JP2022165511A - 塗布装置、製造システム、塗布装置の制御方法および塗布装置の調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材にコーティング剤を塗布する塗布装置において、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能な塗布装置を提供する。【解決手段】この塗布装置では、制御部11に、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されており、制御部11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構25を制御している。【選択図】図2
Description
本発明は、樹脂等で形成される基材にコーティング剤を塗布するための塗布装置に関する。また、本発明は、この塗布装置を備える製造システムに関する。また、本発明は、樹脂等で形成される基材にコーティング剤を塗布するための塗布装置の制御方法および調整方法に関する。
従来、樹脂等で形成される基材と、基材の一方の面に形成される凸部と、凸部を覆うオーバーコート層とを備える加飾構造体が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の加飾構造体では、オーバーコート層は、スプレー方式またはインクジェット方式によってコーティング剤を塗布した後、塗布したコーティング剤を硬化させることで形成されている。
本願発明者は、樹脂等で形成される基材にコーティング剤を塗布する塗布装置を開発している。この塗布装置は、たとえば、基材の表面に施された印刷を保護するコーティング層を形成するためにコーティング剤を基材に塗布する。特許文献1に記載されているように、基材にコーティング剤を塗布する方法として、従来、スプレー方式とインクジェット方式とが知られているが、インクジェット方式の場合、コーティング剤の粘度が高くなると、インクジェットヘッドからコーティング剤を吐出することができなくなる。
すなわち、コーティング剤の粘度が高くなると、インクジェット方式では、基材にコーティング剤を塗布することができなくなる。そのため、基材にコーティング剤を塗布する方法として、インクジェット方式を採用すると、使用できるコーティング剤が制限されて、塗布装置の汎用性が低下する。一方、スプレー方式の場合には、コーティング剤の粘度が高くなっても、基材にコーティング剤を塗布することが可能である。そのため、本願発明者は、基材にコーティング剤を塗布する方法として、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式を採用することにした。
しかしながら、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合には、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが困難であることが、本願発明者の検討によって明らかになった。具体的には、ノズルから噴射されるコーティング剤の温度が変動してコーティング剤の粘度が変動すると、ノズルから噴射されるコーティング剤の噴射量がばらつくため、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが困難であることが、本願発明者の検討によって明らかになった。
そこで、本発明の課題は、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置において、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能な塗布装置を提供することにある。また、本発明の課題は、かかる塗布装置を備える製造システムを提供することにある。
また、本発明の課題は、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置において、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能となる塗布装置の制御方法および調整方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明の塗布装置は、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置であって、基材に向かってコーティング剤を噴射するノズルと、ノズルに供給されるコーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の温度を検知するための温度センサと、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構と、温度センサの出力信号が入力されるとともに圧力調整機構を制御する制御部とを備え、制御部には、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶され、制御部は、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御することを特徴とする。
本発明の塗布装置では、制御部に、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されており、制御部は、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御している。
そのため、本発明では、コーティング剤の温度が変動して、コーティング剤の粘度が変動しても、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本発明では、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さでコーティング層を基材に形成することが可能になる。また、本発明では、コーティング剤の供給圧が自動的に調整されるため、容易に、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
なお、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の流量を検知するための流量センサを設置するとともに、制御部が、この流量センサの検知結果に基づいて、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御することで、コーティング剤の粘度が変動したときの、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することも可能である。しかしながら、コーティング剤の流量を検知するための流量センサは非常に高価であるため、この場合には、塗布装置のコストが高くなる。これに対して、本発明では、比較的安価な温度センサを用いて、コーティング剤の粘度が変動したときの、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になるため、塗布装置のコストを低減することが可能になる。
本発明において、制御部には、塗布装置で使用されるコーティング剤の種類ごとに供給圧情報が記憶されていることが好ましい。コーティング剤の種類によってコーティング剤の粘度が異なることがあるが、このように構成すると、制御部は、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と、塗布装置で使用されるコーティング剤の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御することが可能になる。したがって、塗布装置で使用されるコーティング剤の種類が変わっても、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
本発明において、制御部には、塗布装置で使用される基材の種類ごとに供給圧情報が記憶されていることが好ましい。基材の種類によって基材表面でのコーティング剤の広がりやすさが異なることがあり、基材表面でのコーティング剤の広がりやすさが異なると、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが困難になるおそれがあるが、このように構成すると、制御部は、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と、コーティング層が形成される基材の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、圧力調整機構を制御することが可能になる。したがって、塗布装置で使用される基材の種類が変わっても、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。たとえば、基材によっては接触角が比較的大きく、このためにコーティング剤が広がりにくく、目論見よりも厚くコーティング層が形成されたり、逆に接触角が比較的小さいためにコーティング剤が広がり過ぎてしまい、目論見よりも薄いコーティング層が形成されてしまうことがある。これに対して、基材の種類ごとに供給圧情報が記憶されていれば、より適切な制御が可能となり、ユーザが所望する膜厚を有するコーティング層を基材上に簡便に形成することが可能になる。
本発明において、塗布装置は、ノズルが搭載されるキャリッジを備え、温度センサは、キャリッジに搭載されていることが好ましい。このように構成すると、コーティング剤を噴射するノズルにより近い位置で、温度センサによってコーティング剤の温度を検知することが可能になる。したがって、制御部は、ノズルにより近い位置で検知されるコーティング剤の温度に基づいて、圧力調整機構を制御することが可能になり、その結果、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
本発明において、たとえば、コーティング剤貯留部の中のコーティング剤の粘度は、15~150mPa・sであり、供給圧情報に含まれるコーティング剤の供給圧は、0.05~0.4MPaである。本願発明者の検討によると、この場合には、厚さが10~40μmのコーティング層を基材に形成することが可能になる。また、本願発明者の検討によると、コーティング層の厚さが10~40μmである場合には、コーティング層の割れの発生頻度を低減することが可能になる。
なお、15mPa・sを超える粘度を有するコーティング剤の場合、インクジェットヘッドのノズルによるコーティング剤の吐出は難しくなるが、そのようなコーティング剤でも本発明の塗布装置を用いることで、コーティング剤を吐出して基材に塗布することができる。また、略100mPa・s以下の粘度を有するコーティング剤を用いる場合には、簡便にコーティング層を形成することができるが、150mPa・s以上の粘度を有するコーティング剤を用いる場合には、本発明の塗布装置が有する制御部と圧力調整機構とによる制御のみで目論見の厚さを有するコーティング層を形成することが難しいため、たとえば、ユーザによる手動調整などが必要となり、その結果、利便性が損なわれる。したがって、使用されるコーティング剤の粘度は、15~150mPa・sであることが好ましい。また、使用されるコーティング剤の粘度は、20~120mPa・sであることがより好ましく、25~100mPa・sであることがより一層好ましい。
本発明において、上下方向に直交する所定の方向を第1方向とし、上下方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とすると、塗布装置は、基材が載置されるテーブルと、ノズルが搭載されるキャリッジと、キャリッジを移動可能に保持するキャリッジ保持部材と、キャリッジ保持部材に対して第1方向にキャリッジを往復移動させる第1移動機構と、テーブルに対して第2方向にキャリッジ保持部材を相対的に往復移動させる第2移動機構とを備え、コーティング剤を噴射するノズルがキャリッジと一緒に第1方向に1回移動すると、第1方向に細長い帯状のコーティング剤である帯状コーティング剤が基材に塗布され、第2移動機構は、次の帯状コーティング剤が基材に塗布される前に、帯状コーティング剤の第2方向の幅未満の距離だけ、テーブルに対して第2方向にキャリッジ保持部材を相対的に移動させることが好ましい。このように構成すると、帯状コーティング剤と帯状コーティング剤との境目において、コーティング層の厚さが薄くなるのを抑制することが可能になる。したがって、基材に形成されるコーティング層の厚さのばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
本発明において、第2移動機構は、次の帯状コーティング剤が基材に塗布される前に、帯状コーティング剤の第2方向の幅の略半分の距離だけ、テーブルに対して第2方向にキャリッジ保持部材を相対的に移動させることが好ましい。本願発明者の検討によれば、このように構成すると、基材に形成されるコーティング層の厚さのばらつきをより効果的に抑制することが可能になる。
本発明において、ノズルは、コーティング剤と圧縮空気とを外部で混合して噴射する外部混合型の2流体ノズルであることが好ましい。このように構成すると、比較的厚さの薄いコーティング層を基材に形成することが可能になる。また、このように構成すると、ノズルが、コーティング剤と圧縮空気とを内部で混合して噴射する内部混合型の2流体ノズルである場合と比較して、ノズルから噴射されるコーティング剤の飛散を抑制しやすくなるため、基材の、意図した位置に一定量のコーティング剤を塗布することが可能になる。したがって、基材に形成されるコーティング層の厚さのばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
本発明の塗布装置は、コーティング剤が塗布される前の基材に印刷を行う印刷装置と、基材に塗布されたコーティング剤を硬化させる硬化装置と、コーティング剤が硬化した後の基材を所定形状に切断する切断装置とを備え、所定の製品を製造する製造システムに用いることができる。この製造システムでは、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
また、上記の課題を解決するため、本発明の塗布装置の制御方法は、基材に向かってコーティング剤を噴射するノズルと、ノズルに供給されるコーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の温度を検知するための温度センサと、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構とを備え、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置の制御方法であって、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されており、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御することを特徴とする。
本発明の塗布装置の制御方法では、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されており、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を制御している。
そのため、本発明では、コーティング剤の温度が変動して、コーティング剤の粘度が変動しても、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本発明の制御方法で塗布装置を制御すれば、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。また、本発明では、コーティング剤の供給圧が自動的に調整されるため、容易に、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
さらに、上記の課題を解決するため、本発明の塗布装置の調整方法は、基材に向かってコーティング剤を噴射するノズルと、ノズルに供給されるコーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の温度を検知するための温度センサと、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構とを備え、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置の調整方法であって、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が特定されており、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を調整することを特徴とする。
本発明の塗布装置の調整方法では、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が特定されており、温度センサで検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部からノズルに供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズルからのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整機構を調整している。
そのため、本発明では、コーティング剤の温度が変動して、コーティング剤の粘度が変動しても、ノズルから噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本発明の調整方法で塗布装置を調整すれば、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
以上のように、本発明では、基材にコーティング剤を塗布する塗布装置において、ノズルからコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材にコーティング層を形成することが可能になる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(製造システムの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる製造システム1のブロック図である。
図1は、本発明の実施の形態にかかる製造システム1のブロック図である。
本形態の製造システム1は、基材2(図3参照)を用いて所定の製品を製造するためのシステムである。製造システム1では、たとえば、キーホルダーで使用されるキーホルダー用のプレート等が製造される。基材2は、樹脂、金属、ガラス、紙または布帛等の様々な材料で形成されている。たとえば、基材2は、アクリル樹脂やABS樹脂等の樹脂で形成されている。製造システム1は、基材2にコーティング剤を塗布する塗布装置3と、コーティング剤が塗布される前の基材2に印刷を行う印刷装置4と、基材2に塗布されたコーティング剤を硬化させる硬化装置5と、コーティング剤が硬化した後の基材2を所定形状に切断する切断装置6とを備えている。
印刷装置4は、たとえば、インクジェットプリンタである。印刷装置4では、たとえば、紫外線硬化型のインクによって基材2に印刷が行われる。切断装置6は、たとえば、カッティングプロッタである。塗布装置3は、印刷装置4によって基材2に施された印刷を保護するために、少なくとも基材2に施された印刷の上にコーティング剤を塗布する。コーティング剤は、たとえば、紫外線硬化型のコーティング剤や熱硬化型のコーティング剤である。
コーティング剤が紫外線硬化型のコーティング剤である場合には、硬化装置5は、基材2に塗布されたコーティング剤に紫外線を照射する紫外線照射器を備えている。コーティング剤が熱硬化型のコーティング剤である場合には、硬化装置5は、基材2に塗布されたコーティング剤を加熱する加熱機構を備えている。硬化装置5によって硬化させられたコーティング剤はコーティング層となる。基材2に形成されるコーティング層の厚さは、10~40μmとなっている。本形態では、比較的硬度の高いコーティング層が基材2に形成される。
1台の塗布装置3によって1枚の基材2にコーティング剤を塗布するときにかかる時間は、1台の印刷装置4によって1枚の基材2に印刷を行うときにかかる時間の半分以下となっている。そのため、本形態の製造システム1は、たとえば、図1に示すように、2台の印刷装置4と1台の塗布装置3と1台の硬化装置5と1台の切断装置6とによって構成されており、2台の印刷装置4によって印刷が行われた基材2が1台の塗布装置3に供給される。
(塗布装置の構成および動作)
図2は、図1に示す塗布装置3の構成を説明するためのブロック図である。図3は、図1に示す塗布装置3の塗布装置本体10の構成を説明するための図である。図4は、図3に示すノズル13の構成を説明するための断面図である。図5は、図2に示すPC11に記憶される供給圧情報の作成方法を説明するための図である。図6は、図1に示す塗布装置3でのコーティング剤の塗布方法を説明するための図である。
図2は、図1に示す塗布装置3の構成を説明するためのブロック図である。図3は、図1に示す塗布装置3の塗布装置本体10の構成を説明するための図である。図4は、図3に示すノズル13の構成を説明するための断面図である。図5は、図2に示すPC11に記憶される供給圧情報の作成方法を説明するための図である。図6は、図1に示す塗布装置3でのコーティング剤の塗布方法を説明するための図である。
塗布装置3は、塗布装置本体10と、塗布装置本体10を制御するためのPC(パーソナルコンピュータ)11とを備えている。塗布装置本体10は、基材2が載置されるテーブル12と、基材2に向かってコーティング剤を噴射するノズル13と、ノズル13が取り付けられる塗布ヘッド14と、ノズル13および塗布ヘッド14が搭載されるキャリッジ15と、キャリッジ15を移動可能に保持するキャリッジ保持部材としてのYバー16とを備えている。塗布装置3は、ノズル13からコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材2にコーティング剤を塗布する。
以下の説明では、上下方向(鉛直方向、図3等のZ方向)に直交する図3等のY方向を左右方向とし、上下方向と左右方向とに直交する図3等のX方向を前後方向とする。なお、塗布装置本体10は、塗布装置本体10の制御部である本体側制御部を備えている。この本体側制御部は、PC11に電気的に接続されている。PC11は、本体側制御部の上位制御装置となっており、本体側制御部は、PC11からの制御指令に基づいて塗布装置本体10を制御する。
塗布ヘッド14は、キャリッジ15に対して上下方向への往復移動が可能となるようにキャリッジ15に保持されている。Yバー16は、左右方向に細長い略直方体状に形成されている。キャリッジ15は、Yバー16に対して左右方向への往復移動が可能となるようにキャリッジ保持部材16に保持されている。ノズル13、塗布ヘッド14、キャリッジ15およびYバー16は、テーブル12の上側に配置されている。Yバー16は、テーブル12に対して前後方向へ相対移動可能となっている。
塗布装置本体10は、キャリッジ15に対して塗布ヘッド14を昇降させる昇降機構20と、Yバー16に対して左右方向にキャリッジ15を往復移動させる第1移動機構21とを備えている。また、塗布装置3は、テーブル12に対して前後方向にYバー16を相対的に往復移動させる第2移動機構22を備えている。本形態の第2移動機構22は、テーブル12に対してYバー16を前後方向に往復移動させる。本形態の左右方向(Y方向)は、上下方向に直交する所定の方向である第1方向となっており、前後方向(X方向)は、上下方向と第1方向とに直交する方向である第2方向となっている。
また、塗布装置本体10は、ノズル13に供給されるコーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部23と、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の温度を検知する温度センサ24と、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構25とを備えている。本形態の圧力調整機構25は、圧力調整弁である。したがって、以下では、圧力調整機構25を「圧力調整弁25」とする。
昇降機構20は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力を塗布ヘッド14に伝達するためのボールねじ等の動力伝達機構とを備えている。第1移動機構21は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力をキャリッジ15に伝達するためのプーリおよびベルト等の動力伝達機構とを備えている。第2移動機構22は、モータ等の駆動源と、駆動源の動力をYバー16に伝達するためのボールねじ等の動力伝達機構とを備えている。
ノズル13は、コーティング剤と圧縮空気とを外部で混合して噴射する外部混合型の2流体ノズルである。図4に示すように、ノズル13の内部には、コーティング剤の供給路13aと、圧縮空気の供給路13bとが形成されている。供給路13bは、たとえば、供給路13aを囲む環状に形成されている。供給路13bには、圧縮空気を供給するコンプレッサー等の圧縮空気供給源(図示省略)が接続されている。ノズル13は、塗布ヘッド14に着脱可能に取り付けられている。本形態では、ノズル13として、噴射口が円形状となっている丸型のノズル13、あるいは、噴射口が長円形状または楕円形状となっている平型のノズル13が使用される。ノズル13は、下側に向かってコーティング剤を噴射する。
コーティング剤貯留部23は、たとえば、インクボトルである。このインクボトルは、たとえば、インクタンクの中に設置されている。また、コーティング剤貯留部23は、インクタンクであっても良い。コーティング剤貯留部23は、テーブル12の下側に配置されている。コーティング剤貯留部23の中のコーティング剤の粘度は、15~150mPaとなっている。
温度センサ24は、キャリッジ15に搭載されている。温度センサ24は、ノズル13とコーティング剤貯留部23とを繋ぐ配管28に取り付けられている。また、温度センサ24は、たとえば、配管28の、塗布ヘッド14の内部に配置される部分に取り付けられている。温度センサ24は、配管28を通過するコーティング剤の温度を検知することで、ノズル13に供給されるコーティング剤の温度を検知する。
圧力調整弁25は、コーティング剤貯留部23の中のコーティング剤に加える圧力を調整することで、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧を調整する。圧力調整弁25は、コーティング剤貯留部23に圧縮空気を供給するコンプレッサー等の圧縮空気供給源29とコーティング剤貯留部23とを繋ぐ配管30の途中に配置されている。本形態の圧力調整弁25は、電空レギュレータである。圧力調整弁25は、圧力調整弁25に入力される電気信号に応じてコーティング剤貯留部23の中のコーティング剤に加わる圧縮空気の圧力を制御する。
温度センサ24は、PC11に電気的に接続されており、PC11には、温度センサ24の出力信号が入力される。また、圧力調整弁25は、PC11に電気的に接続されており、PC11は、圧力調整弁25を制御する。すなわち、PC11は、圧力調整弁25に対して制御信号を出力する。本形態のPC11は、温度センサ24の出力信号が入力されるとともに圧力調整弁25を制御する制御部となっている。
配管28の途中には、電磁弁(図示省略)が設置されている。この電磁弁がオン状態になると、ノズル13からコーティング剤が噴射され、電磁弁がオフ状態になると、ノズル13からのコーティング剤の噴射が停止する。なお、塗布装置本体10は、ノズル13の詰まり(目詰まり)を防止するためのメンテナンスユニット(図示省略)を備えている。このメンテナンスユニットは、基材2へのコーティング剤の塗布領域から外れた位置に設置されている。このメンテナンスユニットは、ノズル13の噴射口を覆うキャッピング機構や、基材2にコーティング剤を塗布する前にノズル13から捨て打ちされるコーティング剤を受けるためのコーティング剤受け部等を備えている。
ここで、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量は、ノズル13へのコーティング剤の供給圧が一定であれば、ノズル13から噴射されるコーティング剤の粘度に応じて変動する。また、ノズル13から噴射されるコーティング剤の粘度は、ノズル13から噴射されるコーティング剤の温度に応じて変動する。すなわち、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量は、ノズル13へのコーティング剤の供給圧が一定であれば、ノズル13から噴射されるコーティング剤の温度に応じて変動する。
本形態では、PC11に、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されている。供給圧情報は、実験結果に基づいて予め作成されている。供給圧情報を作成する際には、まず、塗布装置3で使用されるコーティング剤の、温度に応じた粘度が測定される(図5(A)参照)。たとえば、コーティング剤A、コーティング剤B、コーティング剤Cおよびコーティング剤Dの4種類のコーティング剤のそれぞれについて、温度に応じた粘度が測定される。また、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧がコーティング剤の各粘度に応じて測定される(図5(B)参照)。
これらの測定結果から、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧がコーティング剤の各温度に対応付けられて供給圧情報が作成され、PC11に記憶される。供給圧情報では、たとえば、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が2(ml/min)となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられている。また、本形態では、供給圧情報に含まれるコーティング剤の供給圧は、0.05~0.4MPaとなっている。
PC11には、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類ごとに供給圧情報が記憶されている。たとえば、PC11には、コーティング剤Aの供給圧情報と、コーティング剤Bの供給圧情報と、コーティング剤Cの供給圧情報と、コーティング剤Dの供給圧情報とが記憶されている。また、PC11には、塗布装置3で使用される基材2の種類ごとに供給圧情報が記憶されている。具体的には、たとえば、基材2として、アクリル樹脂で形成される基材2と、ABS樹脂で形成される基材2とが使用される場合には、PC11には、基材2がアクリル樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報と、基材2がABS樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報とが記憶されている。
さらに、PC11には、塗布装置3で使用されるノズル13の種類ごとに供給圧情報が記憶されている。具体的には、PC11には、たとえば、丸型のノズル13が使用される場合であって、かつ、基材2がアクリル樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報と、丸型のノズル13が使用される場合であって、基材2がABS樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報と、平型のノズル13が使用される場合であって、かつ、基材2がアクリル樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報と、平型のノズル13が使用される場合であって、基材2がABS樹脂で形成される場合の、コーティング剤A~Dのそれぞれの供給圧情報とが記憶されている。
塗布装置3で基材2にコーティング剤を塗布する前には、PC11において、塗布装置3のオペレータがコーティング剤の種類と基材2の種類とノズル13の種類とを設定する。塗布装置3で基材2にコーティング剤を塗布するときには、PC11は、オペレータが設定したコーティング剤の種類と基材2の種類とノズル13の種類とに応じた供給圧情報と、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御する。
すなわち、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、オペレータが設定したコーティング剤等の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように制御信号を生成して、圧力調整弁25に対して出力する。
塗布装置3では、コーティング剤を噴射するノズル13がキャリッジ15と一緒に左右方向に1回移動すると、左右方向に細長い帯状のコーティング剤である帯状コーティング剤CA(図6(A)参照)が基材2に塗布される。帯状コーティング剤CAは、直前に塗布された帯状コーティング剤CAに対して、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅W(図6(A)参照)未満ずれた位置に塗布される。すなわち、第2移動機構22は、次の帯状コーティング剤CAが基材2に塗布される前に、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅W未満の距離だけ、テーブル12に対して前後方向にYバー16を相対的に移動させる。
本形態では、帯状コーティング剤CAは、直前に塗布された帯状コーティング剤CAに対して、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの略半分ずれた位置に塗布される。すなわち、第2移動機構22は、次の帯状コーティング剤CAが基材2に塗布される前に、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの略半分の距離だけ、テーブル12に対して前後方向にYバー16を相対的に移動させる。そのため、たとえば、図6(B)に示すように、前後方向で隣り合う帯状コーティング剤CAの略半分同士が互いに重なるように基材2に帯状コーティング剤CAが塗布される。このようにして基材2に塗布されたコーティング剤の表面は、コーティング剤のセルフレベリング作用により、時間の経過に伴って徐々に平坦になっていく。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、PC11に、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されている。また、本形態では、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、PC11に記憶された供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御している。
以上説明したように、本形態では、PC11に、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されている。また、本形態では、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、PC11に記憶された供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御している。
そのため、本形態では、コーティング剤の温度が変動して、コーティング剤の粘度が変動しても、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、第1移動機構21によって移動するキャリッジ15の移動速度を一定に保つとともに、ノズル13の先端(下端)と基材2との距離(ギャップ)を一定に保つことで、ノズル13からコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材2にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。また、本形態では、コーティング剤の供給圧が自動的に調整されるため、容易に、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。
なお、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の流量を検知するための流量センサを設置するとともに、この流量センサの検知結果に基づいて、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御することで、コーティング剤の粘度が変動したときの、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することも可能である。しかしながら、コーティング剤の流量を検知するための流量センサは非常に高価であるため、この場合には、塗布装置3のコストが高くなる。これに対して、本形態では、比較的安価な温度センサ24を用いて、コーティング剤の粘度が変動したときの、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になるため、塗布装置3のコストを低減することが可能になる。
本形態では、PC11に、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類ごとに供給圧情報が記憶されている。そのため、本形態では、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類が変わっても、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御することが可能になる。したがって、本形態では、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類が変わっても、コーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。
また、基材2の種類によって基材2の表面でのコーティング剤の広がりやすさが異なることがあり、基材2の表面でのコーティング剤の広がりやすさが異なると、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが困難になるおそれがあるが、本形態では、PC11に、基材2の種類ごとに供給圧情報が記憶されているため、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、コーティング層が形成される基材2の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、圧力調整弁25を制御することが可能になる。したがって、本形態では、塗布装置3で使用される基材2の種類が変わっても、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。
また、ノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が一定であっても、ノズル13の種類によってノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が変動することがあり、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が変動すると、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが困難になるおそれがあるが、本形態では、PC11に、ノズル13の種類ごとに供給圧情報が記憶されているため、PC11は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と、ノズル13の種類に応じた供給圧情報とに基づいて、圧力調整弁25を制御することが可能になる。したがって、本形態では、塗布装置3で使用されるノズル13の種類が変わっても、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。
本形態では、温度センサ24は、ノズル13が搭載されるキャリッジ15に搭載されている。そのため、本形態では、コーティング剤を噴射するノズル13により近い位置で、温度センサ24によってコーティング剤の温度を検知することが可能になる。したがって、本形態では、PC11は、ノズル13により近い位置で検知されるコーティング剤の温度に基づいて、圧力調整弁25を制御することが可能になり、その結果、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
本形態では、コーティング剤貯留部23の中のコーティング剤の粘度は、15~150mPa・sとなっており、供給圧情報に含まれるコーティング剤の供給圧は、0.05~0.4MPaとなっている。そのため、本願発明者の検討によれば、本形態では、厚さが10~40μmのコーティング層を基材2に形成することが可能になる。また、本願発明者の検討によると、コーティング層の厚さが10~40μmである場合には、コーティング層の割れの発生頻度を低減することが可能になる。
本形態では、第2移動機構22は、次の帯状コーティング剤CAが基材2に塗布される前に、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅W未満の距離だけ、テーブル12に対して前後方向にYバー16を相対的に移動させており、帯状コーティング剤CAは、直前に塗布された帯状コーティング剤CAに対して、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅W未満ずれた位置に塗布されている。そのため、本形態では、帯状コーティング剤CAと帯状コーティング剤CAとの境目において、コーティング層の厚さが薄くなるのを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、基材2に形成されるコーティング層の厚さのばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
特に本形態では、第2移動機構22は、次の帯状コーティング剤CAが基材2に塗布される前に、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの略半分の距離だけ、テーブル12に対して前後方向にYバー16を相対的に移動させており、帯状コーティング剤CAは、直前に塗布された帯状コーティング剤CAに対して、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの略半分ずれた位置に塗布されている。そのため、本願発明者の検討によると、本形態では、基材2に形成されるコーティング層の厚さのばらつきをより効果的に抑制することが可能になる。
本形態では、ノズル13は、コーティング剤と圧縮空気とを外部で混合して噴射する外部混合型の2流体ノズルである。そのため、本形態では、厚さが10~40μmとなっている比較的厚さの薄いコーティング層を基材2に形成することが可能になる。また、本形態では、ノズル13が、コーティング剤と圧縮空気とを内部で混合して噴射する内部混合型の2流体ノズルである場合と比較して、ノズル13から噴射されるコーティング剤の飛散を抑制しやすくなるため、基材2の、意図した位置に一定量のコーティング剤を塗布することが可能になる。したがって、本形態では、基材2に形成されるコーティング層の厚さのばらつきを効果的に抑制することが可能になる。
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
上述した形態において、コーティング剤が紫外線硬化型のコーティング剤である場合には、図7に示すように、基材2に塗布されたコーティング剤に紫外線を照射する紫外線照射器35が塗布装置3のキャリッジ15に搭載されていても良い。紫外線照射器35は、図7に示すように、塗布ヘッド14と左右方向で隣接するようにキャリッジ15に搭載されていても良いし、塗布ヘッド14と前後方向で隣接するようにキャリッジ15に搭載されていても良い。この場合には、硬化装置5が不要になる。また、この場合には、たとえば、紫外線照射器35を下側から覆うカバーと、このカバーを開閉する開閉機構とがキャリッジ15に取り付けられている。また、この場合には、塗布装置3は、たとえば、キャリッジ15に対して紫外線照射器35を昇降させる昇降機構を備えている。
上述した形態において、塗布装置本体10の制御部である本体側制御部にPC11の機能が内蔵されていて、本体側制御部に温度センサ24の出力信号が入力されるとともに、本体側制御部が圧力調整弁25を制御しても良い。この場合には、この本体側制御部が、温度センサ24の出力信号が入力されるとともに圧力調整弁25を制御する制御部となっている。また、この場合には、本体側制御部に供給圧情報が記憶されており、本体側制御部は、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を制御する。
上述した形態において、直前に塗布された帯状コーティング剤CAに対する次の帯状コーティング剤CAの前後方向のずれ量は、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの半分未満であっても良いし、帯状コーティング剤CAの前後方向の幅Wの半分を超えていても良い。また、上述した形態において、塗布装置3は、塗布装置3が設置される室内の温度を検知するための温度センサを備えていても良い。また、塗布装置3は、塗布装置3が設置される室内の湿度を検知するための湿度センサを備えていても良い。塗布装置3が設置される室内の湿度に応じて基材2の表面でのコーティング剤の広がりやすさが変動する場合には、PC11は、圧力調整弁25を制御する際にこの湿度センサの検知結果を利用しても良い。
上述した形態において、ノズル13は、コーティング剤と圧縮空気とを内部で混合して噴射する内部混合型の2流体ノズルであっても良い。また、基材2に形成されるコーティング層の厚さが比較的厚くても良い場合(たとえば、コーティング層の厚さが50μmでも良い場合)には、ノズル13は、コーティング剤のみを噴射する1流体ノズルであっても良い。また、上述した形態において、温度センサ24は、キャリッジ15に搭載されていなくても良い。この場合には、温度センサ24は、たとえば、コーティング剤貯留部23に設置されていても良い。
上述した形態において、第2移動機構22は、Yバー16に対してテーブル12を前後方向に往復移動させても良い。また、上述した形態において、塗布装置3で使用される基材2の種類は1種類であっても良いし、塗布装置3で使用されるコーティング剤の種類は1種類であっても良い。また、塗布装置3で使用されるノズル13の種類は1種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。
上述した形態において、コーティング剤の供給圧は自動で調整されなくても良い。すなわち、圧力調整弁25は手動で調整されても良い。この場合には、たとえば、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度とPC11に記憶される供給圧情報とに基づいて、コーティング剤の供給圧がPC11のモニターに表示され、塗布装置3のオペレータがPC11において圧力調整弁25を調整する。また、圧力調整弁25が手動で調整される場合には、圧力調整弁25は電空レギュレータではなく、手動式の調整弁であっても良い。圧力調整弁25が手動式の調整弁である場合には、オペレータが直接、圧力調整弁25を操作する。
また、圧力調整弁25が手動で調整される場合には、PC11に供給圧情報が記憶されていなくても良い。この場合であっても、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が実験結果に基づいて作成されている。すなわち、この場合であっても、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となるコーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が特定されている。また、この場合には、塗布装置3のオペレータは、温度センサ24で検知されるコーティング剤の温度と供給圧情報とに基づいて、コーティング剤貯留部23からノズル13に供給されるコーティング剤の供給圧が、ノズル13からのコーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように圧力調整弁25を調整する。
この場合であっても、コーティング剤の温度が変動して、コーティング剤の粘度が変動したときの、ノズル13から噴射されるコーティング剤の単位時間当たりの噴射量のばらつきを抑制することが可能になるため、ノズル13からコーティング剤を噴射させるスプレー方式で基材2にコーティング剤を塗布する場合であっても、塗布されたコーティング剤によって形成されるコーティング層の厚さのばらつきを抑制しつつ、所望の厚さで基材2にコーティング層を形成することが可能になる。
1 製造システム
2 基材
3 塗布装置
4 印刷装置
5 硬化装置
6 切断装置
11 PC(制御部)
12 テーブル
13 ノズル
15 キャリッジ
16 Yバー(キャリッジ保持部材)
21 第1移動機構
22 第2移動機構
23 コーティング剤貯留部
24 温度センサ
25 圧力調整弁(圧力調整機構)
CA 帯状コーティング剤
W 帯状コーティング剤の第2方向の幅
X 第2方向
Y 第1方向
Z 上下方向
2 基材
3 塗布装置
4 印刷装置
5 硬化装置
6 切断装置
11 PC(制御部)
12 テーブル
13 ノズル
15 キャリッジ
16 Yバー(キャリッジ保持部材)
21 第1移動機構
22 第2移動機構
23 コーティング剤貯留部
24 温度センサ
25 圧力調整弁(圧力調整機構)
CA 帯状コーティング剤
W 帯状コーティング剤の第2方向の幅
X 第2方向
Y 第1方向
Z 上下方向
Claims (11)
- 基材にコーティング剤を塗布する塗布装置であって、
前記基材に向かって前記コーティング剤を噴射するノズルと、前記ノズルに供給される前記コーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の温度を検知するための温度センサと、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構と、前記温度センサの出力信号が入力されるとともに前記圧力調整機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部には、前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となる前記コーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶され、
前記制御部は、前記温度センサで検知される前記コーティング剤の温度と前記供給圧情報とに基づいて、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧が、前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように前記圧力調整機構を制御することを特徴とする塗布装置。 - 前記制御部には、前記塗布装置で使用される前記コーティング剤の種類ごとに前記供給圧情報が記憶されていることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
- 前記制御部には、前記塗布装置で使用される前記基材の種類ごとに前記供給圧情報が記憶されていることを特徴とする請求項1または2記載の塗布装置。
- 前記ノズルが搭載されるキャリッジを備え、
前記温度センサは、前記キャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の塗布装置。 - 前記コーティング剤貯留部の中の前記コーティング剤の粘度は、15~150mPa・sであり、
前記供給圧情報に含まれる前記コーティング剤の供給圧は、0.05~0.4MPaであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の塗布装置。 - 上下方向に直交する所定の方向を第1方向とし、上下方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とすると、
前記基材が載置されるテーブルと、前記ノズルが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジを移動可能に保持するキャリッジ保持部材と、前記キャリッジ保持部材に対して第1方向に前記キャリッジを往復移動させる第1移動機構と、前記テーブルに対して第2方向に前記キャリッジ保持部材を相対的に往復移動させる第2移動機構とを備え、
前記コーティング剤を噴射する前記ノズルが前記キャリッジと一緒に第1方向に1回移動すると、第1方向に細長い帯状の前記コーティング剤である帯状コーティング剤が前記基材に塗布され、
前記第2移動機構は、次の前記帯状コーティング剤が前記基材に塗布される前に、前記帯状コーティング剤の第2方向の幅未満の距離だけ、前記テーブルに対して第2方向に前記キャリッジ保持部材を相対的に移動させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の塗布装置。 - 前記第2移動機構は、次の前記帯状コーティング剤が前記基材に塗布される前に、前記帯状コーティング剤の第2方向の幅の略半分の距離だけ、前記テーブルに対して第2方向に前記キャリッジ保持部材を相対的に移動させることを特徴とする請求項6記載の塗布装置。
- 前記ノズルは、前記コーティング剤と圧縮空気とを外部で混合して噴射する外部混合型の2流体ノズルであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の塗布装置。
- 請求項1から8のいずれかに記載の塗布装置と、前記コーティング剤が塗布される前の前記基材に印刷を行う印刷装置と、前記基材に塗布された前記コーティング剤を硬化させる硬化装置と、前記コーティング剤が硬化した後の前記基材を所定形状に切断する切断装置とを備え、所定の製品を製造することを特徴とする製造システム。
- 基材に向かってコーティング剤を噴射するノズルと、前記ノズルに供給される前記コーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の温度を検知するための温度センサと、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構とを備え、前記基材に前記コーティング剤を塗布する塗布装置の制御方法であって、
前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となる前記コーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が記憶されており、
前記温度センサで検知される前記コーティング剤の温度と前記供給圧情報とに基づいて、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧が、前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように前記圧力調整機構を制御することを特徴とする塗布装置の制御方法。 - 基材に向かってコーティング剤を噴射するノズルと、前記ノズルに供給される前記コーティング剤が溜まるコーティング剤貯留部と、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の温度を検知するための温度センサと、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧を調整するための圧力調整機構とを備え、前記基材に前記コーティング剤を塗布する塗布装置の調整方法であって、
前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定となる前記コーティング剤の供給圧が各温度に対応付けられた供給圧情報が特定されており、
前記温度センサで検知される前記コーティング剤の温度と前記供給圧情報とに基づいて、前記コーティング剤貯留部から前記ノズルに供給される前記コーティング剤の供給圧が、前記ノズルからの前記コーティング剤の単位時間当たりの噴射量が一定になる供給圧となるように前記圧力調整機構を調整することを特徴とする塗布装置の調整方法。
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