JP2022171644A - イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及びイオン交換膜セル - Google Patents

イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及びイオン交換膜セル Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、イオン透過に有効な膜の表面積を広くでき、加えて広範囲な塩濃度、及び膜に接触している2種の溶液間の塩濃度差が大きな場合においても膨潤による変形や破損の少ない物理的強度の高いイオン交換膜を提供することにある。【解決手段】凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっており、前記凸部が直線状又は曲線状に延設され、前記凸部と凸部の間の前記凹部は、前記凸部の長手方向に沿って前記凸部の短手方向に隣接する第1の凹部を含み、前記凸部が長手方向に頂部と側面とを有し、前記側面が前記頂部から前記第1の凹部に向かって傾斜しているイオン交換膜。【選択図】図31

Description

本発明は、凹凸形状を有するイオン交換膜、前記イオン交換膜の製造方法及び前記イオン交換膜を使用したイオン交換膜セルに関する。
近年、再生可能エネルギーの利用促進が求められている。再生可能エネルギーの1つとして、海水や河川水などの塩分濃度が異なる2つの塩水間に存在する塩分濃度差エネルギー(SGE)を電力に変換する技術がある。このSGEは太陽光発電や風力発電と比較して高稼働率、少設置面積という利点があり、ベースロード電源として利用することも可能である。SGEを利用した発電には、半透膜を用いた浸透圧発電(PRO)とイオン交換膜を用いた逆電気透析(RED:Reverse Electro-Dialysis)発電があるが、海水レベルの塩水を使用する場合にはPROよりRED発電に優位性があるといわれている。RED発電は、陽イオン交換膜(CEM:Cation Exchange Membrane)と陰イオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)を使用する。CEMは陽イオンを、AEMは陰イオンを選択的に透過させる特性を有する。まずREDの元の技術である電気透析(ED:Electro-Dialysis)について説明する。このEDではCEM、高濃度側流路、AEM及び低濃度側流路で構成されたセルを1対として、2つの電極間に何百対のセルを積層させたスタックを使用する。このスタックに海水などの塩水を供給し、電極に直流電圧を印可すると、陽イオンは陰極側に、陰イオンは陽極側に移動するが、陽イオンはCEMを通るがAEMは通れず、陰イオンはAEMを通るがCEMは通れないので、この装置内で濃縮塩水と脱塩水が得られる。これがEDの原理である(図1)。一方、RED発電はこのEDの逆プロセスであり、このスタックに高塩濃度水と低塩濃度水を加えると電力が得られる(図2)。つまりRED発電はSGEを直接、直流電力に変換する技術である。RED発電で発生する電圧は、高塩濃度水が供給される高濃度側と低塩濃度水が供給される低濃度側の濃度比の自然対数に比例する。また、RED発電においても、CEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路で構成されたセルを1対として、これを2つの電極間に何百対積層させたスタックを使用する。セルの抵抗はCEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路の抵抗の合計であるが、この中で一番電気抵抗が高いのは、塩濃度が低い低濃度側流路である。低濃度側流路の高さ、すなわちCEMとAEMの間隔を狭くすれば低濃度側流路の電気抵抗は減少する。しかしこの間隔を狭くすると、低濃度側塩水に含まれる膜汚染物質により流路が閉塞して出力が大幅に低下する、低濃度側塩水をスタックに供給する圧力が上がり、ポンプエネルギーが増えるため、RED出力からポンプ動力電力を差し引いた正味発電電力が低下するとの問題点がある。
ED及びRED発電の装置では、図3に示すように、CEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路で構成されたセルを1対として、これを2つの電極間に何百対積層させたスタックが主要な構成要素となっている。従来、このセルは図4に示すように、CEMとAEMの間に高濃度側流路スペーサと低濃度側流路スペーサで構成されており、各スペーサはゴム状のガスケットとスペーサ網で出来ている。各膜に開いた導水孔を通して、高塩濃度水と低塩濃度水が上流側から流れる中、その一部がガスケットに開いた切り欠き(配流孔)から所定のスペーサ網に流れて下流側の導水孔に流れる。そうすることで何千対にもなる各流路に均一に高濃度塩水と低濃度塩水を供給する構造になっている。図5は、セル中の流れを横から見た図を示す。ここではREDの場合で説明する。この図では高濃度と低濃度の塩水は左から右方向へ流れている。濃度勾配により陽イオンと陰イオンが高濃度側から低濃度側へ拡散するが、図5に示すようにスペーサ網は非伝導性でイオンを通さないため、膜と接する部分付近(点線円の部分)ではその拡散が阻害されてイオンが拡散する有効膜面積が減少するので、低濃度側流路の電気抵抗が塩溶液のみの場合の抵抗よりも高くなる。またスペーサ網はポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの疎水性高分子材料で作製されているため、低塩濃度水(下水処理水や河川水など)に含まれるフミンや無機粒子などが付着して凝集しやすい。そのため特にこの流路のCEMとAEMの間隔が狭くなるほど、これらが凝集して水が流れにくくなるため、出力の大幅な低下につながる。したがって、従来のセルでは、低濃度側流路のCEMとAEMの間隔を狭くすることは難しかった(特許文献1参照)。
そこで、上記問題を解決するための1つの方法として、伝導性スペーサを使用する方法が提案されている(図6)。伝導性スペーサとは、スペーサ自身に陽イオン交換能と陰イオン交換能を付与したものであり、図6に示すようにイオンが拡散する有効膜面積が増えるために低濃度側流路の電気抵抗が低減される。またスペーサがイオン性を有して親水性であるため、汚れ物質の付着が起こりにくい。伝導性スペーサを作製する方法には、イオン交換膜を切り抜く方法と、PEなどの非伝導性スペーサに電子線照射などを行い、荷電モノマーをグラフトさせてイオン交換能を付与する方法がある。しかし、いずれもスペーサ部分の機械的強度は低く、また作製が高コストであり、大面積化は困難である(特許文献2参照)。
また、上記問題を解決するための他の方法として、プロファイル膜を使用する方法が提案されている(非特許文献1~3参照)。プロファイル膜と伝導性スペーサの違いは、伝導性スペーサはイオン交換膜とスペーサは別であるが、プロファイル膜はスペーサが膜と一体化して、両者とも同じ素材で作られることである。図7及び8にプロファイル膜の模式図を示す。プロファイル膜の場合、有効膜表面積は従来セルよりは大きくなるが、図7の点線円に示す部分はイオンが流れない(陽イオンはAEMの部分を通れず、陰イオンもCEMの部分は通れない)ため電気抵抗は伝導性スペーサより小さくはならない。また同じ素材で厚みが異なる構造(凸部と他の部分とで厚みが異なる構造)は、イオン交換膜を塩水に浸漬させたときに厚みが異なる部分間の膨潤による寸法変化が異なるために変形や破裂を生じやすく、大面積化が難しく、また高コストである。図8は、バインダー樹脂(PVC等)の中にイオン交換樹脂の粉末を練りこんで成型した不均質イオン交換膜でプロファイル膜を作製した例である。なお、イオン交換膜には、不均質イオン交換膜の他に、膜全体が重合や架橋によって化学的に結合し、多数のイオン交換基が均一に分布した構造の均質のイオン交換膜がある。上記のとおり、従来の不均質イオン交換膜のプロファイル膜の場合、第1の問題は、平膜イオン交換膜に設けたられた凸部が膜の厚みを増して柱状に盛り上がる構造であるため、膜全体が膨潤した際に凸状部と平膜部分で膨潤度に差が生じ、かつ凸状部は支持体で補強される構造ではないため凸状部に劣化(亀裂)が生じやすく、特に根元に応力集中が起き易く、破損しやすく膜自体の物理的強度にも難点がある構造である。第2の問題は一方のイオン交換膜の凸部(柱状部等)の頂部の平面が対向する極性の異なる他方のイオン交換膜の膜面を覆うためイオン流が通過する有効な膜面積が見かけ上小さくなることが抵抗増につながり、EDでの処理効率やREDでの発電電力の低下となる。第3の問題は、この膜は上述のように平面状の膜から柱状に盛り上がる構造であるため、膜の平均厚みが平膜状イオン交換膜より厚くなり、膜全体での平均の電気抵抗が高くなることである。第4の問題は、一方のイオン交換膜に設けられた柱上の凸部の存在によりこの膜とこの膜に対向する他方のイオン交換膜の膜間の流路断面積が低減するため、これらのイオン交換膜がいずれも平膜の場合に比べると同じ量の溶液を供給する場合に高い圧力が必要であるために動力の損失になることである。第5の問題は、凸部上面で膜面が覆われ、かつ柱状部分が低塩濃度側の水の流れる有効膜表面積を減らす障害物となるため、特にその根元部分への汚れの付着を引き起こしやすい。
上記のとおり、従来いくつかの方法が提案されているものの、EDやRED発電に使用した場合に、イオンが透過する有効な膜面積を広くでき、膜の物理的強度を保つことができるイオン交換膜は開発されていなかった。また、これらの特性を有しながら変形や破損の少ないイオン交換膜は開発されていなかった。そのため、イオンが透過する有効な膜面積が広く、イオン交換膜の変形や破損が少ないEDやRED発電用のセルは開発されていなかった。
特開2014-14776号公報 特開2006-175408号公報
Vermaas et al. J. Membr. Sci., 385- 386 (2011) 234- 242 Pawlowski et al. J. Membr. Sci., 531 (2017) 111- 121 Pawlowski et al. Int. J. Mol. Sci., 2019, 20, 165
本発明の課題は、イオン透過に有効な膜の表面積を広くでき、加えて広範囲な塩濃度、及び膜に接触している2種の溶液間の塩濃度差が大きな場合においても膨潤による変形や破損の少ない物理的強度の高いイオン交換膜を提供することにある。
本発明者は、例えばEDやRED発電の装置に用いたときに、イオンが透過する有効な膜表面積を広くでき、塩溶液中の汚れの付着も抑制できるイオン交換膜の検討を開始した。当初はこれまでの報告同様に凸部の膜厚を厚くした構造を検討したが、一般にイオン交換膜は塩分濃度が低い塩溶液では膨潤し、塩分濃度が高い塩水では収縮することから、凸部と凸部ではない部分でその膨潤度に差が生じて、膜全体が曲がるなど変形が生じ、この膜を使用したEDやRED装置の運転に支障を与えるおそれがあった。またこれまで報告された凹凸構造のイオン交換膜の多くは図8に示すように膜本体部分に支持材となる網や織布、または不織布や多孔性フィルムなどの支持体などを入れることで膜膨潤による変形を抑えたが、膜本体の表面の一部に存在する凸部にはこのような支持構造を有さないため、膜本体と凸部の膨潤度に差が生じ、これが凸部と膜本体部分の接合部に破損を与えるおそれがあった。
本発明者は、イオン交換膜の形状及びその製法に着目して検討を進めたところ、イオン交換膜自体を曲げて凹凸を形成することにより、目的とする特性を有するイオン交換膜が得られることを見いだした。つまりイオン交換膜自体を曲げて、例えば山谷ができるように曲げて、この曲部を凸部や凹部として利用すると、意外にも膜厚が一定で、有効膜表面積を広くし、汚れの付着を抑制するのに好適な凹凸形状を有するイオン交換膜が得られた。この形状を有するイオン交換膜は、平面状のイオン交換膜又はイオン交換膜の前駆体膜を型枠を用いてプレスするという簡易な方法で得ることができる。平面状のイオン交換膜に凸部を形成する場合、凸部を形成する材料を平面状の膜の上に積み上げるのが従来から行われてきた方法であり、膜自体を曲げて凹凸を形成すると上記特性が得られることは、従来全く気づかれていなかった。また、この方法によれば、凹凸の形状により上記特性を得ているので、従来イオン交換膜に使用されている材料を使用することができる。さらに本発明者は、イオン交換膜の物理的強度や形状安定性を高めるために、非多孔質基材や多孔質基材を曲げて凹凸を形成し、これにグラフト重合や熱重合を行うことで荷電基を導入してイオン交換膜とすることを見いだした。こうして得られたイオン交換膜は、EDやRED発電に用いるのに好適なものであるが、使用用途としてこれらに限られるものではない。本発明は、こうして完成したものである。
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっており、前記凸部が直線状又は曲線状に延設され、前記凸部と凸部の間の前記凹部は、前記凸部の長手方向に沿って前記凸部の短手方向に隣接する第1の凹部を含み、前記凸部が長手方向に頂部と側面とを有し、前記側面が前記頂部から前記第1の凹部に向かって傾斜しているイオン交換膜。
(2)前記凹部が平坦であることを特徴とする上記(1)記載のイオン交換膜。
(3)端近傍に平坦部を有し、前記端近傍に隣接する前記凸部の長手方向の端面が頂部から隣接する前記端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしている上記(1)又は(2)記載のイオン交換膜。
(4)凹部は、凸部の長手方向の端面と向かい合う他の凸部の長手方向の端面との間の第2の凹部をさらに含み、凸部と前記第2の凹部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで、長手方向に交互に並んで配置された上記(1)又は(2)記載のイオン交換膜。
(5)平面状のグラフト重合体に凸部及び凹部が形成された上記(1)又は(2)記載のイオン交換膜。
(6)凹凸形状を有するイオン交換膜の製造方法であって、高分子フィルムを凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げることにより、前記高分子フィルムに凹凸を形成し、その後グラフト重合させることにより前記高分子フィルムをイオン交換膜とするイオン交換膜の製造方法。
(7)陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、
前記凹凸形状を有するイオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっており、前記凸部が直線状又は曲線状に延設され、前記凸部と凸部の間の前記凹部は、前記凸部の長手方向に沿って前記凸部の短手方向に隣接する第1の凹部を含み、前記凸部が長手方向に頂部と側面とを有し、前記側面が前記頂部から前記第1の凹部に向かって傾斜しているイオン交換膜であり、
前記凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜に対向するように配置されたイオン交換膜セル。
(8)陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜のいずれもが凹凸形状を有するイオン交換膜であり、一方のイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接しないように配置された上記(7)記載のイオン交換膜セル。
又は本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(9)凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっているイオン交換膜。
(10)凸部の上端の幅が下端の幅の50%以下であることを特徴とする上記(9)記載のイオン交換膜。
(11)凸部と凹部が、直線状又は曲線状に延設され、前記凹部が平坦であることを特徴とする上記(9)又は(10)記載のイオン交換膜。
(12)凹凸形状を有するイオン交換膜の製造方法であって、高分子フィルムを凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げることにより、前記高分子フィルムに凹凸を形成し、その後グラフト重合させることにより前記高分子フィルムをイオン交換膜とするイオン交換膜の製造方法。
(13)陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状であり、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜に対向するように配置されたイオン交換膜セル。
(14)凹凸形状を有するイオン交換膜の凹部が平坦であることを特徴とする上記(13)記載のイオン交換膜セル。
(15)陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部の一部と前記陰イオン交換膜の凸部の一部とが接するように配置された、又は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜のいずれか一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部の少なくとも一部が他のイオン交換膜と接するように配置された上記(13)又は(14)記載のイオン交換膜セル。
本発明のイオン交換膜は、イオン透過に有効な膜の表面積を広くでき、加えて広範囲な塩濃度、及び膜に接触している2種の溶液間の塩濃度差が大きな場合においても膨潤による変形や破損の少ない物理的強度の高いイオン交換膜を提供できる。
図1は、電気透析(ED)の原理の説明図である。 図2は、逆電気透析(RED)の原理の説明図である。 図3は、ED及びRED発電装置におけるセル及びスタックの状態を示す図である。 図4は、従来のRED用セルを示す図である。 図5は、図1に示すセルを使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図6は、RED用セルに従来の伝導性スペーサを使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図7は、RED用セルに従来のプロファイル膜を使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図8は、従来のプロファイル膜の構造を示す模式図である。 図9(a)~(c)は、本発明のイオン交換膜の凸部又は凸曲部及び凹部又は凹曲部の一実施形態の断面を示す模式図である。図9(d)は、凸部に関する角度の位置を示す図である。 図10は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図11は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図12は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図13は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図14は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図15は、本発明の凹凸形状の一実施形態を示す図である。 図16は、本発明のイオン交換膜における凸部形状の一実施形態を示す図である。図16(a)及び(c)は凸部の形状を示す図であり、図16(b)及び(d)は凸部がイオン交換膜に形成された状態を示す図である。 図17は、本発明の製造方法における凹凸形成方法の一実施形態を示す図である。 図18は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図19は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが接しない場合の、両交換膜の配置の一実施形態を示す図である。 図20は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが接しない場合の一実施形態のセルの断面を示す図である。 図21は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図22は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図23は、本発明のイオン交換膜の凹凸形状の一実施形態を示す模型の写真である。 図24は、本発明の一実施形態のイオン交換膜セルにおける水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図25は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。上段の図は各イオン交換膜及びガスケットを示す図であり、中断の図はこれらが一体化した状態を示す図であり、下段の図は、各イオン交換膜をガスケットに組み込む様子を示した図である。 図26は、実施例に用いたアルミ製型の写真である。 図27は、実施例のイオン交換膜の凹凸形状を示す図である(図中の格子は1辺が10mmを表し、寸法の説明のために記載したものである)。 図28は、実施例に使用したPF-CとPF-Aの写真である。 図29は、比較例に使用した平-Cと平-Aの写真である。 図30は、実施例に使用したPF-Aの一部の表面写真である。 図31は、図31(a)は実施例に使用したPF-Cの断面写真であり、図31(b)は実施例に使用したPF-Aの断面写真である。 図32は、の寸法測定箇所を示す図である。 図33は、左側は実施例のREDスタックの構造を示す図であり、右側は比較例のREDスタックの構造を示す図である。 図34は、左側は比較例用河川水側スペーサ(R)を示す図であり、右側は実施例用河川水側スペーサ(R´)を示す図である。 図35は、実施例及び比較例で発電特性評価を行った装置を示す図である。 図36は、図35の装置の等価回路および理論的な電圧―電流出力曲線を示す図である。 図37は、実施例の電圧と電流の関係、及び電流と発電出力の関係を示すグラフである。 図38は、比較例の電圧と電流の関係、及び電流と発電出力の関係を示すグラフである。
本発明のイオン交換膜は、凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっていることを特徴とする。本発明におけるグラフト重合体とは、荷電基を有してイオン交換膜として作用するグラフト重合体のことである。例えば、高分子膜にグラフト重合により荷電基を導入した重合体、高分子膜にグラフト重合を行った後に荷電基を導入した重合体等を挙げることができる。基材となる高分子膜は、グラフト重合できるものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、エバール(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、ナイロン等を挙げることができる。本発明のイオン交換膜は、陽イオン(カチオン)交換層でもよく、陰イオン(アニオン)交換層でもよい。
本発明では、イオン交換膜自体が曲がっており、その曲がりによって形成された凸曲部と凹曲部がイオン交換膜の凸部と凹部になっている。本願明細書で本発明に用いる「曲がった」、「曲げる」等の曲げに関する表現は、屈曲(すなわち折れ曲がった状態)及び湾曲(すなわち明瞭な角を形成せずに曲がった状態)を含む。イオン交換膜の凸曲部とは、イオン交換膜の曲がりにより凸形状が形成された部分のことであり、イオン交換膜の凹曲部とは、イオン交換膜の曲がりにより凹形状が形成された部分のことである。イオン交換膜の曲がりにより凸形状又は凹形状が形成されていれば、凸曲部及び凹曲部の形状は特に制限されない。
図を用いて説明すると、例えば、図9はイオン交換膜IEMを側面(厚み方向)から見た模式図であり、凸曲部の延長方向(以下「延長方向」を「長手方向」又は「延設方向」ともいう。)に垂直な断面の模式図である。上側をイオン交換膜IEMの前面、下側をイオン交換膜IEMの裏面とすると、図9(a)では、イオン交換膜IEMが平坦部から曲部Aで前面側に曲がり、曲部Bで裏面側に曲がり、曲部Cで平坦方向に曲がり、曲部Dで前面側に曲がっている。これを繰り返すことにより、曲部A~Cで形成される凸曲部IEM1と、曲部C~Dで形成され、凸曲部と凸曲部との間に形成される凹曲部IEM2とが交互に形成され、前記凸曲部IEM1がイオン交換膜の凸部になり、前記凹曲部IEM2がイオン交換膜の凹部になる。図9(a)は、凹曲部(凹部)の形状が平坦な形状の例であり、図9(b)は、凹曲部(凹部)の形状が凸曲部(凸部)の反対側に突き出た形状の例である(凹曲部IEM2’)。また、図9(c)は、凸曲部(凸部)の形状が台形の例である(凸曲部IEM1’)。図9では、イオン交換膜IEMの曲部は屈曲しているが、上記で述べたとおり、イオン交換膜IEMの曲部は湾曲していてもよく、曲部と曲部の間が湾曲していてもよい。イオン交換膜IEMの凹部が凸部の反対側に突き出ている場合、流路の抵抗が増加するおそれやセル中にイオン交換膜を設置し難くなるおそれがある。その場合は、凹部は平坦であること(すなわち例えば図9(a)のように凹部に凸部との境以外に曲部がないこと)が好ましい。
本発明のイオン交換膜は、凹凸形状を有するため膜の表面積が大きくなる。さらに、本発明のイオン交換膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対向して配置するイオン交換膜セルに使用する場合、凸部の上端が他方のイオン交換膜の凸部、凹部又は平坦部と接するように配置することにより、スペーサを使用しなくても両イオン交換膜間の間隔を固定でき、両イオン交換膜間の流路を確保することができる。この場合、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が接する部分はイオンが流れないため、両イオン交換膜が接する面積は小さいほうが好ましい。すなわち凸部の上端の面積は小さいほうが好ましい。本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜の曲がった角を凸部の上端とできるため、角が屈曲した場合、湾曲した場合、また上端に平面部を設ける場合にかかわらず、凸部の上端の幅を狭くしやすい。そのため、イオン交換膜セルに使用する場合、イオンが流れない両イオン交換膜の接触部分の面積を狭くできるので、イオンが透過する有効膜面積を大きくすることができる。
凸部の上端の幅は、下端の幅の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。凸部の上端の幅とは、凸部の延長方向に垂直な断面における上端の幅であり、凸部の下端の幅とは、凸部の延長方向に垂直な断面における凸部と凹部の境の位置での幅aである。ここで例えば、図9(a)~(c)のイオン交換膜において、図中の曲部Aと曲部Cの間の距離が、凸部の下端の幅aとなる。凸部の上端が湾曲している場合、上端の幅とは、上端を他のイオン交換膜やスペーサ等に接触させたときに接触する幅をいう。本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜の曲がった角を凸部の上端とできるため、角が屈曲した場合、湾曲した場合、また上端に平面部を設ける場合にかかわらず、凸部の上端の幅を狭くしやすい。そのため、セルに使用する場合、溶液が流れる有効な流路部の断面積を広くできる。また、凹凸形状を有するイオン交換膜は、凸部が柱状に盛り上がると流体中の有機物や無機粒子等の汚れが凸部の根元に付着しやすく、この付着が流路を狭くして流体の流れを妨げる。
本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜を曲げて凸部の斜面を形成するため、緩やかな傾斜の凸部を形成しやすい。そのため、流体中の汚れの付着を防止できるので、流路を広くでき、流路の圧損や汚れによる詰まりが少ないセルのメリットをも提供することができる。本発明のイオン交換膜の凸部は、上端において両斜面がなす角度が10~176°が好ましく、30~150°がより好ましく、60~120°が更に好ましい。本願明細書において、「P~Q」という表記はP以上Q以下を表しPとQを含む。上端において両斜面がなす角度とは、凸部の長手方向に垂直な断面において上端で左右の面(側面)がなす角度をいう。すなわち、かかる左右の面がイオン交換膜の平坦部もしくは端近傍の面に対して前面側に向かって曲がり始めを示す線分(かかる線分は凸部の長手方向)をそれぞれ通り、凸部の頂部の線分(稜)で交差する角度である。ここで曲がり始めとは、凸部の立ち上がり開始部とも言い得るが、長手方向に平行に並ぶ凸部と凹部の境の位置を指す。曲がり始めを示す線分は、イオン交換膜の端近傍又は凹部の平坦部の上面から凸部斜面に切り替わる線分であり、凹凸形状の長手方向の断面におけるその線分の位置(図上は点で示される)は、端近傍又は凹部の平坦部の上面と平行にその上面から延長する直線を引くことで求められる。上端部が湾曲して明瞭な角を形成していない場合又は凸部の形状が台形の場合等のように幅を有する場合は、上端において両斜面がなす角度とは、前記左右の面が凸部頂部で交差する位置での角度をいい、頂部に平坦部分がある場合は側面からみたその平坦を示す線分の中心位置における角度をいう。
凸部の下端における両斜面の立ち上がりの角度(傾斜角)は好ましくは2~85°、15~75°、30~60°であり、両斜面の傾斜角の差は0~15°であることが好ましい。凸部の下端における両斜面の立ち上がりの角度(傾斜角)とは、凸部の長手方向に垂直な断面において、凸部の両方の下端を結んだ下端の線分と凸部の側面(斜面)との角度をいう。膜が湾曲した場合など、凸部の下端の位置が不明瞭な場合は、斜面の立ち上がり部が徐々に立ち上がる途中で平坦部の膜厚を100%としたときにこの厚みよりも10%高い高さになる位置を下端の位置としてもよい。本発明のイオン交換膜の厚さは、使用に適する強度を維持しつつ抵抗の増加を抑制する観点から、5~1000μmが好ましく、10~200μmが好ましい。図9(d)を用いて説明すると、θ1が上端において両斜面がなす角度であり、θ2及びθ3が凸部の下端における両斜面の立ち上がりの角度(傾斜角)である。
本発明のイオン交換膜の凸部は、直線状又は曲線状に延設されていることが好ましい。また、本発明のイオン交換膜の凸部及び凹部は、直線状又は曲線状に延設されていることが好ましい。凸部及び凹部が直線状又は湾曲状、弧状等の曲線状に延設されていると、本発明のイオン交換膜を、上記イオン交換膜セルに使用した場合、流れる流体とイオン交換膜との接触面積を増加させながら、流路の送液抵抗を少なくすることができる。直線状又は曲線状に延設とは、凸部及び凹部が直線状又は曲線状に伸びて設けられていればよく、イオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍までつながっていてもよく、つながっていなくてもよい。例えば、所定の長さの凸部が一方の端近傍から他方の端近傍まで複数並んでいてもよい。端近傍とは、イオン交換膜の端から前記イオン交換膜をセルに取り付けるために必要な領域をいい、例えば、ガスケットのような枠体で固定する場合に前記枠が接することができる領域となる。この領域の内側に凹凸が形成される。言い換えると、端近傍とは、イオン交換膜のそれぞれの端に最も近い凸部の前記端に最も近い部分より外側(イオン交換膜の端側)のイオン交換膜の端に沿った領域ともいえる。本発明においては、端近傍は平坦部であることが好ましい。また、端近傍から離れた凸部の部位又は凸部であって、凸部の長手方向(延長方向を長手方向ともいう)の側面と端近傍との間に他の凸部がない場合、及び長手方向の端面と端近傍との間に他の凸部がない場合は、その側面及び端面と端近傍との間も平坦であることが好ましい。凸部の長手方向の側面と端近傍との間に他の凸部がない場合、その凸部の側面も端近傍に隣接する側面といい、凸部の長手方向の端面と端近傍との間に他の凸部がない場合、その凸部の端面も端近傍に隣接する端面という。
本発明においては、凸部の長手方向の側面に沿って短手方向に凸部に隣接する凹部を第1の凹部という。また本発明においては、一方の凸部の長手方向の端面と、これと向かい合う他方の凸部の長手方向の端面との間に凹部ができる場合、この凹部を第2の凹部という。ここで向かい合うとは、端面が長手方向に正対する場合だけでなく、斜め方向にずれて向かい合う場合、凸部の短手方向に向かい合う場合等を含む。また、本発明のイオン交換膜は、端近傍の平坦部に隣接する凸部の長手方向の端面が、上端から隣接するその平坦部に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。このような形状とすることにより、凹凸部と平坦部で表面積と投影面積に大きな差異があっても比較的緩やかな傾斜の面をなすことにより膜のひずみを分散して膜の端近傍の平坦部へつづく凸構造を保つことが出来る。上記凸部の長手方向の端面は、平坦であっても、凸部の長手方向とは反対方向にくぼんでいても、凸部の長手方向に盛り上っていてもよい。また、端面と、端面を挟む長手方向の側面との境目の曲部は屈曲していてもよく湾曲していてもよい。端近傍の平坦部に隣接する凸部以外の他の凸部の端面の形状は特に制限されないが、凸部と凹部が直線状に延設され、前記凹部は平坦であり、前記凸部は長手方向の両端面が上端からイオン交換膜の端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。これにより、イオン交換膜の投影面積と表面積の差によるゆがみやひずみを平均化できる。また、凸部と凸部の間(凹部)でよどみが生じにくいため付着物が生じにくい。さらに、発電出力や処理効率の低下、強度不足の問題が生じにくい。本発明のイオン交換膜は、溶液が漏れ出ないようにセルに取り付けるために膜の端近傍は平坦であることが好ましい。
本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜自体が曲がって凹凸を形成しているので、凸部の膜厚を凹部の膜厚より盛り上がるように厚くする必要はなくイオン交換膜の膜厚をほぼ一定にできる。そのため、膜厚の差による膨潤による寸法変化の差が生じるのを防ぐことができ、イオン交換膜の変形や破損を防ぐことができる。特に、膨潤の差による凸部の根元の亀裂や破損を防止できる。また、凸部及び凹部が延設されている範囲は投影面積と表面積に差があるために、膜の外縁にあたる膜の端近傍の平坦部の範囲との境界で大きなひずみが生じる。イオン交換膜自体が曲がっていることで膜厚がほぼ一定となることがこのひずみの解消に役立ち、さらに凹凸を形成する凸部の端から平坦部に向かって傾斜面を有することもこのひずみの解消に寄与している。
本発明のイオン交換膜は、凸部の長手方向の左右の側面が上端から、凸部に並行して隣接する凹部(第1の凹部)に向かって傾斜している、又は凸部の長手方向の端面が上端から、その端面が隣接する端近傍の平坦部若しくは凸部の長手方向の端面と向かい合う他の凸部の長手方向の端面との間の凹部(第2の凹部)に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。凸部の側面が上端から隣接する凹部に向かって傾斜していると、セルに使用したときに膜表面積を増してイオンの流れを促進すると共に、液が凸部を乗り越えて隣のレーンともいえる平坦な凹部にも流れやすくなり、イオンのよどみが低減することで、RED発電の場合には発生電圧の低下の原因となる局所的な溶液の濃度増加、EDの場合には膜焼けや膜破壊の原因となる局所的な塩分濃度の低下を少なくすることができる。また、よどみを少なくすることにより、汚れ物質の付着を防止することもできる。さらには矩形(コの字状)の凸部を形成したイオン交換膜に比べてひずみにくい。かかる矩形の膜はその表面積と投影面積との差が大きいためひずみが大きいからである。あるいは、凸部の長手方向の端面が、その上端から前記端面が隣接する端近傍の平坦部、又は第2の凹部に向かって傾斜する面をなしていると、上記と同様にセルに使用したときに膜表面積を増してイオンの流れを促進すると共に、液が凸部を乗り越えて隣のレーンともいえる凹部にも流れやすくなり、上述のRED発電の場合の局所的な溶液の濃度の増加やEDの場合の局所的な塩分濃度の低下を少なくすることができる。また、よどみを少なくすることにより、汚れ物質の付着を防止することもできる。さらには上述と同様の理由から矩形(コの字状)の凸部を形成したイオン交換膜に比べてひずみにくい。かかる矩形の膜はその表面積と投影面積との差が大きいためひずみが大きいからである。また、凸部のイオン交換膜の端近傍に隣接する側面も端近傍に向かって傾斜していることが好ましい。上記の場合の凹部、すなわち第1の凹部及び第2の凹部のいずれか又は両方は、平坦であることが更に好ましい。凹部が平坦であると、上記効果がより向上する。本発明のイオン交換膜においては、凸部と凸部の間の凹部が平坦であることに加えて、凸部の側面が上端から隣接する第1の凹部に向かって傾斜し、かつ凸部の長手方向の端面が、その上端から前記端面が隣接する端近傍の平坦部、又は第2の凹部に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。
図10~15に本発明のイオン交換膜における凹凸形状の実施形態の例を挙げる。図10は、凸部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで直線状に延設され、凸部の長手方向の両端面が、上端から隣接する端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしている例である。図11~13及び15は、凸部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで、長手方向に複数並んで配置された例であり、図14は、凸部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで直線状に延設された例である。これらの例では、凸部の長手方向の端部が、イオン交換膜の端近傍の平坦部に隣接する場合は、前記平坦部に向かって傾斜する面をなし、長手方向に隣り合う凸部間の凹部に隣接する場合は、前記凹部に向かって傾斜する面をなしている。これらの図10~15の凹部(第1の凹部及び第2の凹部)は平坦になっていることが好ましい。長手方向に複数の凸部を設けることにより膜の強度を高くすることができ、加えて各凸部の端部を傾斜面とすることで、より膜の強度を高くすることができる。また、溶液の一部は凸部の山を越えることなく、短い距離で流れるため圧損が少なくなる。図11は、各凸部が長手方向に同じ角度で一直線に並ぶように配置した例であり、図12は、各凸部の長手方向における角度を変えて配置した例である。図13は、凸部の短手方向に隣り合う凸部間において、一方の凸部の長手方向の端部の短手方向、つまりその端部における長手方向にほぼ垂直な方向には、他方の凸部の端部が配置されないように凹凸形状を形成した例である。短手方向に隣り合う凸部の端近傍の平坦部側の端部は、膜の端側に張り出す態様と、膜面の内側に引っ込む態様が交互に形成されている。長手方向に隣り合う凸部間の凹部が短手方向において互い違いとなり一直線に並ばなくなる、すなわち凹部と凸部が交互に並ぶため、膜強度をより高め、平坦部と凸部の表面積と投影面積の差がより減少するのでひずみを低減できる。図13の変形例として、膜の一方の端近傍の平坦部に最も寄っている凸部の長手方向の端部と、一方の端近傍の平坦部と反対側にある他方の端近傍の平坦部に最も寄っている凸部の長手方向の端部のうちいずれか一方の端部の短手方向は他のレーンの凸部の端部の一部または全部と同じ位置に並んでいても上記ひずみの低減効果がある。図14は、凸部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで直線状に延設された例であるが、凸部の長さを変えて、凸部の長手方向の端部とイオン交換膜の端との距離を変え、前記距離が近い凸部と、これより遠い凸部とを一つおきに並べた例である。この場合も端近傍の平坦部と凸部の表面積と投影面積の差がより減少するのでひずみを低減できる。図15は、各凸部を長手方向に一直線に並べるのではなく、長手方向に隣り合う凸部の一方の位置を短手方向にずらして配置し、さらに長手方向に隣り合う凸部の端部同士が短手方向に隣り合うようにした例である。この図の凸部のパターンも図13及び図14と同様に短手方向に隣り合う凸部の端近傍の平坦部側の端部は、交互に膜の端側に張り出す形態と内側に引っ込む形態が形成されている。
本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜自体が曲がって凹凸を形成しているので、凸部の膜厚を凹部の膜厚より厚くする必要はなくイオン交換膜の膜厚をほぼ一定にできる。そのため、膜の平均の電気抵抗を上げることなく、また膜厚の差により、膨潤による寸法変化の差が生じるのを防ぐことができ、イオン交換膜の変形や破損を防ぐことができる。特に、膨潤の差による凸部の根元の亀裂や破損を防止できる。ここで膜厚がほぼ一定とは、イオン交換膜の膜厚について端近傍の平坦部と凸部の間、凸部と平坦な凹部の間及び端近傍の平坦と平坦な凹部の間の3通りの部位間のいずれか1以上の部位間で幾分かの厚み差を設けることを排除しない。むしろこれらの部位で膜厚差ができたほうが好ましい。ここで平坦な凹部とは、直線状又は曲線状の凸部の長手方向の膜の横断面をみた場合の凸部間の平坦な凹部となる上述の第1の凹部だけではなく、ある凸部が長手方向に所定の間隔で複数延設されている場合に長手方向の凸部間に設けられる場合がある平坦な凹部となる上述の第2の凹部も含む。単に膜厚がほぼ完全に均一のまま曲がるのではなく、例えば、イオン交換膜の平坦な部分、つまり膜の端近傍の平坦部、平坦な凹部及びその他の平坦部分の膜厚よりも凸部上端における短手方向の両斜面及び長手方向の端部の傾斜する面の両方又は両斜面もしくは傾斜する面のいずれかの面の膜厚(以下「凸部の膜厚」という。)に薄い部分あるいは厚い部分があってもよい。イオン交換膜の凸部の立ち上がり開始部からその膜厚が凸部の上端おける両斜面の上方に向かって連続的に薄くなるか又は厚くなってもよい。凸部の膜厚が厚くなる場合には逆に凹部が幾分薄くなる場合があってもよい。
上記の3通りのそれぞれの部位の間で、一方の部位の膜厚を100%とすると他方の部位の厚みの割合は30~95%が好ましく、50~95%がより好ましく、80~95%がさらに好ましい。薄いほうの膜厚の下限値は膜の機械的強度から決められる。イオン交換膜の膜厚を部位によって異なるようにするため、本発明のイオン交換膜は全面が平坦な膜と比べて投影面積がほぼ同一でも歪を小さくして表面積を増加させることができる特徴がある。後述のイオン交換膜の凹凸形成時にイオン交換膜の平坦な部分よりも凸部の上端における両斜面や長手方向の端部の傾斜する面の膜厚をその一部でも上述の比率で薄くするように膜厚の差を設けることが好ましい。膜全体でみると構造が安定すること、膜の平均的な電気抵抗が下がる方向になるからである。なお、凸部の膜厚の一部に端近傍又は凹部等の平坦な部分の膜厚に比べて薄い部分の他に厚い部分があってもこの技術思想の範囲内である。なお、支持体が後述の可塑性をもち凹凸を形成させてから製膜する場合は支持体自体の上記3通りの部位の間に上述の比率で膜厚の差をもうけてもよく、その結果製膜後に3通りの部位の間のいずれか1通り以上において膜厚の差が生じても同様の特徴を有する。
また、一般にイオン交換膜は、塩分濃度が低い溶液では膨潤し、塩分濃度が高い溶液では収縮するが、本発明のイオン交換膜は、膜厚の差による膨潤の差を防ぐことができるので、広範囲な塩濃度において使用でき、EDやRED装置に使用する場合等の膜が接触している2種類の溶液間の塩濃度差が大きな場合でも、膨潤による変形や破損が少ない。したがって、本発明のイオン交換膜は、塩濃度(イオン濃度)の低い溶液に使用できるだけでなく、例えば、電導度が0.05mS/cm以上、又は0.1mS/cm以上の溶液に用いることができる。本発明のイオン交換膜は、塩分の溶解が飽和状態に達しない範囲の溶液であれば使用できるので、使用できる溶液の電導度は塩分の溶解が飽和状態における電導度未満である。また、本発明のイオン交換膜は、膜が接触している塩濃度が異なる2種類の溶液間において、例えば、低濃度側の溶液の電導度が0.05~50mS/cmであり、高濃度側の溶液の電導度が低濃度側の2倍以上、20倍以上、50倍以上又は600倍以上の場合でも使用できる。高濃度側の溶液の電導度の上限は塩分の溶解が飽和状態に達しない範囲であれば特に制限されないが、例えば、低濃度側の4000倍以下、1000倍以下又は700倍以下を挙げることができる。また、本発明のイオン交換膜は、例えば、TDS(Total Dissolved Solid:総溶解固形分)が10ppm(0.001%)以上、又は20ppm(0.002%)以上の溶液に用いることができ、膜が接触している塩濃度が異なる2種類の溶液間において、例えば、低濃度側の溶液のTDSが10ppm(0.001%)~35,000ppm(3.5%)であり、高濃度側の溶液のTDSが低濃度側の2倍以上、20倍以上、50倍以上又は100倍以上の場合でも使用できる。高濃度側の溶液の電導度としては、例えば、10~200mS/cmを挙げることができ、TDSとしては、例えば、7000ppm(0.7%)~200000ppm(20%)を挙げることができる。
本発明のイオン交換膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対向して配置するイオン交換膜セルに使用する場合、凸部が他方のイオン交換膜の凸部、凹部又は平坦部と接するように配置することにより、スペーサを使用しなくても両イオン交換膜間の間隔を固定でき、両イオン交換膜間の流路を確保することができる。この場合、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が接する部分はイオンが流れないため、両イオン交換膜が接する面積は小さいほうが好ましい。特に凸部の上端の面積は小さいほうが好ましい。本発明のイオン交換膜は、凸部の上端の幅を狭くでき上端の面積を小さくできるので、両イオン交換膜を接触させる場合でも、イオンが流れない両イオン交換膜の接触部分の面積を狭くでき、イオン透過に有効な膜の表面積を大きくすることができる。陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対向して配置し、両イオン交換膜の間にスペーサ(例えば、網スペーサ)を挿入する場合も、イオン交換膜とスペーサが接する部分はイオンが流れないため、両者が接する部分の面積は小さいほうが好ましい。本発明のイオン交換膜は、凸部でスペーサと接し、さらに凸部の上端の幅を狭くして上端の面積を小さくできるので、イオンが流れない接触部分の面積を狭くでき、イオン透過に有効な膜の表面積を大きくすることができる。
また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対向して配置し、両イオン交換膜を接触させず、両イオン交換膜の間にスペーサを挿入しない場合は、両イオン交換膜間の溶液が流れる有効な流路部の断面積を増加させることができる。また溶液に接触する両イオン交換膜の表面積を大きくすることができる。この場合であっても、本発明のイオン交換膜は、変形や破損が少ないため両イオン交換膜間の間隔を確保できる。仮にイオン交換膜が少し撓んだ場合でも、凸部の上端が他方のイオン交換膜に接することにより、両イオン交換膜間の間隔をより適切に確保することができる。そのため、凸部が他方のイオン交換膜に接するようにしてスペーサとしての機能を兼ねて使用した場合でも、あるいは両イオン交換膜を接触させず、スペーサも使用しない場合であっても、イオン交換膜が変形や破損することを防止できる。特に、凸部の根元の亀裂や、凸部の上端の幅が狭いと起こりやすい上端の破損を防止できる。
図16(a)~(d)は本発明における凸部の形状の一実施形態を示す図であり、長手方向の両端面が上端から平坦部に向かって傾斜する面をなしている。図16(a)の上の図は凸部を上から見た図であり、下の図は凸部を横から見た図である。図16(a)の凸部では、長手方向の端面が平坦となっている。図16(b)は図16(a)の凸部を形成したイオン交換膜の一部分を示す図であり、溶液が導入される導水口の周囲を示している。図16(b)の左の図は凸部を上から見た図であり、右の図は凸部を長手方向から見た図である。図16(c)は凸部の長手方向に盛り上がっており、端面中央付近が膜の端近傍へ張り出すように広がっている例である。図16(d)は図16(c)の凸部を形成したイオン交換膜の一部分を示す図であり、右の図は凸部を横(長手方向に垂直な方向)から見た図である。これらの形状の1つの凸部が、イオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで延設されていてもよく、これらの形状の複数の凸部が一方の端近傍から他方の端近傍まで並んでいてもよい。また、凹部の幅が凸部の下端の幅より小さいと、イオン交換膜セルに使用した場合に、凸部が接触する箇所が増えるため、流路間の高塩濃度側流路と低塩濃度側流路の間の圧力差に対する膜の組合せによる構造の強度が高くなる、一方で流路断面積が小さくなる。これらのことから、凹部の幅をbとすると、凹部の幅bは0超3×a以下とするのが好ましく、0超2×a以下とするのがより好ましく、0超1×a以下とするのが更に好ましい。凸部の下端の幅aは上記で定義したとおりであり、凹部の幅とは、凹部の長手方向に垂直な断面における凹部に隣接する一方の凸部と前記凹部との境と他方の凸部と前記凹部との境の間の幅であり、平坦な部分の幅である。例えば、図9のイオン交換膜において、曲部Cと曲部Dの間の距離がbとなる。bが0の場合とは凸部が連続し、凹部が隣り合う凸部の斜面と凸部の斜面との角となっている場合である。さらに本発明の支持体を有するイオン交換膜は、凸部及び凹部の形状に沿って支持体が配置されているため膜強度に優れる。そのため、スペーサとしての機能を兼ねて使用した場合でもイオン交換膜が変形や破損することを防止できる。特に、凸部の根元の亀裂や、凸部の上端の幅が狭いと起こりやすい上端の破損を防止できる。
本発明のイオン交換膜を製造する方法は特に制限されないが、例えば、可塑性の高分子フィルムを凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げることにより、前記高分子フィルムに凹凸を形成し、その後グラフト重合させることにより前記高分子フィルムをイオン交換膜とする方法を好適な方法として挙げることができる。高分子フィルムへの凹凸形成方法は、高分子フィルムを凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げる方法であれば特に制限されないが、例えば、プレス法を挙げることができ、プレス時に熱を加える熱プレス法を挙げることができる。
図17は、凹凸形成方法の一例を示す図であり、高分子フィルムを下型枠と上型枠で挟み熱プレスすることにより前記高分子フィルムを曲げて凹凸を形成している。その後、前記前記高分子フィルムを取り出すことにより凹凸が形成された高分子フィルムが得られる。可塑性とは、固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとにもどらない性質をいうが、本発明における可塑性の高分子とは、常温で可塑性を有するもの及び加熱により軟化して成形しやすくなり冷やすと再び硬くなる熱可塑性を有するものを含む。取り出した前記高分子フィルムをグラフト重合させることにより前記高分子フィルムをイオン交換膜とする。グラフト重合させることによるイオン交換膜の形成方法としては、凹凸形成後の高分子フィルムにラジカルを発生させ、荷電基(正荷電基又は負荷電基)を有するモノマーをグラフト重合する方法、凹凸形成後の高分子フィルムにラジカルを発生させ、荷電基を化学反応により導入可能な反応基を有するモノマーをグラフト重合し、その後荷電基を導入する方法等を挙げることができる。また重合時に架橋を行っても良いし、荷電基導入と架橋を同時に行っても良い。ラジカルの発生方法は特に限定されないが、放射線の照射による方法が好ましく、電子線、γ線又は重イオンビームによる方法がより好ましい。また、必要に応じてグラフト重合後に架橋させてもよい。さらに架橋の後に凹凸構造を形成してもよい。本発明の製造方法のいくつかの例を表1に示すが、これに限られるものではない。グラフト重合後に凹凸形成する利点は、第1に架橋された市販のイオン交換膜をそのまま使用して凹凸形成ができる。第2に従来の平膜のイオン交換膜の製造工程の後に凹凸形成工程を入れることで、既存の製造ラインの変更が少なくなり生産効率がよいことである。グラフト重合とともに架橋してから凹凸形成する工程の利点は、これら第1及び第2の利点に加えて、第3に架橋をしていないポリマー層に凹凸形成するときにポリマー層を水に浸す場合があり、その場合はポリマー層の膨潤状態によって型で形成される凹凸の寸法を設計値にあわせにくい場合があるが、架橋された膜は膨潤し難いため、設計寸法と実寸の差が小さくなることである。グラフト重合後に凹凸形成する工程か、又はグラフト重合とともに架橋してから凹凸形成する製造工程によって平面状のグラフト重合体に曲がりによる凸曲部と凹曲部によって凸部及び凹部が形成されたイオン交換膜を得ることができる。このような凹凸形状を有するイオン交換膜の製造方法として、高分子フィルムをグラフト重合させた後、凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げることにより、前記高分子フィルムをイオン交換膜とするイオン交換膜の製造方法を挙げることができる。
本発明では、高分子フィルム等の支持材に前もって凹凸形成し、これを用いてイオン交換膜を作製するため、他の作製方法での支持体を有する凹凸構造イオン交換膜よりも、容易に凹凸構造が形成出来、かつ形成した凹凸構造の変形が少ない。本発明においては、荷電基の導入にグラフト重合を利用するため、支持材として必ずしも多孔質体を使用する必要がない。そのため、容易に凹凸構造が形成出来て、形成した凹凸構造の変形が少ない。支持材としては、グラフト重合を利用して荷電基を導入できるものであれば特に制限されないが、例えば後述する高分子フィルム等の高分子基材を挙げることができる。また、本発明における支持材として多孔質体を用いてもよい。すなわち、本発明のイオン交換膜は、グラフト重合により荷電基を導入して得られたイオン交換膜であるので、膨潤度が低く、寸法安定性や物理的強度が高く、製造が容易であり、共有結合を介して荷電基が基材に結合するので膨潤収縮耐性が高い。
Figure 2022171644000002
本発明の凹凸形状を有する陽イオン交換膜の製造方法の一実施形態として、超高分子量ポリエチレンフィルム等の高分子フィルムに熱プレス等により凹凸構造を形成後、このフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレン等の高分子フィルムにラジカルを発生させた後、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体単独、又は該重合性単量体及び架橋性単量体の重合性混合物を用いてグラフト重合を行い、必要に応じてクロロスルホン酸等を用いてスルホン酸基を導入する方法を挙げることができる。本発明の凹凸形状を有する陰イオン交換膜の製造方法の一実施形態として、超高分子量ポリエチレンフィルム等の高分子フィルムに熱プレス等により凹凸構造を形成後、このフィルムに電離放射線を照射することにより、超高分子量ポリエチレン等の高分子フィルムにラジカルを発生させた後、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体及び膨潤溶媒、又は該重合性単量体、架橋性単量体、及び膨潤溶媒を含有する重合性混合物中でグラフト重合を行い、前記重合性単量体の官能基を、トリメチルアミン等を用いて陰イオン交換基を導入する方法を挙げることができる。
超高分子量ポリエチレンを使用することにより、得られるイオン交換膜の耐久性が向上し、膨潤性も抑制されるが、該超高分子量ポリエチレンとしては、分子量が30万以上であるものが好ましく、中でも分子量が100万~630万であり、厚みが20~100μmのものを用いるのが特に好ましい。それにより、得られるイオン交換膜の耐久性が向上し、膨潤性も抑制される。高分子基材の形態は、その大きさ、厚さは適宜決定することができる。超高分子量ポリエチレンフィルムの製造法による種別は特に限定するものではなく、インフレーションフィルム、スカイブフィルム等いずれのフィルムも使用可能である。インフレーションフィルムとしては、例えば、作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルムイノベート(製品名)等が挙げられる。スカイブフィルムとしては、例えば、作新工業株式会社製、Saxinニューライトフィルム(製品名)が挙げられる。また、その他、市販の超高分子量ポリエチレンフィルムとしては、日東電工株式会社製、超高分子量ポリエチレンフィルム No.440などが挙げられる。
上記の他に以下のフィルム基材も使用可能である。本発明で使用できる、高分子フィルム基材としては、得られるイオン交換膜の耐久性が向上し、膨潤性も抑制されるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体フィルムを使用することができ、厚みが20~100μmのものを用いるのが好ましい。基材の形態は、その大きさ、厚さは適宜決定することができる。本発明にかかるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体フィルムとしては、例えば、旭硝子株式会社製アフレックス1250NT(製品名)等が挙げられる。
さらに上記非多孔性フィルムの他に以下の多孔性フィルムが使用できる。本発明の陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜の製造方法の一実施形態として、ポリオレフィンからなる多孔性基材に熱プレス等により凹凸構造を形成後、ポリオレフィン基材の細孔内に陽イオン交換基又は陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、架橋性単量体を含有する重合性混合物を充填して、熱重合を行い、必要に応じてクロロスルホン酸等を用いてスルホン酸基を導入する、又はトリメチルアミン等で四級化することで四級アミノ基を導入する方法を挙げることができる。より具体的には、ポリエチレンや超高分子量ポリエチレンからなる多孔性基材の細孔内に、スチレン及びジビニルベンゼン等の単量体またはクロロメチルスチレン及びジビニルベンゼン等の単量体を充填して熱重合をおこない、得られたポリマーに前者ではスルホン酸基を後者では四級アミノ基を導入する方法を挙げることができる。
本発明においてポリオレフィンとは、分子中に二重結合を有する化合物の重合体である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン等の脂肪族オレフィンの重合体、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリジビニルベンゼン等芳香族オレフィンの重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等の含酸素オレフィンの重合体、ポリアクリロニトリル、ポリN-メチルピロリドン等の含窒素オレフィンの重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含ハロゲンオレフィンの重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィンを単独で使用してもよいし、複数のポリオレフィンを混合してもよい。また、上記の2個以上のオレフィンの共重合体、あるいはグラフト共重合体でもよい。2個以上の二重結合を有する化合物との共重合あるいは電子線照射、プラズマ照射、紫外線照射、化学反応等により架橋構造を有するものでもよい。その中でも化学的安定性やコストの面等からポリエチレンが好ましく、特に分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンが好適である。
本発明での多孔性基材とは、平均孔径が0.001~50μm、厚みが1~300μm、空孔率が1~95%のフィルム状物である。多孔性基材の平均孔径は、0.005~5μmが好ましく、特に0.01~2μmが好適である。また、多孔性基材の厚みは、5~200μmが好ましく、特に10~150μmが好適である。多孔性基材の空孔率は、10~90%が好ましく、特に20~80%が好適である。本発明における多孔性基材の製造方法は、従来おこなわれている広範な方法が何の制限もなく使用できる。例えば、溶融ポリマーをシート化して、さらに熱処理によって積層ラメラ構造を形成させ、一軸延伸によって結晶界面の剥離を行う延伸開孔法や、ポリマーと溶剤を加熱溶融してシート化することでミクロ相分離させ、その溶剤を抽出除去しながら一軸あるいは二軸延伸する相分離法等が挙げられる。本発明における多孔性基材としては、例えば旭化成株式会社製ハイポア(製品名)、東レ株式会社製セティーラ(製品名)等を挙げることができる。
本発明において使用することができる、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体としては、(1)スルホン酸基が導入されやすい芳香族環を有する単量体。例えば、スチレン、ビニルトルエン等。(2)カルボン酸基、又はニトリル基を有する単量体。例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル等を挙げることができる。本発明において用いられる、陰イオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体としては、クロロメチルスチレンを用いるのが一般的であるが、従来公知である陰イオン交換樹脂や陰イオン交換膜の製造において用いられる単量体が特に制限されず使用される。具体的には、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン等、α,β,β’-トリハロゲン化スチレン、クロロスチレン、ビニルピリジン、メチルビニルピリジン、エチルビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、アミノスチレン、アルキルアミノスチレン、トリアルキルアミノスチレン、アクリル酸アミド、アクリルアミド、オキシウムなどを挙げることができる。
本発明において、重合性単量体は、架橋性単量体又は膨潤溶媒と混合して重合性混合物として用いてもよい。本発明において使用することができる架橋性単量体としては、以下に列記する単量体が挙げられる。架橋構造を導入できる単量体。すなわちビニル基を少なくとも2個有するもの。例えば、ジビニルベンゼン(DVB)、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート。また、本発明において使用することができる膨潤溶媒としては特に限定されないが、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物などの溶媒が挙げられ、これらを適宜、少なくとも1種以上選択して使用することができる。本発明では、上記したイオン交換基を導入可能な官能基を有する重合性単量体、又は該重合性単量体及び架橋性単量体とともに、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な単量体を用いても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、ビニルクロライド、アクロレイン、メチルビニルケトン、無水マレイン酸、マレイン酸、その塩またはエステル類、イタコン酸、その塩又はエステル類等が適宜用いられる。
高分子基材への上記モノマーのグラフト重合は、基材を電離放射線照射後、モノマーと重合反応させる、いわゆる前照射法か、又は基材とモノマーとに同時に照射し、重合反応させる、いわゆる同時照射法のいずれによっても行うことができる。高分子基材にグラフト重合しないホモポリマーの生成量が少ないことから、前照射法を使用することが好ましい。前照射法については2方法あり、高分子基材を不活性ガス中で照射するポリマーラジカル法と、基材を酸素の存在する雰囲気下で照射するパーオキサイト法があり、いずれも本発明において使用することができる。
前照射法の一例を以下に説明する。まず、高分子基材を酸素不透過性ポリ袋中に挿入後、この袋内を窒素置換し、袋内酸素を除去する。次いでこの基材を含む袋に電離放射線の一つである電子線を、-10~80℃、好ましくは室温付近で、10~400kGy照射する。次いで、照射済み基材を大気中で取り出し、ガラス容器に移し替えた後、容器内にモノマー液またはモノマー溶液(溶媒希釈液)を充填する。モノマー液またはモノマー溶液は、酸素の存在しない不活性ガスによるバブリングや凍結脱気などで予め酸素ガスを除いたものを使用する。照射済み基材にポリマーのグラフト鎖を導入するためのグラフト重合は、通常、室温~80℃、好ましくは25~70℃で実施する。これにより得られたポリマーのグラフト率(すなわち、重合前の高分子基材に対するグラフト鎖の重量パーセント)は、5~300質量%、より好ましくは30~200質量%である。グラフト率は、照射線量、重合温度、重合時間等に依存して適宜変化させることができる。グラフト鎖を導入した高分子基材には、次の段階として陽イオン交換基又は陰イオン交換基を導入する。陽イオン交換基又は陰イオン交換基の導入には、従来行われている方法を使用できる。例えば陽イオン交換基としてスルホン酸基を導入する場合の具体例を以下に示す。1,2-ジクロロエタンを溶媒とする濃度1質量%~濃度50質量%のクロロスルホン酸溶液に、グラフト反応後の高分子基材を25~80℃で1~72時間浸漬して反応させる。所定時間反応後、膜を十分に水洗する。その後、濃度1~10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に1~24時間浸漬することで、加水分解した後、膜を十分に水洗する。スルホン化反応に必要なスルホン化剤としては、濃硫酸、三酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウム等も使用することができ、これらのスルホン酸基を導入できるものであれば特に限定されない。
グラフトポリマーの合成は、次の方法で行うこともできる。例えば、幹ポリマーへの連鎖移動反応を利用する方法、幹ポリマーを酸化することによって導入したペルオキシ基等を重合開始点として利用する方法、幹ポリマーの水酸基やチオール基とセリウム(IV)塩等の金属イオンとのレドックス機構による重合開始反応を利用する方法、幹ポリマーの水酸基、アミノ基等とエポキシ、ラクタム、極性ビニルモノマー等の重合開始反応を利用する方法などを挙げることができる。グラフトポリマーの幹ポリマーは、グラフト反応、グラフト重合を起こすポリマーであれば特に制限を受けない。例えば、ポリアミドのような縮合系重合体、ウレタンのような重付加系重合体、ポリオレフィン等があげられる。中でも化学安定性の高さからポリオレフィンが好適である。また、グラフトポリマーの枝ポリマーについても特に制限されない。例えば、スチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メトキシスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリルアミド、アクリロニトリル等のアクリル酸あるいはメタクリル酸系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン等の芳香族ジエン類、トリビニルベンゼン等の芳香族ポリエン類、エチレングリコールジメタクリレート、N,N-メチレンビスアクリルアミド等のアクリル酸系ジエン類、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸系ポリエン類などの1種の単量体の重合により生成するポリマーでもよいし、2種以上の単量体の共重合により生成するポリマーでもよい。中でもスチレン、クロロメチルスチレン及びジビニルベンゼンの少なくともいずれかを重合成分とするポリマーが好適である。
本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状であり、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となり、前記凸部が他方のイオン交換膜と対向するように配置されたことを特徴とする。本発明のイオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、本発明のイオン交換膜であることが好ましい。本発明のイオン交換膜セルにおけるイオン交換膜の凹部は、平坦であることが好ましい。本発明のイオン交換膜セルでは、凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部の少なくとも一部が他方のイオン交換膜と接するように配置されてもよく、前記凸部が他方のイオン交換膜と接しないように配置されてもよい。
本発明のイオン交換膜セルは、使用するイオン交換膜が広範囲な塩濃度、及び膜に接触している2種類の溶液間の塩濃度差が大きな場合においても膨潤による変形や破損が少ない。そのため、本発明のイオン交換膜セルは、塩濃度(イオン濃度)の低い溶液に使用できるだけでなく、例えば、電導度が0.05mS/cm以上、又は0.1mS/cm以上の溶液に用いることができる。本発明のイオン交換膜セルは、塩分の溶解が飽和状態に達しない範囲の溶液であれば使用できるので、使用できる溶液の電導度の最大は塩分の溶解が飽和状態における電導度未満である。また、本発明のイオン交換膜セルは、膜が接触している塩濃度が異なる2種類の溶液間において、例えば、低濃度側の溶液の電導度が0.05~50mS/cmであり、高濃度側の溶液の電導度が低濃度側の2倍以上、20倍以上、50倍以上又は600倍以上の場合でも使用できる。高濃度側の溶液の電導度の上限は塩分の溶解が飽和状態に達しない範囲であれば特に制限されないが、例えば、低濃度側の4000倍以下、1000倍以下又は700倍以下を挙げることができる。また、本発明のイオン交換膜セルは、例えば、TDS(Total Dissolved Solid:総溶解固形分)が10ppm(0.001%)以上、又は20ppm(0.002%)以上の溶液に用いることができ、膜が接触している塩濃度が異なる2種類の溶液間において、例えば、低濃度側の溶液のTDSが10ppm(0.001%)~35,000ppm(3.5%)であり、高濃度側の溶液のTDSが低濃度側の2倍以上、20倍以上、50倍以上又は100倍以上の場合でも使用できる。高濃度側の溶液の電導度としては、例えば、10~200mS/cmを挙げることができ、TDSとしては、例えば、7000ppm(0.7%)~200000ppm(20%)を挙げることができる。
凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接しないように配置される実施形態としては、次の実施形態を挙げることができる。(i)陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜のいずれか一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、他方が平坦な膜である場合は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離が、凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部の高さより長い。この場合、両イオン交換膜が接することはない。(ii)陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、凸部が重ならないように互いの凸部を互いの凹部に対向させて配置する場合は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離が、一方のイオン交換膜の凸部の高さより長い。ここで、一方のイオン交換膜の凸部の高さとは、両イオン交換膜の凸部の高さが異なる場合は、高い方の凸部の高さをいう。図18の上の図は、互いの凸部を互いの凹部に対向させて配置して互いを接触させた例であるが、このような配置の場合、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離が、一方のイオン交換膜の凸部の高さより長ければ両イオン交換膜が接することはない。図18では、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離を膜間距離と表している。(iii)陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離が、両イオン交換膜の凸部の高さを合わせた長さより長い。ここで、両イオン交換膜の凸部の高さを合わせた長さとは、陽イオン交換膜の凸部の高さと陰イオン交換膜の凸部の高さを足した長さである。図18の下の図は、両イオン交換膜の凸部の一部が接している例である。本願明細書では、直線状又は曲線状に伸びた凸部の上端を稜とも表現するが(稜は幅を有していてもよい)、図18の下の図は、両イオン交換膜の稜と稜が交差するように重ねた例である。(iii)の場合は、両イオン交換膜の稜と稜の位置関係にかかわらず、両イオン交換膜の凸部と凹部の位置関係にかかわらず、例えば図18の下の図のように両イオン交換膜が接するのでなく、両イオン交換膜は図19及び20のように離れている。なお、上記(i)~(iii)の実施形態において、イオン交換膜セルの製造時に上記条件を満たしていれば、使用中に膜の撓み等により陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の一部で両者間の距離が変わり、一方のイオン交換膜の凸部(稜)の一部が他方のイオン交換膜に接することがあっても、本発明の範囲からは除外されない。
特に低濃度側溶液の流路の電気抵抗および圧力損失の観点から、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の距離は、上記(i)及び(ii)の場合は、例えば、15μm超3000μm以下、25μm超3000μm以下、15~250μm、25~100μm等を挙げることができ、上記(iii)で陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の稜と稜が交差するように対向させる場合は、例えば、30μm超3000μm以下、50μm超3000μm以下、15~250μm、25~100μm等を挙げることができる。凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部の高さとしては、例えば、15~1000μm、25~300μm、15~250μm、25~100μm等を挙げることができる。
凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置される本発明のイオン交換膜セルの一実施形態は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜は、前記イオン交換膜自体が曲がった形状であり、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっている膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置される。前記凹凸形状を有するイオン交換膜は、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成されたイオン交換膜であってもよい。本発明のイオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、本発明のイオン交換膜であることが好ましい。また、本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部の一部と前記陰イオン交換膜の凸部の一部とが接するように配置されることが好ましい。
図18の上の図は、凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置した一実施形態の例であり、一方の膜の凸部の上端が他方の膜の凹部に接するように配置した例である。このように陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、凸部が互いに重ならないように互いの凸部を互いの凹部に対向させ、少なくとも一方の凸部の上端が他方の凹部に接するように配置する場合(ii’)、及び陽イオン交換膜と陰イオン交換膜のいずれか一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、他方が平坦な膜であり、一方のイオン交換膜の凸部の上端が他方のイオン交換膜の平坦部に接するように配置する場合(i’)は、両イオン交換膜の間の距離(膜間距離)としては、特に低濃度側溶液の流路の電気抵抗および圧力損失の観点から、例えば、15~1000μm、25~300μm、15~250μm、25~100μm等を挙げることができ、イオン交換膜の凸部の高さとしては、例えば、15~1000μm、25~300μm、15~250μm、25~100μm等を同様に挙げることができる。図18では、両方のイオン交換膜の凸部の高さが同じになっているが、一方の凸部の高さを他方よりも高くしてもよい。
図18の下の図は、凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置して、両イオン交換膜の凸部の上端と凸部の上端が接するようにした例である。このように陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、両イオン交換膜の凸部の少なくとも一部が互いに接するように配置する場合(iii’)は、両イオン交換膜の膜間距離としては、特に低濃度側溶液の流路の電気抵抗および圧力損失の観点から、例えば、15~1000μm、25~300μm、15~250μm、25~100μm等を挙げることができる。(iii’)の場合、(i’)及び(ii’)と同じ凸部の高さを有する膜を用いた場合でも、膜間距離は(i’)及び(ii’)の2倍となることから、膜の凸部の高さは(i’)及び(ii’)の場合の半分の高さでもよい。すなわち、イオン交換膜の凸部の高さとしては、例えば、7.5~500μm、12.5~150μm、7.5~125μm、12.5~50μm等を挙げることができる。凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部の上端が他方のイオン交換膜と接しないように配置される場合も接するように配置される場合も、両イオン交換膜の凸部の高さは必ずしも同じでなくてよい。一方のイオン交換膜の凸部の高さを、他方のイオン交換膜の凸部の高さに比べて高くしてもよい。本願明細書では、直線状又は曲線状に伸びた凸部の上端を稜とも表現するが(稜は幅を有していてもよい)、両イオン交換膜の稜と稜が一致するように重ねてもよく、稜と稜が交差するように重ねてもよい。図18の下の図は、稜と稜が交差するように重ねた例である。
また、図19及び20は、稜と稜が接しないように交差させた例である。本発明において、稜と稜が交差するとは、対向して配置される陽イオン交換膜の稜の延設方向と陰イオン交換膜の稜の延設方向が異なり、両イオン交換膜の上方から両イオン交換膜の稜を見たときに交差して見えることをいい、両イオン交換膜の稜が接している場合も、接していない場合も含む。上述の(i’)、(ii’)及び(iii’)の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の配置形態のうち、(i’)及び(ii’)は膜の凸部と平坦部に囲まれた空間だけが流路となり、やや狭い流路となる。これに対して(iii’)の形態の場合両方のイオン交換膜の間に双方の凸部の流路があるため流路が広く圧損がつきにくい。なお、本発明においてイオン交換膜の凸部が接するとは、イオン交換膜セルの製造時に接していれば、使用中に膜の撓み等により接しなくなることがあっても、本発明の範囲からは除外されない。
また、図21及び22は、両イオン交換膜を重ねたときに稜と稜が交差するように、陽イオン交換膜の凸部の延設方向と陰イオン交換膜の凸部の延設方向とをずらして(延設方向の角度を変えて)凸部を形成した一実施形態の例である。図21及び22は、一方のイオン交換膜(CEM)の傾きの方向と他方のイオン交換膜(AEM)の傾きの方向とが逆になるように凸部を形成している。こうすることにより、稜と稜とを交差させることができる。図23は、図18~22に使用するイオン交換膜の凹凸形状を分かりやすく示すための模型の写真である。これらの模型では、構造を分かりやすくするために凹凸構造を実際よりも大きく表現している。実際の凹凸構造は小さく、1つのセルの中にその大きさに合わせて多くの凹凸構造が並んでいる。図21及び22では、イオン交換膜の凹凸形状部に対応する部分が中抜きになった枠体であるガスケットを挟んで両イオン交換膜が固定される。イオン交換膜の前記ガスケットの四方の枠に接する部分、すなわち本発明におけるイオン交換膜の端近傍は平坦となっている。セルに組立てた時に、溶液はイオン交換膜に形成された配流部開口(図中の上端付近及び下端付近の円形の開口)から両イオン交換膜の間に供給される。図21は配流部もイオン交換膜の凹凸構造で一定の間隔を保たせる場合であり、図22は従来の網スペーサを用いて配流部での膜間隔を一定に保たせた場合である。前者のほうが配流部の圧損が低くなるという利点があるが、製造上の複雑さから配流部は従来の網スペーサを用いてもよい。
図24は、図21のセルの塩溶液及びイオンの流れを模式的に表した図であり、塩溶液は凸部の延設方向(延長方向)からセルへ供給されている。稜と稜が交差して接するように重ねると、稜と稜が交差する各点で両イオン交換膜が固定される。そのため、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が接触する面積が少なくなるので、イオンが透過する有効膜面積を大きくできる。また、溶液の流れを邪魔する余計なスペーサや凸構造がないため、両イオン交換膜間の塩溶液の流れはスムーズであり、また汚れ物質が付着しやすい非伝導性スペーサなどの疎水性部がなく、汚れ物質の流れを邪魔する凸構造もないため、汚れ物質の付着による流路の詰まりが少ない。さらに、液が凸部を乗り越えて隣のレーンともいえる凹部にも流れやすくなる。このような液の流れが、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方のイオン交換膜の間で生じるため、イオンのよどみが低減することで、RED発電の場合には発生電圧の低下の原因となる局所的な溶液の濃度増加、EDの場合には膜焼けや膜破壊の原因となる局所的な塩分濃度の低下を少なくすることができる。これらの効果を更に向上させる観点から、凹部が平坦であることが好ましい。これらのことから流路の高さ(ここでは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間隔)を狭めても汚れ物質の付着する可能性が低くなるので、この幅を狭めることができ、有効膜面積の増大との相乗効果で流路における電気抵抗の大幅な低減を適切に行うことが可能となる。また、特に凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置して、両イオン交換膜の凸部と凸部が接するようにした場合には従来のプロファイル膜と比較して流路断面積が大きくとれることより、圧損の増加が抑制できるため必要なポンプエネルギーを低減することもできる。この構造は高強度で大面積化が容易であり、低コストでのセルが製造可能となる。
各イオン交換膜の稜が、溶液の流れる方向に対してなす角度は特に制限されない。ここで溶液が流れる方向は次とおりである。後述のイオン交換膜のスタック(セル)を構成した際に1対のイオン交換膜が平行にかつ凸部が対向して配置される膜間において、膜間をその各膜の端近傍をシールするガスケット(枠体)で挟んだ際にできる溶液の流路を、溶液が入口から出口に向って流れる。このとき、溶液は流路を挟んで互いに対向する平行なガスケットの二辺に沿って、入口側から出口側に向かって流れる。これらの辺に平行な方向が溶液の流れ方向となる。図21のガスケットの図に矢印で模式的に溶液の流れ方向を示す。イオン交換膜の稜と溶液の流れる方向とのなす角度が大きくなると、溶液が流れる距離が長くなるため流路での送液抵抗が高くなる。また、凸部が接する場合は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接点が増えるため流路間の圧力差に対する強度が高くなる。これらの観点を勘案すると、イオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接しないように配置される場合は、イオン交換膜の稜と溶液の流れる方向とのなす角度は、0~45°(0°は溶液の流れ方向と平行)が好ましく、より好ましくは0~30°、0~15°、1~9°である。また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜である場合は、両イオン交換膜の稜がなす角度の好ましい範囲は、0~90°、より好ましくは0~45°、2~30°、2~18°、2~15°を挙げることができる。ここで、お互いの凸部が接しない場合、すなわちお互いの稜が接しない場合の両イオン交換膜の稜がなす角度とは、異なる平面上で交差している稜と稜の交差角度のことである。
イオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置される場合は、イオン交換膜の稜と溶液の流れる方向とのなす角度は、0~45°(0°は溶液の流れ方向と平行)が好ましく、0~30°、1~15°がより好ましい。また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜である場合は、両イオン交換膜の稜がなす角度の好ましい範囲は、1~90°であり、より好ましくは1~45°、2~30°、2~18°、2~15°を挙げることができる。互いに向かい合う両方のイオン交換膜の面が互いに平行であり、かつ向かい合うそれぞれの稜のなす角度を2等分する線分が溶液の流れ方向と一致するように各イオン交換膜を設けることが好ましい。このようにイオン交換膜の稜が互いに平行に向かい合う際に線対称になるように配置することによりイオン交換膜を製造する際に必要となる型を1種類にすることができる。また、凹凸形状を有するイオン交換膜と対向するイオン交換膜の間に網スペーサを挿入できる隙間がある場合は、両イオン交換膜の間に網スペーサを挿入してもよい。この場合であっても、本発明のイオン交換膜は、凸部の上端の幅を狭くしやすくイオンが流れない網部との接触面積を狭くできるので、イオンが透過する有効膜面積を大きくすることができ、緩やかな傾斜の凸部を形成しやすいため、流体中の汚れの付着を防止でき流路を広くできる。さらに、両方のイオン交換膜の向かい合う凸部が存在する分だけ、網スペーサの厚み(網の線径)を小さくできるため、流路の圧損および流路間の電気抵抗も下げることができる。また、イオン交換膜の稜と溶液の流れる方向とのなす角度、及び陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の稜がなす角度は、網スペーサを挿入しない場合と同様である。
本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が、直線状又は曲線状に延設された凸部と凹部を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部と前記陰イオン交換膜の凸部とが交差するように配置されたイオン交換膜セルであってもよい。交差するように配置されたとは、陽イオン交換膜の凸部と陰イオン交換膜の凸部とが接するように配置された場合及び接しないよう配置された場合を含む。さらに、前記イオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜自体が曲がった形状であり、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっているイオン交換膜であることが好ましい。また、前記イオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜は、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成されているイオン交換膜であることが好ましい。
本発明のイオン交換膜セルは、RED発電及びEDのセルとして好適である。本発明のイオン交換膜は、凸部と他の部分との膜厚の差が少ないため、膜における場所の違い(膜厚の違い)による膨潤の違いを防ぐことができる。したがって、本発明のイオン交換膜を使用したイオン交換膜セルは、広範囲な塩濃度、及び膜が接触している2つの溶液間の塩濃度差が大きな場合においても、イオン交換膜の膨潤による変形や破損を防ぐことができる。例えば、低塩濃度側に電導度が0.05~50mS/cmの溶液を流し、高塩濃度側の溶液として電導度が低塩濃度側の2倍以上、さらには20倍以上の溶液を流すことができる。また、低塩濃度側にTDSが10ppm(0.001%)~35,000ppm(3.5%)の溶液を流し、高塩濃度側の溶液としてTDSが低塩濃度側の2倍以上、さらには20倍以上の溶液を流すことができる。なお、河川水の電導度は0.1~0.25mS/cm程度の範囲にあり、海水の電導度は50mS/cm程度である。RED発電のセルとして使用する場合、例えば、低塩濃度側の溶液として、電導度が0.05~50mS/cmの溶液を挙げることができ、高塩濃度側の溶液として、電導度が10~200mS/cmの溶液を挙げることができる。
RED発電に使用する場合、図24で示すセルでは、高濃度側流路は従来型の網スペーサを用いて、セルの強度を十分に保つ方が、コスト、強度面等から望ましい。またこの時、低濃度側を高濃度側より少しだけ圧力を高くすることで、CEMとAEMが高濃度側の網スペーサに支えられている状態が好ましい。なぜならば、逆にした場合、CEMとAEMが点接触又は線接触している点に強く力がかかるので凸部が部分的に変形したり破損したりする可能性があるからである。ただし、部分的にここが変形しても、膜が破損しない限り大きな問題にはならない。従来の平膜同士の間にスペーサを設けるセル構造では通常圧力差をつけることは、液漏れなどのトラブルにつながるため積極的には行われていない。従来セルは汚染物質を除去するために、セルの解体洗浄を行っている。しかしこれは労力とコストがかかる上に、膜やスペーサ部材の破損につながるおそれがある。本技術では上記のように汚染物質が堆積しにくく、また堆積した場合においても逆洗などの物理的洗浄や酸、アルカリ、塩素注入などの化学洗浄で容易に汚染物質の除去が可能となるため無解体で洗浄することが可能となる。この場合はセルを解体する必要がないため陽イオン交換膜と陰イオン交換膜をガスケットを挟んでガスケットと接合する一体型セルとすることが可能となる。一体型セルにした場合は淡水など低塩濃度側流路からの液漏れがなくなるため、EDの場合は高い電流効率が得られ、またREDの場合は高いエネルギー変換率が得られる。その上にセルの部品点数が半分となるため、より低コストになるという利点がある。
図25は本発明のイオン交換膜セルの一実施形態を示す図であり、一体型セルとした例である。ここでは、例えば図中上段左側の凹凸形状を有する陰イオン交換膜(PF-AEM)の前面の上にガスケットを載せて、次に右側の凹凸形状を有する陽イオン交換膜(PF-CEM)を図面上の向き(右側の図は裏面から見た図である)のままPF-AEMに対向させるように載せて作製した例である。「PF」はプロファイルの略称である。図25の一体型半セル(セルの一部を半セルという。以下同じ。)では、中段の図が示すように陽イオン交換膜の凸部と陰イオン交換膜の凸部が1点又は2点以上で接触するように重ねられ、それぞれが両イオン交換膜の間にあるガスケットと接合されている。下段の図は、PF-AEMとPF-CEMをガスケットに組み込む様子を断面で示しており、一方のイオン交換膜の上にガスケットを置き、その上に他方のイオン交換膜を置いて接合することにより一体型半セルを作製している。以上のべた各図面においては、大小関係を誇張して表現して描いている部分がある。
以下、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
(使用したフィルム)
分子量160万、膜厚50μmのインフレーション法により製造された超高分子量ポリエチレンフィルム(作新工業株式会社製、製品名:Saxinニューライトフィルム イノベート)を基材として使用した。
(膜の凹凸形状の形成)
基材への凹凸形状の形成は、対象となる膜(上記超高分子量ポリエチレンフィルム)を図26に示すアルミ製型の上に載せて、所定温度に設定した電気こてにより熱プレスすることで膜上に凹凸形状を形成した。アルミ製型は0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmの深さのV字型の溝がそれぞれ5条ずつ等間隔に彫られているが、今回は0.5mmを使用した。図27に示す寸法で1枚の膜に14本の凹凸形状を形成したものを2枚用意し、それぞれ陽イオン交換膜用及び陰イオン交換膜用に用いた。凹凸形状を付与した膜を用いて実施例のイオン交換膜を、凹凸形状を付与しない膜を用いて比較例のイオン交換膜を以下の方法で作製した。
(電子線照射)
上記凹凸形状を形成した膜(フィルム)を酸素不透過性ポリエチレン袋中に挿入後、この袋内を窒素置換し、袋内の酸素を除去する。次いでこの基材を含む袋に電子線を25℃、加速電圧200keV、電子線電流32.7mAで、陽イオン交換膜グラフト重合では30kGy、陰イオン交換膜グラフト重合では40kGyをそれぞれ照射した。
(陽イオン交換膜グラフト重合)
照射済み膜を大気中で取り出し、ガラス容器に移し替えた後、高純度窒素によりバブリングし、予め酸素ガスを除いたスチレンの50質量%キシレン溶液を充填した。充填後、30℃で55分間グラフト重合した後、膜をガラス容器より取り出し、メタノールで洗浄し、風乾した。グラフト率は39%であり、膜抵抗は1.4Ωcmであった。
(陽イオン交換基導入)
1,2-ジクロロエタンを溶媒とする濃度5質量%のクロロスルホン酸溶液に、グラフト反応後の高分子基材を室温で16時間浸漬した後、膜を十分に水洗した。その後、濃度1規定の水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した。中和後に得られた陽イオン交換膜はよく水洗し、0.5N-NaCl水溶液中に保存した。合成した陽イオン交換膜の膜厚は、湿潤状態で82μmであった。この膜をPF-Cとした。また、比較例として凹凸構造を形成しない基材から上記と同様な方法で陽イオン交換膜を作製した。この膜を平-Cとした。
(陰イオン交換膜グラフト重合)
照射済み膜を大気中で取り出し、ガラス容器に移し替えた後、高純度窒素によりバブリングし、予め酸素ガスを除いたクロロメチルスチレンの50質量%キシレン溶液を充填した。充填後、40℃で120分間グラフト重合した後、膜をガラス容器より取り出し、メタノールで洗浄し、風乾した。グラフト率は34%であり、膜抵抗は1.4Ωcmであった。
(陰イオン交換基の導入)
グラフト反応後の高分子基材を30質量%のトリメチルアミン水溶液に25℃で7日間浸漬した後、膜を十分に水洗した。その後、濃度1規定の塩酸水溶液に24時間浸漬した。中和後に得られた陰イオン交換膜はよく水洗し、0.5N-NaCl水溶液中に保存した。合成した陰イオン交換膜の膜厚は湿潤状態で80μmであった。この膜をPF-Aとした。また、比較例として凹凸構造を形成しない基材から上記と同様な方法で陰イオン交換膜を作製した。この膜を平-Aとした。
図28に実施例のPF-C及びPF-Aの全体写真を示す。また、図29に比較例の平-C及び平-Aの全体写真を示す。また、図30にPF-Aの一部の表面写真を示す。この写真から図32に示す凸部(A部)、平坦部(B部)、凸部高さ、膜厚を測定した。また、同様にPF-Cについてもそれぞれの寸法を測定した。その結果を表2に示す。なお、凸部の下端の位置が、不明瞭であったため、斜面の立ち上がり部が徐々に立ち上がる途中で平坦部の膜厚を100%としたときにこの厚みよりも10%高い高さになる位置を下端の位置としてA部及びB部を計測した。図31(a)はPF-Cの断面写真であり、図31(b)はPF-Aの断面写真である。
Figure 2022171644000003
図33に示すように200μm厚のスペーサ2枚の両側に作製したPF-C、PF-Aをそれぞれ1枚ずつ、お互いの凸部が交差するように配置して、これを銀電極を有する電極部及び銀塩化銀を有する電極部の間に挟んでREDスタックを作製した。また比較例として平-Cと平-Aを用いて同様のスタックを作製した。このスタック内ではPF-CとPF-Aを、それぞれの稜が溶液の流れ方向に対して反対方向に傾くように対向させた。それぞれの稜の溶液の流れ方向に対する傾きを3°度としたので、互いの稜がなす角度は6°(3°×2)度であった。また、2枚のスペーサの合計厚みが400μmであるので、PF―CとPF-Aは凸部上端が互いに接するようにした。図34に比較例用のスペーサと実施例用のスペーサを示す。ここで比較例では有効膜面積部にメッシュがあるスペーサを使用し、実施例では有効膜面積部にメッシュがないスペーサを使用した。表3にはこのスタックの仕様を記載する。
Figure 2022171644000004
図35の装置を使用して作製したREDスタックの発電特性評価を行った。この装置の等価回路を図36に示す。このスタックに模擬海水と模擬河川水を流しながら装置の負荷抵抗の値を変えて、電圧と電流を測定することで、負荷抵抗が無限大の時にREDスタックの開回路電圧が測定でき、また抵抗の値を下げていくと、電流の値が増加し、電圧の値が減少する。この電流-電圧曲線の傾きからスタックの内部抵抗が算出される。この測定で使用した塩溶液を表4に示す。図37に実施例の電圧-電流曲線とまたそれぞれの電流での発電出力の値を、図38に比較例の値を示す。このグラフより、実施例と比較例のスタック抵抗と最大出力密度を算出した結果を表5に示す。実施例では比較例よりもスタック抵抗が約40%低い値を示し、また最大出力は約18%高い値を示した。最大出力密度は、出力を総有効膜面積で除して求めた。ここで総有効面積は、有効膜面積部の面積(30cm)にREDスタックに使用した膜の枚数として2枚分を乗じた面積で60cmである。
Figure 2022171644000005
Figure 2022171644000006
本発明のイオン交換膜及びイオン交換膜セルは、広範囲な塩濃度、及び膜に接触している2種の溶液間の塩濃度差が大きな場合においても膨潤による変形や破損が少なく物理的強度の高い。そのため、イオン交換膜を利用する各種分野で好適に使用でき、特に電気透析(ED)、逆電気透析(RED)発電、イオン交換膜を使用した水素製造等に好適に使用できる。
IEM イオン交換膜
IE イオン交換層
IEM1、IEM1’ 凸部(凸曲部)
IEM2、IEM2’ 凹部(凹曲部)
A、B、C、D 曲部

Claims (8)

  1. 凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっており、
    前記凸部が直線状又は曲線状に延設され、
    前記凸部と凸部の間の前記凹部は、前記凸部の長手方向に沿って前記凸部の短手方向に隣接する第1の凹部を含み、
    前記凸部が長手方向に頂部と側面とを有し、前記側面が前記頂部から前記第1の凹部に向かって傾斜しているイオン交換膜。
  2. 前記凹部が平坦であることを特徴とする請求項1記載のイオン交換膜。
  3. 端近傍に平坦部を有し、前記端近傍に隣接する前記凸部の長手方向の端面が頂部から隣接する前記端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしている請求項1又は2記載のイオン交換膜。
  4. 凹部は、凸部の長手方向の端面と向かい合う他の凸部の長手方向の端面との間の第2の凹部をさらに含み、凸部と前記第2の凹部がイオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで、長手方向に交互に並んで配置された請求項1又は2記載のイオン交換膜。
  5. 平面状のグラフト重合体に凸部及び凹部が形成された請求項1又は2記載のイオン交換膜。
  6. 凹凸形状を有するイオン交換膜の製造方法であって、高分子フィルムを凹凸が形成された型枠に押し付けて曲げることにより、前記高分子フィルムに凹凸を形成し、その後グラフト重合させることにより前記高分子フィルムをイオン交換膜とするイオン交換膜の製造方法。
  7. 陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、
    前記凹凸形状を有するイオン交換膜はグラフト重合体であり、前記イオン交換膜自体が曲がった形状をして、前記イオン交換膜の凸曲部と凹曲部が、それぞれ前記イオン交換膜の凹凸形状における凸部と凹部となっており、前記凸部が直線状又は曲線状に延設され、前記凸部と凸部の間の前記凹部は、前記凸部の長手方向に沿って前記凸部の短手方向に隣接する第1の凹部を含み、前記凸部が長手方向に頂部と側面とを有し、前記側面が前記頂部から前記第1の凹部に向かって傾斜しているイオン交換膜であり、
    前記凹凸形状を有するイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜に対向するように配置されたイオン交換膜セル。
  8. 陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜のいずれもが凹凸形状を有するイオン交換膜であり、一方のイオン交換膜の凸部が他方のイオン交換膜と接しないように配置された請求項7記載のイオン交換膜セル。
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