JP2022168805A - 半田と腐食液を画材とした絵画的造形物の作成方法。 - Google Patents

半田と腐食液を画材とした絵画的造形物の作成方法。 Download PDF

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Abstract

【書類名】要約書【課題】簡素なのに繊細で斬新な絵画的表現の創出可能な絵画的造形物の作成方法を提供する。【解決手段】半田と濡れ性がある造形物、又は半田と濡れ性のある金属箔又は金属粉で被覆した造形物を画材として、その表面に半田を含む金属の薄板を貼付けて下地を構成し、その薄板の表面に半田溶融機器を用いて半田を溶融させて半田皮膜を形成し、その半田皮膜の表面に半田腐食液を塗布することで、腐食液と半田との化学反応で生ずる錆の色調及びそのグラデーションを利用し絵を描く絵画的造形物の作成方法である。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
本発明はキャンバス等の平面画材、又は三次元造形物を画材に、その構成材として半田と濡れ性のある金属板を貼付けその金属板表面に対し、又は金属箔又は金属粉で被覆させた三次元造形物表面に構図を想定しながら半田ゴテで半田を溶融させて微細な線や凹凸模様を描き、その金属表面に対し腐食液を絵具とし筆具で絵を描く絵画的表現技法に係る。
予め半田を溶融しながら粗描した半田表面に腐食液を単独ないしは複数用いて絵を描くと、半田表面が腐食液による化学反応(主に酸化反応)で起る微妙な発色変化から独特の色合いが生れる。腐食液の濃度や温度はもとより重ね塗りによるグラデーション、筆を運ぶ勢いの強弱など巧みに慣れ駆使することで、簡素で繊細且つ斬新な表現創出が可能な絵画的表現技法の発明に関する。
腐食液を用いた従来の技法
ステンドグラスの歴史は12世紀のフランスにはじまり,その製作に半田は必須な構成材であり、ステンドグラス(添付写真13)やガラスオブジェ(添付写真12)の製法として幅5mm厚さ0.03mm前後のテープ状銅箔(コパーテープ)をガラス片個々のカット面周辺に巻いて額状のフレームを作り双方を半田で溶接し接合させて製作するもので、その半田接合部は本来的に不必要な部分とも思えるが、ガラスの接着接合技術が格段に進歩した今も変わらない古典的接合技法である。
その細い半田の額縁を腐食液で黒又は茶褐色に着色させて全体にシックな統一感を添える半田着色技術はステンドグラス製作には必須の色付け方法として公知である。しかし、その腐食による着色技法は、あくまでも塗装であり絵画を意図したものではない。
また銅版画製版の一つである凹版技法(腐食技法)の典型であるエッチング技法も腐食液を利用する技法であるが、ここでいう腐食とは、銅板の絵を描く部分を塩化第二鉄水溶液や硝酸水溶液,クエン酸水溶液等の有機酸で腐蝕させて除去し凹部を作る方法で,その凹みにインクを注入して満たし紙に適度な圧力を加えて印刷する版画技法であり本発明とは異なる。またフォトエッチングによる色々な幾何学模様もあるが、これらも図形であり絵画的表現ではない。
また銅の腐食液(アンモニウム塩、塩基性炭酸塩等)による酸化反応で生じる鮮やかで落ち着いた青緑色を特徴とする着色技術は緑青として公知である。銅像や胸像、またそのレリーフとして、そしてお寺の屋根や装飾仏具、仏像等の修復技法として定着しており歴史的重厚さを感じさせる着色技法である。しかし、これらも絵画ではない。
また孔雀石の粉砕微粒子を顔料として用い銅の飾り物や仏像の初期の色付けとして利用し、その後長い年月を経て自然腐食が進み味わい深い青緑色に変化する緑青による着色は、自然現象を利用した銅板の防腐技術が主体であり、この色付けも絵ではない。
本発明の絵画的特徴
この絵画的表現技法の特徴を挙げれば、墨絵における山水画と同様に基調を成す色合いは限定されるが、半田と腐食液で起る化学反応で発色する微妙な色合いを見極めながら絵を描く点が従来の絵画と大きく異なる技法である。腐食液の種類とその濃度、重ね塗りして起る腐食液の化学変化、雰囲気の温度湿度によって発色も微妙に違ってくる。
色調変化が織り成す起伏感、明暗、光陰、立体感、遠近感、さらにマスキングテープやレジストを利用することで点と線の描写を強調して描くこともできる。構図に従い,半田を溶かして模様を描く際に使う半田ゴテは、コテ先形状が丸い形状に或いはピック状ないしはヘラ状に加工し筆具として使う。腐食液で既に描いた絵の上から半田ゴテを当て再溶融させて点や線を描き直し再度腐食液で絵付けすることでより繊細な表現創出も可能となる。
例えば市販ステンドグラス用腐食液のブラックパティーナは墨絵のような濃淡変化を表現するのに向いている。アンティークパティーナは偶然性を装う色表現として使い分け利用することができる。半田色のシルバーと下地金属、それにキャンバスと限られた構成の中で絵を表現するので絵画でいうポジティブ(主体)とネガティブ(背景)、明暗対比などを強調して描くことで計算通りの可能性の中にも偶然的な要因が加わり、この技法ならでの妙味と拡がりが期待できる。
還元作用のある準腐食液を図柄の要所要所に用いれば最初の腐食液で描いた色調にグラデーションを付加することも可能で、或いは半田の地色及び構成材を成す下地金属板の地色を加味した複合的表現も可能となる。一方で星々の輝き、高山から俯瞰する村々や遠方に点在する街並等の繊細な描写も金銀をはじめ、クロムやアルミニウム等の金属不動態微粒子を半田溶融個所に散り嵌めれば、その金属微粒子は腐食液で酸化しないのでより輝きのある独特な表現として描写することもできる。またキャンバスの麻布色等の余白は背景色ともなり本発明の絵画的表現技法を引き立てる一要素として活用できる。
そして平面作品と三次元造形物の作風には同一技法を特徴とした統一感があるので、それらの作品を組み合わせ配置することでインスタレーション(添付写真11)として更なる絵画的表現の可能性を広げることにも繋がる。
(注釈)還元作用のある準腐食液とは過酸化水素水、次亜塩素酸塩、熱水還元糖などの化学物質を指す。
課題を解決するための手段
下地を形成する金属板又は金属造形物は、半田と馴染む濡れ性のある金属であり、銅・亜鉛・スズ等の銅鏃元素とそれらの化合物からなり、無論それらの金属粉末でも利用できる。また金や銀を配合した合金も使用できる。アルミニウム鍋に半田を溶かし冷却後半田の薄板を造り、その薄板を適宜カッティングし使用しても良い。アルミニウムやチタニウム、クロム、モリブデン等の不動態を形成する金属を除けば、鉄、SUS304等のステンレス薄板でも利用できる。
三次元造形物が粘土や石膏で形成された物、また石や木等の造形物の場合には、下地金属として銅箔や銅の粉末を用いて被覆するのが簡便である。銅箔の厚みは0.03~0.1mm;銅の粉末粒子の粒度は描く構図により選択されるが使用上20μm~1000μmの範囲で使用される。
本発明に使用する半田について説明する。半田は合金で錫と鉛の比率が約6対4、5対5の半田が普及している。金属拡散係数の違いから高融点半田及び低融点半田に分かれるがどちらも利用できる。錫銅(Sn-Cu)系、錫銀(Sn-Ag)系の鉛フリー半田、及びスズ-ビスマス(Sn-Bi)系の低融点鉛フリー半田(融点約150度)でも温度調整機能付き半田ゴテなら簡便に利用できる。また用途に応じて微量の金や亜鉛等を配合した半田もある。
重金属のカドミウム、ゴールドなど異種金属を混ぜると融点降下現象で融点が下がり、それらの配合率は絵画を描く際の色調、質感に少なからず影響を与える。
半田の溶融機器としては、下地となる金属板が薄板ならば普通の半田ゴテで、厚板ならば熱伝導ロスを配虜し熱容量の大きい半田ゴテ、プロパンガストーチ、漏付け用アセチレンガスバーナー、電気溶接機器、その他の溶融機器として超音波やレーザー、IHによる鉄板誘導加熱機器で半田を溶融させながら図柄を粗描し、描く対象により、半田ゴテのコテ先形状は丸い形状或いは先の尖ったピック状に、線の表現に適したヘラ状の銅製のコテが好ましく熱伝導性はもとより安価で加工性にも優れている。
熱容量の小さい半田ゴテを用いて下地金属板に半田を溶融する場合、予め下地金属板を加熱しておけば半田が溶融し易くなる。
半田フラックスとしては、市販の工作用フラックス入り半田が簡便であるが、塩化アンモニウム・塩化亜鉛を主剤に精製水でゲル化させたフラックスや松ヤニなどの天然フラックスも利用できる。これらのフラッックスを用いることで、半田付け困難な金属の酸化被膜を除去し濡れ性を高めて半田を下地金属表面上に自在に溶融させることができる。その他の方法として、フラックスを使わずとも真空蒸着法で下地金属を半田蒸着して利用できる。
次に本発明に使用される半田腐食液について説明する。半田腐食液は半田表面が腐食液と化学反応(主に酸化反応)によって発色する茶褐色、黒色を基調とした色合いを利用する伝統的着色技術でステンドグラス製造に欠かせないアンティークパティーナで、硝酸や硫酸、希硫酸、そして酸化力の弱い塩酸等の化学剤を主剤とした化合物である。一方当然ながら触媒や酸化剤の選定はあるがアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物,アンモニウム塩,炭酸アンモニウム等の化学剤を腐食液として利用すれば半田は元より下地金属の銅や鉄でも化学反応で白地、青緑色、赤褐色の錆として発色させ利用できる。
そして市販品にはないが金箔を溶解させた腐食液で色付けすれば淡い黄金色に似た黄色も表現できる。また複雑な色合いを出すために、同系色でも反応速度(腐食液の濃度や温度に依存)の違いで起る色彩のグラデーションを巧みに利用し、その妙で質感が変化する蓋然性を考慮し下地金属(グランド)や腐食液の濃度、それらの温度は元より製作空間の温湿度管理、腐食液やフラックスを洗い流す洗浄液温度にも考慮し、水流による錆の剥落にも細心の注意が求められる。腐食後の作品表面には酸化防止用の油脂、透明のアクリルスプレーやアクリルニス等を塗布し作品を空気による二次的酸化から変色防止処理を施す必要がある。
本発明の実施例で使用した半田腐食液は発明の科学性、再現性を考慮し腐食液は市販の半田腐食液のブラックパティーナ、アンティークパティーナ、褐色パティーナ等のステンドグラス用半田腐食液を用いて描いた。白地は、敢えて漆喰塗料を主に利用して描いたが、市販の腐食液、例えばブラックパティーナの黒錆色の上からアルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物を酸化剤の過酸化水素水を用いて筆で塗り重ね、その化学反応で再腐食させれば漆喰と同じ白地を発色できる。またアルカリ金属の水酸化物と半田を反応させれば半田の組成特性から表面が白色化するので、漆喰塗料なしでも残雪や雪景色、白雲、そして曇り空として利用できる。
本発明の実施の形態
本発明の目的は、キャンバスとなる画材表面に金属の薄板を貼付けて下地を構成し、その下地を成す金属板表面を半田ごて等の半田溶融機機で構図と成る面に半田を溶融させながらその薄い皮膜で図柄を粗描し,又はその画材表面に半田板を貼付けその表面を溶融させて構図を描き、その半田表面に半田腐食液を絵具とし、腐食液と半田とで起る化学反応で生ずる錆(酸化皮膜)の色調及びそのグラデーションを利用し絵を半田表面上に描く絵画的表現技法を提供することにある。
そして本発明は、この絵画的技法を創出するためにキャンバスとなる画材の構成材を形成する下地金属(グランド)は半田板以外の材料として、半田と濡れ性をもつ金属で構成する必要がある。
さらにキャンバスとなる画材が三次元造形物である場合、その造形物は半田と濡れ性のある鉱石造形物又は金属造形物であり、或いは石や木などの天然造形物及びその加工造形物であり、又は石膏や粘土等で形成した造形物であって、その三次元造形物を半田と濡れ性のある金属箔や金属粉で被覆形成した造形物であり、その造形物に半田腐食液で絵を描く絵画的表現技法を提供することにある。
実施例を以下に列挙する
絵の表題:残雪の山(添付写真1)
1.キャンバスサイズF0(180×140mm)のキャンバスに厚さ0.06mmの銅箔テープをキャンバスの全面に貼り付ける。キャンンバスとの隙間に空気が入らないように擦って押し付けキャンバスと銅箔テープを密着させる。
2.フラックスはステンドグラス用フラックスH(タイトリ製)を銅箔に筆で満遍なく塗り半田小手(小手先5mm幅)で棒ハンダ(約25g×3mm・183℃融点)1本を使用。
キャンバス面積に対し約1本分を絵の構成を考えて凹凸で抑揚をつけながら全面に溶融させて質感を出す。
3.半田を塗り終わったら真鍮ブラシと家庭用液体洗剤で半田フラックスを綺麗に洗い流す。
《山を描く工程》
次に腐食液アンティークパティーナ(発売元がらすらんど)のステンドグラス用腐食液を水彩画用の筆で全面に塗って腐食させ、予め別の用紙にデザインした山のラインに沿って腐食した半田の上にマスキングテープを貼って塗らない部分を養生してから、山際にあたる箇所全体に黒に変色する腐食液ブラックパティーナEX(発売元がらすらんど)で色付け、アンティークパティーナの腐食色とグラデーションになるように色を作りながら絵がいていく。
マスキングテープを剥がし腐食液を水で洗い流し腐食の進行を止める。山の背景となるネガの部分に白い漆喰塗料を塗り、山と背景のコントラストをつける。腐食液が乾く前にアクリル塗料のマットコーティング材(ホルベイン工業)ジェルメディウムマット・アクリルつや消しメディウムを薄く刷毛で塗ると腐食液が化学反応で白く変色する効果を利用し、山に残雪がある様に化粧を施す。仕上げとして腐食保護オイルでコーティングし艶を出して完成。
絵の表題:雲海の山(添付写真2)
1.キャンバスサイズF5(352×273mm)に、厚さ0.06mmの銅箔テープをキャンバスの全面に貼り付ける。キャンバスに空気が入らないように擦って押さえてキャンバスと銅箔テープが剥がれないように密着させる。
2.ステンドグラス用フラックスH((株)タイトリ)を銅箔に筆で満遍なく塗り半田ゴテ(コテ先5mm幅)で、ステンドグラス制作用棒ハンダ1本(25g×3mmφ・183℃融点)をキャンバスの面積に対して約2本分63gを絵の構成を考えて凹凸で抑揚をつけながら全面に溶融させて山の質感を出す。仕上げは真鍮ブラシと洗剤でフラックスを洗い流す。
《山を描く工程》
あらかじめスケッチで描いた山の絵を参考に半田を溶融させて図柄を粗描し、水彩画用の筆を使いブラックパティーナで山稜を描き、次に山影もブラックパティーナで塗り潰す。ブラックパティーナが乾かないうちにステンドグラス用パティーナカラー褐色((株)タイトリ製)をブラックパティーナの黒と褐色がグラデーションになるように山全体に塗っていく。山の背景となる空の部分はアンティークパティーナを塗る。
腐食の進行を止めるため腐食液を水で洗い流しキッチンペーパーで優しく水分を拭き取る。色の微調整で綿棒に腐食液をつけ、少し擦りながら色を変えて、デッサンした山の形に整える。市販の腐食液では白色が出せないので、漆喰塗料で代替し空の部分を筆で少し腐食の色が残るようにランダムに塗り山の雲海にも漆喰を塗って余分な漆喰はティッシュペーパーで拭き取りながら調整をする。漆喰が自然乾燥したら完成。
絵の表題:枯れ葉1(添付写真3)
1.F0(180×140mm)のキャンバスに厚さ0.06mmの銅箔テープをキャンバスの全面に貼り付ける。キャンバスに空気が入らないように擦って押さえてキャンバスと銅箔テープを剥がれないように密着させる。
2.ステンドグラス用フラックス・Hをキャンバス一面に貼った銅箔に筆で満遍なく塗り半田ゴテ(コテ先5mm幅)でステンドグラス用棒ハンダ(25g×3mmφ・融点183℃)をキャンバス面積に対し約1本分を薄く溶融させて図柄を考えながら広げる。
コテ先1mmの半田ゴテで右左の葉の質感の違いを出す為に左側の葉の部分に、葉の中心から半田15gを葉脈の流れに沿ってランダムに盛っていく。右側は半田をフラットに溶融させた状態にする。葉に模した紙の型を葉の色付けしたい部分に置き、上からマスキングテープでキャンバス全体に貼っていき、カッターで紙の型に沿ってマスキングテープに切り込みを入れ紙の型を取り除く。
絵の表題:枯れ葉2(添付写真4)
腐食液アンティークパティーナ(発売元がらすらんど)を水彩画用の筆で上から3分の2程度塗る、乾く前にブラックパティーナEXを残りの3分の1に塗り2つの腐食液の境界線がグラデーションになるように塗る。
腐食の進行を止めるため面を水で洗い流し、キッチンペーパーで腐食部分が剥がれ落ちないように優しく水分を拭き取る。
実施例3で、半田をフラットに溶融させて右側と葉脈の方向に向かってランダムに凹凸をつけて半田を盛って左側のアンティークパティーナによる腐食液の色調が分かるように描いておく。
絵の表題:枯れ葉3(添付写真5)
水彩画用の筆で葉脈を描き足したい部分をフラックスで塗っておき、コテ先1ミリの半田ゴテで腐食した半田を再溶融させて葉脈を描くように半田の地色を出す。
アルコール系洗浄液(商品名マツムラメタルガラス洗浄液)で拭き取り、筆でアンティークパティーナを塗って葉色が褐色に近い3分の2の部分はブラックパティーナで、また半田の地色を出した部分にも塗っておく。ブラックパティーナで塗った葉色の残り3分の1は腐食液(タイトリ製)パティーナカラー銅色を塗り色に明暗差をつけて描く。腐食を止めるために水洗いし、キッチンペーパーで優しく水分を拭き取る。
絵の表題:枯れ葉4(添付写真6)
キャンバス全面に張り付けていたマスキングテープを剥がし、白い漆喰塗料を腐食で描いた葉の絵を残し筆で塗っていく。葉の部分も虫喰いを表現するために所々に円形に漆喰を塗る。
ドライヤーで漆喰を乾かしたら、もう一度漆喰を塗り足りない箇所に塗って色を調整し自然乾燥させて完成。
三次元造形物 表題:ロック(添付写真7)
適度な大きさの石(重量992g)を用意し、洗剤で付着物の汚れをブラシで落とし、キッチンペーパーで水気を拭き取りドライヤーで乾燥させる。銅箔テープ(幅5.08cm・厚み0.06mm・接着剤付)を繋ぎ目が多くならないように手で千切りながら石全体に貼り合わせシワを無くすよう擦って押さえ石と銅箔テープを密着させて内部の空気も押し出す。
石の面積に対して棒半田約2.5本分73gを、石の自然の凹凸を半田が邪魔して埋めないように薄く延ばし全面に半田を溶融させ終えたら真鍮ブラシと洗剤でフラックスを40℃前後のぬるま湯で洗い流しキッチンペーパーで優しく水分を拭き取る。
石の山際の約4分の1に腐食液のブラックパティーナを水彩画用の筆で塗る。腐食液が下の面にも垂れ流れるままにし、腐食液が乾かないうちにアンティークパティーナを残りの4分の3の面全体に塗ってアンティークパティーナとブラックパティーナの2種類の腐食液の境界線がグラデーションになるように塗る。
石の頭頂部はブラックパティーナの単色表現からアンティークパティーナによる色調変化によるグラデーションが自然岩の造形美を引き立てる。腐食の進行を止めるため水で腐食液を洗い流しキッチンペーパーで優しく水分を拭き取る。最後にパティーナ処理後、腐食防止に半田艶出しオイルを塗って完成。
三次元造形物 表題:まねき猫(添付写真8)
石粉粘土(パジコ石塑粘土ラドール500g・303101)で招き猫の立体造形物を作る。自然乾燥で表面が乾燥した4日後、カッターとサンドペーパーで細かな修正を加え、さらに7日間自然乾燥させる。乾燥終了後、防水加工と銅箔テープの密着を良くするため、水性ニス(パジコ水性ニスシーラー303217)を塗って乾燥させる。
テープ状の厚さ0.06mmの銅箔テープを適度な面積に千切りながら、招き猫の造形物全体に貼り合わせ、布切れなどで空気を押し出し、シワを伸ばし同時に造形物と銅箔テープを密着させる。
ステンドグラス用フラックスH(株式会社タイトリ)を貼った銅箔に筆で満遍なく塗り半田ゴテ(コテ先5mm幅)で半田1本約25g、サイズ3mmφ・融点183℃)で溶融させて全体に広げる。半田を塗り終わったら真鍮ブラシと洗剤でフラックスを洗い流す。
三次元造形物 表題:まねき猫(添付写真9)
色つけの第一段階で腐食液を塗らない半田の部分にマスキングテープを貼り付けておく。
三次元造形物 表題:まねき猫(添付写真10)
マスキングテープを貼った造形物に水彩画用の筆で、腐食液のブラックパティーナを耳の内側以外の箇所全てに塗って黒く変色したのを確認したら余分の腐食液を水洗いして流す。キッチンペーパーで腐食色が剥がれ落ちないように水気を優しく拭き取ったらマスキングテープを剥がし面相筆にブラックパティーナをつけ、目の黒目を描き、前掛けの部分に細かく線を描いてストライプ柄をつけ、同時に口元の線も描く。
パティーナカラー褐色(株式会社タイトリ)を綿棒につけ、耳の中と鼻を塗る。水で8倍に希釈したブラックパティーナを綿棒で半田の地色が出ている部分に塗り薄く色付けする。水で2倍に薄めたアンティークパティーナを綿棒につけ前掛けの部分や細かな色変化をつけたい部分につけ、腐食の進行を防ぐために水洗いしキッチンペーパーで優しく水分を拭き取る。最後に半田のつや出しフラックスの残渣を布切れで拭きオイルを塗って完成。
平面絵画と三次元造形物 表題:まねき猫と山(添付写真11)
実施例2と実施例10の作品を組み合わせ、平面的絵画と立体造形作品を空間的に配置しインスタレーションとして絵画化した。
発明の効果
本発明は半田表面に半田腐食液を絵具として絵を描く絵画的技法であるが、半田板に限らず、予め銅板や錫板、亜鉛,鉄板等の薄板を直接的に鍛金やプレス加工、そしてエッチング加工等の加工法で図柄を描き、次にその金属加工した下地金属板表面に半田を溶融させてコーティングすれば半田の湯流れでできる独特の質感・表情を半田腐食液で色付けし描くことで新規な絵画的レリーフを、或いは彫像や銅像、胸像に本発明の絵画的技法を応用し利用すればより写実性豊かな表現創出が可能となる。
本発明はキャンバス等の平面画材、又は三次元造形物を画材に、その構成材として半田と濡れ性のある金属板を貼付けその金属板表面に対し、又は金属箔又は金属粉で被覆させた三次元造形物表面に構図を想定しながら半田ゴテで半田を溶融させて微細な線や凹凸模様を描き、その金属表面に対し腐食液を絵具とし筆具で絵を描く絵画的造形物の作成方法に係る。
予め半田を溶融しながら粗描した半田表面に腐食液を単独ないしは複数用いて絵を描くと、半田表面が腐食液による化学反応(主に酸化反応)で起る微妙な発色変化から独特の色合いが生れる。腐食液の濃度や温度はもとより重ね塗りによるグラデーション、筆を運ぶ勢いの強弱など巧みに慣れ駆使することで、簡素で繊細且つ斬新な表現創出が可能な絵画的造形物の作成方法の発明に関する。
また銅版画製版の一つである凹版技法(腐食技法)の典型であるエッチング技法も腐食液を利用する技法であるが、ここでいう腐食とは、銅板の絵を描く部分を塩化第二鉄水溶液や硝酸水溶液,クエン酸水溶液等の有機酸で腐蝕させて除去し凹部を作る方法で,その凹みにインクを注入して満たし紙に適度な圧力を加えて印刷する版画技法であり本発明とは異なる。またフォトエッチングによる色々な幾何学模様もあるが、これらも図形であり絵画的造形物の作成方法ではない。
また銅の腐食液(アンモニウム塩、塩基性炭酸塩等)による酸化反応で生じる鮮やかで落ち着いた青緑色を特徴とする着色技術は緑青として公知である。銅像や胸像、またそのレリーフとして、そしてお寺の屋根や装飾仏具、仏像等の修復技法として定着しており歴史的重厚さを感じさせる着色技法である。しかし、これらも絵画的造形物の作成方法ではない。
また孔雀石の粉砕微粒子を顔料として用い銅の飾り物や仏像の初期の色付けとして利用し、その後長い年月を経て自然腐食が進み味わい深い青緑色に変化する緑青による着色は、自然現象を利用した銅板の防腐技術が主体であり、この色付けも絵画的造形物の作成方法ではない。
本発明の目的は、キャンバスとなる画材表面に金属の薄板を貼付けて下地を構成し、その下地を成す金属板表面を半田ごて等の半田溶融機機で構図と成る面に半田を溶融させながらその薄い皮膜で図柄を粗描し,又はその画材表面に半田板を貼付けその表面を溶融させて構図を描き、その半田表面に半田腐食液を絵具とし、腐食液と半田とで起る化学反応で生ずる錆(酸化皮膜)の色調及びそのグラデーションを利用し絵を半田表面上に描く絵画的造形物の作成方法を提供することにある。
そして本発明は、この絵画的造形物の作成方法を創出するためにキャンバスとなる画材の構成材を形成する下地金属(グランド)は半田板以外の材料として、半田と濡れ性をもつ金属で構成する必要がある。
さらにキャンバスとなる画材が三次元造形物である場合、その造形物は半田と濡れ性のある鉱石造形物又は金属造形物であり、或いは石や木などの天然造形物及びその加工造形物であり、又は石膏や粘土等で形成した造形物であって、その三次元造形物を半田と濡れ性のある金属箔や金属粉で被覆形成した造形物であり、その造形物に半田腐食液で絵を描く絵画的造形物の作成方法を提供することにある。
平面絵画と三次元造形物 表題:まねき猫と山(添付写真11)
実施例2と実施例10の作品を組み合わせ、平面的絵画と立体造形作品を空間的に配置しインスタレーションとし絵画的造形物を作成した。
本発明は半田表面に半田腐食液を絵具として絵を描く絵画的技法であるが、半田板に限らず、予め銅板や錫板、亜鉛,鉄板等の薄板を直接的に鍛金やプレス加工、そしてエッチング加工等の加工法で図柄を描き、次にその金属加工した下地金属板表面に半田を溶融させてコーティングすれば半田の湯流れでできる独特の質感・表情を半田腐食液で色付けし描くことで新規な絵画的レリーフを、或いは彫像や銅像、胸像に本発明の絵画的造形物の作成方法を応用し利用すればより写実性豊で表現創出可能な造形物となり産業上利用できる

Claims (3)

  1. キャンバスとなる画材表面に金属の薄板を貼付けて下地を構成し、その下地を成す金属表面の構図を成す面に半田溶融機器を用いて半田を溶融させて成す半田の溶融皮膜で図柄を粗描形成し、又はその画材表面に半田板を貼付け、その半田板表面を溶融させて図柄を粗描形成した面に、その半田表面に半田腐食液を絵具とし腐食液と半田との化学反応で生ずる錆の色調及びそのグラデーションを利用し絵を半田表面上に描く絵画的表現技法。
  2. キャンバスとなる画材の構成材を形成する下地金属は半田との濡れ性をもつ金属である請求項1に記載の絵画的表現技法。
  3. キャンバスとなる画材は三次元造形物であり、その三次元造形物は半田と濡れ性のある鉱石造形物又は金属造形物であり、又は石や木などの天然造形物物及びその加工造形物、及び石膏や粘土で形成した造形物であり、その造形物を金属箔や金属粉で被覆形成した造形物であって、その造形物外面に半田を溶融させて図柄を粗描し、その半田皮膜表面を半田腐食液で絵を描く請求項1に記載の絵画的表現技法。
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