JP7378126B2 - イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及びイオン交換膜セル - Google Patents

イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及びイオン交換膜セル Download PDF

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Description

本発明は、凹凸形状を有するイオン交換膜、前記イオン交換膜の製造方法及び前記イオン交換膜を使用したイオン交換膜セルに関する。
近年、再生可能エネルギーの利用促進が求められている。再生可能エネルギーの1つとして、海水や河川水などの塩分濃度が異なる2つの塩水間に存在する塩分濃度差エネルギー(SGE)を電力に変換する技術がある。このSGEは太陽光発電や風力発電と比較して高稼働率、少設置面積という利点があり、ベースロード電源として利用することも可能である。SGEを利用した発電には、半透膜を用いた浸透圧発電(PRO)とイオン交換膜を用いた逆電気透析(RED:Reverse Electro-Dialysis)発電があるが、海水レベルの塩水を使用する場合にはPROよりRED発電に優位性があるといわれている。RED発電は、陽イオン交換膜(CEM:Cation Exchange Membrane)と陰イオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)を使用する。CEMは陽イオンを、AEMは陰イオンを選択的に透過させる特性を有する。まずREDの元の技術である電気透析(ED:Electro-Dialysis)について説明する。このEDではCEM、高濃度側流路、AEM及び低濃度側流路で構成されたセルを1対として、2つの電極間に何百対のセルを積層させたスタックを使用する。このスタックに海水などの塩水を供給し、電極に直流電圧を印可すると、陽イオンは陰極側に、陰イオンは陽極側に移動するが、陽イオンはCEMを通るがAEMは通れず、陰イオンはAEMを通るがCEMは通れないので、この装置内で濃縮塩水と脱塩水が得られる。これがEDの原理である(図1)。一方、RED発電はこのEDの逆プロセスであり、このスタックに高塩濃度水と低塩濃度水を加えると電力が得られる(図2)。つまりRED発電はSGEを直接、直流電力に変換する技術である。RED発電で発生する電圧は、高塩濃度水が供給される高濃度側と低塩濃度水が供給される低濃度側の濃度比の自然対数に比例する。また、RED発電においても、CEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路で構成されたセルを1対として、これを2つの電極間に何百対積層させたスタックを使用する。セルの抵抗はCEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路の抵抗の合計であるが、この中で一番電気抵抗が高いのは、塩濃度が低い低濃度側流路である。低濃度側流路の高さ、すなわちCEMとAEMの間隔を狭くすれば低濃度側流路の電気抵抗は減少する。しかしこの間隔を狭くすると、低濃度側塩水に含まれる膜汚染物質により流路が閉塞して出力が大幅に低下する、低濃度側塩水をスタックに供給する圧力が上がり、ポンプエネルギーが増えるため、RED出力からポンプ動力電力を差し引いた正味発電電力が低下するとの問題点がある。
ED及びRED発電の装置では、図3に示すように、CEM、高濃度側流路、AEM、低濃度側流路で構成されたセルを1対として、これを2つの電極間に何百対積層させたスタックが主要な構成要素となっている。従来、このセルは図4に示すように、CEMとAEMの間に高濃度側流路スペーサと低濃度側流路スペーサで構成されており、各スペーサはゴム状のガスケットとスペーサ網で出来ている。各膜に開いた導水孔を通して、高塩濃度水と低塩濃度水が上流側から流れる中、その一部がガスケットに開いた切り欠き(配流孔)から所定のスペーサ網に流れて下流側の導水孔に流れる。そうすることで何千対にもなる各流路に均一に高濃度塩水と低濃度塩水を供給する構造になっている。図5は、セル中の流れを横から見た図を示す。ここではREDの場合で説明する。この図では高濃度と低濃度の塩水は左から右方向へ流れている。濃度勾配により陽イオンと陰イオンが高濃度側から低濃度側へ拡散するが、図5に示すようにスペーサ網は非伝導性でイオンを通さないため、膜と接する部分付近(点線円の部分)ではその拡散が阻害されてイオンが拡散する有効膜面積が減少するので、低濃度側流路の電気抵抗が塩溶液のみの場合の抵抗よりも高くなる。またスペーサ網はポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの疎水性高分子材料で作製されているため、低塩濃度水(下水処理水や河川水など)に含まれるフミンや無機粒子などが付着して凝集しやすい。そのため特にこの流路のCEMとAEMの間隔が狭くなるほど、これらが凝集して水の流れを低下させるため、出力の大幅な低下につながる。したがって、従来のセルでは、低濃度側流路のCEMとAEMの間隔を狭くすることは難しかった(特許文献1参照)。
そこで、上記問題を解決するための1つの方法として、伝導性スペーサを使用する方法が提案されている(図6)。伝導性スペーサとは、スペーサ自身に陽イオン交換能と陰イオン交換能を付与したものであり、図6に示すようにイオンが拡散する有効膜面積が増えるために低濃度側流路の電気抵抗が低減される。またスペーサがイオン性を有して親水性であるため、汚れ物質の付着が起こりにくい。伝導性スペーサを作製する方法には、イオン交換膜を切り抜く方法と、PEなどの非伝導性スペーサに電子線照射などを行い、荷電モノマーをグラフトさせてイオン交換能を付与する方法がある。しかし、いずれもスペーサ部分の機械的強度は低く、また作製が高コストであり、大面積化は困難である(特許文献2参照)。
また、上記問題を解決するための他の方法として、プロファイル膜を使用する方法が提案されている(非特許文献1~3)。プロファイル膜と伝導性スペーサの違いは、伝導性スペーサはイオン交換膜とスペーサは別であるが、プロファイル膜はスペーサが膜と一体化して、両者とも同じ素材で作られることである。図7及び8にプロファイル膜の模式図を示す。プロファイル膜の場合、有効膜面積が従来セルよりも大きくなる場合もあるが、図7の点線円に示す部分はイオンが流れない(陽イオンはAEMの部分を通れず、陰イオンもCEMの部分は通れない)ため電気抵抗は伝導性スペーサより小さくはならない。また同じ素材で厚みが異なる構造(凸部と他の部分とで厚みが異なる構造)は、イオン交換膜を塩水に浸漬させたときに厚みが異なる部分間の膨潤による寸法変化が異なるために変形や破裂を生じやすく、大面積化が難しく、また高コストである。図8は、バインダー樹脂(PVC等)の中にイオン交換樹脂の粉末を練りこんで成型した不均一イオン交換膜でプロファイル膜を作製した例である。上記のとおり、従来のプロファイル膜の場合、第1の問題は、凸部上面で膜面が覆われ、この凸部上面部分と根本部分では溶液の流れが遅くなるため、これら部分への汚れの付着を引き起こしやすい。第2の問題は、この膜は平面状の膜から柱状に盛り上がる構造であるため、膜全体が膨潤した際に凸状部と平膜部分で膨潤度に差が生じ、かつ凸状部は支持体で補強される構造ではないため凸状部に劣化(亀裂)が生じやすく、特に根元に応力集中が起き易く、破損しやすい構造である。第3の問題は、陽イオン交換膜(CEM)の凸部(柱状部等)の頂部の平面が対向する陰イオン交換膜の膜面を覆うためイオン流が通過する有効な膜面積が見かけ上小さくなることが抵抗増につながり、EDでの処理効率やREDでの発電電力の低下となる。第4の問題は、平膜イオン交換膜に凸部で厚みを付けた構造であるため、膜の平均厚みが平膜状イオン交換膜より厚くなり、膜全体での平均の電気抵抗が高くなることである。第5の問題は、凸部の存在により流路断面積が低減するため、同じ量の溶液を供給する場合に高い圧力が必要であるために動力の損失になることであった。
特開2014-14776号公報 特開2006-175408号公報
Vermaas et al. J. Membr. Sci., 385- 386 (2011) 234- 242 Pawlowski et al. J. Membr. Sci., 531 (2017) 111- 121 Pawlowski et al. Int. J. Mol. Sci., 2019, 20, 165
本発明の課題は、従来のプロファイル膜に比べてイオンが膜を透過しやすく、流路での圧損が少なく、汚れによる詰まりを少なくできるイオン交換膜を提供することにある。また、前記に加えて変形や破損の少ないイオン交換膜を提供することにある。また、イオンが膜を透過しやすく、流路の圧損が少なく、汚れによる詰まりが少なく、イオン交換膜の変形や破損の少ないイオン交換膜セルを提供することにある。
本発明者は、例えばEDやRED発電の装置に用いたときに、イオンが透過する有効な膜面積を広くでき、塩溶液中の汚れの付着も抑制できるイオン交換膜の検討を開始した。本発明者は、イオン交換膜の形状及びその製法に着目して検討を進めたところ、イオン交換膜自体を曲げて凹凸を形成することにより、目的とする特性を有するイオン交換膜が得られることを見いだした。従来、イオン交換膜に凹凸を形成する場合、当然のことながら凸部の膜厚を厚くしており、イオン交換膜自体を曲げて、例えば山谷ができるように曲げて、この曲部を凸部や凹部として利用することは考えられていなかった。なぜならイオン交換膜を用いてセルを組み立てるとき、膜の端部はガスケットでシールするために平坦でなければいけない。しかし凹凸部と平坦部とではそれらの投影面積が同一になっていても表面積に大きな差異が生じるために、凹凸部と平坦部を1枚の膜で連続的に形成することは膜に局所的なひずみが生じ不可能であるとみなされていた。そこで、可塑性の支持体を用いることにより、場合により更に可塑性高分子のイオン交換体を用いることにより、上述した課題を解決する好適な凹凸形状を有するイオン交換膜が得られた。この形状を有するイオン交換膜は、平面状の膜を型を用いてプレスするという簡易な方法で得ることができる。また、この方法によれば、凹凸の形状により上記特性を得ているので、従来イオン交換膜に使用されている材料を使用することができる。こうして得られたイオン交換膜は、EDやRED発電に用いるのに好適なものであるが、使用用途としてこれらに限られるものではない。本発明は、こうして完成したものである。
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成されているイオン交換膜。
(2)端近傍の平坦部に隣接する凸部の長手方向の端面が、上端から隣接する前記平坦部に向かって傾斜する面をなしている上記(1)記載のイオン交換膜。
(3)凸部と凹部が直線状に延設され、前記凹部は平坦であり、前記凸部は長手方向の両端面が上端からイオン交換膜の端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしている上記(1)又は(2)記載のイオン交換膜。
(4)支持体及びイオン交換層から少なくとも構成される凹凸形状を有するイオン交換膜の製造方法であって、次の(A)又は(B)工程を含む製造方法。
(A)荷電基を有する可塑性のポリマー層が両面又は片面に設けられた可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成する工程;
(B)可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成し、前記凹凸の形成後に前記支持体の両面又は片面に荷電基を有するポリマー層を設ける工程;
(5)陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成され、前記凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置されたイオン交換膜セル。
(6)陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部の一部と前記陰イオン交換膜の凸部の一部とが接するように配置された上記(5)記載のイオン交換膜セル。
本発明のイオン交換膜は、イオンが膜を透過しやすく、流路での圧損が少なく、汚れによる詰まりを少なくできる。また、膜の変形や破損を少なくできる。本発明のイオン交換膜セルは、イオンが膜を透過しやすく、流路の圧損が少なく、汚れによる詰まりが少なく、イオン交換膜の変形や破損が少ない。
図1は、電気透析(ED)の原理の説明図である。 図2は、逆電気透析(RED)の原理の説明図である。 図3は、ED及びRED発電装置におけるセル及びスタックの状態を示す図である。 図4は、従来のRED用セルを示す図である。 図5は、図1に示すセルを使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図6は、RED用セルに従来の伝導性スペーサを使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図7は、RED用セルに従来のプロファイル膜を使用した場合の水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図8は、従来のプロファイル膜の構造を示す模式図である。 図9は、本発明における支持体の凸曲部及び凹曲部の一実施形態の断面を示す模式図である。 図10は、本発明のイオン交換膜の凸部及び凹部の一実施形態の断面を示す模式図である。 図11は、本発明のイオン交換膜における凸部形状の一実施形態を示す図である。図11(a)及び(c)は凸部の形状を示す図であり、図11(b)及び(d)は凸部をイオン交換膜に形成された状態を示す図である。 図12は、本発明の製造方法における凹凸形成方法の一実施形態を示す図である。 図13は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図14は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図15は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。 図16は、本発明のイオン交換膜の凹凸形状の一実施形態を示す模型の写真である。 図17は、本発明の一実施形態のイオン交換膜セルにおける水の流れ、イオンの拡散、汚れ物質の付着の状態を示す模式図である。 図18は、本発明のイオン交換膜セルの構造の一実施形態を示す模式図である。上段の図は各イオン交換膜及びガスケットを示す図であり、中断の図はこれらが一体化した状態を示す図であり、下段の図は、各イオン交換膜をガスケットに組み込む様子を示した図である。 図19は、PVA-b-PSSSの反応式である。 図20は、実施例に用いたアルミ製型の写真である。 図21は、凸部の高さ、凸部の下端部の幅、膜厚の測定位置を示す図である。 図22は、実施例1で得られた膜の写真であり、図22(a)は断面、図21(b)は表面、図22(c)は裏面の写真である。 図23は、実施例2で得られた膜の断面の写真であり、図23(a)は断面、図23(b)は表面、図23(c)は裏面の写真である。 図24は、実施例3で得られた膜の写真であり、図24(a)は断面、図24(b)は表面、図24(c)は裏面の写真である。 図25は、実施例及び比較例で用いた膜電位測定装置を示す図である。 図26は、実施例2で得られた膜を前面(凸部が形成された側)から撮影した写真である。
本発明のイオン交換膜は、凹凸形状を有するイオン交換膜であって、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成されていることを特徴とする。本発明におけるイオン交換層としては、イオン交換能を有する層であれば特に制限されず、陽イオン(カチオン)交換層でもよく、陰イオン(アニオン)交換層でもよい。本発明において支持体とは、イオン交換膜の形状維持特性及び/又は強度をイオン交換層のみからなる場合よりも向上させる働きを有するものであり、本発明における支持体としては、イオンが通過できる支持体であれば特に制限されず、例えば、高分子網、不織布、多孔性支持体等を挙げることができる。本発明では、イオン交換膜を構成する支持体自体が曲がっており、その曲がりによってイオン交換膜に凹凸が形成されている。本願明細書で本発明に用いる「曲がり」、「曲がった」、「曲げる」等の曲げに関する表現は、屈曲(すなわち折れ曲がった状態)及び湾曲(すなわち明瞭な角を形成せずに曲がった状態)を含む。支持体の凸曲部とは、支持体の曲がりにより凸形状が形成された部分のことであり、支持体の凹曲部とは、支持体の曲がりにより凹形状が形成された部分のことである。支持体の曲がりにより凸形状又は凹形状が形成されていれば、凸曲部及び凹曲部の形状は特に制限されない。図を用いて説明すると、例えば、図9は支持体Sを側面(厚み方向)から見た模式図であり、凸曲部の延長方向である長手方向に垂直な断面の模式図である。上側を支持体の前面、下側を支持体の裏面とすると、図9(a)では、支持体が平坦部から曲部aで前面側に曲がり、曲部bで裏面側に曲がり、曲部cで平坦方向に曲がり、曲部dで前面側に曲がっている。これを繰り返すことにより、曲部a~cで形成される凸曲部S1と、曲部c~dで形成され、凸曲部と凸曲部との間に形成される凹曲部S2とが交互に形成される。図9(a)は、凹曲部の形状が平坦な形状の例であり、図9(b)は、凹曲部の形状が凸曲部の反対側に突き出た形状の例である(凹曲部S2’)。また、図9(c)は、凸曲部の形状が台形の例である(凸曲部S1’)。図9では、支持体Sの曲部は屈曲しているが、上記で述べたとおり、支持体Sの曲部は湾曲していてもよく、曲部と曲部の間が湾曲していてもよい。支持体Sの凹曲部が凸曲部の反対側に突き出ている場合、この膜を使用したセルでは海水側流路のスペーサ網が不要になるが、これはセル全体の機械的強度の関係から比較的小さな面積のセルに向いている。
本発明のイオン交換膜は、凸曲部と凹曲部を有する支持体の両面又は片面にイオン交換層が設けられているので、支持体の凸形状及び凹形状を反映した凹凸形状を有する。図を用いて説明すると、例えば、図10はイオン交換膜IEMを側面(厚み方向)から見た模式図であり、凸部の延長方向である長手方向に垂直な断面の模式図である。上側をイオン交換膜IEMの前面、下側をイオン交換膜IEMの裏面とすると、図10(a)のイオン交換膜IEMは、曲がった支持体Sと支持体Sの両面に設けられたイオン交換層IEから構成されている。図10(a)のイオン交換膜IEMでは、イオン交換膜IEMが平坦部から曲部Aで前面側に曲がり、曲部Bで裏面側に曲がり、曲部Cで平坦方向に曲がり、曲部Dで前面側に曲がっている。これを繰り返すことにより、曲部A~Cで形成されるイオン交換膜IEMの凸部IEM1と、曲部C~Dで形成され、凸部と凸部との間に形成されるイオン交換膜IEMの凹部IEM2とが交互に形成される。イオン交換膜IEMの曲部A~Dは、それぞれ支持体Sの曲部a~dに対応しているので、支持体Sの凸曲部と凹曲部が、それぞれイオン交換膜IEMの凸部と凹部に対応し、支持体Sの凸曲部と凹曲部の箇所が、それぞれイオン交換膜IEMの凸部と凹部になる。このようにイオン交換膜IEMでは、支持体Sの凸曲部と凹曲部に、イオン交換膜IEMの凸部と凹部がそれぞれ形成されている。そのため、イオン交換膜IEMの凸部と凹部は、それぞれ支持体Sの凸曲部と凹曲部と同様の形状となる。図10(b)は、曲がった支持体Sの片面にイオン交換層IEが設けられたイオン交換膜IEMの例である。図10(c)は、凸部の形状が台形の例である。図10では、イオン交換膜IEMの曲部は屈曲しているが、上記で述べたとおり、イオン交換膜IEMの曲部は湾曲していてもよく、曲部と曲部の間が湾曲していてもよい。イオン交換膜IEMの凹部が凸部の反対側に突き出ている場合、この膜を使用したセルでは海水側流路のスペーサ網が不要になるが、これはセル全体の機械的強度の関係から比較的小さな面積のセルに向いている。
本発明のイオン交換膜は、凹凸形状を有するため膜の表面積が大きくなる。さらに、本発明のイオン交換膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を対向して配置するイオン交換膜セルに使用する場合、凸部の上端が他方のイオン交換膜の凸部、凹部又は平坦部と接するように配置することにより、スペーサを使用しなくても両イオン交換膜間の間隔を固定でき、両イオン交換膜間の流路を確保することができる。この場合、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が接する部分はイオンが流れないため、両イオン交換膜が接する面積は小さいほうが好ましい。すなわち凸部の上端の面積は小さいほうが好ましい。本発明のイオン交換膜は、支持体の曲がった角を凸部の上端とできるため、角が屈曲した場合、湾曲した場合、また上端に平面部を設ける場合にかかわらず、凸部の上端の幅を狭くしやすい。そのため、イオン交換膜セルに使用する場合、イオンが流れない両イオン交換膜の接触部分の面積を狭くできるので、イオンが透過する有効膜面積を大きくすることができる。凸部の上端の幅は、下端の幅の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。凸部の上端の幅とは、凸部の長手方向に垂直な断面における上端の幅であり、凸部の下端の幅とは、凸部の長手方向に垂直な断面における凸部と凹部の境の位置での幅である。凸部の上端が湾曲している場合、上端の幅とは、上端を他のイオン交換膜に接触させたときに接触する幅をいう。また、凹凸形状を有するイオン交換膜は、凸部が柱状に盛り上がると流体中の有機物や無機粒子等の汚れが凸部の根元に付着しやすく、この付着が流路を狭くして流体の流れを妨げる。本発明のイオン交換膜は、支持体を曲げて凸部の斜面を形成するため、緩やかな傾斜の凸部を形成しやすい。そのため、流体中の汚れの付着を防止でき、流路を広くできる。本発明のイオン交換膜の凸部は、上端において両斜面がなす角度が10~140°が好ましく、30~120°がより好ましく、60~120°が更に好ましい。上端において両斜面がなす角度とは、凸部の長手方向に垂直な断面において上端で左右の面がなす角度をいう。上端部が湾曲して明瞭な角を形成していない場合又は凸部の形状が台形の場合等のように幅を有する場合は、上端において両斜面がなす角度とは、前記左右の面の延長線が交差する位置での角度をいう。凸部の下端における両斜面の立ち上がりの角度(傾斜角)の差は0~15°であることが好ましい。本発明のイオン交換膜の厚さは、使用に適する強度を維持しつつ抵抗の増加を抑制する観点から、5~1000μmが好ましく、10~200μmがより好ましい。図10(d)を用いて説明すると、θ1が上端において両斜面がなす角度であり、θ2及びθ3が凸部の下端における両斜面の立ち上がりの角度(傾斜角)である。なお、図10(d)では、角度の表示を分かりやすくするためにイオン交換層の内部に埋め込まれた支持体の記載を省略している。本発明のイオン交換膜の凸部及び凹部は、直線状又は曲線状に延設されていることが好ましい。凸部及び凹部が直線状又は湾曲状、弧状等の曲線状に延設されていると、本発明のイオン交換膜を、上記イオン交換膜セルに使用した場合、流れる流体とイオン交換膜との接触面積を増加させながら、流路の抵抗を少なくすることができる。直線状又は曲線状に延設とは、凸部及び凹部が直線状又は曲線状に伸びて設けられていればよく、イオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍までつながっていなくてもよい。例えば、所定の長さの凸部が一方の端近傍から他方の端近傍まで並んでいてもよい。本発明のイオン交換膜は、セルに取り付けるために膜の端近傍は平坦である。端近傍とは、イオン交換膜の端から前記イオン交換膜をセルに取り付けるために必要な領域をいい、例えば、ガスケットのような枠体で固定する場合に前記枠が接する領域をいう。また、本発明のイオン交換膜は、端近傍の平坦部に隣接する凸部の長手方向の端面が、上端から隣接する前記平坦部に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。凹部が平坦でない場合は凹部の端面も上記形状をなしていることが好ましい。このような形状とすることにより、凹凸部と平坦部で表面積と投影面積に大きな差異があっても比較的緩やかな傾斜の面をなすことにより膜のひずみを分散して膜の端近傍の平坦部へつづく凸構造を保つことが出来る。上記凸部の長手方向の端面は、平坦であっても、凸部の長手方向とは反対方向にくぼんでいても、凸部の長手方向に盛り上っていてもよい。また、端面と端面を挟む面との境目の曲部は屈曲していてもよく湾曲していてもよい。端近傍の平坦部に隣接する凸部以外の他の凸部の端面の形状は特に制限されないが、凸部と凹部が直線状に延設され、前記凹部は平坦であり、前記凸部は長手方向の両端面が上端からイオン交換膜の端近傍の平坦部に向かって傾斜する面をなしていることが好ましい。本発明のイオン交換膜は、イオン交換膜自体が曲がって凹凸を形成しているので、凸部の膜厚を凹部の膜厚より厚くする必要はなくイオン交換膜の膜厚をほぼ一定にできる。そのため、膜の平均の電気抵抗を上げることなく、また膜厚の差により膨潤による寸法変化の差が生じるのを防ぐことができ、イオン交換膜の変形や破損を防ぐことができる。特に、膨潤の差による凸部の根元の亀裂や破損を防止できる。図11(a)~(d)は本発明における凸部の形状の一実施形態を示す図であり、長手方向の両端面が上端から平坦部に向かって傾斜する面をなしている。図11(a)の上の図は凸部を上から見た図であり、下の図は凸部を横から見た図である。図11(a)の凸部では、長手方向の端面が平坦となっている。図11(b)は図11(a)の凸部を形成したイオン交換膜の一部分を示す図であり、溶液が導入される導水口の周囲を示している。図11(b)の左の図は凸部を上から見た図であり、右の図は凸部を長手方向から見た図である。図11(c)は凸部の長手方向に盛り上がっており、端面中央付近が膜の端近傍へ張り出すように広がっている例である。図11(d)は図11(c)の凸部を形成したイオン交換膜の一部分を示す図であり、右の図は凸部を横(長手方向に垂直な方向)から見た図である。これらの形状の1つの凸部が、イオン交換膜の一方の端近傍から他方の端近傍まで延設されていてもよく、これらの形状の複数の凸部が一方の端近傍から他方の端近傍まで並んでいてもよい。また、凹部の上端の幅が凸部の下端の幅より小さいと、イオン交換膜セルに使用した場合に、凸部が接触する箇所が増えるため、流路間の高塩濃度側流路と低塩濃度側流路の間の圧力差に対する膜の組合せによる構造の強度が高くなる、一方で流路断面積が小さくなる。これらのことから、凹部の上端の幅をb、凸部の下端の幅をaとすると、bは0超2×a以下とするのが好ましく、0超1×a以下とするのがより好ましい。凸部の下端の幅とは上記で定義したとおりであり、凹部の上端の幅とは、凹部の長手方向に垂直な断面における凸部と凹部の境の位置での幅である。凹部が平坦な場合は、平坦な部分の幅である。例えば、図10のイオン交換膜において、図中の曲部Aと曲部Cの間の距離がa、曲部Cと曲部Dの間の距離がbとなる。bが0の場合とは凸部が連続し、凹部が隣り合う凸部の斜面と凸部の斜面との角となっている場合である。さらに本発明のイオン交換膜は、凸部及び凹部の形状に沿って支持体が配置されているため膜強度に優れる。そのため、スペーサとしての機能を兼ねて使用した場合でもイオン交換膜が変形や破損することを防止できる。特に、凸部の根元の亀裂や、凸部の上端の幅が狭いと起こりやすい上端の破損を防止できる。
本発明のイオン交換膜を製造する方法は特に制限されないが、例えば、次の(A)又は(B)工程を含む方法を好適な方法として挙げることができる。
(A)荷電基を有する可塑性のポリマー層が両面又は片面に設けられた可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成する工程;
(B)可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成し、前記凹凸の形成後に前記支持体の両面又は片面に荷電基を有するポリマー層を設ける工程;
(A)又は(B)工程における支持体への凹凸形成方法は、支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げる方法であれば特に制限されないが、例えば、プレス法を挙げることができ、プレス時に熱を加える熱プレス法を挙げることができる。図12は、凹凸形成方法の一例を示す図であり、(A)又は(B)工程における支持体を下型と上型で挟み熱プレスすることにより前記支持体を曲げて凹凸を形成している。その後、前記支持体を型から取り出すことにより凹凸が形成された支持体が得られる。可塑性とは、固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとにもどらない性質をいうが、本発明における可塑性の支持体及び可塑性のポリマーとは、常温で可塑性を有する支持体及びポリマー並びに加熱により軟化して成形しやすくなり冷やすと再び硬くなる熱可塑性を有する支持体及びポリマーを含む。以下に(A)及び(B)の各工程を更に説明する。
[(A)工程を含む場合]
予め両面又は片面に荷電基を有する可塑性のポリマー層が設けられた可塑性の支持体を、凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成する。この方法によれば、イオン交換層となる前記ポリマー層と支持体とを一体として曲げることにより、支持体の凸曲部と凹曲部に凸部と凹部が形成されたイオン交換膜を製造できる。両面又は片面に荷電基を有するポリマー層が設けられた支持体に凹凸を形成した後に、必要に応じてポリマー層を架橋させて、本発明のイオン交換膜を得てもよい。
[(B)工程を含む場合]
用意した可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成し、前記凹凸の形成後に前記支持体の両面又は片面に荷電基を有するポリマー層を設ける。この方法によれば、凹凸が形成された支持体に、支持体の形状に合わせて前記ポリマー層を設けることにより、支持体の凸曲部と凹曲部に凸部と凹部が形成されたイオン交換膜を製造できる。(B)工程では、支持体に凹凸を形成した後に、荷電基を有するポリマー層を形成し、このポリマー層を必要に応じて架橋させて、本発明のイオン交換膜を得てもよい。
荷電基を有する可塑性ポリマーとして、化学的架橋を行える部位を有する高分子を使用すると、凹凸形状を形成後に、熱や光照射で架橋したり、あるいはグルタルアルデヒドなどの架橋剤を含む溶液に浸漬させて化学的架橋を行うことが可能である。無架橋の場合、低膜抵抗となり、凹凸形成後に架橋を行うと、無架橋に比べて膜抵抗は高くなる傾向にあるが、膜含水率が低くなり、イオン選択性が高くなり、機械的強度も向上する。支持体の両面にイオン交換層を設ける場合は、膜強度のより高いイオン交換膜を得ることができる。支持体の片面にイオン交換層を設ける場合は、イオン交換層を薄くすることができ(例えば5~50μm)、低膜抵抗のイオン交換膜を得ることができる。(A)工程における荷電基を有するポリマー層が設けられた支持体の作製方法は特に制限されないが、例えば、熱可塑性支持体に荷電基を有するポリマーを含浸させる又は塗布することにより作製できる。前記作製方法としては、例えば、ポリマーをキャスト板(例えば、PET等)に流してポリマー層とし、半分乾いた状態で支持体を上に乗せ、完全に乾燥した後にキャスト板から剥がす転写法等を挙げることができる。(B)工程における凹凸が形成された支持体に荷電基を有するポリマー層を設ける方法は特に制限されないが、例えば、凹凸が形成された支持体に荷電基を有するポリマーを含浸させる、荷電基を有するポリマーを塗布する等を挙げることができる。荷電基を有するポリマーとしては、イオン交換層を形成できるものであれば特に制限されないが、陰イオン交換能を有するポリマーとしては、分子鎖中にカチオン基(正荷電基)を含有する重合体であるカチオン性重合体を挙げることができ、前記カチオン基は、主鎖、側鎖及び末端のいずれに含まれていてもよい。前記カチオン基としては、アンモニウム基、イミニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基等が例示される。また、アミノ基やイミノ基のように、水中においてその一部が、アンモニウム基やイミニウム基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明におけるカチオン性重合体に含まれる。この中で、工業的に入手し易い観点から、アンモニウム基が好ましい。アンモニウム基としては、1級アンモニウム基(アンモニウム基)、2級アンモニウム基(アルキルアンモニウム基等)、3級アンモニウム基(ジアルキルアンモニウム基等)、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)のいずれを用いることもできるが、4級アンモニウム基(トリアルキルアンモニウム基等)がより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみのカチオン基を含有していてもよいし、複数種のカチオン基を含有していてもよい。また、カチオン基の対アニオンは特に限定されず、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなどが例示される。この中で、入手の容易性の点から、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有していてもよいし、複数種の対アニオンを含有していてもよい。本発明で用いられるカチオン性重合体は、カチオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、カチオン基を含有する構造単位とカチオン基を含有しない構造単位の両方からなる重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。カチオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種の重合体を含むものであってもよい。また、これらカチオン基を含有する重合体とカチオン基を含有しない重合体との混合物であっても構わない。陽イオン交換能を有するポリマーとしては、分子鎖中にアニオン基(負荷電基)を含有する重合体であるアニオン性重合体を挙げることができ、前記アニオン基は、主鎖、側鎖及び末端のいずれに含まれていてもよい。前記アニオン基としては、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基等が例示される。また、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基のように、水中においてその一部が、スルホネート基、カルボキシレート基、ホスホネート基に変換し得る官能基を含有する重合体も、本発明におけるアニオン性重合体に含まれる。この中で、イオン解離定数が大きい点から、スルホネート基が好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみのアニオン基を含有していてもよいし、複数種のアニオン基を含有していてもよい。また、アニオン基の対アニオンは特に限定されず、水素イオン、アルカリ金属イオン、などが例示される。この中で、設備の腐蝕問題が少ない点から、アルカリ金属イオンが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの対アニオンを含有していてもよいし、複数種の対アニオンを含有していてもよい。本発明で用いられるアニオン性重合体は、アニオン基を含有する構造単位のみからなる重合体であってもよいし、アニオン基を含有する構造単位とアニオン基を含有しない構造単位の両方からなる重合体であってもよい。また、これらの重合体は架橋性を有するものであることが好ましい。アニオン性重合体は、1種類のみの重合体からなるものであってもよいし、複数種の重合体を含むものであってもよい。また、これらアニオン基を含有する重合体とアニオン基を含有しない重合体との混合物であっても構わない。本発明の製造方法の(A)及び(B)工程のいくつかの例を表1に示す。ただし、(A)及び(B)の具体的工程はこれに限られるものではない。
Figure 0007378126000001
本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成され、前記凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置されたことを特徴とする。本発明のイオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、本発明のイオン交換膜であることが好ましい。また、本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部の一部と前記陰イオン交換膜の凸部の一部とが接するように配置されることが好ましい。図13の上の図は、凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置した一実施形態の例であり、一方の膜の凸部が他方の膜の凹部に接するように配置した例である。図13では、両方のイオン交換膜の凸部の高さが同じになっているが、一方の凸部の高さを他方よりも高くしてもよい。両イオン交換膜の膜間距離としては、例えば15~1000μm、好ましくは25~300μm等の範囲を挙げることができる。凸部の高さとしても同様に、例えば15~1000μm、好ましくは25~300μm等の範囲を挙げることができる。図13の下の図は、凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置して、両イオン交換膜の凸部と凸部が接するようにした例である。この場合、同じ凸部の高さを有する膜を用いた場合でも、膜間距離は上記の2倍となることから、膜の凸部の高さは上記の半分の高さでもよい。本願明細書では、直線状又は曲線状に伸びた凸部の上端を稜とも表現するが(稜は幅を有してもよい)、両イオン交換膜の稜と稜が一致するように重ねてもよく、稜と稜が交差するように重ねてもよい。図13の下の図は、稜と稜が交差するように重ねた例である。また、図14及び15は、両イオン交換膜を重ねたときに稜と稜が交差するように、陽イオン交換膜の凸部の延設方向と陰イオン交換膜の凸部の延設方向とをずらして(延設方向の角度を変えて)凸部を形成した一実施形態の例である。図14及び15は、一方のイオン交換膜(CEM)の傾きの方向と他方のイオン交換膜(AEM)の傾きの方向とが逆になるように凸部を形成している。こうすることにより、稜と稜とを交差させることができる。図16は、図13~15に使用するイオン交換膜の凹凸形状を分かりやすく示すための模型の写真である。これらの模型では、構造を分かりやすくするために凹凸構造を実際よりも大きく表現している。実際の凹凸構造は小さく、1つのセルの中にその大きさに合わせて多くの凹凸構造が並んでいる。図14及び15では、イオン交換膜の凹凸形状部に対応する部分が中抜きになった枠体であるガスケットを挟んで両イオン交換膜が固定される。イオン交換膜の前記ガスケットの四方の枠に接する部分、すなわち本発明におけるイオン交換膜の端近傍は平坦となっている。セルに組立てた時に、溶液はイオン交換膜に形成された配流部開口(図中の上端付近及び下端付近の円形の開口)から両イオン交換膜の間に供給される。図14は配流部もイオン交換膜の凹凸構造で一定の間隔を保たせる場合であり、図15は従来の網スペーサを用いて配流部での膜間隔を一定に保たせた場合である。前者のほうが配流部の圧損が低くなるという利点があるが、製造上の複雑さから配流部は従来の網スペーサを用いてもよい。図17は、図14のセルの塩溶液及びイオンの流れを模式的に表した図であり、塩溶液は凸部の延設方向(延長方向)からセルへ供給されている。稜と稜が交差するように重ねると、稜と稜が交差する各点で両イオン交換膜が固定される。そのため、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が接触する面積が少なくなるので、イオンが透過する有効膜面積を大きくできる。また、水の流れを邪魔する余計なスペーサや凸構造がないため、両イオン交換膜間の塩溶液の流れはスムーズであり、また汚れ物質が付着しやすい非伝導性スペーサなどの疎水性部がなく、汚れ物質の流れを邪魔する凸構造もないため、汚れ物質の付着による流路の詰まりが少ない。これらのことから流路の高さ(ここでは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間隔)を狭めても汚れ物質の付着する可能性が低くなるので、この幅を狭めることができ、有効膜面積の増大との相乗効果で流路における電気抵抗の大幅な低減が可能となる。また、特に凹凸形状を有する陽イオン交換膜と凹凸形状を有する陰イオン交換膜とを、凸部が対向するように配置して、両イオン交換膜の凸部と凸部が接するようにした場合には従来のプロファイル膜と比較して流路断面積が大きくとれることより、圧損の増加が抑制できるため必要なポンプエネルギーを低減することができる。この構造は高強度で大面積化が容易であり、低コストでのセルが製造可能となる。陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の稜がなす角度は特に制限はないが、この角度が大きい場合は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接点が増えるため流路間の圧力差に対する強度が高くなる、一方で溶液が流れる距離が長くなるため流路での送液抵抗が高くなる。これらの観点からこの角度は1~45°が好ましく、2~15°がより好ましい。本発明のイオン交換膜セルは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が、直線状又は曲線状に延設された凸部と凹部を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部と前記陰イオン交換膜の凸部とが交差するように接触して配置されたイオン交換膜セルであってもよい。さらに、前記イオン交換膜セルにおけるイオン交換膜は、凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成されているイオン交換膜であることが好ましい。こ前記イオン交換膜は、膜の凸部及び凹部の形状に沿って支持体が配置されているため膜強度に優れる。そのため、凸部同士を点接触させた場合でも凸部の根元の亀裂や、凸部の上端の破損を防止でき、セルの耐久性や性能の安定性が向上する。本発明のイオン交換膜セルは、上記特性を有するため、RED発電の低濃度側のセルとして好適である。RED発電に使用する場合、図17で示すセルでは、高濃度側流路は従来型の網スペーサを用いているが、高濃度側も凸構造を形成した、両凸構造の膜としてもよい。ただし、高濃度側の電気抵抗は元々高くないため、高濃度側には従来型の網スペーサを用いて、セルの強度を十分に保つ方が、コスト、強度面等から望ましい。またこの時、低濃度側を高濃度側より少しだけ圧力を高くすることで、CEMとAEMが高濃度側の網スペーサに支えられている状態が好ましい。なぜならば、逆にした場合、CEMとAEMが点接触している点に強く力がかかるので凸部が部分的に変形したり破損したりする可能性があるからである。ただし、部分的にここが変形又は破損しても、膜が破損しない限り大きな問題にはならない。従来の平膜同士の間にスペーサを設けるセル構造では通常圧力差をつけることは、液漏れなどのトラブルにつながるため積極的には行われていない。従来セルは汚染物質を除去するために、セルの解体洗浄を行っている。しかしこれは労力とコストがかかる上に、膜やスペーサ部材の破損につながるおそれがある。本技術では上記のように汚染物質が堆積しにくく、また堆積した場合においても逆洗などの物理的洗浄や酸、アルカリ、塩素注入などの化学洗浄で容易に汚染物質の除去が可能となるため無解体で洗浄することが可能となる。この場合はセルを解体する必要がないため陽イオン交換膜と陰イオン交換膜をガスケットを挟んでガスケットと接合する一体型セルとすることが可能となる。一体型セルにした場合は淡水など低塩濃度側流路からの液漏れがなくなるため、EDの場合は高い電流効率が得られ、またREDの場合は高いエネルギー変換率が得られる。その上にセルの部品点数が半分となるため、より低コストになるという利点がある。図18は本発明のイオン交換膜セルの一実施形態を示す図であり、一体型セルとした例である。ここでは、例えば図中上段左側の凹凸形状を有する陰イオン交換膜(PF-AEM)の前面の上にガスケットを載せて、次に右側の凹凸形状を有する陽イオン交換膜(PF-CEM)を図面上の向き(右側の図は裏面から見た図である)のままPF-AEMに対向させるように載せて作製した例である。「PF」はプロファイルの略称である。図18の一体型半セル(セルの一部分を半セルという。以下同じ)では、中段の図が示すように陽イオン交換膜の凸部と陰イオン交換膜の凸部が1点又は2点で接触するように重ねられ、それぞれが両イオン交換膜の間にあるガスケットと接合されている。下段の図は、PF-AEMとPF-CEMをガスケットに組み込む様子を断面で示しており、一方のイオン交換膜の上にガスケットを置き、その上に他方のイオン交換膜を置いて接合することにより一体型半セルを作製している。
実施例及び比較例に使用するポリマー及び支持体を以下のとおり用意した。
(ポリマー)
1.ポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬製)
2.スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)
(支持体)
1.ナイロン織布 厚さ:80μm
2.ポリエステル不織布 厚さ:41μm
3.PET基材上にナイロンナノ繊維を吹付けた支持体 厚さ:220μm
(PVA-b-PSSSの合成)
比較例2及び実施例1に使用するPVA系ブロック共重合体は次のように合成する。セパラブルフラスコに所定量の片末端にチオール基を有するPVA((株)クラレ提供)及び陽イオン交換基を有するモノマー(正式名称:東ソーSSS)、溶媒として脱イオン水を加え、窒素条件下で90℃で加熱撹拌を30分間行い、原料を完全に溶解させた。その後、0.99wt%のV-50(2, 2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)水溶液を反応溶液へ逐次滴下しながら、90℃で1時間半重合を行った。1時間半後、開始剤の逐次添加を止めて更に2時間90℃で追重合を行った。重合終了後、反応溶液を多量のアセトンに添加することで重合物(PVA-b-PSSS)を析出沈殿させた。析出沈殿物を回収し減圧乾燥させた。PVA-b-PSSSの反応式を図19に示す。
(膜の凹凸形状の形成)
膜への凹凸形状の形成は、対象となる膜を図20に示すアルミ製型の上に載せて、所定温度に設定した電気こてで熱プレスすることで膜上に凹凸形状を形成した。アルミ製型は0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmの深さのV字型の溝がそれぞれ5条ずつ等間隔に彫られているが、今回は0.5mmを使用した。
[実施例1]
実施例1では、PETフィルム上に16wt%のPVA-b-PSSS水溶液を塗布した後にすぐにポリエステル不織布を置いた後、50℃で乾燥させ、乾燥後PETフィルムを剥離させた。その後、上記に示す熱プレス法により220℃でこの膜に凹凸構造を形成した後、30分間140℃で熱処理を行った。その後2M NaSO水溶液に25℃、2時間浸漬させた。この膜を酸性条件下0.05vol%のGA水溶液に6時間浸漬させて化学的架橋を行った。その後、0.5M NaCl水溶液に浸漬させて、実施例1の膜(PVA-PFCEM:両面含侵膜)を得た。
[実施例2]
実施例2では、PET基材上にナイロンナノ繊維を吹付けた支持体上に、ジメチルスルホキシド(DMSO)47mLにSPESを10g溶解させたDMSO溶液を刷毛により塗布し、75℃で乾燥させた。その後、上記に示す熱プレス法により140℃でこの膜に凹凸構造を形成した後、0.5M NaCl水溶液に浸漬させて、実施例2の膜(芳香族PFCEM:両面含侵膜)を得た。
[実施例3]
実施例3では、PETフィルム上に16wt%のPVA-b-PSSS水溶液を塗布した後に、PET基材上にナイロンナノ繊維を吹付けた支持体をその上に置き、50℃で乾燥させ、乾燥後下側のPETフィルムを剥離させた。その後、上記に示す熱プレス法により220℃この膜に凹凸構造を形成した後、30分間140℃で熱処理を行った。その後2M NaSO水溶液に25℃、2時間浸漬させた。この膜を酸性条件下0.05vol%のGA水溶液に6時間浸漬させて化学的架橋を行った。その後、0.5M NaCl水溶液に浸漬させて、実施例3の膜(PVA-PFCEM:片面膜)を得た。
[比較例1]
PVAを秤量して500mL三角フラスコに入れ、ポリマー濃度が5.0wt%になるようにイオン交換水を加えた。これらの三角フラスコを90℃で攪拌させながらポリマーを溶解させ、その後50℃でアクリル板上に溶液を流し込んで、キャスト成形を行った。得られた膜を30分間120℃で熱処理を行い、2M NaSO水溶液に25℃、2時間浸漬させた。この膜を酸性条件下0.05vol%のGA水溶液に6時間浸漬させた。その後、0.5M NaCl水溶液に浸漬させて、比較例1の膜(PVA非荷電平膜)を得た。
[比較例2]
PVA-b-PSSSを秤量し、500mL三角フラスコに入れ、ポリマー濃度が3.3wt%になるようにイオン交換水を加えた。これらの三角フラスコを90℃で攪拌させながらポリマーを溶解させ、その後50℃でアクリル板上に溶液を流し込んで、キャスト成形を行った。得られた膜を30分間140℃で熱処理を行い、2M NaSO水溶液に25℃、2時間浸漬させた。この膜を酸性条件下0.05vol%のGA水溶液に6時間浸漬させた。その後、0.5M NaCl水溶液に浸漬させて、比較例2の膜(PVA-b-PSSSを用いた陽イオン交換平膜)を得た。
[比較例3]
ジメチルスルホキシド(DMZO)47mLにSPESを10g溶解させた。そしてこの溶液をPETフィルム上にキャスト後、75℃で乾燥して製膜し比較例3の膜(芳香族CEM平膜)を得た。
(光学顕微鏡による膜構造の観察)
実施例で得られた膜を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX-1000)で撮影し、凹凸構造の形態を観察すると共に、凸部の高さ、凸部の下端部の幅、平坦部の膜厚を測定した。ここで凸部の高さ、凸部の下端部の幅、膜厚の測定位置を図21に示す。膜の断面写真を図22~24に示し、この写真から測定した凸部の高さ、凸部の下端の幅、膜厚を表2に示す。なお、実施例2における膜厚は凹部(平坦部)の厚みであり、凸部の厚みは81μmである。実施例3における膜厚は基材(支持体)の厚みであり、この上に23μmの荷電層が存在する。また膜の表面と裏面の画像も撮影した。その写真を図22~24に示す。ここで表面とはポリマーを塗布した面を示す。図22(a)は実施例1で得られた膜の断面図であり、図22(b)は実施例1で得られた膜の表面であり、図22(c)は実施例1で得られた膜の裏面である。図23(a)は実施例2で得られた膜の断面図であり、図23(b)は実施例2で得られた膜の表面であり、図23(c)は実施例2で得られた膜の裏面である。図24(a)は実施例3で得られた膜の断面図であり、図24(b)は実施例3で得られた膜の表面であり、図24(c)は実施例3で得られた膜の裏面である。実施例1では表面も裏面も塗布した荷電ポリマーが存在することが判別できる。つまりこの膜は表面と裏面がほぼ均一に荷電ポリマーが存在する。一方、実施例3では明らかに表面はなめらかでポリマー層が存在するのに対して、裏面では基材(PET基材)が見える。また断面写真においても基材上にポリマー層(画像から算出すると厚さ23μm)が存在している。これより実施例3は膜の片側面だけに荷電ポリマー層が存在する非対称な凹凸構造を有するイオン交換膜である。また、実施例2において、表面に荷電ポリマーがあり、また裏面にも一部支持体が見える部分もあるが、荷電ポリマーが存在する。これは実施例3と異なり、刷毛を用いて荷電ポリマーを塗布したため、内部まで荷電ポリマーが浸透し、裏面まで達したと考えられる。
Figure 0007378126000002
(膜電位測定の測定)
膜電位測定は図25に示す装置を用いて測定した。作製した膜をホルダーで挟み、2つのセルの間にセットした。このホルダーの有効膜面積の部分が30φであるので、この中に入るように凹凸形状を形成した。例として実施例2の画像を図26に示す。この図のように実施例1から3まで6条の凸部が長さ11~26mm、凹部(凸部)間隔は隣り合う溝の中心間の距離に等しい5mmで形成させた。2つのセル内にそれぞれ0.1M NaCl、0.5M NaCl水溶液を入れた。測定温度は25℃として3M KClを含む塩橋を用い、電位計(kaise, KT-2008)で電位を測定した。この条件下(NaCl 0.1Mの活量係数を0.770、NaCl 0.5Mの活量係数を0.687とした場合)での理論発生電位を表3に示し、実施例及び比較例の膜電位を表4に示す。
Figure 0007378126000003
Figure 0007378126000004
比較例1の膜電位が-4.15mVを示しているが、これはこの条件下での非荷電膜の電位が-7.97mVであることから、比較例1が荷電基をほとんど持っていないことを意味する。比較例2の電位は33.8mVであり、これからこの膜は陽イオン交換膜として十分な機能を有していることが判明でき、これより今回合成したPVA系ブロック共重合体は陽イオン交換基を有していることを示している。また比較例3は38.4mVを示しているため、今回スルホン化ポリエーテルスルホンから作製した比較例3の膜は陽イオン交換膜として高い性能を有することがわかる。一方、実施例1の膜電位は28.1mVであり、比較例2と比べても殆ど変わらない。また実施例2は35.9mVであり、比較例3と大きく変わらないことから凹凸構造の形成過程が陽イオン交換膜の性能に与える影響はないと言える。したがって、凹凸形状によりイオン交換膜自体の性能は阻害されないので、イオン交換膜セルに使用すると、凹凸形状に基づく特性の向上効果を奏することができる。実施例3の膜電位は23.4mVであり、陽イオン交換膜の機能を有しているものの、比較例2と比較するとやや低い値を示している。これは実施例3が非対称構造をしており、かつ基材が200μmと厚いため、支持体内での濃度分極によりバルク(今回は0.5M NaCl水溶液)の塩濃度よりもイオン交換膜面での濃度が低くなったことが考えられる。したがって、濃度分極が少ない(支持体層が薄い、開口率が大きい)支持体を使用することが好ましいと考えられる。
本発明のイオン交換膜及びイオン交換膜セルは、イオンが透過する有効な膜面積を広くでき、膜の平均の電気抵抗が小さくなり、流路の電気抵抗が低く、流路での圧損が低く、流路での圧損や汚れによる詰まりを少なくできる。また、流路の断面積が大きくとれ、そして膜の変形や破損を少なくできる。そのため、イオン交換膜を利用する各種分野で好適に使用でき、特に電気透析(ED)、逆電気透析(RED)発電、RED発電と水電気分解を組み合わせた水素製造等に好適に使用できる。
S 支持体
IE イオン交換層
IEM イオン交換膜
S1、S1’ 凸曲部
S2、S2’ 凹曲部
a、b、c、d 曲部
IEM1 凸部
IEM2 凹部
A、B、C、D 曲部

Claims (6)

  1. 凹凸形状を有するイオン交換膜であって、前記イオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体自体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成され、前記凸部と前記凹部が直線状又は曲線状に延設され、前記凹部は平坦であり、前記凸部は長手方向の両端面が上端から前記イオン交換膜の端近傍の前記平坦部に向かって傾斜する面をなしているイオン交換膜。
  2. 部の長手方向に垂直な断面において、左右の面が前記凸部の上端から下端まで傾斜している請求項1に記載のイオン交換膜。
  3. 複数の凸部が一方の端近傍から他方の端近傍まで並んでいる請求項1又は2に記載のイオン交換膜。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のイオン交換膜の製造方法であって、次の(A)又は(B)工程を含む製造方法。
    (A)荷電基を有する可塑性のポリマー層が両面又は片面に設けられた可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成する工程;(B)可塑性の支持体を凹凸が形成された型に押し付けて曲げることにより、前記支持体に凹凸を形成し、前記凹凸の形成後に前記支持体の両面又は片面に荷電基を有するポリマー層を設ける工程;
  5. 陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が対向して配置されたイオン交換膜セルであって、前記陽イオン交換膜及び前記陰イオン交換膜の少なくとも一方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記凹凸形状を有するイオン交換膜は、支持体及び前記支持体の両面又は片面に設けられたイオン交換層から少なくとも構成され、端近傍に平坦部を有し、前記支持体自体の曲がりによる凸曲部と凹曲部に、前記イオン交換膜の凸部と凹部がそれぞれ形成され、前記凸部と前記凹部が直線状又は曲線状に延設され、前記凹部は平坦であり、前記凸部は長手方向の両端面が上端から前記イオン交換膜の端近傍の前記平坦部に向かって傾斜する面をなし、前記凸部が他方のイオン交換膜と接するように配置されたイオン交換膜セル。
  6. 陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の両方が凹凸形状を有するイオン交換膜であり、前記陽イオン交換膜の凸部の一部と前記陰イオン交換膜の凸部の一部とが接するように配置された請求項5記載のイオン交換膜セル。
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