JP2022158364A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の始動後に係合装置を係合させる際に必要とされるトルクを抑制して内燃機関の停止の発生を抑制できる車両の制御装置を提供する。【解決手段】内燃機関であるエンジン12と、自動変速機22と、エンジン12と自動変速機22との間のトルク伝達の断接を行うK0クラッチ18と、エンジン12を始動させる始動装置であるスタータ50と、を備えた車両10の、電子制御装置90は、自動変速機22用の作動油OILが所定の低温状態である場合に、スタータ50によってエンジン12を始動し且つK0クラッチ18を係合することによって生じる自動変速機22の慣性トルクが最小となるような自動変速機22における変速段を形成した後に、K0クラッチ18を係合させる。【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関と、自動変速機と、それら内燃機関と自動変速機との間のトルク伝達の断接を行う係合装置と、を備える車両の、制御装置に関し、特に内燃機関の始動に関する。
走行用駆動力源である内燃機関(例えばエンジン)及び複数の電動機と、走行用駆動力源及び駆動輪の間に配設された自動変速機と、を備えた車両において、作動油(冷却油、潤滑油)が低温状態において内燃機関を始動する場合に、自動変速機をPモード又はNモードに固定して複数の電動機と駆動輪との間の動力伝達経路のトルク容量を低下させるとともに、複数の電動機を共に力行制御させて内燃機関をクランキングする車両の制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。特許文献1に記載の車両の制御装置では、内燃機関の始動時間が短縮されてNV(Noise Vibration)性能が向上させられる。
特開2007-120368号公報
ところで、走行用駆動力源である内燃機関と、自動変速機と、の間のトルク伝達の断接を行う係合装置を備え、且つ、内燃機関をクランキングする始動装置(スタータ)を備えた車両においては、係合装置を解放した状態で内燃機関を始動し、内燃機関の始動後に係合装置を係合させて内燃機関の出力トルクを自動変速機に伝達させることが想定される。しかし、作動油が低温である場合には、作動油の粘性が大きく自動変速機での引き摺りトルクが大きくなることが想定され、これにより内燃機関の始動後に係合装置を所定期間内に係合させる際に必要とされるトルクが大きくなって内燃機関の停止(例えばエンジン停止)が発生するおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、内燃機関の始動後に係合装置を係合させる際に必要とされるトルクを抑制して内燃機関の停止の発生を抑制できる車両の制御装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機との間のトルク伝達の断接を行う係合装置と、前記内燃機関を始動させる始動装置と、を備えた車両の、制御装置であって、前記自動変速機用の作動油が所定の低温状態である場合に、前記始動装置によって前記内燃機関を始動し且つ前記係合装置を係合することによって生じる前記自動変速機の慣性トルクが最小となるような前記自動変速機における変速段を形成した後に、前記係合装置を係合させることにある。
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、前記作動油が前記所定の低温状態ではない場合に、前記自動変速機における変速段を形成せずに前記始動装置によって前記内燃機関を始動した後に、前記係合装置を係合させることにある。
第1発明の車両の制御装置によれば、前記自動変速機用の作動油が所定の低温状態である場合に、前記始動装置によって前記内燃機関が始動され且つ前記係合装置を係合することによって生じる前記自動変速機の慣性トルクが最小となるような前記自動変速機における変速段が形成された後に、前記係合装置が係合される。係合装置が係合される前に、自動変速機の慣性トルクが最小となるような自動変速機における変速段が形成されるため、作動油が所定の低温状態であって作動油の粘性が高くても自動変速機での慣性トルクが小さくされる。これにより内燃機関の始動後に係合装置を係合させる際に必要とされるトルクが大きくなることが抑制されて、内燃機関の停止の発生が抑制される。
第2発明の車両の制御装置によれば、第1発明において、前記作動油が前記所定の低温状態ではない場合に、前記自動変速機における変速段が形成されず前記始動装置によって前記内燃機関が始動された後に、前記係合装置が係合される。作動油が所定の低温状態ではない場合には、作動油の粘性が低いため自動変速機の引き摺りトルクは小さく、作動油が所定の低温状態である場合に比較して内燃機関の始動後に係合装置を係合させる際に必要とされるトルクが小さい。そのため、前記自動変速機の慣性トルクが最小となるような自動変速機における変速段を形成しなくても内燃機関の停止の発生が抑制される。これにより、自動変速機における変速段の形成を待つことなく、内燃機関が始動された後に速やかに係合装置の係合を行うことができる。
本発明の実施例に係る電子制御装置を備える車両の概略構成図であるとともに、車両における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。 図1に示す電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートの一例である。 図2のフローチャートが実行された場合におけるタイムチャートの一例である。 比較例に係るタイムチャートの一例である。 本実施例の効果について説明する図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
本発明の実施例に係る電子制御装置90を備える車両10の概略構成図であるとともに、車両10における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
車両10は、走行用駆動力源である、エンジン12及び電動機MGと、エンジン12と駆動輪28との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置30と、を備える。車両10は、ハイブリッド車両である。
エンジン12は、周知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置90によって、その作動状態(運転状態、停止状態)が制御される。なお、エンジン12は、本発明における「内燃機関」に相当する。エンジン12に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe[Nm]が制御される。
動力伝達装置30は、エンジン12側から順に、フライホイール14、ダンパー16、K0クラッチ18、電動機連結軸42、トルクコンバータ20、自動変速機22等を備える。動力伝達装置30は、自動変速機22の出力回転部材である変速機出力軸46に連結されたディファレンシャルギヤ24、ディファレンシャルギヤ24に連結された1対のドライブシャフト26等を備える。
動力伝達装置30は、エンジン12とフライホイール14とを連結するエンジン連結軸40を備える。フライホイール14は、エンジン連結軸40によりエンジン12に直結されている。フライホイール14及びダンパー16は、エンジン12の脈動を吸収しつつその回転を伝達する周知のフライホイール及びダンパー装置(例えば振り子ダンパー)である。
K0クラッチ18は、エンジン12と駆動輪28との間の動力伝達経路のうちエンジン12と電動機MGとの間に設けられたクラッチである。K0クラッチ18は、例えば多板式或いは単板式のクラッチにより構成される油圧式の摩擦係合装置である。K0クラッチ18は、K0クラッチ18の断接状態を制御する油圧アクチュエータに調圧されたK0油圧PRk0[Pa]が供給されることにより、K0クラッチ18の伝達トルク容量(K0クラッチ18の係合力)であるK0トルクTk0[Nm]が変化させられて係合状態や解放状態などの作動状態つまり制御状態が切り替えられる。電動機連結軸42は、K0クラッチ18とトルクコンバータ20とを連結している。K0クラッチ18が係合状態にある場合は、エンジン12とトルクコンバータ20とがフライホイール14、ダンパー16、及びK0クラッチ18を介して動力伝達可能に連結される。一方、K0クラッチ18が解放状態にある場合は、エンジン12とトルクコンバータ20との間の動力伝達が遮断される。なお、K0クラッチ18は、本発明における「係合装置」に相当する。
トルクコンバータ20は、周知のトルクコンバータである。トルクコンバータ20は、電動機連結軸42に連結されたポンプ翼車20aと、自動変速機22の入力回転部材である変速機入力軸44に連結されたタービン翼車20bと、ポンプ翼車20aとタービン翼車20bとを直結するロックアップクラッチ20cと、を備える。トルクコンバータ20は、走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)の各々からの走行用駆動力を流体を介して電動機連結軸42から変速機入力軸44へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ20は、K0クラッチ18、ダンパー16、及びフライホイール14を介してエンジン12に連結されている。自動変速機22は、トルクコンバータ20に連結されており、トルクコンバータ20と駆動輪28との間に設けられている。トルクコンバータ20及び自動変速機22は、各々、エンジン12と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成している。
電動機MGは、例えば電力から機械的な動力を発生させる電動機機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、後述するインバータ52を介して車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGの出力トルクである電動機トルクTm[Nm]が制御される。電動機トルクTmは、例えば電動機MGの回転方向がエンジン12の運転時と同じ回転方向である正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
電動機MGは、車体に取り付けられる非回転部材であるケース32内において、電動機連結軸42に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、動力伝達経路のうちK0クラッチ18とトルクコンバータ20との間に配設された電動機連結軸42に動力伝達可能に連結されている。また、電動機MGは、トルクコンバータ20を介して自動変速機22に連結されている。見方を換えれば、電動機MGは、K0クラッチ18を介することなくトルクコンバータ20や自動変速機22と動力伝達可能に連結されている。また、K0クラッチ18は、エンジン12と自動変速機22との間のトルク伝達の断接を行う係合装置として機能する。
自動変速機22は、走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)と駆動輪28との間に配設され、例えば不図示の複数組の遊星歯車装置と、それら複数組の遊星歯車装置をそれぞれ構成する回転要素間或いは回転要素と非回転要素との間を選択的に係合させる複数の変速用係合装置CBと、を備え、複数の変速用係合装置CBのうちの2つの係合によって、複数の変速段のうちの一の変速段が成立させられる、周知の遊星歯車式の自動変速機である。変速用係合装置CBのそれぞれは、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される周知の湿式多板型の油圧式摩擦係合装置である。複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される場合には、変速用係合装置CBは係合状態となり、複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧されない場合には、変速用係合装置CBは解放状態となる。変速用係合装置CBは、各々、変速用係合装置CBの断接状態を制御する各油圧アクチュエータに調圧されたCB油圧PRcb[Pa]が供給されることにより、それぞれの伝達トルク容量であるCBトルクTcb[Nm]が変化させられて係合状態や解放状態などの作動状態が切り替えられる。
自動変速機22は、例えば変速用係合装置CBのうちの何れかの係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni[rpm]/AT出力回転速度No[rpm])が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかの変速段が形成される有段変速機である。自動変速機22は、後述する電子制御装置90によって、運転者のアクセル操作や車速V[km/h]等に応じて、変速用係合装置CBのうちの自動変速機22の変速に関与する係合装置である所定の係合装置の作動状態が切り替えられることで、形成される変速段が切り替えられる。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸44の回転速度であって自動変速機22の入力回転速度である。AT入力回転速度Niは、トルクコンバータ20の出力回転速度であるタービン回転速度Nt[rpm]と同値である。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸46の回転速度であって自動変速機22の出力回転速度である。複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうち、変速比γatが最も大きいのが最もロー側の第1速変速段であり、ハイ側の変速段ほど変速比γatが小さくなっている。
例えば、車両10が停止しており後述するMOP38及びEOP60の駆動が停止している場合には、K0クラッチ18や変速用係合装置CBは解放状態となるように構成されている。また、例えば、変速用係合装置CBが全て解放状態とされることで自動変速機22がNモード(=ニュートラル状態とされるモード)とされ、変速用係合装置CBのうちの2つが係合状態とされることで自動変速機22で所望の変速段が形成される。なお、本実施例では、複数の変速段のうち第1速変速段が自動変速機22の慣性トルクが最小となるものとする。自動変速機22の変速段の形成により自動変速機22が備える遊星歯車装置のうち回転する回転要素が特定され、この特定された回転要素に基づいて予め変速段毎の慣性トルクの大きさが定まる。
シフトレバー68のシフト操作ポジションPOSshは、例えばP、R、N、Dの各操作ポジションである。P操作ポジションは、自動変速機22をPモード(=ニュートラル状態とされ且つ変速機出力軸46が回転不能に機械的に固定されるモード)にするパーキング操作ポジションである。R操作ポジションは、自動変速機22をRモード(=車両10の後進走行を可能とするモード)にする後進走行操作ポジションである。N操作ポジションは、自動変速機22をNモードにするニュートラル操作ポジションである。D操作ポジションは、自動変速機22をDモード(=自動変速機22の全ての変速段を用いて自動変速制御を実行して前進走行を可能とするモード)にする前進走行操作ポジションである。
油圧制御回路56は、機械式オイルポンプであるMOP38や電動オイルポンプであるEOP60から圧送された作動油OILの油圧を元圧として、ケース32内の各部に必要な作動油OILを供給する。この作動油OILは、例えばATF(Automatic Transmission Fluid)等の自動変速機22用の作動油であって、自動変速機22の変速制御やK0クラッチ18の断接制御などを行うために設けられた油圧アクチュエータの作動油として用いられるとともにケース32内のトルクコンバータ20や自動変速機22などの各部に供給される冷却油及び潤滑油として用いられる。なお、作動油OILは、本発明における「自動変速機用の作動油」に相当する。例えば、油圧制御回路56は、K0クラッチ18の断接状態を制御するK0油圧PRk0を調圧して、K0クラッチ18の断接状態を制御する油圧アクチュエータにK0油圧PRk0を供給する。油圧制御回路56は、変速用係合装置CBの断接状態をそれぞれ制御するCB油圧PRcbを調圧して、変速用係合装置CBの断接状態を制御する各油圧アクチュエータにCB油圧PRcbを供給する。CB油圧PRcbにより、自動変速機22がニュートラル状態にされたり所望の変速比γatの変速段が形成されたりする。変速用係合装置CBは、ブレーキやクラッチなどの例えば湿式多板型の油圧式摩擦係合装置である。
エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ18が係合された場合には、エンジン連結軸40から、K0クラッチ18、電動機連結軸42、トルクコンバータ20、自動変速機22、ディファレンシャルギヤ24、及びドライブシャフト26等を順次介して駆動輪28へ伝達される。電動機MGから出力される動力は、K0クラッチ18の作動状態にかかわらず、電動機連結軸42から、トルクコンバータ20、自動変速機22、ディファレンシャルギヤ24、及びドライブシャフト26等を順次介して駆動輪28へ伝達される。
車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP38、電動式のオイルポンプであるEOP60、及びポンプ用モータ62を備える。MOP38は、ポンプ翼車20aに連結されており、走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)により回転駆動させられて動力伝達装置30で用いられる作動油OILを吐出する。EOP60は、EOP専用のモータであるポンプ用モータ62により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP38やEOP60が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP38及び/又はEOP60が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0などを各油圧アクチュエータに供給する。
車両10は、エンジン12を始動するためのスタータ50を備える。例えば、スタータ50は、スタータモータを有し、そのスタータモータのピニオン(ギヤ)でフライホイール14の周囲に刻まれたリングギヤを回すことによりエンジン12を始動させる周知の始動装置である。スタータ50は、車両電源スイッチ88の操作により起動される。スタータモータが起動されることでクランキングによりエンジン12が始動される。なお、エンジン12の「始動」とは、エンジン12が完爆して(運転を開始して)自立運転可能な状態になることをいう。
車両電源スイッチ88は、例えば運転席の近傍に配設されており、車両10の電源供給の状態すなわち車両電源の状態を切り替えるために運転者により操作されるスイッチ、例えばイグニッションスイッチやパワースイッチである。
車両電源スイッチ88の操作位置は、例えば「OFF」、「Acc」、「ON」、「START」の各操作位置である。「OFF」は、車両走行を不能とし且つ車両電源を切るための操作位置である。「Acc」は、不図示のコンビネーションメータを消灯して車両走行を不能とするが車両走行に関わらない一部の機能(例えばオーディオや電動ミラー)を稼働可能とするための操作位置である。「ON」は、コンビネーションメータを点灯して車両走行を可能とするレディーオン状態とするための操作位置である。レディーオン状態では、車両走行に関わるセンサ等が各々の信号を出力可能な通電の状態とされる。レディーオン状態は、エンジン12が運転停止状態にある場合には「ON」への操作に連動してエンジン12を始動することが可能な状態であり、エンジン12が運転状態にある場合にはその運転状態を維持することが可能な状態である。「START」は、エンジン12を始動するための操作位置である。例えば、運転者によって車両電源スイッチ88が「ON」に操作された後に「START」に操作されることは、運転者によるエンジン12の始動要求である。
車両10は、電子制御装置90を備える。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。なお、電子制御装置90は、本発明における「制御装置」に相当する。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、電動機回転速度センサ72、タービン回転速度センサ74、出力回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、バッテリセンサ82、油温センサ84、シフトポジションセンサ86、車両電源スイッチ88など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne[rpm]、電動機MGの回転速度である電動機回転速度Nm[rpm]、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、車速Vに対応するAT出力回転速度No、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth[%]、バッテリ54のバッテリ温度THbat[℃]やバッテリ充放電電流Ibat[A]やバッテリ電圧Vbat[V]、作動油OILの油温THoil[℃]、運転者により操作されたシフトレバー68の操作ポジションを表すシフト操作ポジションPOSsh、運転者により操作された車両電源スイッチ88の操作位置を表すスイッチ操作信号SWonなど)が、それぞれ入力される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、スタータ50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、スタータ50を制御するためのスタータ制御信号Sst、電動機MGを制御するための電動機制御信号Sm、変速用係合装置CBを変速制御するためのCB油圧制御信号ScbやK0クラッチ18を断接制御するためのK0油圧制御信号Sk0やロックアップクラッチ20cを断接制御するためのLU油圧制御信号Slu、EOP60を制御するためのEOP制御信号Seopなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92と、クラッチ制御手段すなわちクラッチ制御部94と、変速制御手段すなわち変速制御部96と、を機能的に備える。
ハイブリッド制御部92は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部92aと、インバータ52を介して電動機MGの作動を制御する電動機制御手段すなわち電動機制御部92bと、を機能的に備え、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、アクセル開度θacc及び車速Vと駆動要求量との間の関係が予め実験的に或いは設計的に求められて記憶されたマップである。前記駆動要求量は、例えば駆動輪28における要求駆動トルクTrdem[Nm]である。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。前記駆動要求量としては、駆動輪28における要求駆動力Frdem[N]、変速機出力軸46における要求AT出力トルク等を用いることもできる。前記駆動要求量の算出では、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機22の変速比γat、バッテリ54の充電可能電力Win[W]や放電可能電力Wout[W]等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御信号Seと、電動機MGを制御する電動機制御信号Smと、を出力する。エンジン制御信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPe[W]の指令値である。電動機制御信号Smは、例えばそのときの電動機回転速度Nmにおける電動機トルクTmを出力する電動機MGの消費電力Wm[W]の指令値である。
バッテリ54の充電可能電力Winは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ54の入力制限を示している。バッテリ54の放電可能電力Woutは、バッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ54の出力制限を示している。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOC(予め定められた満充電容量に対する実際に蓄電されている充電量の比)SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。
ハイブリッド制御部92は、例えば電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、走行モードをモータ走行(=EV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、EV走行モードでは、K0クラッチ18の解放状態において、走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)のうちの電動機MGのみから走行用駆動力を出力して走行するEV走行を行う。一方で、ハイブリッド制御部92は、例えば少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行(=HV走行)モードとする。ハイブリッド制御部92は、HV走行モードでは、K0クラッチ18の係合状態において、走行用駆動力源(エンジン12及び電動機MG)のうちの少なくともエンジン12から走行用駆動力を出力して走行するエンジン走行すなわちHV走行を行う。
エンジン制御部92aは、車両10に対する駆動要求量を実現するようにエンジントルクTeを制御する。電動機制御部92bは、車両10に対する駆動要求量を実現するように電動機トルクTmを制御する。具体的には、EV走行モードにおいては、電動機制御部92bは、要求駆動トルクTrdemを実現するように電動機トルクTmを制御する。HV走行モードにおいては、エンジン制御部92aは、要求駆動トルクTrdemの全部又は一部を実現するようにエンジントルクTeを制御し、電動機制御部92bは、要求駆動トルクTrdemに対してエンジントルクTeでは不足するトルク分を補うように電動機トルクTmを制御する。
変速制御部96は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機22の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機22の変速制御を実行するためのCB油圧制御信号Scbを油圧制御回路56へ出力する。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機22の変速が判断されるための変速線を有する所定の関係である。前記変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。
ここから、車両10が停止している場合のエンジン12の始動について説明する。
ハイブリッド制御部92は、エンジン12の始動判定を行う始動判定手段すなわち始動判定部92cと、作動油OILが所定の低温状態であるか否かを判定する油温判定手段すなわち油温判定部92dと、エンジン12の始動制御を実行する始動制御手段すなわち始動制御部92eと、を機能的に更に備える。
始動判定部92cは、エンジン12の始動が要求されたか否かを判定する。例えば、始動判定部92cは、スイッチ操作信号SWonに基づいてエンジン12の始動が要求されたか否かを判定する。
油温判定部92dは、作動油OILが所定の低温状態であるか否かを判定する。例えば、油温判定部92dは、作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下である場合には、作動油OILが所定の低温状態であると判定し、作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdgを超過する場合には、作動油OILが所定の低温状態ではないと判定する。作動油OILが所定の低温状態であるとは、作動油OILの粘性が大きくなることで自動変速機22がNモードであるにもかかわらず引き摺りトルクが大きくなってK0クラッチ18を所定期間Tcon内に係合させようとするとエンジン停止が発生するおそれがある作動油OILの温度状態をいう。引き摺りトルクは、自動変速機22内での作動油OILを介した引き摺りにより発生するトルクであって、K0クラッチ18が係合される場合にエンジントルクTeに対する負荷トルクとなる。所定期間Tconとは、エンジン12の始動が要求された場合に、電動機回転速度Nmとエンジン回転速度Neとの回転同期を取る期間として、実験的に或いは設計的に予め定められた期間である。
例えば、自動変速機22がNモードであって自動変速機22の複数の変速用係合装置CBが解放状態となるように制御されているにもかかわらず、作動油OILが所定の低温状態であるために作動油OILの粘性が大きく、変速用係合装置CBの摩擦板の間にある作動油OILによる引き摺りに起因して変速用係合装置CBが疑似的に係合状態となる場合がある。この場合、自動変速機22が備える変速用係合装置CBの例えば3つ以上の疑似的な係合状態によりタイアップのようなロック状態に近い状態となったり、自動変速機22が備える複数の遊星歯車装置のうちのイナーシャの大きい回転要素同士が繋がったりすることで、自動変速機22の引き摺りトルク全体が大きくなる。なお、タイアップとは、異なる変速段を形成する際にそれぞれ係合される異なる変速用係合装置CBが、変速の際に同時に係合状態となって自動変速機22のギヤ機構が一時的にロックしてしまう現象のことである。この作動油OILが所定の低温状態であることにより、自動変速機22内での引き摺りにより連れ回される回転部材を、以下「連れ回り部材」ということとする。なお、所定の判定温度THoil_jdgは、作動油OILが所定の低温状態であることを判定するために実験的に或いは設計的に予め定められた判定値である。
始動判定部92cによりエンジン12の始動が要求されたと判定され且つ油温判定部92dにより作動油OILが所定の低温状態であると判定された場合(以下、「低温始動要求時」と記す。)、EOP制御部98は、EOP60を駆動してEOP60から油圧制御回路56へ作動油OILを圧送させ、クラッチ制御部94は、K0クラッチ18が解放状態となるように制御する。そして、K0クラッチ18が解放状態とされている状態で、始動制御部92eがエンジン12を始動するとともに、変速制御部96が自動変速機22の変速段として慣性トルクが最小となる第1速変速段を形成する。この「変速制御部96が慣性トルクが最小となる第1速変速段を形成する」では、例えばシフトレバー68がP操作ポジションに操作されていても、低温始動要求時において自動変速機22の変速段として強制的に第1速変速段が形成される。
低温始動要求時において、始動制御部92eによりエンジン12が始動され且つ変速制御部96により自動変速機22の変速段として第1速変速段が形成された後に、K0クラッチ18が半係合状態を経て完全係合状態とされる。これにより、エンジン12から出力されたエンジントルクTeがフライホイール14、ダンパー16、K0クラッチ18、電動機連結軸42を経てトルクコンバータ20へ伝達される。K0クラッチ18が完全係合状態とされて電動機回転速度Nmとエンジン回転速度Neとの回転同期が取れた後は、変速制御部96は、シフトレバー68のシフト操作ポジションPOSshに応じて自動変速機22の変速段を制御する。
始動判定部92cによりエンジン12の始動が要求されたと判定され且つ油温判定部92dにより作動油OILが所定の低温状態ではないと判定された場合(以下、「常温始動要求時」と記す。)、EOP制御部98は、EOP60を駆動してEOP60から油圧制御回路56へ作動油OILを圧送させ、クラッチ制御部94は、K0クラッチ18が解放状態となるように制御する。そして、K0クラッチ18が解放状態とされている状態で、始動制御部92eがエンジン12を始動する。なお、常温始動要求時においては、変速制御部96は、自動変速機22の変速段を形成しない、すなわち自動変速機22はNモードである。
常温始動要求時において、始動制御部92eによりエンジン12が始動された後に、K0クラッチ18が半係合状態を経て完全係合状態とされる。これにより、エンジン12から出力されたエンジントルクTeがフライホイール14、ダンパー16、K0クラッチ18、電動機連結軸42を経てトルクコンバータ20へ伝達される。K0クラッチ18が完全係合状態とされて電動機回転速度Nmとエンジン回転速度Neとの回転同期が取れた後は、変速制御部96は、シフトレバー68のシフト操作ポジションPOSshに応じて自動変速機22の変速段を制御する。
図2は、図1に示す電子制御装置90の制御作動を説明するフローチャートの一例である。図2のフローチャートは、車両停止中に繰り返し実行される。
まず、始動判定部92cの機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、レディーオン状態とする要求が有ったか否かが判定される。S10の判定が肯定された場合には、始動判定部92cの機能に対応するS20において、エンジン12の始動要求が有ったか否かが判定され、S10の判定が否定された場合には、リターンとなる。S20の判定が肯定された場合には、油温判定部92dの機能に対応するS30において、油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下であるか否かが判定され、S20の判定が否定された場合には、リターンとなる。
S30の判定が肯定された場合には、EOP制御部98、変速制御部96、及び始動制御部92eの機能に対応するS40において、EOP60の駆動が開始され、自動変速機22での第1速変速段の形成が開始され、且つ、スタータ50によりエンジン12の始動が開始される。そして、始動制御部92e及び変速制御部96の機能に対応するS50において、エンジン12の始動が完了し且つ自動変速機22での第1速変速段の形成が完了したか否かが判定される。
S30の判定が否定された場合には、EOP制御部98及び始動制御部92eの機能に対応するS60において、EOP60の駆動が開始され、スタータ50によりエンジン12の始動が開始される。S60では、自動変速機22は、Nモードとされている。そして、始動制御部92eの機能に対応するS70において、エンジン12の始動が完了したか否かが判定される。
S50の判定が肯定された場合及びS70の判定が肯定された場合には、クラッチ制御部94及び電動機制御部92bの機能に対応するS80において、K0クラッチ18を係合状態にする係合制御が開始されるとともに電動機MGから電動機トルクTmを出力させる電動機トルク出力制御が開始され、そしてS90が実行される。S50の判定が否定された場合には、S50が再度実行される。S70の判定が否定された場合には、S70が再度実行される。
クラッチ制御部94の機能に対応するS90において、K0クラッチ18の係合が完了したか否かが判定される。S90の判定が肯定された場合には、リターンとなり、S90の判定が否定された場合には、S90が再度実行される。
図3は、図2のフローチャートが実行された場合におけるタイムチャートの一例である。図3の横軸は、時間t[ms]である。図3において、「EOP駆動要求信号」はEOP60の駆動要求に関する信号であって、オンはEOP60の駆動を要求する信号であり、オフはEOP60の駆動を要求しない信号である。図3において、「特定係合装置」は、変速用係合装置CBのうち第1速変速段を形成するために係合状態に切り替えられる係合装置である。「特定係合装置の係合要求信号」は、特定係合装置の係合要求に関する信号であって、オンは係合を要求する信号であり、オフは係合を要求しない信号である。図3において、「電動機トルクの出力要求信号」は電動機トルクTmの出力要求に関する信号であって、オンは出力を要求する信号であり、オフは出力を要求しない信号である。図3に示す「K0クラッチの係合要求信号」は、K0クラッチ18の係合要求に関する信号であって、オンは係合を要求する信号であり、オフは係合を要求しない信号である。
時刻t1以前は、車両10が停止しており且つエンジン12及び電動機MGが停止している。また、作動油OILの油温THoilは、所定の判定温度THoil_jdg以下である。
時刻t1において、レディーオン状態とされ且つエンジン12の始動要求がされる。これにより、時刻t1において、EOP60の駆動が開始され、K0クラッチ18の解放状態が維持され、自動変速機22で慣性トルクが最小となる第1速変速段の形成が開始され、エンジン12の始動制御が開始される。EOP60の駆動によりEOP60から油圧制御回路56へ作動油OILが圧送される。エンジン12の始動制御の開始により、エンジン回転速度Neが上昇し始める。
時刻t2(>t1)では、エンジン12の始動が完了しており且つ自動変速機22での第1速変速段の形成が完了している。時刻t2において、K0クラッチ18の解放状態から係合状態への切り替えが開始され、電動機MGからの電動機トルクTmの出力が開始される。これにより、時刻t2以降において、電動機回転速度Nmが次第に上昇する。電動機回転速度Nmの上昇に伴い、MOP38から油圧制御回路56に作動油OILが圧送される。
エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmとの同期が取れた時刻t3(>t2)において、K0クラッチ18の完了する。時刻t3において、MOP38から油圧制御回路56へ作動油OILが圧送されているため、EOP60の駆動が停止させられる。
(比較例)
図4は、比較例に係るタイムチャートの一例である。前述の実施例では、低温始動要求時には、エンジン12が始動され且つ自動変速機22の変速段として慣性トルクが最小となる第1速変速段が形成された後に、K0クラッチ18が半係合状態を経て完全係合状態とされたが、本比較例では、自動変速機22で変速段が形成されずエンジン12が始動された後に、K0クラッチ18が半係合状態を経て完全係合状態とされる点が前述の実施例と異なる。そのため、前述の実施例に係る図3のタイムチャートと異なる部分を中心に説明することとし、実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
時刻t1において、レディーオン状態とされ且つエンジン12の始動要求がされる。これにより、時刻t1において、EOP60の駆動が開始され、K0クラッチ18の解放状態が維持され、エンジン12の始動制御が開始される。EOP60の駆動によりEOP60から油圧制御回路56へ作動油OILが圧送される。エンジン12の始動制御の開始により、エンジン回転速度Neが上昇し始める。
時刻t2では、エンジン12の始動が完了している。このとき、自動変速機22はNモードとされ、変速用係合装置CBが全て解放状態となるように制御されている。時刻t2において、K0クラッチ18の解放状態から係合状態への切り替えが開始され、電動機MGからの電動機トルクTmの出力が開始される。時刻t2以降において自動変速機22はNモードであって変速用係合装置CBが全て解放状態が維持されるように制御されているにもかかわらず、作動油OILの引き摺りに起因して変速用係合装置CBが疑似的な係合状態となっている。そのため、例えば複数の変速用係合装置CBの3つ以上の疑似的な係合状態によりタイアップのようなロック状態に近い状態となって自動変速機22の引き摺りトルク全体が大きくなっている。
時刻t2から時刻t4(>t2)までの期間において、電動機回転速度Nmを引き上げるのに必要とされる必要トルクTnd[Nm]は、図4に示すように上昇する。例えば、必要トルクTndは、電動機連結軸42の慣性トルク、電動機MGにおける引き摺りトルク(例えば、ロータとステータとの間の引き摺りで発生するトルク)、トルクコンバータ20の慣性トルク、自動変速機22の慣性トルク、及び、自動変速機22における引き摺りトルク、などが含まれる。これにより、自動変速機22の連れ回り部材の回転速度は、エンジントルクTe及び電動機トルクTmにより一旦は上昇するものの、必要トルクTndに比較してエンジントルクTeと電動機トルクTmとの合計である発生可能トルクTgen[Nm]が小さいため、エンジン回転速度Ne、電動機回転速度Nm、及び連れ回り部材の回転速度のいずれも下降して零値となってエンジン停止が発生する。
図5は、本実施例の効果について説明する図である。図5では、作動油OILの油温THoilは、所定の判定温度THoil_jdg以下である。
図5に示すように、エンジン12が始動しK0クラッチ18を係合状態とする係合制御中におけるエンジントルクTeと電動機トルクTmとの合計である発生可能トルクTgenをトルク値Txとする。比較例では、自動変速機22での引き摺りトルクが大きいために電動機回転速度Nmとエンジン回転速度Neとを回転同期させる必要トルクTndは、発生可能トルクTgenよりも大きいトルク値Ty1である。一方、実施例では、自動変速機22において慣性トルクが最小である第1速変速段が形成されているため、電動機回転速度Nmとエンジン回転速度Neとを回転同期させる必要トルクTndは、発生可能トルクTgenよりも小さいトルク値Ty2である。このように、K0クラッチ18を所定期間Tcon内に係合させて回転同期させる必要トルクTndが発生可能トルクTgen以下に低減されることでエンジン停止の発生が抑制される。
本実施例によれば、自動変速機22用の作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下である場合に、スタータ50によってエンジン12が始動され且つK0クラッチ18を係合することによって生じる自動変速機22の慣性トルクが最小となるような自動変速機22における変速段が形成された後に、K0クラッチ18が係合される。K0クラッチ18が係合される前に、自動変速機22の慣性トルクが最小となるような自動変速機22における変速段が形成されるため、作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下であって作動油OILの粘性が高くても自動変速機22での慣性トルクが小さくされる。これによりエンジン12の始動後にK0クラッチ18を所定期間Tcon内に係合させる際の必要トルクTndが大きくなることが抑制されて、エンジン停止の発生が抑制される。
本実施例によれば、作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdgを超過する場合に、自動変速機22における変速段が形成されずスタータ50によってエンジン12が始動された後に、K0クラッチ18が係合される。作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdgを超過する場合には、作動油OILの粘性が低いため自動変速機22の引き摺りトルクは小さく、作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下である場合に比較してエンジン12の始動後にK0クラッチ18を係合させる際の必要トルクTndが小さい。そのため、自動変速機22の慣性トルクが最小となるような自動変速機22における変速段を形成しなくてもエンジン停止の発生が抑制される。これにより、自動変速機22における変速段の形成を待つことなく、エンジン12が始動された後に速やかにK0クラッチ18の係合を行うことができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、エンジン12の始動が完了し且つ自動変速機22での第1速変速段の形成が完了した後に、K0クラッチ18が係合される態様であったが、慣性トルクが最小となる第1変速段の形成は完全に完了した後でなくても構わない。要は、エンジン停止が抑制される程度に自動変速機22において第1変速段が形成された後にK0クラッチ18が係合される態様であれば良い。
前述の実施例では、自動変速機22の複数の変速段のうち第1速変速段が慣性トルクが最小となる態様であったが、本発明はこの態様に限らない。例えば、第1速変速段とは異なる他の変速段が慣性トルクが最小となる態様では、自動変速機22用の作動油OILの油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下である場合に、スタータ50によってエンジン12が始動され且つその慣性トルクが最小となる他の変速段が第1速変速段の替わりに形成された後に、K0クラッチ18が係合される。
前述の実施例では、油温THoilが所定の判定温度THoil_jdg以下である場合に作動油OILが所定の低温状態であると判定されたが、これに限らない。例えば、作動油OILによる冷却対象である電動機MGの温度が所定の判定温度THoil_jdg以下である場合に作動油OILが所定の低温状態であると判定されても良い。要は、自動変速機22がNモードであるにもかかわらず引き摺りトルクが大きくなってエンジン停止が発生するおそれがある作動油OILの温度状態であることを判定できるのであれば、油温THoilを直接的に判定する方法に限らず、間接的に判定する方法であっても良い。
前述の実施例では、車両10は電動機MGを備えていたが、電動機MGを備えない車両10にも本発明は適用可能である。
前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ20が用いられたが、この態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ20に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。また、流体式伝動装置は、必ずしも備えられている必要はなく、例えば発進用のクラッチに置き換えられても良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン(内燃機関)
18:K0クラッチ(係合装置)
22:自動変速機
50:スタータ(始動装置)
90:電子制御装置(制御装置)
OIL:作動油

Claims (2)

  1. 内燃機関と、自動変速機と、前記内燃機関と前記自動変速機との間のトルク伝達の断接を行う係合装置と、前記内燃機関を始動させる始動装置と、を備えた車両の、制御装置であって、
    前記自動変速機用の作動油が所定の低温状態である場合に、前記始動装置によって前記内燃機関を始動し且つ前記係合装置を係合することによって生じる前記自動変速機の慣性トルクが最小となるような前記自動変速機における変速段を形成した後に、前記係合装置を係合させる
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記作動油が前記所定の低温状態ではない場合に、前記自動変速機における変速段を形成せずに前記始動装置によって前記内燃機関を始動した後に、前記係合装置を係合させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
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