JP2022166335A - 断熱部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】断熱部材の製造工程を簡素化できる、技術を提供する。【解決手段】無機粒子の集合体である板状の芯材を外包材で真空封止し、前記芯材と前記外包材を含む真空断熱材を得る工程と、前記真空断熱材を第1型と第2型の間に配置し、前記第1型の第1曲面と前記第2型の第2曲面に沿って前記芯材及び前記外包材を曲げ成形する工程とを含む、断熱部材の製造方法。【選択図】図1
Description
本開示は、断熱部材の製造方法に関する。
従来、車両の室内の温度を一定に保つべく、車両の天井などに断熱部材が設置されている。断熱部材は、芯材と、芯材を真空封止する外包材とを含む。芯材として、一般的に、ガラス繊維の集合体を、圧縮成形したものが用いられる。外包材としては、第1シートと第2シートの周縁同士を熱溶着して得られる袋等が用いられる。
特許文献1には、芯材を第1シート材と第2シート材とで挟んで真空封止する前に、芯材と第1シート材と第2シート材とを別々にプレス機で曲げ成形する技術が開示されている。芯材は、樹脂バインダーにより結合した繊維の集合体を、圧縮成形したものが用いられる。
特許文献1によれば、芯材を真空封止する前に、芯材と第1シート材と第2シート材とを別々にプレス機で曲げ成形する。それゆえ、断熱部材の製造工程の工程数が多かった。
本開示の一態様は、断熱部材の製造工程を簡素化できる、技術を提供する。
本開示の一態様に係る断熱部材の製造方法は、
無機粒子の集合体である板状の芯材を外包材で真空封止し、前記芯材と前記外包材を含む真空断熱材を得る工程と、
前記真空断熱材を第1型と第2型の間に配置し、前記第1型の第1曲面と前記第2型の第2曲面に沿って前記芯材及び前記外包材を曲げ成形する工程とを含む。
無機粒子の集合体である板状の芯材を外包材で真空封止し、前記芯材と前記外包材を含む真空断熱材を得る工程と、
前記真空断熱材を第1型と第2型の間に配置し、前記第1型の第1曲面と前記第2型の第2曲面に沿って前記芯材及び前記外包材を曲げ成形する工程とを含む。
本開示の一態様によれば、断熱部材の製造工程を簡素化できる。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、各図面において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向であって、X軸方向及びY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
図1に示すように、断熱部材の製造方法は、例えば、真空封止(S1)と、加熱(S2)と、曲げ成形(S3)と、冷却及び固化(S4)とを含む。なお、製造方法は、図1の全ての工程を含まなくてもよく、少なくとも真空封止(S1)と曲げ成形(S3)とを含めばよい。また、工程の順番は、図1の順番に限定されない。以下、各工程について説明する。
図1の真空封止(S1)では、図2A及び図2Bに示すように、板状の芯材1を外包材2で真空封止し、芯材1と外包材2を含む真空断熱材3を得る。外包材2の内部の気圧は、例えば1000Pa以下、好ましくは500Pa以下、より好ましくは100Pa以下である。また、外包材2の内部の気圧は、例えば1Pa以上、好ましくは3Pa以上である。
真空断熱材3の形状は、特に限定されないが、例えば平板状であって、平面視矩形状である。また、真空断熱材3の面内に、不図示の開口部(例えば、窓部や室内灯設置部)が設けられていてもよい。開口部は、真空断熱材3を厚さ方向に貫通する。
芯材1は、無機粒子の集合体である。芯材1は、無機粒子を主成分とする粉体を、圧縮成形したものである。芯材1は、通常、平板状に成形される。芯材1に占める無機粒子の含有率は、例えば50質量%~100質量%、好ましくは70質量%~99質量%、より好ましくは80質量%~98質量%である。無機粒子は、例えばヒュームドシリカを含む。ヒュームドシリカは、アモルファスシリカの微粒子であり、球状で緻密な一次粒子からなる。ヒュームドシリカは、例えば、四塩化ケイ素の燃焼加水分解によって製造される。
ヒュームドシリカは極めて微細な粉末であるため、粒の大きさを表す指標としては通常比表面積が用いられる。ヒュームドシリカの比表面積は、例えば50m2/g~400m2/g、好ましくは100m2/g~350m2/g、より好ましくは200m2/g~300m2/gである。比表面積は、窒素吸着法(BET法)により測定される。
ヒュームドシリカの具体例として、例えば、アエロジル200(比表面積200m2/g、日本アエロジル社製)、アエロジル300(比表面積300m2/g、日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL M-5(比表面積200m2/g、キャボットジャパン社製)、CAB-O-SIL H-300(比表面積300m2/g、キャボットジャパン社製)、又はレオロシールQS30(比表面積300m2/g、トクヤマ社製)を例示できる。ヒュームドシリカの種類は、1つでもよいし、複数でもよい。
無機粒子は本実施形態ではヒュームドシリカのみを含むが、本開示の技術はこれに限定されない。
例えば、無機粒子は、ヒュームドシリカに代えて、又はヒュームドシリカに加えて、多孔質シリカを含んでもよい。多孔質シリカの比表面積は、例えば100m2/g~800m2/g、好ましくは200m2/g~750m2/g、より好ましくは300m2/g~700m2/gである。多孔質シリカの気孔率は、例えば60%~90%、好ましくは65%~85%、より好ましくは70%~80%である。気孔率は、窒素吸着法(BET法)により測定される。
また、無機粒子は、シリカに加えて、輻射抑制材を含んでもよい。輻射抑制材は、赤外光を反射するか、又は赤外光を一旦吸収し、等方的に再放射する。これにより、芯材1を厚さ方向に貫通する赤外光の総量を減少でき、輻射伝熱を抑制できる。輻射抑制材は、芯材1中に均一に分散される。輻射抑制材としては、例えば、金属粒子(アルミニウム粒子、銀粒子、金粒子等)、無機粒子(グラファイト、カーボンブラック、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等)を例示できる。輻射抑制材の種類は、1つもでよいし、複数でもよい。
芯材1は、無機粒子に加えて、更に無機繊維を含む。無機繊維は、芯材1の保形性を向上する。芯材1に占める無機繊維の含有率は、例えば2質量%~30質量%、好ましくは4質量%~20質量%である。無機繊維としては、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ繊維、グラスウール、グラスファイバー、ロックウール、スラグウール、炭化ケイ素繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、シリカ・アルミナ・マグネシア繊維、シリカ・アルミナ・ジルコニア繊維、シリカ・マグネシア・カルシア繊維が挙げられる。これらの中でも、価格や安全性等の点から、グラスファイバー、ロックウール、又はシリカ・マグネシア・カルシア繊維が好ましい。
無機繊維の平均繊維長は、1mm~10mmが好ましい。ここで、平均繊維長とは、繊維長D50、すなわち、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が50%となる点の繊維長を意味する。平均繊維長が下限値以上であることで、真空断熱材の強度を高められる。一方、平均繊維長が上限値以下であることで、無機粒子との混合性が向上し、均一な芯材組成にできる。平均繊維長は、より好ましくは2mm~5mmである。
無機繊維の繊維長D30は、例えば100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは500μm以上である。「繊維長D30」とは、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が30%となる点の繊維長を意味する。繊維長分布は、光学顕微鏡で観察した写真において無作為に50本以上の繊維の長さを測定して得られる頻度分布及び累積個数分布曲線で求められる。
無機繊維の繊維長D90は、例えば20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。「繊維長D90」とは、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が90%となる点の繊維長を意味する。
無機繊維の繊維径(直径)は、例えば20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。無機繊維の繊維径は、例えば1μm以上、好ましくは3μm以上である。
芯材1は本実施形態では無機粒子と無機繊維のみを含むが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、芯材1は、無機繊維に代えて、又は無機繊維に加えて、無機バインダを含んでもよい。無機バインダとしては、例えば、ケイ酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムを例示できる。これらの中でも、断熱性に優れる点から、ケイ酸ナトリウムが特に好ましい。無機バインダの種類は、1つでもよいし、複数でもよい。
芯材1は、有機物を含んでもよいが、少なくとも熱硬化性樹脂あるいは低分子のガスを発生する熱可塑性樹脂を含まないことが好ましい。熱硬化性樹脂は、加熱により重合する高分子であるが、未反応の低分子をも僅かに含む。低分子は、経時的にガスを放出し、外包材2の内部の真空度を悪化させてしまい、断熱性を低下させてしまうためである。なお、本実施形態の芯材1の構成材料は、有機物を含まない。
外包材2は、第1シート21と第2シート22の周縁同士を熱溶着して得られる。以下、図3を参照して、第1シート21の構成について説明する。第2シート22は第1シート21と同様に構成されるので、第2シート22の説明は省略する。
第1シート21は、外包材2の内側から外側に向けて、熱溶着層23と、ガスバリヤ層24と、保護層25とをこの順で有する。なお、第1シート21は、芯材1を外包材2で真空封止できればよく、少なくともガスバリヤ層24を有していればよい。第1シート21の層の数は、3つには限定されず、1つ、2つ、又は4つ以上でもよい。
熱溶着層23は、例えば熱可塑性樹脂で形成され、熱で溶融した状態で第2シート22に押し付け、接着する。熱溶着層23の材料は、例えば、低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、無延伸ポリエチレンテレフタレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又はエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等である。
ガスバリヤ層24は、例えば金属又は金属酸化物で形成され、ガスの通過を防止する。金属としてはアルミニウムが例示され、金属酸化物としてはアルミナ又はシリカが例示される。ガスバリヤ層24は、箔の形態で保護層25に圧着してもよいし、保護層25の表面に蒸着によって形成されてもよい。
保護層25は、ガスバリヤ層24の損傷を防止し、外包材2の内部の真空度の悪化を抑制する。保護層25は、詳しくは後述するが、熱可塑性樹脂で形成される。真空断熱材3のスプリングバックは、芯材1のスプリングバックと、外包材2のスプリングバックとを両方含む。
保護層25の材料は、熱溶着層23の材料よりもガラス転移温度の高い材料であり、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,6とナイロン6の共重合体等)、又はポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)である。
先ず、図2Aに示すように、芯材1と外包材2を準備する。外包材2の4辺のうち3辺は、予め熱溶着される。芯材1は、外包材2の残りの1辺から外包材2の内部に挿入される。その後、芯材1と外包材2は、不図示の真空容器の内部に設置される。真空容器の内部を減圧しながら、図2Bに示すように、一対のヒートシーラー71、72で外包材2の残りの1辺を熱溶着し、芯材1を外包材2で真空封止し、真空断熱材3を得る。
真空断熱材3の厚みT1は、例えば2mm~5mm、好ましくは2mm~4mmである。真空断熱材3の芯材1は、主に無機粒子で構成されるので、主にガラス繊維で構成される場合と比較して、厚みのばらつきが小さく、厚みの薄化が容易である。真空断熱材3の厚みが薄いので、真空断熱材3の曲げ成形が容易であり、例えば部分的に曲率半径10mm程度の急激な曲げ成形も真空リークなく達成可能である。
図1の加熱(S2)では、真空断熱材3のスプリングバックを抑制すべく、図2Cに示すように、外包材2の熱可塑性樹脂層を加熱する。加熱対象の熱可塑性樹脂層は、主に保護層25であるが、保護層25と熱溶着層23の両方であってもよい。保護層25等の熱可塑性樹脂層を室温に戻すことなく高温のまま曲げ成形(S3)に供すれば、熱可塑性樹脂層を塑性変形できる。それゆえ、金属や金属酸化物からなるガスバリヤ層24を含む真空断熱材3を曲げ成形した場合でも外包材2が破断せず、ガスバリヤ機能を保持できる。その結果、例えば部分的に曲率半径10mm程度の急激な曲げ成形も真空リークなく達成可能となる。
真空断熱材3は、例えば、図2Cに示すように、上下一対の加熱源81、82の間に水平に配置される。上下一対の加熱源81、82は、それぞれ、例えば、遠赤外線ヒータを含む。遠赤外線ヒータは、X軸方向に平行な棒状であって、Y軸方向に間隔をおいて複数本配置される。加熱源81、82のX軸方向寸法は、好ましくは芯材1のX軸方向寸法以上である。また、加熱源81、82のY軸方向寸法は、好ましくは芯材1のY軸方向寸法以上である。
真空断熱材3は、外部から加熱される。真空断熱材3の最外層は保護層25であるので、保護層25の温度が最も高い。保護層25の加熱温度は、例えば50℃以上、好ましくは65℃以上である。保護層25の加熱温度が50℃以上であれば、保護層25を塑性変形できる。また、保護層25の加熱温度は、例えば100℃以下、好ましくは85℃以下である。保護層25の加熱温度が100℃以下であれば、熱溶着層23の溶融を防止でき、外包材2の内部の真空度の悪化を防止できる。
表1に、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgと、融点を示す。
図1の曲げ成形(S3)では、図2Dに示すように、真空断熱材3を第1型91と第2型92の間に配置し、第1型91の第1曲面93と第2型92の第2曲面94に沿って芯材1及び外包材2を曲げ成形する。第1曲面93及び第2曲面94は、可展面(developable surface)であってもよいが、本実施形態では可展面ではなく、三次元曲面である。第1曲面93及び第2曲面94は、製品である断熱部材の用途に応じた形状であればよい。断熱部材の用途は、特に限定されないが、例えば車両の内装材である。
第1型91及び第2型92は、樹脂型、金型、及び木型のいずれでもよい。第1型91は、第2型92の上方に配置される。第1型91は、第1曲面93を下に向けて、第1取付盤95の下面に取り付けられる。一方、第2型92は、第2曲面94を上に向けて、第2取付盤96の上面に取り付けられる。第1取付盤95は可動盤であり、第2取付盤96は固定盤である。第1取付盤95は、第2取付盤96の上方にて昇降する。第1取付盤95と、第2取付盤96とは、プレス機97を構成する。プレス機97は、第1取付盤95を下降し、第1型91を下降させ、真空断熱材3を第2型92に押し付ける。
本実施形態によれば、芯材1及び外包材2を同時に曲げ成形するので、曲げ成形の回数を従来よりも低減でき、断熱部材の製造工程を簡素化できる。また、芯材1は主に無機粒子で構成されるので、無機粒子同士が曲げ応力を吸収するように滑る。それゆえ、曲げ成形(S3)後に、芯材1のスプリングバックを抑制できる。更に、無機粒子は小さいので、複雑な三次元曲面の曲げ成形が可能である。これらの効果は、図1の加熱(S2)の有無に関係なく得られる。
また、図1の曲げ成形(S3)では、熱で軟化した保護層25を、第1曲面93及び第2曲面94に沿って塑性変形する。保護層25が塑性変形するので、保護層25の弾性復元力がほとんど生じない。
図1の冷却及び固化(S4)では、図2Dに示すように、第1曲面93及び第2曲面94で真空断熱材3を押さえた状態で、保護層25を冷却し、固化する。保護層25の弾性復元力がゼロの状態で、保護層25の表面形状を第1曲面93及び第2曲面94の形状に固定できる。固化した保護層25が芯材1のスプリングバックを押さえるので、芯材1のスプリングバックが小さい。
保護層25の固化後、プレス機97は、第1取付盤95を上昇し、第1型91を上昇させる。その後、第1型91と第2型92の間から、図2E及び図4に示す曲面形状の真空断熱材3が、製品である断熱部材として、取り出される。
ところで、本実施形態によれば、図1に示すように、曲げ成形(S3)の前に、加熱(S2)を実施する。曲げ成形(S3)の間に加熱(S2)を実施してもよいが、その場合、第1型91及び第2型92を介して保護層25を加熱するので、第1型91及び第2型92も加熱することになる。
曲げ成形(S3)の前に加熱(S2)を実施すれば、保護層25を加熱するのに第1型91及び第2型92を加熱せずに済む。保護層25の熱は第1型91及び第2型92に速やかに吸収され、保護層25が速やかに固化される。保護層25を短時間で冷却でき、製品の製造サイクルを短縮できる。第1型91と第2型92は、それぞれ、温度を一定に維持すべく、温調媒体の流路を内部に有してもよい。
曲げ成形(S3)の前に加熱(S2)を実施する場合、図2Cに示すように、真空断熱材3を外部から加熱する。外部からの熱は、真空断熱材3の外側から内側に移動する。それゆえ、真空断熱材3の最外層である保護層25が熱可塑性樹脂層であると、熱可塑性樹脂層を短時間で高温に加熱できる。
なお、本実施形態では曲げ成形(S3)の前に加熱(S2)を実施するが、曲げ成形(S3)の後で加熱(S2)を実施してもよい。後者の場合、曲げ成形(S3)の後で、第1型91と第2型92の間から真空断熱材3を取り出し、加熱する。加熱によって保護層25の残留応力を緩和する。続いて、保護層25を冷却し、固化する。後者の場合、冷却及び固化(S4)後に、真空断熱材3のスプリングバックを抑制できる。
次に、図5等を参照して、変形例の製造方法を説明する。図5に示すように、本変形例の製造方法は、真空封止(S1)と、加熱(S2)と、曲げ成形(S3)と、冷却及び固化(S4)とに加えて、接着(S5)を更に含む。以下、本変形例の製造方法と、上記実施形態の製造方法との相違点について主に説明する。
図5の接着(S5)は、真空封止(S1)の後、曲げ成形(S3)の前に行われる。図4の接着(S5)では、図6Aに示すように、真空断熱材3と、熱可塑性樹脂製の支持ボード5とを接着剤6で接着する。支持ボード5は、真空断熱材3を支持し、曲げ成形(S3)後に、真空断熱材3のスプリングバックを抑制する。
支持ボード5は、軽量性及び断熱性の観点から、好ましくは多孔質な発泡ボードである。発泡ボードの密度は、例えば0.02g/cm3~1.0g/cm3である。発泡ボードの密度が0.02g/cm3~1.0g/cm3であると、軽量性及び断熱性と、耐荷重性とを両立できる。密度は0.03g/cm3~0.9g/cm3がより好ましく、0.04g/cm3~0.8g/cm3が特に好ましい。
支持ボード5の材料は、熱溶着層23の材料よりも、ガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリ塩化ビニルである。なお、支持ボード5の熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレン等のいずれでもよい。これらの熱可塑性樹脂は、いずれも、発泡体を形成できる。
支持ボード5の材料は、製品の用途、より詳細には、製品の使用環境の温度に応じて選択される。製品の使用環境の温度が常時80℃以上にならない場合、つまり、製品の使用環境の温度が通常80℃未満である場合、ポリ塩化ビニル、又はポリスチレンが選定される。また、製品の使用環境の温度が常時100℃前後である場合、ポリプロピレン、又はポリエチレンが選定される。
支持ボード5の厚みT2は、例えば1mm~5mm、好ましくは2mm~3mmである。支持ボード5の厚みT2が1mm以上であれば、支持ボード5の剛性が高く、曲げ成形(S3)後に、真空断熱材3のスプリングバックが小さい。また、支持ボード5の厚みT2が5mm以下であれば、製品の薄化が可能である。
支持ボード5の主面51の大きさは、芯材1の主面11の大きさ以上である。支持ボード5は、芯材1の主面11の全体を支持する。曲げ成形(S3)後に、芯材1の主面11の全体に亘って、芯材1のスプリングバックが小さい。
接着剤6は、例えば弾性接着剤である。弾性接着剤とは、硬化した後の硬化物がゴム状の弾性体である接着剤のことである。弾性接着剤は、曲げ及び衝撃に対する耐性に優れ、且つ、真空断熱材3と支持ボード5の両方に対する接着性にも優れる。弾性接着剤は、-30℃~80℃の温度で使用でき、車両の天井の内装材に使用できる点で好ましい。
なお、弾性接着剤の材質は特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂系、弾力性エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、ゴム系、ビニル樹脂系、変性シリコーン樹脂系及びシリル化ウレタン樹脂系等のいずれでもよい。
真空断熱材3の接着面、及び支持ボード5の接着面の少なくとも1つは、接着性を向上すべく、予めプラズマ処理が施されてもよい。また、プラズマ処理の代わりに、プライマー処理が施されてもよい。プライマーは、接着剤6に混ぜて用いられてもよい。
図5の加熱(S2)では、真空断熱材3のスプリングバックを抑制すべく、図6Bに示すように、外包材2の熱可塑性樹脂層の他に、支持ボード5も加熱する。支持ボード5を室温に戻すことなく高温のまま曲げ成形(S3)に供すれば、支持ボード5を塑性変形できる。
支持ボード5は、例えば、図6Bに示すように、真空断熱材3と共に、上下一対の加熱源81、82の間に水平に配置される。加熱源81、82のX軸方向寸法は、好ましくは支持ボード5のX軸方向寸法以上である。また、加熱源81、82のY軸方向寸法は、好ましくは支持ボード5のY軸方向寸法以上である。
支持ボード5は、真空断熱材3と共に、外部から加熱される。支持ボード5の加熱温度は、例えば50℃以上、好ましくは65℃以上である。支持ボード5の加熱温度が50℃以上であれば、支持ボード5を塑性変形できる。また、支持ボード5の加熱温度は、例えば100℃以下、好ましくは85℃以下である。支持ボード5の加熱温度が100℃以下であれば、熱溶着層23の溶融を防止でき、外包材2の内部の真空度の悪化を防止できる。
図5の曲げ成形(S3)では、図6Cに示すように、支持ボード5を真空断熱材3と共に第1型91と第2型92の間に配置し、第1型91の第1曲面93と第2型92の第2曲面94に沿って支持ボード5を真空断熱材3と共に曲げ成形する。本変形例によれば、支持ボード5と真空断熱材3を同時に曲げ成形するので、曲げ成形の回数を低減でき、断熱部材の製造工程を簡素化できる。
なお、本変形例では図6Cに示すように支持ボード5が真空断熱材3の下方に配置されるが、支持ボード5と真空断熱材3の配置は逆でもよい。つまり、支持ボード5が真空断熱材3の上方に配置されてもよい。
また、図5の曲げ成形(S3)では、熱で軟化した支持ボード5を、第1曲面93及び第2曲面94に沿って塑性変形する。支持ボード5が塑性変形するので、支持ボード5の弾性復元力がほとんど生じない。それゆえ、プレス機97の荷重解放後に、支持ボード5のスプリングバックが小さい。
図5の冷却及び固化(S4)では、図6Cに示すように、第1曲面93及び第2曲面94で支持ボード5を押さえた状態で、支持ボード5を冷却し、固化する。支持ボード5の弾性復元力がゼロの状態で、支持ボード5の表面形状を第1曲面93及び第2曲面94の形状に固定できる。固化した支持ボード5が真空断熱材3のスプリングバックを押さえるので、真空断熱材3のスプリングバックを上記実施形態より小さくできる。
支持ボード5の固化後、プレス機97は、第1取付盤95を上昇し、第1型91を上昇させる。その後、第1型91と第2型92の間から、図6Dに示す曲面形状の支持ボード5と真空断熱材3の積層体が、製品である断熱部材として、取り出される。
断熱部材の用途は、例えば車両の内装材である。支持ボード5と真空断熱材3との積層体が、予め組み立てられるので、車両の製造メーカにて、車両の組み立て工数を低減でき、取扱い性が良い。
断熱部材の用途が車両の内装材である場合、支持ボード5は真空断熱材3よりも車外側に配置されてもよいが、本変形例では車内側に配置される。本変形例によれば、真空断熱材3が接着剤6よりも車外側(高温側)に配置されるので、接着剤6の温度上昇を抑制でき、接着剤6の耐熱性の要求性能を緩和できる。支持ボード5は、例えば車室の天井面を形成する。このとき、支持ボード5の車内側に、さらに表皮材(加飾部材)が配置されてもよい。 ところで、本変形例によれば、図5に示すように、曲げ成形(S3)の前に、加熱(S2)を実施する。曲げ成形(S3)の間に加熱(S2)を実施してもよいが、その場合、第1型91及び第2型92を介して支持ボード5を加熱するので、第1型91及び第2型92も加熱することになる。
曲げ成形(S3)の前に加熱(S2)を実施すれば、支持ボード5を加熱するのに第1型91及び第2型92を加熱せずに済む。支持ボード5の熱は第1型91及び第2型92に速やかに吸収され、支持ボード5が速やかに固化される。支持ボード5を短時間で冷却でき、製品の製造サイクルを短縮できる。第1型91と第2型92は、それぞれ、温度を一定に維持すべく、温調媒体の流路を内部に有してもよい。
なお、支持ボード5は真空断熱材3のスプリングバックを押さえることができる程度に剛性の高いものであるので、常温での支持ボード5の曲げ成形(S3)は困難である。従って、本変形例では、上記実施形態とは異なり、曲げ成形(S3)の後で加熱(S2)を実施することはない。
以上、本開示に係る断熱部材の製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
1 芯材
2 外包材
23 熱溶着層(熱可塑性樹脂層)
24 ガスバリヤ層
25 保護層(熱可塑性樹脂層)
3 真空断熱材
5 支持ボード
6 接着剤
91 第1型
92 第2型
93 第1曲面
94 第2曲面
2 外包材
23 熱溶着層(熱可塑性樹脂層)
24 ガスバリヤ層
25 保護層(熱可塑性樹脂層)
3 真空断熱材
5 支持ボード
6 接着剤
91 第1型
92 第2型
93 第1曲面
94 第2曲面
Claims (12)
- 無機粒子の集合体である板状の芯材を外包材で真空封止し、前記芯材と前記外包材を含む真空断熱材を得る工程と、
前記真空断熱材を第1型と第2型の間に配置し、前記第1型の第1曲面と前記第2型の第2曲面に沿って前記芯材及び前記外包材を曲げ成形する工程とを含む、断熱部材の製造方法。 - 前記無機粒子は、ヒュームドシリカを含む、請求項1に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記芯材に占める前記無機粒子の含有率が、50質量%~100質量%である、請求項1又は2に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記真空断熱材の厚みが、2mm~5mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記外包材は、熱可塑性樹脂層を有し、
熱で軟化した前記熱可塑性樹脂層を、前記第1曲面及び前記第2曲面に沿って塑性変形し、前記第1曲面及び前記第2曲面で前記真空断熱材を押さえた状態で、前記熱可塑性樹脂層を冷却し、固化する、請求項1~4のいずれか1項に記載の断熱部材の製造方法。 - 前記真空断熱材を前記第1型と前記第2型の間に配置する前に、前記真空断熱材を外部から加熱する、請求項5に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記真空断熱材の最外層が、前記熱可塑性樹脂層である、請求項6に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記真空封止の後、前記曲げ成形の前に、前記真空断熱材と、熱可塑性樹脂製の支持ボードとを接着剤で接着する工程を更に含み、
熱で軟化した前記支持ボードを前記第1曲面及び前記第2曲面に沿って塑性変形し、前記第1曲面及び前記第2曲面で前記支持ボードを押さえた状態で、前記支持ボードを冷却し、固化する、請求項5~7のいずれか1項に記載の断熱部材の製造方法。 - 前記支持ボードは、多孔質な発泡ボードである、請求項8に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記支持ボードの厚みが、1mm~5mmである、請求項8又は9に記載の断熱部材の製造方法。
- 前記支持ボードの主面の大きさは、前記芯材の主面の大きさ以上であり、
前記支持ボードは、前記芯材の主面の全体を支持する、請求項8~10のいずれか1項に記載の断熱部材の製造方法。 - 車両の内装材用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の断熱部材の製造方法。
Priority Applications (2)
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JP2019176075A JP2022166335A (ja) | 2019-09-26 | 2019-09-26 | 断熱部材の製造方法 |
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