JP2022155602A - 赤外線炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】工場排熱等を有効利用し、過熱水蒸気を生成させて効率のよい処理物の加熱処理を行う。【解決手段】この発明の赤外線炉は、外部から水分を含み又は添加した高温ガスを連続的に導入して排出し、内部に上記高温ガスにより加熱されて赤外線を放射し赤外線の放射率の高い高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の放射炉であって、上記高放射材に近接して流動する水分に前記高放射材より放射される赤外線を照射することにより過熱水蒸気を生成させる機構としており、高放射材が天然石・土若しくはセラミック材又は上記放射炉の内面を被覆するセラミックウール製の耐熱材の適用が可能である。【選択図】図1

Description

この発明は主として処理物の乾燥や炭化を行う赤外線炉に関する。
従来赤外線を用いて処理物の乾燥や炭化等を行う赤外線炉として特許文献1~3に示されるものが提案されている。
特許第6244529号公報 特開2017-194177号公報 特開2011-89666号公報
上記特許文献1~3の加熱装置は、いずれもヒーターで加熱した水蒸気を加熱媒体として乾燥や加熱処理に使用するもので、このうち特許文献2,3の装置は水蒸気やヒーターで加熱したセラミック材から遠赤外線放射をさせ、水分を過熱水蒸気化する機構を備えている。
<1>公知技術に関する課題
上記公知文献の加熱装置は、後述するように遠赤外線を含む赤外線の吸収率が高く且つ地球温暖化に最も高い寄与度を持つ水蒸気を加熱媒体として利用している点で加熱効率の高い熱媒体を利用していると言える。ちなみに主な温室効果ガスの地球に対する温室効果への実際の寄与度は、地球温暖化問題におけるメタンや一酸化二窒素(NO)の作用とは別に、後述する(表1参照)ように水蒸気(HO)と二酸化炭素(CO)、雲(水分)が主要な温室効果物質となっている。
しかし上記装置はいずれも赤外線を得る方法としてヒーターを用いる必要があるため、電気のエネルギーコストやエネルギー効率、地球温暖化等の環境問題としても課題が残される他、特に大型化する場合は設備コストの面でも課題がある。
さらに上記装置はいずれも水蒸気と熱水を混合した熱媒体としているため、水分の付着が望ましくない乾燥処理や処理物の加熱には、熱媒体を直接処理物に接触させられないという課題がある。
<2>高温熱媒体となる過熱水蒸気及び二酸化炭素の有効活用の課題-赤外線炉の開発に当って
表1に示すように水蒸気や二酸化炭素,雲(水分)が温室効果物質であるということは、太陽から地表に届く可視光線,赤外線を吸収してこれらの物質が高温化し、大気の保温とともに赤外線を再放射することを意味している。
Figure 2022155602000002
実際、水や二酸化炭素等の三原子分子と称される物質は、図7に示されるように赤外線中の複数の波長領域で高い吸収帯を持っている。全ての物質は絶対零度でない限り、その物質の温度に応じて固有振動を有しおり、電磁波である赤外線が物質に吸収されると、吸
収された赤外線の波長と、赤外線を吸収した物質の固有振動の波長が一致すると共振し、その運動エネルギーにより物質の温度が急激に上昇する点に特徴がある。
この発明は上記背景に鑑み、赤外線炉に熱源として燃焼ガスや排熱を利用し水蒸気と赤外線を発生させる。この水蒸気、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素はそれぞれ特定の波長領域の赤外線を吸収し共振反応を起こし、過熱水蒸気を生成すると同時に、二酸化炭素を含む燃焼排ガスを高温化させる。これを処理物の乾燥や炭化等に使用する赤外線炉を提供するもので、以下念のため過熱水蒸気特性について説明する。
(1)伝熱の種類
熱の伝わり方には、「伝導伝熱」、「対流伝熱」、「放射伝熱」があるが、現在主として利用されているのは、伝導伝熱と対流伝熱である。放射伝熱は、電気を使用する小型の装置が一部で活用されている程度であり大型のものはない。
(2)過熱水蒸気の発生について
i.水は加温していくと飽和蒸気になり沸騰する(1気圧で、100℃である)。更に温度を上げるためには、通常はボイラーで加熱し、蒸気を発生させ、圧力に応じて温度を上げることが出来る。
ii.通常ボイラーでは、いくら加熱しても水蒸気の 温度は、圧力約220気圧で、約370までしか上がらない(臨界圧力・臨界温度と云う)。それ以上に温度を上げようとすれば、特別の装置が必要となる。
iii.本発明に関する過熱水蒸気の発生装置は、噴霧水・飽和蒸気に吸収される率の高い波長の赤外線(熱を高放射材に吸収させて赤外線を放射させる)を照射し吸収させ、その物質の固有振動と共振させて、1気圧で370℃以上の過熱水蒸気を発生させることが出来る。更にそれ以上の温度の過熱水蒸気を発生させることも可能である(図8参照)。
(3)過熱水蒸気の特徴
i.過熱水蒸気は、無色透明のHOガスである。また、熱風乾燥と150℃~300℃の過熱水蒸気の熱容量は、13倍~6.5倍であり、非常に大きい
ii.逆転点温度以上では水の蒸発速度は熱風乾燥より、過熱水蒸気乾燥の方が早い。また過熱水蒸気は、酸素を含まないので無酸素状態で熱処理となる。従って、油分は酸化せず、ダイオキシン等の有効物質の発生もない。
iii.乾燥能力比較
乾燥能力を比較する指標として、気体1mあたりの熱量が重要である。過熱水蒸気と、高温に加熱した空気の持つ1m当たりの熱量比較したものを表2に示している。例えば、気体の温度が150℃で比較した場合は、過熱水蒸気が乾燥高温空気に比べて13倍乾燥能力が高い。
Figure 2022155602000003
(4)過熱水蒸気の利活用例(本発明の装置によれば大型のものまで可能)
i.乾燥・消臭(チップ乾燥・家畜糞の乾燥。過熱水蒸気は酸素を含まないので、ダイオキシン等の発生はない。)
ii.野菜、米糠、おから等の殺菌(秒単位の照射)、乾燥
iii.炭化装置に使用できる。
iv.土・水・空気の浄化
v.有機廃棄物処理(ゴミ処理施設)
上記課題を解決するための本発明の赤外線炉は、第1に外部から水分を含み又は添加した高温ガスを連続的に導入して排出し、内部に上記高温ガスにより加熱されて赤外線を放射し赤外線の放射率の高い高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の放射炉であって、上記高放射材に近接して流動する水分に前記高放射材より放射される赤外線を照射することにより過熱水蒸気を生成させる機構としたことを特徴としている。
第2に、高放射材が天然石・土若しくはセラミック材又は上記放射炉の内面を被覆するセラミックウール製の耐熱材よりなることを特徴としている。
第3に、放射炉のガス導入側に形成されるガス導入室と、ガス排出側に形成され高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の赤外線放射室とを備え、該赤外線放射室から排出される高温ガスを次工程に供給する供給路を設け、上記赤外線放射室を通過する高温ガス自体に前記高放射材により赤外線を放射させる機構としたことを特徴としている。
第4に、放射炉内に導入される高温ガスが水蒸気と二酸化炭素の一方又は両方を含む燃焼ガスであることを特徴としている。
第5に、放射炉内で高温ガスにより水蒸気を生成する水分を供給する水分供給部を設けてなることを特徴としている。
第6に、水分供給部をガス導入室に開口させて設けたことを特徴としている。
第7に、ガス導入室と周壁を高放射材で形成した赤外線放射室とを互に軸線方向に沿った二重の周壁で区画して形成し、ガス導入室に導入した高温ガスにより赤外線放射室の周壁を加熱し、赤外線放射室内に赤外線を放射させる機構としたことを特徴としている。
第8に、赤外線放射室の一端に内部で過熱水蒸気を生成するための水分を供給する噴水部を設け、他方の端部に該赤外線放射室内で生成された過熱水蒸気を次工程に送り出す排出部を設けたことを特徴としている。
第9に、赤外線放射室内に赤外線照射による低温乾燥が望ましい処理物を収容する筒状の乾燥籠を収容するとともに、該乾燥籠内に冷風を供給する冷風供給管を設けてなることを特徴としている。
第10に、乾燥籠は赤外線放射室に対して回転可能に軸支され、一端側から投入された処理物が乾燥籠の回転により他方の端部側に搬送されて排出されるコンベア機能を備えてなることを特徴としている。
第11に、外部から過熱水蒸気を含む高温ガスを導入し、周壁の内側に上記高温ガスにより加熱されて高い効果で赤外線を放射する高放射材で内装した筒状又はトンネル状の放射炉内に、炭化処理を行う処理物を収容する炭化籠を略同心状に配置してなることを特徴としている。
第12に、放射炉を上下方向に設置し、下端側に高温ガスの導入口と炭化された処理物の取出部を設け、上端側に導入されたガスの排出口と炭化すべき処理物の投入口を設けてなることを特徴としている。
第13に、放射室内の炭化籠の上方にガス溜りを形成する山形断面の天井壁を設け、天井壁と天井外壁との間に排気空隙を形成したことを特徴としている。
以上のように構成される本発明の加熱炉によれば、次のような効果を奏する。
(1)熱源としての高温ガスは各種燃焼ガスや排熱、排気ガス等が利用できるので、工場やプラント等の排熱の再利用ができるほか、これらの高温ガスに含まれる水蒸気や二酸化炭素が吸収しやすい波長領域の赤外線を放射する高放射材(放射率が大きい材料)を、高温ガスで加熱することにより、赤外線(特に遠赤外線)を放射させる。この赤外線を吸収した水蒸気は固有振動と吸収した赤外線の波長が共振し、過熱水蒸気となり、二酸化炭素もさらに高熱容量ガスとなって高い熱効率の加熱媒体として利用できる利点がある。
特に工場等で排出される燃焼ガスは水分や二酸化炭素を含むので、これらの排熱を効果的に利用できる効果がある。
(2)周壁を高放射材で形成した赤外線放射室を外部から高温ガスで加熱する放射炉によれば、高温ガスから隔離された内部で赤外線を照射させることによって処理物を処理するので、処理物は高温ガスに含まれる有害成分等の影響を直接受けることなく赤外線のみによって加熱されるクリーンな加熱条件で処理できる利点がある。
また加熱処理室内に水分供給して過熱水蒸気を生成排出させて利用することにより、例えば食品の乾燥や加熱処理も表面の加熱損傷や焦げ付きなく無酸素状態での加工が実現できる。
(3)さらに赤外線放射室内に食品原料や医薬品原料等を収容する乾燥籠を挿通して内部に冷風送風をすることにより、乾燥物の内部温度を遠赤外線を照射して水分を表面側に蒸散させ、表面の冷却により湯気として内部の自由水を排風除去できる利点があるほか、これらに含まれる有用成分の破壊や変質、油脂成分の酸化を防止することができる。
(4)また一般に廃棄処理の制約の多い医療廃棄物(例えば防護服,マスク,使用済医療器具,紙オムツ等)も、本発明の赤外線(放射)炉内での炭化処理により、炭化処理自体に燃焼ガス等の有害排気ガスを伴うことなく安全に処理できる。
本発明の赤外線放射炉の構成を示す断面図である。 図1の赤外線(放射)炉からの高温ガスを利用して、他の赤外線炉で過熱水蒸気を発生させる装置の全体図である。 図1の赤外線炉を利用した低温赤外線炉の全体構成図である。 (A)は上記低温赤外線炉の断面図、(B)は同赤外線炉の周壁構造例を示す斜視図である。 図1の赤外線炉を利用した炭化炉の全体構成図である。 (A),(B)は炭化炉の正面断面図と側面断面図である。 (A)は赤外線の波長と透過率(吸収率)を示すグラフ、(B)はこれに対応する電磁波の種類を示すグラフである。 水・過熱水蒸気及び加熱乾燥空気の熱量の関係を示すグラフである。 高放射材(岩石)の赤外線波長ごとの放射率を示すグラフである。 赤外線波長ごとの水層の厚さによる赤外線透過率を示すグラフである。
図1は本発明の赤外線炉の断面図を示し、この発明は高温ガスを導入して過熱水蒸気を発生させ高温加熱媒体として利用するものである。
放射炉1は周壁2が断熱材で形成され、中央が大径で前後が細径に収束して両端部に高温ガスの導入口3と排出口4を備えた筒状又はトンネル状のガス導入室6と、排出口4には細径の筒状又はトンネル状(注:本例では円筒形断面)に形成された赤外線放射室7が接続され、高温ガスの通過路となっている。
ガス導入室6に導入される高温ガスは、LPG,LNG,石油系燃料,木質バイオマス燃料等を燃焼させた例えば300~800℃程度の燃焼ガスからなる高温ガス又は工場やプラントの排熱を利用した高温ガスが使用され、燃焼ガスはボイラー等の排ガスであってもよい。赤外線放射室7も外周壁は高断熱材よりなり、その内部の下側とガス導入室6の排出側内周には加熱によって高い効率で遠赤外線を放射する安山岩質火山礫岩等の天然石(岩石)又はセラミック材等からなる高放射材8が、軸心方向に沿って長手方向に配置されている。この高放射材8によって赤外線放射室7の内側周壁自体を構成してもよい。
また高放射材としては、上記の他高い遠赤外線放射率を有するセラミックウール製の耐熱材を採用することも可能である。
上記高放射材8は赤外線放射室7内を通過する高温ガスの赤外線照射を受けて加熱され、遠赤外線を含む赤外線を放射して、主として高温ガス中の水蒸気や二酸化炭素の固有振動域で共振させて高温化させることにより、含まれる水蒸気を過熱水蒸気として高温化し、二酸化炭素も遠赤外線照射を受けてさらに高熱量の高温ガスを生成する。
熱源として燃焼ガスを用い又はプラント排熱ガス等の高温ガスを用いるので、赤外線放射室7内で水蒸気及び過熱水蒸気を生成するためにガス導入室6には外部から必要量の冷水,温水,水蒸気等の水分を供給する必要があり、このためガス導入室6には水分供給部(給水ノズル)9が設けられている。
赤外線放射室7の下流端(排気側端部)は断熱材からなる蓋部11によって閉じられ、該蓋部11には赤外線放射室7内で高放射材8により高放射材8から照射される赤外線を受けて生成された過熱水蒸気を含む高温ガスを、次の処理工程に排出供給する配管等からなる供給路12が接続されており、この例では300℃~800℃程度の高温ガスは燃焼ガスが直接接触しても差し支えない処理物の高温乾燥機,殺菌・防カビ・炭化等の加熱処理器13に供給されて活用される。
図示する例ではガス導入室6の排出口4近傍の赤外線放射室7の前端側と後端側に、各位置の内部温度を測定する温度センサーT,T,Tがそれぞれ設置されている。ガスがT,~Tに至る過程の温度変化を確認し、ガス導入量の制御等による排出ガスの量や熱量制御等を行うことが可能な機構となっている。上記温度センサーT,T,Tは1000℃程度の温度測定が可能なものが望ましい。
図9は本実施形態に用いた天然の岩石である高放射材(安山岩質火山礫岩)8の赤外線の波長変化と放射率の変化及び水蒸気(水分)と二酸化炭素の吸収波長域さらに上記高放射材8の成分とを示したグラフであり、遠赤外線波長域5.5~7.5μmで水蒸気の、同14~17μmで二酸化炭素の吸収域があり、同時にこれらの領域で両者が高放射率を備えていることがわかる。
図2は上記放射炉1で生成された過熱水蒸気を含む高温ガスを供給路12により次の赤外線炉に供給し、形態の異なる2基の放射炉1,14(赤外線炉)を前後に接続した機構を示している。この例では2基目の放射炉(二次放射炉)14は、共にトンネル状又は筒状(本例では円筒状)断面の周壁18,19を有する内側赤外線放射室16と、外側のガス導入室17とを同一軸線状に重ねて配置しており、赤外線放射室16の周壁18は前記同様の高放射材で、ガス導入室17の周壁は高断熱材で、両周壁間にドーナツ状のガス収容(流通)間隔を介してそれぞれ形成されている
ガス導入室17は赤外線放射室16のドーナツ状外周空間を中心から水平方向の隔壁(図示しない)により上下に分割され(図4(A)「隔壁42」参照)、一端の奥側で上下連通しており、他端側の上下室の一方(下側)は前記赤外線放射室7側からの供給路12と接続され、他方(上側)は排気路22に接続されており、この例ではガス導入室17と赤外線放射室16は、両室のガスが混ざり合わないように別室に分離区画されている。
この機構により供給路12から供給された過熱水蒸気を含む再加熱ガスは、ガス導入室17内の一端(左端)から入り、上下室を略全長に亘って往復して同一端(左端)側から排出される間に、内側の赤外線放射室16の高放射材からなる周壁18の外周に赤外線放射し、周壁18は赤外線を吸収して赤外線放射室16内に遠赤外線を含む赤外線を再放射する。上記ガス導入室17は上下室に分割された例を示したが、区画壁をらせん状に形成し、一端から他端に向けて過熱水蒸気を含む高温ガスを流すことも可能である。
他方、円筒状に形成された赤外線放射室16には、一端(左端)側から水又は水蒸気を噴霧供給する水分供給部(給水ノズル)23が挿入接続して配置されている。ここで供給された水分は、高温ガスによって加熱された赤外線放射室16内を他方の端部(右端)に送られる過程で周壁から遠赤外線を含む赤外線が照射され、高温の過熱水蒸気となって右端の過熱水蒸気の排出口25に接続された放出路24から放出される。
上記放出路24の下流側は、例えば高温の過熱水蒸気のみによって処理物の加熱加工,殺菌,防カビ等の加熱処理を行う処理機26に接続され、ここでは既述のように処理物を無酸素状態の過熱水蒸気のみの高温雰囲気内で加熱処理できる利点がある。ちなみに処理機26側に導入される過熱水蒸気はガス導入室17に導入される高温ガスに比して低温で、100~250℃程度と見込まれる。
尚、図示する赤外線放射室16は、下流側(排気側)の径が上流側(導入側)より小径に絞られて形成されているので、小径部分での水蒸気の遠赤外線照射による加熱効率も高くなるほか、ガス導入室17の排気路22からは、ファンFと排気処理室28とを介して排気筒29に送られる他、又はリターン回路31から放射炉1のガス導入室6に返送され、熱源及び熱媒体として再利用される機構となっている。リターン回路31の末端には、必要に応じて赤外線放射室7で過熱水蒸気を生成するための補給水を注入する水分補給部32を接続して設けても良い。
図3は、遠赤外線を用いて例えば比較的低温(例えば60℃~100℃前後)で処理物を処理する赤外線炉の例を示しているが、図2に示す放射炉14と同様に、放射炉33が中心部の赤外線放射室34と外周側のガス導入室36とを備え、各室34,36は高放射材製の周壁37と断熱材製の周壁38でそれぞれ構成されている。そして前記同様の放射炉1から供給路12を介して赤外線放射室34に高温ガスを送り、室内を往復流動させて遠赤外線放射を含む赤外線照射で赤外線放射室34を加熱し、内部の処理物に赤外線照射処理する点も図2の例と機構としては共通している。
さらにガス導入室36の一端から排気路22,ファンFを介して排ガスを排気処理室28に送られ、排ガスはリターン回路31を介して放射炉1に返送される点も前述の例と共通するが、この例では排ガス中の凝集水を分離処理する凝集水処理装置39が、上記排気処理室28に接続されている。
さらに図3に示す例では、円筒形の赤外線放射室34内には同放射室34と同心の円筒形で、図4(A)に示すようにロータリーキルン型の乾燥籠41が同心的に挿通されて回転駆動可能に軸支されている。また図2の例で説明したようにガス導入室36は、中心高さ位置で水平方向の隔壁42により上下2分割され、右端部では上下室が連通し、再加熱ガスが全長にわたって往復流動し、赤外線放射室34に外周側から赤外線照射する機構となっている。
この例においてもガス導入室36をらせん状に形成して赤外線放射室34の周壁37を加熱することが可能である。
上記乾燥籠41の一端(左端)開閉可能な乾燥処理物の投入口43を形成するとともに、内部に乾燥した冷風を供給する乾燥冷風機44が接続されている。この例では乾燥冷風機44と接続されて乾燥籠41内を貫いている冷風供給管46は、乾燥籠41の全長を貫き且つ籠内では全長にわたって冷風を噴出する多孔の噴出孔(図示せず)を有するノズルとして構成しているが、乾燥籠41の左端側に供給すれば足りる。
また赤外線放射室34及び乾燥籠41の他方の端部(右端)には、乾燥処理物を取り出す取出口47と、乾燥処理物から分離された水分(水蒸気等)を含む排ガス(エア)を排気する排気路48の接続部49とが設けられており、排気処理装置51,ファンFを介して排気筒52で、分離された水分を含む排気エアが大気中に放出される機構となっている。
上記低温型赤外線放射炉においては、乾燥籠41によって処理する乾燥処理物は、低温乾燥に適する乾燥野菜や茸等の山菜類,加工食品材料が対象となり、殺菌炉としても利用できる。したがって赤外線放射室34内の温度は100℃以下とし、乾燥籠41内の処理物内の温度は乾燥処理の場合は60℃以下にすることが望ましい。その結果高温による色や味、香り、形態等の品質変化を防止できる。
本例に示す低温型の赤外線炉では、炉内で生成された過熱水蒸気を直接乾燥処理物に当てては使用せず、乾燥処理物内に含まれる水分の赤外線吸収帯波長域に該当する遠赤外線を吸収させ、水の固有振動と共振させて発熱させて表層側の水分を抽出するものである。このように内部の水分を加熱抽出したものを、冷風によって冷却することにより、水分の大半は湯気として冷風と共に排出され、内部の水分も分離除去されて低温乾燥される。
図10は食品加工における電磁波の応用に関し、水の赤外線吸収波長の依存性を示すグラフで、これにより赤外線放射室34内に放射される各波長域で乾燥処理物の表面からの深さに応じた赤外線加熱が行われることを示している。ちなみにこのような加熱により除去される水分は、乾燥処理物に含まれる自由水であり、物質そのものを構成する結合水は含まれない。
図4(B)は高放射材による赤外線放射室34の周壁38の組付構造を示し、この例では円筒状又はトンネル状の籠型に組立てられてボルト54により固定され、軸方向及び周方向に交差するフレーム材53に対し、ブロック状又はタイル状に形成された高放射材を、互の隣接面を密着させて取付固定されており、この構成は図2及び次に述べる炭化炉における加熱処理炉14及び赤外線放射室58にも共通して採用される。
図5,図6は本発明を応用して赤外線照射による処理物の炭化を行う赤外線炉の例を示し、本例の赤外線炉は、例えば病院や福祉施設等から廃棄される紙おむつ,防護服,手袋,マスク,ガーゼその他の医療消耗品等の医療廃棄物のように一般廃棄物や産業廃棄物と区別される特殊な廃棄物や、農作物や食品の廃棄物等、炭化処理に適した処理物を投入して処理するための装置である。
そしてこの例では放射炉1で生成した再加熱ガスを供給路12を介して放射炉56の下端側の導入口55に送り、放射炉56内で処理物の炭化を行うものである。放射炉56は円筒形の縦型炉として構築され、外周壁57を断熱材で形成し、その内側に形成される赤外線放射室58の内側の周壁59は前述した高放射材で形成されている。またこの例では、赤外線放射室58に図1に示す放射炉1からの高温ガスを直接導入しているので、上記各例に示すガス導入室を設けず、赤外線放射室58がガス導入室を兼ねた機構となっている。
赤外線放射室58の内部には、炭化処理物を収納する粗目のエキスパンドメタル等よりなる円筒状の炭化籠61が同心的に設置され、加熱処理室58の格子型の底板62の下部には所定の空間からなる炭化物を落下させ集積させて取り出しを行う回収室を兼ねた取出部63が形成されている。該取出部63には底板62を操作して炭化物を落下回収する操作部65が設けられている。なお、図2,図3で示した高温ガスの導入室17,36の内周壁を高放射材で形成することも可能である。
放射炉56の上部開口端には、内部にガス溜り60を形成する山形断面の天井壁65を設け、該天井壁65と外壁との間に室内と連通する排気空隙64を有する二重断面の蓋66が開閉可能に取付けられ、蓋66の上面中央には筒状の排気スタック(排気口)67が突設されている。上記ガス溜り60により、反射熱により赤外線放射室58内の温度が上昇し、炭化が促進される。また図6(B)に示すように炭化籠61の上端中央にも排気スタック(弁)68付の排気管69が蓋66を貫いて接続されている。
さらに上記炭化籠61と放射炉56の上端側には、外部から処理物を炭化籠61内に投入するダクト状の投入口71が接続されて設置されており、投入口71内には投入された処理物を投入口71の開閉を伴いながら順次送り込む投入操作部72が複数段設けられている。
前記排気スタック68は、投入口71より処理物を投入する際に、内部の高温ガスを排出して温度調節をするもので、他方の排気スタック67を含めた排気系から排出される排ガスは、排気路73を介して排ガス処理装置74を介して臭気除去,結露水分離その他の排ガス処理が行われて大気中に排出される。他方、その途中で高温排ガスは排熱回収装置76内を経由し、ここに給水部77より供給される水又は水蒸気等からなる水が加熱されて高温水として放射炉1に返送されて排熱温が再利用される。
ちなみに排ガス処理装置74では、トリメチルアミンガス及びアンモニウムガスは、それぞれ10分間の処理でいずれも2~3%に除去できる。また取出部63には、設定温度以上の高温時には内部の冷却ができるように、窒素ガス等の冷却ガスを供給する冷媒供給部78が設けられている。
上記のように構成される炭化炉によれば、処理物を高熱量で高温の過熱水蒸気を含む高温ガスをさらに放射炉(二次放射炉)56で赤外線照射により加熱した高温ガスにより、燃焼させることなく炭化処理できるので、処理物の燃焼による有害ガスの環境への負荷が防止できる。
尚、図2,図3に示す例では、赤外線を放射させる放射炉14,33,56に導入する高温ガスとして、いずれも図1に示す放射炉1で予め赤外線照射により生成した過熱水蒸気を含む高温ガスを供給するものを示している。しかし、上記各放射炉14,33,56には、それぞれの放射炉内で処理する対象物の性質に応じて図1に示す熱源としての燃焼ガスや工場等の排熱ガスを直接導入して使用することも可能である。
1,14,33,56 放射炉
2,18,19,37,38,57,59 周壁
6 ガス導入室
7,16,34,58 赤外線放射室
8 高放射材
9 水分供給部
12 供給路
23 水分供給部
25 排出口
41 乾燥籠
42 隔壁
46 冷風供給管
61 炭化籠
この発明は主として処理物の乾燥や炭化を行う赤外線炉に関する。
従来赤外線を用いて処理物の乾燥や炭化等を行う赤外線炉として特許文献1~3に示されるものが提案されている。
特許第6244529号公報 特開2017-194177号公報 特開2011-89666号公報
上記特許文献1~3の加熱装置は、いずれもヒーターで加熱した水蒸気を加熱媒体として乾燥や加熱処理に使用するもので、このうち特許文献2,3の装置は水蒸気やヒーターで加熱したセラミック材から遠赤外線放射をさせ、水分を過熱水蒸気化する機構を備えている。
<1>公知技術に関する課題
上記公知文献の加熱装置は、後述するように遠赤外線を含む赤外線の吸収率が高く且つ地球温暖化に最も高い寄与度を持つ水蒸気を加熱媒体として利用している点で加熱効率の高い熱媒体を利用していると言える。ちなみに主な温室効果ガスの地球に対する温室効果への実際の寄与度は、地球温暖化問題におけるメタンや一酸化二窒素(NO)の作用とは別に、後述する(表1参照)ように水蒸気(HO)と二酸化炭素(CO)、雲(水分)が主要な温室効果物質となっている。
しかし上記装置はいずれも赤外線を得る方法としてヒーターを用いる必要があるため、電気のエネルギーコストやエネルギー効率、地球温暖化等の環境問題としても課題が残される他、特に大型化する場合は設備コストの面でも課題がある。
さらに上記装置はいずれも水蒸気と熱水を混合した熱媒体としているため、水分の付着が望ましくない乾燥処理や処理物の加熱には、熱媒体を直接処理物に接触させられないという課題がある。
<2>高温熱媒体となる過熱水蒸気及び二酸化炭素の有効活用の課題-赤外線炉の開発に当って
表1に示すように水蒸気や二酸化炭素,雲(水分)が温室効果物質であるということは、太陽から地表に届く可視光線,赤外線を吸収してこれらの物質が高温化し、大気の保温とともに赤外線を再放射することを意味している。
Figure 2022155602000014
実際、水や二酸化炭素等の三原子分子と称される物質は、図7に示されるように赤外線中の複数の波長領域で高い吸収帯を持っている。全ての物質は絶対零度でない限り、その物質の温度に応じて固有振動を有しおり、電磁波である赤外線が物質に吸収されると、吸収された赤外線の波長と、赤外線を吸収した物質の固有振動の波長が一致すると共振し、その運動エネルギーにより物質の温度が急激に上昇する点に特徴がある。
この発明は上記背景に鑑み、赤外線炉に熱源として燃焼ガスや排熱を利用し水蒸気と赤外線を発生させる。この水蒸気、燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素はそれぞれ特定の波長領域の赤外線を吸収し共振反応を起こし、過熱水蒸気を生成すると同時に、二酸化炭素を含む燃焼排ガスを高温化させる。これを処理物の乾燥や炭化等に使用する赤外線炉を提供するもので、以下念のため過熱水蒸気特性について説明する。
(1)伝熱の種類
熱の伝わり方には、「伝導伝熱」、「対流伝熱」、「放射伝熱」があるが、現在主として利用されているのは、伝導伝熱と対流伝熱である。放射伝熱は、電気を使用する小型の装置が一部で活用されている程度であり大型のものはない。
(2)過熱水蒸気の発生について
i.水は加温していくと飽和蒸気になり沸騰する(1気圧で、100℃である)。更に温度を上げるためには、通常はボイラーで加熱し、蒸気を発生させ、圧力に応じて温度を上げることが出来る。
ii.通常ボイラーでは、いくら加熱しても水蒸気の 温度は、圧力約220気圧で、約370までしか上がらない(臨界圧力・臨界温度と云う)。それ以上に温度を上げようとすれば、特別の装置が必要となる。
iii.本発明に関する過熱水蒸気の発生装置は、噴霧水・飽和蒸気に吸収される率の高い波長の赤外線(熱を高放射材に吸収させて赤外線を放射させる)を照射し吸収させ、その物質の固有振動と共振させて、1気圧で370℃以上の過熱水蒸気を発生させることが出来る。更にそれ以上の温度の過熱水蒸気を発生させることも可能である(図8参照)。
(3)過熱水蒸気の特徴
i.過熱水蒸気は、無色透明のHOガスである。また、熱風乾燥と150℃~300℃の過熱水蒸気の熱容量は、13倍~6.5倍であり、非常に大きい
ii.逆転点温度以上では水の蒸発速度は熱風乾燥より、過熱水蒸気乾燥の方が早い。また過熱水蒸気は、酸素を含まないので無酸素状態で熱処理となる。従って、油分は酸化せず、ダイオキシン等の有効物質の発生もない。
iii.乾燥能力比較
乾燥能力を比較する指標として、気体1mあたりの熱量が重要である。過熱水蒸気と、高温に加熱した空気の持つ1m当たりの熱量比較したものを表2に示している。例えば、気体の温度が150℃で比較した場合は、過熱水蒸気が乾燥高温空気に比べて13倍乾燥能力が高い。
Figure 2022155602000015
(4)過熱水蒸気の利活用例(本発明の装置によれば大型のものまで可能)
i.乾燥・消臭(チップ乾燥・家畜糞の乾燥。過熱水蒸気は酸素を含まないので、ダイオキシン等の発生はない。)
ii.野菜、米糠、おから等の殺菌(秒単位の照射)、乾燥
iii.炭化装置に使用できる。
iv.土・水・空気の浄化
v.有機廃棄物処理(ゴミ処理施設)
上記課題を解決するための本発明の赤外線炉は、第1に外部から水分を含み又は添加した高温ガスを連続的に導入して排出し、内部に上記高温ガスにより加熱されて赤外線を放射し赤外線の放射率の高い高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の放射炉であって、上記高放射材に近接して流動する水分に前記高放射材より放射される赤外線を照射することにより過熱水蒸気を生成させる機構とし、ガス導入室と周壁を高放射材で形成した赤外線放射室とを互に軸線方向に沿った二重の周壁で区画して形成し、ガス導入室に導入した高温ガスにより赤外線放射室の周壁を加熱し、赤外線放射室内に赤外線を放射させる機構としたことを特徴としている。
第2に、高放射材が天然石・土若しくはセラミック材又は上記放射炉の内面を被覆するセラミックウール製の耐熱材よりなることを特徴としている。
に、放射炉内に導入される高温ガスが水蒸気と二酸化炭素の一方又は両方を含む燃焼ガスであることを特徴としている。
に、赤外線放射室の一端に内部で過熱水蒸気を生成するための水分を供給する水分供給部を設け、他方の端部に該赤外線放射室内で生成された過熱水蒸気を次工程に送り出す排出部を設けたことを特徴としている。
に、赤外線放射室内に赤外線照射による低温乾燥が望ましい処理物を収容する筒状の乾燥籠を収容するとともに、該乾燥籠内に冷風を供給する冷風供給管を設けてなることを特徴としている。
に、乾燥籠は赤外線放射室に対して回転可能に軸支され、一端側から投入された処理物が乾燥籠の回転により他方の端部側に搬送されて排出されるコンベア機能を備えてなることを特徴としている。
に、外部から過熱水蒸気を含む高温ガスを導入し、周壁の内側に上記高温ガスにより加熱されて高い効果で赤外線を放射する高放射材で内装した筒状又はトンネル状の放射炉内に、炭化処理を行う処理物を収容する炭化籠を略同心状に配置してなることを特徴としている。
に、放射炉を上下方向に設置し、下端側に高温ガスの導入口と炭化された処理物の取出部を設け、上端側に導入されたガスの排出口と炭化すべき処理物の投入口を設けてなることを特徴としている。
に、放射室内の炭化籠の上方にガス溜りを形成する山形断面の天井壁を設け、天井壁と天井外壁との間に排気空隙を形成したことを特徴としている。
以上のように構成される本発明の加熱炉によれば、次のような効果を奏する。
(1)熱源としての高温ガスは各種燃焼ガスや排熱、排気ガス等が利用できるので、工場やプラント等の排熱の再利用ができるほか、これらの高温ガスに含まれる水蒸気や二酸化炭素が吸収しやすい波長領域の赤外線を放射する高放射材(放射率が大きい材料)を、高温ガスで加熱することにより、赤外線(特に遠赤外線)を放射させる。この赤外線を吸収した水蒸気は固有振動と吸収した赤外線の波長が共振し、過熱水蒸気となり、二酸化炭素もさらに高熱容量ガスとなって高い熱効率の加熱媒体として利用できる利点がある。
特に工場等で排出される燃焼ガスは水分や二酸化炭素を含むので、これらの排熱を効果的に利用できる効果がある。
(2)周壁を高放射材で形成した赤外線放射室を外部から高温ガスで加熱する放射炉によれば、高温ガスから隔離された内部で赤外線を照射させることによって処理物を処理するので、処理物は高温ガスに含まれる有害成分等の影響を直接受けることなく赤外線のみによって加熱されるクリーンな加熱条件で処理できる利点がある。
また加熱処理室内に水分供給して過熱水蒸気を生成排出させて利用することにより、例えば食品の乾燥や加熱処理も表面の加熱損傷や焦げ付きなく無酸素状態での加工が実現できる。
(3)さらに赤外線放射室内に食品原料や医薬品原料等を収容する乾燥籠を挿通して内部に冷風送風をすることにより、乾燥物の内部温度を遠赤外線を照射して水分を表面側に蒸散させ、表面の冷却により湯気として内部の自由水を排風除去できる利点があるほか、これらに含まれる有用成分の破壊や変質、油脂成分の酸化を防止することができる。
(4)また一般に廃棄処理の制約の多い医療廃棄物(例えば防護服,マスク,使用済医療器具,紙オムツ等)も、本発明の赤外線(放射)炉内での炭化処理により、炭化処理自体に燃焼ガス等の有害排気ガスを伴うことなく安全に処理できる。
外線放射炉の構成を示す断面図である。 図1の赤外線(放射)炉からの高温ガスを利用して、他の赤外線炉で過熱水蒸気を発生させる装置の全体図である。 図1の赤外線炉を利用した低温赤外線炉の全体構成図である。 (A)は上記低温赤外線炉の断面図、(B)は同赤外線炉の周壁構造例を示す斜視図である。 図1の赤外線炉を利用した炭化炉の全体構成図である。 (A),(B)は炭化炉の正面断面図と側面断面図である。 (A)は赤外線の波長と透過率(吸収率)を示すグラフ、(B)はこれに対応する電磁波の種類を示すグラフである。 水・過熱水蒸気及び加熱乾燥空気の熱量の関係を示すグラフである。 高放射材(岩石)の赤外線波長ごとの放射率を示すグラフである。 赤外線波長ごとの水層の厚さによる赤外線透過率を示すグラフである。
図1は本発明の赤外線炉の断面図を示し、この発明は高温ガスを導入して過熱水蒸気を発生させ高温加熱媒体として利用するものである。
放射炉1は周壁2が断熱材で形成され、中央が大径で前後が細径に収束して両端部に高温ガスの導入口3と排出口4を備えた筒状又はトンネル状のガス導入室6と、排出口4には細径の筒状又はトンネル状(注:本例では円筒形断面)に形成された赤外線放射室7が接続され、高温ガスの通過路となっている。
ガス導入室6に導入される高温ガスは、LPG,LNG,石油系燃料,木質バイオマス燃料等を燃焼させた例えば300~800℃程度の燃焼ガスからなる高温ガス又は工場やプラントの排熱を利用した高温ガスが使用され、燃焼ガスはボイラー等の排ガスであってもよい。赤外線放射室7も外周壁は高断熱材よりなり、その内部の下側とガス導入室6の排出側内周には加熱によって高い効率で遠赤外線を放射する安山岩質火山礫岩等の天然石(岩石)又はセラミック材等からなる高放射材8が、軸心方向に沿って長手方向に配置されている。この高放射材8によって赤外線放射室7の内側周壁自体を構成してもよい。
また高放射材としては、上記の他高い遠赤外線放射率を有するセラミックウール製の耐熱材を採用することも可能である。
上記高放射材8は赤外線放射室7内を通過する高温ガスの赤外線照射を受けて加熱され、遠赤外線を含む赤外線を放射して、主として高温ガス中の水蒸気や二酸化炭素の固有振動域で共振させて高温化させることにより、含まれる水蒸気を過熱水蒸気として高温化し、二酸化炭素も遠赤外線照射を受けてさらに高熱量の高温ガスを生成する。
熱源として燃焼ガスを用い又はプラント排熱ガス等の高温ガスを用いるので、赤外線放射室7内で水蒸気及び過熱水蒸気を生成するためにガス導入室6には外部から必要量の冷水,温水,水蒸気等の水分を供給する必要があり、このためガス導入室6には水分供給部(給水ノズル)9が設けられている。
赤外線放射室7の下流端(排気側端部)は断熱材からなる蓋部11によって閉じられ、該蓋部11には赤外線放射室7内で高放射材8により高放射材8から照射される赤外線を受けて生成された過熱水蒸気を含む高温ガスを、次の処理工程に排出供給する配管等からなる供給路12が接続されており、この例では300℃~800℃程度の高温ガスは燃焼ガスが直接接触しても差し支えない処理物の高温乾燥機,殺菌・防カビ・炭化等の加熱処理器13に供給されて活用される。
図示する例ではガス導入室6の排出口4近傍の赤外線放射室7の前端側と後端側に、各位置の内部温度を測定する温度センサーT,T,Tがそれぞれ設置されている。ガスがT,~Tに至る過程の温度変化を確認し、ガス導入量の制御等による排出ガスの量や熱量制御等を行うことが可能な機構となっている。上記温度センサーT,T,Tは1000℃程度の温度測定が可能なものが望ましい。
図9は本実施形態に用いた天然の岩石である高放射材(安山岩質火山礫岩)8の赤外線の波長変化と放射率の変化及び水蒸気(水分)と二酸化炭素の吸収波長域さらに上記高放射材8の成分とを示したグラフであり、遠赤外線波長域5.5~7.5μmで水蒸気の、同14~17μmで二酸化炭素の吸収域があり、同時にこれらの領域で両者が高放射率を備えていることがわかる。
図2は上記放射炉1で生成された過熱水蒸気を含む高温ガスを供給路12により次の赤外線炉に供給し、形態の異なる2基の放射炉1,14(赤外線炉)を前後に接続した機構を示している。この例では2基目の放射炉(二次放射炉)14は、共にトンネル状又は筒状(本例では円筒状)断面の周壁18,19を有する内側赤外線放射室16と、外側のガス導入室17とを同一軸線状に重ねて配置しており、赤外線放射室16の周壁18は前記同様の高放射材で、ガス導入室17の周壁は高断熱材で、両周壁間にドーナツ状のガス収容(流通)間隔を介してそれぞれ形成されている
ガス導入室17は赤外線放射室16のドーナツ状外周空間を中心から水平方向の隔壁(図示しない)により上下に分割され(図4(A)「隔壁42」参照)、一端の奥側で上下連通しており、他端側の上下室の一方(下側)は前記赤外線放射室7側からの供給路12と接続され、他方(上側)は排気路22に接続されており、この例ではガス導入室17と赤外線放射室16は、両室のガスが混ざり合わないように別室に分離区画されている。
この機構により供給路12から供給された過熱水蒸気を含む再加熱ガスは、ガス導入室17内の一端(左端)から入り、上下室を略全長に亘って往復して同一端(左端)側から排出される間に、内側の赤外線放射室16の高放射材からなる周壁18の外周に赤外線放射し、周壁18は赤外線を吸収して赤外線放射室16内に遠赤外線を含む赤外線を再放射する。上記ガス導入室17は上下室に分割された例を示したが、区画壁をらせん状に形成し、一端から他端に向けて過熱水蒸気を含む高温ガスを流すことも可能である。
他方、円筒状に形成された赤外線放射室16には、一端(左端)側から水又は水蒸気を噴霧供給する水分供給部(給水ノズル)23が挿入接続して配置されている。ここで供給された水分は、高温ガスによって加熱された赤外線放射室16内を他方の端部(右端)に送られる過程で周壁から遠赤外線を含む赤外線が照射され、高温の過熱水蒸気となって右端の過熱水蒸気の排出口25に接続された放出路24から放出される。
上記放出路24の下流側は、例えば高温の過熱水蒸気のみによって処理物の加熱加工,殺菌,防カビ等の加熱処理を行う処理機26に接続され、ここでは既述のように処理物を無酸素状態の過熱水蒸気のみの高温雰囲気内で加熱処理できる利点がある。ちなみに処理機26側に導入される過熱水蒸気はガス導入室17に導入される高温ガスに比して低温で、100~250℃程度と見込まれる。
尚、図示する赤外線放射室16は、下流側(排気側)の径が上流側(導入側)より小径に絞られて形成されているので、小径部分での水蒸気の遠赤外線照射による加熱効率も高くなるほか、ガス導入室17の排気路22からは、ファンFと排気処理室28とを介して排気筒29に送られる他、又はリターン回路31から放射炉1のガス導入室6に返送され、熱源及び熱媒体として再利用される機構となっている。リターン回路31の末端には、必要に応じて赤外線放射室7で過熱水蒸気を生成するための補給水を注入する水分補給部32を接続して設けても良い。
図3は、遠赤外線を用いて例えば比較的低温(例えば60℃~100℃前後)で処理物を処理する赤外線炉の例を示しているが、図2に示す放射炉14と同様に、放射炉33が中心部の赤外線放射室34と外周側のガス導入室36とを備え、各室34,36は高放射材製の周壁37と断熱材製の周壁38でそれぞれ構成されている。そして前記同様の放射炉1から供給路12を介して赤外線放射室34に高温ガスを送り、室内を往復流動させて遠赤外線放射を含む赤外線照射で赤外線放射室34を加熱し、内部の処理物に赤外線照射処理する点も図2の例と機構としては共通している。
さらにガス導入室36の一端から排気路22,ファン を介して排ガスを排気処理室28に送られ、排ガスはリターン回路31を介して放射炉1に返送される点も前述の例と共通するが、この例では排ガス中の凝集水を分離処理する凝集水処理装置39が、上記排気処理室28に接続されている。
さらに図3に示す例では、円筒形の赤外線放射室34内には同放射室34と同心の円筒形で、図4(A)に示すようにロータリーキルン型の乾燥籠41が同心的に挿通されて回転駆動可能に軸支されている。また図2の例で説明したようにガス導入室36は、中心高さ位置で水平方向の隔壁42により上下2分割され、右端部では上下室が連通し、再加熱ガスが全長にわたって往復流動し、赤外線放射室34に外周側から赤外線照射する機構となっている。
この例においてもガス導入室36をらせん状に形成して赤外線放射室34の周壁37を加熱することが可能である。
上記乾燥籠41の一端(左端)開閉可能な乾燥処理物の投入口43を形成するとともに、内部に乾燥した冷風を供給する乾燥冷風機44が接続されている。この例では乾燥冷風機44と接続されて乾燥籠41内を貫いている冷風供給管46は、乾燥籠41の全長を貫き且つ籠内では全長にわたって冷風を噴出する多孔の噴出孔(図示せず)を有するノズルとして構成しているが、乾燥籠41の左端側に供給すれば足りる。
また赤外線放射室34及び乾燥籠41の他方の端部(右端)には、乾燥処理物を取り出す取出口47と、乾燥処理物から分離された水分(水蒸気等)を含む排ガス(エア)を排気する排気路48の接続部49とが設けられており、排気処理装置51,ファンFを介して排気筒52で、分離された水分を含む排気エアが大気中に放出される機構となっている。
上記低温型赤外線放射炉においては、乾燥籠41によって処理する乾燥処理物は、低温乾燥に適する乾燥野菜や茸等の山菜類,加工食品材料が対象となり、殺菌炉としても利用できる。したがって赤外線放射室34内の温度は100℃以下とし、乾燥籠41内の処理物内の温度は乾燥処理の場合は60℃以下にすることが望ましい。その結果高温による色や味、香り、形態等の品質変化を防止できる。
本例に示す低温型の赤外線炉では、炉内で生成された過熱水蒸気を直接乾燥処理物に当てては使用せず、乾燥処理物内に含まれる水分の赤外線吸収帯波長域に該当する遠赤外線を吸収させ、水の固有振動と共振させて発熱させて表層側の水分を抽出するものである。このように内部の水分を加熱抽出したものを、冷風によって冷却することにより、水分の大半は湯気として冷風と共に排出され、内部の水分も分離除去されて低温乾燥される。
図10は食品加工における電磁波の応用に関し、水の赤外線吸収波長の依存性を示すグラフで、これにより赤外線放射室34内に放射される各波長域で乾燥処理物の表面からの深さに応じた赤外線加熱が行われることを示している。ちなみにこのような加熱により除去される水分は、乾燥処理物に含まれる自由水であり、物質そのものを構成する結合水は含まれない。
図4(B)は高放射材による赤外線放射室34の周壁38の組付構造を示し、この例では円筒状又はトンネル状の籠型に組立てられてボルト54により固定され、軸方向及び周方向に交差するフレーム材53に対し、ブロック状又はタイル状に形成された高放射材を、互の隣接面を密着させて取付固定されており、この構成は図2及び次に述べる炭化炉における加熱処理炉14及び赤外線放射室58にも共通して採用される。
図5,図6は本発明を応用して赤外線照射による処理物の炭化を行う赤外線炉の例を示し、本例の赤外線炉は、例えば病院や福祉施設等から廃棄される紙おむつ,防護服,手袋,マスク,ガーゼその他の医療消耗品等の医療廃棄物のように一般廃棄物や産業廃棄物と区別される特殊な廃棄物や、農作物や食品の廃棄物等、炭化処理に適した処理物を投入して処理するための装置である。
そしてこの例では放射炉1で生成した再加熱ガスを供給路12を介して放射炉56の下端側の導入口55に送り、放射炉56内で処理物の炭化を行うものである。放射炉56は円筒形の縦型炉として構築され、外周壁57を断熱材で形成し、その内側に形成される赤外線放射室58の内側の周壁59は前述した高放射材で形成されている。またこの例では、赤外線放射室58に図1に示す放射炉1からの高温ガスを直接導入しているので、上記各例に示すガス導入室を設けず、赤外線放射室58がガス導入室を兼ねた機構となっている。
赤外線放射室58の内部には、炭化処理物を収納する粗目のエキスパンドメタル等よりなる円筒状の炭化籠61が同心的に設置され、加熱処理室58の格子型の底板62の下部には所定の空間からなる炭化物を落下させ集積させて取り出しを行う回収室を兼ねた取出部63が形成されている。該取出部63には底板62を操作して炭化物を落下回収する操作部65が設けられている。なお、図2,図3で示した高温ガスの導入室17,36の内周壁を高放射材で形成することも可能である。
放射炉56の上部開口端には、内部にガス溜り60を形成する山形断面の天井壁65を設け、該天井壁65と外壁との間に室内と連通する排気空隙64を有する二重断面の蓋66が開閉可能に取付けられ、蓋66の上面中央には筒状の排気スタック(排気口)67が突設されている。上記ガス溜り60により、反射熱により赤外線放射室58内の温度が上昇し、炭化が促進される。また図6(B)に示すように炭化籠61の上端中央にも排気スタック(弁)68付の排気管69が蓋66を貫いて接続されている。
さらに上記炭化籠61と放射炉56の上端側には、外部から処理物を炭化籠61内に投入するダクト状の投入口71が接続されて設置されており、投入口71内には投入された処理物を投入口71の開閉を伴いながら順次送り込む投入操作部72が複数段設けられている。
前記排気スタック68は、投入口71より処理物を投入する際に、内部の高温ガスを排出して温度調節をするもので、他方の排気スタック67を含めた排気系から排出される排ガスは、排気路73を介して排ガス処理装置74を介して臭気除去,結露水分離その他の排ガス処理が行われて大気中に排出される。他方、その途中で高温排ガスは排熱回収装置76内を経由し、ここに給水部77より供給される水又は水蒸気等からなる水が加熱されて高温水として放射炉1に返送されて排熱温が再利用される。
ちなみに排ガス処理装置74では、トリメチルアミンガス及びアンモニウムガスは、それぞれ10分間の処理でいずれも2~3%に除去できる。また取出部63には、設定温度以上の高温時には内部の冷却ができるように、窒素ガス等の冷却ガスを供給する冷媒供給部78が設けられている。
上記のように構成される炭化炉によれば、処理物を高熱量で高温の過熱水蒸気を含む高温ガスをさらに放射炉(二次放射炉)56で赤外線照射により加熱した高温ガスにより、燃焼させることなく炭化処理できるので、処理物の燃焼による有害ガスの環境への負荷が防止できる。
尚、図2,図3に示す例では、赤外線を放射させる放射炉14,33,56に導入する高温ガスとして、いずれも図1に示す放射炉1で予め赤外線照射により生成した過熱水蒸気を含む高温ガスを供給するものを示している。しかし、上記各放射炉14,33,56には、それぞれの放射炉内で処理する対象物の性質に応じて図1に示す熱源としての燃焼ガスや工場等の排熱ガスを直接導入して使用することも可能である。
1,14,33,56 放射炉
2,18,19,37,38,57,59 周壁
6 ガス導入室
7,16,34,58 赤外線放射室
8 高放射材
9 水分供給部
12 供給路
23 水分供給部
25 排出口
41 乾燥籠
42 隔壁
46 冷風供給管
61 炭化籠

Claims (13)

  1. 外部から水分を含み又は添加した高温ガスを連続的に導入して排出し、内部に上記高温ガスにより加熱されて赤外線を放射し赤外線の放射率の高い高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の放射炉であって、上記高放射材に近接して流動する水分に前記高放射材より放射される赤外線を照射することにより過熱水蒸気を生成させる機構とした赤外線炉。
  2. 高放射材が天然石・土若しくはセラミック材又は上記放射炉の内面を被覆するセラミックウール製の耐熱材よりなる請求項1に記載の赤外線炉。
  3. 放射炉のガス導入側に形成されるガス導入室と、ガス排出側に形成され高放射材を配置又は内装した筒状又はトンネル状の赤外線放射室とを備え、該赤外線放射室から排出される高温ガスを次工程に供給する供給路を設け、上記赤外線放射室を通過する高温ガス自体に前記高放射材により赤外線を照射させる機構とした請求項1又は2に記載の赤外線炉。
  4. 放射炉内に導入される高温ガスが水蒸気と二酸化炭素の一方又は両方を含む燃焼ガスである請求項1~3のいずれかに記載の赤外線炉。
  5. 放射炉内で高温ガスにより水蒸気を生成する水分を供給する水分供給部を設けてなる請求項1~4のいずれかに記載の赤外線炉。
  6. 水分供給部をガス導入室に開口させて設けた請求項5に記載の赤外線炉。
  7. ガス導入室と周壁を高放射材で形成した赤外線放射室とを互に軸線方向に沿った二重の周壁で区画して形成し、ガス導入室に導入した高温ガスにより赤外線放射室の周壁を加熱し、赤外線放射室内に赤外線を放射させる機構とした請求項1又は請求項4~5のいずれかに記載の赤外線炉。
  8. 赤外線放射室の一端に内部で過熱水蒸気を生成するための水分を供給する噴水部を設け、他方の端部に該赤外線放射室内で生成された過熱水蒸気を次工程に送り出す排出部を設けた請求項7に記載の赤外線炉。
  9. 赤外線放射室内に赤外線照射による低温乾燥が望ましい処理物を収容する筒状の乾燥籠を収容するとともに、該乾燥籠内に冷風を供給する冷風供給管を設けてなる請求項7に記載の赤外線炉。
  10. 乾燥籠は赤外線放射室に対して回転可能に軸支され、一端側から投入された処理物が乾燥籠の回転により他方の端部側に搬送されて排出されるコンベア機能を備えてなる請求項9に記載の赤外線炉。
  11. 外部から過熱水蒸気を含む高温ガスを導入し、周壁の内側に上記高温ガスにより加熱されて高い効率で赤外線を放射する高放射材で内装した筒状又はトンネル状の放射炉内に、炭化処理を行う処理物を収容する炭化籠を略同心状に配置してなる赤外線炉。
  12. 放射炉を上下方向に設置し、下端側に高温ガスの導入口と炭化された処理物の取出部とを設け、上端側に導入されたガスの排気口と炭化すべき処理物の投入口を設けてなる請求項11に記載の赤外線炉。
  13. 放射室内の炭化籠の上方にガス溜りを形成する山形断面の天井壁を設け、天井壁と天井外壁との間に排気空隙を形成した請求項12に記載の赤外線炉。
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