JP2022158335A - 水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ皮膚中に滞留させる方法 - Google Patents

水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ皮膚中に滞留させる方法 Download PDF

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隆典 中村
Takanori Nakamura
文靖 小野
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Abstract

【課題】有機合成によるプロドラッグ化によらずに、水溶性有効成分の経皮吸収性を簡便に高め、かつ、当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させるための方法を提供する。【解決手段】水溶性有効成分、脂溶性媒体、及び水を混合する工程であって、当該脂溶性媒体を、混合物の総量に対して、0.01乃至5重量%で混合する工程を含むことを特徴とする、前記水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ、前記水溶性有効成分を皮膚中に滞留させる方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させる方法;ならびに水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させる水含有経皮吸収組成物に関するものである。
近年、皮膚から活性成分を吸収させて皮膚に直接的に作用するように誘導する経皮吸収技術に関する研究が進んでいる。
特に、水溶性薬剤については、脂溶性が高い角質層に浸透しにくいのが問題で、その経皮吸収性を高めるための方法の一つとして、水溶性薬剤の脂溶化(油溶化)が挙げられている。例えば、水溶性薬剤に対して脂溶化部位を有機合成により導入し(プロドラッグ化)、油脂性基材に溶解・分散させ皮膚に塗布する。角質層透過後、皮膚内部で酵素等により水溶性薬剤と脂溶性部位の結合が切断され、水溶性薬剤が放出される。あるいは、水溶性薬剤の水溶液をリポソーム内に封入し、油脂性基材に溶解・分散させ皮膚に塗布する。角質層透過後、皮膚内部で酵素等によりリポソームの界面が崩壊し、水溶性薬剤が放出される。
最近は、薬物の経皮吸収性を高めるため、テルペンや高級アルコールなどの透過性増強剤(経皮吸収促進剤)を使用することも報告されている(特許文献1~5)。
特開2013-241459号公報 国際公開番号WO2012/043701号公報 特開2010-100650号公報 特許第5680197号公報 特開2010-6771号公報
プロドラッグ化は水溶性薬剤に親油性を付与し経皮吸収性を高める優れた方法であるが、有機合成の製造プロセスや、医薬品・医薬部外品の製造販売承認を得るための煩雑な手続きが必要となる。
プロドラッグ化又はリポソームに内包させる薬剤として、例えば、人工アミノ酸であるトラネキサム酸は、表皮中において、タンパク質分解酵素であるプラスミンに結合して活性化を阻害することにより、メラニンの産生を抑制することが知られている。この作用を利用して、近年、美白効果が謳われるようになり、化粧料の原料として注目を集めている。しかしながら、トラネキサム酸の皮膚浸透性は低いという問題があった。
一方、皮膚への浸透性の高いものは、一般に皮膚を透過し、深層部にまで到達してしまうことで、刺激性があり、過度の拒絶反応を引きおこす要因となる。従って、有効成分が皮膚へ浸透した後に、皮膚中に留まる技術が望まれていた。
本発明は、有機合成によるプロドラッグ化によらずに、水溶性有効成分の経皮吸収性を簡便に高め、かつ、当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させるための方法;ならびに水溶性有効成分の経皮吸収性を簡便に高め、かつ、当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させることのできる経皮吸収組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、水溶性有効成分、脂溶性媒体、及び水を混合する際に、当該脂溶性媒体を混合物の総量に対して適切な比率で混合させることで、簡便に、当該水溶性有効成分の経皮吸収性を高め、かつ当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]水溶性有効成分、脂溶性媒体、及び水を混合する工程であって、当該脂溶性媒体を、混合物の総量に対して、0.01乃至5重量%で混合する工程を含むことを特徴とする、前記水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ、前記水溶性有効成分を皮膚中に滞留させる方法;
[2]さらに、経皮吸収制御剤を混合することを特徴とする、前記[1]記載の方法;
[3]経皮吸収制御剤が1価又は多価アルコールである、前記[2]記載の方法;
[4]1価又は多価アルコールがメタノール、エタノール、2-プロパノール、ゲラニオール、シトロネロール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、オレイルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-ヘキシルデカノール、及び1,2-ヘキサンジオールからなる群より一つ以上選ばれる、前記[3]記載の方法;
[5]さらに、ケトン基を有する化合物を混合することを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれか一つ記載の方法;
[6]ケトン基を有する化合物が、ケトン基を有するテルペン、ケトン基を有するリグノイド、ケトン基を有するバニロイド、ケトン基を有するクルクミノイド、クロモン、及びクマリンからなる群より一つ以上選ばれる、前記[5]記載の方法;
[7]ケトン基を有するテルペンが(+)-カンファー又はゲラニルアセトンである、前記[6]記載の方法;
[8]ケトン基を有する化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、クルクミン又はビタミンKである、前記[5]記載の方法;
[9]脂溶性媒体1容量部に対して、ケトン基を有する化合物2容量部以上を混合する、前記[5]~[8]のいずれか一つ記載の方法;
[10]水溶性有効成分がミノキシジルである、前記[1]~[9]のいずれか一つ記載の方法;
[11]脂溶性媒体が、ミリスチン酸イソプロピル、シクロペンタシロキサン、スクアラン、セバシン酸ジエチル、及びリモネンからなる群より一つ以上選ばれる、前記[1]~[10]のいずれか一つ記載の方法;
[12]水溶性有効成分、脂溶性媒体、及び水を含む経皮吸収組成物であって、当該脂溶性媒体が、当該組成物の総量に対して、0.01乃至5重量%であることを特徴とする、経皮吸収組成物;
[13]さらに、経皮吸収制御剤を含むことを特徴とする、前記[12]記載の経皮吸収組成物;
[14]経皮吸収制御剤が1価又は多価アルコールである、前記[13]記載の方法;
[15]1価又は多価アルコールが、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ゲラニオール、シトロネロール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、オレイルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-ヘキシルデカノール、及び1,2-ヘキサンジオールからなる群より一つ以上選ばれる、前記[14]記載の経皮吸収組成物。
[16]さらに、ケトン基を有する化合物を含むことを特徴とする、前記[12]~[15]のいずれか一つ記載の経皮吸収組成物;
[17]ケトン基を有する化合物が、ケトン基を有するテルペン、ケトン基を有するリグノイド、ケトン基を有するバニロイド、ケトン基を有するクルクミノイド、クロモン、及びクマリンからなる群より一つ以上選ばれる、前記[16]記載の経皮吸収組成物;
[18]ケトン基を有するテルペンが(+)-カンファー又はゲラニルアセトンである、前記[17]記載の経皮吸収組成物;
[19]ケトン基を有する化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、クルクミン又はビタミンKである、前記[16]記載の方法;
[20]脂溶性媒体1容量部に対して、ケトン基を有する化合物2容量部以上を含む、前記[16]~[19]のいずれか一つ記載の経皮吸収組成物;
[21]水溶性有効成分がミノキシジルである、前記[12]~[20]のいずれか一つ記載の経皮吸収組成物;
[22]脂溶性媒体が、ミリスチン酸イソプロピル、シクロペンタシロキサン、スクアラン、セバシン酸ジエチル、及びリモネンからなる群より一つ以上選ばれる、前記[12]~[21]のいずれか一つ記載の経皮吸収組成物;
[23]水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ、前記水溶性有効成分を皮膚中に滞留させるために皮膚に適用されるように用いられることを特徴とする、前記[12]~[22]のいずれか一つ記載の経皮吸収組成物。
本発明によれば、水溶性有効成分の経皮吸収性を向上させることができ、また、角質層透過後、当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させて、皮膚内部で、当該水溶性有効成分を放出させて薬効を奏することもできる。
比較例1及び比較例2、ならびに実施例1及び実施例2におけるブタ(Yucatan Micro Pig;YMP)の皮膚中のミノキシジル濃度を示す図である。 比較例1及び比較例2、ならびに実施例1及び実施例2におけるレシーバー液中のミノキシジル濃度を示す図である。 比較例3及び実施例3におけるブタ(Yucatan Micro Pig;YMP)の皮膚中のミノキシジル濃度を示す図である。 比較例3及び実施例3におけるレシーバー液中のミノキシジル濃度を示す図である。 比較例4及び実施例4乃至実施例6におけるブタ(Yucatan Micro Pig;YMP)の皮膚中のミノキシジル濃度を示す図である。 比較例4及び実施例4乃至実施例6におけるレシーバー液中のミノキシジル濃度を示す図である。
本発明の水溶性有効成分は、水溶性の医薬又は化粧品などの有効成分であれば特に制限されず、任意の水溶性の医薬又は化粧品の有効成分、例えば、アミノ酸、親水性ビタミン、糖、ペプチドその他の親水性薬剤などを使用することができる。
このような本発明の水溶性有効成分として、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、又はチオール基を有するものが挙げられる。これらの基は、それぞれ、ケトン基を有する化合物の当該ケトン基と、水中で解離し得る相互作用、例えば、イオン結合、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、電荷移動相互作用、π-π相互作用、疎水相互作用や溶媒和、可逆的な化学結合などを形成してもよい。
前記アミノ酸として、例えば、トラネキサム酸などの人工アミノ酸;ならびにアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンなどの天然アミノ酸などが挙げられる。
前記親水性ビタミンとして、例えば、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルグルコシド、エチルアスコルビン酸、ならびにビタミンB1、B2、B4,B5、B6、B7、及びB12などが挙げられる。
前記糖として、例えば、グルコース、トレハロース、デキストラン、プルラン、シクロデキストリン、マンニトール、グルコサミン、ガラクトサミン、ラフィノース、マンナン、及びペクチンなどが挙げられる。
前記ペプチドとしては、公知のペプチドの他、特定の効能(例えば、人のT細胞に認識されるため、花粉症治療効果が期待される等)を有するペプチドが挙げられる。具体例としては、ペプチドA(アミノ酸配列:QFAKLTGFTLMG)、及びペプチドB(アミノ酸配列:SMKVTVAFNQFGP)である。
前記親水性薬剤として、例えば、ミノキシジル、ザナミビル(リレンザ)、アシクロビル、シタラビンオクホスファート、及びリン酸フルダラビンなどが挙げられる。好ましくはミノキシジルである。
本発明では、前記の水溶性有効成分を、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の方法や経皮吸収組成物は、皮膚中に水溶性有効成分を滞留させる目的で、脂溶性媒体を混合又は含有する。その際、混合物や組成物の総重量に対する脂溶性媒体の混合又は含有割合を調整することで、水溶性有効成分の経皮吸収性や皮膚中での滞留性を制御することができる。例えば、脂溶性媒体の混合又は含有割合を上昇させることにより、水溶性有効成分の経皮吸収性を高めることができ、脂溶性媒体の混合又は含有割合を低下させることにより、水溶性有効成分の皮膚中での滞留性を高めることができる。適切な経皮吸収性及び皮膚中での滞留性が得られる点から、脂溶性媒体の混合又は含有割合は、混合物や組成物の総重量に対して、例えば、0.01乃至5重量%であり、好ましくは0.05乃至3重量%であり、より好ましくは0.1乃至2重量%である。
本発明の脂溶性媒体は、医薬や化粧品、特に皮膚外用剤の分野で基材などとして慣用される脂溶性の媒体であれば、特に制限されず、好ましくは経皮吸収促進性脂溶性媒体を使用することができる。
前記の経皮吸収促進性脂溶性媒体は、医薬や化粧品、特に皮膚外用剤の分野で、水溶性医薬又は化粧品の活性成分の経皮吸収の促進に慣用されるものであれば、特に制限されず、例えば、リモネン(例えば、d-リモネン((+)-リモネン)、特にR-(+)-リモネン)、シクロペンタシロキサン(KF995):
Figure 2022158335000001

ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、スクアラン、スクワラン、スクワレン、シリコンオイル、ホホバオイル、アーモンドオイル、オリーブオイル、馬油、セバシン酸ジエチル、及びミネラルオイルなどを使用することができ、好ましくはミリスチン酸イソプロピル(IPM)、シクロペンタシロキサン、スクアラン、リモネン(特にR-(+)-リモネン)、及びセバシン酸ジエチルを使用することができ、より好ましくはミリスチン酸イソプロピル(IPM)を使用することができる。
本発明では、さらに、経皮吸収制御剤を使用してもよい。
上記の経皮吸収制御剤は、医薬や化粧品、特に皮膚外用剤の分野で、水溶性医薬又は化粧品の活性成分の経皮吸収の制御に慣用されるものであれば、特に制限されない。本発明の水溶性有効成分や任意のケトン基を有する化合物が脂溶性媒体中で良好に安定化したり、皮膚中での水溶性有効成分の放出がより良好に制御されたりし得る点から、ヒドロキシル基を有する経皮吸収制御剤が好ましく、特に1価又は多価アルコールが好ましく使用される。
前記の1価のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノールなどの低級アルコール;高級アルコール;ならびにネロリドール、ゲラニオール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール、ネロール、シトロネロール、フェンチルアルコール、カルベオール、及びネオメントールなどのヒドロキシル基を有するテルペンなどが挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、2-プロパノール、シトロネロール、及びゲラニオールが挙げられ、より好ましくはエタノールが挙げられる。
前記の高級アルコールとして、例えば、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、及びファインオキソコール180(FO180):
Figure 2022158335000002

などの炭素数8~18の飽和アルコール;ならびにオレイルアルコール、リノレイルアルコール、及びリノレニルアルコールなどの炭素数8~18の不飽和アルコールなどが挙げられる。好ましくは、オクタノール、デカノール、セタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、2-ヘキシルデカノール、及びオレイルアルコールが挙げられ、より好ましくは、オレイルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、及び2-ヘキシルデカノールが挙げられる。
前記の多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール(例えば、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、又は2,3-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール400などが挙げられ、好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオールなどのブチレングリコール、及び1,2-ヘキサンジオール、特に好ましくはプロピレングリコール及び1,3-ブタンジオールが挙げられる。
本発明では、水溶性有効成分の経皮吸収性や皮膚中滞留性が高まる点から、さらに、ケトン基を有する化合物を組み合わせることが好ましい。
本発明において、さらに、ケトン基を有する化合物を使用する場合は、水溶性有効成分と当該ケトン基を有する化合物とが複合体を形成していてもよい。当該複合体では、当該水溶性有効成分と、当該ケトン基を有する化合物とが、水中で解離し得る可逆的な相互作用を介して複合化していてもよい。このように形成された複合体は、当該水溶性有効成分及び当該ケトン基を有する化合物と化学平衡の関係にあることができる。その結果、当該複合体は、脂溶性媒体中では溶媒和やクラスター生成などにより脂溶化して安定に存在して、脂溶性媒体に均一に溶解(脂溶化、もしくは油溶化)することができるので、当該水溶性有効成分の経皮吸収性を向上させることができる一方、角質層透過後、皮膚内部では、そこに含まれる水分で容易に解離して当該水溶性有効成分を放出するので、薬効を発揮させ得ることが期待できる。
なお、本発明の複合体は、水溶性有効成分と、ケトン基を有する化合物に加え、さらに経皮吸収制御剤とが、水中で解離し得る相互作用を介して複合化していてもよい。そのような複合体では、皮膚中での水溶性有効成分の放出がより良好に制御される。
上記のケトン基を有する化合物は、ケトン基を少なくとも1個含む脂溶性の化合物であれば、特に制限されず、脂肪族ケトンや芳香族ケトンを含む任意の化合物が使用することができる。中でも、炭素数が3以上、例えば3~50、特に4~50の、ケトン基を有する化合物が好ましい。更に、天然由来かつ安全性の観点から、ケトン基を有するテルペン、ケトン基を有するリグノイド、ケトン基を有するバニロイド、ケトン基を有するクルクミノイド、ケトン基を有するクロモンやクマリンなどがより好ましい。
なお、本発明においてケトン基とは、-(C=O)-(両端はいずれも水素原子とは結合していない)で表される基を意味する。また、その互変異性型であるエノール型:=C(OH)-も本発明においてケトン基に包含され得る。
好ましくは、本発明のケトン基は、-(C=O)-の両端がいずれも炭素原子と結合している。
前記ケトン基を有するテルペンとして、例えば、ゲラニルアセトン、カンファー、例えば(±)-カンファー、(+)-カンファー、及び(-)-カンファー、ならびにカルボン及びカプサンチンなどが挙げられ、水溶性有効成分、特にミノキシジルを良好に脂溶化させる点から、ゲラニルアセトン又は(+)-カンファーが好ましく、また、上記化合物を含む精油(エッセンシャルオイル)等の天然物を使用してもよい。好ましくは、水溶性有効成分、特にミノキシジルを良好に脂溶化させる点から、クスノキである。
精油とは、植物が産出する揮発性の有機物の総称であり、一般的に多くの化合物の混合物である。特に限定されるわけではなく、本発明のケトン基を有するテルペンが含まれていれば実施可能である。
クスノキは、一例としては、カンファーが主な成分(50~60%)であり、リモネン(5~10%)、α-ピネン、ミルセン等の混合物である。
セージは、一例としては、カンファーが主な成分(20~30%)であり、Cis-ツジョン(15~20%)、ユーカリプトール(10~15%)等の混合物である。
前記ケトン基を有するリグノイドとして、例えば、フラボンなどが挙げられる。
前記ケトン基を有するバニロイドとして、例えば、ギンゲロール又はショウガオールなどが挙げられる。
前記ケトン基を有するクルクミノイドとして、例えば、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンなどが挙げられ、水溶性有効成分、特にミノキシジルを良好に脂溶化させる点から、クルクミンが好ましい。
本発明のケトン基を有する化合物は、水溶性有効成分、特にミノキシジルを良好に脂溶化させる点から、とりわけゲラニルアセトン又は(+)-カンファーが好ましい。
また、本発明のケトン基を有する化合物は、水溶性有効成分、特にミノキシジルを良好に脂溶化させたり、経皮吸収性を高めたりする点から、とりわけ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(4-メチル-2-ペンタノン)、アセトフェノン、クルクミン又はビタミンKが好ましく、特にメチルイソブチルケトンが好ましい。
本発明では、前記のケトン基を有する化合物を、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の経皮吸収組成物は、前記水溶性有効成分と前記脂溶性媒体と水とを、当該脂溶性媒体が当該混合物の総量に対して0.01乃至5重量%となるように混合することで調製することができる。
さらに、本発明の経皮吸収組成物は、経皮吸収制御剤を含む場合は、前記水溶性有効成分と、前記経皮吸収制御剤、特に液状の経皮吸収制御剤と、水とを混合させてから、脂溶性媒体を混合させて調製することが好ましい。
さらに、本発明の経皮吸収組成物は、前記ケトン基を有する化合物を含む場合は、以下のように調製してもよい。
先ず、前記水溶性有効成分と前記ケトン基を有する化合物と水とを混合させ、必要に応じて一定時間加熱し冷却することで、プレミックス(以下「プレミックス(1)」ともいう)を簡便に調製することができる。プレミックス(1)が良好に得られる点で、当該経皮吸収制御剤、特に液状の経皮吸収制御剤も加えて混合させるのが好ましい。また、得られたプレミックス(1)が安定に溶解し得る点でも当該経皮吸収制御剤は液状であることが好ましい。
次いで、得られたプレミックス(1)に脂溶性媒体を混合させて、本発明の経皮吸収組成物を得ることができる。
あるいは、前記水溶性有効成分及び前記ケトン基を有する化合物を溶解した経皮吸収制御剤の溶液と、前記脂溶性媒体とを混合し、そこに水を添加することで調製することもできる。
水溶性有効成分が固体(好ましくは結晶)の場合、本発明の経皮吸収組成物や前記プレミックス(1)を良好に得るために、粉末にて混合することが好ましい。粉末にする方法としては、乾式粉砕による方法が挙げられる。乾式粉砕の条件としては、水溶性有効成分を小片に粉砕できる条件であれば特に制限されないが、乳鉢、ボールミル、ホモジナイザー、カッターミル、ハンマーミルなどの粉砕機を用いることが望ましい。また、粉砕時間や処理圧などは、粉砕される水溶性有効成分の硬さに応じて、適宜調整される。
上記方法にて得られた粉末は、粒径を均一にするためにさらにふるいにかけることが望ましい。ふるいとしては500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。
本発明の方法や経皮吸収組成物中において前記経皮吸収制御剤を使用する場合は、前記水溶性有効成分と前記経皮吸収制御剤との混合比(重量比)は、使用するこれら物質の種類に応じて異なるが、1:1~100、好ましくは1:2~95、より好ましくは1:5~95である。
本発明の方法や経皮吸収組成物中において前記ケトン基を有する化合物を使用する場合は、前記水溶性有効成分と前記ケトン基を有する化合物との混合比(重量比)は、使用するこれら物質の種類に応じて異なるが、1:0.1~100、好ましくは1:0.5~50、より好ましくは1:1~5である。
本発明の方法や経皮吸収組成物中において前記経皮吸収制御剤及び前記ケトン基を有する化合物を使用する場合は、前記水溶性有効成分と、前記経皮吸収制御剤と、前記ケトン基を有する化合物との混合比(重量比)は、使用するこれら物質の種類に応じて異なるが、1:1~100:0.1~100、好ましくは1:2~95:0.5~50、より好ましくは1:5~95:1~5である。
なお、前記プレミックス(1)を構成する、前記水溶性有効成分及び前記ケトン基を有する化合物の構成比(モル比)は、1~100:100~1であり、より好ましくは1~10:10~1である。
本発明では、前述の経皮吸収制御剤、特に1価又は多価アルコールを適宜使用することで、例えば、これら経皮吸収制御剤の種類や使用量によって、経皮吸収後の皮膚中での本発明の経皮吸収組成物からの水溶性有効成分の放出を制御することができる。例えば、経皮吸収制御剤の脂溶性を上昇させることにより(例えば、炭素数を増加させることにより)、本発明の水溶性有効成分の放出を遅延させることができ、経皮吸収制御剤の脂溶性を低下させることにより(例えば、炭素数を減少させることにより)、本発明の水溶性有効成分の放出を促進させることができる。
本発明では、前記の経皮吸収制御剤を、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の方法や経皮吸収組成物中において前記ケトン基を有する化合物を使用する場合は、前記脂溶性媒体と前記ケトン基を有する化合物との混合比は、使用するこれら物質の種類に応じて異なるが、脂溶性媒体1容量部に対して、ケトン基を有する化合物を例えば1容量部以上、好ましくは2容量部以上、より好ましくは2~500容量部、さらに好ましくは10~200容量部、特に好ましくは50~150容量部であり、最も好ましくは100~110容量部である。
前記のプレミックス(1)は、適切な経皮吸収制御剤を用いることにより、脂溶性媒体に対して良好な溶解性を示し得る。この観点から、例えば、脂溶性媒体がスクアランの場合、経皮吸収制御剤としてゲラニオール又はシトロネロールが好ましく、脂溶性媒体がIPMの場合、経皮吸収制御剤としてエタノール、1,2-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、又は1,3-ブタンジオール、特にエタノール、プロピレングリコール、及び1,3-ブタンジオールの組み合わせが好ましく、脂溶性媒体がKF995の場合、経皮吸収制御剤としてゲラニオール又はシトロネロールが好ましい。
本発明の方法や経皮吸収組成物は、水を含むが、水溶性有効成分をより多く均一溶解させる点で、当該混合物や組成物の総重量に対して、1wt%以上含むのが好ましく、特に5wt%以上が好ましく、とりわけ10wt%以上が好ましい。また、相分離が抑えられる点から、当該組成物の総重量に対して、70wt%以下含むのが好ましく、特に50wt%以下が好ましく、とりわけ30wt%以下が好ましい。
本発明の経皮吸収組成物は、医薬又は化粧品として使用する場合には、それ自体使用してもよいが、慣用の医薬製剤、特に皮膚外用剤、又は化粧品として使用してもよい。当該医薬製剤又は化粧品は、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の医薬品や化粧品の分野で許容される添加剤を含んでもよい。
本発明の皮膚外用剤は、本発明の効果を損なわない限り、皮膚外用剤に通常配合され得る成分を含有することができる。そのような成分としては、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコール、流動パラフィン、スクワラン、高級脂肪酸、高級アルコールなどの油分、クエン酸、乳酸、酒石酸などの有機酸類、塩酸、リン酸などの無機酸類、苛性ソーダ、トリエタノールアミンなどのアルカリ類、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、粉末、顔料、染料、防腐防黴剤、樹脂、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、増粘剤、保湿剤、アルコール、水、香料などが例示される。好ましくは酒石酸またはリン酸である。
本発明の方法や経皮吸収組成物は、好ましくは、脂溶性媒体としてミリスチン酸イソプロピル(IPM)、経皮吸収制御剤としてエタノール、プロピレングリコール、及び1,3-ブタンジオール;ならびに酒石酸を含み、より好ましくは、水溶性有効成分としてミノキシジル;脂溶性媒体としてミリスチン酸イソプロピル(IPM);ケトン基を有する化合物としてメチルイソブチルケトン;経皮吸収制御剤としてエタノール、プロピレングリコール、及び1,3-ブタンジオール;ならびに酒石酸を含む。
本発明の方法は、本発明の経皮吸収組成物を皮膚に適用することで、実施することができる。例えば、本発明の経皮吸収組成物を含む皮膚外用剤や化粧品を皮膚に塗布したり、本発明の経皮吸収組成物を含む貼付剤を皮膚に貼付したりする態様がある。
本発明は、本発明の経皮吸収組成物を皮膚に適用することを含む、前記水溶性有効成分を経皮投与するための方法にも関する。また、本発明は、前記水溶性有効成分を経皮投与するための本発明の経皮吸収組成物の使用にも関する。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.試薬及び装置
実施例で使用した試薬を以下に示す。
リグロ(登録商標)EX5はロート製薬(株)より入手した。エタノール(99.5、特級)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)(特級)、ギ酸アンモニウム(特級)、1×PBS、消毒用エタノールは富士フイルム和光純薬(株)より入手した。ミノキシジル、4-メチル-2-ペンタノン(MIK)は東京化成工業(株)より入手した。アセトニトリル(高速液体クロマトグラフィー用)は関東化学(株)より入手した。水は純水を用いた。
なお、リグロ(登録商標)EX5は、100mL中、有効成分としてミノキシジルを5g含み、その他に、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、酒石酸、及び水を含む。
分析に用いた装置を以下に示す。
液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)
装置:e2695(LC部)、2489(UV-Vis検出器)、3100MassDetector、日本ウォーターズ(株)製
カラム:Shоdex Asahipak NH2P-40 2D (2.0 mmI.D. x 150 mm)
2.IPMを添加したミノキシジルを含む経皮収吸収組成物の調製例
6mLのねじ口サンプル管に、表1に示した量のリグロ(登録商標)EX5、ならびにIPM及び/又はMIKを加えボルテックスミキサーにより混合し、比較例1、実施例1、比較例2、及び実施例2の経皮吸収組成物を調製した。
調製条件を表1に示す。
Figure 2022158335000003
3.ミノキシジル油溶化溶液の経皮吸収性試験
角質層は疎水的であり、深部に行くに従い親水的になる。すなわち、角質層のバリアを突破するために、油分を添加することは有効な手段となりえる。そこで、市販品であるリグロに油分添加を行うことで、市販品より多くミノキシジルを吸収するか否かの経皮吸収性試験を行った。
本実験で用いた経皮吸収組成物は、前記表1にある比較例1、実施例1、比較例2、及び実施例2である。
経皮吸収性試験は次のとおりに行った。経皮吸収性試験としてはブタ皮膚(Yucatan Micrо Pig(日本チャールスリバー社製))を用いた。フランツセルのレシーバー相に攪拌子とPBS水溶液を5mL加え、ブタ皮膚をPBS水溶液上部に挟み、フランツセルのウォータージャケット部に37℃の水を流した。レシーバー相を攪拌し、比較例1、実施例1、比較例2、及び実施例2の200μLをブタ皮膚の上に載せた。24時間後にブタ皮膚のメタノール抽出液及びレシーバー相のPBS水溶液をサンプリングし、LC-MSによりミノキシジル量を定量した。LC-MSの条件は以下のとおりである。
カラム温度:30℃、検出質量(m/z):210、溶離液:10mMギ酸アンモニウム/アセトニトリル(10/90,vоl/vоl)、流速:0.2mL
結果を図1及び図2に示す。
比較例1及び比較例2と比較して、実施例1及び実施例2はブタ皮膚中、およびレシーバー液中ともIPMの添加によりミノキシジルが多く検出された。特に、IPMとMIKを両方添加した実施例2は、ブタ皮膚中のミノキシジル濃度で約25倍、レシーバー液中のミノキシジル濃度で15倍と、IPMやMIKを単独で添加した実施例1及び比較例2よりも極めて高い経皮吸収性を示した。
4.IPMを添加したミノキシジルを含む経皮収吸収組成物の調製例
6mLのねじ口サンプル管に、表2に示した量のリグロ(登録商標)EX5、ならびにIPMを加えボルテックスミキサーにより混合し、比較例3ならびに実施例3の経皮吸収組成物を調製した。
調製条件を表2に示す。
Figure 2022158335000004
5.ミノキシジル溶液の経皮吸収性試験
前記表1にある比較例1、及び実施例1の経皮吸収性試験より、IPM添加によるミノキシジルの経皮吸収性の向上が示された。そこで次に、IPMの添加量増加による経皮吸収性を検討した。
本実験で用いた経皮吸収組成物は、前記表2にある比較例3、及び実施例3である。
経皮吸収性試験は次のとおりに行った。経皮吸収性試験としてはブタ皮膚(Yucatan Micrо Pig(日本チャールスリバー社製))を用いた。フランツセルのレシーバー相に攪拌子とPBS水溶液を5mL加え、ブタ皮膚をPBS水溶液上部に挟み、フランツセルのウォータージャケット部に37℃の水を流した。レシーバー相を攪拌し、比較例3、及び実施例3の200μLをブタ皮膚の上に載せた。24時間後にブタ皮膚のメタノール抽出液及びレシーバー相のPBS水溶液をサンプリングし、LC-MSによりミノキシジル量を定量した。LC-MSの条件は以下のとおりである。
カラム温度:30℃、検出質量(m/z):210、溶離液:10mMギ酸アンモニウム/アセトニトリル(10/90,vоl/vоl)、流速:0.2mL
結果を図3及び図4に示す。
比較例3と比較して、実施例3はブタ皮膚中、およびレシーバー液中へのミノキシジルの透過比率は維持しつつ、ミノキシジルの透過量が増加していることが分かった。
6.IPMを添加したミノキシジルを含む経皮収吸収組成物の調製例
6mLのねじ口サンプル管に、表3に示した量のミノキシジル、エタノール、及び水を加え、70℃で1時間加熱した後、表3に示した量のIPMを加え、ボルテックスミキサーにより混合し、比較例4ならびに実施例4、実施例5、及び実施例6の経皮吸収組成物を調製した。
調製条件を表3に示す。
Figure 2022158335000005
7.ミノキシジル溶液の経皮吸収性試験
前記表1にある比較例1、及び実施例1、及び前記表2にある比較例3、及び実施例3の経皮吸収性試験より、IPM添加によるミノキシジルの経皮吸収性が示された。そこで次に、IPMの添加量による経皮吸収性の差異を詳細に検討した。
本実験で用いた経皮吸収組成物は、前記表3にある比較例4、実施例4、実施例5、及び実施例6である。
経皮吸収性試験は次のとおりに行った。経皮吸収性試験としてはブタ皮膚(Yucatan Micrо Pig(日本チャールスリバー社製))を用いた。フランツセルのレシーバー相に攪拌子とPBS水溶液を5mL加え、ブタ皮膚をPBS水溶液上部に挟み、フランツセルのウォータージャケット部に37℃の水を流した。レシーバー相を攪拌し、比較例4、実施例4、実施例5、及び実施例6の200μLをブタ皮膚の上に載せた。24時間後にブタ皮膚のメタノール抽出液及びレシーバー相のPBS水溶液をサンプリングし、LC-MSによりミノキシジル量を定量した。LC-MSの条件は以下のとおりである。
カラム温度:30℃、検出質量(m/z):210、溶離液:10mMギ酸アンモニウム/アセトニトリル(10/90,vоl/vоl)、流速:0.2mL
結果を図5及び図6に示す。
比較例4と比較して、実施例4、実施例5、及び実施例6はブタ皮膚中、およびレシーバー液中ともミノキシジルが多く検出された。また、実施例4、及び実施例5では、実施例6と比較して、レシーバーへのミノキシジルの透過量が抑えられていることが分かった。
以上の結果から、市販品にIPM又はMIKを添加することで経皮吸収性を促進することが分かった。特に、IPM及びMIKを共添加することで、劇的に経皮吸収が促進された。さらに、IPMの添加量を調整することで、ミノキシジルの浸透性を高めるのみならず、ミノキシジルを皮膚中に多く留まらせられることが分かった。これらのことから、本添加手法は経皮薬物送達システム(DDS)材料として有望であることが示された。
本発明の方法は、水を含んでいるが、水溶性有効成分の経皮吸収性を向上させ、かつ当該水溶性有効成分を皮膚中に滞留させて、皮膚中の当該水溶性有効成分の含量を増大させ、また、皮膚内部で水溶性有効成分を放出して、薬効を奏することができるので、本発明の方法は、皮膚外用剤、例えば、皮膚外用療法に使用される医薬品や化粧品などに利用することができる。

Claims (11)

  1. 水溶性有効成分、脂溶性媒体、及び水を混合する工程であって、当該脂溶性媒体を、混合物の総量に対して、0.01乃至5重量%で混合する工程を含むことを特徴とする、前記水溶性有効成分を皮膚中へ浸透させ、かつ、前記水溶性有効成分を皮膚中に滞留させる方法。
  2. さらに、経皮吸収制御剤を混合することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 経皮吸収制御剤が1価又は多価アルコールである、請求項2記載の方法。
  4. 1価又は多価アルコールがメタノール、エタノール、2-プロパノール、ゲラニオール、シトロネロール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、オレイルアルコール、セタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-ヘキシルデカノール、及び1,2-ヘキサンジオールからなる群より一つ以上選ばれる、請求項3記載の方法
  5. さらに、ケトン基を有する化合物を混合することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一つ記載の方法。
  6. ケトン基を有する化合物が、ケトン基を有するテルペン、ケトン基を有するリグノイド、ケトン基を有するバニロイド、ケトン基を有するクルクミノイド、クロモン、及びクマリンからなる群より一つ以上選ばれる、請求項5記載の方法。
  7. ケトン基を有するテルペンが(+)-カンファー又はゲラニルアセトンである、請求項6記載の方法。
  8. ケトン基を有する化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、クルクミン又はビタミンKである、請求項5記載の方法。
  9. 脂溶性媒体1容量部に対して、ケトン基を有する化合物2容量部以上を混合する、請求項5~請求項8のいずれか一つ記載の方法。
  10. 水溶性有効成分がミノキシジルである、請求項1~請求項9のいずれか一つ記載の方法。
  11. 脂溶性媒体が、ミリスチン酸イソプロピル、シクロペンタシロキサン、スクアラン、セバシン酸ジエチル、及びリモネンからなる群より一つ以上選ばれる、請求項1~請求項10のいずれか一つ記載の方法。
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