JP2022152944A - 艶消物品 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。
表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、艶消物品、
を提供する。
また、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値である。例えば、とある数値範囲について「A~B」及び「C~D」と記載されている場合、「A~D」、「C~B」といった数値範囲も含まれる。
本実施形態の艶消物品は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、ことを特徴とする物品である。
艶消層は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される層である。表面に不規則なシワによる凹凸形状を有することで、艶消効果及び質感が発現する。この場合、優れた艶消効果及び質感を獲得するには、艶消物品の全面にわたり均一に艶消効果が発現し、部分的な艶のムラが低減される、安定的な艶消効果の視認性(以下、単に「安定的な艶消効果の視認性」といった表現、これに準ずる表現を用いる場合がある。)とともに、艶消物品の全面にわたりシワが安定して形成することによる面状態の均一性(「質感」とも称する。)を獲得することが肝要である。
本実施形態の艶消物品においては、艶消層が有するマルテンス硬度を200N/mm2以下という特定の範囲内とすることにより、艶消層の表面にシワが形成しやすくなり、優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものとなり得る。
艶消層は、上記特定のマルテンス硬度を有することにより表面の不規則なシワが形成し、シワにより発現する凹凸形状に起因する光拡散効果により、優れた艶消効果の視認性及び質感を発現する層である。特に、艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する形態においては、当該シワにより、艶消層に優れた艶消効果の視認性及び質感を発現するものである。
ここで、「シワが形成する」ことは、より具体的には、「シワ」の形状及びその幾何学的特性値(シワが有する凹凸形状における個々の突起部(凸部)の長さ、幅及びこれらの比、また例えば、Rz(最大高さ)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Ra(算術平均粗さ)、Ssk(スキューネス)、Sku(クルトシス)等の統計的指標、また面内分布(分散σ)等の各種の数値及び指標が、艶消層が有するマルテンス硬度を上記特定の範囲内とすることにより、上記特定の範囲外となる場合に比べて収束することを意味する。
本実施形態において、より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。
また「蛇行」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分(以下、「反転部分」とも称する。)を、少なくとも2箇所以上有し、線条の凸部3をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する当該2箇所において交互に線条の凸部3の延在方向が逆向きに反転部分する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
艶消物品において、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状及びその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であれば、不規則なシワを有することによる艶消効果の視認性及び質感は得られるが、いずれもが不規則であることが好ましい。艶消物品は、不規則なシワを有することにより、その艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
シワが形成する箇所は、艶消物品の表面であれば特に制限はなく、例えば後述する絵柄に応じた箇所(当該絵柄上)だけに限らず、当該表面の少なくとも一部であれば、シワの形成による艶消効果の視認性及び質感は発現する。例えば、後述する絵柄層を有し、かつ一部に不規則なシワが形成する場合、シワは絵柄層の絵柄に応じた箇所(例えば絵柄上)に形成すると、当該絵柄が周囲に比べてより艶消された箇所として視認されるため、意匠性の向上を図ることができる。
ここで、凸部の上記寸法は、本実施形態の艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部(突起部)、すなわち合計100の凸部の平均値である。また、図1に示されるように、1の凸部(突起部)においてその幅は同じではなく広狭があるため、1の凸部(突起部)の幅は、当該1の凸部(突起部)における任意の5箇所の幅の平均値とする。凸部(突起部)の高さについても同様とする。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
ここで、凸部の占有割合は、艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の占有割合の平均値である。
ここで、艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部及び凹部(すなわち合計100の凸部及び凹部)について、その80%以上が上記の条件を満たすものであることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上である。また、本明細書における「略同一」の「略」は、概ね同じであることを意味し、枝分かれすることなく、方向の場合は±3°以内の違いを意味し、幅の場合は±5%以内の違いを意味する。
当該凸部の数は、艶消物品の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の数の平均値である。
凹部の形状としては、例えば図2の2aのように鋭角状のものでもよいし、また2bのように半円又は半楕円状のものであってもよく、これらの組合せであってもよい。また一つの凸部が一部に凹部を有する、図2の2cのような形状であってもよい。
他方、凸部の形状としては、図2の3a、3bのように幅の広狭はあるものの、半円又は半楕円の形状を呈する。
本明細書において、艶消層の厚さは、艶消物品の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
艶消層が部分的に設けられるものである場合、本実施形態の艶消物品は実質的に艶消層以外の層として、後述する基材を好ましく有する。
本実施形態の艶消物品において、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下であることを要する。マルテンス硬度が200N/mm2を超えると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しにくくなるため、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られない。
艶消層のマルテンス硬度は、小さければ小さいほど、60°グロス値を低減させることが可能であり、好ましくは190N/mm2以下、より好ましくは180N/mm2以下、更に好ましくは175N/mm2以下、より更に好ましくは160N/mm2以下、特に好ましくは140N/mm2以下であり、最も好ましくは50N/mm2以下である。また下限については特に制限はなく、艶消層に要求される機械的強度、艶消層を構成する樹脂自体の特性から、通常1N/mm2以上である。艶消層のマルテンス硬度が上記範囲内であると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しやすくなるため、より優れた艶消効果の視認性及び質感が得られる。
本実施形態の艶消物品において、艶消層には、シワ形成安定剤を含有させることができる。艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とすることによる不規則なシワの形成を促進し、より安定させることができるため、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。また、後述するように、シワ形成安定剤を用いることにより、艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内に調整しやすくなる。
他方、シワ形成安定剤は、粒子それ自体による光線の反射及び屈折による光拡散が艶消効果の視認性を発現するのではなく、艶消層のマルテンス硬度を所定範囲とすることにより発現する、不規則なシワの形成をより安定させるものである。すなわち、シワ形成安定剤は、艶消層のマルテンス硬度を所定範囲に調整しやすくするという性状を有しており、結果として艶消層の不規則なシワの形成を促進し、より安定させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくするという性能を有するものである、ともいえる。
よって、本実施形態においてシワ形成安定剤が用いられた場合、このシワ形成安定剤は、「艶消剤」とは機能の面で異なるものである。
G60° AW(C)<G60° AM(C)
これは、本実施形態の艶消物品において、シワの形成の安定により発現する艶消効果の視認性及び質感は、あくまで主に艶消層のマルテンス硬度によるものであり、シワ形成安定剤は、シワの形成を促進し、より安定させるために用いられることによるもの、ともいえる。
なお、本願明細書において「艶消剤」は、既述のように粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現する観点から、具体的には当該艶消剤が含まれ得る層、すなわち艶消層の厚さの100%超及び30μm超のいずれか小さい方を下限とする平均粒子径を有する粒子を意味する。
有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。
また、これと同様の観点から、シワ形成安定剤2の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、上限として好ましくは900nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
本明細書において、シワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
よって、艶消物品は、実質的に艶消剤を含まないにも関わらず、艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とすることにより、表面にシワが形成することにより、またさらにシワ形成安定剤を用いて表面のシワの形成を促進させることにより、艶消剤を用いた場合に比べてより優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなっている、といえる。
一般に、「艶消剤」等の粒子を含む樹脂層表面が他の物体と接触し、擦られた場合、表面近傍の粒子が脱落する傾向がある。従って、もっぱら「艶消剤」の添加によって層表面の艶を低下させる仕様である場合、かかる粒子の脱落によって、他の物体との接触、摩擦時に艶変化を生じることになる。かかる機構による艶変化は、艶消剤の含有量の多い低艶仕様であるほど顕著となってくる。特に、60°グロス値G60が5.0以下の表面を「艶消剤」の添加により実現する場合は、樹脂100質量部に対して、(樹脂と艶消剤の種類との分散形態いかんにもよるが、)大体50質量部程度以上の添加が必要になり、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤の脱落による艶変化は大きなものとなる。
本実施形態の艶消物品における艶消層においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、60°グロス値G60が5.0以下の表面を艶消剤添加により実現する場合でも、樹脂100質量部に対するシワ形成安定剤の含有量は3.0質量部程度ですむこととなる。例えば、本発明の実施例においては、シワ形成安定剤の総含有量が最大3質量部で60°グロス値G60が5.0以下、さらには3.7以下という低艶を実現している。なお、後述するが、本明細書において60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うこととする。
従って、艶消物品においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、同じ低艶表面を実現する場合、特に60°グロス値G60が10以下、更には5.0以下を実現する場合において、従来の艶消物品に比べて、粒子含有量が大幅に低減されるため、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤脱落に起因する艶の変化は少ないものとなる。
艶消層を形成する樹脂としては、硬化することにより硬化物となり艶消層を構成する樹脂であり、また艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内とし得る樹脂であればよい。
このような樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。艶消層は、艶消物品の最表面に設けられ得る層であるため、シワを形成しやすい樹脂であることの他、艶消物品として使用性向上の観点から、耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性、また加工特性を発現しやすい樹脂であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂はこれらの観点から好ましい樹脂である。特に艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する場合には、本実施形態の艶消物品は、例えば上記のシワ形成安定剤のような粒子を用いる場合であっても、その使用量が極めて少ないため、その表面特性として、艶消層を形成する樹脂の性能がより直接的に発揮されることとなる。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート系モノマーは、電離放射線硬化性官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、電離放射線硬化性樹脂を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、いずれを用いることもできる。
多官能モノマーを用いる場合、官能基数は2以上が好ましく、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
また、2種以上の多官能モノマーを用いる場合、官能基数2のモノマーと、官能基数4のモノマーと、を組み合わせることが最も好ましい。また、この場合、単官能モノマー及び多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
重合性モノマー及び重合性オリゴマーを採用する場合、重合性モノマーと重合性オリゴマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは25質量部以上であり、上限として好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは35質量部以下である。重合性オリゴマーの含有量が上記範囲内であると、艶消層のマルテンス硬度が調整しやすく、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくすることができ、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させることもできる。
また、これと同様の観点から、艶消層を形成する樹脂は、単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーを含むことが好ましく、単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーである、すなわち単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーを併用することが好ましい。
これと同様の観点から、単官能モノマーを用いることも好ましい。この場合の単官能モノマーの含有量は、樹脂100質量部に対して好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上であり、上限として好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。
艶消層は、上記樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により構成される。本実施形態で用いられる樹脂組成物は、上記樹脂、また必要に応じて用いられるシワ形成安定剤の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、化粧シートに汎用される紫外線吸収剤を特に制限なく用いることができ、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としても、化粧シートに汎用される光安定剤を特に制限なく用いることができ、例えばピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
艶消物品は、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する物品であり、60°グロス値が5.0以下となる。本明細書において「艶消」は、光沢を視認しにくいことを意味し、物品の色調、柄等によりかわるため一概にはいえないが、例えば60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うものとする。
これまで、例えば黒色その他暗色(「暗色」とは、明度が低く、例えばJIS Z8781-4:2013に準拠して測定されるCIE(国際照明委員会)L*a*b*表色系におけるL*値(以下、単に「L*値」と称することがある。)が、通常40以下程度、好ましくは30以下であることを意味する。)を呈する艶消物品では、艶消剤を用いても60°グロス値が20.0以下、好ましくは10.0以下という優れた艶消効果の視認性を得るのは可能ではあるものの、艶消剤を多く使用することから、層形成時のスジ、ムラが発生するため容易に製造できるものではなく、また表面特性が低下するものとなっていた。また例えば黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、艶消剤を用いても60°グロス値の数値に下限があり、黒色を呈する艶消物品と同様であり、いずれにしても表面特性に優れ、また艶消効果の視認性にも優れる物品を容易に得られなかった。このような傾向は、60°グロス値を小さくするほど顕著となる。
また、黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、上記60°グロス値を有し得るものである。艶消物品の前記艶消層側の60°グロス値は、当該物品の最表面を形成する層の表面の60°グロス値と実質的に同じである。また、更に他の層を有し、かつ艶消層より表面側に当該他の層が設けられる場合、60°グロス値は当該他の層の60°グロス値を意味することとなるが、艶消物品が特定の60°グロス値を有するのは、実質的には艶消層の構成によるものである。
本明細書において、艶消層側の60°グロス値は、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、任意の10箇所におけるグロスメータ等を用いて艶消層側から測定し得る値の平均値である。
艶消物品は、既述のように特定のマルテンス硬度である艶消層を有する物品であればよく、基材を有することは要しない。すなわち、艶消物品は、基材は所望に応じて有するものであり、基材を有しない層構成もとり得る。よって、艶消物品の一番単純な層構成は、基材を有しない、艶消層のみの単一層による層構成、具体的にはマルテンス硬度が表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成され、マルテンス硬度が200N/mm2以下である艶消層のみの単一層による層構成となる。
しかし、艶消物品を上記単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品の層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。そしてこの場合、図3及び4に示されるように、基材と艶消層とを有し、艶消層の不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する面が基材とは反対側の面であることが好ましい。艶消効果の視認性及び質感を向上させることができるからである。
艶消物品は、上記艶消層に加えて、所望に応じて基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から、基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。
基材の形態(乃至は形状)は、フィルム、シート、板、多面体、多角柱、円柱、錐体、球面、回転楕円体面等の各種形状とすることができ、特に制限はない。なお、フィルム、シート、及び板は、相対的に厚さの薄いものから順にフィルム、シート及び板と称されるが、本明細書中においてはこれら三種を厳密に区別する意義はなく、これらの三種の相違によって本願発明の権利解釈に相違が生じることはない。
基材は単層でもよいし、上記材料からなる層を2層以上積層したものであってもよい。基材が2以上の層の積層体の場合、異種材料の層を2層以上積層し、各層の材料の有する諸性能を互いに補完してなるものが好ましい。2層以上積層してなる基材の例としては、以下のA~Jが挙げられる。なお、「/」は各層の界面を示す。
(A)樹脂/木質系材料
(B)樹脂/金属
(C)樹脂/繊維質材料
(D)樹脂/非金属無機材料
(E)樹脂1/樹脂2
(F)金属/木質系材料
(G)金属/非金属無機材料
(H)金属/繊維質材料
(I)金属1/金属2
(J)非金属無機材料/繊維質材料
上記Eにおいて、樹脂1と樹脂2とは互いに別種の樹脂を示す(例えば、樹脂1がオレフィン樹脂、樹脂2がアクリル樹脂)。また、上記Hにおいて、金属1と金属2とは互いに別種の金属を示す(例えば、金属1が銅、金属2がクロム)。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が挙げられる。
硬化性樹脂としては、既述の艶消層を構成し得る電離放射線硬化性樹脂、その他熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、天然樹脂としては、天然ゴム、松脂、琥珀等が挙げられる。
また、非金属無機材料としては、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス系窯業系材料、石灰岩(大理石を含む。)、花崗岩、安山岩等の天然石等が挙げられる。
木材の着色の場合は、染料による染色、あるいは塗膜形成のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。金属の着色の場合、塗膜形成の他、陽極酸化法を用いて表面に金属酸化物皮膜を形成する電解着色法等を採用することができる。また、非金属無機材料の場合、塗膜形成、あるいは基材中への添加のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記艶消層に含み得るものとして例示したものが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、その他各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
基材がフィルム、シート、又は板の形態である基材である場合、物品の設計上の代表的な寸法として厚さがある。かかる厚さについては特に制限はないが、一般的には製造加工適性、機械的強度、使用取扱性及び経済性等の観点から、10μm以上10cm以下程度とすればよい。また、フィルム、シートの形態である場合は、その厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、上限として300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
基材が板の形態である場合は、その厚さは1mm以上2cm以下が好ましい。
また、基材が紙基材の場合、坪量は、通常20~150g/m2が好ましく、30~100g/m2がより好ましい。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理が表面処理の効果及び操作性等の観点から好ましい。
艶消物品は、上記艶消層の他、上記の基材、さらにはその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品の一実施形態を示す断面図を図3及び図4に示す。図3及び4は、艶消物品の一実施形態を示す断面図であり、艶消物品1(艶消物品)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される艶消物品1(艶消物品)は、基材5及び艶消層4を順に有しており、図4に示される艶消物品1(艶消物品)は、基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層4を順に有している。
艶消物品は、例えば複数の層により構成される場合、既述のように当該複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。
艶消物品が艶消層以外の層を有する場合、例えば艶消層と基材とを有する場合、艶消層と基材との間に、層間密着性の向上のため、プライマー層を設けることができる。
また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
艶消物品は、その強度を高めるため、また後述する装飾層を有する場合は当該装飾層の保護等の観点から、透明性樹脂層を有してもよい。とりわけ、艶消物品を床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に用いる場合に有効である。
透明性樹脂層は、当該基材と艶消層との間に設ければよく、装飾層を有する場合は、当該装飾層を保護するため、当該装飾層と艶消層との間に設ければよい。
透明性樹脂層の厚さは、装飾層を保護する観点、また加工適性等を考慮すると、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が更に好ましい。
艶消物品は、意匠性を向上させる観点から、装飾層を有してもよい。装飾層は、艶消層のシワを有する少なくとも一方の面とは反対側の面に設ければよく、基材を有する場合は基材と艶消層との間に、また透明性樹脂層を有する場合は装飾層、透明性樹脂層及び艶消層の順に設ければよい。
装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下が更に好ましい。
艶消物品が、透明性樹脂層を有する場合、基材と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着層を有してもよい。
基材と透明性樹脂層との間に、更に装飾層を有する場合、接着層と装飾層との位置関係は特に限定されず、具体的には、基材に近い側から装飾層、接着層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよいし、基材に近い側から接着層、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
艶消物品は、既述のように、艶消層の単一層による層構成を有する場合、また少なくとも基材を含む層構成を有する場合がある。以下、艶消物品の製造方法について、単一層の場合、基材及びその他の層を有する場合、分けて説明する。
離型性支持体の離型層を有する面に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
離型層を有する離型性支持体は、艶消物品を使用する際に剥離すればよい。
艶消物品は、例えば基材の一方の主面側に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して前記塗布層を硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
本製造方法における艶消層形成工程では、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行うことが好ましい。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
上記(1)の照射処理に続いて、上記(2)の照射処理を行うことにより、上記(1)の照射処理によりシワが保持された樹脂組成物の硬化状態を更に進行させることができるため、表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が促進し、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
また、これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.01W/cm以上、より好ましくは0.1W/cm以上、更に好ましくは0.5W/cm以上であり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。
また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
また、これと同様の観点から、電子線の照射線量は、好ましくは5kGy以上、より好ましくは10kGy以上、更に好ましくは15kGy以上であり、上限として好ましくは150kGy以下、より好ましくは125kGy以下、更に好ましくは100kGy以下である。
電子線源としては、上記照射条件を発揮し得るものであれば特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、また直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
これと同様の観点から、(2)の照射処理に用いられ得る紫外線照射装置の出力は、好ましくは50W/cm以上、より好ましくは100W/cm以上であり、上限として好ましくは300W/cm以下、より好ましくは200W/cm以下である。また、照射速度は、好ましくは1r/min以上であり、より好ましくは3r/min以上であり、上限として好ましくは50r/min以下、より好ましくは10r/min以下である。
予備硬化については、艶消層に求められる所望の性状(例えば、加工特性、耐汚染性等の表面特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。
例えば、装飾層、接着層及びプライマー層は、各層を形成する組成物を含む塗布液を、上記の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。また、透明性樹脂層を形成する場合は、透明性樹脂層を形成する樹脂フィルムをドライラミネート等により形成することができる。
艶消物品の代表的な用途としては、艶消物品をそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
被着材を有する場合、化粧部材は、当該被着材と上記の艶消物品とを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、艶消物品の艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、を対向させて積層したものである。また、艶消物品がシート形態を有している場合は、被着材に積層しやすいという特徴も有している。
被着材としては、上記基材として採用し得るものとして例示した材料から適宜選択される材料からなる部材が挙げられる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質系材料により構成される木質部材、金属により構成される金属部材及び樹脂により構成される樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材と艶消物品とは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼着されることが好ましい。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の各種粘着剤を適宜選択して用いることができる。
化粧部材は、艶消物品と被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、艶消物品とを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、艶消物品の艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、また艶消物品が基材を有する場合は基材側の面とを対向させて積層する。被着材と艶消物品との積層する方法としては、例えば、接着剤層を介して艶消物品を板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法等が挙げられる。
以上のようにして得られる化粧部材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材、看板、防音壁等の各種部材として好適に用いられる。艶消物品は、シートの形態である場合は、上記の各種部材用の化粧シートとして好適に用いられる。また、艶消物品の、表面特性、中でも耐擦傷性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるという特徴を考慮すると、耐擦傷性が特に求められる用途、例えば建築物の内装用部材の中でも床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に好適に用いられる。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品は、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。
実施例及び比較例で得られた物品について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。
実施例及び比較例で得られた物品について、任意の成人20人に表面の質感(面状態の均一性)について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
B:15人以上17人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
C:14人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
各実施例及び比較例で得られた物品の艶消層について、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM-500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を加速速度0.15mN/20sで連続的に増加させながら最大荷重3.0mNまで加圧し、ピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(艶消層の面)に押し込んだ。押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm2)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。クリープ時間は5秒とした。
任意の10箇所について、上記の測定を行い算出されたマルテンス硬度の平均値を、実施例及び比較例の物品の艶消層のマルテンス硬度とした。
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:60μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(3官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):30質量部、単官能アクリレートモノマー:40質量部、
2官能アクリレートモノマー:30質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m2(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:0.6W/cm2)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe2)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm2、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値、マルテンス硬度を測定した。測定結果を第1表に示す。また、質感の評価についても、第1表に示す。
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
この結果から、本実施形態の艶消物品は、艶消層のマルテンス硬度を200N/mm2以下とすることにより、その表面に不規則なシワが形成し、当該シワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が発現していることが確認された。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品等は、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。
Claims (11)
- 表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、艶消物品。
- 前記樹脂組成物が、平均粒子径が前記表面シワ層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤を含有する、請求項1に記載の艶消物品。
- 前記シワ形成安定剤の含有量が、前記樹脂組成物に含まれる樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下である、請求項2に記載の艶消物品。
- 前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 前記艶消層が、艶消剤を含まない請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 前記艶消層が、全面にわたって設けられる請求項1~5のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 前記樹脂が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1~6のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 更に基材を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 前記凹凸形状が、前記艶消層の前記基材とは反対側の面に存在する請求項8に記載の艶消物品。
- 前記樹脂組成物に含まれる樹脂が、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の艶消物品。
- 前記重合性モノマー及び前記重合性オリゴマーの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量が、5質量部以上45質量部以下である請求項10に記載の艶消物品。
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