JP2022150790A - 光偏向装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】可動部の振れ角の経時変化を抑制すること。【解決手段】本発明の一態様に係る光偏向装置は、可動部(120)と、可動部(120)を支持する支持部(130A、130B)と、前記支持部(130A、130B)を変形させることで前記可動部(120)を揺動させる圧電アクチュエータ(150A、150B)と、駆動電圧(H)を印加することで前記圧電アクチュエータ(150A、150B)を共振振動させる駆動部(13)と、を有し、前記圧電アクチュエータ(150A、150B)は、前記駆動電圧(H)に基づき伸縮する圧電素子(151A、151B)を含み、初期状態において前記圧電素子の伸縮方向に反っている。【選択図】図5
Description
本発明は、光偏向装置に関する。
従来、可動部を支持する捻れ梁等の支持部を圧電アクチュエータにより変形させることで、可動部を揺動させ、可動部に設けられたミラーによる反射光を偏向させる光偏向装置が知られている。
また、光偏向装置として、DAコンバータ及び増幅器を含み、デジタルの駆動波形データに基づいてミラーを駆動するための一対の駆動信号を生成するミラー駆動回路と、基準波形データを生成する基準波形データ生成部と、を有し、増幅器の不感帯とDAコンバータにより生じる周期性を有する積分非直線性誤差とに基づいて、基準波形データにオフセット値を設定することにより駆動波形データを生成する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来の構成では、可動部が揺動を開始した後に、圧電アクチュエータの変形の偏りが経時変化することで、可動部の振れ角が経時変化する場合がある。このような可動部の振れ角の経時変化は、光偏向装置により偏向される光を用いて形成される画像等の品質を低下させる。
本発明は、可動部の振れ角の経時変化を抑制することを目的とする。
本発明の一態様に係る光偏向装置は、可動部(120)と、可動部(120)を支持する支持部(130A、130B)と、前記支持部(130A、130B)を変形させることで前記可動部(120)を揺動させる圧電アクチュエータ(150A、150B)と、駆動電圧(H)を印加することで前記圧電アクチュエータ(150A、150B)を共振振動させる駆動部(13)と、を有し、前記圧電アクチュエータ(150A、150B)は、前記駆動電圧(H)に基づき伸縮する圧電素子(151A、151B)を含み、初期状態において前記圧電素子の伸縮方向に反っている。
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
本発明によれば、可動部の振れ角の経時変化を抑制できる。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
<光走査システム1の構成例>
図1は、実施形態に係る光走査システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、光走査システム1は、光走査制御装置10と、光源装置20と、光走査装置40とを有する。ここで、光走査装置40は光偏向装置の一例である。また光偏向とは、光の進行方向を変化させることをいう。以下に、各部について説明する。
図1は、実施形態に係る光走査システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、光走査システム1は、光走査制御装置10と、光源装置20と、光走査装置40とを有する。ここで、光走査装置40は光偏向装置の一例である。また光偏向とは、光の進行方向を変化させることをいう。以下に、各部について説明する。
光走査制御装置10は、システムコントローラ11と、ミラー駆動回路13と、レーザ駆動回路14とを有する。光走査制御装置10は、光源装置20と、光走査装置40とを制御する。
システムコントローラ11は、ミラー駆動回路13に対し、光走査装置40の有するミラーを揺動させるための駆動信号(駆動電圧)を供給する。また、システムコントローラ11は、デジタルの映像信号をレーザ駆動回路14に供給する。
ミラー駆動回路13は、システムコントローラ11からの制御信号に基づいて、光走査装置40に対し、ミラーを水平方向に駆動させて水平揺動軸周りに揺動させるための水平駆動電圧と、ミラーを垂直方向に駆動して垂直揺動軸周りに揺動させるための垂直駆動信号とを供給するミラー駆動部である。
レーザ駆動回路14は、システムコントローラ11からの映像信号に基づいて、光源装置20に、レーザを駆動させるためのレーザ駆動信号を供給する。
光源装置20は、LDモジュール21、減光フィルタ22を有する。LDモジュール21は、レーザ21R、レーザ21G、レーザ21Bを有する。
レーザ21R、21G、21Bは、システムコントローラ11から供給されたレーザ駆動電流に基づいて、レーザ光を出射する。レーザ21Rは、例えば、赤色半導体レーザであり、波長λR(例えば、640nm)の光を出射する。レーザ21Gは、例えば、緑色半導体レーザであり、波長λG(例えば、530nm)の光を出射する。レーザ21Gは、例えば、青色半導体レーザであり、波長λB(例えば、445nm)の光を出射する。レーザ21R、21G、21Bから出射された各波長の光は、ダイクロイックミラー等により合成され、減光フィルタ22により所定の光量に減光されて、光走査装置40に入射される。
光走査装置40は、ミラー駆動回路13から供給される水平及び垂直駆動信号に応じて、ミラーを水平方向及び垂直方向に駆動させる。光走査装置40では、これにより、入射されるレーザ光の反射方向を変更して、レーザ光による光走査を行い、スクリーン等に画像を投影する。
図2は、光走査装置40の構成を示す図である。光走査装置40は、例えば圧電素子からなるアクチュエータによりミラー110を駆動させるMEMSである。
光走査装置40は、ミラー110と、可動部120と、捻れ梁130A、130Bと、連結梁140A、140Bと、第1の駆動梁150A、150Bと、可動枠160と、第2の駆動梁170A、170Bと、固定枠180とを有する。また、第1の駆動梁150Aは圧電素子151Aを有し、第1の駆動梁150Bは圧電素子151Bを有する。
また、第2の駆動梁170Aは圧電素子171Aを有し、第2の駆動梁170Bは圧電素子171Bを有する。第1の駆動梁150A、150B、第2の駆動梁170A、170Bは、ミラー110を上下又は左右に揺動してレーザ光を走査させる機能を有する。
光走査装置40において、可動部120の上面にミラー110が設けられ、可動部120は、両側にある捻れ梁130A、130Bの端部に連結されている。捻れ梁130A、130Bは、揺動軸を構成し、軸方向に延在して可動部120を軸方向両側から支持する支持部の一例である。捻れ梁130A、130Bが捻れることにより、可動部120に設けられたミラー110が揺動し、ミラー110に照射された光の反射光を走査させる動作を行う。捻れ梁130A、130Bは、それぞれが連結梁140A、140Bに連結支持され、第1の駆動梁150A、150Bに連結されている。
第1の駆動梁150A、150B、連結梁140A、140B、捻れ梁130A、130B、可動部120及びミラー110は、可動枠160によって外側から支持されている。第1の駆動梁150A、150Bは、可動枠160にそれぞれの一方の側が支持されている。第1の駆動梁150Aの他方の側は内周側に延びて連結梁140A、140Bと連結している。第1の駆動梁150Bの他方の側も同様に、内周側に延びて連結梁140A、140Bと連結している。
第1の駆動梁150A、150Bは、捻れ梁130A、130Bと直交する方向に、ミラー110及び可動部120を挟むように、対をなして設けられている。第1の駆動梁150A、150Bの上面には、圧電素子151A、151Bがそれぞれ形成されている。圧電素子151A、151Bは、圧電薄膜と、圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下に形成された下部電極とを含んでなる圧電素子である。圧電素子151A、151Bは、上部電極と下部電極に印加される駆動電圧に応じて伸長したり、縮小したりする。
このため、第1の駆動梁150Aと第1の駆動梁150Bに形成された圧電素子151A、151Bに電位が反転した駆動電圧を交互に印加すれば、ミラー110の左側と右側で第1の駆動梁150Aと第1の駆動梁150Bとが可動枠160との境界付近を支点にして交互に振動する。これにより、捻れ梁130A、130Bを揺動軸として、ミラー110を軸周りに揺動させることができる。
ミラー110が捻れ梁130A、130Bの軸周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶ。つまり、本実施形態では、第1の駆動梁150Aは捻れ梁130Aを捻れ変形させ、第1の駆動梁150Bは捻れ梁130Bを捻れ変形させることで、ミラー110を水平方向に揺動させる。例えば第1の駆動梁150A、150Bによる水平駆動には、共振振動が用いられ、高速にミラー110を揺動させることができる。第1の駆動梁150A、150Bは、捻れ梁130A、130Bを変形させることで、可動部120を揺動させる圧電アクチュエータの一例である。
また、可動枠160の外部には、第2の駆動梁170A、170Bの一端が連結されている。第2の駆動梁170A、170Bは、可動枠160を左右両側から挟むように、対をなして設けられている。そして、第2の駆動梁170A、170Bは、可動枠160を両側から支持すると共に、光反射面の中心を通る所定の軸周りに揺動させる。第2の駆動梁170Aは、第1の駆動梁150Aと平行に延在する複数個(例えば偶数個)の矩形梁の各々が、隣接する矩形梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。
そして、第2の駆動梁170Aの他端は、固定枠180の内側に連結されている。第2の駆動梁170Bも同様に、第1の駆動梁150Bと平行に延在する複数個(例えば偶数個)の矩形梁の各々が、隣接する矩形梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。そして、第2の駆動梁170Bの他端は、固定枠180の内側に連結されている。
第2の駆動梁170A、170Bの上面には、それぞれ曲線部を含まない矩形単位ごとに圧電素子171A、171Bが形成されている。圧電素子171A、171Bは、圧電薄膜と、圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下に形成された下部電極とを含んでなる圧電素子である。
第2の駆動梁170A、170Bは、矩形単位ごとに隣接している圧電素子171A、171B同士で、電位が反転した駆動電圧を印加することにより、隣接する矩形梁を上下反対方向に反らせ、各矩形梁の上下動の蓄積を可動枠160に伝達する。
第2の駆動梁170A、170Bは、この動作により、平行方向と直交する方向である垂直方向にミラー110を揺動させる。つまり、第2の駆動梁170A、170Bは、ミラー110を垂直方向に揺動させる垂直梁である。言い換えれば、本実施形態の第2の駆動梁170A、170Bは、自身を曲げて変形させることで、ミラー110を垂直方向に揺動させる。例えば第2の駆動梁170A、170Bによる垂直駆動には、非共振振動を用いることができる。
圧電素子171Aは、可動枠160側から右側に向かって並ぶ圧電素子171A1、171A2、171A3、171A4、171A5、及び171A6を含む。また、圧電素子171Bは、可動枠160側から左側に向かって並ぶ圧電素子171B1、171B2、171B3、171B4、171B5、及び171B6を含む。
圧電素子151Aに駆動電圧を印加するための駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群190Aに含まれる所定の端子と接続されている。また、圧電素子151Bに駆動電圧を印加するための駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群190Bに含まれる所定の端子と接続されている。
また、圧電素子171Aに駆動電圧を印加するための駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群190Aに含まれる所定の端子と接続されている。また、圧電素子171Bに駆動電圧を印加するための駆動配線は、固定枠180に設けられた端子群190Bに含まれる所定の端子と接続されている。
また、光走査装置40は、圧電素子151A、151Bに駆動電圧が印加されてミラー110が水平方向に揺動している状態におけるミラー110の水平方向への傾斜角に応じた信号を出力する水平傾斜センサ192を有する。水平傾斜センサ192は、圧電センサにより構成されており、連結梁140Bに配置されている。
また、光走査装置40は、圧電素子171A、171Bに駆動電圧が印加されてミラー110が垂直方向に揺動している状態におけるミラー110の垂直方向への傾斜角に応じた信号を出力する垂直傾斜センサ196を有する。垂直傾斜センサ196は、圧電素子により構成されており、第2の駆動梁170Aの有する矩形梁の一つに配置されている。
水平傾斜センサ192は、ミラー110の水平方向への傾斜に伴い、捻れ梁130Bから伝達される連結梁140Bの変位に対応する信号を出力する。垂直傾斜センサ196は、ミラー110の垂直方向への傾斜に伴い、第2の駆動梁170Aのうち垂直傾斜センサ196が設けられた矩形梁の変位に対応する信号を出力する。
水平傾斜センサ192及び垂直傾斜センサ196を構成する圧電センサは、圧電薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。水平傾斜センサ192を構成する圧電センサの上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、固定枠180に設けられた端子群190Bに含まれる所定の端子と接続されている。また、垂直傾斜センサ196を構成する圧電センサの上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、固定枠180に設けられた端子群190Aに含まれる所定の端子と接続されている。
このような光走査装置40は、例えば支持層、埋め込み(BOX:Buried Oxide)層及び活性層を有するSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、半導体プロセスにより製作することができる。
以上のように構成された光走査装置40は、ミラー110を露出させる必要性から、いわゆるオープンパッケージとして、様々な環境下で用いられる。
<第1の駆動梁の駆動電圧及び振れ角変化>
次に、ミラー駆動回路13により第1の駆動梁150A、150Bに形成された圧電素子151A、151Bに交互に印加される、電位が反転した駆動電圧について説明する。ここで、ミラー駆動回路13は、第1の駆動梁150A、150Bに形成された圧電素子151A、151Bに駆動電圧を印加することで第1の駆動梁150A、150Bを共振振動させる駆動部の一例である。なお、以下で比較例と実施形態を説明するが、駆動電圧のみが比較例と実施形態で異なり、何れの駆動電圧も実施形態に係る光走査装置40において印加されるものとして説明する。
次に、ミラー駆動回路13により第1の駆動梁150A、150Bに形成された圧電素子151A、151Bに交互に印加される、電位が反転した駆動電圧について説明する。ここで、ミラー駆動回路13は、第1の駆動梁150A、150Bに形成された圧電素子151A、151Bに駆動電圧を印加することで第1の駆動梁150A、150Bを共振振動させる駆動部の一例である。なお、以下で比較例と実施形態を説明するが、駆動電圧のみが比較例と実施形態で異なり、何れの駆動電圧も実施形態に係る光走査装置40において印加されるものとして説明する。
まず、図3は、比較例に係る駆動電圧HXを示す図である。図3に示すように、駆動電圧HXは、第1波形HpXと、第2波形HnXとを含んでいる。第1波形HpX及び第2波形HnXは、共に同一の周期及び振幅を有する正弦波である。第2波形HnXは、第1波形HpXに対して位相が半周期ずれている。
第1波形HpXが第1の駆動梁150Aに印加され、第2波形HnXが第1の駆動梁150Bに印加されることで、第1の駆動梁150Aと第1の駆動梁150Bには、電位が反転した駆動電圧が交互に印加される。駆動電圧HXが印加された第1の駆動梁150A、150Bの作用により捻れ梁130A、130Bが捻れ変形し、可動部120が揺動する。
また、一般に、圧電素子を含む圧電アクチュエータの駆動電圧は、圧電素子の脱分極を防ぐため、圧電素子の分極方向と同一方向への直流電圧が付加される。そのため、駆動電圧HXでは、圧電素子の分極方向を正電圧方向とし、駆動電圧の最小値がGND、すなわち0.0[V]になるように、振幅Vppの1/2であるオフセット値Vpp/2の直流電圧が付加されている。
図4は、駆動電圧HXが印加された場合における可動部120の振れ角の経時変化の実験結果を示す図である。図4の横軸は揺動時間[min]を示し、縦軸は可動部120の振れ角変化量を示している。振れ角変化量は、理想的な振れ角に対する比率[%]で表示されている。正の振れ角変化量は、理想的な振れ角に対して振れ角が大きいことを示し、負の振れ角変化量は、理想的な振れ角に対して振れ角が小さくことを示している。
図4に示すように、揺動開始後の期間T0で0.15[%]程度の振れ角変化が生じ、その後は0.10[%]から0.30[%]の間で緩やかに振れ角が変化した。この振れ角変化は、第1の駆動梁150A、150Bの変形の偏りが揺動開始後に経時変化することが要因として考えられる。
ここで、変形の偏りとは、第1の駆動梁150A、150B等の圧電アクチュエータの初期状態が予め一定状態に変形していることをいう。変形の偏りは変形の「クセ」ということもできる。また圧電アクチュエータの初期状態とは、駆動電圧に応じて圧電素子151A,151Bが伸縮して第1の駆動梁150A、150Bの変形駆動を行う前のミラー110が静止した状態をいう。
駆動電圧が印加されると圧電素子が歪み、圧電アクチュエータが変形駆動されるが、圧電アクチュエータの連続駆動により、圧電アクチュエータの初期状態が変形する場合がある。例えば平坦な状態から圧電アクチュエータが変形駆動される場合とは異なり、湾曲等のように予め変形した初期状態から圧電アクチュエータが変形駆動される。このような変形の偏りが経時変化すると、湾曲等の初期状態が時々刻々と変化する。
比較例では、第1の駆動梁150A、150Bにおける変形の偏りが揺動開始後に経時変化することで、第1の駆動梁150A、150Bの作用により揺動される可動部120の振れ角が変化したと考えられる。
図5は、実施形態に係る駆動電圧Hを示す図である。図5に示すように、駆動電圧Hは、第1波形Hpと、第2波形Hnとを含んでいる。駆動電圧Hは、第1波形Hp及び第2波形Hnに振幅Vppの1/2より大きいオフセット値VOFFの直流電圧が付加されている点が比較例に係る駆動電圧HXと異なっている。第1波形Hpと第2波形Hnは、オフセット値VOFFの直流電圧が付加されることで、正弦波における最小電圧値が0.0[V](GND)より大きくなっている。
図6は、駆動電圧Hが印加された場合における可動部120の振れ角経時変化の実験結果の一例を示す図である。図6(a)は振幅Vppが2.0[V]の場合を示し、図6(b)は振幅Vppが4.0[V]の場合を示している。図4と同様に、図6の横軸は、揺動時間[min]を示し、縦軸は可動部120の振れ角変化量を示している。
図6(a)では、オフセット値VOFFが1[V]である場合を「□」マークで示し、オフセット値VOFFが10[V]である場合を「×」マークで示し、オフセット値VOFFが22.0[V]である場合を「◇」マークで示している。
オフセット値VOFFを1.0[V]とした場合には、揺動開始後の期間T0で略0.18[%]程度の振れ角変化が生じ、その後は徐々に振れ角が大きくなり、120[min]の時点で0.30[%]に達した。オフセット値VOFFを10.0[V]とした場合には、振れ角変化が小さくなり、揺動開始後120[min]までの期間で±0.1[%]以下の範囲に収まった。オフセット値VOFFを22.0[V]とした場合には、揺動開始後の期間T0では振れ角変化が小さかったが、その後、揺動開始後120[min]までの期間で-0.25[%]程度まで徐々に負側に振れ角変化が大きくなった。
一方、図6(b)では、オフセット値VOFFが2.0[V]である場合を「□」マークで示し、オフセット値VOFFが10.0[V]である場合を「×」マークで示し、オフセット値VOFFが22.0[V]である場合を「◇」マークで示している。
オフセット値VOFFを2.0[V]とした場合には、揺動開始後の期間T0で0.15[%]程度の振れ角変化が生じ、その後は0.10[%]から0.30[%]の間で緩やかに振れ角が変化した。オフセット値VOFFを10.0[V]とした場合には、振れ角変化が小さくなり、揺動開始後の120[min]までの期間で±0.1[%]以下の範囲に収まった。オフセット値VOFFを22.0[V]した場合には、揺動開始後から徐々に負側に振れ角変化が大きくなり、揺動開始後120[min]の時点で-0.22[%]程度に達した。
図6の実験結果から、オフセット値VOFFを10.0[V]にすると、何れの振幅Vppにおいても、少なくとも揺動開始後の120[min]までの期間で、可動部120の振れ角変化が-0.1[%]以上で+0.1[%]以下の範囲に収まることが分かった。
ここで、オフセット値VOFFを10[V]とした場合において、駆動電圧Hにより可動部120の振れ角変化が抑制される作用について説明する。
図7は、駆動電圧Hの印加前後における第1の駆動梁150A、150Bの状態のシミュレーション結果を例示する図である。第1の駆動梁150A、150Bを図2の垂直方向側から視た斜視図である。図7(a)は駆動電圧Hの印加前を示し、図7(b)は駆動電圧Hの印加後を示している。また、図7(a)及び図7(b)に矢印で示す伸縮方向Aは、ミラー110に略直交する方向に沿った上方を示しており、この方向は圧電素子151A、151Bの伸縮方向に対応する。
図5(a)に示すように、駆動電圧Hが印加される前には、第1の駆動梁150A、150Bはミラー110に対してほぼ平坦な状態になっている。一方、図5(b)に示すように、駆動電圧Hが印加された後には、第1の駆動梁150A、150Bは伸縮方向Aの方向に反っている。
この「反り」は、駆動電圧Hに含まれるオフセット値VOFFの直流電圧により生じるものであり、上述した変形の偏りの一種である。本実施形態では、第1の駆動梁150A、150Bの初期状態において、第1の駆動梁150A、150Bは、圧電素子151A、151Bの伸縮方向Aに沿っている。換言すると、ミラー駆動回路13は、オフセット値VOFFの直流電圧を含む駆動電圧Hを印加することで、第1の駆動梁150A、150Bは、圧電素子151A、151Bの伸縮方向Aに反らせる。
この「反り」の経時変化が小さいことで、変形の偏りの経時変化が抑制される。その結果、第1の駆動梁150A、150Bの作用により揺動される可動部120の振れ角の変化が抑制される。
図4及び図6で示したように、変形の偏りは、第1の駆動梁150A、150Bの駆動に伴って期間T0の間に比較的大きく変化し、その後、第1の駆動梁150A、150B及び圧電素子151A、151B等の構造にかかる力が釣り合うことで、変化が小さくなる。
オフセット値が10.0[V]である直流電圧を印加して、伸縮方向Aの方向に第1の駆動梁150A、150Bを反らせることで、第1の駆動梁150A、150B及び圧電素子151A、151B等の構造にかかる力が釣り合う状態に直ちに到達できるため、変形の偏りの変化が抑制されると考えられる。
本実施形態では、オフセット値が10.0[V]の直流電圧を印加した場合において、P-P値で略6.0[μm]の反りが、第1の駆動梁150A、150Bのそれぞれで生じた。
図8は、直流電圧のオフセット値の許容範囲の検証結果を例示する図である。図8の横軸は、オフセット値VOFF[V]を示し、縦軸は可動部120の振れ角変化量[%]を示している。-0.10[%]以上で+0.10[%]以下の範囲を振れ角変化量の許容範囲とすると、ΔVOFF[V]の範囲がオフセット値VOFFの許容範囲となる。
図8に示すように、オフセット値VOFFの許容範囲は、5.0[V]以上で12.0[V]である。この範囲のオフセット値VOFFの直流電圧を印加することで、可動部120の振れ角変化量を-0.10[%]以上で+0.10[%]以下の範囲に収めることができる。
<光走査装置40の作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置40(光偏向装置)は、可動部120と、可動部120を支持する捻れ梁130A、130B(支持部)と、捻れ梁130A、130Bを変形させることで可動部120を揺動させる第1の駆動梁150A、150B(圧電アクチュエータ)と、駆動電圧Hを印加することで第1の駆動梁150A、150Bを共振振動させるミラー駆動回路13(駆動部)と、を有する。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置40(光偏向装置)は、可動部120と、可動部120を支持する捻れ梁130A、130B(支持部)と、捻れ梁130A、130Bを変形させることで可動部120を揺動させる第1の駆動梁150A、150B(圧電アクチュエータ)と、駆動電圧Hを印加することで第1の駆動梁150A、150Bを共振振動させるミラー駆動回路13(駆動部)と、を有する。
第1の駆動梁150A、150Bは、駆動電圧Hに基づき伸縮する圧電素子151A、151Bを含み、初期状態において圧電素子151A、151Bの伸縮方向Aに反っている。
例えば、第1の駆動梁150A、150Bは、圧電素子151A、151Bが形成された駆動梁からなり、初期状態において、第1の駆動梁150A、150Bの一端が支持される枠に対して可動部120を上方に変位した位置で支持する。
第1の駆動梁150A、150Bの「反り」の経時変化が小さいことで、第1の駆動梁150A、150Bにおける変形の偏りの経時変化が抑制される。また、初期状態において、第1の駆動梁150A、150Bの一端が支持される枠に対して可動部120を上方に変位した位置で支持する状態にすると、該状態の経時変化が小さいことで、第1の駆動梁150A、150Bにおける変形の偏りの経時変化が抑制される。その結果、第1の駆動梁150A、150Bにより揺動される可動部120の振れ角の変化を抑制できる。また光走査システム1によりスクリーン等に投影される画像の品質低下を抑制できる。
また本実施形態では、捻れ梁130A、130Bは、可動部120の両側から可動部120を支持する、いわゆる両持ち梁の構成である。この構成において、第1の駆動梁150A、150Bを伸縮方向Aに反らせることで、変形の偏りの経時変化をより好適に抑制できる。但し、本実施形態は、両持ち梁の構成に限定されるものではなく、支持部が可動部の片側から可動部を支持する、いわゆる片持ち梁の構成であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
また本実施形態では、ミラー駆動回路13は、所定のオフセット値VOFFの直流電圧を含む駆動電圧Hを印加することで、第1の駆動梁150A、150Bを圧電素子151A、151Bの伸縮方向Aに反らせる。
これにより、第1の駆動梁150A、150B及び圧電素子151A、151B等の構造にかかる力が釣り合う状態に直ちに到達し、変形の偏りの変化を抑制できる。
オフセット値VOFFは、5.0[V]以上で12.0[V]以下が好ましく、10[V]が特に好ましい。オフセット値VOFFを5.0[V]以上で12.0[V]以下にすることで、可動部120の振れ角変化量を-0.10[%]以上で+0.10[%]以下の範囲に収めることができる。
なお、本実施形態では、支持部として、捻れ変形可能な捻れ梁130A、130Bを例示したが、これに限定されるものではない。例えば支持部を揺動させて光を偏向可能なカンチレバー等を支持部とした場合にも、本実施形態と同様の効果が得られる。但し、支持部が捻れ梁130A、130Bである構成において、本実施形態の効果がより好適に得られる。
また、オフセット値VOFFの適正値は、圧電素子151A、151Bの厚み等の圧電特性や、第1の駆動梁150A、150Bの材質又は構造等により多少異なるが、本実施形態で示したオフセット値VOFFの範囲は、圧電アクチュエータを用いた光偏向装置において広く適用可能である。
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
1…光走査システム、10…光走査制御装置、11…システムコントローラ、13…ミラー駆動回路(駆動部)、14…レーザ駆動回路、20…光源装置、21…LDモジュール、22…減光フィルタ、40…光走査装置(光偏向装置)、110…ミラー、120…可動部、130A、130B…捻れ梁、140A、140B…連結梁、150A、150B…第1の駆動梁、151A、151B…圧電素子、160…可動枠、H…駆動電圧、Hp…第1波形、Hn…第2波形、Vpp…振幅、VOFF…オフセット値、ΔVOFF…範囲、T0…期間、A…伸縮方向
Claims (7)
- 可動部と、
前記可動部を支持する支持部と、
前記支持部を変形させることで前記可動部を揺動させる圧電アクチュエータと、
駆動電圧を印加することで前記圧電アクチュエータを共振振動させる駆動部と、を有し、
前記圧電アクチュエータは、前記駆動電圧に基づき伸縮する圧電素子を含み、初期状態において前記圧電素子の伸縮方向に反っていることを特徴とする光偏向装置。 - 前記圧電アクチュエータは、前記圧電素子が形成された駆動梁からなり、
前記初期状態において、前記駆動梁の一端が支持される枠に対して前記可動部を上方に変位した位置で支持することを特徴とする請求項1に記載の光偏向装置。 - 前記支持部は、前記可動部の両側から前記可動部を支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の光偏向装置。
- 前記駆動部は、所定のオフセット値の直流電圧を含む前記駆動電圧を印加することで、前記圧電アクチュエータを前記圧電素子の伸縮方向に反らせることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光偏向装置。
- 前記オフセット値は、5.0[V]以上で12.0[V]以下である請求項4に記載の光偏向装置。
- 前記オフセット値は、10[V]である請求項4又は5に記載の光偏向装置。
- 前記支持部は、捻れ変形可能な捻れ梁である請求項1乃至6の何れか1項に記載の光偏向装置。
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