JP2022162945A - 口腔内バイオフィルム形成阻害剤 - Google Patents

口腔内バイオフィルム形成阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】口腔内における細菌のバイオフィルム形成を阻害する作用を有しながらも、苦渋味が抑えられた口腔内バイオフィルム形成阻害剤を提供する。【解決手段】焙煎茶葉の抽出物を有効成分とする口腔内バイオフィルム形成阻害剤であって、前記焙煎茶葉と、未焙煎の茶葉と、の色差(ΔE)は、8.00以上であってよく、前記焙煎茶葉の抽出物は、カテキン類の総含有量が15質量%以下、遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率が0.5以下、タンニン類の含有量が20質量%以下であってよい、前記口腔内バイオフィルム形成阻害剤を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、口腔内バイオフィルム形成阻害剤に関するものである。
バイオフィルムは細菌によって産生される多糖を成分とする構造体であり、配管の詰まりや汚染の原因、流しや風呂のぬめり、あるいは医療用器具の汚染などの原因となる。また、ヒトの口腔内に存在し、う蝕の原因となる細菌も、口腔内でバイオフィルムを形成し、これが虫歯の原因となる。
従来、煎茶のような一般的な茶飲料は、抗酸化作用や抗菌作用を有することが認められている。これらの効果は、茶に含まれるカテキン類に由来していることが知られているが、さらにカテキン類には細菌によるバイオフィルムの形成を阻害する効果があることも知られている。例えば、特許文献1には、医療用器具の表面をカテキン類でコーティングすることにより、医療用器具の表面において細菌がバイオフィルムを形成することを阻害する技術が記載されている。
特開2012-110744号公報
ところで、上述のように、ヒトの口腔内に存在するう蝕の原因菌は、口腔内でバイオフィルムを形成することで虫歯の原因となる。そこで、煎茶に由来するカテキン類をう蝕の原因菌によるバイオフィルム形成の阻害に用いることが考えられるが、カテキン類は強い苦渋味を有するため、口腔内で使用するための製剤や飲食品にカテキン類を使用することは困難である。
そこで、本発明は、口腔内における細菌のバイオフィルム形成を阻害する作用を有しながらも、苦渋味が抑えられた口腔内バイオフィルム形成阻害剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、焙煎茶葉の抽出物に着目した。ほうじ茶に代表される焙煎茶葉は、一般的な茶と異なり、製造時に茶葉が焙煎処理されている。このため、焙煎茶葉では、バイオフィルム形成の阻害作用を持つカテキン類が焙煎処理における加熱で変質し減少してしまうが、カテキン類が変質し減少することにより、カテキン類に由来する強い苦渋味も抑えられる。
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を行った結果、焙煎茶葉の抽出物が、苦渋味が抑えられていながらも、口腔内でバイオフィルムを形成することでう蝕の原因となる細菌のバイオフィルム形成を阻害することを見出し、本発明の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を完成させるに至った。
具体的には、本発明は以下の通りである。
〔1〕焙煎茶葉の抽出物を有効成分とする口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
〔2〕前記焙煎茶葉と、未焙煎の茶葉と、の色差(ΔE)は、8.00以上である、〔1〕に記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
〔3〕前記焙煎茶葉の抽出物は、カテキン類の総含有量が15質量%以下であり、遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率が0.5以下であり、タンニン類の含有量が20質量%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を含む、口腔用組成物。
本発明によれば、口腔内における細菌のバイオフィルム形成を阻害する作用を有しながらも、苦渋味が抑えられた口腔内バイオフィルム形成阻害剤を提供することができる。
試験5にてバイオフィルム形成量を測定した結果を示す図である。
〔口腔内バイオフィルム形成阻害剤〕
本発明に係るバイオフィルム形成阻害剤は、有効成分である焙煎茶葉抽出物が有するバイオフィルム形成阻害作用を通じて、ヒトの口腔内において各種細菌がバイオフィルムを形成することを阻害することができる。ここで、バイオフィルムとは、上述したとおり、細菌によって産生される多糖を成分とする構造体である。
本実施形態に係るバイオフィルム形成阻害剤の対象となる細菌としては、例えば、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)やストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)などのレンサ球菌、アクチノマイセス・ネスランディ(Actinomyces naeslundii)などのグラム陽性桿菌、黄色ブドウ球菌(Streptococcus aureus)等の通性嫌気性グラム陽性球菌、歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)等の偏性嫌気性グラム陰性細菌、カンジダ菌(Candida albicans)等の真菌等が挙げられる。中でもストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)及びストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)などは、本実施形態に係る口腔内バイオフィルム形成阻害剤の対象として特に好適である。
〔有効成分〕
本発明の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、焙煎茶葉の抽出物を有効成分とするものである。当該口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、焙煎茶葉の抽出物を有効成分とすることで、苦渋味を抑えながらも、口腔内における細菌のバイオフィルム形成を阻害することができる。
(茶葉)
茶葉は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹であるチャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)の生葉や生茎を飲料用に加工したものである。チャノキには中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)やそれらの雑種が含まれる。
本実施形態に係る焙煎茶葉の原料となる茶葉は、チャノキの葉を加工したものであれば特に制限されないが、特に荒茶及び煎茶を好適に用いることができる。
(焙煎茶葉)
本発明における焙煎茶葉は、上記の茶葉を焙煎処理したものをいう。かかる焙煎処理の方法は、本発明の効果を奏する焙煎茶葉が得られる限りにおいて特に制限されない。
焙煎処理の程度は、焙煎を行っていない茶葉である未焙煎の茶葉と、焙煎後の茶葉と、の色差ΔEが8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが更に好ましく、20以上であることが特に好ましい。色差ΔEを上記範囲とすることで、十分なバイオフィルムの形成阻害能を有しつつも、苦渋味の少ない焙煎茶葉抽出物を得やすくなる。焙煎前後の茶葉の色差ΔEの上限は特に制限されないが、焙煎茶葉の抽出物の香味を保つ観点から、30以下であってよい。また、焙煎茶葉は、入手の容易性の観点から、ほうじ茶を用いても良い。なお、色差とは、測色計等を用いて測定した茶葉の表面色L*a*b*に基づき、後述する実施例に示す式により算出される値である。
焙煎後の茶葉のL値としては、30~54であることが好ましく、35~51がより好ましい。焙煎後の茶葉のa値としては-1~5であることが好ましく、0~4であることがより好ましい。焙煎後の茶葉のb値としては10~30であることが好ましく、15~29であることが好ましい。
(焙煎茶葉の抽出物)
焙煎茶葉の抽出物は、焙煎茶葉を抽出原料として得られる抽出物である。ここで、本実施形態において使用する「焙煎茶葉の抽出物」には、焙煎茶葉を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液(濃縮物)、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
焙煎茶葉の抽出物は、例えば、後述する抽出物の作製工程により、抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液(濃縮物)、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物等として得ることができる。
焙煎茶葉の抽出液は、焙煎茶葉をそのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。
焙煎茶葉から抽出液を抽出するための抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの溶媒を使用することで効率的に抽出液を得ることができる。
焙煎茶葉から抽出液を抽出する際の抽出温度としては目的成分が抽出される限りにおいて特に限定されないが、大気圧下においては20℃~100℃であることが好ましく、50℃~100℃であることがより好ましく、70℃~99℃は更に好ましく、90℃~99℃であることが最も好ましい。上記の温度範囲で抽出を行うことで、効率的に抽出液を得ることができる。抽出pHとしては2.0~8.0で抽出することが好ましく、3.0~7.5で行うことが更に好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトンのような非プロトン性極性溶媒;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられるが、アルコール類を用いるのが好ましい。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水とアルコール等(低級脂肪族アルコールや多価アルコールなど、水と混合可能なもの)の混合液を抽出溶媒として使用する場合には、任意の比率、すなわち0:100超、100:0未満(容量比)の間で混和して用いることができ、その比率は作業効率や、目的成分又は除去すべき成分の抽出効率を考慮するなどして、適切な混合比率を選択することができる。例えば、水とアルコールとの混合溶媒を使用する場合には、水とアルコールとの混合比を90:10(容量比,以下同様に表記)以上、更には70:30以上とすることができ、あるいは10:90以下、15:85以下とすることができる。また、低脂肪族ケトンなどの非プロトン性極性溶媒は、水、又は水とアルコールの混合溶媒に適宜混和することができる。混合比率は、作業効率や、目的成分又は除去すべき成分の抽出効率を考慮するなどして、適切な混合比率を選択する。
抽出処理は、抽出原料である焙煎茶葉に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法、例えばバッチ式や連続式(ドリップ式)など、様々な方法に従って行うことができる。例えば、バッチ式の場合、抽出原料の10~50倍量(質量比)、好ましくは15~30倍量、更に好ましくは15~25倍量の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温、加温又は還流加熱下で攪拌又は静置して可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。
得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物を更に乾燥すると乾燥物が得られる。抽出液を濃縮して濃縮物又は濃縮液を得るための方法としては、真空蒸発法、凍結濃縮法、逆浸透濃縮法などの公知の手段を用いることができる。また、抽出物、濃縮物又は濃縮液を乾燥して乾燥物を得るための方法としては、凍結乾燥法、真空乾燥法、噴霧乾燥法等の公知の手段を採用することができる。
(カテキン類)
本明細書において「カテキン類」とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の8種をいうものとする。また、カテキン類の総含有量とは、抽出物におけるこれらの8種のカテキン類の含有量の総和を意味する。なお、焙煎茶葉の抽出物に含まれるこれらの8種類のカテキン類のそれぞれの含有量は、紫外部波長で検出する高速液体クロマトグラフィーを用いた方法によって測定・定量される。
焙煎茶葉の抽出物に含まれるカテキン類の総含有量の上限は、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましい。また、焙煎茶葉抽出物に含まれるカテキンの総含有量の下限は、特に制限されないが、1質量%以上であってよい。カテキン類の含有量が上記範囲にあることにより、苦渋味が少なく、かつ焙煎茶葉としての風味を保つことができる。
(遊離型カテキン)
本明細書において「遊離型カテキン」には、上述の8種の「カテキン類」のうち、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)の4種が該当する。また、遊離型カテキンの含有量とは、抽出物におけるこれらの4種のカテキン類の含有量の合計を意味する。一方、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)はエステル型カテキンと呼ぶ。
本実施形態に係る焙煎茶葉抽出物に含まれる遊離型カテキンの含有量は、1質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~7質量%であることがより好ましく、2質量%~5質量%であることが更に好ましい。遊離型カテキンの含有量が上記範囲にあることにより、苦味が少なく、かつ焙煎茶葉としての風味を保つことができる。
(遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率)
本実施形態に係る焙煎茶葉の抽出物中の遊離型カテキンの含有量をカテキン類の総含有量で除した、遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量(遊離型カテキンの含有量/カテキン類の総含有量)の比率は、上限が0.5以下であることが好ましく、0.49以下であることがより好ましい。また、当該比率の下限は、特に制限されないが、0.1より大きいことが好ましく、0.2より大きいことがより好ましい。当該比率が上記の範囲にあることにより、苦みと渋みのバランスのよい焙煎茶葉抽出物とすることができる。
(タンニン類)
焙煎茶葉抽出物に含まれるタンニン類量の上限は、20質量%以下であることが好ましく、18.5質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることが更に好ましい。また、焙煎茶葉抽出物に含まれるタンニン類量の下限は、特に制限されないが、1質量%以上であってよい。タンニン類の含有量が上記範囲にあることにより、苦渋味が少なく、かつ焙煎茶葉としての風味を保つことができる。
ここで、タンニン類とは、単一の成分名ではなく、植物に含有され、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと反応し、強く結合して難溶性の塩を形成する水溶性化合物であり、ポリフェノール類に含まれる成分の総称を意味する。
本発明におけるタンニン類量は、酒石酸鉄法(茶業研究報告71(1990)43-74)により測定することができる。
〔口腔内バイオフィルム形成阻害剤の用途〕
以下に本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤の用途を例示するが、本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、これらの例示以外にも焙煎茶葉抽出物が有するバイオフィルム形成阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。また、口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、他の組成物に配合して使用することができる。
本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を製剤化した場合、焙煎茶葉抽出物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。なお、本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、必要に応じて、抗酸化作用又は抗菌作用などを有する他の天然抽出物等とともに配合して有効成分として用いることができる。
(口腔用組成物)
本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、口腔内における細菌のバイオフィルム形成を阻害することを目的とした口腔用組成物に配合することができる。この場合、口腔内バイオフィルム形成阻害剤をそのまま配合してもよいし、口腔内バイオフィルム形成阻害剤を製剤化したものを配合してもよい。
口腔用組成物としては、例えば、練り歯磨き、液状歯磨き、泡状歯磨き等の歯磨き剤、入歯安定剤、歯肉マッサージクリーム、局所塗布剤、洗口剤、マウスウォッシュ、口中清涼剤、タブレット、口腔用ウエットティッシュ、口腔湿潤用ジェル剤等が挙げられる。
口腔用組成物に含まれる口腔内バイオフィルム形成阻害剤の配合量としては、有効成分である焙煎茶葉の抽出物が、0.01~5.0質量%となるように配合されることが好ましく、0.01~2.5質量%となるように配合されることがより好ましい。0.01質量%以上であることでバイオフィルム形成阻害能がより十分なものとなり、5.0質量%以下であることで口腔用組成物の風味に影響を与えにくくなる。
口腔用組成物の他の例としては、飲食品が挙げられる。ここで、飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品、機能性食品、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態に係る飲食品は、当該飲食品又はその包装に、焙煎茶の葉抽出物が有する好ましい作用を表示することのできる飲食品であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品及び医薬品であることが特に好ましい。
本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を飲食品に配合する場合は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの焙煎茶葉の抽出物が約0.1~1000mgになるように配合することが好ましい。
本実施形態の飲食品は、口腔内バイオフィルム形成阻害剤をその活性を妨げないような任意の飲食品に配合したものであってもよいし、これらの成分を主成分とする栄養補助食品であってもよい。
本実施形態の飲食品を製造する際には、そのまま粉末化、あるいは水溶液として飲食品とすることもできるほか、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類などの任意の助剤を添加して任意の形状の飲食品にすることができる。
本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、菓子、パン、キャンディー、チューインガム、グミ、ゼリー、チョコレート、錠菓、清涼飲料、その他種々の形態の健康・栄養補助食品、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などが挙げられる。これらの飲食品に口腔内バイオフィルム形成阻害剤を配合するときには、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
なお、本実施形態の口腔内バイオフィルム形成阻害剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、口腔内バイオフィルム形成阻害剤の製造例、試験例等を示すことにより本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
(試験例1:ほうじ茶(焙煎茶葉)の製造)
荒茶を焙煎することでほうじ茶を作成した。具体的には、表面温度200℃に熱したフライパンで荒茶を乾煎りし、焙煎の強度を3段階に分けて、3つのサンプルを作成し、焙煎強度が弱い側から焙煎強度1(サンプル1)、焙煎強度2(サンプル2)、焙煎強度3(サンプル3)とした。焙煎強度は、焙煎前の茶葉(荒茶)と焙煎後の茶葉との色差ΔEにより判断した。結果を表1に示す。
色差ΔEは茶葉を粉砕機(岩谷産業社製 サイレントミルサー IFM-S30G)にて5乃至10秒間粉砕したものを用い、分光式色差計(日本電色工業社製、装置名SE7700)を用いて表面色L*a*b*を求め、下記式1により求めた。焙煎前の荒茶をp、焙煎後のほうじ茶をqの添え字で示す。
(式1)ΔE = [(L*-L*)2 + (a*-a*)2 + (b*-b*)2 ] 1/2
Figure 2022162945000002
(試験例2:ほうじ茶(焙煎茶葉)の抽出物の作製)
上記の荒茶及び上記で作成したほうじ茶(サンプル1~3)をそれぞれ100gずつ測りとった。3Lのステンレス製寸胴容器(内径 約150mm)に95℃の熱水2L(20倍加水)を加え、前述の茶葉を投入し、水温を95℃に保ちながら抽出した。攪拌は、投入直後,5分,10分に各30秒ずつ、攪拌棒を用いて手動で約1rpmで行った。投入15分後、静かに篩(1段目 16メッシュ、2段目 80メッシュ)にあけて5分間水切りし、残渣(茶殻)と濾過液を濾別した。
得られた濾過液は約40~50℃程度になるまで放冷後、ネル布を用いて濾過し細かい茶葉などの夾雑物を除去した。次に、得られたネル布通過液を3000rpmで10分間遠心分離することで更に細かい夾雑物を除去した。なお遠心分離中は30度以下にならぬよう温度調整した。遠心分離後の上澄を分取し、エバポレーターで減圧濃縮後、凍結乾燥機に付し、ほうじ茶及び荒茶の抽出物を得た。荒茶及びサンプル1~3の抽出効率を表2に示す。
抽出効率は下記式2より、算出した。
(式2)
抽出効率(%)=可溶性固形分(Brix)(%)× 抽出液量 / 原料使用量(g)
なお、可溶性固形分(Brix)は、光学屈折率計(アタゴ社製、装置名RX-5000α-Bev)を用いて測定した。
Figure 2022162945000003
(試験例3:カテキン類の定量)
荒茶及びサンプル1~3の抽出物5mgを蒸留水1mLに溶解させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてそれぞれに含まれるカテキン類の含有量を測定した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は以下の条件で実施し、検量線法により定量して抽出物100mgあたりの含有量として求めた。荒茶及びサンプル1~3における各カテキン類の含有量(質量%)を表3に示す。また、各カテキン類の含有量より算出した、荒茶及びサンプル1~3におけるカテキン類の総含有量(質量%)、遊離型カテキンの含有量(質量%)、及び遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率を表4に示す。
<HPLC条件>
装置名:Waters Alliance 2695セパレーションモジュール
カラム : Wakosil-II 3C18HG φ3.0×250mm(和光純薬工業社製)
カラム温度:40℃
移動相A:1% ギ酸水溶液
移動相B:メタノール
流速:0.5mL/min
検出器:Waters 2487 デュアル波長吸光度検出器 又は Waters 2996 PDA検出器
検出波長:230nm
グラジエントプログラム:
[送液開始 条件I(A相:B相=85:15)]→
[0分~12分 条件Iから条件IIへ直線的に変化]→
[12分 条件II(A相:B相=65:35)]→
[12分~15分 条件IIから条件IIIへ直線的に変化]→
[15分 条件III(A相:B相=20:80)]→
[15分~15.5分 条件IIIから条件IVへ直線的に変化]→
[15.5分~25分 条件IV(A相:B相=85:15)を維持]
Figure 2022162945000004
(試験例4:タンニン類の定量)
タンニン類の定量は、阿南他(茶業研究報告71(1990)43-74)による酒石酸鉄法に準じて実施した。なお、測定に使用するリン酸緩衝液のpHは、5.5に変更して行った。得られた抽出物におけるタンニン類の含有量(質量%)を表4に示す。
<試験例3及び4の結果について>
表4に示した試験例3及び4の結果では、焙煎の強度が増すごとに、カテキン類の総含有量、タンニン類量が減少した。また、遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率は、荒茶と比べると減少したが、焙煎の強度を増してもほぼ一定であった。
Figure 2022162945000005
(試験例5:バイオフィルム形成阻害能の測定)
荒茶及び各サンプルの抽出物のバイオフィルム形成阻害能を、下記の方法で比較した。
まず、荒茶及び各サンプルの抽出物0.1gを、10mlの水へ溶解し、荒茶及び各サンプルの抽出物それぞれについて1.0w/v%の抽出物水溶液を作成し、当該溶液をフィルター(Minisart(登録商標)NMLシリンジフィルター、ザルトリウス社)を用いて濾過することで滅菌した。
続いて、滅菌済みの抽出物水溶液と、終濃度の2.5倍の濃度となるように作製したTryptic Soy Broth without dextrose培地(日本ベクトン・ディッキンソン社、以下、TSB培地と呼ぶ)と、純水と、を混合し、抽出物の終濃度が0.25w/v%又は0.5w/v%であり、TSB培地の終濃度が1倍である培養用液体培地を作成した。また、当該培養用液体培地には、終濃度が0.2%となるようにスクロースを加えた。続いて、培養用液体培地に、約1.0×10CFU/mlとなるようにストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159株を植菌し、混合した後に、37℃で20時間培養した。また、培養用液体培地が抽出物を含まない以外は上記と同様の条件で、ストレプトコッカス・ミュータンスを培養したものをコントロールとして用いた。
培養後、形成されたバイオフィルムをグラムサフラニン溶液(日本ベクトン・ディッキンソン社)で染色し、70%エタノールにより色素を抽出し、吸光度492nmを測定することにより、バイオフィルム形成量を測定した。測定にはマイクロプレートリーダー(SH-1000、コロナ電気社)を用いた。結果を図1に示す。
また各測定値に基づき、バイオフィルム形成阻害率(%)を算出した。結果を表5に示す。なお、バイオフィルム形成阻害率は下記式3より、算出した。
(式3)
バイオフィルム形成阻害率(%)={1-(荒茶又は各サンプルのバイオフィルム形成量/コントロールのバイオフィルム形成量)}×100(%)
(試験例6:焙煎茶葉抽出物の官能評価)
試験5で作成した1.0w/v%の抽出物水溶液を、純水で希釈し、各抽出物の終濃度が0.25w/v%、0.5w/v%となる官能評価用溶液を得た。得られた官能評価用溶液の苦渋味について、飲料の開発を担当する訓練された4人のパネラーによる官能評価試験を行った。結果を表5に示す。
A:苦渋味を感じない
B:苦渋味を少し感じる
C:苦渋味を感じる
D:苦渋味を強く感じる
Figure 2022162945000006
<試験例5及び6の結果について>
荒茶の抽出物は高いバイオフィルム形成阻害能を示したが、苦渋味が強かった。焙煎茶葉の抽出物は、焙煎の強度が強いほど苦渋味が改善された一方で、バイオフィルムの形成阻害能については、全てのサンプルにおいて荒茶の抽出物とほぼ同等の阻害能力を維持した。
以下に、本発明の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を含む口腔用組成物の配合例を示す。
〔配合例1〕
常法により、下記の組成を有する口腔内バイオフィルム形成阻害用マウスウォッシュを製造した。
口腔内バイオフィルム形成阻害剤 1.0質量部
第二リン酸カルシウム 45.0質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0質量部
グリセリン 20.0質量部
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0質量部
香料 1.0質量部
グリチルリチン 0.1質量部
精製水 30.0質量部
〔配合例2〕
常法により、下記の組成を有する口腔内バイオフィルム形成阻害用飴を製造した。
口腔内バイオフィルム形成阻害剤 1.0質量部
ショ糖 70.0質量部
水飴 30.0質量部
クエン酸 1.0質量部
香料 0.1質量部
水 20.0質量部
〔配合例3〕
常法により、下記の組成を有する口腔内バイオフィルム形成阻害用チューインガムを製造した。
口腔内バイオフィルム形成阻害剤 1.0質量部
チューインガムベース 20.0質量部
ショ糖 55.0質量部
水飴 20.0質量部
軟化剤 4.0質量部
香料 0.8質量部
〔配合例4〕
常法により、下記の組成を有する口腔内バイオフィルム形成阻害用練り歯磨きを製造した。
口腔内バイオフィルム形成阻害剤 2.0質量部
炭酸カルシウム 39.0質量部
ソルビトール 22.0質量部
カルボキシメチルセルロース 1.1質量部
ラウリル硫酸ナトリウム 1.3質量部
サッカリン 0.1質量部
香料 1.0質量部
塩酸クロルヘキシジン 0.01質量部
精製水 35.0質量部
本発明によれば、焙煎茶葉の抽出物を有効成分とする口腔内バイオフィルム形成阻害剤を提供することができる。

Claims (4)

  1. 焙煎茶葉の抽出物を有効成分とする口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
  2. 前記焙煎茶葉と、未焙煎の茶葉と、の色差(ΔE)は、8.00以上である、請求項1に記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
  3. 前記焙煎茶葉の抽出物は、カテキン類の総含有量が15質量%以下であり、遊離型カテキンの含有量とカテキン類の総含有量の比率が0.5以下であり、タンニン類の含有量が20質量%以下である、請求項1又は2に記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内バイオフィルム形成阻害剤を含む、口腔用組成物。
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