JP2022149807A - 2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜および合わせガラス - Google Patents

2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜および合わせガラス Download PDF

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一輝 飯柴
Kazuki Iishiba
淳裕 中原
Atsuhiro Nakahara
芳聡 淺沼
Yoshiaki Asanuma
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Abstract

【課題】優れた耐貫通性及び耐熱性に加えて、高温で長期間使用する用途においても十分な強度を有する合わせガラスをもたらすことができ、取扱性に優れた中間膜の提供。【解決手段】2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜であって、中間膜は硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、式(1):剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f)[fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃での剪断貯蔵弾性率であり、G''(0.5f)は50℃での剪断損失弾性率である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G1(t=f-1)は0.8M0Pa以上であり、式(1)[fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃での剪断貯蔵弾性率であり、G''(0.5f)は50℃での剪断損失弾性率である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G2(t=f-1)は0.20MPa以上であり、式(2):曲げ剛性=[25℃での積層体の曲げ弾性率×積層体の厚さ3]/[12×(1-積層体のポアソン比2)]で示される積層体の25℃での曲げ剛性は6N・mm以上、70N・mm以下である、中間膜。【選択図】なし

Description

本発明は、2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜、および合わせガラスに関する。
ガラス破損時の破片の飛散防止、または防犯性の向上といった目的のために、無機ガラスと中間膜を組み合わせた合わせガラスが有用であることが知られている。
そのような中間膜をもたらし得る樹脂として、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール(PVB)樹脂に代表されるポリビニルアセタール樹脂を含む組成物が広く使用されている。PVB樹脂は、中間膜としての優れた性能をもたらし得るものの、特に高温(例えば50℃)で長期間使用される用途において、より向上した強度が求められることがあった。一方、PVB樹脂を含む層とポリカーボネート樹脂等の樹脂を含む層との積層体を中間膜として用いることも提案されている(特許文献1~5)。
特開平8-142282号公報 国際公開第2011/016495号パンフレット 特開平4-282243号公報 国際公開第2015/129758号パンフレット 国際公開第2015/093352号パンフレット
"Effective laminates for the design of glass", Proceedings of the Glass Performance Days, Tampere, Finland (2009)
しかし、本発明者らの検討によれば、上述したような従来の中間膜ではいずれも、特に高温で長期間経過した後の強度が不十分なことがあり、より向上した強度が求められることがある。また、合わせガラス製造時の作業効率を改善するために、中間膜のより優れた取扱性に対する要求も存在する。
従って、本発明は、優れた耐貫通性および耐熱性に加えて、高温(例えば50℃)で長期間使用する用途においても十分な強度を有する合わせガラスをもたらすことができ、取扱性に優れた中間膜、およびそのような中間膜が2枚の無機ガラスの間に挟持されてなる合わせガラスを提供することを課題とする。
本発明者らは前記課題を解決するために、中間膜および合わせガラスについて鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下の好適な実施態様を包含する。
[1]2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜であって、
中間膜は、硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に、接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
下記式(1):
剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
[式(1)中、fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]
で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.80MPa以上であり、
上記式(1)[式(1)中、fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.20MPa以上であり、
下記式(2):
Figure 2022149807000001
で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、70N・mm以下である、中間膜。
[2]中間膜に含まれるm層の基材層、および2m層の接着層の各層の剪断緩和弾性率と該各層の厚さ比とを用いて求められ、下記式(3):
Figure 2022149807000002
[式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、1.2×10-5Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7の整数である]
で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は0.80MPa以上であり、
上記式(3)[式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、3.2×10-9Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7の整数である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は0.20MPa以上である、前記[1]に記載の中間膜。
[3]上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)のいずれの厚さより大きい、前記[1]または[2]に記載の中間膜。
[4]上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)の合計厚さより大きい、前記[1]~[3]のいずれかに記載の中間膜。
[5]上記中間膜を厚さ3.0mm、ヤング率7.16×10MPaの2枚のフロートガラスの間に挟持してなる合わせガラスの、支点間距離0.3mの4点曲げ試験において、
下記式(4):
Figure 2022149807000003
[式(4)において、h=0.5×(h+h)+hであり=h ×h×h÷(h+h)であり、hおよびhは各々2枚のフロートガラスの厚さ(単位:mm)であり、hは中間膜の厚さ(単位:mm)であり、Eはフロートガラスのヤング率(単位:MPa)であり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)であり、aは4点曲げ試験の支点間距離(単位:m)である]
で示される中間膜の剪断伝達係数Γは0.10以上であり、
上記式(4)[式(4)において、hs、、h、h、h、Eおよびaは上記で説明した通りであり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)である]で示される中間膜の剪断伝達係数Γは0.02以上である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の中間膜。
[6]ASTM D3763に準拠した落錘衝撃試験において、測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m・s-1の条件で測定した中間膜の耐貫通性は12J以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の中間膜。
[7]基材層(I)は、硬質樹脂としてポリカーボネート樹脂を含有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の中間膜。
[8]上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、接着性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載の中間膜。
[9]上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、可塑剤を更に含む、前記[1]~[8]のいずれかに記載の中間膜。
[10]可塑剤は、カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群から選択される1以上である、前記[9]に記載の中間膜。
[11]上記積層体において、JIS K 7199に準拠して温度230℃、剪断速度60s-1で測定した、基材層(I)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)は1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、各接着層(II)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)はそれぞれ1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、これらの溶融粘度比(η/η)および(η/η)は1.0以上、4.0以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の中間膜。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の中間膜の製造方法であって、基材層(I)の両面に接着層(II)を共押出しにより設けることで積層体を作製することを含む、方法。
[13]無機ガラス、中間膜、無機ガラスがこの順に積層された合わせガラスであって、
中間膜は、硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に、接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
下記式(1):
剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
[式(1)中、fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]
で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.80MPa以上であり、
上記式(1)[式(1)中、fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.20MPa以上であり、
下記式(2):
Figure 2022149807000004
で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、70N・mm以下である、合わせガラス。
[14]上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)の合計厚さより大きい、前記[13]に記載の合わせガラス。
[15]上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、接着性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有する、前記[13]または[14]に記載の合わせガラス。
[16]上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、可塑剤を更に含む、前記[13]~[15]のいずれかに記載の合わせガラス。
[17]可塑剤は、カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群から選択される1以上である、前記[16]に記載の合わせガラス。
[18]上記積層体において、JIS K 7199に準拠して温度230℃、剪断速度60s-1で測定した、基材層(I)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)は1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、各接着層(II)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)はそれぞれ1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、これらの溶融粘度比(η/η)および(η/η)は1.0以上、4.0以下である、前記[13]~[17]のいずれかに記載の合わせガラス。
本発明によれば、優れた耐貫通性および耐熱性に加えて、高温(例えば50℃)で長期間使用する用途においても十分な強度を有する合わせガラスをもたらすことができ、取扱性に優れた中間膜、およびそのような中間膜が2枚の無機ガラスの間に挟持されてなる合わせガラスを提供することができる。
本発明の一実施態様の中間膜を製造する装置の概略模式図である。 本発明の一実施態様の合わせガラスの断面概略模式図である。 圧縮剪断試験を表す概略模式図である。 合わせガラスの耐熱クリープ性試験に使用する試験用サンプルを表す概略模式図である。 合わせガラスの耐熱クリープ性試験を表す概略模式図である。
[中間膜]
本発明における中間膜は、2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる。中間膜は、硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に、接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を1つ以上含む。
本発明の好ましい一実施態様では、後述の剪断伝達係数の観点から、中間膜は1つまたは2つ以上の積層体からなる。この実施態様では、中間膜は、積層体に含まれる層以外の層を含まないか、または積層体に含まれる層以外の層および後述するような任意の構造を含まない。
中間膜に含まれる積層体が1つの場合、中間膜は、例えば図2に示すような構成を有する。この一実施態様において、中間膜41は、2枚の無機ガラス21の間に挟持されており、基材層(I)32の両面に接着層(II)31を備えた積層体からなる。なお、図2および後述の図1および図3~5においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法および比率等は適宜相違させている。
中間膜に含まれる積層体は2つ以上であってもよい。例えば、中間膜に含まれる積層体が2つの場合、中間膜は、接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)という構成を有する。
中間膜に含まれる積層体が1つである場合、特に優れた曲げ強度を必要とする用途にも好ましく使用できる。中間膜に含まれる積層体が2つ以上である場合、複数の積層体を構成する基材層(I)および接着層(II)それぞれの材料および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。中間膜に含まれる積層体は、通常1~7個、好ましくは1~3個である。
中間膜は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、任意に、前記積層体以外の構造を、中間膜の全面または一部に含むことができる。また、そのような構造は、中間膜を断面から観察した場合に、任意の場所に配置されていてよい。即ち、例えば、中間膜の外側に配置されていてもよく、基材層(I)と接着層(II)との間に配置されていてもよく、中間膜が複数の積層体を含む場合は積層体の間に挿入されていてもよい。そのような構造の例としては、導電構造、遮音構造、意匠またはデザイン層およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
本発明において、下記式(1):
剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
[式(1)中、fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]
で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.80MPa以上であり、
上記式(1)[式(1)中、fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.20MPa以上である。
中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)が0.80MPa未満であるか、または剪断緩和弾性率G(t=f-1)が0.20MPa未満であると、高温で長期間使用する用途においても十分な強度(特に曲げ強度)を有する合わせガラスをもたらすことは困難である。
剪断緩和弾性率G(t=f-1)は、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは4.0MPa以上、より好ましくは7.0MPa以上、更に好ましくは10MPa以上、更により好ましくは30MPa以上、更により好ましくは40MPa以上、更により好ましくは50MPa以上、更により好ましくは60MPa以上、特に好ましくは80MPa以上である。剪断緩和弾性率G(t=f-1)の上限値は特に規定されないが、例えば剪断緩和弾性率G(t=f-1)を1000MPa以上としても合わせガラスの曲げ強度の更なる向上効果は得られない。本発明の一実施態様では、剪断緩和弾性率G(t=f-1)は200MPa以下である。
剪断緩和弾性率G(t=f-1)は、好ましくは0.30MPa以上、より好ましくは0.50MPa以上、より好ましくは0.75MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、更に好ましくは2.0MPa以上、更により好ましくは2.5MPa以上である。剪断緩和弾性率G(t=f-1)の上限値は特に規定されないが、例えば剪断緩和弾性率G(t=f-1)を1000MPa以上としても合わせガラスの曲げ強度の更なる向上効果は得られない。本発明の一実施態様では、剪断緩和弾性率G(t=f-1)は10MPa以下である。
剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、高温で長期間使用する用途においても十分な曲げ強度を有する合わせガラスをもたらしやすい。剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)は、例えば、基材層を構成する樹脂材料に含まれる樹脂の種類若しくは分子量、基材層における添加剤含有量、接着層を構成する樹脂材料に含まれる樹脂の種類若しくはビニルアルコール単位含有量、および/または接着層における可塑剤含有量を変更することにより、また、基材層の厚さ、接着層の厚さ、および/または基材層の厚さと接着層の厚さとの比を調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。ここで、本明細書における「樹脂材料」とは、1以上の樹脂、または1以上の樹脂と後述する任意成分(例えば、可塑剤または添加剤等)とからなる樹脂組成物を意味する。
50℃で24時間または10年経過した時点での剪断緩和弾性率に相当する剪断緩和弾性率は、経過時間の逆数に該当する周波数における剪断緩和弾性率を得ることにより求めることができる。即ち、50℃で24時間(=86,400秒)経過した時点での剪断緩和弾性率に相当する剪断緩和弾性率は、50℃、1.2×10-5Hz(≒1/86,400)の周波数における剪断緩和弾性率を求めればよく、50℃で10年(=31,536,000秒)経過した時点での剪断緩和弾性率は50℃、3.2×10-9Hz(≒1/31,536,000)の周波数における剪断緩和弾性率を求めればよい。上述した中間膜の50℃、1.2×10-5Hzにおける剪断緩和弾性率G(t=f-1)は、50℃で24時間経過した時点での剪断緩和弾性率に相当し、上述した中間膜の50℃、3.2×10-9Hzにおける剪断緩和弾性率G(t=f-1)は、50℃で10年経過した時点での剪断緩和弾性率に相当する。建築・構造用途等の長期の耐久性を要する合わせガラスは、50℃で、24時間または10年経過した状態で十分な強度(特に曲げ強度)を有することが好ましい。特定の値以上のG(t=f-1)およびG(t=f-1)を有し、特定の曲げ剛性を有する積層体を含む中間膜を、2枚の無機ガラスに挟持することにより、そのような合わせガラスが得られることを本発明者らは見出した。
剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)は、剪断粘弾性測定装置を用いて求めることができる。例えば、中間膜から直径8mm、5mm以下の任意の厚さのシートを作製し、回転型レオメーター「ARES」(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用いて、周波数0.1~100Hz、測定温度-50~250℃、ひずみ<1%、昇温条件にて剪断動的粘弾性測定を行うことで、基準温度50℃での剪断貯蔵弾性率G'(f)および剪断損失弾性率G''(f)の合成曲線(マスターカーブ)を取得する。時間-温度換算則を用い、取得したマスターカーブから、上記式(1)により剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)を各々求めることができる。
本発明の一実施態様において、中間膜に含まれるm層の基材層、および2m層の接着層の各層の剪断緩和弾性率と該各層の厚さ比(中間膜における各層の厚さの割合)とを用いて求められ、下記式(3):
Figure 2022149807000005


[式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、1.2×10-5Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7、好ましくは1~3の整数である]
で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は、好ましくは0.80MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは4.0MPa以上、より好ましくは7.0MPa以上、更に好ましくは10MPa以上、更により好ましくは30MPa以上、更により好ましくは40MPa以上、更により好ましくは50MPa以上、更により好ましくは60MPa以上、特に好ましくは80MPa以上である。剪断緩和弾性率G(t)の上限値は特に規定されない。剪断緩和弾性率G(t)は、例えば200MPa以下である。
上記式(3)[式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、3.2×10-9Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7、好ましくは1~3の整数である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は、好ましくは0.20MPa以上、より好ましくは0.30MPa以上、より好ましくは0.50MPa以上、より好ましくは0.75MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、更に好ましくは2.0MPa以上、更により好ましくは2.5MPa以上である。剪断緩和弾性率G(t)の上限値は特に規定されない。剪断緩和弾性率G(t)は、例えば10MPa以下である。
剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、高温で長期間使用する用途においても十分な曲げ強度を有する合わせガラスをもたらしやすい。剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)は、例えば、基材層を構成する樹脂材料に含まれる樹脂の種類若しくは分子量、基材層における添加剤含有量、接着層を構成する樹脂材料に含まれる樹脂の種類若しくはビニルアルコール単位含有量、および/または接着層における可塑剤含有量を変更することにより、また、基材層の厚さ、接着層の厚さ、および/または基材層の厚さと接着層の厚さとの比を調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。
剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。各層の厚さとしては、任意の複数箇所(例えば10~20箇所)を厚み計で測定して求めた値の平均値を用いればよい。
剪断緩和弾性率G(t=f-1)が0.80MPa以上であり、剪断緩和弾性率G(t=f-1)が0.2MPa以上である中間膜について、剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)の値は、剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)の値とそれぞれ同等である。
中間膜が先に述べたような任意の構造を含む場合は、当該構造を有する層の剪断緩和弾性率を求め、中間膜の剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)を求めればよい。即ち、例えば、中間膜が、基材層の一部に意匠が付与された基材層(I)の両面に接着層(II)を備えた積層体からなる場合は、意匠が付与された基材層(I)の厚さ比および剪断緩和弾性率を求め、接着層(II)の厚さ比および剪断緩和弾性率を求め、それらの値から中間膜の剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)を求めればよい。この場合の基材層(I)の厚さは、意匠が付与された箇所の任意の複数箇所(例えば10~20箇所)を厚み計で測定して求めた値と、意匠が付与されていない箇所の任意の複数箇所(例えば10~20箇所)を厚み計で測定して求めた値の平均値を用いればよい。
本発明の好ましい一実施態様では、中間膜を厚さ3.0mm、ヤング率7.16×10MPaの2枚のフロートガラスの間に挟持してなる合わせガラスの、支点間距離0.3mの4点曲げ試験において、
下記式(4):
Figure 2022149807000006
[式(4)において、h=0.5×(h+h)+hであり=h ×h×h÷(h+h)であり、hおよびhは各々2枚のフロートガラスの厚さ(単位:mm)であり、hは中間膜の厚さ(単位:mm)であり、Eはフロートガラスのヤング率(単位:MPa)であり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)であり、aは4点曲げ試験の支点間距離(単位:m)である]
で示される中間膜の剪断伝達係数Γは、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上、更に好ましくは0.70以上、特に好ましくは0.80以上である。
上記式(4)[式(4)において、hs、、h、h、h、Eおよびaは上記で説明した通りであり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)である]で示される中間膜の剪断伝達係数Γは、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、より好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、より好ましくは0.30以上である。
剪断伝達係数は、中間膜が合わせガラスの曲げ強度に寄与できる割合を示すパラメーターであり、0以上、1以下の値をとる。合わせガラスの曲げ試験を行った際に、剪断伝達係数が1に近いと、合わせガラスを構成する2枚の無機ガラスが中間膜を介して接合されたまま1枚の無機ガラスのように変形するため、合わせガラスを1枚の無機ガラスと見立てた場合の見掛け厚さ(後述の有効ガラス厚さ)が増大し、曲げ強度が向上する。剪断伝達係数が0に近いと、2枚の無機ガラスの間で中間膜が変形してしまい、曲げ強度が十分に発揮されず、見掛け厚さが減少するため、強度を得るために無機ガラスを厚く設計する必要があり、合わせガラスの重量が増加する。剪断伝達係数ΓおよびΓは、50℃で24時間または10年経過した時点での剪断伝達係数にそれぞれ相当する。従って、剪断伝達係数Γが前記下限値以上であることは、50℃で24時間経過した時点での合わせガラスがより優れた曲げ強度を有し得ることを示す。また、剪断伝達係数Γが前記下限値以上であることは、50℃で10年経過した時点での合わせガラスがより優れた曲げ強度を有し得ることを示す。
剪断伝達係数ΓおよびΓは、例えば、基材層の厚さ、接着層の厚さ、基材層の厚さと接着層の厚さとの比、および/または中間膜の厚さを調整することにより、前記下限値以上に調整することができる。剪断伝達係数ΓおよびΓは、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
中間膜の厚さは、積層体における基材層(I)および接着層(II)が後述する各層の厚さの範囲を満たしたうえで、好ましくは0.30mm以上、より好ましくは0.40mm以上、更に好ましくは0.45mm以上であり、好ましくは3.00mm以下、より好ましくは2.50mm以下、より好ましくは2.30mm以下、更に好ましくは2.00mm以下、特に好ましくは1.60mm以下である。中間膜の厚さが前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、中間膜をロール体として提供しやすく、かつ所望の取扱性、透明性、耐貫通性および曲げ強度を有する中間膜を得やすい。中間膜の厚さは、厚み計で測定でき、複数箇所(例えば10~20箇所)測定した平均値を採用すればよい。
<積層体>
本発明において、下記式(2):
Figure 2022149807000007
で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、70N・mm以下である。積層体の25℃における曲げ剛性が6N・mm未満であるか、または70N・mmより大きいと、中間膜が合わせガラス製造時の良好な取扱性を有することは困難である。
前記曲げ剛性は、好ましくは8N・mm以上、より好ましくは10N・mm以上、より好ましくは12N・mm以上、より好ましくは14N・mm以上、より好ましくは20N・mm以上、更に好ましくは25N・mm以上、特に好ましくは31N・mm以上である。前記曲げ剛性が前記下限値以上であると、合わせガラス製造時のより優れた取扱性を得やすい。
前記曲げ剛性は、好ましくは68N・mm以下、より好ましくは65N・mm以下、更に好ましくは63N・mm以下、特に好ましくは61N・mm以下である。前記曲げ剛性が前記上限値以下であると、比較的細い巻き芯(例えば6インチ(約15.24cm)径の巻き芯)にも積層体および中間膜をより良好に巻回しやすく、ロール体から巻き戻した後に積層体および中間膜に巻き癖がより残留しにくい。
下記式(5):
Figure 2022149807000008

で示される積層体の50℃における曲げ剛性は、好ましくは3N・mm以上、より好ましくは5N・mm以上、より好ましくは11N・mm以上、より好ましくは12N・mm以上、より好ましくは13N・mm以上、より好ましくは18N・mm以上、更に好ましくは20N・mm以上、特に好ましくは30N・mm以上であり、好ましくは65N・mm以下、より好ましくは63N・mm以下、更に好ましくは61N・mm以下、特に好ましくは60N・mm以下である。前記曲げ剛性が前記下限値以上であると、高温であっても合わせガラス製造時に優れた取扱性を得やすい。前記曲げ剛性が前記上限値以下であると、高温であっても、比較的細い巻き芯にも積層体および中間膜をより良好に巻回しやすく、ロール体から巻き戻した後に積層体および中間膜に巻き癖がより残留しにくい。
積層体の25℃における曲げ剛性および50℃における曲げ剛性は、例えば、基材層(I)と接着層(II)とを適切な厚さ比で積層すること、および/または各層の曲げ弾性率を調整することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整できる。
積層体の25℃における曲げ剛性は、後述の実施例に記載の方法で求めることができ、積層体の50℃における曲げ剛性も同様の方法で求めることができる。また、積層体の25℃または50℃における曲げ弾性率を、基材層(I)を構成する樹脂材料および接着層(II)を構成する樹脂材料の公知のヤング率から求め、上記式(2)または(5)を用いて積層体の25℃または50℃曲げ剛性を求めることもできる。なお、本発明において、積層体のポアソン比としては0.38を用いている。
積層体の25℃における曲げ弾性率は、所望の前記曲げ剛性を得やすい観点から、好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは200MPa以上、特に好ましくは220MPa以上である。前記曲げ弾性率の上限値は特に限定されない。前記曲げ弾性率は通常1800MPa以下である。
積層体の50℃における曲げ弾性率は、所望の前記曲げ剛性を得やすい観点から、好ましくは20MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは200MPa以上、特に好ましくは220MPa以上である。前記曲げ弾性率の上限値は特に限定されない。前記曲げ弾性率は通常1600MPa以下である。
積層体の25℃における曲げ弾性率および50℃における曲げ弾性率は、例えば、接着層(II)の厚さT(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/2T(II)を大きくすることにより、前記下限値以上に調整できる。
積層体の25℃における曲げ弾性率は、後述の実施例に記載の方法により実験的に測定して求めることができ、積層体の50℃における曲げ弾性率も同様の方法で求めることができる。また、積層体の25℃における曲げ弾性率および50℃における曲げ弾性率は、基材層(I)を構成する樹脂材料および接着層(II)を構成する樹脂材料の公知のヤング率を用いて求めることもできる。
積層体の、引張動的粘弾性測定で25℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.1~1800MPa、より好ましくは1~1600MPa、更に好ましくは10~1500MPaである。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、接着層(II)が薄くても、積層体は破断を伴わず容易に巻き取りやすい。前記引張貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、合わせガラス製造時に発生する応力による積層体の割れを防止しやすく、外観に優れる合わせガラスを得やすい。前記引張貯蔵弾性率は粘弾性測定装置により測定することができ、例えば、縦20mm×横5mm×厚さ0.2mmのシートを作製し、粘弾性スペクトロメーター「Rheogel-E4000」(株式会社ユービーエム製)を用い、周波数1Hz、測定温度-50~250℃の測定条件にて引張動的粘弾性測定を行うことで測定できる。引張貯蔵弾性率は、例えば、接着層(II)に含まれる可塑剤の添加量の調整、ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量の調整、および/または基材層(I)と接着層(II)との厚さ比の調整により、前記範囲内に調整できる。
本発明の好ましい一実施態様では、積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)のいずれの厚さより大きい。
また、本発明の好ましい一実施態様では、積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)の合計厚さより大きい。
これらの実施態様では、中間膜が所望の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)並びに所望の耐貫通性を有しやすく、また、積層体が所望の曲げ剛性を有しやすい。
1つの積層体の厚さは、基材層(I)および接着層(II)が後述する各層の厚さの範囲を満たしたうえで、好ましくは0.95mm以下、より好ましくは0.90mm以下、より好ましくは0.85mm以下、更に好ましくは0.80mm以下、特に好ましくは0.76mm以下である。1つの積層体の厚さが前記上限値以下であると、前記厚さ比を有する積層体をロール体として提供しやすく、かつ良好な取扱性、透明性および剪断伝達係数を有する積層体を得やすい。また、1つの積層体の厚さは、前述の各層の厚さの範囲を満たしたうえで、好ましくは0.30mm以上、より好ましくは0.40mm以上、更に好ましくは0.45mm以上である。1つの積層体の厚さが前記下限値以上であると、合わせガラスに求められる耐貫通性をもたらす積層体を得やすい。
<<基材層(I)>>
基材層(I)に含まれる硬質樹脂は、中間膜に所望の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)をもたらし、積層体に所望の曲げ剛性をもたらす限り特に限定されない。硬質樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐貫通性および経済性を両立させやすい観点から、アクリル系樹脂またはポリカーボネート樹脂が好ましく、更に優れた耐貫通性の観点から、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。従って、本発明の好ましい一実施態様では、基材層(I)は、硬質樹脂としてポリカーボネート樹脂を含有する。これらの硬質樹脂としては、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されていてもよい。
なお、基材層(I)を構成する樹脂材料は、本発明の趣旨に反しない限り、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離形剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤および蛍光体等の添加剤を、単独でまたは2以上組み合わせて含んでいてもよい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は特に限定されない。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられ、中でもPETが好ましい。PETは変性PETでもよく、変性PETの好ましい例はシクロヘキサンジメチレン変性PET(PETG)である。また、市販のポリエステル樹脂を用いてもよく、そのような市販品の例としては、クラペット(株式会社クラレ製)、ノバペックス(三菱ケミカル株式会社製)、SKYGREEN PETG(韓国SKケミカル製)等を挙げることができる。
(ポリスチレン樹脂)
ポリスチレン樹脂は特に限定されないが、耐衝撃ポリスチレン(HIPS)が好ましい。市販のポリスチレン樹脂を用いてもよく、そのような市販品の例としては、PSJ-ポリスチレンSX100、SX300(PSジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は特に限定されない。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリヘキセン-1、ポリ-3-メチル-ブテン-1、ポリ-4-メチル-ペンテン-1、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィン(例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、6-メチル-1-ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエン等)の1種または2種以上との共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は変性ポリオレフィンでもよく、例えば無水マレイン酸等で変性されたポリオレフィン樹脂でもよい。市販のポリオレフィン樹脂を用いてもよく、シート状に加工された市販品を用いてもよい。シート状の市販品の例としては、スーパーピュアレイ(出光ユニテック株式会社製)を挙げることができる。
(ポリメチルペンテン樹脂)
ポリメチルペンテン樹脂は特に限定されず、市販品を好ましく用いることができる。そのような市販品の例としては、TPX“RT18”、TPX“RT31”(三井化学株式会社製)等を挙げることができる。
(環状ポリオレフィン樹脂)
環状ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、市販品を好ましく用いることができる。そのような市販品の例としては、ドイツのTOPAS ADVANCED POLYMERS GmbHにて生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売されている「TOPAS」(トーパス)、JSR株式会社により製造および販売されている「アートン」、日本ゼオン株式会社により製造および販売されている「ゼオノア」および「ゼオネックス」、三井化学株式会社により製造および販売されている「アペル」等を挙げることができる。
(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂)
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂は特に限定されず、市販品を好ましく用いることができる。そのような市販品の例としては、サンタックAT-05、クララスチックSXH-330(以上、日本エイアンドエル(株)製)、トヨラック500、700(東レ株式会社製)、PA-756(奇美実業社製)、HR181(KUMHO PETROCHEMICAL社製)等を挙げることができる。アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂は、他の樹脂と共重合されていてもよい。そのような共重合体としては、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン4元共重合体(MABS)等が挙げられ、MABSの市販品としては、デンカCLポリマー、デンカTEポリマー、デンカTPポリマー(以上電気化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂は、1種以上のメタクリル樹脂(PM)を包含する。メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル(MMA)を好ましくは含む1種以上のメタクリル酸炭化水素エステル(以下、単に「メタクリル酸エステル」とも称する)に由来する構造単位を含んでなる単独重合体または共重合体である。
メタクリル酸エステル中の炭化水素基は、メチル基、エチル基およびプロピル基等の非環状脂肪族炭化水素基であっても、脂環式炭化水素基であっても、フェニル基等の芳香族炭化水素基であってもよい。
透明性の観点から、メタクリル樹脂中のメタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、メタクリル樹脂を構成する全構造単位に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステル以外の1種以上の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、およびアクリル酸3-ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステルが挙げられる。中でも、入手性の観点から、MA、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、およびアクリル酸tert-ブチルが好ましく、MAおよびアクリル酸エチルがより好ましく、MAが特に好ましい。メタクリル樹脂が他の単量体に由来する構造単位を含んでいる場合、その含有量は、メタクリル樹脂を構成する全構造単位に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
メタクリル樹脂は、MMAを好ましくは含む1種以上のメタクリル酸エステル、および必要に応じて他の単量体を重合することで得ることができる。複数種の単量体を用いる場合は、通常、複数種の単量体を混合して単量体混合物を調製した後、重合を行う。重合方法としては特に制限されず、生産性の観点から、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、および乳化重合法等のラジカル重合法が好ましい。
メタクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000~500,000である。Mwが40,000以上であると、基材層(I)はより優れた耐擦傷性および耐熱性を有しやすい。Mwが500,000以下であると、基材層(I)は優れた成形性を得やすい。
本明細書において、特に明記しない限り、「Mw」はゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される標準ポリスチレン換算値である。
メタクリル樹脂のガラス転移温度は、特に限定されない。ガラス転移温度は好ましくは115~135℃、より好ましくは120~130℃である。ガラス転移温度が前記下限値以上であると、合わせガラス製造時の基材層(I)の変形を防止しやすい。ガラス転移温度が前記上限値以下であると、基材層(I)の割れ等の外観不良が生じにくい。
基材層(I)は、上述したようなメタクリル樹脂からなってもよいし、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて必要に応じて1種以上の他の重合体を含む、メタクリル樹脂組成物からなってもよい。他の重合体としては特に制限されず、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、およびポリアセタール等の他の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、およびエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。基材層(I)がメタクリル樹脂組成物からなる場合、メタクリル樹脂組成物中の他の重合体の含有量は、ガラス転移温度を高めやすい観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。好ましい一実施態様において、メタクリル樹脂組成物のガラス転移温度は、好ましくは115~135℃、より好ましくは120~130℃である。この実施態様において、他の重合体のガラス転移温度は115~135℃の範囲外であってもよい。
メタクリル樹脂組成物は必要に応じて、各種添加剤を含むことができる。添加剤の例としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離形剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤(例えばコアシェル粒子およびブロック共重合体等)、および蛍光体等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の目的および効果の妨げにならない範囲で適宜設定できる。基材層(I)に含まれる樹脂100質量部に対して、例えば、酸化防止剤の含有量は好ましくは0.01~1質量部、紫外線吸収剤の含有量は好ましくは0.01~3質量部、光安定剤の含有量は好ましくは0.01~3質量部、滑剤の含有量は好ましくは0.01~3質量部、染料または顔料の含有量は好ましくは0.01~3質量部である。
コアシェル粒子としては、コアシェル型ゴム粒子、例えばアクリル系ゴム若しくはジエン系ゴムをコア成分として含むコアシェル型耐衝撃性改質剤が好ましい。
メタクリル樹脂組成物の、引張動的粘弾性測定により25~50℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、通常1~4,000MPa、好ましくは500~3,500MPa、より好ましくは1000~3,000MPa、更に好ましくは1,500~2,500MPaである。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、基材層(I)の引張貯蔵弾性率を高めやすい。前記引張貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置により測定することができ、例えば、縦20mm×横5mm×厚さ0.4mmのシートを作製し、粘弾性スペクトロメーター「Rheogel-E4000」(株式会社ユービーエム製)を用い、周波数1Hz、測定温度-50~250℃、ひずみ<1%の測定条件にて引張動的粘弾性測定を行うことにより測定できる。引張貯蔵弾性率は、例えば、メタクリル樹脂組成物に含まれるコアシェル型ゴム粒子を少なくすることにより、前記範囲内に調整できる。
メタクリル樹脂組成物のメルトフローレート(以下、「MFR」と略記する)は特に限定されない。MFRは、好ましくは1~10g/10分、より好ましくは1.2~7g/10分、特に好ましくは1.5~4g/10分である。特に明記しない限り、メタクリル樹脂組成物のMFRは、メルトインデクサーを用いて、温度230℃、3.8kg荷重下で測定される値である。例えば、メタクリル樹脂の重量平均分子量の調整、および/または添加剤の使用により、MFRを前記範囲内に調整できる。
メタクリル樹脂組成物の製膜温度および溶融粘度は特に限定されない。溶融粘度は、温度220~240℃、剪断速度60s-1において、好ましくは200~5000Pa・sである。溶融粘度は、JISK7199に準拠して、例えば東洋精機製キャピログラフ(形式1C、温度範囲:60~400℃、バレル径:9.55mmφ)を用いて測定される。後述の接着層(II)と共押出法にて製膜する場合には、230℃以下で製膜できることが好ましい。その理由は、例えば接着層を構成する樹脂材料がポリビニルアセタール樹脂を含む場合、メタクリル樹脂組成物の製膜温度が230℃以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の熱劣化を抑制することができ、外観の良好な積層体を得やすいからである。230℃、剪断速度60s-1における溶融粘度が好ましくは200~4500Pa・s、より好ましくは500~4000Pa・s、特に好ましくは1000~3500Pa・sであると、ポリビニルアセタール樹脂材料の溶融粘度も調整することで、メタクリル樹脂組成物の溶融粘度とポリビニルアセタール樹脂材料の溶融粘度との比を調整することができ、ポリビニルアセタール樹脂の熱劣化を更に抑制しやすい。
メタクリル樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知のメタクリル樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。混合法としては、溶融混合法および溶液混合法等が挙げられる。溶融混合法では、単軸または多軸の混練機;オープンロール、バンバリーミキサー、およびニーダー等の溶融混練機等を用い、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、およびヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で溶融混練を行うことができる。溶液混合法では、メタクリル樹脂と他の重合体とを、トルエン、テトラヒドロフラン、およびメチルエチルケトン等の有機溶媒に溶解させて混合することができる。
また、メタクリル樹脂と他の重合体および/または添加剤とを混合する方法は特に限定されない。例えば、他の重合体および/または添加剤をメタクリル樹脂の重合時若しくは重合後に添加してもよいし、メタクリル樹脂またはメタクリル樹脂および添加剤を他の重合体の重合時若しくは重合後に添加してもよい。
メタクリル樹脂組成物として市販品を用いてもよい。そのような市販品の例としては、「パラペットGF」、「パラペットGR-00100」、「パラペットGR-H60」(以上株式会社クラレ製)等を挙げることができる。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は特に限定されない。ポリカーボネート樹脂として、多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物とを反応させて得られる公知の樹脂を、単独でまたは2つ以上組み合わせて使用できる。このような樹脂の例としては、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、およびこれらを分岐化させて得られる分岐化ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
芳香族ポリカーボネート系樹脂の例としては、2,2-ビス(4-オキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)から誘導される芳香族ポリカーボネート系樹脂、およびポリ(エステルカーボネート)からなるポリカーボネート成分を含む樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、直鎖状のポリマー鎖中に繰り返してカーボネート基、カルボキシレート基および芳香族炭素環式基を有するコポリエステルである。
脂肪族ポリカーボネート系樹脂の例としては、炭酸と脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールとからなる脂肪族ポリカーボネート系樹脂を挙げることができる。これは、複数種の脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールに由来する構造単位を含んでなる共重合体であってもよく、分子鎖中に脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールに代表される脂肪族系化合物由来の構造単位と前記芳香族系化合物由来の構造単位とを有する共重合体であってもよい。
前記多官能性ヒドロキシ化合物の例としては、直鎖脂肪族ジオール、分岐脂肪族ジオール、脂環式ジオール、その他のジオール、および芳香族ジヒドロキシ化合物等を挙げることができる。多官能性ヒドロキシ化合物は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は特に制限されないが、より優れた耐熱性または機械強度を得やすい観点からは芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、ジヒドロキシ-p-ターフェニル類、ジヒドロキシ-p-クォーターフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類、ビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類、ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類、ジヒドロキシベンゼン類等を挙げることができる。
これらの中でも、より優れた耐熱性または機械強度を得やすい観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,ω-ビス[3-(2-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、および2,7-ジヒドロキシナフタレンが好ましく、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
炭酸エステル形成性化合物は特に限定されない。炭酸エステル形成性化合物の例としては、ホスゲン等の各種ジハロゲン化カルボニル;クロロホーメート等のハロホーメート;およびビスアリールカーボネート等の炭酸エステル化合物等を挙げることができる。炭酸エステル形成性化合物は、1つを単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート構造単位以外に、ポリエステル構造単位、ポリウレタン構造単位、ポリエーテル構造単位、ポリスチレン構造単位、ポリシロキサン構造単位、リン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー等に由来する構造単位を1つ以上含んでいてもよい。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を使用できる。また、ポリカーボネート樹脂として市販品を用いてもよい。そのような市販品の例としては、「SDPOLYCA 301-4」(住化ポリカーボネート株式会社製、300℃、1.2kg荷重におけるメルトボリュームフローレート(以下において、「MVR」と略記する):4cm/10分)、「SDPOLYCA 301-6」(住化ポリカーボネート株式会社製、MVR:6cm/10分)、「SDPOLYCA 301-10」(住化ポリカーボネート株式会社製、MVR:6cm/10分)、「SDPOLYCA PCX」(住化ポリカーボネート株式会社製)、「ユーピロン H-3000」(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、MVR:28cm/10分)、「ユーピロン S-2000」(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、MVR:9cm/10分)等を挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、特に限定されない。粘度平均分子量は、製膜性および機械物性の観点から、通常10,000~60,000、好ましくは15,000~35,000、より好ましくは18,000~30,000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤または触媒等を必要に応じて使用することにより、粘度平均分子量を前記範囲内に調整できる。また、予め粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂を2つ以上準備しておき、それらをブレンドして所望の粘度平均分子量に調整してもよい。
ポリカーボネート樹脂のMVRは、特に限定されない。300℃、1.2kg荷重におけるMVRは通常1~200cm/10分である。ここで、MVRは、ISO1133に準拠して測定される。成形加工性および耐貫通性の観点から、ポリカーボネート樹脂のMVRは、好ましくは2~30cm/10分、より好ましくは3~10cm/10分である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤または触媒等を必要に応じて使用することにより、MVRを前記範囲内に調整できる。また、予めMVRの異なるポリカーボネート樹脂を2つ以上準備しておき、それらをブレンドして所望のMVRに調整してもよい。
ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は特に限定されないが、温度260~300℃、剪断速度60s-1において、通常200~6000Pa・sである。溶融粘度は、JISK7199に準拠して、例えば東洋精機製キャピログラフ(形式1C)を用いて(温度範囲:60~400℃、バレル径:9.55mmφ)を用いて測定される。溶融粘度は、加熱温度280℃で、好ましくは1200Pa・s以下であり、より好ましくは1050Pa・s以下である。溶融粘度が上述の好ましい値以下であると、配管若しくはダイス中またはポリマーフィルターにおける樹脂が好適に流動して滞留部分が生じにくいことから、ヤケまたはゲルが発生しにくく、積層体の外観欠陥が生じにくい。また、ダイスジが発生しにくくなることから、積層体のヘイズの悪化を抑制しやすい。一方、単に温度を高くして溶融粘度を下げることもできるが、樹脂が熱劣化し黄変しやすくなるために好ましくない。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、特に限定されない。ガラス転移温度は、好ましくは100~180℃、より好ましくは110~160℃である。ガラス転移温度が前記下限値以上であると、合わせガラス製造時の基材(I)の変形を防止しやすい。ガラス転移温度が前記上限値以下であると、ポリカーボネート樹脂の高い溶融粘度に起因した押出成形時におけるヒケ等の欠陥の発生を防止しやすい。ガラス転移温度は、例えば、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、および/または粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂の配合比を調整することにより、前記範囲内に調整できる。
ポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強度は、特に限定されない。シャルピー衝撃強度は、合わせガラスに飛来物が衝突した際の耐貫通性の観点から、好ましくは5kJ/m以上、より好ましくは10kJ/m以上、更に好ましくは30kJ/m以上、特に好ましくは60kJ/m以上である。本明細書において、シャルピー衝撃強度は、ISO179に準拠して、3mm厚の試験片にノッチ加工を施し、23℃にてノッチ付きのシャルピー衝撃強度を測定した値とする。シャルピー衝撃強度は、例えば、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量分布、および/または多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との組み合わせを調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
ポリカーボネート樹脂の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは89%以上である。前記全光線透過率が前記下限値以上であると、基材層(I)を後述の厚さ範囲で使用した場合の透明性が高くなりやすく、得られる合わせガラスの透明性も高くなりやすい。前記全光線透過率は、ポリカーボネート樹脂をプレス成形して得られる、例えば厚さ3mm以下(例えば3mm)の成形品を用いてJIS K7361-1に記載の測定方法でヘイズメーターにより測定することができる。全光線透過率は、例えば多官能性ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物を選択してポリカーボネート樹脂の屈折率を調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
基材層(I)は、上述したようなポリカーボネート樹脂からなってもよいし、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて必要に応じて添加剤を含む、ポリカーボネート樹脂組成物からなってもよい。
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離形剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤および蛍光体等を挙げることができる。添加剤を用いる場合は、1つを単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤を用いる場合、その添加量は、ポリカーボネート樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
基材層(I)を後述の接着層(II)と共押出法にて製膜する場合には、より低温で溶融粘度が上記範囲となるよう、5質量%を超える反可塑剤あるいは樹脂添加剤を加えて粘度調整を行ってもよい。このような組成物の例としては、ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリエステルをアロイした組成物、および、ポリカーボネート樹脂と可塑剤または反可塑剤とを含む組成物が挙げられる。配合比は接着層(II)を構成する樹脂材料に応じて適宜調整すればよいが、例えば接着層(II)を構成する樹脂材料にポリビニルアセタール樹脂を用いる場合は、ポリカーボネート樹脂85~99質量部と、可塑剤または反可塑剤15~1質量部とを含むことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂とのアロイに用いられる芳香族ポリエステルの例としては、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合物が挙げられる。代表的な芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。重縮合に他のジカルボン酸成分も用いられてよく、その例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、およびp-オキシ安息香酸等が挙げられる。これらは1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
代表的なジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。他のジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、メトキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらは1種を、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ポリエステルの代表例としては、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。テレフタル酸およびエチレングリコールと、他のジカルボン酸成分および/または他のジオール成分を用いた共重合ポリエステルも好ましい。芳香族ポリエステルの他の代表例としては、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルと1,4-ブタンジオールとの重縮合物であるポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。テレフタル酸および1,4-ブタンジオールと、他のジカルボン酸成分および/または他のジオール成分を用いた共重合ポリエステルも好ましい。中でも、PETにおけるエチレングリコールの一部(好ましくは、重縮合に用いるエチレングリコールの総モル数に対して55~75モル%、好ましくは50~75モル%)にシクロヘキサンジメタノール(1.4-CHDM)を用いた共重合ポリエステル(PCTG)、および、PBTにおけるテレフタル酸の一部(好ましくは、重縮合に用いるテレフタル酸の総モル数に対して10~30モル%)にイソフタル酸を用いた共重合ポリエステル(PCTG)、およびこれらの組合せが好ましい。これらの共重合ポリエステルは、ポリカーボネート樹脂と溶融ブレンドすることによって、完全相溶してポリマーアロイ化することができる。また、このポリマーアロイ化によって、製膜温度および溶融粘度を効果的に下げることができる。
可塑剤は特に制限されず、その例として、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、および2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル系化合物;これらリン酸エステル系化合物に対応するホスファイト系化合物;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2-エチルヘキシルフタレート)、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、およびエチルフタリルエチルグリコレート等のフタル酸エステル系化合物;トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系化合物;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、およびジエチルサクシネート等の脂肪族二塩基酸エステル系化合物;これら脂肪族二塩基酸エステル系化合物に含まれる脂肪族二塩基酸単位を含むポリエステル系化合物;メチルアセチルリシノレート等のリシノール酸エステル系化合物;トリアセチン、およびオクチルアセテート等の酢酸エステル系化合物;N-ブチルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド系化合物;等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂との相溶性がよいこと、相溶後の樹脂の透明性がよいことから、リン酸エステル系化合物、特にクレジルジフェニルホスフェート(CDP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が好ましい。
反可塑剤としては特に制限されず、工業的に入手可能なビフェニル化合物およびターフェニル化合物等を使用することができる。ビフェニル化合物は2つのベンゼン環が結合した化合物であり、ターフェニル化合物は3つのベンゼン環が結合した化合物である。反可塑剤として、ポリカプロラクトンを用いることもできる。
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。そのような製造方法の例としては、ポリカーボネート樹脂および必要に応じて配合される添加剤を、例えばタンブラーまたはヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機またはニーダー等の混合機で溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練温度は特に限定されず、ポリカーボネート樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。溶融混練温度は、通常220~320℃である。
ポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量、MVR、ガラス転移温度およびシャルピー衝撃強度等の特性は、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂組成物が、上述したポリカーボネート樹脂の特性と同様の特性を有することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物の、引張動的粘弾性測定により25~50℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、通常800~4,000MPa、好ましくは1,000~3,500MPa、より好ましくは1300~3,000MPa、更に好ましくは1,500~2,500MPaである。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、基材層(I)の引張貯蔵弾性率を高めやすい。前記引張貯蔵弾性率は、上述したメタクリル樹脂組成物の引張貯蔵弾性率の測定方法と同じ方法で測定できる。引張貯蔵弾性率は、例えば、ポリカーボネート樹脂の原料としてビスフェノールAを選択することにより、前記範囲内に調整できる。
ポリカーボネート樹脂組成物の製膜温度および溶融粘度は特に限定されないが、後述の接着層(II)と共押出法にて製膜する場合には、より低温で製膜できることが好ましい。一例として接着層を構成する樹脂材料にポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、ポリカーボネート樹脂組成物の製膜温度が230℃以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の熱劣化を抑制することができ、外観の良好な積層体を得られやすい。ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度とポリビニルアセタール樹脂材料の溶融粘度との比を所望の範囲に調整しやすく、従ってポリビニルアセタール樹脂の熱劣化を抑制しやすい観点から、東洋精機製キャピログラフ(形式1C)を用いて(温度範囲:60~400℃、バレル径:9.55mmφ)、230℃、60s-1の剪断速度の条件下でJISK7199に準拠して測定されたポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度は、好ましくは500~6000Pa・s、より好ましくは500~5500Pa・s、更に好ましくは500~5000Pa・s以下である。
<<基材層(I)の製造方法>>
基材層(I)の製造方法は特に限定されず、公知のシートの製造方法を採用できる。好適な厚さに調整しやすい観点からは、押出機を用いることが好ましい。
押出機の例としては、単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機および多軸押出機等を挙げることができる。中でも、樹脂滞留部が少ないため押出中に樹脂の熱劣化を抑制しやすいこと、および設備費が安価であることから、単軸押出機が好ましい。単軸押出機等で使用するスクリューとしては、圧縮比2~3程度の一般的なフルフライト構成を有するスクリューでもよく、未溶融物が存在しないようにバリアフライト等の特殊な混練機構を備えたスクリューでもよい。また、樹脂若しくは樹脂組成物中の残存揮発分または押出機において加熱より発生した揮発成分を除去するため、ベント機構を有する押出機を用いてもよい。
また、基材層(I)を構成する樹脂材料としてメタクリル樹脂組成物またはポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合は、予め樹脂組成物を調製し、押出機に投入して押し出してもよいし、メタクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂と配合される添加剤等とを押出機に投入して押し出してもよい。
また、後述するように、共押出法により基材層(I)と接着層(II)とを同時に製造してもよい。
製膜温度および溶融温度等は特に限定されず、基材層(I)を構成する樹脂材料に応じて適宜選択すればよい。
基材層(I)の表面は平滑である方が好ましい。基材層(I)が平滑であるほど、基材層(I)と接着層(II)との積層体の製造が容易になりやすい。また、そのような積層体を中間膜に用いて合わせガラスを製造すると、合わせガラスの外観品位が向上しやすい。平滑な表面を得る方法は特に限定されない。平滑な表面は、例えば、樹脂または樹脂組成物の溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、押し出した溶融混練物の両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法により得ることができ、そのような方法が好ましい。その際に用いるロールまたはベルトはいずれも、金属製またはシリコーンゴム製であることが好ましい。
基材層(I)は優れた耐貫通性を有することが好ましい。耐貫通性は後述の落錘衝撃試験により貫通エネルギーを測定することにより評価する。基材層(I)の落錘衝撃試験における耐貫通性は、好ましくは5J以上、より好ましくは10J以上、更に好ましくは13J以上である。基材層(I)の耐貫通性が前記下限値以上であると、基材層(I)と接着層(II)との積層体を中間膜に用いて製造した合わせガラスの耐貫通性を十分な値に調整しやすい。基材層(I)の耐貫通性は、後述の実施例に記載の、中間膜の落錘衝撃試験方法と同じ方法により求めることができる。耐貫通性は、例えば、基材層(I)を構成する樹脂材料に含まれるメタクリル樹脂にコアシェル型ゴム粒子を混合すること、基材層(I)を構成する樹脂材料に含まれるポリカーボネート樹脂の原料としてビスフェノールAを選択すること、および/または基材層(I)の厚さを調整することにより、前記下限値以上に調整できる。
基材層(I)の、引張動的粘弾性測定により25~50℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、通常800~5,000MPaである。前記引張貯蔵弾性率は、好ましくは1,000MPa以上、より好ましくは1,500MPa以上であり、好ましくは3,500MPa以下、より好ましくは3,000MPa以下、更に好ましくは2,500MPa以下である。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、基材層(I)が成形できる範囲で薄くても曲げ剛性を十分確保しやすく、前記上限値以下であると、後述のロール形状への良好な賦形性を得やすい。前記引張貯蔵弾性率は、上述したメタクリル樹脂組成物の引張貯蔵弾性率の測定方法と同じ方法で測定できる。引張貯蔵弾性率は、例えば、基材層(I)を構成する樹脂材料に含まれるポリカーボネート樹脂の原料としてビスフェノールAを選択すること、および/または基材層(I)の厚さを調整することにより、前記範囲内に調整できる。
基材層(I)は高い全光線透過率を有することが好ましい。後述の厚さにおける基材層(I)の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは89%以上である。全光線透過率が前記下限値以上であると、得られる合わせガラスの透明性が高くなりやすい。前記全光線透過率は、基材層(I)を用いてJIS K7361-1に記載の測定方法でヘイズメーターにより測定することができる。全光線透過率は、例えば、基材層(I)に含まれる樹脂として上述したような高い全光線透過率を有する樹脂を選択すること、基材層(I)の表面粗さを低減すること、および/または基材層(I)を構成する樹脂組成物における添加剤の選択若しくは添加剤の分散性の調整により、前記下限値以上に調整できる。
基材層(I)の厚さT(I)は、基材層(I)と接着層(II)との積層体の取扱性の観点から、好ましくは0.90mm以下である。厚さT(I)は、所望の耐貫通性、剪断緩和弾性率、および後述する積層体の曲げ剛性を得やすい観点から、好ましくは0.20mm以上、より好ましくは0.25mm以上、より好ましくは0.30mm以上、より好ましくは0.35mm以上、更に好ましくは0.40mm以上であり、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70mm以下、更に好ましくは0.65m以下である。厚さT(I)は、厚み計で測定でき、複数箇所(例えば10~20箇所)測定した平均値を採用すればよい。
本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、基材層(I)の表面に易接着処理を施してもよい。易接着処理の例としては、コロナ処理、プラズマ処理および低圧紫外線処理等の表面処理を挙げることができる。
また、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、基材層(I)に易接着層を設けてもよい。易接着層に含まれる樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン等を挙げることができる。
易接着層は公知の方法により基材層(I)に形成できる。そのような方法の例としては、上述した樹脂を基材層(I)に塗布し、乾燥することを含む方法を挙げることができる。易接着層の厚さは、乾燥状態において、好ましくは1~100nm、より好ましくは10~50nmである。塗布に用いる樹脂は溶剤により希釈してもよい。そのような溶剤は特に限定されないが、例えばアルコール類を使用できる。希釈濃度(塗布液の総質量に対する固形分の質量の百分率)は特に限定されないが、好ましくは1~5質量%、より好ましくは1~3質量%である。
易接着層の表面には、接着層(II)との接着力を高める目的で、必要に応じて低圧紫外線処理、コロナ処理またはプラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
<<接着層(II)>>
積層体は、基材層(I)と、その両面に存在する2つの接着層(II)とからなる。2つの接着層(II)を構成する材料は接着性樹脂を含有し、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。2つの接着層(II)を構成する材料は、好ましくは同じである。
接着層(II)を構成する接着性樹脂は特に限定されないが、接着性および高温下における高い剪断緩和弾性率を有する樹脂が好ましい。接着性樹脂の具体例としては、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。これらの中でも、紫外線または高温による加水分解に起因した合わせガラスの長期安定性の低下を抑制しやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。また、熱硬化性を有さない材料は合わせガラス製造時の作業性を損ねるおそれが少ないことから、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリメタクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。また、透明性および耐貫通性に優れる合わせガラスをもたらしやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂が特に好ましい。従って、本発明の好ましい一実施態様では、積層体において、少なくとも一方の接着層(II)、好ましくは両方の接着層(II)は、接着性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有する。
(エチレン-酢酸ビニル共重合体)
本発明において、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と略記する)は特に限定されない。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、EVAの質量に対して、好ましくは23~38質量%、より好ましくは25~30質量%、更に好ましくは26~28質量%である。EVAの酢酸ビニル単位の含有量が低い程、得られる接着層が硬くなる傾向がある。酢酸ビニル単位の含有量が前記下限値以上であると、高温で架橋硬化させる場合であっても接着層の十分な透明性を得やすく、酢酸ビニル単位の含有量が前記上限値以下であると、耐衝撃性または耐貫通性に必要な接着層の十分な硬さを得やすい。
EVAの、190℃、荷重21.18Nの条件で測定されたMFRは、好ましくは4g/10分以上である。これにより、積層体若しくは中間膜の製造時、または中間膜を無機ガラスに貼り付ける際に、気泡の除去がより容易になる。MFRは、より好ましくは4.0~30.0g/10分、更に好ましくは8.0~18.0g/10分である。
本発明において、EVAには架橋剤を添加してもよい。これによりEVAの架橋構造を形成することができ、接着層の剪断緩和弾性率をより高めることができる。
EVAの架橋剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、製膜温度、組成物の調製条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上の有機過酸化物が好ましい。
前記有機過酸化物としては、EVAおよび有機過酸化物を含む樹脂組成物の加工温度または貯蔵安定性の観点から、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシカーボネート系化合物、およびケトンパーオキサイド系化合物を使用することが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ハイドロパーオキサイド系化合物としては、例えば、P-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド系化合物としては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、3-ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチル-α-クミルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、1,4-ビス((t-ブチルジオキシ)イソプロピル)ベンゼン、1,3-ビス((t-ブチルジオキシ)イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
パーオキシカーボネート系化合物としては、例えば、t-ブチルパ-オキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
ケトンパーオキサイド系化合物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、より優れた接着力、耐熱性および耐紫外線性を有する硬化膜を得やすい観点からは、ジアルキルパーオキサイド系化合物、特に、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを用いることが好ましい。
EVAの架橋剤の含有量は、EVA100質量部に対して、通常0.5~5.0質量部、好ましくは0.5~3.5質量部、より好ましくは0.65~3.5質量部である。架橋剤の含有量が前記範囲であれば、強固な架橋構造が得られやすく、無機ガラスに対する接着強度を高めやすい。
EVAおよび架橋剤を含む樹脂組成物は、必要に応じて、架橋助剤を更に含んでいてもよい。架橋助剤は、EVAのゲル分率を向上させ、接着層(II)の接着性および耐久性を向上させることができる。
架橋助剤の含有量は、EVA100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.1~2.5質量部である。架橋助剤の含有量が前記範囲内であると、更に接着性に優れる接着層(II)を得やすい。
架橋助剤は、官能基としてラジカル重合性基を有する化合物であってよく、その例としては、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレート等の三官能性架橋助剤、(メタ)アクリルエステル(例えば、NKエステル等)といった単官能性架橋助剤、または二官能性架橋助剤を挙げることができる。中でも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量は特に限定されないが、10~50モル%が好ましく、15~40モル%がより好ましく、18~33モル%が更に好ましい。ビニルアルコール単位含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、工業的に生産しやすく、積層体の十分な耐湿性および可塑剤を使用する場合の可塑剤との良好な相溶性を得やすい。ビニルアルコール単位含有量は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより前記範囲内に調整できる。
ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度は特に限定されないが、好ましくは30~90モル%、より好ましくは40~80モル%、更に好ましくは50~78モル%、特に好ましくは60~76モル%である。平均アセタール化度が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、工業的に生産しやすく、積層体の十分な耐湿性および可塑剤を使用する場合の可塑剤との良好な相溶性を得やすい。平均アセタール化度は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより調整できる。
ポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、特に好ましくは1.5モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは6モル%以下、特に好ましくは5.4モル%以下である。酢酸ビニル単位含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、工業的に生産しやすく、所望の透明性を得やすい。
なお、基材層を構成する樹脂材料にポリカーボネート樹脂を用いる場合、接着層と基材層との接着力を高めやすい観点から、前記酢酸ビニル単位含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは6モル%以下、特に好ましくは5.4モル%以下である。酢酸ビニル単位の含有量は、原料のポリビニルアルコール樹脂のけん化度を適宜調整することにより調整できる。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂を原料として製造される。ポリビニルアルコール樹脂は従来から公知の手法、即ち、ビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、従来から公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。けん化反応は、従来から公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解等が適用でき、この中でもメタノールを溶媒とし、水酸化ナトリウム触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
ビニルエステル化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等、従来から公知のカルボン酸ビニルエステルが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
また、ポリビニルアルコール樹脂としては、本発明の趣旨に反しない限り、ビニルエステル化合物と他の従来から公知の単量体とを共重合させた変性ポリビニルアルコールを使用することもできる。前記単量体は通常、ビニルエステル化合物に対して通常は10モル%未満の割合で用いられる。
ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度は特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは150~3,000、より好ましくは200~2,500、更に好ましくは900~2,000である。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、得られるポリビニルアセタール樹脂を用いて製造した積層体が十分な強度および耐熱性を有しやすく、得られるポリビニルアセタール樹脂を用いて積層体を製造する際に、接着層の良好な製膜性が得やすい。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は従来から公知の方法で製造されるが、例えば、次のような反応条件下で沈殿法により製造できる。まず、濃度3~40質量%のポリビニルアルコール樹脂の水溶液を、80~100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10~60分かけて徐々に冷却する。水溶液の温度が-10~30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30~300分間アセタール化反応を行う。その際、平均アセタール化度が一定水準に達したポリビニルアセタール樹脂が析出する。その後、反応液を30~300分かけて30~80℃の温度まで昇温し、その温度を10~500分間保持する。次に、反応液に塩基性の化合物を添加して酸触媒を中和して水洗し、乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂が得られる。
ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に、酸触媒を中和するために添加する塩基性の化合物は特に限定されず、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび水酸化カリウム等の塩基性のナトリウム塩またはカリウム塩を使用してもよく、アンモニア、トリエチルアミンのようなアミンを使用してもよい。これらの中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能である。その例としては、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、従来から公知の炭素数1~8のアルデヒドが好ましく、炭素数4~6のアルデヒドがより好ましい。得られるポリビニルアセタール樹脂の優れた透明性および力学強度、また得られるポリビニルアセタール樹脂と後述する可塑剤との相溶性を得やすい観点から、n-ブチルアルデヒドを用いることが好ましい。本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるポリビニルアセタールを使用することもできる。
ポリビニルアセタール樹脂には可塑剤を添加してもよい。そのような可塑剤としては、従来公知の可塑剤を使用でき、その例としては、一価カルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等のカルボン酸エステル系可塑剤;リン酸エステル系可塑剤;有機亜リン酸エステル系可塑剤;カルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤等の高分子可塑剤;ひまし油等のヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物が挙げられる。可塑剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
一価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、へキサン酸、2-エチルへキサン酸、へプタン酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリル酸等の一価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジイソブタノエート、トリエチレングリコールジ2-ヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、PEG#400ジ2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキサノエート、グリセリントリ2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。ここで、PEG#400とは、平均分子量が350以上、450以下であるポリエチレングリコールを表す。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸等の多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数1~12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物の例としては、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸3-メチル-1,5-ペンタンジオール、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2-エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジドデシル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤または有機亜リン酸エステル系可塑剤の例としては、リン酸または亜リン酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコール等の炭素数1~12のアルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物の例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリ(ブトキシエチル)、亜リン酸トリ(2-エチルヘキシル)等が挙げられる。
カルボン酸ポリエステル系可塑剤の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールとを交互共重合して得られるカルボン酸ポリエステル、およびε-カプロラクトン等のラクトン化合物を開環重合して得られるカルボン酸ポリエステルが挙げられる。これらカルボン酸ポリエステルの末端構造は、例えば水酸基若しくはカルボキシル基であってもよいし、また、末端水酸基や末端カルボキシル基を一価カルボン酸若しくは一価アルコールと反応させてエステル結合としたものであってもよい。
炭酸ポリエステル系可塑剤の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の多価アルコールと、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸エステルとをエステル交換反応により交互共重合して得られる炭酸ポリエステルが挙げられる。これら炭酸ポリエステル化合物の末端構造は、炭酸エステル基または水酸基等であってよい。
ポリアルキレングリコール系可塑剤の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを、一価アルコール、多価アルコール、一価カルボン酸および多価カルボン酸を開始剤として開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
これらの中でも特に、トリエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2-エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸3-メチル-1,5-ペンタンジオールが好ましい。基材層(I)を構成する樹脂材料にポリカーボネート樹脂を用いる場合は、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の多価カルボン酸エステル系可塑剤を使用することがより好ましい。上記可塑剤を用いると、基材層(I)および接着層(II)の層間で可塑剤の分配が生じないため、基材層の優れた剪断緩和弾性率を得やすい。
ポリビニルアセタール樹脂に可塑剤を添加する場合、その添加量はポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。可塑剤の含有量が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、十分な可塑化効果および積層体の所望の力学強度を得やすい。
積層体における2つの接着層(II)を構成する樹脂材料はそれぞれ、本発明の趣旨に反しない限り、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性調整剤、シランカップリング剤、フィラー(例えば、タルク、シリカ)等の添加剤を含んでいてもよい。
接着層(II)を構成する樹脂材料が酸化防止剤を含有する場合、その種類は特に限定されない。例えば、従来公知のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤等を用いることができる。これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の含有量は特に限定されないが、接着層(II)を構成する樹脂組成物に対して、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。酸化防止剤の含有量が前記下限値以上であると十分な効果を得やすい。酸化防止剤の含有量が5質量%より多くても格段の効果の向上は望めない。
接着層(II)を構成する樹脂材料が紫外線吸収剤を含有する場合、その種類は特に限定されない。例えば、従来公知のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等を使用できる。これらの紫外線吸収剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、接着層(II)を構成する樹脂組成物に対して、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。紫外線吸収剤の含有量が前記下限値以上であると十分な効果を得やすい。紫外線吸収剤の含有量が5質量%より多くても格段の効果の向上は望めない。
基材層(I)を構成する樹脂材料および接着層(II)を構成する樹脂材料の両方が紫外線吸収剤を含む場合、接着層(II)を構成する樹脂材料に含まれる紫外線吸収剤の量は、基材層を構成する樹脂材料に含まれる紫外線吸収剤の量と同等か、またはそれより多いことが好ましい。接着層(II)を構成する樹脂材料に含まれる紫外線吸収剤の量が多いと、外部から照射される紫外線が基材層に到達する前に十分吸収されることから、基材層への紫外線吸収剤の添加量を低減できる。この場合、積層体全体の透明性を向上させやすい。
また、接着層を構成する樹脂材料にポリビニルアセタール樹脂を用い、積層体の無機ガラスに対する接着性を適切に調節する必要がある場合、前記樹脂材料には接着性調整剤が含有されていてもよい。接着性調整剤としては、従来公知のものが使用可能である。その例としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、2-エチルブタン酸、2-エチルヘキサン酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。接着性調整剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂組成物の質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.0005~0.1質量%、更に好ましくは0.001~0.03質量%である。
ポリビニルアセタール樹脂組成物の製造方法は限定されず、公知の製造方法を採用できる。そのような製造方法の例としては、ポリビニルアセタール樹脂および必要に応じて添加されるその他の成分を、例えばタンブラーまたはヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いて予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機またはニーダー等の混合機で溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練温度は特に限定されず、ポリビニルアセタール樹脂および必要に応じて添加されるその他の成分に応じて適宜選択すればよい。溶融混練温度は、通常160~240℃である。
ポリビニルアセタール樹脂組成物の溶融粘度は特に限定されないが、基材層との共押出法にて製膜する場合は、溶融粘度が大きいことが好ましい。東洋精機製キャピログラフ(形式1C)を用いて(温度範囲:60~400℃、バレル径:9.55mmφ)、230℃、60s-1の剪断速度の条件下で測定したポリビニルアセタール樹脂組成物の溶融粘度は、好ましくは800~5000Pa・s、より好ましくは1000~5000Pa・s、更に好ましくは1200~5000Pa・sである。溶融粘度は、例えば、可塑剤の添加量、および/またはポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量若しくは平均アセタール化度の調整により、前記範囲内に調整できる。
<<接着層(II)の製造方法>>
接着層(II)の製造方法は特に限定されない。例えば、接着層(II)を構成する樹脂材料を、熱プレス成形機、カレンダーロールまたは押出機等の公知の装置を用いてシート状に成形することで得ることができる。または、接着層(II)を構成する樹脂材料を有機溶媒または有機分散媒に溶解または分散して塗布液を得、塗布液を離形フィルムに塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去することによって製造してもよい。または、前記塗布液を、基材層(I)に塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去することによって製造してもよい。または、共押出法により基材層(I)と接着層(II)とを同時に製造してもよい。
製膜温度および溶融温度等は特に限定されず、接着層(II)を構成する樹脂材料に応じて適宜選択すればよい。
接着層(II)の表面には、脱気性の観点から、メルトフラクチャーまたはエンボス等の凹凸構造を従来公知の方法で形成してもよく、形成することが好ましい。そのような凹凸構造の形状は特に限定されず、従来公知の構造であってよい。
接着層(II)の、引張動的粘弾性測定で25℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.1~1500MPa、より好ましくは1~1450MPa、更に好ましくは10~1400MPaである。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、接着層(II)が薄くても、基材層(I)と接着層(II)との積層体が破断を伴わず容易に巻き取りやすい。前記引張貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、合わせガラス製造時に発生する応力による接着層の割れを防止しやすく、外観に優れる合わせガラスを得やすい。
接着層(II)の、引張動的粘弾性測定で50℃、周波数1Hz、ひずみ<1%で測定した引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.1~1450MPa、より好ましくは0.5~1400MPa、更に好ましくは1~1300MPaである。前記引張貯蔵弾性率が前記下限値以上であると、基材層と積層した積層体のより好ましい剪断緩和弾性率を得やすい。前記引張貯蔵弾性率が前記上限値以下であると、合わせガラス製造時に発生する応力による接着層の割れを防止しやすく、外観に優れる合わせガラスを得やすい。
接着層(II)の25℃または50℃における引張貯蔵弾性率は、例えば、接着層(II)に含まれる可塑剤の添加量の調整、ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量の調整、フィラーの添加、および/または接着性樹脂においてガラス転移温度が高い成分の比率を高めることにより、前記範囲内に調整できる。また、これらの引張貯蔵弾性率は、上述したメタクリル樹脂組成物の引張貯蔵弾性率の測定方法と同じ方法で測定できる。
1層の接着層(II)の厚さT(II)は、圧縮剪断に対する良好な剛性および無機ガラスに対する良好な接着性を得やすい観点および経済的観点から、好ましくは0.30mm以下である。また、好ましくは0.005mm以上、より好ましくは0.007mm以上、より好ましくは0.010mm以上、より好ましくは0.020mm以上、より好ましくは0.030mm以上、更に好ましくは0.040mm以上、特に好ましくは0.050mm以上であり、好ましくは0.280mm以下、より好ましくは0.250mm以下、より好ましくは0.200mm以下である。厚さT(II)は、厚み計で測定でき、複数箇所(例えば10~20箇所)測定した平均値を採用すればよい。
基材層(I)の両側に配置される2つの接着層(II)の厚さの和を2T(II)と定義する。2つの接着層(II)の厚さT(II)は、相互に同じでもよいし、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。2つの接着層(II)の厚さT(II)が同じ場合、2T(II)はT(II)の2倍に等しい。
2つの接着層(II)の厚さ2T(II)に対する基材層(I)の厚さT(I)の比T(I)/2T(II)は、基材層(I)を構成する樹脂材料、接着層(II)を構成する樹脂材料、および使用される用途に応じて変更してよい。合わせガラスにした際の各層の接着性および耐貫通性の観点並びに所望の積層体の曲げ剛性を得やすい観点から、T(I)/2T(II)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは3.0以上であり、好ましくは35以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
[中間膜の製造方法]
中間膜を製造する方法は、基材層(I)の両面に接着層(II)を有する積層体を製造できる方法、即ち、接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)の順で積層された積層体を製造でき、中間膜が複数の積層体を含む場合には当該複数の積層体を接合できる方法か、または中間膜が複数の積層体を含む場合に、例えば接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)等の順で積層された中間膜を製造できる方法であれば特に限定されない。
積層体の製造方法の例としては、基材層(I)および接着層(II)を、熱ラミネート法または圧着法等の公知の方法で積層する方法、接着層(II)を構成する材料を有機溶媒または有機分散媒に溶解または分散して塗布液を得、この塗布液を、基材層(I)の片面に塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去し、更に基材層(I)のもう一方の面に塗布液を塗布した後、有機溶媒または有機分散媒を除去する方法、および基材層(I)を構成する材料と接着層(II)を構成する材料とを共押出しする方法を挙げることができる。共押出法が、製造コスト、有機溶媒または有機分散媒による環境への負荷、および膜厚の均一性の観点から好ましい。
中間膜が複数の積層体を含む場合に、複数の積層体を接合する方法の例としては、当該複数の積層体を熱ラミネート法または圧着法等の公知の方法で積層する方法が挙げられる。
また、中間膜が複数の積層体を含む場合に、例えば接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)等の順に当該複数の層を積層する方法の例としては、当該複数の層を熱ラミネート法または圧着法等の公知の方法で積層する方法が挙げられる。
中間膜が任意の構造(例えば、導電構造、遮音構造、意匠またはデザイン層およびそれらの組み合わせ)を有する場合、例えば、当該構造を基材層(I)および/または接着層(II)に熱ラミネート法、圧着法または印刷法等により予め付与してもよいし、当該構造の付与を基材層(I)と接着層(II)との積層と同時に行ってもよいし、当該構造の付与を複数の積層体の積層と同時に行ってもよいし、当該構造を離形フィルムの上に形成して基材層(I)および/または接着層(II)とラミネートした後に離形フィルムを剥がし取ることで当該構造を基材層(I)および/または接着層(II)に転写することにより行ってもよい。
積層体または中間膜を共押出法で製造する場合、基材層(I)および接着層(II)を構成する樹脂材料はそれぞれ加熱溶融され、基材層(I)の両表面に接着層(II)が積層された状態または例えば接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)等の順に積層された状態で、幅広の吐出口を有するTダイから溶融状態で共押出される。
基材層(I)および接着層(II)を構成する各溶融樹脂材料は、積層前にフィルターにより溶融濾過することが好ましい。溶融濾過した各溶融樹脂材料を用いて多層成形することにより、異物およびゲルに起因する欠陥の少ない押出樹脂シートが得やすくなる。フィルターの濾材は、使用温度、粘度および濾過精度等により適宜選択される。例えば、グラスファイバー等からなる不織布;フェノール樹脂含浸セルロース製のシート状物;金属繊維不織布焼結シート状物;金属粉末焼結シート状物;金網;およびこれらの組合せ等が挙げられる。中でも耐熱性および耐久性の観点から、金属繊維不織布焼結シート状物を複数枚積層したフィルターが好ましい。フィルターの濾過精度は特に制限されず、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
積層方式としては、Tダイ流入前に積層するフィードブロック方式、およびTダイ内部で積層するマルチマニホールド方式等が挙げられる。押出樹脂シートの層間の界面平滑性を高める観点から、マルチマニホールド方式が好ましい。
Tダイから共押出された溶融状態の積層体は、複数の冷却ロールを用いて冷却される。本発明の一実施態様では、互いに隣接する3つ以上の冷却ロールを用い、溶融状態の積層樹脂シートを、第n番目(但し、n≧1)の冷却ロールと第n+1番目の冷却ロールとの間に挟み込み、第n+1番目の冷却ロールに巻き掛ける操作をn=1から複数回繰り返すことにより冷却する。例えば、図1に示すように3つの冷却ロールを用いる場合、繰り返し回数は2回である。
冷却ロールとしては、金属ロール、および外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロール(以下、金属弾性ロールとも称する)等が挙げられる。金属ロールとしては、ドリルドロールおよびスパイラルロール等が挙げられる。金属ロールの表面は、鏡面であってもよいし、模様または凹凸等を有していてもよい。金属弾性ロールは例えば、ステンレス鋼等からなる軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うステンレス鋼等からなる金属製薄膜と、これら軸ロールおよび金属製薄膜の間に封入された流体とからなり、流体の存在により弾性を示すことができる。金属製薄膜の厚さは好ましくは2~5mm程度である。金属製薄膜は、屈曲性および可撓性等を有することが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造であることが好ましい。このような金属製薄膜を備えた金属弾性ロールは、耐久性に優れると共に、金属製薄膜を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取扱いができ、金属製薄膜に模様および凹凸等を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
冷却後に得られた積層体は、引取りロールによって引き取られる。上述した共押出し、冷却、および引取りの工程は、連続的に実施される。
図1に、一実施態様として、Tダイ11、第1~第3冷却ロール12~14、および一対の引取りロール15を含む製造装置の模式図を示す。Tダイ11から共押出しされた溶融状態の積層樹脂シートは第1~第3冷却ロール12~14により冷却され、一対の引取りロール15により引き取られる。
製造装置の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、第3冷却ロール14の後段に隣接して第4以降の冷却ロールを設置してもよい。また、互いに隣接した複数の冷却ロールと引取りロールとの間には必要に応じて搬送用ロールを設置することもできる。
基材層(I)と接着層(II)を共押出法にて製膜する場合は、好ましくは、積層体において、JIS K 7199に準拠して温度230℃、剪断速度60s-1で測定した、基材層(I)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)は1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、各接着層(II)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)はそれぞれ1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、これらの溶融粘度比(η/η)および(η/η)は1.0以上、4.0以下である。ηは、より好ましくは5.0×102Pa・s以上、更に好ましくは1.0×103Pa・s以上であり、より好ましくは6.0×103Pa・s以下、更に好ましくは5.0×103Pa・s以下である。ηおよびηは、より好ましくは5.0×102Pa・s以上、より好ましくは1.0×103Pa・s以上、更に好ましくは2.0×103Pa・s以上であり、より好ましくは6.0×103Pa・s以下、更に好ましくは5.0×103Pa・s以下である。η/ηおよびη/ηは、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下である。溶融粘度比が前記下限値以上であり、前記上限値以下であると、接着層(II)の厚さ調整がより容易になりやすく、接着層(II)を薄くした場合でも厚さ比が均一になりやすく、合わせガラスの品質がより安定しやすい。
中間膜は耐貫通性を有することが好ましい。中間膜の耐貫通性は、基材層(I)の耐貫通性と同様に、ASTM D3763に準拠した落錘衝撃試験により求められる。測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m・s-1の条件で測定した中間膜の耐貫通性は、好ましくは12J以上、より好ましくは13J以上、更に好ましくは14J以上、特に好ましくは15J以上である。上限値は特に限定されないが、通常25J以下である。上記試験において30Jを超える場合は貫通しない場合が多いが、正確な測定値でない場合がある。中間膜の耐貫通性が前記下限値以上であると、合わせガラスに飛来物が衝突して破損した場合でも中間膜が破断しにくくなるため、安全性が向上する。耐貫通性は、例えば、基材層(I)および接着層(II)の厚さの調整、それらの厚さ比の調整、および/または基材層(I)、接着層(II)、積層体および中間膜の剪断貯蔵弾性率の向上により、前記下限値以上に調整できる。
本発明における中間膜は、優れた曲げ強度を有する合わせガラスをもたらすことができる。合わせガラスの曲げ強度は、後述の実施例に記載するように、ISO1288-4:2016に準拠した合わせガラスの4点曲げ試験を行い、合わせガラスの最も変形量の大きい中心部の撓み量を求めることで評価できる。撓み量が小さいほど、合わせガラスの曲げ強度が優れる。撓み量は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.8mm以上、より好ましくは2.7mm以下、より好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2.2mm以下、より好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.7mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.8mm以下である。撓み量の下限値は0mmである。
長時間経過後の合わせガラスの曲げ強度を実測することが難しい等の場合には、合わせガラスに荷重が与えられてから短時間(例えば30分以下)しか経過していない時点での合わせガラスが有する前記曲げ強度と同等の曲げ強度を有する1枚の板ガラスの厚さを算出し、そのような板ガラスの4点曲げ変形における理論式を用いて、長時間経過後の合わせガラスの曲げ強度を評価することができる。この板ガラスの厚さは、有効ガラス厚さ(Effective thickness)と称される。有効ガラス厚さを求める式は複数報告されているが、本発明では非特許文献1に記載の方法で得られた撓みを求めるための有効ガラス厚さ(hef;w)を用いる。後述の実施例に記載の方法により求められる、50℃、24時間経過後相当の有効ガラス厚さは、好ましくは4.2mm以上、より好ましくは4.5mm以上、より好ましくは4.7mm以上、より好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.2mm以上、より好ましくは5.5mm以上、より好ましくは6.0mm以上、更に好ましくは6.4mm以上、特に好ましくは6.5mm以上である。また、後述の実施例に記載の方法により求められる、50℃、10年経過後相当の有効ガラス厚さは、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは4.1mm以上、より好ましくは4.2mm以上、より好ましくは4.4mm以上、より好ましくは4.5mm以上、より好ましくは4.9mm以上、更に好ましくは5.0mm以上、特に好ましくは5.2mm以上である。これらの有効ガラス厚さの上限値は中間膜の厚さに依存するため定義されず、下限値は3.8mmである。
本発明の中間膜は、優れた透明性を有する合わせガラスをもたらすことができる。そのため、用途に応じて外層である無機ガラスの種類が変更された場合でも、本発明の合わせガラスは優れた透明性を有することができる。
より優れた透明性を合わせガラスにもたらしやすい観点から、中間膜に含まれる1つの積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。ヘイズの下限値は特に規定されない。1つの積層体のヘイズは、通常0.01%以上である。本発明の一実施態様では、ヘイズは0%以上、2%以下である。
前記ヘイズは、接着層(II)に含まれる樹脂の選択、接着層(II)に含まれる可塑剤の種類の選択若しくは可塑剤の含有量の低減、および/または中間膜の厚さの肉薄化により、前記上限値以下に調整できる。前記ヘイズは、例えば厚さ0.8mm以下(例えば0.8mm)の中間膜を用いて製造した合わせガラスについて、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定できる。
本発明の中間膜は、極めて低い着色性を有する合わせガラスをもたらすことができる。合わせガラスは可能な限り無色であり得る。
より低い着色性を合わせガラスにもたらしやすい観点から、中間膜に含まれる1つの積層体の黄色度(YI)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。前記黄色度は0以上である。本発明の一実施態様では、黄色度は0以上、2以下である。
前記黄色度は、接着層(II)に含まれる樹脂の選択、接着層(II)に含まれるポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位含有量の低減、および/または中間膜の厚さの肉薄化により、前記上限値以下に調整できる。前記黄色度は、例えば厚さ0.8mm以下(例えば0.8mm)の中間膜を用いて製造した合わせガラスについて、ヘイズメーターSH7000(日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS Z8722:2009に準拠して測定できる。
本発明の合わせガラスは、中間膜に起因して、優れた透明性を有することができるため、十分な合わせガラスの透明性を確保しつつ用途に応じて無機ガラスを選択することができる。本発明の合わせガラスのヘイズは特に限定されず、前述の中間膜のヘイズと同等のヘイズであることが好ましい。
本発明の合わせガラスは、中間膜に起因して、極めて低い着色性を有することができるため、十分な合わせガラスの透明性を確保しつつ用途に応じて無機ガラスを選択することができる。本発明の合わせガラスの黄色度は特に限定されず、前述の中間膜の黄色度と同等の黄色度であることが好ましい。
合わせガラスの安全性は、公知の通り、中間膜と外層のガラスとの間の接着力に依存する。この接着力は、ガラスの機械的な破壊の際にガラス破片が中間膜に接着したままであることが保証され、かつ角がとがったガラス破片が剥離することができない程度に高い方が好ましい。しかし、中間膜とガラスとの接着力が高すぎる場合、激突した物体が合わせガラスを貫通することがある。中間膜のガラスに対する接着力が適度に低い場合、中間膜が衝突箇所で引き延ばされながらガラスから部分的に剥離し、かつ変形することによって、衝突エネルギーが減衰し、衝突した物体の貫通は抑制される。即ち、合わせガラスにおけるガラスと中間膜の接着力は、ガラスが破損した際にガラス破片が中間膜に接着したままであることを保証する程度に高く、耐貫通性が低下しない程度に高すぎないことが好ましい。
このような観点から、圧縮剪断試験により評価した無機ガラスと中間膜との接着性は、好ましくは5MPa以上、35MPa以下、より好ましくは10MPa以上、30MPa以下、更に好ましくは15MPa以上、25MPa以下である。無機ガラスと中間膜との接着性は、例えば、接着層(II)に含まれるポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量の増加、および/または接着層(II)への接着性調整剤若しくはフィラーの添加により、前記範囲内に調整できる。無機ガラスと中間膜との接着性は、例えば、特開2006-13505に記載された圧縮剪断試験により測定できる。即ち、図3に示すように、合わせガラスを圧縮剪断試験機にセットし、圧縮剪断試験を行うことで測定できる。
中間膜と無機ガラスとの接着力および中間膜の耐熱性が不十分であると、合わせガラスの耐熱クリープ性が低下しやすい。本発明の中間膜は、優れた耐熱クリープ性を有する合わせガラスをもたらすことができる。合わせガラスの耐熱クリープ性は、荷重37kg/m、雰囲気温度100℃の条件での促進試験を1週間実施した際の合わせガラスに生じたズレの距離を測定することにより評価できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により評価できる。本発明の合わせガラスの耐熱クリープ性は、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。耐熱クリープ性が前記上限値以下であると、合わせガラスに熱ズレが生じて設置したガラスが脱落または移動する問題を防止しやすい。耐熱クリープ性は、接着層(II)の剪断貯蔵弾性率または溶融粘度を大きくすることにより、前記上限値以下に調整できる。
[合わせガラス]
本発明の中間膜は、2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる。無機ガラスとしては、例えば、フロートガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、強化ガラス、網入り板ガラスまたは熱線吸収板ガラス等の無機ガラスを使用できる。高い強度を要する用途においては、強化ガラスが好ましい。無機ガラスは、無色または有色のいずれであってもよい。2枚の無機ガラスの種類および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
2枚の無機ガラスの材料は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられ、ソーダライムガラスが好適である。
強化ガラスは風冷強化ガラス、風冷強化ガラスよりもガラス表面の圧縮応力(以下、表面圧縮応力またはCSとも称する)が低い(例えば、CSが50MPa以下の)半風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。風冷強化ガラス板は、圧縮応力層の深さ(以下、DOLとも称する)が一般的な化学強化ガラス板に比べて大きいため、風冷強化ガラス板を用いて製造した合わせガラスでは、飛び石等で生じる傷が圧縮応力層を貫通しにくい。また、半風冷強化ガラス板または化学強化ガラス板を用いて製造した合わせガラスでは、飛び石等で生じる傷から発生するクラックがガラス面内に進展しにくい。
風冷強化ガラスは、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化したものである。
風冷強化ガラスの製造方法としては、軟化温度付近まで加熱されたガラスを急冷し常温になった状態でガラスの厚さ方向に残留応力を発生させ、ガラス表面に圧縮応力層を形成させる周知の方法を採用できる。ガラス板の加熱温度は、典型的には、そのガラス板を構成する材料の歪点以上、軟化点以下の温度である。
化学強化ガラスは、化学処理によりガラス表面を強化したものである。化学処理の方法としては、例えばイオン交換法等がある。イオン交換法は、ガラスを処理液(例えば硝酸カリウム溶融塩)に浸漬し、ガラスに含まれるイオン半径の小さなイオン(例えばナトリウムイオン)をイオン半径の大きなイオン(例えばカリウムイオン)に交換することで、ガラス表面に圧縮応力を生じさせる。圧縮応力はガラスの表面全体に生じ、ガラスの表面全体に均一な深さの圧縮応力層が形成される。
ガラス表面のCSの大きさ、ガラス表面に形成されるDOLは、それぞれ、化学処理時間、および/または化学処理温度により調整できる。例えば、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、DOLが深くなる。また、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、最初はCSの大きさが大きくなるが、途中からCSの大きさが小さくなる。従って、DOLと、CSの大きさとは、一対一で対応しない。
ガラス表面には目に見えない傷が付いていることが多く、傷を起点とするガラスの割れを抑制するため、傷の深さよりも深い圧縮応力層が必要とされる観点から、DOLは10μmよりも大きいことが好ましい。DOLは、好ましくは20μm以上、より好ましくは28μm以上である。
化学強化ガラスは、一般的には、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56~75%、Alを1~20%、NaOを8~22%、KOを0~10%、MgOを0~14%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%含有する。以下、各成分について説明するが、%はモル%を意味する。
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主成分である。SiOの含有量は、通常56%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上、更に好ましくは65%以上である。また、SiOの含有量は、通常75%以下であり、好ましくは73%以下、より好ましくは71%以下である。SiOの含有量が前記下限値以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が前記上限値以下であると熔解性および成形性の点で優位である。
Alは化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用があり、特にCSを向上する作用が大きい。ガラスの耐候性を向上する成分としても知られている。また、フロート成形時にボトム面からの錫の浸入を抑制する作用がある。Alの含有量は、通常1%以上であり、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。また、Alの含有量は、通常20%以下であり、好ましくは17%以下、より好ましくは12%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下である。Alの含有量が前記下限値以上であると、所望のCSを得やすく、錫の浸入を抑制する効果を得やすい。一方、Alの含有量が前記上限値以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きく上昇しにくいため、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位になりやすい。
SiOおよびAlの含有量の合計SiO+Alは、好ましくは80%以下、より好ましくは79%以下、特に好ましくは78%以下であり、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上である。前記合計が前記上限値以下であると、高温でのガラスの粘性が増大して溶融が困難となることを抑制しやすい。前記合計が前記下限値以上であると、圧痕が付いた時でも良好なクラック耐性を示しやすい。
NaOはイオン交換により圧縮応力を形成させる必須成分であり、DOLを深くする作用がある。また、ガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、通常8%以上であり、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上である。また、NaOの含有量は、通常22%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは16%以下である。NaOの含有量が前記下限値以上であると、所望の圧縮応力を形成しやすく、NaOの含有量が前記上限値以下であると、十分な耐候性を得やすい。
Oは必須ではないが、イオン交換速度を増大し、DOLを深くする効果があるため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎると十分なCSが得られなくなる。KOを含有する場合、その含有量は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下である。KOの含有量が前記下限値以下であると、十分なCSを得やすい。
MgOは必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。MgOが含まれる場合、その含有量は、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、特に好ましくは3.6%以上である。また、MgOの含有量は、通常14%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。MgOの含有量が前記下限値以上であると、ガラスの良好な耐薬品性を得やすい。また、高温での熔解性が良好になりやすく、失透が起こりにくくなる。一方、MgOの含有量が前記上限値以下であると、失透の起こりにくさが維持されやすく、十分なイオン交換速度を得やすい。
ZrOは必須ではないが、一般に、化学強化でのCSを大きくする作用があることが知られている。しかし、少量のZrOを含有してもコスト増加の割には、その効果は大きくない。従って、コストが許す範囲で任意の割合のZrOを含有してよいが、ZrOを含有する場合、その含有量は5%以下であることが好ましい。
CaOは必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。CaOはアルカリイオンの交換を阻害する傾向があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有量を減らす、若しくは含まないことが好ましい。一方、耐薬品性を向上させるためには、好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上、特に好ましくは6%以上含有することが好ましい。CaOを含有する場合、その含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは9%以下、特に好ましくは8.2%以下である。CaOの含有量が前記上限値以下であると、十分なイオン交換速度が保たれやすく、所望のDOLを得やすい。
化学強化ガラスは任意にSrOを含んでもよい。SrOは、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げることができる。一方、SrOはイオン交換効率を低下させる作用があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有しないことが好ましい。SrOを含有する場合、その含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
化学強化ガラスは任意にBaOを含んでもよい。BaOは、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げることができる。一方、BaOはガラスの比重を重くする作用があるため、軽量化を意図する場合には含有しないことが好ましい。BaOを含有する場合、その含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
TiOは天然原料中に多く存在し、黄色の着色源となることが知られている。従って、ガラスの黄色度上昇を回避する観点から、TiOの含有量は、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
化学強化ガラスは、上述した成分以外の成分を含有してもよい。そのような成分の含有量の合計は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
無機ガラスの厚さは特に限定されず、例えば0.5~20mmである。無機ガラスの厚さが6mm以下であれば、合わせガラスの透明性はより高くなりやすく、また合わせガラスがより軽量になる。
無機ガラスは平坦な形状のみでなく、少なくとも一部に屈曲部または湾曲部を有する形状であってもよい。例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、カーナビゲーション等の機器における画像表示面では、一部に屈曲部または湾曲部を有する形状のガラスが採用されていることがあり、そのようなガラスとして、本発明の中間膜を用いて製造した合わせガラスを用いることができる。
無機ガラスには、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、任意に、導電構造、遮音構造、意匠またはデザイン層およびそれらの組み合わせといった構造が、無機ガラスの全面または一部に付与されていてもよい。
本発明における合わせガラスは、1枚で使用してもよいし、2枚以上組み合わせた状態で使用してもよい。2枚以上組み合わせた状態で使用する場合、合わせガラスは、例えば、無機ガラス/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/無機ガラス/接着層(II)/基材層(I)/接着層(II)/無機ガラスの構成を有する。合わせガラスを2枚以上組み合わせた状態で使用する場合、それらの合わせガラスを構成するそれぞれの材料および厚さは、相互に同じでもよいし、異なっていてもよい。
本発明の合わせガラスには、スペーサーが用いられてもよい。スペーサーを使用することで水分等の中間膜への侵入を防ぐことができる。スペーサーは、例えば、アルミニウムまたはステンレス等の金属製若しくは合金製、または樹脂製である。スペーサーの例としては、複層ガラス若しくは調光素子等に用いられている公知の枠状のスペーサー若しくは中空のパイプ材等が挙げられる。
[合わせガラスの製造方法]
本発明の合わせガラスは、従来公知の方法で製造できる。そのような方法の例としては、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、およびニップロールを用いる方法を挙げることができる。また、前記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げることができる。
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば1×10-6~3×10-2MPaの減圧下、60~200℃、特に80~160℃で無機ガラス、中間膜、無機ガラスをラミネートすることにより合わせガラスを製造できる。
真空バッグまたは真空リングを用いる場合、例えば欧州特許第1235683号明細書に記載されているように、約2×10-2MPaの圧力下、無機ガラス、中間膜、無機ガラスを100~160℃でラミネートすることにより合わせガラスを製造できる。
ニップロールを用いる場合、中間膜の流動開始温度以下の温度で、無機ガラス、中間膜、無機ガラスを重ねた状態でロールにより脱気した後、中間膜の流動開始温度に近い温度に加熱して無機ガラス、中間膜、無機ガラスを圧着することにより合わせガラスを製造できる。より具体的には、例えば、無機ガラス、中間膜、無機ガラスを重ねた状態で赤外線ヒーター等により30~70℃に加熱した後、ロールで脱気し、その後、50~150℃に加熱した後、無機ガラス、中間膜、無機ガラスをロールで圧着することにより合わせガラスを製造できる。
前記方法により仮圧着した後にオートクレーブに投入して本圧着を行う場合、オートクレーブ工程の運転条件は合わせガラスの厚さまたは構成により適宜選択してよい。オートクレーブ工程は、例えば、0.5~1.5MPaの圧力下、100~160℃で0.5~3時間実施できる。
無機ガラスと積層する中間膜が複数の積層体を含む場合は、先の[中間膜の製造方法]の段落で述べた通り、当該複数の積層体を公知の方法で積層して中間膜を製造し、上述した方法により無機ガラスと接合することで合わせガラスを製造できるが、当該複数の積層体を2枚の無機ガラスの間に重ねて配置し、それらを上述した方法により接合することで合わせガラスを製造することもできる。
以下、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例および比較例における各物性は、下記方法により測定または評価した。
[曲げ剛性]
後述の実施例および比較例において用いた各積層体から、長さ40mm、幅30mmのシートを作製した。作製した各シートから、JIS-7017を参考にして40mm×10mmの試験片を3枚ずつ切り出した。得られた各試験片についてオートグラフ(島津製作所株式会社製)を用いて3点曲げ試験を行い、支点間距離を16mmとしたときの25℃の曲げ弾性率を測定した。各積層体について、測定により得られた曲げ弾性率の平均値を、積層体の曲げ弾性率として採用した。曲げ弾性率および厚さを用い、下記式(2)に従って各積層体の25℃における曲げ剛性を計算した。ポアソン比として0.38を用いた。
Figure 2022149807000009
[剪断緩和弾性率G(t=f-1)]
後述の実施例および比較例において製造した中間膜から直径8mmの試験片を切り出した。回転型レオメーター「ARES」(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用いて、周波数0.1~100Hz、測定温度-50~250℃、ひずみ<1%、昇温測定、昇温速度3℃/分、窒素雰囲気下の測定条件にて剪断動的粘弾性測定を行うことで、基準温度50℃での剪断貯蔵弾性率G'(f)および剪断損失弾性率G''(f)のマスターカーブを取得した。時間-温度換算則を用い、得られたマスターカーブから、f=1.2×10-5Hz(50℃で24時間経過した時点での剪断緩和弾性率に相当する剪断緩和弾性率を求める場合の周波数)およびf=3.2×10-9Hz(50℃で10年経過した時点での剪断緩和弾性率に相当する剪断緩和弾性率を求める場合の周波数)における剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)を各々、下記式(1)により求めた。
G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
式(1)中、fは、1.2×10-5Hzの周波数(G(t=f-1)を求める場合)または3.2×10-9Hzの周波数(G(t=f-1)を求める場合)である。また、G'(f)は50℃および各周波数における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃および各周波数における剪断損失弾性率(MPa)である。
[剪断緩和弾性率G(t)]
後述の実施例13において用いた中間膜の各層の厚さを、厚み計で測定した。また、前記各層の剪断緩和弾性率を、上述した剪断動的粘弾性測定と同様にして測定した。実施例13において製造した中間膜全体の厚さを厚み計で測定し、中間膜における各層の厚さ比(中間膜における各層の厚さの割合)を算出した。
求めた各層の厚さ比および剪断緩和弾性率を用いて、中間膜の剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)を下記式(3)により求めた。
Figure 2022149807000010
式(3)中、各層の剪断緩和弾性率は、50℃、1.2×10-5Hzの周波数(G(t)を求める場合)または50℃、3.2×10-9Hzの周波数(G(t)を求める場合)における剪断緩和弾性率であり、Mは1である。
[剪断伝達係数]
後述の実施例および比較例において用いた中間膜の各層および中間膜全体の厚さを厚み計で測定した。
後述の実施例および比較例において製造した各合わせガラスについて、4点曲げ試験を実施した。支点間距離は0.3mとした。
下記式(4)により、各中間膜の50℃、1.2×10-5Hzにおける剪断伝達係数Γおよび50℃、3.2×10-9Hzにおける剪断伝達係数Γを求めた。
Figure 2022149807000011
上記式中、h=0.5×(h+h)+hであり=h ×h×h÷(h+h)であり、hおよびhは各々2枚のフロートガラスの厚さ(単位:mm)であり、hは中間膜の厚さ(単位:mm)であり、Eはフロートガラスのヤング率(単位:MPa)であり、G(t=f-1)は、上述した方法により求めたG(t=f-1)(剪断伝達係数Γを求める場合)またはG(t=f-1)(剪断伝達係数Γを求める場合)であり、aは4点曲げ試験の支点間距離(単位:m)である。
[落錘衝撃試験]
中間膜の落錘衝撃試験は、ASTM D3763に準拠して行った。具体的には、後述の実施例および比較例において製造した各中間膜から、縦60mm×横60mmの試験片を切り出し、落錘衝撃試験機(インストロン社製CEAST9350)を用い、測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m・s-1の条件で落錘衝撃試験を行った。試験片貫通の際の、ストライカ先端が試験片に接した(試験力を感知した)瞬間から貫通する(試験力がゼロに戻る)までのSSカーブの面積から貫通エネルギーを算出し、中間膜の耐貫通性とした。
[溶融粘度]
後述の実施例および比較例において用いた各基材層(I)を構成する各樹脂材料の溶融粘度(η)および各接着層(II)を構成する各樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)は、JIS K 7199に準拠して、温度230℃、剪断速度60s-1で測定した。
[合わせガラスの4点曲げ試験]
後述の実施例および比較例において製造した幅305mm×長さ610mmの各合わせガラスを用い、負荷スパン150mm、支持スパン300mm、荷重1kN、負荷速度0.1mm/秒、試験温度50℃、最大試験時間24時間の条件で、ISO1288-4:2016に準拠した4点曲げ試験を行い、荷重-たわみの挙動を測定した。荷重をかけてから24時間後の最も変形量の大きい中心部を撓み量として記録した。
[合わせガラスの有効ガラス厚さ]
非特許文献1に記載の計算方法により、後述の実施例および比較例において製造した各合わせガラスについて、50℃、24時間経過後相当の有効ガラス厚さおよび50℃、10年経過後相当の有効ガラス厚さを求めた。計算に用いるパラメーターであるフロートガラスの厚さおよびヤング率並びに支持スパンとしては、先の段落[合わせガラスの4点曲げ試験]と同じパラメーターを用いた。
[合わせガラスの耐熱クリープ性の評価]
後述の実施例および比較例において製造した各積層体を、縦135mm×横50mmの寸法に切り出した。次に、図4に示すように、縦165mm×横50mm×厚さ3mmのフロートガラス51および52の間に、これらのフロートガラスの縦165mmのうち135mmが、基材層(I)62の両面に接着層(II)61を備えた積層体からなる中間膜71を介して付着するよう中間膜71を挟み、合わせガラス50を製造した。なお、合わせガラスの製造手順は、後述の実施例および比較例に記載した製造手順と同じである。
続いて、図5に示すように、合わせガラス50のガラス51側に重さ250gの鉄板81を瞬間接着剤91により貼り合わせ、鉄板を貼り合わせた合わせガラス100を製造した。鉄板を貼り合わせた合わせガラス100を、スタンド111に立て掛けて、100℃のチャンバー内で1週間放置した。放置後に、ガラス51がずり落ちた距離を測定し、前記距離を下記基準に基づいて評価し、この評価を耐熱クリープ性の評価とした。
A:ガラス51がずり落ちた距離が1mm以下である。
B:ガラス51がずり落ちた距離が1mmを超える。
[合成例1:ポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)の合成]
還流冷却器、温度計およびイカリ型撹拌翼を備えた5リットル容のガラス製容器に、イオン交換水4000g、ポリビニルアルコール(粘度平均重合度2000、けん化度94.0モル%)400gを仕込み、95℃に昇温してポリビニルアルコールを完全に溶解させた。得られた溶液を120rpmで撹拌下、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド246gおよび20%塩酸水溶液300mLを添加した。次いで、60分かけて70℃まで昇温し、70℃にて100分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、更に過剰のイオン交換水で洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)を得た。上記手順を繰り返して、実験に必要な量のポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)を得た。ポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)をJIS K 6728に従って分析したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は76.0モル%、酢酸ビニル単位含有量の含有量は5.0モル%であり、ビニルアルコール単位含有量は19.0モル%であった。
[合成例2:ポリビニルブチラール樹脂(PVB-2)の合成]
還流冷却器、温度計およびイカリ型撹拌翼を備えた5リットル容のガラス製容器に、イオン交換水4000g、ポリビニルアルコール(粘度平均重合度900、けん化度94モル%)400gを仕込み、95℃に昇温してポリビニルアルコールを完全に溶解させた。得られた溶液を120rpmで撹拌下、7℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド255gおよび20%塩酸水溶液350mLを添加した。次いで、60分かけて55℃まで昇温し、55℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄した後、水酸化ナトリウム水溶液を添加して残存する酸を中和し、更に過剰のイオン交換水で洗浄し、乾燥してポリビニルブチラール樹脂(PVB-2)を得た。上記手順を繰り返して、実験に必要な量のポリビニルブチラール樹脂(PVB-2)を得た。ポリビニルブチラール樹脂(PVB-2)をJIS K 6728に従って分析したところ、平均ブチラール化度(平均アセタール化度)は76.0モル%、酢酸ビニル単位含有量の含有量は5.0モル%であり、ビニルアルコール単位含有量は19.0モル%であった。
[ポリカーボネート樹脂組成物(PC-1)の調製]
100℃で24時間乾燥したポリカーボネート樹脂「SDPOLYCA PCX」(住化ポリカーボネート株式会社製)と、80℃で24時間乾燥した市販のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとを、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの仕込み比が39質量%、Tg=120℃となるように混合し、ポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物(PC-1)を調製した。
[ポリカーボネート樹脂材料(PC-2)]
100℃で24時間乾燥した「SDPOLYCA 301-4」(住化ポリカーボネート株式会社製)を、基材層を構成する樹脂材料(PC-2)として使用した。
[メタクリル樹脂組成物(PMMA)]
80℃で24時間乾燥したメタクリル樹脂組成物「パラペットGR-00100」(株式会社クラレ製)を、基材層を構成する樹脂材料(PMMA)として使用した。
[ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)の調製]
60℃で24時間乾燥したポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)83.0質量部、およびアジピン酸3-メチル-1,5-ペンタンジオールを主成分として含むカルボン酸ポリエステル系可塑剤「クラレポリオールP-510」(株式会社クラレ製)17.0質量部を、東洋精機社製ラボプラストミル4M150(150℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)を得た。上記手順を繰り返して、実験に必要な量のポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)を得た。
[ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-4)の調製]
ポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)およびクラレポリオールP-510の量を各々77.0質量部および23.0質量部に変更したこと以外はポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)の調製の手順と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-4)を得た。
[ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-5)の調製]
60℃で24時間乾燥したポリビニルブチラール樹脂(PVB-1)55.0質量部と、60℃で24時間乾燥したポリビニルブチラール樹脂(PVB-2)40.0質量部と、クラレポリオールP-510 5.0質量部を、東洋精機社製ラボプラストミル4M150(150℃、60rpm、5分)で溶融混錬し、ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-5)を得た。上記手順を繰り返して、実験に必要な量のポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-5)を得た。
[基材層(I-1)~(I-7)、(I-11)および(I’-1)を構成する樹脂シートのロール体の作製]
45mmφ単軸押出機を用い、280℃の樹脂温度で、ポリカーボネート樹脂材料(PC-2)を単層用Tダイから押出し、表面温度140℃のロールで引き取り、厚さ変動が大きい端部を切断して、幅350mmで、表1に記載の厚さを有する樹脂シートのロール体を得た。
[基材層(I-12)を構成する樹脂シートのロール体の作製]
45mmφ単軸押出機を用い、265℃の樹脂温度で、メタクリル樹脂組成物(PMMA)を単層用Tダイから押出し、表面温度110℃のロールで引き取り、厚さ変動が大きい端部を切断して、幅350mm、厚さ0.26mmの樹脂シートのロール体を得た。
[基材層(I-13)を構成する樹脂シートのロール体の作製]
ポリカーボネート樹脂材料(PC-2)に代えてポリカーボネート樹脂組成物(PC-1)を用いたこと以外は基材層(I-1)と同様にして、樹脂シートのロール体を得た。
[基材層(I’-2)を構成する樹脂シートのロール体]
市販の厚さ0.13mmの延伸ポリエチレンレテフタレートフィルム「コスモシャインE5100」(東洋紡株式会社製)を、基材層(I’-2)のロール体として使用した。
[基材層(I’-3)~(I’-5)を構成する樹脂シートの作製]
65mmφ単軸押出機を用い、280℃の樹脂温度で、ポリカーボネート樹脂材料(PC-2)を単層用Tダイから押出し、表面温度140℃のロールで引き取り、厚さ変動が大きい端部を切断して、幅350mmで、表1に記載の厚さを有する樹脂シートを得た。いずれの樹脂シートも曲げ剛性が大きく、ロール状に巻き取ることが困難であったため、長さ約1m毎に切断して樹脂シートを得た。
[接着層(II-3)~(II-5)および(II-13)並びに(II’-1)~(II’-4)および(II’-6)を構成する樹脂シートのロール体の作製]
25mφ単軸押出機「VGM25-28EX」(G&M Engineering Company Limited製)を用い、190℃の樹脂温度で、表1に記載の通りポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)または(PVB-5)を、表1に記載の厚さとなるよう単層用Tダイから押出し、表面温度20℃のロールで引き取り、幅300mmの樹脂シートのロール体を得た。
[接着層(II-11)の作製]
25mφ単軸押出機「VGM25-28EX」(G&M Engineering Company Limited製)を用い、80℃の樹脂温度で、EVA樹脂(ウルトラセン635、東ソー株式会社製)100質量部、架橋剤としてのパーブチルE(日本油脂株式会社製、t-ブチルパーオキシ-2-エチルへキシルモノカーボネート)3質量部、シランカップリング剤としてのKBM503(信越化学工業株式会社製)1質量部を単層用Tダイから押出し、表面温度80℃のロールで引き取り、幅300mm、厚さ0.025mmの樹脂シートのロール体を得た。
[接着層(II’-5)の作製]
無黄変熱可塑性ポリウレタン樹脂シートであるArgotec ST6050(SWM社製)を、2枚のステンレス鋼板(縦35cm×横35cm)の間に設置した型枠(縦30cm×横30cm×高さ0.80mm)内に配置した。これを熱プレス機(株式会社神藤金属工業製)にセットした。130℃で3分間、無黄変熱可塑性ポリウレタン樹脂シートに圧力をかけず樹脂を加熱した。次いで、180秒間、90kgf/cm(約8.8MPa)の圧力で樹脂シートを熱プレスした。その後、直ちにステンレス板および型枠を23℃の冷却プレス機にセットした。冷却プレス機で樹脂シートを冷却しながら、樹脂シートに圧力を印加した。型枠内の樹脂シートを切り出すことにより、縦30cm×横30cm×厚さ0.05mmの樹脂シートを得た。
[実施例1]
10L容のガラス製容器において、酢酸メチル2125gおよびメタノール2125gを混合し、室温に冷却した。次いで、ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)750gを添加し、内容物を常温で完全に溶解させてポリビニルブチラール樹脂組成物溶液を調製した。続いて、基材層(I-1)を構成する樹脂シートのロール体から樹脂シートを引き出し、その上に、グラビアコーターを用いて、乾燥後の厚さが0.010mmとなるようポリビニルブチラール樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥温度80℃、搬送速度1m/分、炉長約1.5mの乾燥炉で乾燥した後、直径6インチの紙芯に巻き取ることで、基材層(I-1)の一方の面に、接着層(II-1)が付与された樹脂シートのロール体を得た。同様にして、基材層(I-1)の他方の面(接着層(II-1)が付与されていない面)に、乾燥後の厚さが0.010mmとなるようポリビニルブチラール樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥し、直径6インチの紙芯に巻き取り、ロール体を得た。得られたロール体から樹脂シートを引き出し、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製)により、140℃のロール間に通して圧着した後、6インチの紙芯に巻き取り、基材層(I-1)の両面に接着層(II-1)を備えた積層体のロール体を得た。搬送速度は1.0m/分、圧力は0.15MPaであった。
次いで、積層体のロール体から積層体を引き出し、積層体を305mm×610mmの寸法に切り出した。切り出した積層体を、恒温恒湿室(20℃、65%RH)で24時間調湿し、厚さ3.0mm、ヤング率7.16×10MPa、寸法305mm×610mmの2枚の平坦なフロートガラスの間に配置した。これをゴムバックに入れた後、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製)に投入し、熱板温度165℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件で脱気することにより、フロートガラスと積層体(中間膜)とを仮圧着した。次いで、ゴムバックから取り出した仮圧着物をオートクレーブで圧縮することにより、合わせガラスを得た。オートクレーブの条件は、圧力12バールおよび温度140℃で合計90分以内とした。
[実施例2]
基材層(I-1)を構成する樹脂シートのロール体に代えて基材層(I-2)を構成する樹脂シートのロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを製造した。
[実施例3~5および11並びに比較例1~2]
表1または表2に記載した各積層体の構成となるよう、基材層を構成する樹脂シートのロール体および2層の接着層を構成する樹脂シートのロール体から樹脂シートを引き出し、基材層の両面に2層の接着層が配置されるように重ね合わせ、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製)により、140℃のロール間に通して圧着した後、6インチの紙芯に巻き取り、各積層体のロール体を得た。搬送速度は1.0m/分、圧力は0.15MPaであった。その後、得られた各ロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各合わせガラスを製造した。
[実施例6~7および12]
表1に記載した各積層体の構成となるよう、実施例1と同様にして基材層の両面に接着層を構成するポリビニルブチラール樹脂組成物溶液を塗布して乾燥し、熱ラミネートし、基材層の両面に接着層を備えた積層体のロール体を得た。その後、得られた各ロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各合わせガラスを製造した。
[実施例8]
基材層(I-8)を構成する樹脂材料であるポリカーボネート樹脂組成物(PC-1)を65mmφ単軸押出機(東芝機械株式会社製)により溶融し、接着層(II-8)を構成する樹脂材料であるポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)を150mmφ単軸押出機(東芝機械株式会社製)により溶融し、基材層(I-8)の両面に接着層(II-8)が配置されるようマルチマニホールド型ダイスを介してTダイから樹脂材料を共押出しし、6インチの紙芯に巻き取り、基材層(I-8)の両面に接着層(II-8)を備えた積層体のロール体を得た。両樹脂材料の製膜温度は230℃とし、基材層の厚さが0.40mm、接着層の厚さが1層あたり0.025mmとなるよう吐出樹脂量を調整した。
次いで、得られたロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを製造した。
[実施例9]
ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)に代えてポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-4)を用いたこと、並びに基材層および接着層の厚さを表1に記載の通り変更したこと以外は実施例8と同様にして、基材層(I-9)の両面に接着層(II-9)を備えた積層体のロール体を得た。
次いで、得られたロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを製造した。
[実施例10]
ポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-3)に代えてポリビニルブチラール樹脂組成物(PVB-5)を用いたこと、並びに接着層の厚さを表1に記載の通り変更したこと以外は実施例8と同様にして、基材層(I-10)の両面に接着層(II-10)を備えた積層体のロール体を得た。
次いで、得られたロール体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを製造した。
[実施例13]
表1に記載した積層体の構成となるよう、基材層を構成する樹脂シートのロール体および2層の接着層を構成する樹脂シートのロール体から樹脂シートを引き出した。各層の厚さ並びに剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)を測定した。次いで、基材層(I-13)および2層の接着層(II-13)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、積層体のロール体および合わせガラスを製造した。中間膜全体の厚さは、得られた積層体の厚さであり、厚み計で測定した。
[比較例3~4]
表2に記載した積層体の構成となるよう、基材層を構成する樹脂シートの両面に2層の接着層が配置されるように重ね合わせ、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製)により、140℃のロール間に通して圧着し、積層体を得た。搬送速度は1.0m/分、圧力は0.15MPaであった。その後、積層体のロール体から引き出した積層体に代えて、得られた積層体を用いたこと以外は比較例1と同様にして、合わせガラスを製造した。
[比較例5]
基材層(I’-5)および2層の接着層(II’-5)を用いたこと場合以外は比較例3と同様にして、積層体を得た。
次いで、得られた積層体を305mm×610mmの寸法に切り出した。切り出した積層体を、恒温恒湿室(20℃、65%RH)で24時間調湿し、厚さ3.0mm、ヤング率7.16×10MPa、寸法305mm×610mmの2枚の平坦なフロートガラスの間に配置した。これをゴムバックに入れた後、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製)に投入し、熱板温度100℃、真空引き時間12分、プレス圧力50kPa、プレス時間17分の条件で脱気することにより、フロートガラスと積層体(中間膜)とを仮圧着した。次いで、ゴムバックから取り出した仮圧着物をオートクレーブで圧縮することにより、合わせガラスを得た。オートクレーブの条件は、圧力6バールおよび温度100℃で合計90分以内とした。
[比較例6]
基材層を用いず、1層の接着層(II’-6)をそのまま中間膜として用いたこと場合以外は実施例3と同様にして、合わせガラスを製造した。
実施例および比較例において製造した積層体の構成、並びに積層体、中間膜および合わせガラスの評価結果を表1および表2に示す。
Figure 2022149807000012
Figure 2022149807000013
表1に示されている通り、実施例1~13における中間膜は、高い剪断伝達係数および高い耐貫通性を有し、これらを用いた合わせガラスは、小さい4点曲げ撓み、高い有効ガラス厚さ、および優れた耐熱クリープ性を有していた。これは、実施例1~13における中間膜が、優れた耐貫通性および耐熱性、並びに高温で長期間使用する用途においても十分な強度(特に曲げ強度)を有する合わせガラスをもたらすことを示している。
また、実施例1~13における中間膜は、長尺の樹脂シートとして製造した場合に6インチという比較的小さい直径の巻き芯に良好に巻回することができた。更に、巻き戻した後に中間膜に巻き癖が残留しにくく、かつ中間膜に撓みが生じにくかった。よって、実施例1~13における中間膜は合わせガラス製造時の取扱性に優れ、向上した作業効率を達成することができた。
実施例8~10における積層体は、溶融粘度(η)が1×10~1×10Pa・sの範囲内であり、溶融粘度(η)および(η)がそれぞれ1×10~1×10Pa・sの範囲内であり、溶融粘度比η/ηおよびη/ηが1.0~4.0の範囲内である実施態様である。また、基材層(I)の厚さに対して接着層(II)の厚さを薄く設計している。実施例8~10における積層体は、共押出しにより良好に製膜された。
実施例10と13とは、基材層を構成する樹脂材料の種類および厚さ、接着層を構成する樹脂材料の種類および厚さ、並びに中間膜の構成(中間膜が1つの積層体からなる構成)が同じ実施例である。表1の結果から、実施例10における中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)が、実施例13における中間膜の剪断緩和弾性率G(t)およびG(t)とそれぞれ同等であることが分かる。
一方、特定の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)並びに特定の曲げ剛性を有さない比較例1、3および5における中間膜、特定の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)を有さない比較例2における中間膜、特定の剪断緩和弾性率G(t=f-1)並びに特定の曲げ剛性を有さない比較例4における中間膜、特定の剪断緩和弾性率G(t=f-1)およびG(t=f-1)を有さず、基材層を備えない比較例6における中間膜は、低い剪断伝達係数を有し、これらを用いた合わせガラスは、大きい4点曲げ撓み、および低い有効ガラス厚さを有していた。これは、比較例1~6における中間膜が、高温で長期間使用する用途において不十分な強度しか有さない合わせガラスをもたらすことを示している。
また、比較例5では、耐熱性にも劣る合わせガラスがもたらされた。
比較例3~5における積層体は、ロール状に巻くことができなかった。これは、合わせガラス製造時の劣った取扱性および劣った作業効率性を招いた。
本発明の合わせガラスは、優れた耐貫通性および耐熱性に加えて、高温で長期間使用する用途においても十分な強度を有する。従って、本発明の合わせガラスは、乗物用途の合わせガラス(例えば、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス等)または建築・構造用途(例えば、ファサード、外壁若しくは屋根のためのラミネート、パネル、ドア、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、表示窓、バルコニー、手摺壁等の建材、会議室の仕切りガラス部材、ソーラーパネル等)の合わせガラスとして、特に高温かつ長期間使用される建築・構造用途の合わせガラスとして、好適に使用できる。
11 Tダイ
12 第1冷却ロール
13 第2冷却ロール
14 第3冷却ロール
15 引取りロール
16 積層体
21 無機ガラス
31 接着層(II)
32 基材層(I)
41 中間膜
50 耐熱クリープ性の評価に用いる合わせガラス
51 フロートガラス
52 フロートガラス
61 接着層(II)
62 基材層(I)
71 中間膜
81 鉄板
91 瞬間接着剤
100 鉄板を貼り合わせた合わせガラス
111 スタンド

Claims (18)

  1. 2枚の無機ガラスの間に挟持して用いる中間膜であって、
    中間膜は、硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に、接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
    下記式(1):
    剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
    [式(1)中、fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]
    で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.80MPa以上であり、
    上記式(1)[式(1)中、fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.20MPa以上であり、
    下記式(2):
    Figure 2022149807000014
    で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、70N・mm以下である、中間膜。
  2. 中間膜に含まれるm層の基材層、および2m層の接着層の各層の剪断緩和弾性率と該各層の厚さ比とを用いて求められ、下記式(3):
    Figure 2022149807000015
    [式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、1.2×10-5Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7の整数である]
    で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は0.80MPa以上であり、
    上記式(3)[式(3)中の各層の剪断緩和弾性率は50℃、3.2×10-9Hzにおける剪断緩和弾性率であり、Mは1~7の整数である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t)は0.20MPa以上である、請求項1に記載の中間膜。
  3. 上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)のいずれの厚さより大きい、請求項1または2に記載の中間膜。
  4. 上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)の合計厚さより大きい、請求項1~3のいずれかに記載の中間膜。
  5. 上記中間膜を厚さ3.0mm、ヤング率7.16×10MPaの2枚のフロートガラスの間に挟持してなる合わせガラスの、支点間距離0.3mの4点曲げ試験において、
    下記式(4):
    Figure 2022149807000016
    [式(4)において、h=0.5×(h+h)+hであり=h ×h×h÷(h+h)であり、hおよびhは各々2枚のフロートガラスの厚さ(単位:mm)であり、hは中間膜の厚さ(単位:mm)であり、Eはフロートガラスのヤング率(単位:MPa)であり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)であり、aは4点曲げ試験の支点間距離(単位:m)である]
    で示される中間膜の剪断伝達係数Γは0.10以上であり、
    上記式(4)[式(4)において、hs、、h、h、h、Eおよびaは上記で説明した通りであり、G(t=f-1)は上記G(t=f-1)(単位:MPa)である]で示される中間膜の剪断伝達係数Γは0.02以上である、請求項1~4のいずれかに記載の中間膜。
  6. ASTM D3763に準拠した落錘衝撃試験において、測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m・s-1の条件で測定した中間膜の耐貫通性は12J以上である、請求項1~5のいずれかに記載の中間膜。
  7. 基材層(I)は、硬質樹脂としてポリカーボネート樹脂を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の中間膜。
  8. 上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、接着性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の中間膜。
  9. 上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、可塑剤を更に含む、請求項1~8のいずれかに記載の中間膜。
  10. 可塑剤は、カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群から選択される1以上である、請求項9に記載の中間膜。
  11. 上記積層体において、JIS K 7199に準拠して温度230℃、剪断速度60s-1で測定した、基材層(I)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)は1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、各接着層(II)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)はそれぞれ1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、これらの溶融粘度比(η/η)および(η/η)は1.0以上、4.0以下である、請求項1~10のいずれかに記載の中間膜。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載の中間膜の製造方法であって、基材層(I)の両面に接着層(II)を共押出しにより設けることで積層体を作製することを含む、方法。
  13. 無機ガラス、中間膜、無機ガラスがこの順に積層された合わせガラスであって、
    中間膜は、硬質樹脂を含有する基材層(I)の両面に、接着性樹脂を含有する接着層(II)を備えた積層体を含み、
    下記式(1):
    剪断緩和弾性率G(t=f-1)=G'(f)-0.4G''(0.5f) (1)
    [式(1)中、fは1.2×10-5Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]
    で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.80MPa以上であり、
    上記式(1)[式(1)中、fは3.2×10-9Hzの周波数であり、G'(f)は50℃における剪断貯蔵弾性率(MPa)であり、G''(0.5f)は50℃における剪断損失弾性率(MPa)である]で示される中間膜の剪断緩和弾性率G(t=f-1)は0.20MPa以上であり、
    下記式(2):
    Figure 2022149807000017
    で示される積層体の25℃における曲げ剛性は、6N・mm以上、70N・mm以下である、合わせガラス。
  14. 上記積層体において、基材層(I)の厚さは2層の接着層(II)の合計厚さより大きい、請求項13に記載の合わせガラス。
  15. 上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、接着性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有する、請求項13または14に記載の合わせガラス。
  16. 上記積層体において、少なくとも一方の接着層(II)は、可塑剤を更に含む、請求項13~15のいずれかに記載の合わせガラス。
  17. 可塑剤は、カルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸ポリエステル系可塑剤、炭酸ポリエステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、およびヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物からなる群から選択される1以上である、請求項16に記載の合わせガラス。
  18. 上記積層体において、JIS K 7199に準拠して温度230℃、剪断速度60s-1で測定した、基材層(I)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)は1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、各接着層(II)を構成する樹脂材料の溶融粘度(η)および(η)はそれぞれ1×10Pa・s以上、1×10Pa・s以下であり、これらの溶融粘度比(η/η)および(η/η)は1.0以上、4.0以下である、請求項13~17のいずれかに記載の合わせガラス。
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