JP2022170902A - レーザ誘起ブレークダウン分光装置 - Google Patents

レーザ誘起ブレークダウン分光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザ誘起ブレークダウン分光装置において、その安全性を従来よりもさらに向上させる。【解決手段】分析観察装置Aは、紫外レーザ光を発振するレーザ発振器71と、紫外レーザ光を平行光として導光する導光光学系7aと、紫外レーザ光を所定の焦点距離Dfで収束させるとともに該所定の焦点距離Df以上離れるにつれて円錐状に拡散させる反射型対物レンズ74と、反射型対物レンズ74が一端に組み込まれた分析筐体70と、強度分布スペクトルを生成する第1および第2検出器77A,77Bと、強度分布スペクトルに基づいて成分分析を行うスペクトル解析部213と、を備える。反射型対物レンズ74は、分析筐体70の一端に組み込まれることで該分析筐体70の一部として構成されるとともに、所定の焦点距離Df以上離れるにつれて紫外レーザ光のエネルギー密度を漸減させることで紫外レーザ光を拡散させる。【選択図】図9

Description

ここに開示する技術は、レーザ誘起ブレークダウン分光装置に関する。
例えば非特許文献1には、レーザ誘起ブレークダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)を用いたLIBS分析装置(以下、単に「LIBS」装置と記載)が開示されている。具体的に、非特許文献1に開示されているLIBS装置は、532nmの波長を有するレーザ光を試料表面に照射するとともに、そのレーザ光によって生成されるプラズマから放出される光を収集し、その光に基づいて試料を分析するように構成されている。
すなわち、非特許文献1に開示されているLIBS装置は、試料表面に対し、可視光域における緑色領域のレーザ光を試料表面に照射することになる。
近藤裕之、他3名「レーザ誘起プラズマ分光法を用いた鉄鋼の欠陥原因の迅速評価」、新日鉄技報、2010年、第390号、p.76~81
ところで、前記非特許文献1に開示されているような可視光域に属するレーザ光は、より短波長のレーザ光と比較して各種材料への吸収率が低い。また、可視光域に属するレーザ光は、より短波長のレーザ光と比較してスポット径が太くなるため、エネルギー密度が相対的に低くなる。そのため、可視光域に属するレーザ光を用いる場合は、吸収率およびエネルギー密度の低さを補うためにレーザーパワーを高める必要がある。レーザーパワーを過度に高めてしまうと、サンプルの照射点周囲に熱損傷を招く可能性がある。
そこで、可視光域に属するレーザ光に代えて、紫外領域のレーザ光を用いることが考えられるが、紫外領域の光は、ユーザの目で視認することができない。したがって、紫外領域の光を用いた場合、光刺激による瞬目反射等の拒否反応が起こらない。そのため、より長時間にわたってレーザ光がユーザの眼球に至る可能性がある。
また、一般的な対物レンズは、レボルバ等を介して着脱可能な構成となっている。そうした対物レンズをLIBS装置に用いた場合、対物レンズが取り外された際に、レーザ光源からの平行光がそのまま外界に出射されてしまう。この場合、前述したように拒否反応が起こらないことに起因して、エネルギー密度の高いレーザ光を長時間目視してしまう可能性がある。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザ誘起ブレークダウン分光装置において、その安全性を従来よりもさらに向上させることにある。
本開示の第1の態様は、レーザ誘起ブレークダウン分光法を用いることにより、開放空間に設けられた載置台に載置された分析対象物の成分分析を行うレーザ誘起ブレークダウン分光装置に係る。このレーザ誘起ブレークダウン分光装置は、励起光を出射する励起光源と、該励起光源によって出射された励起光に基づいてレーザ光を生成する共振器と、を有し、該レーザ光としての紫外レーザ光を生成するレーザ発振器と、前記レーザ発振器により生成された前記紫外レーザ光を平行光として導光する導光光学系と、前記導光光学系によって平行光として導光された前記紫外レーザ光を所定の焦点距離で収束させるとともに、該所定の焦点距離以上離れるにつれて前記紫外レーザ光を円錐状に拡散させる対物レンズと、前記レーザ発振器および前記導光光学系を内部に収容するとともに、前記対物レンズが一端に組み込まれた筐体と、前記紫外レーザ光が前記分析対象物に照射されることによって該分析対象物において発生したプラズマ光の波長ごとの強度分布である強度分布スペクトルを生成する検出器と、前記検出器により生成された強度分布スペクトルに基づいて、前記分析対象物の成分分析を行う成分分析部と、を備える。
そして、本開示の第1の態様によると、前記対物レンズは、前記筐体の一端に組み込まれることで前記筐体の一部として構成されるとともに、前記所定の焦点距離以上離れるにつれて前記紫外レーザ光のエネルギー密度を漸減させることで、前記紫外レーザ光を拡散させるように構成されている。
ここで、「プラズマ光」の語は、プラズマ状態にある物質から発せられる光を指す。
また、「対物レンズが、筐体の一端に組み込まれる」の語は、対物レンズと筐体とを別体に形成した上で双方を締結等によって接続した構成と、対物レンズと筐体とを一体的に形成した構成と、の両方の意味を含む。
例えば、ユーザによって交換可能な着脱式の対物レンズを用いた場合、その対物レンズの脱落時には、よりエネルギー密度の高い平行光が開放空間に漏れ出すことになる。
それに対し、前記第1の態様によれば、対物レンズを筐体の一端に組み込むことで、導光光学系から対物レンズにかけて一体的に構成されることになる。これにより、開放空間には拡散光のみが出射されるようになる。エネルギー密度が漸減する拡散光のみを出射させることで、仮に、ユーザが紫外レーザ光を目視したとしても、その影響を可能な限り低く抑えることができる。これにより、従来よりもさらに安全性を向上させることができる。
また、本開示の第2の態様によると、前記対物レンズは、径方向の中央部に設けられた開口部と、該開口部の周囲に配置されかつ前記紫外レーザ光の出射に対応して前記分析対象物において発生したプラズマを反射する1次反射面と、が設けられた1次ミラー、および、前記1次反射面によって反射されたプラズマを受光してさらに反射させる2次反射面が設けられた2次ミラーを有し、前記1次ミラーおよび前記2次ミラーによって前記プラズマを集光して前記開口部に導く反射型対物レンズとして構成される、としてもよい。
ここで、「開口部」の語は、開口そのものではなく、開口を有する部材を指す。
前記第2の態様によれば、対物レンズとして反射型対物レンズを用いることで、LIBS法による成分分析における分析精度を向上させることができる。
また、本開示の第3の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記筐体に収容され、前記反射型対物レンズを通じて前記分析対象物から戻る光の受光量を検出することで、前記分析対象物を撮像するカメラを備える、としてもよい。
前記第3の態様によれば、反射型対物レンズを用いることで、筐体内に収容されたカメラであっても、分析前後の撮像画像を良好に取得することができるようになる。
また、本開示の第4の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記励起光源に励起光を生成させる指令を生成する指令生成部と、前記レーザ発振器からの前記紫外レーザ光を受光するとともに、該紫外レーザ光を受光したことを示す受光信号を生成するモニタ受光部と、前記モニタ受光部によって生成された前記受光信号に基づいて、前記励起光源による励起光の生成の可否を判定するとともに、該判定結果に応じて前記励起光の生成を制御するレーザ制御部と、を備え、前記励起光源は、前記指令生成部によって前記指令が生成され、かつ、前記レーザ制御部によって前記励起光の出射が可能と判定された場合に前記励起光を出射する、としてもよい。
前記第4の態様によれば、励起光源は、レーザ制御部によって励起光の生成可能と判定されたことを条件に、励起光を出射する。このように構成することで、レーザ誘起ブレークダウン分光装置の安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、本開示の第5の態様によると、前記レーザ制御部は、前記モニタ受光部によって生成された前記受光信号に基づいて、所定期間内に前記受光信号が生成された回数であるレーザ出射回数をカウントし、前記レーザ制御部は、前記レーザ出射回数と予め設定された所定回数とを比較するとともに、前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する、としてもよい。
前記第5の態様によれば、レーザ制御部は、紫外レーザ光が出射された回数を累積してなるレーザ出射回数に基づいて、励起光の生成の可否を判定する。このように判定することで、長期にわたってLIBS法を実施した場合における安全性を向上させる上で有利になる。
また、本開示の第6の態様によると、前記レーザ制御部は、前記レーザ出射回数と前記所定回数との比較を、前記所定期間内における複数の期間に対して実行し、前記所定回数は、前記所定期間のうち現在時刻から見て直近の第1期間においては一定に設定され、前記所定期間のうち前記第1期間以降の第2期間においては、時間を遡るにつれて大きくなるように設定される、としてもよい。
前記第6の態様によれば、現在時刻から過去に遡るにつれて所定回数を変化させることで、レーザ制御部による判定をより適切に行うことができる。これにより、レーザ誘起ブレークダウン分光装置の安全性を従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、本開示の第7の態様によると、前記所定期間は、複数の部分期間に分割され、前記レーザ制御部は、前記部分期間ごとに前記レーザ出射回数を集計し、前記レーザ制御部は、前記部分期間ごとに前記レーザ出射回数と前記所定回数とを比較するとともに、全ての前記部分期間において前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する、としてもよい。
前記第7の態様によれば、リアルタイムで計測された時刻とレーザ出射回数を関連付ける代わりに、離散的に分割された部分期間とレーザ出射回数を関連付けることになる。これにより、時刻の記憶に割くメモリを抑制することができる。
また、本開示の第8の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記筐体を取付可能に構成され、かつ前記載置台に対して前記筐体を位置決めするステージと、前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記筐体が前記ステージに取り付けられていることを示す信号を出力する取付センサと、を備え、前記レーザ制御部は、前記取付センサから出力された信号に基づいて前記筐体が前記ステージに取り付けられているか否かを判定するとともに、前記筐体が前記ステージに取り付けられていると判定されかつ前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する、としてもよい。
前記第8の態様によると、レーザ制御部は、筐体がステージに取り付けられている場合、すなわち、分析対象物の分析に適した状態にあることを条件に、励起光の生成が可能であると判定する。このように構成することで、レーザ誘起ブレークダウン分光装置の安全性を従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、本開示の第9の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記筐体に取り付けられ、前記対物レンズを覆う保護カバーと、前記筐体を取付可能に構成され、かつ前記載置台に対して前記筐体を位置決めするステージと、前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記ステージに対する前記筐体の位置を検出する第1位置検出センサと、前記第1位置検出センサとは独立した状態で前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記ステージに対する前記筐体の位置を示す検出信号を出力する第2位置検出センサと、を備え、前記レーザ制御部は、前記第1および第2位置検出センサの双方から出力された前記検出信号に基づいて、前記筐体の位置が、前記保護カバーにより前記対物レンズが覆われている状態に対応した位置にあるか否かを判定し、該位置にあると判定された場合には、前記レーザ出射回数を非カウントとする、としてもよい。
前記第9の態様によれば、保護カバーによって対物レンズが覆われた状態、すなわち、紫外レーザ光の漏洩が懸念されない場合、レーザ制御部は、レーザ出射回数をカウントしない。これにより、励起光の生成の可否に係る判定を、より適切に行うことができるようになる。
また、本開示の第10の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記対物レンズまたは前記筐体に取付可能であり、該対物レンズを覆う保護カバーと、前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記保護カバーが取り付けられていることを示す検出信号を出力する第1カバー取付センサと、前記第1カバー取付センサとは独立した状態で前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記保護カバーが取り付けられていることを示す検出信号を出力する第2カバー取付センサと、を備え、前記レーザ制御部は、前記第1および第2カバー取付センサの双方から検出信号が入力された場合には、前記レーザ出射回数を非カウントとする、としてもよい。
前記第10の態様によれば、保護カバーによって対物レンズが覆われた状態、すなわち、紫外レーザ光の漏洩が懸念されない場合、レーザ制御部は、レーザ出射回数をカウントしない。これにより、励起光の生成の可否に係る判定を、より適切に行うことができるようになる。
また、本開示の第11の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、前記載置台の上面に垂直な所定の基準軸に対し、前記導光光学系および前記対物レンズを一体的に傾斜させる傾斜機構と、前記基準軸に対する前記導光光学系および前記対物レンズの傾きを検出する傾斜センサと、を備え、前記レーザ制御部は、前記傾斜センサにより検出された傾きが所定の第1閾値を超える場合、前記励起光源による前記励起光の生成を不許可と判定する、としてもよい。
対物レンズを過度に傾斜させた場合、紫外レーザ光の開放空間への漏洩が懸念させる。これに対し、前記第11の態様によれば、レーザ制御部は、対物レンズの傾きが第1閾値を超える場合、励起光源による励起光の生成を不許可と判定し、紫外レーザ光の出射を制限する。このように構成することで、レーザ誘起ブレークダウン分光装置の安全性を従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、本開示の第12の態様によると、前記レーザ制御部は、前記指令生成部によって生成された前記指令と、前記モニタ受光部によって生成された受光信号と、の対応関係を判定し、1つの前記指令に対して複数の前記受光信号が生成された場合には、前記励起光源による前記励起光の生成を不許可と判定する、としてもよい。
指令の数と受光信号の数が一致しない場合、紫外レーザ光が意図せずに出射されたり、紫外レーザ光が指令通りに出射されなかったり等、各種機器の動作異常、故障等が懸念される。これに対し、前記第12の態様によれば、レーザ制御部は、動作異常、故障等が懸念される場合、励起光源による励起光の生成を不許可と判定し、紫外レーザ光の出射を制限する。このように構成することで、レーザ誘起ブレークダウン分光装置の安全性を従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、本開示の第13の態様によると、前記レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、ベースと、前記ベースと接続され、該ベースに対して垂直な第1方向に延びるスタンドと、を備え、前記載置台は、前記ベースまたは前記スタンドによって支持され、前記筐体は、前記スタンドに接続される、としてもよい。
以上説明したように、本開示によれば、レーザ誘起ブレークダウン分光装置において、その安全性を従来よりもさらに向上させることができる。
図1は、分析観察装置の全体構成を例示する模式図である。 図2は、光学系アセンブリを例示する斜視図である。 図3は、光学系アセンブリを例示する側面図である。 図4は、光学系アセンブリを例示する正面図である。 図5は、光学系アセンブリを例示する分解斜視図である。 図6は、光学系アセンブリの構成を模式化して示す側面図である。 図7は、分析光学系の構成を例示する模式図である。 図8は、モニタ受光部について説明するための背面図である。 図9は、反射型対物レンズの構成を例示する縦断面図である。 図10は、反射型対物レンズの構成を例示する底面図である。 図11は、第1および第2検出器の取付構造について説明する図である。 図12は、スライド機構の構成について説明する模式図である。 図13Aは、ヘッド部の水平移動について説明するための図である。 図13Bは、ヘッド部の水平移動について説明するための図である。 図14Aは、傾斜機構の動作について説明するための図である。 図14Bは、傾斜機構の動作について説明するための図である。 図15Aは、分析観察装置の制御系を例示するブロック図である。 図15Bは、ヘッド部における制御系を例示するブロック図である。 図15Cは、第1制御部および第2制御部における機能ブロックを例示する図である。 図16は、レーザ制御部のハードウェア構成を例示するブロック図である。 図17は、レーザ出射回数の判定について説明するためのグラフである。 図18は、部分期間について説明するための図である。 図19は、出射指令とレーザパルスとの関係について説明する図である。 図20は、励起光の生成可否の判定に係る第1処理を例示するフローチャートである。 図21Aは、励起光の生成可否の判定に係る第2処理を例示するフローチャートである。 図21Bは、励起光の生成可否の判定に係る第2処理を例示するフローチャートである。 図22は、起動時エラーの判定について例示するフローチャートである。 図23は、指令回数およびパルス数に係る判定について例示するフローチャートである。 図24は、遮蔽カバーについて説明するための斜視図である。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
<分析観察装置Aの全体構成>
図1は、本開示の実施形態に係るレーザ誘起ブレークダウン分光装置としての分析観察装置Aの全体構成を例示する模式図である。図1に例示される分析観察装置Aは、載置台5に載置された観察対象物および分析対象物としてのサンプルSPの拡大観察を行うとともに、該サンプルSPの成分分析を行うことができる。特に本実施形態に係る載置台5は、開放空間に設けられるように構成されており、大気開放状態でサンプルSPの成分分析等を行うことができる。
詳しくは、本実施形態に係る分析観察装置Aは、例えば微少物体等の試料、電子部品、被加工物等からなるサンプルSPを拡大して撮像することで、そのサンプルSPにおいて成分分析が行われるべき部位を探索したり、その外観の検査、計測等を行ったりすることができる。分析観察装置Aは、その観察機能に着目した場合、拡大観察装置と呼称したり、単に顕微鏡と呼称したり、あるいは、デジタルマイクロスコープと呼称したりすることができる。
分析観察装置Aはまた、サンプルSPの成分分析に際し、レーザ誘起ブレークダウン法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)、レーザ誘起プラズマ分光法(Laser Induced Plasma Spectroscopy:LIPS)等と呼称される手法を実施することができる。分析観察装置Aは、その分析機能に着目した場合、成分分析装置と呼称したり、単に分析装置と呼称したり、あるいは、分光装置と呼称したりすることもできる。
図1に示すように、本実施形態に係る分析観察装置Aは、主要な構成要素として、光学系アセンブリ(光学系本体)1と、コントローラ本体2と、操作部3と、を備える。
このうち、光学系アセンブリ1は、サンプルSPの撮像および分析を行うとともに、その撮像結果および分析結果に対応した電気信号を外部に出力することができる。
コントローラ本体2は、第1カメラ81等、光学系アセンブリ1を構成する種々の部品を制御するための第1制御部21を有する。コントローラ本体2は、第1制御部21を介して、光学系アセンブリ1にサンプルSPの観察および分析を行わせることができる。コントローラ本体2はまた、種々の情報を表示可能な表示部22を有する。この表示部22には、光学系アセンブリ1において撮像された画像、サンプルSPの分析結果を示すデータ等を表示することができる。
操作部3は、ユーザによる操作入力を受け付けるマウス31、コンソール32およびキーボード33を有する(キーボード33は、図15Aにのみ図示)。コンソール32は、ボタン、調整ツマミ等を操作することで、コントローラ本体2に画像データの取込、明るさ調整、第1カメラ81のピント合わせ等を指示することができる。
なお、操作部3は、マウス31、コンソール32およびキーボード33を3つとも有する必要はなく、任意の1つまたは2つを有していてもよい。また、マウス31、コンソール32およびキーボード33に加えてまたは代えて、タッチパネル式の入力装置、音声式の入力装置等を用いてもよい。タッチパネル式の入力装置の場合、表示部22に表示されている画面上の任意の位置を検出可能に構成することができる。
<光学系アセンブリ1の詳細>
図2~図4は、それぞれ、光学系アセンブリ1を例示する斜視図、側面図および正面図である。また、図5は光学系アセンブリ1の分解斜視図であり、図6は光学系アセンブリ1の構成を模式化して示す側面図である。
図1~図6に示すように、光学系アセンブリ1は、各種機器を支持するとともにサンプルSPが載置されるステージ4と、このステージ4に取り付けられるヘッド部6と、を備える。ここで、ヘッド部6は、分析光学系7が収容された分析筐体70に、観察光学系9が収容された観察筐体90を装着してなる。ここで、分析光学系7はサンプルSPの成分分析を行うための光学系である。観察光学系9はサンプルSPの拡大観察を行うための光学系である。ヘッド部6は、サンプルSPの分析機能と拡大観察機能とを兼ね備えた装置群として構成されている。
なお、以下の説明では、図1~図4に示すように光学系アセンブリ1の前後方向および左右方向が定義される。すなわち、ユーザと対面する一側が光学系アセンブリ1の前側であり、これと反対側が光学系アセンブリ1の後側であり、ユーザと光学系アセンブリ1とが対面したときに、そのユーザから見て右側が光学系アセンブリ1の右側であり、ユーザから見て左側が光学系アセンブリ1の左側である。なお、前後方向および左右方向の定義は、説明の理解を助けるためのものであり、実際の使用状態を限定するものではない。いずれの方向が前となるように使用してもよい。
また、以下の説明では、光学系アセンブリ1の左右方向を「X方向」とし、光学系アセンブリ1の前後方向を「Y方向」とし、光学系アセンブリ1の上下方向を「Z方向」とし、このZ軸に平行な軸を中心に回転する方向を「φ方向」と定義する。X方向とY方向とは同一水平面上で互いに直交しており、その水平面に沿った方向を「水平方向」と定義する。Z軸は、その水平面に対して直交する法線の方向である。これらの定義についても、適宜変更することが可能である。Z方向(上下方向)は、鉛直方向に沿って延びる方向であり、本実施形態における「第1方向」の例示である。
また詳細は後述するが、ヘッド部6は、図2~図6に示す中心軸Acに沿って移動したり、この中心軸Acまわりに揺動したりすることができる。この中心軸Acは、図6等に示すように、前述の水平方向、特に前後方向に沿って延びるように構成される。
(ステージ4)
ステージ4は、作業台等に設置されるベース41と、ベース41に接続されたスタンド42と、ベース41またはスタンド42によって支持された載置台5と、を有する。このステージ4は、載置台5およびヘッド部6の相対的な位置関係を規定するための部材であり、少なくとも、ヘッド部6の観察光学系9および分析光学系7を取付可能に構成される。
ベース41は、ステージ4の略下半部を構成しており、図2に示すように、左右方向の寸法に比して、前後方向の寸法が長い台座状に形成される。ベース41は、作業台等に設置される底面を有する。ベース41の前側部分には、載置台5が取り付けられる。
また、図6等に示すように、ベース41の後側部分(特に、載置台5よりも後側に位置する部分)には、第1支持部41aと第2支持部41bが、前側から順番に並んだ状態で設けられる。第1および第2支持部41a,41bは、双方ともベース41から上方へ突出するように設けられる。第1および第2支持部41a,41bには、前記中心軸Acと同心になるように配置される円形の軸受孔(不図示)が形成される。
スタンド42は、ステージ4の上半部を構成しており、図2~図3、図6等に示すように、ベース41(特にベース41の底面)に対して垂直な上下方向に延びる柱状に形成される。スタンド42における上側部分の前面には、別体の装着具43を介してヘッド部6が取り付けられる。
また、図6等に示すように、スタンド42の下側部分には、第1取付部42aと第2取付部42bが、前側から順番に並んだ状態で設けられる。第1および第2取付部42a,42bは、前述の第1および第2支持部41a,41bに対応した構成とされている。具体的に、第1および第2支持部41a,41bならびに第1および第2取付部42a,42bは、第1取付部42aと第2取付部42bによって第1支持部41aを挟み込むとともに、第1支持部41aと第2支持部41bによって第2取付部42bを挟み込むようにレイアウトされる。
また、第1および第2取付部42a,42bには、第1および第2支持部41a,41bに形成された軸受孔と同心かつ同径に構成された円形の軸受孔(不図示)が形成される。これら軸受孔に対し、クロスローラベアリング等のベアリング(不図示)を介して軸部材44が挿入される。この軸部材44は、その軸心が前述の中心軸Acと同心になるように配置される。軸部材44を挿入することで、ベース41とスタンド42は、相対的に揺動可能に連結される。軸部材44は、第1および第2支持部41a,41bならびに第1および第2取付部42a,42bとともに、本実施形態における傾斜機構45を構成する。
傾斜機構45を介してベース41とスタンド42を連結することで、スタンド42は、中心軸Acまわりに揺動可能な状態で、ベース41によって支持されることになる。スタンド42は、中心軸Acまわりに揺動することで、所定の基準軸Asに対して左右方向に傾斜することになる(図14Aおよび図14Bを参照)。この基準軸Asは、図4等に示す非傾斜状態においては、載置台5の上面(載置面51a)に垂直に延びる軸とすることができる。また、中心軸Acは、傾斜機構45による揺動の中心軸(回転中心)として機能することになる。
具体的に、本実施形態に係る傾斜機構45は、スタンド42を基準軸Asに対して右側に90°程度傾斜させたり、基準軸Asに対して左側に60°程度傾斜させたりすることができるようになっている。前述のように、スタンド42にはヘッド部6が取り付けられることになるため、このヘッド部6もまた、基準軸Asに対して左右方向に傾斜させることができる。ヘッド部6を傾斜させることは、分析光学系7および観察光学系9を傾斜させること、ひいては、後述の分析光軸Aaおよび観察光軸Aoを傾斜させることに等しい。
装着具43は、スタンド42の長手方向に沿ってヘッド部6を案内するレール部43aと、レール部43aに対するヘッド部6の相対位置をロックするためのロックレバー43bと、を有する。ここで、スタンド42の長手方向は、非傾斜状態では上下方向(第1方向)に一致するとともに、分析光軸Aa、観察光軸Aoおよび基準軸Asに沿って延びる方向に一致する。スタンド42の長手方向は、傾斜状態では上下方向および基準軸Asに沿って延びる方向とは不一致になるものの、分析光軸Aaおよび観察光軸Aoに沿って延びる方向とは依然として一致する。スタンド42の長手方向は、以下の記載では「略上下方向」とも呼称される。
レール部43aにはヘッド部6の後面部分(具体的にはヘッド取付部材61)が挿入される。レール部43aは、その後面部分を略上下方向に沿って移動させることができる。そして、ヘッド部6を所望位置に設定した状態でロックレバー43bを操作することで、ヘッド部6を所望位置に固定することができる。また、図2~図3に示される第1操作ダイヤル46を操作することで、ヘッド部6の位置調整を行うこともできる。
さらに、ステージ4またはヘッド部6には、該ヘッド部6を略上下方向に移動させるためのヘッド駆動部47が内蔵される。このヘッド駆動部47は、コントローラ本体2によって制御される不図示のアクチュエータ(例えば、ステッピングモータ)と、そのステッピングモータの出力軸の回転を略上下方向の直線運動に変換する運動変換機構とを含んでおり、コントローラ本体2から入力される駆動パルスに基づいてヘッド部6を移動させる。ヘッド駆動部47がヘッド部6を移動させることで、このヘッド部6、ひいては分析光軸Aaおよび観察光軸Aoを略上下方向に沿って移動させることができる。
載置台5は、ベース41の前後方向中央部よりも前側に配置されており、このベース41の上面に取り付けられている。載置台5は、開放空間に設けられた電動式の載置台として構成されており、その載置面51a上に載置されたサンプルSPを水平方向に沿って移動させたり、上下方向に沿って昇降させたり、φ方向に沿って回動させたりすることができる。載置台5を開放空間に設けることで、載置面51a付近の空間は、カバー等の部材によって覆われていない非遮蔽空間となる。これにより、載置面51a上に載置されたサンプルSPに対し外部からアクセスすることが可能となり、サンプルSPの位置調整等を手作業または工具を用いて行うことができるようになる。さらに、載置面51a付近の空間が非遮蔽空間となることで、載置面51a上の空間を有効に活用し、比較的大きなサンプルSPを載置することもできるようになる。
具体的に、本実施形態に係る載置台5は、図2~図4に示すように、サンプルSPを載置するための載置面51aを有する載置台本体51と、ベース41および載置台本体51の間に配置されかつ載置台本体51を変位させる載置台支持部52と、後述の図15Bに示す載置台駆動部53と、を有する。
載置台本体51は、いわゆるXYステージとして構成されている。載置台本体51の上面は、サンプルSPが載置される載置面51aを構成している。この載置面51aは、略水平方向に沿って延びるように形成される。載置面51aには、大気開放状態、すなわち真空室等に収容されない状態でサンプルSPが載置される。
載置台支持部52は、ベース41と載置台本体51とを連結する部材であり、上下方向に沿って延びる略円柱状に形成される。載置台支持部52には、載置台駆動部53を収容することができる。
載置台駆動部53は、コントローラ本体2によって制御される不図示かつ複数のアクチュエータ(例えば、ステッピングモータ)と、そのステッピングモータの出力軸の回転を直線運動に変換する運動変換機構とを含んでおり、コントローラ本体2から入力される駆動パルスに基づいて載置台本体51を移動させる。載置台駆動部53が載置台本体51を移動させることで、この載置台本体51、ひいては、その載置面51aに載置されたサンプルSPを、水平方向および上下方向に沿って移動させることができる。
同様に、載置台駆動部53は、コントローラ本体2から入力される駆動パルスに基づいて、載置台本体51を所定の回転軸まわりにφ方向に沿って回転させることもできる。載置台駆動部53が載置台本体51を回転させることで、載置面51aに載置されたサンプルSPを、φ方向に回動させることもできる。なお、載置台駆動部53を備えた構成は必須ではない。載置台本体51を手動で回転させるように構成してもよい。
特に、本実施形態に係る載置面51aは、前記回転軸として、図6等に示した基準軸Asまわりに回転可能に構成されている。つまり、本実施形態では、傾斜の基準となる基準軸Asと、載置面51aの回転軸とが同軸化されている。
また、図2に例示される第2操作ダイヤル54等を操作することで、載置台本体51を手動で移動および回転させることもできる。第2操作ダイヤル54の詳細は省略する。
なお、ベース41およびスタンド42の説明に戻ると、前述したベース41には、第1傾斜センサSw3が内蔵されている。この第1傾斜センサSw3は、重力方向に対する、載置面51aに垂直な基準軸Asの傾きを検出することができる。一方、スタンド42には、第2傾斜センサSw4が取り付けられている。この第2傾斜センサSw4は、重力方向に対する分析光学系7の傾き(より詳細には、重力方向に対する分析光軸Aaの傾き)を検出することができる。第1傾斜センサSw3と第2傾斜センサSw4の検出信号は、双方とも第2制御部100に入力される。第1傾斜センサSw3および第2傾斜センサSw4は、それぞれ、本実施形態における「傾斜センサ」の例示である。
(ヘッド部6)
ヘッド部6は、分析筐体70に収容された分析光学系7と、観察筐体90に収容された観察光学系9と、ヘッド取付部材61と、筐体連結具64と、スライド機構(水平駆動機構)65と、を有する。ヘッド取付部材61は、分析筐体70をスタンド42に接続するための部材である。筐体連結具64は、観察筐体90を分析筐体70に接続するための部材である。スライド機構65は、スタンド42に対して分析筐体70をスライド移動させるための機構である。
ヘッド部6はまた、各種処理を実行する第2制御部100を備える(図15Aを参照)。第2制御部100は、無線または有線によって第1制御部21と電気的に接続される。
詳しくは、本実施形態に係るヘッド取付部材61は、ヘッド部6の後側に配置されており、スタンド42にヘッド部6を取り付けるための板状部材として構成される。前述のように、ヘッド取付部材61は、スタンド42の装着具43に固定される。
ヘッド取付部材61は、ヘッド部6の後面と略平行に延びるプレート本体61aと、プレート本体61aの下端部から前方に突出するカバー部材61bと、を有する。プレート本体61aは、サンプルSPに反射型対物レンズ74を向かい合わせた後述の第1モードにおいては、前後方向においてヘッド部6の後面から離間する。プレート本体61aは、サンプルSPに対物レンズ92を向かい合わせた後述の第2モードにおいては、ヘッド部6の後面と密着または近接する。
また、図14に示すように、ヘッド取付部材61の左端部には、スライド機構65を構成するガイドレール65aが取り付けられている。ガイドレール65aは、ヘッド取付部材61と、ヘッド部6における他の要素(具体的には、分析光学系7、観察光学系9および筐体連結具64)と、を水平方向に相対変位可能に連結する。
以下、分析光学系7および分析筐体70、観察光学系9および観察筐体90、筐体連結具64、ならびに、スライド機構65の構成について順番に説明する。
-分析光学系7-
図7は、分析光学系7の構成を例示する模式図である。図8は、モニタ受光部88について説明するための背面図である。図9は、反射型対物レンズ74の構成を例示する縦断面図である。図10は、反射型対物レンズ74の構成を例示する底面図であり、図11は、第1および第2検出器77A,77Bの取付構造について説明する図である。
分析光学系7は、分析対象物としてのサンプルSPの分析を行うための部品の集合であり、各部品が分析筐体70に収容されるようになっている。分析光学系7を構成する部品は、レーザ発振器71と、反射型対物レンズ74によって構成される収集ヘッドと、第1検出器77Aおよび第2検出器77Bによって構成される検出器と、が含まれる。分析筐体70には、少なくともこれらの部品が収容されている。また、サンプルSPの分析を行うための要素には、処理部としての第1制御部21も含まれる。分析筐体70は、本実施形態における「筐体」の例示である。
分析光学系7は、例えばLIBS法を用いた分析を行うことができる。この分析光学系7には、コントローラ本体2との間で電気信号を送受するための通信ケーブルC1が接続される。この通信ケーブルC1は必須ではなく、分析光学系7とコントローラ本体2とを無線通信によって接続してもよい。
なお、ここでいう「光学系」の語は、広義で用いる。すなわち、分析光学系7は、レンズ等の光学素子に加え、光源、撮像素子等を包括したシステムとして定義される。観察光学系9についても同様である。
図7に示すように、本実施形態に係る分析光学系7は、レーザ発振器71と、出力調整手段72と、偏向素子73と、収集ヘッドとしての反射型対物レンズ74と、分光素子75と、第1パラボリックミラー76Aと、第1検出器77Aと、第1ビームスプリッター78Aと、第2パラボリックミラー76Bと、第2検出器77Bと、第2ビームスプリッター78Bと、同軸照明79と、結像レンズ80と、第1カメラ81と、側射照明84と、第3ビームスプリッター86と、反射ミラー群87と、モニタ受光部88と、を含んでなる。分析光学系7の構成要素のうちの一部は、図6および図8にも示す。また、側射照明84は、図9および図10にのみ示す(図7では図示省略)。
レーザ発振器71は、励起光を生成して出射する励起光源71aを有し、レーザ光としての紫外レーザ光を生成して発振するように構成されている。励起光源71aは、例えばレーザダイオード(Laser Diode:LD)等で構成される。
レーザ発振器71はさらに、励起光源71aから出力されたレーザを集光してレーザ励起光として出射するフォーカシングレンズ(不図示)と、そのレーザ励起光に基づいて基本波を生成するレーザ媒質71cと、基本波をパルス発振するためのQスイッチ(不図示)と、基本波を共振させるためのリアミラーおよび出力ミラーからなりかつ励起光源71aによって生成された励起光に基づいてレーザ光を生成する共振器71bと、出力ミラーから出力されたレーザ光の波長を変換する波長変換素子71dと、を有する。
ここで、レーザ媒質71cとしては、1パルスあたりのエネルギーを高くとるべく、例えばロッド状のNd:YAGを用いることが好ましい。なお、本実施形態では、誘導放出によってレーザ媒質71cから放出される光子の波長(いわゆる基本波長)は、本実施形態では赤外域の1064nmに設定されている。
また、Qスイッチとしては、基本波の強度が所定の閾値を超えると透過率が増大するパッシブQスイッチを用いることができる。パッシブQスイッチは、例えばCr:YAG等の過飽和吸収体によって構成される。パッシブQスイッチを用いることで、レーザ媒質に所定以上のエネルギーが蓄積されたタイミングで自動的にパルス発振することが可能になる。また、減衰率を外部から制御可能ないわゆるアクティブQスイッチを用いることもできる。
また、波長変換素子71dとしては、LBO(LiB)等の非線形光学結晶を2つ用いた構成とされている。2つの結晶を用いることで、基本波から3次高調波を生成することができる。3次高調波の波長は、本実施形態では紫外域の355nmに設定されている。
すなわち、本実施形態に係るレーザ発振器71は、紫外線からなるレーザ光を出力することができる。これにより、ガラスの様に光学的に透明なサンプルSPに対してもLIBS法による分析を行うことができる。加えて、紫外域にあるレーザ光は、人間の網膜に到達する割合が非常に少ない。網膜上でレーザ光が結像しないように構成することで、装置の安全性を高めることができる。
レーザ発振器71の構成要素のうち、励起光源71aおよび共振器71bは、それぞれ、図15Bに示す第1温度制御部71eによって、独立に温度調整することができる。第1温度制御部71eは、例えばペルチェ素子を用いて構成することができ、第1制御部21または第2制御部100によって制御することができる。
また、波長変換素子71dを構成する2つの結晶のうち、基本波から2次高調波を生成するための結晶(SHG用の結晶)と、2次高調波から3次高調波を生成するための結晶(THG用の結晶)は、それぞれ、図15Bに示す第2温度制御部71fによって、独立に温度調整することができる。第2温度制御部71fは、例えばペルチェ素子を用いて構成することができ、第1制御部21または第2制御部100によって制御することができる。
波長変換素子71dから出力された紫外レーザ光は、第3ビームスプリッター86に入射する。第3ビームスプリッター86に入射した紫外レーザ光のうちの一部は、該第3ビームスプリッター86によって反射され、その後、反射ミラー群87によって反射されて光学ベース700内に進入する(図8のL4を参照)。第3ビームスプリッター86に入射した紫外レーザ光のうちの他部は、該第3ビームスプリッター86を透過して出力調整手段72に至る(図8のL3を参照)。
モニタ受光部88は、レーザ発振器71からの紫外レーザ光を受光して、その受光量に応じた受光信号(紫外レーザ光を受光したことを示す受光信号)を生成することができる。モニタ受光部88によって生成された受光信号は、第2制御部100における後述のレーザ制御部105に入力される。
詳しくは、モニタ受光部88は、第3ビームスプリッター86を通過した紫外レーザ光を受光する受光素子88aと、受光素子88aと電気的に接続されたパルスストレッチ回路88bと、を有する。
受光素子88aは、例えばフォトダイオード(Photo Diode:PD)によって構成され、紫外レーザ光の受光量に応じた受光信号として、パルス信号を生成する。受光素子88aによって生成されたパルス信号は、パルスストレッチ回路88bに入力される。
パルスストレッチ回路88bは、受光素子88aから入力されたパルス信号に対して信号処理を実行し、該パルス信号のパルス幅を拡大する。パルスストレッチ回路88bによって信号処理が施されたパルス信号は、レーザ制御部105のカウンタ105aに入力される。
出力調整手段72は、第3ビームスプリッター86と偏向素子73を結ぶ光路上に配置されており、紫外レーザ光の出力を調整することができる。具体的に、本実施形態に係る出力調整手段72は、1/2波長板72aと、偏光ビームスプリッター72bと、を有する。1/2波長板72aは、偏光ビームスプリッター72bに対して相対的に回転するように構成されており、その回転角度を制御することで、偏光ビームスプリッター72bを通過する光量を調整することができる。
図7に示すように、光学ベース700は、分析筐体70の内部に配置されており、分析光学系7を構成する光学素子の収容スペースを区画している。具体的に、本実施形態に係る光学ベース700には、偏向素子73と、分光素子75と、第1パラボリックミラー76Aと、第1ビームスプリッター78Aと、第2パラボリックミラー76Bと、第2ビームスプリッター78Bと、同軸照明79を構成する光学素子79bと、結像レンズ80と、が収容される。また、光学ベース700は、分析筐体70の内部空間において、レーザ発振器71と隣接して配置される。光学ベース700は、分析筐体70の内部に設けられた「第2の筐体」に相当する。
分析光学系7の構成要素のうち、光学べース700に収容される光学素子を、以下の記載では、導光光学系7aと呼称する。導光光学系7aは、レーザ発振器71により生成された紫外レーザ光を平行光として導光し、これを反射型対物レンズ74に導くことができる。なお、導光光学系7aは、該導光光学系7aが形成する光路の全域で紫外レーザ光を平行光として導光する必要はなく、当該光路の少なくとも一部(特に、反射型対物レンズ74との接続部近傍)において紫外レーザ光を平行光として導光すればよい。
導光光学系7aを構成する光学素子のうち、偏向素子73は、レーザ発振器71から出射されて光学ベース700に進入した紫外レーザ光が入射するとともに、この紫外レーザ光を反射型対物レンズ74の光軸方向(分析光軸Aaに沿った方向)に偏向させる。
詳しくは、偏向素子73は、レーザ発振器71から出力されて出力調整手段72を通過した紫外レーザ光を反射させ、反射型対物レンズ74を介してサンプルSPに導く一方、この紫外レーザ光に対応してサンプルSPにおいて発生した光(サンプルSPの表面で生じるプラズマ化に伴って発せられる光であり、以下、「プラズマ光」と呼称する)を通過させ、これを第1検出器77A、第2検出器77Bに導くようにレイアウトされている。偏向素子73はまた、撮像用に集光した可視光を通過させ、当該可視光を第1カメラ81に導くようにレイアウトされている。
偏向素子73によって反射された紫外レーザ光は、平行光として分析光軸Aaに沿って伝搬し、反射型対物レンズ74に至る。
反射型対物レンズ74は、導光光学系によって平行光として導光された紫外レーザ光を所定の焦点距離Dfで収束させるとともに、該所定の焦点距離Df以上離れるにつれて紫外レーザ光を円錐状に拡散させる。
特に、本実施形態に係る反射型対物レンズ74は、紫外レーザ光を集光してサンプルSPに照射するとともに、サンプルSPに照射された紫外レーザ光に対応してサンプルSPにおいて発生したプラズマ光を収集するように構成されている。この場合、サンプルSPにおいて発生するプラズマ光とは、サンプルSPの表面で生じるプラズマ化に伴って発せられる電磁波に相当する。
反射型対物レンズ74は、同軸照明79からの照明光の出射およびレーザ発振器71からの紫外レーザ光出射に係る光学系と、第1カメラ81での反射光の受光ならびに第1および第2検出器77A,77Bでのプラズマ光の受光に係る光学系と、を同軸化するように構成されている。言い換えると、反射型対物レンズ74は、2種類の光学系で共有化されている。
反射型対物レンズ74は、前述の略上下方向に沿って延びる分析光軸Aaを有する。分析光軸Aaは、観察光学系9の対物レンズ92が有する観察光軸Aoと平行になるように設けられる。以下の説明における「径方向」とは、分析光軸Aaに沿って延びる単位ベクトルに直交し、かつ、該分析光軸Aaから放射状に延びる方向を指す。同様に、「周方向」とは、分析光軸Aaに沿って延びる単位ベクトルおよび前記径方向に直交し、かつ、分析光軸Aaを周回する方向を指す。また、分析光学系7に係る「光軸方向」とは、分析光軸Aaに沿って延びる方向を指す。
詳しくは、本実施形態に係る反射型対物レンズ74は、2枚のミラーからなるシュヴァルツシルト型の対物レンズである。この反射型対物レンズ74は、図7および図9に示すように、分析筐体70に装着される接続部材74aと、接続部材74aを介して分析筐体70に接続されるミラー筐体74bと、円環状かつ相対的に大径の1次ミラー11と、円板状かつ相対的に小径の2次ミラー12と、を有する。
接続部材74aは、分析光軸Aaと同軸の貫通孔が設けられた台座状に形成される。接続部材74aは、周方向に固定された状態(回転不能な状態)で、光学ベース700の下端に締結される。この締結によって、反射型対物レンズ74の角度位置が固定されるようになっている。また、接続部材74aは、該接続部材74aの貫通孔と、光学ベース700の下端に設けられた貫通孔と、が相互に連通するように配置される。
詳しくは、図9および図10に例示するように、接続部材74aの上端部(前記貫通孔の開口端付近の部位)には、径方向に突出した複数(図例では4つ)の鍔状部材74cが設けられている。各鍔状部材74cには、ネジ等の締結部材を締結するための締結孔が設けられており、各鍔状部材74cを光学ベース700の下面に接触させた状態で下方から締結部材を締結することで、光学ベース700に接続部材74a、ひいては反射型対物レンズ74を組み付けることができる。この組付によって、反射型対物レンズ74を分析筐体70に組み込むができる。
また、図10に例示するように、各鍔状部材74cは、分析筐体70の底面を区画する壁部70dによって覆われるようになっており非露出状態とされている。反射型対物レンズ74は、例えば顕微鏡に用いられるような着脱式の対物レンズとは異なり、ユーザによる着脱を抑制するように構成されている。このように構成することで、反射型対物レンズ74と、導光光学系7aとの相対的な位置関係を一定に保つことができる。
なお、本実施形態では、分析筐体70に反射型対物レンズ74を組み込む例を説明したが、本開示はこれに限定されない。分析筐体70の内部に設けられた第2の筐体に反射型対物レンズ74を組み込んでもよい。この場合においても、ユーザによる脱着を抑制することができ、ひいては反射型対物レンズ74と、導光光学系7aとの相対的な位置関係を一定に保つことができる。
また、分析筐体70または第2の筐体に反射型対物レンズ74が組み込まれることにより、導光光学系7aから対物レンズとしての反射型対物レンズ74にかけて一体的な構成となる。これにより、前述した開放空間には、拡散光のみが出射されるようになる。これにより、エネルギー密度が漸減する拡散光のみが出射されるため、安全性の更なる向上を図ることができる。
ミラー筐体74bは、下方に向かうにしたがってテーパ状に縮径した円筒状に形成される。ミラー筐体74bは、周方向に固定された状態で、接続部材74aの下面に固定されるようになっている。ミラー筐体74bの内周面は、1次ミラー11と2次ミラー12とをそれぞれ支持する。
1次ミラー11と2次ミラー12は、双方とも、分析光軸Aaまわりに回転対称となるように形成される。反射型対物レンズ74は、1次ミラー11および2次ミラー12によってプラズマ光を集光し、集光したプラズマ光を1次ミラー11の開口部11aに導くように構成されている。
1次ミラー11は、分析光軸Aaと同軸化された中心軸を有し、かつ径方向の中央部に貫通孔が設けられた円筒状の部材によって構成されている。図9に示すように、1次ミラー11の貫通孔は、紫外レーザ光およびプラズマ光を通過させるための開口部11aに設けられる。1次ミラー11における下側の端面には鏡面加工が施されており、1次反射面11bを構成する。
詳しくは、1次ミラー11には、径方向の中央部に設けられた開口部11aと、該開口部11aの周囲に配置されかつ紫外レーザ光の出射に対応してサンプルSPにおいて発生したプラズマ光を反射する1次反射面11bと、が設けられる。
2次ミラー12は、分析光軸Aaと同軸化された光軸を有するレンズと、このレンズを支持する構造体と、によって構成されている。図9に示すように、2次ミラー12を構成するレンズには、その上側の端面に鏡面加工を施してなる2次反射面12bと、鏡面加工を施さずに1次電磁波を透過させるように構成した透過領域12aと、が設けられている。また、2次ミラー12においてレンズを支持する構造体は、2次電磁波を通過させるための中空のスペースを区画する。2次ミラー12は、ミラー筐体74bによって支持される。
詳しくは、2次ミラー12には、1次ミラー11の1次反射面11bによって反射されたプラズマ光を受光してさらに反射させる2次反射面12bと、2次ミラー12における2次反射面12bの中央部に配置され、紫外レーザ光が透過する透過領域12aと、が設けられる。
2次ミラー12を構成するレンズとしては、その凸面を上方に向けてかつ凹面を下方に向けた凹メニスカスレンズを用いることができる。2次反射面12bは、2次ミラー12を構成するレンズの周縁に設けられており、その鏡面を略上方に向けた環状に形成される。
透過領域12aは、前記レンズ(例えば凹メニスカスレンズ)の径方向中央部に設けられる。透過領域12aを透過する紫外レーザ光は、そのビーム径を拡大しながら伝搬することになる。
また、略上下方向における透過領域12aと載置面51aとの間には、3次レンズ13が配置されている。この3次レンズ13は、透過領域12aを透過した紫外レーザ光をさらに透過させ、これを集光する。
3次レンズ13は、レンズ本体13aと、光学薄膜13bと、を有する。3次レンズ13は、1次ミラー11および2次ミラー12と同軸になるように配置される。
レンズ本体13aは、2次ミラー12を構成する凹メニスカスレンズ全体の外径よりは小径かつ、該凹メニスカスレンズにおける透過領域12a単体の外径よりは大径の両凸レンズによって構成してもよい。レンズ本体13aを透過する紫外レーザ光は、径方向に集光しながら伝搬することになる。
透過領域12aとレンズ本体13aとによって構成される光学系の焦点位置は、1次ミラー11と2次ミラー12とによって構成される光学系の焦点位置に一致する(図9の黒点fを参照)。
光学薄膜13bは、レンズ本体13aの下面に設けられており、透過領域12aと、載置面51aと、の間に介在する。光学薄膜13bは、サンプルSPによって反射された可視光等の反射光を遮断する。なお、光学薄膜13bは、2次ミラー12を構成する凹メニスカスレンズにおいて、透過領域12aの反対側に位置する凹面に設けてもよい。光学薄膜13bは、光軸方向において、透過領域12aと載置面51aとの間に配置すればよい。なお、3次レンズ13に光学薄膜13bを設ける代わりに、あるいは、この光学薄膜13bに加えて、偏向素子73と第1カメラ81とを結ぶ光路中に、可視光を遮断する遮光部材を設けてもよい。
前述のように構成された反射型対物レンズ74において、1次ミラー11は、その開口部11aを介して紫外レーザ光を通過させる。開口部11aを通過した紫外レーザ光は、2次ミラー12の透過領域12aと、3次レンズ13のレンズ本体13aと、を順番に透過してサンプルSPに照射される(図9の光路L1を参照)。
その際、2次ミラー12は、その透過領域12aを透過する紫外レーザ光のビーム径を拡大させ、3次レンズ13は、透過領域12aによって拡径(拡大)された紫外レーザ光を所定の焦点位置fに集光する。3次レンズ13によって集光された紫外レーザ光は、前記焦点位置fに対応した焦点距離Dfで収束する。この紫外レーザ光は、該所定の焦点距離Df以上離れるにつれて円錐状に拡散する。仮に、反射型対物レンズ74が光学ベース700に締結されていない場合、紫外レーザ光は、図9の光路L1に示す平行光のまま、収束することなく伝搬することになる。
なお、3次レンズ13は必須ではない。3次レンズ13を設ける代わりに、2次ミラー12を凸レンズによって構成してもよい。
サンプルSPに紫外レーザ光が照射されると、その紫外レーザ光に対応したプラズマ光が発生し、反射型対物レンズ74によって収集される。反射型対物レンズ74によって収集されたプラズマ光は、1次ミラー11に導かれる。
1次ミラー11は、その1次反射面11bによって、サンプルSPにおいて発生したプラズマ光を反射する。1次反射面11bによって反射されたプラズマ光は、2次ミラー12の2次反射面12bに導かれる。
2次ミラー12は、1次反射面11bによって反射されたプラズマ光を2次反射面12bによって受光して、これを略上方に向けて出射する。2次反射面12bによって反射されたプラズマ光は、円筒状(中空円柱状)の光路に沿って伝搬する。その際、プラズマ光が形成する光路は、図9に示すように、円柱状に伝搬する紫外レーザ光の光路を包囲するように構成される。言い換えると、紫外レーザ光は、プラズマ光の光路がなす円筒の中空部分を、該プラズマ光と同軸になるように伝搬することになる。
そして、円筒状の光路に沿って伝搬するプラズマ光は、紫外レーザ光と同軸化された状態で1次ミラー11の開口部11aから出射する。開口部11aから出射されたプラズマ光は、前述の偏向素子73に導かれる(図7の光路L2を参照)。偏向素子73に導かれたプラズマ光は、該偏向素子73を通過して分光素子75に至る。
分光素子75は、反射型対物レンズ74の光軸方向において偏向素子73と第1ビームスプリッター78Aとの間に配置されており、サンプルSPで発生したプラズマ光のうちの一部を第1検出器77Aに導く一方、他部を第2検出器77B等へ導く。後者のプラズマ光は、その大部分が第2検出器77Bに導かれるものの、その残りは第1カメラ81に至る。
詳しくは、サンプルSPから戻るプラズマ光には、紫外レーザ光に対応した波長以外にも種々の波長成分が含まれる。そこで、本実施形態に係る分光素子75は、サンプルSPから戻るプラズマ光のうち短い波長帯域の電磁波を反射させ、それを第1検出器77Aに導く。分光素子75はまた、それ以外の帯域の電磁波を透過させ、それを第2検出器77Bに導く。
さらに詳しくは、分光素子75は、所定波長未満の波長領域に属する紫外側の第1成分に比して、該所定波長以上の波長領域に属する赤外側の第2成分の透過率が大きい材料を主体として構成されている。そうした材料には、ガラス材料、合成樹脂等が含まれる。
例えばガラス材料を用いた場合、ガラス自体は紫外側の波長の反射率が低いため、ガラス表面に前記第1成分に属する電磁波を反射する光学薄膜を蒸着させることで紫外側の波長領域に属する電磁波を反射させ、それを第1検出器77Aに導くように構成することができる。
そして、本実施形態に係る分光素子75は、反射型対物レンズ74によって集光されたプラズマ光を入射させる。この分光素子75は、いわゆるダイクロイックミラーであり、入射したプラズマ光のうち、紫外側の第1成分に対応したプラズマ光を反射させる一方、赤外側の第2成分に対応したプラズマ光を透過させる。前述のように、分光素子75の主体となる材料は、第1成分の透過率が相対的に小さく、第2成分の透過率が相対的に大きい。そのため、分光素子75は、紫外側の第1成分を透過させた場合に比して、ガラス等の材料への吸収に起因した、プラズマ光全体のロスを最小限に押さえ込むことができる。
第1パラボリックミラー76Aは、いわゆる放物面鏡であり、分光素子75と第1検出器77Aとの間に配置される。第1パラボリックミラー76Aは、分光素子75によって反射されたプラズマ光を集光し、集光されたプラズマ光を第1検出器77Aに入射させる。
詳しくは、第1パラボリックミラー76Aは、反射型対物レンズ74によって集光されて偏向素子73を通過した後に、分光素子75によって反射された可視光帯域を含む紫外側のプラズマ光を反射する。この第1パラボリックミラー76Aは、該第1パラボリックミラー76Aによって反射したプラズマ光を第1検出器77A上に集光するように構成される。
ここで、第1検出器77Aは、筐体としての分析筐体70から載置台5に載置されたサンプルSPに対して紫外レーザ光が照射された場合に、該サンプルSPにおいて発生したプラズマ光の波長ごとの強度分布である強度分布スペクトルを生成する。特に、この第1検出器77Aは、分光素子75によって反射された紫外側の2次電磁波が入射するように構成されており、2次電磁波を受光するための入射スリット77aを有している。
なお、第1パラボリックミラー76Aの焦点位置は、入射スリット77aと一致するように配置してもよいし、入射スリット77aと不一致になるように配置してもよい。後者の配置は、ジャストフォーカスからずらしたレイアウトに相当する。このレイアウトは、レーザの反射光のエネルギーが強く、入射スリット77aにダメージを与え得るケースにおいて有効である。
また、第1検出器77Aは、図7および図11に示す第1プレート701によって支持されている。この第1プレート701は、光学ベース700の上面に接続されている。第1検出器77Aは、第1プレート701を介して光学ベース700に接続されることになる。これの接続によって、第1パラボリックミラー76A等、導光光学系7aに対する入射スリット77aの位置決めを安定させることができる。
また、第1検出器77A付近には、該第1プレート701に対する第1検出器77Aの相対位置を調整する第1調整機構771が設けられる。この第1調整機構771を用いることで、導光光学系7aに対する入射スリット77aの相対位置を調整することができる。
なお、第1プレート701を光学ベース700に接続する構成は、必須ではない。例えば、第1プレート701を分析筐体70の内壁部に接続するように構成してもよい。そのように構成した場合、第1調整機構771は、該分析筐体70に対する第1検出器77Aの相対位置を調整することになる。
第1検出器77Aは、サンプルSPにおいて発生しかつ反射型対物レンズ74によって集光されたプラズマ光を受光し、該プラズマ光の波長毎の強度分布である強度分布スペクトルを生成する。第1検出器77Aは、反射型対物レンズ74を始点としたプラズマ光の光路において、第2検出器77Bよりも上流側で分光されたプラズマ光を受光するように構成されている。サンプルSPにおいて発生したプラズマ光のうち、紫外側の第1成分は、レンズ等の透過を伴うことなく、複数回反射されることによって第1検出器77Aへ導かれる。すなわち、紫外側の第1成分は、屈折光学系を経由することなく、反射型対物レンズ74および第1パラボリックミラー76A等の反射光学系を介して第1検出器77Aへと導かれる。色収差が生じないため、分析精度を向上させることができる。
特に、本実施形態のように、紫外レーザ光の照射に対応して発生したプラズマ光を収集するように構成した場合、第1検出器77Aは、波長毎に異なる角度にプラズマ光を反射させることでプラズマ光を分離し、分離させた各々を複数の画素を有する撮像素子に入射させる。これにより、各画素によって受光されるプラズマ光の波長を相違させるとともに、波長毎に受光強度を取得することができる。
第1検出器77Aとしては、例えばツェルニターナー型の検出器をベースしたものを用いることができる。第1検出器77Aによって生成された強度分布スペクトルは、コントローラ本体2の第1制御部21に入力される。
第1ビームスプリッター78Aは、分光素子75を透過したプラズマ光のうちの一部(可視光帯域を含む赤外側の2次電磁波)を反射して第2検出器77Bに導く一方、他部(可視光帯域の一部)を透過して第2ビームスプリッター78Bに導く。可視光帯域に属するプラズマ光のうち、相対的に多量のプラズマ光が第2検出器77Bに導かれ、相対的に少量のプラズマ光が第1カメラ81に導かれる。
第2パラボリックミラー76Bは、いわゆる放物面鏡であり、第1ビームスプリッター78Aと第2検出器77Bとの間に配置される。第2パラボリックミラー76Bは、第1ビームスプリッター78Aによって反射されたプラズマ光を集光し、集光されたプラズマ光を第2検出器77Bに入射させる。
詳しくは、第2パラボリックミラー76Bは、偏向素子73および分光素子75を通過した後に、第1ビームスプリッター78Aによって反射された可視光帯域を含む赤外側のプラズマ光を反射する。この第2パラボリックミラー76Bは、該第2パラボリックミラー76Bによって反射したプラズマ光を第2検出器77B上に集光するように構成される。
ここで、第2検出器77Bは、第1検出器77Aと同様に、筐体としての分析筐体70から載置台5に載置されたサンプルSPに対して紫外レーザ光が照射された場合に、該サンプルSPにおいて発生したプラズマ光の波長ごとの強度分布である強度分布スペクトルを生成する。特に、この第2検出器77Bは、分光素子75を透過した赤外側のプラズマ光が入射するように構成されており、プラズマ光を受光するための入射スリット77aを有している。
なお、第2パラボリックミラー76Bの焦点位置は、第2検出器77Bの入射スリット77aと一致するように配置してもよいし、入射スリット77aと不一致になるように配置してもよい。後者の配置は、ジャストフォーカスからずらしたレイアウトに相当する。このレイアウトは、紫外レーザ光の反射光のエネルギーが強く、入射スリット77aにダメージを与え得るケースにおいて有効である。
また、第2検出器77Bは、図7および図11に示す第2プレート702によって支持されている。この第2プレート702は、光学ベース700の上面に接続されている。第2検出器77Bは、第2プレート702を介して光学ベース700に接続されることになる。これの接続によって、第2パラボリックミラー76B等、導光光学系7aに対する入射スリット77aの位置決めを安定させることができる。
また、第2検出器77B付近には、該第2プレート702に対する第2検出器77Bの相対位置を調整する第2調整機構772が設けられる。この第2調整機構772を用いることで、導光光学系7aに対する入射スリット77aの相対位置を調整することができる。
なお、第2プレート702を光学ベース700に接続する構成は、必須ではない。例えば、第2プレート702を分析筐体70の内壁部に接続するように構成してもよい。そのように構成した場合、第2調整機構772は、該分析筐体70に対する第2検出器77Bの相対位置を調整することになる。
第2検出器77Bは、サンプルSPにおいて発生しかつ反射型対物レンズ74によって集光されたプラズマ光を受光し、該プラズマ光の波長毎の強度分布である強度分布スペクトルを生成する。第2検出器77Bは、反射型対物レンズ74を始点としたプラズマ光の光路において、第1検出器77Aよりも下流側で分光されたプラズマ光を受光するように構成されている。サンプルSPにおいて発生したプラズマ光のうち、赤外側の第2成分は、分光素子75を透過する以外は、複数回の反射を通じて第2検出器77Bへ導かれる。すなわち、赤外側の第2成分は、反射型対物レンズ74および第1パラボリックミラー76A等の反射光学系を介して第2検出器77Bへと導かれる。色収差の発生を最小限に抑えられるため、分析精度を向上させることができる。
特に、本実施形態のように、紫外レーザ光の照射に対応して発生したプラズマ光を収集するように構成した場合、第2検出器77Bは、波長毎に異なる角度にプラズマ光を反射させることでプラズマ光を分離し、分離させた各々を複数の画素を有する撮像素子に入射させる。これにより、各画素によって受光されるプラズマ光の波長を相違させるとともに、波長毎に受光強度を取得することができる。
第2検出器77Bとしては、例えばツェルニターナー型の検出器をベースしたものを用いることができる。第2検出器77Bによって生成された強度分布スペクトルは、第1検出器77Aによって生成された強度分布スペクトルと同様に、コントローラ本体2の第1制御部21に入力される。
第1制御部21には、第1検出器77Aによって生成された紫外側の強度分布スペクトルと、第2検出器77Bによって生成された赤外側の強度分布スペクトルと、が入力される。第1制御部21は、それらの強度分布スペクトルに基づいて、後述の基本原理を用いてサンプルSPの成分分析を行う。第1制御部21は、紫外側の強度分布スペクトルと、赤外側の強度分布スペクトルとを組合わせて用いることで、より広い周波数域を利用した成分分析を行うことができる。
第2ビームスプリッター78Bは、LED光源79aから発せられて光学素子79bを通過した照明光(可視光)を反射して、これを第1ビームスプリッター78A、分光素子75、偏向素子73および反射型対物レンズ74を介してサンプルSPに照射する。サンプルSPで反射された反射光(可視光)は、反射型対物レンズ74を介して分析光学系7に戻る。
第2ビームスプリッター78Bは、分析光学系7に戻った反射光のうち、第1ビームスプリッター78Aを透過した反射光をさらに透過させ、結像レンズ80を介して第1カメラ81に入射させる。
同軸照明79は、照明光を発するLED光源79aと、LED光源79aから発せられた照明光が通過する光学素子79bと、を有する。同軸照明79は、いわゆる「同軸落射照明」として機能する。LED光源79aから照射される照明光は、レーザ発振器71から出力されてサンプルSPに照射される紫外レーザ光、および、サンプルSPから戻るプラズマ光と同軸に伝搬する。
詳しくは、同軸照明79は、レーザ発振器71から出射される紫外レーザ光と同軸化された光路を介して照明光を照射する。具体的に、照明光の光路のうち偏向素子73と反射型対物レンズ74とを結ぶ部分が、紫外レーザ光の光路と同軸化されている。また、照明光の光路のうち第1ビームスプリッター78Aと反射型対物レンズ74とを結ぶ部分が、プラズマ光の光路と同軸化されている。
同軸照明79は、図7に示す例では分析筐体70に内蔵されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、分析筐体70の外部に光源をレイアウトし、その光源と分析光学系7とを光ファイバーケーブルを介して光学系に結合してもよい。
側射照明84は、収集ヘッドとしての反射型対物レンズ74を取り囲むように配置される。側射照明84は、サンプルSPの側方(言い換えると、分析光軸Aaに対して傾斜した方向)から照明光を照射する。
詳しくは、側射照明84は、反射型対物レンズ74の外周を囲うように配置される。さらに詳しくは、側射照明84は、反射型対物レンズ74を環状に囲ってなる環状照明によって構成されている。側射照明84に対応した円環の中心軸(側射照明84をリングとみなした場合における中心軸)は、分析光軸Aaと同軸になるように配置されている。
第1カメラ81は、分析筐体70に収容されており、反射型対物レンズ74を通じて受光したサンプルSPから戻る反射光(可視光)の受光量を検出することで、サンプルSPを撮像する。第1カメラ81の光軸は、紫外レーザ光およびプラズマ光と同軸化されている。
詳しくは、第1カメラ81は、収集ヘッドとしての反射型対物レンズ74によって収集された反射光を受光する。ここで、第1カメラ81は、反射型対物レンズ74によって集光されるプラズマ光と共通の光路を介して反射光を収集する。ここで、共通の光路は、反射光の光路のうち、反射型対物レンズ74と分光素子75を結ぶ光路に相当する。この光路は、分光素子75によって分光される。
つまり、本実施形態に係る分光素子75は、プラズマ光と反射光とを共通の光路を介して受光するとともに、第1光路を介してプラズマ光を検出器(第1検出器77A)へ導く一方、第2光路を介して反射光を撮像部(第1カメラ81)へ導くように前記共通の光路を分光することができる。ここで、第1光路は、分光素子75と、第1パラボリックミラー76Aと、入射スリット77aと、を結ぶ光路に相当する。第2光路は、分光素子75と、第1カメラ81と、を結ぶ光路に相当する。
このように、反射光の光路のうち第1ビームスプリッター78Aと反射型対物レンズ74とを結ぶ部分は、プラズマ光の光路と同軸化されている。また、反射光の光路のうち偏向素子73と反射型対物レンズ74とを結ぶ部分は、紫外レーザ光の光路と同軸化されている。また、反射光の光路のうち第2ビームスプリッター78Bと反射型対物レンズ74とを結ぶ部分は、照明光の光路と同軸化されている。
本実施形態に係る第1カメラ81は、その受光面に配置された複数の画素によって結像レンズ80を通じて入射した光を光電変換し、被写体(サンプルSP)の光学像に対応した電気信号に変換する。
第1カメラ81は、受光面に沿って複数の受光素子を並べたものとすればよい。この場合、各受光素子が画素に対応することになり、各受光素子での受光量に基づいた電気信号を生成することができるようになる。具体的に、本実施形態に係る第1カメラ81は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)からなるイメージセンサによって構成されているが、この構成には限定されない。第1カメラ81としては、例えばCCD(Charged-Coupled Device)からなるイメージセンサを使用することもできる。
そして、第1カメラ81は、各受光素子での受光量を検出することで生成される電気信号をコントローラ本体2の第1制御部21に入力する。第1制御部21は、入力された電気信号に基づいて、被写体の光学像に対応した画像データを生成する。
なお、サンプルSPから戻る光は、第1検出器77Aと、第2検出器77Bと、第1カメラ81と、に分割されて入射する。そのため、第1カメラ81における受光量は、観察光学系9における後述の第2カメラ93に比して小さくなる。これにより、第1カメラ81から入力される電気信号に基づいた画像データは、第2カメラ93から入力される電気信号に基づいた画像データに比して暗くなる傾向にある。そこで、第1カメラ81では、その露光時間を調整することで、第2カメラ93によって生成される画像データと同様の明るさを確保するようになっている。
ここまでに説明した光学部品は、前述の分析筐体70に収容される。この分析筐体70は、少なくともレーザ発振器71および導光光学系7aを内部に収容する。また、分析筐体70内には第2の筐体としての光学ベース700が収容されており、その光学ベース700の下端には、前述のように反射型対物レンズ74が締結されている。この締結によって、分析筐体70の一端(下端)に反射型対物レンズ74が組み込まれることになる。この組み込みによって、反射型対物レンズ74は、分析筐体70の一部(下端部)を構成することになる。反射型対物レンズ74は、分析筐体70に組み込まれてその一部となることで、導光光学系7aとの相対位置を一定に保つことができる。
このように、本実施形態に係る分析筐体70は、光学ベース700を介して間接的に反射型対物レンズ74が組み込まれるように構成されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。光学ベース700を介さずに、分析筐体70に反射型対物レンズ74を直に組み込んでもよい。
分析筐体70内には、図7に示す遮蔽部材83が配置されていてもよい。この遮蔽部材83は、例えば図7に示すように、反射型対物レンズ74と偏向素子73との間に配置されており、コントローラ本体2から入力される電気信号に基づいて、レーザ光の光路上に挿入することができる(図7の点線部を参照)。遮蔽部材83は、少なくともレーザ光を透過不能に構成されている。
光路上に遮蔽部材83を挿入することで、分析筐体70からのレーザ光の出射を制限することができる。遮蔽部材83は、レーザ発振器71と出力調整手段72との間に配置してもよい。
図14に示すように、分析筐体70は、分析光学系7の収容スペースに加え、スライド機構65の収容スペースも区画している。その意味では、分析筐体70をスライド機構65の一要素とみなすこともできる。
具体的に、本実施形態に係る分析筐体70は、左右方向の寸法に比して前後方向の寸法が短い箱状に形成されている。そして、分析筐体70の前面70bの左側部分は、前後方向におけるガイドレール65aの移動代を確保するべく、前方に向かって突出している。以下、この突出した部分を「突出部」と呼称し、これに符号70cを付す。この突出部70cは、上下方向においては、前記前面70bの下半部に配置される(言い換えると、前面70bの左側部分の下半部のみが突出するようになっている)。
また、分析筐体70には、スタンド42に対する分析筐体70の取付を検知するヘッド取付センサ(取付センサ)Sw5が内蔵されている。ヘッド取付センサSw5は、第2制御部100と電気的に接続されており、分析筐体70がスタンド42に取り付けられていることを示す信号を第2制御部100に出力することができる。
-光路同士の関係について-
分析光学系7は、出力調整手段72、偏向素子73、1次ミラー11の開口部11a、および、2次ミラー12の透過領域12aを介してサンプルSPに紫外レーザ光を入射させる。ここで、図13に示すように、偏向素子73と、開口部11aと、透過領域12aとは、分析光軸Aaに沿って順番に並んでいる。そのため、本実施形態に係る透過領域12aは、レーザ発振器71から出射されて開口部11aを通過した紫外レーザ光を透過させることで、該紫外レーザ光を分析光軸Aaに沿って出射させることができる。
分析光軸Aaに沿って出射された紫外レーザ光は、サンプルSPに照射されて散乱する。サンプルSPでは、紫外レーザ光の照射によりプラズマ光が発生する。発生したプラズマ光は、反射型対物レンズ74によって収集されて分析光学系7に戻る。一般に、そうして収集されたプラズマ光には、種々の波長が含まれることになる。
そこで、分析光学系7は、1次ミラー11の1次反射面11b、2次ミラー12の2次反射面12b、1次ミラー11の開口部11a、偏向素子73、分光素子75、および、第1パラボリックミラー76Aを介して紫外側のプラズマ光を第1検出器77Aに入射させる。
分析光学系7はまた、1次ミラー11の1次反射面11b、2次ミラー12の2次反射面12b、1次ミラー11の開口部11a、偏向素子73、分光素子75、第1ビームスプリッター78A、および、第2パラボリックミラー76Bを介して赤外側のプラズマ光を第2検出器77Bに入射させる。
このように、分析光学系7は、光ファイバの非介在下でプラズマ光を検出器77A,77Bに入射させる。言い換えると、本実施形態に係る分析光学系7は、光ファイバを通過させることなくプラズマ光を検出器77A、77Bまで導く。分析光学系7は、プラズマ光の光路に関しては、いわゆるファイバレスの構成とされている。
また、本実施形態に係る分析光学系7は、ガラス材料を透過させることなく、電磁波の反射のみを利用して、紫外側のプラズマ光を第1検出器77Aまで導く。分析光学系7は、紫外側の2次電磁波の光路に関しては、ファイバレス、かつ、オール反射系(電磁波の反射のみを利用した光学系)の構成とされている。
分析光学系7はまた、赤外側のプラズマ光を第2検出器77Bまで導く際には、分光素子75のみを透過させる。分析光学系7は、赤外側のプラズマ光の光路に関しては、ファイバレス、かつ、透過に伴う減衰を可能な限り抑制した構成とされている。
このように、プラズマ光は、複数回の反射を経て伝搬されるようになっている。プラズマ光の光路は、複数回の反射に起因した折り返しを有する分だけ、例えば紫外レーザ光のようにストレートに伝搬させた場合に比して、その光路長が長くなる。
また、前述のように2次ミラー12として凹メニスカスレンズを用いるとともに3次レンズ13として凸レンズを用いた場合、または、3次レンズ13を用いることなく2次ミラー12として凸レンズを用いた場合、反射型対物レンズ74に入射した紫外レーザ光は、いずれかの凸レンズによって集光されて、所定の焦点距離Dfで焦点を迎えることになる。いずれの構成においても、反射型対物レンズ74は、焦点距離Df以上離れるつれて紫外レーザ光のエネルギー密度を漸減させることで、該紫外レーザ光を円錐状に拡散させることができる。
-分析光学系7による分析の基本原理-
第1制御部21、特に後述のスペクトル解析部213は、検出器としての第1検出器77Aおよび第2検出器77Bから入力された強度分布スペクトルに基づいて、サンプルSPの成分分析を実行する。具体的な分析手法としては、前述のようにLIBS法を用いることができる。LIBS法は、サンプルSPに含まれる成分を元素レベルで分析する手法(いわゆる元素分析法)である。
一般に、物質に高いエネルギーを付与すると、原子核から電子が分離することで、その物質はプラズマ状態となる。原子核から分離した電子は、一時的に高エネルギーかつ不安定な状態となるものの、その状態からエネルギーを失うことで、再び原子核によって捕捉されて低エネルギーかつ安定な状態に遷移する(換言すれば、プラズマ状態から非プラズマ状態に戻る)ことになる。
ここで、電子から失われるエネルギーは、電磁波として電子から放出されるものの、その電磁波のエネルギーの大きさは、各元素に固有の殻構造に基づいたエネルギー準位によって規定されることになる。つまり、プラズマから非プラズマ状態に電子が戻る際に放出される電磁波のエネルギーは、元素(より正確には、原子核に束縛された電子の軌道)毎に固有の値を持つ。電磁波のエネルギーの大きさは、その電磁波の波長によって規定される。ゆえに、電子から放出される電磁波の波長分布、すなわちプラズマ化に際して物質から放出される光(プラズマ光)の波長分布を解析することで、その物質に含まれる成分を元素レベルで解析することができるようになる。このような手法は、一般に原子発光分光(Atomic Emission Spectroscopy:AES)法と呼称される。
LIBS法は、このAES法に属する分析手法である。具体的に、LIBS法では、物質(サンプルSP)に対してレーザ光を照射することで、その物質にエネルギーを付与することになる。ここで、レーザ光の照射部位が局所的にプラズマ化されるため、そのプラズマ化に伴い発せられる光(プラズマ光)の強度分布スペクトルを解析することで、物質の成分分析を行うことができるようになっている。
すなわち、上記のように、各プラズマ光の波長は、元素毎に固有の値を持つため、強度分布スペクトルが特定の波長においてピークを形成する場合、そのピークに対応した元素がサンプルSPの成分となる。そして、強度分布スペクトルに複数のピークが含まれる場合、各ピークの強度(受光量)を比較することで、各元素の成分比を算出することができる。
LIBS法によれば、真空引きが不要であり、大気開放状態で成分分析を行うことができる。また、サンプルSPの破壊試験ではあるものの、サンプルSP全体を溶解させるなどの処理は不要であり、サンプルSPの位置情報が残存する(局所的な破壊試験にすぎない)。
また一般に、サンプルSPにレーザ光を照射することで発生するプラズマ光には、幅広い波長領域にわたった電磁波が含まれる。ここで、プラズマ光に含まれる電磁波のうち、紫外領域に属する電磁波は、ガラス材料に吸収されやすく、分析精度を向上するためには工夫が求められる。そこで、前述したように、紫外側の第1成分については反射のみで構成された光学系を通じて第1検出器77Aへ導くように構成することで、紫外側の第1成分が光路中の光学部材により吸収されることを防止できる。これにより、紫外側の第1成分も成分分析に活用することができるため、より高精度な成分分析を行うことができる。
-観察光学系9-
観察光学系9は、観察対象物としてのサンプルSPの観察を行うための部品の集合であり、各部品が観察筐体90に収容されるようになっている。観察光学系9を構成する部品には、対物レンズ92と、第2カメラ93とが含まれる。観察筐体90には、少なくともこれらの部品が収容されている。また、サンプルSPの観察を行うための要素には、処理部としての第1制御部21も含まれる。
観察光学系9は、対物レンズ92を有する観察ユニット9aを備える。この観察ユニット9aは、図3等に示すように、観察筐体90の下端側に配置された筒状のレンズ鏡筒に相当する。観察ユニット9aは、分析筐体70によって保持される。観察ユニット9aは、観察筐体90から単体で取り外すことができる。
観察筐体90には、コントローラ本体2との間で電気信号を送受するための通信ケーブルC2と、外部から照明光を導光するための光ファイバーケーブルC3と、が接続される。なお、通信ケーブルC2は必須ではなく、観察筐体90とコントローラ本体2とを無線通信によって接続してもよい。
具体的に、観察光学系9は、図6に示すように、ミラー群91と、対物レンズ92と、第2カメラ93と、第2の同軸照明94と、第2の側射照明95と、を含んでなる。
対物レンズ92は、略上下方向に沿って延びる観察光軸Aoを有し、照明光を集光して載置台本体51に載置されたサンプルSPに照射するとともに、そのサンプルSPからの光(反射光)を集光する。観察光軸Aoは、分析光学系7の反射型対物レンズ74が有する分析光軸Aaと平行になるように設けられる。対物レンズ92によって収集された反射光は、第2カメラ93によって受光される。
ミラー群91は、対物レンズ92によって収集された反射光を透過させ、これを第2カメラ93に導く。本実施形態に係るミラー群91は、図6に例示されるように全反射ミラーとビームスプリッター等を用いて構成することができる。ミラー群91はまた、第2の同軸照明94から照射された照明光を反射して、これを対物レンズ92に導く。
第2カメラ93は、対物レンズ92によって集光された反射光を収集するとともに、収集された反射光の受光量を検出することでサンプルSPを撮像する。具体的に、本実施形態に係る第2カメラ93は、その受光面に配置された複数の画素によってサンプルSPから対物レンズ92を通じて入射した光を光電変換し、被写体(サンプルSP)の光学像に対応した電気信号に変換する。
第2カメラ93は、受光面に沿って複数の受光素子を並べたものとすればよい。この場合、各受光素子が画素に対応することになり、各受光素子での受光量に基づいた電気信号を生成することができるようになる。本実施形態に係る第2カメラ93は、第1カメラ81と同様にCMOSからなるイメージセンサによって構成されているが、CCDからなるイメージセンサを使用することもできる。
そして、第2カメラ93は、各受光素子での受光量を検出することで生成される電気信号をコントローラ本体2の第1制御部21に入力する。第1制御部21は、入力された電気信号に基づいて、被写体の光学像に対応した画像データを生成する。
第2の同軸照明94は、光ファイバーケーブルC3から導光された照明光を出射する。第2の同軸照明94は、対物レンズ92を介して集光される反射光と共通の光路を介して照明光を照射する。つまり、第2の同軸照明94は、対物レンズ92の観察光軸Aoと同軸化された「同軸落射照明」として機能することになる。なお、光ファイバーケーブルC3を介して外部から照明光を導光する代わりに、観察ユニット9aの内部に光源を内蔵してもよい。その場合、光ファイバーケーブルC3は不要となる。
第2の側射照明95は、図6に模式的に例示したように、対物レンズ92を取り囲むように配置されたリング照明によって構成される。第2の側射照明95は、分析光学系7における側射照明84と同様に、サンプルSPの斜め上方から照明光を照射する。詳細な図示は省略するが、第2の側射照明95を円環とみなしたときの中心軸は、観察光軸Aoに一致する。
-筐体連結具64-
筐体連結具64は、分析筐体70に観察筐体90を連結するための部材である。筐体連結具64が両筐体70,90を連結することで、分析光学系7と、観察光学系9とが一体的に移動するようになる。
筐体連結具64は、分析筐体70の内外、すなわち分析筐体70の内部もしくは外部、または、スタンド42に取り付けることができる。特に本実施形態では、筐体連結具64は、分析筐体70の外面に取り付けられるようになっている。
具体的に、本実施形態に係る筐体連結具64は、分析筐体70における前述の突出部70cに取付可能に構成されており、突出部70cよりも右側に観察筐体90を保持するようになっている。
また、図3に示すように、筐体連結具64によって分析筐体70に観察筐体90が連結された状態では、突出部70cの前面が、筐体連結具64および観察筐体90の前側部分よりも前方に突出するようになっている。このように、本実施形態では、筐体連結具64が観察筐体90を保持した状態では、側方視したとき(スライド機構65による観察光学系9および分析光学系7の移動方向に対して直交する方向から見たとき)に、観察筐体90と、分析筐体70のうちの少なくとも一部(本実施形態では突出部70c)と、が重なり合うようにレイアウトされている。
本実施形態に係る筐体連結具64は、分析筐体70に対して観察筐体90を固定することで、観察光軸Aoに対する分析光軸Aaの相対位置を固定することができる。
具体的には、図14に示すように、筐体連結具64が観察筐体90を保持することで、観察光軸Aoと分析光軸Aaは、スライド機構65によって載置台5に対して観察光学系9および分析光学系7が相対的に移動する方向である第2方向(本実施形態では前後方向)に沿って並ぶように配置される。特に本実施形態では、観察光軸Aoは、分析光軸Aaに比して前側に配置されるようになっている。
また、図14に示すように、筐体連結具64が観察筐体90を保持することで、観察光軸Aoと分析光軸Aaは、第1方向および第2方向に直交する方向である第3方向(本実施形態では左右方向)における位置が一致するように配置される。
-スライド機構65-
図12は、スライド機構65の構成について説明する模式図である。また、図13Aおよび図14Bは、ヘッド部6の水平移動について説明するための図である。
スライド機構65は、観察光学系9によるサンプルSPの撮像と、分析光学系7によって強度分布スペクトルを生成する場合における紫外レーザ光の照射(換言すれば、分析光学系7のレーザ発振器71による紫外レーザ光の照射)と、を観察対象物としてのサンプルSPにおける同一箇所に対して実行可能となるように、載置台本体51に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置を水平方向に沿って移動させるよう構成されている。
スライド機構65による相対位置の移動方向は、観察光軸Aoおよび分析光軸Aaの並び方向とすることができる。図14に示すように、本実施形態に係るスライド機構65は、載置台本体51に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置を前後方向に沿って移動させる。
本実施形態に係るスライド機構65は、スタンド42およびヘッド取付部材61に対し、分析筐体70を相対的に変位させるものである。分析筐体70と観察筐体90とは筐体連結具64によって連結されているため、分析筐体70を変位させることで、観察筐体90も一体的に変位することになる。
具体的に、本実施形態に係るスライド機構65は、前記ガイドレール65aと、アクチュエータ65bと、を有する。このうち、ガイドレール65aは、ヘッド取付部材61の前面から前方に突出するように構成されている。
詳しくは、ガイドレール65aの基端部は、ヘッド取付部材61に固定されている。一方、ガイドレール65aの先端側部分は、分析筐体70内に区画された収容スペースに挿入されており、分析筐体70に対して挿抜可能な状態で取り付けられている。ガイドレール65aに対する分析筐体70の挿抜方向は、ヘッド取付部材61と分析筐体70とを離間または接近させる方向(第2方向)に等しい。
アクチュエータ65bは、例えば第1制御部21からの電気信号に基づいて作動するリニアモータまたはステッピングモータとすることができる。このアクチュエータ65bを駆動させることで、スタンド42およびヘッド取付部材61に対し、分析筐体70ひいては観察光学系9および分析光学系7を相対的に変位させることができる。アクチュエータ65bとしてステッピングモータを用いる場合、そのステッピングモータにおける出力軸の回転運動を、前後方向の直線運動に変換する運動変換機構がさらに設けられることになる。
スライド機構65はさらに、観察光学系9および分析光学系7の移動量を検出するための移動量センサSw2を有する。移動量センサSw2は、例えばリニアスケール(リニアエンコーダ)やフォトインタラプタ等で構成することができる。
移動量センサSw2は、分析筐体70とヘッド取付部材61との間の相対距離を検出し、その相対距離に対応した電気信号をコントローラ本体2に入力する。コントローラ本体2は、移動量センサSw2から入力された相対距離の変化量を算出することで、観察光学系9および分析光学系7の変位量を決定するようになっている。
図13Aおよび図13Bに示すように、スライド機構65が作動することで、ヘッド部6が水平方向に沿ってスライドし、載置台5に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置が移動(水平移動)することになる。この水平移動によって、ヘッド部6は、反射型対物レンズ74をサンプルSPに対峙させた第1モードと、対物レンズ92をサンプルSPに対峙させた第2モードと、の間で切り替わるようになっている。スライド機構65は、第1モードと第2モードとの間で、分析筐体70および観察筐体90をスライドさせることができる。
図13Aおよび図13Bに示すように、第1モードにおいては、ヘッド部6は相対的に前進した状態にあり、第2モードにおいては、ヘッド部6は相対的に後退した状態にある。第1モードは、分析光学系7によってサンプルSPの成分分析を行うための動作モードであり、第2モードは、観察光学系9によってサンプルSPの拡大観察を行うための動作モードである。
特に、本実施形態に係る分析観察装置Aは、第1モードにおいて反射型対物レンズ74が指向する箇所と、第2モードにおいて対物レンズ92が指向する箇所と、が同一箇所となるように構成されている。具体的に、分析観察装置Aは、第1モードにおいて分析光軸AaとサンプルSPとが交わる箇所と、第2モードにおいて観察光軸AoとサンプルSPとが交わる箇所と、が同一になるように構成されている(図14Bを参照)。
そうした構成を実現するために、スライド機構65が作動したときのヘッド部6の移動量D2は、観察光軸Aoと分析光軸Aaとの間の距離D1と同一となるように設定されている(図12を参照)。加えて、観察光軸Aoと分析光軸Aaとの並び方向は、図12に示すように、ヘッド部6の移動方向と平行になるように設定されている。
また、本実施形態では、略上下方向における筐体連結具64の寸法を調整することで、第1モードにおけるサンプルSPおよび反射型対物レンズ74の距離と、第2モードにおけるサンプルSPおよび対物レンズ92の距離と、が一致するように設定されている。
以上のように構成することで、第1モードと第2モードとの切替を行う前後のタイミングにおいて、観察光学系9によるサンプルSPの画像生成と、分析光学系7による強度分布スペクトルの生成(具体的には、分析光学系7によって強度分布スペクトルが生成される場合における、分析光学系7による紫外レーザ光の照射)と、をサンプルSP中の同一箇所に対して同一方向から実行することができるようになる。
(傾斜機構45の詳細)
図14Aおよび図14Bは、傾斜機構45の動作について説明するための図である。以下、図14Aおよび図14Bを参照しつつ、筐体連結具64との関係等、傾斜機構45についてさらに説明する。
傾斜機構45は、前述の軸部材44等によって構成される機構であり、載置面51aに垂直な基準軸Asに対し、分析光学系7および観察光学系9のうち少なくとも観察光学系9を傾斜させることができる。
前述のように、本実施形態では、筐体連結具64が分析筐体70と観察筐体90とを一体的に連結することで、分析光軸Aaに対する観察光軸Aoの相対位置が保持されるようになっている。したがって、観察光軸Aoを有する観察光学系9を傾斜させると、分析光軸Aaを有する分析光学系7は、図14Aおよび図14Bに示すように、観察光学系9と一体的に傾斜することになる。
このように、本実施形態に係る傾斜機構45は、分析光軸Aaに対する観察光軸Aoの相対位置を保持した状態で、分析光学系7および観察光学系9を一体的に傾斜させるようになっている。
また、スライド機構65の動作と、傾斜機構45の動作と、は互いに独立しており、両動作の組み合わせが許容されている。したがって、スライド機構65は、傾斜機構45によって少なくとも観察光学系9を傾斜させた姿勢を保持した状態で、観察光学系9および分析光学系7の相対位置を移動させることができる。すなわち、本実施形態に係る分析観察装置Aは、図14Bの両矢印A1に示すように、観察光学系9を傾斜させたままの状態で、ヘッド部6を前後にスライド可能とされている。
特に本実施形態では、分析光学系7と観察光学系9とが一体的に傾斜するように構成さされているため、スライド機構65は、傾斜機構45によって観察光学系9および分析光学系7を双方とも傾斜させた状態を保持しつつ、観察光学系9および分析光学系7の相対位置を移動させるようになっている。
また、分析観察装置Aは、ユーセントリック観察が行えるように構成されている。すなわち、分析観察装置Aにおいては、X方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ平行な3つの軸で形成される装置固有の三次元座標系が定義されている。第1制御部21の記憶装置21bには、分析観察装置Aの三次元座標系における後述する交差位置の座標がさらに記憶されている。交差位置の座標情報は、分析観察装置Aの工場出荷時に予め記憶装置21bに記憶されていてもよい。また、記憶装置21bに記憶される交差位置の座標情報は、分析観察装置Aの使用者により更新可能としてもよい。
図14Aおよび図14Bに示すように、基準軸Asに対する分析光軸Aaの角度を「傾きθ」と呼称すると、分析観察装置Aは、傾きθが例えば所定の第1閾値θmaxを下回る場合に、レーザ光の出射を許容するように構成されている。傾きθを第1閾値θmax未満に収めるために、傾斜機構45にハード的な制約を課すことができる。例えば傾斜機構45に不図示のブレーキ機構を設けることで、傾斜機構45の動作範囲を物理的に制限してもよい。
対物レンズ92の光軸である観察光軸Aoは、中心軸Acに交差している。対物レンズ92が中心軸Acを中心として揺動する場合、観察光軸Aoと中心軸Acとの交差位置が一定に維持されつつ、基準軸Asに対する観察光軸Aoの角度(傾きθ)が変化する。このように、ユーザは、対物レンズ92を傾斜機構45によって中心軸Acを中心として揺動させた際、例えば、サンプルSPの観察対象部分が上記の交差位置にある場合には、対物レンズ92が傾斜した状態になったとしても、第2カメラ93の視野中心が同じ観察対象部分から移動しないユーセントリック関係が維持される。したがって、サンプルSPの観察対象部分が第2カメラ93の視野(対物レンズ92の視野)から外れることを防止することができる。
特に本実施形態では、分析光学系7と観察光学系9とが一体的に傾斜するように構成さされているため、反射型対物レンズ74の光軸である分析光軸Aaは、観察光軸Aoと同様に中心軸Acに交差している。反射型対物レンズ74が中心軸Acを中心として揺動する場合、分析光軸Aaと中心軸Acとの交差位置が一定に維持されつつ、基準軸Asに対する分析光軸Aaの角度(傾きθ)が変化する。
また前述のように、傾斜機構45は、スタンド42を基準軸Asに対して右側に90°程度傾斜させたり、基準軸Asに対して左側に60°程度傾斜させたりすることができるようになっている。ところが、分析光学系7と観察光学系9とが一体的に傾斜するように構成した場合、スタンド42を過度に傾けてしまっては、分析光学系7から出射されるレーザ光が、ユーザに向かって照射されてしまう可能性がある。
そこで、基準軸Asに対する観察光軸Aoおよび分析光軸Aaの傾きをθとすると、傾きθは、少なくともレーザ光が出射され得る状況下においては、所定の安全基準を満足する範囲内に収めることが望ましい。具体的に、本実施形態に係る傾きθは、前述のように、所定の第1閾値θmaxを下回る範囲内で調整可能とされている。
(レーザからの保護に係る構成)
また、前述のカバー部材61bは、ヘッド取付部材61を介して分析筐体70に取付可能となっている。このカバー部材61bは、反射型対物レンズ74を覆うことができる。カバー部材61bは、本実施形態における「保護カバー」の例示である。
具体的に、本実施形態に係るカバー部材61bは、図13Bに示すように、ヘッド部6を相対的に後退させた状態である第2モードにおいては、分析光学系7をなす反射型対物レンズ74を覆う(遮蔽状態)ように配置され、ヘッド部6を相対的に前進させた状態である第1モードにおいては、反射型対物レンズ74から離間する(非遮蔽状態)ように配置される。
前者の遮蔽状態では、レーザ光が意図せずして出射されたとしても、該レーザ光をカバー部材61bによって遮蔽することが可能となる。そのことで、装置の安全性を向上させることができる。
本実施形態に係るヘッド部6は、カバー部材61bによって反射型対物レンズ74が覆われていることを示す検出信号を出力する第1位置検出センサ(第1位置センサ)Sw6を備える(図15Aを参照)。言い換えると、第1位置検出センサSw6は、ヘッド部6を相対的に後退させた第2モードにあることを検出することができる。第1位置検出センサSw6は、制御部としての第2制御部100と電気的に接続されている。第1位置検出センサSw6の検出信号は、制御部としての第2制御部100に入力される。
本実施形態に係るヘッド部6はまた、第1位置検出センサSw6とは独立した状態で第2制御部100と電気的に接続された、第2位置検出センサ(第2位置センサ)Sw7を備える(図15Aを参照)。第2位置検出センサSw7は、第1位置検出センサSw6と同様に、カバー部材61bによって反射型対物レンズ74が覆われていること(言い換えると、ヘッド部6を相対的に後退させた第2モードにあること)を示す検出信号を出力する。第2位置検出センサSw7の検出信号は、制御部としての第2制御部100に入力される。第1位置検出センサSw6と、第2位置検出センサSw7とは、ヘッド部6において互いに離間した箇所に配置することが好ましい。
なお、本開示に係る保護カバーは、前記カバー部材61bには限定されない。図24に例示するように、載置台5全体を覆う遮蔽カバー10を用いてもよい。
図24に示すように、本実施形態に係る光学系アセンブリ1は、反射型対物レンズ74、分析筐体70、ヘッド部6、スタンド42等、光学系アセンブリ1の構成要素の少なくとも1つに取付可能な遮蔽カバー10をさらに備えている。この遮蔽カバー10は、少なくとも、反射型対物レンズ74を側方から取り囲み、カバー部材61bと同様に、反射型対物レンズ74を覆うことができる。この遮蔽カバー10は、カバー部材61bと同様に、紫外レーザ光を遮蔽することができる。これにより、レーザ光の漏れを抑制することができる。遮蔽カバー10は、本実施形態における「保護カバー」の別例である。
本実施形態に係る光学系アセンブリ1は、遮蔽カバー10によって反射型対物レンズ74が覆われていること、言い換えると、光学系アセンブリ1に遮蔽カバー10が取り付けられていることを示す検出信号を出力するカバー取付センサSw8を備える。カバー取付センサSw8の検出信号は、制御部としての第2制御部100に入力される。カバー取付センサSw8は、2つ1組のセンサとして構成してもよい。その場合、2つのカバー取付センサSw8のうちの一方である第1カバー取付センサSw8と他方である第2カバー取付センサSw8は、双方ともレーザ制御部105と電気的に接続される。さらにその場合、第2カバー取付センサSw8は、第1カバー取付センサSw8とは独立した状態で、レーザ制御部105と電気的に接続することができる。
<制御系の詳細>
図15Aは、分析観察装置Aの制御系を例示するブロック図である。また、図15Bは、ヘッド部6における制御系を例示するブロック図であり、図15Cは、第1制御部21および第2制御部100における機能ブロックを例示する図である。また、図16は、レーザ制御部105のハードウェア構成を例示するブロック図である。
前述のように、本実施形態に係るコントローラ本体2は、種々の処理を行う第1制御部21と、第1制御部21が行う処理に係る情報を表示する表示部22と、を備える。このうちの第1制御部21は、CPU、システムLSI、DSP等からなる処理装置21aと、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどからなる記憶装置21bと、入出力バス21cと、を有する。
一方、ヘッド部6は、種々の処理を行う第2制御部100を備える。第2制御部100は、前記第1制御部21と同様に、CPU、システムLSI、DSP等からなる処理装置100aと、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどからなる記憶装置100bと、入出力バス100cと、を有する。
第2制御部100は、第1制御部21と電気的に接続されており、第1制御部21から入力される制御信号にしたがって種々の動作、演算等を実行したり、第1制御部21に対して各種センサの検知信号を入力したりすることができる。なお、第2制御部100と第1制御部21とを一体化した制御ユニットを用いてもよい。そうした制御ユニットは、コントローラ本体2に設けてもよいし、ヘッド部6、ステージ4等に内蔵してもよい。
第1制御部21および第2制御部100は、互いに信号を送受することで、サンプルSPからの光の受光量に基づいたサンプルSPの画像データの生成と、強度分布スペクトルに基づいたサンプルSPの含有物質の分析と、を双方とも実行可能に構成されている。
詳しくは、図15Aに例示されるように、第1制御部21には、表示部22、マウス31、コンソール32およびキーボード33が電気的に接続されている。これらの要素のうちの少なくとも一部、例えば表示部22をヘッド部6に接続してもよい。
一方、第2制御部100には、図15Bに例示されるように、ヘッド駆動部47、載置台駆動部53、レーザ発振器71、出力調整手段72、LED光源79a、第1カメラ81、遮蔽部材83、側射照明84、第2カメラ93、第2の同軸照明(第2同軸照明)94、第2の側射照明(第2側射照明)95、アクチュエータ65b、レンズセンサSw1、移動量センサSw2、第1傾斜センサSw3、第2傾斜センサSw4、ヘッド取付センサSw5、第1位置検出センサSw6、第2位置検出センサSw7およびカバー取付センサSw8が電気的に接続されている。
第1カメラ81、第2カメラ93、レンズセンサSw1、移動量センサSw2、第1傾斜センサSw3および第2傾斜センサSw4、ヘッド取付センサSw5、第1位置検出センサSw6、第2位置検出センサSw7およびカバー取付センサSw8の出力信号は、第2制御部100を介して第1制御部21に入力される。第1制御部21は、入力された出力信号に基づいた演算等を実行し、その演算結果に基づいた処理を実行する。これにより、サンプルSPを撮像してなる画像データを生成したり、ヘッド駆動部47等を作動させるための制御信号を生成したりする。
第1制御部21によって生成された制御信号は、第2制御部100を介してヘッド駆動部47等に入力される。そうして入力された制御信号にしたがって、ヘッド駆動部47、載置台駆動部53、レーザ発振器71を構成する励起光源71a、第1温度制御部71eおよび第2温度制御部71f、出力調整手段72、LED光源79a、第1カメラ81、遮蔽部材83、LED光源84b、第2カメラ93、第2同軸照明94、第2側射照明95ならびにアクチュエータ65bが電気的に制御される。
例えば、第1制御部21は、筐体連結具64によって分析光学系7に固定されている観察ユニット9aに対応した観察光学系9の種類のうち、少なくとも対物レンズ92の種類を識別するとともに、その識別結果に基づいてサンプルSPの撮像に係る処理を実行することができる。ここで、対物レンズ92の種類の識別は、レンズセンサSw1の検出信号に基づいて行うことができる。第1制御部21は、サンプルSPの撮像に係る処理として、例えば、第2カメラ93の露光時間の調整および照明光の明るさの調整等を実行することができる。
また、第2制御部100における指令生成部101は、コントローラ本体2に対する操作入力等に基づいて、励起光源71aに励起光を生成させる指令を生成する。そうした指令が生成される度に、図19の上段に示すようなパルス信号(LD電流)が励起光源71aに入力される。1つのパルス信号は、1回分の指令に対応する。指令の生成は、第1制御部21における処理装置21aが行ってもよい。
具体的に、本実施形態に係る第1制御部21は、図15Cに示すように、モード切替部211と、スペクトル取得部212と、スペクトル解析部213と、画像処理部214と、を有する。これらの要素は、論理回路によって実現されてもよいし、ソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。また、これらの要素は、第2制御部100によって実現してもよい。
一方、本実施形態に係る第2制御部100は、図15Cに示すように、指令生成部101と、取付判定部102と、傾き判定部103と、メンテナンス制御部104と、レーザ制御部105と、を有する。これらの要素は、論理回路によって実現されてもよいし、ソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。また、これらの要素は、第1制御部21によって実現してもよい。
-モード切替部211-
モード切替部211は、水平方向(本実施形態では第2方向)に沿って分析光学系7および観察光学系9を進退させることで、第1モードから第2モードへと切り替えたり、第2モードから第1モードに切り替えたりする。
具体的に、本実施形態に係るモード切替部211は、予め記憶装置21bに記憶されている観察光軸Aoと分析光軸Aaとの間の距離を事前に読み込む。次いで、モード切替部211は、スライド機構65のアクチュエータ65bを作動させることで、分析光学系7および観察光学系9を進退させる。
ここで、モード切替部211は、移動量センサSw2によって検出された観察光学系9および分析光学系7の変位量と、事前に読み込んだ距離とを比較して、前者の変位量が後者の距離に達したか否かを判定する。そして、変位量が所定距離に達したタイミングで、分析光学系7および観察光学系9の進退を停止する。なお、所定距離は予め定められていてもよく、また所定距離とアクチュエータ65bによる最大可動範囲とが一致するように構成されていてもよい。
なお、モード切替部211によって第2モードから第1モードへと切り替えた後に、ヘッド部6を傾斜させることもできる。また、第2モードにおいては、観察光学系9によるサンプルSPの観察に加え、メンテナンス制御部104による紫外レーザ光のメンテナンス制御を行うこともできる。第2モードには、サンプルSPの観察を行う通常モードと、メンテナンス制御を行うメンテナンスモードと、が含まれる。メンテナンスモードの詳細は後述する。
-スペクトル取得部212-
スペクトル取得部212は、第1モードにおいて分析光学系7からレーザ光を出射させることで、強度分布スペクトルを取得する。具体的に、本実施形態に係るスペクトル取得部212は、レーザ発振器71から紫外レーザ光を出射させ、これを、反射型対物レンズ74を介してサンプルSPに照射する。サンプルSPにレーザ光を照射すると、サンプルSPの表面が局所的にプラズマ化するとともに、プラズマ状態から気体等に戻るときに、エネルギー準位間の幅に対応したエネルギーを有する光(プラズマ光)が電子から放出される。そうして放出されたプラズマ光は、反射型対物レンズ74を通じて分析光学系7に戻り、第1検出器77Aおよび第2検出器77Bに到達する。
第1および第2検出器77A,77Bに戻ったプラズマ光に基づいて、スペクトル取得部212が受光量を波長毎に分光して強度分布スペクトルを生成する。スペクトル取得部212によって生成された強度分布スペクトルは、スペクトル解析部213に入力される。
なお、スペクトル取得部212は、第1および第2検出器77A,77Bによる受光タイミングを、レーザ光の出射タイミングと同期させる。このように設定することで、スペクトル取得部212は、レーザ光の出射タイミングに合わせて強度分布スペクトルを取得することができる。
-スペクトル解析部213-
スペクトル解析部213は、スペクトル取得部212によって生成された強度分布スペクトルに基づいて、サンプルSPの成分分析を実行する。既に説明したように、LIBS法を用いた場合、サンプルSPの表面が局所的にプラズマ化され、プラズマ状態から気体等に戻るときに放出される光のピーク波長は、元素(より正確には、原子核に束縛された電子の電子軌道)毎に固有の値を持つ。したがって、強度分布スペクトルのピーク位置を特定することで、そのピーク位置に対応した元素がサンプルSPに含まれている成分であると判定することができ、また、ピーク同士の大きさ(ピークの高さ)を比較することで、各元素の成分比を決定するとともに、決定された成分比に基づいて、サンプルSPの組成を推定することもできる。スペクトル解析部213は、本実施形態における「成分分析部」の例示である。
スペクトル解析部213による分析結果は、表示部22上に表示したり、所定のフォーマットで記憶装置21bに記憶したりすることができる。
-画像処理部214-
画像処理部214は、観察光学系9における第2カメラ93によって生成される画像データ(第2画像データ)、分析光学系7における第1カメラ81によって生成される画像データ(第1画像データ)、およびスペクトル解析部213による分析結果等に基づいて、表示部22上の表示態様を制御することができる。
特に、本実施形態に係る画像処理部214は、第2カメラ93によって撮像される領域(例えば、領域の中心位置)と、第1カメラ81によって撮像される領域(例えば、領域の中心位置)と、を第1モードと第2モードとの切替前後で一致させる。画像処理部214は、各領域を一致させるように、第1および第2カメラ81,93、ひいては、各カメラ81,93によって生成される第1および第2画像データの表示態様を調整することができる。
その他、画像処理部214は、第2画像データ上に、紫外レーザ光の照射位置を示す指標を重ねて表示することもできる。
-取付判定部102-
取付判定部102は、ヘッド取付センサSw5からの検出信号に基づいて、分析筐体70がスタンド42に取り付けられているか否かを判定する。その判定結果は、レーザ制御部105に入力される。この判定結果は、紫外レーザ光の出射を許可する際に参照される第1の条件として機能する。
-傾き判定部103-
傾き判定部103は、第1傾斜センサSw3および第2傾斜センサSw4からの検出信号に基づいて、重力方向に対する基準軸Asの傾きと、重力方向に対する分析光学系7の傾き(より詳細には、重力方向に対する分析光軸Aaの傾き)と、の差分を算出する。この差分は、基準軸Asに対する分析光学系7の傾きθに相当する。
傾き判定部103は、算出された傾きθに基づいて、その傾きθが前記第1閾値θmaxを超えるか否かを判定する。その判定結果は、レーザ制御部105に入力される。この判定結果は、紫外レーザ光の出射を許可する際に参照される第2の条件として機能する。
-レーザ制御部105-
1.レーザ制御部105の基本概念
まず、レーザ制御部105が行う種々の処理の基本概念について説明する。
レーザ制御部105は、モニタ受光部88によって生成された受光信号に基づいて、励起光源71aによる励起光の生成の可否を判定するとともに、その判定結果に応じて励起光の生成を制御する。
詳しくは、レーザ制御部105は、モニタ受光部88によって生成された受光信号に基づいて、所定期間内に受光信号が生成された回数であるレーザ出射回数をカウントする。ここで、所定期間は、現在時刻から見て過去に遡った一定の期間に相当する。所定期間の長さ(時間幅)は、事前に設定されるようになっている。
レーザ制御部105は、そうしてカウントされたレーザ出射回数と、予め設定された所定回数とを比較するとともに、レーザ出射回数が所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成を許可する。一方、レーザ制御部105は、レーザ出射回数が所定回数以上の場合には、励起光の生成を不許可とする。レーザ出射回数が過度に多い場合には励起光の生成を不許可とすることで、従来よりも安全性をさらに向上させることができる。
導光光学系7aは、指令生成部101によって指令が生成され、かつ、レーザ制御部105によって励起光の出射が可能と判定された場合(励起光の生成が許可された場合)に励起光を出射するとともに、レーザ発振器71により生成された紫外レーザ光を平行光として導光する。そうして導光された紫外レーザ光は、反射型対物レンズ74によって集光されて所定の焦点距離Dfで収束することになる。
図17は、レーザ出射回数の判定について説明するためのグラフである。また、図18は、部分期間について説明するための図であり、図19は、出射指令とレーザパルスとの関係について説明する図である。図17のグラフG0は、前述した所定回数(以下、「制限値」ともいう)と、レーザ出射回数を累積するために遡った時間と、の関係を例示するグラフである。また、グラフG1は、基準時間である時刻t0から所定時間遡ってレーザ出射回数を累積してなるレーザ累積出射回数を例示するグラフである。すなわち、過去のある時刻t1におけるレーザ累積出射回数は、時刻t0から時刻t1にかけて累積されたレーザ出射回数であり、過去のある時刻t2におけるレーザ累積出射回数は、時刻t0から時刻t2にかけて累積されたレーザ出射回数である。グラフG1は、時間を遡るにつれて単調増加のグラフとなっている。グラフG2は、グラフG1が生成された時刻からグラフG2が生成された時刻までのΔtの間に紫外レーザ光が出射されなかったと仮定した場合における、基準時間からのレーザ出射回数を累積した結果を(レーザ累積出射回数)例示するグラフである(Δt>0)。
図17の縦軸は、レーザ出射回数の大きさ、または、そのレーザ出射回数と比較される制限値の大きさを示しており、図17の横軸は、現在から過去に向かってどれだけ遡るかを示している。例えば、グラフG1が生成された時刻からΔtの間レーザ出射回数が増加しなかった場合、グラフG1とグラフG2との比較によって示されるように、レーザ出射回数は、過去に向かってΔt分だけシフトすることになる。また、レーザ出射回数は累積値になるため、過去に遡るほど増加することになる。
ここで、レーザ制御部105は、レーザ出射回数と制限値との比較を、前記所定期間T内における複数の期間に対して実行する。その際、レーザ制御部105は、前記比較を行う期間が、所定期間T内のどの期間に相当するのか(現在時刻からどれほど遡った期間なのか)に応じて、比較対象としての制限値の大きさを異ならせるように構成されている。
具体的に、制限値は、図17のグラフG0に示すように、所定期間Tのうち、現在時刻から見て直近の第1期間T1においては一定に設定され、第1期間T1以降の第2期間T2(第1期間T1からさらに遡った期間)においては、時間を遡るにつれて大きくなるように設定される。
図17の例では、第1期間T1と第2期間T2との境界付近のタイミング(囲み部C1を参照)において、レーザ出射回数を示すグラフG1と、制限値を示すグラフG0とが一致するようになっている。この場合、他のタイミングにおいてはレーザ出射回数<制限値の関係が仮に成立していたとしても、励起光の生成は不許可と判定される。一方、グラフG1に示した状態から時間Δt経過した状態を示すグラフG2の大きさは、図に示す全期間において、グラフG0の大きさ未満となっている。この場合は、励起光の生成が許可される。
また、時間を遡るにつれて制限値を変化させるように構成した場合、どのタイミングにおける制限値をレーザ出射回数と比較するかを設定する必要がある。本実施形態では、レーザ制御部105は、所定期間Tを複数の部分期間に分割し、部分期間ごとにレーザ出射回数を集計する。この分割は、例えば等分割とすることができる。等分割とした場合、各部分期間の長さ(時間幅)は、互いに一定となる。言い換えると、レーザ制御部105は、レーザ出射回数がカウントアップされた実時刻と、レーザ出射回数のカウント値とを直に関連付けるのではなく、レーザ出射回数がカウントアップされた時刻を10秒ごと、30秒ごと、60秒ごと、100秒ごと等、離散的に変化させつつ、離散化された時間に対してレーザ出射回数のカウント値を関連付けるように構成されている。この場合、レーザ出射回数は、図17のグラフG1,G2のように連続的に増加するのではなく、ヒストグラム状に離散的に増加することになる。
そして、レーザ制御部105は、部分期間ごとにレーザ出射回数と制限値とを比較するとともに、全ての部分期間においてレーザ出射回数が制限値を下まわる場合に、励起光の生成が可能であると判定する。この場合、複数の部分期間のうち、現在時刻から見て直近の部分期間において参照される制限値は、当該直近の部分期間よりも過去に遡った部分期間において参照される制限値以下の値に設定されることになる。つまり、制限値の大きさは、部分期間ごとに各々一定に設定されている。しかしながら、部分期間同士を比較した場合、現在時刻に近い部分期間(現在時刻との時間差が小さい部分期間)における制限値は、現在時刻から遠い部分期間(現在時刻との時間差が大きい部分期間)における制限値以下の値に設定されるようになっている。
図18に示すように、所定期間TをN個の部分期間Tに分割された場合、部分期間毎に集計されるレーザ出射回数(累積出射回数)は、N個の部分期間の各々に関連付いた第1~第Nの累積出射回数としてカウントされることになる。ここで、nが小さいほど直近の部分期間に対応するとみなした上で、n番目の部分期間における累積出射回数をP(n=0,1,2,…,N)とし、n番目の部分期間まで遡った場合における前記制限値をLiと設定すると、0≦n≦Nの全てにおいて下式が満足された場合に、励起光の生成が許可されるようになっている。なおPとは、現在時刻から1番目の部分期間までの、部分期間に満たない期間の累積出射回数である。
+P+P+…+P<Li…(1)
上式において、制限値Liの大きさは、n番目の部分期間Tに関連づいた制限値となるように設定される。例えば、n番目の部分期間Tが9分前~10分前の期間に相当する場合、制限値Liは、過去10分間の累積出射回数に対応した制限値として設定されることになる。
例えば、上述の励起光の生成を許可するか否かの判定は、現在~過去6時間までといった所定期間のみ行ってもよい。また、部分期間Tはそれぞれ時刻0秒~59秒の1分間であってもよい。ここでは、直近の6時間分の所定期間Tを360個の部分期間Tに等間隔で分割して判定を行う場合を説明する(つまり、N=360)。また、説明のために現在の時刻は12:00:25とし、1番目~10番目の部分期間における累積出射回数Pに対応した制限値Liは10回、11番目以降の各部分期間における累積出射回数Pに対応した制限値Liはn回とする。
この例の場合、Tは12:00:00~12:00:25の26秒間、Tは11:59:00~11:59:59の60秒間、Tは、11:58:00~11:58:59の60秒間であり、T360は06:00:00~06:00:59の60秒間となる。上述のように、Tは部分期間の60秒に満たない26秒の期間である。レーザ制御部105は、10番目の部分期間T10までの各部分期間において、現在時刻から各部分期間までの出射回数の累計がそれぞれ10回未満であるかどうかを判定する。すなわち、10番目の部分期間までにおいては、P+P、P+P+P、・・・、P+P+・・・+P10のそれぞれが10回未満である場合に、励起光の生成が可能であると判定する。また、レーザ制御部105は、11番目以降の部分期間において、現在時刻から各部分期間までの出射回数の累計がそれぞれn回未満であるかどうかを判定する。すなわち、P+P+・・・+P11、P+P+・・・+P12、・・・、P+P+・・・+P360のそれぞれがn未満である場合に励起光の生成が可能であると判定する。これらの判定を行い、全てのnにおいて式(1)を満たす場合に励起光の生成が許可される。
なお、本実施形態においては、離散的に分割された部分期間とレーザ出射回数を関連付けることで、レーザ出射回数の記録に割くメモリを抑制することができる。そのため、各部分期間は、現在時刻に応じてリアルタイムに変動するものではなく、例えば毎分0秒から毎分59秒を1つの部分期間Tとするといったように予め定められたものである。そのため、上述の例のように、現在時刻が12:00:25の場合は、部分期間T0は、12:00:00~12:00:25までの26秒間となる。
ここで述べたレーザ出射回数の記録方法は一例であり、本開示はこれに限定されない。また、レーザ出射回数の記録に多くのメモリを割り当てることが可能な場合は、所定期間を部分期間に分割せずに、レーザが出射された時刻を逐次記憶し、レーザ出射指令が生成されたタイミングで所定期間のレーザ出射回数を累積し、励起光の生成可否または、レーザ光出射の可否を判定してもよい。
また、後述のメンテナンスモードにおいては、紫外レーザ光がカバー部材61bによって終端されることになるため、紫外レーザ光が外部に出射される虞はない。そのため、レーザ制御部105は、メンテナンスモードへの移行時(より詳細には、第1位置検出センサSw6および第2位置検出センサSw7の双方から検出信号が入力された場合)には、レーザ出射回数をカウントしない。この場合、レーザ出射回数に関係なく励起光の生成を許可し、ひいてはメンテナンスモードを構成する各工程を実行することができるようになる。具体的に、レーザ制御部105は、第1および第2位置検出センサSw6,Sw7の双方から出力された検出信号に基づいて、筐体としての分析筐体70の位置が、カバー部材61bにより反射型対物レンズ74が覆われている状態に対応した位置にあるか否かを判定する。レーザ制御部105は、分析筐体70の位置が、該位置(カバー部材61bにより反射型対物レンズ74が覆われている状態に対応した位置)にあると判定された場合には、レーザ出射回数を非カウントとする。
レーザ制御部105は、カバー部材61bに代えて、またはカバー部材61bに加えて、遮蔽カバー10によって反射型対物レンズ74が覆われている場合もレーザ出射回数をカウントしない。具体的に、レーザ制御部105は、前述した第1および第2カバー取付センサSw8の双方から検出信号が入力された場合には、レーザ出射回数を非カウントとする。
また、レーザ制御部105は、レーザ出射回数に係る条件とは別に、前述の第1および第2の条件を判定することで、励起光の生成を許可または不許可と判定するように構成されている。
すなわち、レーザ制御部105は、取付判定部102による判定結果に基づいて励起光の生成の可否を判定することができる。具体的に、レーザ制御部105は、分析筐体70がステージ4に取り付けられていてかつレーザ出射回数が制限値(所定回数)を下まわる場合に、励起光の生成が可能であると判定する。
レーザ制御部105はまた、傾き判定部103による判定結果に基づいて励起光の生成の可否を判定することもできる。具体的に、レーザ制御部105は、傾きθが第1閾値θmaxを超える場合には、励起光源71aによる励起光の生成を不許可と判定する。
また一般に、図19の左側に示すように、励起光源71aの正常時(励起光が正常に生成される場合)には、LD電流によって表される1つの出射指令に対し、1つのレーザパルスが出射されることになる。それに対し、図19の右側に示すように、励起光源71aの異常時(励起光の生成に以上を来した場合)には、1つの出射指令に対し、2つ以上のレーザパルスが出射されることになる。
そこで、レーザ制御部105は、指令生成部101によって生成された指令(LD電流に対応したパルス信号)と、モニタ受光部88によって生成された受光信号と、の対応関係を判定し、1つの指令に対して複数の受光信号が生成された場合には、励起光源71aによる励起光の生成を、その判定が実施された時刻以降、不許可と判定する。これにより、レーザ発振器71の安全性能を従来よりもさらに向上させることができる。
2.レーザ制御部105の具体例
以下、レーザ制御部105のハードウェア構成について、図16を参照して説明する。
図16に示すように、指令生成部101は、レーザ発振器71に入力されるべきパルス信号を生成する指令生成器101aと、パルス信号に対して信号処理を行うAND回路101bと、を有する。指令生成器101aは、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて構成することができる。
一方、レーザ制御部105は、カウンタ105aと、第1制御ユニット105bと、第2制御ユニット105cと、第1記憶部105dと、第2記憶部105eと、第1タイマ105fと、第2タイマ105gと、電池105hと、を有する。このうち、カウンタ105aは、例えばFPGAを用いて構成することができる。第1および第2制御ユニット105b,105cは、例えばMCU(Micro Control Unit)を用いて構成することができる。第1および第2記憶部105d,105eは、例えばFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等の不揮発性メモリを用いて構成することができる。第1および第2タイマ105f,105gは、例えばRTC(Real-Time Clock)等の集積回路によって構成することができる。
なお、電池105hは、第1タイマ105fと第2タイマ105gの各々について、個別に設けることもできる(各タイマに専用の電池を設けることができる)。例えば、電池の故障等により複数のタイマに同様の故障が略同時に発生し、タイマの時刻の比較だけではあたかも正常と判断される可能性が考えられる。各タイマに専用の電池を設ける構成は、そうした誤判断を抑制できるという点で有効である。
ここで、例えば、レーザ発振器71によって生成された紫外レーザ光のうちの一部が、第3ビームスプリッター86を透過してモニタ受光部88によって受光されると、受光素子88aがパルス信号としての受光信号を生成し、それをパルスストレッチ回路88bに入力する。パルスストレッチ回路88bは、入力されたパルス信号のパルス幅を拡大した上で、それをレーザ制御部105のカウンタ105aに入力する。
カウンタ105aは、パルス信号が入力されるたびに、パルス信号が入力された回数をカウントアップする。このカウント数は、モニタ受光部88が紫外レーザ光を受光した回数に相当し、前述したレーザ出射回数の値に相当する。カウンタ105aによってカウントアップされたレーザ出射回数は、第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cによって読み出される。
一方、第1タイマ105fは、現在時刻をカウントする。第1タイマ105fによるカウントは、分析観察装置Aの電源OFF時にも継続される。第1タイマ105fは、電源OFF時には電池105hから給電されて作動する。第1タイマ105fによってカウントされた現在時刻は、第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cの双方によって読み出される。
同様に、第2タイマ105gは、第1タイマ105fと同様に現在時刻をカウントする。第2タイマ105gによるカウントは、分析観察装置Aの電源OFF時にも継続される。第2タイマ105gは、電源OFF時には電池105hから給電されて作動する。第2タイマ105gによってカウントされた現在時刻は、第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cの双方によって読み出される。
る。
つまり、図例に示す構成では、現在時刻のカウントは、第1タイマ105fと第2タイマ105gとによって2重化されており、水晶のクロック停止、現在時刻のカウントエラー、データ化け等が仮に生じたとしても、現在時刻のカウントに支障を来さないように構成されている。
第1制御ユニット105bは、第1タイマ105fおよび第2タイマ105gのそれぞれによってカウントされた現在時刻を一定時間ごとに比較することで、2つのタイマにズレが生じているか否かを定期的に判定することができる。
第2制御ユニット105cは、第1制御ユニット105bと同様に、第1タイマ105fおよび第2タイマ105gのそれぞれによってカウントされた現在時刻を一定時間ごとに比較することで、2つのタイマにズレが生じているか否かを定期的に判定することができる。
第1制御ユニット105bは、カウンタ105aから読み出したレーザ出射回数と、第1および第2タイマ105f,105gから読み出した現在時刻と、を関連付けて、第1記憶部105dに記憶させる。現在時刻については、前述のように、所定の時間幅ごとに離散的に変化させる(30秒おき、60秒おき等、一定時間毎に変化させる)ことで、実時刻ではなく部分期間をレーザ出射回数と関連付けて記憶させる。
第1制御ユニット105bは、第1記憶部105dに記憶された制限値と、レーザ出射回数とを比較して、全ての部分期間においてレーザ出射回数が制限値を下まわる場合に限り、AND回路101bに対して出射許可を示す信号(許可信号)を入力する。
第2制御ユニット105cは、カウンタ105aから読み出したレーザ出射回数と、第1および第2タイマ105f,105gから読み出した現在時刻と、を関連付けて、第2記憶部105eに記憶させる。現在時刻については、前述のように、所定の時間幅ごとに離散的に変化させる(30秒おき、60秒おき等、一定時間毎に変化させる)ことで、実時刻ではなく部分期間をレーザ出射回数と関連付けて記憶させる。
第2制御ユニット105cは、第2記憶部105eに記憶された制限値と、レーザ出射回数とを比較して、全ての部分期間においてレーザ出射回数が制限値を下まわる場合に限り、AND回路101bに対して出射許可を示す信号(許可信号)を入力する。
そして、AND回路101bは、第1制御ユニット105bと第2制御ユニット105cの双方から許可信号が入力された場合には、指令生成器101aによって生成された指令を通過させてレーザ発振器71に入力させる。この場合、励起光源71aによる励起光の生成が許可されることになる。ここで、AND回路101bを通過した指令は、第1制御ユニット105bと第2制御ユニット105cとに入力される。第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cは、それぞれ、入力された指令と、その指令に応じて受光素子88aによって生成された受光信号と、の対応関係を比較して、指令の数と受光信号の数とに不整合があれば、許可信号の入力を停止して励起光の生成を不許可とする。
一方、AND回路101bは、第1制御ユニット105bと第2制御ユニット105cの少なくとも一方から許可信号が入力されなかった場合には、指令生成器101aによって生成された指令を遮断する。この場合、励起光源71aによる励起光の生成は不許可となる(紫外レーザ光の出射が制限される)。
このように、各種処理を行う要素を第1制御ユニット105bと第2制御ユニット105cとに2重化したことで、何らかのノイズによって一方のユニットが誤動作した場合であっても、他方のユニットが正常に動作することで、紫外レーザ光の出射制限をより確実に行うことができるようになる。
また、各種情報を記憶する要素を第1記憶部105dと第2記憶部105eとに2重化したことで、データ化け等が仮に生じたとしても、各種情報の読出に支障を来さないように構成されている。
-メンテナンス制御部104-
メンテナンス制御部104は、ヘッド部6を後退させた第2の状態において実行されるメンテナンスモードにおいて、レーザーパワーの調整を実行する。具体的に、メンテナンス制御部104は、前述した第1温度制御部71eおよび第2温度制御部71fを介してレーザ発振器71の各部の温度を変更しながら、紫外レーザ光を生成する。
例えば、メンテナンス制御部104は、第2温度制御部71fを制御することで、波長変換素子71dを構成する2つの結晶のうち、SHG用の結晶の温度を事前に設定された初期温度から一定温度ずつ変化させ、そうして変化させた各温度でレーザーパワーを取得するとともに、レーザーパワーが最大となる温度を探索する(工程1)。その際、レーザーパワーは、モニタ受光部88において生成される応じた受光信号に基づいて取得される。
同様に、メンテンナンス制御部217は、第2温度制御部71fを制御することで、波長変換素子71dを構成するTHG用の結晶の温度を事前に設定された初期温度から一定温度ずつ変化させ、そうして変化させた各温度でレーザーパワーを取得するとともに、レーザーパワーが最大となる温度を探索する(工程2)。レーザーパワーは、前記工程1と同様にモニタ受光部88を用いて取得される。
メンテナンス制御部104は、前記工程1と工程2を繰り返し実行する。その際、各結晶の温度の変化幅を変更しながら各工程を繰り返すことで、より精密な調整を実行する。
メンテナンス制御部104は、第1温度制御部71eについても同様の工程を繰り返し実行し、励起光源71aおよび共振器71bの温度を最適化する。
ここで、メンテナンスモードでは、カバー部材61bによって反射型対物レンズ74が物理的に覆われることになるため、紫外レーザ光の外部への出射を防止することができる。言い換えると、紫外レーザ光の意図しない漏洩を抑制するために、本実施形態に係るメンテナンス制御部104は、カバー部材61bによって反射型対物レンズ74が覆われていることを条件に、メンテナンスモードへの移行を許可するように構成されている。
詳しくは、メンテナンス制御部104は、第1位置検出センサSw6および第2位置検出センサSw7の双方から検出信号(カバー部材61bによって反射型対物レンズ74が覆われていることを示す信号)が入力されたことを条件に、メンテナンスモードへ移行する。第1位置検出センサSw6および第2位置検出センサSw7の一方から検出信号が入力されなかった場合は、メンテナンスモードへの移行を不許可とする。センサによる検出を2重化したことで、安全性を従来よりもさらに向上させることができる。
こうしたメンテナンスモードにおいては、レーザ制御部105は、レーザ出射回数のカウントを実施しない(非カウントとする)。そのため、メンテナンスモードでは、励起光源71aによる励起光の生成は許可されるとともに、紫外レーザ光の出射は制限されない。
<各種処理の具体例>
図20は、励起光の生成可否の判定に係る第1処理を例示するフローチャートである。また、図21Aおよび図21Bは、励起光の生成可否の判定に係る第2処理を例示するフローチャートであり、図22は、起動時エラーの判定について例示するフローチャートであり、図23は、指令回数およびパルス数に係る判定について例示するフローチャートである。
以下、励起光の生成可否の判定に係る処理を第1処理と第2処理とに区分して説明するが、この区分は便宜上のものに過ぎない。例えば、第1処理を構成するステップの間に第2処理を構成する各ステップを挿入することで、第1処理に第2処理を統合した1つの処理と見なすことができる。
(第1処理)
まず、図20のステップS1において、第2制御部100は、第1傾斜センサSw3、第2傾斜センサSw4およびヘッド取付センサSw5等、各種センサの検出信号を読み込む。
続くステップS2において、取付判定部102が、ヘッド部6がスタンド42に取り付けられているか否かを判定する。ここで、取付判定部102による判定がYESの場合はステップS3に進む一方、NOの場合はステップS5に進む。ステップS5に進んだ場合、レーザ制御部105は、励起光の生成を不許可と判定する。この場合、紫外レーザ光の出射はNGと判定され、その出射が制限されることになる。
ステップS3において、傾き判定部103が、重力方向に対する基準軸Asの傾きθが、第1閾値θmaxを超えるか否かを判定する。ここで、傾き判定部103による判定がYESの場合はステップS4に進む一方、NOの場合はステップS5に進む。ステップS4に進んだ場合、レーザ制御部105は、励起光の生成が可能であると判定する(励起光の生成を許可する)。この場合、紫外レーザ光の出射はOKと判定され、その出射が許容されることになる。
(第2処理)
一方、第2処理においては、まず図21AのステップS11で起動時エラーが判定される。このステップS11は、分析観察装置Aの起動時に実行される処理であり、図22に示すフローが実行されるようになっている。
具体的に、まず、図22のステップS101において、第2制御部100は、第1記憶部105dおよび第2記憶部105eにアクセスする。具体的に、このステップS101では、第1制御ユニット105bが第1記憶部105dにアクセスし、第2制御ユニット105cが第2記憶部105eにアクセスする。
続くステップS102において、第2制御部100は、第1および第2記憶部105d,105e各々のチェックサムを確認し、チェックサムエラーの有無を判定する。この判定がNOの場合、制御ステップはステップS109に進む。この場合、第1および第2記憶部105d,105eのいずれかに起動時エラーがあるものと判定され、図22に示すフローを終了する。一方、ステップS102の判定がYESの場合、第1および第2記憶部105d,105eの双方が正常であると判定され、制御プロセスはステップS103に進む。
ステップS103において、第2制御部100は、第1タイマ105fにアクセスする。具体的に、このステップS104では、第1および第2制御ユニット105b,105cの双方が第1タイマ105fにアクセスする。図示は省略したが、ステップS103において、第2制御部100は、第1および第2制御ユニット105b,105cの各々と、第1タイマ105fとの間に通信エラーがあるか否かを判定し、通信エラーが存在しない場合は制御プロセスをステップS104に進める一方、通信エラーが存在する場合は制御プロセスをステップS109に進める。後者の場合、第1タイマ105fに異常があるものと判定され、図22に示すフローを終了する。
ステップS104において、第2制御部100は、第1タイマ105fのステータスレジスタをチェックし、第1タイマ105fにおける異常の有無を検知する。第1タイマ105fの異常が検知されなかった場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS105に進める一方、異常が検知された場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS109に進める。後者の場合、第1タイマ105fに異常があるものと判定され、図22に示すフローを終了する。
ステップS105において、第2制御部100は、第2タイマ105gにアクセスする。具体的に、このステップS105では、第1および第2制御ユニット105b,105cの双方が第2タイマ105gにアクセスする。図示は省略したが、ステップS105において、第2制御部100は、第1および第2制御ユニット105b,105cの各々と、第2タイマ105gとの間に通信エラーがあるか否かを判定し、通信エラーが存在しない場合は制御プロセスをステップS106に進める一方、通信エラーが存在する場合は制御プロセスをステップS109に進める。後者の場合、第2タイマ105gに異常があるものと判定され、図22に示すフローを終了する。
ステップS106において、第2制御部100は、第2タイマ105gのステータスレジスタをチェックし、第2タイマ105gにおける異常の有無を検知する。第2タイマ105gの異常が検知されなかった場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS107に進める一方、異常が検知された場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS109に進める。後者の場合、第2タイマ105gに異常があるものと判定され、図22に示すフローを終了する。
ステップS107において、第2制御部は、第1タイマ105fによってカウントされた現在時刻と、第2タイマ105gによってカウントされた現在時刻と、の差分を算出し、その差分が所定の許容範囲に収まっているか否かを判定する。この判定がYESの場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS108へ進める。この場合、レーザ制御部105を構成する各ハードウェアに起動時エラーがないものと判定され、図22に示すフローを終了する。ステップS107の判定がNOの場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS109に進める。この場合、第1タイマ105fおよび第2タイマ105gの少なくとも一方に異常があるものと判定され、図22に示すフローを終了する。
図22に示すフローを終了すると、制御プロセスは、図21AのステップS11からステップS12に進む。ステップS12において、第2制御部100は、ステップS11にて起動時エラーが検出されたか否かを判定し、起動時エラーが検出されなかった場合は制御プロセスをステップS13へ進める一方、起動時エラーが検出された場合は制御プロセスをステップS22に進める。ステップS22に進んだ場合、レーザ制御部105は、励起光の生成を不許可と判定する。この場合、紫外レーザ光の出射はNGと判定され、その出射が制限されることになる。
ステップS13において、第2制御部100は、第1タイマ105fおよび第2タイマ105gから現在時刻を読み出すとともに、カウンタ105aからパルス数(現在のレーザ出射回数)を読み出す。
ステップS14において、第2制御部100は、パルス数の増加数を算出する。この算出は、第2処理を前回実行した際に読み出されたパルス数と、今回読み出されたパルス数との差分を算出することで実行可能である。
ステップS15において、第2制御部100は、指令生成器101aから出射指令が発行されたか否かを判定する。この判定は、第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cがそれぞれ独自に行うように構成されている。この判定がYESの場合、第2制御部100は、ステップS16において出射指令が発行された回数(指令回数)を更新し、制御プロセスをステップS17へ進める。一方、ステップS15の判定がNOの場合、制御プロセスは、ステップS16をスキップしてステップS17に進む。
ステップS17は、指令回数とパルス数とを照合するための処理であり、図23に示すフローが実行されるようになっている。この処理は、第1制御ユニット105bおよび第2制御ユニット105cがそれぞれ独自に行うように構成されている。
具体的に、まず、図23のステップS201において、第2制御部100は、指令回数が増えたか否かを判定する。この判定がYESの場合、第2制御部100は、制御プロセスをステップS202へ進める。一方、前記判定がNOの場合、第2制御部100は、制御プロセスをステップS206へ進める。
ステップS206において、第2制御部100は、所定時間内にパルス数が増えたか否かを判定する。なお、所定時間とは、一例として指令が生成されてから紫外レーザを十分受光し得るタイムアウト時間があげられる。この判定がYESの場合、指令生成器101aから出射指令が発行されていないにもかかわらず、モニタ受光部88が紫外レーザ光を受光したことを意味する。この場合、ハードウェアになんらかの異常が生じているものと判断され、第2制御部100は制御プロセスをステップS205へ進める。ステップS205において、レーザ制御部105は、「指令回数≠パルス数」と判定し、図23に示すフローを終了する。一方、ステップS206の判定がNOの場合、指令回数とパルス数との間で整合性が取れていると判断されるため、第2制御部100は制御プロセスをステップS204へ進める。ステップS204において、レーザ制御部105は、「指令回数=パルス数」と判定し、図23に示すフローを終了する。
ステップS202において、第2制御部100は、所定時間内にパルス数が増えたか否かを判定する。この判定がNOの場合、指令生成器101aから出射指令が発行されているにもかかわらず、モニタ受光部88が紫外レーザ光を受光していないことを意味する。この場合、ハードウェアになんらかの異常が生じているものと判断され、第2制御部100は制御プロセスをステップS205へ進める。一方、ステップS202の判定がYESの場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS203へ進める。
ステップS203において、第2制御部100は、パルス数が1発だけ増えたか否かを判定する。この判定がNOの場合、1つの出射指令に対し、モニタ受光部88が2発以上の紫外レーザ光を受光したことを意味する。この場合、指令回数とパルス数との間で整合性が取れていないと判断されるため、第2制御部100は制御プロセスをS205へ進める。一方、ステップS203の判定がYESの場合、第2制御部100は制御プロセスをステップS204へ進める。前述のように、このステップS204において、レーザ制御部105は、「指令回数=パルス数」と判定し、図23に示すフローを終了する。
ステップS204またはステップS205に係る処理が完了すると、図23に示すフローが終了し、制御プロセスは、図21AのステップS17からステップS18に進む。ステップS18において、第2制御部100は、指令回数とパルス数とが一致しているか否かを判定する。図23に示すフローにおいてステップS204に進んだ場合、ステップS18の判定はYESとなり、制御プロセスはステップS19に進む。一方、図23に示すフローにおいてステップS205に進んだ場合、ステップS18の判定はNOとなり、制御プロセスはステップS22に進む。
ステップS19において、第2制御部100におけるレーザ制御部105が、N個の部分期間(ブロック)の各々において、レーザ出射回数(パルス数)と制限値とを比較する。そして、続くステップS20において、レーザ制御部105は、全部分期間において前記(1)の関係が成立するか否かを判定する。
ステップS20の判定がYESの場合、第2制御部100は、制御プロセスをステップS21へ進め、レーザ制御部105は、励起光の生成が可能であると判定する(励起光の生成を許可する)。この場合、紫外レーザ光の出射はOKと判定され、その出射が許容されることになる。
一方、ステップS20の判定がNOの場合、レーザ制御部105は、励起光の生成を不許可と判定する。この場合、紫外レーザ光の出射はNGと判定され、その出射が制限されることになる。
<安全性のさらなる向上に関して>
例えば、ユーザによって交換可能な着脱式の対物レンズを用いた場合、その対物レンズの脱落時には、よりエネルギー密度の高い平行光が開放空間に漏れ出すことになる。
それに対し、図7および図9に例示したように、反射型対物レンズ74を分析筐体70の一端に組み込むことで、導光光学系7aから反射型対物レンズ74にかけて一体的に構成されることになる。これにより、開放空間には拡散光のみが出射されるようになる。エネルギー密度が漸減する拡散光のみを出射させることで、仮に、ユーザが紫外レーザ光を目視したとしても、その影響を可能な限り低く抑えることができる。これにより、従来よりもさらに安全性を向上させることができる。
一般に、対物レンズを用いて紫外レーザ光を集光させる場合、対物レンズ次第で焦点距離が変わるため、サンプルSPの表面上で紫外レーザ光が収束せず、所望のエネルギー密度が実現されない可能性がある。
それに対し、前記実施形態のように分析筐体70の一端に反射型対物レンズ74を組み込むことで、焦点位置を一定に保つことができる。これにより、サンプルSPの表面上で紫外レーザ光を収束させ、所望のエネルギー密度を容易に実現することができるようになる。
また、前述のように交換可能な着脱式の対物レンズを用いた場合、対物レンズの交換が必要な場合は、取付位置次第で、最適な観察位置、導光光学系7aの取付位置から変動し得る。対物レンズの倍率に応じてそれらの位置を調整するのは手間がかかり、また、位置調整を正確に行うのは容易ではない。
それに対し、前記実施形態のように、反射型対物レンズ74が分析筐体70の一部を構成することで、導光光学系7aに対する反射型対物レンズ74の相対位置等を一定に保つことができる。これにより、様々な位置調整の手間を省くと同時に、位置ずれに起因した分析精度の低下を抑制することができる。
また、交換可能な着脱式の対物レンズを用いた場合、交換のタイミング次第では、分析筐体70、光学ベース700等の内部に埃等の異物の侵入し易くなる。そうした異物にレーザ光が照射されると蛍光が発生することがある。そうして発生した蛍光は、LIBS法による成分分析においてはノイズとなり、分析精度の低下を招く可能性がある。
それに対し、前記実施形態のように、ユーザによる交換を想定しない組み込み式の反射型対物レンズ74を用いて構成したことで、異物が侵入する機会を最小限に留めることができ、ひいては分析精度の低下を抑制することができる。
また、図9に例示したように、成分分析用の対物レンズとして反射型対物レンズ74を用いることで、LIBS法による成分分析における分析精度を向上させることができる。また、反射型対物レンズ74を用いることで、図7に例示したように分析筐体70内に収容されたカメラ(第1カメラ81)であっても、分析前後の撮像画像を良好に取得することができるようになる。
また、導光光学系7aは、レーザ制御部105によって励起光の生成可能と判定されたことを条件に、紫外レーザ光を導光する。このように構成することで、分析観察装置Aの安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、図17等を用いて説明したように、レーザ制御部105は、紫外レーザ光が出射された回数を累積してなるレーザ出射回数に基づいて、励起光の生成の可否を判定する。このように判定することで、長期にわたってLIBS法を実施した場合における安全性を向上させる上で有利になる。
また、図17のグラフG0に示すように、現在時刻から過去に遡るにつれて所定回数としての制限値を変化させることで、レーザ制御部105による判定をより適切に行うことができる。これにより、分析観察装置Aの安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、図18を用いて説明したように、リアルタイムで計測された時刻とレーザ出射回数を関連付ける代わりに、離散的に分割された部分期間とレーザ出射回数を関連付けることで、時刻の記録に割くメモリを抑制することができる。
また、図20のステップS2に例示したように、レーザ制御部105は、分析筐体70、ひいてはヘッド部6がステージ4に取り付けられている場合、すなわち、サンプルSPの分析に適した状態にあることを条件に、励起光の生成が可能であると判定する。このように構成することで、分析観察装置Aの安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、図13Bおよび図24等に例示したように、保護カバーとしてのカバー部材61bまたは遮蔽カバー10によって反射型対物レンズ74が覆われた状態、すなわち、紫外レーザ光の漏洩が懸念されない場合、レーザ制御部105は、レーザ出射回数をカウントしない。これにより、励起光の生成の可否に係る判定を、より適切に行うことができるようになる。
また、反射型対物レンズ74を過度に傾斜させた場合、紫外レーザ光の開放空間への漏洩が懸念させる。これに対し、図20のステップS3に例示したように、本実施形態に係るレーザ制御部105は、反射型対物レンズ74の傾きが第1閾値θmaxを超える場合、励起光源71aによる励起光の生成を不許可と判定し、紫外レーザ光の出射を制限する。このように構成することで、分析観察装置Aの安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
また、図19を用いて説明したように、指令の数と受光信号の数が一致しない場合、紫外レーザ光が意図せずに出射されたり、紫外レーザ光が指令通りに出射されなかったり等、各種機器の動作異常、故障等が懸念される。これに対し、本実施形態に係るレーザ制御部105は、図23に例示したように、動作異常、故障等が懸念される場合、励起光源71aによる励起光の生成を不許可と判定し、紫外レーザ光の出射を制限する。このように構成することで、分析観察装置Aの安全性を、従来よりもさらに向上させる上で有利になる。
《他の実施形態》
前記実施形態では、レーザ発振器71は、分析筐体70の内部空間において光学ベース700と隣接して配置されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、光学ベース700内にレーザ発振器71を収容してもよい。
また、前記実施形態では、光学ベース700の下端に反射型対物レンズ74が締結されるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。締結以外の方法によって反射型対物レンズ74を光学ベース700または分析筐体70に接続してもよいし、反射型対物レンズ74と光学ベース700または分析筐体70とを一体的に形成してもよい。
また、前記実施形態では、分析筐体70の外面によって観察筐体90を支持するように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。観察筐体90または観察ユニット9aを分析筐体70の内面によって支持するように構成してもよい。この場合、観察筐体90または観察ユニット9aは、分析光学系7と同様に、分析筐体70に収容されることになる。
また前記実施形態では、観察光軸Aoおよび分析光軸Aaは、互いに平行になるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。観察光軸Aoと分析光軸Aaとがねじれの位置になるように、分析光学系7および観察光学系9を配置することもできる。
また、分析筐体70等の筐体に組み込まれるべき対物レンズは、前記実施形態のような反射型対物レンズ74には限定されない。観察光学系9が具備する対物レンズ92のように、非反射型の対物レンズを筐体に組み込んでもよい。
A 分析観察装置(レーザ誘起ブレークダウン分光装置)
1 光学系アセンブリ
2 コントローラ本体
21 第1制御部
213 スペクトル解析部(成分分析部)
4 ステージ
41 ベース
42 スタンド
45 傾斜機構
5 載置台
61b カバー部材(保護カバー)
10 遮蔽カバー(保護カバー)
7 分析光学系
7a 導光光学系
70 分析筐体(筐体)
700 光学ベース
71 レーザ発振器
71a 励起光源
71b 共振器
74 反射型対物レンズ(対物レンズ)
11 1次ミラー
11a 開口部
11b 1次反射面
12 2次ミラー
12a 透過領域
12b 2次反射面
77A 第1検出器(検出器)
77B 第2検出器(検出器)
81 第1カメラ(カメラ)
88 モニタ受光部
9 観察光学系
90 観察筐体
92 対物レンズ
100 第2制御部
101 指令生成部
105 レーザ制御部
Sw3 第1傾斜センサ(傾斜センサ)
Sw4 第2傾斜センサ(傾斜センサ)
Sw5 ヘッド取付センサ(取付センサ)
Sw6 第1位置検出センサ
Sw7 第2位置検出センサ
Sw8 カバー取付センサ(第1カバー取付センサ、第2カバー取付センサ)
Df 焦点距離
SP サンプル(分析対象物)
T1 第1期間
T2 第2期間

Claims (13)

  1. レーザ誘起ブレークダウン分光法を用いることにより、開放空間に設けられた載置台に載置された分析対象物の成分分析を行うレーザ誘起ブレークダウン分光装置であって、
    励起光を出射する励起光源と、該励起光源によって出射された励起光に基づいてレーザ光を生成する共振器と、を有し、該レーザ光としての紫外レーザ光を生成するレーザ発振器と、
    前記レーザ発振器により生成された前記紫外レーザ光を平行光として導光する導光光学系と、
    前記導光光学系によって平行光として導光された前記紫外レーザ光を所定の焦点距離で収束させるとともに、該所定の焦点距離以上離れるにつれて前記紫外レーザ光を円錐状に拡散させる対物レンズと、
    前記レーザ発振器および前記導光光学系を内部に収容するとともに、前記対物レンズが一端に組み込まれた筐体と、
    前記紫外レーザ光が前記分析対象物に照射されることによって該分析対象物において発生したプラズマ光の波長ごとの強度分布である強度分布スペクトルを生成する検出器と、
    前記検出器により生成された強度分布スペクトルに基づいて、前記分析対象物の成分分析を行う成分分析部と、を備え、
    前記対物レンズは、前記筐体の一端に組み込まれることで前記筐体の一部として構成されるとともに、前記所定の焦点距離以上離れるにつれて前記紫外レーザ光のエネルギー密度を漸減させることで、前記紫外レーザ光を拡散させるように構成されている
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  2. 請求項1に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記対物レンズは、径方向の中央部に設けられた開口部と、該開口部の周囲に配置されかつ前記紫外レーザ光の出射に対応して前記分析対象物において発生したプラズマを反射する1次反射面と、が設けられた1次ミラー、および、前記1次反射面によって反射されたプラズマを受光してさらに反射させる2次反射面が設けられた2次ミラーを有し、前記1次ミラーおよび前記2次ミラーによって前記プラズマを集光して前記開口部に導く反射型対物レンズとして構成される
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  3. 請求項2に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記筐体に収容され、前記反射型対物レンズを通じて前記分析対象物から戻る光の受光量を検出することで、前記分析対象物を撮像するカメラを備える
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記励起光源に励起光を生成させる指令を生成する指令生成部と、
    前記レーザ発振器からの前記紫外レーザ光を受光するとともに、該紫外レーザ光を受光したことを示す受光信号を生成するモニタ受光部と、
    前記モニタ受光部によって生成された前記受光信号に基づいて、前記励起光源による励起光の生成の可否を判定するとともに、該判定結果に応じて前記励起光の生成を制御するレーザ制御部と、を備え、
    前記励起光源は、前記指令生成部によって前記指令が生成され、かつ、前記レーザ制御部によって前記励起光の出射が可能と判定された場合に前記励起光を出射する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  5. 請求項4に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記レーザ制御部は、前記モニタ受光部によって生成された前記受光信号に基づいて、所定期間内に前記受光信号が生成された回数であるレーザ出射回数をカウントし、
    前記レーザ制御部は、前記レーザ出射回数と予め設定された所定回数とを比較するとともに、前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  6. 請求項5に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記レーザ制御部は、前記レーザ出射回数と前記所定回数との比較を、前記所定期間内における複数の期間に対して実行し、
    前記所定回数は、
    前記所定期間のうち現在時刻から見て直近の第1期間においては一定に設定され、
    前記所定期間のうち前記第1期間以降の第2期間においては、時間を遡るにつれて大きくなるように設定される
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  7. 請求項6に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記所定期間は、複数の部分期間に分割され、
    前記レーザ制御部は、前記部分期間ごとに前記レーザ出射回数を集計し、
    前記レーザ制御部は、前記部分期間ごとに前記レーザ出射回数と前記所定回数とを比較するとともに、全ての前記部分期間において前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記筐体を取付可能に構成され、かつ前記載置台に対して前記筐体を位置決めするステージと、
    前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記筐体が前記ステージに取り付けられていることを示す信号を出力する取付センサと、を備え、
    前記レーザ制御部は、前記取付センサから出力された信号に基づいて前記筐体が前記ステージに取り付けられているか否かを判定するとともに、前記筐体が前記ステージに取り付けられていると判定されかつ前記レーザ出射回数が前記所定回数を下まわる場合に、前記励起光の生成が可能であると判定する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  9. 請求項5から8のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記筐体に取り付けられ、前記対物レンズを覆う保護カバーと、
    前記筐体を取付可能に構成され、かつ前記載置台に対して前記筐体を位置決めするステージと、
    前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記ステージに対する前記筐体の位置を検出する第1位置検出センサと、
    前記第1位置検出センサとは独立した状態で前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記ステージに対する前記筐体の位置を示す検出信号を出力する第2位置検出センサと、を備え、
    前記レーザ制御部は、前記第1および第2位置検出センサの双方から出力された前記検出信号に基づいて、前記筐体の位置が、前記保護カバーにより前記対物レンズが覆われている状態に対応した位置にあるか否かを判定し、該位置にあると判定された場合には、前記レーザ出射回数を非カウントとする
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  10. 請求項5から8のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記対物レンズまたは前記筐体に取付可能であり、該対物レンズを覆う保護カバーと、
    前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記保護カバーが取り付けられていることを示す検出信号を出力する第1カバー取付センサと、
    前記第1カバー取付センサとは独立した状態で前記レーザ制御部と電気的に接続され、前記保護カバーが取り付けられていることを示す検出信号を出力する第2カバー取付センサと、を備え、
    前記レーザ制御部は、前記第1および第2カバー取付センサの双方から検出信号が入力された場合には、前記レーザ出射回数を非カウントとする
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  11. 請求項4から10のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記載置台の上面に垂直な所定の基準軸に対し、前記導光光学系および前記対物レンズを一体的に傾斜させる傾斜機構と、
    前記基準軸に対する前記導光光学系および前記対物レンズの傾きを検出する傾斜センサと、を備え、
    前記レーザ制御部は、前記傾斜センサにより検出された傾きが所定の第1閾値を超える場合、前記励起光源による前記励起光の生成を不許可と判定する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  12. 請求項4から11のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    前記レーザ制御部は、前記指令生成部によって生成された前記指令と、前記モニタ受光部によって生成された受光信号と、の対応関係を判定し、1つの前記指令に対して複数の前記受光信号が生成された場合には、前記励起光源による前記励起光の生成を不許可と判定する
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載されたレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
    ベースと、
    前記ベースと接続され、該ベースに対して垂直な第1方向に延びるスタンドと、を備え、
    前記載置台は、前記ベースまたは前記スタンドによって支持され、
    前記筐体は、前記スタンドに接続される
    ことを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
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