JP2022150492A - 軟磁性粉末、磁性体コアおよび磁性部品 - Google Patents

軟磁性粉末、磁性体コアおよび磁性部品 Download PDF

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Abstract

【課題】 高耐電圧と高透磁率とを両立させた磁性体コアを作製できる軟磁性粉末を提供する。【解決手段】 Feを含む軟磁性粉末である。軟磁性粉末の表面が被覆部により覆われている。被覆部が混合層を含む。混合層がホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される2種以上を有する。被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である。【選択図】図3

Description

本発明は、軟磁性粉末、磁性体コアおよび磁性部品に関する。
特許文献1では、被覆部が絶縁性材料の粒子を固着させて形成される軟磁性粉末に関する発明が記載されている。絶縁性材料としては、各種ガラス材料が挙げられている。好ましくはホウ酸塩系ガラス材料、ホリン酸塩系ガラス材料等の軟化点が100~500℃程度であるガラス材料である旨、記載されている。
特許文献2では、圧粉磁心用の鉄基軟磁性粉末に関する発明が記載されている。具体的には、鉄基軟磁性粉末表面にFeとCoより成る被膜と、リン酸系化成被膜と、シリコーン樹脂被膜とが、この順に形成されていることを特徴とする。
特開2010-232225号公報 特開2009-038256号公報
軟磁性粉末を用いて磁性体コアを作製する場合において、高耐電圧と高透磁率とが両立させにくいことが知られている。
本発明は高耐電圧と高透磁率とを両立させた磁性体コアを作製できる軟磁性粉末を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る軟磁性粉末は、
Feを含む軟磁性粉末であって、
前記軟磁性粉末の表面が被覆部により覆われており、
前記被覆部が混合層を含み、
前記混合層がホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される2種以上を有し、
前記被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である。
前記混合層の断面において、ホウケイ酸系酸化物の面積割合をS、ビスマス系酸化物の面積割合をS、リン酸系酸化物の面積割合をSとし、S+S+S=100として、
、SおよびSが全て0以上90以下であってもよい。
前記混合層がホウケイ酸系酸化物およびリン酸系酸化物を有してもよい。
前記被覆部が前記軟磁性粉末の表面に近い側から順番に第1単層、前記混合層および第2単層を有してもよく、
前記第1単層が前記ホウケイ酸系酸化物および前記ビスマス系酸化物から選択される1種のみを有してもよく、
前記第2単層が前記ビスマス系酸化物および前記リン酸系酸化物から選択される1種のみを有してもよく、
前記第1単層と前記第2単層とで、酸化物の種類が異なってもよい。
前記軟磁性粉末が非晶質からなる構造を有してもよい。
前記軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造を有してもよい。
本発明に係る磁性体コアは、上記の軟磁性粉末を含む。
本発明に係る磁性部品は、上記の磁性体コアを含む。
、SおよびSの範囲を示す三角線図である。 、SおよびSの範囲を示す三角線図である。 被覆部の断面の模式図である。 被覆部の断面の模式図である。 被覆部の断面の模式図である。 被覆部の断面の模式図である。 X線結晶構造解析により得られるチャートの一例である。 図7のチャートをプロファイルフィッティングすることにより得られるパターンの一例である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態における軟磁性粉末は、
Feを含む軟磁性粉末であって、
前記軟磁性粉末の表面が被覆部により覆われており、
前記被覆部が混合層を含み、
前記混合層がホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される2種以上を有し、
前記被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である。
軟磁性粉末に含まれる粉末粒子(以下、単に軟磁性粉末粒子と呼ぶことがある)の平均粒径(D50)には特に制限はない。例えば、5.0μm以上200μm以下であってもよい。平均粒径が小さいほど、当該軟磁性粉末を含む磁性体コアの透磁率が低下する傾向にある。平均粒径が大きいほど当該軟磁性粉末を含む磁性体コアの耐電圧が低下する傾向にある。
軟磁性粉末粒子を被う被覆部が上記の混合層を含む場合には、被覆部が上記の混合層を含まない場合と比較して、当該軟磁性粉末粒子を含む磁性体コアが高耐電圧および高透磁率を両立させやすくなる。
図3に被覆部の断面の模式図を示す。図3に示す通り、軟磁性粉末粒子11の表面が被覆部21により覆われている。
被覆部は少なくとも混合層21を含む。そして、混合層21は第1酸化物31および第2酸化物32を含む。また、第1酸化物31および第2酸化物32以外の酸化物を含んでもよい。
第1酸化物31と第2酸化物32とは異なる種類の酸化物である。第1酸化物31および第2酸化物32はそれぞれ、ホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される。
混合層21がホウケイ酸系酸化物およびリン酸系酸化物を有してもよい。この場合には軟磁性粉末を用いて作製される磁性体コアの耐電圧が高くなる傾向にある。
第1酸化物31は第2酸化物32よりもガラス転移温度Tgが高い酸化物であってもよい。なお、一般的にはホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物、リン酸系酸化物の順にTgが高い。
ホウケイ酸系酸化物とは、BおよびSiOを主に含む酸化物である。具体的には、ホウケイ酸系酸化物は、Bを1質量%以上含み、SiOを10質量%以上含み、かつ、BおよびSiOを合計で20質量%以上、含む。
ビスマス系酸化物とは、Biを主に含む酸化物である。具体的には、ビスマス系酸化物は、Biを50質量%以上、含む。
リン酸系酸化物とは、Pを主に含む酸化物である。具体的には、リン酸系酸化物は、Pを40質量%以上、含む。
混合層21は第1酸化物31と第2酸化物32とが混合されている層である。混合層21は、軟磁性粉末粒子11の表面と平行な線を引いた場合において、第1酸化物31と第2酸化物32との両方を通過する部分である。さらに、軟磁性粉末粒子11の表面と平行な線の長さに対して第1酸化物31を通過する部分の長さおよび第2酸化物32を通過する部分の長さがそれぞれ10%以上である。
混合層21は厚さが少なくとも2nm以上である層とする。すなわち、軟磁性粉末粒子11の表面と平行な線を引いた場合において第1酸化物31と第2酸化物32との両方を通過する部分があっても、そのような部分の厚さが2nm未満である場合には混合層21とはみなさない。
被覆部が混合層21を含むか否かを確認する方法には特に制限はない。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、TEM像の高速フーリエ変換処理(FFT)および電子エネルギー損失分光法(EELS)などを用いて確認する方法がある。
まず、TEMを用いて軟磁性粉末粒子11の表面近傍の明視野像を観察する。次にEELSを用いて各元素のマッピング画像を観察し、被覆部が混合層21を有することを確認する。なお、明視野像の大きさは混合層21の有無を確認するために十分な大きさとする。例えば、軟磁性粉末粒子11の表面に略平行な方向の長さが0.1μm以上であり、軟磁性粉末粒子11の表面に略垂直な方向の長さが被覆部の厚みの5倍以上500倍以下である大きさとする。
図3に示す混合層21は、軟磁性粉末粒子11の表面に近いほどTgの高い酸化物(第1酸化物31)の割合が多くなる傾向にある。具体的には、混合層21は、第1酸化物31が軟磁性粉末粒子11の表面で凹凸を形成し、それと同時に、Tgの低い酸化物(第2酸化物32)が第1酸化物31の凹部に入り込む形状を有する。
被覆部の平均厚みは2.0nm以上100nm以下である。被覆部の平均厚みが薄すぎる場合には軟磁性粉末を用いて作製される磁性体コアの耐電圧が低下する。被覆部の平均厚みが厚すぎる場合には軟磁性粉末を用いて作製される磁性体コアの透磁率が低下する。
混合層21に含まれる各酸化物の含有割合には特に制限はない。混合層21の断面において、ホウケイ酸系酸化物の面積割合をS、ビスマス系酸化物の面積割合をS、リン酸系酸化物の面積割合をSとし、S+S+S=100として、S、SおよびSが全て0以上93以下であってもよく、0以上90以下であってもよい。
、SおよびSが全て0以上93以下である範囲、すなわち、三角線図上で点A´~点F´を頂点とする六角形(線上を含む)により囲まれる範囲を示した図面が図1、S、SおよびSが全て0以上90以下である範囲、すなわち、三角線図上で点A~点Fを頂点とする六角形(線上を含む)により囲まれる範囲を示した図面が図2である。特にS、SおよびSが全て0以上90以下であることにより軟磁性粉末を用いて作製される磁性体コアの耐電圧が向上しやすい。
被覆部は図3に示す被覆部に限定されない。例えば、図4~図6に示す被覆部であってもよい。以下、図4~図6に示す被覆部について説明するが、特に説明のない部分については図3に示す被覆部と同様である。また、図4~図6では図3とは異なり、同一材料の酸化物同士の間の境界線を適宜、省略している。
図4に示す被覆部は図3に示す被覆部とは異なり、混合層21において第1酸化物31の中に第2酸化物32が均一に分散している。図4に示す被覆部を有する軟磁性粉末粒子も図3に示す被覆部を有する軟磁性粉末と同様に、当該軟磁性粉末粒子を含む磁性体コアが高耐電圧および高透磁率を両立させることができる。
図5に示す被覆部は図3、図4に示す被覆部とは異なり、混合層A(21)以外に単層A(23)および単層B(24)を含む。そして、被覆部が軟磁性粉末粒子11の表面に近い側から順番に第1単層、混合層および第2単層を有するとして、単層A(23)が第1単層に対応し、単層B(24)が第2単層に対応する。なお、単層A(23)および単層B(24)のいずれかが被覆部に含まれなくてもよい。
単層とは、酸化物としてホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物、リン酸系酸化物から選択される1種のみを含む層である。また、第1単層に含まれる酸化物は第2単層に含まれる酸化物と比較してTgが高い。
図5の場合には単層A(23)がホウケイ酸系酸化物およびビスマス系酸化物から選択される1種のみを有し、単層B(24)がビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される1種のみを有する。さらに、単層A(23)と単層B(24)とで、酸化物の種類が異なる。
単層A(23)の平均厚みおよび単層B(24)の平均厚みは、それぞれ0.4nm以上9.6nm以下であってもよい。さらに、被覆部の平均厚みに対する混合層A(21)の平均厚みの割合が50%以上であってもよく60%以上であってもよい。被覆部の平均厚みに対する混合層A(21)の平均厚みの割合が十分に大きいことで、当該軟磁性粉末粒子を含む磁性体コアの耐電圧をさらに向上させることができる。
図6に示す被覆部は、単層を3つ含み、それぞれの単層の間に混合層を含む。軟磁性粉末粒子11の表面に近い側から順番に単層A(23)、混合層A(21)、単層B(24)、混合層B(22)および単層C(25)を含む。
被覆部が軟磁性粉末粒子11の表面に近い側から順番に第1単層、混合層および第2単層を有するとして、単層A(23)、混合層A(21)および単層B(24)がそれぞれこの順番で第1単層、混合層および第2単層に対応してもよい。また、単層B(24)、混合層B(22)および単層C(25)がそれぞれこの順番で第1単層、混合層および第2単層に対応してもよい。
単層A(23)に含まれる酸化物(第1酸化物31)のTgが最も高く、単層C(25)に含まれる酸化物(第3酸化物33)のTgが最も低い。単層B(24)に含まれる酸化物(第2酸化物32)のTgは第1酸化物31のTgと第3酸化物33のTgとの間の温度である。すなわち、単層A(23)がホウケイ酸系酸化物を有し、単層B(24)がビスマス系酸化物を有し、単層C(25)がリン酸系酸化物を有する。
図6に示す被覆部において、各単層の平均厚みは、それぞれ1.0nm以上3.0nm以下であってもよい。さらに、被覆部の平均厚みに対する各混合層の合計平均厚みの割合が50%以上であってもよく60%以上であってもよい。被覆部の平均厚みに対する各混合層の合計平均厚みの割合が十分に大きいことで、当該軟磁性粉末粒子を含む磁性体コアの耐電圧をさらに向上させることができる。
軟磁性粉末の組成については、Feを含む点以外、特に制限はない。Feの含有量にも特に制限はない。少なくとも10質量%以上、含んでいればよい。また、軟磁性粉末の微細構造を後述するナノ結晶からなる構造または非晶質からなる構造とする場合には、当該構造を得やすい組成とすることが好ましい。
軟磁性粉末の微細構造については特に制限はないが、特に透磁率を向上させるためにはナノ結晶からなる構造または非晶質からなる構造とすることが好ましく、ナノ結晶からなる構造とすることが特に好ましい。軟磁性粉末の微細構造はXRDにより確認することができる。また、TEMを用いて確認することも可能である。
非晶質からなる構造は、非晶質のみを有する構造またはヘテロ非晶質からなる構造である。ヘテロ非晶質からなる構造は、初期微結晶が非晶質中に存在する構造のことである。なお、初期微結晶の平均結晶粒径には特に制限はないが、平均結晶粒径が0.3nm以上10nm以下であってもよい。また、非晶質からなる構造は、XRDにより確認することができる非晶質化率が85%以上である。なお、非晶質のみを有する構造であるか、ヘテロ非晶質からなる構造であるかについてはTEMで確認が可能である。ナノ結晶からなる構造は、ナノ結晶を主に含む構造のことである。結晶(ナノ結晶)からなる構造では、XRDにより確認することができる非晶質化率が85%未満である。また、ナノ結晶からなる構造におけるナノ結晶の平均結晶粒径は0.5nm以上100nm以下である。0.9nm以上100nm以下であってもよく、1.0nm以上50.0nm以下であってもよく、5.0nm以上40.0nm以下であってもよい。
本実施形態において、下記式(1)に示す非晶質化率Xが85%以上である軟磁性金属粉末は非晶質のみを有する構造またはヘテロ非晶質からなる構造を有し、非晶質化率Xが85%未満である軟磁性金属粉末は結晶からなる構造を有するとする。
X=100-(Ic/(Ic+Ia)×100)…(1)
Ic:結晶性散乱積分強度
Ia:非晶性散乱積分強度
非晶質化率Xは、軟磁性金属粉末に対してXRDによりX線結晶構造解析を実施し、相の同定を行い、結晶化したFe又は化合物のピーク(Ic:結晶性散乱積分強度、Ia:非晶性散乱積分強度)を読み取り、そのピーク強度から結晶化率を割り出し、上記式(1)により算出する。以下、算出方法をさらに具体的に説明する。
本実施形態に係る軟磁性金属粉末についてXRDによりX線結晶構造解析を行い、図7に示すようなチャートを得る。これを、下記式(2)のローレンツ関数を用いて、プロファイルフィッティングを行い、図8に示すような結晶性散乱積分強度を示す結晶成分パターンα、非晶性散乱積分強度を示す非晶成分パターンα、およびそれらを合わせたパターンαc+aを得る。得られたパターンの結晶性散乱積分強度および非晶性散乱積分強度から、上記式(1)により非晶質化率Xを求める。なお、測定範囲は、非晶質由来のハローが確認できる回析角2θ=30°~60°の範囲とする。この範囲で、XRDによる実測の積分強度とローレンツ関数を用いて算出した積分強度との誤差が1%以内になるようにした。
Figure 2022150492000002
なお、本実施形態の軟磁性合金粉末がナノ結晶を含む場合には、個々の粒子ごとに多数のナノ結晶を含む。すなわち、後述する軟磁性合金粉末の粒子径とナノ結晶の結晶粒径とは異なる。
本実施形態のナノ結晶は、Fe基ナノ結晶であることが好ましい。Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノオーダーであり、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)である結晶のことである。
以下、本発明に係る軟磁性粉末の製造方法を説明する。
まず、被覆部で被覆する前の軟磁性粉末を作製する。軟磁性粉末の作製方法には特に制限はなく、周知の方法で所望の組成、平均粒径および微細構造を有する軟磁性粉末を作製すればよい。例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法などの方法で作製することができる。平均粒径を制御するために得られた軟磁性粉末を分級してもよい。市販の軟磁性粉末を準備してもよい。
次に、軟磁性粉末粒子に被覆部を形成する。まず、被覆部を形成するためのガラス粉末を準備する。具体的には、ホウケイ酸系ガラス、ビスマス系ガラス、および/または、リン酸系ガラスを準備する。
そして、粉末被覆装置としてメカノフュージョン装置を準備する。メカノフュージョン装置を用いることで、軟磁性粉末粒子に混合層を有する被覆部を形成することができる。
まず、軟磁性粉末および/またはガラス粉末をメカノフュージョン装置の回転ロータに投入する。ガラス粉末の種類および投入量は混合層における各酸化物の面積割合により変化する。粉末を投入するタイミングは形成する被覆部の構成により変化する。そして、メカノフュージョン装置を稼働させ、軟磁性粉末に軟化したガラス粉末を固着させて被覆部を形成する。
一般的に、Tgが高い酸化物が、Tgが低い酸化物よりも、軟磁性粉末の表面を被覆しやすい。この際に、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを制御することで、Tgが高い酸化物が軟磁性粉末の表面を均一に被覆しないようになる。すなわち、Tgが高い酸化物が軟磁性粉末の表面で凹凸を形成するようになる。Tgが高い酸化物が軟磁性粉末の表面で凹凸を形成するのと同時に、Tgが低い酸化物が、Tgが高い酸化物の凹部に入れ込むように形成され、混合層が形成される。
ホウケイ酸系ガラスのTg、ビスマス系ガラスのTg、および、リン酸系ガラスのTgは各ガラスの組成により変化する。しかし、ホウケイ酸系ガラスのTgは概ね450℃~600℃の範囲内である。ビスマス系ガラスのTgは概ね350℃~500℃の範囲内である。リン酸系ガラスのTgは概ね250℃~400℃の範囲内である。上記混合層を形成するためには各ガラス間のTgの差が50℃以上あることが好ましい。各ガラス間のTgの差は、さらに好ましくは100℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。
例えば、得られる被覆部が図3に示すように軟磁性粉末粒子の表面に近いほど第1酸化物の割合が多くなる傾向にある混合層のみを有するようにするためには、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御する。さらに具体的には、到達温度までの昇温速度が概ね一定となるように温度を上昇させる。すなわち、到達温度までの昇温速度が加速しないように制御する。また、途中で昇温が停止しないように制御する。さらに、到達温度が目的の温度よりも高くならないように制御する。
例えば、得られる被覆部が図4に示すように第1酸化物の中に第2酸化物が均一に分散するようにするためには、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御する。さらに具体的には、図3に示す混合層を有する被覆部を作製する場合と比較して、到達温度を低くし、到達温度までの処理時間を長くする。到達温度は第1酸化物の軟化点よりも高く第2酸化物の軟化点よりも低い温度とする。到達温度までの処理時間を長くするために常温から低速で昇温させる。さらに、到達温度が目的の温度よりも高くならないように制御する。
例えば、得られる被覆部が図5に示すように単層A、混合層Aおよび単層Bを有するようにするためには、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御する。さらに具体的には、到達温度までの昇温速度が概ね一定となるように温度を上昇させる。すなわち、到達温度までの昇温速度が加速しないように制御する。また、途中で昇温が停止しないように制御する。さらに、到達温度が目的の温度よりも高くならないように制御する。
図3に示す被覆部の作製方法と図5に示す被覆部の作製方法とでは、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間が特に異なる。コーティング時の到達温度が高温であるほど、混合層が厚くなりやすく図3に示す被覆部が得られやすくなる。到達温度までの処理時間が長時間であるほど、混合層が厚くなりやすく図3に示す被覆部が得られやすくなる。
また、得られる被覆部が図5に示すように単層A、Bおよび混合層Aを有するようにするためには、最初に第2酸化物32を回転ロータに投入せず第1酸化物31および軟磁性粉末のみを回転ロータに投入して単層Aのみを作製してもよい。その場合には、単層Aを作製したのちに第2酸化物等を回転ロータに投入して混合層Aおよび単層Bを作製してもよい。
例えば、得られる被覆部が図6に示すように単層A~Cおよび混合層A~Bを有するようにするためには、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御する。さらに具体的には、到達温度までの昇温速度が概ね一定となるように温度を上昇させる。すなわち、到達温度までの昇温速度が加速しないように制御する。また、途中で昇温が停止しないように制御する。さらに、到達温度が目的の温度よりも高くならないように制御する。
また、得られる被覆部が図6に示すように単層A~Cおよび混合層A~Bを有するようにするためには、最初に第3酸化物33を含むガラス粉末をメカノフュージョン装置の回転ロータに投入せず、第1酸化物31を含むガラス粉末、および第2酸化物32を含むガラス粉末のみを軟磁性粉末と共にメカノフュージョン装置の回転ロータに投入してもよい。そして、図5に示す被覆部を形成したのちに、第3酸化物33を含むガラス粉末を投入し、図5に示す被覆部に第3酸化物33を含むガラス粉末を固着させて図6に示す被覆部を得てもよい。
また、得られる被覆部が図6に示すように単層A~Cおよび混合層A~Bを有するようにするためには、最初に第1酸化物31を含むガラス粉末のみを軟磁性粉末と共にメカノフュージョン装置の回転ロータに投入してもよい。そして、段階的に第2酸化物32および第3酸化物33を回転ロータに投入して図6に示す被覆部を得てもよい。
次に、得られた軟磁性粉末を用いて磁性体コアを作製する。磁性体コアの作製方法には特に制限はない。例えば、軟磁性粉末を適宜樹脂と混合した後、金型を用いて圧粉成形することにより、圧粉コアを得ることができる。圧粉成形時の成形圧には特に制限はない。例えば1×10MPa~10×10MPaとすることができる。成形圧が高いほど磁性体コアにおける軟磁性粉末の充填率が高くなり、磁性体コアの耐電圧が低下し、磁性体コアの透磁率が向上する傾向にある。また、樹脂の種類や含有量には特に制限はない。
そして、上記の磁性体コアに巻線を施すことで磁性部品の一種であるコイル部品が得られる。巻線の施し方およびコイル部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁性体コアに巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
さらに、巻線コイルが本実施形態に係る軟磁性粉末および樹脂に内蔵されている状態で加圧成形し一体化することで、本実施形態に係る磁性体コアに巻線コイルが内蔵されたインダクタンス部品を製造することも可能である。加圧成形時の成形圧は上記の圧粉成形時の成形圧と同様とすることが好ましい。
本実施形態に係る磁性体コアの用途は任意である。磁性部品、例えば磁心、コイル部品、インダクタンス部品、トランス、モータなどに用いることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実験例1
軟磁性粉末として、質量比でFe0.832Nb0.0570.021Si0.075Cu0.015である軟磁性粉末を作製した。
本実験例では、軟磁性粉末はガスアトマイズ法で作製した。溶解温度は1320℃とし、その他の条件は得られる軟磁性粉末粒子の平均粒径(D50)が表1に示す値となるように適宜制御した。この時点では軟磁性粉末が非晶質からなる構造を有することをXRDを用いて確認した。
そして、軟磁性粉末に熱処理を行い、軟磁性粉末にナノ結晶を生成させた。熱処理条件は600℃で1時間とした。熱処理時の雰囲気はAr雰囲気とした。
得られた軟磁性粉末粒子の平均粒径(D50)を粒子径分布測定装置 HELOSを用いて測定し、表1に示す値であることを確認した。
本実験例では、得られた軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造であることをXRDにより確認した。また、得られた軟磁性粉末に含まれるナノ結晶の平均結晶粒径が1~100nmであることをXRDにより確認した。
次に、各軟磁性粉末について、ホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物、および/またはリン酸系酸化物からなる被覆部を形成した。
まず、被覆部の原料となるガラス粉末を準備した。ホウケイ酸系ガラスとしてはBaO-ZnO-B-SiO-Al系粉末ガラス(BaOが8質量%、ZnOが23質量%、Bが19質量%、SiOが16質量%、Alが6質量%、残部がその他の成分)を準備した。ビスマス系ガラスとしてはBi-ZnO-B-SiO系粉末ガラス(Biが80質量%、ZnOが10質量%、Bが5質量%、SiOが5質量%)を準備した。リン酸系ガラスとしてはP-ZnO-RO-Al系粉末ガラス(Pが50質量%、ZnOが12質量%、ROが20質量%、Alが6質量%、残部がその他の成分)を準備した。なお、上記のガラスの中では、ホウケイ酸系ガラスのTgが最も高く、リン酸系ガラスのTgが最も低い。
次に、粉末被覆装置としてメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン製AMS-Lab)を準備した。次に、メカノフュージョン装置の内部をAr雰囲気とした。次に、回転ロータ内に上記の軟磁性粉末と各試料の作製に必要なガラス粉末とを投入した。ガラス粉末の投入量は、各酸化物の面積割合が表1に示す面積割合となり、被覆部の厚みが表1に示す厚みとなるように適宜調整した。そして、メカノフュージョン装置を稼働させ、軟磁性粉末に投入したガラス粉末を固着させて被覆部を形成した。
この際に回転ロータの内壁面とプレスヘッドとのギャップおよび回転ロータの回転数等を制御することで、Tgが高いガラス粉末に含まれる酸化物が軟磁性粉末の表面を均一に被覆しないようにした。すなわち、Tgが高いガラス粉末に含まれる軟磁性粉末の表面で凹凸を形成するようにした。Tgが高いガラス粉末に含まれる軟磁性粉末の表面で凹凸を形成するのと同時に、Tgが低いガラス粉末に含まれる酸化物が、Tgが高いガラス粉末に含まれる酸化物の凹部に入れ込むように形成され、混合層が形成された。
得られる被覆部が図3に示す種類の混合層、すなわち、軟磁性粉末粒子の表面に近いほどTgの高い酸化物の割合が多くなる傾向にある混合層のみを有するようにし、かつ、図5に示す各単層を有さないようにするため、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御した。
そして、各試料の軟磁性粉末に形成された被覆部を観察した。まず、TEMを用いて粒子表面近傍の明視野像を観察し、粒子表面に被覆部が存在することを確認した。次にEELSを用いて各元素のマッピング画像を観察し、被覆部における各酸化物の面積割合が表1に示す面積割合となっていることを確認した。また、被覆部の平均厚みは、TEM、FFT、EELSを用いて測定した。
さらに、各試料の軟磁性粉末から作製される磁性体コアの特性を評価するためにトロイダルコアおよび直方体コアを作製した。
まず、各試料の軟磁性粉末をエポキシ樹脂と混練して樹脂溶液を作製した。前記樹脂溶液における軟磁性粉末の質量比率は、97.5質量%とした。なお、エポキシ樹脂としてはフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いた。
トロイダルコアについては、得られた樹脂溶液を所定のトロイダル形状の金型に充填させ、100℃で5時間加熱して溶剤分を揮発させた。そして、表1に示す成形圧でプレス処理を行ったのちに固定砥石にて研削し、厚みを0.7mmで均一にした。その後に170℃で90分、熱硬化させてエポキシ樹脂を架橋させてトロイダルコア(外径15mm、内径9mm、厚み0.7mm)を得た。
直方体コアについては、得られた樹脂溶液を所定の直方体形状の金型に充填させた。トロイダルコアと同様の方法で直方体磁性材料(4mm×4mm×1mm)を得た。さらに、前記直方体磁性材料の一方の4mm×4mmの面の両端に幅1.3mmの端子電極を設けた。端子電極間の距離は1.4mmとなった。
<充填率>
得られたトロイダルコアを任意の断面で切断し、SEMを用いて倍率1000倍、観察範囲0.128mm×0.096mmで切断面を観察した。そして、充填率の算出においては、互いに異なる5か所以上の観察範囲を設定してそれぞれの観察範囲における粒子が占める面積割合を平均することで算出した。
<透磁率>
透磁率は、得られたトロイダルコアに巻数30でコイルを巻き、LCRメータを用いて周波数1MHzでインダクタンスを測定し、インダクタンスから算出した。実験例1では、比透磁率が50以上である場合に透磁率が良好であるとした。
<耐電圧>
耐電圧は、得られた直方体コアの端子電極間に電圧をかけ、2mAの電流が流れたときの電圧を測定した。実験例1では、耐電圧は50V/mm以上を良好とし、55V/mm以上を更に良好とした。
Figure 2022150492000003
表1より、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部が1種類の酸化物のみを含む各比較例は耐電圧が著しく低下した。また、被覆部の厚みが薄すぎる比較例は耐電圧が低下し、被覆部の厚みが厚すぎる比較例は透磁率が低下した。
実験例2
実験例2では、被覆部を形成する際に図4に示す種類の混合層、すなわち、Tgが低い酸化物の中にTgが高い酸化物が略均等に分散している混合層のみを有するようにした。
具体的には、実験例1とは異なり、最初は加熱させずに常温で回転ロータを回転させた。そして、回転ロータを回転させながら徐々に温度を上昇させた。さらに、Tgが低いガラスの軟化点より高くTgが高いガラスの軟化点よりも低い温度を到達温度とし、到達温度よりも高い温度とならないように温度を制御した。
その結果、得られる被覆部は図4に示すようにTgが低い酸化物の中にTgが高い酸化物が略均等に分散している混合層のみを有する状態となった。
得られる被覆部が図4に示す種類の混合層、すなわち、Tgが低い酸化物の中にTgが高い酸化物が略均等に分散している混合層のみを有するようにするため、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを適宜、制御した。
上記の点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
Figure 2022150492000004
表2より、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部の厚みが薄すぎる比較例は耐電圧が低下し、被覆部の厚みが厚すぎる比較例は透磁率が低下した。
実験例3
実験例3では、被覆部を形成する際に図5に示す種類の被覆部、すなわち、軟磁性粉末の表面に近い側から順番に単層A、混合層Aおよび単層Bを有し、単層Aおよび単層Bがそれぞれ所定の種類の酸化物を含み、かつ、混合層Aが軟磁性粉末の表面に近いほどTgの高い酸化物の割合が多くなる傾向にある被覆部を有するようにした。
具体的には、最初に単層Aを形成する1種類のガラス粉末(Tgが高いガラス粉末)をメカノフュージョン装置の回転ロータ内に投入して単層Aを形成し、次に単層Bを形成する1種類のガラス粉末(Tgが低いガラス粉末)をメカノフュージョン装置の回転ロータ内に投入して単層Bを形成した。この際に単層Aと単層Bとの間に混合層Aを形成するために、Tgが高いガラス粉末に含まれる酸化物が表面で凹凸を形成するようし、Tgが低いガラス粉末に含まれる酸化物が、上記の凹凸の凹部に入れ込むように形成されるようにした。具体的には、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを制御した。また、比較例では、各単層のみを形成し混合層を形成しないようにした。具体的には、Tgが高いガラス粉末のみを単独で添加して単層Aを形成する際の熱処理条件を実施例よりも高温かつ長時間とした。その結果、単層Aの表面が平滑化された。さらに、Tgが低いガラス粉末を添加して単層Bを形成する際の熱処理温度を十分に低い温度とした。
そして、各試料の軟磁性粉末に形成された被覆部を観察した。まず、TEMを用いて粒子表面近傍の明視野像を観察し、粒子表面に被覆部が存在することを確認した。次にEELSを用いて各元素のマッピング画像を観察し、被覆部が単層A、混合層Aおよび単層Bを有することを確認した。さらに、混合層Aにおける各酸化物の面積割合が表3に示す面積割合となっていることを確認した。また、単層A、混合層Aおよび単層Bのそれぞれの平均厚みは、TEM、FFT、EELSを用いて測定した。
上記の点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
Figure 2022150492000005
表3より、被覆部が混合層を有し、被覆部の合計厚みの平均が2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部が混合層Aを有さず単層Aおよび単層Bのみを有する各比較例は耐電圧が著しく低下した。
実験例4
実験例4では、被覆部を形成する際に図6に示す種類の被覆部、すなわち、軟磁性粉末の表面に近い側から順番に単層A、混合層A、単層B、混合層Bおよび単層Cを有する被覆部を有するようにした。具体的には、単層Aがホウケイ酸系酸化物を含み、単層Bがビスマス系酸化物を含み、単層Cがリン酸系酸化物を含むようにした。そして、混合層Aが軟磁性粉末の表面に近いほどホウケイ酸系酸化物の割合が多くなる傾向にある被覆部を有するようにした。混合層Bが軟磁性粉末の表面に近いほどビスマス系酸化物の割合が多くなる傾向にある被覆部を有するようにした。
具体的には、最初にホウケイ酸ガラスをメカノフュージョン装置の回転ロータ内に投入して単層Aを形成し、次にビスマス系ガラスをメカノフュージョン装置の回転ロータ内に投入して単層Bを形成し、次に、リン酸系ガラスをメカノフュージョン装置の回転ロータ内に投入して単層Cを形成した。この際に単層Aと単層Bとの間に混合層Aを形成するために、ホウケイ酸系ガラスに含まれるホウケイ酸系酸化物が表面で凹凸を形成するようし、ビスマス系酸化物が、上記の凹凸の凹部に入れ込むように形成されるようにした。具体的には、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを制御した。さらに、単層Bと単層Cとの間に混合層Bを形成するために、ビスマス系ガラスに含まれるビスマス系酸化物が表面で凹凸を形成するようし、リン酸系酸化物が、上記の凹凸の凹部に入れ込むように形成されるようにした。具体的には、コーティング時の到達温度および到達温度までの処理時間などを制御した。また、比較例では、混合層Aおよび混合層Bを形成しないようにするため、ホウケイ酸系ガラス粉末のみを単独で添加して単層Aを形成する際の熱処理条件を実施例よりも高温かつ長時間とした。その結果、単層Aの表面が平滑化された。次に、ビスマス系ガラス粉末のみを単独で添加して単層Bを形成する際の熱処理条件を実施例よりも高温かつ長時間とした。その結果、単層Bの表面が平滑化された。最後に、リン酸系ガラス粉末のみを単独で添加して単層Cを形成する際の熱処理温度を十分に低い温度とした。
そして、各試料の軟磁性粉末に形成された被覆部を観察した。まず、TEMを用いて粒子表面近傍の明視野像を観察し、粒子表面に被覆部が存在することを確認した。次にEELSを用いて各元素のマッピング画像を観察し、被覆部が単層A~Cおよび混合層A、Bを有することを確認した。さらに、各混合層における各酸化物の面積割合が表4に示す面積割合となっていることを確認した。また、各単層および各混合層のそれぞれの平均厚みは、TEM、FFT、EELSを用いて測定した。
上記の点以外は実験例1と同様に実施した。結果を表4に示す。
Figure 2022150492000006
表4より、被覆部が混合層A、Bを有し、被覆部の合計厚みの平均が2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部が混合層を有さず単層A~Cのみを有する各比較例は耐電圧が著しく低下した。
実験例5
軟磁性粉末として、質量比でFe0.873Si0.070Cr0.0250.0250.007である軟磁性粉末を作製した。
本実験例では、軟磁性粉末はガスアトマイズ法で作製した。溶解温度は1320℃とし、その他の条件は得られる軟磁性粉末の平均粒径(D50)が表5に示す値となるように適宜制御した。
得られた軟磁性粉末の平均粒径(D50)を乾式粒度分布測定器 HELOSを用いて測定し、表5に示す値であることを確認した。
本実験例では、得られた軟磁性粉末が非晶質からなる構造であることをXRDにより確認した。
その他の点については、実験例1と同様に実施した。なお、実験例5では比透磁率が40以上である場合を透磁率が良好であるとした。軟磁性粉末の微細構造の変化により軟磁性粉末の透磁率が変化するためである。結果を表5に示す。
Figure 2022150492000007
表5より、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部が1種類の酸化物のみを含む各比較例は耐電圧が著しく低下した。
実験例6
軟磁性粉末として、質量比でFe0.935Si0.045Cr0.020である軟磁性粉末を作製した。
本実験例では、軟磁性粉末はガスアトマイズ法で作製した。溶解温度は(1950)℃とし、その他の条件は得られる軟磁性粉末の平均粒径(D50)が表6に示す値となるように適宜制御した。
得られた軟磁性粉末の平均粒径(D50)を粒子径分布測定装置 HELOSを用いて測定し、表6に示す値であることを確認した。
本実験例では、得られた軟磁性粉末がナノ結晶よりも大きい結晶からなる構造であることをXRDにより確認した。また、得られた軟磁性粉末に含まれる結晶の平均結晶粒径が1~100nmであることをXRDにより確認した。
その他の点については、実験例1と同様に実施した。なお、実験例6では比透磁率が30以上である場合を透磁率が良好であるとした。軟磁性粉末の微細構造の変化により透磁率が変化するためである。結果を表6に示す。
Figure 2022150492000008
表6より、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
これに対し、被覆部が1種類の酸化物のみを含む各比較例は耐電圧が著しく低下した。
実験例7
実験例7では、軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造である場合(実施例27)、結晶からなる構造である場合(実施例126)、非晶質からなる構造である場合(実施例106)のそれぞれについて軟磁性粉末の組成を変化させて実施した。軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造については、平均結晶粒径が実験例1と同等になるように適宜熱処理条件を変化させた。軟磁性粉末が結晶からなる構造については、平均結晶粒径が実験例6と同等になるように適宜熱処理条件を変化させた。結果を表7に示す。なお、透磁率に関して、軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造である場合は比透磁率が50以上である場合に透磁率が良好であるとした。軟磁性粉末が非晶質からなる構造である場合は比透磁率が40以上である場合に透磁率が良好であるとした。軟磁性粉末が結晶からなる構造である場合は比透磁率が30以上である場合に透磁率が良好であるとした。
Figure 2022150492000009
表7より、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
実験例8
実験例8では、軟磁性粉末として、質量比でFe0.839Nb0.1220.0200.0180.001である軟磁性粉末を作製した点、および、熱処理条件を変化させてナノ結晶の平均結晶粒径を表8に示す値とした点以外は実験例1の実施例2と同様に実施した。結果を表8に示す。
Figure 2022150492000010
表8より、軟磁性粉末に含まれるナノ結晶の平均結晶粒径が変化しても、被覆部が混合層のみを含み、混合層が2種類以上の酸化物を含み、被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である各実施例は耐電圧および透磁率が良好となった。
11・・・軟磁性粉末粒子
21、22・・・混合層
23~25・・・単層
31~33・・・酸化物

Claims (8)

  1. Feを含む軟磁性粉末であって、
    前記軟磁性粉末の表面が被覆部により覆われており、
    前記被覆部が混合層を含み、
    前記混合層がホウケイ酸系酸化物、ビスマス系酸化物およびリン酸系酸化物から選択される2種以上を有し、
    前記被覆部の平均厚みが2.0nm以上100nm以下である軟磁性粉末。
  2. 前記混合層の断面において、ホウケイ酸系酸化物の面積割合をS、ビスマス系酸化物の面積割合をS、リン酸系酸化物の面積割合をSとし、S+S+S=100として、
    、SおよびSが全て0以上90以下である請求項1に記載の軟磁性粉末。
  3. 前記混合層がホウケイ酸系酸化物およびリン酸系酸化物を有する請求項1または2に記載の軟磁性粉末。
  4. 前記被覆部が前記軟磁性粉末の表面に近い側から順番に第1単層、前記混合層および第2単層を有し、
    前記第1単層が前記ホウケイ酸系酸化物および前記ビスマス系酸化物から選択される1種のみを有し、
    前記第2単層が前記ビスマス系酸化物および前記リン酸系酸化物から選択される1種のみを有し、
    前記第1単層と前記第2単層とで、酸化物の種類が異なる請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性粉末。
  5. 前記軟磁性粉末が非晶質からなる構造を有する請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性粉末。
  6. 前記軟磁性粉末がナノ結晶からなる構造を有する請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性粉末。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の軟磁性粉末を含む磁性体コア。
  8. 請求項7に記載の磁性体コアを含む磁性部品。
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