JP2022150892A - 電極活物質層、電極、全固体電池 - Google Patents

電極活物質層、電極、全固体電池 Download PDF

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Abstract

【課題】電池に用いた際、優れたサイクル特性およびレート特性を実現できる電極活物質層を提供する。【解決手段】この電極活物質層は、活物質と固体電解質とを含む電極活物質層であって、前記固体電解質の少なくとも一部は、網状である。【選択図】図2

Description

本発明は、電極活物質層、電極、全固体電池に関する。
近年、エレクトロニクス技術の発達はめざましく、携帯電子機器の小型軽量化、薄型化、多機能化が図られている。それに伴い、電子機器の電源となる電池は、小型軽量化、薄型化、信頼性の向上が強く望まれており、電解質として固体電解質を用いる全固体電池が注目されている。
全固体電池において、固体電解質として無機固体電解質を使用し、電極として有機物を使用した場合、有機電解液の漏液やガス発生の心配がなく安全性が高い。そのため、全固体電池は一層注目されている。また、全固体電池は液系の電池と比較して、電池反応以外の反応が生じることが少ない。そのため、全固体電池は長寿命化の観点でも期待されている。
全固体電池の作製方法の一例として、焼結法と粉末成形法とがある。焼結法は、負極と固体電解質層と正極とを積層後、焼結して全固体電池を形成する。焼結法では、固体電解質層と正極層及び固体電解質層と負極層の界面を良好に接合することができると知られている。粉末成形法は、負極と固体電解質層と正極とを積層後、圧力を加えて全固体電池を形成する。
特許文献1には、焼結法を用いて製造された全固体電体が開示されている。特許文献1に開示された全固体電池は、正極層及び負極層のどちらか一方の気孔率が5%~50%であると開示されている。特許文献1に開示された全固体電池は、上記構成にすることで、充放電の際、正極活物質、負極活物質といった電極活物質の膨張収縮を緩和することを目的としている。
特開2012-99225号公報
しかしながら、特許文献1に開示された電極活物質層を備える電池では、十分なサイクル特性を得られなかった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電池に用いた際、優れたサイクル特性およびレート特性を実現できる電極活物質層を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、網目形状を有する固体電解質を含む電極活物質層を製造することに成功し、このような電極活物質層を全固体電池に用いた際、優れたサイクル特性およびレート特性を得られることを見出した。すなわち、本実施形態では、以下の手段を提供する。
(1)本発明の第一の態様にかかる電極活物質層は、
活物質と固体電解質とを含む電極活物質層であって、
前記固体電解質の少なくとも一部は、網状である。
(2)上記態様に係る電極活物質層において、前記網状の固体電解質は、以下の式(1)で表される固体電解質であってもよい
Li2+a1-b・・・(1)
(式(1)において、
EはAl、Sc、Y、Zr、Hf、ランタノイドからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
Gは、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Si、Al、Ti、Cu、Sc、Y、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Au、Biからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
DはCO、SO、BO、PO、NO、SiO、OH、O、からなる群から選択される少なくとも一つの基であり
XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
0≦a<1.5、0≦b<0.5、0≦c≦5.0、0<d≦6.1である)。
(3)上記態様に係る電極活物質層において、
前記固体電解質のうち網状の部分は、複数の繊維が重なり合っており、
前記電極活物質層の面内方向に垂直な断面を走査電子顕微鏡で観察した画像において、
前記複数の繊維のそれぞれの繊維において、アスペクト比が小さい方向における長さの最大値を前記繊維の直径とした際、
前記複数の繊維のうち、視野中における直径が大きいものから順に選択した10本の繊維の平均直径が5nm以上30nm以下であってもよい。
(4)上記態様に係る電極活物質層において、
前記固体電解質のうちの網状の部分は、複数の繊維が重なり合っており、
前記電極活物質層の面内方向に垂直な断面を走査電子顕微鏡で観察した画像において、
前記複数の繊維、または前記複数の繊維と前記活物質及び/又は前記固体電解質とで囲まれた網目部分の面積を網目部分面積とし、
前記網目部分面積が大きいものから順に選択した10つの網目部分面積の平均面積が70nm以上8000nm以下であってもよい。
(5)本発明の第二の態様に係る電極は、上記態様にかかる電極活物質層を備える。
(6)本発明の第三の態様に係る全固体電池は、上記態様に係る電極を備える。
本実施形態にかかる電極活物質層を電池に用いると、優れたサイクル特性およびレート特性を得られる。
本発明の一実施形態にかかる全固体電池の断面模式図である。 本発明の一実施形態にかかる電極活物質層の要部の断面模式図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率、数、配置などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法、数、数値、配置等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
まず方向について定義する。後述する正極活物質層1B及び負極活物質層2Bが積層されている方向を積層方向とする。また後述する正極活物質層1B及び負極活物質層2Bが広がる面内方向とする。
[全固体電池]
図1は、本実施形態にかかる全固体電池100の要部を拡大した断面模式図である。全固体電池100は、蓄電素子10と外装体20とを備える。蓄電素子10は、外装体20内の収容空間Kに収容される。蓄電素子10は、積層体4と、外部端子12,14とを有する。外部端子12,14は、積層体4を外部と電気的に接続する。
外装体20は、例えば、金属箔22と、金属箔22の両面に積層された樹脂層24と、を有する。外装体20は、例えば金属箔を高分子膜(樹脂層)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。金属箔22は、例えばアルミ箔である。樹脂層24は、例えば、ポリプロピレン等の高分子膜である。樹脂層24は、内側と外側とで異なっていてもよい。例えば、外側の樹脂層として、融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等を用い、内側の樹脂層として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等、耐熱性、耐酸化性、耐還元性の高いものを用いることができる。
積層体4は、例えば少なくとも一つの正極層1と、少なくとも一つの負極層2と、正極層1と負極層2との間にある固体電解質層3とを有する。正極層1は、第1電極層の一例であり、負極層2は、第2電極層の一例である。第1電極層と第2電極層は、いずれか一方が正極として機能し、他方が負極として機能する。正極層1及び負極層2のそれぞれの一端は、対応する極性の外部端子12,14に接続されている。
全固体電池100は、正極層1と負極層2との間で固体電解質層3を介したイオンの授受により充放電する。図1では、積層型の電池を示したが、巻回型の電池でもよい。全固体電池100は、例えばラミネート電池、角型電池、円筒型電池、コイン型電池、ボタン型電池等に用いられる。
「正極層」
図1に示すように、正極層1は、例えば正極集電体1Aと正極活物質層1Bとを有する。
(正極集電体)
正極集電体1Aは、例えば粉体、箔、パンチング、或いはエクスパンの集電体である。正極集電体1Aは、導電率が高いことが好ましい。例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属およびそれらの合金、または導電性樹脂を用いることができる。
(正極活物質層)
正極活物質層1Bは、正極集電体1Aの片面又は両面に形成される。正極活物質層1Bは、本実施形態にかかる電極活物質層の一例である。正極活物質層1Bは、正極活物質と、固体電解質とを含み、さらに必要に応じて、導電助剤、バインダーを含んでいてもよい。正極活物質層1Bに備えられる固体電解質は、少なくとも一部が網状の固体電解質である。本実施形態においては、正極活物質層1Bを形成するために用いる材料を総称して、正極合剤という場合がある。
正極活物質は、リチウムイオンの放出及び吸蔵、リチウムイオンの脱離及び挿入を可逆的に進行させることが可能であれば、正極活物質として特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質を使用できる。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV、Li(PO、LiVOPO4)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、V、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素を示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)、LiNiCoAl(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物である。
また正極活物質として、リチウムを含有していない正極活物質も使用できる。これらの正極活物質は、あらかじめ負極層に金属リチウムやリチウムイオンをドープした負極活物質を配置しておき、電池を放電から開始することで使用できる。例えば、リチウム非含有金属酸化物(MnO、Vなど)、リチウム非含有金属硫化物(MoSなど)、リチウム非含有フッ化物(FeF、VFなど)などは、これらの正極活物質の一例である。
図2は、正極活物質層1Bの内部を拡大し、模式的に示した断面図の一例である。図2では、導電助剤を省略している。
正極活物質層1Bは、内部に正極活物質AM1、AM2と、固体電解質SE1、SE2を有する。図2において、固体電解質SE1、SE2は、例えば正極活物質AM1とAM2と接している。
固体電解質SE2は、網状の固体電解質である。固体電解質SE2は、正極活物質層1Bの面内方向に垂直に切断した断面視形状が網状である。固体電解質SE2は、例えば複数の繊維状の固体電解質が重なり合った形状である。そのため、複数の繊維状の固体電解質は、例えば一体となった形状をしている。すなわち、固体電解質SE2は、例えば複数の繊維状の部分P1を有する。複数の繊維状の部分P1のそれぞれの繊維は、例えば分岐し、隣り合う繊維と合流する。このように、本実施形態にかかる正極活物質層1Bでは、固体電解質SE2の複数の繊維状の部分P1のそれぞれが分岐及び合流するため、固体電解質SE2は、複数の繊維状の部分P1に囲まれた網目部分P2を有する。網状の固体電解質は、巣のような構造をしている。
網目部分P2は、正極活物質層1Bの断面において、複数の繊維状の部分P1、或いは
複数の繊維状の部分P1と正極活物質AM1,AM2及び/又は固体電解質SE1に囲まれることで閉ざされた領域である。尚、網目部分P2は、二次元での観察で複数の繊維状の部分P1により閉ざされた領域であり、三次元での観察では複数の繊維状の部分P1により閉ざされていなくてもよい。
走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて固体電解質SE2を観察すると、複数の繊維状の部分P1の明度は、網目状の部分P2の明度よりも高い値を示す。SEMの断面画像において、網目部分P2は空隙として確認でき、内部は固体電解質SE2以外の物質(例えば、真空)で充填されていると考えられる。
複数の繊維状の部分P1における各繊維の平均直径は、例えば5nm以上30nm以下であり、10nm以上や20nm以下であってもよい。ここで、複数の繊維状の部分P1における各繊維の平均直径は、正極活物質層1Bの面内方向に垂直な断面における各繊維の平均直径である。複数の繊維状の部分P1における各繊維の平均直径は、以下の手順で測定できる。
先ず、正極活物質層1Bの面内方向に垂直な断面を走査電子顕微鏡で観察する。次いで、網状の固体電解質SE2の明度を二値化し、明度が閾値以上である繊維状の部分P1と、明度が閾値以下である網目部分P2とに分類する(以下、二値化後の画像を二値化画像と称する)。次いで、複数の繊維状の部分P1の各繊維のアスペクト比の小さい方向における長さの最大値を各繊維の直径とし、直径が大きい繊維から順に10本選択する。次いで、選択した10本の繊維の直径の平均を求め、これを平均直径とする。
網目部分P2の平均面積は、例えば70nm以上8000nm以下であり、70nm以上3000nm以下や、500nm以上8000nm以下であってもよい。ここで、網目部分P2の平均面積は、以下の手順で測定される。
先ず、正極活物質層1B内の断面の網状の固体電解質SE2を有する部分をSEMで観察し、二値化画像を得る。次いで、視野中の網目部分P2を、面積が大きいものから順に10つ選択し、それぞれの面積を求める。次いで、選択した10つの網目部分の面積(網目部分面積)の平均を求め、これを網目部分の平均面積とする。
尚、走査電子顕微鏡像における網状の固体電解質SE2の明度を二値化する際、例えば8bit(256階調)の白黒像で表したとき、における明度100を閾値とすることができる。また、上記平均直径および網目部分の平均面積を求める際、直径の大きい繊維の選択および面積の大きい網目部分の選択は、同一視野中のものから選択する。この際、SEMの倍率は、例えば100,000倍程度にすることができる。
正極活物質層1Bに含まれる固体電解質SE1,SE2は、例えば、以下の式(1)で表される化合物である。固体電解質SE1と固体電解質SE2とは、例えば、同じ材料からなる。
Li2+a1-b・・・(1)
(0≦a<1.5、0≦b<0.5、0≦c≦5.0、0<d≦6.1)
上記の式(1)において、EはAl、Sc、Y、Zr、Hf、ランタノイドからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luである。固体電解質がEの元素を含むと、固体電解質の電位窓が広がる。Eは、ScまたはZrを含むことが好ましく、Zrであることが特に好ましい。EがScまたはZrを含むと、固体電解質のイオン電導度が高まる。
上記の式(1)において、Gは、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Si、Al、Ti、Cu、Sc、Y、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Au、Biからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。固体電解質がGの元素を含むと、キャリアイオンであるリチウムイオン量が増減してイオン伝導度が高くなる。
上記の式(1)において、DはCO、SO、BO、PO、NO、SiO、OH、O、からなる群から選択される少なくとも一つの基である。DとEとの間の共有結合性が強いと、EとXとの間のイオン結合も強くなる。このため、化合物中のEが還元されにくく、還元側の電位窓が広い化合物になるものと推定される。
上記の式(1)において、XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。Xは、価数当たりのイオン半径が大きい。固体電解質がXを含むことにより、固体電解質内におけるリチウムイオンの電導度が高まる。固体電解質のイオン電導度を高めるためには、XはClを含むことが好ましい。固体電解質の耐酸化性および耐還元性のバランスを高めるためには、XはFを含むことが好ましい。固体電解質の還元耐性を高めるためにはXはIを含むことが好ましい。固体電解質がDを含むと、固体電解質の還元側の電位窓が広いものとなる。
本実施形態では、正極合剤に固体電解質を混合し、所定の方法で加工することで、少なくとも一部が網目部分である固体電解質を含む正極活物質層1Bを得られる。
「負極」
図1に示すように、負極層2は、例えば負極集電体2Aと、負極活物質を含む負極活物質層2Bとを有する。
(負極集電体)
負極集電体2Aは、例えば粉体、箔、パンチング、或いはエクスパンの集電体である。負極集電体2Aは、導電率が高いことが好ましい。例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属およびそれらの合金、または導電性樹脂を用いてもよい。
(負極活物質層)
負極活物質層2Bは、負極集電体2Aの片面又は両面に形成される。負極活物質層2Bは、負極活物質を含み、さらに必要に応じて、導電助剤、バインダー、固体電解質を含んでいてもよい。固体電解質としては、固体電解質層が含む固体電解質と同様の固体電解質を含んでいてもよい。本実施形態においては、負極活物質層2Bを形成するために用いる材料を総称して、負極合剤という場合がある。
負極活物質層2Bに含まれる負極活物質は、可動イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質は、例えば、アルカリ金属単体、アルカリ金属合金、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ、ゲルマニウムおよびその合金等のアルカリ金属等の金属と化合することのできる金属、SiO(0<x<2)、酸化鉄、酸化チタン、二酸化スズ等の酸化物、チタン酸リチウム(LiTi12)等のリチウム金属酸化物である。
(導電助剤)
導電助剤は、正極活物質層1B、負極活物質層2B内の電子伝導性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。導電助剤は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素系材料や、金、白金、銀、パラジウム、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属、ITOなどの伝導性酸化物、またはこれらの混合物が挙げられる。導電助剤は、粉体、繊維の各形態であってもよい。
(バインダー)
バインダーは、正極集電体1Aと正極活物質層1B、正極活物質層1Bと固体電解質層3,正極活物質層1B並びに負極集電体2Aと負極活物質層2B、負極活物質層2Bと固体電解質層3,負極活物質層2Bを構成する各種材料を接合する。
バインダーは、正極活物質層1B、負極活物質層2Bの機能を失わない範囲内で用いることができる。バインダーは、不要であれば含有させなくてもよい。正極活物質層1B、負極活物質層2B中のバインダーの含有量は、例えば、正極活物質層1B、負極活物質層2Bの0.5~30体積%である。バインダーの含有量が当該範囲内であれば、正極活物質層1B、負極活物質層2Bの抵抗が十分低くなる。
バインダーは、上述の接合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性を有する導電性高分子や、イオン伝導性を有するイオン導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性を有する導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性を有するイオン導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等を伝導するものを使用することができ、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤などである。バインダーに要求される特性としては、酸化・還元耐性があること、接着性が良いことが挙げられる。
「固体電解質層」
固体電解質層3は、正極層1と負極層2との間に位置する。固体電解質層3は、固体電解質を含む。固体電解質は、外部から印加された電場によってイオンを移動させることができる物質(例えば、粒子)である。例えば、リチウムイオンは、外部から印加された電場によって固体電解質内を移動する。また固体電解質は、電子の移動を阻害する絶縁体である。
固体電解質は、例えば、リチウムを含む。固体電解質層3は、例えば正極活物質層1Bに含まれる固体電解質と同様の材料を用いることができる。また固体電解質層3に含まれる固体電解質は、正極活物質層1Bに含まれる固体電解質とは異なる固体電解質であってもよい。
固体電解質は、例えば、硫化物系材料が用いられる固体電解質は、例えば、ペロブスカイト型化合物、リシコン型化合物、ガーネット型化合物、ナシコン型化合物、チオリシコン型化合物、ガラス化合物、リン酸化合物のいずれでもよい。La0.5Li0.5TiOは、ペロブスカイト型化合物の一例である。Li14Zn(GeOは、リシコン型化合物の一例である。Li7LaZr12はガーネット型化合物の一例である。LiZr(PO、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.55Al0.2Zr1.7Si0.259.7512、Li1.4Na0.1Zr1.5Al0.5(PO、Li1.4Ca0.25Er0.3Zr1.7(PO3.2、Li1.4Ca0.25Yb0.3Zr1.7(PO3.2は、ナシコン型化合物の一例である。Li3.25Ge0.250.754、LiPSは、チオリシコン型化合物の一例である。LiS-P5、LiO-V-SiOは、ガラス化合物の一例である。LiPO、Li3.5Si0.50.5、Li2.9PO3.30.46はリン酸化合物の一例である。固体電解質は、これらの化合物を1種以上含んでもよい。
(作用)
全固体電池において、電極活物質層に含まれる電極活物質は、充放電過程で膨張収縮を繰り返す。従来用いられている全固体電池では、電極活物質が膨張収縮を繰り返すと、例えば電極層と固体電解質層との界面において、固体電解質および電極活物質、並びに電極活物質同士が、離間する場合があった。すなわち、固体電解質と電極活物質との間、および電極活物質同士の間に空間が生じる場合があった。そのため、従来用いられている全固体電池では、電極層の剥離やクラックの発生が生じる場合があった。すなわち、サイクル特性が劣化しやすいという課題があった。また、リチウムイオン伝導経路や電子伝導経路が遮断され、界面抵抗が増加し、レート特性が低下する場合があった。
本実施形態にかかる正極活物質層1Bを備える全固体電池100では、正極活物質AM1,AM2が膨張収縮を繰り返した場合であっても、網状の固体電解質SE2が、正極活物質AM1,AM2の膨張収縮に伴う応力や全固体電池100の体積変化による歪みを吸収する。そのため、固体電解質SE1,SE2と正極活物質AM1,AM2との間、および正極活物質(AM1,AM2)同士の間に空間が生じることを抑制できる。従って、電極層の剥離やクラックの発生を抑制できる。また、リチウムイオン伝導経路や電子伝導経路が遮断され、界面抵抗が増加すること及びレート特性が低下することを抑制できる。すなわち、本実施形態にかかる電極活物質層を用いることで、優れたサイクル特性およびレート特性を得られる。
また本実施形態にかかる正極活物質層1Bは、全固体電池100の体積変化による歪みを網状の固体電解質SE2の網目部分P2が担っている。固体電解質と活物質との間の空隙を増やすことで全固体電池100の体積変化による歪みを緩和することもできる。しかしながらこの場合、空隙の存在比率が増えるほど、リチウムイオン伝導経路や電子伝導経路が少なくなり、全固体電池100の容量は小さくなる。これに対し、網状の固体電解質SE2は、体積変化を緩和する空隙を確保しつつ、リチウムイオン伝導経路を確保できる。
尚、本実施形態にかかる電極活物質層を備える全固体電池は、上記例に限定されない。例えば、上記例では、電極活物質層のうち正極活物質層1Bが、少なくとも一部が網状である固体電解質を含む例を示したが、電極活物質層のうち負極活物質層2Bが、少なくとも一部が網状である固体電解質を含んでいてもよい。負極活物質層2Bが含む固体電解質としては、例えば正極活物質層1Bが含む固体電解質と同様の固体電解質である。負極活物質層2Bにおける繊維状の固体電解質の平均直径、網目部分の平均面積、ならびにそれらの求め方は、正極活物質層1Bについて上述した例と同様である。
負極活物質層2Bのみに少なくとも一部が網状である固体電解質が含まれる場合であっても、正極活物質層1Bのみに少なくとも一部が網状である固体電解質が含まれる場合と同様に、網状の固体電解質が負極活物質の膨張収縮に伴う応力や全固体電池の体積変化による歪みを吸収するため、優れたサイクル特性およびレート特性を得られる。
正極活物質層1Bと負極活物質層2Bとのいずれの層にも、少なくとも一部が網状である固体電解質が含まれている全固体電池では、特に優れたサイクル特性およびレート特性を得られる。尚、負極活物質層2Bに、少なくとも一部が網状である固体電解質が含まれる場合、固体電解質の構成は、上述の正極活物質層1Bに含まれる固体電解質と同様の構成であってもよい。
また、図1においては、正極層1、負極層2、及び固体電解質層3をそれぞれ一つずつ有する全固体電池100を例示したが、本実施形態にかかる全固体電池は、正極層1、負極層2、及び固体電解質層3を二つ以上有していてもよい。その場合、少なくとも一つの正極活物質層または負極活物質層が、少なくとも一部が網状である固体電解質を含んでいればよい。
[全固体電池の製造方法]
次に、本実施形態にかかる全固体電池の製造方法について説明する。全固体電池は、例えば粉末成形法を用いて製造できる。まず、中央に貫通穴を有する樹脂ホルダーと下パンチと、上パンチとを用意する。樹脂ホルダーの貫通穴の直径は、例えば12mmとし、下パンチ及び上パンチの直径は例えば11.99mmとする。
樹脂ホルダーの貫通穴の下から下パンチを挿入し、樹脂ホルダーの開口側から、粉末状の正極合剤、固体電解質、負極合剤を投入する。次いで、投入した粉末状の材料の上に上パンチを挿入し、プレス機に載置し、プレスする。プレスの圧力は、例えば20kPaとする。
尚、固体電解質層を、正極合剤及び/又は負極合剤に含まれる固体電解質のみで形成する場合、正極合剤、負極合剤とは別に固体電解質を投入しなくてもよい。
正極合剤に含めて投入することのできる固体電解質は、例えばLi3YCl、LiZrCl、LiZrSOClである。
粉末状の材料は、樹脂ホルダー内で上パンチンと下パンチとでプレスされることで、正極活物質層1Bと固体電解質層3と負極活物質層2Bとが積層した成形体となる。
次いで、上パンチを一度取り外し、正極活物質層1Bの上に正極集電体1A、上パンチの順に挿入する。また下パンチを一度取り外し、負極活物質層2Bの上に負極集電体2A、下パンチの順に挿入する。正極集電体1A、負極集電体2Aは例えば直径12mmのアルミニウム箔や銅箔とする。上記手順を経て、正極集電体1A/正極活物質層1B/固体電解質層3/負極活物質層2B/負極集電体2Aが順に積層された積層体4が得られる。
積層体4は、必要に応じて4か所にねじ穴を有するステンレス製円板およびベークライト製円板で、ステンレス製円板/ベークライト製円板/上パンチ/蓄電素子10/下パンチ/ベークライト製円板/ステンレス製円板の順序で積載し、4か所のネジを締めしてもよい。当該構成とすると、上パンチと正極集電体1A、正極集電体1Aと正極活物質1B、下パンチと負極集電体2A、負極集電体2Aと負極活物質2B、との間のそれぞれの接合性が向上する。蓄電素子10は、保形機能を有する類似した機構であってもよい。
次いで、上パンチ、下パンチそれぞれの側面に設けたネジ穴にネジを差し込み、外部端子12、14を取り付けた外装体の中に挿入し、上パンチ、下パンチ側面に取り付けたそれぞれのネジと外部端子12、14とをリード線等で接続する。その後、外装体20内に収容する。外装体20により全固体電池100の耐候性が向上する。その後、外装体20の開口部を一つ残しそれ以外はヒートシールしてもよい。また、その後、残った開口部を外装体20の内部を真空引きしながらヒートシールしてもよい。このようにして全固体電池は製造される。
次いで全固体電池に対し、圧力を印加しながら充放電を行い、その後温度および時間を保持する、エージング処理を2サイクル行う。エージング処理は、例えば以下の条件で行うことができる。エージング処理を行うことにより、不良品を除くことができる。
全固体電池への圧力の印加は、例えば油圧プレス機(SHIMAZU製作所 型式:SSP-10A)に全固体電池を挟んだ状態で保持し、圧力を印加させながら充放電を行うことができる。
エージング処理での全固体電池への充電は、例えば0.1Cで、正極の電位が4.3V(vsLi/Li)まで、負極の電位が0.1V(vsLi/Li)まで定電圧充電を行った後、0.05Cの電流密度となるまで定電圧充電を行う。すなわち、正極の充電電圧を4.3V(vsLi/Li)、負極の充電電圧を0.1V(vsLi/Li)にすることができる。エージング処理での全固体電池の放電は、例えば0.1Cで正極の電位が0.1V(vsLi/Li)まで定電流放電を行う。この際、全固体電池に対して印加する圧力は、例えば、5kPa以上10kPa以下とすることができる。
次いで、圧力、温度、時間をコントロールすることで、エージング処理を行う。エージング処理の際の圧力は、充電の際、全固体電池に加えた圧力を保持することができる。エージング処理の温度は、例えば、70度以上85度以下とすることができる。エージング処理の時間は、例えば、30分間以上90分間以下とすることができる。エージング処理の条件は、少なくとも一部が網状の固体電解質を含む電極活物質層を備える全固体電池を製造できる限り、適宜変更してもよい。
上記工程を経て、正極活物質層1Bの少なくとも一部に網状の固体電解質を含む全固体電池100が製造される。
尚、負極活物質層2Bの少なくとも一部に網状の固体電解質を含む全固体電池を得るためには、例えば、正極の充電電圧を4.2V(vsLi/Li)、負極の充電電圧を0.05V(vsLi/Li)に、充電の条件を変更すればよい。また、正極活物質層1B及び負極活物質層2Bのいずれにも、少なくとも一部が網状の固体電解質を含む全固体電池を製造するためには、例えば、正極の充電電圧を4.3V(vsLi/Li)、負極の充電電圧を0.05V(vsLi/Li)に、充電の条件を変更すればよい。
本実施形態にかかる全固体電池の製造方法は、上記工程により上記実施形態にかかる全固体電池を製造できる。上記実施形態にかかる全固体電池は、その製造過程における充電電圧が低い製造条件や、充電の際に圧力を印加しない条件では、製造できない。
以上、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳述したが、上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
「実施例1」
実施例1の全固体電池は、以下の手順で作製された。
(正極合剤の作製)
正極合剤として、正極活物質と導電助剤と固体電解質とを準備した。正極活物質と導電助剤と固体電解質とは、それぞれ60wt%:5wt%:40wt%となるように秤量した。正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)を用いた。導電助剤としては、アセチレンブラックを用いた。固体電解質としては、LiZrClを用いた。
(負極合剤の作製)
負極合剤として、負極活物質と導電助剤と固体電解質とを準備した。負極活物質と導電助剤と固体電解質とは、それぞれ60wt%:5wt%:40wt%となるように秤量した。負極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)を用いた。導電助剤としては、アセチレンブラックを用いた。固体電解質としては、LiZrClを用いた。
(成形体の作製)
まず、中央に直径12mmの貫通穴を有する樹脂ホルダーと、SKD11材製の直径11.99mmの下パンチと、上パンチとを用意した。樹脂ホルダーの貫通穴の下から下パンチを挿入し、樹脂ホルダーの開口側から負極合剤を投入した。この際、負極合剤中の負極活物質が下パンチ側、固体電解質が開口側に位置するようにした。次いで、正極合剤を投入した。この際、正極合剤中の固体電解質が下パンチ側、正極活物質が開口側に位置するようにした。
次いで、上パンチを挿入し、上パンチと正極合剤および負極合剤を収容する樹脂ホルダーと下パンチとを有するユニットをプレス機に静置し、20kPaでプレスし、成形体を作製した。
次いで、上パンチを一度取り外し、正極活物質の上に正極集電体(アルミニウム箔、直径12mm、厚さ15μm)、上パンチの順に挿入した。また下パンチを一度取り外し、負極活物質層の上に負極集電体(銅箔、直径12mm、厚さ9μm)、下パンチの順に挿入し第4ユニットを得た。
その後、4か所にねじ穴を有する50mm、厚み5mmのステンレス製円板およびベークライト製円板を用意し、次のように電池要素をセットした。ステンレス円板/ベークライト円板/第4ユニット/ベークライト円板/ステンレス円板の順序で積載し、4か所のネジを締め第5ユニットを作製した。なお、上パンチ、下パンチの側面のネジ穴には、外部端子接続用のネジを差し込んだ。
次いで、得られた蓄電素子を外装体内に収容した。外装体としては、A4サイズのアルミニウムラミネート袋を用意した。アルミラミネート開口部の一片に外部端子として、無水マレイン酸をグラフと化したポリプロピレン(PP)を巻き付けたアルミニウム箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)と、ニッケル箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)とを短絡が生じないように間隔をあけて熱接着した。外部端子を取り付けたアルミラミネート袋の中に、第4ユニットを挿入し、上パンチ側面のネジと外装体内部に伸びたアルミニウム端子、下パンチ側面のネジと外装体内部に伸びたニッケル端子とをリード線で接続した。
次いで、装置名:充放電機SD8(北斗電工株式会社製)を用いて、圧力をかけながら全固体電池を充電した。全固体電池への圧力は5kPaとした。全固体電池の充電は、0.1Cで、正極の電位が4.3V(vsLi/Li+)、負極の電位が0.1V(vsLi/Li+)になるまで定電流充電を行い、次いで電流密度が0.05Cになるまで定電圧充電を行った。
次いで、全固体電池への圧力を把持したまま温度、時間を調整することで、エージング処理を行った。この際の温度及び時間は、70度で45分間にした。エージング処理は2サイクル行った。このようにして、実施例1の全固体電池を準備した。
(断面測定)
先ず、作成した全固体電池の正極活物質層および負極活物質層をSEM(SEM観察条件(加速電圧:1kV、エミッション電流値2μA、WD(試料ステージ高さ)2mm))で観察した。次いで、得られた像を画像解析ソフト、imageJで8bit(256階調)の白黒像で二値化画像を得た。この際、明度100を閾値とした。観察した正極活物質層および負極活物質層の断面は、それぞれの面内方向に垂直な断面である。
次いで、正極活物質層および負極活物質層のそれぞれについて、網状の固体電解質の有無を観察した。網状の固体電解質が確認された場合、二値化画像を基に複数の繊維状の部分の平均直径と、網目部分の平均面積を算出した。
複数の繊維状の部分の平均直径は、複数の繊維状の部分P1の各繊維のアスペクト比の小さい方向における長さの最大値を各繊維の直径とし、直径が大きい繊維を10本選択し、それぞれの直径を求め、それらの平均を求めることにより算出した。
網目部分の平均面積は、視野中の網目部分P2を、面積の大きいものから順に10つ選択し、それぞれの面積を求め、その平均面積を求めることにより算出した。
(電池の評価:サイクル特性)
放電後、実施例1の全固体電池の初期容量及びサイクル特性を求めた。初期容量およびサイクル特性は、二次電池充放電試験装置を用いて行った。電圧範囲は、4.2Vから0.1Vまでとした。まずプレ処理として0.2C定電流充電にて行った。その後、サイクル特性を求めるための充放電を行った。充電は定電流充電で行った。充電は、0.1Cの電流値で充電し、4.2Vに到達後、0.1C電流値の50%になった時に終了した。放電は、0.1Cでの電流値で放電する条件で行った。
尚、サイクル特性は、容量維持率(%)として評価した。容量維持率(%)は、1サイクル目の放電容量を初期放電容量とし、初期放電容量に対する100サイクル後の放電容量の割合である。容量維持率(%)は、以下の数式で表される。
容量維持率(%)=(「100サイクル後における放電容量」/「1サイクル目の放電容量」)×100
(電池の評価:放電レート特性)
また実施例1の全固体電池の放電レート特性を評価した。放電レート特性は、放電レートを2C(25℃で定電流放電を行ったときに1時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量を100%とした場合の2C(25℃で定電流放電を行ったときに30分で放電終了となる電流値)での放電容量の比率(%)を放電レート特性として求めた。
放電レート特性の評価条件として、作製したセルに対し、初回充放電を行い、作製したセルの実容量を測定した。得られた実容量に基づき、放電レート1Cおよび2Cの電流密度の決定を行った。
初回充放電を行った後、0.2Cで4.2Vまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流密度となるまで定電圧充電を行った。充電後、10分間の休止時間を挟んだ後、1Cで0.1Vまで定電流放電を行い、1Cにおける放電容量の測定を行い、測定後5分間の休止時間を挟んだ。
その後、0.2Cで4.2Vまで定電流充電を行った後、0.05Cの電流密度となるまで定電圧充電を行った。充電後、10分間の休止時間を挟んだ後、2Cで0.1Vまで定電流放電を行い、2Cにおける放電容量の測定を行った。
「実施例2~4」
実施例2は、エージング処理する時間を45分にした点が実施例1と異なる。
実施例3は、全固体電池の充電の定電流充電を正極の電位が4.2V(vsLi/Li+)、負極の電位が0.05V(vsLi/Li+)になるまで行った点が実施例1と異なる。すなわち、正極の充電電圧を4.2V(vsLi/Li+)にして、負極の充電電圧を0.05V(vsLi/Li+)にした。
実施例4は、正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.2V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点、およびエージング処理の時間を45分にした点が実施例1と異なる。
実施例2~4において、その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
「実施例5~10」
実施例5は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点が実施例1と異なる。
実施例6は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、および正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.2V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点が実施例1と異なる。
実施例7は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、およびエージング処理の時間を45分にした点が実施例1と異なる。
実施例8は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.2V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点、およびエージング処理の時間を45分にした点が実施例1と異なる。
実施例9は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、およびエージング処理の時間を60分にした点が実施例1と異なる。
実施例10は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.2V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点、およびエージング処理の時間を60分にした点が実施例1と異なる。
実施例5~10において、その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
「実施例11~20」
実施例11は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、およびエージング処理の温度を80度、エージング処理の時間を60分にした点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造した。
実施例12は、エージング処理の時間を15分にした点が実施例11と異なる。
実施例13は、エージング処理の時間を30分にした点が実施例11と異なる。
実施例14は、エージング処理の時間を90分にした点が実施例11と異なる。
実施例15は、エージング処理の時間を120分にした点が実施例11と異なる。
実施例12~15において、その他の点は、実施例11と同様にして全固体電池を製造した。また実施例11~15の全固体電池に対し、実施例1と同様の測定を行った。
実施例16は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.2V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点、およびエージング処理の温度を80度、エージング処理の時間を60分にした点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造した。
実施例17は、エージング処理の温度を80度、エージング処理の時間を15分にした点が実施例16と異なる。
実施例18は、エージング処理の時間を30分にした点が実施例16と異なる。
実施例19は、エージング処理の時間を90分にした点が実施例16と異なる。
実施例20は、エージング処理の時間を120分にした点が実施例16と異なる。
実施例17~20において、その他の条件は、実施例16と同様にして全固体電池を製造した。また実施例16~20の全固体電池に対し、実施例1と同様の測定を行った。
「実施例21,22」
実施例21は、全固体電池を充電する際の圧力を10kPaにした点、および正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.3V(vsLi/Li+)、0.05V(vsLi/Li+)にした点、およびエージング処理の温度を85度、エージング処理の時間を60分にした点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造した。
実施例22は、エージング処理の時間を90分にした点が実施例21と異なる。その他の条件は、実施例21と同様にして全固体電池を製造した。
実施例21,22の全固体電池に対し、実施例1と同様の測定を行った。
「比較例1」
比較例1は、全固体電池を充電する際に圧力を加えなかった点、および正極、負極の充電電圧をそれぞれ4.0V(vsLi/Li+)、0.5V(vsLi/Li+)にした点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして全固体電池を製造し、実施例1と同様の測定を行った。
実施例1~22,および比較例1の条件は、以下の表1にまとめた。また実施例1~22、および比較例1の結果を表2にまとめた。
Figure 2022150892000002
Figure 2022150892000003
表2に示される通り、実施例1,2,5,7,22~15の全固体電池は、正極活物質層内に少なくとも一部が網状である固体電解質が確認された。また実施例3,4,6,8,16~20の全固体電池は、負極活物質層内に少なくとも一部が網状である固体電解質が確認された。また実施例21,22の全固体電池は、正極活物質層内および負極活物質層内に少なくとも一部が網状である固体電解質が確認された。一方、比較例1では、正極活物質層内および負極活物質層内のいずれにも、少なくとも一部が網状である固体電解質は確認されなかった。
実施例1~22は、比較例1と比して、優れたサイクル特性およびレート特性を有することが確認された。特に、電極活物質層内に含まれる網状の固体電解質の複数の繊維の平均直径が5nm以上30nm以下の範囲に含まれる実施例5~22では、特に高いサイクル特性およびレート特性が得られた。また、電極活物質層内に含まれる網目部分の平均面積が70nm以上200nm以下である実施例11~22では、特に高いサイクル特性およびレート特性を得られた。また、正極活物質層内および負極活物質層内のいずれにも少なくとも一部が網状の固体電解質を有する実施例21,22では、特に高いサイクル特性およびレート特性を得られた。
1 正極層
1A 正極集電体
1B 正極活物質層
2 負極層
2A 負極集電体
2B 負極活物質層
3 固体電解質層
4 積層体
10 蓄電素子
12,14 外部端子
20 外装体
100 全固体電池
SE1,SE2 固体電解質
AM1,AM2 正極活物質
P1 繊維状の部分
P2 網目部分

Claims (6)

  1. 活物質と固体電解質とを含む電極活物質層であって、
    前記固体電解質の少なくとも一部は、網状である、電極活物質層。
  2. 前記固体電解質は、以下の式(1)で表される、
    Li2+a1-b・・・(1)
    (式(1)において、
    EはAl、Sc、Y、Zr、Hf、ランタノイドからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
    Gは、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Si、Al、Ti、Cu、Sc、Y、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Au、Biからなる群から選択される少なくとも1つの元素であり、
    DはCO、SO、BO、PO、NO、SiO、OH、O、からなる群から選択される少なくとも一つの基であり
    XはF、Cl、Br、Iからなる群から選択される少なくとも1種以上であり、
    0≦a<1.5、0≦b<0.5、0≦c≦5.0、0<d≦6.1である)
    請求項1に記載の電極活物質層。
  3. 前記固体電解質のうち網状の部分は、複数の繊維が重なり合っており、
    前記電極活物質層の面内方向に垂直な断面を走査電子顕微鏡で観察した画像において、
    前記複数の繊維のそれぞれの繊維において、アスペクト比が小さい方向における長さの最大値を前記繊維の直径とした際、
    前記複数の繊維のうち、視野中における直径が大きいものから順に選択した10本の繊維の平均直径が5nm以上30nm以下である、請求項1または2に記載の電極活物質層。
  4. 前記固体電解質のうちの網状の部分は、複数の繊維が重なり合っており、
    前記電極活物質層の面内方向に垂直な断面を走査電子顕微鏡で観察した画像において、
    前記複数の繊維、または前記複数の繊維と前記活物質及び/又は前記固体電解質とで囲まれた網目部分の面積を網目部分面積とし、
    前記網目部分面積が大きいものから順に選択した10つの網目部分面積の平均面積が70nm以上8000nm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極活物質層。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の電極活物質層を備える電極。
  6. 請求項5に記載の電極を備える全固体電池。
JP2021053691A 2021-03-26 2021-03-26 電極活物質層、電極、全固体電池 Pending JP2022150892A (ja)

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