JP2022157833A - 繊維強化複合材及び繊維強化複合材の製造方法 - Google Patents

繊維強化複合材及び繊維強化複合材の製造方法 Download PDF

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Kazuki NAKATSUKA
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Abstract

【課題】強度を高めることができる繊維強化複合材を提供する。【解決手段】本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える繊維強化複合材であり、前記繊維強化複合材は、前記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られ、前記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、前記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含み、前記複合化前繊維束の特定の加熱試験Aにおける質量減少率が、0.4質量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、マトリックス樹脂と繊維束とが複合化された繊維強化複合材に関する。また、本発明は、マトリックス樹脂と繊維束とが複合化された繊維強化複合材の製造方法に関する。
マトリックス樹脂が、炭素繊維等の強化繊維によって強化された繊維強化複合材は、軽量でありながら、強度、剛性及び寸法安定性などに優れる。このため、繊維強化複合材は、事務機器、自動車及び航空機などの車両、ICトレイ、ノートパソコンの筐体などのコンピュータ、止水板、及び風車翼等の様々な分野にて広く用いられている。近年、繊維強化複合材の需要は、増加しつつある。
繊維強化複合材に用いられる炭素繊維は、マトリックス樹脂と異なる化学組成及び分子構造を有することから、炭素繊維のマトリックス樹脂に対する相溶性は低い。このため、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着界面が脆点となり、炭素繊維を用いた繊維強化複合材の強度が十分に高くならないことがある。
また、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材は、コンパウンドペレットの射出成形、射出圧縮成形、押出成形及びプレス成形等の様々な成形法で成形される。これらの成形法では、強化繊維が繊維束(トウ)の形態で使用されることが多い。強化繊維が繊維束の形態で使用される場合、繊維束の開繊状態が熱可塑性樹脂の含浸性に大きく影響を与え、含浸性は繊維強化複合材の強度に大きく影響を与える。
例えば、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材を製造する場合には、熱可塑性樹脂フィルムと強化繊維束とを加圧加熱する方法(フィルム含浸法)が一般に用いられる。この方法において、強化繊維束を構成している炭素繊維間の開繊が不十分であると、炭素繊維間に熱可塑性樹脂が十分に含浸されず、樹脂未含浸部(空隙部)によって繊維強化複合材の強度が大きく低下することがある。
そこで、炭素繊維とマトリックス樹脂との相溶性を高めたり、炭素繊維間の間隔を広げる開繊処理をしたりすることで、熱可塑性樹脂の炭素繊維束への含浸性を高める様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1には、繊維の表面に、微小粒子及び小粒子を含有するサイズ剤を付与し、加熱乾燥温度を上記小粒子の融点以上にすることにより得られる炭素繊維束が開示されている。上記微小粒子及び小粒子の積算50%粒子径D50はそれぞれ、0.25μm未満及び0.25μm以上である。上記微小粒子及び上記小粒子としては、熱可塑性樹脂粒子が挙げられている。
また、特許文献2には、サイズ剤を用いて集束した炭素繊維チョップドファイバーが開示されている。上記炭素繊維チョップドファイバーでは、サイズ剤付着量が1~5質量%であり、空気中にて300℃で1時間加熱したときの質量減少率が1.0%以下であり、かつ示差走査熱量計にて融解熱を測定したときに、20~1000mcal/gの吸熱ピークが200℃以下に示される。
特開2014-122439号公報 特開2003-181833号公報
特許文献1に記載の炭素繊維束では、熱可塑性樹脂と繊維束とを複合化させる際の加熱及び加圧時に、繊維の表面に付着した粒子等が破壊又は分解しやすい。破壊及び分解が樹脂の溶融中に起こることで分解ガスが生じ、分解ガスが樹脂中に取り残され、ボイドが発生する。結果として、得られる繊維強化複合材の強度が低下しやすい。特に、高い軟化点を有する熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いる場合に、ボイドが発生しやく、得られる繊維強化複合材の強度が低下しやすい。
また、特許文献2に記載の炭素繊維チョップドファイバーでは、空気中にて300℃で1時間加熱したときの質量減少率が1.0%以下であるので、熱可塑性樹脂と繊維束とを複合化させる際のボイドの発生をある程度抑えることができる。しかしながら、熱可塑性樹脂と繊維束とを複合化させる際の加熱及び加圧時の全体(初期段階~後期段階)にわたっては、ボイドの発生を十分に抑制できないことがある。特に、熱可塑性樹脂と繊維束とを複合化させる際の加熱が300℃よりもかなり高い場合に、ボイドの発生を十分に抑制できないことがある。結果として、得られる繊維強化複合材の強度が低下することがある。
本発明の目的は、強度を高めることができる繊維強化複合材を提供することである。また、本発明は、強度を高めることができる繊維強化複合材の製造方法を提供することも目的とする。
本発明の広い局面によれば、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える繊維強化複合材であり、前記繊維強化複合材は、前記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られ、前記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、前記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含み、前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Aにおける質量減少率Aが、0.4質量%以下である、繊維強化複合材が提供される。
加熱試験A:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Aを下記式(1A)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率A(%)=[w(sp)-w(sp+20)]/w(23)×100 ・・・式(1A)
w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
w(sp+20):前記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での前記複合化前繊維束の質量
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Cにおける質量減少率Cが、0.4質量%以下である。
加熱試験C:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Cを下記式(1C)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率C(%)=[w(sp)-w(sp+40)]/w(23)×100 ・・・式(1C)
w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
w(sp+40):前記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での前記複合化前繊維束の質量
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記加熱試験Aにおいて、以下の質量減少率AXを求めたときに、前記質量減少率Aは、前記質量減少率AXよりも大きい。
複合化前繊維束の質量減少率AX(%)=[w(sp)-w(23)]/w(23)×100 ・・・式(1AX)
本発明の広い局面によれば、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える繊維強化複合材であり、前記繊維強化複合材は、前記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られ、前記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、前記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含み、前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Bにおける質量減少率Bが、0.4質量%以下である、繊維強化複合材が提供される。
加熱試験B:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させる温度での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Bを下記式(1B)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率B(%)=[w(sp)-w(it)]/w(23)×100 ・・・式(1B)
w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
w(it):前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させる温度での前記複合化前繊維束の質量
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記熱可塑性樹脂の軟化点が、260℃以上340℃以下である。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記熱可塑性樹脂の軟化点が、340℃以上420℃以下である。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記繊維束本体の繊維が、炭素繊維である。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記繊維束本体の形態が、一方向連続繊維である。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記サイジング剤は、23℃から20℃/分の昇温速度で加熱したときに、溶融状態を持たない。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記サイジング剤が、炭化物を含む。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記複合化前繊維束が、粒子を含み、前記繊維束本体の内部又は表面に、前記粒子が付着している。
本発明に係る繊維強化複合材のある特定の局面では、前記粒子が、無機粒子である。
本発明の広い局面によれば、上述した繊維強化複合材の製造方法であり、マトリックス樹脂としての前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させる工程を備える、繊維強化複合材の製造方法が提供される。
本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える。本発明に係る繊維強化複合材は、上記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、上記熱可塑性樹脂と上記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られる。本発明に係る繊維強化複合材では、上記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、上記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含む。本発明に係る繊維強化複合材では、上記複合化前繊維束の特定の加熱試験A又は特定の加熱試験Bにおける質量減少率A又は質量減少率Bが、0.4質量%以下である。本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、強度を高めることができる。
実施例1で得られた繊維強化複合材の断面SEM観察画像を示す。 実施例2で得られた繊維強化複合材の断面SEM観察画像を示す。 比較例1で得られた繊維強化複合材の断面SEM観察画像を示す。
以下、本発明の詳細を説明する。
(繊維強化複合材)
本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える。本発明に係る繊維強化複合材は、上記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、上記熱可塑性樹脂と上記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られる。
本発明に係る繊維強化複合材では、上記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、上記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含む。本発明に係る繊維強化複合材では、上記複合化前繊維束の下記の加熱試験Aにおける質量減少率Aが、0.4質量%以下であることが好ましい。本発明に係る繊維強化複合材では、上記複合化前繊維束の下記の加熱試験Bにおける質量減少率Bが、0.4質量%以下であることが好ましい。
加熱試験A:加熱前の23℃での上記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、上記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量と、上記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での上記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Aを下記式(1A)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率A(%)=[w(sp)-w(sp+20)]/w(23)×100 ・・・式(1A)
w(23):加熱前の上記複合化前繊維束の質量
w(sp):上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量
w(sp+20):上記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での上記複合化前繊維束の質量
加熱試験B:加熱前の23℃での上記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、上記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量と、上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる温度での上記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Bを下記式(1B)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率B(%)=[w(sp)-w(it)]/w(23)×100 ・・・式(1B)
w(23):加熱前の上記複合化前繊維束の質量
w(sp):上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量
w(it):上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる温度での上記複合化前繊維束の質量
本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、強度を高めることができる。
熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、上記熱可塑性樹脂と上記複合化前繊維束とを複合化さる際に、ボイドが発生しやすく、得られる繊維強化複合材の強度が低下しやすいという問題がある。特に、特に高い軟化点を有する熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いる場合に、ボイドが発生しやく、得られる繊維強化複合材の強度が低下しやすい。
本発明者は、鋭意検討の結果、繊維束の開繊束からの分解物による揮発成分を制御することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。さらに、その揮発成分の影響が、特に(熱可塑性樹脂の融点)~(熱可塑性樹脂の融点+20℃)、又は、(熱可塑性樹脂の融点)~(上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる温度)の温度範囲にて、大きいことを見出した。
本発明では、上記複合化前繊維束の特定の温度での質量減少率を制御しているので、複合化の際に、分解ガスが樹脂中に取り残されることにより生じるボイドの形成が抑制され、繊維強化複合材として十分な強度が発揮できる。
なお、本発明における質量減少率は、特開2003-181833号公報に記載の空気中300℃で1時間加熱したときの質量減少率とは全く異なり、これらの質量減少率は、互いに直接対比可能ではない。本発明と特開2003-181833号公報とでは、質量減少率の測定温度が全く異なる。
上記繊維強化複合材の厚みは、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.15mm以上、更に好ましくは0.18mm以上であり、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.3mm以下、更に好ましくは0.25mm以下である。上記繊維強化複合材の厚みが上記下限以上であると、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。上記繊維強化複合材の厚みが上記下限以上であると、繊維強化複合材での含浸状態がより一層良好になる。
以下、本発明に係る繊維強化複合材に含まれる成分の詳細などを説明する。
[マトリックス樹脂]
本発明に係る繊維強化複合材に含まれるマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられる。本発明に係る繊維強化複合材は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と比べて、含浸性に優れる傾向がある。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化物と比べて、曲げ弾性率及び曲げ強度に優れる傾向がある。
上記熱可塑性樹脂としては、結晶性の有無の観点で、結晶性樹脂及び非晶性樹脂が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記結晶性樹脂としては、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリーレンスルフィド、フッ素樹脂及び液晶ポリマー等が挙げられる。上記結晶性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン及びポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。
上記ポリアリーレンスルフィドとしては、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
上記フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
上記液晶ポリマーとしては、タイプIと呼称されるエチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、タイプIIと呼称されるフェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、及びタイプIIIと呼称される2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体等が挙げられる。
繊維間に含浸する際に影響する粘度を良好にし、繊維強化複合材の耐熱性をより一層高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン又はポリアリーレンスルフィドであることが好ましい。
上記非晶性樹脂としては、ポリイミドが挙げられる。上記非晶性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリイミドとしては、ポリイミドアミド等が挙げられる。
本発明では、上記熱可塑性樹脂は、260℃以上の軟化点を有する。
上記熱可塑性樹脂の軟化点は、上記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合には、融点を意味する。上記熱可塑性樹脂の軟化点は、上記熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合には、ガラス転移点を意味する。
上記熱可塑性樹脂の軟化点は、260℃以上である。上記熱可塑性樹脂の軟化点は、好ましくは270℃以上、より好ましくは280℃以上、より一層好ましくは280℃を超え、更に好ましくは300℃以上、更に一層好ましくは300℃を超え、特に好ましくは320℃以上、最も好ましくは340℃以上である。上記熱可塑性樹脂の軟化点は、好ましくは420℃以下、より好ましくは400℃以下、更に好ましくは380℃以下、特に好ましくは360℃以下、最も好ましくは好ましくは360℃未満である。上記熱可塑性樹脂の軟化点は、340℃を超えていてもよく、340℃以下であってもよく、340℃未満であってもよい。上記熱可塑性樹脂の軟化点が上記下限を満たすと、繊維強化複合材の耐熱性がより一層良好になる。上記熱可塑性樹脂の軟化点が上記上限を満たすと、樹脂含浸時に要する熱エネルギーが低減され、より一層安価に繊維強化複合材を製造することができる。
上記熱可塑性樹脂の軟化点は、260℃以上340℃以下であってもよい。上記熱可塑性樹脂の軟化点は、340℃以上420℃以下であってもよい。
260℃以上340℃以下の軟化点を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリフェニレンスルフィド、及びポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
340℃以上420℃以下の軟化点を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、及びポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。
本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂として、熱可塑性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂をさらに含んでいてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
繊維との接着性をより一層良好にする観点からは、上記熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂が好ましい。
上記繊維強化複合材100質量%中、上記熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、繊維強化複合材の強度がより一層良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、繊維強化複合材での含浸状態がより一層良好になる。
上記繊維強化複合材が熱硬化性樹脂を含む場合に、上記熱可塑性樹脂と上記熱硬化性樹脂との合計100質量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材におけるマトッリクス樹脂の均一性がより一層良好になる。
[繊維束]
本発明に係る繊維強化複合材は、繊維束を含む。
本明細書において、熱可塑性樹脂を含浸させる前の繊維束を、繊維強化複合材における繊維束(複合化後繊維束)及び熱可塑性樹脂が含浸された繊維束と区別して、複合化前繊維束と呼ぶことがある。
複合繊維束:
上記複合化前繊維束は、上記熱可塑性樹脂と繊維束とを複合化させる前の繊維束である。上記複合化前繊維束は、熱可塑性樹脂を含浸させる前の繊維束であり、含浸前繊維束である。
上記複合化前繊維束は、繊維束本体と、サイジング剤とを含む。上記繊維束(複合化後繊維束)は、繊維束本体を含み、サイジング剤を含むことが好ましい。
上記繊維束本体は、繊維により形成されている。
上記繊維束本体の繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維及び炭素繊維などが挙げられる。上記繊維束本体の繊維は、ガラス繊維又は炭素繊維であることが好ましい。繊維強化複合材を軽量にし、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記繊維束本体の繊維は、炭素繊維であることが好ましい。コストを抑える観点からは、上記繊維束本体の繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
上記炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、及びPITCH系炭素繊維等が挙げられる。原材料コストをより一層低減する観点からは、上記繊維束本体の繊維は、PAN系炭素繊維であることが好ましい。
上記炭素繊維の市販品としては、フォルモサ社製のTC-33、TC-35、TC-55;東レ社製のT700S-50C、T700S-60E、T700G-31E;Hexcel社製のAS4D;三菱ケミカル社製のTR50S等が挙げられる。
上記繊維の平均径は、好ましくは4μm以上、より好ましくは6μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
上記平均径とは、数平均径であり、ランダムに選択した100個の繊維の繊維径の相加平均値である。また、上記繊維径とは、繊維の長さ方向に直交する方向に沿った断面において、該断面の円相当径の直径を意味する。
各繊維は、一般的に単繊維(フィラメント)である。繊維が複数集まって、繊維束本体(トウ)が構成される。各繊維束本体を構成している繊維の本数(ストランド一本あたりに含まれるフィラメントの数)は、好ましくは1000本以上、より好ましくは3000本以上、更に好ましくは12000本以上、特に好ましくは24000本以上である。各繊維束本体を構成している繊維の本数は、好ましくは100000本以下、より好ましくは50000本以下、更に好ましくは48000本以下、特に好ましくは30000本以下である。上記繊維の本数が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の強度が効果的に高くなる。強度、含浸性及びコストを考慮して、用途に応じて適切なフィラメント数の繊維束を選択することができる。
上記繊維束本体の形態としては、複数の繊維束が一方向に配向されてなる一方向連続繊維(UniDirection繊維)、複数の繊維束が織られて形成された織物、繊維束が編まれて形成された編物、及び複数の繊維束と熱可塑性樹脂繊維とにより形成された不織布等が挙げられる。
繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記繊維束本体の形態は、一方向連続繊維又は織物であることが好ましく、一方向連続繊維であることがより好ましい。上記織物は、縦横方向に高い機械物性を持つ織物であることが好ましい。上記織物の織り方としては、平織、綾織及び朱子織等が挙げられる。繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記織物の織り方は、平織又は綾織であることが好ましい。上記編物は、各繊維配向方向に繊維が直進性をもった形で配置されるノンクリンプファブリックであることが好ましい。
上記繊維束本体の形態が一方向連続繊維である場合に、各繊維束本体を構成している繊維の本数は、好ましくは48000本以上、好ましくは100000本以下である。上記繊維束本体の形態が織物である場合に、各繊維束本体を構成している繊維の本数は、好ましくは12000本以上、好ましくは48000本以下である。
上記繊維束本体は、シート状であることが好ましい。
上記繊維束本体の目付は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは100g/m以上、更に好ましくは150g/m以上であり、好ましくは800g/m以下、より好ましくは400g/m以下、更に好ましくは300g/m以下である。上記目付が上記下限以上であると、開繊繊維束より形成された繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。上記目付が上記上限以下であると、繊維間に熱可塑性樹脂を均一に含浸させることができ、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。
上記繊維束本体の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.12mm以上、更に好ましくは0.14mm以上であり、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.18mm以下、更に好ましくは0.16mm以下である。上記繊維束本体の厚みが上記下限以上であると、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。上記繊維束本体の厚みが上記上限以下であると、熱可塑性樹脂と複合化前繊維束との複合化がより一層容易になる。
繊維強化複合材の耐熱性を高める観点から、上記繊維束本体の繊維の融点は、好ましくは400℃を超え、より好ましくは500℃を超え、更に好ましくは600℃を超える。上記繊維束本体の繊維の融点は、特に限定されず、1000℃以下であってもよい。
サイジング剤:
上記サイジング剤は、繊維強化複合材に含まれる熱可塑性樹脂に応じて適宜選択することができる。
上記サイジング剤としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、炭化物、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びオキサジン樹脂等が挙げられる。上記サイジング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記オキサジン樹脂は、ベンゼン環又はナフタレン環に付加した6員環を有し、その6員環に酸素と窒素とが含まれる樹脂である。上記オキサジン樹脂としては、ベンゾオキサジン樹脂及びナフトキサジン樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と繊維束との接着強度を高め、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記サイジング剤は、エポキシ樹脂又は炭化物を含むことが好ましく、炭化物を含むことがより好ましい。上記熱可塑性樹脂がポリプロピレン又は塩化ビニル樹脂である場合に、熱可塑性樹脂と繊維束との接着強度を高め、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記サイジング剤は、エポキシ樹脂又はオキサジン樹脂を含むことが好ましい。
繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記サイジング剤は、23℃から20℃/分の昇温速度で加熱したときに、溶融状態を持たないことが好ましい。
上記複合化前繊維束として、市販されているサイジング剤付きの繊維束をそのまま用いてもよい。サイジング剤を含まない繊維束に別途サイジング剤を付与して、上記複合化前繊維束を得てもよい。
粒子:
熱可塑性樹脂の含浸性をより一層高め、かつ繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記複合化前繊維束は、粒子を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂の含浸性をより一層高め、かつ繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記繊維束本体の内部又は表面に、上記粒子が付着していることが好ましい。
上記粒子としては、無機粒子及び有機粒子等が挙げられる。上記無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、及び炭素粒子等が挙げられる。上記炭素粒子としては、アモルファスカーボン等が挙げられる。上記有機粒子としては、フェノール樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、ポリアミド粒子、及びポリエーテルエーテルケトン粒子等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の含浸性をより一層高め、かつ繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記粒子は、無機粒子であることが好ましく、シリカ粒子であることがより好ましい。
上記粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。上記粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、粒子によって繊維束が十分に開繊される。上記粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、粒子を各繊維束における繊維間に入り込ませやすい。
上記粒子の平均粒子径は、数平均粒子径を意味する。上記粒子の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定することができる。
複合化前繊維束の他の詳細:
本発明に係る繊維強化複合材において、上記複合化前繊維束の上記加熱試験A又は上記加熱試験Bにおける質量減少率A,Bは、0.4質量%以下である。上記質量減少率A,Bが0.4質量%以下であると、繊維強化複合材中にボイドがより一層含まれにくくなり、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。
なお、熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度では、熱可塑性樹脂は完全には軟化しておらず、繊維と熱可塑性樹脂との間に隙間が存在している。軟化点以下の加熱で起こる質量減少(例えば、室温まで冷却した際に繊維の表面に付着した水分などに起因する質量減少)は、ボイドの形成にはさほど影響しないと考えられる。上記複合化前繊維束の上記加熱試験A又は上記加熱試験Bにおける特定の加熱温度での質量減少率を小さくすることで、繊維強化複合材の製造時のボイドの発生を抑え、繊維強化複合材の強度を高めることができる。
本発明に係る繊維強化複合材では、上記複合化前繊維束の上記の加熱試験Aにおける質量減少率Aが、0.4質量%以下であることが好ましい。本発明に係る繊維強化複合材では、上記複合化前繊維束の上記の加熱試験Bにおける質量減少率Bが、0.4質量%以下であることが好ましい。本発明に係る繊維強化複合材では、上記加熱試験Aにおける質量減少率Aが、0.4質量%以下であってもよく、上記加熱試験Bにおける質量減少率Bが、0.4質量%以下であってもよい。
上記複合化前繊維束の上記加熱試験A又は上記加熱試験Bにおける質量減少率A及び質量減少率Bはそれぞれ、好ましくは0.35質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下、特に好ましくは0.20質量%以下である。上記質量減少率A及び質量減少率Bはそれぞれ、好ましくは0質量%以上である。上記質量減少率A及び質量減少率Bはそれぞれ、0.01質量%以上であってもよい。上記質量減少率A,Bが小さいほど、繊維強化複合材中にボイドがより一層含まれ難くなり、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。
繊維強化複合材中でのボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記複合化前繊維束の下記の加熱試験Cにおける質量減少率Cは、0.4質量%以下であることが好ましい。上記加熱試験Cにおける質量減少率Cは、好ましくは0.35質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下、特に好ましくは0.20質量%以下である。上記質量減少率Cは、好ましくは0質量%以上である。上記質量減少率Cは、0.01質量%以上であってもよい。上記質量減少率Cが小さいほど、繊維強化複合材中にボイドがより一層含まれ難くなり、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。
加熱試験C:加熱前の23℃での上記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、上記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量と、上記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での上記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Cを下記式(1C)より算出する。
複合化前繊維束の質量減少率C(%)=[w(sp)-w(sp+40)]/w(23)×100 ・・・式(1C)
w(23):加熱前の上記複合化前繊維束の質量
w(sp):上記熱可塑性樹脂の軟化点での上記複合化前繊維束の質量
w(sp+40):上記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での上記複合化前繊維束の質量
上記加熱試験Aにおいて、以下の質量減少率AXを求める。
複合化前繊維束の質量減少率AX(%)=[w(sp)-w(23)]/w(23)×100 ・・・式(1AX)
繊維強化複合材中でのボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記質量減少率Aは、上記質量減少率AXよりも大きいことが好ましい。
なお、上記加熱試験A,B及びCにおいて、示差走査熱量計を用いることが好ましい。上記示差走査熱量計としては、日立製作所社製「TG-DTA」等が挙げられる。
上記複合化前繊維束における繊維間の少なくとも一部での距離は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上である。繊維間の少なくとも一部での距離が上記下限以上であると、熱可塑性樹脂の含浸性がより一層高くなり、繊維強化複合材の強度がより一層高くなる。上記複合化前繊維束における繊維間の少なくとも一部での距離は、0.1mm以下であってもよい。
上記複合化前繊維束100質量%中、上記繊維束本体の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。上記複合化前繊維束100質量%中、上記繊維束本体の含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記繊維束本体の含有量が上記下限以上であると、繊維強化複合材の強度がより一層良好になる。上記繊維束本体の含有量が上記上限以下であると、熱可塑性樹脂と繊維束との複合状態がより一層良好になる。
上記複合化前繊維束100質量%中、上記サイジング剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。上記サイジング剤の含有量が上記下限以上であると、複合化前繊維束及び繊維束の取り扱い性が高くなる。上記サイジング剤の含有量が上記上限以下であると、繊維へのサイジング剤の付着状態がより一層均一化される。
上記複合化前繊維束が上記粒子を含む場合に、上記複合化前繊維束100質量%中、上記粒子の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。上記複合化前繊維束100質量%中、上記粒子の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。上記粒子の含有量が上記下限以上であると、繊維強化複合材での含浸状態がより一層良好になる。上記粒子の含有量が上記上限以下であると、粒子の凝集を抑制できる。
上記繊維強化複合材100質量%中、上記繊維束の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記繊維束の含有量が上記下限以上であると、繊維強化複合材の強度がより一層良好になる。上記繊維束の含有量が上記上限以下であると、繊維強化複合材での含浸状態がより一層良好になる。
(繊維強化複合材の製造方法)
本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、マトリックス樹脂としての上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させて、上記熱可塑性樹脂と上記複合化前繊維束とを複合化させる工程(複合化工程)を備える。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、複合化前繊維束を用意する工程、又は、複合化前繊維束を得る工程を備えていてもよい。
複合化前繊維束を得る工程:
繊維束(改質前繊維束)を改質溶液に接触させて、複合化前繊維束(改質後繊維束)を得てもよい。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、繊維束(改質前繊維束)を改質溶液に接触させて、複合化前繊維束(改質後繊維束)を得る工程(改質工程)を備えていてもよい。
繊維束に改質溶液を接触させる方法としては、改質溶液に繊維束を浸漬させる方法、及び改質溶液を繊維束に塗布又はスプレーする方法等が挙げられる。繊維束の分散性に優れる観点から、改質溶液に繊維束を浸漬する方法が好ましい。
上記改質溶液は、例えば、繊維の表面と熱可塑性樹脂中の相溶性を向上させる目的で用いることができる。上記改質溶液は、サイジング剤である樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、繊維強化複合材の製造時の加熱処理により、揮発しないことが好ましい。
上記改質溶液は、改質剤を含んでいてもよい。上記改質剤は、サイジング剤である。上記サイジング剤の重量には、改質後に上記繊維束本体に含まれる改質剤の重量が含まれる。
上記改質剤としては、ポリエチレングリコール等が挙げられる。上記改質剤は、繊維強化複合材の製造時の加熱処理により炭化可能であることが好ましい。
上記改質溶液は、粒子を含んでいてもよい。上記改質溶液は、粒子を含んでいてもよい。上記改質溶液中に粒子が含まれることにより、繊維表面に粒子が付着し易くなり、繊維束を開繊することができる。その結果、繊維強化複合材を得る際に繊維束中にマトリックス樹脂を含浸させやすくなり、繊維強化複合材の物性が向上する傾向がある。
繊維束(予備加熱前繊維束)を予備加熱処理して、複合化前繊維束(予備加熱後繊維束)を得てもよい。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、繊維束(予備加熱前繊維束)を予備加熱処理して、複合化前繊維束(予備加熱後繊維束)を得る工程(予備加熱工程)を備えていてもよい。上記予備加熱工程によって、複合化前繊維束の質量減少率をより一層小さくすることができる。
上記予備加熱工程では、分解されやすい物質は分解してガス化し、繊維表面には、分解後の炭化物や、予備加熱温度では熱分解やガス化しにくい物質のみが残される。このため、複合化工程において、サイジング剤などの分解によるガスの発生が抑制され、ボイドの形成を抑制することができる。
上記予備加熱工程は、上記改質工程の後に行われてもよい。上記改質工程の後に上記予備加熱工程を行うことにより、改質反応をより一層効果的に進行させることができる。
繊維強化複合材の製造時に、上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる温度を、it(impregnatiоn temperature)(℃)とする。
繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記予備加熱工程での予備加熱温度は、好ましくはit-30℃以上、より好ましくはit-10℃以上、更に好ましくはit℃以上である。上記予備加熱工程での予備加熱温度は、it+100℃以下であってもよく、it+30℃以下であってもよく、it+10℃以下であってもよく、it℃以下であってもよい。上記予備加熱工程での予備加熱温度が上記上限以下であると、繊維のダメージが抑えられる。
上記熱可塑性樹脂の軟化点を、sp(sоfting pоint)(℃)とする。
繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記予備加熱工程での予備加熱温度は、好ましくはsp℃以上、より好ましくはsp+30℃以上、更に好ましくはsp+50℃以上である。上記予備加熱工程での予備加熱温度は、sp+100℃以下であってもよく、sp-10℃以下であってもよく、sp-20℃以下であってもよく、sp-30℃以下であってもよい。上記予備加熱工程での予備加熱温度が上記上限以下であると、繊維のダメージが抑えられる。
繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、上記予備加熱工程での予備加熱温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは320℃以上、更に好ましくは340℃以上、特に好ましくは350℃以上である。上記予備加熱工程での予備加熱温度は、600℃以下であってもよく、500℃以下であってもよい。上記予備加熱工程での予備加熱温度が上記上限以下であると、繊維のダメージが抑えられる。
上記予備加熱工程は、空気中で行ってもいいし、真空中や窒素中などの不活性ガス環境下で行ってもよい。
また、上記予備加熱工程での加熱時間は、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは1分以上であり、好ましくは200分以下、より好ましくは100分以下、更に好ましくは30分以下である。上記予備加熱工程での加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、予備加熱処理の実施効果を効果的に高めることができ、繊維へのダメージを抑えることができる。
複合化工程:
複合化の方法としては、以下の方法が挙げられる。溶融した熱可塑性樹脂をダイなどを用いてフィルム状に押出し、押出物を繊維束上に積層した後に、加熱しながら圧縮することにより、熱可塑性樹脂を複合化前繊維束中に含浸させる方法(フィルム含浸法)。ダイから熱可塑性樹脂と複合化前繊維束とを一度に引き抜く押し出し成形方法。押出機を用いて熱可塑性樹脂を混錬する際に、複合化前繊維束を押出機内を通過させることで、混錬と含浸とを同時に行う押出含浸法。生産性に優れる観点から、上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる方法は、上記フィルム含浸法であることが好ましい。
繊維強化複合材の製造時に、上記熱可塑性樹脂を上記複合化前繊維束に含浸させる温度を、it(impregnatiоn temperature)(℃)とする。上記熱可塑性樹脂の軟化点を、sp(sоfting pоint)(℃)とする。
熱可塑性樹脂の含浸性をより一層高める観点、及び繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、含浸温度(it)は、好ましくはsp+30℃以上、より好ましくはsp+50℃以上、更に好ましくはsp+70℃以上である。含浸温度(it)は、sp+200℃以下であってもよく、sp+100℃以下であってもよく、sp+30℃以下であってもよく、sp+20℃以下であってもよい。含浸温度(it)が上記上限以下であると、繊維のダメージが抑えられる。
繊維強化複合材の製造時のボイドの発生をより一層抑え、繊維強化複合材の強度をより一層高める観点からは、含浸温度(it)は、好ましくは300℃以上、より好ましくは320℃以上、更に好ましくは340℃以上、特に好ましくは350℃以上である。上記予備加熱工程での予備加熱温度は、600℃以下であってもよく、500℃以下であってもよい。含浸温度(it)が上記上限以下であると、繊維のダメージが抑えられる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
複合化前繊維束を得るために、以下の材料を用意した。
[粒子]
粒子1:シリカ粒子(AGCエスアイテック社製「L-31」)
[化学物質]
1.5-ジヒドロキシナフタレン(アルドリッチ社製)
40質量%メチルアミン水溶液(富士フイルム和光純薬社製)
ホルマリン(富士フイルム和光純薬社製)
[繊維束]
織物1(東レ社製「T300B-3K-50B」、繊維束本体:PAN系炭素繊維束、サイジング剤:エポキシ樹脂、フィラメント数:3000本、目付量:200g/m、厚み:0.19mm、綾織)
(複合化前繊維束の製造方法)
以下の製造例1~4により、複合化前繊維束(1)~(3)及び(X)をそれぞれ作製した。得られた複合化前繊維束(1)~(3)及び(X)では、サイジング剤として、織物1に含まれるエポキシ系樹脂と、複合化前繊維束の製造時に用いたナフトキサジン樹脂とが含まれていた。
(製造例1:複合化前繊維束(1))
1.5-ジヒドロキシナフタレン10質量部と、40質量%メチルアミン水溶液4質量部と、ホルマリン(ホルムアルデヒドの含有量:37質量%)8質量部と、溶媒としてエタノール水(エタノールの含有量:50質量%)600質量部とを均一に混合して、モノマー溶液を得た。
次に上記モノマー溶液に粒子1を12質量部添加し、改質溶液1を製造した。
その後、織物1を改質溶液1に浸漬した後に引き上げ、その後、290℃で2分間加熱した。その後、マッフル炉を用いて、得られた繊維束に350℃(予備加熱温度)で10分間の予備加熱処理を施して、複合化前繊維束(1)(厚み:0.16mm)を得た。
(製造例2:複合化前繊維束(2))
予備加熱温度を350℃から360℃に変更したこと以外は複合化前繊維束(1)と同様にして、複合化前繊維束(2)(厚み:0.16mm)を得た。
(製造例3:複合化前繊維束(3))
予備加熱温度を350℃から340℃に変更したこと以外は複合化前繊維束(1)と同様にして、複合化前繊維束(3)(厚み:0.16mm)を得た。
(製造例4:複合化前繊維束(X))
予備加熱温度を350℃から200℃に変更したこと以外は複合化前繊維束(1)と同様にして、複合化前繊維束(X)(厚み:0.16mm)を得た。
(評価)
(1)複合化前繊維束に含まれるサイジング剤の含有量の測定
得られた複合化前繊維束(1)~(3)及び(X)のそれぞれについて、サイジング剤の含有量を評価した。
得られた複合化前繊維束をそれぞれ、縦20cm、横20cmの大きさに切り出した。23℃での上記複合化前繊維束の質量(w(A))を求めた。
次に、質量(w(A))を測定した上記複合化前繊維束の全体を、300mLのアセトン中に浸漬し、24時間放置した。
繊維などの不純物をろ過により除去して、サイジング剤が溶け出したアセトン溶液を得た。その後、室温真空下でアセトン溶液からアセトンを完全に蒸発させた後、得られた固形分の質量(w(B))を測定した。
複合化前繊維束に含まれるサイジング剤の含有量を下記式(2)により算出した。
複合化前繊維束100質量%中のサイジング剤の含有量(質量%)=(w(B)/w(A))×100 ・・・(2)
(2)複合化前繊維束の加熱試験A及び加熱試験Bにおける質量減少率
得られた複合化前繊維束(1)~(3)及び(X)のそれぞれについて、以下の加熱試験を実施した。
複合化前繊維束をそれぞれ、縦20cm、横20cmの大きさに切り出した。加熱前の23℃での上記複合化前繊維束の質量(w(23))を求めた。次に、示差走査熱量計(熱重量示差熱分析装置、日立製作所社製「TG-DTA」)を用いて、空気中で、上記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、340℃の上記複合化前繊維束の質量と、360℃での上記複合化前繊維束の質量とを求めた。質量減少率を下記式(1)より算出した。
なお、以下の実施例及び比較例において、340℃は、熱可塑性樹脂の軟化点である。360℃は、上記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃であり、かつ熱可塑性樹脂に複合化前繊維束を含浸させる温度である。
複合化前繊維束の質量減少率(%)=[w(340)-w(360)]/w(23)×100 ・・・式(1)
w(23):加熱前の上記複合化前繊維束の質量
w(340):340℃での上記複合化前繊維束の質量
w(360):360℃での上記複合化前繊維束の質量
複合化前繊維束の評価結果を後述する表1に示した。
得られた複合化前繊維束(1),(2)及び(X)と複合化させるための熱可塑性樹脂として、以下の熱可塑性樹脂フィルムを用意した。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂フィルム(1)(ソルベイ社製「Bestakeep KT880-NT」、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂)を押出機にて成膜したPEEKフィルム、軟化点:340℃)
熱可塑性樹脂フィルム(1)と、得られた複合化前繊維束(1),(2)及び(X)を用いて、以下のようにして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例1)
複合化前繊維束(1)と熱可塑性樹脂フィルム(1)とを用意し、複合化前繊維束(1)と熱可塑性樹脂フィルム(1)とを交互に積層して、積層体を得た。得られた積層体を360℃に加熱しながら2MPaの圧力で10分間圧縮することにより、熱可塑性樹脂を複合化前繊維束(1)中に含浸させて、熱可塑性樹脂と複合化前繊維束とを複合化させた。このようにして、繊維強化複合材(厚み:2mm、熱可塑性樹脂の含有量:50質量%、繊維束の含有量:50質量%)を得た。
(実施例2)
複合化前繊維束(1)を複合化前繊維束(2)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材(厚み:2mm、熱可塑性樹脂の含有量:50質量%、繊維束の含有量:50質量%)を得た。
(比較例1)
複合化前繊維束(1)を複合化前繊維束(X)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材(厚み:2mm、熱可塑性樹脂の含有量:50質量%、繊維束の含有量:50質量%)を得た。
(評価)
(1)曲げ強度
得られた繊維強化複合材を用いて、それぞれ試験片を作製した。得られた各試験片の曲げ強度をJIS K7074に準拠して測定した。
(2)繊維強化複合材の割れの有無
得られた繊維強化複合材を厚み方向に切断した。切断面をオンポリッシャーを用いて研磨し、研磨後の断面をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した。繊維強化複合材の割れの有無を評価した。また、実施例1、実施例2及び比較例1の各繊維強化複合材の観察画像を図1~3にそれぞれ示した。比較例1では、繊維強化複合材(熱可塑性樹脂部分)に割れが見られた。
詳細及び結果を下記の表1に示す。
Figure 2022157833000002

Claims (13)

  1. マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える繊維強化複合材であり、
    上記繊維強化複合材は、前記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られ、
    前記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、
    前記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含み、
    前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Aにおける質量減少率Aが、0.4質量%以下である、繊維強化複合材。
    加熱試験A:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Aを下記式(1A)より算出する。
    複合化前繊維束の質量減少率A(%)=[w(sp)-w(sp+20)]/w(23)×100 ・・・式(1A)
    w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
    w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
    w(sp+20):前記熱可塑性樹脂の軟化点+20℃での前記複合化前繊維束の質量
  2. 前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Cにおける質量減少率Cが、0.4質量%以下である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
    加熱試験C:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Cを下記式(1C)より算出する。
    複合化前繊維束の質量減少率C(%)=[w(sp)-w(sp+40)]/w(23)×100 ・・・式(1C)
    w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
    w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
    w(sp+40):前記熱可塑性樹脂の軟化点+40℃での前記複合化前繊維束の質量
  3. 前記加熱試験Aにおいて、以下の質量減少率AXを求めたときに、前記質量減少率Aは、前記質量減少率AXよりも大きい、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
    複合化前繊維束の質量減少率AX(%)=[w(sp)-w(23)]/w(23)×100 ・・・式(1AX)
  4. マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と、繊維束とを備える繊維強化複合材であり、
    前記繊維強化複合材は、前記熱可塑性樹脂を複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させることにより得られ、
    前記熱可塑性樹脂が、260℃以上の軟化点を有し、
    前記複合化前繊維束が、繊維束本体と、サイジング剤とを含み、
    前記複合化前繊維束の下記の加熱試験Bにおける質量減少率Bが、0.4質量%以下である、繊維強化複合材。
    加熱試験B:加熱前の23℃での前記複合化前繊維束の質量を求める。空気中で、前記複合化前繊維束を23℃から20℃/分の昇温速度で加熱し、前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量と、前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させる温度での前記複合化前繊維束の質量とを求める。質量減少率Bを下記式(1B)より算出する。
    複合化前繊維束の質量減少率B(%)=[w(sp)-w(it)]/w(23)×100 ・・・式(1B)
    w(23):加熱前の前記複合化前繊維束の質量
    w(sp):前記熱可塑性樹脂の軟化点での前記複合化前繊維束の質量
    w(it):前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させる温度での前記複合化前繊維束の質量
  5. 前記熱可塑性樹脂の軟化点が、260℃以上340℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  6. 前記熱可塑性樹脂の軟化点が、340℃以上420℃以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  7. 前記繊維束本体の繊維が、炭素繊維である、請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  8. 前記繊維束本体の形態が、一方向連続繊維である、請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  9. 前記サイジング剤は、23℃から20℃/分の昇温速度で加熱したときに、溶融状態を持たない、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  10. 前記サイジング剤が、炭化物を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  11. 前記複合化前繊維束が、粒子を含み、
    前記繊維束本体の内部又は表面に、前記粒子が付着している、請求項1~10のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  12. 前記粒子が、無機粒子である、請求項11に記載の繊維強化複合材。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法であり、
    マトリックス樹脂としての前記熱可塑性樹脂を前記複合化前繊維束に含浸させて、前記熱可塑性樹脂と前記複合化前繊維束とを複合化させる工程を備える、繊維強化複合材の製造方法。
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