JP2022152944A - 艶消物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】艶消効果の視認性および質感に優れる艶消物品を、生産性高く提供する。【解決手段】表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm2以下である、艶消物品である。【選択図】なし

Description

本発明は、艶消物品に関する。
従来から、例えば壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装又は外装用部材等の表面を装飾し、保護するための物品として、いわゆる化粧材、化粧シートが用いられている。かかる化粧材、化粧シートとしては、例えば、所望の機能を有する表面層を有するものが用いられており、主に耐擦傷性、耐汚染性及び耐候性等の表面特性、また加工特性等の様々な性能が求められる。
これらの用途に用いられる化粧材、化粧シートには、その意匠性を向上させるために艶消効果(マット効果)を用いて質感を向上させる手法が汎用される。艶消効果を用いた化粧シートとして、例えば、特許文献1には、基材シートの片面に絵柄層及び隠蔽層を有し、もう一方の面に艶調整層(マット層、グロス層)を有する化粧シートが提案されている。特許文献1の化粧シートでは、艶調整層のマット層とグロス層が有する光沢の差により、絵柄層、隠蔽層を引き立てるという意匠効果が得られており、その実施例では、全面に設けられるマット層には樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部の艶消剤を添加したマットインキが用いられている。
また特許文献2には、基材上に、印刷層と透明樹脂層とを順に有し、該透明樹脂層の最表面にエンボス模様を施した化粧材が提案されている。
特開2000-062081号公報 特開2011-073207号公報
艶消効果(マット効果)により質感を向上させる手法としては、上記特許文献1のように艶消剤(matting agent、「マット剤」とも称される。)を用い、それ自体が有する光拡散効果により艶消効果を得る手法、上記特許文献2のようにエンボス加工を施すことで最表面に凹凸形状を形成する手法等が主に挙げられる。
しかし、特許文献1のように艶消剤を用いる場合、艶消効果をより優れたものとするにはその使用量を増加させる必要があるが、その使用量が多くなるにつれて、艶消剤が塗膜から脱落し、かつ塗膜を傷つけることで耐擦傷性が低下し、また艶消剤の欠落による艶変化により傷が目立ちやすくなる、また艶消剤と樹脂との界面の微小な間隙に汚染物質が浸透する、さらに艶消剤自体に汚染物質が吸着することで耐汚染性が低下するなどの理由により、表面特性が低下する傾向にある。他方、表面特性の低下を抑制するために使用量を少なくすると艶消効果が低下する傾向にあり、表面特性と艶消効果とは二律相反の関係にある。そのため、艶消剤を用いたマット効果には限界がある。
また、特許文献2のようにエンボス加工を用いる場合、エンボスの版の作製は多大な手間がかかり容易なことではなく、さらに所望の柄ごとに版を作製する必要が生じる。そのため、顧客の需要の多様性に十分に対応しやすい手法であるとはいえない。
また、物品の質感を艶消効果により向上させる手法として、(i)無機粒子をブラストすることにより表面を粗面化する手法、(ii)アルカリ処理液を用いた分解反応により表面を粗面化するケミカルエッチング、また(iii)ドラムプリンティングシステム(「DPS」とも称される手法であり、例えば特開昭57-87318号公報、特開平7-32476号公報等に開示されるような、シリンダ上のエンボス版の表面に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状物を塗布し、樹脂シート等からなるベースシートを重ねた状態で電離放射線を照射して当該未硬化液状物を硬化物とし、当該硬化物をベースシートと接着させた後、エンボス版から離型してベースシートと当該ベースシート上の硬化物とからなる基材とすることで、基材にエンボス加工を施す手法である。)等による粗形状版を用いた印刷塗料の転写による手法等も挙げられる。しかし、(i)の手法では無機粒子をブラストすることで物品自体の物性の低下が生じてしまい、(ii)のケミカルエッチングでは、使用可能な樹脂材料の選定が必要となり制約が生じるため汎用性が低い。そして、(i)~(iii)に共通して、生産速度が遅く、歩留まりが多く、生産性に乏しいという問題もある。
そこで、本発明は、艶消効果の視認性および質感に優れる艶消物品を、生産性高く提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、艶消物品において、所定の凹凸形状を有し、かつ所定範囲のマルテンス硬度を有する艶消層を採用することにより、上記課題が解決することを見出した。すなわち、上記課題を解決すべく、本発明は、以下の艶消物品;
表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下である、艶消物品、
を提供する。
本発明によれば、艶消効果の視認性および質感に優れる艶消物品を、生産性高く提供することができる。
本発明の艶消物品の一実施形態を示す平面視における模式図である。 本発明の艶消物品の艶消層の一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品の一実施形態を示す断面図である。 本発明の艶消物品の一実施形態を示す断面図である。 実施例1で得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例2で得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例3で得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例4で得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 実施例5で得られた艶消物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例1で得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。 比較例2で得られた物品の表面の光学顕微鏡画像である。
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る内燃機用燃料油組成物について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。
また、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値である。例えば、とある数値範囲について「A~B」及び「C~D」と記載されている場合、「A~D」、「C~B」といった数値範囲も含まれる。
[艶消物品]
本実施形態の艶消物品は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下である、ことを特徴とする物品である。
〔艶消層〕
艶消層は、表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される層である。表面に不規則なシワによる凹凸形状を有することで、艶消効果及び質感が発現する。この場合、優れた艶消効果及び質感を獲得するには、艶消物品の全面にわたり均一に艶消効果が発現し、部分的な艶のムラが低減される、安定的な艶消効果の視認性(以下、単に「安定的な艶消効果の視認性」といった表現、これに準ずる表現を用いる場合がある。)とともに、艶消物品の全面にわたりシワが安定して形成することによる面状態の均一性(「質感」とも称する。)を獲得することが肝要である。
本実施形態の艶消物品においては、艶消層が有するマルテンス硬度を200N/mm以下という特定の範囲内とすることにより、艶消層の表面にシワが形成しやすくなり、優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものとなり得る。
(艶消層の表面形状)
艶消層は、上記特定のマルテンス硬度を有することにより表面の不規則なシワが形成し、シワにより発現する凹凸形状に起因する光拡散効果により、優れた艶消効果の視認性及び質感を発現する層である。特に、艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する形態においては、当該シワにより、艶消層に優れた艶消効果の視認性及び質感を発現するものである。
ここで、「シワが形成する」ことは、より具体的には、「シワ」の形状及びその幾何学的特性値(シワが有する凹凸形状における個々の突起部(凸部)の長さ、幅及びこれらの比、また例えば、Rz(最大高さ)、Rsm(曲線要素の平均長さ)、Ra(算術平均粗さ)、Ssk(スキューネス)、Sku(クルトシス)等の統計的指標、また面内分布(分散σ)等の各種の数値及び指標が、艶消層が有するマルテンス硬度を上記特定の範囲内とすることにより、上記特定の範囲外となる場合に比べて収束することを意味する。
既述のように、上記特許文献1等の従来技術において、艶消表現のために艶消剤が用いられてきた。艶消剤は、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果を発現するものである。具体的には、一般に艶消剤と称されるものは、通常艶消剤粒子と周囲の樹脂及び空気との屈折率差を有し、その粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現するものである。すなわち、艶消剤を用いた場合、その表面は艶消剤の輪郭形状が所々に浮き出る凹凸形状を呈する形状となっており、本実施形態の艶消物品のような不規則なシワによる凹凸形状とは全く異なるものとなる。
本実施形態の艶消物品における艶消層が発現する艶消効果は、艶消剤のような粒子それ自体による光線の反射及び屈折による光拡散によるものではなく、艶消層のマルテンス硬度を所定範囲内とすることで発現する、艶消層の表面においてシワが形成することで、かかる表面と空気との屈折率差界面での光拡散効果により艶消物品に優れた艶消効果の視認性とともに質感を付与するというものである。よって、本実施形態における艶消効果は、それ自体が艶消効果の視認性を発現する艶消剤による艶消効果とは、その艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造等は異なるものである。
また、物品の質感を艶消効果により向上させる手法として、既述のように(i)無機粒子をブラストすることにより表面を粗面化する手法、(ii)ケミカルエッチング、また(iii)転写による手法等が挙げられるが、いずれも生産速度が遅く、歩留まりが多く、生産性に乏しいという問題もある。その点、本実施形態の艶消物品は、艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とするだけで、その表面の不規則なシワが形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感が得られるため、生産性に極めて優れるものである。
図1は本実施形態の艶消物品の一実施形態を示す平面視における模式図であり、実施例で得られた艶消物品の表面の画像を模式化したものである。図1には、本実施形態の艶消物品は、その表面、すなわち艶消層の表面にシワが形成されていることが示されている。
艶消物品は、その表面に不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する。このようなシワによる凹凸形状は、艶消層が所定のマルテンス硬度を有することで形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感を発現することとなる。特に、艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する形態においては、当該シワにより艶消層に優れた艶消効果の視認性及び質感を発現させる上で好適である。
また、不規則なシワは、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、により構成されていることが好ましく、当該突起部は線条の突起部を有していることが好ましい。本明細書において、「線条の突起部」(以下、「線条突起部」とも称する。)とは、当該突起部の長さと幅との比(長さ/幅)が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であることを意味し、当該長さ及び幅の決定方法は後述の通りである。
本実施形態において、より好ましい不規則なシワは、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、当該複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部により構成されるもの、である。
これらのシワに関する態様としては、例えば図1に示される態様が挙げられる。図1には、艶消物品の表面、すなわち艶消層の表面に、平面視において不規則なシワを有していること、また不規則なシワが、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部3と、複数の突起部(複数の凸部3)により囲まれて形成する凹部2とを含むことにより構成されていること、また湾曲した複数の凸部3の少なくとも一部が、各々蛇行する線条突起部により形成され、当該蛇行する線条突起部に囲まれるようにして、蛇行する凹部2が形成していることも示されている。本実施形態の艶消物品は、図1に示されるような不規則なシワが形成し、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感を発現している。
ここで「湾曲」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分を1箇所以上有することを意味する。延在方向が一方側から他方側に反転している部分の例としては、例えば線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したとき(幅を0とみなしたとき)に連続曲線で近似される場合に、変曲点を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、V字型の折線又は3角形の1頂点を挟む2辺で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
また「蛇行」とは、平面視において、連続する線条の凸部3の延在方向が一方側から他方側に反転している部分(以下、「反転部分」とも称する。)を、少なくとも2箇所以上有し、線条の凸部3をその延在方向に進んだときに、互いに隣接する当該2箇所において交互に線条の凸部3の延在方向が逆向きに反転部分する部分を有することを意味する。例えば、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに連続曲線で近似される場合に、ローマ字「S」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。また、線条の凸部3の平面視形状の幅を無視したときに直線で近似される場合に、ローマ字「W」で近似される部分を有する形態等が挙げられる。
本明細書において、不規則とは、一定の法則を有する形状、また一定の法則をもって配列される、いわゆるパターン化している、とはいえないことを意味する。不規則ではない形状(規則的な形状)の典型的な例としては、例えば円柱形状の単位レンズをその長手方向と直行する方向に複数個が互いに隣接して配列した、いわゆる「レンティキュラーレンズ(lenticular lens)」のように、特定の方向に一定の周期性をもって配列した形状等が挙げられる。よって、本実施形態における不規則なシワは、一つの突起部の形状自体が周期性等の一定の法則をもって形成される形状ではなく不規則であること、また複数の突起部により形成する複数の凸部の形状が一定の法則をもって形成及び配列されるものではなく不規則であること、またこのような複数の突起部により囲まれた凹部の形状も不規則であること、を包含するものである。
艶消物品において、一つの突起部(一つの凸部)の形状自体、複数の突起部(複数の凸部)の各々の形状及びその配列、複数の突起部により囲まれた凹部の形状のいずれかが不規則であれば、不規則なシワを有することによる艶消効果の視認性及び質感は得られるが、いずれもが不規則であることが好ましい。艶消物品は、不規則なシワを有することにより、その艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
既述のように、艶消層はその少なくとも一方の表面にシワ、すなわち凹凸形状を有する。凹凸形状における凸部と凹部は、凹凸形状における高さ分布の中間値を基準とし、当該中間値を超える高さの領域を凸部、当該中間値以下の高さの領域を凹部と定義する。例えば艶消物品の表面の高さと1:1に対応する濃度を有する画像の濃度差(すなわち明度差)を利用して、濃度分布画像で最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像で最も薄い部分を階調0として(高さの中間値に対する濃度の中間値は127となる。)、階調0~255について、階調0~127を凹部、階調128~255を凸部と、二値化処理して区分すればよい。
艶消物品の表面は、少なくともその一部に不規則なシワが形成されていることが好ましく、全面にわたって不規則なシワが形成されていることがより好ましい。本実施形態の艶消物品は、艶消層が所定のマルテンス硬度を有することで、前面にわたって不規則なシワが形成しやすくなる。
シワが形成する箇所は、艶消物品の表面であれば特に制限はなく、例えば後述する絵柄に応じた箇所(当該絵柄上)だけに限らず、当該表面の少なくとも一部であれば、シワの形成による艶消効果の視認性及び質感は発現する。例えば、後述する絵柄層を有し、かつ一部に不規則なシワが形成する場合、シワは絵柄層の絵柄に応じた箇所(例えば絵柄上)に形成すると、当該絵柄が周囲に比べてより艶消された箇所として視認されるため、意匠性の向上を図ることができる。
また図1にも示されるように、不規則ながらもある程度の均質性をもった複数の突起部により形成される複数の凸部と、当該凸部により囲まれた凹部と、を有していることが好ましい。よって、1の凸部(突起部)において、その幅が極端に変化する形状、その高さが極端に変化する形状は、艶消効果の視認性及び質感を得るにあたり好ましい態様とはいえない。不規則なシワを形成する凸部(突起部)、凹部の形状について、シワが形成することで、優れた艶消効果の視認性及び質感を向上させる上で優位となり得る具体的な態様について、以下説明する。
艶消層の少なくとも一方の表面に形成するシワの形状について、その凸部の高さ(突起部の高さ)は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凸部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。凸部の高さ及び幅が上記範囲内であると、凹部との関係で、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凸部の上記寸法は、本実施形態の艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部(突起部)、すなわち合計100の凸部の平均値である。また、図1に示されるように、1の凸部(突起部)においてその幅は同じではなく広狭があるため、1の凸部(突起部)の幅は、当該1の凸部(突起部)における任意の5箇所の幅の平均値とする。凸部(突起部)の高さについても同様とする。
凹部の深さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限としては10μm以下程度である。また、凹部の幅は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下である。凹部の深さ及び幅が上記範囲内であると、凸部との関係で、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の頂から凹部の底までの距離(凸部と凹部との高低差)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、上限として好ましくは20μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下である。当該距離が上記範囲内であると、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凹部の寸法は、上記の凸部の寸法と同様に決定する。
凸部の占有割合は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であり、上限として好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下である。凸部の占有割合が上記範囲内であると、当該凸部に囲まれる凹部の占有割合との関係で、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、凸部の占有割合は、艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の占有割合の平均値である。
凸部及び凹部は、略同一方向及び略同一幅の箇所を有していてもよいが、艶消効果の視認性及び質感の向上の観点から、その長さは短いことが好ましい。具体的には、略同一方向及び略同一幅の凸部及び凹部が連続する長さは、好ましくは95μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは70μm以下であり、下限として好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。当該長さが上記範囲内であると、シワがより不規則となるため、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
ここで、艶消物品の任意の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における任意の10の凸部及び凹部(すなわち合計100の凸部及び凹部)について、その80%以上が上記の条件を満たすものであることが好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、より更に好ましくは95%以上である。また、本明細書における「略同一」の「略」は、概ね同じであることを意味し、枝分かれすることなく、方向の場合は±3°以内の違いを意味し、幅の場合は±5%以内の違いを意味する。
また、100μm四方の領域における凸部(突起部)の数は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、上限として好ましくは200以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは70以下である。当該凸部の数が上記範囲内であると、艶消効果の視認性及び質感が向上する。
当該凸部の数は、艶消物品の10箇所(100μm四方の領域×10箇所)における凸部の数の平均値である。
図2は、艶消物品の一実施形態を示す断面図であり、艶消物品をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
凹部の形状としては、例えば図2の2aのように鋭角状のものでもよいし、また2bのように半円又は半楕円状のものであってもよく、これらの組合せであってもよい。また一つの凸部が一部に凹部を有する、図2の2cのような形状であってもよい。
他方、凸部の形状としては、図2の3a、3bのように幅の広狭はあるものの、半円又は半楕円の形状を呈する。
艶消層の厚さは、艶消効果の視認性及び質感を発現し得る程度に上記のシワを形成することができる厚さであれば特に制限はないが、作製のしやすさ等も考慮すると、通常1μm以上であり、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上、より更に好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
本明細書において、艶消層の厚さは、艶消物品の断面について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の厚さを測定し、20箇所の値の平均値とする。なお、SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定とする。また、他の層の厚さについても同様である。
艶消層は、部分的に設けられるものであってもよいし、全面にわたって設けられるものであってもよいが、艶消効果の視認性及び質感の向上の観点から、全面にわたって設けられていることが好ましい。
艶消層が部分的に設けられるものである場合、本実施形態の艶消物品は実質的に艶消層以外の層として、後述する基材を好ましく有する。
(マルテンス硬度)
本実施形態の艶消物品において、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下であることを要する。マルテンス硬度が200N/mmを超えると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しにくくなるため、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られない。
艶消層のマルテンス硬度は、小さければ小さいほど、60°グロス値を低減させることが可能であり、好ましくは190N/mm以下、より好ましくは180N/mm以下、更に好ましくは175N/mm以下、より更に好ましくは160N/mm以下、特に好ましくは140N/mm以下であり、最も好ましくは50N/mm以下である。また下限については特に制限はなく、艶消層に要求される機械的強度、艶消層を構成する樹脂自体の特性から、通常1N/mm以上である。艶消層のマルテンス硬度が上記範囲内であると、艶消層の表面の不規則なシワが形成しやすくなるため、より優れた艶消効果の視認性及び質感が得られる。
また、艶消層のマルテンス硬度の調整方法については、後述するが、艶消層形成用の樹脂組成物における樹脂の種類、含有量、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤の種類及び含有量等により調整可能である。
本明細書において、マルテンス硬度は、具体的には超微小硬度計を用いて測定される値であり、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより算出される値である。なお、超微小硬度計としては、例えば、微小硬さ試験機「ピコデンターHM-500」(フィッシャー・インスツルメント社製)等を用いればよい。
(シワ形成安定剤)
本実施形態の艶消物品において、艶消層には、シワ形成安定剤を含有させることができる。艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とすることによる不規則なシワの形成を促進し、より安定させることができるため、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。また、後述するように、シワ形成安定剤を用いることにより、艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内に調整しやすくなる。
シワ形成安定剤としては、後述するように、所定の平均粒子径を有する有機粒子、無機粒子等を採用し得るが、例えば上記特許文献1等の従来技術において、艶消表現のために用いられてきた「艶消剤」とは、例えその構成物質、平均粒子径が同じであった場合においても、両者の艶消の機構(作用)、艶消を発現させるための構造、及び使用量と、表面の艶(グロス値)の程度との関係において異なるものとなる。
既述のように、「艶消剤」は、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果を発現するものである。
他方、シワ形成安定剤は、粒子それ自体による光線の反射及び屈折による光拡散が艶消効果の視認性を発現するのではなく、艶消層のマルテンス硬度を所定範囲とすることにより発現する、不規則なシワの形成をより安定させるものである。すなわち、シワ形成安定剤は、艶消層のマルテンス硬度を所定範囲に調整しやすくするという性状を有しており、結果として艶消層の不規則なシワの形成を促進し、より安定させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくするという性能を有するものである、ともいえる。
よって、本実施形態においてシワ形成安定剤が用いられた場合、このシワ形成安定剤は、「艶消剤」とは機能の面で異なるものである。
また、「シワ形成安定剤」と「艶消剤」とが異なることについて、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aをシワ形成開始剤AW(W:シワ,wrincleの略称)として用い、これを特定量Cで含有させて表面にシワを形成させた場合の表面の60°グロス値G60° AW(C)は、同物質Aを単なる艶消剤AM(M:マット、matteの略称)として用い、これを当該特定量Cで含有させるも表面にシワが形成しない場合の表面の60°グロス値G60° AM(C)よりも明らかに低下する。すなわち、以下の関係式が成立する。
60° AW(C)<G60° AM(C)
これは、本実施形態の艶消物品において、シワの形成の安定により発現する艶消効果の視認性及び質感は、あくまで主に艶消層のマルテンス硬度によるものであり、シワ形成安定剤は、シワの形成を促進し、より安定させるために用いられることによるもの、ともいえる。
艶消層は、従来艶消剤として用いられてきた剤を含んでもよいが、艶消剤を用いても得られない程度に極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなるという発明の効果の特徴を考慮すると、艶消剤を含まないことが好ましい。このように、艶消物品は、従来艶消効果の視認性を得るために用いていた艶消剤を実質的に含まなくても、極めて優れた艶消効果の視認性及び質感を有するものであるといえる。そのため、艶消剤を含める(添加する)場合においては、艶消層表面のシワによる艶消効果を補強する程度でたりる。ここで、「艶消剤を含まない」とは、艶消剤を全く含まないことに加えて、含んでいても艶消剤自体の作用効果に基づく艶消効果の視認性を有することがない、具体的には艶消剤の含有量が樹脂100質量部に対して15.0質量部未満、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下であることを意味する。
なお、本願明細書において「艶消剤」は、既述のように粒子の輪郭形状に対応した光線の反射及び屈折性界面による光拡散効果により艶消効果の視認性を発現する観点から、具体的には当該艶消剤が含まれ得る層、すなわち艶消層の厚さの100%超及び30μm超のいずれか小さい方を下限とする平均粒子径を有する粒子を意味する。
シワ形成安定剤は、既述のように艶消剤ではない、平均粒子径が艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするものであり、例えば有機粒子、無機粒子等の各種の粒子を採用することができる。
艶消物品で用いられるシワ形成安定剤としては、艶消剤ではない、平均粒子径が艶消層の厚さの100%以下の粒子であれば特に制限なく用いることが可能であり、中でも平均粒子径が1μm以上、かつ前記艶消層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤1、平均粒子径が1μm未満であるシワ形成安定剤2を用いることが好ましい。本実施形態においては、シワ形成安定剤として、一種又は複数種のシワ形成安定剤1を用いてもよいし、一種又は複数種のシワ形成安定剤2を用いてもよいし、一種又は複数種のシワ形成安定剤1と一種又は複数種のシワ形成安定剤2とを組み合わせて用いてもよい。
シワ形成安定剤としては、例えば有機粒子、無機粒子を用いることができる。
有機粒子を構成する有機物としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等が挙げられ、これらの中でも透明性に優れるシリカが好ましい。
シワ形成安定剤の形状としては、特に制限はないが、例えば球形、多面体、鱗片状、不定形等が挙げられる。
シワ形成安定剤の平均粒子径は、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を促進し、より安定させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、上限としては、艶消層の厚さに対しては、好ましくは艶消層の厚さの90%以下、より好ましくは艶消層の厚さの80%以下、更に好ましくは艶消層の厚さの70%以下であり、絶対値については、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、より更に好ましくは7μm以下であり、艶消層の厚さに対する上限と絶対値の上限とを任意に組み合わせた場合のいずれか小さい方とすればよい。例えば、艶消層の厚さの90%以下及び20μm以下のいずれか小さい方を上限としてもよいし、艶消層の厚さの90%以下及び10μm以下のいずれか小さい方を上限とすることもできる。なお、艶消層の厚さについては後述する。また下限として好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上である。
既述のようにシワ形成安定剤1及び2に分けて用いる場合、シワ形成安定剤1の平均粒子径は、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を促進し、より安定させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、好ましくは1.3μm以上、より好ましくは1.5μm以上、更に好ましくは1.8μm以上であり、上限としては既述のとおりである。
また、これと同様の観点から、シワ形成安定剤2の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、更に好ましくは5nm以上であり、上限として好ましくは900nm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
本明細書において、シワ形成安定剤の平均粒子径は、レーザ光回折法による粒度分布測定における質量平均値d50として測定したものである。
シワ形成安定剤の含有量、シワ形成安定剤としてシワ形成安定剤1と2とを併用する場合はこれらの合計の含有量は、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下であることが好ましい。上記範囲内であると、艶消層のマルテンス硬度の調整がしやすく、またシワ形成安定剤の使用効果、すなわちシワの形成が促進し、艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワ形成安定剤によるシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の合計の含有量は、艶消層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.75質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.2質量部以上であり、上限としては優れた艶消効果の視認性を得られやすくする観点から、6.0質量部以下であれば特に制限はない。
また、シワ形成安定剤1及びシワ形成安定剤2の各々の含有量としては、合計の含有量が上記範囲内であれば特に制限はないが、シワ形成安定剤2の含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、上限として6.0質量部以下であり、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.5質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。また、シワ形成安定剤1とシワ形成安定剤2との配合割合(シワ形成安定剤1/シワ形成安定剤2)としては、好ましくは0.05~0.95、より好ましくは0.10~0.90、更に好ましくは0.20~0.80、より更に好ましくは0.30~0.70である。
シワ形成安定剤としては、既述のように有機粒子、無機粒子を用い得るが、これらの粒子の種類自体は、従来艶消剤としても用いられるものを含むものともいえる。例えば上記の特許文献1に記載の化粧シートのマット層には、球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が用いられている。球形状アルミナ、炭酸カルシウムといった艶消剤が、物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性を発現するためには、特許文献1に記載されるように、樹脂分100重量部あたりに球形状アルミナ10重量部及び炭酸カルシウム40重量部の合計50重量部程度の含有量で使用する必要がある。しかし、艶消物品においては、既述のように少量の含有量としても、すなわち物理的な形状に起因する光拡散効果により、それ自体が艶消効果の視認性及び質感を発現するために必要な含有量より少ない含有量としても、艶消剤により得られる効果に比べて極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が得られている。
よって、艶消物品は、実質的に艶消剤を含まないにも関わらず、艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とすることにより、表面にシワが形成することにより、またさらにシワ形成安定剤を用いて表面のシワの形成を促進させることにより、艶消剤を用いた場合に比べてより優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなっている、といえる。
また、艶消層のマルテンス硬度を所定の範囲内とすることで、艶消効果の視認性及び質感を得ることについては、表面特性の向上にあたり、以下のメリットも挙げられる。
一般に、「艶消剤」等の粒子を含む樹脂層表面が他の物体と接触し、擦られた場合、表面近傍の粒子が脱落する傾向がある。従って、もっぱら「艶消剤」の添加によって層表面の艶を低下させる仕様である場合、かかる粒子の脱落によって、他の物体との接触、摩擦時に艶変化を生じることになる。かかる機構による艶変化は、艶消剤の含有量の多い低艶仕様であるほど顕著となってくる。特に、60°グロス値G60が5.0以下の表面を「艶消剤」の添加により実現する場合は、樹脂100質量部に対して、(樹脂と艶消剤の種類との分散形態いかんにもよるが、)大体50質量部程度以上の添加が必要になり、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤の脱落による艶変化は大きなものとなる。
本実施形態の艶消物品における艶消層においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、60°グロス値G60が5.0以下の表面を艶消剤添加により実現する場合でも、樹脂100質量部に対するシワ形成安定剤の含有量は3.0質量部程度ですむこととなる。例えば、本発明の実施例においては、シワ形成安定剤の総含有量が最大3質量部で60°グロス値G60が5.0以下、さらには3.7以下という低艶を実現している。なお、後述するが、本明細書において60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うこととする。
従って、艶消物品においては、後述の実施例及び比較例でも実証されるように、同じ低艶表面を実現する場合、特に60°グロス値G60が10以下、更には5.0以下を実現する場合において、従来の艶消物品に比べて、粒子含有量が大幅に低減されるため、他の物体との接触、摩擦時の艶消剤脱落に起因する艶の変化は少ないものとなる。
(樹脂)
艶消層を形成する樹脂としては、硬化することにより硬化物となり艶消層を構成する樹脂であり、また艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内とし得る樹脂であればよい。
このような樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。艶消層は、艶消物品の最表面に設けられ得る層であるため、シワを形成しやすい樹脂であることの他、艶消物品として使用性向上の観点から、耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性、また加工特性を発現しやすい樹脂であることが好ましく、電離放射線硬化性樹脂はこれらの観点から好ましい樹脂である。特に艶消層を構成する樹脂として後述するモノマー、オリゴマー等の電離放射線硬化性樹脂を選択し、後述する100nm以上200nm未満という短波長の紫外線を照射して、その表面に不規則なシワによる凹凸形状を形成する製造方法を採用する場合には、本実施形態の艶消物品は、例えば上記のシワ形成安定剤のような粒子を用いる場合であっても、その使用量が極めて少ないため、その表面特性として、艶消層を形成する樹脂の性能がより直接的に発揮されることとなる。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられ、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を安定させて、艶消効果の視認性及び質感を向上させる観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができ、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを用いることが好ましい。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリレート系モノマーは、電離放射線硬化性官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、電離放射線硬化性樹脂を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、いずれを用いることもできる。
重合性モノマーは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができ、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、またシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好ましい。
二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いる場合、単官能モノマーと多官能モノマーとの組合せ、二種以上の多官能モノマーの組合せが好ましく、多官能モノマーと多官能モノマーとの組合せがより好ましい。
多官能モノマーを用いる場合、官能基数は2以上が好ましく、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
単官能モノマーと多官能モノマーとを組み合わせて用いる場合、多官能モノマーの官能基数の上限としては2以下が最も好ましい、すなわち、多官能モノマーの官能基数は2であることが最も好ましい。また、この場合、単官能モノマー及び多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
また、2種以上の多官能モノマーを用いる場合、官能基数2のモノマーと、官能基数4のモノマーと、を組み合わせることが最も好ましい。また、この場合、単官能モノマー及び多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよく、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、一種の重合性オリゴマーを単独で用いることが好ましいが、複数種の重合性オリゴマーを組み合わせて用いてもよいことはいうまでもないことである。
重合性オリゴマーの官能基数は、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさの観点、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
また、これと同様の観点から、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1,000以上7,500以下が好ましく、1,500以上6,500以下がより好ましく、1,750以上5,000以下がさらに好ましく、1,900以上4,000以下がよりさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
艶消物品において、艶消層を形成する樹脂は、上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、艶消層を形成する樹脂中の、上記重合性モノマー、重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%、すなわち樹脂が重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方であることが好ましい。
艶消層を形成する樹脂は、既述のように上記重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方を含むことが好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを含むことがより好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーから選ばれる少なくとも一方であることが更に好ましく、重合性モノマー及び重合性オリゴマーであることが特に好ましい。艶消層のマルテンス硬度の調整がしやすく、またシワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくなる。
重合性モノマー及び重合性オリゴマーを採用する場合、重合性モノマーと重合性オリゴマーとの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは25質量部以上であり、上限として好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは35質量部以下である。重合性オリゴマーの含有量が上記範囲内であると、艶消層のマルテンス硬度が調整しやすく、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくすることができ、更に耐擦傷性及び耐候性等の表面特性、また加工特性を向上させることもできる。
艶消層を形成する樹脂は、艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさ、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくすることを考慮すると、多官能モノマー及び多官能オリゴマーから選ばれる少なくとも一方を含むことが好ましく、多官能モノマー及び多官能オリゴマーを含むことがより好ましい。
また、これと同様の観点から、艶消層を形成する樹脂は、単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーを含むことが好ましく、単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーである、すなわち単官能モノマー、多官能モノマー及び多官能オリゴマーを併用することが好ましい。
艶消層のマルテンス硬度の調整のしやすさ、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくすることを考慮すると、2官能モノマーを用いることが好ましい。この場合、2官能モノマーの含有量は、樹脂100質量部に対して好ましくは15質量部以上であり、上限として好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
これと同様の観点から、単官能モノマーを用いることも好ましい。この場合の単官能モノマーの含有量は、樹脂100質量部に対して好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上であり、上限として好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。
(樹脂組成物)
艶消層は、上記樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により構成される。本実施形態で用いられる樹脂組成物は、上記樹脂、また必要に応じて用いられるシワ形成安定剤の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。
艶消層形成用の樹脂組成物は、例えばその粘度を低下させる等の目的で、上記の樹脂としても用いられ得る単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。単官能(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、樹脂として単官能(メタ)アクリレート等の単官能モノマーを含む場合は、当該単官能モノマーが樹脂として機能し、また粘度低下に寄与するため、粘度低下のための単官能(メタ)アクリレートは不要である。
上記樹脂が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、シワの形成が促進され、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
艶消層は艶消物品の最表面に設けられ得る層であることから、耐候性を有する層であることが好ましく、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の各種耐候剤を含むことが好ましい。
紫外線吸収剤としては、化粧シートに汎用される紫外線吸収剤を特に制限なく用いることができ、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としても、化粧シートに汎用される光安定剤を特に制限なく用いることができ、例えばピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
〔60°グロス値〕
艶消物品は、優れた艶消効果の視認性及び質感を有する物品であり、60°グロス値が5.0以下となる。本明細書において「艶消」は、光沢を視認しにくいことを意味し、物品の色調、柄等によりかわるため一概にはいえないが、例えば60°グロス値が5.0以下のものを「艶消」と扱うものとする。
これまで、例えば黒色その他暗色(「暗色」とは、明度が低く、例えばJIS Z8781-4:2013に準拠して測定されるCIE(国際照明委員会)L表色系におけるL値(以下、単に「L値」と称することがある。)が、通常40以下程度、好ましくは30以下であることを意味する。)を呈する艶消物品では、艶消剤を用いても60°グロス値が20.0以下、好ましくは10.0以下という優れた艶消効果の視認性を得るのは可能ではあるものの、艶消剤を多く使用することから、層形成時のスジ、ムラが発生するため容易に製造できるものではなく、また表面特性が低下するものとなっていた。また例えば黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、艶消剤を用いても60°グロス値の数値に下限があり、黒色を呈する艶消物品と同様であり、いずれにしても表面特性に優れ、また艶消効果の視認性にも優れる物品を容易に得られなかった。このような傾向は、60°グロス値を小さくするほど顕著となる。
艶消物品では、艶消層のマルテンス硬度を上記の所定範囲内とすることで、また必要に応じてシワ形成安定剤を用い、かつその含有量を既述のように少量とすることにより、シワを形成させて、当該シワにより優れた艶消効果の視認性及び質感が得られるに至った。シワ形成安定剤を用いる場合は、その使用量を極めて少量に抑えることで、樹脂組成物の著しい粘度上昇を抑えられることにより、艶消層の形成が容易となり、艶消層に用いられる樹脂の特性に応じた、優れた耐擦傷性、耐汚染性、耐候性等の表面特性を自ずと有するものとなる。
艶消物品は、既述のように色調に応じてかわるものの、前記艶消層側の60°グロス値として5.0以下、更には4.0以下、3.6以下、3.2以下、2.5以下と極めて優れた艶消効果の視認性を発現し得るものである。
また、黒色その他暗色以外の色調を呈する艶消物品についても、上記60°グロス値を有し得るものである。艶消物品の前記艶消層側の60°グロス値は、当該物品の最表面を形成する層の表面の60°グロス値と実質的に同じである。また、更に他の層を有し、かつ艶消層より表面側に当該他の層が設けられる場合、60°グロス値は当該他の層の60°グロス値を意味することとなるが、艶消物品が特定の60°グロス値を有するのは、実質的には艶消層の構成によるものである。
本明細書において、艶消層側の60°グロス値は、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、任意の10箇所におけるグロスメータ等を用いて艶消層側から測定し得る値の平均値である。
〔層構成について〕
艶消物品は、既述のように特定のマルテンス硬度である艶消層を有する物品であればよく、基材を有することは要しない。すなわち、艶消物品は、基材は所望に応じて有するものであり、基材を有しない層構成もとり得る。よって、艶消物品の一番単純な層構成は、基材を有しない、艶消層のみの単一層による層構成、具体的にはマルテンス硬度が表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成され、マルテンス硬度が200N/mm以下である艶消層のみの単一層による層構成となる。
(より現実的な層構成)
しかし、艶消物品を上記単一層による層構成とする場合、通常は機械的強度、後加工適性、意匠性等の、艶消物品に要求される各種性能を得る選択肢が制約される場合が多い。そのため、艶消物品の層構成としては、基材を有する、すなわち基材と艶消層とを有する層構成であることが好ましい。そしてこの場合、図3及び4に示されるように、基材と艶消層とを有し、艶消層の不規則なシワにより構成される凹凸形状を有する面が基材とは反対側の面であることが好ましい。艶消効果の視認性及び質感を向上させることができるからである。
〔基材〕
艶消物品は、上記艶消層に加えて、所望に応じて基材を有してもよく、既述のように、各種の制約を回避する観点から、基材を有することが好ましい。基材は、艶消層を設ける支持体として機能する。
基材の形態(乃至は形状)は、フィルム、シート、板、多面体、多角柱、円柱、錐体、球面、回転楕円体面等の各種形状とすることができ、特に制限はない。なお、フィルム、シート、及び板は、相対的に厚さの薄いものから順にフィルム、シート及び板と称されるが、本明細書中においてはこれら三種を厳密に区別する意義はなく、これらの三種の相違によって本願発明の権利解釈に相違が生じることはない。
本実施形態で用いられる基材としては、通常化粧材、化粧シート等の物品の基材として用いられるものを制限なく採用することができ、例えば、紙、不織布及び織布等の繊維質材料、樹脂、木質系材料、金属、非金属無機材料等からなる基材が代表的に挙げられる。
基材は単層でもよいし、上記材料からなる層を2層以上積層したものであってもよい。基材が2以上の層の積層体の場合、異種材料の層を2層以上積層し、各層の材料の有する諸性能を互いに補完してなるものが好ましい。2層以上積層してなる基材の例としては、以下のA~Jが挙げられる。なお、「/」は各層の界面を示す。
(A)樹脂/木質系材料
(B)樹脂/金属
(C)樹脂/繊維質材料
(D)樹脂/非金属無機材料
(E)樹脂1/樹脂2
(F)金属/木質系材料
(G)金属/非金属無機材料
(H)金属/繊維質材料
(I)金属1/金属2
(J)非金属無機材料/繊維質材料
上記Eにおいて、樹脂1と樹脂2とは互いに別種の樹脂を示す(例えば、樹脂1がオレフィン樹脂、樹脂2がアクリル樹脂)。また、上記Hにおいて、金属1と金属2とは互いに別種の金属を示す(例えば、金属1が銅、金属2がクロム)。
また、基材が積層体である場合、積層体の各構成層の層間に、隣接各層間の接着力を強化するための層として、接着剤層、粘着剤層、プライマー層(アンカー層、易接着層とも称される。)を更に設ける等の構成であってもよい。
繊維系材料の基材としては、例えばクラフト紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、パラフィン紙、グラシン紙、パーチメント紙、壁紙用裏打紙、薄葉紙、上質紙、和紙、板紙、石膏ボード用原紙等の紙基材が挙げられる。また紙基材としては、その繊維間又は多層の紙基材との層間強度を向上させるため、またケバ(毛羽)立ち防止のために、更にアクリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の各種樹脂を添加(抄造後に樹脂を含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。このような紙基材としては、紙間強化紙、樹脂含浸紙等が挙げられる。また、繊維質材料層に樹脂層を積層した基材としては、建材分野で汎用される壁紙用裏打紙の表面に、塩化ビニル樹脂層、オレフィン樹脂層、アクリル樹脂層等の各種樹脂層を積層した壁紙原反等も挙げられる。
不織布又は織布の基材としては、例えばガラス、アルミナ、シリカ、炭素等の無機材料により構成される無機繊維、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種合成樹脂により構成される有機繊維、絹、木綿、麻等のタンパク質系又はセルロース系の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の各種繊維で構成される不織布又は織布、またこれらの複合体等の基材が挙げられる。
樹脂の基材としては、合成樹脂、天然樹脂等の各種樹脂により構成される基材が挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が挙げられる。
硬化性樹脂としては、既述の艶消層を構成し得る電離放射線硬化性樹脂、その他熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、天然樹脂としては、天然ゴム、松脂、琥珀等が挙げられる。
木質系材料の基材としては、杉、檜、松、欅、楢、樫、胡桃、ラワン、チーク、ゴムの木等の各種樹種の木材からなる木材基材が挙げられる。木材基材は、突板と称されるフィルム、又はシート形態、あるいは単板、合板、集成材、パーチクルボード、繊維板等の板形態とすることができる。
金属としては、アルミニウム、ジュラルミン等のアルミニウムを含む合金、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄を含む合金、胴、真鍮、青銅等の銅を含む合金、金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタン等が挙げられる。また、金属により構成される金属基材としては、これらの金属をめっき等の処理を施したものを用いることもできる。
また、非金属無機材料としては、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス系窯業系材料、石灰岩(大理石を含む。)、花崗岩、安山岩等の天然石等が挙げられる。
基材は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよく(透明でもよく)、着色されている場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
基材は、着色されている場合、着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。例えば、物品を貼着する被着材の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、絵柄層、所望に応じて設けられる広面積装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、白色顔料等の無機顔料を用いればよい。
合成樹脂の着色の場合は、樹脂中への着色剤の添加(混練、練り込み)、樹脂と着色剤とを含む塗料の塗膜の塗布による形成等の、いずれの手段を採用することができる。紙、不織布、又は織布の着色の場合は、パルプや繊維材料との混抄、あるいは塗膜形成等のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
木材の着色の場合は、染料による染色、あるいは塗膜形成のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。金属の着色の場合、塗膜形成の他、陽極酸化法を用いて表面に金属酸化物皮膜を形成する電解着色法等を採用することができる。また、非金属無機材料の場合、塗膜形成、あるいは基材中への添加のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、主に樹脂の場合において、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、表面特性、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
本実施形態の艶消物品の耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。
紫外線吸収剤、光安定剤としては、上記艶消層に含み得るものとして例示したものが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、その他各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
基材の形状及び寸法は、特に制限なく用途及び所望の諸性能、加工適性に応じて適宜選択すればよい。
基材がフィルム、シート、又は板の形態である基材である場合、物品の設計上の代表的な寸法として厚さがある。かかる厚さについては特に制限はないが、一般的には製造加工適性、機械的強度、使用取扱性及び経済性等の観点から、10μm以上10cm以下程度とすればよい。また、フィルム、シートの形態である場合は、その厚さは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、上限として300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
基材が板の形態である場合は、その厚さは1mm以上2cm以下が好ましい。
また、基材が紙基材の場合、坪量は、通常20~150g/mが好ましく、30~100g/mがより好ましい。
基材は、物品を構成する他の層、物品を積層する被着材との密着性を高めるために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成してもよい。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理が表面処理の効果及び操作性等の観点から好ましい。
〔その他の層〕
艶消物品は、上記艶消層の他、上記の基材、さらにはその他の層として、例えばプライマー層、透明性樹脂層、装飾層、接着層等を必要に応じて有し得る。これらの層を有する艶消物品の一実施形態を示す断面図を図3及び図4に示す。図3及び4は、艶消物品の一実施形態を示す断面図であり、艶消物品1(艶消物品)をその厚さ方向(同図においてはZ方向)に平行な面で切断した断面図である。
図3に示される艶消物品1(艶消物品)は、基材5及び艶消層4を順に有しており、図4に示される艶消物品1(艶消物品)は、基材5、装飾層6、接着層7、透明性樹脂層8、プライマー層9及び艶消層4を順に有している。
(プライマー層)
艶消物品は、例えば複数の層により構成される場合、既述のように当該複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。
艶消物品が艶消層以外の層を有する場合、例えば艶消層と基材とを有する場合、艶消層と基材との間に、層間密着性の向上のため、プライマー層を設けることができる。
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
バインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
また、バインダー樹脂は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化したものであってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものが好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化したものがより好ましい。
プライマー層の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましく、2μm以上6μm以下がさらに好ましい。
艶消物品は、被着体との接着性の向上等を目的として、艶消層の少なくとも一方のシワを有する表面とは反対側に、また基材を有する場合は、当該基材の艶消層が設けられる側とは反対側に、プライマー層(「裏面プライマー層」とも称される。)を有することもできる。
(透明性樹脂層)
艶消物品は、その強度を高めるため、また後述する装飾層を有する場合は当該装飾層の保護等の観点から、透明性樹脂層を有してもよい。とりわけ、艶消物品を床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に用いる場合に有効である。
透明性樹脂層は、当該基材と艶消層との間に設ければよく、装飾層を有する場合は、当該装飾層を保護するため、当該装飾層と艶消層との間に設ければよい。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも加工適性等の観点からポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。また、これらの各種樹脂を2種類以上積層して、又は混合して使用してもよい。
透明性樹脂層は、透明性樹脂層よりも基材側を視認できる程度に透明であればよく、また装飾層を有する場合は当該装飾層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明及び半透明であってもよい。すなわち、本明細書において、「透明性」とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むことを意味する。
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、また着色剤等の添加剤を含有してもよい。これらの耐候剤、着色剤等の添加剤としては、既述のものを用いればよい。
透明性樹脂層の厚さは、装飾層を保護する観点、また加工適性等を考慮すると、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が更に好ましい。
(装飾層)
艶消物品は、意匠性を向上させる観点から、装飾層を有してもよい。装飾層は、艶消層のシワを有する少なくとも一方の面とは反対側の面に設ければよく、基材を有する場合は基材と艶消層との間に、また透明性樹脂層を有する場合は装飾層、透明性樹脂層及び艶消層の順に設ければよい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層、図4中の「6a」)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層(図4中の「6b」)であってもよい。また、図4に示されるように、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
絵柄層の絵柄(模様)としては、特に制限なく所望に応じた絵柄を採用すればよく、例えば木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄、大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄、布帛表面の布目柄、皮革表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
装飾層に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合したものが使用される。
装飾層のバインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材に用いられ得る顔料として例示したものと同様のものを用いることができる。
着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
装飾層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、2μm以上5μm以下が更に好ましい。
(接着層)
艶消物品が、透明性樹脂層を有する場合、基材と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着層を有してもよい。
基材と透明性樹脂層との間に、更に装飾層を有する場合、接着層と装飾層との位置関係は特に限定されず、具体的には、基材に近い側から装飾層、接着層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよいし、基材に近い側から接着層、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有していてもよい。
接着層は、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下がさらに好ましい。
〔艶消物品の製造方法〕
艶消物品は、既述のように、艶消層の単一層による層構成を有する場合、また少なくとも基材を含む層構成を有する場合がある。以下、艶消物品の製造方法について、単一層の場合、基材及びその他の層を有する場合、分けて説明する。
まず、単一層の場合は、以下の方法により艶消物品を製造することができる。
離型性支持体の離型層を有する面に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
離型層を有する離型性支持体は、艶消物品を使用する際に剥離すればよい。
次に、基材及びその他の層を有する場合は、以下の方法により艶消物品を製造することができる。
艶消物品は、例えば基材の一方の主面側に、上記の艶消層形成用樹脂組成物、すなわち上記の樹脂、必要に応じて用いられるシワ形成安定剤、その他添加剤を含む樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線等の電離放射線を照射して前記塗布層を硬化させて艶消層を形成する、艶消層形成工程を経て製造することが好ましい。また、樹脂組成物が溶剤を含有する場合、塗布層を形成する工程の後、溶剤乾燥工程を経てもよい。
上記艶消物品の製造方法は、とりわけ、前記艶消層側の60°グロス値が5.0以下という艶消物品を製造する場合に好適な製造方法となり得る。中でも、艶消物品の製造方法は、特に、μmオーダーの粒子の添加量が樹脂100質量部に対して15質量部以下という低含有量に抑えて、しかも60°グロス値が5.0以下の艶消(低艶、低光沢)の表面を実現し得る点において、従来公知の艶消化粧材、艶消化粧シート等の艶消物品の製造方法とは一線を画するものである。
このような製造方法により、艶消物品を容易に得ることが可能となる。艶消層の60°グロス値が5.0以下という艶消物品を製造する場合、艶消層の形成にあたり、既述のように、好ましくは少なくとも100nm以上200nm未満という低波長(短波長)の紫外線を、艶消層を形成するシワ形成安定剤を含む艶消形成用の樹脂組成物に照射する。これにより、当該艶消層の少なくとも一方の表面に、シワを形成させやすくなり、艶消物品(艶消層)に優れた艶消効果の視認性及び質感を付与しやすくなる。
このような低波長(短波長)の紫外線を、艶消層形成用の樹脂組成物に照射する場合、艶消層の少なくとも一方の表面においてシワが形成し艶消効果の視認性及び質感が発現しやすくなる機構についての詳細は不明であるが、以下の機構によるものと推察される。
艶消層形成用の樹脂組成物を所定の厚さで塗布した塗布物に低波長(短波長)の紫外線を照射すると、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることで、シワが形成するものと考えられる。このように、シワの形成は、低波長(短波長)の紫外線の照射により、艶消層形成用の樹脂組成物の表面からの一定の厚み方向のみが硬化した状態において生じていると考えられる。
後述する実施例と比較例との対比より、マルテンス硬度が200N/mmより大きい場合に、シワの形成による艶消効果の視認性及び質感が得られていないことから、当該シワの形成による優れた艶消効果の視認性及び質感の発現は、低波長(短波長)の紫外線による表面部分のみの硬化だけでは説明できない。すなわち、艶消物品がシワを有することで艶消効果の視認性を発現するには、マルテンス硬度が200N/mm以下であることが必要不可欠である。また、マルテンス硬度が200N/mmよりも大きい場合にシワの形成により優れた艶消効果の視認性が得られていないことを考慮すると、シワ形成安定剤は、マルテンス硬度が200N/mm以下である場合に、シワ形成のきっかけとなる核のような機能を発現し、当該核を中心に、上記樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まりシワの凸部(突起部)と、凸部(突起部)の形成とともに凹部が形成し、結果としてシワの形成が促進するものと考えられる。そして、このようにして形成したシワは、その形状に起因する光拡散効果により優れた艶消物品に艶消効果の視認性とともに、質感をも付与しやすいものになると考えられる。
本製造方法で用いられるシワ形成安定剤、シワ形成安定剤を含む艶消層形成用の樹脂組成物は、上記の艶消物品で用いられ得るシワ形成安定剤、艶消層形成用の樹脂組成物として説明した内容と同じである。
本製造方法では、艶消層形成用の樹脂組成物を少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射することが好ましい。この照射により、当該紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化をはじめることから、表面だけが硬化収縮を生じることでシワの形成が安定し、当該樹脂組成物表層はシワを有する硬化物となり、艶消層を構成するものとなる。そして、かかる後、硬化の進行が遅い当該表面近傍部分から深さ方向に離れた深奥部分への硬化が進み、当該樹脂組成物の層は硬化物となり、もって当該樹脂組成物の全厚さにわたり硬化し、かつ表面に光拡散効果を発現するシワを有する艶消層を構成するものとなる。当該深奥部分への硬化の進行を促進する観点からは、100nm以上200nm未満の波長光で照射した後、さらに他の照射処理を行うことが好ましい。
(照射処理について)
本製造方法における艶消層形成工程では、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、以下(1)及び(2)の照射処理を順に行うことが好ましい。
(1)100nm以上200nm未満の波長光の照射処理
(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理
上記(1)の照射処理に続いて、上記(2)の照射処理を行うことにより、上記(1)の照射処理によりシワが保持された樹脂組成物の硬化状態を更に進行させることができるため、表面特性とともに、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
(1)の照射処理において採用される、100nm以上200nm未満の波長光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」が好ましい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマとしては、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する。)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)等の波長光を好ましく採用することができる。エキシマ光としては、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザ光のいずれも用いることができるが、通常自然放出光を用いれば十分である。なお、当該光(紫外線)を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称されている。
エキシマ光は波長ピークが単一であり、また通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭いことが特徴として挙げられる。このようなエキシマ光を用いることで、シワの形成が促進し、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなる。
シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、波長としては好ましくは120nm以上、より好ましくは140nm以上、更に好ましくは150nm以上、より更に好ましくは155nm以上であり、上限として200nm未満であり、特に好ましくは、172nm(Xe)である。このように、本製造方法では、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、より低波長(短波長)の波長光を用いることが好ましく、低波長(短波長)の紫外線(波長:280nm以下)のうち、200nm未満の領域の低波長(短波長)の紫外線が好ましい、ともいえる。
本製造方法において、上記波長光の積算光量は、シワの形成を促進させて、優れた艶消効果の視認性及び質感を得られやすくする観点から、好ましくは1mJ/cm以上、より好ましくは10mJ/cm以上、更に好ましくは30mJ/cm以上、より更に好ましくは50mJ/cm以上である。また上限としては特に制限はなく、波長光の照射に必要な灯数を低減し、また生産効率の向上等の生産性の観点から、上限として好ましくは1,000mJ/cm以下、より好ましくは500mJ/cm以下、更に好ましくは300mJ/cm以下である。
また、これと同様の観点から、紫外線出力密度は、好ましくは0.01W/cm以上、より好ましくは0.1W/cm以上、更に好ましくは0.5W/cm以上であり、上限として好ましくは10W/cm以下、より好ましくは5W/cm以下、更に好ましくは3W/cm以下である。
また、上記波長光を照射する際の酸素濃度は、より低いことが好ましく、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは750ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下である。
本製造方法における艶消層形成工程では、上記(1)の100nm以上200nm未満の波長光での照射処理の後、上記(2)電子線及び200nm以上400nm以下の波長光の少なくとも一方での照射処理を行うことが好ましい。
(2)の照射処理で採用される電子線の照射条件としては、艶消層形成用の樹脂組成物が硬化すれば特に制限はないが、電子線の加速電圧は好ましくは10kV以上、より好ましくは30kV以上、更に好ましくは50kV、より更に好ましくは75kV以上であり、上限として好ましくは300kV以下、より好ましくは250kV以下、更に好ましくは200kV以下である。電子線の加速電圧が上記範囲内であると、シワの形状をそのまま保持しやすくなるので、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなり、艶消層形成用の樹脂組成物の硬化により優れた表面特性が効率的に得られる。
また、これと同様の観点から、電子線の照射線量は、好ましくは5kGy以上、より好ましくは10kGy以上、更に好ましくは15kGy以上であり、上限として好ましくは150kGy以下、より好ましくは125kGy以下、更に好ましくは100kGy以下である。
電子線源としては、上記照射条件を発揮し得るものであれば特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、また直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
(2)照射処理で採用される200nm以上400nm以下の紫外線は、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等を光源とする紫外線照射装置を用いて照射することができる。また、200nm以上400nm以下のエキシマ光、例えば222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)等の波長光を用いてもよい。
(2)照射処理で採用される紫外線の波長としては、好ましくは330nm以上であり、上限として好ましくは390nm以下である。紫外線の波長が上記範囲内であると、シワの形状をそのまま保持しやすくなるので、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られやすくなり、艶消層形成用の樹脂組成物の硬化により優れた表面特性が効率的に得られる。
これと同様の観点から、(2)の照射処理に用いられ得る紫外線照射装置の出力は、好ましくは50W/cm以上、より好ましくは100W/cm以上であり、上限として好ましくは300W/cm以下、より好ましくは200W/cm以下である。また、照射速度は、好ましくは1r/min以上であり、より好ましくは3r/min以上であり、上限として好ましくは50r/min以下、より好ましくは10r/min以下である。
また、本製造方法において、上記(1)及び(2)の照射処理の前に、(3)予備硬化のための照射処理を行ってもよい。(3)予備硬化のための照射処理を行うことで、艶消層の艶消効果の視認性及び質感が向上し、また表面特性も向上する。(3)予備硬化のための照射処理において用いられる波長光としては、例えば320nm超の波長光、好ましくは320nm超400nm以下、より好ましくは385nm以上400nm以下の波長光が挙げられる。この波長光を用いて予め照射して艶消層形成用の樹脂組成物を全体的に予備硬化させることができる。
予備硬化については、艶消層に求められる所望の性状(例えば、加工特性、耐汚染性等の表面特性)に応じて採用の要否を適宜決めればよい。また、上記波長光は紫外線に属するものであるが、紫外線に限らず他の電離放射線、例えば電子線等を用いることも可能である。
本製造方法において、艶消層は、艶消層形成用の樹脂組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布した塗布層(未硬化樹脂層)を、少なくとも100nm以上200nm未満の波長光で照射して形成することができる。
また、本製造方法で得られる艶消物品は、上記の艶消物品で採用し得る層として説明した、基材の他、透明性樹脂層等の他の層を有し得る。
例えば、装飾層、接着層及びプライマー層は、各層を形成する組成物を含む塗布液を、上記の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。また、透明性樹脂層を形成する場合は、透明性樹脂層を形成する樹脂フィルムをドライラミネート等により形成することができる。
〔化粧部材〕
艶消物品の代表的な用途としては、艶消物品をそのままで、建築物や各種家具、車両、家電製品等の表面を構成する、いわゆる化粧部材として用いることもできるし、また被着材と積層して、複合して、乃至は組み合わせて化粧部材として用いることも可能である。いずれとするかは、所望に応じて決定すればよい。
被着材を有する場合、化粧部材は、当該被着材と上記の艶消物品とを有するものであり、具体的には、被着材の装飾を要する面と、艶消物品の艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、を対向させて積層したものである。また、艶消物品がシート形態を有している場合は、被着材に積層しやすいという特徴も有している。
(被着材)
被着材としては、上記基材として採用し得るものとして例示した材料から適宜選択される材料からなる部材が挙げられる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質系材料により構成される木質部材、金属により構成される金属部材及び樹脂により構成される樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上100mm以下が好ましく、0.3mm以上5mmがより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
(接着剤層)
被着材と艶消物品とは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼着されることが好ましい。
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、湿気硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤、乾燥硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、感熱接着剤(例えば、ホットメルト型接着剤)、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。
これらの接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のウレタン系接着剤、エステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の各種粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
(化粧部材の製造方法)
化粧部材は、艶消物品と被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、艶消物品とを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、艶消物品の艶消層のシワが形成され艶消効果の視認性及び質感を発現する一方の面とは反対側の面と、また艶消物品が基材を有する場合は基材側の面とを対向させて積層する。被着材と艶消物品との積層する方法としては、例えば、接着剤層を介して艶消物品を板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法等が挙げられる。
接着剤としてホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
(化粧部材の用途)
以上のようにして得られる化粧部材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材、看板、防音壁等の各種部材として好適に用いられる。艶消物品は、シートの形態である場合は、上記の各種部材用の化粧シートとして好適に用いられる。また、艶消物品の、表面特性、中でも耐擦傷性に優れ、かつ艶消効果の視認性及び質感にも優れるという特徴を考慮すると、耐擦傷性が特に求められる用途、例えば建築物の内装用部材の中でも床材の用途、また使用頻度が高い窓枠、扉、扉枠、手すり等の建具部材の用途に好適に用いられる。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品は、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法:60°グロス値)
実施例及び比較例で得られた物品について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、K 5600-4-7:1999に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。
(質感(面状態の均一性)の評価)
実施例及び比較例で得られた物品について、任意の成人20人に表面の質感(面状態の均一性)について評価させて、以下の基準で評価した。
A:18人以上が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
B:15人以上17人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
C:14人以下が、面状態が均一であり、艶消効果の視認性が高いと評価した。
(マルテンス硬度の測定)
各実施例及び比較例で得られた物品の艶消層について、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM-500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を加速速度0.15mN/20sで連続的に増加させながら最大荷重3.0mNまで加圧し、ピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(艶消層の面)に押し込んだ。押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。クリープ時間は5秒とした。
任意の10箇所について、上記の測定を行い算出されたマルテンス硬度の平均値を、実施例及び比較例の物品の艶消層のマルテンス硬度とした。
[実施例1]
コロナ放電処理を施したポリプロピレンシート(厚さ:60μm)を基材とし、当該基材の一方の面に、印刷インキ(バインダー樹脂:2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂)をグラビア法で塗布して着色層(厚さ:3μm)を設け、当該着色層上に、アクリル樹脂及びウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:2μm)を設け、当該プライマー層上に、艶消層形成用の樹脂組成物(3官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー):30質量部、単官能アクリレートモノマー:40質量部、
2官能アクリレートモノマー:30質量部、シワ形成安定剤1(シリカ粒子、平均粒子径:3μm):3.0質量部、光重合開始剤(ベンゾフェノン系):0.8質量部)を、グラビア法により塗布し(塗布量:5g/m(乾燥時))、次いでLEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:395nm、紫外線量:0.6W/cm)、次いでエキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射し(波長:172nm(Xe)、紫外線出力密度:1W/cm、積算光量:10~100mJ/cm、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下))、次いで更に高圧水銀灯を用いて照射して(波長:365nm、紫外線出力密度:200W/cm)、基材上に艶消層を設け、基材と艶消層とを有する艶消物品を得た。得られた艶消物品について、上記方法にて60°グロス値、マルテンス硬度を測定した。測定結果を第1表に示す。また、質感の評価についても、第1表に示す。
[実施例2~5]
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、艶消物品を得た。得られた艶消物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
[比較例1及び2]
実施例1において、艶消層形成用の樹脂組成物の組成を第1表に示される組成とした以外は、実施例1と同様にして、物品を得た。得られた物品の艶消層側の60°グロス値及びマルテンス硬度、また質感の評価を、第1表に示す。
Figure 2022152944000001
第1表の結果から、本実施形態の艶消物品は、その艶消層側の60°グロス値が2.0以下となっており、艶消効果の視認性に極めて優れ、かつ質感にも優れた物品であることが確認された。また、実施例における艶消層のマルテンス硬度は200N/mm以下であり、比較例のマルテンス硬度がいずれも200N/mmより大きいことから、艶消効果の視認性及び質感とマルテンス硬度とには相関関係があることも確認された。すなわち、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下であることにより、優れた艶消効果の視認性及び質感が得られていることが確認された。
一方、艶消層のマルテンス硬度が200N/mmよりも大きい比較例1の物品は、図10の光学顕微鏡画像に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、優れた艶消効果の視認性が得られず、部分的にグロス値が実施例と同じ部分は存在したが、部分的に高艶な部分があり面状態が不安定であり、質感に優れるものとはいえないものであった。また、比較例2の物品も、図11の光学顕微鏡画像に示されるようにその表面にはシワが若干発生していたものの、艶消層のマルテンス硬度が200N/mmよりも大きく、60°グロス値も6.1と高いことから艶消効果は低く、また質感も低いものとなった。このことから、シワ形成安定剤を用いたとしても、艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下でないと、シワ形成安定剤の使用効果は得られないことも分かった。
また実施例1~5の光学顕微鏡画像(各々図5~9)によれば、これらの実施例の艶消物品はその表面に不規則なシワを有していることが確認できる。一方、比較例1の光学顕微鏡画像(図10)、比較例2の光学顕微鏡画像(図11)によれば既述のように、その表面にはシワが若干発生しており、部分的に実施例と同様のシワを有する領域はあるものの、シワの形成が不安定であり(均一でなく)、シワがない領域と混在していることが分かる。なお、図5~11の光学顕微鏡画像の縮尺は、これらの図面に掲載される画像の縦及び横は各々203.3μm×271.5μmである。
この結果から、本実施形態の艶消物品は、艶消層のマルテンス硬度を200N/mm以下とすることにより、その表面に不規則なシワが形成し、当該シワに起因して極めて優れた艶消効果の視認性及び質感が発現していることが確認された。
本実施形態の艶消物品は、種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具及び部材、又は家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材等の各種部材として好適に用いられる。
更に、上記の各種部材の他にも、艶消物品等は、単体で、又は他の素材と積層乃至は複合化した形態で、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボード類の鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓ガラス等)、人工皮革等に用いることができる。

Claims (11)

  1. 表面に不規則なシワによる凹凸形状を有し、樹脂組成物の硬化物により構成される艶消層を有し、前記艶消層のマルテンス硬度が200N/mm以下である、艶消物品。
  2. 前記樹脂組成物が、平均粒子径が前記表面シワ層の厚さの100%以下及び30μm以下のいずれか小さい方を上限とするシワ形成安定剤を含有する、請求項1に記載の艶消物品。
  3. 前記シワ形成安定剤の含有量が、前記樹脂組成物に含まれる樹脂100質量部に対して0.5質量部以上6.0質量部以下である、請求項2に記載の艶消物品。
  4. 前記不規則なシワが、複数の線条突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の線条突起部により囲まれて形成する凹部とにより構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶消物品。
  5. 前記艶消層が、艶消剤を含まない請求項1~4のいずれか1項に記載の艶消物品。
  6. 前記艶消層が、全面にわたって設けられる請求項1~5のいずれか1項に記載の艶消物品。
  7. 前記樹脂が、電離放射線硬化性樹脂である請求項1~6のいずれか1項に記載の艶消物品。
  8. 更に基材を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の艶消物品。
  9. 前記凹凸形状が、前記艶消層の前記基材とは反対側の面に存在する請求項8に記載の艶消物品。
  10. 前記樹脂組成物に含まれる樹脂が、重合性モノマー及び重合性オリゴマーを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の艶消物品。
  11. 前記重合性モノマー及び前記重合性オリゴマーの合計100質量部に対する重合性オリゴマーの含有量が、5質量部以上45質量部以下である請求項10に記載の艶消物品。
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