JP2022157213A - 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を含有する紙 - Google Patents

化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を含有する紙 Download PDF

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Masahito Takayama
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Hiroyoshi Suzuki
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Abstract

【課題】カチオン要求量と電気伝導度が高いパルプスラリーから得られる、紙力に優れた紙を提供する。【解決手段】カチオン要求量が80μeq/L以上かつ電気伝導度が120mS/m以上であるパルプスラリーに、平均繊維径が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を混合することによって得られるミクロフィブリルセルロース含有パルプスラリーから得られる紙。【選択図】なし

Description

本発明は化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を含有する紙に関する。
紙には一定の強度が求められる。そこで、紙力を向上させるために紙力向上剤を用いることが知られている(例えば特許文献1)。
特開2009-243018号公報
夏場等の高温下ではパルプスラリー中の原料が劣化するために系内のカチオン要求量と電気伝導度が上昇する。これらの値が上昇すると紙力向上効果が発現しにくいということが問題となっている。かかる事情に鑑み、本発明は、カチオン要求量と電気伝導度が高いパルプスラリーから得られる、紙力に優れた紙を提供することを課題とする。
発明者らは、夏場の高温下のパルプスラリーにおいて、紙力向上剤として化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を用いることによって、前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
(態様1)
カチオン要求量が80μeq/L以上かつ電気伝導度が120mS/m以上であるパルプスラリーに、平均繊維径が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を混合することによって得られるミクロフィブリルセルロース繊維含有パルプスラリーから得られる紙。
(態様2)
前記化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の含有量が、前記パルプの絶乾重量に対して0.5~6重量%である、態様1に記載の紙。
(態様3)
前記パルプスラリーが、カチオン基含有バインダーをさらに含有する、態様1または2に記載の紙。
(態様4)
前記カチオン基含有バインダーの含有量が、前記パルプの絶乾重量に対して1~5重量%である、態様3に記載の紙。
(態様5)
前記カチオン基含有バインダーがカチオン化澱粉を含有する、態様3または4に記載の紙。
(態様6)
前記パルプスラリーが、凝結剤をさらに含有する、態様1~5のいずれかに記載の紙。
(態様7)
化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維のセルロースI型結晶化度が50%以上である、態様1~6のいずれかに記載の紙。
(態様8)
化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維が、カルボキシメチル化ミクロフィブリルセルロース繊維であり、そのカルボキシメチル置換度が0.20以上である、態様1~7のいずれかに記載の紙。
(態様9)
態様1~8のいずれかに記載のパルプスラリーを準備する工程、
当該パルプスラリーを用いた抄紙工程、を備える、
紙の製造方法。
(態様10)
前記パルプスラリーの温度が30~60℃である、態様9に記載の製造方法。
本発明によって、カチオン要求量と電気伝導度が高いパルプスラリーから得られる、紙力に優れた紙を提供できる。
1.化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維
本発明の紙は、平均繊維径が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維(以下、単に「MFC」ともいう)を含有するパルプスラリーから製造される。MFCは化学変性セルロースをフィブリル化することにより得られる。化学変性セルロースは、繊維を構成するセルロース鎖が化学的に変性されている。化学変性セルロースの種類としては、限定されないが、例えばカルボキシル基を導入したカルボキシル化セルロース、カルボキシメチル基等のカルボキシアルキル基をエーテル結合させたカルボキシアルキル化セルロース、リン酸基を導入したリン酸エステル化セルロース等を挙げることができる。これらの製法は後述する。
化学変性セルロースは、塩の形態をとる場合もあり、本発明において化学変性セルロースは、塩型の化学変性セルロースも含む。塩型の化学変性セルロースとしては、例えば、ナトリウム塩等の金属塩を形成しているものが挙げられる。
化学変性セルロースは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持される。すなわち、MFCの水分散体を電子顕微鏡等で観察すると、繊維状の物質を観察することができ、また、X線回折で測定すると、セルロースI型結晶のピークを観測することができる。
MFCは、化学変性されたセルロース原料を、リファイナー等を用いて適度に叩解または解繊(フィブリル化)することにより得られる。MFCは叩解または解繊されていない化学変性セルロース繊維に比べて、繊維表面にセルロースのミクロフィブリルの毛羽立ちが見られる。また、化学変性セルロースナノファイバーに比べて、繊維径が大きく、繊維自体の微細化(内部フィブリル化)を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化)した形状を有する。
化学変性セルロースをフィブリル化することにより得られるMFCは、化学変性されていないフィブリル化されたセルロース繊維と比べて、化学変性されていることによって、保水性が高い、チキソトロピー性を有する等の特徴を有する。また、化学変性セルロースをフィブリル化することにより得られるMFCは、化学変性されていないセルロースを叩解した後に化学変性したものと比べて、フィブリル化時にセルロース繊維が化学変性されているため、繊維間に存在する強固な水素結合が弱められており、フィブリル化の際に繊維同士がほぐれやすく、繊維の損傷が少ないという特徴を有する。
MFCの平均繊維径は500nm以上であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上である。平均繊維径の上限は好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下である。平均繊維径がこの範囲になる程度の適度なフィブリル化を行うことにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈し、また、微細に解繊されたセルロースナノファイバーに比べて少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。
MFCの平均繊維長は、200μm以上が好ましく、300μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。平均繊維長の上限は、特に限定されないが、3000μm以下が好ましく、1500μm以下が好ましく、1100μm以下がさらに好ましく、900μm以下がさらに好ましい。化学変性されたセルロース原料を叩解または解繊に用いるため、繊維を極端に短くすることなく、フィブリル化を進めることができる。また、化学変性により、水との親和性が向上しているため、繊維長が長い場合であっても保水性を高くすることができる。
上記の平均繊維径および平均繊維長は、例えば、ABB株式会社製L&W Fiber Tester Plusや、バルメット株式会社製フラクショネーター等の、画像解析型繊維分析装置により求めることができる。具体的には、フラクショネーターを用いた場合、それぞれ、length-weighted fiber widthおよびlength-weighted average fiber lengthとして求めることができる。
MFCのアスペクト比は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。アスペクト比の上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。アスペクト比は、下記の式により算出できる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
MFCについてバルメット株式会社製フラクショネーターを用いて測定したフィブリル化率(Fibrillation%)は、1.0%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましい。使用したセルロース原料の種類によってフィブリル化率は異なるが、上記範囲であればフィブリル化されていると考えられる。また、本発明では、フィブリル化する前の化学変性されたセルロース原料のフィブリル化率(f)が、向上するようにフィブリル化を行うことが好ましい。MFCのフィブリル化率をfとすると、フィブリル化率の差Δf=f-fは、0を超えていればよく、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは2.5%以上である。
MFC中のカルボキシル基の量は、MFCの絶乾重量に対して、0.1mmol/g以上が好ましく、0.6mmol/g以上がより好ましく、1.0mmol/g以上がさらに好ましい。当該量の上限は、3.0mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以下がより好ましく、2.0mmol/g以下がさらに好ましい。従って、当該量は0.1~3.0mmol/gが好ましく、0.6~2.5mmol/gがより好ましく、1.0~2.0mmol/gがさらに好ましい。
MFCにおける化学変性セルロースは、化学変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシアルキル置換度が0.01~0.50であるカルボキシアルキル化セルロースであることが好ましい。当該置換度の上限は好ましくは0.40以下である。カルボキシアルキル置換度が0.50を超えると水への溶解が起こりやすくなり、水中で繊維形態を維持できなくなることがある。また、カルボキシアルキル化による効果を得るためには、一定程度の置換度を有することは必要であり、例えば、置換度が0.02より小さいと、用途によっては、カルボキシアルキル基を導入したことによる利点が得られない場合がある。したがって、カルボキシアルキル置換度は、0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.25以上であることがさらに好ましい。そして、カルボキシアルキル置換度はカルボキシメチル置換度であることが好ましい。
<セルロースI型の結晶化度>
MFCにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が50%以上であり、好ましくは60%以上である。セルロースの結晶性は、化学変性の度合によって制御できる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されないが、現実的には90%程度が上限となると考えられる。
MFCのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD-6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°~30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c-Ia)/I002c×100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
<アニオン化度>
MFCのアニオン化度(「アニオン電荷密度」ともいう)は、0.10~2.00meq/gである。アニオン化度の測定方法は、以下の通りである:
MFCを水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、マグネチックスターラーを用い10分以上1000rpmにて撹拌する。得られたスラリーを0.1g/Lに希釈後、10mL採取し、流動電流検出器(Mutek Particle Charge Detector 03)用い、1/1000規定度のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)で滴定して、流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量を用い、以下の式によりアニオン化度を算出する:
q=(V×c)/m
q:アニオン化度(meq/g)
V:流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量(L)
c:DADMACの濃度(meq/L)
m:測定試料中のMFCの重量(g)。
本発明において、「アニオン化度」とは、上記の測定方法から分かるように、単位重量のMFCにおいて、アニオン性基を中和するのに要したDADMACの当量に相当し、単位重量のMFCあたりのアニオンの当量に相当する。
MFCのアニオン化度は、1.50meq/g以下が好ましく、1.30meq/g以下がより好ましく、1.00meq/g以下がさらに好ましく、0.80meq/g以下がさらに好ましい。このような範囲のアニオン化度を有するMFCは、アニオン化度がより高いMFCに比べて、化学変性が、局所的ではなく、セルロース全体にわたり均一になされていると考えられ、MFCに特有の効果、例えば、保水性付与等をより安定に得ることができると考えられる。
<電気伝導度>
MFCは、固形分濃度1.0重量%の水分散体とした際に、好ましくは500mS/m以下の電気伝導度を有する。電気伝導度は、より好ましくは300mS/m以下であり、さらに好ましくは200mS/m以下であり、よりさらに好ましくは100mS/m以下であり、特に好ましくは70mS/m以下である。電気伝導度の下限は、好ましくは5mS/m以上であり、より好ましくは10mS/m以上である。電気伝導度の測定方法は、以下の通りである:
MFCの固形分濃度1.0重量%の水分散体200gを調製し、十分に撹拌する。その後、電気伝導度計(HORIBA社製ES-71型)を用いて電気伝導度を測定する。
<保水能>
MFCの保水能は、15以上であることが好ましい。保水能の測定方法は、以下の通りである:
MFCの固形分0.3重量%のスラリー(媒質:水)を40mL調製する。このときのスラリーの重量をAとする。次いで、高速冷却遠心機を用いてスラリーの全量を30℃で、25000Gで30分間遠心分離し、水相と沈降物とを分離する。このときの沈降物の重量をBとする。また、水相をアルミカップに入れ、105℃で一昼夜乾燥させて水を除去し、水相中の固形分の重量を測定する。この水相中の固形分の重量をCとする。以下の式を用いて、保水能を計算する。
保水能=(B+C-0.003×A)/(0.003×A-C)。
保水能は、上述の式の通り、沈降物中の繊維の固形分の重量に対する沈降物中の水の重量に相当する。値が大きいほど、繊維が水を保持する力が高いことを意味する。MFCの保水能は、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上である。上限は特に限定されないが、現実的には200以下程度となると思われる。
上述の保水能の測定方法はフィブリル化された繊維に適用され、フィブリル化または解繊されていない繊維や、シングルミクロフィブリルにまで解繊されたセルロースナノファイバーに対しては通常適用できない。フィブリル化または解繊されていないセルロース繊維の保水能を上述の方法で測定しようとすると、上述の遠心分離の条件では密な沈降物が形成できず、沈降物と水相とを分離することが困難である。また、セルロースナノファイバーは、上述の遠心分離の条件ではほとんど沈降しない。
<粘度>
MFCは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、比較的低い粘度を示すことが好ましい。これにより、フィブリル化されているにもかかわらず、ハンドリング性の良い素材となる。本発明において、粘度の測定方法は、以下の通りである:
MFCをポリプロピレン製容器に量り取り、イオン交換水160mLに分散し、固形分1重量%となるように水分散体を調製する。水分散体の温度を25℃に調整した後、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、回転数60rpmで1分後の粘度を測定する。
MFCの前記粘度(25℃、60rpm)は、好ましくは10000mPa・s以下である。下限値については、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは50mPa・s以上であり、上限値についてはより好ましくは7000mPa・s以下である。
<表面積>
MFCのBET比表面積は、好ましくは30m/g以上であり、より好ましくは50m/g以上であり、さらに好ましくは100m/g以上である。BET比表面積が高いと、例えば製紙用添加剤として用いた場合にパルプに結合しやすくなり、歩留まりが向上する、紙への強度付与の効果が高まる等の利点がある。BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JISZ8830)を参考に以下の方法により測定できる。
(1)MFCの約2重量%スラリー(分散媒:水)を、固形分が約0.1gとなるように取り分けて遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加える。
(2)撹拌子を入れ、500rpmで30分以上撹拌する。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件でMFCを沈降させる。
(4)MFCをできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去する。
(5)100mLのエタノールを加え、撹拌子を入れ、(2)の条件で攪拌、撹拌子を取り出し、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返す。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt-ブタノールに変え、t-ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返す。
(7)最後の溶媒除去後、t-ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後にナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させる。
(8)冷凍庫で30分以上冷却する。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥する。
(10)BET測定を行う(前処理条件:窒素気流下105℃2時間、相対圧0.01~0.30、サンプル量30mg程度)。
<ろ水度>
MFCのショッパー・リーグラろ水度は特に限定されないが、好ましくは1°SR以上である。ショッパー・リーグラろ水度の測定方法は、JIS P82121-1:2012に準じ、具体的には、以下の通りである:
MFCを水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、撹拌子を入れ、1000rpmで10分以上撹拌する。得られたスラリーを2g/Lに希釈する。ミューテック社製DFR-04に60メッシュスクリーン(ワイヤー太さ0.17mm)をセットし、1000mlの検液から、上記メッシュを通過する液量を60秒間計測し、JIS P8121-1:2012に準じた方法で、ショッパー・リーグラろ水度を算出する。
ショッパー・リーグラろ水度は、繊維の懸濁液の水切れの程度の指標であり、下限値は0°SR、上限値は100°SRであり、ショッパー・リーグラろ水度が100°SRに近づくほど、水切れ(排水量)が少ないことを示す。
MFCのショッパー・リーグラろ水度の下限は、特に限定されないが、好ましくは1°SR以上であり、より好ましくは10°SR以上であり、より好ましくは25°SR以上であり、より好ましくは40°SR以上であり、さらに好ましくは50°SR以上である。上限は特に限定されず、100°SR以下である。
MFCは、固形分濃度1.0重量%の水分散体とした際の透明度(660nm光の透過率)が、60%未満であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることがよりさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。その下限は特に限定されず、0%以上であってよい。透明度がこのような範囲であると、フィブリル化の程度が適度であり、本発明の効果が得られやすい。透明度は、以下の方法で測定することができる。
MFCの水分散体(固形分濃度1.0%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV-VIS分光光度計UV-1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率を測定する。
MFCは、水を分散媒とした際に、固形分濃度2重量%以上程度で、半透明から白色のゲル、またはクリーム状、ペースト状となる。MFCは、製造後に得られる分散体の状態であってもよいが、必要に応じて乾燥してもよく、また水に再分散してもよい。乾燥方法は限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法等の既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕してもよい。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
2.MFCの製造方法
MFCは、まず化学変性セルロースを準備し、次いでそれをフィブリル化することにより製造することができる。化学変性の種類としては、前述の通り、例えば、セルロースのカルボキシル化、カルボキシアルキル化、リン酸エステル化等を挙げることができるが、これらに限定されない。フィブリル化に供される化学変性セルロースとしては、市販のものを用いてもよいし、例えば後述するセルロースを化学変性することにより製造してもよい。
1)セルロース
MFCの原料となるセルロースとしては、特に限定されないが、例えば、植物、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のものとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、針葉樹溶解パルプ、広葉樹溶解パルプ、再生パルプ、古紙パルプ等)が挙げられる。また、上述のセルロースを粉砕処理したセルロースパウダーを使用してもよい。セルロースとして、これらのいずれかまたは組合せを使用してもよいが、好ましくは植物または微生物由来のセルロースであり、より好ましくは植物由来のセルロースであり、さらに好ましくは植物由来のパルプである。
本発明では、MFCにおける50%以上のセルロースI型の結晶化度を維持するために、セルロースI型の結晶化度が高いセルロースを原料として用いることが好ましい。セルロースのセルロースI型の結晶化度は、好ましくは、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。セルロースI型の結晶化度の測定方法は、上述の通りである。
2)化学変性
化学変性とはセルロースに官能基を導入することをいい、アニオン性基を導入することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)、-O-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(-COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。化学変性は、酸化またはエーテル化が好ましい。酸化またはエーテル化は、例えば特開2019-104833等に記載されているような公知の方法に従って実施できる。また、MFCのカルボキシル基量および化学変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度も、例えば特開2019-104833等に記載されているような公知の方法に従って測定可能である。
3)フィブリル化
化学変性されたセルロース原料を解繊または叩解することにより、MFCを得る。フィブリル化における解繊または叩解は、ディスク型、コニカル型、シリンダー型等といったリファイナー、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー等を用いて、湿式で(すなわち、水等を分散媒とする分散体の形態で)行うことが好ましいが、特にこれらの装置に限定されず、湿式にて機械的な解繊力を付与する装置であればいずれでもよい。
フィブリル化に供する化学変性されたセルロース原料の分散体における原料の固形分濃度は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましく、2.0重量%以上がさらに好ましい。濃度の上限としては、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
フィブリル化に供するための分散体を調製する前に、上述の方法で得られた化学変性されたセルロース原料を予め乾燥させ、粉砕してもよい。次いで、乾式粉砕した化学変性セルロース原料を分散媒に分散し、フィブリル化(湿式)に供してもよい。原料の乾式粉砕に用いる装置は特に限定されず、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等を例示することができる。
フィブリル化は、上述の通り、平均繊維径として500nm以上または500nm超、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上を維持するような範囲で行われる。平均繊維径の上限は60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がさらに好ましい。平均繊維径がこの範囲になる程度の適度なフィブリル化を行うことにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈し、また、微細に解繊されたセルロースナノファイバーに比べて少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。
また、上述の通り、フィブリル化する前の化学変性されたセルロース原料のフィブリル化率(f)が、向上するようにフィブリル化を行うことが好ましい。MFCのフィブリル化率をfとすると、フィブリル化率の差Δf=f-fは、0を超えていればよく、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは2.5%以上である。フィブリル化率(Fibrillation %)は、バルメット株式会社製フラクショネーターを用いて測定することができる。
3.パルプスラリー
本発明で用いるパルプスラリーは、パルプと前述のMFCを含む。一般に、夏場の高温下等では成分が腐食する等によって、パルプスラリー中のカチオン要求量および電気伝導度は比較的高い状態となる。このようなパルプスラリーに、紙力向上のための薬品(紙力剤)を添加してもその効果が発現しにくく、紙の強度を向上させにくい。
典型的な紙力剤は分岐鎖を有するイオン性高分子である。パルプスラリーのカチオン要求量が高いと、紙力剤が電気的にパルプに定着することが阻害される。また、パルプスラリーの電気伝導度が高いと、電荷反発の影響により紙力剤の高分子鎖の広がりが抑えられ、パルプ繊維と絡みづらくなる。このため、カチオン要求量および電気伝導度が比較的高いパルプスラリーにおいては、紙力剤の効果が発現しにくいと考えられる。一方、本発明で用いるMFCは、フィブリル化が進行した非常に細かいパルプであるので、静電気的な阻害が多い前記環境下でも、高い比表面積によってパルプ同士を結合できる。したがって、本発明はMFCを用いるので、夏場の高温下におけるパルプスラリーであっても、紙力向上を達成できると推察される。ただし、紙力向上のメカニズムはこれに限定されない。
<カチオン要求量>
夏場のパルプスラリーのカチオン要求量は80μeq/L以上である。一態様において本発明で用いるパルプスラリーは夏場環境下のものを想定しているので、本発明で用いる、MFCを添加する前のパルプスラリーのカチオン要求量は80μeq/L以上である。本発明ではMFCを用いるためカチオン要求量が比較的高くても、紙力の高い紙を提供できる。この観点から、当該カチオン要求量は、好ましくは90μeq/L以上であり、より好ましくは100μeq/L以上である。その上限値は、好ましくは200μeq/L以下である。MFCが添加された後のパルプスラリーのカチオン要求量も前記範囲であることができる。
カチオン要求量とは、パルプスラリー中のアニオン成分を中和するために要するカチオン性薬品の量である。好ましくは以下の方法で求められる。
1)パルプスラリーを目開き74μmのメッシュ(200メッシュ)でろ過し、ろ液をN/1000のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)溶液で滴定して測定する。
2)測定は、MUTEK社製粒子表面電荷測定装置(MUTEK PCD03)で行う。
3)粒子表面電荷測定装置(MUTEK PCD03 MUTEK社製)にて測定する。
<電気伝導度>
夏場のパルプスラリーの電気伝導度は120mS/m以上である。一態様において本発明で用いるパルプスラリーは夏場環境下のものを想定しているので、本発明で用いる、MFCを添加する前のパルプスラリーの電気伝導度も120mS/m以上である。本発明においては、MFCを用いるので電気伝導度が比較的高くても、紙力の高い紙を提供できる。この観点から、当該電気伝導度は、好ましくは130mS/m以上であり、より好ましくは140mS/m以上である。その上限値は、好ましくは300mS/m以下である。MFCが添加された後のパルプスラリーの電気伝導度も前記範囲であることができる。電気伝導度は、以下のようにして測定される。
1)固形分濃度が0.025重量%であるパルプスラリーを十分に撹拌する。
2)その後、電気伝導度計(HORIBA社製ES-71型)を用いて電気伝導度を測定する。
<MFC含有量>
MFC含有量は、パルプの絶乾重量に対して好ましくは6重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。MFC含有量の下限は、所望の効果が得られる量であれば限定されないが、パルプの絶乾重量に対して好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
<添加剤>
パルプスラリーは、カチオン基含有バインダーを含むことが好ましい。カチオン基含有バインダーとしては、カチオン化澱粉、カチオン変性ポリアクリルアミド等が挙げられるが、効果発現の観点からカチオン化澱粉が好ましい。カチオン基含有バインダー含有量は、パルプの絶乾重量に対して1~5重量%であることが好ましく、1.5~3.5重量%であることがより好ましい。
パルプスラリーは凝結剤を含むことが好ましい。凝結剤とは、抄紙においてアニオン性夾雑物や粘着物質が凝集することを防ぐために添加される添加剤である。好ましい凝結剤としてはカチオン性樹脂が挙げられる。凝結剤の含有量は、パルプの絶乾重量に対して0.005~0.05重量%であることが好ましく、0.007~0.02重量%であることがより好ましい。
パルプスラリーは公知の填料を含むことができる。填料としては、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱酸による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素-ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよいし併用されてもよい。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料であり、高い不透明度や白色度が得られる炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが好ましい。填料の含有率は、固形分重量に対して、0~20重量%が好ましい。また白色度や不透明性が求められない板紙用途においては、填料を添加しなくてもよい。
パルプスラリーは、MFCを原紙のパルプに定着させ、当該MFCの歩留まりを向上させるために各種金属塩を含有することができる。この際、2種以上の金属塩を併用してもよい。塩を形成する金属としては、例えばナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムが挙げられ、金属塩としては例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アルミン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。本発明においては、硫酸アルミニウムまたは塩化カルシウムを単独で用いるか併用することが好ましい。
その他、パルプスラリーは、内添薬品として、歩留剤、嵩高剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、保水剤、染料、サイズ剤、各種塩等を必要に応じて含むことができる。
<パルプ>
パルプは特に限定されず、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、未脱墨古紙パルプ等の古紙パルプ、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、針葉樹クラフトパルプ(LKP)等の化学パルプ等を使用できる。古紙パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌、段ボール、印刷古紙等の選別古紙やこれらが混合している無選別古紙由来のものを使用できる。
4.紙
本発明の紙は、前記パルプスラリーから得た原紙を備える。原紙は単層でも多層でもよい。原紙が多層の場合、いずれか一層にMFCを含有させてもよく、複数層にMFCを含有させてもよいが、前記MFCはそれぞれの層のパルプに対して、上記含有率で含有させればよい。MFCが存在する層は、前記量のカチオン基含有バインダーを含むことが好ましく、前記量のカチオン基含有バインダーと凝結剤の双方を含むことがより好ましい。原紙の坪量は用途によって適宜調製されるが、例えば、30~300g/mであることが好ましく、50~150g/mであることがより好ましい。また、後述するとおり、本発明の紙は、クリア塗工層または顔料塗工層を備えていてもよい。
本発明の紙は、強度を求められる各種用途に使用することができる。用途はこれらに限定されないが、例えば、オフセット、グラビア、インクジェット、電子写真方式等の各種印刷用紙や、感熱紙、感圧紙、包装紙、紙器用紙、板紙、段ボール、紙コップ等があげられる。
5.紙の製造方法
(1)原紙の製造
本発明の紙は、前記パルプスラリーを準備する工程、および当該パルプスラリーを用いた抄紙工程、を備える方法で製造される。抄紙は、例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができるが、これらに限定されない。
パルプスラリーを調製する場合、任意の工程においてMFCを添加することができるが、混合効率を向上させるために、パルプリファイナー工程またはミキシング工程で添加することが好ましい。ミキシング工程でMFCを添加する場合、填料や歩留剤等その他助剤とMFCを予め混合したものをパルプスラリーに添加してもよい。
前述のとおり、一態様において本発明で用いるパルプスラリーは夏場環境下のものを想定しているので、本発明はパルプスラリーの温度が30~60℃である場合に好適である。当該温度は、好ましくは35~55℃である。
(2)顔料塗工層
本発明の紙は顔料塗工層を備えることができる。顔料塗工層とは白色顔料を主成分として含む層である。白色顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成カオリン、無定形シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、プラスチックピグメント等の通常使用されている顔料が挙げられるが、白色度や不透明度を効果的に向上させることができるため、炭酸カルシウムが好ましい。
顔料塗工層は接着剤を含む。当該接着剤としては、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、ポリビニルアルコール、置換度0.5超のカルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等が挙げられる。これらは単独、あるいは2種以上併用して用いることができ、澱粉系接着剤とスチレン-ブタジエン共重合体を併用することが好ましい。
顔料塗工層は、一般の紙製造分野で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を含んでいてもよく、本発明のカルボキシメチル化セルロースを含有してもよい。前記カルボキシメチル化セルロースを顔料塗工層中に含有する場合、その量は顔料100重量部に対して好ましくは1×10-4~10重量部、より好ましくは3×10-4~1重量部である。前記範囲の場合、塗工液の粘度を大幅に増大することなく、適度な保水性を有する顔料塗工液を得ることができる。
顔料塗工層は、塗工液を公知の方法で原紙の片面あるいは両面に塗工して設けることができる。塗工液中の固形分濃度は、塗工適性の観点から、30~70重量%程度が好ましい。顔料塗工層は1層でもよく、2層でもよく、3層以上でもよい。複数の顔料塗工層が存在する場合、前記カルボキシメチル化セルロースはいずれの顔料塗工層に存在してもよい。顔料塗工層の塗工量は、用途によって適宜調整してよいが、印刷用塗工紙とする場合は片面あたりトータルで3g/m以上であり、10g/m以上であることが好ましい。上限は、30g/m以下であることが好ましく、25g/m以下であることが好ましい。
(3)クリア塗工層
本発明の紙は、原紙の片面または両面にクリア(透明)塗工層を有していてもよい。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1~5.0g/mが好ましく、0.2~3.0g/mがより好ましく、0.5~1.0g/mがさらに好ましい。本発明においてクリア塗工とは、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータ等のコータ(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉等の各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。クリア塗工層が前記カルボキシメチル化セルロースを含有する場合、その量は水溶性高分子100重量部に対して、0.01~100重量部が好ましい。
[製造例1]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130重量部と、水酸化ナトリウム20重量部を水100重量部に溶解したものとを加え、広葉樹漂白クラフトパルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥重量で100重量部仕込んだ。
内容物を30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化されたセルロース原料を調製した。さらに撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100重量部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60重量部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応を行った。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、30%であった。
反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、化学変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.21、セルロースI型の結晶化度72%のカルボキシメチル化されたセルロース原料(ナトリウム塩)を得た。セルロースI型の結晶化度の測定方法は上述の通りである。化学変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は上述の公知の方法に従って測定した。
得られたカルボキシメチル化されたセルロース原料の固形分濃度2重量%の水分散体を調製し、相川鉄工株式会社製トップファイナーを用いて、10分間処理し、フィブリル化されたカルボキシメチル化セルロース繊維(CM-MFC)を調製した。
[評価方法]
坪量、バルク厚さ、バルク密度、比引張強さ、ショートスパン比圧縮強さ:JIS P 8223:2006を参考とした。
引張破断伸び:JIS P 8113:1998に従った。
比引張エネルギー吸収量(比TEA):JIS P 8113:2006を参考とし、試験長さ100mm、伸張速度10mm/分にて測定した。
王研式平滑度、王研式透気抵抗度:JIS P8117:2009に従った。
破裂強さ:JIS P 8131:2009に従った。
比破裂強さ:JIS P 8131:2009に従った。
電気伝導度:前述の方法で測定した。
カチオン要求量:前述の方法で測定した。
[パルプスラリー調製条件]
以下の条件で、パルプスラリーを調製した。条件1は温度の高い季節での製造を想定した条件であり、条件2は通常の製造を想定した条件である。
Figure 2022157213000001
[実施例1]
1)段ボール用古紙原料(日本製紙株式会社製)の1重量%スラリーを調製し、条件1に従い、スラリー重量に対してCaCl無水物を0.15%、リグニンスルホン酸ナトリウム0.8重量%水溶液を1重量%混合した。
2)当該パルプスラリーを、湯浴を用いて50℃に調製した。当該パルプスラリーの電気伝導度は200mS/m、カチオン要求量は100μeq/Lであった。
3)当該パルプスラリーに、以下の添加剤を加えた(前記パルプ100重量%(絶乾)に対して)。
硫酸バンド:0.5重量%
MFC:3重量%
歩留剤(アニオンポリマー):70ppm重量
当該MFC含有パルプスラリーを用いて坪量約110g/mの手抄きシートを製造して評価した。この際、手抄きマシン内における希釈にもCaClの0.15重量%水溶液(電気伝導度200mS/m)を用い、シート形成まで電気伝導度200mS/mを維持するようにした。手抄きシートはJIS P8222を参考にして製造した。
[実施例2]
凝結剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体(片山ナルコ株式会社製、N75247)を表に示す量用いた以外は実施例1と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[実施例3]
さらに、カチオン化澱粉(イングレディオン社製CATO304s)を表に示す量用いた以外は実施例2と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[実施例4]
さらに、カチオン化澱粉(イングレディオン社製CATO304s)を表に示す量用いた以外は実施例1と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例1]
1)条件2に従い、段ボール用古紙原料(日本製紙株式会社製)の1重量%スラリーを調製した。当該パルプスラリーの電気伝導度は30mS/m、カチオン要求量は49μeq/Lであった。
2)当該パルプスラリーに、以下の添加剤を加えた。(前記パルプ100重量%(絶乾)に対して)
硫酸バンド:0.5重量%
MFC:3重量%
歩留剤(アニオンポリマー):70ppm重量
当該MFC含有パルプスラリーを用いて坪量約110g/mの手抄きシートを製造して評価した。手抄きシートはJIS P8222を参考にして製造した。
[比較例2]
MFCを添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例3]
MFCを表に示す量用いた以外は、比較例1と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例4]
紙力剤としてRB-200(ハリマ化成社製)を表に示す量用いた以外は、比較例1と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例5]
紙力剤としてRB-200(ハリマ化成社製)を表に示す量用いた以外は、比較例2と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例6]
前記凝結剤を表に示す量用いた以外は、比較例2と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。
[比較例7]
さらに、前記カチオン化澱粉を表に示す量用いた以外は比較例6と同じ方法で手抄きシートを製造して評価した。これらの結果を下表に示す。
Figure 2022157213000002
比較例1、2から、紙力剤を添加しない場合は、紙力は総じて低く、カチオン要求量と電気伝導度が高い場合(条件1)と、そうでない場合(条件2)での紙力向上効果の差はさほど大きくなかったことが明らかとなった。
比較例4、5から、紙力剤によって紙力は向上したが、条件1では条件2に比べて向上効果が低いことが明らかとなった。
比較例3と実施例1から、条件1においてもMFCによる紙向上効果が発現し、条件2と同等の紙力を有する紙を得られることが明らかとなった。
比較例2、6と実施例2から、凝結剤を添加すると、条件1でも紙力は向上したが、MFCと組み合わせると、さらに紙力向上効果が高くなることが明らかとなった。
比較例2、6、7と実施例3、4から、凝結剤とカチオン化澱粉を添加すると、条件1でも紙力は向上したが、これにMFCと組み合わせると、極めて高い向上効果が発現することが明らかとなった。

Claims (10)

  1. カチオン要求量が80μeq/L以上かつ電気伝導度が120mS/m以上であるパルプスラリーに、平均繊維径が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を混合することによって得られるミクロフィブリルセルロース繊維含有パルプスラリーから得られる紙。
  2. 前記化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の含有量が、前記パルプの絶乾重量に対して0.5~6重量%である、請求項1に記載の紙。
  3. 前記パルプスラリーが、カチオン基含有バインダーをさらに含有する、請求項1または2に記載の紙。
  4. 前記カチオン基含有バインダーの含有量が、前記パルプの絶乾重量に対して1~5重量%である、請求項3に記載の紙。
  5. 前記カチオン基含有バインダーがカチオン化澱粉を含有する、請求項3または4に記載の紙。
  6. 前記パルプスラリーが、凝結剤をさらに含有する、請求項1~5のいずれかに記載の紙。
  7. 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維のセルロースI型結晶化度が50%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の紙。
  8. 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維が、カルボキシメチル化ミクロフィブリルセルロース繊維であり、そのカルボキシメチル置換度が0.20以上である、請求項1~7のいずれかに記載の紙。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載のパルプスラリーを準備する工程、
    当該パルプスラリーを用いた抄紙工程、を備える、
    紙の製造方法。
  10. 前記パルプスラリーの温度が30~60℃である、請求項9に記載の製造方法。
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