JP2022168634A - フッ素樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低パーティクル性であり、高温耐久性に優れるフッ素樹脂成形品及びその製造方法を提供すること。【解決手段】実施形態によると、補強材に設けられた穴に、置き駒の一部を挿入することと、補強材から突出した置き駒の他の一部を、可動側金型側に取り外し可能な状態で固定することにより、可動側金型及び固定側金型の間に規定されるキャビティ内において補強材を保持することと、溶融系フッ素樹脂である第1フッ素樹脂をキャビティ内に流入させた後、第1フッ素樹脂を冷却して一次成形品を形成することと、置き駒と共に一次成形品を取り出すことと、補強材の穴から置き駒を取り外して、置き駒に対応する空間部を有する一次成形品を得ることと、一次成形品の空間部を、第2フッ素樹脂により封止することとを含むフッ素樹脂成形品の製造方法が提供される。【選択図】 図1
Description
本発明は、フッ素樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)のようなフッ素樹脂は、耐薬品性と耐熱性を有する。このため、PTFEから得られる成形品のうち、角槽などの一体槽は半導体や液晶の薬液洗浄工程で使用されたり、リング状等の丸ものがシリコンウェハを1枚ずつ洗浄するカップに使用される等、多岐に亘って使用されている。
PTFEからなる成形品は、内部に残留応力が残り易いため、反り及び撓みが生じ易いという特性を有する。それ故、従来、特許文献1に開示されているように、PTFEからなるフッ素樹脂成形品の内部に補強材が埋め込まれたものが使用されている。補強材が埋め込まれた成形品は、高温環境下においても、その変形を抑制することができる。
しかしながら、PTFEを圧縮成形してなるフッ素樹脂成形品は、本質的にパウダーを焼結させて構成されているため、溶融系フッ素樹脂からなる成形品と比較してパーティクル性に劣る傾向がある。一方で、近年の半導体の微細化に伴い、洗浄に使用される洗浄装置には極めて高い水準の低パーティクル性が要求されており、パーティクルを除去するための薬液も高温化している。
本発明は上記事情に鑑みてなされ、低パーティクル性であり、高温耐久性に優れるフッ素樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1側面によると、フッ素樹脂成形品の製造方法が提供される。フッ素樹脂成形品の製造方法は、補強材に設けられた穴に、置き駒の一部を挿入することと、可動側金型及び固定側金型を加熱することと、補強材から突出した置き駒の他の一部を、可動側金型側に取り外し可能な状態で固定することにより、可動側金型及び固定側金型の間に規定されるキャビティ内において補強材を保持することと、可動側金型及び固定側金型を型閉じして、溶融系フッ素樹脂である第1フッ素樹脂をキャビティ内に流入させた後、第1フッ素樹脂を冷却して一次成形品を形成することと、可動側金型及び固定側金型を型開きして、置き駒と共に一次成形品を取り出すことと、補強材の穴から置き駒を取り外して、置き駒に対応する空間部を有する一次成形品を得ることと、一次成形品の空間部を、第2フッ素樹脂により封止することとを含む。
本発明の第2側面によると、第1側面に係るフッ素樹脂成形品の製造方法により製造されるフッ素樹脂成形品が提供される。
本発明によれば、低パーティクル性であり、高温耐久性に優れるフッ素樹脂成形品及びその製造方法を提供することができる。
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法を、図1~図8を参照しながら以下に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法を、図1~図8を参照しながら以下に説明する。
図1及び図2に、フッ素樹脂成形品を射出成形により製造可能な射出成形用金型100を示す。射出成形用金型100は、固定側金型20及び可動側金型40を備える。図1は、固定側金型20と可動側金型40とが型開きを行っている状態を示す。図2は、固定側金型20と可動側金型40とが型閉じを行っている状態を示す。可動側金型40は、固定側金型20に対して近接及び離間する方向に移動可能に構成されている。固定側金型20と可動側金型40との間には、キャビティ50が規定される。キャビティ50は中空部である。
可動側金型40は、可動側取付板41、スペーサーブロック42a及び42b、可動側型板43、突出し板44及び突出しピン45a及び45bを備える。可動側取付板41にはスペーサーブロック42a及び42bが固定されている。スペーサーブロック42a及び42bには、可動側型板43が固定されている。可動側取付板41には、突出し板44が取付けられている。突出し板44には、突出しピン45a及び45bが固定されている。可動側型板43は、コアとしての凸部430を備える。可動側型板43には、可動側金型40が移動し得る方向に沿って貫通孔46a及び46bが設けられている。突出しピン45は、突出し板44から伸びており、貫通孔46a及び46bに挿通されている。突出しピン45は、射出成形後にキャビティ50内に形成される成形品を突出し可能に構成されている。なお、ここでは一例として突出しピンの数を2つとしているが、突出しピンの数は1つ又は2つ以上であり得る。
固定側金型20は、固定側取付板21、固定側型板22、スプルー23及びゲート24を備える。固定側取付板21には、固定側型板22が固定されている。固定側型板22は、凹部220を有する。固定側金型20と可動側金型40とが型閉じすることにより、固定側型板22の凹部220及び可動側型板43の凸部430との間には、これらの形状に対応したキャビティ50が規定される。
可動側型板43は、固定側型板22と接する可動側第1面43aを有している。固定側型板22は、可動側型板43と接する固定側第1面22aを有している。固定側金型20と可動側金型40とを型閉じした際に、可動側第1面43aと固定側第1面22aとが接する面をパーティングラインPLと呼ぶ。
スプルー23は、固定側取付板21及び固定側型板22を貫通する貫通孔である。ゲート24は、固定側型板22とその凹部220との境界における開口部である。ここでは、ゲート24がダイレクトゲートである場合を示しているが、固定側金型20は、例えばランナーを別途備えていてもよい。固定側金型内における、スプルー、ランナー及びゲート等の構成は、目的とするフッ素樹脂成形品の形状に応じて適宜変更することができる。
可動側型板43が備える貫通孔46aの一部には、置き駒取付部47aが設けられている。同様に、貫通孔46bの一部には、置き駒取付部47bが設けられている。
置き駒取付部47a及び47bは、後述する図3にも示しているように、貫通孔46a及び46bと一続きになった貫通孔であり得る。置き駒取付部47a及び47bは、貫通孔46a及び46bの或る部分から可動側第1面43a(パーティングラインPL)までに亘り逆テーパ状に拡径した半円錐形状を有する空間部を規定している。なお、置き駒取付部の形状は一例であり、後述する置き駒の機能を損なわなければその形状は限定されない。
置き駒取付部47a及び47bは、後述する図3にも示しているように、貫通孔46a及び46bと一続きになった貫通孔であり得る。置き駒取付部47a及び47bは、貫通孔46a及び46bの或る部分から可動側第1面43a(パーティングラインPL)までに亘り逆テーパ状に拡径した半円錐形状を有する空間部を規定している。なお、置き駒取付部の形状は一例であり、後述する置き駒の機能を損なわなければその形状は限定されない。
実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法は、上述した射出成形用金型100を用いて、例えば以下の通り行われる。当該フッ素樹脂成形品の製造方法について、更に図3~図8を参照しながら説明する。図3は、実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造に係る一工程を示す部分分解斜視図である。
まず、図3に示すように、補強材6に設けられた貫通孔6a及び6bに対して、それぞれ、置き駒31aの一部及び置き駒31bの一部を挿入する。貫通孔6a及び6bは、補強材6を貫通していない穴であってもよい。
補強材6は、最終的に得られるフッ素樹脂成形品に内包され得る部材である。フッ素樹脂成形品の内部に補強材6が内包されていることにより、フッ素樹脂成形品の反り及び撓み等の変形を抑制することができる。補強材6の全体がフッ素樹脂成形品に埋設されていることが好ましいが、補強材6の一部が露出していてもよい。
補強材6の形状は特に限定されないが、例えば、板状又は棒状でありうる。補強材6は、置き駒31の一部が挿入されうる少なくとも1つの穴を有する。キャビティ50内に保持される置き駒31の数は、特に制限はなく、1又は2以上であり得る。従って、フッ素樹脂成形品に内包される補強材の数は、1つであってもよく、2以上であってもよい。補強材6の材質は、例えば、金属、セラミック及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種でありうる。単一のフッ素樹脂成形品が、材質及び/又は形状が互いに異なる複数種類の補強材6を備えていてもよい。
置き駒31は、射出成形の際に、キャビティ50内に補強材6を保持しておくために使用される。前述した図1及び図2には、キャビティ50内に補強材6が保持されている状態を一例として示している。例えば図3に示しているように、置き駒31は、例えば雄螺子部を有する雄ねじである。具体的には、置き駒31は、頭部310、軸部311及び雄螺子部312を有する。一方、補強材6が有する貫通孔6a及び6bは、その内壁が雌螺子部を構成している。それ故、置き駒31の雄螺子部を補強材6の貫通孔6a及び6bに螺合させることができる。
置き駒31aの一部(ここでは雄螺子部312a)を補強材6の貫通孔6aに挿入することで、置き駒31aを補強材6に固定する。同様に、置き駒31bの一部(ここでは雄螺子部312b)を補強材6の貫通孔6bに挿入することで、置き駒31bを補強材6に固定する。置き駒31aの他の一部、即ち頭部310a及び軸部311aは、補強材6から突出している。また、置き駒31bの他の一部、即ち頭部310b及び軸部311bは、補強材6から突出している。置き駒31の軸部311の長さ(径方向と直交する長さ)が小さすぎると、射出成形時に、補強材6と可動側型板43との間に溶融した第1フッ素樹脂が回り込み難い可能性があるため好ましくない。
なお、本実施形態では、上記の通り置き駒31が雄ねじである場合を一例として記載しているが、射出成形の際にキャビティ50内に補強材6を保持することができれば、置き駒としては他の構成を有するものを使用してもよい。
続いて、可動側金型40及び固定側金型20の予熱を行う。特には、可動側型板43及び固定側型板22を加熱する。このとき、典型的には、可動側金型40及び固定側金型20を型閉じした状態で予熱を行う。可動側型板43及び固定側型板22の温度は、流入させるフッ素樹脂の組成に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば180℃~200℃の範囲内とする。
次いで、可動側型板43に設けられた置き駒取付部47a及び47bに対して、補強材6から突出した、置き駒31aの他の一部及び置き駒31bの他の一部を取り付ける。但し、この取付けは、射出成形後の工程において突出しピン45a及び45bの突出し動作により、補強材6と共に置き駒31を突き出すことができるように行われる。具体的には、補強材6から突出した置き駒31の頭部310a及び軸部311aのうち、頭部310aのみが置き駒取付部47に嵌め込まれる。頭部310aは、例えば、置き駒取付部47で規定される空間部に対応した形状を有している。頭部310aは置き駒取付部47に嵌合しているに過ぎないため、突出しピン45a及び45bの突出し動作により、置き駒31が置き駒取付部47から押し出されうる。言い換えれば、補強材6から突出した置き駒31の他の一部は、取り外し可能な状態で可動側型板43に固定されており、これにより補強材6がキャビティ50内に保持されている。
次いで、可動側金型40を固定側金型20と近接する方向に移動させる。可動側第1面43aと固定側第1面22aとを接触させることで、これら金型の型閉じを行う。そして、溶融系フッ素樹脂である第1フッ素樹脂を、図示しない射出成形機からスプルー23に流入させる。第1フッ素樹脂は、これが溶融状態となる温度まで加熱されている。溶融した状態の第1フッ素樹脂はスプルー23を通り、ゲート24を通過してキャビティ50内に流入する。キャビティ50内に流入した第1フッ素樹脂は、キャビティ50内に充填されつつ補強材6の周囲を取り囲む。
補強材6と可動側型板43とは置き駒31により連結した状態であり、置き駒31の軸部311はキャビティ50内において露出している。それ故、第1フッ素樹脂は、置き駒31の軸部311の部分を除いて補強材6を被覆する。溶融した状態の第1フッ素樹脂の温度と比較して、可動側型板43の温度及び固定側型板22の温度は低い。それ故、キャビティ50内に流入した溶融状態の第1フッ素樹脂は、金型との温度差により冷却されて固化する。こうして、第1フッ素樹脂からなる第1フッ素樹脂部を備える一次成形品を得る。
固化した一次成形品を突出しピン45により可動側型板43から突き出し、射出成形用金型100から一次成形品を取り出す。その後、必要に応じて、一次成形品に対してゲートカット、アニール処理及び切削加工等を施してもよい。こうして、図4に示す一次成形品11を得る。
ここで、第1フッ素樹脂について説明する。第1フッ素樹脂は、溶融系フッ素樹脂である。実施形態に係るフッ素樹脂成形品のうちの大部分は、第1フッ素樹脂からなる第1フッ素樹脂部で構成されている。それ故、フッ素樹脂成形品のうちの大部分が非溶融系フッ素樹脂で構成されている場合と比較して、成形品表面におけるパーティクル(不純物)の量を低減することができる。即ち、低パーティクル性に優れるフッ素樹脂成形品を得ることができる。
第1フッ素樹脂は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメトキシコポリマ(MFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選択される少なくとも一種である。第1フッ素樹脂は、これらフッ素樹脂のうちの一種類のみからなっていてもよく、二種類以上が混合してなるものであってもよい。フッ素樹脂成形品の高温耐久性、及び耐薬品性等を高める観点から、第1フッ素樹脂はPFAを含むことが好ましい。第1フッ素樹脂はPFAのみからなっていてもよい。
第1フッ素樹脂のメルトフローレートは、例えば2g/10min-50g/10minの範囲内にある。射出成形においては、流入させる樹脂のメルトフローレートを高めることにより、キャビティ内の隅々まで樹脂が行き渡り易くなる。樹脂の種類を変えること無しにメルトフローレートを高めるためには、当該樹脂の重量平均分子量を低減させることが有効である。
なお、図1及び図2では、金型として射出成形用金型を示しているが、実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法は、射出成形ではなく、トランスファ成形により行われてもよい。例えば、固定側金型にトランスファポットを用いて、トランスファポット内で第1フッ素樹脂を溶融させた後、プランジャーのピストン運動によりスプルーを通じて第1フッ素樹脂をキャビティ内に流入させてもよい。
図4は、得られる一次成形品11を概略的に示す部分切欠き断面図である。図4の(a)は、一次成形品11に対して置き駒31a及び31bが取り付けられた状態を示している。図4の(b)は、置き駒31aを一次成形品11から取り外した状態を示す部分切欠き拡大断面図である。一次成形品11はリブ2を備える。
上述の射出成形により、図4(a)に示す、置き駒が取り付けられた状態の一次成形品11が得られる。置き駒31aを取り外すと、図4(b)に示すように、空間部32aを有する一次成形品11が得られる。空間部32aは、一次成形品11に設けられた貫通孔11a、及び補強材6が備える穴6aからなる。貫通孔11aは、置き駒31aの軸部311aの形状に対応した形状を有する。穴6aは、置き駒31aの雄螺子部312aの形状に対応した形状を有する。つまり、空間部32aは、置き駒31aの軸部311aの形状及び雄螺子部312aの形状を合わせた形状に対応した空間である。
同様に、一次成形品11は、置き駒31bの軸部311bの形状、及び、雄螺子部312bの形状に対応した空間部32bを更に有する(図示していない)。
次に、図5~図8を参照しながら、一次成形品11が有する空間部32を、第2フッ素樹脂により封止する方法を説明する。一次成形品11が有する空間部が封止されることにより、フッ素樹脂成形品が得られる。図5は、空間部32aに対して第2フッ素樹脂からなるプラグ33Aを挿入し、熱プレスを施す手順を概略的に示している。図5(a)は、空間部32a及びその周辺を拡大して示す概略断面図である。図5(b)は、空間部32aに挿入したプラグ33Aに対して熱プレスを施す様子を概略的に示す断面図である。空間部32aに挿入されたプラグ33Aが溶融することにより、空間部32aの少なくとも一部が第2フッ素樹脂で満たされる。
封止に当たり、予め第2フッ素樹脂からなるプラグ33Aを作製する。プラグ33Aは、例えば、射出成形により別途作製することができる。プラグ33Aの形状は特に限定されないが、例えば、円柱形状の軸部331と、軸部331と比較して大きな径を有する頭部330とを備える。軸部331は、例えば、補強材6に設けられた穴6aに挿入可能な径及び長さで形成される。頭部330は、例えば、貫通孔11aに挿入可能な径及び長さで形成される。プラグ33Aは、空間部32aに対応した形状を有していることが好ましい。
プラグ33Aの頭部330は、リブ330a及び330bを有することが好ましい。プラグ33Aの軸部331は、リブ331aを有することが好ましい。頭部330及び軸部331がリブを有することで、プラグ33Aと空間部32aを規定している一次成形品11の内壁との間に隙間が生じるのを抑制することができる。なお、プラグ33Aはトルクによって空間部32により深く挿入可能な構成を有することが好ましい。例えば、プラグ33Aの頭部330の上面332には、図6に示すように六角レンチが嵌め込まれ得る凹部333を有することが好ましい。
図5(b)に示すように、プラグ33Aを空間部32aに挿入すると、少なくとも、リブ330a、330b及び331aの3箇所が空間部32aを規定する内壁と接触した状態となる。このように、プラグ33Aと空間部32aとが3箇所以上で接触していることにより、プラグ33Aによる空間部32aの封止を精度良く実施することができる。その後、プラグ33Aを熱プレスに供する。具体的には、プラグ33Aの上面332及び一次成形品11の上面110に対して、熱プレス板120を押し当て方向Pに沿って押し当てる。
熱プレスの条件は、プラグ33Aを構成する第2フッ素樹脂の種類に応じて適宜調整することができる。例えば、プラグ33AがPFAからなる場合には、熱プレス板120の温度を320℃~400℃とし、10秒~60秒に亘り、0.01MPa~0.6MPaの圧力で実施することができる。熱プレスの温度が高すぎるとフッ素樹脂が分解してしまうため、使用する第2フッ素樹脂の融点等を考慮して条件を調整する。熱プレスを行うことによりプラグ33Aが溶融して、空間部32aが、溶融した第2フッ素樹脂で満たされる。空間部32aの全体が第2フッ素樹脂で満たされることが好ましい。
空間部32aに挿入するプラグの形状は、図5及び図6に示す形状に限られない。プラグは、図7に示す形状を有していてもよい。図7に示すプラグ33Bは、その軸部331の形状を除いてプラグ33Aと同様の形状を有している。プラグ33Bの軸部331は、リブを有していないが、頭部330との結合箇所においてテーパ部331bを有している。
図7(a)に示す空間部32aにプラグ33Bを挿入すると、図7(b)に示すように、少なくとも、リブ330a、330b及びテーパ部331bの3箇所が空間部32aを規定する内壁と接触した状態となる。プラグ33Bと空間部32aとが3箇所以上で接触していることにより、プラグ33Bによる空間部32aの封止を精度良く実施することができる。その後、上述したプラグ33Aの場合と同様に熱プレスを実施する。
その後、熱プレス板120を一次成形品11の上面110に押し当てたまま放冷して、第2フッ素樹脂を固化させる。こうして、一次成形品11が有していた空間部32が、第2フッ素樹脂により封止されたフッ素樹脂成形品を得ることができる。フッ素樹脂成形品のうち第2フッ素樹脂で構成されている部分を第2フッ素樹脂部と呼ぶ。また、フッ素樹脂成形品のうち、上述した第1フッ素樹脂で構成されている部分を第1フッ素樹脂部と呼ぶ。
図8は、固化した第2フッ素樹脂部7a及びその周辺を概略的に示す断面図である。空間部32aを規定する内壁と第2フッ素樹脂部7aとの間には隙間が存在しないことが好ましい。また、プラグ33の頭部330の上面332(第2フッ素樹脂部7aの露出部)と、一次成形品11の上面110との境界部には段差が存在しないか、又はほぼ存在しないことが好ましい。言い換えると、当該境界部がフラットであることが好ましい。なお、第2フッ素樹脂による空間部の封止の後、フッ素樹脂成形品の少なくとも一部に切削を施してもよい。これにより、寸法精度を向上させたり、上記境界部の平面性を高めることができる。
第2フッ素樹脂は、前述した第1フッ素樹脂として使用可能な溶融系フッ素樹脂であってもよく、非溶融系フッ素樹脂であってもよい。即ち、第2フッ素樹脂は、例えば、PFA、MFA、ETFE、FEP、PVDF及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも一種である。第2フッ素樹脂は、これらフッ素樹脂のうちの一種類のみからなっていてもよく、二種類以上が混合してなるものであってもよい。
第2フッ素樹脂と第1フッ素樹脂とは、互いに異なる組成を有していてもよいが、同一の組成を有することが好ましい。これらを同一の組成とすることにより、熱プレス後において、プラグ33と一次成形品11との境界部の親和性が高くなり、より低いパーティクル性を得ることができる。一例によれば、第1フッ素樹脂及び第2フッ素樹脂は、いずれもPFAのみからなる。
図5~図8では、第2フッ素樹脂により空間部32を封止する方法として、第2フッ素樹脂からなるプラグを予め成形し、これを空間部32に挿入した後、熱プレスに供する方法を説明したが、空間部32を封止する方法はこれに限られない。例えば、第2フッ素樹脂からなる溶接棒を準備し、これを溶かして空間部32に流入させた後、溶融した第2フッ素樹脂を冷却して固化させてもよい。
以上に説明したフッ素樹脂成形品の製造方法によると、溶融系フッ素樹脂である第1フッ素樹脂からなる第1フッ素樹脂部と、第1フッ素樹脂部で規定される空間内に設けられ、穴を有する補強材と、第2フッ素樹脂からなり且つ前記穴内に充填される第2フッ素樹脂部とを備えるフッ素樹脂成形品が提供される。
当該フッ素樹脂成形品の少なくとも一部には補強材が内包されているため、フッ素樹脂成形品が補強材を備えていない場合と比較して高温耐久性に優れている。それ故、例えば、メルトフローレートを高める目的で第1フッ素樹脂の重量平均分子量を低減させた場合であっても、フッ素樹脂成形品の変形を抑制することができる。また、フッ素樹脂成形品のうち、少なくとも第1フッ素樹脂からなる部分(第1フッ素樹脂部)は、射出成形又はトランスファ成形が可能な溶融系フッ素樹脂で形成されている。それ故、成形品表面は滑らかであると共に、不純物としてのパーティクルが生じ難い。即ち、当該フッ素樹脂成形品は低パーティクル性である。
(第2実施形態)
第2実施形態によると、第1実施形態において説明したフッ素樹脂成形品の製造方法により成形され得るフッ素樹脂成形品が提供される。フッ素樹脂成形品の一例として、図9~図12に示す角槽1を挙げることができる。また、フッ素樹脂成形品の他の例として、図13~図14に示す枚葉式洗浄装置用カップ60を挙げることができる。但し、第2実施形態に係るフッ素樹脂成形品は、第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法で製造され得るフッ素樹脂成形品であれば、その種類は特に制限されない。
第2実施形態によると、第1実施形態において説明したフッ素樹脂成形品の製造方法により成形され得るフッ素樹脂成形品が提供される。フッ素樹脂成形品の一例として、図9~図12に示す角槽1を挙げることができる。また、フッ素樹脂成形品の他の例として、図13~図14に示す枚葉式洗浄装置用カップ60を挙げることができる。但し、第2実施形態に係るフッ素樹脂成形品は、第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法で製造され得るフッ素樹脂成形品であれば、その種類は特に制限されない。
図9~図12には、角槽1を示す。角槽1は、例えば容器構造を有し得る。具体的には、角槽1は、矩形の底板4と、底板4の主面と直交する方向に延出しており且つ枠状に設けられた壁部3a~3dと、壁部3a~3dの端部の周囲を囲むように設けられたリブ2とを備える。図9は、一実施形態に係るフッ素樹脂成形品としての角槽1を概略的に示す斜視図である。図12は、図9に示す角槽1の上面を概略的に示す平面図である。なお、X軸方向及びY軸方向は互いに直交する方向であり、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に対して直交する方向である。
角槽1の底板4はX軸方向及びY軸方向に伸びており、壁部3はZ軸方向に伸びている。また、リブ2は壁部3の端部であって、角槽1の開口端からX軸方向及びY軸方向に沿って伸びている。
角槽1において、底板4、壁部3、及び、リブ2の一部は第1フッ素樹脂部からなる。図12に示しているように、枠状に設けられたリブ2の四辺には、それぞれ補強材6が埋設されている。ここでは一例として、補強材6が所定厚みを有する矩形の板である場合を示している。補強材6の一部は、フッ素樹脂成形品に埋設されていなくてもよい。即ち、補強材6の一部は露出していてもよい。しかしながら、補強材6の全体がフッ素樹脂成形品に埋設されていることが好ましい。
リブ2のX軸方向に沿った概略断面図を図10に示す。図10は、図9に示す角槽1のX-X線に沿った概略断面図である。細長い板状の補強材6は、角槽1の短辺方向に沿って埋設されている。補強材6は、角槽1の製造時に置き駒の一部が挿入されうる2つの穴6a及び6bを有している。また、角槽1は、これら穴と連通しており、且つ、これら穴から角槽1の上面110までを貫通する貫通孔11a及び11bを有している。但し、穴6a及び貫通孔11aからなる空間部32aは第2フッ素樹脂部7aで充填されている。また、穴6b及び貫通孔11bからなる空間部32bは、第2フッ素樹脂部7bで充填されている。
角槽1の他方の短辺における第2フッ素樹脂部7h及び7gも、上述の第2フッ素樹脂部7a及び7bと同様に、製造時に使用される置き駒の一部に対応した形状を有している。また、角槽1の一方の長辺における第2フッ素樹脂部7c及び7d、並びに、他方の長辺における第2フッ素樹脂部7e及び7fについても、製造時に使用される置き駒の一部に対応した形状を有している。
図11は、図9に示す角槽1のXI-XI線に沿った概略断面図である。補強材6はリブ2内に内包されている。補強材6は、リブ2を構成する各壁面、即ち角槽1の内壁、上面110、リブ2の下端、及び、リブ2のX軸方向における端面等から所定の距離を空けて埋設されている。このように、補強材は、第1フッ素樹脂による射出成形で形成される第1フッ素樹脂部で規定される空間内に位置している。
角槽1は、リブ2内に補強材6を備えるため、槽の開口端における壁部の変形を抑制することができる。つまり、角槽1は高温耐久性に優れている。また、第1フッ素樹脂部は溶融系フッ素樹脂からなるため、角槽1のパーティクル性は低い。
角槽1を構成する各部位にて、その厚さは3mm以上であることが望ましい。
図9~図12に示す角槽では、リブ内に補強材を備える場合を説明したが、補強材は底板及び/又は壁部(側壁)の内部に埋設されていてもよい。また、ここでは単槽を例にして説明したが、これに限られず、二重槽、単槽内を複数の空間に分割したもの、丸槽、三角槽及び多角形状の槽等に適用することができる。
次に、フッ素樹脂成形品の他の例である枚葉式洗浄装置用カップ60について、図13及び図14を参照しながら説明する。図13は、カップ60の上面を概略的に示す平面図である。図14は、図13に示すカップ60のXIV-XIV線に沿った概略断面図である。カップ60は、例えば、前述した第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法により製造することができる。
カップ60は、円環状の壁面61と、壁面61から延出する上部壁面62と、上部壁面62に設けられた貫通孔64とを備える。円環状の壁面61は、Z軸方向に沿って伸びる筒状の壁面である。上部壁面62は、壁面61の上端から、少なくともX軸方向及び/又はY軸方向に延出する壁面である。貫通孔64は、壁面61と同心円状の外縁を有しており、且つ、上部壁面62の一方の面から他方の面までを貫通している。図示していないが、カップ60の内側には、例えば被洗浄物としての半導体ウェハが設置される。そして、半導体ウェハの表面上には、貫通孔64を通じて、ウェハを洗浄するための薬液が供給されうる。
円環状の壁面61には、この円環に沿って補強材6が内包されている。補強材6としては、フッ素樹脂成形品の高温耐久性を高めることができるものであればその材質や形状は特に制限されないが、ここでは一例として、補強材6はステンレス鋼からなるリングである。前述の通り、補強材の数は複数であってもよい。複数の補強材として、例えば、リング状部材を複数個に分割したものを使用することができる。
図14に示すように、カップ60が備える補強材6は、穴6a及び6bを備える。図示していないが、上面図を示している図13において第2フッ素樹脂部7c及び7dに対応した位置には、それぞれ補強材6の穴6c及び6dが存在している。即ち、補強材6は、4つの穴6a~6dを備える。これら穴は、射出成形の際に置き駒を用いて補強材6をキャビティ内に保持しておくために使用される。また、補強材6が有する4つの穴6a~6dのそれぞれから、カップ60の底面65までに亘り、貫通孔60a~60dが存在している(但し、60c及び60dは図示されていない)。
補強材6が有する4つの穴6a~6dのそれぞれと、4つの貫通孔60a~60dのそれぞれとは、射出成形時に使用する置き駒の形状に対応した空間部32a~32dを構成している。空間部32a~32dには、いずれも、第1実施形態に係るフッ素樹脂成形品の製造方法における封止工程が実施されることにより、第2フッ素樹脂部7a~7dが充填されている。従って、カップ60は、4つの第2フッ素樹脂部7a~7dを備えている。
カップ60において、補強材6及び第2フッ素樹脂部7a~7dで構成されている部分を除いた部分は、第1フッ素樹脂部で構成されている。
カップ60の寸法は特に制限されないが、例えば以下に示す通りである。カップ60の外径は、例えば250mm~800mmの範囲内にある。カップ60の内径は、例えば205mm~550mmの範囲内にある。カップ60の高さは、例えば60mm~200mmの範囲内にある。
カップ60は、円環状の壁面61に沿って補強材6が内包されているため、壁面61が高温環境に晒されたり、壁面61に高温の薬液が付着したりする場合であっても、当該壁面61の変形を抑制することができる。即ち、カップ60の高温耐久性は優れている。また、第1フッ素樹脂部は溶融系フッ素樹脂からなるため、カップ60のパーティクル性は低い。
上述した本実施形態に係るカップ60では、円環状の壁面61内に補強材が内包されている場合を示しているが、補強材の位置は壁面61内に限定されない。例えば、補強材は、上部壁面62の内部に位置していてもよい。
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…角槽、2…リブ、3…壁部、4…底板、6…補強材、7…第2フッ素樹脂部、11…一次成形品、11a、11b…貫通孔、20…固定側金型、21…固定側取付板、22…固定側型板、23…スプルー、24…ゲート、31…置き駒、32…空間部、33…プラグ、40…可動側金型、41…可動側取付板、42a、42b…スペーサーブロック、43…可動側型板、44…突出し板、45…突出しピン、46a、46b…貫通孔、47…置き駒取付部、50…キャビティ、60…枚葉式洗浄装置用カップ、61…壁面、62…上部壁面、64…貫通孔、65…底面、100…射出成形用金型、120…熱プレス板、310…頭部、311…軸部、312…雄螺子部。
Claims (8)
- 補強材に設けられた穴に、置き駒の一部を挿入することと、
可動側金型及び固定側金型を加熱することと、
前記補強材から突出した前記置き駒の他の一部を、前記可動側金型側に取り外し可能な状態で固定することにより、前記可動側金型及び前記固定側金型の間に規定されるキャビティ内において前記補強材を保持することと、
前記可動側金型及び前記固定側金型を型閉じして、溶融系フッ素樹脂である第1フッ素樹脂を前記キャビティ内に流入させた後、前記第1フッ素樹脂を冷却して一次成形品を形成することと、
前記可動側金型及び前記固定側金型を型開きして、前記置き駒と共に前記一次成形品を取り出すことと、
前記補強材の前記穴から前記置き駒を取り外して、前記置き駒に対応する空間部を有する前記一次成形品を得ることと、
前記一次成形品の前記空間部を、第2フッ素樹脂により封止することと
を含む方法によりフッ素樹脂成形品を製造する方法であって、
前記フッ素樹脂成形品は、
前記第1フッ素樹脂からなる第1フッ素樹脂部と、
前記第1フッ素樹脂部で規定される空間内に設けられ、前記穴を有する前記補強材と、
前記穴内に充填され、前記第2フッ素樹脂からなる第2フッ素樹脂部と
を備えるフッ素樹脂成形品の製造方法。 - 前記第1フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメトキシコポリマ、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ及びポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
- 前記第2フッ素樹脂は、パーフルオロアルコキシアルカン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメトキシコポリマ、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
- 前記第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂は、互いに同一の組成を有する請求項1~3の何れか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
- 前記第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂は、何れもパーフルオロアルコキシアルカンのみからなる請求項1~4の何れか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
- 前記補強材は、金属、セラミック及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1~5の何れか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。
- 前記封止は、
前記第2フッ素樹脂からなり、前記置き駒に対応した形状を有するプラグを準備することと、
前記プラグを前記一次成形品の前記空間部に挿入することと、
前記プラグに熱プレス板を押し当てることにより前記プラグを溶融させて、前記空間部の少なくとも一部を前記第2フッ素樹脂で充填することと、
前記第2フッ素樹脂を冷却して第2フッ素樹脂部を形成することと
を含む方法によりなされる請求項1~6の何れか1項に記載のフッ素樹脂成形品の製造方法。 - 請求項1~7の何れか1項に記載の製造方法により製造されるフッ素樹脂成形品。
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