JP2022150666A - 樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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光博 望月
Mitsuhiro Mochizuki
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Abstract

【課題】めっき密着性が高くかつ優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができる樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供する。【解決手段】(A)液晶性樹脂と、(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物と、(C)板状充填剤と、を含有する樹脂組成物であって、前記(A)は、必須の構成成分として所定の構成単位(I)~(IV)を所定量で含有する全芳香族ポリエステルであり、前記(B)の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、12.5~32.5質量%であり、前記(C)の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%であり、前記(B)及び前記(C)の総量は、前記樹脂組成物全体に対して、20~40質量%であり、測定周波数5GHzにおける誘電正接が0.003以下である、樹脂組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及び成形品に関する。
液晶性樹脂は、一般金属の熱線膨張係数に匹敵する低い線膨張係数を示し、耐熱的には260℃の半田浴に10秒間浸漬しても異常を生じない等の特徴を有し、この特性を生かして、めっきを付与した基板等への応用が図られている。しかし、液晶性樹脂成形品の表面は強い配向のため表層部は剥離し毛羽立ちを生じ易く、そのままではめっき(特に湿式めっき)による2次加工が難しい。そこで、従来一般の樹脂に用いられているような薬品による表面粗面化処理を行うことが考えられるが、液晶性樹脂成形品の表面は化学的には極めて不活性であり親和性のある適切な溶剤がない。そのため、表層の配向層を取り除き表面を粗面化することが困難な状況にあった。この問題の解決のため、特許文献1では、リン酸塩等の特定の充填剤を配合した液晶性樹脂組成物成形品をアルカリエッチングすることが提案されている。この手法により液晶性樹脂成形品のめっきが可能となった。
一方、液晶性樹脂は、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして好適に広く利用されており、さらに、その特性を活かして特殊用途への展開も考えられている。例えば、めっき密着性に優れた液晶性樹脂に優れた誘電特性を付与することができれば、高周波アンテナ、誘電体共振器、高周波同軸コネクター、マイクロ波フィルター等の電気・電子機器への応用が可能となる。伝送損失の低下を防ぐ観点からは、誘電率及び/又は誘電正接が低い材料であることが求められており、特許文献2には、優れためっき密着性と誘電特性を有する液晶性樹脂とするため、所定の融点を有する液晶性樹脂に、特定性状の炭酸カルシウムを配合する技術が提案されている。
特開平1-92241号公報 特開2006-328141号公報
本発明は、めっき密着性が高くかつ優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができる樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供することを課題とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1](A)液晶性樹脂と、(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物と、(C)板状充填剤と、を含有する樹脂組成物であって、
前記(A)液晶性樹脂は、
必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
Figure 2022150666000001
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立して、アリーレン基を表す)
を含有し、
全構成単位に対して、構成単位(I)の含有量が40~75モル%であり、構成単位(II)の含有量が0.5~7.5モル%であり、構成単位(III)の含有量が8.5~30モル%であり、構成単位(IV)の含有量が8.5~30モル%である、
溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルであり、
前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、12.5~32.5質量%であり、
前記(C)板状充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%であり、
前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物及び前記(C)板状充填剤の総量は、前記樹脂組成物全体に対して、20~40質量%であり、
測定周波数5GHzにおける誘電正接が0.003以下である、表面加工用樹脂組成物。
[2]前記(A)液晶性樹脂中の構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差が0.150モル%以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(A)液晶性樹脂の全構成単位に対して構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV)の合計の含有量が100モル%である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]さらに(D)繊維状充填剤を含有し、
前記(D)繊維状充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%であり、
前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物、前記(C)板状充填剤、及び前記(D)繊維状充填剤の総量は、前記樹脂組成物全体に対して、20~35質量%である、[1]から[3]のいずれかに記載の表面加工用液晶性樹脂組成物。
[5]前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物は、周期律表II族元素のリン酸塩である、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物は、ピロリン酸カルシウムである、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記(C)板状充填剤は、平均粒子径が50μm以下であり、
前記(D)繊維状充填剤は、重量平均繊維長が200μm未満である、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記(C)板状充填剤は、マイカであり、
前記(D)繊維状充填剤は、ミルドガラスファイバーである、[1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9][1]から[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形品。
[10]表面の少なくとも一部が粗化された、[9]に記載の成形品。
[11]粗化された表面上に金属又は合金膜を有する、[9]又は[10]に記載の成形品。
[12][1]から[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形品を得ること、
前記成形品の表面の少なくとも一部をエッチング処理すること、を含む、表面加工された成形品の製造方法。
[13]エッチング処理された表面上に湿式めっきにより金属又は合金膜を形成することを含む、[12]に記載の表面加工された成形品の製造方法。
本発明によれば、めっき密着性が高くかつ優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができる樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供することができる。
実施例及び比較例の樹脂組成物の誘電特性を評価するために用いた試験片の作製方法を示す説明図である。 実施例及び比較例の樹脂組成物の成形安定性を評価するために用いた金型の形状を示す説明図であり、(a)は全体の平面図であり、(b)は金型の寸法を示す部分的な平面図であり、(c)は金型の寸法を示す側面図であり、(d)は金型の構成を示す側面図である。なお、図中の数値の単位はmmである。「PL」はパーティングラインを表す。「トンネルゲート」は、金型が有するトンネル型のゲートを表す。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
[樹脂組成物]
本実施形態にかかる樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂と、(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物と、(C)板状充填剤と、を含有する表面加工用樹脂組成物である。「表面加工用」とは、表面加工される成形品の製造に用いられる樹脂組成物であることを意味している。「表面加工」としては、エッチング処理やめっき処理等が挙げられる。
((A)液晶性樹脂)
液晶性樹脂は、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルである。「溶融時に光学的異方性を示す」とは、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により異方性を示す(直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる)ことを意味する。具体的な測定法は後述する。
全芳香族ポリエステルは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
Figure 2022150666000002
を含有する。但し、式中、Ar及びArは、それぞれ独立して、アリーレン基を表す。全芳香族ポリエステルは、モノマーの種類や含有量が異なると誘電特性が異なるが、構成単位(I)~(IV)を必須の構成成分として所定の含有量で含み、かつ後述する成分(B),(C)と組み合わせることで、めっき密着性及び低そり性を維持したまま、低い誘電率及び誘電正接を実現することができる。
全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は40~75モル%であり、全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は0.5~7.5モル%であり、全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は8.5~30モル%であり、全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は8.5~30モル%である。
構成単位(I)は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)から誘導される。全芳香族ポリエステルは、全構成単位に対して構成単位(I)を40~75モル%含む。構成単位(I)の含有量が40モル%未満であると、融点が低下し、耐熱性が不足する。構成単位(I)の含有量が75モル%を超えると、重合時に固化が発生し、ポリマーが得られない。耐熱性と重合性の観点から、構成単位(I)の含有量は、好ましくは40~70モル%であり、より好ましくは40~65モル%であり、更に好ましくは40~63モル%であり、より更に好ましくは40~62モル%であり、特に好ましくは40~60モル%である。
構成単位(II)は、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸及び4-ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)から選択される1以上のヒドロキシ安息香酸から誘導される。構成単位(II)は、3-ヒドロキシ安息香酸及び4-ヒドロキシ安息香酸から選択される1以上から誘導されることが好ましく、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)から誘導されることがより好ましい。構成単位(II)は、以下から選択される少なくとも1つの構造を有していることが好ましい。
Figure 2022150666000003
全芳香族ポリエステルは、全構成単位に対して構成単位(II)を0.5~7.5モル%含む。構成単位(II)の含有量が0.5モル%未満であると、重合時に固化が発生し、ポリマーを排出できない。構成単位(II)の含有量が7.5モル%を超えると、融点が低下し、耐熱性が不足する。耐熱性と重合性の観点から、構成単位(II)の含有量は、好ましくは0.5~7.0モル%であり、より好ましくは1.0~7.0モル%であり、更に好ましくは1.2~7.0モル%であり、より更に好ましくは1.5~6.5モル%であり、特に好ましくは2.0~6.0モル%である。
構成単位(III)において、Arは、アリーレン基を表す。アリーレン基としては、例えば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基等が挙げられる。構成単位(III)は、芳香族ジカルボン酸から誘導される。例えば、構成単位(III)は、1,4-フェニレンジカルボン酸(以下、「TA」ともいう。)、1,3-フェニレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体から誘導される。構成単位(III)は、1,4-フェニレンジカルボン酸、1,3-フェニレンジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸から選択される1以上から誘導されることが好ましく、1,4-フェニレンジカルボン酸(TA)から誘導されることがより好ましい。
構成単位(III)は、以下から選択される少なくとも1つの構造を有していることが好ましい。
Figure 2022150666000004
全芳香族ポリエステルは、全構成単位に対して構成単位(III)を8.5~30モル%含む。構成単位(III)の含有量が8.5モル%未満、または30モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)の含有量は、好ましくは10~30モル%であり、より好ましくは12~28モル%であり、更に好ましくは14~28モル%であり、より更に好ましくは15~28モル%であり、特に好ましくは17~27モル%である。
構成単位(IV)において、Arは、アリーレン基を表す。アリーレン基としては、例えば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ビフェニル-3,3’-ジイル、ビフェニル-3,4’-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,6-ジイル基、ナフタレン1,4-ジイル等が挙げられる。構成単位(IV)は、芳香族ジオールから誘導される。例えば、構成単位(IV)は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」ともいう。)、1,4-ジヒドロキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体から誘導される。構成単位(IV)は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,4-ジヒドロキシベンゼン、及び2,6-ジヒドロキシナフタレンから選択される1以上から誘導されることが好ましく、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP)から誘導されることがより好ましい。
構成単位(IV)は、以下から選択される少なくとも1つの構造を有していることが好ましい。
Figure 2022150666000005
全芳香族ポリエステルは、全構成単位に対して構成単位(IV)を8.5~30モル%含む。構成単位(IV)の含有量が8.5モル%未満、または30モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(IV)の含有量は、好ましくは10~30モル%であり、より好ましくは12~28モル%であり、更に好ましくは14~28モル%であり、より更に好ましくは15~28モル%であり、特に好ましくは17~27モル%である。
全芳香族ポリエステルは、必須の構成成分である構成単位(I)~(IV)として、下記構成単位(I’)、(II’)、(III’)及び(IV’)を含有することが好ましい。
Figure 2022150666000006
全芳香族ポリエステルは、構成単位(I)~(IV)以外の他の構成単位を有していてもよいが、高剛性及び高流動性の観点から、全構成単位に対して構成単位(I)~(IV)を合計で100モル%含むように構成することが好ましい。
全芳香族ポリエステルは、構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差が0.150モル%以下であることが好ましい。構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差を0.150モル%以下にすることで、重合反応時の昇華物の発生が少なく、射出成型時のゲート詰まりを抑制することができる。また、重合反応時の昇華物が重合容器の内壁等に析出堆積し、そこで重縮合したり、劣化したり、あるいは炭化したりしたものが、異物としてポリマーに混入することを抑制することもできる。構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差は、ゲート詰まりを抑制する観点、及び異物混入を抑制する観点から、0.145モル%以下であることが好ましく、0.140モル%以下であることがより好ましく、0.135モル%以下であることが更に好ましく、0.130モル%以下であることがより更に好ましく、0.125モル%以下であることが特に好ましい。
なお、後述するように、高分子量化の観点から、構成単位(III)を誘導する芳香族ジカルボン酸の使用量(モル%)と構成単位(IV)を誘導する芳香族ジオールの使用量(モル%)が等しいことが好ましいが、全芳香族ポリエステルの製造中に昇華物が発生することで、樹脂組成物中のこれらの含有量に差が生じる。
次いで、全芳香族ポリエステルの性質について説明する。全芳香族ポリエステルは、溶融時に光学的異方性を示す。溶融時に光学的異方性を示すことは、全芳香族ポリエステルが液晶性樹脂であることを意味する。
本実施形態において、全芳香族ポリエステルが液晶性樹脂であることは、全芳香族ポリエステルが熱安定性と易加工性を併せ持ち、優れた耐熱性及び成形性を有する成形品を与える上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)~(IV)から構成される全芳香族ポリエステルは、構成成分及びポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本実施形態で用いるポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルに限られる。
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性樹脂は光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
ネマチックな液晶性樹脂は融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。
全芳香族ポリエステルの融点は、でき得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、380℃以下であることが好ましい目安となる。全芳香族ポリエステルの融点は、耐熱性及び成形性の観点から、より好ましくは260~370℃であり、更により好ましくは270~370℃であり、特に好ましくは280~360℃である。
なお、「融点」とは、示差走査熱量計で測定される融点Tm2を意味している。融点Tm2は、JIS K-7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2stRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
全芳香族ポリエステルは、全芳香族ポリエステルの融点より10~40℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における溶融粘度が、1000Pa・s以下であることが好ましい。上記溶融粘度を1000Pa・s以下にすることで、樹脂組成物の成形時において、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。全芳香族ポリエステルの溶融粘度は、流動性及び成形性の観点から、好ましくは4~500Pa・sであり、更により好ましくは4~250Pa・sであり、特に好ましくは5~100Pa・sである。なお、本明細書において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
「融点よりも10~40℃高いシリンダー温度」で測定した溶融粘度とは、シリンダー温度が前記した融点Tm2よりも10~40℃高い温度のうち全芳香族ポリエステルの組成によって適宜選択したいずれか一の温度で測定した溶融粘度を意味しており、融点Tm2よりも10~40℃高い温度範囲の全てにおいて測定した溶融粘度が上記範囲内でなくともよい。溶融粘度の調整は、液晶性樹脂の溶融重合時の最終重合温度を調整することで行うことができる。
次いで、全芳香族ポリエステルの製造方法について説明する。本実施形態の全芳香族ポリエステルは、直接重合法やエステル交換法等を用いて重合される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
重合反応の条件としては、上記の構成単位の重合が進行する条件であれば特に限定されず、例えば、反応温度200~380℃、最終到達圧力0.1~760Torr(すなわち、13~101,080Pa)であってもよい。
一実施形態において、重合反応時の温度を140℃から360℃まで段階的に分けて(2段階以上、又は3段階以上に分けて)昇温させることができる。重合反応時の温度を140℃から360℃まで段階的に分けて昇温させることで、得られる全芳香族ポリエステル中の構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差を容易に0.150モル%以下にすることができる。
一実施形態において、140℃から200℃、200℃から270℃、270℃から360℃に分けて昇温速度を変更して昇温させることができる。
一実施形態において、140℃から200℃への昇温速度を、0.4℃/分以上0.8℃/分未満にすることができる。200℃から270℃への昇温速度を、0.8℃/分以上1.2℃/分以下にすることができる。270℃から360℃への昇温速度を、0.4℃/分以上1.6℃/分以下にすることができる。
一実施形態において、140℃から200℃への昇温速度を、0.3℃/分以上0.5℃/分未満にすることができる。200℃から270℃への昇温速度を、0.5℃/分以上1.2℃/分以下にすることができる。270℃から360℃への昇温速度を、0.4℃/分以上1.6℃/分以下にすることができる。
本実施形態の全芳香族ポリエステルの製造方法は、高分子量化の観点から、芳香族ジカルボン酸の使用量(モル%)と芳香族ジオールの使用量(モル%)が等しいことが好ましい。なお、本実施形態の全芳香族ポリエステルの製造中に昇華物が発生することで、樹脂組成物中のこれらの含有量に差が生じる。
本実施形態では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の脂肪酸無水物等が挙げられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。
反応は、一例として、全原料モノマー(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキシ安息香酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジオール)、アシル化剤、及び触媒を同一反応容器に仕込んで反応を開始させることもできるし(一段方式)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ヒドロキシ安息香酸、及び芳香族ジオールの水酸基をアシル化剤によりアシル化させた後、芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基と反応させることもできる(二段方式)。
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系から全芳香族ポリエステルを排出する。
上記重合方法により製造された全芳香族ポリエステルは、更に常圧又は減圧、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。
((B)周期律表II族元素の化合物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物(以下、単に「(B)周期律表II族元素の化合物」ともいう。)を含有する。(B)周期律表II族元素の化合物を含有することで、めっき密着性を高めることができる。
周期律表II族元素の酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸力ルンウム、硫酸バリウム等の化合物が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム等が挙げられる。(B)周期律表II族元素の化合物は、これらから選択される1以上を含むことが好ましい。
これらの化合物は、2次加工としてめっきを行う前処理としてアルカリ溶液等で表面処理する際に、脱離しやすいため、液晶性樹脂の成形品の表面を容易に粗化することができる。特にリン酸塩を含むことが好ましく、ピロリン酸カルシウムを含むことがより好ましい。
(B)周期律表II族元素の化合物は、粉状(又は微粉状)であることが好ましい。その粒径は、体積基準の累積平均粒子径(D50)として、0.01~100μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1~30μmであり、さらに好ましくは0.5~10μmである。平均粒径を0.01~100μmにすることで、分散不良により成形品表面に凝集塊が生じることを防ぐことができ、かつエッチング後の表面の面粗度が大きくなり過ぎるのを防ぐことができる。
(B)周期律表II族元素の化合物の含有量は、樹脂組成物全体に対して、12.5~32.5質量%であり、好ましくは13.0~30.0質量%であり、より好ましくは13.5~28.5質量%であり、さらに好ましくは14.0~28.0質量%であり、よりさらに好ましくは14.5~27.5質量%であり、特に好ましくは15.0~25.0質量%である。(B)周期律表II族元素の化合物の含有量を、樹脂組成物全体に対して12.5~32.5質量%にすることで、優れた誘電特性を維持したまま、めっき密着性を高めることができる。また、流動性の悪化を防ぐことができ、成形性良く成形品を製造することができる。
((C)板状充填剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)板状充填剤を含む。(C)板状充填剤を含むことで優れた誘電特性及びめっき密着性を維持したまま、低そり性を高めることができる。板状充填剤としては、マイカ、タルク、ガラスフレーク等のケイ酸塩、又は各種の金属箔であることが好ましく、優れた誘電特性を維持する観点から、マイカを含むことがより好ましい。
(C)板状充填剤の平均粒径は、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは10~40μmである。平均粒径は、レーザー回折法で測定した体積基準の累積平均粒子径(D50)を意味する。板状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。後述する好ましい平均粒径及び厚みを有するマイカが得られるという理由で、薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄-シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄-シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH))、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(NaCO)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。
マイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、樹脂組成物中のポリマーの分解が生じにくく、多量のガス発生やポリマーの分子量低下等が起きにくいため、得られる成形品の性能をより良好に維持するのが容易である。
マイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により100個について実測した平均厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの平均厚みを0.01~1μmにすることで、成形品の剛性をより向上させることができる。
マイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
タルクとしては、当該タルクの全固形分量に対して、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であり、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下であり、かつCaOの含有量が0.5質量%未満であるものが好ましい。即ち、タルクは、その主成分たるSiO及びMgOの他、Fe、Al及びCaOのうちの少なくとも1種を含有し、各成分を上記の含有量範囲で含有するものであってもよい。
上記タルクにおいて、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であると、樹脂組成物の成形加工性及び当該樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。Fe、Al及びCaOの合計含有量は、1.0質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
上記タルクのうち、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超のタルクは入手しやすい。また、上記タルクにおいて、Fe及びAlの合計含有量が2.0質量%以下であると、樹脂組成物の成形加工性及び当該樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。Fe及びAlの合計含有量は、1.0質量%超1.7質量%以下が好ましい。
上記タルクにおいて、CaOの含有量が0.5質量%未満であると、樹脂組成物の成形加工性及び当該樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。CaOの含有量は、0.01質量%以上0.4質量%以下が好ましい。
タルクの、レーザー回折法で測定した体積基準の累積平均粒子径(D50)は、成形品のそり変形の防止及び樹脂組成物の流動性の維持という観点から、4.0~20.0μmであることが好ましく、10~18μmであることがより好ましい。
(C)板状充填剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して2.5~7.5質量%である。板状充填剤の含有量を、樹脂組成物全体に対して2.5質量%未満であると、低そり性を得ることができず、7.5質量%を超えるとめっき密着性が劣るので好ましくない。
(C)板状充填剤の含有量は、好ましくは樹脂組成物全体に対して3.0~7.5質量%であり、より好ましくは4.0~7.5質量%であり、更に好ましくは5.0~7.5質量%である。
((D)繊維状充填剤)
本実施形態に係る樹脂組成物は、さらに(D)繊維状充填剤を含むことが好ましい。(D)繊維状充填剤を含むことで、優れた誘電特性、めっき密着性及び低そり性を維持したまま、機械特性を高めることができる。
(D)繊維状充填剤としては、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機繊維状物質が挙げられる。(D)繊維状充填剤としては、これらから選択される1以上を含むことが好ましい。中でも、めっき密着性を高める観点から、ミルドガラスファイバーを含むことが好ましい。
ミルドガラスファイバーは、ガラス繊維を粉砕して得られる繊維状充填剤であり、重量平均繊維長により他のガラス繊維と区別される。
(D)繊維状充填剤の重量平均繊維長は、好ましくは200μm未満であり、より好ましくは50~170μmであり、さらに好ましくは70~150μmである。(D)繊維状充填剤の重量平均繊維長を200μm未満にすることで、流動性の低下を抑制することができ、小型化又は薄型化された電気・電子機器として用いられる成形品の製造が容易となる。
「重量平均繊維長」とは、樹脂組成物を600℃で2時間加熱し灰化して灰化残渣を得て、この灰化残渣の繊維状充填剤約100本が撮影された実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定する。これを10回繰り返し、繊維状充填剤の本数が約1000本となったときの測定値の平均値をいう。
(D)繊維状充填剤の繊維径は、特に制限されず、一般的に5~15μm程度のものが使用される。繊維状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。繊維径は、繊維状充填剤を走査型電子顕微鏡で観察し、100本の繊維状充填剤について繊維径を測定した値の平均値とする。
(D)繊維状充填剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.5~7.5質量%であり、より好ましくは3.0~7.0質量%であり、さらに好ましくは3.5~6.5質量%である。(D)繊維状充填剤の含有量を、樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%にすることで、めっき密着性を維持したまま、機械特性を高めることができる。
一実施形態において、(D)繊維状充填剤の含有量は、2.5~5.0質量%である。一実施形態において、(D)繊維状充填剤の含有量は、5.0~7.5質量%である。
((B)、(C)及び(D)の総量)
(B)周期律表II族元素の化合物、(C)板状充填剤、及び(D)繊維状充填剤の総量は、樹脂組成物全体に対して、20~40質量%であり、好ましくは25~38質量%であり、より好ましくは27~35質量%であり、さらに好ましくは27.5~30.0質量%である。(B)周期律表II族元素の化合物及び(D)繊維状充填剤の総量を、樹脂組成物全体に対して、20~40質量%にすることで、優れた誘電特性及び流動性を維持したまま、めっき密着性、低そり性及び機械特性を高めることができる。
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、一般的に入手可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪酸エステル類、脂肪酸金属塩類、脂肪酸アミド類、低分子量ポリオレフィン等が挙げられ、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート)が好ましい。
離型剤の配合量としては、樹脂組成物において、0.1~3質量%の範囲が好ましい。離型剤の配合量が0.1質量%以上であると、成形時の離型性が向上するとともに、そり及び/又は変形が少ない成形品を得やすい。離型剤の配合量が3質量%以下であるとモールドデポジット(即ち、成形における金型への付着物をいう。以下、「MD」ともいう。)が低減しやすい。離型剤の配合量は、より好ましくは0.1~1質量%であり、更に好ましくは0.1~0.5質量%である。
樹脂組成物には、上記の成分の他に、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、及び上記成分(B)及び(C)以外の公知の無機充填剤のうちの1種以上を、5質量%以下配合してもよい。
また、樹脂組成物には、上記全芳香族ポリエステル以外の液晶性樹脂や、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の他の熱可塑性樹脂を、樹脂組成物全体に対して、7質量%以下、又は5質量%以下配合してもよい。
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、めっきの密着性が高くかつ優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができる。
「めっき密着性」は、成形品表面に形成されためっき膜の剥離し難さを意味している。本実施形態に係る樹脂組成物を用いて形成された成形品は、アルカリ溶液によるエッチング処理により表面を容易に粗化処理できる。粗化された表面は、アンカー効果を発現し、その後にめっき処理で形成されるめっき膜の密着性を高めることができる。
一実施形態において、樹脂組成物は、めっき処理の前にエッチング処理が行われる湿式めっきで形成されるめっきの密着性を高めることができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、成形品の測定周波数5GHzにおける誘電正接が0.003以下であり、好ましくは0.0025以下であり、より好ましくは0.0023未満であり、特に好ましくは0.0022以下である。
誘電正接の調整は、(A)液晶性樹脂のモノマーの種類や含有量により調整することができる。例えば、上記所定のモノマー組成を有する(A)液晶性樹脂において、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の量を増やすと誘電正接がより低くなる傾向にある。
測定周波数5GHzにおける誘電正接の測定方法は、樹脂組成物を用いて成形した80mm×80mm×厚さ1mmの平板状成形品から、樹脂の流動方向を長手方向として80mm×1mm×厚さ1mmの試験片を切り出した試験片を用いて、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置により測定する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、成形品の測定周波数5GHzにおける比誘電率が、4.5以下であることが好ましく、4.3以下であることがより好ましく、4.2以下であることがさらに好ましい。
「低そり性」は、成形後の成形品のそりの発生が少ないことを意味している。樹脂組成物は、後述する実施例と同じ方法で算出される平面度が、5mm以下であることが好ましく、4.6mm以下であることがより好ましい。
樹脂組成物は、さらに高機械特性を有していることが好ましい。「高機械特性」は、成形品の曲げ弾性率及び/又は曲げ強度が大きいことを意味している。樹脂組成物は、脂組成物から成形される0.8mm厚の成形品のASTM D790に準拠した曲げ試験において、曲げ強度が150MPa以上であることが好ましく、155MPa以上であることがより好ましい。
樹脂組成物は、樹脂組成物から成形される0.8mm厚の成形品のASTM D790に準拠した曲げ試験において、曲げ弾性率が9000MPa以上であることが好ましい。
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物の製造方法は、樹脂組成物中の成分を均一に混合できれば特に限定されず、従来知られる樹脂組成物の製造方法から適宜選択することができる。例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出した後、得られた樹脂組成物を粉末、フレーク、ペレット等の所望の形態に加工する方法が挙げられる。
(用途)
本実施形態に係る樹脂組成物は、めっき密着性が高い成形品を与えることができるので、めっき処理により表面加工される成形品の製造用に好ましく用いることができる。
加えて、樹脂組成物は、優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができるので、例えば、高周波アンテナ、誘電体共振器、高周波同軸コネクター、マイクロ波フィルター等の電気・電子機器用の成形品の製造用に好ましく用いることができる。
[成形品]
本実施形態に係る成形品は、上記した樹脂組成物を含む。上記した樹脂組成物を用いて形成されるので、めっきの密着性が高くかつ優れた誘電特性及び低そり性を有する。そのため、例えば、高周波アンテナ、誘電体共振器、高周波同軸コネクター、マイクロ波フィルター等の電気・電子機器用部品として好ましく用いることができる。
成形品の製造方法は、限定されず、樹脂組成物を溶融混練し(例えば350~380℃)、押出成形、射出成形、圧縮成形等の慣用の方法で成形することにより、成形体を得ることができる。
本実施形態に係る成形品は、アルカリ溶液によるエッチング処理により容易に表面を粗化処理できる。一実施形態において、成形品は、表面の少なくとも一部が粗化されている。「粗化されている」とは、成形品の表面を電子顕微鏡で観察した際に表面に凹凸が多数観察されることを意味している。一実施形態において、成形品は、表面の少なくとも一部の表面粗さRaが1~5μmであることが好ましく、2~4μmであることがより好ましい。表面粗さRaは、JIS B0601に準拠して測定した算術平均粗さとする。表面処理方法については後述する。
表面が粗化処理された成形品は、湿式めっきにより容易にめっき膜を形成することができる。一実施形態において、成形品は、粗化された表面上に金属又は合金膜(めっき膜)を有する。金属膜の種類は、湿式めっきで容易に形成可能である観点から、銅、スズ、ニッケル、インジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、金、又はこれらの金属の合金膜や、ニッケル-リン系、ニッケル-ホウ素系、コバルト-リン系、コバルト-モリブデン系等の合金膜等を挙げることができる。電子材料分野においては、これらの中でも、ニッケル、銅、金等が挙げられる。
金属又は合金膜(めっき膜)の厚さは、限定されず、5~20μm程度とすることができる。金属膜の厚さは、レーザー顕微鏡により測定した値とする。金属膜の形成方法については後述する。
[表面加工品の製造方法]
本実施形態に係る表面加工された成形品の製造方法は、上記した樹脂組成物を含む成形品を得ること、及び、前記成形品の表面の少なくとも一部をエッチング処理して粗化すること、を含む。樹脂組成物を含む成形品の製造方法は、上記のとおりである。
「表面加工された成形品」は、表面が粗化処理された成形品、及び表面にめっき膜等の膜が形成された成形品を含む。
エッチング処理は、成形品の表面の少なくとも一部をエッチング処理液に接触させて(好ましくは成形品をエッチング処理液に浸漬して)行う。エッチング処理液は、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする水溶液であることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液であり、好ましくは水酸化カリウム水溶液である。
エッチング処理液は、上記水溶液に、さらに液晶性樹脂の表面分解物を溶解しかつアルカリ水溶液に可溶な有機溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール、テトラヒドロフランの等のフラン化合物、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、アニリン、ピリジン、ホルムアミド等の窒素化合物、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素等の中から選ばれた1種又は2種以上の溶剤を添加し、複合液として用いることができる。
エッチング処理する際のエッチング処理液への浸漬条件は、エッチング処理液の組成に応じ適宜最適条件が探索、選択されるが、上記樹脂組成物を含む成形品の好ましい処理条件は、上記水酸化物の6~15mol/L水溶液を用い、50~90℃で40~90分の範囲で、好ましくは水酸化物10~12mol/L水溶液を用い、60~80℃で40~70分である。特に好ましい処理条件例は、水酸化カリウムの11mol/L水溶液で、70℃、60分程度の処理が挙げられる。
本実施形態において、エッチング処理の前、後又は同時に、公知の方法で成形品を処理することも可能である。例えばエッチング処理前又は後の成形品の加熱処理、温水処理或いは特定の化合物を含有した溶液への浸漬処理等が挙げられる。エッチング後の処理はエッチング液の中和、洗浄、乾燥等の工程と兼ねることもできる。
本実施形態に係る表面加工された成形品の製造方法は、上記により粗化された表面上に湿式めっきにより金属又は合金膜を形成することを含むことができる。湿式めっきの方法は、限定されず、公知の無電解めっき、電気めっき、陽極酸化法、電解析出法、ゾル-ゲル法、LB膜法、化学コーティング等により行うことができる。中でも無電解めっき又は電気めっきが好ましい。めっき膜の厚さについては、上記した金属又は合金膜の厚さと同様にすることができる。
無電解めっきとしては、例えば、銅、スズ、ニッケル、インジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、金、又はこれらの金属の合金めっきや、ニッケル-リン系、ニッケル-ホウ素系、コバルト-リン系、コバルト-モリブデン系等の合金めっき等を挙げることができる。電子材料分野においては、これらの中でも、ニッケル、銅、金等を用いることが好ましい。
電気めっきとしては、例えば、銅、ニッケル、スズ、パラジウム、金、銀、ロジウム、クロム、又はこれらの金属の合金めっきや、スズ-鉛合金、ニッケル-リン合金、等の合金めっきを挙げることができる。電気めっきも無電解めっきと同様に、電子材料分野においては、ニッケル、銅、金等を用いることが好ましい。
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
[合成例1](実施例1,2,6、比較例1~6)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸 0.883モル(48モル%)(HNA)
(II)4-ヒドロキシ安息香酸 0.037モル(2モル%)(HBA)
(III)1,4-フェニレンジカルボン酸 0.46モル(25モル%)(TA)
(IV)4,4’-ジヒドロキシビフェニル 0.46モル(25モル%)(BP)
酢酸カリウム触媒 150ppm
トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)触媒 150ppm
無水酢酸 1.91モル(HBAとBPとの合計の水酸基当量の1.04倍)
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に表1に示す速度条件で昇温し、そこから20分かけて10Torr(すなわち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から生成物を排出し、ペレタイズしてペレット状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、窒素気流下、300℃で3時間、加熱処理(固相重合)を行い、目的とするポリマーを得た。
[合成例2~4](実施例3~5)
昇温速度を表1に示すとおりとした以外は、合成例1と同様にしてポリマーを得た。なお、合成例2~4は、実施例3~5でそれぞれ使用した液晶性樹脂に相当する。
[昇華物量]
合成例1~4における溶融重合において、還流カラム及びリアクター上部の質量変化から、液晶性樹脂の重合時の昇華物量を測定した。結果を表1に示す。
[測定]
合成例1~4の液晶性樹脂について、融点、溶融粘度、モノマー組成(含有量)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
(融点)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)にて、全芳香族ポリエステルを室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
(溶融粘度)
キャピログラフ((株)東洋精機製作所製)を使用し、温度380℃で、内径0.5mm、長さ30mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、全芳香族ポリエステルの溶融粘度を測定した(合成例4、8の溶融粘度は温度350℃で測定した)。
(モノマー組成(含有量):TAの含有量とBPの含有量との差)
Polymer Degradation and Stability 76(2002)85-94に記載される、熱分解ガスクロマトグラフィー法によってモノマー組成を算出した。具体的には、熱分解装置(フロンティア・ラボ(株)製「PY2020iD」)を用いて、全芳香族ポリエステルを水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下で加熱し、熱分解/メチル化によりガスを発生させた。このガスをガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジー(株)製「GC-6890N」)を用いて分析し、1,4-フェニレンジカルボン酸に由来するピーク面積と4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来するピーク面積との比から、1,4-フェニレンジカルボン酸から誘導される構成単位の含有量と4,4’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される構成単位の含有量との差(TAの含有量とBPの含有量との差)を算出した。
[実施例1]
合成例1で得られた液晶性樹脂と、下記の成分とを二軸押出機を使用して混合し、樹脂組成物を得た。押出条件は以下のとおりである。各成分の配合量は表1に示したとおりである。
(B)II族元素の化合物
ピロリン酸カルシウム:体積基準の累積平均粒子径(D50)7μm
(D)繊維状充填剤
ミルドガラスファイバー(ミルドファイバー):日本電気硝子(株)製「EPH-80M」、繊維径10.5μm、平均繊維長80μm(メーカー公称値)
なお、上記のメーカー公称値は、組成物中での実測値(重量平均繊維長)とは異なっている。重量平均繊維長については、後述する。
(押出条件)
メインフィード口に設けられたシリンダーの温度を250℃とし、他のシリンダーの温度はすべて360℃とした。液晶性樹脂はすべてをメインフィード口から供給した。また、充填剤はサイドフィード口から供給した。
[実施例2,6、比較例1~6]
各成分の配合量を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
[実施例3~5]
合成例2~4で得られた液晶性樹脂をそれぞれ用いるとともに、各成分の配合量を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
[測定及び評価]
樹脂組成物中の繊維状充填剤の重量平均繊維長、及び樹脂組成物の各種物性等を下記の方法で測定した。重量平均繊維長の測定結果は以下に示し、その他の各種物性の測定結果は表1に示す。
(繊維状充填剤の重量平均繊維長)
実施例5の樹脂組成物ペレット5gを600℃で2時間加熱し灰化した。灰化残渣を5質量%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させた後、スポイトでシャーレに移し、顕微鏡で繊維状充填剤を観察した。同時に画像測定器((株)ニレコ製LUZEXFS)を用いて繊維状充填剤の重量平均繊維長を測定した。すなわち、灰化残渣の繊維状充填剤約100本が撮影された実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定した。これを10回繰り返し、繊維状充填剤の本数が約1000本となったときの測定値の平均値を重量平均繊維長とした。その結果、樹脂組成物中のミルドガラスファイバーの重量平均繊維長は100μmであった。
(樹脂組成物の溶融粘度)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、全芳香族ポリエステルの融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、樹脂組成物の溶融粘度を測定した。
なお、具体的な測定温度は、370℃である。
(めっき密着性)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE-100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状試験片を作製した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:370℃
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
保圧:60MPa
得られた平板状試験片をアルカリ脱脂液(奥野製薬工業株式会社製、エースクリンA220)中に60℃にて5分間浸漬し、十分脱脂した後水洗し、水酸化カリウムの11.0mol/L濃度の水溶液中で70℃にて20分間エッチング処理した。エッチング処理した成形品は水洗後塩酸の5重量%溶液で室温にて3分間浸漬処理することにより、表面に付着したアルカリ分を中和し水洗した上、80℃で15分間熱風循環炉で乾燥した。
エッチング処理した試験片を、特許文献1の実施例に記載の方法にて、中和(塩酸5重量%、25℃、3分間)、湿潤化(湿潤剤:ミヨシ油脂(株)製ダスパーAL-1、1重量%、25℃、1分間)、キャタリスト(奥野製薬工業(株)製A-30/36%塩酸/水=1:1:5、25℃、2分間)、アクセレーター(塩酸5重量%、25℃、2分間)、無電解銅めっき(奥野製薬工業(株)製OPC-750、A液100mL/L、B液100mL/L、C液2mL/L)、電気銅めっき(厚み40μm)の各工程の順でめっき処理を行った。めっき膜が形成された試験片の表面を、カッターナイフを用いて縦横1mm間隔に切り、1mm×1mmのセル100個を作った後、光学顕微鏡で観察し、めっき膜が剥離したセル数を数えた。セル100個中のめっき膜が剥離したセル数の割合を剥離割合として算出し、下記基準で評価した。
2:剥離割合が50%未満
1:剥離割合が50%以上
(誘電特性)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE-100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状成形品(図1を参照)を作製した。図1に示すとおり、80mm×80mm×1mmの平板状試験片の流動方向(A)に沿う一辺から内側に10mmの箇所から、流動方向Aが長手方向になるように80mm×1mm×1mmの試験片(2)を切り出し、これを比誘電率測定用試験片とした。なお、図1の符号1は、ゲートを示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:370℃
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
保圧:60MPa
(曲げ試験)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE-100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、ISO試験片A形を得た。この試験片を切り出し、測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を得た。この測定用試験片を用いて、ISO 178に準拠し、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:370℃
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
(平面度:低そり性)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE-100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状試験片を5枚作製した。1枚目の平板状試験片を水平面に静置し、(株)ミツトヨ製のCNC画像測定機(型式:QVBHU404-PRO1F)を用いて、上記平板状試験片上の9箇所において、上記水平面からの高さを測定し、得られた測定値から平均の高さを算出した。高さを測定した位置は、平板状試験片の主平面上に、この主平面の各辺からの距離が3mmとなるように、一辺が74mmの正方形を置いたときに、この正方形の各頂点、この正方形の各辺の中点、及びこの正方形の2本の対角線の交点に該当する位置である。上記水平面からの高さが上記平均の高さと同一であり、上記水平面と平行な面を基準面とした。上記9箇所で測定された高さの中から、基準面からの最大高さと最小高さとを選択し、両者の差を算出した。同様にして、他の4枚の平板状試験片についても上記の差を算出し、得られた5個の値を平均して、平面度の値とした。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:370℃
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
保圧:70MPa
(ゲート詰まり:成形安定性)
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE-100D」)及び図2に示す金型を用いて、以下の条件で射出成形し成形安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
金型:トンネルゲート型、ゲート直径0.1mm、2個取り(同じ形状の金型2個に同時に射出する)
シリンダー温度:370℃
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
保圧:50MPa
ショット数:360ショット
〔成形安定性〕
成形安定性を、以下の基準で評価した。
2:ゲート詰まりが発生しない。
1:ゲート詰まりが1回以上発生する。

Figure 2022150666000007
表1に示すように、実施例1~6の樹脂組成物は、めっき密着性、優れた誘電特性及び低そり性を有する成形品を与えることができる。成分(A)~(C)に加えて成分(D)を含む実施例5では、機械的特性が向上している。
これに対して、(C)板状充填剤の含有量が過剰である比較例1,2の樹脂組成物は、めっき密着性が劣る結果となった。(C)板状充填剤を含まない比較例3の樹脂組成物は、低そり性が劣る結果となった。また、機械特性が劣る結果となった。(B)II族元素の化合物を含まず(C)板状充填剤の含有量が過剰である比較例4~6の樹脂組成物については、めっき密着性が劣る結果となった。
1 ゲート
2 試験片
A 流動方向

Claims (13)

  1. (A)液晶性樹脂と、(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物と、(C)板状充填剤と、を含有する樹脂組成物であって、
    前記(A)液晶性樹脂は、
    必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
    Figure 2022150666000008
    (式中、Ar及びArは、それぞれ独立して、アリーレン基を表す)
    を含有し、
    全構成単位に対して、構成単位(I)の含有量が40~75モル%であり、構成単位(II)の含有量が0.5~7.5モル%であり、構成単位(III)の含有量が8.5~30モル%であり、構成単位(IV)の含有量が8.5~30モル%である、
    溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルであり、
    前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、12.5~32.5質量%であり、
    前記(C)板状充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%であり、
    前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物及び前記(C)板状充填剤の総量は、前記樹脂組成物全体に対して、20~40質量%であり、
    測定周波数5GHzにおける誘電正接が0.003以下である、表面加工用樹脂組成物。
  2. 前記(A)液晶性樹脂中の構成単位(III)の含有量と構成単位(IV)の含有量との差が0.150モル%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(A)液晶性樹脂の全構成単位に対して構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV)の合計の含有量が100モル%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. さらに(D)繊維状充填剤を含有し、
    前記(D)繊維状充填剤の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、2.5~7.5質量%であり、
    前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物、前記(C)板状充填剤、及び前記(D)繊維状充填剤の総量は、前記樹脂組成物全体に対して、20~35質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の表面加工用液晶性樹脂組成物。
  5. 前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物は、周期律表II族元素のリン酸塩である、請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(B)周期律表II族元素の酸化物、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される1種以上である化合物は、ピロリン酸カルシウムである、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記(C)板状充填剤は、平均粒子径が50μm以下であり、
    前記(D)繊維状充填剤は、重量平均繊維長が200μm未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記(C)板状充填剤は、マイカであり、
    前記(D)繊維状充填剤は、ミルドガラスファイバーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
  10. 表面の少なくとも一部が粗化された、請求項9に記載の成形品。
  11. 粗化された表面上に金属又は合金膜を有する、請求項9又は10に記載の成形品。
  12. 請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む成形品を得ること、
    前記成形品の表面の少なくとも一部をエッチング処理すること、を含む、表面加工された成形品の製造方法。
  13. エッチング処理された表面上に湿式めっきにより金属又は合金膜を形成することを含む、請求項12に記載の表面加工された成形品の製造方法。
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