JP2022165864A - 補修システムおよび補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐火物層表面に付着した滓や劣化層を的確に除去するとともに、劣化していない耐火物層が除去される量を低減する【解決手段】内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、前記測定装置によって得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算装置と、前記演算装置による演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する除去装置とを備える、補修システム。【選択図】なし

Description

本発明は、内面に耐火物層を有する構造物の補修システムに関する。また、本発明は内面に耐火物層を有する構造物の補修方法に関する。
高温の内容物を保持するための構造物には、内容物の熱から構造物を保護するために、該構造物の内面にライニングとしての耐火物層が設けられることが一般的である。このような耐火物層を有する構造物としては、例えば、溶融金属を保持するための容器(以下、「溶融金属容器」という)や、高炉樋などの溶融金属用の樋が挙げられる。
しかし、そのような構造物を使用していると、高温の内容物と接触することによる損耗や、熱衝撃などに起因するスポーリング(き裂、剥離)のため、前記耐火物層は次第に劣化する。そのため、前記耐火物層の機能を維持するためには、定期的に補修を行う必要がある。
耐火物層を補修する方法としては、不定形耐火物を吹き付ける方法が一般的に用いられている。しかし、劣化した耐火物層の上に不定形耐火物を吹き付けた場合、補修後の耐火物層の内部に、劣化した耐火物層と新しい耐火物層の界面が残存することになる。また、劣化した耐火物層の表面には、構造物を使用していた際に付着した溶融金属やスラグなどの滓(ノロ、ビルドアップなどともいう)が付着していることもある。そのため、補修した後に構造物を使用する中で、表面側の新しい耐火物層に亀裂が生じると、該亀裂を通じて溶融金属などが劣化した耐火物層と新しい耐火物層の界面まで侵入し、新しい耐火物層が剥離してしまうという問題がある。
そこで、上記剥離を防ぐために、耐火物層の補修にあたっては、補修する箇所の表面をはつって、劣化した耐火物層や耐火物層の表面に付着した滓を除去した後に、不定形耐火物を吹き付けることが行われている。
例えば、特許文献1には、溶融金属容器内面のライニングを吹き付け補修する際に、予め破砕工具により耐火物層表面の劣化層を全面にわたり除去・解体することが記載されている。
特開2006-292278号公報
特許文献1によれば、破砕工具を一定の力で押付けながら劣化層を除去することにより、一様に劣化層を破砕できるとされている。
しかし、実際の構造物においては、耐火物層の表面に付着した滓の厚さや、劣化層の厚さは必ずしも一定とは限らない。また、劣化した耐火物層の一部が剥離した結果、部分的に劣化層が薄くなっている場合もある。そのため、特許文献1に記載されているような方法で劣化層を除去すると、劣化していない健全な耐火物まで除去してしまうことになるため、結果的に補修に必要な不定形耐火物の使用量が増大し、補修費用に無駄が生じる。また、反対に、劣化層が厚い部分では、劣化層が完全に除去されずに残存してしまう場合もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐火物層表面に付着した滓や劣化層を的確に除去するとともに、劣化していない耐火物層が除去される量を低減することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨構成は、以下の通りである。
1.内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、
前記測定装置によって得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算装置と、
前記演算装置による演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する除去装置とを備える、補修システム。
2.さらに、前記除去装置にかかる負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御装置を備える、上記1に記載の補修システム。
3.さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得装置を備え、
前記演算装置は、前記測定装置によって得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得装置で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する、上記1または2に記載の補修システム。
4.内面に耐火物層を有する構造物の補修方法であって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定工程と、
前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算工程と、
前記演算工程における演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する除去工程とを備える、補修方法。
5.さらに、前記除去工程における負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御工程を備える、上記4に記載の補修方法。
6.さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得工程を備え、
前記演算工程では、前記測定工程で得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得工程で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する、上記4または5に記載の補修方法。
本発明によれば、耐火物層表面に付着した滓や劣化層を的確に除去するとともに、劣化していない耐火物層が除去される量を低減することができる。したがって、本発明によれば、補修品質が向上することに加え、不定形耐火物の使用量および補修費用を削減することができる。
以下、本発明の実施形態の例について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
[構造物]
本発明は、内面に耐火物層を有する構造物を補修するためのものである。前記構造物としては、少なくとも内面に耐火物層を有するものであれば任意の構造物を対象とできる。前記構造物は、例えば、溶融金属用構造物であってよい。前記溶融金属用構造物としては、溶銑鍋、溶鋼の取鍋、精錬容器などの溶融金属容器や、高炉樋などの溶融金属用樋が例示される。
本発明は、任意の材質および構造を有する耐火物層に適用できる。したがって、前記構造物の内面に設けられた耐火物層は、耐火物で構成された層であれば任意の材質および構造であってよい。
また、ライニングとしての耐火物層を、パーマレンガと称される定型耐火物の層と、不定形耐火物の層とで構成することも一般的に行われている。例えば、典型的な溶融金属用構造物は、鉄皮と称される金属製構造物本体と、前記金属製構造物本体の内面に設けられた定型耐火物(パーマレンガ)の層と、前記定型耐火物層の内面に設けられた不定形耐火物の層とを備えており、前記定型耐火物の層と前記不定形耐火物の層とにより耐火物層が構成されている。本発明は、上記のような構造を有する耐火物層の補修にも好適に用いることができる。
以下、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、以下の実施形態では前記構造物が容器である場合を例として説明するが、上述したように本発明は容器に限らず任意の構造物に適用可能である。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態における補修システムは、下記(1)~(3)を備えている。
(1)容器内面の3次元形状を測定する測定装置
(2)前記測定装置によって得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算装置
(3)前記演算装置による演算結果に基づいて前記容器内面の耐火物層を除去する除去装置
また、本発明の他の第一の実施形態における補修方法は、下記(A)~(C)の工程を備えている。
(A)容器内面の3次元形状を測定する測定工程
(B)前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算工程
(C)前記演算工程における演算結果に基づいて前記容器内面の耐火物層を除去する除去工程
以下、上記各装置および各工程について説明する。
[測定装置・測定工程]
本発明では、容器内面の3次元形状を測定し、その結果に基づいて耐火物層を除去する範囲を決定することが重要である。そのため、耐火物層の除去に先立って容器内面の3次元形状を測定する。
3次元形状の測定に用いる測定装置としては、とくに限定されず、容器内面の3次元形状を測定できるものであれば任意の装置を用いることができる。好適に使用できる測定装置としては、例えば、3次元レーザースキャナ、フォトグラメトリ方式の3次元形状測定装置、パターン投影方式の3次元形状測定装置などが挙げられるが、中でも3次元レーザースキャナを用いることが好ましい。
前記3次元形状の測定は、1回で行ってもよく、複数回行ってもよい。使用する測定装置の視野に全測定範囲が収まる場合には、1回の測定で容器全体の3次元形状データを得ることができる。例えば、測定を3次元レーザースキャナで行う場合には、該3次元レーザースキャナを容器の中心軸上かつ容器口の高さに配置し、容器中心軸を中心に360°のレーザースキャンを実施することにより容器内面の3次元形状を一度の測定で取得可能である。一方、フォトグラメトリで測定を行う場合には、測定原理上、測定範囲がカメラ視野に限定されるため、測定装置(カメラ)の向きや位置を変えながら容器内面を複数回測定し、後処理でデータを合成することで容器内面全体の3次元形状データを得ることができる。
前記測定装置は、後述する除去装置に備えられていてもよく、除去装置とは別体として備えられていてもよい。除去装置と別体として測定装置を設ける場合には、対象である容器を使用している設備に測定装置を備え付けておくこともできる。例えば、前記容器が、製鉄所において溶鋼を運搬するための容器(鍋)である場合には、該容器を1チャージ使用するごとに、設備に備え付けられた測定装置で容器内面の3次元形状を測定し、次に述べるように補修の要否を判断することもできる。なお、ここで「チャージ」とは、転炉などから溶融金属を容器に受け入れ、溶鋼中の不純物を取り除く2次精錬工程を経て、次工程である鋳造設備などに溶融金属を送り出して容器が空になるまでのサイクルを指す。
また、本発明の一実施形態における補修方法は、次の演算工程に進む前に、前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、補修を実施するか否かの判断を行う補修要否判定工程をさらに備えていてもよい。同様に、本発明の一実施形態における補修システムは、前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、補修を実施するか否かの判断を行う補修要否判定装置をさらに備えていてもよい。前記補修要否の判定は、例えば、前記3次元形状に基づいて、耐火物層の厚さが一定の水準(閾値)をした回った場合に補修を実施すると判断することができる。
[演算装置・演算工程]
次に、得られた容器内面の3次元形状に基づいて耐火物層を除去する範囲を決定する。すなわち、容器内面の3次元形状とは、耐火物層とその表面に付着した滓を含めた表面のプロファイルであるから、当該プロファイルにおいて凸部となっている部分は滓が厚く付着している可能性が高く、したがってその部分は除去量を多くする必要があると判断できる。反対に、当該プロファイルにおいて凹部となっている部分は、劣化した耐火物層が剥離した結果、凹部となっている可能性が高く、したがって、その部分は除去量を少なくすればよい。言い換えると、得られた容器内面の3次元形状に基づいて、各部における耐火物層の除去量を決定することが好ましい。
なお、前記除去量の決定においては、容器の使用履歴などの情報を考慮することもできる。例えば、容器内面の3次元形状を定期的に測定している場合には、その測定データに基づいて剥離の発生を判定するとともに、剥離した部位を特定することもできる。また、剥離が生じない場合、形成される劣化層のおおよその厚さを、容器の使用履歴(使用回数、仕様時間など)から推定することも可能である。したがって、前記除去量の決定においては、容器の使用履歴から推定される劣化層の推定厚さを使用することもできる。また、形成される劣化層の厚みはある程度(例えば、30~40mmなど)で飽和する傾向がある。そのため、既知の劣化層の飽和厚みを予め演算装置に入力しておき、前記除去量の決定に使用することもできる。
このように、得られた容器内面の3次元形状に基づいて耐火物層を除去する範囲を決定することにより、耐火物層表面に付着した滓や劣化層を的確に除去するとともに、劣化していない耐火物層が除去される量を低減することができる。
前記演算工程においては、耐火物層を除去する範囲を決定し、その決定された範囲の耐火物層を除去できるように、除去に用いる工具の走査経路を決定することも好ましい。
また、前記耐火物層を除去する範囲の決定においては、さらに、予め用意した除去限界位置を表す3次元形状データ(以下、除去限界データ)を併用することも好ましい。ここで、除去限界位置とは、当該位置を超えて(当該位置よりも深く)除去を行ってはいけない位置を指すものとする。耐火物層を除去する範囲を決定する際に、前記除去限界データを参照することにより、耐火物層を過剰に除去してしまうことや、耐火物層以外の部分(容器本体など)を工具で損傷させてしまうことを防止できる。
例えば、上述したように耐火物層がパーマレンガと称される定型耐火物の層と不定形耐火物の層とで構成されている場合、不定形耐火物の層のみを除去し、定型耐火物の層は除去しないことが好ましい。したがって、そのようなケースでは、定型耐火物の層のみが設けられ、不定形耐火物の層が設けられていない状態の3次元形状データを前記除去限界データとして使用することにより、定型耐火物の層を除去してしまうことを防止できる。
[除去装置・除去工程]
次いで、前記演算における演算結果に基づいて容器内面の耐火物層を除去する。言い換えると、前記演算で決定された範囲の耐火物層を除去する。
前記除去には、定型耐火物を除去できるものであれば、とくに限定されることなく任意の装置を用いることができる。通常、前記除去装置は、回転または往復運動する工具により耐火物層を切削、破砕、または剥離する工具を備えることが好ましい。また、前記工具を容器の内面に沿って走査させながら除去を行うために、前記除去装置は、前記工具を3次元的に移動させる移動手段と、前記工具の姿勢(向き)を制御する姿勢制御手段とを備えていることが好ましい。前記移動手段および姿勢制御手段としては、例えば、重機のアームなどを使用することもできる。前記重機としては、例えば、キャタピラ等で駆動される車体本体と、工具を6自由度(3軸方向の位置/回転)またはそれ以上の自由度で位置決めできるアームを備えた重機を用いることが好ましい。
工具を容器内面に沿って走査しながら除去を行う場合、その走査パターンは特に限定されず、使用する除去装置や対象とする容器の形状に合わせて決定すればよい。切削粉が下に落ちていくことを考慮すると、容器内面の周方向に走査しながら除去する動作を、下方から上方へわたって繰り返すことが好ましい。
また、工具を容器内面に沿って走査しながら除去を行う場合には、1回の走査(1パス)で除去を行うこともできるが、複数回の走査(複数パス)で除去を行うこともできる。複数パスで除去を行う場合、走査回数は2以上の任意の数とできるが、過度に回数を多くすると除去に要する時間が長くなり作業効率が低下する。そのため、走査回数は3回以下とすることが好ましい。さらに、複数パスで除去を行う場合には、1回の走査が完了した後に、次の走査における除去量を演算することもできる。
上述したように、前記除去装置は上記測定装置を備えていてもよい。除去装置が測定装置を備えている場合、該測定装置で容器内面の3次元形状を測定し、その結果に基づいて前記除去装置を制御することができる。
また、前記除去装置は上記測定装置(ここでは第一の測定装置とする)とは別の、容器内面の3次元形状を測定する第二の測定装置を備えていてもよい。除去装置が第二の測定装置を備えている場合、前記第二の測定装置の測定結果を利用して該除去装置の位置合せを行うことができる。例えば、除去装置を除去を実施するための位置に設置した後、第二の測定装置による測定を行い、その結果を利用することで容易に位置合せを行うことができる。より具体的な例としては、容器を使用している設備(工場など)に設置されている第一の測定装置を用いて容器内面の3次元形状を測定して第一の3次元形状データを取得し、その後、除去装置に備えられている第二の測定装置を用いて第二の3次元形状データを取得し、前記第一の3次元形状データと第二の3次元形状データを比較することによって前記除去装置の位置合せ(原点出し)を行うこことができる。第一の3次元形状データと第二の3次元形状データを比較する方法としては、例えば、一方を他方にフィッティングする方法が挙げられる。第一の3次元形状データの座標系と第二の3次元形状データの座標系の座標変換行列を求めることもできる。
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態における補修システムは、さらに、前記除去装置にかかる負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御装置を備える。
また、本発明の第二の実施形態における補修方法は、さらに、前記除去工程における負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御工程を備える。
上述したように耐火物層の表面には滓が付着している場合があるが、耐火物と滓とでは材質が異なるため、両者の物性(硬さなど)は異なっている。また、同じ耐火物層であっても、劣化した部分(劣化層)と劣化していない部分(健全層)とでは、やはり物性が異なっている。そのため、除去の際に除去装置にかかる負荷をモニターすることにより、現在除去している部分の物性の変化を知ることができる。したがって、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整することにより、より的確に除去を行うことができる。
具体的な調整の方法はとくに限定されないが、例えば、負荷の変化に基づいて除去している部分の変化(例えば、滓から劣化層、劣化層から健全層)を検知し、それに基づいてその部位における除去の継続または終了を判定することもできる。また、他の例としては、予め適当な閾値を設定しており、負荷と前記閾値とを比較することによって現在除去している部位が滓、劣化層、および健全層のいずれであるかを判別し、それに基づいてその部位における除去の継続または終了を判定することもできる。
このような調整を行うことにより、3次元形状の測定結果のみに基づいて除去を行う場合よりも一層的確な滓や除去部の除去が可能となることに加え、劣化していない耐火物層が除去される量をさらに低減することができる。
例えば、深さ方向に一定の切込み量で工具を走査しながら除去する工程を、2パス(2回)またはそれ以上繰り返して行う場合には、1パス(1回)の走査が終了するごとに負荷の値を評価し、健全層に到達していると判断される場合には以降のパスを省略することもできる。
なお、モニターする前記負荷としては、除去している部位の物性の変化が反映される部分の負荷であれば任意のものを用いることができる。典型的には、切削工具を駆動するアクチュエータにかかる負荷を使用することが好ましい。例えば、切削工具をモータで回転させる場合には、前記モータにかかる負荷をモニターすることができる。前記モータが油圧モータであれば、油圧をモニターすればよい。
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態における補修システムは、さらに、前記容器内面の色情報を取得する色情報取得装置を備え、前記演算装置は、前記測定装置によって得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得装置で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する。
また、本発明の第三の実施形態における補修方法は、さらに、前記容器内面の色情報を取得する色情報取得工程を備え、前記演算工程では、前記測定工程で得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得工程で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する。
上述したように耐火物層の表面には滓が付着している場合があるが、耐火物と滓とでは材質が異なるため、両者の色調は異なっている。また、同じ耐火物層であっても、劣化した部分(劣化層)と劣化していない部分(健全層)とでは、やはり色調が異なっている。例えば、劣化していない健全層は耐火物本来の色(典型的には明るい茶色)を保っているのに対して、溶融金属との接触により劣化した劣化層は金属に浸透により黒ずんだ色合いに変化している。そのため、容器内面の色情報を取得することにより、当該部分の材質を知ることができる。したがって、演算を行って耐火物層を除去する範囲を決定する際に、3次元形状に加え、前記色情報を考慮することにより、より的確に除去を行うことが可能となる。
色情報を利用方法はとくに限定されないが、予め閾値を設定しておき、前記閾値と色情報とを比較して、当該部分が滓、劣化層、および健全層のいずれであるかを判別することが好ましい。
前記色情報取得装置としては、容器内面の色情報を取得することができる装置であれば任意のものを用いることができるが、典型的には、デジタルカメラを使用することができる。色情報取得装置を使用する場合には、該色情報取得装置と3次元形状の測定に用いる測定装置とは、別体であってもよいが、一体であってもよい。言い換えると、3次元形状の測定に用いる測定装置が色情報取得装置を兼ねていてもよい。例えば、3次元形状を測定するためのレーザースキャナの中には、カラー画像を撮影するデジタルカメラを内蔵しており、レーザースキャナによって得られる3次元点群データに含まれる各点に、色情報(RGB)をマッピングすることができるものもがある。そのようなデジタルカメラ内蔵型レーザースキャナは、測定装置兼色情報取得装置として好適に用いることができる。
色情報取得装置を使用する場合には、測定された3次元形状に基づいて1パス目の走査で容器内面に付着した滓を除去し、その後、色情報取得装置で色情報を取得し、その結果に基づいて露出した表面が劣化層であるか健全層であるかを判定することもできる。それにより、色情報に基づいた判定結果を考慮して2パス目の除去量を決定することができる。
次に、本発明のさらに好適な実施形態の一例について、以下、説明する。
(1)容器内面の3次元形状(形状1)を測定する。
(2)前記測定で得た3次元形状に基づいて走査範囲を決定し、工具を走査して容器内面の表層部を除去する(1パス目)。
(3)前記除去後の容器内面の3次元形状(形状2)を測定し、形状1と形状2の差から、容器内面の各部が、1パス目の除去によって以下のいずれの状態になっているのかを判定する。
A)滓と劣化層が一体で剥離した状態(健全層の表面が露出)
B)滓のみ剥離した面(劣化層の表面が露出)
C)元々滓は付着していないが劣化層の剥離が発生した状態(健全層の表面が露出)
D)元々滓は付着しておらず剥離が発生していない状態(劣化層の表面が露出)
*形状1と形状2の差:A>B>C>D
*形状2における凹み程度:A≒C>B≒D
健全層が露出しているかどうかの判定には、色情報を用いることもできる。
(4)上記の判定結果に基づいて、走査範囲を決定し、工具を走査して容器内面を再度除去する(2パス目)。その際、健全層が露出している部分は除去しない。

Claims (6)

  1. 内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、
    前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、
    前記測定装置によって得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算装置と、
    前記演算装置による演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する除去装置とを備える、補修システム。
  2. さらに、前記除去装置にかかる負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御装置を備える、請求項1に記載の補修システム。
  3. さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得装置を備え、
    前記演算装置は、前記測定装置によって得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得装置で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する、請求項1または2に記載の補修システム。
  4. 内面に耐火物層を有する構造物の補修方法であって、
    前記構造物内面の3次元形状を測定する測定工程と、
    前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算工程と、
    前記演算工程における演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する除去工程とを備える、補修方法。
  5. さらに、前記除去工程における負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御工程を備える、請求項4に記載の補修方法。
  6. さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得工程を備え、
    前記演算工程では、前記測定工程で得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得工程で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定する、請求項4または5に記載の補修方法。

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