JP2022162822A - タイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】トレッド部が5つの陸部で構成されたタイヤを前提として、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させる。【解決手段】車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4を含む。内側ショルダー陸部11は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、5つの陸部4の中で最も小さい。内側ショルダー横溝16は、内側ショルダー周方向溝5からタイヤ軸方向に距離を隔てた内端から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。内側ショルダーサイプ17は、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。【選択図】図1
Description
本発明は、タイヤに関する。
従来、トレッド部がタイヤ軸方向に5つの陸部で構成されたタイヤ(以下、「5リブタイヤ」という場合がある。)が種々提案されている。また、下記特許文献1の空気入りタイヤは、5リブタイヤであって、クラウンリブ、ミドルリブ及びショルダーリブの各溝容積比を互いに関連付けて規制し、コーナリングパワーを高め、操縦安定性能の向上を期待している。
ところで、近年のタイヤには、車外騒音の低減と制動性能の向上とを両立させることが要求されており、とりわけ欧州においてこの傾向が顕著である。車外騒音の低減や制動性能の向上には、トレッド部の溝の容積を低減することが有効であると考えられている。しかしながら、このような手法は、ウェット性能の悪化を伴う。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、トレッド部が5つの陸部で構成されたタイヤを前提として、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることを主たる課題としている。
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、前記4本の周方向溝は、前記周方向溝のうちで最も前記内側トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝を含み、前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された内側ショルダー陸部を含み、前記内側ショルダー陸部は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、前記5つの陸部の中で最も小さく、前記内側ショルダー陸部には、複数の内側ショルダー横溝及び複数の内側ショルダーサイプが設けられており、前記内側ショルダー横溝は、前記内側ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に距離を隔てた内端から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー周方向溝から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びている。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダーサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されているのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記5つの陸部は、前記接地面のタイヤ軸方向の幅について、前記外側トレッド端側に位置する前記陸部ほど大きく形成されているのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部を含み、前記内側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の90%以上であるのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ赤道よりも前記外側トレッド端側に位置しているのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ショルダー周方向溝の最大の溝幅は、前記内側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の55~70%であるのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドル横溝が設けられているのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ミドル横溝の前記内側ショルダー周方向溝側の端と、前記内側ショルダーサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端とのタイヤ周方向の距離は、前記内側トレッド端における前記内側ショルダー横溝から前記内側ショルダーサイプまでのタイヤ周方向の距離の15%以下であるのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、前記内側ミドル陸部には、複数の内側ミドルサイプが設けられており、記内側ミドルサイプのそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に延び、かつ、前記内側ミドル陸部内で途切れるのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ミドルサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記内側ミドル陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の30%~70%であるのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ミドルサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されているのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ミドルサイプの前記面取り部の最大の深さは、前記内側ショルダーサイプの前記面取り部の最大の深さよりも小さいのが望ましい。
本発明のタイヤにおいて、前記内側ミドルサイプの最大の開口幅は、前記内側ショルダーサイプの最大の開口幅よりも小さいのが望ましい。
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに適用されても良い。
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側となる外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の50%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置に相当する。
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準装着状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準装着状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
トレッド部2は、外側トレッド端Toと内側トレッド端Tiとの間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝3と、4本の周方向溝3に区分された5つの陸部4とを含む。
周方向溝3は、4本の周方向溝3のうちで最も内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー周方向溝5を含む。さらに、周方向溝3は、内側クラウン周方向溝6、外側ショルダー周方向溝7及び外側クラウン周方向溝8を含む。内側クラウン周方向溝6は、タイヤ赤道Cと内側ショルダー周方向溝5との間に設けられている。外側ショルダー周方向溝7は、4本の周方向溝3のうちで最も外側トレッド端To側に配されている。外側クラウン周方向溝8は、外側ショルダー周方向溝7とタイヤ赤道Cとの間に配されている。
タイヤ赤道Cから外側ショルダー周方向溝7又は内側ショルダー周方向溝5の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの25%~35%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから外側クラウン周方向溝8又は内側クラウン周方向溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの5%~15%であるのが望ましい。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
本実施形態の各周方向溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
本実施形態の周方向溝3は、3.0mm以上の溝幅を有している。各周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの2.0%~8.0%であるのが望ましい。本実施形態では、外側ショルダー周方向溝7が、4本の周方向溝3のうち最も小さい溝幅を有している。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。各周方向溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmである。
5つの陸部4は、内側ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に配された内側ショルダー陸部11を含む。さらに5つの陸部4は、外側ショルダー陸部12、外側ミドル陸部13、クラウン陸部14及び内側ミドル陸部15を含む。外側ショルダー陸部12は、外側ショルダー周方向溝7のタイヤ軸方向外側に配されている。外側ミドル陸部13は、外側ショルダー周方向溝7と外側クラウン周方向溝8との間に区分されている。クラウン陸部14は、外側クラウン周方向溝8と内側クラウン周方向溝6との間に区分されている。内側ミドル陸部15は、内側ショルダー周方向溝5と内側クラウン周方向溝6との間に区分されている。
図2には、トレッド部2の接地時の接地面形状を示す拡大図が示されている。なお、この接地面形状は、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重の50%を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた50%荷重負荷状態の接地面の形状である。図2に示されるように、本発明において、内側ショルダー陸部11は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、5つの陸部4の中で最も小さい。
図3には、内側ショルダー陸部11及び内側ミドル陸部15の拡大図が示されている。図3に示されるように、内側ショルダー陸部11には、複数の内側ショルダー横溝16及び複数の内側ショルダーサイプ17が設けられている。
内側ショルダー横溝16は、内側ショルダー周方向溝5からタイヤ軸方向に距離を隔てた内端16aから前記内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。また、内側ショルダーサイプ17は、内側ショルダー周方向溝5から内側トレッド端Tiを超えた位置まで延びている。
本明細書において、「サイプ」とは、小さな幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つの内壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。サイプの前記幅は、望ましくは0.5~1.5mmである。サイプの開口部には、幅が1.5mmを超える面取り部が連なっても良い。また、サイプの底部には、幅が1.5mmを超えるフラスコ底が連なっても良い。
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができる。その理由として、以下のメカニズムが推察される。
図2及び図3で示される通り、本発明では、内側ショルダー陸部11の接地面の幅が小さいため、ウェット走行時、内側ショルダー陸部11がウェット路面上の水膜を切り易く、ウェット性能が維持される。また、このような内側ショルダー陸部11は、接地時の打音の低減も期待できる。また、内側ショルダー横溝16は、内側ショルダー周方向溝5と連通していないため、ポンピング音が小さく、ノイズ性能のさらなる向上が期待できる。
他方、発明者らは、接地面の幅が小さい内側ショルダー陸部11と、内側ショルダー周方向溝5に連通しない内側ショルダー横溝16との組み合わせは、接地面が接地するときに歪を招き易く、接地圧が不均一となって制動性能を損ねる傾向があることを知見した。
このような不具合に対応するために、上述の通り、本発明では、内側ショルダー陸部11に内側ショルダーサイプ17が設けられている。これにより、上述の接地面の歪が減少して接地圧が均一化し、優れた制動性能が得られる。本発明のタイヤは、以上のようなメカニズムにより、ウェット性能を維持しつつ、ノイズ性能及び制動性能を向上させることができると推察される。
図4には、図3のA-A線断面図が示されている。図4に示されるように、さらに望ましい態様として、本実施形態では、内側ショルダーサイプ17のそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部18で形成されている。これにより、上述の接地面の歪がより一層減少し、さらに優れた性能性能が得られる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、内側ショルダーサイプ17は、例えば、陸部の接地面とタイヤ半径方向に延びるサイプ壁とが実質的に直角に交わるエッジを有するものでも良い。
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
図2に示されるように、トレッド部2の5つの陸部4は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、外側トレッド端To側に位置する陸部4ほど大きく形成されているのが望ましい。このようなタイヤ1は、外側トレッド端Toに近い陸部がより大きな剛性を有する。このため、操舵によって接地面の中心が外側トレッド端To側に移動するときにおいても、操舵の手応えが安定し、舵角の増加に対してリニアにコーナリングフォースが発生する。これにより、優れた操縦安定性及び乗り心地性が得られる。
具体的には、内側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅Wisは、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの90%以上が望ましく、より望ましくは90%~99%である。同様に、内側ミドル陸部15の接地面のタイヤ軸方向の幅Wimは、クラウン陸部14の前記幅Wcの90%~99%であるのが望ましい。
外側ミドル陸部13の接地面のタイヤ軸方向の幅Womは、クラウン陸部14の前記幅Wcの101%~107%であるのが望ましい。外側ショルダー陸部12の接地面のタイヤ軸方向の幅Wosは、クラウン陸部14の前記幅Wcの114%~124%であるのが望ましい。このような本実施形態のタイヤ1は、例えば、車両の全輪に装着された場合において、前輪及び後輪がバランス良くコーナリングフォースを発揮し、優れた初期応答性及び操縦安定性が発揮される。
図3に示されるように、内側ショルダー周方向溝5の最大の溝幅W2は、内側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の幅Wisの55~70%であるのが望ましい。このような内側ショルダー周方向溝5は、ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く向上させる。
内側ショルダー横溝16は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で延びている。また、内側ショルダー横溝16は、例えば、内側ショルダー陸部11の接地面のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。内側ショルダー横溝16の内端16aと内側ショルダー周方向溝5との間には、サイプや他の溝が何も配されていない。内側ショルダー横溝16のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、内側ショルダー陸部11の接地面の幅Wisの70%~85%である。
内側ショルダーサイプ17は、例えば、内側ショルダー横溝16に沿って延びている。内側ショルダーサイプ17と内側ショルダー横溝16との角度差は、5°以下であり、本実施形態ではこれらが平行に延びている。
図4に示されるように、内側ショルダーサイプ17の深さd1は、例えば、3.0~5.0mmである。内側ショルダーサイプ17の面取り部18は、例えば、サイプ深さ方向に対して30~60°の角度θ1で傾斜した傾斜面18aを含む。面取り部18の深さd2は、例えば、0.5~2.0mmである。トレッド平面視における面取り部18の幅W3は、例えば、2.0~4.0mmである。このような面取り部18は、制動性能を確実に向上させる。
図3に示されるように、内側ミドル陸部15には、複数の内側ミドル横溝20が設けられている。内側ミドル横溝20は、内側ミドル陸部15をタイヤ軸方向に完全に横断している。このような内側ミドル横溝20は、ウェット性能を向上させるのに役立つ。但し、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、後述されるように、内側ミドル陸部15には、サイプのみが設けられるものでも良い。
内側ミドル横溝20は、例えば、一定の溝幅W5で直線状に延びている。内側ミドル横溝20の前記溝幅W5は、内側ショルダー陸部11の接地面内における内側ショルダー横溝16の最大の溝幅W4よりも小さく、前記溝幅W4の30%~50%であるのが望ましい。
内側ミドル横溝20は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本明細書の各図において、内側ミドル横溝20は、右下がりに傾斜しており、以下、このような傾斜の向きを「タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜している」という場合がある。内側ミドル横溝20のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、内側ショルダー横溝16のタイヤ軸方向に対する角度よりも大きく、例えば、15~45°である。このような内側ミドル横溝20は、ウェット走行時、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供する。
複数の内側ミドル横溝20のタイヤ周方向の1ピッチ長さは、例えば、複数の内側ショルダーサイプ17のタイヤ周方向の1ピッチ長さの80%~120%であり、望ましい態様ではこれらが同じとされている。
内側ミドル横溝20の内側ショルダー周方向溝5側の端(内側ミドル横溝20の溝中心線の端である。)と、内側ショルダーサイプの内側ショルダー周方向溝5側の端(内側ショルダーサイプ17のサイプ中心線の端である。)とのタイヤ周方向の距離L5は、内側トレッド端Tiにおける内側ショルダー横溝16から内側ショルダーサイプ17までのタイヤ周方向の距離L4の15%以下である。なお、前記距離L4は、内側トレッド端Ti上における内側ショルダー横溝16の溝中心線と内側ショルダーサイプ17のサイプ中心線との距離を意味する。これにより、内側ミドル横溝20と内側ショルダー横溝16とのピッチ音が重なりあうのを防ぐことができ、かつ、内側ショルダー陸部11と内側ミドル陸部15との間での接地圧の均一化を図ることができる。
図5には、クラウン陸部14、外側ミドル陸部13及び外側ショルダー陸部12の拡大図が示されている。図5に示されるように、クラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側に位置している。クラウン陸部14の外側接地面14aのタイヤ軸方向の幅Wcoは、クラウン陸部14の内側接地面14bのタイヤ軸方向の幅Wciよりも大きい。具体的には、前記幅Wcoは、クラウン陸部14の接地面のタイヤ軸方向の幅Wcの51%~55%である。これにより、クラウン陸部14の偏摩耗が抑制されつつ、操縦安定性が向上する。なお、前記外側接地面14aは、クラウン陸部14のタイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側の接地面を意味する。前記内側接地面14bは、クラウン陸部14のタイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側の接地面を意味する。
クラウン陸部14には、複数の外側クラウンサイプ21及び複数の内側クラウンサイプ22が設けられている。外側クラウンサイプ21は、外側クラウン周方向溝8から延び、かつ、クラウン陸部14内で途切れている。内側クラウンサイプ22は、内側クラウン周方向溝6から延び、かつ、クラウン陸部14内で途切れている。
外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22は、それぞれ、タイヤ赤道C及びクラウン陸部14のタイヤ軸方向の中心位置を横切っていないのが望ましい。外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22のタイヤ軸方向の長さL10は、例えば、クラウン陸部14の接地面の幅Wcの20%~40%である。
外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22は、それぞれ、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~45°である。望ましい態様では、外側クラウンサイプ21と内側クラウンサイプ22とが平行に配されており、さらに望ましい態様では、これらが内側ミドル横溝20(図3に示す)と平行に配されている。このような外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22は、クラウン陸部14及び内側ミドル陸部15の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
トレッド平面視において、外側クラウンサイプ21をその長さ方向に平行に延長した領域は、内側クラウンサイプ22と重複するのが望ましい。また、図1に示されるように、内側クラウンサイプ22の内側クラウン周方向溝6側の端は、内側ミドル横溝20の内側クラウン周方向溝6側の端に対してタイヤ周方向に位置ずれしているのが望ましい。このような外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22の配置は、各サイプのピッチ音をホワイトノイズ化し、ノイズ性能を高めることができる。
図3に示されるように、外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22のそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部23で形成されているのが望ましい。この面取り部23は、内側ショルダーサイプ17の面取り部18(図4に示す)と同様の傾斜面を含む。また、この面取り部23の深さ及び幅は、それぞれ、1.0~3.0mmである。
外側ミドル陸部13には、複数の外側ミドル横溝24が設けられている。外側ミドル横溝24は、外側ミドル陸部13をタイヤ軸方向に完全に横断している。このような外側ミドル横溝24は、ウェット性能を高めるのに役立つ。
外側ミドル横溝24は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。外側ミドル横溝24は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜している。外側ミドル横溝24のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ3は、例えば、40~50°である。このような外側ミドル横溝24は、ウェット路面での旋回性能を高めることができる。
本実施形態の外側ミドル横溝24は、タイヤ周方向の一方側に凸となる向きに湾曲している部分と、タイヤ周方向の他方側に凸となる向きに湾曲している部分とを含むことにより、S字状に湾曲している。このような外側ミドル横溝24は、ウェット性能をさらに高めることができる。
外側ミドル横溝24の外側クラウン周方向溝8側の端と、外側クラウンサイプ21の外側クラウン周方向溝8側の端とのタイヤ周方向の距離L6は、外側クラウンサイプ21のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1の15%以下であるのが望ましい。このような外側ミドル横溝24の配置は、外側ミドル陸部13及びクラウン陸部14の接地圧を均一化するのに役立つ。
外側ショルダー陸部12には、複数の外側ショルダー横溝30及び複数の外側ショルダーサイプ31が設けられている。外側ショルダー横溝30及び外側ショルダーサイプ31は、それぞれ、外側ショルダー陸部12をタイヤ軸方向に完全に横断している。
外側ショルダー横溝30及び外側ショルダーサイプ31は、例えば、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配されており、望ましい態様ではこれらが平行に配されている。このような外側ショルダー横溝30及び外側ショルダーサイプ31は、制動性能を高めるのに役立つ。
外側ショルダーサイプ31の外側ショルダー周方向溝7側の端と、外側ミドル横溝24の外側ショルダー周方向溝7側の端とのタイヤ周方向の距離L8は、外側トレッド端Toにおける外側ショルダー横溝30から外側ショルダーサイプ31までのタイヤ周方向の距離L7の15%以下であるのが望ましい。これにより、外側ミドル横溝24と外側ショルダー横溝30とのピッチ音が重なりあうのを防ぐことができ、かつ、外側ショルダー陸部12と外側ミドル陸部13との間での接地圧の均一化を図ることができる。
外側ショルダー横溝30は、例えば、溝のエッジが面取り部32で構成されているのが望まし。また、この面取り部32は、トレッド平面視における幅が外側トレッド端To側に向かって連続して小さくなっているのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部12の接地圧が均一化し、制動性能がさらに向上する。
外側ショルダーサイプ31は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部33で形成されているのが望ましい。また、外側ショルダーサイプ31は、内側ショルダーサイプ17と実質的に同じ断面形状を備えている。したがって、外側ショルダーサイプ31の断面形状について、上述の内側ショルダーサイプ17の構成を適用することができる。
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
図6には、他の実施形態の内側ショルダー陸部11及び内側ミドル陸部15の拡大図が示されている。図6に示されるように、この実施形態では、内側ミドル陸部15に複数の内側ミドルサイプ25が設けられている。なお、この実施形態の他の陸部は、上述の実施形態と同様の構成を備えており、ここでの説明は省略される。
内側ミドルサイプ25のそれぞれは、内側ショルダー周方向溝5からタイヤ軸方向に延び、かつ、内側ミドル陸部15内で途切れている。内側ミドルサイプ25のタイヤ軸方向の長さL9は、例えば、内側ミドル陸部15の前記幅Wimの30%~70%である。このような内側ミドルサイプ25は、ウェット性能とノイズ性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
内側ミドルサイプ25は、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜している。内側ミドルサイプ25のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、15~45°である。
内側ミドルサイプ25は、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されている。内側ミドルサイプ25の面取り部34は、上述の外側クラウンサイプ21及び内側クラウンサイプ22の面取り部23(図5に示す)と実質的に同じである。また、内側ミドルサイプ25の面取り部33の最大の深さは、内側ショルダーサイプ17の面取り部18の最大の深さよりも小さいのが望ましい。また、内側ミドルサイプ25の最大の開口幅は、内側ショルダーサイプ17の最大の開口幅よりも小さいのが望ましい。このような内側ミドルサイプ25は、内側ミドル陸部15の接地圧を均一化し、制動性能をさらに高めることができる。
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1の基本パターンを有するサイズ235/55R19のタイヤが表1の仕様に基づき試作された。また、各種性能を比較するための基準となるタイヤ(基準タイヤ)として、トレッド部の各陸部の幅が図1に示されるものと同一であり、かつ、各陸部には溝及びサイプが設けられていないタイヤが試作された。比較例として、図7に示されるように、内側ショルダー陸部aに、内側ショルダー横溝bと、内側ショルダーサイプcとが設けられたタイヤが試作された。比較例の内側ショルダーサイプcは、内側ショルダー周方向溝dに連通しておらず、かつ、面取り部を含んでいない。比較例のタイヤは、上述の事項を除き、図1で示されるものと実質的に同じパターンを有している。各テストタイヤのウェット性能、ノイズ性能及び制動性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:19×7.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
装着リム:19×7.0J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:排気量2000cc、四輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
<ウェット性能>
上記テスト車両でウェット路面を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例のタイヤのウェット性能を100とする評点で示されており、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
上記テスト車両でウェット路面を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例のタイヤのウェット性能を100とする評点で示されており、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
<ノイズ性能>
上記テスト車両でドライ路面を40~100km/hで走行し、このときの車内のノイズの最大の音圧が測定された。結果は、基準タイヤの前記音圧との差である音圧減少量が、比較例の前記音圧減少量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、前記ノイズの最大の音圧が小さく、優れたノイズ性能を発揮していることを示す。
上記テスト車両でドライ路面を40~100km/hで走行し、このときの車内のノイズの最大の音圧が測定された。結果は、基準タイヤの前記音圧との差である音圧減少量が、比較例の前記音圧減少量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、前記ノイズの最大の音圧が小さく、優れたノイズ性能を発揮していることを示す。
<制動性能>
上記テスト車両でドライ路面上において100km/hから急制動したときの制動距離が測定された。結果は、基準タイヤの前記制動距離との差である制動距離改善量が、比較例の前記制動距離改善量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、制動距離改善量が大きく、制動性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
上記テスト車両でドライ路面上において100km/hから急制動したときの制動距離が測定された。結果は、基準タイヤの前記制動距離との差である制動距離改善量が、比較例の前記制動距離改善量を100とする指数で示されている。この指数が大きい程、制動距離改善量が大きく、制動性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されつつ、ノイズ性能及び制動性能が向上していることが確認できた。
2 トレッド部
3 周方向溝
4 陸部
5 内側ショルダー周方向溝
11 内側ショルダー陸部
16 内側ショルダー横溝
17 内側ショルダーサイプ
18 面取り部
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端
3 周方向溝
4 陸部
5 内側ショルダー周方向溝
11 内側ショルダー陸部
16 内側ショルダー横溝
17 内側ショルダーサイプ
18 面取り部
To 外側トレッド端
Ti 内側トレッド端
Claims (13)
- 車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両装着時に車両外側となる外側トレッド端と、車両装着時に車両内側となる内側トレッド端と、前記外側トレッド端と前記内側トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる4本の周方向溝と、前記4本の周方向溝に区分された5つの陸部とを含み、
前記4本の周方向溝は、前記周方向溝のうちで最も前記内側トレッド端側に配された内側ショルダー周方向溝を含み、
前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に配された内側ショルダー陸部を含み、
前記内側ショルダー陸部は、接地面のタイヤ軸方向の幅について、前記5つの陸部の中で最も小さく、
前記内側ショルダー陸部には、複数の内側ショルダー横溝及び複数の内側ショルダーサイプが設けられており、
前記内側ショルダー横溝は、前記内側ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に距離を隔てた内端から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びており、
前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー周方向溝から前記内側トレッド端を超えた位置まで延びている、
タイヤ。 - 前記内側ショルダーサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されている、請求項1に記載のタイヤ。
- 前記5つの陸部は、前記接地面のタイヤ軸方向の幅について、前記外側トレッド端側に位置する前記陸部ほど大きく形成されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
- 前記陸部は、タイヤ赤道上に配されたクラウン陸部を含み、
前記内側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の90%以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。 - 前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ赤道よりも前記外側トレッド端側に位置している、請求項4に記載のタイヤ。
- 前記内側ショルダー周方向溝の最大の溝幅は、前記内側ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の55~70%である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、
前記内側ミドル陸部には、前記内側ミドル陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数の内側ミドル横溝が設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。 - 前記内側ミドル横溝の前記内側ショルダー周方向溝側の端と、前記内側ショルダーサイプの前記内側ショルダー周方向溝側の端とのタイヤ周方向の距離は、前記内側トレッド端における前記内側ショルダー横溝から前記内側ショルダーサイプまでのタイヤ周方向の距離の15%以下である、請求項7に記載のタイヤ。
- 前記5つの陸部は、前記内側ショルダー周方向溝を介して前記内側ショルダー陸部と隣接する内側ミドル陸部を含み、
前記内側ミドル陸部には、複数の内側ミドルサイプが設けられており、
前記内側ミドルサイプのそれぞれは、前記内側ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に延び、かつ、前記内側ミドル陸部内で途切れる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。 - 前記内側ミドルサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記内側ミドル陸部の接地面のタイヤ軸方向の幅の30%~70%である、請求項9に記載のタイヤ。
- 前記内側ミドルサイプのそれぞれは、両側のサイプエッジのそれぞれが面取り部で形成されている、請求項9又は10に記載のタイヤ。
- 前記内側ミドルサイプの前記面取り部の最大の深さは、前記内側ショルダーサイプの前記面取り部の最大の深さよりも小さい、請求項11に記載のタイヤ。
- 前記内側ミドルサイプの最大の開口幅は、前記内側ショルダーサイプの最大の開口幅よりも小さい、請求項11又は12に記載のタイヤ。
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