JP2022160965A - カカオ組成物を含有するチーズ又はチーズ様食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造適性を低下させることなく、カカオポリフェノールが強化された風味が良好なチーズ又はチーズ様食品を提供する。【解決手段】以下の(a)~(d)のいずれかのカカオ組成物を含有する、チーズ又はチーズ様食品又はチーズ又はチーズ様食品用ミックス:(a)粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ細胞を含有するカカオ組成物、(b)油分あたりのフリーファット含有率が60重量%以下であるカカオ組成物、(c)カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上であるカカオ組成物、(d)破断強度が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有するカカオ組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、カカオ組成物を含有するチーズ又はチーズ様食品に関する。
カカオポリフェノールは、健康への様々な働きが期待される成分の一つであり、チーズへの配合が検討されている。
例えば、特許文献1は、二種類の加熱溶融したチーズ類を、流動して新たな表面を形成することのなくなる温度領域に前冷却する第一工程と、チーズ類を二重の筒状ノズルから押し出し、ついで鋭角切断面を有する複数のカッターにより二重構造のチーズ類を押し切り成形する第二工程と、成形チーズをさらに形状変化の発生しない温度に冷却固化せしめる第三工程とを結合することを特徴とした柱状二重構造チーズ類の製造方法に関する。この文献においては、二重構造チーズの外周部用の原料に、さらにココアパウダーを加えた二重構造チーズを形成したことが記載されている(実施例3)。また特許文献2は、カフェインやポリフェノール等を含有するココア成分とカプサイシン等を含有する辛み成分をチョコレート等の菓子やアイスクリーム、ソース、ペースト、チーズ等の食料品に配合または添加したことを特徴とするチョコレート等の食料品に関する。この食料品は、チョコレートが比較的高カロリーであることに鑑み、薬効が期待されるポリフェノール等を含有するココア成分と脂肪の蓄積を低下させることができるといわれているカプサイシン等を含有する辛み成分をチーズ等の食料品に配合したことを特徴とすると記載されている。さらに特許文献3は、食品中のアルカリ化ココア殻とココア粉末との合計重量基準で少なくとも30重量%のアルカリ化ココア殻を含むことを特徴とする食品に関する。この食品は、食用に適した価値のある栄養源を提供し、かつ繊維質の穀物様風味を上昇させてしまうココア殻の欠点を回避すると同時に、良好なチョコレート風味を有する食品を提供することを課題としてなされたものである。この文献においては、アルカリ化ココア殻をクリームチーズスプレッドベースと他の列挙成分と混和することによって調製された。クリームチーズスプレッドが記載されている(実施例14)。
一方、チョコレートの原材料であるカカオ豆にはポリフェノールが豊富に含まれており、従来のカカオ豆の加工品としては、カカオマスやココアパウダーが良く知られているが、それ以外にもいくつか検討されてきている。例えば、特許文献4は、チョコレートやココアパウダーの原料として利用されるカカオニブスに関し、クリスピーを改善し、ニブスの悪臭を除去し、チョコレート製造におけるコンチング時間を短縮できるものとして、カカオニブスを蒸煮処理し、次いでこれに適量の酵素を添加し、水とともに30~60℃で反応せしめた後、乾燥しローストすることを特徴とするカカオニブスの処理方法を提案する。このようにして得られたニブスは、チョコレートのほか、それ以外のキャンデー、キヤラメル、ケーキ、ビスケット等の菓子に用いることができ、広範囲の製菓原料とすることができる旨が述べられている。また特許文献5は、カカオ豆、コーヒー豆等の嗜好飲料用豆類を直接摂食できる新しい食品に加工する方法として、嗜好飲料用豆類を水又は塩類希薄水溶液に浸漬後取り出し、次いで調味液に浸漬して、該調味液が嗜好飲料用豆類に吸収される時間浸漬した後、取り出し、次いで乾燥することを特徴とする味付け嗜好飲料用豆類の製造法を提案する。この方法では調味液に浸漬することにより味付けする前に、水又は塩類希薄水溶液に浸漬する前処理をすることで、嗜好飲料用豆類が共通して持っている苦みが抑えられ、甘くてソフトな食感を有する味付け豆が得られ、このような味付け豆を直接摂食できる旨が説明されている。さらに特許文献6は、ポリフェノールオキシダーゼ活性が低下し、ポリフェノール含有量が高いカカオ豆を得る方法として、非発酵、非焙煎の生カカオ豆を水蒸気による蒸煮と乾燥を組み合わせた工程で処理することを提案する。ここでは、蒸煮後のカカオ豆に関し、総ポリフェノール含有量はカカオ豆100gあたり0~30gの範囲であり、また低分子量ポリフェノール含有量はカカオ豆100gあたり0~20gであることが説明されている。また得られたカカオ豆から、ポリフェノール含有量が高い、カカオリカー、ココアパウダー、又は抽出物が製造でき、そのようなカカオ豆に由来する製品を、菓子製品、チョコレート、カカオ含有製品に使用できることが説明されている。
また、アズキ、インゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆を煮熟し、磨砕し、加重を与えて脱水して得た生餡、及び糖液に生餡を加えて練り上げて調製した練り餡について、澱粉の存在と餡粒子の形状、テクスチャー特性等が報告されている(非特許文献1)。この報告は、アズキ以外は通常は餡の原料としないインゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆を原料として餡を製造しているが、カカオ豆の使用に関しては述べられていない。一般には、餡に適しているのは澱粉含有量が多いものとされており、カカオ豆は、アズキ、インゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆のいずれよりも、澱粉含有量は低く、そして油分が高い。そのため、カカオ豆は、ローストした後の乾燥状態で磨砕して特徴的な香気と物性を有するよう加工することが一般的である。
特開平5-236875号公報 特開2002-272376号公報 特開2010-088430号公報 特開昭48-068777号公報 特開平10-033119号公報 US8048469号公報 PCT/JP2020/037486(本願出願前には未公開)
日本家政学会誌,Vol.50,No.4,pp323-332,1999
カカオポリフェノールを多く含むチーズ又はチーズ様食品を調製する場合、高ポリフェノール素材であるカカオマスやココアパウダー等の従来のカカオ素材を配合して調製するのが一般的である。しかしながら、チーズ又はチーズ様食品に対し、通常程度の量で摂取した場合に生理機能を得るのに十分な量のポリフェノールが摂取できるよう、カカオ素材を多く配合した場合、苦味が増して嗜好性が損なわれるという問題がある。
そのため、カカオポリフェノールが強化された風味が良好なチーズ又はチーズ様食品が求められている。
出願人は、カカオ豆を原料とした、カカオ豆を用いた新たな食品素材を検討してきた(特許文献7。本発明は以下を提供する。
[1] 以下の(a)~(d)のいずれかのカカオ組成物を含有する、チーズ又はチーズ様食品:
(a)粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ細胞を含有するカカオ組成物、
(b)油分あたりのフリーファット含有率が60重量%以下であるカカオ組成物、
(c)カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上であるカカオ組成物、
(d)破断強度が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有するカカオ組成物。
[2] ポリフェノール含有量が0.05重量%以上である、1に記載のチーズ又はチーズ様食品。
[3] ポリフェノール含有量が0.3重量%以上である、1又は2に記載のチーズ又はチーズ様食品。
[4] プロシアニジン含有量が0.015重量%以上である、1~3のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
[5] 原料中のカカオ組成物の配合量が1~20%である、1~4のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
[6] プロセスチーズ、又はチーズ用食品である、1~5のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
[7] カマンベールチーズである、1~5のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
チーズ又はチーズ様食品に、未破砕カカオ細胞を含有する組成物を配合することで、ポリフェノールを豊富に含有し、苦味が少ないという特徴を有するチーズ又はチーズ様食品を得ることができる。
各カカオ豆加工品の顕微鏡写真 a)未発酵生カカオ豆、b)加熱処理工程後のカカオ豆、c)カカオ組成物、d)カカオマス 各カカオ豆加工品の共焦点顕微鏡写真 a)乾燥カカオ豆(未発酵)、b)カカオ組成物、c)カカオマス 粒度分布 a)60メッシュの篩を使用して製造されたカカオ組成物、b)カカオマス マイクロチューブにおよそ2g測り取り、遠心分離(16,000rpm、10分間)した後の写真 a)カカオ組成物、b)左:カカオマス、右:市販ミルクチョコレート 破断強度測定結果 A:未発酵乾燥カカオ豆、B:未発酵ローストカカオ豆、C:未発酵ボイル(1時間)乾燥カカオ豆、D:未発酵ボイル(2時間)乾燥カカオ豆
本発明は、以下の(a)~(d)のいずれかのカカオ組成物を含有する、チーズ又はチーズ様食品に関する。
(a)粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ細胞を含有するカカオ組成物
(b)油分あたりのフリーファット含有率が60重量%以下であるカカオ組成物
(c)カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上であるカカオ組成物
(d)破断強度が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有するカカオ組成物
なお本発明に関し、食品に含有される成分や素材の量を割合(%、又は部)で表す場合は、特に記載した場合を除き、重量(質量)に基づいている。
<チーズ又はチーズ様食品>
本発明に関し、チーズというときは、特に記載した場合を除き、「ナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードの表示に関する公正競争規約」(昭和46年4月9日公正取引委員会告示第27号)で定められているナチュラルチーズ、プロセスチーズをいう。また、本発明に関し、チーズ様食品というときは、特に記載した場合を除き、以下を含む:
1)上記の規約で定められているチーズフード;
2)乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令ということもある。)(昭和26年12月27日厚生省令第52号)で定められている、乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品(乳等)に該当し、かつ、ナチュラルチーズ及びプロセスチーズの少なくとも一種類を含む食品;
3)食品分野において一般的にチーズ様食品とされる、チーズ及びその加工品に類似する食品(ただし、チーズは除く。)。
<カカオ組成物>
(主な特徴)
チーズ又はチーズ様食品に用いられるカカオ組成物は、カカオ豆を原料として加工された素材であり、以下の特徴を有する:
1)未破砕カカオ豆細胞を含有する。
2)粒度分布が10μm~1.5mmである。
あるいは、以下の特徴を有する。
3)油分含有量に対するフリーファット含有量の重量比率が60%以下である。なお本発明に関し、組成物等について含有される成分の割合又は率をいうときは、特に記載した場合を除き、重量に基づく。
あるいは、以下の特徴を有する。
4)カカオ豆細胞中の未破砕細胞の個数比率が30%以上である。
あるいは、以下の特徴を有する。
1)未破砕カカオ豆細胞を含有する。
5)破断強度が3kgf以下である。
なお、カカオ組成物には、ホールの生カカオ豆は含まれない。ホールの生カカオ豆の例としては、天然のカカオ豆自体、発酵したカカオ豆自体が挙げられる。またカカオ組成物には既存のカカオニブは含まれない。カカオニブとは、カカオ豆からシェルが除去されたものであり、水分存在下で加熱されていないものである。ただし、カカオニブは、一般的なチョコレート及びココア製造で慣用されている加熱殺菌処理及び又はロースト処理されたものを含む。カカオニブには、前記のものの破砕物も含む。
カカオ組成物の特徴の一つは、水分存在下で加熱(湿式加熱)されていることである。カカオ豆を加熱処理する際に水分が存在するか否かは、処理されたカカオ豆の成分やその組成に影響を与えうる。湿式加熱の例として、茹で、蒸し、蒸煮、水分存在下でのマイクロ波加熱が挙げられる。湿式加熱というときは、殺菌又はローストを目的とした加熱は含まない。湿式加熱のための温度及び時間は、後述するように、含まれるポリフェノールオキシダーゼをある程度失活させることができ、また破断強度が一定の範囲値となるように軟化される条件であることが好ましい。
水分存在下で加熱され、かつ未破砕細胞を比較的多く残すように粉砕されたカカオ豆加工品(湿式加熱粉砕品)及びその乾燥物(湿式加熱粉砕乾燥品)のみならず、そのように破砕するためのカカオ豆の湿式加熱処理物(湿式加熱豆)及びその乾燥物(湿式加熱乾燥豆)、湿式加熱乾燥豆の粉砕物(湿式加熱乾燥粉砕品)、カカオ豆の乾燥物(乾燥豆)であって湿式加熱し、粉砕するためのものの実施はいずれも、直接的又は間接的にカカオ組成物の実施に該当しうる。
またカカオ組成物の特徴の一つは、特別な粒度分布を有することであるが、従来のカカオ豆加工品とともに粒子サイズが小さいほうから並べると、カカオマス及びカカオリカー、カカオ組成物、カカオニブ、ホールの豆の順である。なお通常のカカオマスは、粒度分布において98%以上の粒子が0.5~100μmの範囲内にあり、単一のピークを有し、ピークが5~20μmの範囲にある。また、カカオニブの粒子サイズは、粗砕の程度にもよるが、通常は粒子が視認できる程度であり、目開き1mmの篩をほとんど通過しない。
(原料カカオ豆)
カカオ豆は、カカオ(Theobroma cacao)の種子を指し、カカオ組成物の原料となるカカオ豆の品種や産地は、特に制限されない。カカオ品種の例として、フォラステロ種、クリオロ種、トリニタリオ種、これらの派生種、交配種が挙げられる。産地の例として、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、ブラジル、ベネズエラ、トリニダード・トバゴが挙げられる。
一般に、チョコレートの原料として用いられるカカオ豆は、カカオポッド(カカオの実)からパルプとともに取り出され、発酵され、乾燥されるが、本発明のカカオ豆加工品に用いられる原料カカオ豆は、未破砕のカカオ豆細胞が含有されていれば、加工の有無又は程度は、特に制限されない。カカオ豆の加工の例として、発酵、パルプの除去、乾燥、焙煎(ロースト、焙炒ということもある。)、酵素失活処理が挙げられる。
ポリフェノール含有量が高い組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆は、ポリフェノールが減少する工程を経ていないことが好ましい。ポリフェノールは、発酵条件において促進される酵素の作用や高温で減少する。したがって、本発明に好ましく用いられる原料カカオ豆は、完全発酵されていないことが好ましく、またローストされていないことが好ましい。完全発酵とは、カカオ豆の収穫後に7日間以上発酵させたものをいう。
色調が鮮やかな組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆は、カカオポッドから取り出した直後の新鮮なカカオ豆や、それからパルプを直ちに除いた新鮮なカカオ豆であることが好ましい。またこのような新鮮なカカオ豆は、カカオ豆に内在する酵素、例えばポリフェノールオキシダーゼを失活させる処理が直ちにされていることが好ましい。カカオ豆に内在するポリフェノール活性が残存しているとカカオ豆のポリフェノールに作用し、濃褐色の色調に変化するからである。
フリーファット含有率が低い組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆はホール豆であることが好ましい。破砕の程度によっては、カカオ豆細胞が壊れ、細胞内に含まれていた油脂が遊離するからである。
(カカオ組成物の形態、粒度分布)
カカオ組成物は、カカオ豆の破砕物であるということができる。カカオ豆の破砕は、後述するように得られる組成物が未破砕カカオ豆細胞を含有すれば、サイズに制限はない。カカオ豆細胞のサイズは様々であるが、最小径は約10μmであるから、カカオ組成物は、約10μm以上の粒子を含みうる。前記粒子とは、カカオ豆細胞そのもの、又はカカオ豆細胞の集合体をいう。前記カカオ豆細胞の集合体には、カカオ豆細胞が分離されず接着した組織の状態で残存している形態や、カカオ豆細胞が分離された後に凝集された形態も含まれる。カカオ組成物の粒度分布は、例えば10μm~1.5mmであり、好ましくは10μm~1.2mmであり、より好ましくは10μm~1mmである。
本発明に関し、粒度分布というときは、特に記載した場合を除き、対象となる組成物に含まれる粒度の分布の度合いをいう。また本発明に関し、組成物の粒度分布が特定の範囲内にあるというときは、特に記載した場合を除き、その組成物をレーザー回折式粒度分布測定に供したときに、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の粒子の粒子径が、その特定の範囲内に含まれることをいう。ここでいう%は、体積に基づく値(相対粒子量)である。
カカオ組成物に含まれる粒子のメディアン径は、200~400μmであり、好ましくは240~380μmであり、より好ましくは280~360μmであり、さらに好ましくは300~340μmである。モード径は280~480μmであり、好ましくは2310~460μmであり、より好ましくは350~430μmであり、さらに好ましくは370~410μmである。平均径は150~350μmである。また、カカオ組成物は粒子径が0.2mm~0.7mmの範囲内にある粒子の相対粒子量が5%以上である。なお測定は、レーザー回折式粒度分布測定法により、体積基準とする。
破砕の手段は特に制限されず、例として、ミキサー等による磨砕、カカオ豆細胞サイズ以上の目開きの篩で漉すことが挙げられる。
またカカオ組成物は、ペーストか、又はその乾燥物の形態であることができる。すなわち、カカオ組成物は、加熱処理カカオ豆の破砕物であるということができる。カカオ組成物の一態様では、茹で、蒸し、蒸煮、マイクロ波加熱等の水分存在下での加熱手段により、破砕が容易な状態の材料である。加熱処理により、カカオ豆は内在するポリフェノールオキシダーゼが失活されている。また加熱処理カカオ豆は、原料カカオ豆が細胞単位で分離できる状態になっていると考えられる。ペーストは、粒餡のように、比較的大きな固形物が含まれた状態であってもよい。
形態がペースト状であるカカオ組成物は、水分を15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上含む。ペースト状であるカカオ組成物に含まれる水分の上限値は、ペースト状である限り特に制限はなく、下限値がいずれの場合であっても、例えば70%以下であり、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。形態が乾燥物、より特定すると粉末状であるカカオ組成物の水分は、5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3%以下である。粉末状であるカカオ組成物に含まれる水分の下限値には特に制限はなく、上限値がいずれの場合であっても、例えば0%、0.1%以下、0.5%以下、1%以下であり得る。
(未破砕カカオ豆細胞の含有)
カカオ組成物は、未破砕のカカオ豆細胞を含有する。未破砕とは、細胞膜が破砕されていないことをいう。対象となる組成物に未破砕カカオ豆細胞が含有されているかどうかは、マイクロスコープ等を用いた観察により、細胞膜に囲まれた細胞の存在が確認できるか否かにより判断できる。またカカオ豆細胞が未破砕であれば、脂質及びタンパク質が細胞内にとどまっていることから、未破砕のカカオ豆細胞が含有されているかどうかは、タンパク質と脂質とをそれぞれ染色し、観察してタンパク質と脂質の所在が同じであるか否かにより判断できる。
カカオ組成物における、含有されるカカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞の割合は、フリーファットを細胞から放出させない等の観点からは、高いほうが好ましい。カカオ豆細胞に対する未破砕のカカオ豆細胞の割合は、カカオ豆加工品をマイクロスコープで観察し、一定領域において確認される全細胞の数及び未破砕のカカオ豆細胞の数から算出できる。具体的には、以下の方法による。
(1) サンプル0.03gに2mlの水を加えて撹拌し、さらに0.5mlの0.01%メチレンブルー溶液を加えて、撹拌した後、スライドガラスに滴下し、カバーガラスを載せて顕微鏡で観察する(倍率:450倍)。
(2) 観察像、又はそれを撮影した画像から、必要に応じ画像解析ソフトを用いて、サンプルのエリア面積(A)と破砕細胞数(B)を求める。破砕細胞数は、エリアに含まれる破砕されている細胞を目視により選択してカウントすることにより得られる。
(3) 未破砕細胞を半径10μmの円として、一つの未破砕細胞の面積(C)を算出する(10×10×3.14=314μm2)。
(4) エリア面積(A)を一つの未破砕細胞の面積(C)で除して全細胞数(D)を算出する。
(5) カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)は、以下の式により算出する。このとき、全細胞数(D)が100~300の範囲であるエリアを、5以上、好ましくは10以上用いて、各々について以下の式で値を算出し、得られた値を平均してそのサンプルのカカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合とすることができる。
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)=(D-B)/D×100
カカオ組成物のこの割合は、例えば30%以上であり、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。
未破砕カカオ豆細胞は細胞膜が破砕されていないため、油脂分やポリフェノール等の成分が細胞内に維持される。一般的なカカオ豆加工品であるカカオマスは、通常、製造工程で約20μm以下となるまで細かく粉砕される。そのため、カカオマス中には、破砕されたカカオ豆細胞から油脂分やポリフェノール等が放出されて存在している。一方、カカオ組成物では、細胞膜が破砕されていないカカオ豆細胞中に、カカオ豆由来の油脂分やポリフェノールが封じられているため、それらの成分がしみ出しにくいという特性を有する。
(フリーファット含有率)
カカオ組成物は、油分あたりのフリーファット含有率が低い。チョコレート分野において、フリーファット(遊離油脂)とは、材料中に遊離状態で存在する油脂をいう。フリーファットは、チョコレートの流動性や粘度等に影響を与える。また、フリーファットを多く含む材料からは油がしみ出しやすいと考えられる。
本発明に関し、油分あたりのフリーファット含有率というとき(単に、フリーファット含有率ということもある。)は、特に記載した場合を除き、以下の方法により測定・算出されたものをいう。すなわち、対象となる組成物に含まれる油脂類に占めるフリーファットの割合(重量基準)をいう。
フリーファット含有量測定
(1) サンプル約5g(a)を50ml遠沈管に入れる
(2) n-ヘキサン25mlを加える
(3) 130回/分×3分間、振幅4cmで振とうする
(4) 3000rpm,4℃,10分間遠心分離
(5) 100ml三角フラスコの重量(b)を測定
(6) 上記(4)の上澄をろ紙上に移してろ過し、100ml三角フラスコでろ液を回収
(7) 窒素ガスを吹き付けてn-ヘキサンを蒸発させる
(8) 真空定温乾燥機にて、98℃、減圧下で4時間保持し、n-ヘキサンを蒸発させる
(9) デシケーター内で空冷後、三角フラスコの重量(c)を測定する
<x>組成物中のフリーファット含有率(サンプル重量あたりのフリーファット含有率)(%)=(c-b)/a×100
<y>油分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/a中の油分×100
<z>固形分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/(a-a中の水分)×100
カカオ組成物の油分あたりのフリーファット含有率は例えば60%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは28%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、カカオ組成物の油分あたりのフリーファット含有率は、30%以下であることが好ましい。
カカオ組成物の固形分あたりのフリーファット含有率は例えば42%以下であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは14%以下であり、さらに好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、カカオ組成物の固形分あたりのフリーファット含有率は、16%以下であることが好ましい。
カカオ組成物中のフリーファット含有率は例えば41%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは14%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、カカオ組成物中のフリーファット含有率は、10%以下であることが好ましい。
一般に、加工されていないカカオ豆のフリーファット含有率は低いが、従来のカカオ豆加工品は、加工工程により細胞が破砕されているため、フリーファット含有率が高い。一方、カカオ組成物は、細胞膜が破砕されていないカカオ豆細胞中に、カカオ豆由来の油脂が封じられているため、カカオ豆に由来する油脂を相応に高濃度で含有するにも関わらず、フリーファット含有率が低いという、従来のカカオ豆加工品にはない際立つ特性を有する。
(ポリフェノール含有量)
カカオ組成物は、ポリフェノール含有量が高い。また、カカオ組成物は、プロシアニジン含有量が高い。加熱処理により、カカオ豆に内在するポリフェノールオキシダーゼが失活されているからである。
カカオ組成物のポリフェノール含有量の下限値は、固形分あたり、例えば1.0%以上であり、より特定すると1.5%以上であり、さらに特定すると1.8%以上であり、好ましくは2.0%以上であり、 より好ましくは2.4%以上であり、さらに好ましくは2.8%以上であり、さらに好ましくは3.2%以上であり、さらに好ましくは3.6%以上であり、さらに好ましくは3.8%以上であり、さらに好ましくは4.0%以上である。カカオ組成物に含まれるポリフェノール含有量の上限値は、下限値がいずれの場合であっても、固形分あたり、例えば10%以下であり、好ましくは8%以下であり、より好ましくは7.6%以下であり、さらに好ましくは7.2%以下であり、 さらに好ましくは6.8%以下であり、さらに好ましくは6.4%以下である。
本発明に関し、ポリフェノール含有量は、特に記載した場合を除き、フォーリンチオカルト法で測定し、(-)-エピカテキンに換算して算出した値を指す。フォーリンチオカルト法によるポリフェノールの測定方法は、全国チョコレート業公正取引協議会「チョコレート類のカカオポリフェノールに係る表示基準」別紙「カカオポリフェノール測定法」を参照することができる。なお、カカオ組成物に含まれるポリフェノールは、カカオ豆由来のものであるので、カカオポリフェノールといわれることがある。またカカオ組成物のポリフェノール含有量は、種々のポリフェノール化合物の総量として測定された値であるので、総ポリフェノール含有量、又はポリフェノール総量等と称することができる。
カカオ組成物においては、ポリフェノールのうち、プロシアニジンが多く含まれていることが好ましい。カカオ組成物のプロシアニジン含有量の下限値は、固形分あたり、例えば0.2%以上であり、好ましくは0.3%以上であり、 より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは0.7%以上であり、さらに好ましくは1.1%以上であり、さらに好ましくは1.3%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上であり、さらに好ましくは1.7%以上である。カカオ組成物に含まれるプロシアニジン含有量の上限値は、下限値がいずれの場合であっても、固形分あたり、例えば5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3.5%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下であり、 さらに好ましくは2.7%以下であり、さらに好ましくは2.2%以下である。
本発明に関し、プロシアニジン含有量は、特に記載した場合を除き、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、及びシンナムタンニンA2を、HPLCを用いて測定した値を指す。
(破断強度)
カカオ組成物は、後述するように水分存在下で加熱処理され、破断強度が一定の範囲値となるように軟化されていてもよい。カカオ組成物の破断強度は、例えば3kgf以下であり、2.87kgf以下であることが好ましく、2.49以下であることがより好ましく、2.46以下であることがさらに好ましく、2.28kgf以下であることがさらに好ましい。下限値は、上限値がいずれの場合であっても0.5kgf以上とすることができ、1.0kgf以上とすることが好ましく、1.42kgf以上とすることがより好ましく、1.69kgf以上であることがさらに好ましい。
本発明に関し、破断強度というときは、特に記載した場合を除き、次のように測定する。
減圧下、100℃、4時間以上乾燥させたサンプルを、レオメーターにより、直径3mm円柱状のプランジャーを用いて進入深度4.0mm、進入速度2cm/minで測定する。サンプルの温度は22~24℃とする。得られた測定値がばらつく場合は、適切なサンプル数に対して測定を行う。適切なサンプル数は、当業者であれば適宜決定できるが、例えば、一の組成物から50のサンプルを取り、50の測定値の平均値をその組成物の破断強度としてもよい。
(他の原料)
カカオ組成物は、食品として許容される添加物を含んでいてもよい。そのような添加物の例は、甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤等である。
(カカオ組成物の製造方法)
カカオ組成物は、以下の工程を含む製造方法により製造することができる:
・原料カカオ豆を水分存在下で加熱処理し、加熱処理カカオ豆を得る工程、
・得られた加熱処理カカオ豆を破砕する工程。
また本発明は、フリーファット含有率の低い、組成物を得るのに適した、下記を含む製造方法を提供する:
・原料カカオ豆を水分存在下で加熱処理し、加熱処理カカオ豆を得る工程、あるいは、
・原料カカオ豆を細胞単位で分離が容易となるように加工する工程。
カカオ組成物の製造方法における加熱処理のための手段は、水分存在下での加熱手段であって、続く破砕工程が容易に行えるように、また好ましくはカカオ豆では内在するポリフェノールオキシダーゼが失活するように、原料カカオ豆を加工することができれば、特に制限されない。加熱の手段の例として、茹で(煮熱、ボイルということもある。)、蒸し、蒸煮、マイクロ波加熱が挙げられる。
加熱処理のための温度及び時間は、ポリフェノールオキシダーゼをある程度失活させることができ、また原料カカオ豆の破断強度を上述した値とすることができる条件であることが好ましい。このような条件の例は、80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは沸騰した水中で、10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、煮熱することである。
水分存在下での加熱処理は、水を熱媒体とするため、熱伝導率が高い。また加熱の温度と時間を適切にすることにより、カカオ豆の細胞壁及び/又は細胞壁間の接着部を軟化させることができると考えられる。
カカオ組成物の製造方法における破砕のための手段は、未破砕カカオ豆細胞を含有する組成物が得られるのであれば、特に制限されない。破砕物のサイズに制限はない。最小の粒度としては、カカオ豆細胞のサイズであり、例えば直径約20μmである。
破砕の手段は特にされず、例として、ミキサー等による磨砕(grind)、カカオ豆細胞サイズ以上の目開きの篩で漉すこと(mash)が挙げられる。漉すための装置の例として、ステンレス製の32メッシュ、60メッシュ等の篩等が挙げられる。磨砕のための装置の例として、餡製造に汎用される撹拌機等が挙げられる。
<カカオ組成物の配合量>
チーズ又はチーズ様食品は、原材料として、カカオ組成物を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができるが、原材料中のカカオ組成物の配合量は、好ましくは1~20%、より好ましくは3~15%、さらに好ましくは5~11%である。カカオ組成物の配合量がこの範囲より低い場合、食品を通常程度の量で摂取した場合に生理機能を得るのに十分な量のポリフェノールが摂取できるとは言い難い。また、この範囲より高い場合、原料を均一に混合することが困難となり、チーズ本来の風味が損なわれ、嗜好性が著しく低下することが想定される。
<カカオ組成物を含むチーズ又はチーズ様食品の特徴>
本発明により提供される、カカオ組成物を含むチーズ又はチーズ様食品は、カカオポリフェノールが豊富に含まれているにも関わらず、カカオポリフェノールを未破砕のカカオ細胞を含むカカオ組成物として含有するため、苦味、渋味が感じられにくいという利点がある。
好ましい態様においては、チーズ又はチーズ様食品は、チーズ本来の明るい色調が維持されている。チーズ又はチーズ様食品の明度は、プロセスチーズ又はチーズ様食品である場合、例えば45.5以上であり、45.8以上であることが好ましく、48.0以上であることがより好ましく、50.0以上であることがさらに好ましい。なお、本発明に関し明度というときは、特に記載した場合を除き、チーズ又はチーズ様食品の表面の明度をいう。
<カカオポリフェノール含有量>
配合原料中のポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量は、前述の、又は実施例の項中に記載の方法により測定できる。またチーズ又はチーズ様食品のミックス中のポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量は、配合した原材料中の含有量それぞれを合計することにより算出できる。なおポリフェノール含有量の測定方法(フォーリンチオカルト法)はOH基を定量する方法であるため、食品によってはポリフェノール以外の成分が測定される懸念がある。そのような懸念がある場合は、対照として目的の素材を含有しない食品を製造し、ベースとして差し引くことにより、目的の素材の配合によるポリフェノール含有量を適切に測定することができる。
チーズ又はチーズ様食品中のポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量は、特に記載した場合を除き、評価対象であるチーズ又はチーズ様食品について、ヒト体内での消化を模した前処理を行って得られた試料について測定した含有量をいい、測定に際しては、必要に応じ、適切な対照を設けてもよい。より詳細には、対象チーズ又はチーズ様食品についてヒト体内での消化を模した前処理を行い、前述の、又は実施例の項中に記載の方法によりポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を測定する(測定値A)一方、同じ前処理を行った対照チーズ又はチーズ様食品(ポリフェノール含有素材を原料チーズに代替した点を除き、測定対象であるチーズ又はチーズ様食品と同様に製造したもの)について同様に測定し(測定値B)、測定値Aから測定値Bを減じた値を、チーズ又はチーズ様食品中のポリフェノール含有量又はプロシアニジン含有量とする。ヒト体内での消化を模した前処理とは、対象チーズ又はチーズ様食品を、人工胃液及び人工腸液で処理することをいう。カカオ組成物に限らず、カカオ原料はタンパク質と結合しやすく、結合した状態ではポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を測定することが難しいため、前処理を行うことが好ましい。前処理を行って測定されたポリフェノール含有量は、原料に含まれる量から計算した理論値ではなく、ヒト体内の消化を模した処理後に得られるポリフェノール及びプロシアニジンとしての含有量であるといえる。
チーズ又はチーズ様食品中には、カカオポリフェノールをポリフェノール含有量として少なくとも0.05%以上、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上含有する。チーズ又はチーズ様食品中のカカオポリフェノールの含有量の上限は、チーズ又はチーズ様食品の風味に応じて調整することができ、ポリフェノール含有量として、例えば10%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0.5%以下とすることができる。
チーズ又はチーズ様食品中には、プロシアニジンとして少なくとも0.001%以上、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.015%以上含有する。チーズ又はチーズ様食品中のプロシアニジンの含有量の上限は、チーズ又はチーズ様食品の風味に応じて調整することができ、例えば1%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下とすることができる。
<チーズ又はチーズ様食品の形態、原材料>
チーズ又はチーズ様食品は、発明の効果を妨げない限り、形状や加工を様々にすることができる。例えば、形状は、スライスタイプ、キャンディータイプ、ブロックタイプ、スティックタイプ等が挙げられる。一方、加工は、他の原材料の添加、混合、被覆、及び燻製等が挙げられる。
添加、混合、被覆される原材料としては、調味料、香辛料、ハーブ、ナッツ、果実、果汁、蒲鉾等の練り製品、チョコレート、栄養強化剤等が挙げられる。調味料の具体例としては、砂糖、食塩、醤油、味噌、ソース、食酢、カレー粉などのシーズニング等が挙げられる。香辛料の具体例としては、クミンシード、キャラウェイシード、ペッパー、パプリカ等が挙げられる。ハーブの具体例としては、バジル、パセリ等が挙げられる。ナッツの具体例としては、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ピーナッツ等が挙げられる。その他の食品の具体例としては、ベーコンチップ等の獣肉加工品、乾燥野菜、乾燥果実、濃縮トマトや濃縮レモン果汁等の濃縮野菜汁又は果汁、ヨーグルト、ジャム、ペースト、ピュレ等を挙げることができる。また、栄養強化剤の例として、カルシウムや鉄などのミネラル類、ビタミンD又はその誘導体等のビタミン類、オリゴ糖、食物繊維が挙げられる。
チーズ又はチーズ様食品は、原材料としてカカオ組成物の他に、一般的なチーズに用いられる原材料として、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、油脂類、糖類、溶融塩、水を含んでもよい。
チーズ又はチーズ様食品はさらに、食品として許容可能な添加剤、有効成分、及び栄養成分を含んでいてもよい。食品として許容される添加物の例として、甘味料、着色料、香料、保存料、酸味料、増粘剤、安定剤等が挙げられる。
チーズ又はチーズ様食品の好ましい例は、プロセスチーズ、及びナチュラルチーズである。ナチュラルチーズには、クリームチーズ、モッツァレラチーズ、クワルク、マスカルポーネ、フェタ、パスタフィラータチーズ、ストリングチーズ、カッテージチーズ等のフレッシュチーズ(非熟成系チーズ)と、カマンベール、ゴーダ、チェダー、パルメザン等の熟成型ナチュラルチーズとが含まれる。
<チーズ又はチーズ様食品の製造方法>
本発明のチーズ又はチーズ様食品がプロセスチーズである場合、「ナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードの表示に関する公正競争規約」で定められているプロセスチーズと同様の方法で製造することができる。一例として、ナチュラルチーズを粉砕し、その他の原料と共に加熱混合し、成型する方法が挙げられる。カカオ組成物は、それ以外の材料を加熱混合した後に混合することができる。このようにすると未破砕のカカオ細胞が十分に維持され、好ましい。
本発明のチーズ又はチーズ様食品がナチュラルチーズのうちのカマンベールチーズである場合、次のような工程を経て生産することができる:
生乳、脱脂乳、部分脱脂乳もしくはクリーム等を用いて原料乳を調製し、必要に応じて殺菌する。原料乳を加温し、乳酸菌及びレンネット(凝乳酵素)を加える。得られた凝乳からホエー(乳清)を除去し、チーズカードを得る。チーズカードをモールド(型)に投入し、成形する。成形したチーズカードに加塩処理を行い、チーズカードの表面に白カビを噴霧する。表面に白カビが噴霧されたチーズカードを、温度及び湿度が調整された熟成庫で熟成させる。熟成期間は、通常、1~4週間(例えば、2~3週間)である。カカオ組成物は、熟成後のチーズ表面にまぶすことができる。なお、前記のうち、一部工程を入れ替えて、乳酸菌及びレンネットにさらに白カビを加えた後、モールド成形、加塩処理、熟成させた後、熟成後のチーズ表面にまぶすことにより生産することもできる。
本発明においては、カカオポリフェノールを未破砕カカオ細胞を含むカカオ組成物の形態で用いるため、カカオ油脂由来のフリーファットが少なく、それによる原料の混合工程での増粘、及び水分の吸収による増粘が抑えられる。
<その他>
チーズ又はチーズ様食品には、カカオ豆加工品を含有している旨、その量が多い旨、ポリフェノール含有している旨、その量が多い旨、ポリフェノールにより期待できる効果を表示することができ、また特定の対象に対して当該食品の摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的に又は間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、パンフレット、展示会、書籍、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール、音声等の、場所又は手段による、広告・宣伝活動を含む。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
<未破砕カカオ細胞を含有する組成物(カカオ組成物)の調製>
カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥させたカカオ豆を原料として、下記の方法で、未破砕カカオ細胞を含有する組成物(粉末状)を調製した。
軟化工程(加熱工程)
(1) 鍋に、カカオ豆重量の5倍重量の水を入れ、沸騰させる。
(2) 前記(1)に原料のカカオ豆を入れて、1時間煮る。
(3) ザルにカカオ豆をあけて、水を切る。
シェル剥離工程
手作業にて、カカオ豆からシェルを剥離する。
破砕工程(裏ごし工程)
篩(32Me)にて、裏ごしする。
粉末化工程
(1) 破砕工程により得られた破砕物を、減圧乾燥機にて乾燥させ(乾燥条件98℃、2時間)、水分3%以下の粉末カカオ豆破砕物を調製する。
(2) 前記粉末カカオ豆破砕物は、再度32Me篩を通過させて粉末化する。
未破砕カカオ細胞を含有する組成物を、以下の実施例で用いた。
<カカオポリフェノール含有量の測定>
配合原料中のポリフェノール含有量を、下記の「ポリフェノール含有量の測定方法」にしたがって測定した。配合原料中のプロシアニジン含有量を、下記の「プロシアニジン含有量の測定方法」にしたがって測定した。
またチーズ又はチーズ様食品中のポリフェノール含有量は、下記の前処理を行った後の試料について、下記の「ポリフェノール含有量の測定方法」にしたがって測定して測定値Aを得て、またポリフェノール含有素材を原料チーズに代替して調製した対照チーズ又はチーズ様食品について同様に測定を行い、測定値Bを得て、下式により求めた。
チーズ又はチーズ様食品中のポリフェノール含有量(mg/g)=測定値A(mg/g)-測定値B(mg/g)
チーズ又はチーズ様食品中のプロシアニジン含有量は、下記の前処理を行った後、得られた試料について下記の「プロシアニジン含有量の測定方法」にしたがって測定し、測定値Aを得て、またポリフェノール含有素材を原料チーズに代替して製造した対照チーズ又はチーズ様食品について同様に測定を行い、測定値Bを得て、下式により求めた。
チーズ又はチーズ様食品中のプロシアニジン含有量(mg/g)=測定値A(mg/g)-測定値B(mg/g)
前処理
(1) 遠沈管にサンプル各1gと温水(37~40℃)1mlを入れ、2分間ボルテックスで混合した。
37℃に温めておいた人工胃液(崩壊試験第1液、pH1.2(富士フイルム和光純薬株式会社)100mlにペプシン(富士フイルム和光純薬株式会社)107mgを混合して調製)を15ml加え、37℃、100rpmで60分振とうした。
(2) 2N NaHCO3を2ml投入し、中和した。
(3) 37℃に温めておいた人工腸液(崩壊試験第2液、pH6.8(富士フイルム和光純薬株式会社)100mlにパンクレアチン(富士フイルム和光純薬株式会社)0.5gを混合して調製)を20ml加え、37℃、100rpmで120分振とうした。
(4) 95℃で10分間加温した後、氷で冷却し、酵素を失活させた。
(5) 2ml取り出し、2N クエン酸を0.2ml投入し、酸性化したものを分析サンプルとした。
ポリフェノール含有量の測定方法
ポリフェノール含有量は、フォーリンチオカルト法で測定し、(-)-エピカテキン換算量として算出した。具体的には、全国チョコレート業公正取引協議会「チョコレート類のカカオポリフェノールに係る表示基準」別紙「カカオポリフェノール測定法」に記載された方法により測定し、算出した。
プロシアニジン含有量の測定方法
HPLCにて測定した。詳細には、カラムは、Deverosil-ODS-HG5(4.6mm×250mm、φ5μ、野村化学株式会社製)を使用した。溶離液は、A液とB液で構成され、A液は0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、B液は0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液を使用した。カラムへ通す溶離液の流速は0.8ml/分、グラジェントの条件は、溶離液全体に占めるB液の割合を、開始時点で10%、開始5分後で10%、開始35分後で25%、開始40分後で100%、開始45分後で100%とした。サンプルインジェクション量は10μLであり、エピカテキンを標準品として、各成分をエピカテキン当量で定量した。
各成分:カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2
<未破砕カカオ細胞を含有する組成物(カカオ組成物)を配合したチーズ又はチーズ様食品の製造>
1.ポリフェノール含有素材の配合率を揃えて調製したチーズ(プロセスチーズ)の比較
(配合)
下表の配合で、プロセスチーズを製造した。
Figure 2022160965000001
各試験区で使用したポリフェノール含有素材
A(実施例):粉末状の未破砕カカオ細胞を含有する組成物(ポリフェノール含有量35mg/g、プロシアニジン含有量3.6mg/g)
B(比較例):ココアパウダー(油分12%、アルカリゼーション無し、ポリフェノール含有量52mg/g、プロシアニジン含有量4.8mg)
C(比較例):カカオエキスパウダー(特許6268333の方法により製造、ポリフェノール含有量169mg/g、プロシアニジン含有量89mg/g)
(製法)
(1) チーズ、溶融塩、水を計量し、カップに入れた。
(2) 電子レンジ(500W、10~15秒)にて加熱した。
(3) 均一になるように撹拌した。
(4) 全体が均一になるまで(2)(3)を繰り返した。
(5) ポリフェノール含有素材を入れた。
(6) 再度、均一になるように撹拌した。
(7) 型に流し込んだ。
(8) 冷蔵庫にて一晩冷却した。
(評価基準)
外観評価
表面(上部)の色の評価を行う為、色彩色差計CR-400/410(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、色彩測定のL*a*b*表色系を選択して測定した。各サンプルの明度(L*値)を比較し、チーズらしい明るい色が維持できているか確認した。
官能評価
カカオ原料未配合のチーズ(カカオ含量はチーズで代替)を同様の製法で作成し、それとの比較により専門パネル1名により評価した。
苦味
◎:カカオ原料未配合のチーズと同様の苦味である。
〇:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、若干苦味が感じられるが問題ない範囲であ る。
△:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、苦味が感じられるが、許容範囲の品質であ る。
×:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、明らかに苦く、許容範囲を超え、チーズとして違和感を覚える。
渋味
◎:カカオ原料未配合のチーズと同様の渋味である。
〇:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、若干渋味が感じられるが問題ない範囲であ る。
△:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、渋味が感じられるが、許容範囲の品質であ る。
×:カカオ原料未配合のチーズと比較すると、明らかに渋く、許容範囲を超え、チーズとして違和感を覚える。
なおいずれの項目においても、◎、〇又は△であれば課題を解決しているといえる。
(結果)
結果を下表に示す。
Figure 2022160965000002
上記の結果より、カカオポリフェノールとして未破砕カカオ細胞を含有する組成物を配合することにより、カカオポリフェノール含有が豊富であり(ヒト体内の消化を模した処理後に得られるポリフェノール含有量として0.04%以上)、苦味が少なく良好な風味を有するチーズを得ることができた。また、外観においても、配合量を同等とした試験区B(ココアパウダー)や試験区C(カカオエキスパウダー)と比較し、明るい色調を維持することができた。
2.カカオ原料の配合率を揃えて調製したチーズ様食品の比較
(配合)
Figure 2022160965000003
各原材料は、上述の「チーズ」の配合と同じものを用いた。
(製法)
上述の「チーズ」の製法と同じとした。
(評価基準)
外観評価、官能評価は、上述の「チーズ」と同じ基準で実施した。
(結果)
Figure 2022160965000004
上記の結果より、カカオポリフェノールとして未破砕カカオ細胞を含有する組成物を配合することにより、カカオポリフェノール含有量が豊富であり(ヒト体内の消化を模した処理後に得られるポリフェノール含有量として0.11%以上)、苦味が少なく良好な風味を有するチーズ様食品を得ることができた。また、外観においても、ポリフェノール含有素材の配合量を同等とした試験区B(ココアパウダー)や試験区C(カカオエキスパウダー)と比較し、チーズ本来の明るい色調を維持することができた。
3.ヒト体内の消化を模した処理後に得られるポリフェノール含有量が同程度であるチーズ又はチーズ様食品の比較
先の試験で製造した「チーズB」(カカオポリフェノール含有素材として、ココアパウダーを5.3%配合)と、「チーズ様食品A」(カカオポリフェノール含有素材として、未破砕カカオ細胞を含有する組成物を10.3%配合)を比較評価した。
ただし、官能評価は、下記の評価用語に基づいて、7段階で実施した。
1:全く苦味/渋味を感じない
2:苦味/渋味を感じない
3:ほとんど苦味/渋味を感じない
4:どちらでもない
5:やや苦味/渋味を感じる
6:苦味/渋味を感じる
7:とても苦味/渋味を感じる
結果を下表に示す。
Figure 2022160965000005
上記の結果より、ヒト体内の消化を模した処理後に得られるポリフェノール含有量が同程度となるようにポリフェノールを強化したチーズ様食品Aは、未破砕カカオ細胞を含有する組成物を配合することにより、従来用いられているココアパウダーを配合した場合よりも苦味が少なく良好な風味を有するチーズ様食品を得ることができた。また、外観においても、チーズB(ココアパウダー配合)と比較し、チーズ本来の明るい色調を維持することができた。
4.カカオポリフェノールを強化したカマンベールチーズ(ナチュラルチーズ)の製造例
(製法)
(1) 低温殺菌した後、加温した原料乳に乳酸菌スターター、レンネットを加えて、得られた凝乳からホエー(乳清)を除去し、チーズカードを得る。チーズカードをモールド(型)に投入して成形し、成形したチーズカードの表面に白カビを噴霧して接種し、型に詰める。
(2) 型から外し、表面に塩を振り、加塩する。
(3) 12℃で発酵し、白カビの成長を確認した後に、表面に未破砕カカオ細胞を含有する組成物をまぶし、フィルムでくるみ、カカオポリフェノールが強化されたカマンベールチーズを得る。
<未破砕カカオ細胞を含有する組成物(カカオ組成物)の製造、分析>
下記を準備・製造した。
(カカオ豆原料A)
カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆を、原料Aとして、以下で用いた。
(カカオ豆原料B)
カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥したものを、原料Bとして、以下で用いた。
(比較例)
従来の発酵、乾燥、ロースト、及び磨砕工程を経て、従来のカカオ豆加工品としてのカカオマスを調製した。また、このカカオマスを、従来の油圧プレス機で処理して、油分12%又は油分22%のココアパウダーを調製した。
(カカオ組成物)
原料A、又はBを用い、加熱処理工程、シェル剥離工程、及び破砕工程(裏ごし工程)を経て、カカオ豆加工品A1(原料A使用、32メッシュによる裏ごし品)、A2(原料A使用、32メッシュ及び60メッシュによる裏ごし品)、B1(原料B使用、32メッシュによる裏ごし品)、B2(原料B使用、32メッシュ及び60メッシュによる裏ごし品)を得た。
それぞれの工程は、下記のように実施した。
(加熱処理工程)
(1) 鍋に、原料カカオ豆の重量の5倍重量の水を入れ、沸騰させる。
(2) (1)に原料カカオ豆を入れ、原料Aは30分間、原料Bは1時間煮る。
(3) ザルにカカオ豆をあけて、水を切る。
なお、ボイル時の水の量は、5倍量でも20倍量でもポリフェノール残存率に違いはなく、ボイル時間は、ポリフェノール残存率に影響を与えることが分かった。
(シェル剥離工程)
手作業にて、カカオ豆からシェルを剥離する。
(破砕工程(裏ごし工程))
(1) 篩(32メッシュ、目開き500μm)で裏ごしする。
(2) 必要に応じ、(1)を篩(60メッシュ、目開き250μm)でさらに裏ごしする。
(ポリフェノール含有量の測定)
ポリフェノール含有量は、上述のフォーリンチオカルト法で測定した。
ポリフェノール残存率は、原料Aを用いた場合は、カカオポッドから取り出した生豆のポリフェノール総量を100%として算出した。また、原料Bを用いた場合は、カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥させたカカオ豆のポリフェノール総量を100%として算出した。
(プロシアニジンの測定)
プロシアニジンは、上述のようにHPLCで定量した。
プロシアニジン残存率は、原料Aを用いた場合は、カカオポッドから取り出した生豆のプロシアニジン含有量を100%として算出した。また、原料Bを用いた場合は、カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥させたカカオ豆のプロシアニジン含有率を100%として算出した。
(フリーファットの測定)
フリーファットは、下記の方法で測定した。
(1) サンプル約5g(a)を50ml遠沈管に入れる
(2) n-ヘキサン25mlを加える
(3) 130回/分×3分間、振幅4cmで振とう
(4) 3000rpm,4℃,10分間遠心分離
(5) 100ml三角フラスコの重量(b)を測定
(6) 上記(4)の上澄をろ紙上に移してろ過し、100ml三角フラスコでろ液を回収
(7) 窒素ガスを吹き付けてn-ヘキサンを蒸発させる
(8) 真空定温乾燥機にて、98℃、減圧下で4時間保持し、n-ヘキサンを蒸発させる
(9) デシケーター内で空冷後、三角フラスコの重量(c)を測定
サンプル重量中のフリーファット含有率(%)=(c-b)/a×100
油分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/a中の油分×100
固形分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/(a-a中の水分)×100
(油のしみ出しの比較観察)
原料Aの60メッシュ裏ごし処理品(カカオ豆加工品A2)、カカオマス、及び融解させた市販のミルクチョコレートをそれぞれマイクロチューブにおよそ2g測り取り、遠心分離(16,000rpm、10分間)した後、各材料からの油の分離を目視で観察した。
(構造観察)
下記の手順で、マイクロスコープにより観察した。
(1) サンプルをスライドガラスに載せる
(2) n-ヘキサンを滴下する
(3) メチレンブルー溶液を滴下する
(4) ヨウ素液を滴下する
(5) マイクロスコープにて観察
また、下記の手順で、共焦点顕微鏡により観察した。
(1) サンプルをスライドガラスに載せる
(2) Nile Mix染色液を滴下する
(3) カバーガラスを載せる
(4) 共焦点顕微鏡にて観察
Nile Mix染色液:1,2-Propanediolに2%超純水を入れて混合し、溶媒を調製する。Nile Red 0.02g 及び Nile Blue A 0.01gを前記溶媒に入れて1Lに調整した後、1時間以上撹拌混合する。
(未破砕細胞の割合の測定)
下記の手順で、未破砕細胞の割合を測定・算出した。
(1) 測定試料0.03gをコニカルチューブに入れて、2mlの超純水を加えて撹拌し、さらに0.5mlの0.01%メチレンブルー溶液(メチレンブルー三水和物(分子式 : C16H18N3SCl・3H2O 分子量 : 373.90)を超純水にて溶解、希釈し、0.01%(w/v)のメチレンブルー溶液 とする)を加えて撹拌した後、スライドガラスに滴下し、カバーガラスを載せてマイクロスコープで観察する(倍率:450倍)。
(2) 前記画像を画像解析ソフト「ImageJ」(フリーソフト、以下URLからダウンロードが可能:https://imagej.net/Welcome、バージョン1.50)を用いて、以下の「エリア面積(A)」、「破砕細胞数(B)」を得る。
エリア面積(A):画像を二値化(make binary)した後に、「Analyze」機能を用いることにより「Area」として解析される。なお、二値化した際に、光の加減で空洞になってしまった部分については「fill holes」により埋めて解析した。
破砕細胞数(B):「Cell Counter」機能により、画像から目視で破砕されている細胞を選択して手動でカウントする。
(3) 一つの未破砕細胞面積(C)については、細胞を半径10μmの円とした概算値とすることにより算出する(10×10×3.14=314μm2)。
(4) エリア面積(A)を一つの未破砕細胞面積(C)で除して全細胞数(D)を得る。
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)は、以下の式により算出する。全細胞数(D)が100~300の範囲であるエリアを5以上について値を算出し、平均値を求める。
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)=(D-B)/D×100
(粒度分布)
粒度分布計(レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所))にて測定した。図面の縦軸は、各粒子径の体積分布が全体の体積に占める割合を示す相対粒子量を%で示し、横軸は粒子径をμmで示した。
(水分)
水分は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 5.炭水化物 イ 水分 (3)減圧加熱乾燥法に従って測定した。
(油分)
油分は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 2.脂質 (1)エーテル抽出法に従って測定した。
(結果)
測定結果を下表に示した。
Figure 2022160965000006
従来のカカオ豆加工品であるカカオマスやココアパウダーは、含有する油分に対するフリーファットの割合が70%以上であるのに対して、カカオ組成物(表中のカカオ豆加工品A1~B2を指す。)は30%以下であり、著しく低かった。
また、ポリフェノール残存率は、従来のカカオ豆加工品であるカカオマスは40~51%であるのに対して、カカオ組成物では70%以上であり、従来の加工法により得られる素材に対して著しく高い残存率を有していた。プロシアニジン残存率も、従来のカカオ豆加工品であるカカオマスは16~21%であるのに対して、カカオ組成物では70%以上であり、従来の加工法により得られる素材に対して著しく高い残存率を有していた。
マイクロスコープによる観察では、加熱処理後のカカオ豆は、細胞膜が残存し、細胞内部に水分を含んで膨張した澱粉粒の存在が確認できた(図1b)。加熱処理後に破砕されたカカオ組成物についても、細胞膜が残存し、細胞内の成分は保持されていた(図1c)。一方、カカオマスは、細胞膜が破砕されて、細胞内部の成分が放出されていた(図1d)。
また、共焦点顕微鏡観察では、未加工のカカオ豆では、細胞内に脂質が存在することが確認でき、カカオ組成物では、タンパク質と脂質の所在が同じであることから、細胞が破砕されず、細胞内に脂質がとどまっていることが確認できた。一方、カカオマスは、タンパク質と脂質の所在が異なることから(図2c)、細胞が破砕されて細胞内に存在した脂質やタンパク質が放出されていた。
また、未破砕細胞の割合(未破砕細胞率)を算出した結果を、下表に示した。
Figure 2022160965000007
カカオ豆加工品B2のカカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞の割合を上表に基づき平均値として算出したところ、74.7%であった。
粒度分布では、カカオマスは、粒子径が5~10μmの範囲にピークを有していた(図3b)一方で、カカオ組成物(カカオ豆加工品A2、60メッシュ裏ごし品)は、カカオマスとは異なり、粒子径がほぼ20μm以上であり、大きな粒子径を有していた(図3a)。図3aにおいて、粒子の100%が10μm~1.5mmの範囲内に含まれていたことから、カカオ豆加工品A2の粒度分布は10μm~1.5mmの範囲内であった。
なお、カカオ組成物(図3a)のメディアン径は318.8μm、モード径は391.7μm、平均径は269.9μmであった。カカオマス(図3b)のメディアン径は7.4μm、モード径は7.5μm、平均径は6.8μmであった。
また、油のしみ出しに関しては、カカオマス、及び融解させた市販のミルクチョコレートについては分離した油が観察されたが、カカオ豆加工品A2には油の分離が見られなかった(図4)。
<破断強度の測定>
加熱したカカオ豆の破断強度を測定した。
(材料及び方法)
サンプルA~Dの調製手順を下記に示した。
A:未発酵乾燥カカオ豆
未発酵豆(乾燥豆)を減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
B:未発酵ローストカカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)をロースターにて126℃、40分ロースト
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
C:未発酵ボイル(1時間)乾燥カカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)を沸騰水にて1時間ボイル
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
D:未発酵ボイル(2時間)乾燥カカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)を沸騰水にて2時間ボイル
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
破断強度は、下記の条件により測定した。
・使用機器:FUDOH社レオメーターRTC-3010D-CW
・S.ADJ(進入深度):4.0mm
・T.SPEED(進入速度):2cm/min
・プランジャー:直径3mm円柱状
・測定方法:各サンプル(ホールカカオ豆)を架台の中心部に設置し、サンプル温度は22~24℃にて測定した。
(結果)
結果を下表及び図5に示した。
Figure 2022160965000008
ボイル加熱により、カカオ豆の破断強度が著しく小さくなった。また、ボイル時間を長くすることにより、破断強度が小さくなった。
ポリフェノール高含有のチーズ又はチーズ様食品を調製する場合、従来のポリフェノール含有素材(ココアパウダーやカカオ抽出物等)をチーズ又はチーズ様食品の原材料として配合すると、風味品質が良好でない。しかし、本発明により苦味及び渋みが適度に抑えられたポリフェノール高含有チーズ又はチーズ様食品の調製が可能となる。

Claims (7)

  1. 以下の(a)~(d)のいずれかのカカオ組成物を含有する、チーズ又はチーズ様食品:
    (a)粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ細胞を含有するカカオ組成物、
    (b)油分あたりのフリーファット含有率が60重量%以下であるカカオ組成物、
    (c)カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上であるカカオ組成物、
    (d)破断強度が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有するカカオ組成物。
  2. ポリフェノール含有量が0.05重量%以上である、請求項1に記載のチーズ又はチーズ様食品。
  3. ポリフェノール含有量が0.3重量%以上である、請求項1又は2に記載のチーズ又はチーズ様食品。
  4. プロシアニジン含有量が0.015重量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
  5. 原料中のカカオ組成物の配合量が1~20%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
  6. プロセスチーズ、又はチーズ用食品である、請求項1~5のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
  7. カマンベールチーズである、請求項1~5のいずれか1項に記載のチーズ又はチーズ様食品。
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