30を取り付けるための固定器具である。なお、同図(B)、同図(C)においては保護シート30の記載を省略している。
まず、図1(A)を参照して、シーラー20は例えば、産業用の製袋機(包装機)において横シールや縦シールなどを行う手段(産業用のシール装置100)の構成部品であり、例えば樹脂フィルムfmの包材(袋)などの重合部(開口部など)を密封する手段である。シール装置100において、例えばシーラー20は、シーラー支持部101に取り付けられ、樹脂フィルムFを挟んで上下に配置される。駆動機構(不図示)は、モータやエアシリンダなどにより上下のシーラー20のそれぞれのシール面20Aを対向させた状態を保持しながらシーラー20を所定の軌跡(例えば、ボックスモーション)で移動させる。この軌跡中において、上下のシーラー20で重ね合わせた樹脂フィルムfmを押圧することで開口部などを封止する。
シーラー20は、例えば、同図(B)、同図(C)、同図(D)、同図(E)に示すように一方向(ここでは図示の左右方向)に長い略直方体形状のバー部材である。より詳細には、同図(D)に示すように、シーラー20は、いずれも略直方体形状の基部20Cと、シール面20Aを有するシール部20Bを有してなり、断面視において基部20Cからシール部20Bが突出する略凸形状を呈している。
基部20Cは、その一部がシート固定器具10と係合する。ここでは一例として、シール面20Aに平行なシール部20Bに連続する面(シート保持面20D)に溝21が設けられている。溝21はシート固定器具10と係合(嵌合)する部位であり、同図(E)に示すように主にシール面20A,シート保持面20Dおよび溝21により保護シート30を支持する。シーラー20は、第一の部材により構成される。第一の部材は、例えば、アルミニウム材である。
また、ここでは一例として熱源によりシーラー20自体が加熱され、熱により樹脂フィルムfmを溶着し、シールする手段(ヒートシーラー)である場合について説明する。熱源は、例えばシーラー20の内部や、シール装置100のシーラー支持部101内などに設けられる。
同図(G)を参照して、保護シート30は、例えば、溶融した樹脂フィルムfmがシーラー20に付着することを防止する耐熱性の付着防止用シートである。保護シート30は、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)により形成されたシート、あるいはフッ素樹脂加工が施されたシートであり、少なくともシール面20Aを十分に覆うことが可能な所定の形状(略矩形状など)に随時カットされて、シーラー20に取り付け・固定される。保護シート30は、劣化した場合など適宜交換される部品(消耗品)である。
本実施形態では、保護シート30をシーラー20に取り付ける際(交換の際)、従来(図13)のようにボルトの締結によらずシート固定器具10を用いる。図2を参照して、シート固定器具10について説明する。同図は、シート固定器具10を説明する図であり、同図(A)が平面図、同図(B)が正面図、同図(C)が長手方向の一端側(同図(A)の右方側)から見た側面図である。また、同図(D)、および同図(E)がシート固定器具10の固定動作を説明する正面概要図である。
図2を参照して、シート固定器具10は、枠体11と、固定手段12とを有する。シート固定器具10はその全体形状がシーラー20の形状に沿う略矩形状を有している。この例では固定手段12は、略矩形状の一方の端部T1側の短辺(同図(A)では左方の短辺)を構成し、枠体11は略矩形状の対向する2つの長辺と、他方の短辺(略コの字状の部分)を構成する。
枠体11は、押さえ部111と、ストッパー部113を有する。押さえ部111は、枠体11の長手方向に延在する2本の帯状の板部材であり、それぞれ第二の部材により構成される(いずれも同一構成である)。第二の部材は、第一の部材よりも線膨張係数が小さい部材であり、例えば、真鍮などである。押さえ部111は、シーラー20の溝21(図1参照)に保護シート30(ここでは不図示)を介して嵌合可能に構成される。2本の押さえ部111の長手方向の長さは、いずれもシーラー20の長手方向の長さより長く、シーラー20の溝21に嵌合した場合に押さえ部111の長手方向の両端側はシーラー20から突出する(図1(B),同図(C)参照)。
図2に戻り、ストッパー部113は、押さえ部111の長手方向の一方の端部(同図(A),同図(B)において左方の端部T2)に設けられ、2本の押さえ部111を一体的に支持する。この例では、ストッパー部113は、枠体11の短手方向に延びる支持部材114と、支持部材114の長手方向の両端に、2本の押さえ部111の端部T2を固定するボルト115により構成される。当該ボルト115は支持部材114を固定するものであり、枠体11として組み立てられた後は離脱する必要はない。つまり、例えば枠体11として組み立てられた後は離脱不可に枠体11に固定されると望ましい。
支持部材114は例えば、ステンレス鋼により構成される。ストッパー部113は、枠体11(押さえ部111)をシーラー20に嵌合させた場合、シーラー20の長手方向の一方の端部T2において側面(短手側の一方の側面)と密着し、2本の押さえ部111が溝21から離脱することを防止する(図1(B),同図(C)参照)。なお、この例では枠体11は押さえ部111とストッパー部113とを組み合わせて構成しているが、これに限らず、枠体11は押さえ部111とストッパー部113とが一体的に(平面視においてコの字状に)構成されたものでもよい。
固定手段12は、枠体11の長手方向の端部(ストッパー部113と逆側の端部、同図(A),同図(B)において右方の端部T1)に設けられ、押さえ部111をシーラー20(の溝21内)に固定するとともに、少なくとも枠体11の長手方向に張力を作用させることが可能な手段である。ここでは一例として、固定手段12は、枠体11の短手方向に延びる回転軸121と、回転軸121に回転自在に支持された回転子122とを有する。回転子122は、同図(A),同図(C)に示すように回転軸121の延在方向に長い柱状部材であるが、その外形状(外周面形状)は同図(D),同図(E)に示すように回転軸121を中心として非対称に構成されている。より詳細には、この例では、回転軸121を中心とする仮想的な円柱状(同図(D)の細破線参照)に基づき、その円周面の一部を回転軸121に沿って(回転軸121と平行に)切り欠いて平面とした柱状部材である。つまり回転子122は、回転軸121に直交する断面形状が略D字状の柱状部材であり、その外周面123が円弧部124と平面部125で構成されている。回転子122の長手方向のほぼ中心付近には、回転子122の回転用の治具(例えば、レンチなど)を受け入れ可能な治具用穴127が設けられている。
回転軸121は、2本の押さえ部111の長手方向の端部T1に固定され、2本の押さえ部111を一体的に支持する。回転子122は回転軸121に回転自在に支持されるとともに回転軸121回りの外形状が非対称(円弧と平面)に構成されてることから、回転子122を回転させるとその回転角度に応じて回転子122から押さえ部111(枠体11)の長手方向の他の端部T2(ストッパー部113)までの距離(枠体11の内側の距離)が変位する。回転子122はカム型回転子ともいえる。
より詳細には、同図(D),同図(E)に示すように、回転子122の平面部125を内側(ストッパー部113)に対向させるように位置させた場合の回転子122先端(平面部125)からストッパー部113の支持部材114までの距離L1(同図(D))より、円弧部124を内側(ストッパー部113)に対向させるように位置させた場合の回転子122先端(円弧部124)からストッパー部113までの距離L2(同図(E))の方が短くなる。さらに、距離L1は、シーラー20の長手方向(水平方向Hにおける長手方向)の長さより長く、距離L2は、シーラー20の長手方向の長さより短い。
このような構成により、固定手段12は、回転子122の角度変位により(同図(D)から同図(E)に角度変位させることにより)枠体11(押さえ部111)の長手方向に張力を作用させ保護シート30をシーラー20に保持固定する。
図3を参照してシーラー20と枠体11の係合の状態についてさらに詳細に説明する。同図は、固定手段12による固定の動作を説明する図であり、固定手段12付近を抜き出して示す正面図である。なお、同図において保護シート30の記載は省略している。
以下、図3では記載を省略しているが、説明上の枠体11の基準位置として、枠体11のストッパー部113(支持部材114)を、シーラー20のストッパー部113側(端部T2側)の側面に当接させている状態を前提に説明する。また、以下の説明においてシーラー20の長手方向(図示左右方向)を水平方向H、水平方向Hに直交する方向(図示上下方向)を、垂直方向Vとして説明する。水平方向Hは例えば床面(作業台)に対して水平な方向であり、垂直方向Vは例えば鉛直方向である。更に、本実施形態では回転子122とシーラー20とが当接した場合には、互いに摺動不可となるように(摩擦が十分に大きくずれない様に)構成されている。
同図(A)は、保護シート30の固定前(アンロック)の状態である。この状態では、シーラー20の溝21の上方に枠体11(押さえ部111)が水平になるように(水平方向Hに延在するように)配置されている。
本実施形態の回転子122は、同図(A)に破線で示すように仮想円柱とした場合に、シーラー20の端部T1側の側面(第一の側面25という)と干渉する構成となっている(そのように回転子122の仮想円柱としての半径および回転軸121の位置が設定されている)。
そして、その状態から干渉する部分を除去するようにして、平面部125が構成されている。その除去量を回転子122の半径方向の長さとして説明すると、除去量(長さd2)は、回転子122を仮想円柱とした場合のシーラー20との干渉量(長さd1)よりも大きい長さとなる。つまり、同図(A)の状態では、回転子122の平面部125とシーラー20の第一の側面25との間にはわずかなギャップG(その長さd3=d2-d1)が生じるように構成されている。このため、同図(A)に示す状態から垂直方向Vに枠体11を移動させると長手方向においては何ら干渉することなく、押さえ部111をシーラー20の溝21に収容できる。換言すると、平面部125がシーラー20の第一の側面25と対向する位置にあり押さえ部111が水平に配置されている場合、平面部125から支持部材114までの水平方向Hの距離(図2(D)の距離L1)は、シーラー20の長手方向(水平方向Hにおける長手方向)の距離よりも長い。従って例えば枠体11を同図(A)の状態で保持しており、その保持を解除すると枠体11は自重で落下し押さえ部111は溝21の底部21Bに当接して落下が止まる。
同図(B)は、シーラー20の溝21に押さえ部111が係合(嵌合)するとともに、押さえ部111全体が移動不可にシーラー20に固定された状態(ロック状態)である。ストッパー部113付近の押さえ部111も溝21内に収容されている。不図示の保護シートも押さえ部111と溝21に挟持され、シーラー20に固定される(図1(G)参照)。この場合、回転子122は同図(A)の状態からこの例では時計回り方向に回転しており、これにより円弧部124がシーラー20の第一の側面25と当接する。この結果、枠体11としては、回転子122(円弧部124)から支持部材114までの距離が短縮(図2(D)の距離L1が同図(E)の距離L2に短縮)する。距離L2はシーラー20の長手方向の距離よりも短く、回転子122による外力によりシーラー20と係合することにより、干渉量(長さd1)の分、シーラー20と回転子122のとの間に押圧力が生じる。これにより押さえ部111には長手方向に張力が作用し、また回転子122とシーラー20とは互いに摺動不可となることから、枠体11とシーラー20とが強固に固定される。この結果、枠体11(の押さえ部111)とシーラー20(の溝21)に挟持される保護シート30も確実にシーラー20に固定される。
ここで、同図(B)に示すように、押さえ部111はその全体が溝21内に収容された状態では水平方向H(長手方向、図示左右方向)にも、それに直交する垂直方向V(図示上下方向)にも移動が規制されている。そして、回転子122とシーラー20とは互いに摺動不可であるため、この状態から更に時計回り方向に回転子122を回転(転動)させることはできない。一方、回転子122は、反時計回り方向への回転(転動)は許容される。この意味では、同図(A)に示すアンロック状態では回転子122は任意の方向に回転自在であるが、同図(B)に示すロック状態では、回転子122は一方向(この場合反時計回り方向)のみ回転が許容される。
つまり、同図(A)に示すように押さえ部111が溝21に嵌合せず、保護シート30を固定していない状態(アンロック状態)から、同図(B)に示す保護シート30を固定している状態(ロック状態)に遷移するには、回転中の回転子122とシーラー20が当接した後において、押さえ部111の垂直方向Vへの移動が許容されていなければならない。
そこで本実施形態では、同図(C)に示すように、まず回転子122の平面部125を第一の側面25に対向させた状態(アンロック状態)で、ストッパー部113側において押さえ部111を溝21に(少なくとも一部)係合(嵌合)させ、押さえ部111を水平方向Hにおいて傾斜させてストッパー部113よりも垂直方向Vの上方に固定手段12を位置させる。そして回転子122を例えば図示の時計回り方向に回転させる。
ギャップG(長さd3)の分は、回転子122はシーラー20に干渉することなく回転可能である。そして回転子122の回転により、平面部125と円弧部124の境界126が第一の側面25に当接する。回転子122とシーラー20とが当接すると互いに摺動不可となり、押さえ部111の垂直方向Vの移動が許容される範囲で境界126を支点として回転子122が回転し、押さえ部111に張力が作用しながら、てこの原理で溝21内に収まる(同図(B)、ロック状態)。つまりこの押さえ部111の垂直方向Vの移動を許容させるために、ストッパー部113よりも垂直方向Vの上方に固定手段12を位置させるようにしている。
なお、押さえ部111と溝21とのクリアランスは、保護シート30を挟持して密着する(図1(D)参照)ことが可能であるとともに、図3(B)に示すロック状態以外では作業者が手動で押さえ部111や保護シートを着脱可能な程度に、必要最小限なクリアランスが適宜選択される。
このように、固定手段12は、回転子122の角度変位により枠体11(押さえ部材102)の長手方向に張力を作用させ保護シート30をシーラー20に保持固定する。より詳細には、固定手段12は、少なくとも枠体11の一部(押さえ部材102)の長手方向に張力を作用させた状態で枠体11(の押さえ部111)とシーラー20(の溝21)との間で保護シート30を挟持する。保護シート30を挟持して固定したロック状態(図3(B))では、押さえ部111は溝21により移動が規制されており、また、回転子122とシーラー20は摺動不可となっているため、保護シート30を確実の保持、固定することができる。これにより、従来のように板状部材とネジで固定することなく、保護シート30をシーラー20に取り付け、固定できる。
また、シール装置100の運転中は、シーラー20が加熱される。これに伴い、枠体11(押さえ部111)も熱が伝達される。このとき、本実施形態の押さえ部111は、シーラー20よりも線膨張係数が小さい材質により構成されている。したがって、運転中のシーラー20の加熱により、シーラー20が熱膨張しても押さえ部111の熱膨張の程度はシーラー20より小さく、両者の係合がより強まる方向に働く。例えば産業用のシール装置100では一般的に、上下のシーラー20に係る荷重も大きく、またその上下動作の回数も多くなるが、このような場合であっても、動作中においてシーラー20からシート固定器具10が離脱することを回避できる。また従来のように、保護シートをボルトの締結により固定する構成(交換の度にボルトを締結する構成)では、使用中においてボルトの締結状態(緩み等が生じていないか、劣化していないか)など、定期的なメンテナンスの回数も多くなる場合がある。これに対し本実施形態では、ボルトの締結状態に関するメンテナンスが不要となるため、メンテナンス作業の効率も高めることができる。
ところで、枠体11(押さえ部111)とシーラー20の溝21のクリアランスは必要最小限に設定されているため、ストッパー部113においては押さえ部111を(保護シート30を介して)シーラー20の溝21に挿入する際、或る程度の押圧力が必要となる。また、押さえ部111は端部T2をまず溝21に押し込み、その後、端部T1を固定手段12により溝21に押し込むと、その間がわずかに溝21から浮いた(上に凸状に撓む)状態となる場合もある。
そこで本実施形態では専用の押し込み手段(押し込み具)15により、押さえ部111を容易且つ確実にシーラー20の溝21に押し込むようにした。
図4は、本実施形態のシート固定器具セット50の一例を示す概要図であり、同図(A)が押し込み手段15を示す平面図、同図(B)が正面図、同図(C)が同図(A)のB-B線断面図である。また、同図(D)~同図(F)は、シート固定器具10と組み合わせた使用状態を示す図であり、同図(D)が平面図、同図(E)が正面図、同図(F)が同図(D)のC-C線断面図である。な、シート固定器具10については上述の構成と同様であるので、説明は省略する。
同図(A)~同図(C)に示すように、押し込み手段15は硬質且つ単位体積当たりの重量がある程度大きい部材(例えば、アルミニウムや鉄など)により構成され、例えば、片手で把持可能であるとともに、枠体11の対向配置される2本の押さえ部111を同時に押圧可能な構成を有する。この例では、押し込み手段15は、把持部15Aと、一組の押圧部15Bを有する。把持部15Aは例えば平面視において矩形状の平板で構成された部位であり、一組の押圧部15Bは、把持部15Aの長辺に沿って対向するように配置されたそれぞれ略直方体形状の部位である。
同図(D)~同図(F)に示すように、押圧部15Bは少なくとも一部(この例では下面部分の一部)が押さえ部111と当接し、これを押圧可能に構成される。つまり一組の押圧部15Bは、対向する2本の押さえ部111を同時に押圧可能となるように、2本の押さえ部111の間隔(シーラー20の溝21同士の間隔)に対応する間隔で離間して配置される。
図5を参照して、第1実施形態に係る保護シート30の固定方法について説明する。同図は、保護シートの固定方法について時系列で説明する概要図であり、同図(A)~同図(E)が長手方向の端部T1からの側面視(他の端部T2からの側面視も同様)、同図(F)~同図(I)はそれぞれ、同図(B)~同図(E)に対応する正面視である。なお、シーラー20はシール装置において上下に対向配置されるものの一方側(例えば、下方側)のみを示しているが、他方側(例えば上方側)においても同様である。
本実施形態のシート固定方法は、シーラー20に保護シート30を重ねるステップと、シーラー20の形状に沿う枠体11の一部をシーラー20の一部に係合させるステップと、少なくとも枠体11の長手方向に張力を作用させながら該枠体11とシーラー20で保護シート30を挟持するステップと、を有する。
まず、同図(A)に示すように、シーラー20の少なくともシール面20Aが完全に覆われるように、シーラー20に保護シート30を重ねる。シーラー20は例えばシール装置100(図1(A)参照)から取り外し、シール面20Aが上方に向くように台などに載置しておく。保護シート30は、より詳細にはシール面20Aを完全に覆うとともに、シーラー20に設けられた2本の溝21の内壁にも十分に(連続して)密着可能なサイズとする。保護シート30は例えば図示のように原反ロールから所定量を引き出すものであってもよいし、予め所定長さにカットされたシートであってもよい。
次に、同図(B)、同図(F)に示すように保護シート30を介して、溝21の上方に押さえ部111が位置するように重ねる(この状態では、押さえ部111のいずれも溝21に係合していない)。この時、固定手段12においては、回転子122は図3(A)に示すアンロック状態の位置に設定されている。すなわち、平面部125がシーラー20の第一の側面25と対向するように、配置される。
次に、同図(C),同図(G)に示すように、ストッパー部113(支持部材114)の内側と、シーラー20の長手方向の一方の端部T2側の側面(第二の側面26)の外側とを位置合わせし、ストッパー部113(支持部材114)の内側と、シーラー20の第二の側面26とが当接するように上方から押し込む。このとき図示は省略しているが、例えば図4に示す押し込み手段15を用いて押さえ部111を押圧し、溝21内に押し込み、嵌合させる。ストッパー部113側においては、押さえ部111が溝21に嵌合することにより、それらの間に保護シート30が挟持され、シーラー20に固定される。
このとき、同図(G)に示すように、固定手段12側は、ストッパー部113より垂直方向Vにおいて上方に位置し、押さえ部111の下方への移動が許容された状態となっている。つまり押さえ部111は水平方向Hにおいて傾斜した状態となっている。
この状態で、固定手段12の操作により、固定手段12から枠体11の長手方向の他方の端部T2までの長さを変位させる。具体的には、回転子122の治具用穴127に治具(レンチなど)を挿入し、円弧部124が第一の側面25に対向するように(この例では時計回り方向に)回転子122を回転させる(図3(C)参照)。
回転子122の回転に伴い、平面部125と円弧部124の境界126が第一の側面25に当接する。回転子122とシーラー20とが当接すると互いに摺動不可となり、押さえ部111の垂直方向Vの移動が許容される範囲で境界126を支点として回転子122が回転し、てこの原理で溝21内に収まる。これにより、少なくとも押さえ部111には長手方向に張力が作用する(長手方向に引っ張られた状態となる)。
このように本実施形態では、枠体11の長手方向の端部T2(ストッパー部113側の端部)側をシーラー20の対応する端部側に係合(嵌合)した後、固定手段12を操作することにより枠体11の他の端部T1側をシーラー20の対応する端部側に係合(嵌合)するとともに、枠体11(押さえ部111)の長手方向に張力を作用させる。
その後、同図(D)、同図(H)に示すように、押し込み手段15により、押さえ部111の両端部T1,T2以外の部分を(中間付近を中心に)押圧し、また全体的に再度押圧し、溝21との嵌合を確実にする。枠体11のストッパー部113付近と固定手段12付近はそれぞれ集中的に押圧され、溝21に係合しているが、長尺の押さえ部111の両端部T1,T2以外の部分(中央付近)は押し込みが不足している(図示において上方に凸状に湾曲している)場合がある。そこで、押し込み手段15により、押さえ部111の中央付近を押し込むとともに、両方の端部T1,T2付近も含めて全体的に、追加で押し込みを行う。
これにより保護シート30は、押さえ部111と溝21の間に確実に挟まれ、シーラー20に保持、固定される。また、枠体11は長手方向に張力が作用しており、シーラー20からの離脱を防止できる。
そして同図(F),同図(I)に示すように、不要な保護シート30の部分を切除し、保護シート30の固定が完了する。
保護シート30の交換の際は、図(F),同図(I)の状態(ロック状態)から、回転子122をロック時とは逆方向に回転させる。具体的には、回転子122の治具用穴127に治具(レンチなど)を挿入し、再び平面部125が第一の側面25に対向するように、この例では反時計回り方向に回転子122を回転させる(図3(B)参照)。
回転子122の回転に伴い、図3(C)に示す状態(回転子122の回転方向は逆)を経て、固定手段12側において押さえ部112と溝21の係合が解除される。そして枠体11をシーラー20から取り外し、保護シート30を交換する。
図14に示す従来のシートの固定方法では、保護シートをシーラーに被せるステップ、シーラーの一方側の側面において、シーラー、保護シートおよび板部材をボルト締結位置に一致させるステップ、および複数のボルトで固定するステップがあり、これをシーラーの両側面側で行わなければならず、保護シートの取り付け(交換)作業の工数が多く、作業自体も煩雑となる問題があった。
本実施形態によれば、ボルトの締結位置での位置合わせ作業や、各ボルトの締結作業が不要となるので、保護シートの取り付け(交換)作業の工数を大幅に低減でき、容易に保護シートの取り付けが可能となる。
また、第1実施形態における回転子122は、上記の略D型柱状の形状に限らず、回転軸121を中心として外形状(外周面)が非対称の回転子(カム型の回転子)であれば他の形状であってもよい。例えば、正四角柱状や円柱状であって回転軸121が中心位置からずれるように設けられた構成でもよいし、回転軸121に直交する断面が長方形状や楕円形状の柱状であってもよい。
<第2実施形態>
次に、図6から図13を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一の構成は同一符号で示し、説明は省略する。図6は、第2実施形態に係るシート固定器具セット250を示す外観図であり、同図(A)が全体構造を示す図1(B)に対応する正面図、同図(B)が押し込みユニット230を示す正面図、同図(C)が同図(B)の平面(上面)図である。なお、第2実施形態では、水平方向Hを更に長さ方向Lと幅方向Wに分けて説明する。
図6(A)に示すように、第2実施形態のシート固定器具セット250は、シート固定器具210と、押し込みユニット230を有する。そして押し込みユニット230は、シーラー20を載置可能な台座231と、台座231の一部にスライド可能に取り付けられてシート固定器具210の一部をシーラー20に係合させる押し込み手段240と、を有する。
同図(B)、同図(C)に示すように台座231は、例えば略直方体形状の載置部232と脚部233を有する。第2実施形態では、水平方向Hのうち載置部232の長手方向(同図では図示左右方向)を長さ方向Lとし、短手方向(図7(C)では図示上下方向)を幅方向Wとして説明する。脚部233によって載置部232はその下面(裏面)232Dが脚部233の例えば作業台などとの接地面233Dよりも垂直方向V(押し込みユニット230の高さ方向)の上方に位置するように支持されている。
同図(C)に示すように押し込み手段240は、例えば略コの字状の枠部241と、スライド軸242と、ハンドル243と押圧部245を有する。枠部241は、その長辺を構成し、平板棒状部材で対向配置されるアーム部241Aと、枠部241の短辺を構成し、対向するアーム部241Aを一端側で連結する連結部241Bを有する。それぞれのアーム部241Aの所定位置には、枠部241の内側に突出する押圧部245が設けられる。この例では押圧部245はボルト244によりアーム部241Aに固定されるナットであるが、これに限らず、枠部241の内側に突出するようにアーム部241Aに一体成型されるなどしたものであってもよい。後述するが、第2実施形態では、押圧部245が押さえ部111と当接し、これを押圧可能である。
スライド軸242は、載置部232の下面232Dにおいて、2本のアーム部241Aを他端側が回動可能となるように連結支持する。
ハンドル243は、所定長さのバー(棒)状部材であり、連結部241Bの長手方向のほぼ中央部にこれと直交するように(アーム部241Aと平行に延在するように)取り付けられる。
押し込み手段240は、2本のアーム部241Aが載置部232の側面(幅方向Wにおいて対向する側面)の外側に位置し、連結部241Bとハンドル243が載置部232より上方に位置し、スライド軸242が載置部232(下面232D)の下に位置するように台座231に取り付けられる(同図(A),同図(B))。このような構成により押し込み手段240は、台座231(載置部232)の長さ方向Lの一端側から他端側までスライド(往復移動)可能であり、また同時にスライド軸242を中心に枠部241とハンドル243が一体的に所定角度の範囲(押圧部245が180度回転する範囲)で回動可能となっている(同図(B)参照)。
図7は、シート固定器具210とシーラー20、および押し込み手段240を示す図であり、同図(A)がシート固定器具210を示す図であって図2(A)に対応する平面図、図7(B)が正面図であり、図7(C)が図2(D)、図2(E)に対応する正面図であり、図7(D)がシーラー20を示す図であり、図1(F)に対応する断面図である。また同図(E)は押し込み手段240による押さえ部111の押し込みの状態を示す平面図である。
シート固定器具210の構成は、固定手段12の固定子222の形状が第1実施形態の固定子122の形状と異なる以外は、第1実施形態と同様であり、重複する部分については説明の一部を省略する。
図7(A)~同図(C)を参照して、固定手段12は、枠体11の長手方向の端部(ストッパー部113と逆側の端部、同図(A)において右方の端部T1)に設けられ、押さえ部111をシーラー20(の溝21内)に固定するとともに、少なくとも枠体11の長手方向に張力を作用させることが可能な手段である。ここでは一例として、固定手段12は、枠体11の短手方向に延びる回転軸121と、回転軸121に回転自在に支持された回転子222とを有する。回転子222は、同図(B),同図(C)に示すように回転軸121の延在方向に長い円柱状部材である。つまり第2実施形態の回転子222は、回転軸121に垂直な断面が正円である点で、第1実施形態と異なる。押さえ部111の長手方向(長さ方向L)の長さ(端部T1側から端部T2側までの長さ)は、シーラー20の長手方向の長さ(端部T1側から端部T2側までの長さ)より長い一方、回転子222の外周面123からストッパー部113の支持部材114までの距離L3(同図(C))は、シーラー20の長手方向の長さより短い。
同図(D)に示すように、シーラー20も第1実施形態とほぼ同様であり、基部20Cと、シール部20Bを有してなり、断面視において基部20Cからシール部20Bが突出する略凸形状を呈しているが、この例ではシール部20Bの上面に樹脂製のプレート20Pが配置され、その上面が実質的なシール面20Aとなる。なお、プレート20Pを設けなくてもよい。シート保持面20Dに溝21が設けられ、主にシール面20A,シート保持面20Dおよび溝21により保護シート30(ここでは不図示)を支持する点は第1実施形態と同様である。溝21内には、破線で示すように押さえ部111が係合され、シート保持面20Dとほぼ同一面に、押さえ部111の一の側面111Sが露出する。
同図(E)に示すように、押し込み手段240は、台座231の載置部232に載置されたシーラー20の溝21内に、押さえ手段111を押し込む。台座231には、コの字状の枠部241を有する押し込み手段240が取り付けられているが、シーラー20は、押圧部245が載置部232から離れる方向に押し込み手段240を適宜回動(起立)させた状態で、押圧部245と載置部232の間に挿入される(図6(A)参照)。押圧部245は、押し込み手段240の枠部241の内側に突出する。押圧部245のアーム部241Aからの突出量は、押さえ部111の一の側面111Sの少なくとも一部を押圧可能な量である。作業者が押し込み手段240のハンドル243を、垂直方向Vの下方に押し込むと、押圧部245が押さえ部111を垂直方向Vの下方に押し込み、溝21内に係合させる。また、スライド軸242により押し込み手段240は、シーラー20の長手方向に任意に移動可能である。つまり、押し込み手段240は押さえ手段111をその長手方向(長さ方向L)の任意の位置で押し込み可能である。
第2実施形態の枠体11は、回転子222が略円柱状であり(回転子222の状態によらず)常時、回転子222の外周面123から支持部材114までの距離L3はシーラー20の長手方向の距離よりも短く設定されている(同図(C))。また回転子222はシーラー20の第一の側面25(図6(A)参照)と当接した場合でも、押さえ部111に張力を作用させつつ回転可能(摺動可能)に構成されている。シート固定器具210は、押し込み手段240の押圧部245によって押さえ部111をシーラー20の溝21に押し込む。これに伴い固定手段12が回転子222を回転させながらシーラー20の側面(第一の側面25)を摺動し、溝21内において押さえ部111の下方への移動を許容する。
すなわち押し込み手段240に係る押し込み力により回転子222が回転しながら下方に移動し、シーラー20(溝21)と係合することにより押さえ部111には引張の歪み(伸び)が生じる。この結果押さえ部111は長手方向(長さ方向L)に張力を作用させて保護シート30をシーラー20に保持固定する。
図8から図10を参照して第2実施形態における保護シート30の固定方法について更に説明する。図8は保護シート30の固定方法について時系列で説明する概要図であり、シーラー20とシート固定器具210を抜き出して示す図である。図8では押し込みユニット230の記載を省略している。図8(A)~同図(C)が長手方向の端部T1からの側面視(他の端部T2からの側面視も同様)、同図(D)、同図(E)はそれぞれ、同図(B)、同図(C)に対応する正面視である。なお、シーラー20はシール装置において上下に対向配置されるものの一方側(例えば、下方側)のみを示しているが、他方側(例えば上方側)においても同様である。また、図9は、枠体11のストッパー部113(支持部材114)側をシーラー20に係合させる様子を示す図であり、シート固定器具セット250の要部を抜き出して示す正面図である。また、図10は、固定手段12側をシーラー20に係合させる様子を示す図であり、同図(A)~同図(C)がシート固定器具セット250の要部を抜き出して示す正面図、同図(D)~同図(F)が平面図である。また、図9、図10では保護シート30の記載を省略しているが、いずれも図8に示すように、シーラー20は保護シート30で覆われているものとする。
まず、図6(A)に示すように台座231の載置部232にシーラー20を載置する。このとき、台座231には、コの字状の枠部241を有する押し込み手段240が固定されているが、押圧部245が載置部232から離れるように押し込み手段240を適宜回動(起立)させ、押圧部245と載置部232の間にシーラー20を挿入する。そして、図8(A)に示すように、シーラー20の少なくともシール面20A(プレート20Pの上面)が完全に覆われるように、シーラー20に保護シート30を重ねる。保護シート30は、より詳細にはシール面20Aを完全に覆うとともに、シーラー20に設けられた2本の溝21の内壁にも十分に(連続して)密着可能なサイズとする。保護シート30は例えば図示のように原反ロールから所定量を引き出すものであってもよいし、予め所定長さにカットされたシートであってもよい。
次に、同図(B)に示すように保護シート30を介して、溝21の上方に押さえ部111を配置する(この状態では、押さえ部111のいずれも溝21に係合していない)。
次に、ストッパー部113側をシーラー20に係合させる。詳細には、図9を参照して説明する。図9(A)に示すようにこの例では、シーラー20の長手方向(長さ方向L)における一方の端部T2側の側面には、例えば略Z字状のブラケット28が設けられている(この場合、シーラー20の第二の側面26はブラケット28の一部により構成される)。枠体11は、回転子222の外周面123から支持部材114までの距離L3がシーラー20の長手方向の距離よりも短く設定されているため、作業者はまず図9(A)に示すように、押さえ部111のストッパー部113側が低く、固定手段12側が高くなるように枠体11を傾斜させてシーラー20のブラケット28の庇部28Aの下に潜らせる。そしてその状態で枠体11をシーラー20の他方の端部T1側(図示右側)に移動させてブラケット28にストッパー部113を係合させる(シーラー20の第二の側面26にストッパー部113(支持部材114)を当接させる)(図9(B))。
そして作業者は図9(C)に示すように押し込み手段240を回動させて、押圧部245をストッパー部113近傍の押さえ部111(側面111S)に当接させる。引き続き作業者はハンドル243を下方に押し込み、押さえ部111の一部を溝21に係合させる。図9での図示は省略しているが、保護シート30の一部は押さえ部111とシーラー20(溝21)の間に保持固定される。
作業者はそのまま、押し込み手段240を、シーラー20の他方の端部T1側(図示右側)に移動させながら、間欠的にまたは連続して、ハンドル243を下方に押し込む動作(押し込み動作)を継続する。これにより押さえ部111はシーラー20の他方の端部T1側に向かって順次、シーラー20(の溝21)と係合し、保護シート30も順次固定される。
作業者は、シーラー20の一の端部T2から他の端部T2に向かう長手方向の途中まで(例えば、ストッパー部113側からからシーラー20の全体長さの1/2程度~2/3程度まで)押さえ部111の押し込みを行った後、押し込み動作を一旦停止する。そして押圧部245と押さえ部111の当接を解除し(つまり押圧部245が押さえ手段111から離間するように押し込み手段240を回動させ)、押し込み手段240のみを固定手段12付近まで移動させる。
図10(A)~同図(C)はシーラー20の端部T1付近におけるシート固定器具セット250を示す拡大正面図であり、同図(C)は同図(B)の要部のみを抜き出してさらに拡大して示す正面図である。同図(D)は同図(A)の平面図であり、同図(E)は同図(B)の平面図であり、同図(F)は同図(E)の一部を更に抜き出して示す拡大図である。
図10(A)、同図(D)に示すように、固定手段12付近において作業者は押し込み手段240を回動させて、押圧部245を固定手段12近傍(シーラー20の端部T1よりもわずかに中心より)の押さえ部111(側面111S)に当接させる。引き続き作業者はハンドル243を下方に押し込み、押さえ部111の一部を垂直方向Vの下方に移動させ溝21内に係合させる。
作業者はそのまま、押し込み手段240を、シーラー20の他方の端部T1側に移動させながら、間欠的にまたは連続して、押し込みの動作を継続する。これにより押さえ部111はシーラー20の他方の端部T1側に向かって順次、シーラー20(の溝21)と係合し、保護シート30も順次固定される。
そして同図(B)、同図(C)、同図(E)、同図(F)に示すように、シーラー20の第一の側面25より外側(同図(E)においては一点鎖線より図示右側)において、押圧部245により押さえ部111の固定手段12側の最端部111Eの一部(その側面111S)を押圧する。最端部111Eは回転子222の直近で、例えば回転軸121が挿通される位置の上方などである。
最端部111Eに係る押し込み手段240に係る押し込み力により、回転子222は端部T1側の側面(第一の側面25)に当接した状態で垂直方向Vの下方に向かって回転する。これに伴い押さえ部111には引張の歪み(伸び)が生じ、その状態で溝21に係合する。この結果押さえ部111は長手方向(長さ方向L)に張力を作用させて保護シート30をシーラー20に保持固定する(図8(C)、同図(E))。
作業者は、押さえ部111が溝21の底部21Bに当接した後(図10(C))、更に(追加で)ハンドル243を下方向に押し込み、押さえ部111と溝21の底部21Bの間に垂直方向Vの反力を生じさせる。押さえ部111と溝21の底部21Bの間に垂直方向Vの反力を生じさせることにより、保護シート30とシーラー20の間に摩擦力が生じ、運転中における保護シート30の抜け落ちを防止できる(これについては後述する)。
その後作業者は、固定手段12側から再びストッパー部113側に向かい、押し込み手段240を移動させながら間欠的または連続して押さえ部111の押し込み動作を行う。この例では図9に示すようにストッパー部113側から押し込み動作を行い、シーラー20の長手方向の途中で一旦押し込み動作を停止後、固定手段12側の押し込みを行っており、押し込みが行われていない領域では押さえ部111と溝21の係合が不足している(図示において上方に凸状に湾曲している)。そこで当該領域を押し込み、全体的に、押さえ部111と溝21を係合させる。
これにより保護シート30は、押さえ部111と溝21の間に確実に挟まれ、シーラー20に保持、固定される。また、枠体11は長手方向に張力が作用しており、シーラー20からの離脱を防止できる。
そして図8(C),同図(E)に示すように、不要な保護シート30の部分を切除し、保護シート30の固定が完了する。その後シーラー20を台座231から取り出し、シーラー支持部101(図1(A)参照)に取り付ける。
保護シート30の交換の際は、載置部232に使用済みのシーラー20を取り付け時とは天地逆向き、すなわち保護シート30が載置部232に接するように配置する。この場合、保護シート30の取り付け時と同様に、押圧部245が載置部232から離れるように押し込み手段240を適宜回動(起立)させ、押圧部245と載置部232の間にシーラー20を挿入する(図6(A)参照)。そして押さえ部111の固定手段12側の最端部111E(その側面111S)を押圧部245により押圧する。最端部111Eは、載置部232に載置された状態において垂直方向Vの上方から下方に、シーラー20にあってはシーラー支持部101の面からシール面20A側に向かって押圧され(例えば、図10(C)を参照すると図示下方から上方に向かって押圧され)、回転子222の回転に伴い押さえ部111がシーラー20の溝21から離脱し、固定手段12側において押さえ部112と溝21の係合が解除される。そして枠体11をシーラー20から取り外し、保護シート30を交換する。
第2実施形態においてもボルトの締結位置での位置合わせ作業や、各ボルトの締結作業が不要となるので、保護シートの取り付け(交換)作業の工数を大幅に低減でき、容易に保護シートの取り付けが可能となる。
また、押さえ部111の長手方向に張力を作用させて保護シート30を取り付けるには大きな力(例えば、40kgf~50kfg程度)が必要となるが、第2実施形態の押し込み手段240によれば、第1実施形態と比較してハンドル243に作用させる力を軽減でき(例えば、30kgf程度の押圧力で取り付け可能)、取り付け作業も容易となる。
<強度および作用する力の検証>
以下、第2実施形態におけるシート固定器具210を例に強度、および各所に作用する力を検証した。その一例について説明する。以下の数値は一例であって、安全に保護シート30を固定可能な強度(許容範囲内の引張応力とせん断応力)が維持できる数値であれば以下に説明する数値に限られない。
図11は、検証を行ったシート固定器具セット250の概要を示す図であり、同図(A)がシート固定器具セット250の全体正面図、同図(B)がシート固定器具210の正面図、同図(C)が同図(B)の側面図である。いずれも、同図(A)に示すように押圧部245によって押さえ部111の最端部111Eの押圧が完了したロック状態(押さえ部111が溝21の底部21Bと当接したのち、更に下方に力を加えた状態)の各所に作用する力、および各構成の数値を図示している。
同図(A)を参照して、押し込み手段240は一例として、スライド軸242からハンドル243の先端までの長さL1が271mm、ハンドル243(アーム部241A)と台座231(載置部232)のなす角度αが51度とする。上述の説明においても同様であるが、ハンドル243は載置部232に対して傾斜しており、ハンドル243を下方に押し込むと、ハンドル243の軸が存在する面に対して垂直に(図示右下または左下方向に)力が働く。具体的に、同図(A)の状態でハンドル243を下方に押し込むと、ハンドル243には図示右下方向の力F1が働き、押さえ部111の最端部111Eには押圧部245を介して力F1と平行な方向の力F3が付与される。また、最端部111E(の直近)に固定された回転軸121を介して回転子222も同様の力F3が付与される。力F3の水平方向H(長さ方向L)の成分が力F3xであり、力F3の垂直方向V成分が力F3yである。また、力F3yの反力として垂直方向Vの上向きの力F2が生じる。
<<強度>>
ここでは一例として、常温(20℃)下において、押さえ部111が真鍮製のバー部材であり、安全率5、死荷重の場合の許容引張応力(ft)が40N/mm2~60N/mm2であり、許容せん断応力(fs)が32mm2~48mm2の場合について検証した。その結果について説明する。
一例として押さえ部(真鍮製のバー部材)111は、その本数nが2(本)、側面111Sの厚み(溝21の底部21Bの幅方向の長さ)t(同図(C)参照)が3mm、幅(溝21の深さ方向の長さ)b(同図(C)参照)が6mm、断面積(A=n×t×b)が36mm2である。また、押さえ部111の引張方向(長手方向)の歪み(ε)は設計値で0.25mm、真鍮のヤング率(E)は、98Gpaである。
この条件における、押さえ部111の引張方向の強度(引張応力σ)は、引張方向の歪みε×ヤング率E(0.25×98)=24.5N/mm2となる。つまり許容引張応力ftの最大値(60N/mm2)以下の安全な値となる。
また、せん断方向の強度(せん断応力)について検証する。まず回転子222に作用する力のとして、押さえ部111の長手方向の力F3xは、引張応力σ×断面積A=24.5×36=882Nである。また、垂直方向V(鉛直方向)下向きの力F3yは力F3x×tanα=1089.2Nであり、その反力(垂直方向V(鉛直方向)下向きの力)F2も同様に、1089.2Nである。この場合、押さえ部111の平均せん断応力τは力F3y/断面積A=30.3N/mm2となり、許容せん断応力fsの最大値(48N/mm2)以下の安全な値となる。
<<固定手段12による固定に関する力>>
同図(B)を参照して、固定手段12による固定に係る力(回転子222に係る力)の検証結果について説明する。押し込み手段240により固定手段12(回転子222)を押し込み、押さえ部111を溝21に係合する際、押さえ部111は長手方向に伸長し(歪みε=0.25mm)、引張応力(σ)が発生して、固定手段12(回転子222)がシーラー20の側面(第一の側面25)を力F3xで圧迫する。シーラー20は力F3xの反力を回転子222に与え、これにより押さえ部111が溝21内に固定される(ロック状態となる)。
ロック状態となった回転子222その外周面123と第一の側面25との間に摩擦力Fms1が生じ、容易には離脱しない状態となっている。この摩擦力Fms1は、鉄の摩擦係数kを0.52とすると、F3x×k1=46.8kfgとなる。つまり、回転子222のロック状態の解除に必要な力も46.8kfgとなり、製袋機などの通常の運転では(これを超える外力が加わらない限り)容易には外れることはないといえる。
また、同図(C)を参照して保護シート30のズレや抜け落ちを検証した結果について説明する。製袋機などの実際の運転においては、包装材が保護シート30に接着(溶着)する場合もあり、これにより保護シート30がシーラー20から抜ける可能性がある。保護シート30のシーラー20からの抜け落ち(またはズレ)が生じるのは、シーラー20の幅方向(同図(C)の左右方向)の保護シート30とシーラー20の間の摩擦力Fms2を超える力がシーラー20の幅方向(同図(C)の左右方向)に加わった場合である。
保護シート30が例えば、PTFEシートの場合の摩擦係数k2を0.10とすると、その摩擦力Fms2は、力F3y×k2=11.1kgfとなる。製袋機などの通常の運転では(これを超える外力が加わらない限り)保護シート30は容易には外れることはないといえる。
なお、保護シート30とシーラー20(の溝21)との間に上記の摩擦力Fms2を生じさせるためには、保護シート30に押さえ部111を介して力F3yが働いていることが必要である。このため、上述したように作業者は、押さえ部111が溝21の底部21Bに当接した後(当接した状態で固定作業を完了するのではなく)、更にハンドル243を下方に追加で押し込み(同図(A)の力F1を加え)、押さえ部111と溝21の底部21Bの間に垂直方向Vの力F3yを生じさせて、取り付け作業を完了させる。
第2実施形態では例えば、溝21の深さと押さえ部111の幅bが同等である(この点については第1実施形態においても同様である)。シーラー20(溝21)が存在している領域で押さえ部111を押圧する場合、押圧部245がシーラー20のシート保持面20Dと当接し、十分に垂直方向Vの下方に押圧できない可能性もある。第2実施形態ではシーラー20の第一の側面25より外側において押さえ部111を押圧することで、シート保持面20Dに規制されることなく、押さえ部111を十分、下方に押圧することができる(溝21が存在する領域においては溝21の底部21Bに押さえ部111を十分に押し付けることができる)。そして回転子222には力F3を与えた状態で押さえ部111をシーラー20に固定(ロック)できる。これにより、押さえ部111と溝21の底部21Bの間に垂直方向Vの力F3yを生じさせることにより、保護シート30とシーラー20の間に摩擦力が生じ、運転中における保護シート30の抜け落ちを防止できる。
さらに固定手段12の固定(ロック)に必要な力F1(ハンドル243を押す力)は、反力F2×長さL2/長さL1=27.9kgfとなる。この程度の力F1であれば作業者の手作業によっても容易に付与可能である。
図12は、熱膨張による強度の検証結果を示す一例である。押さえ部111が例えば真鍮であり、シーラー20が例えばアルミニウムの場合、いずれも熱膨張により長手方向の長さが変位し、上記の押さえ部111の強度にも変化が生じる。
ここでは一例として、熱膨張前の温度t1(常温(20℃))から、温度t2(100℃)まで温度上昇(温度差Δt=80℃)した場合の強度の変化について検証した。押さえ部111(真鍮製のバー部材)の線膨張係数α1は2.05E-05/℃、熱膨張前の長さ(常温、20℃における長さ)Lc1は650mm、シーラー20(アルミニウム)の線膨張係数α2は2.38E-05/℃、熱膨張前の長さ(常温、20℃における長さ)Lc2は640mmである。
押さえ部111(真鍮)の熱膨張前後の長さの変化量(熱膨張による伸び量)と、シーラー20(アルミニウム)の熱膨張前後の長さの変化量(熱膨張による伸び量)との差分Δlは例えば、0.15mm(=|Δt(α1×Lc1―α2×Lc2)|)である。
本実施形態では、シーラー20は押さえ部111より線膨張係数が大きく(温度上昇により長さ方向の伸び量が多く)、熱シールを行う製袋機の場合には運転中の温度上昇により、よりシーラー20と押さえ部111の係合が強力になる。上記の条件において、温度がt2まで上昇した場合の各所の強度を算出した。その結果を図12に示す。図12においては図11を参照して説明した常温の場合の強度も併記している。
この結果、温度上昇後であっても引張応力σは39.5N/mm2であり、許容引張応力ftの最大値(60N/mm2)以下の安全な値となる。一方、シーラー20と回転子222の摩擦力Fms1は75.3kgfとなり、常温(t1)時よりも強固にシーラー20と押さえ部111が係合することがわかる。
なお、第1実施形態においても同様の検証により、安全に保護シート30を固定可能な強度が維持できる数値(各種設計値)が適宜選択されている。一例として、第1実施形態のロック状態(図3)において固定子122に働く力は、第2実施形態のロック状態(図11(A))において固定子222に働く力F3(その水平方向成分の力F3x、その垂直方向成分の力F3y)と同様であり、引張方向の歪みε、摩擦力Fms1、摩擦力Fms2も第2実施形態のそれらと同値である。
<変形例>
図13は押し込み手段240の他の例を示す平面図である。押し込み手段240は、押さえ部111を押圧可能な1組の押圧部245を有するが、これに加えて、他の(1組の)押圧部246を有してもよい。この例では押圧部245よりもハンドル243側に、押圧部245同士の間隔よりも狭い間隔で他の押圧部246を設けている。他の押圧部246のアーム部241Aの固定方法は、押圧部245と同様である。これにより、シール面20Aの幅(幅方向Wの長さ)が異なる2種のシーラー20について、同一のシート固定器具セット250を用いることができる。また3組以上の押圧部を設けてもよい。
また、図示は省略するが、例えば、押圧部245(以下、他の押圧部246も同様)を固定するボルト244を挿通する孔を、アーム部241Aの長手方向(図示左右方向)に長い長円形状とするなどし、押圧部246の固定位置をアーム部241Aの長手方向に調整可能としてもよい。押圧部245とスライド軸242の距離を調整することによりハンドル243の押し込み力(力F1)を調整できる。
また、スライド軸242や連結部241Bを例えばスライド可能な部材などで構成し、その長さ(図示上下方向の長さ、押し込み手段240の幅)を調整可能としてもよい。更には、台座231やハンドル243の形状も図示のものに限らない。
また、上述の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)では、シーラー20がアルミニウム材で、押さえ部111が真鍮である場合を例示したが、押さえ部111は、シーラー20の材質よりも線膨張係数が小さい材料であれば上記の例に限らない。
例えば、押さえ部111が、シーラー20の材質よりも線膨張係数が小さい材料であることを前提に、アルミニウム材は、アルミニウム合金またはアルミニウムを主成分とする(アルミニウムを50%以上含む)部材であってもよいし、他の部材であってもよい。また、押さえ部111は真鍮を含む金属であっておよいし、他の材料であってもよい。
また、上述した本実施形態のシーラー20はインパルスシーラ、超音波シーラー、高周波シーラーであってもよい。つまり、シール装置は、ヒートシールに限らず、超音波シール、高周波シールなど他のシール方法によるものであってもよい。
また、保護シート30が付着防止用シートである場合を例示したが、これに限らず、何らかの目的でシーラー20に取り付けるものであればよく、例えば、防汚シートや、防水シートなどであってもよいし、また例えば熱を均一に分散させるようなシートであってもよい。また、上述したような高周波シーラーや超音波シーラーに適用可能なシートであってもよい。
また、固定手段12は、他の方法によって枠体の長手方向に張力を作用させる構成であってもよい。
また、枠体11の押さえ部111は、シーラー20の溝21に嵌合する構成に限らず、シーラー20の側面(外表面)に当接して係合し(すなわち外嵌め状態となり)、押さえ部111とシーラー20の間に保護シート30を挟持する構成であってもよい。
更に本発明のシート固定器具10、210、シート固定器具セット50.250およびシート固定方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。