JP2022161731A - 無線機および無線システム - Google Patents
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Abstract
【課題】送受信機が最適な偏波を用いて高品質な通信を実行する無線機を、汎用の商用無線チップを用いて小型且つ安価に実現可能とする。【解決手段】本発明の好ましい一側面は、非同期の搬送波と同期した情報信号を持つ複数の無線機の出力信号を各々分岐し、分岐後の各信号を伝送線路を介して合成し、合成後の各信号を空間的に直交する異なるアンテナから送信する無線システムである。【選択図】 図1
Description
本発明は、電磁波を用いて情報を伝送する無線通信システムに係り、送受信機間に電磁波散乱体が存在し見通し通信ができない環境で高品質の通信を実現する無線通信システムに関する。
製造現場における生産性向上を目的に、製造に係る機器にセンサおよびアクチュエータを設置し、当該機器の稼動を監視・制御するシステムに対する期待が高まっている。センサおよびアクチュエータの機器への設置の自由度向上およびセンサからの測定情報収集とアクチュエータへの制御情報通達に使用するハードウエアコスト低減の目的で、無線技術による該情報の収集と通達に関心が集まっている。
無線通信では、外部に開かれた自由空間を伝送路とするために、送受信機間に電磁波を散乱する物体が存在する場合、該送信機から受信機へと直接電磁波が到達することはできない。このため、送受信機を取り囲む電磁波散乱体によって複数回反射し送信機から受信機へと到来する反射波を用いて、通信を行うことになる。電磁波が該散乱体で反射される場合、散乱体の表面で反射する電磁波は、伝搬方向に直角なベクトルである電磁波エネルギーの方向を示す偏波が、該表面の法線ベクトルと該伝搬方向ベクトルによって決定される固有な変化を被る。
また、送受信機間を直線で結ぶ直接伝搬路の途中に電磁波エネルギーの一部を透過する遮蔽物がある場合は、同電磁波は該遮蔽物により反射され形成される反射波と遮蔽物中を進行する透過波が形成される。この透過波は遮蔽物に入射する際と透過物より出射する際に、一般に偏波を変化させる。このような波を反射波に対して屈折波と呼ぶこともある。
空間と無線機間で電磁波エネルギーの送受信を行うアンテナは電磁波の偏波と該アンテナ上に誘起する電流の方向が一致する場合に最も効率よいエネルギーの授受が可能で、該方向が直交する場合はエネルギーの授受はなされない。従って、反射波を用いる無線通信では、無線機に到来する電磁波の偏波方向の制御が通信品質の維持に有効である。
一般に送受信を行う無線機間に存在する電磁波散乱体の形状を知ることは極めて困難である。このため、送信機は用いる偏波を変化させて通信を行い受信機は変化する偏波の中から最も効率よく到来波のエネルギーを取り込める偏波を選択することにより、送受信機が最適な偏波を選択して、送受信機関で高効率な点磁気エネルギーの授受を可能とし通信品質を良好に保つことが有効である。
送信機が偏波を変化させるためには、空間的に直交する二つのアンテナから同相の搬送波を用いて重み付けをして送信することが必要となる。情報信号を二つの同相な搬送波を用いて送信することは、一つの無線機で複数の位相の揃った電磁波を送信することにより実現可能である。しかし、そのような一般的な汎用の商用無線チップの入手は現状困難で、専用チップの開発あるいは特殊用途の非一般的な無線チップの流用をしなければならず、無線機の高コスト化の問題が生じる。
一つの搬送波を用いて情報信号を送受信する汎用の商用無線チップは一般に入手可能で、このような無線チップを複数用いることが出来れば、無線機の高コスト化を避けつつ、偏波を変化させて送信を行う無線機を実現可能となる。この場合、二つの無線チップから出力される一般に位相が不揃いの二つの搬送波を用いて、位相の揃った二つの同一周波数の搬送波を実現する技術が必要となる。
搬送波出力を二分岐して、各分岐出力を移相器を介して空間的に直交する2アンテナより出力することにより送信波の偏波を変更する技術が、特許文献1に述べられている。
二つの搬送波出力を各々分岐し各分岐出力の一方ずつを合成して二つのアンテナから出力する技術が特許文献2に述べられている。
回転偏波を用いる通信で使用される2系統の電磁波の偏波を、実用上制御することができる無線機及び無線システムを提供することが、特許文献3に述べられている。
係る特許文献1の技術は、一つの搬送波を分岐して互いに同期している二つの搬送波を形成し、夫々に搬送波周波数帯で重みを付け空間的に直交する二つのアンテナから放射する。このため、高周波ミキサあるいは高周波移相器等の高周波領域での付加回路を必要とするので、汎用の商用チップのみによる高周波回路要素の実現が出来ない。よって、無線機のハートウェアの大型化および高コスト化の問題があった。
更に、特許文献2の技術は、二つのアンテナから出力される搬送波の同期が取れず、結果として非同期の二つの搬送波を分岐・合成して同期した二つの搬送波を形成し、両者を空間的に直交する二つのアンテナより送信することが出来ないという課題があった。
そこで、送受信機が最適な偏波を用いて高品質な通信を実行する無線機を、汎用の商用無線チップを用いて小型且つ安価に実現可能とすることが求められる。
本発明の好ましい一側面は、非同期の搬送波と同期した情報信号を持つ複数の無線機の出力信号を各々分岐し、分岐後の各信号を伝送線路を介して合成し、合成後の各信号を空間的に直交する異なるアンテナから送信する無線システムである。
本発明の好ましい他の一側面は、情報信号を発生する情報信号発生回路と、前記情報信号を第1の搬送波でアップコンバートする第1の送信無線モジュールと、前記情報信号を前記第1の搬送波と非同期の第2の搬送波でアップコンバートする第2の送信無線モジュールと、前記第1の送信無線モジュールの出力を分岐する第1の伝送線路および第2の伝送線路と、前記第2の送信無線モジュールの出力を分岐する第3の伝送線路および第4の伝送線路とを備え、前記第1の伝送線路および第3の伝送線路の出力を合成して第1のアンテナより送信し、前記第2の伝送線路および第4の伝送線路の出力を合成して前記第1のアンテナと空間的に直交する第2のアンテナより送信する、無線機である。
送受信機が最適な偏波を用いて高品質な通信を実行する無線機を、汎用の商用無線チップを用いて小型且つ安価に実現可能となる
以下、実施例を図面を用いて説明する。本実施例は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、一つの情報信号を二分岐し夫々に重み付けした後、搬送波と変調用中間周波でアップコンバートした互いに非同期の二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{1}。
また、その他の一例を挙げるならば、一つの情報信号を二分岐し夫々に重み付けした後、搬送波と変調用中間周波でアップコンバートした互いに非同期の二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの伝送線路のうちの一つを用いて合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{2}。
また、その他の一例を挙げるならば、一つの情報信号を二分岐し夫々に重み付けした後、二つの異なる周波数の搬送波でアップコンバートし合成した互いに非同期の二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{3}。
また、その他の一例を挙げるならば、二つの情報信号の各々を二分岐し夫々に重み付けした後、変調用中間周波で直交変調した後搬送波でアップコンバートした互いに非同期の二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{4}。
また、その他の一例を挙げるならば、一つの情報信号を二分岐し夫々に重み付けした後互いに直交関係にある中間周波数波でアップコンバートした後、夫々を非同期の搬送波でアップコンバートした二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{5}。
また、その他の一例を挙げるならば、一つの情報信号を二分岐し夫々に重み付けした後、異なる周波数の搬送波と異なる周波数の変調用中間周波でアップコンバートした互いに非同期の二つの異なる周波数の高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{6}。
また、その他の一例を挙げるならば、二つの情報信号の二組の夫々の組の二つの情報信号を変調用中間周波で直交変調した後搬送波でアップコンバートした互いに非同期の二つの高周波信号を夫々二分岐し、各分岐の一方ずつを互いに独立関係にある搬送波周波数帯の4つの移相器のうちの一つを介して合成し、合成出力の夫々を空間的に直交する第一のアンテナおよび第二のアンテナより空間に放射することを特徴とする{7}。
実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの例を図1および2を用いて説明する。偏波が任意の周波数で回転する電磁波を用いて通信を行う方式を回転偏波無線通信方式と称する(例えば特許文献3参照)。回転偏波は偏波が搬送波より低い周波数で回転するために、その回転角を複数の市販の無線モジュールで制御することが可能である。回転偏波は空間的に直交する二つのアンテナから同期の取れた搬送波でアップコンバートされる信号を伝送するために、2系統の搬送波の同期を取ることが必須となる。しかし、複数の市販の無線モジュールをそのまま組み合わせても同期が保証されていない。無線通信で使用される搬送波の周波数は通常300MHzから3GHzの間であり、この周波数領域では商用のデジタル信号処理デバイスで2系統の異なる搬送波位相を制御することはデジタル信号処理のクロックの速度が数GHzから数10GHzとなるために一般に困難である。本実施例のシステムは、市販されている複数の無線モジュールを用いて、回転偏波を実現する。
図1は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの無線機の構成を説明する図である。無線システムは送信機101および受信機201から構成される。
送信機101では情報信号発生回路1の出力が二分岐され、各々の分岐に第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13により重み付けされる。重みづけされた各々が、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92が夫々具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりアップコンバートされる。
第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92は、市販のモジュールを流用可能である。情報信号発生回路1、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13は、例えばマイコンが使用可能である。第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13は、例えば重み可変の構成として調整を可能とする。本実施例のシステムでは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92の後段にはパッシブ回路しか配置されていないので、法律などに適合済の市販のモジュールのスペックを変更することがない。
第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92の出力各々が、第一の送信分配器23および第二の送信分配器24によりに分配される。
第一の送信分配器23の第一の分配出力は第一の送信搬送波周波数帯移相器41を介し第一の送信合成器21の第一の入力に結合し、第一の送信分配器23の第二の分配出力は第二の送信搬送波周波数帯移相器42を介し第二の送信合成器22の第一の入力に結合する。
第二の送信分配器24の第一の分配出力は第三の送信搬送波周波数帯移相器43を介し第一の送信合成器21の第二の入力に結合し、第二の送信分配器24の第二の分配出力は第四の送信搬送波周波数帯移相器44を介し第二の送信合成器22の第二の入力に結合する。
第一の送信分配器23および第二の送信分配器24の合成出力は、各々空間的に互いに直交する第一の送信アンテナ31および第二の送信アンテナ32に結合する。
受信機201では、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ131および第二の受信アンテナ132の出力の各々は、第一の受信分配器123および第二の受信分配器124の入力となる。
第一の受信分配器123の第一の分配出力は第一の受信搬送波周波数帯移相器141を介し第一の受信合成器121の第一の入力に結合し、第一の受信分配器123の第二の分配出力は第二の受信搬送波周波数帯移相器142を介し第二の受信合成器122の第一の入力に結合する。
第二の受信分配器124の第一の分配出力は第三の受信搬送波周波数帯移相器143を介し第一の受信合成器121の第二の入力に結合し、第二の受信分配器124の第二の分配出力は第四の受信搬送波周波数帯移相器144を介し第二の受信合成器122の第二の入力に結合する。
第一の受信分配器123および第二の受信分配器124の合成出力の各々が、第一の受信無線モジュール191および第二の受信無線モジュール192が夫々が具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりダウンコンバートされ、各々が第一の受信重み回路12および第二の受信重み回路14により重み付けされ、情報信号検出回路2に入力される。
図2を用いて、送信機101の搬送波周波数帯の動作を説明する。図2では説明の簡単化の為、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13の重み係数a,bをA+B,A-Bとし、第一の送信搬送波周波数帯移相器41と第二の送信搬送波周波数帯移相器42と第三の送信搬送波周波数帯移相器43と第四の送信搬送波周波数帯移相器44を夫々長さd1とd2とd3とd4の伝送線路としている。
ωci(i=1,2)は搬送波の周波数、ψi(i=1,2)は搬送波の初期位相、ki(i=1,2)は波数である。図2の式より明らかなように、二つの搬送波周波数ω1、ω2の差がその絶対値に比べて一桁以上小さい場合、dj(j=1,2,3,4)とAおよびBの値を適切に選ぶことにより、二つの搬送波の同期がとれない場合(ψ1≠ψ2)においても、高周波領域で同期の取れた二つの搬送波を得ることができる。なお式中ωciをωiと表記する場合がある。
実施例の作用をより詳細に説明する。回転偏波では空間的に直交するアンテナに入力される信号が、以下の条件を満足する必要がある。
cos(ωt+Φ)・cos(Ωt+Ψ)
cos(ωt+Φ)・sin(Ωt+Ψ) …(1)
ここで、ω>>Ωであり、(1)に示すように、高周波ω(搬送波=キャリアの周波数)が同位相で、低周波Ω(偏波回転の周波数)が直交位相(=90°)で同期していなければならない。
cos(ωt+Φ)・cos(Ωt+Ψ)
cos(ωt+Φ)・sin(Ωt+Ψ) …(1)
ここで、ω>>Ωであり、(1)に示すように、高周波ω(搬送波=キャリアの周波数)が同位相で、低周波Ω(偏波回転の周波数)が直交位相(=90°)で同期していなければならない。
上式(1)を三角関数の公式を用いて書き直すと以下になる。
cos{(ω+Ω)/2+(Φ+Ψ)/2}+cos{(ω-Ω)/2+(Φ-Ψ)/2}
sin{(ω+Ω)/2+(Φ+Ψ)/2}-sin{(ω-Ω)/2+(Φ-Ψ)/2} …(2)
図2の式
(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d1)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d3)
(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d2)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d4) …(3)
が(2)の条件に整合するためには、
cos(x+π/2)=-sin(x),cos(x-π/2)=sin(x)の公式より
k1d2=k1d1-π/2,k2d4=k2d3+π/2、B=0 …(4)
のとき
Acos(ω1t+Φ1+k1d1)+Acos(ω2t+Φ2+k2d3)
Asin(ω1t+Φ1+k1d1)-Asin(ω2t+Φ2+k2d3) …(5)
となり式(2)の形を満足することがわかる。
cos{(ω+Ω)/2+(Φ+Ψ)/2}+cos{(ω-Ω)/2+(Φ-Ψ)/2}
sin{(ω+Ω)/2+(Φ+Ψ)/2}-sin{(ω-Ω)/2+(Φ-Ψ)/2} …(2)
図2の式
(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d1)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d3)
(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d2)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d4) …(3)
が(2)の条件に整合するためには、
cos(x+π/2)=-sin(x),cos(x-π/2)=sin(x)の公式より
k1d2=k1d1-π/2,k2d4=k2d3+π/2、B=0 …(4)
のとき
Acos(ω1t+Φ1+k1d1)+Acos(ω2t+Φ2+k2d3)
Asin(ω1t+Φ1+k1d1)-Asin(ω2t+Φ2+k2d3) …(5)
となり式(2)の形を満足することがわかる。
よって、
k1d2=k1d1-π/2,k2d4=k2d3+π/2、B=0 …(4)
の条件を満たすことで、回転偏波が実現できる。
k1d2=k1d1-π/2,k2d4=k2d3+π/2、B=0 …(4)
の条件を満たすことで、回転偏波が実現できる。
なお、式(2)と(3)の比較からわかるようにω1=ω2の場合はω+Ω=ω-Ωであるから、Ω=0となる。この場合は、偏波回転周波数がゼロつまり偏波が回転せず「回転偏波」ではなくなる。このため、ω1=ω2の場合は、式(3)で、
Φ1+k1d1=Φ2+k2d3,および,Φ1+k1d2=Φ2+k2d4+π …(6)
の条件で(1)のωに関する条件を直接満足させて、
A=cos(Ωt+Ψ),および,B=sin(Ωt+Ψ) …(7)
とすればよいことになる。ここで、ω>>Ωであるから、(7)式の条件はベースバンド信号の処理でありデジタル的に実現できる。
Φ1+k1d1=Φ2+k2d3,および,Φ1+k1d2=Φ2+k2d4+π …(6)
の条件で(1)のωに関する条件を直接満足させて、
A=cos(Ωt+Ψ),および,B=sin(Ωt+Ψ) …(7)
とすればよいことになる。ここで、ω>>Ωであるから、(7)式の条件はベースバンド信号の処理でありデジタル的に実現できる。
上記原理を用いて、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92の出力の位相を調整する手順について以下説明する。
(1)ω1≠ω2の場合
まず、ω1とω2を設計あるいは測定により定める。波数k=c/ω(c:光速)であるから、ω1とω2よりk1,k2が求まる。従って、式(4)にk1,k2を適用し、d1,d2,d3,d4を設計により決定する。本実施例では、d1,d2,d3,d4は具体的には線路の長さ(あるいは遅延)であるから、例えば、プリント基板あるいは半導体の設計において具体的に導体パターンの引きやすさで設計者が決めることになる。
まず、ω1とω2を設計あるいは測定により定める。波数k=c/ω(c:光速)であるから、ω1とω2よりk1,k2が求まる。従って、式(4)にk1,k2を適用し、d1,d2,d3,d4を設計により決定する。本実施例では、d1,d2,d3,d4は具体的には線路の長さ(あるいは遅延)であるから、例えば、プリント基板あるいは半導体の設計において具体的に導体パターンの引きやすさで設計者が決めることになる。
図2のモデルでB=0であるから、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92の出力振幅は同じAになる。そこで、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13の重みに関しては、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92の利得のアンバランスを調整するように、重みaとbを設定すればよい。マイコン等のコントローラが情報信号をデジタル化した信号に基づいて、情報信号発生回路1の出力を生成する構成で実現可能となる。
(2)ω1=ω2の場合。なお、ω1とω2の差がその絶対値に比べて一桁以上小さい場合を含む。
(1)と同様にk1,k2を求め、式(6)にk1,k2を適用し、d1,d2,d3,d4を設計により決定する。次にA,Bの設定については、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92では回転偏波周波数が生成できないので、ベースバンド信号として
A=cos(Ωt+Ψ)×I(t)
B=sin(Ωt+Ψ)×I(t)
を決定する。特別なd1,d2,d3,d4の設計値によっては、A=0あるいはB=0となる。I(t)は情報信号である。
A=cos(Ωt+Ψ)×I(t)
B=sin(Ωt+Ψ)×I(t)
を決定する。特別なd1,d2,d3,d4の設計値によっては、A=0あるいはB=0となる。I(t)は情報信号である。
前のケース(1)とは異なり、マイコン等のコントローラは情報信号とcos(Ωt+Ψ)およびsin(Ωt+Ψ)のベースバンド周波数の正弦波の積のデジタル信号を出力する。この場合は、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92に異なるデジタル情報を同期して供給する必要がある。
一つの方法では、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13の重みの値を、情報信号1(I(t))の時間に合わせてA=cos(Ωt+Ψ)、B=sin(Ωt+Ψ)で変化させる。他の方法では、情報信号1の第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92に対する出力を、A=cos(Ωt+Ψ)×I(t)、B=sin(Ωt+Ψ)×I(t)のように変える構成とする。
受信機201の動作は送信機101の動作と、信号の流れが逆転するだけで動作原理は同様である。一般に一つの商用および個人用用途の無線システムで使用できる周波数帯域幅は搬送波周波数に比べて桁違いに小さいので、本技術により、同期の取れていない二つの搬送波を用いて、搬送波周波数帯域の能動回路要素を用いることなく、搬送波周波数より桁違いに低いデジタル回路が使用可能な周波数領域における信号処理によって同期する二つの搬送波によって無線通信が可能となる。
本実施例では、図2のd2とd3の経路を利用し、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92の信号を分岐して合成することによって、搬送波と回転偏波の周波数の位相をA,B,d1,d2,d3,d4を使って独立に制御できる。よって、汎用の商用無線チップを用いて送信電磁波の偏波制御が実現され、送受信機が最適な偏波を用いて高品質な無線通信を行うシステムを小型且つ安価に実現することができる。
図3を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図3は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機117および受信機217の違いは、送信分配器と送信合成器および受信分配器と受信合成器の間の経路が増えている点である。
すなわち、第一の送信分配器23の第一の分配出力と第一の送信合成器21の第一の入力の間に、第一の送信搬送波周波数帯移相器41と第五の送信搬送波周波数帯移相器71が並列して挿入され、第一の送信分配器23の第二の分配出力と第二の送信合成器22の第一の入力の間に第二の送信搬送波周波数帯移相器42と第六の送信搬送波周波数帯移相器72が並列して挿入される。
また、第二の送信分配器24の第一の分配出力と第一の送信合成器21の第二の入力の間に第三の送信搬送波周波数帯移相器43と第七の送信搬送波周波数帯移相器73が並列して挿入され、第二の送信分配器24の第二の分配出力と第二の送信合成器22の第二の入力の間に第四の送信搬送波周波数帯移相器44と第八の送信搬送波周波数帯移相器74が並列して挿入される。
また、第一の受信分配器123の第一の分配出力と第一の受信合成器121の第一の入力の間に第一の受信搬送波周波数帯移相器141と第五の受信搬送波周波数帯移相器171が並列して挿入され、第一の受信分配器123の第二の分配出力と第二の受信合成器122の第一の入力の間に第二の受信搬送波周波数帯移相器142と第六の受信搬送波周波数帯移相器172が並列して挿入される。また、第二の受信分配器124の第一の分配出力と第一の受信合成器121の第二の入力の間に第三の受信搬送波周波数帯移相器143と第七の受信搬送波周波数帯移相器173が並列して挿入され、第二の受信分配器124の第二の分配出力と第二の受信合成器122の第二の入力の間に第四の受信搬送波周波数帯移相器144と第八の受信搬送波周波数帯移相器174が並列して挿入されることである。
本実施例によれば、送信分配器の各出力信号を送信合成器の各入力に伝送する際に位相の重み付けの自由度が増え、且つ受信分配器の各出力信号を受信合成器の各入力に伝送する際に位相の重み付けの自由度が増えるので、同期がとれていない二つの搬送波の同期をとることが容易となり、偏波制御通信を実現する無線機の偏波制御の精度を向上させることが出来て、通信品質向上に効果がある。
図4を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図4は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの送信機の構成を説明する図である。
図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機102および受信機202の違いは、第一の送信搬送波周波数帯移相器41と第二の送信搬送波周波数帯移相器42と第三の送信搬送波周波数帯移相器43と第四の送信搬送波周波数帯移相器44が第一の送信伝送線路45と第二の送信伝送線路46と第三の受信伝送線路47と第四の送信伝送線路48と置換わっていることである。また、第一の受信搬送波周波数帯移相器141と第二の受信搬送波周波数帯移相器142と第三の受信搬送波周波数帯移相器143と第四の受信搬送波周波数帯移相器144が、第一の受信伝送線路145と第二の受信伝送線路146と第三の受信伝送線路147と第四の受信伝送線路148と置換わっていることである。
本実施例によれば、図1の実施例と比べて位相機能を持つ回路要素をプリント基板上に印刷技術で実現可能となるので、無線機の小型化・軽量化・低コスト化に効果がある。
図5を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図5は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機103および受信機203の違いは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92と第一の受信無線モジュール191と第二の受信無線モジュール192が、互いに直交する二つの搬送波発生回路を有する第三の送信無線モジュール93と第四の送信無線モジュール94と第三の受信無線モジュール193と第四の受信無線モジュール194に置換わっていることである。
互いに直交する搬送波は独立に情報伝送が可能であるから、本実施例によれば、同一の信号を二つの独立な無線経路で送受信することが可能となり、通信の信頼性を図1の実施例に比べて向上させる効果がある。
図6を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの送信機の他の例を説明する。図6は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機104および受信機204の違いは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92と第一の受信無線モジュール191と第二の受信無線モジュール192が、互いに直交する正相中間周波数発生回路および直交中間周波数発生回路を有する第五の送信無線モジュール95と第六の送信無線モジュール96と第五の受信無線モジュール195と第六の受信無線モジュール196に置換わっていることである。
また、他の違いは、新たに第二の情報信号発生回路3と第二の情報信号検出回路4および第三の送信重み回路15および第四の送信重み回路17と第三の受信重み回路16および第四の受信重み回路18とを具備することである。
送信においては情報信号発生回路1の出力が二分岐され、各々の分岐に第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13により重み付けされる。重みづけされた各々が、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92が夫々具備する正相中間周波数発生回路によりアップコンバートされ、第二の情報信号発生回路3の出力が二分岐され、各々の分岐に第三の送信重み回路15および第四の送信重み回路17により重み付けされる。重みづけされた各々が、第一の送信無線モジュール91および第二の送信無線モジュール92が夫々具備する直交中間周波数発生回路によりアップコンバートされる。同一の無線モジュール内の二つの中間周波数帯でアップコンバートされた信号が合成されたのちに搬送波周波数帯でアップコンバートされる。
受信においては、第一の受信無線モジュール191および第二の受信無線モジュール192内において搬送波周波数帯でダウンコンバートされた信号が二分岐される。各分岐が夫々正相中間周波数発生回路および直交中間周波数発生回路でダウンコンバートされる。各モジュールの各々のコンバートされた信号が、第一の受信重み回路12および第二の受信重み回路14を介して情報信号検出回路2に入力し、第三の受信重み回路16および第四の受信重み回路18を介して第二の情報信号検出回路4に入力する。
本実施例によれは、図1の実施例と比べて二倍の情報を無線伝送可能となるので、無線システムのスループットを向上させる効果がある。
図7を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図7は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機105および受信機205の違いは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92と第一の受信無線モジュール191と第二の受信無線モジュール192が、搬送波発生回路を有する第七の送信無線モジュール97と第八の送信無線モジュール98と第七の受信無線モジュール197と第八の受信無線モジュール198に置換わっていることである。
また送信側では、新たに第一の送信ミキサ25と第二の送信ミキサ26と送信中間周波数発生回路27と送信中間周波数移相回路28を備える。
また受信側では、第一の受信ミキサ125と第二の受信ミキサ126と受信中間周波数発生回路127と受信中間周波数移相回路128を具備する。
送信機105では、第一の送信重み回路11の出力が第一の送信ミキサ25と送信中間周波数発生回路27によりアップコンバートされる。第二の送信重み回路12の出力が第二の送信ミキサ26と送信中間周波数発生回路27と送信中間周波数移相回路28により第一の送信重み回路11の出力とは異なる位相でアップコンバートされる。アップコンバートされた各々が、第七の送信無線モジュール97と第八の送信無線モジュール98に入力される。
受信機205では、第七の受信無線モジュール197と第八の受信無線モジュール198の出力の各々が第一の受信ミキサ125と受信中間周波数発生回路127によりダウンコンバートされる。第二の受信ミキサ126と受信中間周波数発生回路127と受信中間周波数移相回路128により第七の受信無線モジュール197の出力とは異なる位相でダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた各々が、第一の受信重み回路12と第二の受信重み回路14に入力される。
本実施例によれば、非同期の二つの搬送波に夫々異なる振幅と異なる位相で重み付けすることが可能となり、空間的に直交する2アンテナから送受信する電磁波の偏波制御の自由度が増大するので偏波制御の精度が向上し、送受信機が用いる偏波の最適化が容易になるので送受信機通信品質向上に効果がある。
図8を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図8は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図1の実施例の送信機101および受信機201と本実施例の送信機106および受信機206の違いは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92および第一の受信無線モジュール191と第二の受信無線モジュール192が、互いに周波数の異なる搬送波発生回路および中間周波数発生回路を有する第九の送信無線モジュール81と第十の送信無線モジュール82と第九の受信無線モジュール181と第十の受信無線モジュール182に置換わっていることである。
本実施例によれば、同期の取れた二つの搬送波を得る為に用いる二つの搬送波を発生する一組の無線モジュールにおいて搬送波周波数を一致させる必要がないので、該無線モジュールとして用いる無線チップの選択の自由度が増し、偏波を制御する無線機の製造コストの極小化に効果がある。
図9を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図9は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図8の実施例の送信機106および受信機206と本実施例の送信機112および受信機212の違いは、第一の送信無線モジュール91と第二の送信無線モジュール92および第一の受信無線モジュール191と第二の受信無線モジュール192が、周波数の異なる二つの中間周波数発生回路および同一の周波数の搬送波発生回路を有する第十九の送信無線モジュール85と第二十の送信無線モジュール86と第十九の受信無線モジュール185と第二十の受信無線モジュール185に置換わっていることである。
本実施例によれば、異なる周波数の中間周波数波と搬送波によって異なる周波数の搬送波周波数帯の信号を送受信の両モジュールが発生可能となる。このため、送受信機が有する二つの送信モジュールと受信モジュール間の各搬送波周波数発生回路間の干渉によるスプリアスの発生がないので図6の実施例と同様の効果を送受信機の動作を安定させて得ることが出来る
図10を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図10は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図6の実施例の送信機104および受信機204と本実施例の送信機107および受信機207の違いは、第五の送信無線モジュール95と第六の送信無線モジュール96に対して各モジュールの正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号を発生させる送信ベースバンド回路5を情報信号発生回路1と第一の送信重み回路11と第二の送信重み回路13に代えて具備する点である。また、受信機207では、第五の受信無線モジュール195と第六の受信無線モジュール196に対して各モジュールの正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路によってダウンコンバートされる二組計四つの受信ベースバンド信号を検出する受信ベースバンド回路6を情報信号検出回路2と第一の受信重み回路111と第二の受信重み回路113に代えて具備することである。
本実施例によれば、図6の実施例の効果を得る為のデジタル回路をデジタル信号処理技術を用いてベースバンド回路で実験可能となるので、図6の実施例と比べて無線機の小型化・低コスト化を図る効果がある。
本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの例を図11、12および図2を用いて説明する。
図11は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。無線システムは送信機108および受信機208から構成される。
送信機108では情報信号発生回路1の出力が二分岐され、各々の分岐に第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13により重み付けされる。重み付けされた各々が、第九の送信無線モジュール81および第十の送信無線モジュール82が夫々具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりアップコンバートされる。アップコンバートされた各々が、送信90度ハイブリッド回路35の二つの入力となり該送信90度ハイブリッド回路35の二つの出力が、各々空間的に互いに直交する第一の送信アンテナ31および第二の送信アンテナ32に結合する。
受信機201では、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ131および第二の受信アンテナ132の出力の各々は、受信90度ハイブリッド回路135の二つの入力となり該受信90度ハイブリッド回路135の二つの出力の各々が、第九の受信無線モジュール181および第十の受信無線モジュール182が夫々具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた各々が、第一の受信重み回路12および第二の受信重み回路14により重み付けされ、情報信号検出回路2に入力される。
図12及び図2を用いて、送信機101の搬送波周波数帯の動作を説明する。図2では説明の簡単化の為、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13の重み係数a,bをA+B、A-Bとし、第一の受信搬送波周波数帯移相器141と第二の受信搬送波周波数帯移相器142と第三の受信搬送波周波数帯移相器143と第四の受信搬送波周波数帯移相器144を夫々長さd1とd2とd3とd4の伝送線路としている。
ωi(i=1,2)は搬送波の周波数、ψi(i=1,2)は搬送波の初期位相、ki(i=1,2)は波数である。本実施例では、第一および第二の送信分配と第一および第二の送信合成器の機能は送信90度ハイブリッド回路35で実現されるので搬送波周波数帯においてd1とd2とd3とd4の電気長は等しくπ/2である。
この場合図12の上式群で示される異周波数搬送波の条件が当てはまり同式群内の搬送波同相条件を適用することにより、第九の送信無線モジュールと第十の送信無線モジュールに含まれる異なる搬送波の差の半分の周波数の余弦波および正弦波で重み付けされた異なる搬送波の周波数の平均周波数の同相の搬送波が空間的に直交する2アンテナから空間に放射される。よって、搬送波に比べて桁違いに低い周波数で偏波が回転する電磁波で通信を行うことが可能となる。
第九の送信無線モジュールと第十の送信無線モジュールに含まれる異なる搬送波の差をデジタル信号処理可能な程度に下げることにより、すべての偏波を該異なる搬送波の差の二分の一の一周期に相当する時間内に実現可能となり、デジタル信号処理により同時間内の特定の時刻を選択することで、送受信機で最適偏波を用いて送受信を行う機能を実現することが出来る。
偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの例を図13、図2および12を用いて説明する。図13は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。無線システムは送信機109および受信機209から構成される。
送信機109では、正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号を発生させる送信ベースバンド回路5の各出力が第五の送信無線モジュール95および第六の送信無線モジュール96において正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路で変調される。それらの合成信号が搬送波周波数発生回路でアップコンバートされて第五の送信無線モジュール95および第六の送信無線モジュール96から出力される。
第五の送信無線モジュール95および第六の送信無線モジュール96の各々の出力が、送信ラットレース回路36に入力される。該送信ラットレース回路36の和出力は直接第一の送信アンテナ31より空間に放射される。該送信ラットレース回路36の差出力は第五の送信伝送線路37を介して第二の送信アンテナ32より空間に放射される。
受信機201では、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ131および第二の受信アンテナ132の出力は直接および第五の受信伝送線路137を介して受信ラットレース回路136に入力される。該受信ラットレース回路136の出力は、各々が第五の受信無線モジュール195および第六の受信無線モジュール196が夫々具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた夫々が、二組計四つの受信ベースバンド信号を検出する受信ベースバンド回路6に入力する。
送信機109の搬送波周波数帯の動作を図2および12を用いて説明する。図2では説明の簡単化の為、第一の送信重み回路11および第二の送信重み回路13の重み係数a,bをA+B,A-Bとし、第一の受信搬送波周波数帯移相器141と第二の受信搬送波周波数帯移相器142と第三の受信搬送波周波数帯移相器143と第四の受信搬送波周波数帯移相器144を夫々長さd1とd2とd3とd4の伝送線路としている。
ωi(i=1,2)は搬送波の周波数、ψi(i=1,2)は搬送波の初期位相、ki(i=1,2)は波数である。本実施例では、第一および第二の送信分配と第一および第二の送信合成器の機能は送信ラットレース回路36および第五の送信伝送線路37で実現されるので搬送波周波数帯においてd1とd2の電気長は等しくπ/2でありd3の電気長はπでありd4の電気長は3π/4である。
この場合図12の下式群で示される同一周波数搬送波の条件が当てはまり同式群内の搬送波同相条件を適用することにより、第五の送信無線モジュールと第六の送信無線モジュールに含まれる中間周波数の余弦波および正弦波で重み付けされた同相の搬送波が空間的に直交する2アンテナから空間に放射される。よって、搬送波に比べて桁違いに低い中間周波数で偏波が回転する電磁波で通信を行うことが可能となる。
本実施例では第五の送信無線モジュールと第六の送信無線モジュールに含まれる中間周波数をデジタル信号処理可能な程度に採ることにより、すべての偏波を該中間周波数の一周期に相当する時間内に実現可能となり、デジタル信号処理により同時間内の特定の時刻を選択することで、送受信機で最適偏波を用いて送受信を行う機能を実現することが出来る。
図14を用いて、偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの例を説明する。図14は無線システムの構成を説明する図である。無線システムは送信機119および受信機219から構成される。
送信機119では、正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号を発生させる送信ベースバンド回路5の各出力が第五の送信無線モジュール95および第六の送信無線モジュール96において正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路で変調される。それらの合成信号が搬送波周波数発生回路でアップコンバートされて、第五の送信無線モジュール95および第六の送信無線モジュール96から出力される。
第五の送信無線モジュール95の出力は第一の高周波デバイダ221で分配され、第一の分配出力は第一の送信90度ハイブリッド回路35の第一入力端子に入力する。第二の分配出力は第二の送信90度ハイブリッド回路49の第一入力端子に第一の送信遅延線路223を介して入力する。第六の送信無線モジュール96の出力は第二の高周波デバイダ222で分配され、第一の分配出力は第一の送信90度ハイブリッド回路35の第二入力端子に入力する。第二の分配出力は第二の送信90度ハイブリッド回路49の第二入力端子に第二の送信遅延線路224を介して入力する。
第一の送信90度ハイブリッド回路35の二つの出力は第一の送信コンバイナ225により合成され第一の送信アンテナ31から空中に放射される。第二の送信90度ハイブリッド回路49の二つの出力は第二の送信コンバイナ226により合成され第二の送信アンテナ32から空中に放射される。
空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ131および第二の受信アンテナ132の出力は夫々、第一の受信高周波デバイダ421および第二の受信高周波デバイダ422で分配される。各受信高周波デバイダの出力ペアは夫々第一の受信90度ハイブリッド回路135および第二の受信90度ハイブリッド回路149の入力端子ペアに入力する。
第一の受信90度ハイブリッド回路135の第一出力および第二出力は第一の受信高周波コンバイナ425の第一入力端子および第二の受信高周波コンバイナ426の第一入力端子に直接入力する。第二の受信90度ハイブリッド回路149の第一出力および第二出力は第一の受信高周波コンバイナ425の第二入力端子および第二の受信高周波コンバイナ426の第二入力端子に夫々第一の受信遅延線路423および第二の受信遅延線路424を介して入力する。
第一の受信高周波コンバイナ425および第二の受信高周波コンバイナ426の出力は夫々、各々が第五の受信無線モジュール195および第六の受信無線モジュール196夫々が具備する中間周波数発生回路および搬送波発生回路によりダウンコンバートされる。夫々がダウンコンバートされた二組計四つの受信ベースバンド信号が、それを検出する受信ベースバンド回路6に入力する。
本実施例の効果は図9の実施例と同様であるが、二つの搬送が同期していない無線機の出力を用いた偏波が搬送波に比べて桁違いに低い中間周波数で偏波が回転する電磁波の偏波回転の伝搬方向に直交する面での偏波回転の軌跡をより真円に近づけることが出来るので、無線機の偏波制御の精度向上可能であり、通信品質向上に効果がある。
図15を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図15は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図13の実施例の送信機109および受信機209と本実施例の送信機129および受信機229の違いは、送信ベースバンド回路5と受信ベースバンド回路6が、第二の送信べースバンド回路75および第二の受信ベースバンド回路76に置換わっていることである。
第二の送信べースバンド回路75は、正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号と、異なる周波数の同二組計四つの送信ベースバンド信号の、総計八つの送信ベースバンド信号を発生させる。第二の受信ベースバンド回路76は、総計八つのベースバンド信号を入力する。
本実施例によれば、ベースバンド周波数帯の異なる二つの周波数の差の周波数で偏波を回転させる電磁波を用いて通信が可能となるので、図13の実施例と比べて送受信機が最適な偏波を選択するベースバンド信号処理の信号処理速度を低減できるので、ベースハンド回路の電力消費を抑えることが出来て装置の低消費電力化に効果かあるとともにベースバンド回路に採用する信号処理チップの価格を下げることが出来て装置の低コスト化に効果がある。
図16を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図16は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図15の実施例の送信機129および受信機229と本実施例の送信機139および受信機239の違いは、送信ラットレース回路36と第五の送信伝送線路37および第五の受信伝送線路137と受信ラットレース回路136が、送信90度ハイブリッド回路35および受信90度ハイブリッド回路135に置換わっていることである。
一般にラットレース回路の寸法は受信90度ハイブリッド回路より大きいので、本実施例によれば図15の効果をより小さい寸法の装置で実現できるのと装置の小型化に効果がある。
図17を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの例を説明する。図17は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。無線システムは送信機110および受信機210から構成される。
送信機110は、二組の正相デジタル信号発生回路と直交デジタル信号発生回路により、計四つの送信ベースバンド信号を発生させる送信ベースバンド回路5を備える。
送信ベースバンド回路5の第一の正相デジタル信号出力が第十一の送信無線モジュール83内の第一のデジタルアナログ変換器51に入力される。該第一のデジタルアナログ変換器51のアナログ出力が第一の余弦送信ミキサ53により第一の余弦中間周波発振器55でアップコンバートされる。第一の余弦送信ミキサ53の出力は、第一の内部送信合成回路57の第一の入力となる。
送信ベースバンド回路5の第一の直交デジタル信号出力が第十一の送信無線モジュール83内の第二のデジタルアナログ変換器52に入力される。該第二のデジタルアナログ変換器52のアナログ出力が第二の余弦送信ミキサ54により第一の正弦中間周波発振器56でアップコンバートされる。第二の余弦送信ミキサ54の出力は、第一の内部送信合成回路57の第二の入力となる。
送信ベースバンド回路5の第二の正相デジタル信号出力が、第十二の送信無線モジュール84内の第三のデジタルアナログ変換器61に入力される。該第三のデジタルアナログ変換器61のアナログ出力が第二の余弦送信ミキサ63により第二の余弦中間周波発振器65でアップコンバートさる。第二の余弦送信ミキサ63の出力が、第二の内部送信合成回路67の第一の入力となる。
送信ベースバンド回路5の第二の直交デジタル信号出力が、第十二の送信無線モジュール84内の第四のデジタルアナログ変換器62に入力される。該第四のデジタルアナログ変換器62のアナログ出力が第四の余弦送信ミキサ64により第二の正弦中間周波発振器66でアップコンバートされる。第四の余弦送信ミキサ64の出力が、第二の内部送信合成回路67の第二の入力となる。
第一の内部送信合成回路57および第二の内部送信合成回路67の出力は第一の内部送信ミキサ58および第二の内部送信ミキサ68により第一の送信搬送波発生器59および第二の送信搬送波発生器69でアップコンバートされる。アップコンバートされた両者は送信ラットレース回路36に入力される。該送信ラットレース回路36の和出力は直接第一の送信アンテナ31より空間に放射され、該送信ラットレース回路36の差出力は第五の送信伝送線路37を介して第二の送信アンテナ32より空間に放射される。
受信機210では、空間的に互いに直交する第一の受信アンテナ131および第二の受信アンテナ132の出力は直接および第五の受信伝送線路137を介して受信ラットレース回路136に入力される。
該受信ラットレース回路136の和出力は、第十一の受信無線モジュール183内の第一の内部受信ミキサ158により第一の受信搬送波発生器159でダウンコンバートされ第一の内部受信分配回路157により二分岐される。第一の分岐出力は第一の余弦受信ミキサ153により第一の余弦中間周波発振器155でダウンコンバートされ第一のアナログデジタル変換器151によりデジタル信号に変換される。第二の分岐出力は第一の正弦受信ミキサ154により第一の正弦中間周波発振器156でダウンコンバートされ第二のアナログデジタル変換器152によりデジタル信号に変換される。
該受信ラットレース回路136の差出力は、第十二の受信無線モジュール184内の第二の内部受信ミキサ168により第二の受信搬送波発生器169でダウンコンバートされ第二の内部受信分配回路167により二分岐される。第一の分岐出力は第二の余弦受信ミキサ163により第二の余弦中間周波発振器165でダウンコンバートされ第三のアナログデジタル変換器161によりデジタル信号に変換される。第二の分岐出力は第二の正弦受信ミキサ164により第二の正弦中間周波発振器166でダウンコンバートされ第四のアナログデジタル変換器162によりデジタル信号に変換される。以上の二組計4つのデジタル信号は受信ベースバンド信号を検出する受信ベースバンド回路6に入力する。送信機110の搬送波周波数帯の動作は図13の実施例と同様である。
本実施例によれば図13の実施例と同様に、第五の送信無線モジュールと第六の送信無線モジュールに含まれる中間周波数をデジタル信号処理可能な程度に採ることにより、すべての偏波を該中間周波数の一周期に相当する時間内に実現可能となり、デジタル信号処理により同時間内の特定の時刻を選択することで送受信機で最適偏波を用いて送受信を行う機能を実現することが出来る。
図18を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図18は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの送信機の構成を説明する図である。
図17の実施例の送信機110および受信機210と本実施例の送信機115および受信機215の違いは、送信ベースバンド回路5と受信ベースバンド回路6が、第三の送信べースバンド回路77と第三の受信ベースバンド回路78に置換わっていることである。
第三の送信べースバンド回路77は、正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号と異なる周波数の同二組計四つの送信ベースバンド信号の総計八つの送信ベースバンド信号を発生させ且つ異なる周波数の正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路の各組が合成され計四つの送信ベースバンド信号を出力する。
第三の受信ベースバンド回路78は、総計八つのベースバンド信号を入力し且つ異なる周波数の正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路の各組を合成する。
本実施例よれば図13の実施例に対して図14の実施例が持つ効果を図16の実施例に対して得ることができる。
図19を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図19は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図17の実施例の送信機110と本実施例の送信機111の違いは、第一の内部送信合成回路57および第二の内部送信合成回路67の出力を夫々分岐して、第一のフィードバックアナログデジタル変換器38および第二のフィードバックアナログデジタル変換器39を介して、送信ベースバンド回路5にデジタル信号として入力することである。
送信ベースバンド回路5は第一の内部送信合成回路57および第二の内部送信合成回路67の出力をモニタして、第一の送信アンテナ31と第二の送信アンテナ32から空間に放射される電磁波の搬送波周波数帯域における初期位相をそれぞれ観測する。観測結果に基づいて夫々の初期位相の差が最小となるように、第五の送信無線モジュール95と第六の送信無線モジュール96の各モジュールの正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号の重み付けを調節する。
本実施例によれば、図17の実施例に比べて、直交する二つの送信アンテナから放射する搬送波の同期が安定してとれるようになり、送信機の偏波制御の精度が向上し、通信品質の向上に効果がある。
図20を用いて、本実施例による偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの他の例を説明する。図20は偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの構成を説明する図である。
図19の実施例の送信機111と本実施例の送信機112の違いは以下のとおりである。すなわち、第一の内部送信合成回路57および第二の内部送信合成回路67の出力を夫々分岐して、送信和信号合成回路33を用いて和信号を生成し送信差信号合成回路34を用いて差信号を生成する。和信号と差信号各々を第一のフィードバックアナログデジタル変換器38を介して送信ベースバンド回路5にデジタル信号として入力する。
送信ベースバンド回路5は第一の内部送信合成回路57および第二の内部送信合成回路67の出力をモニタして、第一の送信アンテナ31と第二の送信アンテナ32から空間に放射される電磁波の搬送波周波数帯域における初期位相をそれぞれ観測する。夫々の初期位相の差が最小となるように、第五の送信無線モジュール95と第六の送信無線モジュール96の各モジュールの正相中間周波数発生回路と直交中間周波数発生回路に供給する二組計四つの送信ベースバンド信号の重み付けを調節する。
本実施例によれば、図19の実施例に比べて、直交する二つの送信アンテナから放射する搬送波の同期の状態を高周波領域で調べることが出来るので同期状態の検出精度が向上し、同期の安定化に効果がある。
図21を用いて、本実施例の偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの動作を説明する。図21は、本実施例の偏波を制御して高品質通信を行う無線システムを適用した昇降機監視・制御システムの構成図の例である。
本実施例の昇降機監視・制御システム1100は、昇降機が設置される建物1101の内部を複数の昇降カゴ1111が昇降する。建物1101の内部の床部および天井部には偏波制御機能を有する基地局偏波制御無線機1103と基地局2直交偏波一体アンテナ1102が結合し設置される。昇降カゴ1111の外部天井と外部床面には其々端末局2直交偏波一体アンテナ1112が設置され、高周波ケーブル1114を用いて偏波制御無線端末機1113に結合している。
基地局偏波制御無線機1103と偏波制御無線端末機1113は、建物1101の内部を無線伝送媒体とするので、該建物1101の内壁および該昇降機の外壁により電磁波は多重反射を受け、複数の偏波制御無線端末機1113が送信する電磁波が基地局偏波制御無線機1103に到達する際の偏波は同一ではない。また、昇降カゴはその相対位置を変えるので、エレベータが停止する際に基地局偏波制御無線機1103と偏波制御無線端末機1113が無線通信を行う場合に、そのつど複数の偏波制御無線端末機1113から基地局偏波制御無線機1103に到達する電磁波の偏波は一般に変化する。
本実施例によれば、基地局偏波制御無線機1103と偏波制御無線端末機1113が相対的位置を固定する時間内に、無線チャネル測定モードとデータ伝送モードの処理を行うことで、相対固定位置の予測が困難である昇降機システムにおいて、昇降機と固定設置の偏波制御無線機との間で信頼性高い無線通信を無線通信を行うことができるので、昇降カゴ1111の制御・監視を建物1101より有線接続手段を用いずに遠隔で実施できるので、ケーブル等の該有線接続手段を削除可能で、同一の輸送能力をより小さい建物体積で実現でき、あるいは同一の建物体積で昇降機寸法を増大させることによる輸送能力向上を実現できる。
図22を用いて、本実施例では、偏波を制御して高品質通信を行う無線システムの動作を説明する。図22は、本実施例の偏波を制御して高品質通信を行う無線システムを適用した屋外データ無線伝送システムの構成図の例である。
本実施例の屋外データ転送システム1200は、建屋1201のベランダ1202に偏波制御無線端末1212が設置され、屋外に偏波制御無線基地局1211が設置されている。偏波制御無線基地局1211と偏波制御無線端末1212の間には、樹木1203が存在し見通し通信を妨げている。樹木は無線通信に用いる電磁波にとって誘電体として振る舞い、樹木に到来した電磁波の一部を該樹木内部を透過させる。電磁波は樹木の透過の際に一般に偏波が変化し、屋外環境に存在する樹木は時間と共に物理的形態を変動させるので、該偏波の変化は予測不能且つ動的である。
本実施例の無線機は動的な偏波制御が可能であるため、樹木による透過波の不規則な偏波の変化に追随して送受信機が最適な偏波を用いることにより高品質の無線通信を安定して実現することが可能となる。
以上説明した実施例によれば、異なる周波数の非同期の搬送波と同一の周波数の同期した情報信号を持つ複数の無線機の出力信号を各々分岐し、分岐後の各信号を伝送線路を介して合成し、合成後の各信号を空間的に直交する異なるアンテナから送受信することにより、非同期の複数の無線機とそれら無線機にデジタル信号を供給する一つのベースバンドデバイスで、偏波が回転する(二つの無線機の場合は二次元、三つの無線機の場合は三次的)の電磁波を用いて無線通信が可能となる。このため、回転偏波無線システム特有の最適送受信偏波の選択による通信品質向上、特定偏波の選択による情報秘匿などが実現可能となる。
また、非同期の二つの搬送波を用いて、搬送波周波数より低い周波数帯域の二つの信号を該二つの搬送波でアップコンバートすることにより、空間的に直交する二つのアンテナから搬送波周波数帯で同期の取れた異なる高周波信号を空間に放射できる。このため、搬送波周波数より低い周波数帯域の二つの信号の組合せにより無線機から放射される電磁波の偏波を制御することが可能となり、送受信機間に見通し伝搬路が形成されない無線通信環境において、送受信機が最適な偏波を用いて高品質な通信を実行する無線機を、汎用の商用無線チップを用いて小型且つ安価に実現可能となる。
1…情報信号発生回路
2…情報信号検出回路
3…第二の情報信号発生回路
4…第二の情報信号検出回路
5…送信ベースバンド回路
6…受信ベースバンド回路
91…第一の送信無線モジュール
92…第二の送信無線モジュール
2…情報信号検出回路
3…第二の情報信号発生回路
4…第二の情報信号検出回路
5…送信ベースバンド回路
6…受信ベースバンド回路
91…第一の送信無線モジュール
92…第二の送信無線モジュール
Claims (15)
- 非同期の搬送波と同期した情報信号を持つ複数の無線機の出力信号を各々分岐し、分岐後の各信号を伝送線路を介して合成し、合成後の各信号を空間的に直交する異なるアンテナから送信する無線システム。
- 前記空間的に直交する異なるアンテナから、偏波が任意の周波数で回転する電磁波を送信する、請求項1記載の無線システム。
- 共通の信号源から前記情報信号を生成し、生成した前記情報信号を分岐し任意の重みづけをして前記複数の無線機に入力する、請求項2記載の無線システム。
- 前記伝送線路を介して合成した信号は、
第1の信号が、(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d1)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d3)、
第2の信号が、(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d2)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d4)、
(ただし、A+B,A-Bは前記複数の無線機夫々の出力振幅、ω1,ω2は前記複数の無線機夫々の搬送波周波数、Φ1,Φ2は前記複数の無線機夫々の搬送波の初期位相、k1,k2は波数、d1とd3は前記第1の信号を合成する伝送線路の長さ、d2とd4は前記第2の信号を合成する伝送線路の長さ、ω1、ω2の差はその絶対値に比べて一桁以上小さい)
であり、
Φ1+k1d1=Φ2+k2d3,および,Φ1+k1d2=Φ2+k2d4+π
A=cos(Ωt+Ψ),および,B=sin(Ωt+Ψ)
(ただし、Ωは偏波の回転周波数、Ψは偏波の回転周波数の初期位相)
である、請求項3記載の無線システム。 - 前記複数の無線機は、共通する情報信号を非同期の搬送波を用いてアップコンバートする、請求項1記載の無線システム。
- 前記複数の無線機は、共通する情報信号を非同期の搬送波と非同期の中間周波数波を用いてアップコンバートする、請求項1記載の無線システム。
- 情報信号を発生する情報信号発生回路と、前記情報信号を第1の搬送波でアップコンバートする第1の送信無線モジュールと、前記情報信号を前記第1の搬送波と非同期の第2の搬送波でアップコンバートする第2の送信無線モジュールと、前記第1の送信無線モジュールの出力を分岐する第1の伝送線路および第2の伝送線路と、前記第2の送信無線モジュールの出力を分岐する第3の伝送線路および第4の伝送線路とを備え、
前記第1の伝送線路および第3の伝送線路の出力を合成して第1のアンテナより送信し、前記第2の伝送線路および第4の伝送線路の出力を合成して前記第1のアンテナと空間的に直交する第2のアンテナより送信する、無線機。 - 前記第1のアンテナと前記第2のアンテナから、偏波が任意の周波数で回転する電磁波を送信する、請求項7記載の無線機。
- 前記第1の搬送波と非同期の第2の搬送波の周波数の差が、その絶対値に比べて一桁以上小さい、請求項8記載の無線機。
- 前記第1の送信無線モジュールへの情報信号を重みづけする第1の重み回路と、前記第2の送信無線モジュールへの情報信号を重みづけする第2の重み回路を備える、請求項9記載の無線機。
- 前記第1のアンテナへの入力が、(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d1)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d3)、
前記第2のアンテナへの入力が、(A+B)cos(ω1t+Φ1+k1d2)+(A-B)cos(ω2t+Φ2+k2d4)、
(ただし、A+Bは前記第1の送信無線モジュールの出力振幅、A-Bは前記第2の送信無線モジュールの出力振幅、ω1は前記第1の搬送波の周波数、ω2は前記第2の搬送波の周波数、Φ1は前記第1の搬送波の初期位相、Φ2は前記第2の搬送波の初期位相、d1は前記第1の伝送線路の長さ、d2は前記第2の伝送線路の長さ、d3は前記第3の伝送線路の長さ、d4は前記第4の伝送線路の長さ、k1=c/ω1、k2=c/ω2、cは光速、ω1、ω2の差はその絶対値に比べて一桁以上小さい)
であり、
Φ1+k1d1=Φ2+k2d3,および,Φ1+k1d2=Φ2+k2d4+π
A=cos(Ωt+Ψ),および,B=sin(Ωt+Ψ)
(ただし、Ωは偏波の回転周波数、Ψは偏波の回転周波数の初期位相)
である、請求項10記載の無線機。 - 前記第1の伝送線路ないし前記第4の伝送線路の少なくとも一つが、さらに複数の伝送線路に分離される、請求項7記載の無線機。
- 前記第1の伝送線路ないし前記第4の伝送線路の少なくとも一つが、移相器を構成する、請求項7記載の無線機。
- 前記第1の伝送線路ないし前記第4の伝送線路の機能を、90°ハイブリッド回路で構成する、請求項7記載の無線機。
- 前記第1の伝送線路ないし前記第4の伝送線路の機能を、ラットレース回路で構成する、請求項7記載の無線機。
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