JPWO2017170736A1 - アイオノマー積層シートとその製造方法および積層体 - Google Patents

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Abstract


本発明は、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れた積層シートを提供する。積層シート(10X)は、メタクリル系樹脂とフェノキシ系樹脂とを含む熱可塑性樹脂層(11)と、熱可塑性樹脂層(11)に隣接したアイオノマー層(12)とを含む。本発明の積層体(20X)は、基材(21)上に、基材(21)にアイオノマー層(12)が隣接して、積層シート(10)が積層されたものである。

Description

本発明は、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含む積層シートとその製造方法、および積層体に関する。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体のイオン中和誘導体(以下、単に「アイオノマー」と略記する場合がある。)は、靭性、反発弾性、耐寒性、耐摩耗性、透明性、および熱接着性等に優れる。かかるアイオノマーは、ゴルフボールカバー材、包装材、鋼線被膜材、およびガラス中間膜等、基材へ接着して使用する用途に広く用いられている。
基材とアイオノマーとの接着は、アイオノマー分子内のカルボキシル基と基材に存在する極性基間での水素結合が主である。そのため、アイオノマーは特に、金属、紙、およびポリアミド等の極性ポリマー等に対して良好な接着性を示す。また、アイオノマーは分子内に非極性のエチレン鎖を多数有するため、ポリオレフィン等の非極性基材に対しても良好な接着性を示す。しかしながら、アイオノマーは、(メタ)アクリル系樹脂のような比較的極性が弱いポリマーとは接着し難いため、その用途範囲に制限がある。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを示す。
特許文献1には、非極性ポリオレフィンのセグメントとアルキルメタクリレートからなる極性セグメントとを有するセグメント化ポリマーからなる結合層を介して、ポリオレフィン基体と極性ポリマーとを接着する方法が開示されている(請求項1)。極性ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレートが挙げられている(請求項6)。
特許文献2には、カルボキシル基、酸無水基、水酸基、およびグリシジル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を含有する変性オレフィン系重合体からなる接着層を介して、(メタ)アクリル系重合体とオレフィン系重合体とを積層する方法が開示されている(請求項1、段落0007)。
特許文献3には、エポキシ系、ウレタン系、酢酸ビニル系、シリコン系、およびクロロプレン系等の接着剤層を介して、ポリオレフィン系樹脂基材シートに(メタ)アクリル系樹脂シートを積層した積層シート(化粧シート)が開示されている(請求項1、段落0031)。
特許文献4には、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸無水物、および酢酸ビニルの中から選ばれる少なくとも1種の化合物とエチレンとを重合してなるエチレン系共重合体を含むオレフィン系樹脂層と(メタ)アクリル系樹脂層とを直接接着した積層シートが開示されている(請求項1)。
特許文献5には、ガラスシートおよびアイオノマー中間層シートを含むガラスラミネートが開示されている(請求項1)。
特開平6−256535号公報 特開平9−193189号公報 特開2000−25168号公報 特開2000−33676号公報 特表2012−519646号公報
特許文献1〜4はいずれも、(メタ)アクリル系樹脂とオレフィン系樹脂とを接着層を介して/または介さずに積層する技術に関する。特許文献5は、ガラスシートとアイオノマー層とを積層する技術に関する。このように、従来は、(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂層とアイオノマー層との積層に関する報告はなされていない。アイオノマー分子中のイオン架橋が(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂との相溶性を低下させ、アイオノマー/(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂間の接着を阻害すると考えられる。(メタ)アクリル系樹脂を含む樹脂層とアイオノマー層とを良好に接着できれば、各種用途に有用である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れた積層シートを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ね、フェノキシ系樹脂とアイオノマーとの接着性が良好であることを見出し、この知見を踏まえて本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]の積層シートとその製造方法および積層体を提供する。
[1] メタクリル系樹脂とフェノキシ系樹脂とを含む熱可塑性樹脂層と、当該熱可塑性樹脂層に隣接したアイオノマー層とを含む、積層シート。
[2] 前記熱可塑性樹脂層が、50〜80質量%の前記メタクリル系樹脂と50〜20質量%の前記フェノキシ系樹脂とを含む、[1]の積層シート。
[3] 前記フェノキシ系樹脂がビスフェノールA型フェノキシ系樹脂である、[1]または[2]の積層シート。
[4] 前記アイオノマー層が、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体のイオン中和誘導体であるアイオノマーを含む、[1]〜[3]のいずれかの積層シート。
[5] 前記共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位の含有量が2〜30質量%である、[4]の積層シート。
[6] [1]〜[5]のいずれかの積層シートの前記アイオノマー層が、基材上に隣接して積層された、積層体。
[7] 前記基材が、ガラス、金属、セラミック、木材、紙、不織布、織布、皮革、または樹脂を含む、[6]の積層体。
[8] 前記熱可塑性樹脂層および前記アイオノマー層を溶融共押出しにより積層する、[1]〜[5]のいずれかの積層シートの製造方法。
一般的に、薄膜成形体としては、厚さ5〜250μmの平面状成形体(主に「フィルム」に分類される。)および250μmより厚い平面状成形体(主に「シート」に分類される。)等が挙げられる。本明細書では、フィルムとシートとを明確に区別せず、両者を合わせて「シート」と称す。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)、メルトフローレート(MFR)、およびガラス転移温度(Tg)等の各種パラメータは、[発明を実施するための形態]または[実施例]の項に記載の方法にて測定される測定値を示す。
本明細書において、任意の数値範囲A〜Bは、A以上B以下の数値範囲を示す。
本発明によれば、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れた積層シートを提供することができる。
本発明に係る一実施形態の積層シートの模式断面図である。 本発明に係る他の実施形態の積層シートの模式断面図である。 本発明に係る一実施形態の積層体の模式断面図である。 本発明に係る他の実施形態の積層体の模式断面図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。
「積層シート」
本発明の積層シートは、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層(以下、単に「熱可塑性樹脂層」と略記する場合がある。)と、この熱可塑性樹脂層に隣接したアイオノマー層とを含む積層シートである。
本発明の積層シートは、各種基材に積層して、各種基材の表皮材として用いることができる。本発明の積層シートは、各種基材の表面保護シートまたは意匠性付与シート等として好適に用いることができる。
図1に、本発明に係る一実施形態の積層シートの模式断面図を示す。
図中、符号10Xは本実施形態の積層シート、符号11はメタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層、符号12はアイオノマー層をそれぞれ示す。図示例の積層シート10Xは、1層の熱可塑性樹脂層11と1層のアイオノマー層12とからなる2層構造シートである。なお、本発明の積層シートは2層構造に限定されない。本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂層11を複数含んでいてもよいし、アイオノマー層12を複数含んでいてもよい。少なくとも1層の熱可塑性樹脂層11と少なくとも1層のアイオノマー層12との積層順序も任意である。本発明の積層シートは、他の任意の層を含んでいてもよい。
図2に、本発明に係る他の実施形態の積層シートの模式断面図を示す。この積層シートは、他の樹脂層を含む態様である。図中、符号10Yは本実施形態の積層シート、符号13は他の樹脂層をそれぞれ示す。符号11、12は図1と同様である。なお、他の樹脂層を含む態様は、適宜設計変更可能である。
本発明者らは、フェノキシ系樹脂(B)とアイオノマーとの接着性が良好であることを見出した。上記構成の本発明の積層シートでは、フェノキシ系樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層との層間接着性に優れる。ただし、フェノキシ系樹脂(B)単独では、ガラス転移温度(以下、「Tg」と略記する場合がある。)が比較的低く、樹脂層としたときの表面硬度が比較的低い傾向がある。フェノキシ系樹脂(B)よりもTgが高く、樹脂層としたときの表面硬度が高いメタクリル系樹脂(A)を併用することで、熱可塑性樹脂層の耐熱性と表面硬度が良好となる。その結果、基材への積層時等において軟化および傷付き等による熱可塑性樹脂層の表面形状の悪化を抑制することができる。アイオノマー層は各種基材との接着性に優れるため、アイオノマー層が基材に隣接するように、本発明の積層シートを基材に積層することで、基材と積層シートとの接着性に優れた積層体を提供することができる。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(R)からなる。
<メタクリル系樹脂(A)>
熱可塑性樹脂層は、1種または2種以上のメタクリル系樹脂(A)を含む。熱可塑性樹脂層は、フェノキシ系樹脂(B)の含有量が増す程、アイオノマー層との層間接着性が向上する傾向がある。熱可塑性樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)の含有量が増す程、Tgが増加して耐熱性が向上し、表面硬度が高くなる傾向がある。熱可塑性樹脂組成物(R)中のメタクリル系樹脂(A)の含有量は特に制限されず、熱可塑性樹脂層の耐熱性および表面硬度が優れることから、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは70〜80質量%である。
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略記する場合がある。)の単独重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)、または、MMAと他の1種または2種以上の単量体との共重合体である。メタクリル系樹脂(A)中のMMA単量体単位の含有量は特に制限されず、熱可塑性樹脂層の耐熱性が優れることから、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
メタクリル系樹脂(A)中のMMA単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(A)をメタノール中で再沈殿することにより精製した後、熱分解ガスクロマトグラフィを用いて熱分解および揮発成分の分離を行い、MMAと共重合成分とのピーク面積の比から算出することができる。
メタクリル系樹脂(A)は、MMA単量体単位以外の1種または2種以上の単量体単位を含むことができる。MMAと共重合可能な単量体としては、MMA以外のメタクリル酸エステルが挙げられる。MMA以外のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、およびメタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸1−メチルシクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチル、およびメタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルエステル等が挙げられる。中でも、入手性の観点から、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、およびメタクリル酸tert−ブチルが好ましい。
MMAと共重合可能なメタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略記する場合がある。)、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、およびアクリル酸3−ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステルが挙げられる。中でも、入手性の観点から、MA、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、およびアクリル酸tert−ブチル等のアクリル酸エステルが好ましく、MAおよびアクリル酸エチルがより好ましく、MAが特に好ましい。
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」と略記する場合がある。)は特に制限されず、好ましくは40,000〜500,000、より好ましくは60,000〜300,000、特に好ましくは80,000〜200,000である。Mwが40,000以上であることで、熱可塑性樹脂層が力学強度に優れたものとなる。Mwが500,000以下であることで、フェノキシ系樹脂(B)との相溶性が良好となり、熱可塑性樹脂層の透明性を高めることができる。
メタクリル系樹脂(A)のメルトフローレート(以下、「MFR」と略記する場合がある。)は特に制限されず、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.5〜8g/10分、特に好ましくは1〜5g/10分である。MFRが0.1〜10g/10分であることで、熱可塑性樹脂層は成形性に優れるものとなる。
本明細書において、「メタクリル系樹脂(A)のMFR」は、JIS K 7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される値である。
メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度Tgは特に制限されず、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、特に好ましくは110℃以上である。Tgが100℃以上であることで、熱可塑性樹脂層は、耐熱性に優れたものとなる。
メタクリル系樹脂(A)は、重合開始剤の存在下で、MMAを含む1種または2種以上の単量体を重合することで製造できる。重合には必要に応じて、連鎖移動剤等の任意成分を用いることができる。重合方法としては特に制限されず、ラジカル重合法およびアニオン重合法等が挙げられる。
ラジカル重合法を用いる場合、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、または乳化重合法を選択することが可能である。かかる重合方法において、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法および塊状重合法が好ましい。塊状重合は連続流通式で行うことが好ましい。
メタクリル系樹脂(A)をアニオン重合する方法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報を参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報を参照)、および有機希土類金属錯体を重合開始剤としてアニオン重合する方法(特開平6−93060号公報を参照)等が挙げられる。
本明細書に記載するメタクリル系樹脂(A)の各種特性値は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類と量、および、連鎖移動剤の種類と量等の重合条件を調整することによって、好ましい範囲内に調整することができる。
<フェノキシ系樹脂(B)>
熱可塑性樹脂層は、1種または2種以上のフェノキシ系樹脂(B)を含む。熱可塑性樹脂層は、フェノキシ系樹脂(B)の含有量が増す程、アイオノマー層との層間接着性が向上する傾向がある。熱可塑性樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)の含有量が増す程、Tgが増加して耐熱性が向上し、表面硬度が高くなる傾向がある。熱可塑性樹脂層中のフェノキシ系樹脂(B)の含有量は特に制限されず、アイオノマー層との接着性に優れることから、好ましくは50〜20質量%、より好ましくは40〜20質量%である。
フェノキシ系樹脂(B)は、熱可塑性を有する高分子量エポキシ系樹脂であり、ヒドロキシ基含有部を有する鎖および芳香族単位を有するポリヒドロキシキシポリエーテルのことを指す。具体的には、フェノキシ系樹脂(B)は下記式(1)で表される単位を1種以上含む樹脂である。フェノキシ系樹脂(B)は下記式(1)で表される単位を好ましくは50質量%以上含む。
Figure 2017170736
上記式(1)中、Xは少なくとも1つのベンゼン環を含む2価基であり、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。
Xは、下記式で表される化合物(2)〜(4)に由来する2価基であることが好ましい。なお、2価基を構成する2つの置換基の位置は構造上可能なものであれば特に限定はないが、化合物(2)〜(4)中のベンゼン環上の水素原子が2つ引き抜かれた2価基が好ましい。特に、化合物(2)または(4)中の異なるベンゼン環上の水素原子が合計で2つ引き抜かれた2価基が好ましい。
Figure 2017170736
上記式(2)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基、もしくは、Rに原子が存在せず直鎖結合したナフタレン構造またはビフェニル構造を示す。RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜4の整数である。
Figure 2017170736
上記式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基である。pは1〜4の整数である。
Figure 2017170736
上記式(4)中、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基、もしくは、R、Rに原子が存在せず直接結合したナフタレン構造またはビフェニル構造を示す。RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基である。qおよびrはそれぞれ独立に1〜4の整数である。
上記式(1)中、Xは、3環構造を有する芳香族炭化水素に由来する2価基であってもよい。その具体例としては、フルオレン構造およびカルバゾール構造を例示することができる。
化合物(2)〜(4)の具体例としては、[化5]に示す芳香族化合物の二価のフェノール誘導体が挙げられる。
Figure 2017170736
上記式(1)で表される単位の中でも、下記式(6)で表される単位が好ましい。
Figure 2017170736
上記式(6)中、Rは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基またはシクロアルキリデン基、もしくは、Rに原子が存在せず直鎖結合したナフタレン構造またはビフェニル構造を示す。R10は、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。
上記式(6)で表される単位の中でも、下記式(7)で表される単位が好ましい。
Figure 2017170736
フェノキシ系樹脂(B)の末端部は、エポキシ基を含まないことが好ましい。フェノキシ系樹脂(B)が末端にエポキシ基を多く含む場合、このエポキシ基とメタクリル系樹脂(A)とが反応して、熱可塑性樹脂層にゲル欠点が生じる恐れがある。
フェノキシ系樹脂(B)は、上記式(1)で表される単位を10〜1000個含むことが好ましく、15〜500個含むことがより好ましく、30〜300個含むことが特に好ましい。
フェノキシ系樹脂(B)のMwは特に制限されず、力学強度および耐熱性の観点から、好ましくは30,000〜100,000、より好ましくは40,000〜80,000、特に好ましくは50,000〜60,000である。フェノキシ系樹脂(B)のMFRは特に制限されず、熱可塑性樹脂層の成形性が良好となることから、好ましくは2〜40g/10分、より好ましくは5〜30g/10分、特に好ましくは10〜25g/10分である。本明細書において、「フェノキシ系樹脂(B)のMFR」は、JIS K 7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される値である。フェノキシ系樹脂(B)のTgは特に制限されず、熱可塑性樹脂層の耐熱性が優れることから、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは95℃以上である。
フェノキシ系樹脂(B)は、ビスフェノールA型でもビスフェノールA/F共重合型でもよく、熱可塑性樹脂層の透明性、即ちメタクリル系樹脂(A)との相溶性の観点から、ビスフェノールA型が好ましい。
フェノキシ系樹脂(B)としては、新日鉄住金化学株式会社製のフェノトートシリーズ(YP−50、YP−50S等)、三菱化学株式会社製のJERシリーズ(1256、4250等)、およびInChem社製のPKFE、PKHL等の市販品を用いることができる。
フェノキシ系樹脂(B)は、公知方法により製造して用いてもよい。フェノキシ系樹脂(B)は例えば、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンとの縮合反応、あるいは2価フェノール化合物と2官能エポキシ樹脂との重付加反応から得ることができる。これらの反応は、溶液中あるいは無溶媒下で実施することができる。
<熱可塑性樹脂組成物(R)>
メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)との混合方法としては、溶融混合法および溶液混合法等が挙げられる。溶融混合法では、単軸または二軸以上の混練押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、およびニーダー等の溶融混練機を用い、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、およびヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で、溶融混練を行うことができる。溶液混合法では、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを、トルエン、テトラヒドロフラン、およびメチルエチルケトン等の有機溶媒に溶解させて混合することができる。これらの混合方法の中で、溶融混合法が好ましく、特に単軸または二軸の混練押出機を用いる方法が好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル系樹脂(A)およびフェノキシ系樹脂(B)の溶融温度等に応じて適宜調節することができ、好ましくは110〜300℃である。
熱可塑性樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)以外の他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、およびポリノルボルネン等のポリオレフィン;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、およびMBS樹脂等のスチレン系樹脂;メタクリル酸メチル−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、およびポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリアセタール等の他の熱可塑性樹脂;フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、およびエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;シリコーン系変性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、アクリル系ブロック共重合体、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、およびSIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、およびEPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。熱可塑性樹脂層中の他の重合体の含有量は特に制限されず、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
熱可塑性樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、および炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;硫酸バリウム、および硫酸カルシウム等の金属硫酸塩、酸化チタン、シリカ、およびアルミナ等の金属酸化物;カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、およびカーボンナノチューブ等のカーボン系フィラー;金、銀、および白金等の貴金属ナノ粒子;モンモリロナイト、ヘクトライト、およびノントロナイト等の無機層状物質;タルク;マイカ等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。熱可塑性樹脂層に含有し得るフィラーの量は特に制限されず、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
熱可塑性樹脂層は、必要に応じて各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料・顔料、光拡散剤、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、および蛍光体等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。例えば、酸化防止剤の含有量は好ましくは0.01〜1質量%、紫外線吸収剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、光安定剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、滑剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、染料・顔料の含有量は好ましくは0.01〜3質量である。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/フェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1〜2/1で使用するのが好ましく、0.5/1〜1/1で使用するのがより好ましい。
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(株式会社ADEKA製「アデカスタブHP−10」)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製「IRGAFOS168」)、および3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(株式会社ADEKA製「アデカスタブPEP−36」)等が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASFジャパン株式会社製「IRGANOX1010」)、およびオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製「IRGANOX1076」)等が好ましい。
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の条件下で高温にさらされたときに生じるポリマーラジカルを補足することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学株式会社製「スミライザーGM」)、および2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学株式会社製「スミライザーGS」)等が好ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリァジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、およびホルムアミジン類等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm・mol−1cm−1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色等の光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明の積層シートを光学用途に適用する場合に用いる紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製「商品名TINUVIN329」)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製「商品名TINUVIN234」)、および2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](株式会社ADEKA製「アデカスタブLA−31」)等が好ましい。
また、波長380nm付近の波長を効率的に吸収したい場合は、トリアジン類の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。このような紫外線吸収剤としては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(株式会社ADEKA製「アデカスタブLA−F70」)、およびその類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN477」や「TINUVIN460」)等が挙げられる。
骨格内に硫黄原子を含有する紫外線吸収剤は、紫外線吸収能に加えて、樹脂組成物の屈折率を高めることができるため、本発明の積層シートを光学用途に適応する場合に好ましい。骨格内に硫黄原子を含有する紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類として、2−(5−オクチルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−t−ブチル−4−メチルフェノール(Compound A)、2−(5−ドデシルチオ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−t−ブチル−4−メチルフェノール(Compound B)等が挙げられる。また、トリアジン類として、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メチルチオフェニル)−1,3,5−トリアジン(Compound C)、および2,4,6−(2−ヒドロキシ−4−へキシルチオフェニル)−1,3,5−トリアジン(Compound D)等が挙げられる。
骨格内に硫黄原子を含有する紫外線吸収剤は、樹脂組成物の屈折率を高めることができるが、波長380nm以上の可視光領域に吸収を有することがあり、樹脂組成物が着色する原因となることがある。そのため、他の紫外線吸収剤と併用して、使用量を適量にすることが好ましい。
紫外線吸収剤を併用して用いる場合、紫外線吸収剤のうち、骨格内に硫黄原子を含有しないベンゾトリアゾール類を[1]、骨格内に硫黄原子を含有しないトリアゾール類を[2]、骨格内に硫黄原子を含有する紫外線吸収剤を[3]と標記すると、例えば、[1]と[2];[1]と[3];[2]と[3]:[1]と[2]と[3]等の組み合わせが挙げられる。さらに、[1]〜[3]のいずれにも該当しない紫外線吸収剤を[4]を併用してもよい。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6一テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物等のヒンダードアミン類が挙げられる。例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(株式会社ADEKA製「アデカスタブLA−77Y」)等が挙げられる。
滑剤は、ポリマーと金属表面との滑りを調整し、凝着や粘着を防ぐことで離型性および加工性等を改善する効果があると言われる化合物である。例えば、高級アルコール、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪族アミド、および脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂層の構成樹脂との融和性の観点から、炭素原子数12〜18の脂肪族1価アルコールが好適である。例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコール等が挙げられる。
熱可塑性樹脂層に他の重合体および/または添加剤を含有させる場合、メタクリル系樹脂(A)および/またはフェノキシ系樹脂(B)の重合時に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)およびフェノキシ系樹脂(B)を混合する際に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)およびフェノキシ系樹脂(B)を混合した後に添加してもよい。
メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(R)のTgは特に制限されず、耐熱性の観点から、好ましくは98〜120℃、より好ましくは100〜118℃、特に好ましくは102〜115℃である。メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(R)のMFRは特に制限されず、熱可塑性樹脂層の成形性が良好となることから、好ましくは1〜20g/10分である。MFRの下限値は、好ましくは1.5g/10分以上、より好ましくは2.0g/10分である。MFRの上限値は好ましくは10.0g/10分以下、より好ましくは7.0g/10分以下である。
(アイオノマー層)
<アイオノマー(C)>
アイオノマー層は、1種または2種以上のアイオノマー(C)を含む。アイオノマー層中のアイオノマー(C)の含有量は特に制限されず、アイオノマー層の透明性および基材接着性が優れることから、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
アイオノマー(C)は、α−オレフィン単量体単位とα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体(以下、単に「酸コポリマー」と称することがある。)を部分的または完全に中和することによって得られるポリマーである。酸コポリマーは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル等の他の1種または2種以上の共重合単位を含んでいてもよい。すなわち、アイオノマー(C)としては、α−オレフィン単位とα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む酸コポリマーのイオン中和誘導体が好ましい。酸コポリマーの中和は、酸コポリマー中のアニオンをカチオンを用いて中和する反応である。カチオン源としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属等を用いることができる。
酸コポリマーの原料であるα−オレフィンとしては、2〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンが好ましい。かかるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、および4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、エチレンが好ましい。
酸コポリマーの原料であるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、3〜8個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。かかるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、およびモノメチルマレイン酸等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの組合せが好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
酸コポリマー中のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位の含有量は特に制限されず、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、特に好ましくは18〜24質量%である。当該含有量が2質量%以上であると基材との接着性が良好となり、30質量%以下であると硬度および弾力性が良好となる。
酸コポリマーは、α−オレフィン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物以外の他の単量体に由来する単量体単位を含むことができる。これにより、例えば積層シートの剛性および巻取り易さ等を調節できる。
酸コポリマーに用いられる他の単量体としては、不飽和カルボン酸アミドおよび不飽和カルボン酸エステル等が挙げられ、不飽和カルボン酸エステルが好ましい。不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ウンデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ベヘニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)べヘニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)4−ノニルフェニルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテルメタクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニル等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、およびこれらの組合せが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。
酸コポリマー中のα−オレフィン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物以外の他の単量体に由来する単量体単位の含有量は特に制限されず、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0%である。
酸コポリマーのMFRは特に制限されず、好ましくは1〜1000g/10分、より好ましくは20〜900g/10分である。本明細書において、「酸コポリマーのMFR」は、ASTM方法D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件において測定される値である。
酸コポリマーとしては、三井・デュポンポリケミカル株式会社製のニュクレルシリーズ等の市販品を用いることができる。酸コポリマーは、米国特許第3,404,134号明細書、米国特許第5,028,674号明細書、米国特許第6,500,888号明細書、および米国特許第6,518,365号明細書等に記載の公知方法にて、重合して用いてもよい。
アイオノマー(C)は、上記の酸コポリマーを1つ以上の塩基との反応により部分的または完全に中和することで得られる。中和反応の後、酸コポリマー中のα,β−エチレン性不飽和カルボキシ基の水素原子の1〜100%が中和されていることが好ましく、5〜90%中和されていることがより好ましく、10〜60%中和されていることが特に好ましい。
アイオノマー(C)は、カルボキシレートアニオンに対する対イオンとして、カチオンを含む。カチオンとしては特に制限されず、一価、二価、三価、または四価以上の多価の金属カチオンが好ましい。金属カチオンは1種または2種以上用いることができる。一価の金属カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、水銀イオン、銅イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。二価の金属カチオンとしては、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、銅イオン、カドミウムイオン、水銀イオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。三価の金属カチオンとしては、アルミニウムイオン、スカンジニウムイオン、鉄イオン、イットリウムイオン、およびこれらの組合せが挙げられる。四価以上の多価の金属カチオンとしては、チタンイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、バナジウムイオン、タンタルイオン、タングスチンイオン、クロムイオン、セリウムイオン、鉄イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。金属カチオンが四価以上の多価イオンである場合、米国特許第3,404,134号明細書中に記載されるように、ステアレート、オレエート、サリチレートおよびフェノレートラジカル等の錯化剤を用いてもよい。中でも、一価または二価の金属カチオンが好ましく、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、カリウムイオン、およびこれらの組合せがより好ましく、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、およびこれらの組合せが特に好ましい。
アイオノマー(C)のMFRは特に制限されず、アイオノマー層の成形性が良好となることから、好ましくは25g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下、最も好ましくは5g/10分以下である。本明細書において、「アイオノマー(C)のMFR」は、ASTM方法D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件において測定される値である。
アイオノマー(C)としては、デュポン社製のサーリンシリーズ、および三井・デュポンポリケミカル株式会社製のハイミランシリーズ等の市販品を用いることができる。
酸コポリマーを中和し、アイオノマー(C)を得る方法は、米国特許第3,404,134号明細書および米国特許第6,518,365号明細書等に記載されている。これら公知方法にしたがって、アイオノマー(C)を合成して用いてもよい。
アイオノマー層は、本発明の効果を損なわない範囲で、アイオノマー(C)以外の他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、およびポリノルボルネン等のポリオレフィン;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、およびMBS樹脂等のスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;メタクリル酸メチル−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、およびポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、フェノキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリアセタール等の熱可塑性樹脂;フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、およびエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;シリコーン系変性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、アクリル系ブロック共重合体、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、およびSIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、およびEPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
アイオノマー層中の他の重合体の含有量は特に制限されず、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
アイオノマー層は、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、加工助剤、流動促進添加剤、潤滑剤、顔料、染料、難燃剤、衝撃改質剤、核形成剤、シリカ等のブロッキング防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、ガラス繊維等の補強用添加剤、および充填剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
(積層構成)
本発明の積層シートは、複数の熱可塑性樹脂層を含んでいてもよいし、複数のアイオノマー層を含んでいてもよい。
本発明の積層シートは、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層およびアイオノマー層以外の他の樹脂層を有していてもよい。
他の樹脂層の構成樹脂は特に制限されず、メタクリル系樹脂(A)およびフェノキシ系樹脂(B)の組合せおよびアイオノマー(C)を除く1種または2種以上の熱可塑性樹脂、1種または2種以上の熱硬化樹脂、1種または2種以上のエネルギー線硬化樹脂、およびこれらの組合せが挙げられる。
他の樹脂層の機能は特に制限されず、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層およびアイオノマー層を支持する支持層;耐擦傷層、帯電防止層、防汚層、摩擦低減層、防眩層、反射防止層、粘着層、熱線吸収層、遮音層および衝撃強度付与層等の各種機能層として機能してもよい。他の樹脂層は単数でも複数でもよい。他の樹脂層が複数である場合、組成は同一でも非同一でもよい。
本発明の積層シートにおいて、熱可塑性樹脂層の厚さは特に制限されず、耐擦傷性、耐候性、および耐衝撃性等の観点から、好ましくは0.01〜9.0mm、より好ましくは0.015〜4.0mm、特に好ましくは0.02〜2.0mmである。
本発明の積層シートにおいて、アイオノマー層の厚さは特に制限されず、耐貫通性、接着性、透明性、および生産性等の観点から、好ましくは0.01〜9.0mm、より好ましくは0.015〜4.0mm、特に好ましくは0.02〜2.0mmである。
本発明の積層シートの全体厚さは特に制限されず、外観不良なく生産性よく製造する観点から、好ましくは0.03〜10.0mm、より好ましくは0.05〜5.0mm、特に好ましくは0.1〜3.0mmである。
本発明の積層シートの積層構成は特に制限されない。熱可塑性樹脂層を(1)、アイオノマー層を(2)と表記すると、熱可塑性樹脂層(1)およびアイオノマー層(2)のみからなる本発明の積層シートの積層構成としては、(1)−(2);(1)−(2)−(1);(2)−(1)−(2);(1)−(2)−(1)−(2)−(1)等が挙げられる。
本発明の積層体が他の樹脂層を含む場合、他の樹脂層を(3)と表記すると、本発明の積層シートの積層構成としては、(1)−(2)−(3);(3)−(1)−(2);(3)−(1)−(2)−(3);(3)−(1)−(2)−(1)−(3);(1)−(2)−(3)−(2)−(1);等が挙げられる。
本発明の積層体が他の樹脂層(3)の他に、さらに別の他の樹脂層を含む場合、かかる他の樹脂層を(4)と表記すると、本発明の積層シートの積層構成としては、(3)−(1)−(2)−(4)−(2)が挙げられる。
本発明の積層シートは、耐擦傷性向上の観点から、一方の最表層は熱可塑性樹脂層(1)であることが好ましい。各種基材への接着性の観点から、他方の最表層はアイオノマー層(2)であることが好ましい。
「積層シートの製造方法」
本発明の積層シートの製造方法は特に制限されず、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層との積層は、公知の多層成形によって行うことが好ましい。多層成形としては、多層共押出成形;多層ブロー成形;多層プレス成形;多色射出成形;インサート射出成形等の貼合成形法等が挙げられる。生産性の観点から多層共押出成形が好ましい。なお、本明細書において、「多層成形」は2層以上の積層成形を意味する。
他の樹脂層をさらに積層する方法としては特に制限されず、熱可塑性樹脂層およびアイオノマー層とともに他の樹脂層を前記した方法で多層成形する方法、あらかじめ作製した熱可塑性樹脂層またはアイオノマー層の表面に流動性の他の樹脂を塗布して乾燥固化または硬化する方法、あらかじめ作製した熱可塑性樹脂層またはアイオノマー層の表面に粘着層を介して他の樹脂層を貼り合わせる方法等が挙げられる。
多層共押出成形は、溶融共押出しによる積層など、公知方法にて実施することができる。溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(R)およびアイオノマー(C)を積層状態でシート状に押出すTダイと、Tダイから押し出された溶融状態のシート状物を冷却しながら加圧する互いに隣接配置された複数のロールからなるロールユニットとを備えた装置を用いて、多層共押出成形を実施することが好ましい。
積層方式としては、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(R)およびアイオノマー(C)をTダイ流入前に積層するフィードブロック方式、および、熱可塑性樹脂組成物(R)およびアイオノマーをTダイ内部で積層するマルチマニホールド方式が挙げられる。中でも、積層シートの各層間の界面平滑性を高める観点から、マルチマニホールド方式が好ましい。
ロールユニットを構成するロールとしては例えば、ロール表面が鏡面仕上げされたポリシングロール;金属、ステンレス鋼、および炭素鋼のコアの表面にゴムが巻き付けられたゴムロール;ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロール等が挙げられる。一方の最表層をなす熱可塑性樹脂層と接する側のロールは、鏡面性付与の目的からポリシングロールが好ましい。他方の最表層をなすアイオノマー層と接する側のロールは、ロールからの剥離性の観点からゴムロールまたはエンボスロールが好ましい。
ポリシングロールとしては例えば、金属ロールおよび外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロール(以下、「金属弾性ロール」と略記する場合がある。)が挙げられる。金属ロールとしては、高剛性であれば特に限定されず、例えば、ドリルドロール、およびスパイラルロール等が挙げられる。金属ロールの表面状態は特に限定されず、鏡面であってもよく、模様あるいは凹凸等があってもよい。金属弾性ロールは例えば、略円柱状の回転自在な軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、シート状物に接触する円筒形の金属製薄膜と、これら軸ロールおよび金属製薄膜の間に封入された流体とからなり、流体により金属弾性ロールは弾性を示す。軸ロールは特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等からなる。金属製薄膜は、例えば、ステンレス鋼等からなり、その厚みは2〜5mm程度であるのが好ましい。金属製薄膜は、屈曲性および可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造であるのが好ましい。このような金属製薄膜を備えた金属弾性ロールは、耐久性に優れると共に、金属製薄膜を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
ゴムロールとしては例えば、シリコーンゴムロール、フッ素ゴムロール、ニトリルブタジエンゴムロール、スチレンブタジエンゴム、および、離型性を上げるために砂を混ぜたゴムロール等が挙げられる。使用するゴムロールは特に限定されず、耐熱性の観点からシリコーンゴムロールが好ましい。シリコーンゴムロールの表面仕上げには、公知の加工方法を使用できる。
エンボスロールとしては例えば、金属ロールの表面に酸化アルミニウムおよび酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削等を用いてラッピングを行うことにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。他にも、彫刻ミル(マザーミル)を用い、エンボス模様(凹凸模様)を金属ロールの表面に転写することにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。更に、エッチング(蝕刻)によりロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。エンボスロールの表面に離形処理を施すことが好ましい。離形処理としては、シリコーン処理、テフロン(登録商標)処理、およびプラズマ処理等が挙げられる。
積層シートの各層の原料樹脂(組成物)は、多層成形前および/または多層成形時に、フィルタ濾過することが好ましい。フィルタ濾過した原料樹脂(組成物)を用いて多層成形することにより、異物およびゲルに起因する欠点の少ない積層シートが得られる。使用されるフィルタの材質は特に制限されず、使用温度、粘度、および濾過精度等に応じて適宜選択され、例えばポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、コットン、およびグラスファイバ等からなる不織布;フェノール系樹脂含浸セルロースフィルム;金属繊維不織布焼結フィルム;金属粉末焼結フィルム;金網;およびこれらの組合せを用いることができる。中でも、耐熱性および耐久性の観点から、金属繊維不織布焼結フィルムを複数枚積層して用いることが好ましい。フィルタの開口径は特に制限されず、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
「積層体」
本発明の積層体は、上記の本発明の積層シートのアイオノマー層が、基材上に隣接して積層されたものである。
図3および図4に、本発明に係る実施形態の積層体の模式断面図を示す。図1および図2と同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。図中、符号20X、20Yは積層体であり、符号21は基材である。
基材の形態は特に制限されず、基板、シート、および任意形態の成形品等が挙げられる。基材の材質は特に制限されず、ガラス、金属、セラミック、木材、紙、不織布、織布、皮革(人工皮革または天然皮革)、樹脂、およびこれらの組合せ等が挙げられる。上記の本発明の積層シートは、基材保護または意匠性付与等の目的で、各種基材に積層して、基材の表皮材(表面保護シートまたは意匠性付与シート等)として用いることができる。なお、基材と積層シートとの接着性が良好となることから、基材に対してアイオノマー層が隣接するように積層を行うことが好ましい。
基材に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂、およびこれらの組合せ等が挙げられる。例えば、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、スチレン−メタクリル酸コポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリスルホン類、ポリウレタン類、アクリルポリマー、酢酸セルロース類、セロファン類、塩化ビニルポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
基材に用いられるガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、低鉄ガラス、強化ガラス(Corning inc.社製「Gorilla Glass(登録商標)」、および旭硝子株式会社製「Dragontrail(登録商標)等の化学強化ガラス等)、無CeO強化ガラス、フロートガラス、色ガラス、特殊ガラス(太陽光の光または熱を制御する成分を含むガラス等)、コートガラス(太陽光の光または熱を制御する目的で、表面に銀等の金属またはインジウム錫酸化物等の金属酸化物のスパッタリングが施されたガラス等)、低Eガラス、Saint−Gobain N.A.Inc.(Trumbauersville、PA)社製「Toroglas(登録商標)」、PPG Industries(Pittsburgh、PA)社製「Solexia(登録商標)」、PPG Industries社製「Starphire(登録商標))等が挙げられる。
基材に用いられる金属としては、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、亜鉛、およびこれらの組合せ等が挙げられる。基材は、任意材質の基材の表面に、銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、錫メッキ、亜鉛メッキ、白金メッキ、金メッキ、および銀メッキ等の金属メッキが施されたものでもよい。
基材に用いられるセラミックとしては、金属酸化物、金属炭化物、および金属窒化物等が挙げられる。具体的には、セメント類、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛系セラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびフェライト類等が挙げられる。
基材に用いられる木材としては、オバンコール、ブビンガ、バーズアイメープル、カーリーメープル、ホワイトアッシュ、サペリマホガニー、タモ、スギ、ヒノキ、チェリー、およびチーク等が挙げられる。
積層体の製造方法としては特に制限されず、熱可塑性樹脂層およびアイオノマー層とともに他の樹脂からなる基材(基材層)を上記した方法で多層成形する方法、本発明の積層シートを直接、任意材質の基材に熱ロールラミネートする方法、本発明の積層シートを押出ラミネート成形によって任意材質の基材上にコーティングする方法等が挙げられる。
なお、本発明の積層シートを積層する基材の表面には、接着力を向上させるために、例えばコロナ放電処理等の公知の表面処理を予め施してもよい。
本発明の積層体は例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、および屋上看板等の看板部品またはマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、および店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、およびシャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、およびミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、およびFRP等の外装装飾部材;安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、およびレジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車内装/外装部材(サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、バンパー、サンルーフ、およびグレージング等)等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク;保育器およびレントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、および観察窓等の機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、および拡散板等の光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、および防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク;パソコン、携帯電話、家具、自動販売機、浴室部材等に用いる表面材料等が挙げられる。
以上説明したように、本発明によれば、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れた積層シートを提供することができる。
熱可塑性樹脂層が好ましくは、50〜80質量%のメタクリル系樹脂(A)と50〜20質量%のフェノキシ系樹脂(B)とを含む場合、熱可塑性樹脂層は表面硬度が充分に高く、かつ、アイオノマー層との層間接着性も良好となる。フェノキシ系樹脂(B)として好ましくはビスフェノールA型のフェノキシ系樹脂を用いることで、熱可塑性樹脂層は透明性も良好となる。本発明によれば、メタクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂層とアイオノマー層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れ、かつ、透明性が高く、表面硬度が高い積層シートを提供することも可能である。
本発明の積層シートは、熱可塑性樹脂層とアイオノマー層との接着性に優れるため、溶融共押出し等により好適に製造することができる。
本発明の積層シートは表面保護シートまたは意匠性付与シート等として各種基材に積層することができ、各種基材と積層シートとの接着性に優れた積層体を提供することができる。
以下、本発明に係る製造例、実施例、および比較例について、説明する。
[評価項目および評価方法]
製造例、実施例、および比較例における評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(重量平均分子量(Mw))
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法)により求めた。溶離液としてテトラヒドロフランを用いた。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000とを直列に繋いだものを用いた。GPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。測定対象樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて試料溶液を調製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを装置内に注入して、クロマトグラムを測定した。分子量が400〜5000000の範囲内にある標準ポリスチレン10点をGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいて測定対象樹脂のMwを決定した。
(ガラス転移温度(Tg))
樹脂または樹脂組成物10mgを80℃で24時間乾燥した後、アルミパンに入れた。示差走査熱量計(TA Instruments社製「Q20」)を用い、30分以上窒素置換を行った後、10ml/分の窒素気流中、25℃から200℃まで20℃/分の速度で昇温し、200℃で10分間保持した後、25℃まで自然冷却した(1次走査)。次いで、10℃/分の速度で再度200℃まで昇温し(2次走査)、中点法にてガラス転移温度(Tg)を算出した。
(全光線透過率、ヘイズ)
単層シートまたは積層シートについて、分光色差計(日本電色工業(株)製「SE5000」)を使用し、JIS K 7361に準拠して全光線透過率およびヘイズを測定した。
(表面硬度)
単層シートまたは積層シートについて、テーブル移動式鉛筆引掻き試験機(型式P)(東洋精機社製)を用いて、表面の鉛筆引掻き硬度を測定した。なお、積層シートの場合の評価表面は、表3に示す第一層の表面とした。角度45度、荷重750gの条件で、単層シートまたは積層シートの表面に鉛筆の芯を押し付けながら引っ掻き、引っ掻き傷の傷跡の有無を確認した。鉛筆の芯の硬度は順に増していき、傷跡を生じた時点よりも1段階軟かい芯の硬度を鉛筆引掻き硬度のデータとした。
(層間接着力)
積層シートの90°剥離接着強さをJIS K 6854−1に準拠して測定した。積層シートを幅15mm、長さ150mmのサイズに切り出した。測定は、23℃、相対湿度50%環境下で24時間調温調湿されたサンプルについて、23℃、相対湿度50%の環境下で実施した。小型卓上試験機(SHIMADZU社製「EZ−SX」)を用い、引張速度300mm/minの条件で、少なくとも50mmの剥離が生じるまで測定を行い、得られた力−つかみ移動距離曲線から平均剥離力を求め、層間接着力を評価した。なお、剥離前に少なくとも1つの層が破断したもの、もしくは、層間接着が強固で剥離試験が実施不可能であったものに関しては、「剥離なし」と評価した。
(基材に対する接着性)
実施例および比較例で得られた積層体において、基材と積層シートとの180°剥離接着強さをJIS K 6850に準拠して測定した。試験は、23℃、相対湿度50%環境下で24時間調温調湿した積層体について、23℃、相対湿度50%の環境下で実施した。島津製作所製「オートグラフAG−1S」を用い、引張速度50mm/minの条件で、引張りせん断接着強さ試験を実施し、下記基準にて目視評価した。
<評価基準>
良(○):接着界面で凝集破壊が生じた(接着強度に優れると判断できる)。
可(△):接着界面で部分的に凝集破壊が生じた(接着強度に比較的優れると判断できる)。
不可(×):接着強度が低く、接着界面で剥離が生じた(接着強度に劣ると判断できる)。
[メタクリル系樹脂(A)、フェノキシ系樹脂(B)]
製造例では、下記に示すメタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)を使用した。
メタクリル系樹脂(A1):株式会社クラレ社製「パラペット」、
フェノキシ系樹脂(B1):三菱化学株式会社製「JER4250」、
フェノキシ系樹脂(B2):三菱化学株式会社製「JER1256」、
フェノキシ系樹脂(B3):新日鉄住金化学株式会社製「YP50S」。
これらの樹脂の構造と物性を表1に示す。
実施例および比較例では、下記に示す、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体のイオン中和誘導体である、アイオノマー(C)を使用した。
アイオノマー(C1):デュポン社製
[基材]
実施例および比較例では、下記に示す基材を使用した。
ガラス:フロートガラス板(日本板硝子株式会社製、厚さ5.0mm)、
金属:アルミニウム板(日本軽金属株式会社製5N材、厚さ0.3mm)、
セラミック:セメント板(ノザワ株式会社製「アスロック(登録商標)」、厚さ60mm)、
木材:天然木突板化粧合板(服部突板社製、厚さ2.5mm)、
ポリオレフィン:無延伸透明ポリプロピレンシート(出光ユニテック株式会社製「スーパーピュアレイ(登録商標)」、厚さ0.4mm)。
[製造例1]
90質量部のメタクリル系樹脂(A1)と10質量部のフェノキシ系樹脂(B1)とを二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダ温度230℃で溶融混練して押出成形し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物(R1)を得た。溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(R1)を金型枠に入れ、230℃、50kg/cmにて5分間プレス成形して厚さ1mmの単層シートを得、物性を評価した。配合組成および物性を表2に示す。
[製造例2〜9]
メタクリル系樹脂(A)およびフェノキシ系樹脂(B)の組合せと配合比を変更した以外は製造例1と同様にして、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物(R2)〜(R9)を得た。製造例1と同様に、各樹脂組成物を成形して厚さ1mmの単層シートを得、物性を評価した。配合組成および物性を表2に示す。
[実施例1〜9]
軸径50mmのベント式単軸押出機に熱可塑性樹脂組成物(R1)〜(R9)のうちいずれかのペレットを連続的に投入し、シリンダ温度190〜230℃、吐出量21kg/時の条件にて溶融押出した。一方、軸径30mmの単軸押出機にアイオノマー(C1)のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度150〜190℃、吐出量9kg/時の条件にて溶融押出した。これら溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(R1)〜(R9)のうちいずれかとアイオノマー(C1)とをジャンクションブロックに導入し、230℃に設定した幅300mmのマルチマニホールドダイより積層押出(共押出)し、40℃に設定したエンボスロールと100℃に設定した金属鏡面ロールとでニップすることでシート状に成形し、1.67m/minの速度にて引き取った。以上のようにして、厚さ700μmの熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂組成物(R1)〜(R9)のうちいずれかからなる第一層)と厚さ300μmのアイオノマー層(アイオノマー(C1)からなる第二層)との2層構造の総厚さ1000μmの積層シートを得た。なお、ニップはアイオノマー層側がエンボスロールに接するようにして行った。得られた共押出成形積層シートの各層の組成を表3に示す。
また、別途、各種評価用に、鏡面仕上げの金型を用いプレス機により作製した同一2層構造のプレス成形積層シートを得た。プレス成形積層シートの全光線透過率、ヘイズ、鉛筆硬度、層間接着性の評価結果を、表3に併せて示す。
また、得られた共押出成形積層シート(幅25mm、長さ100mm)と上記の各種基材(幅25mm、長さ100mm)とを、アイオノマー層(第二層)と基材とが隣接するように部分的に重ねて金型枠に入れ、230℃、50kg/cmの条件にて5分間プレスし、幅25mm、長さ175mmの積層体を得た。なお、重ね合わせ部の幅は25mm、長さは25mmとした。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表4に示す。
[比較例1]
実施例1の熱可塑性樹脂組成物(R1)の代わりにフェノキシ系樹脂(B1)単独を使用した以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表3に示す。
また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形積層シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表4に示す。
[比較例2]
実施例1の熱可塑性樹脂組成物(R1)の代わりにメタクリル系樹脂(A1)単独を使用した以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表3に示す。
また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形積層シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表4に示す。
[比較例3]
軸径50mmのベント式単軸押出機に熱可塑性樹脂組成物(R3)のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度190〜230℃、吐出量30kg/時の条件にて溶融押出した。溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(R3)を240℃に設定した幅300mmの単層Tダイにより押出し、80℃と100℃とにそれぞれ設定した一対の金属鏡面ロールでニップすることでシート状に成形し、1.67m/minの速度で引き取った。以上のようにして、厚さ1000μmの押出成形単層シートを製造した。また、別途、各種評価用に、鏡面仕上げの金型を用いプレス機により作製した同一構造のプレス成形単層シートを得た。プレス成形単層シートの全光線透過率、ヘイズ、鉛筆硬度、および層間接着性の評価結果を、表3に併せて示す。
また、実施例1と同様にして、得られた押出成形単層シートと各種基材との積層体を得、評価した。単層シートと各種基材との接着性の評価結果を表4に示す。
[評価結果のまとめ]
メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂層は、アイオノマー層との層間接着性が良好であった。熱可塑性樹脂層は、フェノキシ系樹脂(B)の含有量が増す程、アイオノマー層との層間接着性が向上する傾向があった。ただし、熱可塑性樹脂層は、フェノキシ系樹脂(B)の含有量が増す程、Tgが低下し、表面硬度が低下する傾向があった。
メタクリル系樹脂(A)とビスフェノールA型のフェノキシ系樹脂(B2)または(B3)とからなる熱可塑性樹脂層は、全光線透過率が89%以上であり、透明性も良好であった。
メタクリル系樹脂(A)単独、および、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(R)は、フェノキシ系樹脂(B)単独と比較して、Tgが高く、樹脂層としたときの表面硬度が高い傾向があった。そのため、第一層材料として、メタクリル系樹脂(A)とフェノキシ系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(R1)〜(R9)またはメタクリル系樹脂(A1)単独を用いた実施例1〜9、比較例2の積層シートは、第一層の耐熱性が高く、各種基材に積層する際に、軟化および傷付き等による第一層の表面形状の悪化が抑制された。一方、第一層材料としてフェノキシ系樹脂(B1)単独を用いた比較例1の積層シートは、基材に積層する際に、第一層の耐熱性が不充分であり、軟化による第一層の表面形状の悪化が見られた。
第一層材料に、熱可塑性樹脂組成物(R1)〜(R9)またはフェノキシ系樹脂(B1)単独を用いた実施例1〜9、比較例1の積層シートでは、第一層と第二層のアイオノマー層との層間接着性が良好であった。これらの積層シートは、各種基材との接着性も良好であった。一方、第一層材料として、メタクリル系樹脂(A)単独を用いた比較例2の積層シートは、第一層と第二層のアイオノマー層との層間接着性が不良であった。アイオノマー層を有さず、熱可塑性樹脂組成物(R3)からなる樹脂層のみからなる比較例3の単層シートは、基材との接着性が不良であった。





Figure 2017170736












Figure 2017170736
Figure 2017170736
Figure 2017170736
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
この出願は、2016年3月29日に出願された日本出願特願2016−066026号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
10X、10Y 積層シート
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
13 他の樹脂層
20X、20Y 積層体
21 基材

Claims (8)

  1. メタクリル系樹脂とフェノキシ系樹脂とを含む熱可塑性樹脂層と、当該熱可塑性樹脂層に隣接したアイオノマー層とを含む、積層シート。
  2. 前記熱可塑性樹脂層が、50〜80質量%の前記メタクリル系樹脂と50〜20質量%の前記フェノキシ系樹脂とを含む、請求項1に記載の積層シート。
  3. 前記フェノキシ系樹脂がビスフェノールA型フェノキシ系樹脂である、請求項1または2に記載の積層シート。
  4. 前記アイオノマー層が、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体のイオン中和誘導体であるアイオノマーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
  5. 前記共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位の含有量が2〜30質量%である、請求項4に記載の積層シート。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層シートの前記アイオノマー層が、基材上に隣接して積層された、積層体。
  7. 前記基材が、ガラス、金属、セラミック、木材、紙、不織布、織布、皮革、または樹脂を含む、請求項6に記載の積層体。
  8. 前記熱可塑性樹脂層および前記アイオノマー層を溶融共押出しにより積層する、請求項1〜5のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
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