JP2022155560A - スガマデクスの光分解抑制方法 - Google Patents

スガマデクスの光分解抑制方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物の光分解を抑制するための方法、及び、当該方法を利用して製造された、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が容器に収容された医薬製剤を提供することを課題とする。【解決手段】スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容されている、容器収容医薬製剤、及びスガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である容器に収容する、スガマデクスの光分解抑制方法。【選択図】なし

Description

本発明は、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が容器に収容された医薬製剤に関する。
スガマデクスナトリウム(octakis(6-S-(2-carboxyethyl)-6-thio)cyclomaltooctaose octasodium salt:CAS No. 343306-79-6)は、γ-シクロデキストリンの誘導体であり、臨床上、筋弛緩回復剤の有効成分として麻酔科領域で使用されている。スガマデクスナトリウムは、非脱分極性麻酔用筋弛緩剤に対する拮抗剤であり、ロクロニウム臭化物又はベクロニウム臭化物による筋弛緩状態から回復させる効果を奏する(非特許文献1)。
スガマデクスナトリウムは、一般的に、腹部又は胸部手術において、患者の麻酔状態を確認しながら適宜投与される注射剤である。使用時に容器中の薬液が視認できることが重要であり、通常、無色透明なバイアルに収容されている。ただし、スガマデクスナトリウムは光安定性が低いため、当該透明バイアルは、光を透過させない紙箱に収容され、遮光下で室温保存される(非特許文献1)。
スガマデクスナトリウムと同様に光安定性が低い医薬製剤については、遮光性の外包容器に収容する以外にも、褐色や金属製の容器に直接収容される場合もある。しかし、遮光性容器に収容された場合、外部から薬液や異物の有無を確認することが困難な場合もあり、臨床上は使用し難い。そこで、光安定性と外部からの視認性の両方を満たすために、例えば、特許文献1には、紫外線で分解されやすいトラニラストを、波長350~450nmの光線を遮断する遮光手段が施されている透明包装体に入れてなる透明包装体入り医薬製剤とすることが開示されている。
特開2016-65088号公報
MSD株式会社、「筋弛緩回復剤ブリディオン(登録商標)静注200mg スガマデクスナトリウム注射液 医薬品インタビューフォーム」、2019年5月改訂(改訂第9版)
スガマデクスは、手術中、患者の状態に応じて必要な時に速やかに投与できるよう、手術室に準備される。そのため、外包容器から取り出された後、投与までの間、スガマデクスは手術室の照明に曝されている。しかし、患者へ投与されるスガマデクスはできるだけ光分解されていないものが望ましいことは当然であり、実際に患者に投与される直前まで、スガマデクスの光による分解は抑制されることが好ましい。
本発明は、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物の光分解を抑制するための方法、及び、当該方法を利用して製造された、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が容器に収容された医薬製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、スガマデクスを、波長400nm以下の光をカットした条件下、波長500nm以下の光をカットした条件下、全ての波長をカットしない条件下で曝光させて、保存安定性を調べたところ、波長500nm以下の光をカットした条件下では、内容物の視認性が損なわれることなく、ほとんど分解物が観測されず、非常に保存安定性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
[1] スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である容器に収容されている、容器収容医薬製剤。
[2] 前記容器が、内部に収容されている前記医薬用組成物を、前記容器の外側からヒトが目視可能である、前記[1]の容器収容医薬製剤。
[3] 前記容器が、波長300nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である、前記[1]又は[2]の容器収容医薬製剤。
[4] 前記有効成分がスガマデクスナトリウムである、前記[1]~[3]のいずれかの容器収容医薬製剤。
[5] スガマデクスの純度が97%以上である、前記[1]~[4]のいずれかの容器収容医薬製剤。
[6] スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容する、容器収容医薬製剤の製造方法。
[7] 前記容器収容医薬製剤に、総照度1,200,000lux・h、総近紫外照射エネルギー280W・h/mの光を照射した後に、前記医薬用組成物中のスガマデスクのジスルホキシド体の含有率(%)が0.4%以下に抑えられている、前記[6]の容器収容医薬製剤の製造方法。
[8] スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容する、スガマデクスの光分解抑制方法。
[9] スガマデクスのジスルホキシド体の生成を抑制する、前記[8]のスガマデクスの光分解抑制方法。
[10] スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容して、スガマデクスのジスルホキシド体の生成を抑制する、方法。
本発明に係る容器収容医薬製剤は、スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、その分解に寄与する400nm以上500nm以下の波長の光がカットされた容器に直接収容されているため、遮光性の外包容器から開封された状態で手術室に置かれていた場合でも、手術中に照明による光分解を抑制することができる。
実施例1において、白紙に黒字で「スガマデクス」と印字された紙を、UVcut 500で包装された透明ガラス容器の奥に設置し、当該ガラス容器越しにカメラで撮影した画像である。 実施例1において、光照射前のフィルム包装なしのスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラムである。 実施例1において、光照射後のUVcut 400のフィルム包装有りのスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラムである。 実施例1において、光照射後のUVcut 500のフィルム包装有りのスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラムである。 実施例1において、光照射後のフィルム包装なしのスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラムである。 実施例2において、光照射後の完全遮光したスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラム(A)、及び、光照射後のフィルム包装なしのスガマデクス充填済ガラス容器内のスガマデクス溶液のクロマトグラム(B)である。 実施例2において、図6(A)のクロマトグラムと図6(B)のクロマトグラムを比較し、光照射によりフィルム包装なしのスガマデクス充填済ガラス容器内で最も増加したピークのみを分取したクロマトグラムである。 実施例2において、スガマデクス標準品の質量分析の結果(A)、及び、図7のクロマトグラムにおける18.288分のピークの化合物の質量分析の結果(B)を、示した図である。
本発明に係る容器収容医薬製剤は、スガマデクス又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である容器に収容されることを特徴とする。スガマデクスの薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等の無機塩が挙げられる。本発明に係る容器収容医薬製剤に収容される医薬用組成物(以下、「本発明に係る医薬用組成物」ということがある)の有効成分としては、スガマデクスナトリウムが特に好ましい。スガマデクス又はその塩は、例えば、特表2019-510128号公報、特表2019-526625号公報等に記載されている方法で合成することができる。
本発明に係る医薬用組成物は、有効成分であるスガマデクス又はその薬理学的に許容される塩(以下、スガマデクス等)に、製剤上の必要に応じて、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、矯味矯臭剤、着色剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動化剤等を配合して製剤化される。これらの添加剤は、医薬品の製造において通常使用される各種の添加剤の中から適宜選択して用いることができる。また、当該医薬用組成物は、本発明に係るスガマデクス等以外の他の有効成分を含有していてもよい。
本発明に係る医薬組成物は、静脈注射等が可能な液状組成物であり、注射剤の一般的な製法により、製造することができる。例えば、有効成分であるスガマデクス等とその他の添加剤とを注射用水に混合して製造することができる。製造された医薬組成物は、バイアルやシリンジ等の容器に充填した後に高温・高圧下で滅菌してもよく、ろ過滅菌により無菌化した後に、バイアルやシリンジ等の容器に充填してもよい。
本発明に係る医薬用組成物が収容される容器は、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。波長400nm以上500nm以下の波長が、スガマデクス等の光分解の主な原因となる光であり、当該範囲内の波長の光を遮断することにより、スガマデクス等の光安定性が顕著に改善される。当該容器としては、特に、波長300nm以上500nm以下の平均光透過率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明に係る医薬用組成物が収容される容器は、さらに、内部に収容されている医薬用組成物を、前記容器の外側からヒトが目視可能である容器が好ましい。本発明に係る医薬用組成物を、容器の外部から視認できることにより、薬液や異物の有無等を、容易に調べることができる。当該容器としては、波長500nm以上700nm以下の範囲の光の平均光透過率が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、よりさらに好ましくは90%以上であるものが好ましい。また、本発明に係る医薬用組成物が収容される容器は、内部に収容されている医薬用組成物が容器外部から視認可能であれば、無色透明であってもよく、着色されていてもよい。例えば、褐色等に着色された透明ガラスからなり、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下のガラス容器は、本発明に係る医薬用組成物が収容される容器として使用できる。
このような容器としては、例えば、無色透明容器の外表面を、波長400nm以上500nm以下の光はカットするが、500nm超の光はカットしない可撓性樹脂フィルム等で被覆した容器や、波長300nm以上500nm以下の光はカットするが、500nm超の光はカットしない可撓性樹脂フィルム等で被覆した容器が挙げられる。その他、波長400nm以上500nm以下、好ましくは波長300nm以上500nm以下の光を充分にカット可能な透明樹脂組成物から成型された容器であってもよい。可撓性樹脂フィルム等による容器外表面の被覆や、透明樹脂組成物からの成型は、常法により行うことができる。
後記実施例1に示すように、スガマデクスは光照射により、様々な分解物が生じる。これに対して、本発明に係る医薬用組成物は、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容されているため、スガマデクスの光分解が顕著に抑制されている。本発明に係る医薬用組成物は、スガマデクスの純度が、95%以上であり、好ましくは96%以上であり、より好ましくは97%以上である。
スガマデクスの光照射により生じる主たる分解物の1つが、スガマデスクのジスルホキシド体である。スガマデスクのジスルホキシド体は、波長400nm以上500nm以下の光によって生じやすい。このため、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容されている本発明に係る医薬用組成物は、スガマデスクのジスルホキシド体の生成が顕著に抑制されている。例えば、本発明に係る医薬用組成物は、総照度1,200,000lux・h、総近紫外照射エネルギー280W・h/mの光を照射した後でも、スガマデスクのジスルホキシド体の含有率(%)が0.4%以下にまで抑えられている。
なお、本発明及び本願明細書において、「スガマデクスの光分解物」とは、スガマデクスに光を照射した場合にスガマデクスが化学変化によりスガマデクス以外の物質に改変されて得られる物質を意味する。すなわち、「スガマデクスの光分解物」は、スガマデクスよりも分子量が小さい物質だけではなく、スガマデクスよりも分子量が大きい物質も含む。
医薬組成物中のスガマデクスの純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、得られたクロマトグラムに基づき、標準溶液を用いた検量線法で求めることができる。HPLCは、オクタデシルシリル化シリカゲルを充填したカラムを使用し、移動相として、リン酸緩衝液/メタノール/アセトニトリルを用いて実施することができる。スガマデクスの純度(%)は、後記実施例に記載の方法で求めることができる。
本発明に係る医薬用組成物が収容される容器の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、注射剤、スプレー剤等が一般的に収容されている容器の中から適宜選択して用いることができる。当該容器としては、アンプル、バイアル、シリンジ、カートリッジ等が挙げられる。
本発明に係る容器収容医薬製剤は、遮光性の外包容器に収容されていてもよい。当該遮光性の外包容器としては、紙製容器、アルミ製の包装袋等が挙げられる。
本発明に係る容器収容医薬製剤は、哺乳動物に投与されるものであることが好ましく、ヒトや、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、サル、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、ロバ、イヌ、ネコ等の家畜や実験動物に投与されるものであることがより好ましく、ヒトに投与されるものであることがさらに好ましい。
本発明に係る容器収容医薬製剤は、主に、麻酔科領域で、筋弛緩剤を投与された患者に投与される。その投与量は、スガマデクスによる筋弛緩回復作用を奏するために充分な量であればよく、投与対象の生物種、性別、年齢、体重、使用された筋弛緩剤の種類や筋弛緩状態等によって異なる。例えば、成人(体重60kgとして)に対しては、スガマデクスの投与量が2~16mg/kg(体重)となるように投与することができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
滅菌済スガマデクスナトリウムを収容した透明ガラス容器(スガマデクス充填済ガラス容器)を、500nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルム又は400nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムで包装した後、光照射して、容器内のスガマデクスの光分解を調べた。対照として、可撓性樹脂フィルムで包装せずにスガマデクス充填済ガラス容器についても同様に、光照射し、スガマデクスの光分解を調べた。
(1)薬液の調製
スガマデクスナトリウムを日局注射用水グレードの水に溶かし、塩酸溶液、必要に応じて水酸化ナトリウム溶液を適量添加し、pHを7~8に調整し、スガマデクスとして100mg/mLの水溶液を調製した。
(2)無菌化
前記(1)で調製したスガマデクス溶液を、濾過滅菌又は高圧蒸気滅菌にて無菌化した。
(濾過滅菌の場合)
前記(1)で調製したスガマデクス溶液を、孔径0.22μm、ポリエーテルスルホン材質の濾過フィルター(ザルトリウス社製)を用いて無菌濾過した。濾過された溶液は、無菌環境下でガラス容器に充填した。
(高圧蒸気滅菌の場合)
前記(1)で調製したスガマデクス溶液を、孔径0.22μm、ポリエーテルスルホン材質の濾過フィルター(ザルトリウス社製)を用いて濾過した。濾過された溶液をガラス容器に充填した後、高圧蒸気滅菌機にて品温121.1℃、15分間を担保する条件で、滅菌した。
(3)遮光処理
スガマデクス充填済ガラス容器を12本準備し、このうち3本を500nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムで包装し、3本を400nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムで包装した。残る6本は、フィルムによる包装をせず、そのまま以降の実験に用いた。
500nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムとして、500nmまでの光を98%カットする橙色の透明(半透明)の可撓性樹脂フィルム「カポラUVカットフィルム500」(メイワパックス社製)(以下、「UVcut 500」)を用い、400nmまでの光をカットする無色透明の可撓性樹脂フィルムとして、400nmまでの光を98%カットする可撓性樹脂フィルム「カポラUVカットフィルム400」(メイワパックス社製)(以下、「UVcut 400」)を用いた。どちらのフィルムで包装したスガマデクス充填済ガラス容器も、充填されている薬液が、容器の外側から目視で確認することができた。図1に、白紙に黒字で「スガマデクス」と印字された紙を、UVcut 500で包装された透明ガラス容器の奥に設置し、当該ガラス容器越しにカメラで撮影した画像を示す。当該画像が示すように、UVcut 500で包装した容器は、容器内部を目視で確認でき、内容物の視認性が良好であった。
(4)光照射
前記(3)の後、これらのスガマデクス充填済ガラス容器のうち、フィルム包装をしなかった6本のうちの3本を除いた全てに対して、光照射を行った。光照射は、ICH Q1Bガイドライン(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に準じ、総照度1,200,000lux・h、総近紫外照射エネルギーが280W・h/m、保管温度及び湿度はなりゆきで、行った。
(5)スガマデクスの純度の測定
それぞれのスガマデクス充填済ガラス容器(サンプル)について、内容物をHPLCで定量的に分析した。HPLCは、下記の条件で行った。なお、供試した試料溶液としては、サンプルを20倍希釈した液(スガマデクスとして5mg/mL)を用いた。
(HPLC)
検出器:紫外吸光光度計(210nm)
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル(YMC Pack Pro C18、3μm、4.6×250mm)
カラム温度:40℃
移動相A:10mM リン酸緩衝液(pH2)
移動相B:メタノール/アセトニトリル(95:5(v/v))
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表1に記載の通りに変えて濃度勾配制御した。
移動相の流量:0.95mL/分
Figure 2022155560000001
HPLCにより得られたクロマトグラムに基づき、スガマデクスの純度を、標準溶液を用いた検量線法により求めた。標準溶液は、各サンプルの試料溶液を1000倍希釈して調製した溶液(スガマデクスとして0.005mg/mL、試料溶液の0.1%濃度)とした。スガマデクスの純度は、下記式により算出した。なお、クロマトグラム中、スガマデクスのピークは、スガマデクスナトリウムの標品を用いて同定した。
[スガマデクスの純度(%)]=100-[各サンプルのクロマトグラムのスガマデクスを除く全ピークのピーク面積の総和]/[標準溶液のスガマデクスのピーク面積]×100/1000
各サンプルのクロマトグラムを図2~5に示す。図2は、光照射前のサンプル、図3は、UVcut 400のフィルム包装有りのサンプルを光照射したもの、図4は、UVcut 500のフィルム包装有りのサンプルを光照射したもの、図5は、フィルム包装無しのサンプルを光照射したものの結果である。図2~5の各図において、(A)は標準溶液のクロマトグラムであり、(B)は試料溶液のクロマトグラムである。さらに、各クロマトグラムのピークとその面積の測定結果を表2~9に示す。
Figure 2022155560000002
Figure 2022155560000003
Figure 2022155560000004
Figure 2022155560000005
Figure 2022155560000006
Figure 2022155560000007
Figure 2022155560000008
Figure 2022155560000009
光照射前のサンプルと、光照射後のフィルム包装をしていないサンプルのクロマトグラムを比較したところ、曝光前には検出されず、曝光後に増加しているピークが多数検出された。光照射後のサンプルのクロマトグラムのうち、光照射前のサンプルのクロマトグラムでは検出されていないピークと、光照射前のサンプルのクロマトグラムよりも大きくなったピークは、スガマデクスナトリウムの光分解の生成物のピークと推定された。光照射前及び光照射後のサンプルのクロマトグラムの結果から、スガマデクスが光照射により分解されたことが確認された。
各サンプル(n=3)について、スガマデクス以外の物質の総量の割合(%)と、スガマデクスの純度(%)の測定結果を表10に示す。
Figure 2022155560000010
表10に示すように、フィルムで包装していないサンプルでは、光照射によりスガマデクス以外の物質の総量が、光照射前の2.14%から5.12%にまで増大していた。これに対して、フィルム包装したサンプルでは、スガマデクス以外の物質の総量の増大が抑えられており、スガマデクスの残存率が高かった。特に、UVcut 400のフィルム包装有りのスガマデクス充填済ガラス容器よりも、UVcut 500のフィルム包装有りのスガマデクス充填済ガラス容器のほうが、スガマデクスの純度が高く、光分解生成物の増加を抑制する効果が顕著に高かった。これらの結果から、400~500nmの波長の光が、スガマデクスの品質変化への寄与が大きいことが示唆された。
[実施例2]
光照射により生成されるスガマデクスの分解物のうち、主要な物質の同定を試みた。
具体的には、まず、実施例1と同様にしてスガマデクス充填済ガラス容器を2本製造し、このうち1本を紙製箱の中に収容し、さらにアルミニウムホイルで覆って完全遮光した状態とし、残る1本はそのままの状態として、光照射実験を行い、光照射後の内容物をHPLCで定量的に分析した。光照射実験及びHPLCは、実施例1と同様にして行った。
各サンプルのクロマトグラムを図6に示す。図6(A)は、完全遮光したサンプルを光照射したもの、図6(B)は、フィルム包装なしのサンプルを光照射したものの結果である。図7は、光照射により、フィルム包装なしのサンプルにおいて最も増加した類縁物質を分取したピークであり、18.288分にピークが確認されている。
図7の18.288分のピークの化合物(スガマデクスの光分解物α)について、質量分析を行い、スガマデクス標準品の質量分析結果と比較した。スガマデクス標準品の質量分析の結果を図8(A)に、図7のクロマトグラムにおける18.288分のピークの化合物の質量分析の結果を図8(B)に示す。質量分析の結果、スガマデクス標準品の質量は2000.3924であり、スガマデクスの光分解物αの質量は2032.3846であった。
スガマデクスの光分解物αは、スガマデクスに比べて分子量が32増加していたことから、スガマデクスに2個酸素原子が結合した化合物(スガマデクスのジスルフィド体)であると推察された。
次いで、このスガマデクスのジスルフィド体が、500nmまでの光をカットした状態と400nmまでの光をカットした状態で光照射した場合にどの程度まで生成が抑制されるかを調べた。
具体的には、まず、実施例1と同様にしてスガマデクス充填済ガラス容器を9本製造し、このうち3本を500nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムで包装し、3本を400nmまでの光をカットする可撓性樹脂フィルムで包装した。残る3本は、フィルムによる包装をせず、そのまま以降の実験に用いた。
次いで、これら9本のスガマデクス充填済ガラス容器に対して、実施例1と同様にして、光照射実験を行い、光照射後の内容物をHPLCで定量的に分析した。各サンプル(n=3)について、このHPLCで得られたクロマトグラムから、実施例1と同様にして、スガマデクス以外の物質の総量の割合(%)と、スガマデクスの純度(%)を測定した。さらに、当該クロマトグラムから、スガマデクスのジスルフィド体のピーク面積結果を得て、スガマデクスのジスルフィド体の割合(%)を求めた。測定結果を表11に示す。
[スガマデクスのジスルフィド体の割合(%)]=[スガマデクスのジスルフィド体のピークのピーク面積]/[標準溶液のスガマデクスのピーク面積]×100/1000
Figure 2022155560000011
表11に示すように、スガマデクスのジスルフィド体は、400nmまでの光をカットしたサンプルでは、フィルム包装なしのサンプルの半分程度は生成されてしまっていたのに対して、500nmまでの光をカットしたサンプルではほとんど生成されていなかった。これらの結果から、スガマデクスの光分解を抑制するためには、波長400nm以上500nm以下の波長の光を遮断することが重要であることがわかった。

Claims (10)

  1. スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物が、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である容器に収容されている、容器収容医薬製剤。
  2. 前記容器が、内部に収容されている前記医薬用組成物を、前記容器の外側からヒトが目視可能である、請求項1に記載の容器収容医薬製剤。
  3. 前記容器が、波長300nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下である、請求項1又は2に記載の容器収容医薬製剤。
  4. 前記有効成分がスガマデクスナトリウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の容器収容医薬製剤。
  5. スガマデクスの純度が97%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の容器収容医薬製剤。
  6. スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容する、容器収容医薬製剤の製造方法。
  7. 前記容器収容医薬製剤に、総照度1,200,000lux・h、総近紫外照射エネルギー280W・h/mの光を照射した後に、前記医薬用組成物中のスガマデスクのジスルホキシド体の含有率(%)が0.4%以下に抑えられている、請求項6に記載の容器収容医薬製剤の製造方法。
  8. スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容する、スガマデクスの光分解抑制方法。
  9. スガマデクスのジスルホキシド体の生成を抑制する、請求項8に記載のスガマデクスの光分解抑制方法。
  10. スガマデクスを有効成分とする医薬用組成物を、波長400nm以上500nm以下の平均光透過率が10%以下の容器に収容して、スガマデクスのジスルホキシド体の生成を抑制する、方法。
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